(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-07
(45)【発行日】2023-03-15
(54)【発明の名称】マグネトロン
(51)【国際特許分類】
H01J 23/04 20060101AFI20230308BHJP
【FI】
H01J23/04
(21)【出願番号】P 2019093018
(22)【出願日】2019-05-16
【審査請求日】2022-03-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000191238
【氏名又は名称】日清紡マイクロデバイス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126561
【氏名又は名称】原嶋 成時郎
(72)【発明者】
【氏名】宮本 洋之
(72)【発明者】
【氏名】小畑 英幸
(72)【発明者】
【氏名】安井 靖尭
【審査官】大門 清
(56)【参考文献】
【文献】実開昭60-138246(JP,U)
【文献】実開昭58-005269(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01J 23/00 - 23/78
H01J 9/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒状のアノードと、前記アノードの内面に配設された複数のベーンと、前記ベーンの内側に配設された円筒状のカソードと、前記カソード内に装着され前記カソードを支持する管状のスリーブと、前記スリーブ内に配設されて前記カソードを加熱するヒータと、前記カソードの端部側に配設されたエンドハットと、を備えるマグネトロンであって、
前記エンドハットは、円筒状で内径が前記スリーブの外径よりも大きいハット筒部と、前記ハット筒部の一端部から外側に広がり前記カソードからの電子が軸方向にリークするのを防止するシールド部と、を備え、
前記シールド部が前記カソードに対向するように前記ハット筒部内に前記スリーブが挿入され、前記ハット筒部の内周面と前記スリーブの外周面との間に隙間が設けられた状態で、前記ハット筒部の他端部が前記ヒータの外側において前記スリーブに接続されて
おり、
前記隙間の軸方向の長さが、発振波長の1/2以下に設定されている、
ことを特徴とするマグネトロン。
【請求項2】
前記ハット筒部の他端部が周方向においてスポット状に前記スリーブに接続されている、
ことを特徴とする請求項1に記載のマグネトロン。
【請求項3】
前記ヒータの端部を前記スリーブに固定するヒータ支持体が筒状で、前記ヒータ支持体内に前記ヒータの端部が挿入されている、
ことを特徴とする請求項1
または2のいずれか1項に記載のマグネトロン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、マグネトロンに関し、特に、医療機器などに使用される高出力のマグネトロンに関する。
【背景技術】
【0002】
マグネトロンは、円筒状のアノードの内面に複数のベーンが配設され、ベーンの内側にアノードと同心のカソードが配設されている。また、カソードには、電子放出物質、例えば酸化バリウムなどが塗布され、ヒータで加熱することでカソードから電子(熱電子)が放出される。そして、ポールピース間の磁界とアノードとカソード間の高電圧印加による電界で、カソードから放出された電子を周回させ、ベーンが形成する共振器に高周波電界を誘起、発振させて、高周波電力を出力するものである。
【0003】
このようなマグネトロンでは、カソードから放出された電子が、その電荷によってカソードの軸方向にも力を受けるため、一部がベーンに到達しないで軸方向に漏れようとしてしまう。このため、電子が軸方向に漏れるのを防止する円盤状のエンドハットが、カソードの両端に設けられている(例えば、特許文献1等参照。)。このエンドハットはベーン先端に近いため、最も電界強度が高くなり、エンドハットの温度が上がると暗流(電子放出)の原因ともなり、マグネトロン動作に悪影響を与える。さらに、エンドハットは通常カソードと接しているため、その温度はカソード温度と同等にまで達する。そこで、カソードをできる限り低い温度(950~1050℃)で使用することで、エンドハット温度も低く保つことができ、マグネトロンの安定動作につながる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、マグネトロンを高出力化する場合、入力電力を大きくする必要がある。磁力一定の下では、陽極電流を増加させれば良いが、カソードの電子放出能力(単位面積当たりの電子放出量)には限界があるため、陽極電流のみを増加させることによる高出力化には限界がある。そこで、磁力を大きくすることで陽極電圧を上げ、さらにカソード面積を大きくすることで陽極電流を増加し、マグネトロンを高出力化することができる。
