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  • 特許-液晶ポリエステル繊維の製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-06
(45)【発行日】2023-03-14
(54)【発明の名称】液晶ポリエステル繊維の製造方法
(51)【国際特許分類】
   D01F 6/62 20060101AFI20230307BHJP
【FI】
D01F6/62 308
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019129432
(22)【出願日】2019-07-11
(65)【公開番号】P2021014645
(43)【公開日】2021-02-12
【審査請求日】2022-01-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000001085
【氏名又は名称】株式会社クラレ
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】池端 桂一
(72)【発明者】
【氏名】水光 俊介
(72)【発明者】
【氏名】井出 潤也
【審査官】藤原 敬士
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-030920(JP,A)
【文献】特開2008-240228(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D01F 6/62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液晶ポリエステル繊維を加熱体に直接接触させる接触加熱による熱処理工程を含み、
前記液晶ポリエステル繊維の融点をMp[℃]とした場合、前記加熱体の温度がMp-50℃以上Mp未満であることを特徴とする、液晶ポリエステル繊維の製造方法。
【請求項2】
前記熱処理工程を、引張強度が18cN/dtex以上の液晶ポリエステル繊維に対して行うことを特徴とする、請求項1に記載の液晶ポリエステル繊維の製造方法。
【請求項3】
前記熱処理工程の熱処理時間が10秒以下であることを特徴とする、請求項1または2に記載の液晶ポリエステル繊維の製造方法。
【請求項4】
前記加熱体が熱ローラーであることを特徴とする、請求項1~3のいずれか1項に記載の液晶ポリエステル繊維の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶ポリエステル繊維の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、液晶ポリエステルを溶融紡糸・熱処理することにより、18cN/dtex以上の高強度を有する優れた繊維が得られることが知られている。この高強度の液晶ポリエステル繊維は、その高い強度や低吸水性を生かして一般産業資材や漁網、スポーツ用品等に幅広く用いられている。しかし、液晶ポリエステル繊維は、その繊維軸方向に高度に配向した分子鎖構造ゆえに、擦れに弱く、耐摩耗性に劣るという問題があった。
【0003】
そこで、これらの課題を解決するために、液晶ポリエステル繊維の表面に対して、無機粒子のなかでも化学的に不活性かつ適度な硬さを有する、ケイ酸およびマグネシウムを主成分とする無機粒子を付与することにより、液晶ポリエステル繊維の耐摩耗性を向上させる方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
また、液晶ポリエステル繊維を、示差熱量測定において、50℃の温度から20℃/分の昇温条件で測定した際に観測される吸熱ピーク温度(Tm1)+10℃以上の温度で熱処理することで、繊維表面の結晶配向を緩和させ、耐摩耗性を向上させる方法が提案されている。この技術では、繊維表面の結晶性を低下させ、結晶/非晶の構造差が減少することにより、意図的にフィブリル構造を乱し、繊維全体を柔軟化させることで、高次加工工程での毛羽発生を抑制し、耐摩耗性を高めることができると記載されている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2004-107826号公報
【文献】特開2008-240228号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上記特許文献1に記載された方法においては、無機粒子が繊維表面あるいは繊維間に強固に付着している状態において、繊維表面に加わる擦過の衝撃に対して無機粒子が緩衝材となるため、過剰な擦過や外的負荷が加わり、無機粒子が繊維表面から脱落した場合には、耐摩耗性が低下するという問題があった。
【0007】
