(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-06
(45)【発行日】2023-03-14
(54)【発明の名称】液晶媒体
(51)【国際特許分類】
C09K 19/34 20060101AFI20230307BHJP
C09K 19/54 20060101ALI20230307BHJP
C09K 19/12 20060101ALI20230307BHJP
C09K 19/30 20060101ALI20230307BHJP
G02F 1/13 20060101ALI20230307BHJP
【FI】
C09K19/34
C09K19/54 C
C09K19/12
C09K19/30
G02F1/13 500
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2018047688
(22)【出願日】2018-03-15
【審査請求日】2021-03-12
(32)【優先日】2017-03-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】591032596
【氏名又は名称】メルク パテント ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Merck Patent Gesellschaft mit beschraenkter Haftung
【住所又は居所原語表記】Frankfurter Str. 250,D-64293 Darmstadt,Federal Republic of Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100106297
【氏名又は名称】伊藤 克博
(72)【発明者】
【氏名】チャンスク チョイ
(72)【発明者】
【氏名】チャンジュン ユン
(72)【発明者】
【氏名】ヨンジョン ハン
(72)【発明者】
【氏名】ヒーソク ジン
(72)【発明者】
【氏名】ヨンクク ユン
【審査官】黒川 美陶
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/146245(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09K 19/
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1種類以上の式Iの化合物と、および
1種類以上の式STの化合物と、および
式IIA、IIBおよびIICの化合物から成る群より選択される1種類以上の化合物と、および
1種類以上の式O-17の化合物と、および
式IICの化合物として液晶媒体全体に対して合計3重量%を超える量で1種類以上の式IIC-1の化合物と、および
式O-17の化合物として液晶媒体全体に対して合計10~60重量%の量で式CC-3-Vの化合物および式CC-3-V1の化合物と
を含むことを特徴とする液晶媒体。
【化1】
(式中、
R
1およびR
1*は、それぞれ互いに独立に、H、1~15個のC原子を有するアルキルまたはアルコキシ基を表し、ただし加えて、これらの基における1個以上のCH
2基は、それぞれ互いに独立に、O原子が互いに直接連結しないようにして、-C≡C-、-CF
2O-、-OCF
2-、-CH=CH-、
【化2】
-O-、-CO-O-、-O-CO-で置き換えられていてもよく、加えて該基中、1個以上のH原子はハロゲンで置き換えられていてもよく、
A
1およびA
1*は、それぞれ互いに独立に、
a)1,4-シクロヘキセニレンまたは1,4-シクロヘキシレン基、ただし1個または2個の隣接しないCH
2基は、-O-または-S-で置き換えられてよく、
b)1,4-フェニレン基、ただし1個または2個のCH基は、Nで置き換えられてよく、
c)ピペリジン-1,4-ジイル、1,4-ビシクロ[2.2.2]オクチレン、ナフタレン-2,6-ジイル、デカヒドロナフタレン-2,6-ジイル、1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-2,6-ジイル、フェナントレン-2,7-ジイルおよびフルオレン-2,7-ジイルの群からの基を表し、
ただし基a)、b)およびc)は、ハロゲン原子で一置換または多置換されてよく、
Z
1およびZ
1*は、それぞれ互いに独立に、-CO-O-、-O-CO-、-CF
2O-、-OCF
2-、-CH
2O-、-OCH
2-、-CH
2-、-CH
2CH
2-、-(CH
2)
4-、-CH=CH-CH
2O-、-C
2F
4-、-CH
2CF
2-、-CF
2CH
2-、-CF=CF-、-CH=CF-、-CF=CH-、-CH=CH-、-C≡C-または単結合を表し、および
L
1およびL
2は、それぞれ互いに独立に、F、Cl、CF
3またはCHF
2を表し、
aおよびbは、それぞれ互いに独立に0または1である。)
【化3】
(式中、
Gは、単結合または1~20個のC原子を有する2価の脂肪族または環式脂肪族基を表す。)
【化4】
(式中、
R
2A、R
2BおよびR
2Cは、それぞれ互いに独立に、H、無置換か、CNまたはCF
3で一置換されている、またはハロゲンで少なくとも一置換されている15個までのC原子を有するアルキルまたはアルケニル基を表し、ただし加えて、これらの基における1個以上のCH
2基は、O原子が互いに直接連結しないようにして、-O-、-S-、
【化5】
-C≡C-、-CF
2O-、-OCF
2-、-OC-O-または-O-CO-で置き換えられていてもよく、
L
1~4は、それぞれ互いに独立に、FまたはClを表し、
Z
2およびZ
2’は、それぞれ互いに独立に、単結合、-CH
2CH
2-、-CH=CH-、-CF
2O-、-OCF
2-、-CH
2O-、-OCH
2-、-COO-、-OCO-、-C
2F
4-、-CF=CF-または-CH=CHCH
2O-を表し、
pは、0、1または2を表し、
qは、0または1を表し、および
vは、1~6を表す。)
【化6】
(式中、
R
1は、それぞれ1~6個または2~6個のC原子を有するアルキルまたはアルケニルを表し、
R
2は、2~6個のC原子を有するアルケニルを表す。)
【化7】
(式中、
alkylおよびalkyl
*は、それぞれ互いに独立に、1~6個のC原子を有する直鎖状のアルキル基を表す。)
【化8】
【化9】
【請求項2】
1種類以上の式I-1~I-10の化合物を含むことを特徴とする請求項
1に記載の液晶媒体。
【化10】
【化11】
(式中、
alkylおよびalkyl
*は、それぞれ互いに独立に、直鎖状で1~6個のC原子を有するアルキル基を表し、
alkenylおよびalkenyl
*は、それぞれ互いに独立に、直鎖状で2~6個のC原子を有するアルケニル基を表し、
alkoxyおよびalkoxy
*は、それぞれ互いに独立に、直鎖状で1~6個のC原子を有するアルコキシ基を表し、
L
1およびL
2は、それぞれ互いに独立に、F、Cl、CF
3またはCHF
2を表す。)
【請求項3】
1種類以上の式I-6の化合物を含むことを特徴とする請求項
1または2に記載の液晶媒体。
【化12】
(式中alkoxyは、それぞれ互いに独立に、直鎖状で1~6個のC原子を有するアルコキシ基を表す。)
【請求項4】
式IにおいてL
1およびL
2は、それぞれFを表す請求項1~
3のいずれか1項に記載の液晶媒体。
【請求項5】
1種類以上の式ST-1の化合物を含むことを特徴とする請求項1~
4のいずれか1項に記載の液晶媒体。
【化13】
(式中、
R
STは、Hまたは1~6個のC原子を有するアルキルを表し、
tは、0または1であり、および
qは、0、1、2、3、4、5、6、7、8または9である。)
【請求項6】
式STの化合物として1種類以上の式ST-1bの化合物を含むことを特徴とする
請求項1~5のいずれか1項に記載の液晶媒体。
【化14】
(式中、
qは、6、7または8である。)
【請求項7】
1種類以上の式L1~L11の化合物を追加的に含むことを特徴とする請求項1~
6のいずれか1項に記載の液晶媒体。
【化15】
【化16】
(式中、
R、R
1およびR
2は、それぞれ互いに独立に、H、無置換か、CNまたはCF
3で一置換されている、またはハロゲンで少なくとも一置換されている15個までのC原子を有するアルキルまたはアルケニル基を表し、ただし加えて、これらの基における1個以上のCH
2基は、O原子が互いに直接連結しないようにして、-O-、-S-、
【化17】
-C≡C-、-CF
2O-、-OCF
2-、-OC-O-または-O-CO-で置き換えられていてもよく、
alkylは1~6個のC原子を有するアルキル基を表し、および
sは、1または2を表す。)
【請求項8】
1種類以上の式O-1~O-18の化合物を追加的に含むことを特徴とする請求項1~
7のいずれか1項に記載の液晶媒体。
【化18】
【化19】
(式中、
R
1およびR
2は、それぞれ互いに独立に、H、無置換か、CNまたはCF
3で一置換されている、またはハロゲンで少なくとも一置換されている15個までのC原子を有するアルキルまたはアルケニル基を表し、ただし加えて、これらの基における1個以上のCH
2基は、O原子が互いに直接連結しないようにして、-O-、-S-、
【化20】
-C≡C-、-CF
2O-、-OCF
2-、-OC-O-または-O-CO-で置き換えられていてもよい。)
【請求項9】
式O-6、O-7およびO-17の化合物の群から選択される1種類以上の化合物を含むことを特徴とする請求項1~
8のいずれか1項に記載の液晶媒体。
【化21】
(式中それぞれ、
R
1は、1~6個または2~6個のC原子を有するアルキルまたはアルケニルを表し、
R
2は、2~6個のC原子を有するアルケニルを表す。)
【請求項10】
混合物全体における式Iの化合物の割合は、1~40重量%であることを特徴とする請求項1~
9のいずれか1項に記載の液晶媒体。
【請求項11】
混合物全体における式STの化合物の割合は、0.005~1%であることを特徴とする請求項1~
10のいずれか1項に記載の液晶媒体。
【請求項12】
液晶媒体全体に対して0.05重量%以上の合計濃度で式STの化合物を含むことを特徴とする
請求項1~11のいずれか1項に記載の液晶媒体。