【0006】
一方、マグネトロンを高出力化すると、バックボンバードメント(カソードから放出された電子であって、加速位相にある電子が高周波電界からエネルギーを得てカソードに戻り、衝突する現象)のエネルギーも大きくなる。このバックボンバードメントのエネルギーが大きくなると、カソードは加熱され、その温度は1050℃を超えることもある。前述の通り、エンドハットもカソード温度と同等の温度まで上昇するため、エンドハットからの熱電子や2次電子の放出が増加し、暗流ばかりか、アーキングをも誘発し、マグネトロンの動作を不安定にする、という問題があった。
【0007】
そこで本発明は、エンドハットの昇温が抑制されて安定した動作が可能なマグネトロンを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために請求項1に記載の発明は、円筒状のアノードと、前記アノードの内面に配設された複数のベーンと、前記ベーンの内側に配設された円筒状のカソードと、前記カソード内に装着され前記カソードを支持する管状のスリーブと、前記スリーブ内に配設されて前記カソードを加熱するヒータと、前記カソードの端部側に配設されたエンドハットと、を備えるマグネトロンであって、前記エンドハットは、円筒状で内径が前記スリーブの外径よりも大きいハット筒部と、前記ハット筒部の一端部から外側に広がり前記カソードからの電子が軸方向にリークするのを防止するシールド部と、を備え、前記シールド部が前記カソードに対向するように前記ハット筒部内に前記スリーブが挿入され、前記ハット筒部の内周面と前記スリーブの外周面との間に隙間が設けられた状態で、前記ハット筒部の他端部が前記ヒータの外側において前記スリーブに接続されており、前記隙間の軸方向の長さが、発振波長の1/2以下に設定されている、ことを特徴とする。
【0009】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のマグネトロンにおいて、前記ハット筒部の他端部が周方向においてスポット状に前記スリーブに接続されている、ことを特徴とする。
【0011】
請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載のマグネトロンにおいて、前記ヒータの端部を前記スリーブに固定するヒータ支持体が筒状で、前記ヒータ支持体内に前記ヒータの端部が挿入されている、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
請求項1に記載の発明によれば、エンドハットのハット筒部の内周面とスリーブの外周面との間に隙間が設けられ、しかも、ハット筒部の他端部がヒータの外側(ヒータから離れた位置)においてスリーブに接続されている。このため、ヒータによる熱やバックボンバードメントによる熱がエンドハットに伝わりにくく、エンドハットの昇温が抑制される。この結果、エンドハットからの電子放出や放出電子によるアーキングを抑制でき、高出力のマイクロ波を安定して発振することが可能となる。つまり、高出力であってもマグネトロンの安定した動作を確保することが可能となる。また、エンドハットとスリーブとの隙間の軸方向の長さが、発振波長の1/2以下に設定されているため、不要な共振モードの発生を抑制することができ、マグネトロンの安定した動作をより確保することが可能となる。
【0013】
請求項2に記載の発明によれば、ハット筒部の他端部が周方向において全周ではなくスポット状(部分的)にスリーブに接続されているため、ヒータで加熱されたスリーブの熱がハット筒部に伝わりにくい。この結果、エンドハットの昇温をより抑制することができ、マグネトロンの安定した動作をより確保することが可能となる。
【0015】