また、上記特許文献2に記載された方法においては、吸熱ピーク温度(Tm1)を超える温度での熱処理によって繊維表面が軟化し、単繊維同士が融着して品質が低下するという問題があった。
【0008】
そこで、本発明は、上述の問題に鑑みてなされたものであり、無機粒子等の剥離落下のおそれがある材料を用いることなく、繊維表面が平滑であり、耐摩耗性、強度に優れた液晶ポリエステル繊維の提供、および該液晶ポリエステル繊維の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討したところ、液晶ポリエステル繊維を、所定の温度範囲に加熱した加熱体に直接接触させる接触加熱による熱処理を行うことにより、耐摩耗性、強度に優れた液晶ポリエステル繊維が得られることを見出し、本発明を完成させるに至った。すなわち、本発明は、以下の好適な態様を提供するものである。
【0010】
[1]液晶ポリエステル繊維を加熱体に直接接触させる接触加熱による熱処理工程を含み、液晶ポリエステル繊維の融点をMp[℃]とした場合、加熱体の温度がMp-50℃以上Mp未満であることを特徴とする、液晶ポリエステル繊維の製造方法。
[2]前記熱処理工程を、引張強度が18cN/dtex以上の液晶ポリエステル繊維に対して行うことを特徴とする、前記[1]に記載の液晶ポリエステル繊維の製造方法。
[3]前記熱処理工程の熱処理時間が10秒以下であることを特徴とする、前記[1]または[2]に記載の液晶ポリエステル繊維の製造方法。
[4]前記加熱体が熱ローラーであることを特徴とする、前記[1]~[3]のいずれかに記載の液晶ポリエステル繊維の製造方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、耐摩耗性、強度に優れた液晶ポリエステル繊維を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】実施例1において作製した液晶ポリエステルマルチフィラメント(接触加熱による熱処理前)の走査型電子顕微鏡(SEM)写真である。
図2】実施例1において作製した液晶ポリエステルマルチフィラメント(接触加熱による熱処理後)の走査型電子顕微鏡(SEM)写真である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の液晶ポリエステル繊維とその製造方法について、詳細に説明する。
本発明に用いる液晶ポリエステルとしては、例えば、芳香族ジオール、芳香族ジカルボン酸、芳香族ヒドロキシカルボン酸等に由来する反復構成単位からなり、本発明の効果を損なわない限り、芳香族ジオール、芳香族ジカルボン酸、芳香族ヒドロキシカルボン酸に由来する構成単位は、その化学的構成については特に限定されるものではない。また、本発明の効果を阻害しない範囲で、液晶ポリエステルは、芳香族ジアミン、芳香族ヒドロキシアミンまたは芳香族アミノカルボン酸に由来する構成単位を含んでいてもよい。例えば、好ましい構成単位としては、表1に示す例が挙げられる。
【0014】
【表1】
【0015】
表1の構成単位において、mは0~2の整数であり、式中のYは、1~置換可能な最大数の範囲において、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等)、アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、イソプロピル基、t-ブチル基等の炭素数1から4のアルキル基等)、アルコキシ基(例えば、メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基、n-ブトキシ基等)、アリール基(例えば、フェニル基、ナフチル基等)、アラルキル基(ベンジル基(フェニルメチル基)、フェネチル基(フェニルエチル基)等)、アリールオキシ基(例えば、フェノキシ基等)、アルキルオキシ基(例えば、ベンジルオキシ基等)等が挙げられる。
【0016】
より好ましい構成単位としては、下記表2、表3及び表4に示す例(1)~(18)に記載される構成単位が挙げられる。なお、式中の構成単位が、複数の構造を示し得る構成単位である場合、そのような構成単位を二種以上組み合わせて、ポリマーを構成する構成単位として使用してもよい。
【0017】
【表2】
【0018】
【表3】
【0019】
【表4】
【0020】
