(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-06
(45)【発行日】2023-03-14
(54)【発明の名称】光の進入を制御するためのデバイス
(51)【国際特許分類】
G02F 1/137 20060101AFI20230307BHJP
E06B 9/24 20060101ALI20230307BHJP
【FI】
G02F1/137
E06B9/24 C
(21)【出願番号】P 2018535119
(86)(22)【出願日】2016-12-14
(86)【国際出願番号】 EP2016002108
(87)【国際公開番号】W WO2017118465
(87)【国際公開日】2017-07-13
【審査請求日】2019-12-12
(32)【優先日】2016-01-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】591032596
【氏名又は名称】メルク パテント ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Merck Patent Gesellschaft mit beschraenkter Haftung
【住所又は居所原語表記】Frankfurter Str. 250,D-64293 Darmstadt,Federal Republic of Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100106297
【氏名又は名称】伊藤 克博
(72)【発明者】
【氏名】ユンゲ、 ミハエル
(72)【発明者】
【氏名】バイエル、 アンドレアス
(72)【発明者】
【氏名】フィッシャー、 ミラ
【審査官】磯崎 忠昭
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/055274(WO,A1)
【文献】国際公開第2014/180525(WO,A1)
【文献】特開平09-133930(JP,A)
【文献】特開2009-046525(JP,A)
【文献】米国特許第05067795(US,A)
【文献】韓国公開特許第10-2015-0140000(KR,A)
【文献】特開2008-304681(JP,A)
【文献】特開2001-228482(JP,A)
【文献】国際公開第2014/090367(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02F 1/137
G02F 1/13
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
室内への光の進入を制御するためのデバイス
を含有するウィンドウであって、
12μmより大きい厚さを有し、少なくとも1種類の二色性化合物および1種以上のキラル化合物を含む液晶媒体を含む可スイッチ層Sを含み、
液晶媒体の誘電異方性Δεは、-3未満であり、
層Sの厚さdおよび層Sの液晶媒体の光学異方性Δnに以下が適用され、
d<0.9μm/Δn
および
d>0.2μm/Δn
層Sの液晶媒体の分子は
、電圧を印加したデバイスのスイッチ状態においてツイストネマチック状態であり、
可スイッチ層Sを1層のみ具備
し、
可スイッチ層Sの片側にO1と呼ぶ配向層が1層のみ隣接しており、可スイッチ層Sの反対側にO2と呼ぶ他の配向層が1層のみ隣接しており、
電圧を印加しない状態でホメオトロピック配向の場合、層Sの液晶媒体の分子の配向軸は、配向層O1またはO2の面に対して89°~70°の角度を含むウィンドウ。
【請求項2】
層Sの隣接領域において、配向層O1およびO2は、それぞれ、液晶媒体の分子の配向軸が異なる配向となるよう作用するように設計されていることを特徴とする請求項
1に記載の
ウィンドウ。
【請求項3】
配向層O1およびO2のラビング方向は、30~270°の角度を含むことを特徴とする請求項
1または
2に記載の
ウィンドウ。
【請求項4】
配向層O1およびO2は、層Sに隣接する配向層の表面上にラビングされたポリイミドを有することを特徴とする請求項
1~
3のいずれか1項に記載の
ウィンドウ。
【請求項5】
偏光板を含まないことを特徴とする請求項1~
4のいずれか1項に記載の
ウィンドウ。
【請求項6】
層Sは、13および50μmの間の厚さを有することを特徴とする請求項1~
5のいずれか1項に記載の
ウィンドウ。
【請求項7】
層Sは、少なくとも30%の欧州規格EN410式(1)に従って計算される明状態の光透過率τ
v brightを有することを特徴とする請求項1~
6のいずれか1項に記載の
ウィンドウ。
【請求項8】
層Sは、少なくとも2種類の異なる二色性化合物を含むことを特徴とする請求項1~
7のいずれか1項に記載の
ウィンドウ。
【請求項9】
デバイスの全てのスイッチ状態において通して見ると、無色であることを特徴とする請求項1~
8のいずれか1項に記載の
ウィンドウ。
【請求項10】
少なくとも1種類の二色性化合物は、アゾ化合物類、アントラキノン類、メチン化合物類、アゾメチン化合物類、メロシアニン化合物類、ナフトキノン類、テトラジン類、ペリレン類、テリレン類、クアテリレン類、高級リレン類、スクアライン類、ベンゾチアジアゾール類、ジケトピロロピロール類およびピロメテン類から選択されることを特徴とする請求項1~
9のいずれか1項に記載の
ウィンドウ。
【請求項11】
ツイストネマチック状態にある層Sの液晶媒体の分子の配向軸のツイストは、全層厚に渡って135°および270°の間であることを特徴とする請求項1~
10のいずれか1項に記載の
ウィンドウ。
【請求項12】
ツイストネマチック状態にある層Sの液晶媒体の分子の配向軸のツイストは、全層厚に渡って320°および3回転の間であることを特徴とする請求項1~
10のいずれか1項に記載のウィンドウ。
【請求項13】
液晶媒体の誘電異方性Δεは、-5.5以下であることを特徴とする請求項1~
12のいずれか1項に記載の
ウィンドウ。
【請求項14】
液晶媒体の光学異方性Δ
nは、0.075未満であることを特徴とする請求項1~13のいずれか1項に記載のウィンドウ。
【請求項15】
液晶媒体は1種類以上のキラル化合物を、0.01~3重量%の合計濃度で含むことを特徴とする請求項1~
14のいずれか1項に記載の
ウィンドウ。
【請求項16】
光エネルギーを電気エネルギーに変換するデバイスを含むことを特徴とする請求項1~
15のいずれか1項に記載の
ウィンドウ。
【請求項17】
光透過表面を通して室内への光の通過の均一な制御をするための請求項1~
16のいずれか1項に記載の
