(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-06
(45)【発行日】2023-03-14
(54)【発明の名称】凹所およびキャップを有する、中心部が可撓性の片面研磨ヘッド
(51)【国際特許分類】
H01L 21/304 20060101AFI20230307BHJP
B24B 37/30 20120101ALI20230307BHJP
【FI】
H01L21/304 622K
H01L21/304 621D
B24B37/30 E
B24B37/30 C
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020186478
(22)【出願日】2020-11-09
(62)【分割の表示】P 2019081061の分割
【原出願日】2015-10-05
【審査請求日】2020-11-16
(32)【優先日】2014-10-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】518112516
【氏名又は名称】グローバルウェーハズ カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】GlobalWafers Co.,Ltd.
(74)【代理人】
【識別番号】100101454
【氏名又は名称】山田 卓二
(74)【代理人】
【識別番号】100131808
【氏名又は名称】柳橋 泰雄
(72)【発明者】
【氏名】ピーター・アルブレヒト
(72)【発明者】
【氏名】サミート・エス・バガヴァット
(72)【発明者】
【氏名】チュウ・アレックス
(72)【発明者】
【氏名】吉村 一郎
(72)【発明者】
【氏名】ユンビャオ・シン
(72)【発明者】
【氏名】ローランド・バンダム
【審査官】湯川 洋介
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-166200(JP,A)
【文献】特表2001-513451(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2003/0181153(US,A1)
【文献】特開2004-327547(JP,A)
【文献】特開2001-179605(JP,A)
【文献】特開2013-004928(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2003/0124963(US,A1)
【文献】特開2000-233364(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/304
B24B 37/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体ウエハを研磨する方法であって、
方法は、
そこに配置される前記ウエハを保持するためのウエハ保持機構と研磨ヘッド組立体を含む研磨装置を提供するステップであって、
前記研磨ヘッド組立体は、
研磨ヘッドと、
回転台上の研磨パッドに対して前記ウエハを回転するための前記研磨ヘッドの研磨側に取り付けら
れ、前記研磨ヘッドに対して撓む床部を有するキャップと、
前記キャップの
前記床部の撓みを調節するための前記研磨ヘッドに接続された中心ストッパーと、を有する、研磨装置を提供するステップと、
前記ウエハに対して前記研磨ヘッド組立体を動かし、キャップを歪め、ウエハに対して相互作用を及ぼして、研磨圧力をもたらすステップと、
前記ウエハと前記研磨パッドの間で回転動作を引き起こすステップと、
前記研磨圧力
と前記床部及び前記研磨ヘッドの間の前記中心ストッパーの高さとを調整して、研磨表面の平坦性を改善するために前記床部の歪みを調整するステップと、を備える方法。
【請求項2】
さらに金属材料の前記キャップを形成するステップを備える、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
さらに研磨化学剤が、前記金属材料と接触し、反応することを防ぐための非金属バリアを備える前記キャップを形成するステップを備える、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
さらにセラミック材料の前記キャップを形成するステップを備える、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
さらに表面張力によって前記研磨ヘッド組立体に前記ウエハを保持するために、前記研磨ヘッド組立体の底部に沿って液体を提供するステップを備える、請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、広くは、半導体または太陽電池のウエハの研磨に関し、より具体的には、片面研磨装置およびウエハの平坦度を制御する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体ウエハは、回路がプリントされる集積回路(IC)チップの生産に広く用いられている。まず、小型化した回路をウエハ表面にプリントする。次いでウエハを複数の回路チップに切り分ける。この小型化回路は、ウエハの表面全体に回路を適切にプリントできるように、各ウエハの表(おもて)面と裏面が極めて平坦かつ平行であることを要する。そのために、インゴットからウエハを切り出した後、ウエハの表裏面の平坦度と平行度を高める研削(glinding)や研磨(polishing)の工程が広く用いられている。電子ビームリソグラフィーまたはフォトリソグラフィー法(以後「リソグラフィー」と呼ぶ)によりウエハに小型化回路をプリントする準備としてウエハを研磨する場合は、特に良好な仕上げが要求される。小型化回路がプリントされるウエハ表面は、平坦でなくてはならない。同様に、太陽電池用途でも、平坦度と仕上げは重要である。
【0003】
一般的な研磨機の構成及び動作は、許容範囲外の平坦度パラメーターに寄与している。典型的な研磨機は、回転台または定盤上に設置された円形または環状の研磨パッドであって、その中心部を通る垂直方向軸線を中心に回転させられる研磨パッド、およびウエハを保持して研磨パッドに押し付ける機構を含んでいる。ウエハは、典型的には、たとえば液体表面張力または真空/吸引により、研磨ヘッドに設置される。典型的には化学研磨剤および砥粒を含む研磨スラリーがパッドに加えられて、研磨パッドとウエハ表面の研磨相互作用が高められる。このタイプの研磨工程は一般に、化学機械研磨(CMP)と呼ばれている。
【0004】
運転中、パッドは回転し、ウエハは研磨ヘッドによってパッドに接触させられ押し付けられる。たとえば数百枚のウエハの処理後にパッドが摩耗すると、ウエハの平坦度パラメーターは低下するが、それはパッドがもう平坦ではなくなり、代わってパッドの研磨表面に凹みを形成する摩耗環状帯が生じるからである。こうしたパッドの摩耗がウエハの平坦度に影響し、ウエハの「くぼみ(皿型)」または「隆起(ドーム型)」あるいはその組合せによる「w字型」を生じさせることもある。
【0005】
ウエハの平坦度が許容範囲外になると、摩耗した研磨パッドを新品と交換しなくてはならない。頻繁にパッド交換すれば研磨装置の運転にかかる費用も相当嵩むことになるが、それは購入、保管、廃棄しなければならないパッドの枚数のせいだけではなく、研磨パッドの交換に要する相当なダウンタイムのせいでもある。
【0006】
したがって、ドーム型、皿型、及び+/-のw字型に関して研磨工程でウエハの厚み形状を調整することによって、平坦度パラメーターを最適化する能力のある研磨装置が必要とされている。
【0007】
この背景技術のセクションは、以下に説明するおよび/または特許請求の範囲に記載する本開示の様々な態様に関連し得る当分野の様々な側面を読者に紹介することを目的とする。こうして背景的情報を提供することで、本開示の様々な態様がより理解しやすくなろう。したがって、そのような観点でこのセクションの記載を理解すべきであり、先行技術であると認めるものではない。
【発明の概要】
【0008】