表2、表3及び表4の構成単位において、nは1または2の整数で、それぞれの構成単位n=1、n=2は、単独でまたは組み合わせて存在してもよく、Y及びYは、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等)、アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、イソプロピル基、t-ブチル基等の炭素数1から4のアルキル基等)、アルコキシ基(例えば、メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基、n-ブトキシ基等)、アリール基(例えば、フェニル基、ナフチル基等)、アラルキル基(ベンジル基(フェニルメチル基)、フェネチル基(フェニルエチル基)等)、アリールオキシ基(例えば、フェノキシ基等)、アラルキルオキシ基(例えば、ベンジルオキシ基等)等であってもよい。これらのうち、水素原子、塩素原子、臭素原子、またはメチル基が好ましい。
【0021】
また、Zとしては、下記式で表される置換基が挙げられる。
【0022】
【化1】
【0023】
液晶ポリエステルは、好ましくは、ナフタレン骨格を構成単位として有する組み合わせであってもよい。なお、ヒドロキシ安息香酸由来の構成単位(A)と、ヒドロキシナフトエ酸由来の構成単位(B)の両方を含むことが、特に好ましい。例えば、構成単位(A)としては下記式(A)が挙げられ、構成単位(B)としては下記式(B)が挙げられる。溶融成形性を向上する観点から、構成単位(A)と構成単位(B)の比率は、好ましくは9/1~1/1、より好ましくは7/1~1/1、さらに好ましくは5/1~1/1の範囲であってもよい。
【0024】
【化2】
【0025】
【化3】
【0026】
また、(A)の構成単位と(B)の構成単位の合計は、例えば、全構成単位に対して65モル%以上であってもよく、より好ましくは70モル%以上、さらに好ましくは80モル%以上であってもよい。ポリマー中、特に(B)の構成単位が4~45モル%である液晶ポリエステルが好ましい。
【0027】
なお、上記液晶ポリエステルには、本発明の効果を損なわない範囲で、ポリエチレンテレフタレート、変性ポリエチレンテレフタレート、ポリオレフィン、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルエーテルケトン、フッ素樹脂等の熱可塑性ポリマーを添加してもよい。また、酸化チタン、カオリン、シリカ、酸化バリウム等の無機物、カーボンブラック、染料や顔料等の着色剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤等の各種添加剤を含んでいてもよい。
【0028】
本発明における液晶ポリエステル繊維は、上記液晶ポリエステルのうち、加熱により繊維表面の一部を融解することができる性質を有するものを用いる限り、その繊維化の方法は限定されないが、通常、溶融紡糸により得られる繊維を用いることができる。溶融紡糸は公知または慣用の方法により行うことができ、例えば、押出機において液晶ポリエステル繊維を得るための繊維形成樹脂を溶融させた後、所定の紡糸温度でノズルから吐出して所定の速度で巻き取ることで得ることができる。
【0029】
次に、溶融紡糸で得られた繊維は固相重合されることが好ましい。ここで固相重合とは、繊維の強度を向上させるために、溶融紡糸した液晶ポリエステル繊維を熱処理することである。固相重合の方法は公知の方法を用いることができ、例えば、雰囲気加熱、接触加熱などの手段が挙げられる。雰囲気としては空気、不活性ガス(例えば窒素、アルゴン)のいずれを用いてもよい。なお、該熱処理の方式は、本発明の効果を損なわない限り、バッチ方式、ロール・トゥ・ロール方式を問わず、いずれの方式も採用することができる。また、固相重合の熱処理温度に関しては、液晶性ポリエステル繊維の固相重合前の融点をMpとするとき、Mp-80℃~Mpの温度で行われる。該繊維の融点は固相重合が進行するにつれ上昇するので、固相重合の熱処理温度は順次上昇していく温度パターンで処理することが生産効率の観点において好ましい。
【0030】
なお、ここでいう融点とは、JIS K 7121試験法に準拠し、示差走差熱量計(DSC;株式会社島津製作所製「DSC-60A」)で測定し、観察される主吸収ピーク温度である。具体的には、前記DSC装置に、サンプルを1~10mgとりアルミ製パンへ封入した後、キャリヤーガスとして窒素を100cc/分流し、20℃/分で昇温したときの吸熱ピークを測定する。ポリマーの種類によって、DSC測定において1st runで明確なピークが現れない場合は、50℃/分の昇温速度で予想される流れ温度よりも50℃高い温度まで昇温し、その温度で3分間完全に溶融した後、80℃/分の降温速度で50℃まで降温し、その後、20℃/分の昇温速度で吸熱ピークを測定するとよい。
【0031】
具体的には、固相重合処理の温度は、例えば、180~380℃であってもよく、好ましくは200~350℃、より好ましくは250~350℃であってもよい。
【0032】
固相重合処理の加熱時間は、特に限定されず、例えば、1時間以上、好ましくは5時間以上、より好ましくは8時間以上であってもよい。加熱時間の上限は特に制限されないが100時間以下、より好ましくは50時間以下であってもよい。