ウィンドウの使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、室内への光の進入を制御するためで、液晶媒体および二色性化合物を含む可スイッチ層を含み、ただし、デバイスの少なくとも1つのスイッチ状態において液晶媒体はツイストネマチック状態にあるデバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
本願発明の目的に関し、光という用語は、特にUV-A、VISおよびNIR領域における電磁放射を意味するものとする。特にそれは、ウィンドウ(例えばガラス)に通常用いられる材料により全く吸収されないか、無視できる程度にのみ吸収される波長の光を意味するものとする。通常使用される定義に従い、UV-A領域は320~380nmの波長を意味するものとし、VIS領域は380nm~780nmの波長を意味するものとし、NIR領域は780nm~2000nmの波長を意味するものとする。
【0003】
本願の目的に関し、液晶媒体という用語は、ある条件下で液晶特性を有する材料を意味するものとする。本願発明による液晶媒体は、典型的には、分子が延伸形状を有する、即ち、他の2つの空間方向よりも1つの空間方向(長手方向軸)において著しく長い少なくとも1種類の化合物を含む。
【0004】
本願の目的に関し、二色性化合物は、光の偏向の方向に対する化合物の配向に吸収特性が依存する光吸収性化合物を意味するものとする。本願による二色性化合物は、典型的には延伸形状を有し、即ち、化合物は他の2つの空間方向よりも1つの空間方向(長手方向軸)において著しく長い。
【0005】
ツイストネマチック状態は、それぞれの場合で可スイッチ層の平面と平行な1つの平面内で液晶媒体の分子の配向軸が互いに平行であるが、隣接する平面の分子の配向軸に対しては一定の角度でツイストしている状態を意味するものとする。配向軸が可スイッチ層の平面に垂直ならせん軸を有するらせんを描くように、他の平面内の配向軸に対する1つの平面内における配向軸の相対的なツイストは、可スイッチ層に平行な軸上での当該平面の他の平面から間隔に比例する。以下の段落で更に詳細に説明される
図2の図は、ツイストしたネマチック状態を図解する。
【0006】
室内への光の進入を制御するデバイス(可スイッチウィンドウ、スマートウィンドウ)の分野では、多数の異なる技術的方策が過去に提案されてきた。
【0007】
1つの可能な方策は、1種類以上の二色性化合物を含む混合物中でツイストしていないネマチック状態にある液晶媒体を含む可スイッチ層の使用である。これらの可スイッチ層においては電圧を印加することで二色性化合物の分子の特定の配向の変化を達成でき、可スイッチ層を通る透過性に変化を生じさせる。対応するデバイスが、例えば、国際特許出願公開第2009/141295号公報(特許文献1)に記載されている。また代わりに、例えば、米国特許出願公開第2010/0259698号公報(特許文献2)に記載されるように、液晶媒体の等方状態から液晶状態への転移を温度で誘発することで電圧なしでも、このタイプの透過性の変化を達成できる。
【0008】
国際公開第2015/055274号(特許文献3)には、ウィンドウにおいてスーパーツイストセル(STNセル)を使用することが記載されている。開示されるデバイスは正の誘電異方性を有する液晶媒体を含有し、ツイスト角は30および270°の間または3×360°までであり、d×Δnは2未満である。ここで開示されるスイッチ層厚は12μm未満である。これらの薄層厚の場合に厳密には、ガラスはディスプレイの製造のために既に不都合に波打っていることが分かっている。この基板のうねりは層厚の不利な変化をもたらし、その結果望ましくない光学的に視認できる欠陥(例えば、縞)が生じる。加えて建築用途向けの非常に安価なフラットガラスは、更に大きな基板のうねりを有する。この理由から光学的に視認できる欠陥(例えば、縞)を避けるために、このタイプの非常に薄いセルの製造コストは高い。加えて高品質のクリーンルームを使用する古典的なLCD製造プロセスに対応しないより安価な製造プロセスが好ましくは、ウィンドウ用途に使用される。これに関して薄層厚の場合、生じる潜在的な粒欠陥は特に顕著である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】国際公開第2009/141295号
【文献】米国特許出願公開第2010/0259698号明細書
【文献】国際公開第2015/055274号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
これに関して可能な限り最大のエネルギー制御能力を有する、即ち、スイッチの際にデバイスの光透過性について可能な限り最大の差異を有する室内への光の進入を制御するデバイスを提供することに興味が持たれている。この差異は、またスイッチ範囲または範囲とも呼ばれる。可能な限り最大のスイッチ範囲によって室内にエネルギーが入り、よって例えば当該部屋の温度をデバイスが効果的に制御することが可能となる。更に、デバイスが可能な限り簡単なデザインを有し、特に可能な限り少ない層を有すること、およびそれらの製造プロセスが大量生産に適合することに興味が持たれている。加えてデバイスはスイッチ動作のために可能な限り低い電圧を必要としなければならず、即ち、エネルギー効率よく動作する必要がある。使用される液晶混合物は-20℃、好ましくは-30℃、特に-40℃で結晶化に対して高い低温安定性を有しなければならず、これは好ましくは3ヶ月以上存在する。加えて先進のデバイスは80℃より、好ましくは90℃より、特に105℃以上の比較的高い温度でも依然として動作し得なければならない。更にデバイスは領域にわたって光学的に均一な外観を有さなければならず、基板のうねりに起因する層厚の変化は10×10cmの面積サブ要素に基づき観察される最小および最大の層厚に基づき10%未満、好ましくは5%未満、特に好ましくは1%未満である。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に照らせば特に12μmより大きい比較的大きなスイッチ層厚を有し、光の進入を制御するための本発明によるデバイスを提供することで、上述の技術的課題の1つ以上を好ましくは同時に達成できることが見出された。
【0012】
よって、本願発明は、室内への光の進入を制御するためのデバイスであって、
12μmより大きい厚さを有し、少なくとも1種類の二色性化合物を含む液晶媒体を含む可スイッチ層Sを含み、
層Sの厚さdおよび層Sの液晶媒体の光学異方性Δnに以下が適用され、
d<1μm/Δn