一態様では、シリコンウエハの片面を研磨する研磨ヘッド組立体が提供される。研磨ヘッド組立体は、研磨ヘッド及びキャップを含んでいる。研磨ヘッドは、下部に沿って凹所を有しており、凹所は凹面を有している。キャップは凹所内に配置され、環状壁および該環状壁に垂直な床部を有している。床部は凹面から離間して、凹面との間にチャンバを形成している。チャンバは、加圧されて床部を撓ませるように構成されている。環状壁は、接着剤で研磨ヘッドに取り付けられている。
【0009】
上述の態様に関して記載した特徴に様々な改良を加えることができる。上述の態様にはさらなる特徴も組み込むことができる。このような改良や追加の特徴は、個別に、または任意の組合せとして存在できる。たとえば、以下で例示する実施形態のいずれかに関して記載する様々な特徴を、上述の態様のいずれかに単独でまたは任意に組み合わせて組み込むことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図2】一実施形態による、ドーム型プレート(ドーム型プレートの形状は例示目的で誇張してある)を有する片面研磨ヘッドの断面図である。
【
図3】研磨圧力下の
図3の片面研磨ヘッドの断面図である。
【
図4】研磨圧力0.9Pの下の
図3の片面研磨ヘッドの断面図である。
【
図5】研磨圧力1.1Pの下の
図3の片面研磨ヘッドの断面図である。
【
図6】接触圧力とウエハ半径の相関関係をプロットした圧力プロファイルのグラフである。
【
図7】別の実施形態による、平坦プレートを有する片面研磨ヘッドの断面図である。
【
図8】加圧セクションに研磨圧力が加わっていない、
図7の片面研磨ヘッドの断面図である。
【
図9】加圧セクションが研磨圧力下にある、
図7の片面研磨ヘッドの断面図である。
【
図10】加圧セクションが研磨圧力0.9Pの下にある、
図7の片面研磨ヘッドの断面図である。
【
図11】加圧セクションが研磨圧力1.1Pの下にある、
図7の片面研磨ヘッドの断面図である。
【
図12】別の実施形態による、平坦プレート及び2つの調節可能ストッパーを有する片面研磨ヘッドの断面図である。
【
図13】加圧セクションに研磨圧力が加わっていない、
図12の片面研磨ヘッドの断面図である。
【
図14】加圧セクションが研磨圧力下にある、
図12の片面研磨ヘッドの断面図である。
【
図15】加圧セクションが研磨圧力0.9Pの下にある、
図12の片面研磨ヘッドの断面図である。
【
図16】中心ストッパーが引っ込み、加圧セクションが研磨圧力1.3Pの下にある、
図12の片面研磨ヘッドの断面図である。
【
図17】ストッパーリングが引っ込み、加圧セクションが研磨圧力1.3Pの下にある、
図12の片面研磨ヘッドの断面図である。
【
図18】両ストッパーが引っ込み、加圧セクションが研磨圧力1.1Pの下にある、
図12の片面研磨ヘッドの断面図である。
【
図19】接触圧力と半径の相関関係をプロットした隆起矯正グラフである。
【
図20】接触圧力と半径の相関関係をプロットしたネガティブw字型要因矯正グラフである。
【
図21】別の実施形態による、平坦プレートおよび中心ストッパーに取り付けられた膨張式ベローを有する片面研磨ヘッドの断面図である。
【
図22】別の実施形態による、保護シートが底面に取り付けられた片面研磨ヘッドの断面図である。
【
図23】別の実施形態による、保護シートおよびバンドを有する片面研磨ヘッドの断面図である。
【
図24】別の実施形態による、保護シート、バンド、および中心ストッパーを有する片面研磨ヘッドの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
様々な図面で、類似の要素を類似の参照記号で示す。
【0012】
一般には、また本開示の一実施形態では、既に粗研磨されて表裏が粗面であるウエハを、まずは、その裏面ではなく表(おもて)面を研磨する中間研磨工程に供して、表(おもて)面の平坦度パラメーターを改善するかまたは表(おもて)面を平滑化して処理時にできた傷を除去する。この工程を実施するために、ウエハを研磨ヘッドに設置する。この実施形態では、ウエハは、表面張力によって研磨ヘッドの所定位置に保持される。また、ウエハは、その表(おもて)面が研磨パッドの研磨表面と接触した状態で、研磨機の回転台に設置される。
【0013】
研磨機に設置された研磨ヘッドは、ウエハを貫通する軸線に沿って、垂直方向に移動できる。回転台が回転している間、研磨ヘッドはウエハに突き当たってウエハを回転台の方向に付勢し、そうすることでウエハの表(おもて)面が研磨パッドの研磨表面に押し付けられて研磨係合する。
【0014】
砥粒および化学エッチング剤を含む一般的な研磨スラリーが研磨パッドに加えられる。研磨パッドはウエハ表面にスラリーを作用させて、ウエハの表(おもて)面から材料を除去し、より円滑な面にする。一例として、中間研磨工程では、好ましくは、ウエハの表(おもて)面の材料を約1ミクロン未満除去する。
【0015】
次に、ウエハの表(おもて)面に仕上げ研磨を施す仕上げ研磨工程にウエハを供して、中間ステップでの粒径が大きいコロイドシリカ、たとえばDuPont Air Products Nanomaterials社のSyton(登録商標)による細かいまたは「微小な」傷を除去して、高反射性の無傷のウエハ表(おもて)面とする。概して、仕上げ研磨工程よりも中間研磨工程のほうが、ウエハ除去量は多い。ウエハは、上述したウエハの中間研磨に用いたのと同じ片面研磨機で仕上げ研磨できる。しかし、仕上げ研磨工程に別の片面研磨機を用いることもできる。典型的にはアンモニア系の、低濃度のコロイドシリカを含む仕上げ研磨スラリーが、研磨パッドとウエハの間に注入される。研磨パッドは仕上げ研磨スラリーをウエハの表(おもて)面に作用させて、残っている傷や曇りを除去するので、ウエハの表(おもて)面は概ね高反射性の無傷な状態になる。
【0016】
図1を参照すると、片面研磨装置の一部が概略的に示され、全体的に100と表示されている。片面研磨機100は、半導体ウエハWの表(おもて)面の研磨に用いられ得る。なお、他のタイプの片面研磨装置も使用できる。
【0017】
研磨装置100は、ウエハ保持機構、たとえば裏当てフィルム110、保持リング120、研磨ヘッド組立体130、および研磨パッド150を有する回転台140を含んでいる。裏当てフィルム110は、研磨ヘッド組立体130と、ウエハWを受ける保持リング120との間に配置されている。保持リング120は、研磨されるウエハWを受ける円形開口部を少なくとも1つ有している。この実施形態のウエハWは、表面張力によって研磨ヘッド組立体130に保持される。
【0018】
研磨装置100は、研磨ヘッド組立体130に力を及ぼして垂直方向に移動させて、研磨ヘッド組立体130をウエハWと回転台140に対して相対的に上昇および下降させる。上向きの力により研磨ヘッド組立体130は上昇し、下向きの力により研磨ヘッド組立体は下降する。上述したように、研磨ヘッド組立体130がウエハWに対し垂直方向下向きに移動すると、ウエハに研磨圧力が加わって、ウエハは回転台140の研磨パッド150に押し付けられる。研磨装置100が下向きの力を増加させると、研磨ヘッド組立体130は垂直方向にさらに下方へと移動して、研磨圧力を増加させる。
【0019】
研磨ヘッド組立体130の一部と研磨パッド150と回転台140は、当分野で知られているような好適な駆動機構(図示せず)によって、選択された回転速度で回転する。研磨パッドと回転台の回転速度は同じかまたは異なり得る。いくつかの実施形態では、装置100はコントローラー(図示せず)を含んでいるので、オペレーターは研磨ヘッド組立体130と回転台140の各回転速度、および研磨ヘッド組立体に加えられる下向きの力を選択できる。
【0020】
図2を参照すると、研磨ヘッド組立体130は、研磨ヘッド160およびキャップ170を含んでいる。キャップは、アルミナもしくは炭化ケイ素などのプラスチック、アルミニウム、鋼、セラミック、または被覆シリコンなどの十分な剛性を有する任意の好適な材料で適切に作製されている。
【0021】
キャップ170は、プレートまたは床部172を含み、該床部172はそれから上向きに延びる環状壁174に囲まれている。自然なまたは撓んでいない状態では、床部172は(チャンバに対して相対的に)中低形状を有しているので、床部の中心部は周囲よりも低くなっている。床部172は、恒久的に変形することなく一時的に撓むことができる。床部172の厚みは、約0.118~約0.275インチ(3~7mm)、またはプラスチックの場合は約0.625インチ(16mm)であり、直径は約5.905~約6.496インチ(150~165mm)である。