【0033】
本発明では、液晶ポリエステル繊維を加熱体に直接接触させる熱処理を行うことが重要である。この接触加熱による熱処理は上述した固相重合後に行うことが好ましい。接触加熱による熱処理を行うことにより、液晶ポリエステル繊維の表面にある毛羽が加熱体によって押圧されて、液晶ポリエステル繊維の表面に熱融着されるため、液晶ポリエステル繊維の表面における毛羽数を減らすことができる。従って、毛羽を起点とした擦過による摩擦が減少するため、結果として、耐摩耗性が向上する。なお、固相重合(一段階目の熱処理)により強度を18cN/dtex以上に高めた液晶ポリエステル繊維を、加熱体に直接接触させる接触加熱による熱処理を二段階目の熱処理とするのが好ましい。
【0034】
上記加熱体の種類は特に制限されるものではなく、公知のプレートヒーター、加熱ガイド、熱ローラー等を用いることができる。また熱ローラーを用い、熱ローラーを糸の搬送速度と同速で駆動回転させること、あるいは、熱ローラーの回転を駆動力に糸を搬送することが、糸と加熱体との間の動摩擦を無くし、接触加熱による熱処理中の糸の劣化を回避できるため好ましい。また加熱体を複数用い、それぞれに別個の温度を設定することで、熱処理温度を多段的に変化させながら接触加熱を行っても良い。
【0035】
上記の接触加熱による熱処理の温度(熱処理時の加熱体の温度)に関しては、液晶ポリエステル繊維の固相重合後の融点より適度に低い温度で液晶ポリエステル繊維の表面を加熱することが、単繊維間での融着を強めずに毛羽数を減少させるために重要である。加熱体の温度は、液晶ポリエステル繊維の固相重合後の融点をMp[℃]とした場合、下限値としては、Mp-50℃以上の温度であることが必要であり、好ましくはMp-30℃以上、より好ましくはMp-10℃以上である。また、上限値としては、Mp未満の範囲であることが必要であり、好ましくはMp-5℃以下である。
【0036】
上記下限値より低い温度の熱処理では、毛羽の熱融着が不十分で、耐摩耗性の向上効果は得られない。また、上記上限値より高い温度で熱処理を行うと、単繊維表面の毛羽が溶融して融着点が形成されるという好ましい効果のみならず、異なる単繊維間での融着が強まることでマルチフィラメントが剛直になり、工程通過性などの品質が低下するという好ましくない効果も表れてしまう。本発明においては熱処理温度はMpよりも低いため、単繊維間の融着を高めることなく、単繊維表面の毛羽数を減らすことができる。
【0037】
なお、液晶ポリエステル繊維がモノフィラメントの場合には、単一の単繊維のみで製品を構成するため、異なる単繊維間の融着の程度は無関係であるが、モノフィラメントはマルチフィラメントよりも加熱や張力に敏感であり、Mpよりも高温にした際には溶融により断糸しやすくなるため、結局、好ましい加熱体の温度はマルチフィラメントと同一のMp-50℃以上Mp未満の範囲である。
【0038】
また、接触加熱による熱処理に要する時間に関しては、本発明上の観点からは特に制限されるものではなく、必要な物性の液晶ポリエステル繊維が得られるように行えばよい。ただし、熱処理時間(加熱体との接触時間)が長すぎると、加熱下での屈曲疲労により強度や耐摩耗性などの糸品質が低下してしまうため、10秒以下に設定することが好ましく、5秒以下がより好ましい。
【0039】
本発明の液晶ポリエステル繊維は、繊維表面形状が平滑になっており、耐摩耗性の向上や工程通過性の向上といった特徴を有するが、その効果をさらに高めるために、仕上げ油剤を塗布してから用いることが好ましい。仕上げ油剤としては、ポリエステル繊維用に一般に用いられる仕上げ油剤が好ましく適用できる。
【0040】
本発明により得られる液晶ポリエステル繊維の単繊維繊度は、好ましくは0.5dtex以上、50dtex以下である。なお、本発明における固相重合および接触加熱による熱処理は、いずれも繊度を大きく変化させる処理ではないため、固相重合前の単繊維繊度および接触加熱前の単繊維繊度の好ましい範囲も、上記と同様である。
【0041】
単繊維繊度が上記下限値を下回ると、単繊維の機械的強力が低いため、毛羽や単糸切れの発生が多くなる場合がある。また、単繊維繊度が上記上限値を上回ると、単糸の内部まで熱が伝わりにくく、固相重合に時間が掛かったり強度が低いものになったりする場合がある。単繊維繊度の下限値は、1dtex以上であることがより好ましく、1.5dtex以上であることがさらに好ましい。単繊維繊度の上限値は、15dtex以下であることがより好ましく、10dtex以下であることがさらに好ましい。
【0042】