【請求項13】
式STの化合物として液晶媒体全体に対して0.05重量%以上の合計濃度で1種類以上の式ST-1bの化合物を含むことを特徴とする
請求項1~12のいずれか1項に記載の液晶媒体。
【化22】
(式中、
qは、6、7または8である。)
【請求項14】
テレビ用途向けであることを特徴とする請求項1~
13のいずれか1項に記載の液晶媒体。
【請求項15】
請求項1~
13のいずれか1項に記載の液晶媒体を調製する方法であって、
1種類以上の式Iの化合物を1種類以上の更なる液晶化合物と混合し、1種類以上の式STの化合物を添加することを特徴とする方法。
【請求項16】
電気光学的ディスプレイにおける、請求項1~
13のいずれか1項に記載の液晶媒体の使用。
【請求項17】
誘電体として請求項1~
13のいずれか1項に記載の液晶媒体を含有することを特徴とする、アクティブマトリクスアドレスを有する電気光学的ディスプレイ。
【請求項18】
電気光学的ディスプレイが、VA、PSA、PA-VA、SS-VA、SA-VA、PS-VA、PALC、IPS、PS-IPS、FFS、UB-FFS、U-IPSまたはPS-FFSディスプレイである請求項
17に記載の電気光学的ディスプレイ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、1種類以上の式Iの化合物および1種類以上の式STの化合物を含む液晶媒体に関する。
【0002】
【化1】
式中、
R
1およびR
1*は、それぞれ互いに独立に、H、1~15個のC原子を有するアルキルまたはアルコキシ基を表し、ただし加えて、これらの基における1個以上のCH
2基は、それぞれ互いに独立に、O原子が互いに直接連結しないようにして、-C≡C-、-CF
2O-、-OCF
2-、-CH=CH-、
【0003】
【化2】
-O-、-CO-O-、-O-CO-で置き換えられていてもよく、加えて該基中、1個以上のH原子はハロゲンで置き換えられていてもよく、
A
1およびA
1*は、それぞれ互いに独立に、
a)1,4-シクロヘキセニレンまたは1,4-シクロヘキシレン基、ただし1個または2個の隣接しないCH
2基は、-O-または-S-で置き換えられてよく、
b)1,4-フェニレン基、ただし1個または2個のCH基は、Nで置き換えられてよく、
c)ピペリジン-1,4-ジイル、1,4-ビシクロ[2.2.2]オクチレン、ナフタレン-2,6-ジイル、デカヒドロナフタレン-2,6-ジイル、1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-2,6-ジイル、フェナントレン-2,7-ジイルおよびフルオレン-2,7-ジイルの群からの基を表し、
ただし基a)、b)およびc)は、ハロゲン原子で一置換または多置換されてよく、
Z
1およびZ
1*は、それぞれ互いに独立に、-CO-O-、-O-CO-、-CF
2O-、-OCF
2-、-CH
2O-、-OCH
2-、-CH
2-、-CH
2CH
2-、-(CH
2)
4-、-CH=CH-CH
2O-、-C
2F
4-、-CH
2CF
2-、-CF
2CH
2-、-CF=CF-、-CH=CF-、-CF=CH-、-CH=CH-、-C≡C-または単結合を表し、および
L
1およびL
2は、それぞれ互いに独立に、F、Cl、CF
3またはCHF
2を表し、
aおよびbは、それぞれ互いに独立に0または1である。
【0004】
【化3】
式中、
Gは、単結合または1~20個のC原子を有する2価の脂肪族または環式脂肪族基を表す。
【背景技術】
【0005】
このタイプの媒体は、特に、ECB効果を基礎とするアクティブマトリクスアドレスを有する電気光学的ディスプレイ用途、および、IPS(in-plane switching:面内スイッチング)ディスプレイまたはFFS(fringe field switching:フリンジ場スイッチング)ディスプレイ用途に使用できる。
【0006】
電気的制御複屈折の原理、即ち、ECB(electrically controlled birefringence)効果、または、また、DAP(deformation of aligned phases:配向層の変形)効果は、1971年に初めて開示された(M.F.SchieckelおよびK.Fahrenschon、「Deformation of nematic liquid crystals with vertical orientation in electrical fields」、Appl.Phys.Lett.19巻(1971年)、3912頁(非特許文献1))。その後、J.F.Kahn(Appl.Phys.Lett.20巻(1972年)、1193頁(非特許文献2))およびG.LabrunieおよびJ.Robert(J.Appl.Phys.44巻(1973年)、4869頁(非特許文献3))による報文が続いた。
【0007】
J.RobertおよびF.Clerc(SID 80 Digest Techn.Papers(1980年)、30頁(非特許文献4))、J.Duchene(Displays 7巻(1986年)、3頁(非特許文献5))およびH.Schad(SID 82 Digest Techn.Papers(1982年)、244頁(非特許文献6))による報文において、ECB効果を基礎とする高度情報ディスプレイ素子中での使用に適するものとするためには、高い値の弾性定数の比K3/K1、高い値の光学異方性Δn、および、-0.5以下の値の誘電異方性Δεを液晶相が有していなければならないことが示された。ECB効果を基礎とする電気光学的ディスプレイ素子はホメオトロピックなエッジ配向を有している(VA技術、即ち、vertically aligned(垂直配向))。また、誘電的に負の液晶媒体も、所謂IPSまたはFFS効果を使用するディスプレイにおいて使用できる。
【0008】
ECB効果を使用するディスプレイは、所謂VAN(vertically aligned nematic:垂直配向ネマチック)ディスプレイとして、例えば、MVA(multi-domain vertical alignment:マルチドメイン垂直配向、例えば:Yoshide、H.ら、論文3.1:「MVA LCD for Notebook or Mobile PCs(以下省略)」SID 2004 International Symposium、Digest of Technical Papers、XXXV、Book I、第6~9頁(非特許文献7)およびLiu、C.T.ら、論文15.1:「A 46-inch TFT-LCD HDTV Technology(以下省略)」、SID 2004 International Symposium、Digest of Technical Papers、XXXV、Book II、第750~753頁(非特許文献8))、PVA(patterned vertical alignment:パターン化垂直配向、例えば:Kim、Sang Soo、論文15.4:「Super PVA Sets New State-of-the-Art for LCD-TV」、SID 2004 International Symposium、Digest of Technical Papers、XXXV、Book II、第760~763頁(非特許文献9))、ASV(advanced super view:先進スーパーヴュー、例えば:Shigeta、MitzuhiroおよびFukuoka、Hirofumi、論文15.2:「Development of High Quality LCDTV」、SID 2004 International Symposium、Digest of Technical Papers、XXXV、Book II、第754~757頁(非特許文献10))モードにおいて、現在のところ最も重要な液晶ディスプレイの3種類のより最近のタイプの1つとして、特にテレビ用途向けとして、IPS(in-plane switching:面内スイッチング)ディスプレイ(例えば:Yeo、S.D.、論文15.3:「An LC Display for the TV Application」、SID 2004 International Symposium、Digest of Technical Papers、XXXV、Book II、第758および759頁(非特許文献11))および長く知られているTN(twisted nematic:ツイストネマチック)ディスプレイに加えて、確立されてきた。その技術は、一般的な形で、例えば、2004年6月のSoukにおけるSIDセミナーにおいて、セミナーM-6:「Recent Advances in LCD Technology」、セミナー講義ノート、M-6/1~M-6/26(非特許文献12)およびMiller、Ian、SIDセミナー 2004、セミナーM-7:「LCD-Television」、セミナー講義ノート、M-7/1~M-7/32(非特許文献13)において比較されている。オーバードライブによるアドレス方法、例えば:Kim、Hyeon Kyeongら、論文9.1:「A57-in.Wide UXGA TFT-LCD for HDTV Application」、SID 2004 International Symposium、Digest of Technical Papers、XXXV、Book I、第106~109頁(非特許文献14)によって、近年のECBディスプレイの応答時間は既に著しく改良されてきたが、ビデオに対応できる応答時間を達成することは、特に中間調(灰色遮光)のスイッチングにおいて、依然として未だに満足いくほどには解決されていない問題である。
【0009】
この効果を電気光学的ディスプレイ素子中で工業的に応用するには、多数の要求を満足するLC相が必要となる。ここで特に重要なものは、水分、空気、および熱、赤外線、可視および紫外線の放射、直流および交流電界などの物理的影響に対する化学的耐性である。
【0010】
更に、工業的に使用できるLC相は、適切な温度範囲内での液晶中間相および低粘度を有することが要求される。
【0011】