【0022】
環状壁174は、研磨ヘッド160の縁部162にしっかりと取り付けられて縁部162から下向きに延びている。研磨ヘッド160とキャップ170は一緒に下向きのドーム型構造を形成している。キャップ170は、ボルトまたは他の好適な固定具で研磨ヘッド160に取り付けられ得る。他の実施形態では、エポキシなどの接着剤で、キャップ170を研磨ヘッド160の縁部162に取り付けている。
【0023】
研磨ヘッド組立体130が下向きに移動すると、キャップ170がウエハWと接触し、床部172が研磨ヘッド160に向けて上向きに撓む。撓みの方向は、ウエハWの上面に対し垂直である。
【0024】
キャップ170のウエハWに対する研磨圧力が増加すると、撓み幅も増加する。研磨圧力の調節によって、床部172の撓みを増加または減少させることができる。床部172の撓みが変化すると、床部の形状も変化する。
【0025】
床部172の形状が変化すると、ウエハWの研磨圧力の力分布が変化し、ウエハはそれに応じて屈曲することになる。力分布が変化すると、ウエハWからの材料除去率も変化する。一般には、除去率は、研磨パッド150に比較的大きい力を伝達するウエハWの部分で増加する。
【0026】
したがって、研磨ヘッド組立体130の下向きの力を、キャップ170の床部172の撓みを増加または減少させるように制御することができ、そうすることでウエハの隆起またはくぼみの量を調節することができる。研磨圧力が増加すると、床部172は、自然な撓んでいないまたは下向きに湾曲した形状から、研磨ヘッド160の底面とほぼ平行な平坦な形状に変化し、最終的には上向きに湾曲したまたは中高の形状になる。
【0027】
図3に示すように、所与のまたは所定の研磨圧力Pの下では、床部172は撓んでほぼ平坦になり、同じくほぼ平坦な除去プロファイルを生じる。
図4に示すように、研磨圧力を0.9Pまで減じると、床部172も除去プロファイルも下向きに湾曲する。
図5に示すように、研磨圧力を1.1Pまで上げると、床部172も除去プロファイルもくぼむ。好適には、研磨圧力の変化は約0.7P~約1.3Pの範囲であり得る。このように、研磨圧力Pの変化は、オペレーターに制御変数およびウエハWの研磨形状を調節する能力を提供する。いくつかの実施形態では、所定の研磨圧力は、1.0psi~4.0psiの範囲であり得る。他の実施形態では、所定の研磨圧力は6.0psi未満であり得る。
【0028】
いくつかの実施形態では、ドーム型プレートを既存の研磨ヘッドに取り付けて、既存の研磨機に大掛かりな補修をしたり買い替えたりすることなく研磨機の研磨特性を変えることができる。
【0029】
図6を参照すると、接触圧力と半径の相関関係を示す有限要素シミュレーションのグラフが示されている。このグラフは、標準研磨圧力Pを増加または減少させることによって接触圧力プロファイルを調整して、除去プロファイルを調節するこの実施形態の能力を示している。
【0030】
図7を参照すると、研磨ヘッド組立体230の別の実施形態が、研磨ヘッド260およびキャップ270を有している。キャップ270は、環状壁274に囲まれた床部272を含んでいる。床部272は、初期のまたは撓んでいない状態ではほぼ平坦である。環状壁274は、研磨ヘッド260の縁部262にしっかりと取り付けられて縁部262から下向きに延びて、床部272と研磨ヘッド260との間にチャンバ232を形成している。チャンバ232は、加圧媒体または流体をチャンバ232に供給する圧力源(図示せず)と接続し得る。
【0031】
図8に示すように、チャンバ232は加圧されて、床部272を床部172と同様の下向きのドーム型に撓ませ得る。チャンバ232内の圧力を頻繁に変える必要はない。したがって、研磨ヘッド組立体230を研磨装置100に設置するときに手動で圧力を調節してもよい。いくつかの実施形態では、キャップ270は、既存の研磨ヘッドに後付けするのに使用でき、既存のヘッドやスピンドルに貫通孔を設けてスピンドルおよび回転体に空気または流体の通路を作る必要はない。
【0032】
床部172と同様に、キャップ270の床部272は、研磨圧力が増加すると、研磨表面に対し垂直方向に一時的に撓むようにされている。キャップは、圧力によって恒久的に撓むことも変形することもない。床部272は、研磨圧力が増加すると、加圧されて撓んだまたは下向きに湾曲した形状から、研磨ヘッド260の底面とほぼ平行な平坦な形状に変化し、最終的には上向きに湾曲したまたは中高の形状に変化する。
【0033】
図9に示すように、所与のまたは所定の研磨圧力Pの下では、床部272は撓んでほぼ平坦になり、同じくほぼ平坦な除去プロファイルを生じる。
図10に示すように、研磨圧力を0.9Pまで下げると、床部272も除去プロファイルも下向きに湾曲する。
図11に示すように、研磨圧力を1.1Pまで上げると、床部272も除去プロファイルもくぼむ。このように、研磨圧力Pの変化は、オペレーターにウエハWの研磨形状を調節する能力を提供する。
【0034】
上述したように、この研磨システムは、圧力分布を調節して、研磨されるウエハの形状を、たとえば研磨後のウエハの隆起やくぼみを最小限に抑えるように、制御することができる。
【0035】
図12を参照すると、研磨ヘッド組立体330の別の実施形態が、研磨工程中にウエハの圧力分布を調節して、ウエハのドーム型、皿型、およびw字型断面を制御または最小限化するようにされている。
【0036】
研磨ヘッド組立体330は、研磨ヘッド360、キャップ370、ストッパーリング380、および中心ストッパー382を有している。キャップ370は、環状壁374に囲まれた床部372を含んでいる。床部372は、初期のまたは撓んでいない状態ではほぼ平坦である。環状壁374は、研磨ヘッド360の縁部362にしっかりと取り付けられて縁部362から下向きに延びて、床部372と研磨ヘッド360との間にチャンバ332を形成している。チャンバ332は、加圧流体をチャンバ332に供給する圧力源(図示せず)と接続し得る。
【0037】
図13に示すように、チャンバ332は加圧されて、床部372を床部172および272と同様の下向きのドーム型に撓ませ得る。チャンバ332内の圧力を頻繁に変える必要はない。したがって、研磨ヘッド組立体330を研磨装置100に設置するときに手動で圧力を調節してもよい。いくつかの実施形態では、キャップ370は、既存の研磨ヘッドに後付けするのに使用でき、既存のヘッドに貫通孔を設けてスピンドルおよび回転体に空気または流体の通路を作る必要はない。
【0038】
床部172および272と同様に、キャップ370の床部372は、研磨圧力Pが増加すると、研磨表面に対し垂直方向に一時的に撓むようにされている。キャップは、圧力によって恒久的に撓むことも変形することもない。床部372は、加圧されて撓んだまたは下向きに湾曲した形状から、研磨ヘッド360の底面とほぼ平行な平坦な形状に変化し、最終的には上向きに湾曲したまたは中高の形状に変化する。
【0039】
図14に示すように、所与のまたは所定の研磨圧力Pの下では、床部372は撓んでほぼ平坦になり、同じくほぼ平坦な除去プロファイルを生じる。
図15に示すように、研磨圧力を0.9Pまで減じると、床部372も除去プロファイルも下向きに湾曲する。
【0040】
ストッパーリング380と中心ストッパー382は、床部372の上向きの撓みを制限する。ストッパーリング380は、外周から内側に離間しており、環の形状である。中心ストッパー382は、研磨ヘッド360、キャップ370、およびストッパーリング380と同軸状に揃っている。さらに
図12を参照すると、ストッパーリング380と中心ストッパー382は、研磨ヘッド360の底面から床部372の内面または上面まで延びている。ストッパーリング380と中心ストッパー382の高さは、研磨ヘッド360と床部372との間の とほぼ等しい。
【0041】
図15~18を参照すると、ストッパーリング380と中心ストッパー382それぞれの高さを調節して、床部372の撓み形状を変化させることができる。
【0042】
