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特許7240123研磨用組成物、研磨用組成物調製用キットおよび磁気ディスク基板の製造方法
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  • 特許-研磨用組成物、研磨用組成物調製用キットおよび磁気ディスク基板の製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-07
(45)【発行日】2023-03-15
(54)【発明の名称】研磨用組成物、研磨用組成物調製用キットおよび磁気ディスク基板の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C09K 3/14 20060101AFI20230308BHJP
   G11B 5/84 20060101ALI20230308BHJP
   B24B 37/00 20120101ALI20230308BHJP
【FI】
C09K3/14 550D
G11B5/84 A
B24B37/00 H
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2018185411
(22)【出願日】2018-09-28
(65)【公開番号】P2020055905
(43)【公開日】2020-04-09
【審査請求日】2021-08-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000236702
【氏名又は名称】株式会社フジミインコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100117606
【弁理士】
【氏名又は名称】安部 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100136423
【弁理士】
【氏名又は名称】大井 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100154449
【弁理士】
【氏名又は名称】谷 征史
(72)【発明者】
【氏名】大山 貴治
(72)【発明者】
【氏名】横道 典孝
【審査官】黒川 美陶
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-229098(JP,A)
【文献】特開2002-180034(JP,A)
【文献】特開2017-101248(JP,A)
【文献】特開2018-039934(JP,A)
【文献】特開2005-008875(JP,A)
【文献】特開2004-204152(JP,A)
【文献】特開2008-093819(JP,A)
【文献】坂下 攝,色材技術者のための”粉体技術の基礎”第1章 粉粒体の物理的性質,J. Jpa. Soc. Colour Mater.,日本,2005年,78 [4],168-184
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09K 3/14
B24B
G11B 5/84-5/858
H01L 21/304
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁気ディスク基板の仕上げ研磨工程に用いられる研磨用組成物であって、
砥粒が水に分散した砥粒分散液を含有し、
前記砥粒はシリカ粒子を含有し、
前記砥粒の個数基準における粒度分布の最頻径(Dmode)と小径側からの95%累積径(D95)との関係が以下の関係式:
1.14≦(D95/Dmode)<1.3;
を満たし、
前記個数基準における粒度分布の前記95%累積径(D 95 )と小径側からの90%累積径(D 90 )との関係が以下の関係式:
95 -D 90 )≦2nm;
を満たす、研磨用組成物。
【請求項2】
さらに酸化剤を含む、請求項1に記載の研磨用組成物。
【請求項3】
さらに水溶性高分子を含む、請求項1または2に記載の研磨用組成物。
【請求項4】
前記水溶性高分子の含有量は0.0001重量%以上0.004重量%以下である、請求項3に記載の研磨用組成物。
【請求項5】
前記95%累積径(D95)は28nm以上31nm以下である、請求項1から4のいずれか一項に記載の研磨用組成物。
【請求項6】
前記磁気ディスク基板は、表面にニッケルリンめっき層を有する磁気ディスク基板である、請求項1から5のいずれか一項に記載の研磨用組成物。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか一項に記載の研磨用組成物を調製するための研磨用組成物調製用キットであって、
互いに分けて保管される複数の剤を備え、
前記複数の剤の一つは、砥粒が水に分散した砥粒分散液であり、
前記砥粒はシリカ粒子を含有し、
前記砥粒の個数基準における粒度分布の最頻径(Dmode)と小径側からの95%累積径(D95)との関係が以下の関係式:
1.14≦(D95/Dmode)<1.3;
を満たし、
前記個数基準における粒度分布の前記95%累積径(D 95 )と小径側からの90%累積径(D 90 )との関係が以下の関係式:
95 -D 90 )≦2nm;
を満たす、研磨用組成物調製用キット。
【請求項8】
請求項1から6のいずれか一項に記載の研磨用組成物を用いた仕上げ研磨工程を含む、磁気ディスク基板の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、研磨用組成物、研磨用組成物調製用キットおよび前記研磨用組成物を用いた磁気ディスク基板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、高精度な表面が要求される基板の製造プロセスには、該基板を研磨する工程が含まれ得る。例えば、ニッケルリンめっきが施された磁気ディスク基板(Ni-P基板)の製造においては、一般に、より研磨効率を重視した研磨工程(予備研磨工程)と、最終製品の表面精度に仕上げるために行う最終研磨工程(仕上げ研磨工程)とが行われている。このような磁気ディスク基板の研磨は、典型的には、研磨対象物としての磁気ディスク基板と研磨パットとの間に研磨用組成物(研磨液)を供給し、上記研磨パッドを上記磁気ディスク基板に押し付けて両者を相対的に移動(例えば回転移動)させることによって行われる。磁気ディスク基板の研磨に関する技術文献として特許文献1、2が挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2002-327170号公報
【文献】特開2013-229098号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年の磁気ディスク基板の分野では、研磨後の表面品質に関する要求レベルが益々高くなっており、従来は問題とされていなかった微小な欠陥が問題視される傾向がある。かかる要求に対応するため、散乱光像に基づく欠陥測定装置(例えばケーエルエー・テンコール株式会社製 Candela OSA6100)において、検出感度を高める措置が施されている。そのような措置が施された欠陥測定装置を用いて従来技術により研磨された磁気ディスク基板を評価すると、検出される欠陥数は概して増大する傾向にあった。しかし、こうして評価した基板表面について本発明者らが詳細な欠陥解析を行ったところ、検出される欠陥数には、実際に存在する微細スクラッチ等の微小欠陥の数だけでなく、欠陥測定装置の原理に由来して欠陥として検出される部分(ノイズ)も含まれていることが判明した。