請求項3に記載の発明によれば、ヒータの端部が筒状のヒータ支持体内に挿入され、ヒータ支持体とスリーブで二重に覆われており、また熱伝導の経路が長くなるため、ヒータの端部からの熱がエンドハットにより伝わりにくい。この結果、エンドハットの昇温をより抑制することができ、マグネトロンの安定した動作をより確保することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】この発明の実施の形態1に係るマグネトロンの概略構成を示す断面図である。
【
図2】
図1のマグネトロンのエンドハットを示す平面図(a)と、そのA-A断面図(b)である。
【
図3】
図2のエンドハットの配設状態を示す断面図である。
【
図4】
図2のエンドハットの配設位置を示す断面図である。
【
図5】従来のマグネトロンの概略構成を示す断面図である。
【
図6】
図1のマグネトロンのエンドハットと
図5のマグネトロンのエンドハットの温度比較を示す図である。
【
図7】この発明の実施の形態2に係るマグネトロンのヒータ支持体周辺を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、この発明を図示の実施の形態に基づいて説明する。
【0018】
(実施の形態1)
図1は、この実施の形態に係るマグネトロン1の概略構成を示す断面図である。このマグネトロン1は、主として、エンドハット8が従来のマグネトロンと構成が異なり、同等の構成についての説明を省略するが、概略次のような構成となっている。
【0019】
すなわち、円筒状のアノード2の内面に複数のベーン3が配設され、アノード2の上下の両端にポールピース4が配設され、さらに、ベーン3の内側に円筒状のカソード5がアノード2と同心に配設されている。カソード5には、この実施の形態では、電子放出物質である酸化バリウムなどが塗布され、加熱されることでカソード5から電子が放出される。このカソード5内に、カソード5よりも長尺で管状のスリーブ6が装着されることで、カソード5が支持され、このスリーブ6内にカソード5を加熱するヒータ7が配設されている。そして、ポールピース4でカソード5軸方向に磁力を与えつつ、アノード2とカソード5に高電圧を印加することで、カソード5から放出された電子を周回させ、ベーン3が形成する共振器に高周波電界を誘起、発振させて、高周波電力を出力するものである。
【0020】
エンドハット8は、カソード5の両端部側に配設され、カソード5から放出された電子が軸方向にリークするのを防止するものである。このエンドハット8は、
図2に示すように、円筒状のハット筒部81と、ハット筒部81の一端部から外側に広がるシールド部82と、を備え、ハット筒部81とシールド部82は一体的に形成されている。
【0021】
ハット筒部81の内径は、スリーブ6の外径よりも大きく設定され、スリーブ6が挿入された状態で、ハット筒部81の内周面とスリーブ6の外周面との間に隙間Gが形成されるようになっている。また、ハット筒部81の軸方向の長さは、ヒータ7やバックボンバードメントによる熱でエンドハット8が高温まで昇温しない長さであり、かつ、ハット筒部81とスリーブ6との隙間Gの軸方向の長さが、マグネトロン1の発振波長の1/2以下になるように設定されている。
【0022】
シールド部82は、ハット筒部81の一端部から外側に広がるリング状で、その外径は、カソード5からの電子が軸方向にリークするのを効果的に防止でき、かつ、ベーン3などに接近しすぎないように設定されている。また、ハット筒部81の他端部の開口周縁には、軸心側に突出する複数の接続部83が、周縁に沿ってスポット的(点在的)に形成されている。
【0023】
この接続部83の突出量と形成位置は、スリーブ6が挿入された状態で、ハット筒部81の内周面とスリーブ6の外周面との間に後述する寸法d1の隙間Gが形成され、かつ、ハット筒部81とスリーブ6とが同心になるように設定されている。また、接続部83の軸方向の長さd2と形成数は、スリーブ6に強固に支持され、かつ、スリーブ6からの熱ができるだけ伝わらないように設定されている。例えば、ハット筒部81の厚さd3よりも小さく設定されている。
【0024】
次に、このようなエンドハット8の配設状態および配設位置について説明する。まず、カソード5やヒータ7の配設関係などについて説明すると、