図16に示すように、中心ストッパー382の高さを減じ、研磨圧力を1.3Pまで上げると、床部372と除去プロファイルの形状は両方ともw字型になる。
図17に示すように、ストッパーリング380の高さを減じ、研磨圧力を1.3Pまで上げると、床部372と除去プロファイルの形状は両方ともm字型になる。
図18に示すように、ストッパーリング380と中心ストッパー382の高さを両方とも減じ、研磨圧力を1.1Pまで上げると、床部372と除去プロファイルの形状は両方ともドーム型になる。このように、研磨圧力の変化は、オペレーターにウエハWの研磨形状を調節する能力を提供する。
【0043】
接触圧力プロファイルを調整して隆起およびw字型ウエハ・プロファイルを調節するこの実施形態の能力を例示する有限要素シミュレーションの結果を、
図19および
図20に示す。
図19は、上記実施形態における接触圧力と半径の相関関係をプロットした隆起矯正グラフを示している。
図20は、上記実施形態における接触圧力と半径の相関関係をプロットしたネガティブw字型要因矯正グラフを示している。
【0044】
図21を参照すると、研磨ヘッド組立体430の別の実施形態が、研磨工程中にウエハへの圧力分布を調節して、ウエハのドーム型、皿型、およびw字型断面を制御または最小限化するようにされている。
【0045】
研磨ヘッド組立体430は、研磨ヘッド460、キャップ470、および中心ストッパー480を有している。キャップ470は、研磨ヘッド460の縁部462にねじ464でしっかりと取り付けられた床部472を含み、該床部は該縁部間に延在して、該床部と研磨ヘッドとの間にチャンバ432を形成している。他の実施形態では、ねじ464の代わりに接着剤で床部472を研磨ヘッド460の縁部462に取り付ける。床部472は、初期のまたは撓んでいない状態ではほぼ平坦である。チャンバ432は、チャンバ流路466及びコネクター486を通して第1の圧力源FSと接続されて加圧流体がチャンバ432に供給され、それによって床部472を、床部172、272、および372と同様に、下向きのドーム型に撓ませることができる。
【0046】
床部172、272、および372と同様に、キャップ470の床部472は、研磨圧力が増加すると、研磨表面に対し垂直方向に一時的に撓むようにされている。キャップ470は、圧力によって恒久的に撓むことも変形することもない。床部472は、チャンバ432に供給される加圧流体の量に基づき、加圧されて撓んだまたは下向きに湾曲した形状から、研磨ヘッド460の底面とほぼ平行な平坦な形状に変化し、最終的には上向きに湾曲したまたは中高の形状に変化する能力がある。
【0047】
所与のまたは所定の研磨圧力Pの下では、床部472は撓んでほぼ平坦になり、同じくほぼ平坦な除去プロファイルを生じる。研磨圧力を0.9Pまで減じると、床部472も除去プロファイルも下向きに湾曲する。
【0048】
中心ストッパー480は、膨張式ベロー484と接続された止め具482を含んでいる。ベロー484は、研磨ヘッド460と接続され、研磨ヘッド460からチャンバ432内に延びている。止め具482の高さは、中心流路468およびコネクター488を通して第2の圧力源SSと接続されているベロー484内の圧力を増加または減少させることで調節される。ベロー484内の圧力を調節すると、床部472の上向きの撓みを制限するか、または床部472を外方に撓ませることができる。第1の圧力源FSと第2の圧力源SSは、コントローラー490を通してそれぞれコネクター486とコネクター488に接続され得る。いくつかの実施形態では、第1の圧力源FSと第2の圧力源SSとは同一の圧力源であり、それぞれコネクター486とコネクター488に、デバイダーおよび制御弁(図示せず)を含み得るコントローラー490を通して接続されている。いくつかの実施形態では、研磨ヘッド組立体430は、中心ストッパー480を含んでいない。これらの実施形態では、第1の圧力源FSは、研磨ヘッド460の中心部を通ってチャンバ432に供給され得る。
【0049】
中心ストッパー480は、研磨ヘッド460およびキャップ470の両方と同軸状に揃っている。運転中、中心ストッパー482は、研磨ヘッド460の底面から床部472の内面または上面まで延びて、中心ストッパー480の高さを研磨ヘッド460と床部472との間のチャンバとほぼ等しくすることもできる。
【0050】
図22を参照すると、研磨装置100に取り付けられる研磨ヘッド組立体500の別の実施形態が示されている。研磨ヘッド組立体500は、研磨装置100のスピンドル132に取り付けられている。スピンドル132は、中心通路134を有する筒である。中心通路134の一端は研磨ヘッド組立体500へと開口し、他端は回転コネクター136と接続している。
【0051】
研磨装置100と研磨ヘッド組立体500は、研磨工程中にウエハに加えられる圧力の大きさおよび分布を調節して、ウエハのドーム型、皿型、およびw字型断面を制御または最小限化するようにされている。ウエハに加えられる圧力の大きさおよび分布を調節することで、ウエハ材を除去する量と位置を調整することができる。上述したように、ウエハに加えられる圧力の大きさも分布も、研磨ヘッド組立体500が下向きにまたはウエハに対して加える力を増加または減少させることによって調節できる。ウエハに加えられる圧力の大きさおよび分布は、研磨ヘッド組立体500内にあるチャンバ502内の圧力を調節することで変化させることもできる。チャンバ502は、1つ以上の加圧領域を含み得る。複数の加圧領域を有する実施形態では、同じかまたは異なる圧力が各加圧領域に供給され得る。ウエハに加えられる圧力の大きさおよび分布を調節するこの能力は、ウエハの一部分から別の部分よりも多くのまたは少ないウエハ材料を除去する制御機構を提供する。したがって、材料を除去する量と位置を調節することによって、得られるウエハの研磨プロファイルを制御することができる。
【0052】
ウエハは、表面張力によって研磨ヘッド組立体500に取り付けられて保持される。表面張力を生成するために、湿潤させた(wet saturated)
図1の裏当てフィルム110を研磨ヘッド組立体500に感圧接着剤で取り付ける。裏当てフィルム110と保持リング120とで「ウエハ保持テンプレート」を形成する。裏当てフィルム110は一般に軟性ポリマーパッドまたは他の好適な材料である。
【0053】
次いでウエハを湿潤させた裏当てフィルム110に押し付けて、水または他の好適な液体の大半を除去するかまたは押し出す。水を押し出すと、ウエハは表面張力とウエハの曝露面にかかる気圧とにより裏当てフィルム110に保持される。こうして水を押し出すことで、ウエハは研磨ヘッド組立体500に取り付けられる。
【0054】
以下に詳述するように、研磨ヘッド組立体500の一部分は、研磨ヘッドまたはチャンバ502に加えられる圧力の変化に応じて変形できるだけの可撓性があるが、ウエハが湿潤テンプレートに押し付けられても変形しないだけの堅さもある。表面張力は、ウエハの表面に一定の保持力を提供する。この一定保持力により、ウエハに隣接する研磨ヘッド組立体500のあらゆる変形は、それと比例するウエハの変形に直接変換され、チャンバ内圧力と研磨プロファイルとの間の直接的な関連が提供される。
【0055】
このような表面張力によるウエハの保持は、可撓性膜または真空によってウエハを研磨ヘッド組立体に保持する他の既知の機構とは機能が異なる。当分野で知られているような可撓性膜は、ウエハが押されると、変形してウエハと該可撓性膜との間にスペースまたは真空ポケットを作る。これらの真空ポケットにより、膜はウエハを吸着できる。他の膜は、真空に接続している真空穴を有して、ウエハを吸着するための低圧領域を生成する。
【0056】
研磨ヘッド組立体500は、研磨ヘッド510、キャップ540、および保護シート570を含んでいる。研磨ヘッド510は、互いに対しほぼ平行な頂部512と底部514とを有している。研磨ヘッド510の頂部512は、スピンドル132と接続している。研磨ヘッド510は、プラットフォーム520、および該プラットフォームから下向きに延びる円筒部材530を有している。研磨ヘッド510の底部514には、プラットフォーム520から突き出た円筒部材530によって、凹面516が形成されている。
【0057】