層Sの液晶媒体の分子は、電圧を印加していないデバイスのスイッチ状態または電圧を印加したデバイスのスイッチ状態においてツイストネマチック状態であるデバイスに関する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は、本発明によるデバイスの好ましい層順序を示す。ここでは、基板層(1)、導電性層(2)、配向層O1(3a)、可スイッチ層S(4)、配向層O2(3b)、更なる導電性層(2)および更なる基板層(1)は一方が他方の後ろに配置され、互いに直接隣接している。
【
図2】
図2は、配向層O1(3a)およびO2(3b)の垂直図を示す。観察者から見て、O2はO1の後ろである。矢印(5)は、配向層O1のラビング方向を表す。矢印(6)は、配向層O2のラビング方向を表す。記号(7)は、配向層O1およびO2の間の可スイッチ層の液晶化合物のツイストを図示する。この場合、液晶化合物はO1への界面においてO1のラビング方向に平行に配向しており、O2への界面においてO2のラビング方向に平行に配向しているので、液晶化合物は配向層O1およびO2の間で270°の回転角を有する左巻きらせんを描く。
【符号の説明】
【0014】
1 基板層、好ましくはガラスまたはポリマーを含む
2 導電性層
3a 配向層O1
4 可スイッチ層S
3b 配向層O2
5 配向層O1のラビング方向
6 配向層O2のラビング方向
7 可スイッチ層の液晶化合物のツイスト角(O2がO1の後ろの場合、左巻きらせん)
【発明を実施するための形態】
【0015】
本明細書において、光学異方性は、「Merck Liquid Crystals、Physical Properties of Liquid Crystals」、1997年11月、ドイツ国メルク社刊に示される通りに20℃および589nmで決定する。
【0016】
以下を、好ましくは、層Sの厚さdおよび層Sの液晶媒体の光学異方性Δnに適用する:
d<0.9μm/Δnおよびd>0.2μm/Δn。
【0017】
以下を、特に好ましくは、適用する:
d<0.75μm/Δnおよびd>0.5μm/Δn。
【0018】
デバイスは、好ましくは、1層以上、特に好ましくは2層の配向層を含み、配向層は可スイッチ層Sに直接隣接して配置される。本発明によれば、O1と呼ばれる1層のみの配向層が可スイッチ層Sの片側に隣接し、O2と呼ばれる1層のみの他の配向層が可スイッチ層Sの反対側に隣接しているのが好ましい。
【0019】
配向層は、好ましくは、配向層に隣接している層Sの液晶媒体の分子が平面配向となるよう作用する。しかしながら、本発明の代わりの実施形態によれば、配向層に隣接している層Sの液晶媒体の分子が垂直配向となるよう配向層が作用するように配向層を設計してよい。
【0020】
更に好ましくは、それぞれの配向層への界面において、配向層のラビング方向に沿う層Sの液晶媒体の分子が配向するよう配向層が作用する。層Sの隣接領域において、それぞれの配向層O1およびO2が異なる配向を有する液晶媒体の分子の配向軸に作用するように配向層O1およびO2を設計することが好ましい。これにより、液晶媒体の分子がツイストする結果となる。
【0021】
配向層O1およびO2のラビング方向は、30~360°の角度、特に好ましくは135°~360°の角度、非常に特に好ましくは160~270°の角度、最も好ましくは230~255°の角度を含むことが好ましい。
【0022】
配向層は、好ましくは、ポリイミド層である。配向層は、特に好ましくは、層Sに隣接する配向層表面上にラビングされたポリイミドを有する。化合物が配向層に対して平面の場合、当業者に既知の特定の方法でラビングしたポリイミドによって、ラビングの方向に液晶媒体の分子が優先配向する結果となる。更に、偏光による露光操作で得られたポリマーを、液晶媒体の分子の優先配向を達成する配向層として使用できる(光配向)。
【0023】
液晶媒体の分子が垂直配向するよう作用することを意図する配向層については、対応する実施形態が当業者に既知である。
【0024】
電圧を印加しない状態でホモジニアス配向の場合、液晶媒体の分子が配向層に対して完全に平面ではなく、代わりに僅かにプレチルト角を有することが更に好ましい。電圧を印加しない状態でホモジニアス配向の場合、層Sの液晶媒体の分子の配向軸は、好ましくは、配向層O1およびO2の平面に対して1°~10°の角度、特に好ましくは2°~9°の角度、非常に特に好ましくは3°~8°の角度を含む。これは、配向層を適切に設計することで達成できる。この目的のための方法、例えば、経験的方法および/または製造情報に従い商業的に入手可能なポリイミド出発材料の硬化時間および硬化温度を適切に選択することが当業者に既知である。好ましい範囲でプレチルト角を選択することで、特に、通して見た場合のデバイスの均一な外観を達成することが可能となり、光学的干渉が回避される。
【0025】
電圧を印加しない状態で液晶媒体の分子がホメオトロピック配向である代わりの場合、分子の配向軸が配向層O1およびO2の平面に対して完全に垂直ではなく、代わりに配向層O1およびO2の平面に対して90°から僅かに異なる角を含むことが好ましい。この場合、その角度は、配向層O1およびO2の平面に対する配向軸で、好ましくは89°~70°、特に好ましくは88°~75°、非常に特に好ましくは87°~80°を含む。
【0026】
更に好ましくは、本発明によるデバイス中の層Sは、2層の基板層の間に配置されるか、基板層に囲まれる。基板層は、例えば、ガラスまたはポリマーから、特にはガラス、PET、PEN、PVBまたはPMMAから成り得る。
【0027】
デバイスは、好ましくは、ポリマー系偏光板を含まず、特に好ましくは固形材料相の偏光板を含まず、非常に特に好ましくは偏光板を一切含まないことを特徴とする。
【0028】
しかしながら代わりの実施形態によれば、デバイスは、1枚以上の偏光板を含んでもよい。これらの偏光板は、好ましくは、直線偏光板である。1枚以上の偏光板が存在する場合、これらは、好ましくは、層Sに平行に配置される。
【0029】
1枚のみの偏光板が存在する場合、その吸収方向は、好ましくは、偏光板が配置される層Sの側において、本発明によるデバイスの液晶媒体の分子の優先配向に対して垂直である。
【0030】