【0005】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであり、研磨後の磁気ディスク基板の微小欠陥を精度よく検出しやすくする研磨用組成物を提供することを目的とする。関連する他の目的は、上記研磨用組成物の調製に用いられる研磨用組成物調製用キットおよび上記研磨用組成物を用いた磁気ディスク基板の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、上述のような欠陥測定装置を用いた散乱光像に基づく表面検査において、本来検出を意図する微小欠陥をより精度よく検出するために、上記ノイズが生じる原因について検討した。その結果、従来技術により研磨された磁気ディスク基板の表面には一定の方向に向かって伸びる浅い研磨の痕(加工痕)が生じることがあり、この加工痕によって上記表面検査における微小欠陥の検出精度が低下することが判明した。具体的には、一般的な磁気ディスクの研磨には両面研磨機が用いられ、加工の方向性は基板に対し一定方向ではなく複数の方向で進行する。表面粗さは、これらの複数の方向性を持った加工痕の集積により形成された面を評価している。一方で、磁気ディスクの研磨プロセスは、一般的には複数のプロセスから構成されており、プロセスの最終段には定盤の回転数や加工圧を下げるプロセスや、スラリーの代わりに純水を供給して基板のリンスを行うプロセスがある。上述の加工痕は、その様な研磨プロセスの最終段で基板の表面に発生した一定の方向に向かって伸びる研磨の痕であり、表面粗さは同等でも、基板に残留する加工痕には差が見られることがある。そして、この加工痕が、散乱光像の撮像のために照射したレーザー光と直交すると、強い散乱光が生じてバックグラウンドノイズとして検出され、微小欠陥の検出精度が低下する。そこで本発明者は、研磨後の基板表面に加工痕が形成されることを軽減すれば、散乱光像に基づく表面検査におけるノイズを抑制し、研磨後の磁気ディスク基板の微小欠陥を精度よく検出しやすくなると考え、本発明を完成させた。
【0007】
本発明によると、磁気ディスク基板の仕上げ研磨工程に用いられる研磨用組成物が提供される。この研磨用組成物は、砥粒が水に分散した砥粒分散液を含有し、前記砥粒はシリカ粒子を含有する。そして、ここに開示される研磨用組成物は、前記砥粒の個数基準における粒度分布の最頻径(Dmode)と小径側からの95%累積径(D95)との関係が関係式:1.14≦(D95/Dmode)<1.3を満たす。上記の特性を満たす研磨用組成物を用いることによって、研磨パットから基板への圧力を好適に分散しながら仕上げ研磨工程を行うことができるため、研磨後の基板表面の加工痕を軽減することができる。この結果、散乱光像に基づいた表面検査におけるノイズを抑制できるため、研磨後の基板表面の微小欠陥を精度よく検出しやすくなる。
【0008】
ここに開示される研磨用組成物の好ましい一態様では、前記個数基準における粒度分布の前記95%累積径(D95)と小径側からの90%累積径(D90)との関係が関係式:(D95-D90)≦2nmを満たす。上記の特性を満たす研磨用組成物を用いることによって、研磨後の基板表面における加工痕をより好適に軽減できる。
【0009】
ここに開示される研磨用組成物の好ましい一態様はさらに酸化剤を含む。当該酸化剤は、研磨促進剤として研磨用組成物に含まれ得る。
【0010】
ここに開示される研磨用組成物の好ましい一態様はさらに水溶性高分子を含む。当該水溶性高分子は、研磨後の面精度を向上させるための任意成分として研磨用組成物に含まれ得る。
【0011】
ここに開示される研磨用組成物の好ましい一態様では、前記95%累積径(D95)は28nm以上31nm以下である。これによって、高品位の表面を効率よく得ることができる。
【0012】
ここに開示される研磨用組成物の好ましい一態様では、磁気ディスク基板は、表面にニッケルリンめっき層を有する磁気ディスク基板である。ニッケルリンめっき層を表面に有する磁気ディスク基板は、加工痕が形成されやすいため、ここに開示される研磨用組成物を特に好ましく用いることができる。
【0013】
また、この明細書によると、ここに開示されるいずれかの研磨用組成物を調製するための研磨用組成物調製用キットが提供される。この研磨用組成物調製用キットは、互いに分けて保管される複数の剤を備えている。そして、前記複数の剤の一つは、砥粒が水に分散した砥粒分散液であり、前記砥粒の個数基準における粒度分布の最頻径(Dmode)と小径側からの95%累積径(D95)との関係が関係式:1.14≦(D95/Dmode)<1.3を満たす。この研磨用組成物調製用キットを用いて調製された研磨用組成物を仕上げ研磨工程に用いることによって、研磨後の基板表面における加工痕を軽減できるため、研磨後の基板表面の微小欠陥を精度よく検出しやすくなる。
【0014】
また、本発明によると、磁気ディスク基板の製造方法が提供される。その製造方法は、ここに開示されるいずれかの研磨用組成物を用いた仕上げ研磨工程を含む。かかる製造方法によると、仕上げ研磨工程後の基板表面における加工痕を軽減できるため、表面検査におけるノイズを抑制し、本来検出を意図する微小スクラッチ等の微小欠陥を精度よく検出しやすくなる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】散乱光強度差ΔSIの測定手順を模式的に示す説明図である。
図2】散乱光強度差ΔSIの測定手順を模式的に示す説明図である。
図3】散乱光強度差ΔSIの測定手順を模式的に示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の好適な実施形態を説明する。なお、本明細書において特に言及している事項以外の事柄であって本発明の実施に必要な事柄は、当該分野における従来技術に基づく当業者の設計事項として把握され得る。本発明は、本明細書に開示されている内容と当該分野における技術常識とに基づいて実施することができる。
【0017】
<研磨用組成物>
ここに開示される研磨用組成物は、磁気ディスク基板の仕上げ研磨工程に用いられる。本明細書において「仕上げ研磨工程」とは、研磨用組成物を用いて行われる研磨工程のうち最後に(すなわち、最も下流側に)配置される研磨工程をいう。したがって、ここに開示される研磨用組成物は、磁気ディスク基板の研磨で用いられる複数種類の研磨用組成物のうち、最も下流側で用いられる種類の研磨用組成物として把握され得る。以下、ここに開示される研磨用組成物の成分を説明する。
【0018】
(砥粒)
ここに開示される研磨用組成物は、砥粒が水に分散した砥粒分散液を含有しており、この砥粒はシリカ粒子を含有している。使用し得るシリカ粒子の例としては、特に限定されないが、コロイダルシリカ(例えば、ケイ酸ソーダ法シリカ、アルコキシド法シリカ等)、フュームドシリカ、沈降シリカ等が挙げられる。表面改質としては、例えば、官能基の導入、金属修飾等の化学的修飾が挙げられる。ここに開示される技術における砥粒は、このようなシリカ粒子の1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて含むものであり得る。なお、ここでシリカ粒子とは、典型的には該粒子の95重量%以上、例えば98重量%以上がシリカである粒子をいい、シリカからなる粒子(すなわち、100重量%がシリカである粒子)であり得る。