円筒部材530は、研磨ヘッド510の頂部512および底部514にほぼ垂直な外面532を有する。円筒部材530の外面532は、研磨ヘッド510と研磨ヘッド組立体500両方の外面を形成している。円筒部材530は、円筒部材が下部536に沿ってもっとも薄くなるように外面に対して傾斜した内面534を有する。円筒部材530のこのようなテーパーによって、より堅い上部セクションがプラットフォーム520に隣接して提供される。
【0058】
キャップ540は、床部542、および該床部の周囲に沿って上向きに延びる環状壁550を有している。環状壁550は、円筒部材530の内面534と対合する外面552を有している。したがって、環状壁550の外面552はまた、円筒部材530の内面534に合わせて傾斜している。
【0059】
いくつかの実施形態では、円筒部材530の内面534と環状壁550の外面532とは、スピンドル132の中心通路134により画定される長手方向軸線と平行である。この長手方向軸線は、研磨ヘッド組立体500の回転中心と同軸状かつそれを通って伸長している。
【0060】
他の実施形態では、環状壁550は、円筒部材530の外面に取り付けられている。これらの実施形態では、加圧されたチャンバ502がキャップ540の床部542に下向きの圧力を及ぼす。この下向きの力のモーメントは環状壁550へと回り伝わって、その結果環状壁550は円筒部材530に反作用するかまたは円筒部材530を締めつける。
【0061】
床部542は、研磨ヘッド510の底部514で円筒部材530によって形成されている開口部に渡ってに延在している。床部542は、初期のまたは撓んでいない状態ではほぼ平坦であり、チャンバ502内の圧力の調節により変形する。加圧流体は、本開示の他の床部と同様に、床部542を下向きのドーム型または上向きの皿型に撓ませることができる。いくつかの実施形態では、およそ2psiの内圧により、床部は150~200μm撓むことになる。他の実施形態では、およそ2psiの内圧により、床部は100~400μm撓むことになる。
【0062】
キャップ540の床部542は半剛性の「可撓性プレート(flex plate)」であり、正確に変形して圧力分布および研磨圧力プロファイルを変化させるが、ウエハを裏当てフィルム110に設置し取り外せるだけ剛性であるようにされている。床部542の剛性は、ウエハを研磨ヘッド組立体500に設置する際に床部542が大きく変形しないような剛性である。
【0063】
チャンバ502は、キャップ540の床部542の上面544と研磨ヘッド510の凹面516の間に形成されている。円筒部材530と環状壁550は、チャンバ502の半径方向境界を定めている。プラットフォーム520および重なっている円筒部材530と環状壁550は、床部542よりも厚みがあり、より剛性にされている。したがって、チャンバ502内の圧力を調節すると、床部が変形する。
【0064】
本開示の他の床部と同様に、キャップ540の床部542は、研磨圧力が増加すると、研磨表面に対し垂直方向に一時的に撓むようにされている。キャップ540は、圧力によって恒久的に撓むことも変形することもない。床部542は、チャンバ502に供給される加圧流体の量および研磨圧力に基づき、加圧されて撓んだまたは下向きに湾曲した形状から、研磨ヘッド510の底面とほぼ平行な平坦な形状に変化し、最終的には上向きに湾曲したまたは中高の形状に変化する能力がある。
【0065】
ウエハを研磨ヘッド組立体500に設置するために、裏当てフィルム110が床部542の底面546に取り付けられる。次いでウエハが裏当てフィルム110に設置され、上述の「表面張力」により保持される。この均一に分布する表面張力により、チャンバ502内の圧力が調節されて床部542が変形すると、ウエハは直接変形することになる。チャンバ内の圧力を増加または減少させることで、床部542の表面およびウエハを外方に膨らませるか、平坦なままか、または内方へと引き込むことができる。
【0066】
チャンバ502内の圧力を調節するために、チャンバ502は第1の圧力源FSと接続されている。チャンバ流路522がプラットフォーム520を貫通して延びて、チャンバ502を急速着脱式連結プラグであり得るチャンバ・コネクター524と接続している。チャンバ・コネクター524は、チャンバ供給ライン584を通して回転コネクター136に接続している。回転コネクター136は、第1の圧力源FSと接続してスピンドル132を通して加圧流体をチャンバ502にまたはチャンバ502から供給する。第1の圧力源FSは、空気を送って研磨ヘッド組立体500のチャンバ502内の圧力を増加または減少させ得る。
【0067】
第1の圧力源FSは、チャンバ502内の圧力を監視し調節するコントローラー590と接続され得る。コントローラー590は、圧力レギュレーター(図示せず)を含み得る。圧力は、入荷ロットの全体的なウエハ形状に基づき手動で調節することもできるし、ロットごとに、あるいはウエハごとに、電子制御してもよい。いくつかの実施形態では、ウエハのロットから特徴的ウエハ・プロファイルが取得され、研磨ヘッド組立体によりウエハに加えられる下向きの圧力およびこの圧力の分布が、特徴的ウエハの平坦度を最大限化するように調節される。
【0068】
所与のまたは所定の研磨圧力Pの下では、床部542はほぼ平坦であり、同じくほぼ平坦な除去プロファイルを生じる。研磨圧力を0.9Pまで減じると、床部542も除去プロファイルも上向きに湾曲する。研磨圧力を1.1Pまで上げると、床部542も除去プロファイルも下向きに湾曲する。
【0069】
環状壁550の外面552は、研磨ヘッド510の円筒部材530の内面534に、接着剤558により接着剤層に沿って取り付けられている。接着剤は連続的であり、外面552と内面534との間にシールを形成する。接着剤はエポキシグルーであり得る。接着剤層は、凹面516および床部542の撓み方向に対して傾斜している。
【0070】
上述したように、外面552および内面534は傾斜している。この角度は、組立中に接着剤が剥がれるのを防止する組立補助の役割を果たす。接着剤の最適な塗布厚さは0.15~0.20mmである。
【0071】
接着剤を用いることで、研磨ヘッド組立体の製造と、表面を平坦化するラッピング工程の両方が簡易化される。別の利点としては、接着剤がキャップ540にある程度の可撓性も付加するので、床部542が滑らかなドーム型または皿型に屈曲する、ということがある。接着剤が屈曲する能力は、滑らかに湾曲する撓みをもたらし、縁効果を最小限化するのに役立つ。
【0072】
これらの実施形態の接着剤で接合した研磨ヘッド組立体を用いることには、上述した
図21に示すようなねじで接合した研磨ヘッド組立体と比べていくつかの利点がある。たとえば、キャップ540の1つの表面だけをラッピングすればよい。キャップをねじで取り付ける実施形態では、3つの表面のラッピングを要する。また、キャップをねじ留めする実施形態と違って、キャップの方向を維持する必要はない。
【0073】
それに加えて、接着剤で接合した研磨組立体の床部の変形は、曲げ応力を均一に分布させる。しかし、ねじで接合した研磨ヘッド組立体の床部の変形は、ねじ留めに用いられるトルクに依存する。ねじを用いると、床部の裏側のねじが配置された位置がプレートのその他の部分よりも堅くなるので、これらの位置で床部の裏側が不均一になる。ねじの位置がより堅くなることで、ラッピング中および研磨工程中に不均一な曲げ応力がプレートに生じる結果、均一に平坦ではないプレートになる。
【0074】
研磨ヘッド510およびキャップ540は、鋼やアルミニウムなどの金属、または他の好適な金属材料で作製され得る。いくつかの実施形態では、研磨ヘッド510およびキャップ540は、鋳造アルミニウム製である(たとえば、Alcoa社が販売するMIC6(登録商標)Aluminum Cast Plate)。他の実施形態では、キャップ540は、アルミナなどのセラミック、またはプラスチック材料で作製され得る。プラスチック材料を用いる実施形態では、ポリエーテルイミド(たとえば、Saudi Basic Industries Corporation(SABIC)社が販売するULTEM(商標)Resin 1000)を用いることができる。プラスチック製のキャップ540は、金属またはセラミック製のものよりもかなり厚みがある。セラミック材料で作製されたキャップは、金属またはプラスチック製のものよりもかなり薄い床部を有している。