液晶中間相を有する現在までに開示された一連の化合物には、単一の化合物で、これら全ての要求を満たすものは含まれていない。従って、LC相として使用できる物質を得るためには、一般に、2~25種類、好ましくは3~18種類の化合物の混合物を調製する。しかしながら、著しく負の誘電異方性および適切な長期安定性を有する液晶材料がこれまで入手できなかったため、この方法では最適な相を容易に調製することは不可能であった。
【0012】
マトリックス液晶ディスプレイ(MLCディスプレイ:matrix liquid-crystal display)は既知である。個々のピクセルをそれぞれスイッチングするために使用できる非線形素子は、例えば、アクティブ素子(即ち、トランジスター)である。なお、用語「アクティブマトリクス」を使用し、2つのタイプに区別できる:
1.基板としてのシリコンウエハー上のMOS(metal oxide semiconductor:金属酸化物半導体)トランジスター、
2.基板としてのガラス板上の薄膜トランジスター(TFT:thin-film transistor)。
【0013】
タイプ1の場合、使用される電気光学的効果は、通常、動的散乱またはゲスト-ホスト効果である。基板材料として単結晶シリコンを使用すると、種々の部品ディスプレイのモジュール組み立て品の場合であっても接続部において問題が生じる結果となるため、ディスプレイの大きさが制限される。
【0014】
好適であり、より有望なタイプ2の場合、使用される電気光学的効果は、通常、TN効果である。
【0015】
2つの技術に区別される:例えば、CdSeなどの化合物半導体を含むTFT、または、多結晶またはアモルファスシリコンを基礎とするTFTである。後者の技術について、世界的に集中した研究がなされている。
【0016】
TFTマトリクスはディスプレイの一方のガラス板の内面に適用される一方で、他方のガラス板は、その内面に透明な対向電極を有する。ピクセル電極の大きさと比較して、TFTは非常に小さく、事実上、画像に対する悪影響はない。また、この技術は、フルカラー対応のディスプレイにも拡張でき、このディスプレイにおいては、フィルター素子がスイッチ可能なピクセルの各々に対向するように、赤、緑および青フィルターのモザイクが配置されている。
【0017】
MLCディスプレイとの用語は、本明細書において、集積非線形素子を備える任意のマトリクスディスプレイ、即ち、アクティブマトリクスに加えて、バリスターまたはダイオード(MIM、即ち、metal-insulator-metal:金属-絶縁体-金属)などのパッシブ素子を備えるディスプレイも包含する。
【0018】
このタイプのMLCディスプレイは、テレビ用途(例えば、ポケットテレビ)、または、自動車または航空機内での高度情報ディスプレイに特に適している。コントラストの角度依存性および応答時間に関する問題に加えて、MLCディスプレイにおいては、また、液晶混合物の比抵抗が十分に高くないことに起因する問題もある[TOGASHI、S.、SEKIGUCHI、K.、TANABE,H.、YAMAMOTO、E.、SORIMACHI、K.、TAJIMA、E.、WATANABE、H.、SHIMIZU、H.、Proc.Eurodisplay、第84巻、1984年9月、A210~288、「Matrix LCD Controlled by Double Stage Diode Rings」、第141ff頁、パリ(非特許文献15);STROMER、M.、Proc.Eurodisplay、第84巻、1984年9月、「Design of Thin Film Transistors for Matrix Addressing of Television Liquid Crystal Displays」、第145ff頁、パリ(非特許文献16)]。抵抗の低下に伴い、MLCディスプレイのコントラストが劣化する。液晶混合物の比抵抗は、ディスプレイの内部表面との相互作用のために、一般に、MLCディスプレイの寿命にわたって低下するので、ディスプレイが長期の動作期間で許容される抵抗値を有するためには、高い(初期)抵抗が非常に重要である。
【0019】
よって、非常に高い比抵抗を有すると同時に、広い動作温度範囲、短い応答時間および低い閾電圧を有しており、これらのおかげで各種の中間調(灰色遮光)を生成することができるMLCディスプレイに対する強い要求が依然としてある。
【0020】
頻繁に使用されてきたMLC-TNディスプレイの不具合は、それらの比較的低いコントラスト、比較的高い視野角依存性、および、これらのディスプレイにおいて中間調(灰色遮光)を生じさせることが困難なことである。
【0021】
VA、PS-VA、IPS、FFSおよびUB-FFS用途向けの市場は、速い応答時間および非常に高い信頼性を有するLC混合物を模索している。速い応答時間を達成する一つの方策は低い回転粘度を有する高極性のLC材料を同定することで、それらをLC混合物中で使用すると所望の効果が促される。しかしながら、このタイプの高極性LC材料を使用すると信頼性パラメータに対して、特に光に曝露後に悪影響がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0022】
【非特許文献】
【0023】
【文献】M.F.SchieckelおよびK.Fahrenschon、「Deformation of nematic liquid crystals with vertical orientation in electrical fields」、Appl.Phys.Lett.19巻(1971年)、3912頁
【文献】J.F.Kahn、Appl.Phys.Lett.20巻(1972年)、1193頁
【文献】G.LabrunieおよびJ.Robert、J.Appl.Phys.44巻(1973年)、4869頁
【文献】J.RobertおよびF.Clerc、SID 80 Digest Techn.Papers(1980年)、30頁
【文献】J.Duchene、Displays 7巻(1986年)、3頁
【文献】H.Schad、SID 82 Digest Techn.Papers(1982年)、244頁
【文献】Yoshide、H.ら、論文3.1:「MVA LCD for Notebook or Mobile PCs(以下省略)」SID 2004 International Symposium、Digest of Technical Papers、XXXV、Book I、第6~9頁
【文献】Liu、C.T.ら、論文15.1:「A 46-inch TFT-LCD HDTV Technology(以下省略)」、SID 2004 International Symposium、Digest of Technical Papers、XXXV、Book II、第750~753頁
【文献】Kim、Sang Soo、論文15.4:「Super PVA Sets New State-of-the-Art for LCD-TV」、SID 2004 International Symposium、Digest of Technical Papers、XXXV、Book II、第760~763頁
【文献】Shigeta、MitzuhiroおよびFukuoka、Hirofumi、論文15.2:「Development of High Quality LCDTV」、SID 2004 International Symposium、Digest of Technical Papers、XXXV、Book II、第754~757頁
【文献】Yeo、S.D.、論文15.3:「An LC Display for the TV Application」、SID 2004 International Symposium、Digest of Technical Papers、XXXV、Book II、第758および759頁
【文献】セミナーM-6:「Recent Advances in LCD Technology」、セミナー講義ノート、M-6/1~M-6/26
【文献】Miller、Ian、SIDセミナー 2004、セミナーM-7:「LCD-Television」、セミナー講義ノート、M-7/1~M-7/32
【文献】Kim、Hyeon Kyeongら、論文9.1:「A57-in.Wide UXGA TFT-LCD for HDTV Application」、SID 2004 International Symposium、Digest of Technical Papers、XXXV、Book I、第106~109頁
【文献】TOGASHI、S.、SEKIGUCHI、K.、TANABE,H.、YAMAMOTO、E.、SORIMACHI、K.、TAJIMA、E.、WATANABE、H.、SHIMIZU、H.、Proc.Eurodisplay、第84巻、1984年9月、A210~288、「Matrix LCD Controlled by Double Stage Diode Rings」、第141ff頁、パリ
【文献】STROMER、M.、Proc.Eurodisplay、第84巻、1984年9月、「Design of Thin Film Transistors for Matrix Addressing of Television Liquid Crystal Displays」、第145ff頁、パリ
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0024】
本発明は、特に、モニターおよびテレビ用途向けで、ECB、UB-FFS、IPSまたはFFS効果を基礎とし、上で示した不具合を有していないか、低減された程度にのみ有する液晶混合物を提供する目的を基礎とする。特に、また、極度の高温および極度の低温においてもモニターおよびテレビが動作し、同時に非常に短い応答時間を有し、同時に改良された信頼性挙動を有し、特に、長い動作時間後に画像の固着を示さないか、著しく低減されていることが保証されなければならない。
【課題を解決するための手段】
【0025】
驚くべきことに適切な安定剤を添加すれば、式Iの化合物の使用を通じて、LC混合物の速い応答時間と同時に良好な安定性を得ることが可能である。液晶媒体において使用するための安定剤は既知であり、例えば国際公開第2016/146245号(特許文献1)に記載されている。ここで具体的に影響を与えることができる信頼性のパラメータは、例えば、UV光への曝露(日照試験)またはLCDのバックライトによる曝露などの光への曝露の前後の電圧保持率である。このタイプの安定剤を使用すれば、光への曝露後の電圧保持率が増加する。