図1に示すように、スリーブ6の中央部にカソード5が配置され、カソード5よりも長いヒータ7がカソード5の全長に対向してスリーブ6内に配設されている。ヒータ7の一端側(図中上側)にはヒータ支持体71が接続され、このヒータ支持体71がスリーブ6の内面に固定されており、ヒータ支持体71は、スリーブ6の一端縁よりも内側に位置している。また、ヒータ7の他端側(図中下側)には、図示しないヒータ端子が設けられたヒータリード72が接続されている。
【0025】
そして、
図3、
図4に示すように、エンドハット8のシールド部82がカソード5に対向するようにハット筒部81内にスリーブ6が挿入され、ハット筒部81の内周面とスリーブ6の外周面との間に、全周にわたって均一に隙間Gが設けられた状態で、ハット筒部81の他端部がヒータ7の外側においてスリーブ6に接続されている。
【0026】
具体的には、出力側(上側)のエンドハット8の場合、ハット筒部81内にスリーブ6が挿入され、スリーブ6の上端に接続部83がロウ付けなどで接続されることで、ハット筒部81の内周面とスリーブ6の外周面との間に隙間Gが設けられ、かつ、ハット筒部81の他端部つまり接続部83がヒータ7(ヒータ支持体71)から離れた位置でスリーブ6に接続されている。つまり、カソード5の上端P1から接続部83の位置P2までの距離L1が、カソード5の上端P1からヒータ7の上端(ヒータ支持体71)P3までの距離L2よりも長くなっている。
【0027】
同様に、入力側(下側)のエンドハット8の場合、ハット筒部81内にスリーブ6が挿入され、スリーブ6の下側に接続部83がロウ付けなどで接続されること、ハット筒部81の内周面とスリーブ6の外周面との間に隙間Gが設けられ、かつ、接続部83がヒータ7(ヒータ7とヒータリード72の接続点)から離れた位置でスリーブ6に接続されている。つまり、カソード5の下端P4から接続部83の位置P5までの距離L3が、カソード5の下端P4からヒータ7の下端P6までの距離L4よりも長くなっている。
【0028】
このように、接続部83のみがスリーブ6に接続されることで、ハット筒部81の他端部が周方向においてスポット状にスリーブ6に接続されている。ここで、距離L1と距離L3は同距離で、距離L2と距離L4は同距離に設定されている。また、隙間Gの寸法d1は、ヒータ7で加熱されたスリーブ6の熱がエンドハット8に伝わりにくく、かつ、不要な共振モードの発生が抑制される寸法、例えば、マグネトロン1の発振波長の1/100以下に設定されている。なお、
図3などにおいては、見やすくするために隙間Gを大きく図示している。
【0029】
このような構成のマグネトロン1によれば、エンドハット8のハット筒部81の内周面とスリーブ6の外周面との間に隙間Gが設けられ、しかも、ハット筒部81の他端部がヒータ7の外側(ヒータ7から離れた位置)においてスリーブ6に接続されている。このため、ヒータ7による熱やバックボンバードメントによる熱がエンドハット8に伝わりにくく、エンドハット8の昇温が抑制される。すなわち、ハット筒部81は、カソード5やヒータ7から離れているため加熱されにくく比較的低温となり、シールド部82が加熱されたとしても、その熱が低温のハット筒部81に伝わるため、シールド部82およびエンドハット8全体がカソード5の温度と同等の高温にまで上昇するのを抑制することができる。この結果、エンドハット8からの電子放出や放出電子を起因とするアーキングを抑制でき、高出力のマイクロ波を安定して発振することが可能となる。つまり、高出力であってもマグネトロン1の安定した動作を確保することが可能となる。
【0030】
また、ハット筒部81の他端部つまり接続部83が周方向において全周ではなくスポット状(部分的)にスリーブ6に接続されているため、ヒータ7で加熱されたスリーブ6の熱がハット筒部81に伝わりにくい。この結果、エンドハット8の昇温をより抑制することができ、マグネトロン1の安定した動作をより確保することが可能となる。
【0031】
さらに、ハット筒部81とスリーブ6との隙間Gの寸法d1が発振波長の1/100以下に設定され、しかも、隙間Gの軸方向の長さが、発振波長の1/2以下に設定されているため、不要な共振モードの発生を抑制することができる。すなわち、隙間Gが大きいと、マグネトロン1の動作周波数周辺の周波数帯域で共振が発生し、動作が不安定となるおそれがあるが、隙間Gが小さいため、このような共振が発生せず、マグネトロン1の安定した動作をより確保することが可能となる。
【0032】
ここで、本マグネトロン1のエンドハット8と、