【0075】
研磨ヘッド組立体500に使用される金属は、金属イオン源となって研磨剤やスラリーを通じてウエハを汚染する可能性がある。研磨ヘッド510からの金属がスラリーおよびウエハを汚染しないように、研磨ヘッド510をエポキシ、フルオロカーボン、または他の好適な非金属材で被覆して、金属イオンを保護するバリアを生成する。キャップ540からの金属がスラリーおよびウエハを汚染しないように、保護シート570を使ってスラリーとキャップ540の間にバリアを生成できる。保護シート570は、研磨工程中にスラリーがキャップ540と接触してスラリーおよびウエハが汚染されるのを防止する。
【0076】
保護シート570は、研磨ヘッド510の底部514およびキャップ540の底面546に接着剤で取り付けられ底面546に沿って延在している。いくつかの実施形態では、保護シート570は、キャップ540の底面546に積層して形成される。図示のように、保護シート570は、キャップ540の底面546を超えて延在して、研磨ヘッド510の底部514とシールを形成している。保護シート570は、ポリエーテルイミドなどのプラスチック製である(たとえば、Saudi Basic Industries Corporation(SABIC)社が販売するULTEM(商標)Resin 1000)。
【0077】
図23を参照すると、研磨装置100に取り付けられる研磨ヘッド組立体600の別の実施形態が示されている。研磨ヘッド組立体600は、研磨装置100のスピンドル132に取り付けられている。スピンドル132は、中心通路134を有する筒である。中心通路134の一端は研磨ヘッド組立体600へと開口し、他端は回転コネクター136と接続している。
【0078】
研磨装置100および研磨ヘッド組立体600は、研磨工程中にウエハに加えられる圧力の大きさおよび分布を調節して、ウエハのドーム型、皿型、およびw/m字型断面を制御または最小限化するようにされている。ウエハに加えられる圧力の大きさおよび分布は、研磨ヘッド組立体600内にあるチャンバ602内の圧力を調節することで変化させることができる。チャンバ602は、1つ以上の加圧領域を含み得る。
【0079】
研磨ヘッド組立体600は、研磨ヘッド610、キャップ640、保護シート670、およびバンド674を含んでいる。いくつかの実施形態では、保護シート670は省略される場合もある。研磨ヘッド610は、互いに対しほぼ平行な頂部612と底部614とを有している。研磨ヘッド610の頂部612は、スピンドル132と接続している。研磨ヘッド610は、プラットフォーム620、および該プラットフォームから下向きに延びる円筒部材630を有している。研磨ヘッド610の底部614には、プラットフォーム620から突き出た円筒部材630によって、凹面616が形成されている。
【0080】
円筒部材630は、研磨ヘッド610の頂部612および底部614にほぼ垂直な外面632を有する。円筒部材630の外面632は、研磨ヘッド610と研磨ヘッド組立体600両方の外面を形成している。円筒部材630は、円筒部材が下部636に沿ってもっとも薄くなるように外面に対して傾斜した内面634を有する。円筒部材630のこのようなテーパーによって、より堅い上部セクションがプラットフォーム620に隣接して提供される。
【0081】
キャップ640は、床部642、および該床部の周囲に沿って上向きに延びる環状壁650を有している。環状壁650は、円筒部材630の内面634と対合する外面652を有している。したがって、環状壁650の外面652はまた、円筒部材630の内面634に合わせて傾斜している。
【0082】
床部642は、研磨ヘッド610の底部614で円筒部材630によって形成されている開口部に渡って延在している。床部642は、初期のまたは撓んでいない状態ではほぼ平坦であり、チャンバ602内の圧力の調節により変形し得る。キャップ640の床部642は半剛性の「可撓性プレート」であり、精密に変形して圧力分布および研磨圧力プロファイルを変化させるが、表面張力によりウエハを裏当てフィルム110に設置し取り外せるだけ剛性であるようにされている。床部642の剛性は、ウエハを研磨ヘッド組立体600に設置する際に床部642が変形しないような剛性である。
【0083】
チャンバ602は、キャップ640の床部642の上面644と研磨ヘッド610の凹面616との間に形成されている。円筒部材630と環状壁650は、チャンバ602の半径方向境界を定めている。プラットフォーム620および重なっている円筒部材630と環状壁650は、床部642よりも厚みがあり、より剛性にされている。
【0084】
本開示の他の床部と同様に、キャップ640の床部642は、研磨圧力が増加すると、研磨表面に対し垂直方向に一時的に撓むようにされている。キャップ640は、圧力によって恒久的に撓むことも変形することもない。床部642も、チャンバ602に供給される加圧流体の量および研磨圧力に基づき、加圧されて撓んだまたは下向きに湾曲した形状から、研磨ヘッド610の底面とほぼ平行な平坦な形状に変化し、最終的には上向きに湾曲したまたは中高の形状に変化する能力がある。
【0085】
ウエハを研磨ヘッド組立体600に設置するために、裏当てフィルム110が床部642の底面646に取り付けられる。次いでウエハが裏当てフィルム110に設置され、上述の「表面張力」により保持される。この均一に分布する表面張力により、チャンバ602内の圧力が調節されて床部642が変形すると、ウエハは直接変形することになる。チャンバ内の圧力を増加または減少させることで、床部642の表面およびウエハを外方に膨らませるか、平坦なままか、または内方へと引き込むことができる。
【0086】
チャンバ602内の圧力を調節するために、チャンバ602は第1の圧力源FSと接続されている。チャンバ流路622がプラットフォーム620を貫通して延びて、チャンバ602を急速着脱式連結プラグであり得るチャンバ・コネクター624と接続している。チャンバ・コネクター624は、チャンバ供給ライン684を通して回転コネクター136に接続している。回転コネクター136は、第1の圧力源FSと接続してスピンドル132を通して加圧流体をチャンバ602にまたはチャンバ602から供給する。第1の圧力源FSは、空気を送って研磨ヘッド組立体600のチャンバ602内の圧力を増加または減少させ得る。
【0087】
第1の圧力源FSは、チャンバ602内の圧力を監視し調節するコントローラー690と接続され得る。コントローラー690は圧力レギュレーター(図示せず)を含み得る。圧力は、入荷ロットの全体的なウエハ形状に基づき手動で調節することもできるし、ロットごとに、あるいはウエハごとに、電子制御してもよい。いくつかの実施形態では、ウエハのロットから特徴的ウエハ・プロファイルが取得され、研磨ヘッド組立体によりウエハに加えられる下向きの圧力およびこの圧力の分布が、特徴的ウエハの平坦度を最大限化するように調節される。
【0088】
環状壁650の外面652は、研磨ヘッド610の円筒部材630の内面634に、接着剤658により接着剤層に沿って取り付けられている。接着剤はエポキシグルーであり得る。接着剤層は、凹面616および床部642の撓み方向に対して傾斜している。
【0089】
研磨ヘッド610およびキャップ640は、鋼やアルミニウムなどの金属、または他の好適な金属材料で作製され得る。いくつかの実施形態では、研磨ヘッド610およびキャップ640は、鋳造アルミニウム製である(たとえば、Alcoa社が販売するMIC6(登録商標)Aluminum Cast Plate)。他の実施形態では、キャップ640は、アルミナなどのセラミック、またはプラスチック材料で作製され得る。プラスチック材料を用いる実施形態では、ポリエーテルイミド(たとえば、Saudi Basic Industries Corporation(SABIC)社が販売するULTEM(商標)Resin 1000)を用いることができる。プラスチック製のキャップ640は、金属またはセラミック製のものよりもかなり厚みがある。セラミック材料で作製されたキャップは、金属またはプラスチック製のものよりもかなり薄い床部を有している。
【0090】