【0026】
よって本発明は、少なくとも1種類の式Iの化合物および1種類以上の式STの化合物を含む液晶媒体に関する。これらの媒体はディスプレイの画像固着または液滴ムラなどの欠陥を示さないか、少なくとも用途によって十分で非常に低減された程度で示す液晶ディスプレイを達成するために特に適している。
【発明の効果】
【0027】
本発明による混合物は、70℃以上、好ましくは75℃以上、特には80℃以上の透明点を有する非常に広いネマチック相範囲と、非常に好ましい値の容量閾値と、比較的高い値の保持率と同時に、-20℃および-30℃における非常に良好な低温安定性と、ならびに、非常に低い回転粘度の値および短い応答時間とを好ましくは示す。本発明による混合物は、更に、回転粘度γ1の改良に加えて、応答時間を改良するための弾性定数K33の比較的高い値を観測できるという事実で際立っている。好ましくは負の誘電異方性を有するLC混合物中で式Iの化合物を使用することで、回転粘度γ1および弾性定数Kiの比が低下する。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明による混合物のいくつかの好ましい実施形態を下に示す。
【0029】
式Iの化合物においてR1およびR1*は、好ましくはそれぞれ互いに独立に、直鎖状のアルコキシ、特に、OCH3、n-C2H5O、n-OC3H7、n-OC4H9、n-OC5H11、n-OC6H13、更にはアルケニル、特に、CH=CH2、CH2CH=CH2、トランス-CH2CH=CHCH3、トランス-CH2CH=CHC2H5、分岐状のアルコキシ、特に、OC3H6CH(CH3)2、およびアルケニルオキシ、特に、OCH=CH2、OCH2CH=CH2、トランス-OCH2CH=CHCH3、トランス-OCH2CH=CHC2H5を表す。
【0030】
R1およびR1*は、特に好ましくはそれぞれ互いに独立に、直鎖状で1~6個のC原子を有するアルコキシ、特に、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシ、ペントキシ、ヘキソキシを表す。
【0031】
式I中のL1およびL2は、好ましくは両者がFを表す。
【0032】
式STにおける基Gの例は、メチレン、エチレンもしくは20個までの炭素原子を有するポリメチレン;または2価基-CH2OCH2-、-CH2CH2OCH2CH2-、-CH2CH2OCH2CH2OCH2CH2-、-CH2C(O)OCH2CH2O(O)CCH2-、-CH2CH2C(O)OCH2CH2O(O)CCH2CH2-、-CH2CH2-C(O)O(CH2)4O(O)C-CH2CH2-、-CH2CH2O(O)C(CH2)4C(O)OCH2CH2-および-CH2CH2O(O)C(CH2)8C(O)OCH2CH2-などの1個もしくは2個のヘテロ原子で中断されているアルキレン基である。
【0033】
またGは、アリーレン-ビス-アルキレン例えば、p-キシリレン、ベンゼン-1,3-ビス(エチレン)、ビフェニル-4,4’-ビス(メチレン)またはナフタレン-1,4-ビス(メチレン)でもよい。
【0034】
最終的には、2-ブテニレン-1,4,2-ブチニレン-1,4または2,4-ヘキサジイニレン-1,6などの4~8個の炭素原子を有するアルケニレンまたはアルキニレンでよい。
【0035】
好ましくは式STの化合物は、式ST-1の化合物から選択される。
【0036】
【化4】
式中、
R
STは、Hまたは1~6個のC原子を有するアルキル、好ましくはHまたはエチルを表し;
tは、0または1であり、および
qは、0、1、2、3、4、5、6、7、8または9である。
【0037】
特に好ましくは式ST-1の化合物は、式ST-1aおよびST-1bの化合物から選択される。
【0038】
【化5】
式中qは、0、1、2、3、4、5、6、7、8または9、好ましくは6、7または8、特に好ましくは7である。
【0039】
式Iの好ましい化合物は、式I-1~I-10の化合物である。
【0040】
【0041】
【化7】
式中、
alkylおよびalkyl
*は、それぞれ互いに独立に、直鎖状で1~6個のC原子を有するアルキル基を表し、alkenylおよびalkenyl
*は、それぞれ互いに独立に、直鎖状で2~6個のC原子を有するアルケニル基を表し、alkoxyおよびalkoxy
*は、それぞれ互いに独立に、直鎖状で1~6個のC原子を有するアルコキシ基を表し、L
1およびL
2は、それぞれ互いに独立に、FまたはClを表す。
【0042】
式I-1~I-10の化合物において、L1およびL2は、好ましくはそれぞれ互いに独立に、FまたはClを表し、特に、L1=L2=Fである。式I-2およびI-6の化合物が特に好ましい。式I-2およびI-6の化合物において、好ましくは、L1=L2=Fである。
【0043】
本発明による混合物は非常に特に好ましくは、下に示す式I-1A、I-2A、I-4A、I-6AおよびI-6Bの化合物の群から選択される少なくとも1種類の化合物を含む。
【0044】
【化8】
非常に特に好ましい混合物は、式I-2.1~I-2.49およびI-6.1~I-6.28の化合物の群から選択される少なくとも1種類の化合物を含む。
【0045】
【0046】
【0047】
【0048】
【0049】
【0050】
【0051】
【0052】
【0053】
【0054】
【化18】
式I-2.1~I-2.49およびI-6-1~I-6-28の化合物において、L
1およびL
2は、好ましくは両者がフッ素を表す。
【0055】
非常に特に好ましい混合物は、下に示す少なくとも1種類の化合物を含む。
【0056】
【0057】
【0058】
【0059】
【化22】
式Iの化合物は、例えば、米国特許出願公開第2005/0258399号明細書および国際公開第02/055463号に記載される通り調製できる。
【0060】
本発明による媒体は、1種類、2種類、3種類または4種類以上、好ましくは、1種類、2種類または3種類の式Iの化合物を好ましくは含む。
【0061】
式Iの化合物は、好ましくは液晶媒体中において混合物全体を基礎として、1重量%以上、好ましくは3重量%以上の量で用いる。1~40重量%、非常に特に好ましくは2~30重量%の1種類以上の式Iの化合物を含む液晶媒体が特に好ましい。
【0062】
式STの化合物の中でも、下式の化合物が特に好ましい。
【0063】
【化23】
式STの化合物は、それぞれ好ましくは、混合物を基礎として0.005~0.5%の量で本発明による液晶混合物中に存在する。
【0064】
本発明による混合物が2種類以上の式STの化合物を含む場合、その濃度は対応して混合物を基礎として2種類の化合物の場合に0.01~1%に増加する。
【0065】
しかしながら本発明による混合物を基礎として式STの化合物の合計割合は、好ましくは2%以下である。
【0066】
本発明による液晶媒体の好ましい実施形態を下に示す。
【0067】
a)式IIA、IIBおよびIICの化合物群から選択される1種類以上の化合物を更に含む液晶媒体。
【0068】
【化24】
式中、
R
2A、R
2BおよびR
2Cは、それぞれ互いに独立に、H、置換されていないか、CNまたはCF
3によって1置換されている、またはハロゲンによって少なくとも1置換されている15個までのC原子を有するアルキルまたはアルケニル基を表し、ただし加えて、これらの基における1個以上のCH
2基は、O原子が互いに直接連結しないようにして、-O-、-S-、
【0069】
【化25】
-C≡C-、-CF
2O-、-OCF
2-、-OC-O-または-O-CO-で置き換えられていてもよく、
L
1~4は、それぞれ互いに独立に、F、Cl、CF
3またはCHF
2を表し、
Z
2およびZ
2’は、それぞれ互いに独立に、単結合、-CH
2CH
2-、-CH=CH-、CF
2O-、-OCF
2-、-CH
2O-、-OCH
2-、-COO-、-OCO-、-C
2F
4-、-CF=CF-、-CH=CHCH
2O-を表し、
pは、0、1または2を表し、
qは、0または1を表し、および
vは、1~6を表す。
【0070】
式IIAおよびIIBの化合物において、Z2は、同一または異なる意味を有していてもよい。式IIBの化合物においてZ2およびZ2’は同一または異なる意味を有していてもよい。
【0071】
式IIA、IIBおよびIICの化合物において、R2A、R2BおよびR2Cは、それぞれ好ましくは、1~6個のC原子を有するアルキル、特に、CH3、C2H5、n-C3H7、n-C4H9、n-C5H11を表す。
【0072】
式IIAおよびIIBの化合物において、L1、L2、L3およびL4は、好ましくは、L1=L2=FおよびL3=L4=F、更には、L1=FおよびL2=Cl、L1=ClおよびL2=F、L3=FおよびL4=Cl、L3=ClおよびL4=Fを表す。式IIAおよびIIBにおいて、Z2およびZ2’は、好ましくは、それぞれ互いに独立に、単結合、更には、-C2H4-の架橋を表す。
【0073】
式IIBにおいてZ2=-C2H4-または-CH2O-の場合、Z2’は、好ましくは、単結合であり、また、Z2’=-C2H4-または-CH2O-の場合、Z2は、好ましくは、単結合である。式IIAおよびIIBの化合物において、(O)CvH2v+1は、好ましくは、OCvH2v+1、更には、CvH2v+1を表す。式IICの化合物において、(O)CvH2v+1は、好ましくは、CvH2v+1を表す。式IICの化合物において、L3およびL4は、好ましくは、それぞれFを表す。
【0074】
式IIA、IIBおよびIICの好ましい化合物を下に示す。
【0075】
【0076】
【0077】
【0078】
【0079】
【0080】
【0081】
【0082】
【化33】
式中、
alkylおよびalkyl
*は、それぞれ互いに独立に、1~6個のC原子を有する直鎖状のアルキル基を表し、
alkenylおよびalkenyl
*は、それぞれ互いに独立に、2~6個のC原子を有する直鎖状のアルケニル基を表す。
【0083】