また、本発明により得られる液晶ポリエステル繊維のマルチフィラメントでの総繊度は、好ましくは10dtex以上、50000dtex以下である。なお、本発明における固相重合および接触加熱による熱処理はいずれも繊度を大きく変化させる処理ではないので、固相重合前および接触加熱前の総繊度の好ましい範囲も、上記と同様である。また、液晶ポリエステルモノフィラメントの総繊度の好ましい範囲は、構造上、単繊維繊度の好ましい範囲と一致する。
【0043】
総繊度が上記下限値を下回ると、後述の接触加熱による熱処理の際に断糸トラブルが発生しやすくなる場合がある。総繊度が上記上限値を上回ると、マルチフィラメントの内層の繊維まで熱が伝わりにくく、固相重合に時間が掛かったり強度が低いものになったり、得られた繊維の品質のばらつきが大きくなったりする場合がある。総繊度の下限値は、15dtex以上であることがより好ましく、25dtex以上であることがさらに好ましい。総繊度の上限値は、30000dtex以下であることがより好ましく、10000dtex以下であることがさらに好ましい。
【0044】
本発明により得られる液晶ポリエステル繊維は、引き揃えてトウとして使用してもよい。トウ厚みは好ましくは0.1mm以上、10mm以下である。トウ厚みの下限値は、0.2mm以上であることがより好ましく、0.3mm以上であることがさらに好ましい。トウ厚みの上限値は、5mm以下であることがより好ましく、3mm以下であることがさらに好ましい。なお、本発明における固相重合および接触加熱による熱処理はいずれも繊度を大きく変化させる処理ではないので、固相重合前および接触加熱前のトウ厚みの好ましい範囲も、上記と同様である。
【0045】
本発明により得られる液晶ポリエステル繊維は、高強度であることが好ましい。本発明における「高強度」とは、引張強度が18cN/dtex以上であることを指す。引張強度は、より好ましくは20cN/dtex以上、さらに好ましくは23cN/dtex以上である。引張強度の上限値は特に制限されるものではないが、本発明により達し得る値としては30cN/dtex程度である。なお、引張強度は、後述する実施例に記載の測定方法により算出されるものである。
【0046】
本発明により得られる液晶性ポリエステルマルチフィラメント繊維の融着の強さは、後述する実施例に記載の測定方法により規定する等級(A~Dの4段階評価)がA~Cであることが好ましい。融着が上記範囲より強くなると、得られた繊維が硬く曲げづらいものになるため、座屈欠陥が入りやすくなったり、高次加工工程での加工性が悪化したり場合がある。融着の等級範囲は、より好ましくはA~Bである。
【0047】
本発明における接触加熱による熱処理は、液晶ポリエステル繊維の高い強度を損なうことなく、耐摩耗性を高められることを特徴としているため、接触加熱による熱処理前後の強度保持率は80%以上が好ましく、より好ましくは85%以上、更に好ましくは90%以上である。
【0048】
なお、ここで言う接触加熱による熱処理前後の強度保持率とは、接触加熱による熱処理後の液晶ポリエステル繊維の引張強度を接触加熱による熱処理前の液晶ポリエステル繊維の引張強度で除した値のことをいう。
【0049】
本発明の繊維は、繊維表面が平滑であり、耐摩耗性、強度に優れているため、後加工性、加工後の物性に優れる。従って、例えば、テンションメンバー(電線、光ファイバー、ヒーター線芯糸、イヤホンコード等の各種電気製品のコード等)、セールクロス、ロープ、ザイル、陸上ネット、命綱、釣糸、漁網、延縄等の高次加工製品等に用いられる繊維として好適に利用できる。
【実施例
【0050】
以下、本発明を実施例によりさらに具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。なお、本発明の各種特性の評価は次の方法で行った。
【0051】
<総繊度>
JIS L 1013:2010 8.3.1 A法に準拠し、大栄科学精器製作所社製検尺器を用いて液晶ポリエステル繊維を100mカセ取りし、その重量(g)を100倍して1水準当たり2回の測定を行い、その平均値を、得られた液晶ポリエステル繊維の総繊度(dtex)とした。
【0052】
<単繊維繊度>
総繊度をフィラメント本数で除した値を単繊維繊度(dtex)とした。
【0053】
<引張強度>
JIS L 1013:2010 8.5.1に準拠し、(株)島津製作所製オートグラフ「AGS-100B」を用いて、糸長10cm、引張速度10cm/分の条件にて、糸条1サンプルにつき6回の測定を行い、その平均値を強度(cN/dtex)とした。
【0054】
<強度保持率>
上述の引張強度と同じ測定条件及び計算方法で測定した、接触加熱による熱処理前の試料の強度をα(cN/dtex)、接触加熱による熱処理後の試料の強度をβ(cN/dtex)とした場合に、熱処理後の試料の強度βを熱処理前の試料の強度αで除した商に、100を掛けたものを強度保持率(%)とした。
【0055】
[数1]