【0019】
ここに開示される技術におけるシリカ砥粒の構成成分として使用し得るシリカ粒子の一好適例として、コロイダルシリカが挙げられる。なかでも、ケイ酸ソーダ法シリカやアルコキシド法シリカのように、水相での粒子成長を経て合成されたコロイダルシリカの使用が好ましい。この種のコロイダルシリカを含むシリカ砥粒によると、高い研磨レートと良好な面精度とが好適に達成され得る。ここに開示されるシリカ砥粒がコロイダルシリカを含む場合、該シリカ砥粒に含まれるコロイダルシリカは、1種であってもよく、製造条件および/または物性の異なる2種以上であってもよい。また、上記シリカ砥粒は、1種または2種以上のコロイダルシリカからなる構成であってもよく、コロイダルシリカと、他のシリカ粒子すなわちコロイダルシリカ以外のシリカ粒子とを組み合わせて含む構成であってもよい。好ましい一態様では、研磨用組成物に含まれる砥粒が、コロイダルシリカを単独で含む。コロイダルシリカを単独で用いることにより、高い研磨レートを保ちつつ、より良好な面精度(例えばスクラッチ数の低減された表面)が実現され得る。
【0020】
ここに開示される研磨用組成物の砥粒は、本発明の効果を大きく損なわない限度で、シリカ粒子以外の粒子を含んでいてもよい。シリカ粒子以外の粒子としては、例えば、アルミナ粒子、酸化セリウム粒子、二酸化チタン粒子、酸化ジルコニウム粒子、窒化ケイ素粒子、炭化ケイ素粒子等の無機粒子;ポリメタクリル酸メチル粒子、ポリアクリロニトリル粒子等の有機粒子;等が挙げられる。ここに開示される研磨用組成物は、砥粒の95重量%以上、例えば98重量%以上(典型的には100重量%)がシリカである態様で好ましく実施され得る。
【0021】
ここに開示される研磨用組成物は、上記砥粒分散液に含まれる砥粒の個数基準における粒度分布の最頻径(Dmode)と95%累積径(D95)との関係が下記の関係式(1)を満たすことにより特徴づけられる。
1.14≦(D95/Dmode)<1.3 (1)
上記最頻径(Dmode)は、砥粒の個数基準における粒度分布で最も頻度の高い粒子径(粒度分布の最大ピークにおける粒子径)である。また、95%累積径(D95)は、上記砥粒の粒度分布において、小径側から1nm刻みでカウントした際の累積個数が95%となる点に相当する粒子径である。このD95がDmodeに対して大きくなりすぎると、研磨パットからの圧力が分散されにくくなり、大粒径側の粒子を介した局所的な圧力集中が生じ、仕上げ研磨工程後の基板表面に加工痕が形成されやすくなる。この観点に基づいて、ここに開示される研磨用組成物では、Dmodeに対するD95の比(D95/Dmode)が1.3未満に設定されている。これによって、大粒径側の粒子を介した局所的な圧力集中を防止し、研磨パットからの圧力を好適に分散しながら仕上げ研磨工程を行うことができるため、研磨後の基板表面における加工痕を軽減できる。また、研磨パットからの圧力をより好適に分散するという観点から、D95/Dmodeは、1.27以下が好ましく、1.25以下がより好ましく、1.23以下がさらに好ましく、1.2以下が特に好ましい。一方で、D95/Dmodeが大きくなるにつれて、研磨レートが向上する傾向がある。ここに開示される研磨用組成物は、上述した加工痕の軽減と研磨レートの向上とを両立させるために、D95/Dmodeが1.14以上に設定されている。また、D95/Dmodeは、1.15以上であってもよく、1.16以上であってもよく、1.17以上であってもよく、1.18以上であってもよい。
なお、砥粒分散液のD95/Dmodeが上記の関係式(1)を満たす砥粒を得るための手段の一つとして、複数種類の砥粒を用意して各々の砥粒のD95とDmodeを測定した後、測定結果に応じて、これらの砥粒を単独で又は混合して使用するという方法が挙げられる。これによって、ここに開示される研磨用組成物を容易に得ることができる。
【0022】
本明細書における砥粒の粒度分布は次の方法により求められる。まず、測定対象の砥粒(1種類の砥粒粒子であってもよく、2種類以上の砥粒粒子の混合物であってもよい。)を水に分散させた砥粒分散液を調製する。そして、透過型電子顕微鏡(Transmission Electron Microscope:TEM、日立ハイテクノロジーズ社製STEM HD-2700)を用いて、測定対象の砥粒に含まれるTEMにて観察可能な10000個以上の粒子を、1視野内に100個程度観察可能な倍率(例えば200000倍~400000倍)で撮影し、TEM画像を取得する。そして、取得したTEM画像から各粒子の面積を算出し、算出された面積と同一の面積を有する理想円(真円)の直径を各粒子の粒子径として算出する。次に、当該砥粒に含まれる個々の粒子について上記算出された粒子径を1nm単位で分類した後、粒子径を横軸に、累積個数(%)を縦軸にプロットすることにより、測定対象の粒度分布を求める。なお、上記粒度分布は、マウンテック社製画像解析ソフトウエアMacViewを用いて求めることができる。後述の実施例についても同様である。
【0023】
なお、上記Dmodeは、D95との関係が上記関係式(1)を満たしていれば特に限定されない。例えば、Dmodeの下限は、1nm以上であってもよく、5nm以上であってもよく、10nm以上であってもよく、15nm以上であってもよく、20nm以上であってもよい。また、Dmodeの上限は、例えば100nm以下であってもよく、70nm以下であってもよく、50nm以下であってもよく、40nm以下であってもよく、30nm以下であってもよい。
また、D95も同様に、Dmodeとの関係が上記関係式(1)を満たしていれば特に限定されない。例えば、D95の下限は、1.2nm以上であってもよく、6nm以上であってもよく、12nm以上であってもよく、18nm以上であってもよく、24nm以上であってもよい。また、D95の上限は、例えば120nm以下であってもよく、84nm以下であってもよく、60nm以下であってもよく、48nm以下であってもよく、36nm以下であってもよい。
なお、良好な面品質を得やすくするという観点からは、上記D95を35nm以下にすることが好ましく、33nm以下にすることがより好ましく、31nm以下にすることがさらに好ましい。また、研磨レートを向上させるという観点からは、上記D95を26nm以上にすることが好ましく、27nm以上にすることがより好ましく、28nm以上にすることがさらに好ましい。
【0024】
また、ここに開示される研磨用組成物は、砥粒の個数基準における粒度分布の95%累積径(D95)と90%累積径(D90)との関係が以下の関係式(2)を満たしていると好ましい。
(D95-D90)≦2nm (2)
90%累積径(D90)は、上記粒度分布において小径側から1nm刻みでカウントした際の累積個数が90%となる点に相当する粒子径である。このD90とD95との差を2nm以下にすることによって、D95で示される大粒径側の粒子を介した局所的な圧力をD90で示される粒子で緩和しやすくなるため、加工痕がより形成されにくくなる。ここに開示される研磨用組成物は、D95-D90が1nm以下である態様でも好ましく実施され得る。なお、D95-D90の下限は、原理上0である。