本発明による特に好ましい混合物は、式IIA-2、IIA-8、IIA-14、IIA-26、IIA-28、IIA-33、IIA-39、IIA-45、IIA-46、IIA-47、IIA-50、IIB-2、IIB-11、IIB-16およびIIC-1の1種類以上の化合物を含む。
【0084】
混合物全体における式IIAおよび/またはIIBの化合物の割合は、好ましくは少なくとも20重量%である。
【0085】
本発明による特に好ましい媒体は、式IIC-1の少なくとも1種類の化合物を、好ましくは、3重量%超、特に、5重量%超、特に好ましくは、5~25重量%の量で含む。
【0086】
【化34】
式中、alkylおよびalkyl
*は上で示される意味を有する。
【0087】
b)1種類以上の式IIIの化合物を追加的に含む液晶媒体。
【0088】
【化35】
式中、
R
31およびR
32は、それぞれ互いに独立に、12個までのC原子を有する直鎖状のアルキル、アルコキシ、アルケニル、アルコキシアルキルまたはアルコキシ基を表し、および
【0089】
【化36】
Z
3は、単結合、-CH
2CH
2-、-CH=CH-、-CF
2O-、-OCF
2-、-CH
2O-、-OCH
2-、-COO-、-OCO-、-C
2F
4-、-C
4H
8-、-CF=CF-を表す。
【0090】
式IIIの好ましい化合物を下に示す。
【0091】
【化37】
式中、
alkylおよびalkyl
*は、それぞれ互いに独立に、1~6個のC原子を有する直鎖状のアルキル基を表す。
【0092】
本発明による媒体は、好ましくは、式IIIaおよび/または式IIIbの少なくとも1種類の化合物を含む。
【0093】
混合物全体における式IIIの化合物の割合は、好ましくは、少なくとも5重量%である。
【0094】
c)下の式の化合物を、好ましくは、5重量%以上、特に10重量%以上の総量で追加的に含む液晶媒体。
【0095】
【化38】
下の化合物(頭字語:CC-3-V1)を好ましくは2~15重量%の量で含む本発明による混合物が、更に好ましい。
【0096】
【化39】
好ましい混合物は、5~60重量%、好ましくは10~55重量%、特に20~50重量%の下式の化合物(頭字語:CC-3-V)を含む。
【0097】
【0098】
【化41】
、および下式の化合物(頭字語:CC-3-V1)
【0099】
【化42】
を好ましくは10~60重量%の量で含む混合物が更に好ましい。
【0100】
d)1種類以上の以下の式の4環式化合物を追加的に含む液晶媒体。
【0101】
【0102】
【化44】
式中、
R
7~10は、それぞれ互いに独立に、請求項5でR
2Aに示される意味の1つを有し、
wおよびxは、それぞれ互いに独立に、1~6を表す。
【0103】
式V-9の少なくとも一方の化合物を含む混合物が特に好ましい。
【0104】
e)式Y-1~Y-6の1種類以上の化合物を追加的に含む液晶媒体。
【0105】
【化45】
式中、R
14~R
19は、それぞれ互いに独立に、1~6個のC原子を有するアルキルまたはアルコキシ基を表し;zおよびmは、それぞれ互いに独立に、1~6を表し;xは、0、1、2または3を表す。
【0106】
本発明による媒体は、特に好ましくは、式Y-1~Y-6の1種類以上の化合物を、好ましくは、5重量%以上の量で含む。
【0107】
f)式T-1~T-21の1種類以上のフッ素化されたターフェニル類を追加的に含む液晶媒体。
【0108】
【0109】
【0110】
【化48】
式中、
Rは1~6個のC原子を有する直鎖状のアルキルまたはアルコキシ基を表し、m=0、1、2、3、4、5または6であり、nは、0、1、2、3または4を表す。
【0111】
Rは、好ましくは、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシ、ペントキシを表す。
【0112】
本発明による媒体は、好ましくは、式T-1~T-21のターフェニル類を、2~30重量%、特に5~20重量%の量で含む。
【0113】
式T-1、T-2、T-4、T-20およびT-21の化合物が特に好ましい。これらの化合物において、Rは、好ましくは、それぞれ1~5個のC原子を有するアルキル、更には、アルコキシを表す。式T-20の化合物において、Rは、好ましくは、アルキルまたはアルケニル、特に、アルキルを表す。式T-21の化合物において、Rは、好ましくは、アルキルを表す。
【0114】
混合物のΔn値が0.1以上に意図されている場合、ターフェニル類が、好ましくは、本発明による混合物において用いられる。好ましい混合物は、化合物群T-1~T-22より選択される1種類以上のターフェニル化合物を2~20重量%で含む。
【0115】
g)式B-1~B-3の1種類以上のビフェニル類を追加的に含む液晶媒体。
【0116】
【化49】
式中、
alkylおよびalkyl
*は、それぞれ互いに独立に、1~6個のC原子を有する直鎖状のアルキル基を表し、および
alkenylおよびalkenyl
*は、それぞれ互いに独立に、2~6個のC原子を有する直鎖状のアルケニル基を表す。
【0117】
混合物全体における式B-1~B-3のビフェニル類の割合は、好ましくは、少なくとも3重量%、特に5重量%以上である。
【0118】
式B-1~B-3の化合物のなかでも、式B-2の化合物が特に好ましい。
【0119】
特に好ましいビフェニル類は以下である。
【0120】
【化50】
式中、alkyl
*は、1~6個のC原子を有するアルキル基を表す。本発明による媒体は、特に好ましくは、式B-1aおよび/またはB-2cの1種類以上の化合物を含む。
【0121】
h)式Z-1~Z-7の少なくとも1種類の化合物を含む液晶媒体。
【0122】
【化51】
式中、Rおよびalkylは、上に示す意味を有する。
【0123】
i)式O-1~O-18の少なくとも1種類の化合物を追加的に含む液晶媒体。
【0124】
【0125】
【化53】
式中、R
1およびR
2は、R
2Aに示される意味を有する。R
1およびR
2は、好ましくは、それぞれ互いに独立に、直鎖状のアルキルまたはアルケニルを表す。
【0126】
好ましい媒体は、式O-1、O-3、O-4、O-6、O-7、O-10、O-11、O-12、O-14、O-15、O-16および/またはO-17の1種類以上の化合物を含む。
【0127】
本発明による混合物は、非常に特に好ましくは、式O-10、O-12、O-16および/またはO-17の化合物を、特に、5~30%の量で含む。
【0128】
式O-10およびO-17の好ましい化合物を、下に示す。
【0129】
【化54】
本発明による媒体は、特に好ましくは、式O-10aおよび/または式O-10bの3環式化合物を、1種類以上の式O-17a~O-17dの2環式化合物と組み合わせて含む。式O-17a~O-17dの2環式化合物より選択される1種類以上の化合物と組み合わせて式O-10aおよび/またはO-10bの化合物の全割合は、5~40%、非常に特に好ましくは、15~35%である。
【0130】
非常に特に好ましい混合物は、化合物O-10aおよびO-17aを含む。
【0131】
【化55】
化合物O-10aおよびO-17aは、好ましくは、混合物全体を基礎として15~35%、特に好ましくは15~25%、特に好ましくは18~22%の濃度において、混合物中に存在する。
【0132】
非常に特に好ましい混合物は、化合物O-10bおよびO-17aを含む。
【0133】
【化56】
化合物O-10bおよびO-17aは、好ましくは、混合物全体を基礎として15~35%、特に好ましくは15~25%、特に好ましくは18~22%の濃度において、混合物中に存在する。
【0134】
非常に特に好ましい混合物は、以下の3種類の化合物を含む。
【0135】
【化57】
化合物O-10a、O-10bおよびO-17aは、好ましくは、混合物全体を基礎として15~35%、特に好ましくは15~25%、特に好ましくは18~22%の濃度において、混合物中に存在する。
【0136】
好ましい混合物は、以下の化合物群から選択される少なくとも1種類の化合物を含む。
【0137】
【化58】
式中、R
1およびR
2は、上で示される意味を有する。好ましくは化合物O-6、O-7およびO-17において、R
1は、それぞれ1~6個または2~6個のC原子を有するアルキルまたはアルケニルを表し、R
2は、2~6個のC原子を有するアルケニルを表す。
【0138】
好ましい混合物は、式O-6a、O-6b、O-7a、O-7b、O-17e、O-17f、O-17gおよびO-17hの少なくとも1種類の化合物を含む。
【0139】
【化59】
式中、alkylは1~6個のC原子を有するアルキル基を表す。
【0140】
式O-6、O-7およびO-17e~hの化合物は、好ましくは、1~40重量%、好ましくは2~35重量%および非常に特に好ましくは2~30重量%の量で本発明による混合物中に存在する。
【0141】
j)本発明による好ましい液晶媒体は、例えば、式N-1~N-5の化合物などのテトラヒドロナフチルまたはナフチル単位を含有する1種類以上の物質を含む。
【0142】
【化60】
式中、R
1NおよびR
2Nは、それぞれ互いに独立に、R
2Aに示される意味を有し、好ましくは、直鎖状のアルキル、直鎖状のアルコキシまたは直鎖状のアルケニルを表し、および
Z
1およびZ
2は、それぞれ互いに独立に、-C
2H
4-、-CH=CH-、-(CH
2)
4-、-(CH
2)
3O-、-O(CH
2)
3-、-CH=CHCH
2CH
2-、-CH
2CH
2CH=CH-、-CH
2O-、-OCH
2-、-COO-、-OCO-、-C
2F
4-、-CF=CF-、-CF=CH-、-CH=CF-、-CF
2O-、-OCF
2-、-CH
2-または単結合を表す。
【0143】
k)好ましい混合物は、式BCのジフルオロジベンゾクロマン化合物、式CRのクロマン化合物、式PH-1およびPH-2のフッ素化フェナントレン化合物ならびに式BF-1およびBF-2のフッ素化ジベンゾフラン化合物から成る群より選択される1種類以上の化合物を含む。
【0144】
【化61】
式中、
R
B1、R
B2、R
CR1、R
CR2、R
1、R
2は、それぞれ互いに独立に、R
2Aの意味を有し、cは0、1または2であり、dは1または2である。R
1およびR