強度保持率(%)=100×(β/α) (1)
【0056】
<融点>
JIS K7121試験法に準拠し、示差走差熱量計(DSC;株式会社島津製作所製「DSC-60A」)で測定し、観察される主吸収ピーク温度を融点とした。具体的には、前記DSC装置に、試料を1~10mgをとりアルミ製パンへ封入した後、キャリヤーガスとして窒素を100cc/分流し、20℃/分で昇温したときの吸熱ピークを測定した。
【0057】
<毛羽数の測定方法>
繊維試料を走査型電子顕微鏡(SEM)観察用ステージに載置し、試料がたるまないように観察領域外の試料端2点をセロハンテープで固定し、金蒸着処理を行った。なお、試料の向きは繊維側面を観察できるよう、観察方向に対して横向きにした。各試料につき、複数個所のSEM観察を無作為に行い、接触加熱による熱処理前後の2試料の毛羽数をカウントした。
【0058】
ここで、「毛羽」とは、単繊維の側面に存在する、部分的に樹脂が繊維軸方向に裂けて、一端が剥離して浮き出た構造のことをいう。
【0059】
また、正確性と観察時間のバランスを図るとの観点から、接触加熱による熱処理前の試料において、10~100個の毛羽数を確認することができる範囲を予め確認し、該範囲を観察した。また、接触加熱による熱処理前後において、観察時の倍率および視野の範囲は同じとした。例えば、本発明の参考例、実施例、比較例におけるマルチフィラメントはいずれも各25枚の観察視野を、モノフィラメントはいずれも各50枚の観察視野を撮影し、毛羽数をカウントした。
【0060】
<耐摩耗性>
耐摩耗性は、液晶ポリエステル繊維の総繊度によって、以下の2種類の方法を用いて評価した。
【0061】
<総繊度100dtex以上の繊維の耐摩耗性評価方法>
液晶ポリエステル繊維に80T/mのZ撚りをかけ、これをコード耐久試験機(安田機鋼株式会社製)にて撚り合わせ数3回のZ撚りをかけた状態で、一定重量の荷重で試験錘に吊り下げ、反転往復回数20回/分にて撚り合わせ部分で摩耗させ、繊維が切断されるまでの回数を測定した。そして、各試料に対し、8回測定を行い、その平均値を耐摩耗性として評価した。荷重の重量は、正確性と観察時間のバランスを図るとの観点から、切断までの回数が1000~100000回の範囲に収まるように適当に決定した。例えば、本発明の参考例1、実施例1~7、比較例1~4におけるマルチフィラメントは、いずれも荷重5kgで評価した。
【0062】
<総繊度100dtex未満の繊維の耐摩耗性評価方法>
0.98cN/dtexの荷重をかけた繊維を垂直に垂らし、繊維に対して垂直になるように直径4mmのセラミック棒ガイド(湯浅糸道工業(株)社製、材質YM-99C)を接触角3°で押し付け、ストローク長20mm、ストローク速度600回/分でガイドを繊維軸方向に擦過させ、30秒おきに実体顕微鏡観察を行い、棒ガイド上もしくは繊維表面上に白粉またはフィブリルの発生が確認されるまでの時間を測定し、10回の測定の平均値を求め耐摩耗性とした。なお500秒の擦過後でも白粉またはフィブリルの発生が見られなかった場合は500秒とした。このとき、耐摩耗性が300秒以上をA、200秒以上300秒未満をB、50秒以上200秒未満をC、50秒未満をDとした。
【0063】
<融着の強さ>
まず、試料を20mm長さに切断したものを、ヤマト科学社製「ブレンソニック220」を用い、水中で20分間超音波を当てて分散させ、水中に分散した単糸の合計数(n)を求め、固相重合処理前の単糸数(N)とから下記式(2)により、融着度(f)を算出した。なお、かかる値は、無作為に採取した試料について10回測定した値の平均値である。
【0064】
[数2]
f=N/n (2)
【0065】
次に、fの数値に応じて、以下の4階級に融着の強さの等級区分を行った。式(2)から明らかなように、Aが最も融着が少なく、Dが最も融着が多い。
A: f<5
B: 5≦f<10
C: 10≦f<50
D: 50≦f
【0066】
[参考例1]
上記構成単位(A)と(B)が(A)/(B)=73/27(mol比)である液晶ポリエステル(樹脂の融点:281℃)を使用した。これを押出機にて溶融押し出しし、ギアポンプで計量しつつ紡糸頭にポリマーを供給した。紡糸頭には孔径0.125mmφ、ランド長0.175mm、孔数300個の紡糸口金を備え、吐出量168g/分でポリマーを吐出し、巻き取り速度1000m/分でボビンに巻き取った。ここで得られた繊維を、巻密度0.6g/cmになるようアルミニウム製ボビンに巻き返し、密閉型オーブンを用いて窒素雰囲気下250~280℃で16時間熱処理(固相重合)を行うことで、総繊度1670dtex、フィラメント本数300本の液晶ポリエステルマルチフィラメントを得た。本試料に油剤が付着していないことを確認するために、JIS L 1013:2010 8.28に記載の方法に従って、本試料の洗浄減量を算出したところ、0.01%未満であり、公知の繊維に比し、十分に小さい値が得られた。本試料を、接触加熱による熱処理に供する試料として、実施例1~7、及び比較例1~4に用いた。本試料の分析結果を表5に示す。なお、耐摩耗性は、後述の実施例、比較例において用いた仕上げ油剤と同じものを同じ方法で付与した後に測定した。