本発明によるデバイスにおいて、吸収偏光板およびまた反射偏光板の両方を用いることができる。光学的フィルムの形態の偏光板を使用することが好ましい。本発明によるデバイスで使用できる反射偏光板の例は、DRPF(拡散反射偏光板フィルム(diffusive reflective polariser film)3M社)、DBEF(二重明度増強フィルム(dual brightness enhanced film)3M社)、DBR(層化ポリマー分散ブラッグ反射板(layered-polymer distributed Bragg reflectors)米国特許第7,038,745号明細書および米国特許第6,099,758号明細書に記載される)およびAPFフィルム(進化型偏光膜(advanced polariser film)3M社、Technical Digest SID 2006年45.1頁、米国特許出願公開第2011/0043732号明細書および米国特許第7023602号明細書を参照)である。更に、赤外光またはVIS光を反射しワイヤグリッドを基礎とする偏光板(WGP、ワイヤグリッド偏光板(wire-grid polarisers))を用いることが可能である。本発明によるデバイスにおいて用いることができる吸収偏光板の例は、ITOS社XP38偏光フィルムおよび日東電工社GU-1220DUN偏向フィルムである。本発明により用いることができる円偏光板の例は、APNCP37-035-STD偏光板(American Polarizers社)である。更なる例は、CP42偏光板(ITOS社)である。
【0031】
本発明によるデバイスは、1層のみのスイッチ層を有することが好ましい。
【0032】
層Sは、好ましくは13~50μm、特に好ましくは14~45μm、非常に特に好ましくは15~40μmの厚さを有する。これは特に領域にわたって光学的に均一な外観に効果を有し、基板のうねりに起因する層厚の変化は10×10cmの面積サブ要素に基づき観察される最小および最大の層厚に基づき10%未満、好ましくは5%未満、特に好ましくは1%未満である。
【0033】
層Sは、少なくとも30%、好ましくは少なくとも35%、特に好ましくは少なくとも40%、非常に特に好ましくは少なくとも50%の欧州規格EN410式(1)に従って計算される明状態の光透過率τv brightを好ましくは有する。スイッチ層の明状態の光透過率τv brightは、パーセントで示される。τv brightは、参照としての色素がない可スイッチ層を有するデバイスを基礎として、デバイスの明状態における可スイッチ層の光透過の比率から計算される。τv brightは、標準発光の相対スペクトル分布および標準観察者のスペクトル応答因子を考慮に入れ、スペクトル透過より欧州規格EN410式(1)(ウィンドウガラスの発光および太陽特性の決定)に従い決定する。
【0034】
デバイスは、層Sが少なくとも2種類の異なる二色性化合物、好ましくは2種類のみ、3種類のみ、4種類のみ、5種類のみまたは6種類のみの異なる二色性化合物、特に好ましくは2種類のみ、3種類のみまたは4種類のみの異なる二色性化合物を含むことを好ましくは特徴とする。
【0035】
少なくとも1種類の二色性化合物は発光性、好ましくは蛍光性であることが更に好ましい。
【0036】
本明細書において、蛍光性は、ある波長を有する光の吸収で化合物が電気励起状態に置かれ、ここで次いで、当該化合物が光の発光して基底状態へと変換されることを意味する。発光された光は、好ましくは、吸収した光よりも長い波長を有する。励起状態から基底状態への遷移は、更に好ましくは、スピン認容性であり、即ち、スピンの変化なしで起こる。蛍光化合物の励起状態の寿命は、更に好ましくは10-5秒よりも短く、特に好ましくは10-6秒よりも短く、非常に特に好ましくは10-9および10-7秒の間である。
【0037】
液晶媒体における二色性化合物の吸収スペクトルは、好ましくは、デバイスの黒色の印象が眼に生じるように、互いに補完する。デバイスは、特に好ましくは、通して見た際に全てのスイッチ状態で無色であり、ただし、灰色および黒色の印象が同様に無色と見なされる。
【0038】
液晶媒体の2種類以上の二色性化合物は、好ましくは、可視スペクトルの大部分をカバーする。これは好ましくは、赤色光を吸収する少なくとも1種類の二色性化合物、緑色から黄色光を吸収する少なくとも1種類の二色性化合物および青色光を吸収する少なくとも1種類の二色性化合物で達成される。
【0039】
眼に黒色または灰色に見える二色性化合物の混合物を調製できる正確な方法は当業者に既知であり、例えば、Manfred Richter著、Einfuehrung in die Farbmetrik(比色分析入門)、第2版、1981年刊、ISBN 3-11-008209-8、Verlag Walter de Gruyter&Co社に記載されている。
【0040】
二色性化合物は、更に好ましくは、UV-VIS-NIR領域における、即ち、320~2000nmの範囲の波長範囲における光を主に吸収する。本明細書において、UV光、VIS光およびNIR光は上で定義される通りである。二色性化合物は、特に好ましくは、400~1300nmの範囲に最大吸収を有する。
【0041】
液晶媒体において全ての二色性化合物を合わせた比率は、好ましくは全体で0.01~10重量%、特に好ましくは0.1~7重量%、非常に特に好ましくは0.2~7重量%である。個々の二色性化合物の比率は、好ましくは、0.01~10重量%、好ましくは0.05~7重量%、非常に特に好ましくは0.1~7重量%である。
【0042】
液晶媒体中の二色性化合物の正確な好ましい比率は、層Sの厚さに依存する。液晶層中の二色性化合物の比率および層厚の積は、特に好ましくは8および40重量%・μmの間、特に好ましくは10および35重量%・μmの間である。
【0043】
二色性化合物は、更に好ましくは、B.Bahadur著、Liquid Crystals-Applications and Uses、第3巻、1992年刊、World Scientific Publishing社、第11.2.1節に示される化合物類、特に好ましくは本明細書に存在する表で与えられる明示的化合物から選択される。
【0044】
好ましくは少なくとも1種類の二色性化合物、特に好ましくは全ての二色性化合物が、アゾ化合物類、アントラキノン類、メチン化合物類、アゾメチン化合物類、メロシアニン化合物類、ナフトキノン類、テトラジン類、ペリレン類、テリレン類、クアテリレン類、高級リレン類、スクアライン類、ベンゾチアジアゾール類、ジケトピロロピロール類およびピロメテン類から選択される。
【0045】