2は、好ましくは互いに独立に、1~6個のC原子を有するアルキルまたはアルコキシを表す。式BF-1およびBF-2の化合物は、式Iの1種類以上の化合物と同一であってはならない。
【0145】
本発明による混合物は、好ましくは、式BC、CR、PH-1、PH-2および/またはBFの化合物を、3~20重量%の量、特に3~15重量%の量で含む。
【0146】
式BCおよびCRの特に好ましい化合物は、式BC-1~BC-7およびCR-1~CR-5の化合物である。
【0147】
【0148】
【化63】
式中、
alkylおよびalkyl
*は、それぞれ互いに独立に、1~6個のC原子を有する直鎖状のアルキル基を表し、および
alkenylおよびalkenyl
*は、それぞれ互いに独立に、2~6個のC原子を有する直鎖状のアルケニル基を表す。
【0149】
式BC-2、BF-1および/またはBF-2の1種類、2種類または3種類の化合物を含む混合物が、非常に特に好ましい。
【0150】
l)好ましい混合物は、式Inの1種類以上のインダン化合物を含む。
【0151】
【化64】
式中、
R
11、R
12、R
13は、それぞれ互いに独立に、1~6個のC原子を有する直鎖状のアルキル、アルコキシ、アルコキシアルキルまたはアルケニル基を表し、
R
12およびR
13は、追加してハロゲン、好ましくはFを表し、
【0152】
【化65】
を表し、
iは、0、1または2を表す。
【0153】
式Inの好ましい化合物は、下に示される式In-1~In-16の化合物である。
【0154】
【0155】
【化67】
式In-1、In-2、In-3およびIn-4の化合物が特に好ましい。
【0156】
本発明による混合物において、式Inおよびサブ式In-1~In-16の化合物は、好ましくは、5重量%以上、特に5~30重量%、非常に特に好ましくは5~25重量%の濃度で用いる。
【0157】
m)好ましい混合物は、式L-1~L-11の1種類以上の化合物を追加的に含む。
【0158】
【0159】
【化69】
式中、
R、R
1およびR
2は、それぞれ互いに独立に、請求項5でR
2Aに示される意味を有し、alkylは1~6個のC原子を有するアルキル基を表す。sは1または2を表す。
【0160】
式L-1およびL-4、特にL-4の化合物が特に好ましい。
【0161】
式L-1~L-11の化合物は、好ましくは、5~50重量%、特に5~40重量%、非常に特に好ましくは10~40重量%の濃度で用いる。
【0162】
特に好ましい混合物の考え方を下に示す。(使用される頭字語は、表Aにおいて説明される。nおよびmは、それぞれ互いに独立に、1~15、好ましくは1~6を表す。)
本発明による混合物は、好ましくは、
・L1=L2=FおよびR1=R1*=アルコキシである式Iの1種類以上の化合物と、
・1種類以上の式ST-1の化合物と、
・CPY-n-Om、特に、CPY-2-O2、CPY-3-O2および/またはCPY-5-O2を、混合物全体を基礎として、好ましくは5%より多く、特に10~30%の濃度で、
および/または
・CY-n-Om、好ましくはCY-3-O2、CY-3-O4、CY-5-O2および/またはCY-5-O4を、混合物全体を基礎として、好ましくは5%より多く、特に15~50%の濃度で、
および/または
・CCY-n-Om、好ましくは、CCY-4-O2、CCY-3-O2、CCY-3-O3、CCY-3-O1および/またはCCY-5-O2を、混合物全体を基礎として、好ましくは5%より多く、特に10~30%の濃度で、
および/または
・CLY-n-Om、好ましくは、CLY-2-O4、CLY-3-O2および/またはCLY-3-O3を、混合物全体を基礎として、好ましくは5%より多く、特に10~30%の濃度で、
含む。
【0163】
下を含む本発明による混合物が更に好ましい(nおよびmは、それぞれ互いに独立に、1~6を表す。):
・化合物B-2O-O5を、1~15重量%、より好ましくは2~12重量%、特に好ましくは3~10重量%、非常に特に好ましくは4~8重量%の範囲内の濃度で、
・式ST、好ましくは式ST-1a-1および/またはST-1b-1の化合物を、0.005%~1%、より好ましくは0.01%~0.05%、特に好ましくは0.025%~0.150%、非常に特に好ましくは0.030%~0.100%の範囲内の合計濃度で、
・CPY-n-OmおよびCY-n-Omを、混合物全体を基礎として、好ましくは、10~80%の濃度で、
および/または
・CPY-n-OmおよびCK-n-Fを、混合物全体を基礎として、好ましくは、10~70%の濃度で、
および/または
・CPY-n-OmおよびPY-n-Om、好ましくはCPY-2-O2および/またはCPY-3-O2およびPY-3-O2を、混合物全体を基礎として好ましくは、10~45%の濃度で、
および/または
・CPY-n-OmおよびCLY-n-Omを、混合物全体を基礎として好ましくは、10~80%の濃度で、
および/または
・CCVC-n-V、好ましくはCCVC-3-Vを、混合物全体を基礎として好ましくは、2~10%の濃度で、
および/または
・CCC-n-V、好ましくはCCC-2-Vおよび/またはCCC-3-Vを、混合物全体を基礎として好ましくは、2~10%の濃度で、
および/または
・CC-V-Vを、混合物全体を基礎として好ましくは、5~50%の濃度で
含む。
【0164】
本発明の特に好ましい実施形態において媒体は、化合物B-2O-O5を2~8%の範囲内の濃度で、化合物CC-3-Vを25~35%の範囲内の濃度で、および化合物CC-3-V1を8~12%の範囲内の濃度で含む。
【0165】
本発明は、更に、請求項1~11のいずれか1項に記載の液晶媒体を誘電体として含有することを特徴とし、ECB、VA、PS-VA、PA-VA、IPS、PS-IPS、FFSまたはPS-FFSまたはPS-FFS効果を基礎としてアドレスするアクティブマトリクスを有する電気光学的ディスプレイに関する。
【0166】
本発明による液晶媒体は、好ましくは、-20℃以下~70℃以上、特に好ましくは-30℃以下~80℃以上、非常に特に好ましくは-40℃以下~90℃以上のネマチック相を有する。
【0167】
本明細書において、表現「ネマチック相を有する」は、一方で、対応する温度における低温においてスメクチック相および結晶化が確認されず、他方で、ネマチック相から加熱しても依然として透明化が起きないことを意味する。低温における検討は対応する温度において流動粘度計中で行なわれ、電気光学的な使用に対応する層厚を有する試験用セル中において少なくとも100時間保存して確認する。対応する試験用セル中において-20℃の温度における保存安定性が1000時間以上の場合、媒体はこの温度において安定であるとする。-30℃および-40℃の温度において、対応する時間は、それぞれ500時間および250時間である。高温においては、毛細管中で従来法によって透明点を測定する。
【0168】
液晶混合物は、好ましくは、少なくとも60Kのネマチック相範囲と、20℃において最大で30mm2・s-1の流動粘度ν20を有する。
【0169】
液晶混合物における複屈折率Δnの値は、一般に、0.07および0.16の間、好ましくは、0.08および0.13の間である。
【0170】
本発明による液晶混合物は、-0.5~-8.0、特に-2.5~-6.0のΔεを有し、ただしΔεは誘電異方性を表す。20℃における回転粘度γ1は、好ましくは、150mPa・s以下、特に120mPa・s以下である。
【0171】
本発明による液晶媒体は、閾電圧(V0)について比較的低い値を有する。それらは、好ましくは1.7V~3.0V、特に好ましくは2.5V以下、非常に特に好ましくは2.3V以下の範囲内である。
【0172】
本発明においては、用語「閾電圧」は、他に明示しない限り、フレデリックス閾値とも呼ばれる容量閾値(V0)に関する。
【0173】
加えて、本発明による液晶媒体は、液晶セル中において、電圧保持率に対して高い値を有する。
【0174】
一般に、低いアドレス電圧または閾電圧を有する液晶媒体は、より高いアドレス電圧または閾電圧を有するものよりも低い電圧保持率を示し、逆もそうである。
【0175】
本発明において、用語「誘電的に正の化合物」はΔε>1.5を有する化合物を表し、用語「誘電的に中性の化合物」は-1.5≦Δε≦1.5を有するものを表し、用語「誘電的に負の化合物」はΔε<-1.5を有するものを表す。本明細書において、化合物の誘電異方性は10%の化合物を液晶ホストに溶解して決定され、それぞれの場合で20μmの層厚でホメオトロピックおよびホモジニアス表面配向を有する少なくとも1つの試験用セル中で1kHzにおいて、結果として得られる混合物のキャパシタンスを決定する。測定電圧は典型的には0.5V~1.0Vであるが、検討されるそれぞれの液晶混合物の容量閾値よりも常に低くする。
【0176】
本発明において示される全ての温度の値は℃である。
【0177】
本発明による混合物は、例えば、VAN、MVA、(S)-PVA、ASV、PSA(polymer sustained VA:ポリマー維持VA)およびPS-VA(polymer stabilized VA:ポリマー安定化VA)などの全てのVA-TFT用途に適切である。それらは、更に、負のΔεを有するIPS(in-plane switching:面内スイッチング)およびFFS(fringe field switching:フリンジ場スイッチング)用途に適切である。
【0178】
本発明によるディスプレイにおけるネマチック液晶混合物は、一般に、それ自身、1種類以上の個々の化合物から成る2種類の成分AおよびBを含む。
【0179】
成分Aは著しい負の誘電異方性を有し、ネマチック相へ-0.5以下の誘電異方性を与える。1種類以上の式Iの化合物に加え、成分Aは、好ましくは、式IIA、IIBおよび/またはIICの化合物、更に、1種類以上の式O-17の化合物を含む。
【0180】
成分Aの割合は、好ましくは、45および100%の間、特に60および100%の間である。
【0181】
成分Aのためには、-0.8以下のΔεの値を有する1種類(またはそれ以上)の個々の化合物(1種類または複数種類)が好ましくは選択される。混合物全体における割合Aが小さくなるほど、この値をより負としなければならない。
【0182】