【0025】
特に限定するものではないが、砥粒の平均アスペクト比は、原理上1以上であり、その下限値は特に限定されないが、例えば1.03以上、典型的には1.08以上であってもよい。また、面精度を効率よく高めやすくする観点から、いくつかの態様において、平均アスペクト比は、通常、1.30以下であることが適当である。平均アスペクト比の低減によって、砥粒が転がり移動しやすくなるため加工が安定し、スクラッチがより好ましく低減され得る。砥粒の平均アスペクト比は、好ましくは1.28以下、より好ましくは1.25以下(例えば1.2以下)である。ここで、砥粒の平均アスペクト比とは、該砥粒を構成する個々の粒子の長径/短径比の平均値、すなわち個数平均アスペクト比をいう。以下、特記しない場合、本明細書において平均アスペクト比とは、上記個数平均アスペクト比を意味するものとする。
【0026】
砥粒の個数平均アスペクト比は、上記粒度分布を求める際に取得したTEM画像に基づいて測定される。具体的には、TEM画像における各粒子に外接する最小の長方形について、その長辺の長さ(長径の値)を短辺の長さ(短径の値)で除した値を各粒子の長径/短径比(アスペクト比)として算出する。また、各粒子の画像から各粒子の面積を算出し、算出された面積と同一の面積を有する理想円(真円)の直径を各粒子の粒子径として算出する。そして、上記所定個数の粒子のアスペクト比から、小径側からの累積粒度分布における所定の累積範囲の粒子の個数平均アスペクト比を算術平均することにより、全粒子の平均アスペクト比を求めることができる。上記各アスペクト比は、マウンテック社製画像解析ソフトウエアMacViewを用いて求めることができる。
【0027】
研磨用組成物における砥粒の含有量は特に制限されないが、典型的には0.1重量%以上であり、0.5重量%以上であることが好ましく、1重量%以上であることがより好ましく、2重量%以上であることがさらに好ましく、3重量%以上であることが特に好ましい。上記含有量は、複数種類の砥粒を含む場合には、それらの合計含有量である。砥粒の含有量の増大によって、研磨パットからの圧力を分散させやすくなる傾向がある。研磨後の基板の表面平滑性や砥粒の分散安定性の観点から、通常、上記含有量は、30重量%以下が適当であり、好ましくは25重量%以下、より好ましくは15重量%以下、さらに好ましくは10重量%以下である。
【0028】
(水)
ここに開示される研磨用組成物は、典型的には、上述のような砥粒を分散させる水を含有する。水としては、イオン交換水、純水、超純水、蒸留水等を好ましく用いることができる。イオン交換水は、典型的には脱イオン水であり得る。
【0029】
(その他の成分)
ここに開示される研磨用組成物は、本発明の効果が著しく妨げられない範囲で、酸、酸化剤、塩基性化合物、水溶性高分子、界面活性剤、キレート剤、防腐剤、防カビ剤等の、研磨用組成物(例えば、Ni-P基板等のような磁気ディスク基板用の研磨用組成物)に使用され得る公知の添加剤を、必要に応じてさらに含有してもよい。
【0030】
(酸)
ここに開示される研磨用組成物は、研磨促進剤として酸を含んでいてもよい。使用され得る酸は、特に制限はなく、無機酸および有機酸のいずれも使用可能である。有機酸としては、例えば、炭素原子数が1~18程度、典型的には1~10程度の有機カルボン酸、有機ホスホン酸、有機スルホン酸、アミノ酸等が挙げられる。酸は、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0031】
無機酸の具体例としては、リン酸(オルトリン酸)、硝酸、硫酸、塩酸、ホウ酸、スルファミン酸、ホスフィン酸、ホスホン酸、ピロリン酸、トリポリリン酸、テトラポリリン酸、ヘキサメタリン酸、炭酸、フッ化水素酸、亜硫酸、チオ硫酸、塩素酸、過塩素酸、亜塩素酸、ヨウ化水素酸、過ヨウ素酸、ヨウ素酸、臭化水素酸、過臭素酸、臭素酸、クロム酸、亜硝酸等が挙げられる。
【0032】
有機酸の具体例としては、マレイン酸、リンゴ酸、グリコール酸、コハク酸、イタコン酸、マロン酸、イミノ二酢酸、グルコン酸、乳酸、マンデル酸、酒石酸、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、アジピン酸、シュウ酸、吉草酸、エナント酸、カプロン酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、マルガリン酸、ステアリン酸、シクロヘキサンカルボン酸、フェニル酢酸、安息香酸、クロトン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、リシノレン酸、メタクリル酸、グルタル酸、フマル酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、タルトロン酸、グリセリン酸、ヒドロキシ酪酸、ヒドロキシ酢酸、ヒドロキシ安息香酸、サリチル酸、イソクエン酸、メチレンコハク酸、没食子酸、アスコルビン酸、ニトロ酢酸、オキサロ酢酸、クロロ酢酸、ジクロロ酢酸、トリクロロ酢酸等の有機カルボン酸;グリシン、アラニン、グルタミン酸、アスパラギン酸、バリン、ロイシン、イソロイシン、セリン、トレオニン、システイン、メチオニン、フェニルアラニン、トリプトファン、チロシン、プロリン、シスチン、グルタミン、アスパラギン、リシン、アルギニン等のアミノ酸;ニコチン酸;ピクリン酸;ピコリン酸;メチルアシッドホスフェート、エチルアシッドホスフェート、エチルグリコールアシッドホスフェート、イソプロピルアシッドホスフェート、フィチン酸、1-ヒドロキシエチリデン-1,1-ジホスホン酸、アミノトリ(メチレンホスホン酸)、エチレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)、ジエチレントリアミンペンタ(メチレンホスホン酸)、エタン-1,1-ジホスホン酸、エタン-1,1,2-トリホスホン酸、エタン-1-ヒドロキシ-1,1-ジホスホン酸、エタンヒドロキシ-1,1,2-トリホスホン酸、エタン-1,2-ジカルボキシ-1,2-ジホスホン酸、メタンヒドロキシホスホン酸、2-ホスホノブタン-1,2-ジカルボン酸、1-ホスホノブタン-2,3,4-トリカルボン酸、α-メチルホスホノコハク酸、アミノポリ(メチレンホスホン酸)等の有機ホスホン酸;エタンスルホン酸、アミノエタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、2-ナフタレンスルホン酸、スルホコハク酸、10-カンファースルホン酸、タウリン等の有機スルホン酸等が挙げられる。
【0033】
研磨レートの観点から好ましい酸として、リン酸、マロン酸、マレイン酸、塩酸、硝酸、硫酸、スルファミン酸、フィチン酸、1-ヒドロキシエチリデン-1,1-ジホスホン酸等が例示される。なかでもリン酸、マロン酸、マレイン酸、硝酸、硫酸が好ましい。
【0034】
酸は、該酸の塩の形態で用いられてもよい。塩の例としては、上述した無機酸や有機酸の、金属塩、アンモニウム塩、アルカノールアミン塩等が挙げられる。金属塩としては、例えば、リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩が挙げられる。アンモニウム塩としては、例えば、テトラメチルアンモニウム塩、テトラエチルアンモニウム塩等の第四級アンモニウム塩が挙げられる。アルカノールアミン塩としては、例えば、モノエタノールアミン塩、ジエタノールアミン塩、トリエタノールアミン塩が挙げられる。