アントラキノン類色素は、例えば、欧州特許第34832号明細書、欧州特許第44893号明細書、欧州特許第48583号明細書、欧州特許第54217号明細書、欧州特許第56492号明細書、欧州特許第59036号明細書、英国特許第2065158号明細書、英国特許第2065695号明細書、英国特許第2081736号明細書、英国特許第2082196号明細書、英国特許第2094822号明細書、英国特許第2094825号明細書、特開昭55-123673号公報、ドイツ国特許第3017877号明細書、ドイツ国特許第3040102号明細書、ドイツ国特許第3115147号明細書、ドイツ国特許第3115762号明細書、ドイツ国特許第3150803明細書およびドイツ国特許第3201120号明細書に記載されおり、ナフトキノン類色素は、例えば、ドイツ国特許第3126108号明細書およびドイツ国特許第3202761号明細書に、アゾ色素類は、欧州特許第43904号明細書、ドイツ国特許第3123519号明細書、国際公開第82/2054号、英国特許第2079770号明細書、特開昭56-57850号公報、特開昭56-104984号公報、米国特許第4308161号明細書、米国特許第4308162号明細書、米国特許第4340973号明細書、T.Uchida、C.Shishido、H.SekiおよびM.Wada著:Mol.Cryst.Lig.Cryst.第39巻、第39~52頁(1977年)およびH.Seki、C.Shishido、S.YasuiおよびT.Uchida著:Jpn.J.Appl.Phys.第21巻、第191~192頁(1982年)に、ならびにペリレン類は、欧州特許第60895号明細書、欧州特許第68427号明細書および国際公開第82/1191号に記載されている。
【0046】
例えば、特開2008-268762号公報、特開2003-104976号公報、国際公開第2004002970号、X.Zhangら著、J.Mater.Chem.2004年刊、第14巻、第1901~1904頁、X.Zhangら著、J.Mater.Chem.、2006年刊、第16巻、第736~740頁およびX.Liら著、Org.Lett.2008年刊、第10巻、第17号、第3785~3787頁で開示され、および未公開欧州特許出願第13002711.3号明細書のベンゾチアジアゾール色素が非常に特に好ましい。更に例えば、欧州特許第2166040号明細書、米国特許出願公開第2011/0042651号公報明細書、欧州特許第68427号明細書、欧州特許第47027号明細書、欧州特許第60895号明細書、ドイツ国特許第3110960号明細書および欧州特許第698649号明細書で開示されるリレン色素が非常に特に好ましい。更に例えば、国際公開第2015/090497号で開示される通りのジケトピロロピロールが非常に特に好ましい。
【0047】
好ましい実施形態によれば、液晶媒体は、ベンゾチアジアゾール色素、アゾ色素、ジケトピロロピロール色素およびリレン色素の類から選択される二色性化合物のみを含む。
【0048】
液晶媒体中に存在してよい好ましい二色性化合物の例を、以下の表に表記する。
【0049】
【0050】
【0051】
【0052】
【0053】
【0054】
【0055】
【0056】
【0057】
【0058】
【0059】
【0060】
【0061】
【0062】
【0063】
【0064】
【0065】
【表17】
デバイスのスイッチ層Sは、液晶媒体を含む。
【0066】
液晶媒体は、好ましくは、デバイスの動作温度でネマチック液晶である。デバイスの動作温度の上下±20℃の範囲でネマチック液晶であることが特に好ましく、±30℃の範囲が非常に特に好ましい。
【0067】
本発明によれば、電圧を印加しないデバイスのスイッチ状態または電圧を印加したデバイスのスイッチ状態のいずれかで、液晶媒体の分子がツイストネマチック状態にある。
【0068】
電圧を印加しないデバイスのスイッチ状態で、液晶媒体の分子は、好ましくは、ツイストネマチック状態にあり、平面配向にある。この場合、電圧を印加した状態で、液晶媒体の分子は、ツイストしていないネマチック状態にあり、ホメオトロピック配向にあることが更に好ましい。
【0069】
代わりの実施形態によれば、電圧を印加しないデバイスのスイッチ状態で、液晶媒体の分子はツイストしていないネマチック状態にあり、ホメオトロピック配向にある。この場合、電圧を印加した状態で、液晶媒体の分子は、ツイストネマチック状態にあり、平面配向にあることが更に好ましい。
【0070】
ツイストネマチック状態にある層Sの液晶媒体の分子の配向軸のツイストは、全層厚に渡って、好ましくは1回転未満、特に好ましくは30および270°の間、非常に特に好ましくは100°および260°の間、更により好ましくは160および255°の間、最も好ましくは230および250°の間である。
【0071】
これにより、特にデバイスが小さいスイッチ層Sの厚さdを有する場合で、好ましくはスイッチ層Sの厚さdが下式とも合致する場合、スイッチの範囲が更に増加する。
【0072】
d<1μm/Δn
ここで、Δnはスイッチ層Sの液晶媒体の光学的異方性である。
【0073】
そのような液晶媒体の分子の配向軸のツイストの例を、
図2に示す(以下の節の説明参照)。
【0074】
ある条件下では好ましい本発明の代わりの実施形態によれば、ツイストネマチック状態にある層Sの液晶媒体の分子の配向軸のツイストは、全層厚に渡って、270°および5回転(1800°)の間、好ましくは320°および3回転(1080°)の間、特に好ましくは340°および740°の間、非常に特に好ましくは360°および720°の間である。2つの基礎状態「on」および「off」の間に中間状態が存在しないことが念頭となっており、代わりに2つの基礎状態のみが言及されている場合、上記のような実施形態が特に好ましい。
【0075】
更に、液晶媒体は、好ましくは、70℃~170℃、好ましくは90℃~160℃、特に好ましくは95℃~150℃、非常に特に好ましくは105℃~140℃の温度範囲において透明点、好ましくはネマチック液晶状態から等方状態への相転移を有する。
【0076】
液晶媒体の誘電異方性は、-3未満、特に好ましくは-7未満、非常に特に好ましくは-8未満である。
【0077】
代わりの同様に好ましい実施形態によれば液晶媒体のΔεは、更に好ましくは3より大きく、特に好ましくは7より大きく、非常に特に好ましくは8より大きい。
【0078】
液晶媒体は、更に好ましくは、3~30種類の異なる化合物、好ましくは8~20種類、特に好ましくは10~18種類の異なる化合物を含む。
【0079】
液晶媒体は、更に好ましくは0.075未満、特に好ましくは0.06未満、特に0.05未満の光学異方性(Δn)を有する。
【0080】
液晶媒体は、更に好ましくは、1010オーム・cmより大きい電気比抵抗を有する。
【0081】
液晶媒体の構成成分として使用できる化合物は当業者に既知であり、自由に選択できる。
【0082】