図5に示す従来のマグネトロンのエンドハット108の温度上昇例について説明する。従来の出力側のエンドハット108は、円板状でスリーブ106の上部開口に配設されてカソード5に対向し、かつ、ヒータ107の上端部が接続されている。また、入力側のエンドハット108は、リング状でヒータ107の下端部近傍のスリーブ106に配設されてカソード5に対向している。
【0033】
カソード5、105が1050℃で動作するマグネトロンの場合、エンドハット8、108の温度は
図6に示すようになった。すなわち、ヒータ7、107による予熱時には、従来の入力側のエンドハット108の温度が1028℃であるのに対して、本マグネトロン1の入力側のエンドハット8の温度が955℃であり、73℃の温度低減効果が得られ、従来の出力側のエンドハット108の温度が1035℃であるのに対して、本マグネトロン1の出力側のエンドハット8の温度が990℃であり、45℃の温度低減効果が得られた。
【0034】
同様に、カソード5、105が動作してバックボンバードメント作用時には、従来の入力側のエンドハット108の温度が1037℃であるのに対して、本マグネトロン1の入力側のエンドハット8の温度が891℃であり、146℃の温度低減効果が得られ、従来の出力側のエンドハット108の温度が1044℃であるのに対して、本マグネトロン1の出力側のエンドハット8の温度が935℃であり、109℃の温度低減効果が得られた。
【0035】
このように、予熱時には45~73℃の温度低減効果が得られ、動作時には109~146℃の温度低減効果が得られた。この低減温度は、カソード5の表面温度1050℃と比べると、予熱時で60~95℃、動作時で115~159℃という大きな温度差であり、エンドハット8からの電子放出の低減効果が大きいことが認められる。
【0036】
(実施の形態2)
図7は、この実施の形態に係るマグネトロンのヒータ支持体73周辺を示す断面図である。この実施の形態では、ヒータ支持体73が実施の形態1のヒータ支持体71と構成が異なり、実施の形態1と同等の構成については、同一符号を付することでその説明を省略する。
【0037】
ヒータ支持体73は、円筒状の円筒部731と、この円筒部731の一方の開口を塞ぐ蓋部732と、円筒部731の他方の端部から外側に広がるツバ部733と、を有する。このようなヒータ支持体73の円筒部731内にヒータ7の上端部が挿入、接続され、ツバ部733がスリーブ6の内面に固定されることで、ヒータ7の上端部がスリーブ6に固定されている。このような固定状態で、ヒータ7の上端部が、円筒部731とスリーブ6で二重に覆われてエンドハット8のハット筒部81に対向している。
【0038】
このような実施の形態によれば、ヒータ7の上端部が筒状のヒータ支持体73内に挿入され、円筒部731とスリーブ6で二重に覆われており、また熱伝導の経路が長くなるため、ヒータ7の上端部からの熱がエンドハット8により伝わりにくい。この結果、エンドハット8の昇温をより抑制することができ、マグネトロンの安定した動作をより確保することが可能となる。
【0039】
以上、この発明の実施の形態について説明したが、具体的な構成は、上記の実施の形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても、この発明に含まれる。例えば、上記の実施の形態では、エンドハット8には複数の接合部83がハット筒部81の開口周縁に沿ってスポット的に形成されているが、接続部83をリング状に形成し、このリング状の接続部とスリーブ6を隙間(隙間Gとは異なる)を介して配置し、リング状の接続部とスリーブ6とを溶接などによって、スポット的に接続してもよい。また、エンドハット8の接続部83によってハット筒部81とスリーブ6との間に隙間Gが設けられているが、溶接などによってハット筒部81とスリーブ6を直接接続したり、別部材を介して接続したりして、隙間Gを設けるようにしてもよい。また、カソード5に電子放出物質が塗布されている場合について説明したが、その他の構造であってもよく、例えば、ポーラス構造の金属でカソード5を構成し、このカソード5に電子放出物質を含浸させた構造でもよい。
【符号の説明】
【0040】
1 マグネトロン
2 アノード
3 ベーン
4 ポールピース
5 カソード
6 スリーブ
7 ヒータ
71、73 ヒータ支持体
8 エンドハット
81 ハット筒部
82 シールド部
83 接続部
G 隙間