塩の具体例としては、リン酸三カリウム、リン酸水素二カリウム、リン酸二水素カリウム、リン酸三ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム等のアルカリ金属リン酸塩およびアルカリ金属リン酸水素塩;上記で例示した有機酸のアルカリ金属塩;その他、グルタミン酸二酢酸のアルカリ金属塩、ジエチレントリアミン五酢酸のアルカリ金属塩、ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸のアルカリ金属塩、トリエチレンテトラミン六酢酸のアルカリ金属塩;等が挙げられる。これらのアルカリ金属塩におけるアルカリ金属は、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム等であり得る。
【0035】
ここに開示される研磨用組成物に含まれ得る塩としては、無機酸の塩、例えば、アルカリ金属塩やアンモニウム塩を好ましく採用し得る。例えば、塩化カリウム、塩化ナトリウム、塩化アンモニウム、硝酸カリウム、硝酸ナトリウム、硝酸アンモニウム、リン酸カリウム等を好ましく使用し得る。
【0036】
酸およびその塩は、1種を単独でまたは2種以上(例えば2種または3種)を組み合わせて用いることができる。好ましい一態様において、酸と、該酸とは異なる酸の塩とを組み合わせて用いることができる。好ましい他の一態様では、上記酸は、好ましくは無機酸である。上記酸の塩は、好ましくは無機酸の塩である。
【0037】
研磨用組成物中に酸を含む場合、その含有量は特に限定されない。酸の含有量は、通常、0.1重量%以上が適当であり、0.5重量%以上が好ましく、0.8重量%以上がより好ましく、例えば1.2重量%以上である。酸の含有量が少なすぎると、研磨レートが不足しやすくなり、実用上好ましくない場合がある。酸の含有量は、通常、15重量%以下が適当であり、10重量%以下が好ましく、5重量%以下がより好ましく、例えば3重量%以下である。酸の含有量が多すぎると、研磨対象物の面精度が低下しやすくなり、実用上好ましくない場合がある。
【0038】
(酸化剤)
ここに開示される研磨用組成物は、酸化剤を含んでいてもよい。酸化剤の例としては、過酸化物、硝酸またはその塩、過ヨウ素酸またはその塩、ペルオキソ酸またはその塩、過マンガン酸またはその塩、クロム酸またはその塩、酸素酸またはその塩、金属塩類、硫酸類等が挙げられるが、これらに限定されない。酸化剤は、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。酸化剤の具体例としては、過酸化水素、過酸化ナトリウム、過酸化バリウム、硝酸、硝酸鉄、硝酸アルミニウム、硝酸アンモニウム、ペルオキソ一硫酸、ペルオキソ一硫酸アンモニウム、ペルオキソ一硫酸金属塩、ペルオキソ二硫酸、ペルオキソ二硫酸アンモニウム、ペルオキソ二硫酸金属塩、ペルオキソリン酸、ペルオキソ硫酸、ペルオキソホウ酸ナトリウム、過ギ酸、過酢酸、過安息香酸、過フタル酸、次亜臭素酸、次亜ヨウ素酸、塩素酸、臭素酸、ヨウ素酸、過ヨウ素酸、過塩素酸、次亜塩素酸、次亜塩素酸ナトリウム、次亜塩素酸カルシウム、過マンガン酸カリウム、クロム酸金属塩、重クロム酸金属塩、塩化鉄、硫酸鉄、クエン酸鉄、硫酸アンモニウム鉄等が挙げられる。好ましい酸化剤として、過酸化水素、硝酸鉄、過ヨウ素酸、ペルオキソ一硫酸、ペルオキソ二硫酸および硝酸が例示される。少なくとも過酸化水素を含むことが好ましく、過酸化水素からなることがより好ましい。
【0039】
研磨用組成物中に酸化剤を含む場合、その含有量は、有効成分量基準で0.01重量%以上であることが好ましく、より好ましくは0.1重量%以上、さらに好ましくは0.3重量%以上である。酸化剤の含有量が少なすぎると、研磨対象物を酸化する速度が遅くなり、研磨レートが低下するため、実用上好ましくない場合がある。また、研磨用組成物中に酸化剤を含む場合、その含有量は、有効成分量基準で5重量%以下であることが好ましく、より好ましくは1重量%以下である。酸化剤の含有量が多すぎると、研磨対象物の面精度が低下しやすくなり、実用上好ましくない場合がある。
【0040】
(塩基性化合物)
研磨用組成物には、必要に応じて塩基性化合物を含有させることができる。ここで塩基性化合物とは、研磨用組成物に添加されることによって該組成物のpHを上昇させる機能を有する化合物を指す。塩基性化合物の例としては、アルカリ金属水酸化物、炭酸塩や炭酸水素塩、第四級アンモニウムまたはその塩、アンモニア、アミン、リン酸塩やリン酸水素塩、有機酸塩等が挙げられる。塩基性化合物は、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0041】
アルカリ金属水酸化物の具体例としては、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム等が挙げられる。
炭酸塩や炭酸水素塩の具体例としては、炭酸水素アンモニウム、炭酸アンモニウム、炭酸水素カリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム等が挙げられる。
第四級アンモニウムまたはその塩の具体例としては、水酸化テトラメチルアンモニウム、水酸化テトラエチルアンモニウム、水酸化テトラブチルアンモニウム等の水酸化第四級アンモニウム;このような水酸化第四級アンモニウムのアルカリ金属塩;等が挙げられる。上記アルカリ金属塩としては、例えばナトリウム塩、カリウム塩が挙げられる。
アミンの具体例としては、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、エチレンジアミン、モノエタノールアミン、N-(β-アミノエチル)エタノールアミン、ヘキサメチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、無水ピペラジン、ピペラジン六水和物、1-(2-アミノエチル)ピペラジン、N-メチルピペラジン、グアニジン、イミダゾールやトリアゾール等のアゾール類、等が挙げられる。
リン酸塩やリン酸水素塩の具体例としては、リン酸三カリウム、リン酸水素二カリウム、リン酸二水素カリウム、リン酸三ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム等のアルカリ金属塩が挙げられる。
有機酸塩の具体例としては、シュウ酸カリウム、酒石酸カリウム、酒石酸カリウムナトリウム、酒石酸アンモニウム等が挙げられる。
【0042】
(水溶性高分子)
ここに開示される研磨用組成物は、水溶性高分子を含有することが好ましい。ここでいう水溶性高分子とは、同一(単独重合体;ホモポリマー)もしくは相異なる(共重合体;コポリマー)繰り返し構成単位を有する水溶性のポリマーをいい、典型的には重量平均分子量(Mw)が500以上(好ましくは1000以上)の化合物であり得る。水溶性高分子を研磨用組成物に含有させることにより、研磨後の面精度が向上し得る。水溶性高分子として用いられるポリマーの種類としては特に制限はなく、アニオン性ポリマー、ノニオン性ポリマー、カチオン性ポリマー、両性ポリマーのいずれも使用可能である。そのなかでもアニオン性ポリマーを含むことが好ましい。アニオン性ポリマーとしては、カルボン酸系重合体、スルホン酸系重合体などが挙げられる。