【0067】
[実施例1]
参考例1の試料をボビンから解舒しつつ、加熱装置を備えたローラー(以下、「熱処理用熱ローラー」という。)に通して、試料を熱処理用熱ローラーに直接接触させる接触加熱による熱処理を行い、その後、熱処理後の試料を巻取機にて別のボビンに巻き取った。次いで、この試料をボビンから解舒しつつ、液晶ポリエステルマルチフィラメントに対して1重量%の仕上げ油剤が付着するように、オイリングガイドを用いて仕上げ油剤の水分散液を付与し、80℃に設定した乾燥用熱ローラーに通して水分を乾燥除去し、巻取機にて、さらに別のボビンに巻き取った。なお、熱処理用熱ローラーの温度は290℃、接触時間は4.8秒とした。また、仕上げ油剤の水分散液は、5重量%のラウリン酸と5重量%のポリオキシエチレンラウリルエーテルを水エマルジョン状態にしたものを用いた。本試料の分析結果を表5に示す。
【0068】
また、熱処理前後の試料における毛羽の状態を走査型電子顕微鏡(SEM)にて観察した。熱処理前の試料の走査型電子顕微鏡(SEM)写真を図1に示すとともに、熱処理後の試料の走査型電子顕微鏡(SEM)写真を図2に示す。
【0069】
図1図2に示すように、接触加熱による熱処理を行うことにより、試料の表面にある毛羽(試料表面から外方に向けて突出している部分)が加熱体によって押圧されて、毛羽全体が試料表面に熱融着され、突出部分が消滅していることが分かる。
【0070】
[実施例2]
熱処理用熱ローラーの接触時間を1.7秒としたこと以外は実施例1と同様にした。本試料の分析結果を表5に示す。
【0071】
[実施例3]
熱処理用熱ローラーの温度を310℃としたこと以外は実施例1と同様にした。本試料の分析結果を表5に示す。
【0072】
[実施例4]
熱処理用熱ローラーの温度を310℃に変更するとともに、接触時間を1.7秒としたこと以外は実施例1と同様にした。本試料の分析結果を表5に示す。
【0073】
[実施例5]
熱処理用熱ローラーの温度を310℃に変更するとともに、接触時間を1.1秒としたこと以外は実施例1と同様にした。本試料の分析結果を表5に示す。
【0074】
[実施例6]
熱処理用熱ローラーの温度を310℃に変更するとともに、接触時間を0.6秒としたこと以外は実施例1と同様にした。本試料の分析結果を表5に示す。
【0075】
[実施例7]
熱処理用熱ローラーの温度を310℃に変更するとともに、接触時間を7.2秒としたことは実施例1と同様にした。本試料の分析結果を表5に示す。
【0076】
[比較例1]
熱処理用熱ローラーの温度を260℃に変更したこと以外は実施例1と同様にした。本試料の分析結果を表5に示す。
【0077】
[比較例2]
熱処理用熱ローラーの温度を80℃に変更したこと以外は実施例1と同様にした。本試料の分析結果を表5に示す。
【0078】
[比較例3]
熱処理用熱ローラーの温度を350℃に変更したこと以外は実施例1と同様にした。本試料の分析結果を表5に示す。
【0079】
[比較例4]
熱処理用熱ローラーの温度を350℃に変更するとともに、接触時間を1.7秒としたこと以外は実施例1と同様にした。本試料の分析結果を表5に示す。
【0080】
【表5】
【0081】
[参考例2]
上記構成単位(A)と(B)が(A)/(B)=73/27(mol比)である液晶ポリエステル(樹脂の融点:281℃)を使用した。これを押出機にて溶融押し出しし、ギアポンプで計量しつつ紡糸頭にポリマーを供給した。紡糸頭には孔径0.125mmφ、ランド長0.175mm、孔数20個の紡糸口金を備え、吐出量11.2g/分でポリマーを吐出した。吐出したポリマーのうち19本をエアムーバーで吸引除去しつつ、残る1本を巻き取り速度1000m/分でボビンに巻き取った。ここで得られた1本の繊維を、巻密度0.6g/cmになるようアルミニウム製ボビンに巻き返し、密閉型オーブンを用いて窒素雰囲気下において、250~280℃で16時間熱処理(固相重合)を行うことにより、総繊度10dtex、フィラメント本数1本の液晶ポリエステルモノフィラメントを得た。参考例1と同様の方法で本試料の洗浄減量を算出したところ、0.01%未満であり、公知の繊維に比し、十分小さい値が得られた。本試料を、接触加熱による熱処理に供する試料として、実施例8~14、及び比較例5~7に用いた。本試料の分析結果を表6に示す。なお、耐摩耗性は、後述の実施例、比較例において用いた仕上げ油剤と同じものを同じ方法で付与した後に測定した。