液晶媒体が、1,4-フェニレンおよび1,4-シクロヘキシレンを基礎とする構造要素を含有する少なくとも1種類の化合物を含むことが更に好ましい。液晶媒体が、1,4-フェニレンおよび1,4-シクロヘキシレンを基礎とする2個、3個または4個、特に好ましくは3個または4個の構造要素を含有する少なくとも1種類の化合物を含むことが特に好ましい。
【0083】
液晶媒体は、1種または2種以上のキラル化合物を含んでもよい。そして、これらのキラル化合物は、好ましくは、0.01~3重量%、特に好ましくは0.05~1重量%の合計濃度で存在する。また、高い値のねじれを得るために、キラル化合物の合計濃度は3重量%よりも高く、好ましくは最大10重量%までで選択してよい。液晶媒体でキラルドーパントを使用することで、ツイストの方向を右巻または左巻らせんに設定することが可能となる。
【0084】
また、2種類以上の異なるキラルドーパントの組み合わせを使用することも可能である。これにより、デバイスの温度安定性を向上することが可能となる。
【0085】
また本発明の更なる実施形態によれば、キラルドーパントは光吸収特性を備えており、即ち、色素である。
【0086】
キラル化合物は、好ましくは、液晶媒体の分子のらせんピッチpが以下の式と合致するよう選択される:
0.1<d/p<0.8、好ましくは
0.3<d/p<0.75、特に好ましくは
0.4<d/p<0.7
ただし、dは層Sの厚さである。
【0087】
商d/pの値を層Sの液晶媒体の分子の配向軸のツイストに一致させることが、特に好ましい。特に、180°のツイストに対して0.1~0.7の値のd/pを選択し、220°のツイストに対して0.23~0.73の値のd/pを選択し、240°のツイストに対して0.28~0.78の値のd/pを選択し、270°のツイストに対して0.33~0.77の値のd/pを選択することが好ましい。中間の値のツイストに対しては、対応して内挿する。
【0088】
本発明によるデバイスでの使用に好ましいキラル化合物は、以下の表に表記する化合物である。
【0089】
【0090】
【表19】
液晶媒体は、好ましくは、1種類以上の安定剤を含む。安定剤の合計濃度は、好ましくは混合物全体の0.00001および10重量%の間、特に好ましくは0.0001および1重量%の間である。
【0091】
デバイスは、好ましくは、層Sの液晶媒体の分子を電圧で配向する手段を有する。その手段は、好ましくは、2個以上の電極を有し、それらは層Sの両側、または更に好ましい実施形態において層Sの一方のみ上に組み込まれる。電極は、好ましくは、ITOまたは薄く、好ましくは透明な、例えば銀もしくは当該使用のために当業者に既知の代わりの金属である金属および/もしくは金属酸化物層から成り、スイッチ層用に使用される材料の観点から当業者に既知の態様で対応して配置される。電極には、好ましくは、電気的接続が与えられる。電力供給は、好ましくは、電池、充電池、スーパーキャパシタまたは外部電力供給によって与えられる。
【0092】
本発明によるデバイスは、好ましくは、以下の層順序を有し、ただし層は、好ましくは、互いに直接隣接する(
図1も参照):
1)基板層、好ましくはガラス層またはポリマー層
2)導電性層、好ましくはITO層
3)配向層O1
4)可スイッチ層S
5)配向層O2
6)導電性層、好ましくはITO層
7)基板層、好ましくはガラス層またはポリマー層
本明細書においては、デバイスが更なる層を含むこと、または更に好ましい実施形態においてより少ない層を含むことを除外しない。
【0093】
好ましい実施形態によれば、本発明によるデバイスは、スイッチ層をスイッチするのに必要な全てのエネルギーをデバイス自身が生成することを特徴とする。よって、デバイスは、好ましくは、自律性で外的に供給されるエネルギーを一切必要としない。この目的のために、デバイスは、好ましくは光エネルギーを電気エネルギーに変換するデバイス、特に好ましくは太陽電池を含む。
【0094】
本発明の好ましい実施形態によれば、光エネルギーを電気エネルギーに変換するデバイスは、本発明によるデバイスを電気的にスイッチする手段に電気的に接続されている。太陽電池によるエネルギーは、直接的または間接的に、即ち電池もしくは充電池またはそれらの間に接続されるエネルギー貯蔵のための他のユニットを介して供給される。太陽電池は、好ましくは例えば国際公開第2009/141295号で開示されるように、デバイスの外側またはデバイスの内側に施される。散光の場合に特に効率的な太陽電池および透明太陽電池の使用が好ましい。散光の場合に特に効率的な太陽電池および透明太陽電池の使用が好ましい。例えば、本発明によるデバイスにおいては、シリコン太陽電池または有機太陽電池を使用することが可能である。
【0095】
本発明によるデバイスは、更に好ましくは、光を可スイッチ層Sから光エネルギーを電気エネルギーまたは熱エネルギーに変換するユニットへと導く導光システムを含む。
【0096】
導光システムは、好ましくは、国際公開第2009/141295号に記載されるように構築される。導光システムは、デバイスに衝突する光を収集し濃縮する。導光システムは、好ましくは、液晶媒体を含む可スイッチ層S中の蛍光性二色性化合物により発せられる光を収集し濃縮する。導光システムは、収集された光が濃縮された形態で変換デバイスに衝突するように、光エネルギーを電気エネルギーに変換するデバイス、好ましくは太陽電池に接続される。
【0097】
導光システムは、好ましくは、全内部反射によって光を伝導する。デバイスは、好ましくは、導光システムが少なくとも1個の波長選択性ミラーを有することを特徴とし、波長選択性ミラーは、好ましくは、1層以上のコレステリック液晶層から選択される。
【0098】
本発明によるデバイスは、好ましくは、反射を防止するよう設計されている1層以上のガラス層を含むことを特徴とする。反射防止コーティングの製造は、薄膜技術のコーティング法で実行される。これらの方法としては、例えば、熱蒸着およびスパッタ堆積などの物理的ガス相凝結が挙げられる。反射を防止する手段は、単層系または多層系で達成できる。
【0099】
本発明によるデバイスは、好ましくは、2層以上のガラス層を含むことを特徴とし、可スイッチ層Sを除いたデバイスの層全体の規格EN410による光反射度ρvが35%未満、好ましくは30%未満、特に好ましくは25%未満、非常に特に好ましくは20%未満であることを特徴とする。
【0100】
可スイッチ層Sを除いたデバイスの層全体の規格EN410による光反射度ρvは特に好ましくは上に示す通りであり、デバイスは3層以上のガラス層を含む。
【0101】
デバイスの光反射度ρvは分光光度計を使用して層配置の反射度スペクトルを測定し、標準発光および標準観察の明度感度スペクトルの相対スペクトル分布を考慮に入れ、規格EN410の式(4)に従い、反射度スペクトルよりパラメーターρvを計算して決定する。