ポリマーの具体例としては、例えば、ナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物、メチルナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物、アントラセンスルホン酸ホルムアルデヒド等のポリアルキルアリールスルホン酸系化合物;メラミンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物等のメラミンホルマリン樹脂スルホン酸系化合物;リグニンスルホン酸、変成リグニンスルホン酸等のリグニンスルホン酸系化合物;アミノアリールスルホン酸-フェノール-ホルムアルデヒド縮合物等の芳香族アミノスルホン酸系化合物;ポリスチレンスルホン酸系化合物;その他、ポリアクリル酸、ポリ酢酸ビニル、ポリマレイン酸、ポリイタコン酸、ポリビニルアルコール、ポリグリセリン、ポリビニルピロリドン、ポリビニルピロリドンポリアクリル酸共重合体、ポリビニルピロリドン酢酸ビニル共重合体、ジアリルアミン塩酸塩・二酸化硫黄共重合体、カルボキシメチルセルロース、カルボキシエチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、プルラン、キトサン等が挙げられる。水溶性高分子は、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0043】
上記ポリマーの含有量(複数のポリマーを含む態様では、それらの合計含有量)は特に制限はないが、例えば0.0001重量%以上とすることが適当である。上記含有量は、研磨後の研磨対象物(例えば磁気ディスク基板)の表面平滑性等の観点から、好ましくは0.001重量%以上、より好ましくは0.01重量%以上、さらに好ましくは0.02重量%以上である。また、研磨レート等の観点から、上記含有量は、0.2重量%以下とすることが適当であり、好ましくは0.15重量%以下、例えば0.1重量%以下である。
【0044】
(界面活性剤)
研磨用組成物には、必要に応じて界面活性剤を含有させることができる。ここでいう界面活性剤とは、1分子中に少なくとも一つ以上の親水部位(典型的には親水基)と一つ以上の疎水部位(典型的には疎水基)とを有する化合物をいう。界面活性剤としては、特に限定されず、アニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤のいずれも使用可能である。界面活性剤の使用により、研磨用組成物の分散安定性が向上し得る。界面活性剤は、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
アニオン性界面活性剤の具体例としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル酢酸、ポリオキシエチレンアルキル硫酸エステル、アルキル硫酸エステル、ポリオキシエチレンアルキル硫酸、アルキル硫酸、アルキルベンゼンスルホン酸、アルキルリン酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルリン酸エステル、ポリオキシエチレンスルホコハク酸、アルキルスルホコハク酸、アルキルナフタレンスルホン酸、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸、ポリアクリル酸、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸アンモニウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸アンモニウム、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸ナトリウム等が挙げられる。
アニオン性界面活性剤の他の具体例としては、ナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物、メチルナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物、アントラセンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物、ベンゼンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物等のポリアルキルアリールスルホン酸系化合物;メラミンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物等のメラミンホルマリン樹脂スルホン酸系化合物;リグニンスルホン酸、変成リグニンスルホン酸等のリグニンスルホン酸系化合物;アミノアリールスルホン酸-フェノール-ホルムアルデヒド縮合物等の芳香族アミノスルホン酸系化合物等が挙げられる。塩としては、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩が好ましい。
ノニオン性界面活性剤の具体例としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ソルビタン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、アルキルアルカノールアミド等が挙げられる。
カチオン性界面活性剤の具体例としては、アルキルトリメチルアンモニウム塩、アルキルジメチルアンモニウム塩、アルキルベンジルジメチルアンモニウム塩、アルキルアミン塩等が挙げられる。
両性界面活性剤の具体例としては、アルキルベタイン、アルキルアミンオキシド等が挙げられる。
【0045】
界面活性剤を含む態様の研磨用組成物では、界面活性剤の含有量を、例えば0.0005重量%以上とすることが適当である。上記含有量は、研磨後の表面の平滑性等の観点から、好ましくは0.001重量%以上、より好ましくは0.01重量%以上である。また、研磨レート等の観点から、上記含有量は、1重量%以下とすることが適当であり、好ましくは0.5重量%以下、例えば0.1重量%以下である。
【0046】
(キレート剤)
キレート剤の例としては、アミノカルボン酸系キレート剤および有機ホスホン酸系キレート剤が挙げられる。アミノカルボン酸系キレート剤の例には、エチレンジアミン四酢酸、エチレンジアミン四酢酸ナトリウム、ニトリロ三酢酸、ニトリロ三酢酸ナトリウム、ニトリロ三酢酸アンモニウム、ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸、ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸ナトリウム、ジエチレントリアミン五酢酸、ジエチレントリアミン五酢酸ナトリウム、トリエチレンテトラミン六酢酸およびトリエチレンテトラミン六酢酸ナトリウムが含まれる。有機ホスホン酸系キレート剤の例には、2-アミノエチルホスホン酸、1-ヒドロキシエチリデン-1,1-ジホスホン酸、アミノトリ(メチレンホスホン酸)、エチレンジアミンテトラキス(メチレンホスホン酸)、ジエチレントリアミンペンタ(メチレンホスホン酸)、エタン-1,1-ジホスホン酸、エタン-1,1,2-トリホスホン酸、エタン-1-ヒドロキシ-1,1-ジホスホン酸、エタン-1-ヒドロキシ-1,1,2-トリホスホン酸、エタン-1,2-ジカルボキシ-1,2-ジホスホン酸、メタンヒドロキシホスホン酸、2-ホスホノブタン-1,2-ジカルボン酸、1-ホスホノブタン-2,3,4-トリカルボン酸およびα-メチルホスホノコハク酸が含まれる。これらのうち有機ホスホン酸系キレート剤がより好ましく、なかでも好ましいものとしてエチレンジアミンテトラキス(メチレンホスホン酸)およびジエチレントリアミンペンタ(メチレンホスホン酸)が挙げられる。特に好ましいキレート剤として、エチレンジアミンテトラキス(メチレンホスホン酸)が挙げられる。