成分Bは明瞭なネマトゲン性、および、20℃において30mm2・s-1以下、好ましくは25mm2・s-1以下の流動粘度を有する。
【0183】
多数の適切な材料が文献より当業者に知られている。式O-17の化合物が特に好ましい。
【0184】
成分Bにおける特に好ましい個々の化合物は、20℃において18mm2・s-1以下、好ましくは12mm2・s-1以下の流動粘度を有する非常に低粘度のネマチック液晶である。
【0185】
成分Bはモノトロピック性またはエナンチオトロピック性のネマチックであり、スメクチック相を有さず、液晶混合物において非常に低い温度までスメクチック相の発生を防止することができる。例えば、高いネマトゲン性の各種材料をスメクチック液晶混合物に加える場合、達成されるスメクチック相の抑制の程度を通して、これらの材料のネマトゲン性を比較できる。
【0186】
また混合物は、1.5以上のΔεの誘電異方性を有する化合物を含む成分Cを含んでも構わない。所謂これらの正の化合物は、一般に、混合物全体を基礎として20重量%以下の量で、負の誘電異方性の混合物中に存在する。
【0187】
1種類以上の式Iの化合物に加えて、これらの相は、好ましくは、4~15種類、特に5~12種類、特に好ましくは10種類未満の式IIA、IIBおよび/またはIICの化合物、および任意成分として1種類以上のO-17の化合物を含む。
【0188】
式Iの化合物および式IIA、IIBおよび/またはIICおよび任意成分としてO-17の化合物に加え、他の構成成分も、また、例えば、混合物全体の45%まで、しかし、好ましくは35%まで、特に10%までの量で存在してもよい。
【0189】
他の構成成分は、好ましくは、ネマチックまたはネマトゲン性の物質、特に、アゾキシベンゼン類、ベンジリデンアニリン類、ビフェニル類、ターフェニル類、安息香酸フェニルまたはシクロヘキシル類、シクロヘキサンカルボン酸フェニルまたはシクロヘキシル類、フェニルシクロヘキサン類、シクロヘキシルビフェニル類、シクロヘキシルシクロヘキサン類、シクロヘキシルナフタレン類、1,4-ビスシクロヘキシルビフェニル類またはシクロヘキシルピリミジン類、フェニルまたはシクロヘキシルジオキサン類、ハロゲン化されていてもよいスチルベン類、ベンジルフェニルエーテル類、トラン類および置換桂皮酸エステル類に分類される既知の物質より選択される。
【0190】
このタイプの液晶相の構成成分として適する最も重要な化合物は、式IVで特徴付けることができる。
【0191】
【化70】
式中、LおよびEは、それぞれ、1,4-二置換ベンゼンおよびシクロヘキサン環、4,4’-二置換ビフェニル、フェニルシクロヘキサンおよびシクロへキシルシクロヘキサン構造、2,5-二置換ピリミジンおよび1,3-ジオキサン環、2,6-二置換ナフタレン、ジおよびテトラヒドロナフタレン、キナゾリンおよびテトラヒドロキナゾリンにより形成される群からの炭素またはヘテロ環式環構造を表し、
Gは、-CH=CH-、-N(O)=N-、-CH=CQ-、-CH=N(O)-、-C≡C-、-CH
2-CH
2-、-CO-O-、-CH
2-O-、-CO-S-、-CH
2-S-、-CH=N-、-COO-Phe-COO-、-CF
2O-、-CF=CF-、-OCF
2-、-OCH
2-、-(CH
2)
4-、-(CH
2)
3O-またはC-C単結合を表し、Qはハロゲン、好ましくは塩素、または、-CNを表し、および、R
20およびR
21は、それぞれ、18個までの、好ましくは8個までの炭素原子を有するアルキル、アルケニル、アルコキシ、アルコキシアルキルまたはアルコキシカルボニルオキシを表し、あるいは、これらの基の1つは、CN、NC、NO
2、NCS、CF
3、SF
5、OCF
3、F、ClまたはBrを表す。
【0192】
これらの化合物の殆どにおいて、R20およびR21は互いに異なっており、これらの基の一方は、通常、アルキルまたはアルコキシ基である。また、提案された置換基の他に変種も一般的である。多くのそのような物質またはそれらの混合物も商業的に入手できる。全てのこれらの物質は、文献より既知の方法によって調製できる。
【0193】
また、当業者には言うまでもなく、本発明によるVA、IPSまたはFFS混合物は、例えば、H、N、O、ClおよびFが対応する同位体で置き換えられた化合物も含んでも構わない。
【0194】
例えば、米国特許第6,861,107号明細書で開示される通りの重合性化合物、いわゆる反応性メソゲン(RM:reactive mesogen)を、混合物を基礎として好ましくは0.01~5重量%、特に好ましくは0.2~2重量%の濃度で、本発明による混合物に加えてもよい。また、これらの混合物は、例えば、米国特許第6,781,665号明細書に記載される通りの開始剤を含んでもよい。開始剤、例えば、BASF社製のIrganox-1076を、好ましくは、重合性化合物を含む混合物に0~1%の量で加える。このタイプの混合物は、反応性メソゲンの重合が液晶混合物中において起こるよう意図されている所謂ポリマー安定化VAモード(PS-VA:polymer-stabilised VA)またはPSA(polymer sustained VA:ポリマー維持VA)用に使用できる。このための前提条件は、LCホストの液晶化合物が反応性メソゲンの重合条件下、即ち一般に320~360nmの波長範囲内のUVに曝露した際に反応しないことである。例えばCC-3-Vなどのアルケニル側鎖を含有する液晶化合物は、RMに対する重合条件(UV重合)下で反応する挙動を示さない。
【0195】
本発明による混合物は更に例えば、安定剤、抗酸化剤、UV吸収剤、ナノ粒子、ミクロ粒子など式STのもの以外の従来の添加剤を含んでよい。
【0196】
本発明による液晶ディスプレイの構造は、例えば、欧州特許出願公開第0 240 379号明細書に記載される通りの通常の構成に対応する。
【0197】
以下の例は本発明を限定することなく、本発明を説明することを意図する。上および下で、パーセントのデータは、重量パーセントを表し、全ての温度はセルシウス度で示される。
【0198】
本特許出願を通して、1,4-シクロへキシレン環および1,4-フェニレン環を以下の通り表記する。
【0199】
【化71】
シクロヘキシレン環は、トランス-1,4-シクロヘキシレン環である。
【0200】
本特許出願全体および実施例において、液晶化合物の構造は頭字語によって示される。他に示されない限り、化学式の変換は、表1~3に従って実施される。全ての基CnH2n+1、CmH2m+1およびCm’H2m’+1またはCnH2nおよびCmH2mは、それぞれの場合で、n、m、m’またはz個のC原子をそれぞれ有する直鎖状のアルキル基またはアルキレン基である。n、m、m’zは、それぞれ互いに独立に、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11または12、好ましくは1、2、3、4、5または6を表す。表1において、それぞれの化合物の環要素を略号とし、表2において、架橋要素を掲載し、表3において、化合物の左または右側鎖についての記号の意味を示す。
【0201】
【0202】
【0203】
【0204】
【表4】
式Iの1種類以上の化合物に加えて本発明による混合物は好ましくは、表Aからの下に述べる化合物の1種類以上の化合物を含む。
【0205】
<表A>
以下の略称を使用する:
(n、m、m’、z:それぞれ互いに独立に、1、2、3、4、5または6;(O)CmH2m+1はOCmH2m+1またはCmH2m+1を意味する)。
【0206】
【0207】
【0208】
【0209】
【0210】
【0211】
【0212】
【0213】
【0214】
【0215】
【0216】
【0217】
【0218】
【0219】
【0220】
【0221】
【0222】
【0223】
【表22】
本発明によって使用できる液晶混合物は、それ自体従来の様式で調製される。一般に、より少量で使用される成分の所望の量を、主要な組成を構成する成分中で、有利には昇温して溶解する。また、有機溶媒、例えば、アセトン、クロロホルムまたはメタノール中の成分の溶液を混合し、完全に混合後に、例えば、蒸留によって溶媒を再び除去することも可能である。
【0224】
適切な添加剤を利用することで、本発明による液晶相を、例えば、これまで開示されてきたECB、VAN、IPS、GHまたはASM-VA LCDディスプレイの任意のタイプにおいて液晶相を用いることができるように改変できる。
【0225】
また、誘電体は、例えば、UV吸収剤、抗酸化剤、ナノ粒子およびフリーラジカル補足剤などの当業者に既知で文献に記載される更なる添加剤を含んでもよい。例えば、0~15%の多色性色素、例えばフェノール類、HALS(hindered amine light stabiliser、ヒンダードアミン光安定剤)などの安定剤、またはキラルドーパントを加えることができる。本発明による混合物に適切な安定剤は、特に、表Cに列記されるものである。
【0226】
例えば、0~15%の多色性色素を加えることができ、更に、導電性塩、好ましくは、4-ヘキソキシ安息香酸エチルジメチルドデシルアンモニウム、テトラフェニルボラン酸テトラブチルアンモニウムまたはクラウンエーテル類の錯塩(例えば、Hallerら、Mol.Cryst.Liq.Cryst.24巻、249~258頁(1973年)参照)を、導電性を改良するために添加することができ、または、誘電異方性、粘度および/またはネマチック相の配向を改変するための物質を加えることもできる。このタイプの物質は、例えば、ドイツ国特許出願公開第22 09 127、22 40 864、23 21 632、23 38 281、24 50 088、26 37 430および28 53 728号明細書に記載されている。
【0227】
<表B>
表Bに、本発明による混合物に添加できるドーパントを示す。混合物がドーパントを含む場合、0.01~4重量%、好ましくは0.01~3重量%のドーパントの量で添加する。
【0228】
【表23】
本発明による混合物は、下に与えられる表Cからの少なくとも1種類の安定剤を含む。
【0229】
<表C>
例えば、0~10重量%、好ましくは0.001~5重量%、特には0.001~1重量%の量で本発明による混合物に添加できる式STのものと異なる他の安定剤を下に示す。
【0230】