研磨ヘッド組立体600に使用される金属は、金属イオン源となって研磨剤やスラリーを通じてウエハを汚染する可能性がある。キャップ640からの金属がスラリーおよびウエハを汚染しないように、保護シート670を使ってスラリーとキャップ640との間にバリアを生成できる。保護シート670は、研磨工程中にスラリーがキャップ640と接触してスラリーおよびウエハが汚染されるのを防止する。保護シート670は、研磨ヘッド610の底部614およびキャップ640の底面646に接着剤で取り付けられ底面646に沿って延在している。図示のように、保護シート670は、キャップ640の底面646を超えて延在して、研磨ヘッド610の底部614とシールを形成している。
【0091】
研磨ヘッド610からの金属がスラリーおよびウエハを汚染するのを防止するために、研磨ヘッド600は、スラリーが金属と接触してウエハを汚染するのを防止するバリアを形成するバンド674に外接されている。円筒部材630は、下部636に沿って外面632から内方に延びている側部凹所638を有している。バンド674は保護シート670と重なって間にシールを形成して、研磨工程の研磨ヘッド610からの金属汚染を防止する。バンド674および保護シート670は、ポリエーテルイミドなどのプラスチック製である(たとえば、Saudi Basic Industries Corporation(SABIC)社が販売するULTEM(商標)Resin 1000)。
【0092】
図24を参照すると、研磨装置100に取り付けられる研磨ヘッド組立体700の別の実施形態が示されている。研磨ヘッド組立体700は、研磨装置100のスピンドル132に取り付けられている。スピンドル132は、中心通路134を有する筒である。中心通路134の一端は研磨ヘッド組立体700へと開口し、他端は回転コネクター136と接続している。
【0093】
研磨装置100および研磨ヘッド組立体700は、研磨工程中にウエハに加えられる圧力の大きさおよび分布を調節して、ウエハのドーム型、皿型、およびm/w字型断面を制御または最小限化するようにされている。ウエハに加えられる圧力の大きさおよび分布は、研磨ヘッド組立体700内にあるチャンバ702内の圧力を調節することで変化させることができる。チャンバ702は、1つ以上の加圧領域を含み得る。
【0094】
研磨ヘッド組立体700は、研磨ヘッド710、キャップ740、中心止め具760、保護シート770、およびバンド774を含んでいる。いくつかの実施形態では、保護シート770は省略される場合もある。研磨ヘッド710は、互いに対しほぼ平行な頂部712と底部714とを有している。研磨ヘッド710の頂部712は、スピンドル132と接続している。研磨ヘッド710は、プラットフォーム720、および該プラットフォームから下向きに延びる円筒部材730を有している。研磨ヘッド710の底部714には、プラットフォーム720から突き出た円筒部材730によって、凹面716が形成されている。
【0095】
円筒部材730は、研磨ヘッド710の頂部712および底部714にほぼ垂直な外面732を有する。円筒部材730の外面732は、研磨ヘッド710と研磨ヘッド組立体700両方の外面を形成している。円筒部材730は、円筒部材が下部736に沿ってもっとも薄くなるように外面に対して傾斜した内面734を有する。円筒部材730のこのようなテーパーによって、より堅い上部セクションがプラットフォーム720に隣接して提供される。
【0096】
キャップ740は、床部742、および該床部の周囲に沿って上向きに延びる環状壁750を有している。環状壁750は、円筒部材730の内面734と対合する外面752を有している。したがって、環状壁750の外面752はまた、円筒部材730の内面734に合わせて傾斜している。
【0097】
床部742は、研磨ヘッド710の底部714で円筒部材730によって形成されている開口部に渡って延在している。床部742は、初期のまたは撓んでいない状態ではほぼ平坦であり、チャンバ702内の圧力の調節により変形し得る。キャップ740の床部742は半剛性の「可撓性プレート」であり、精密に変形して圧力分布および研磨圧力プロファイルを変化させるが、表面張力によりウエハを裏当てフィルム110に設置し取り外せるだけ剛性であるようにされている。床部742の剛性は、ウエハを研磨ヘッド組立体700に設置する際に床部742が変形しないような剛性である。
【0098】
チャンバ702は、キャップ740の床部742の上面744と研磨ヘッド710の凹面716との間に形成されている。円筒部材730と環状壁750は、チャンバ702の半径方向境界を画定している。プラットフォーム720および重なっている円筒部材730と環状壁750は、床部742よりも厚みがあり、より剛性にされている。
【0099】
本開示の他の床部と同様に、キャップ740の床部742は、研磨圧力が増加すると、研磨表面に対し垂直方向に一時的に撓むようにされている。キャップ740は、圧力によって恒久的に撓むことも変形することもない。床部742も、チャンバ702に供給される加圧流体の量および研磨圧力に基づき、加圧されて撓んだまたは下向きに湾曲した形状から、研磨ヘッド710の底面とほぼ平行な平坦な形状に変化し、最終的には上向きに湾曲したまたは中高の形状に変化する能力がある。
【0100】
ウエハを研磨ヘッド組立体700に設置するために、裏当てフィルム110が床部742の底面746に取り付けられる。次いでウエハが裏当てフィルム110に設置され、上述の「表面張力」により保持される。この均一に分布する表面張力により、チャンバ702内の圧力が調節されて床部742が変形すると、ウエハは直接変形することになる。チャンバ内の圧力を増加または減少させることで、床部742の表面およびウエハを外方に膨らませるか、平坦なままか、または内方へと引き込むことができる。
【0101】
チャンバ702内の圧力を調節するために、チャンバ702は第1の圧力源FSと接続されている。チャンバ流路722がプラットフォーム720を貫通して延びて、チャンバ702を急速着脱式連結プラグであり得るチャンバ・コネクター724と接続している。チャンバ・コネクター724は、チャンバ供給ライン784を通して回転コネクター136に接続している。回転コネクター136は、第1の圧力源FSと接続してスピンドル132を通して加圧流体をチャンバ702にまたはチャンバ702から供給する。第1の圧力源FSは、空気を送って研磨ヘッド組立体700のチャンバ702内の圧力を増加または減少させ得る。
【0102】
第1の圧力源FSは、チャンバ702内の圧力を監視し調節するコントローラー790と接続され得る。コントローラー790は圧力レギュレーター(図示せず)を含み得る。圧力は、入荷ロットの全体的なウエハ形状に基づき手動で調節することもできるし、ロットごとに、あるいはウエハごとに、電子制御してもよい。いくつかの実施形態では、ウエハのロットから特徴的ウエハ・プロファイルが取得され、研磨ヘッド組立体によりウエハに加えられる下向きの圧力およびこの圧力の分布が、特徴的ウエハの平坦度を最大限化するように調節される。
【0103】
環状壁750の外面752は、研磨ヘッド710の円筒部材730の内面734に、接着剤758により接着剤層に沿って取り付けられている。接着剤は、好適にはエポキシグルーであり得る。材料との好適な接着強度を有し、連続的な負荷の下で機能する能力があり、研磨剤に耐性のある接着剤ならばどれでも使用できる。接着剤層は、凹面716および床部742の撓み方向に対して傾斜している。
【0104】
研磨ヘッド710およびキャップ740は、鋼やアルミニウムなどの金属、または他の好適な金属材料で作製され得る。いくつかの実施形態では、研磨ヘッド710およびキャップ740は、鋳造アルミニウム製である(たとえば、Alcoa社が販売するMIC6(登録商標)Aluminum Cast Plate)。他の実施形態では、キャップ740は、アルミナなどのセラミック、またはプラスチック材料で作製され得る。プラスチック材料を用いる実施形態では、ポリエーテルイミド(たとえば、Saudi Basic Industries Corporation(SABIC)社が販売するULTEM(商標)Resin 1000)を用いることができる。プラスチック製のキャップ740は、金属またはセラミック製のものよりもかなり厚みがある。セラミック材料で作製されたキャップは、金属またはプラスチック製のものよりもかなり薄い床部を有している。