【0047】
(防腐剤、防カビ剤)
防腐剤および防カビ剤の例としては、2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オン、5-クロロ-2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オン等のイソチアゾリン系防腐剤、パラオキシ安息香酸エステル類、フェノキシエタノール等が挙げられる。
【0048】
<研磨液>
ここに開示される研磨用組成物は、典型的には該研磨用組成物を含む研磨液の形態で研磨対象物(例えば磁気ディスク基板)に供給されて、該研磨対象物の研磨に用いられる。上記研磨液は、例えば、研磨用組成物を希釈(典型的には、水により希釈)して調製されたものであり得る。あるいは、研磨用組成物をそのまま研磨液として使用してもよい。すなわち、ここに開示される技術における研磨用組成物の概念には、研磨対象物に供給されて該研磨対象物の研磨に用いられる研磨液(ワーキングスラリー)と、希釈して研磨液として用いられる濃縮液との双方が包含される。このような濃縮液の形態の研磨用組成物は、製造、流通、保存等の際における利便性やコスト低減等の観点から有利である。濃縮倍率は、例えば1.5倍~50倍程度とすることができる。濃縮液の貯蔵安定性等の観点から、通常は2倍~20倍(典型的には2倍~10倍)程度の濃縮倍率が適当である。
【0049】
(pH)
ここに開示される研磨液のpHは特に制限されない。研磨液のpHは、例えば、12.0以下(典型的には0.5~12.0)とすることができ、10.0以下(典型的には0.5~10.0)としてもよい。研磨レートや面精度等の観点から、研磨液のpHは、7.0以下(例えば0.5~7.0)とすることができ、5.0以下(典型的には1.0~5.0)とすることがより好ましく、4.0以下(例えば1.0~4.0)とすることがさらに好ましい。研磨液のpHは、例えば3.0以下(典型的には1.0~3.0)とすることができる。研磨液において上記pHが実現されるように、必要に応じて有機酸、無機酸、塩基性化合物等のpH調整剤を含有させることができる。上記pHは、例えば、Ni-P基板等の磁気ディスク基板の研磨用の研磨液に好ましく適用され得る。
【0050】
<研磨プロセス>
ここに開示される研磨用組成物は、例えば以下の操作を含む態様で、研磨対象物(例えば磁気ディスク基板)の研磨に好適に使用することができる。以下、ここに開示される研磨用組成物を用いて研磨対象物(典型的には研磨対象基板)を研磨する方法の好適な一態様につき説明する。
すなわち、ここに開示されるいずれかの研磨用組成物を含む研磨液(ワーキングスラリー)を用意する。上記研磨液を用意することには、研磨用組成物に濃度調整(例えば希釈)やpH調整等の操作を加えて研磨液を調製することが含まれ得る。あるいは、研磨用組成物をそのまま研磨液として使用してもよい。
【0051】
次いで、その研磨液を研磨対象物に供給し、常法により研磨する。例えば、一般的な研磨装置に研磨対象物をセットし、該研磨装置の研磨パッドを通じて上記研磨対象物の表面(研磨対象面)に研磨液を供給する。典型的には、上記研磨液を連続的に供給しつつ、研磨対象物の表面に研磨パッドを押しつけて両者を相対的に移動(例えば回転移動)させる。かかる研磨工程を経て研磨対象物の研磨が完了する。上述の研磨プロセスの条件は特に限定されず、磁気ディスク基板の仕上げ研磨工程における通常の条件と同様の条件にすることができる。
【0052】
ここに開示される研磨用組成物は、研磨対象物の仕上げ研磨工程に用いられる。すなわち、この明細書によると、上述したいずれかの研磨用組成物を用いた仕上げ研磨工程を含む、磁気ディスク基板の製造方法が提供される。かかる方法によると、仕上げ研磨工程後の基板表面における加工痕を軽減できるため、製造後の基板表面の微小欠陥を精度よく検出しやすくなる。
【0053】
なお、ここに開示される磁気ディスク基板の製造方法は、仕上げ研磨工程よりも上流側に配置される他の研磨工程(予備研磨工程)を備えていてもよい。この予備研磨工程に用いられる研磨用組成物は、特に限定されず、磁気ディスク基板の研磨の分野において公知の研磨用組成物のなかから適宜選択することができる。したがって、この明細書により開示される事項には、任意の研磨用組成物を用いた予備研磨工程と、ここに開示される研磨用組成物を用いた仕上げ研磨工程とをこの順で含む、磁気ディスク基板の製造方法が含まれる。
【0054】
<研磨対象物>
ここに開示される技術の研磨対象物である磁気ディスク基板の例には、Ni-P基板(アルミニウム合金製等の基材ディスクの表面にニッケルリンめっき層を有する磁気ディスク基板をいう。)やガラス磁気ディスク基板が含まれる。このような磁気ディスク基板を研磨する用途では、ここに開示される技術を適用することが特に有意義である。なかでもNi-P基板はシリカ粒子による加工痕が形成されやすいため、ここに開示される技術を特に好ましく適用することができる。
【0055】
<研磨用組成物調製用キット>
なお、ここに開示される研磨用組成物は、一剤型であってもよいし、二剤型を始めとする多剤型であってもよい。このような研磨用組成物調製用キットは、例えば、該研磨用組成物の構成成分(典型的には、水以外の成分)のうち一部の成分を含むA液と、残りの成分を含むB液とが混合されて研磨対象物の研磨に用いられるように構成されていてもよい。好ましい一態様に係る研磨用組成物調製用キットは、砥粒を含むA液(典型的には、砥粒を水に分散させた砥粒分散液)と、砥粒以外の成分を含むB液(例えば、酸、水溶性高分子その他の添加剤を含むケミカル液)とから構成されている。通常、これらは、使用前は分けて保管されており、使用時(研磨対象基板の研磨時)に混合され得る。混合時には、例えば過酸化水素等の酸化剤等がさらに混合され得る。そして、上記砥粒分散液を備えた研磨用組成物調製用キットの場合、砥粒分散液が上記関係式(1)を満たしていると好ましい。かかるキットを用いて調製された研磨用組成物を用いて仕上げ研磨工程を行うことによって、研磨後の基板表面における加工痕を軽減できるため、微小欠陥を精度よく検出しやすくなる。なお、本態様に係る研磨用組成物調製用キットは、少なくとも関係式(1)を満たす砥粒分散液を備えていればよく、他の剤は特に限定されない。すなわち、本態様に係るキットは、3つ以上の剤から構成されていてもよく、砥粒分散液以外の剤の成分も特に限定されない。
【実施例
【0056】
以下、本発明に関するいくつかの実施例を説明するが、本発明をかかる実施例に示すものに限定することを意図したものではない。なお、以下の説明において「%」は、特に断りがない限り重量基準である。
【0057】
<研磨用組成物の調製>
(実施例1~3および比較例1~5)