【0231】
【0232】
【0233】
【0234】
【0235】
【実施例】
【0236】
以下の例は、本発明を制限することなく説明することを意図する。例において、m.p.は融点を摂氏度で表し、Cは液晶物質の透明点を摂氏度で表し;沸点はb.p.で表される。更に:Cは結晶固体状態を表し、Sはスメクチック相を表し(添字は相のタイプを表し)、Nはネマチック状態を表し、Chはコレステリック相を表し、Iは等方相を表し、Tgはガラス転移点を表す。2つの記号の間の数字は、転移温度を摂氏度で示す。
【0237】
式Iの化合物の光学的異方性Δnを決定するために使用されるホスト混合物は、商業的に入手可能な混合物ZLI-4792(メルク社)である。誘電異方性Δεは、入手可能な混合物ZLI-2857を使用して決定する。検討されるべき化合物の物理的データは、検討されるべき化合物を添加し、用いられる化合物を100%に外挿した後におけるホスト混合物の誘電定数の変化より得られる。溶解性にもよるが、一般に、検討されるべき化合物の10%をホスト混合物に溶解する。
【0238】
他に示されない限り、部またはパーセントのデータは、重量部または重量パーセントを表す。
【0239】
上および下において、
V0は、20℃における容量閾電圧[V]を表し、
neは、20℃および589nmにおける異常屈折率を表し、
n0は、20℃および589nmにおける通常屈折率を表し、
Δnは、20℃および589nmにおける光学的異方性を表し、
ε⊥は、20℃および1kHzにおけるダイレクターに垂直な誘電率を表し、
ε∥は、20℃および1kHzにおけるダイレクターに平行な誘電率を表し、
Δεは、20℃および1kHzにおける誘電異方性を表し、
cl.p.,T(N,I)は、透明点[℃]を表し、
γ1は、磁場における回転法によって決定される、20℃で測定される回転粘度[mPa・s]を表し、
K1は、20℃における「スプレイ(splay)」変形に対する弾性定数[pN]を表し、
K2は、20℃における「ツイスト(twist)」変形に対する弾性定数[pN]を表し、
K3は、20℃における「ベンド(bend)」変形に対する弾性定数[pN]を表し、
LTSは、試験セルにおいて決定される低温安定性(ネマチック相)を表す。
【0240】
他に明確に記載されていなければ、例えば、融点T(C,N)、スメクチック相(S)からネマチック相(N)への転移点T(S,N)および透明点T(N,I)など、本出願において示される、全ての温度の値は、摂氏度(℃)で示される。M.p.は、融点を表し、cl.p.は透明点である。更に、Tg=ガラス状態、C=結晶状態、N=ネマチック相、S=スメクチック相およびI=等方相である。これらの記号の間の数字は、転移温度を示す。
【0241】
本発明においては、用語「閾電圧」は、他に明示しない限り、フレデリックス閾値としても知られる容量閾値(V0)に関する。実施例において、一般的で通常なように、光閾値は、10%相対コントラスト(V10)についても示される。
【0242】
容量閾電圧の測定に使用されるディスプレイは、20μmの間隔で離れている2枚の平坦で平行なガラス製外板から成り、それぞれの外板は内側に電極層および最上部にポリイミド配向層を有しており、このポリイミド配向層は、液晶分子のホメオトロピックエッジ配向を生じる。
【0243】
チルト角の測定に使用されるディスプレイは、4μmの間隔で離れている2枚の平坦で平行なガラス製外板から成り、それぞれの外板は内側に電極層および最上部にポリイミド配向層を有しており、2つのポリイミド層は、互いに逆平行にラビングされ液晶分子のホメオトロピックエッジ配向を生じる。
【0244】
他に示さない限りVHRは20℃(VHR20)および100℃のオーブン内で5分後(VHR100)に、商業的に入手可能な装置Model 6254(TOYO社、日本国製)で測定する。使用される電圧は、より正確に示されない限り1Hz~60Hzの範囲内の周波数を有する。
【0245】
VHR測定値の精度は、VHRのそれぞれの値に依存する。精度は値の減少と共に減少する。種々の大きさの範囲内の値の場合で一般に観察される偏差は、以下の表に大きさの順にまとめられる。
【0246】
【表30】
UV照射に対する安定性は、ヘレウス社、独国製の市販装置である「Suntest CPS」で検討される。密閉された試験用セルは追加の加熱なしで明示されない限り、30分および2.0時間照射される。300nm~800nmの波長範囲の照射出力は765W/m
2Vである。いわゆる窓ガラスモードをシミュレートするために、310nmのエッジ波長を有するUV「カットオフ」フィルターが使用される。それぞれ一連の実験において、少なくとも4個の試験用セルをそれぞれの条件について検討し、それぞれの結果を対応する個々の測定値の平均として示す。
【0247】
例えばUV照射またはLCDバックライトによる曝露で通常生じる電圧保持率の低下(ΔVHR)は、以下の式(1)に従い決定される。
【0248】
【数1】
「LTS(low-temperature stability)」とも呼ばれる、低温安定性、即ち、低温において、個々の成分が自発的に結晶化し析出することに対するLC混合物の安定性を検討するために、1gのLC/RM混合物を含有するボトルを-10℃において保管所に置き、混合物が結晶化し析出していないかを、定期的に確認する。
【0249】
抵抗率が計算されるイオン密度は、商業的に入手可能なTOYO社、日本国製LC材料特性測定システムモデル6254を使用し、3.2μmのセルギャップを有するAL16301ポリイミド(JSR社、日本国)を備えるVHR試験用セルを使用して測定される。測定は、60℃または100℃のオーブン中で5分間保存した後に行われる。
【0250】
所謂「HTP(「helical twisting power」、らせんツイスト能)」は、LC媒体中における光学活性またはキラル物質のらせんツイストする能力(μm)を表す。他に示さない限り、20℃の温度において、商業的に入手可能なネマチックLCホスト混合物MLD-6260(メルク社)中においてHTPを測定する。
【0251】
他に明言しない限り、本出願における全ての濃度は、重量パーセントにおいて示され、溶媒を除いた全ての固体または液晶成分を含む、対応する混合物全体に関する。全ての物理的特性は、「Merck Liquid Crystals,Physical Properties of Liquid Crystals(メルク液晶、液晶の物理的特性)」ドイツ国メルク社1997年11月刊に記載される通りに決定され、他に明らかに示さない限り、20℃の温度を適用する。
【0252】
負の誘電異方性を有する以下の混合物例は、例えばIPSおよびFFSディスプレイなどの特に少なくとも1つの平面配向総を有する液晶ディスプレイ、特にUB-FFS(ultra-bright FFS、超輝度FFS)、およびVAディスプレイに適する。
【0253】
<混合物例>
<比較混合物C1>を以下の通り調製する。
【0254】
【表31】
<例C2>
混合物C2は、99.9%の混合物C1および0.1%の式ST-1a-1の安定剤から調製される。
【0255】
<ネマチックホスト混合物N1>を以下の通り調製する。
【0256】
【表32】
<例示混合物M1~M4>
ホスト混合物N1に、安定剤ST-1a-1およびST-1b-1を表1に示す量で添加する。
【0257】
【0258】
【表33】
上の混合物の電圧保持率(VHR:Voltage Holding Ratio)を、上記の通りオーブン内60℃で5分間保存した後に測定した。以下の値が得られた(表2)。
【0259】
【表34】
表2から見て取れる通りVHRは安定化されていないホスト混合物N1と比較して、安定剤ST-1a-1またはST-1b-1を含有する混合物M1~M4に関し有意に改良される。
【0260】
長期信頼性試験はLCテレビパネルにおいて上の混合物で実施される:長期信頼性試験は2つの部分を含む:一方は回転パターン試験であり、他方は更に厳しい所謂NDS試験である。回転パターン試験では種々の交代画像が60℃の保存温度で1000時間、画面上に表示される。
【0261】
NDS試験では画面の半分にモザイクパターンの画像が表示され、60℃の周囲温度で2100時間、画面の他の半分に全面白色画像が表示される。試験後、パネルは画質の変化について視覚的に検査される(表3)。
【0262】
【表35】
安定剤のない混合物C1は、NDS試験に合格しない。混合物C1に安定剤ST-1a-1を添加すると混合物C2が得られ、混合物C2はNDS試験に合格するが、画像固着について中程度の特性しか有さない。ホスト混合物N1もまたNDS試験に合格しないが、式STの安定剤および式Iの化合物を含む本発明による混合物M1は式Iの化合物のない混合物C2と比較して、回転パターン試験およびNDS試験に合格し、改良された画像固着特性も有する。
【0263】
加えて、抵抗率の測定が実施された。結果が表4にまとめられる。
【0264】
【表36】
液晶媒体の場合、高い抵抗率を達成することが基本的に望ましい。表4から全ての混合物がGΩ範囲の十分に高い抵抗率を有することが見て取れ、それが全て液晶ディスプレイの動作に非常によく適している理由である。安定化されていないホスト混合物N1と比較して安定剤ST-1a-1またはST-1b-1を含有する混合物M1~M4の方が、低効率は低い。予想通り抵抗率は、温度が高くなると減少する。
【0265】
理論に縛られることを望むものではなく、まだ完全には評価されていないが、
1)本発明による式Iの化合物および安定剤のない対応する媒体のVHRと同様の高レベルまたは更に高いVHR値を、
2)本発明による式Iの化合物および安定剤のない対応する媒体の低効率の値より低い低効率の値と
を組み合わせることで、画像固着の改良(より低い程度)または画像固着が全くないことさえにも至ると推定される。
【0266】
結果として上のデータは、式Iの化合物および式STの安定剤を含む本発明による液晶媒体が安定化されていないホスト混合物と比較して大幅に改良された信頼性を有することを示す。安定剤のないホストN1が長期NDSパターン試験の条件下で不合格である一方で、予期せぬことに同じ条件の下で、混合物M1は回転パターン試験およびNDSパターン試験に合格し、また改良された短期画像固着も示す。