【0102】
本発明によるデバイスは任意の所望の部屋で使用でき、特に周囲との限られた空気交換のみを有し、光エネルギーの形で外部からエネルギーの進入が生じ得る光透過性境界表面を有する部屋で使用できる。デバイスは、好ましくは、光透過性表面に設置するか、建造物開口部、コンテナ、乗り物または他の実質的に閉じた空間内に設置する。デバイスは、特に好ましくは、光に対して透明な光透過性表面を通り、例えばウィンドウ領域を通して強い日射に曝される部屋で使用される。
【0103】
本発明によるデバイスは、好ましくは、表面を通り室内への光の進入をホモジニアス制御するのに適する。本明細書において、ホモジニアスとは、表面を通る光の進入が比較的広い領域に渡って等しい強度であることを意味する。その領域は、好ましくは少なくとも0.01m2、特に好ましくは少なくとも0.1m2、非常に特に好ましくは少なくとも0.5m2、最も好ましくは少なくとも1m2である。ディスプレイデバイスで使用される光学的スイッチデバイスの場合のようにホモジニアスと区別してパターン化するまたはドメインに分割する(ピクセル化する)ことを、ホモジニアス、即ち、均一であると見なす。僅かにホモジニアスでないこと、特に欠陥によりホモジニアスでないことが生じている場合、これをホモジニアスの定義においては無視する。
【0104】
本発明は、更に、光透過性表面を通り室内への光の進入をホモジニアス制御するために、本発明によるデバイスを使用することに関する。
【0105】
また更に、本発明によるデバイスは、例えば照明および色彩効果を生じることによる審美的な部屋設計のために用いることができる。また、信号を生成するために本発明によるデバイスを使用できる。例えば、本発明によるデバイスを含む扉または壁要素を、不透明、例えば灰色または彩色状態から透明な状態にスイッチできる。また、デバイスは、明るく変調される白色または彩色された全領域バックライト、または青色ゲスト/ホストディスプレイを用いて彩色されるように変調される黄色の全領域バックライトを含んでよい。本発明によるデバイスと組み合わせて白色または彩色LEDなどの側方から入射する光源によって、更なる審美的効果を生成できる。また、光をカップルして生じるか光効果を生成するために粗面または構造化ガラスが、本発明によるデバイスの片側または両側のガラスを備えることも可能である。
【0106】
好ましい実施形態において、本発明によるデバイスは、ウィンドウ、特に好ましくは複数の絶縁ガラスを有するウィンドウの一部分である。本明細書において、デバイスの任意の基板層の一方または両方は、代表的には、ウィンドウのウィンドウガラスでよい。
【0107】
デバイスを含有するウィンドウは、好ましくは、全体で3枚以上のウィンドウガラスを含む。本明細書において、デバイスはウィンドウの2枚のウィンドウガラスの間に配置されることが好ましい。
【0108】
好ましい実施形態によれば、複数の絶縁ガラスの内部またはこのタイプのガラスの外側にデバイスを設ける。一般的に、ウィンドウガラスの内側の空間に面する側または複数の絶縁ガラスの場合は2枚のウィンドウガラスの間の内部空間で使用することが好ましい。しかしながら、他の配置も想定可能であり、ある場合おいては好ましい。当業者は、デバイスの耐久性、光学的および審美的観点、ウィンドウガラスの洗浄に関する実用的観点および温度変化に対するデバイスの反応性について、ある配置の有利および不利を計ることができるであろう。
【0109】
デバイスを含むウィンドウの層順序が以下のようになるようウィンドウの第1ウィンドウガラスがデバイスのウィンドウガラスで形成されている配置が特に好ましい:
1)ガラス層
2)導電性層、好ましくはITO層
3)配向層
4)可スイッチ層
5)配向層
6)導電性層、好ましくはITO層
7)ガラス層
8)ガラス層
ただし、ガラス層7)および8)の間にはフリースペースが存在し、これは、例えば希ガスなどの絶縁ガスで充填されてよい。
【0110】
ウィンドウは、好ましくは、層1)が外部に隣接し、層8)が内部に隣接するよう配置される。しかしながら、逆の配置もまた可能であり、ある条件下では好ましい。
【0111】
上述の相順序は、例えば、追加のガラス層または例えばUV放射に対する、NIR放射に対する、VIS放射に対するおよび/もしくは物理的損傷に対する保護層などの更なる層で補ってもよい。
【0112】
本発明によるデバイスを含有するウィンドウは、先行技術による既存のウィンドウの改造または完全に新しく製造することで得られる。
【0113】
デバイスは、好ましくは、少なくとも0.05m2、好ましくは少なくとも0.1m2、特に好ましくは少なくも0.5m2および非常に特に好ましくは少なくとも0.8m2の領域を有することを特徴とする。
【0114】
デバイスは、代表的には可スイッチバイスである。本明細書において、デバイスのスイッチとはデバイスの光透過における変化を意味する。本発明によれば、デバイスのスイッチをデバイスを通る光の通過を制御するために利用できる。デバイスは、好ましくは、電気的に可スイッチである。
【0115】
電気的にスイッチする場合、電圧の印加による液晶媒体の分子の配向を通してスイッチの動作が起こる。同様に電圧の印加で、少なくとも1種類の二色性化合物が配向し、デバイスの光透過性に違いが生じる。
【0116】
好ましい実施形態において、デバイスは、高吸収の状態、即ち、電圧なしで出現する低い光透過性を有する状態から、より低吸収の状態、即ち、電圧を印加することでより高い光透過性を有する状態にスイッチする。液晶媒体は、好ましくは、両方の状態でネマチックである。電圧を印加していない状態は、好ましくは、液晶媒体の分子および、よって二色性化合物がデバイスの表面に平行に配向する(ホモジニアス配向)ことを特徴とする。これは、好ましくは、対応して選択された配向層で達成される。電圧下の状態は、好ましくは、液晶媒体の分子および、よって二色性化合物がデバイスの表面に対して垂直であることを特徴とする。
【0117】
好ましくは、電圧が印加された状態で層Sの液晶媒体の分子の少なくとも大部分が、層Sの平面に垂直に配向している。
【0118】
同様に可能で、ある場合には好ましい代わりの実施形態において、デバイスは、低吸収の状態、即ち、電圧なしで出現する高い光透過性を有する状態から、より高吸収の状態、即ち、電圧を印加することでより低い光透過性を有する状態にスイッチする。液晶媒体は、好ましくは、両方の状態でネマチックである。電圧を印加していない状態は、好ましくは、液晶媒体の分子および、よって二色性化合物がデバイスの表面に垂直に配向する(ホメオトロピック配向)ことを特徴とする。これは、好ましくは、対応して選択された配向層で達成される。電圧下の状態は、好ましくは、液晶媒体の分子および、よって二色性化合物がデバイスの表面に対して平行であることを特徴とする。好ましくは、電圧が印加された状態で層Sの液晶媒体の分子の少なくとも大部分が、層Sの平面に平行に配向している。