砥粒と水とを含むA液(砥粒分散液)を用意した。次に、水溶性高分子としてのポリスチレンスルホン酸系重合体(Mw:500000)と、リン酸と、31%過酸化水素水と、脱イオン水とを混合して、砥粒を6重量%、ポリスチレンスルホン酸系共重合体を0.004重量%、リン酸を1.5重量%、31%過酸化水素水を0.4重量%の割合で含む研磨用組成物を調製した。各例に係る研磨用組成物のpHは、水酸化カリウム(KOH)にて2.5に調整した。
【0058】
なお、本実験では、粒子径が異なる複数種類のシリカ粒子を用意し、これらのシリカ粒子を単独でまたは組み合わせることによって砥粒のD95/Dmodeを各例で異ならせた。なお、D95/Dmodeは、砥粒分散液を測定サンプルとし、TEM画像を用いて求めた砥粒の粒度分布により得られたD95とDmodeに基づいて算出した。また、本実験では、上記D95とDmodeの他にD50とD90を測定し、これらの測定結果に基づいてD90/D50およびD95-D90を算出した。各々の結果を表1の「粒子径」の欄に示す。
【0059】
[ディスクの研磨]
各例に係る研磨用組成物をそのまま研磨液に使用し、下記の条件で研磨対象物の研磨を行った後に、リンス、洗浄、乾燥を行った。なお、研磨対象物としては、表面に無電解ニッケルリンめっき層を施したアルミニウム基板を使用した。ここでは、Schmitt Measurement System社製レーザースキャン式表面粗さ計「TMS-3000WRC」により測定される表面粗さ(算術平均粗さ(Ra))の値が6Åとなるように予備研磨したものを使用した。上記研磨対象物(以下「Ni-P基板」ともいう。)の直径は3.5インチ(外径約95mm、内径約25mmのドーナツ型)、厚さは1.27mmであった。
(研磨条件)
研磨装置:スピードファム社製の両面研磨機、型式「9B-5P」
研磨パッド:スウェードノンバフタイプ
研磨対象基板の投入枚数:10枚(2枚/キャリア×5キャリア)
研磨液の供給レート:130mL/分
【0060】
なお、上述の研磨では、研磨開始後に研磨荷重と下定盤の回転数とを徐々に増加させ、研磨荷重が120g/cm、下定盤回転数が20rpmの状態を保持して5分間研磨する本加工を行った後、10秒間かけて研磨荷重を45g/cm、下定盤回転数を0rpmまで徐々に減少させる停止処理を行った。
【0061】
[研磨レート]
次の計算式に基づいて各例の研磨における研磨レートを算出した。なお、以下の計算式における「基板片面の面積」は66cmとし、ニッケルリンめっき層の密度は7.9g/cmとした。また、本測定では、各例において、10枚の基板の研磨レートを算出し、算出結果の平均値を求めた。当該平均値を表1の「研磨レート(μm/min)」の欄に示す。
研磨レート[μm/min]=研磨による基板の重量減少量[g]/(基板片面の面積[cm]×ニッケルリンめっき層の密度[g/cm]×研磨時間[min])×10
【0062】
[スクラッチ測定]
研磨後の基板表面に生じたスクラッチ数を測定した。スクラッチ数は、以下の条件に従って測定した。なお、本測定では、6枚の基板の表裏(合計12面)のスクラッチ数を測定し、測定結果の平均値を求めた。当該平均値を表1の「スクラッチ(個/面)」の欄に示す。
(測定条件)
測定装置:ケーエルエー・テンコール株式会社製 Candela OSA6100
Spindle Speed:10000rpm
測定範囲:17000~47000μm
Step Size:4μm
Encoder multiplier:×32
検出チャンネル:P-Sc channel
【0063】
[表面粗さRa測定]
研磨後の基板の表面粗さRaを測定した。表面粗さRaは、以下の条件に従って測定した。なお、本測定では、2枚の基板に対し、基板の内周縁と外周縁との中央部分を90度違いで2箇所ずつ測定した。そして、この2枚×4箇所の表面粗さRaの平均値(中心線平均粗さRa)を求めた。当該平均値を表1の「平均粗さRa(Å)」の欄に示す。
(測定条件)
測定装置:Veeco社製AFM D3100 NanoScope V
Mode:Tapping mode
測定範囲:1μm角
Sample line:512×512
Scan rate:1.0Hz
Cantilever:NCHV
【0064】
[散乱光強度差ΔSI測定]
研磨後の基板の散乱光強度差ΔSIを測定した。研磨後の基板表面に加工痕が形成されていると、この散乱光強度差ΔSIが大きくなる。本測定では、まず、5枚の基板の表裏(合計10面)を下記の条件でスキャンして散乱光像を取得した。
(測定条件)
測定装置:ケーエルエー・テンコール株式会社製 Candela OSA6100
Spindle Speed:10000rpm
測定範囲:17000~47000μm
Step Size:4μm
Encoder multiplier:×16
検出チャンネル:P-Sc channel
【0065】
次に、Candela ToolのCross Sectionを用いて散乱光強度差ΔSIを算出した。具体的には、まず、上記P-Sc channelで得られた帯状の散乱光像(図1参照;灰色で示した領域は、散乱光強度が相対的に強いことを表している。)について、Cross Sectionを用いて、基板の中心から半径35000μmの位置において角度0~360°で線分を引き、図2に示すようなグラフを得た。そして、当該散乱光強度のグラフから、散乱光強度の最も高い座標(図2中の点A)、及び最も低い座標(図2中の点B)を求めた。そして、図3に示すように、上記帯状の散乱光像に対して再度Cross Sectionを用い、上記2つの座標のそれぞれについて、当該座標を中心とした横方向(角度方向)に伸びる長さ5000μmの線分を引いた。そして、上記散乱光強度の最も高い座標を中心とした長さ5000μmの線分における散乱光強度の平均値をSI1とし、上記散乱光強度の最も低い座標を中心とした長さ5000μmの線分における散乱光強度の平均値をSI2とし、以下の計算式に基づいて散乱光強度差ΔSIを算出した。結果を表1の「散乱光強度差ΔSI(%)」の欄に示す。
散乱光強度差ΔSI=SI1-SI2
SI1:散乱光強度が最も強い座標の散乱光強度の平均値
SI2:散乱光強度が最も低い座標の散乱光強度の平均値
【0066】
【表1】
【0067】
表1に示されるように、D95/Dmodeが1.3未満の実施例1~3および比較例4の研磨用組成物は、D95/Dmodeが1.3以上である比較例1~3に比べて、散乱光強度差ΔSIが低くなっていた。この結果から、D95/Dmodeが1.3未満の研磨用組成物を仕上げ研磨工程に用いると、加工痕の形成を軽減し、散乱光像に基づいた表面検査におけるノイズを抑制し得ることが確認された。また、D95/Dmodeが1.14以上の実施例1~3は、D95/Dmodeが1.14未満である比較例4よりも良好な研磨レートが得られた。この結果から、D95/Dmodeを1.14以上1.3未満とすることにより、加工痕の軽減と研磨レートの向上とを両立できることが確認された。
【0068】
また、D95-D90が2nm以下の実施例1~3および比較例4の研磨用組成物は、D95-D90が2nmを超える比較例1~3に比べて、散乱光強度差ΔSIが低くなっていた。この結果から、D95-D90を2nm以下とすることにより、散乱光像におけるノイズを抑制できることが確認された。
【0069】
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。
図1
図2
図3