【0105】
研磨ヘッド組立体700に使用される金属は、金属イオン源となって研磨剤やスラリーを通じてウエハを汚染する可能性がある。キャップ740からの金属がスラリーおよびウエハを汚染しないように、保護シート770を使ってスラリーとキャップ740との間にバリアを生成できる。保護シート770は、研磨工程中にスラリーがキャップ740と接触して反応し、スラリーおよびウエハが汚染されるのを防止する。保護シート770は、研磨ヘッド710の底部714およびキャップ740の底面746に接着剤で取り付けられ底面746に沿って延在している。図示のように、保護シート770は、キャップ740の底面746を超えて延在して、研磨ヘッド710の底部714とシールを形成している。
【0106】
研磨ヘッド710からの金属がスラリーおよびウエハを汚染するのを防止するために、研磨ヘッド700は、スラリーが金属と接触してウエハを汚染するのを防止するためにバンド774に外接されている。円筒部材730は、下部736に沿って外面732から内方に延びている側部凹所738を有している。バンド774は保護シート770と重なって取り付けられて間にシールを形成して、研磨工程の研磨ヘッド710からの金属汚染を防止する。バンド774および保護シート770は、ポリエーテルイミドなどのプラスチック製である(たとえば、Saudi Basic Industries Corporation(SABIC)社が販売するULTEM(商標)Resin 1000)。
【0107】
それに加えて、裏当てフィルム110が保護シート770およびバンド774両方の少なくとも一部と重なって取り付けられ、それらの間にシールを形成する。したがって、シールは、裏当てフィルム110、保護シート770、バンド774間で蛇行路を形成して、スラリーがキャップ740および研磨ヘッド710と直接接触しないようにしている。
【0108】
中心ストッパー760は、膨張式ベロー764と接続された止め具762を含んでいる。ベロー764は、研磨ヘッド710と接続され、研磨ヘッド710からチャンバ702内に延びている。止め具762の高さは、中心流路726、チャンバ・コネクター728、中心供給ライン786、および回転コネクター136を通して第2の圧力源SSと接続されているベロー764内の圧力を増加または減少させることで調節される。いくつかの実施形態では、別々の回転コネクター136がそれぞれチャンバ供給ライン784と中心供給ライン786と接続されている。
【0109】
ベロー764内の圧力を調節すると、床部742の上向きの撓みを制限するか、または床部を外方に撓ませることができる。第1の圧力源FSと第2の圧力源SSは、コントローラー790を通してそれぞれコネクター724とコネクター728に接続され得る。いくつかの実施形態では、第1の圧力源FSと第2の圧力源SSとは同一の圧力源であり、それぞれコネクター724とコネクター728に、デバイダーおよび制御弁(図示せず)を含み得るコントローラー790を通して接続されている。いくつかの実施形態では、研磨ヘッド組立体700は、中心ストッパー760を含んでいない。これらの実施形態では、第1の圧力源FSは、研磨ヘッド組立体700の中心部を通ってチャンバ702に供給され得る。いくつかの実施形態では、研磨ヘッド組立体700を加圧するのに空気圧システムが用いられる。
【0110】
中心ストッパー760は、研磨ヘッド710およびキャップ740の両方と長手方向軸線に沿って同軸状に揃っている。運転中、中心ストッパー762は、研磨ヘッド710の底面から床部742の内面または上面まで延びて、中心ストッパー760の高さを研磨ヘッド710と床部742との間のチャンバとほぼ等しくすることもできる。
【0111】
それに加えて、裏当てフィルム110の縁部は、バンド774に張り付く。この重なりによって、化学剤をキャップ740または研磨ヘッド700と直接接触させないバリアが形成される。
【0112】
一実施形態の方法では、ウエハの研磨工程は、研磨装置100で用いられる研磨圧力を調節して研磨ヘッド組立体の形状を変化させて、ウエハWが研磨される形状を調整することによって制御される。いくつかの実施形態では、研磨装置は片面研磨機である。別の実施形態では、研磨圧力は、研磨工程の前または最中にコントローラーによって調整される。
【0113】
方法は、研磨パッドをウエハに対し相対的に回転させる回転台と、研磨ヘッドの研磨側にキャップが取り付けられた研磨ヘッド組立体とを有する研磨装置を準備することを含む。キャップはウエハに対し相対的に移動させられて、ウエハからの研磨圧力がキャップに反作用するようになる。キャップは研磨ヘッドに対し相対的に撓まされる。キャップに液体を加えて濡らすことができ、それによってウエハは、キャップに押し付けられると、表面張力によって所定位置でキャップに保持される。キャップ下面の液体をフィルム厚さがほぼゼロになるほど押し出して、表面張力によってウエハを保持できる。
【0114】
キャップに反作用する研磨圧力は、キャップの撓みを調整するよう調節されて、研磨表面の平坦度を向上させる。ウエハの一面は、ウエハと研磨パッドとの間に運動を生じさせてウエハに研磨表面を形成することによって、研磨される。研磨ヘッドとキャップとの間のチャンバ内の内圧を調節して、ウエハに対する相対的なキャップの撓みを調整し、研磨表面の平坦度を向上させることができる。
【0115】
キャップの形状を皿型からドーム型に、またはその逆に変化させることで、ウエハの材料除去プロファイルが変化し、したがって研磨されるウエハの形状も変化する。ドーム型のヘッドは、ウエハの中心部でより多くの材料を除去することになるので、ウエハの厚さプロファイルは研磨前の厚さプロファイルに対し相対的に皿型になる。皿型のヘッドはウエハの縁部でより多くの材料を除去することになるので、ウエハは研磨前の厚さプロファイルに対し相対的にドーム型になる。いくつかの実施形態では、研磨ヘッドの形状は、低剛性キャップを既存のヘッドの底部に追加し、次いで研磨圧力を調整してキャップを撓ませてその形状を変化させることで、変化させてもよい。
【0116】
本明細書で説明する実施形態は、ドーム型、皿型、および+/-のw字型に関して研磨ヘッドを調整する能力を提供して、半導体ウエハを処理する高効率かつ経済的な研磨方法を可能にする。該方法は、ウエハの歩留りおよび処理機能を向上させ、また製品誤差を減じ、研磨パッドおよび片面研磨ヘッドに設置されるテンプレートの交換に関わるメンテナンスに要する時間を短縮する。
【0117】
本明細書で説明する実施形態を用いる別の利点としては、上述の標準的な着脱方法を保持しつつ、剛性セラミック・ヘッドが1つ以上の半径領域で可撓性ヘッドの機能を有するように、後付けできる能力が挙げられる。これらの実施形態の使用はまた、ウエハの操作に関して可撓性膜設計よりもロバストである。それに加えて、後付けヘッドを所有し運転するコストは膜を有する可撓性ヘッドよりも低くなるが、それは膜交換や膜ヘッド改造よりもテンプレート交換のほうがはるかに廉価だからである。
【0118】
本明細書で説明する実施形態を用いる別の利点としては、初めは不均一なウエハ表面を、研磨ヘッドの形状を調整することによって補償する能力が挙げられる。
【0119】
本発明の要素または実施形態を説明する際の「a」、「an」、「the」といった冠詞および「said(前記)」は、その要素が1つ以上あることを意味するものである。「comprising(含む)」、「including(含む)」および「having(有する)」という用語は、包括的なものであり、列挙した要素の他にも追加の要素があり得ることを意味している。具体的な方向を示す用語(たとえば「top(頂部、上)」、「bottom(底部、下)」、「side(側部)」、「down(下)」、「up(上)」など)を用いたのは、説明の便宜上であり、説明されている物品の特定の方向を要するものではない。
【0120】
上記の構成および方法には、本発明の範囲から逸脱することなく、様々な変化を加えることができるので、上記の説明に含まれ添付図面に示されるものは全て例示であり、限定の意図はないもの、と理解すべきである。