【実施例】
【0119】
以下の文章において、液晶化合物の構造は略号(頭文字)で再現される。これらの略号は国際公開第2012/052100号(第63~89頁)で明示的に提示されており、本願の略号を説明するために当該出願公開を参照する。加えて、以下の頭文字を使用する。
【0120】
【化1】
全ての物性は、「Merck Liquid Crystals、Physical Properties of Liquid Crystals」、1997年11月、ドイツ国メルク社刊に従って決定され、20℃の温度に対して適用する。Δnの値は、589nmで決定する。
【0121】
A)デバイスの構築
使用するデバイスを製造し、以下の層順序を有する:
a)ガラス層、Corning社製1.1mm研磨ソーダ石灰ガラスを含む、
b)ITO層、200オングストローム
c)配向層O1、JSR社製ポリイミドJALS-2096-R1を含む、ラビング済み
d)可スイッチ層、液晶媒体(対応する例の場合で、下に示す組成および厚さ)含む
e)配向層O2、c)と同様に構築;層c)のラビング方向に対して下に示す角度でラビングしたもの
f)b)に同じ
g)a)に同じ
電気的に可スイッチとするために、対応してITO層を結線する。
【0122】
B)使用する液晶混合物
以下の混合物を調製する。
【0123】
【0124】
【0125】
【0126】
【0127】
【0128】
【化4】
E)透過率の測定方法
個々のSTNセルのスペクトルはパーキンエルマー社製Lambda 1050分光器で参照に対して測定され、即ち界面での反射による光損失が照射される。
【0129】
測定はAutronic社製DMS-301で、80℃まで行う。
【0130】
全ての場合で電極間に電圧を印加して、デバイスを暗状態から明状態にスイッチする。両状態において規格EN10式(1)に従い、それぞれの場合で光透過率を決定する。
【0131】
<比較例1>
0.5%のD1、0.9%のD2および1.1%のD3を、97.5%の混合物M-1に添加する。0.78%のキラルドーパントを98.26%のこの混合物に添加する。ピッチは12.7μmである。
【0132】
混合物を8.5μmの層厚を有する上記のデバイスに導入する。セルのチルト角は、基板平面に対して87.3°である。ツイスト(O1とO2のラビング方向間の角度)は240°である。
【0133】
デバイスの透過率値は、E)で示される通り決定される。
【0134】
【表23】
比較例1からのデバイスはガラスのうねりまたは視認可能な粒子の欠陥から、明らかに視認可能な縞を示す。
【0135】
<比較例2>
0.278%のD1、0.500%のD2および0.611%のD3を、98.611%の混合物M-1に添加する。0.43%のキラルドーパントを99.57%のこの混合物に添加する。ピッチは23.1μmである。
【0136】
混合物を15.5μmの層厚を有する上記のデバイスに導入する。セルのチルト角は、基板平面に対して87.3°である。ツイスト(O1とO2のラビング方向間の角度)は240°である。
【0137】
デバイスの透過率値は、E)で示される通り決定される。
【0138】
【表24】
比較例2を比較例1と比較すれば層厚を8.5μmから15.5μmに増加することで、20℃の透過率範囲(Δτv)を5.5%と著しく損失する結果となることが見て分かる。しかしながら比較例2からのデバイスと比較して、比較例1からのデバイスはガラスのうねりまたは視認可能な粒子の欠陥から、明らかに視認可能な縞を示す。
【0139】
<例1>
0.33%のD1、0.50%のD2および0.60%のD3を、98.57%の混合物M-2に添加する。1.18%のキラルドーパントを98.82%のこの混合物に添加する。ピッチは10.32μmである。
【0140】
混合物を15.4μmの層厚を有する上記のデバイスに導入する。セルのチルト角は、基板平面に対して88.5°である。ツイスト(O1とO2のラビング方向間の角度)は240°である。
【0141】
デバイスの透過率値は、E)で示される通り決定される。
【0142】
【表25】
15.4μmにおいて例1からのデバイスは比較例2と比較して、2.4%の透過率範囲(Δτv)の改良を示す。より大きな層厚の場合において透過率範囲の改良は、明らかに明瞭である。加えて比較例1と比較し、ほぼ二倍の層厚によって、ガラスのうねりからの視認可能な縞がより少なく、または視認可能な粒子欠陥がより少ないことが明瞭であることを意味する。
【0143】
<例2>
2.0%のD4、0.33%のD5、0.26%のD6および0.70%のD7を、96.71%の混合物M-2に添加する。1.18%のキラルドーパントを98.82%のこの混合物に添加する。ピッチは10.32μmである。
【0144】
混合物を15.4μmの層厚を有する上記のデバイスに導入する。セルのチルト角は、基板平面に対して88.5°である。ツイスト(O1とO2のラビング方向間の角度)は240°である。
【0145】
デバイスの透過率値は、E)で示される通り決定される。
【0146】
【表26】
15.4μmの層厚において例2からのデバイスは比較例2と比較して20℃において、1.8%の透過率範囲(Δτv)の改良を示す。加えて比較例1と比較し、ほぼ二倍の層厚によって、ガラスのうねりからの視認可能な縞がより少なく、または視認可能な粒子欠陥がより少ないことが明瞭であることを意味する。
【0147】
<例3>
0.33%のD1、0.50%のD2および0.60%のD3を、98.57%の混合物M-3に添加する。0.524%のキラルドーパントを99.476%のこの混合物に添加する。ピッチは23.1μmである。
【0148】
混合物を15.4μmの層厚を有する上記のデバイスに導入する。セルのチルト角は、基板平面に対して88.5°である。ツイスト(O1とO2のラビング方向間の角度)は240°である。
【0149】
デバイスの透過率値は、E)で示される通り決定される。
【0150】
【表27】
15.4μmにおいて例3は比較例2と比較して、4.8%の透過率範囲(Δτv)の明らかな改良を示す。比較例1および2の間のより大きな層厚による透過率範囲(Δτv)の低下は、例3において補償された。加えて比較例1と比較し、ほぼ二倍の層厚によって、ガラスのうねりからの視認可能な縞がより少なく、または視認可能な粒子欠陥がより少ないことが明瞭であることを意味する。