【0082】
[実施例8]
参考例2の試料をボビンから解舒しつつ、上述の熱処理用熱ローラーに通して、試料を熱処理用熱ローラーに直接接触させる接触加熱による熱処理を行い、その後、熱処理後の試料を巻取機にて別のボビンに巻き取った。次いで、この試料をボビンから解舒しつつ、液晶ポリエステルマルチフィラメントに対して1重量%の仕上げ油剤が付着するように、オイリングガイドを用いて仕上げ油剤の水分散液を付与し、80℃に設定した乾燥用熱ローラーに通して水分を乾燥除去し、巻取機にて、さらに別のボビンに巻き取った。なお、熱処理用熱ローラーの温度は280℃、接触時間は4.8秒とした。また、仕上げ油剤の水分散液は、5重量%のラウリン酸と5重量%のポリオキシエチレンラウリルエーテルを水エマルジョン状態にしたものを用いた。本試料の分析結果を表6に示す。
【0083】
[実施例9]
熱処理用熱ローラーの接触時間を1.7秒としたこと以外は実施例8と同様にした。本試料の分析結果を表6に示す。
【0084】
[実施例10]
熱処理用熱ローラーの温度を300℃としたこと以外は実施例8と同様にした。本試料の分析結果を表6に示す。
【0085】
[実施例11]
熱処理用熱ローラーの温度を300℃に変更するとともに、接触時間を1.7秒としたこと以外は実施例8と同様にした。本試料の分析結果を表6に示す。
【0086】
[実施例12]
熱処理用熱ローラーの温度を300℃に変更するとともに、接触時間を1.1秒としたこと以外は実施例8と同様にした。本試料の分析結果を表6に示す。
【0087】
[実施例13]
熱処理用熱ローラーの温度を300℃に変更するとともに、接触時間を0.6秒としたこと以外は実施例8と同様にした。本試料の分析結果を表6に示す。
【0088】
[実施例14]
熱処理用熱ローラーの温度を300℃に変更するとともに、接触時間を7.2秒としたことは実施例8と同様にした。本試料の分析結果を表6に示す。
【0089】
[比較例5]
熱処理用熱ローラーの温度を250℃に変更したこと以外は実施例8と同様にした。本試料の分析結果を表6に示す。
【0090】
[比較例6]
熱処理用熱ローラーの温度を80℃に変更したこと以外は実施例8と同様にした。本試料の分析結果を表6に示す。
【0091】
[比較例7]
熱処理用熱ローラーの温度を320℃に変更するとともに、接触時間を1.7秒としたこと以外は実施例8と同様にしたが、試料を熱処理用熱ローラーに直接接触させる接触加熱において、試料が速やかに溶融して断糸し、液晶ポリエステル繊維が得られなかった。
【0092】
【表6】
【0093】
表5に示すように、液晶ポリエステルマルチフィラメントを、Mp-50℃以上Mp未満の温度(すなわち、266℃以上316℃未満)に加熱された熱処理用熱ローラーに直接接触させる接触加熱を行った実施例1~7においては、接触加熱を行わなかった参考例1と比較して、試料表面の毛羽数が大幅に減少しており、耐摩耗性に優れるとともに、強度に優れ、さらに単繊維間の融着が一定以下の水準に抑制されていることが分かる。
【0094】
また、比較例1~2においては、Mp-50℃より低い温度で熱処理を行ったため、接触加熱を行わなかった参考例1と比較して毛羽数が同等であり、耐摩耗性も向上していないことが分かる。
【0095】
また、比較例3においては、Mpより高い温度で熱処理を行っているため、毛羽の減少のみならず、異なる単繊維間の融着が生じて繊維が剛直になったことで、参考例1と比較して耐摩耗性が却って低下していることが分かる。同様に、比較例4においても、Mpより高い温度で熱処理を行っているため、耐摩耗性が向上していないことが分かる。
【0096】
また、表6に示すように、液晶ポリエステルモノフィラメントを、Mp-50℃以上Mp未満の温度(すなわち、258℃以上308℃未満)に加熱された熱処理用熱ローラーに直接接触させる接触加熱を行った実施例8~14においては、接触加熱を行わなかった参考例2と比較して、試料表面の毛羽数が大幅に減少しており、耐摩耗性に優れるとともに、強度に優れていることが分かる。
【0097】
また、比較例5~6においては、Mp-50℃より低い温度で熱処理を行ったため、接触加熱を行わなかった参考例2と比較して毛羽数が同等であり、耐摩耗性も向上していないことが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0098】
本発明の液晶ポリエステル繊維は、無機粒子等の剥離落下のおそれがある材料を用いることなく、繊維表面が平滑で耐摩耗性、強度に優れているため、テンションメンバー(電線、光ファイバー、ヒーター線芯糸、イヤホンコード等の各種電気製品のコード等)、セールクロス、ロープ、ザイル、陸上ネット、命綱、釣糸、漁網、延縄等の高次加工製品等に用いられる繊維として好適に利用できる。
図1
図2