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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-07
(45)【発行日】2023-03-15
(54)【発明の名称】硬化性組成物のためのチキソトロピー剤
(51)【国際特許分類】
   C09K 3/00 20060101AFI20230308BHJP
   C08G 65/329 20060101ALI20230308BHJP
   C08L 71/02 20060101ALI20230308BHJP
   C08K 5/21 20060101ALI20230308BHJP
   C08G 18/48 20060101ALI20230308BHJP
   C08G 18/80 20060101ALI20230308BHJP
   C09D 7/43 20180101ALI20230308BHJP
   C09J 11/08 20060101ALI20230308BHJP
【FI】
C09K3/00 103N
C08G65/329
C08L71/02
C08K5/21
C08G18/48
C08G18/80
C09D7/43
C09J11/08
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2021520917
(86)(22)【出願日】2019-11-11
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-03-28
(86)【国際出願番号】 EP2019080856
(87)【国際公開番号】W WO2020099314
(87)【国際公開日】2020-05-22
【審査請求日】2021-11-30
(31)【優先権主張番号】18206318.0
(32)【優先日】2018-11-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】506416400
【氏名又は名称】シーカ テクノロジー アクチェンゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100123593
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 宣夫
(74)【代理人】
【識別番号】100208225
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 修二郎
(74)【代理人】
【識別番号】100217179
【弁理士】
【氏名又は名称】村上 智史
(74)【代理人】
【識別番号】100116975
【弁理士】
【氏名又は名称】礒山 朝美
(72)【発明者】
【氏名】アンドレアス クラマー
(72)【発明者】
【氏名】ウルシュ ブルクハルト
(72)【発明者】
【氏名】ミヒャエル シュルンプ
(72)【発明者】
【氏名】マルティン コンスタンツァー
【審査官】長部 喜幸
(56)【参考文献】
【文献】特開平05-295073(JP,A)
【文献】特開昭59-109553(JP,A)
【文献】特開2001-172513(JP,A)
【文献】特開2002-012850(JP,A)
【文献】特表2008-544074(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09K 3/00
C08G 65/329
C08L 71/02
C08K 5/21
C08G 18/48
C08G 18/80
C09D 7/43
C09J 11/08
B05D 7/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)少なくとも一種のイソシアネートと少なくとも一種のアミンとの反応からの少なくとも一種の尿素化合物、及び
(ii)ブロックされたヒドロキシル基を有しウレタン基を含まない少なくとも一種のポリエーテル
を含む、硬化性組成物の降伏点を増加させるためのチキソトロピー剤であって、
前記ブロックされたヒドロキシル基が、アセタール、エステル、アセトエステル、及びカーボネート基からなる群から選択されることを特徴とする、
チキソトロピー剤
【請求項2】
前記尿素化合物が、下記の式(I)を有することを特徴とする、請求項1に記載のチキソトロピー剤:
【化1】
(式中、Eは1~12個の炭素原子を有するアルキル又はシクロアルキル基であり、
Qは6~15個の炭素原子を有する二価のヒドロカルビル基である)。
【請求項3】
前記チキソトロピー剤が、室温で固い塗り広げ可能なペーストの形態をとることを特徴とする、請求項1又は2に記載のチキソトロピー剤。
【請求項4】
前記尿素化合物が5重量%~25重量%、及びブロックされたヒドロキシル基を有する前記ポリエーテルが50重量%~95重量%存在することを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載のチキソトロピー剤。
【請求項5】
ブロックされたヒドロキシル基を有する前記ポリエーテルが、20℃で30~500mPa・sの範囲の粘度を有し、前記粘度は、せん断速度10s-1で、コーン径25mm、コーン角1°、コーンチップ-プレート間距離0.05mmのコーン-プレート粘度計を用いて決定されることを特徴とする、請求項1~4のいずれか一項に記載のチキソトロピー剤。
【請求項6】
前記ポリエーテルが1分子あたり平均1~3個のブロックされたヒドロキシル基を有することを特徴とする、請求項1~5のいずれか一項に記載のチキソトロピー剤。
【請求項7】
前記ポリエーテル中の繰り返し単位の70重量%~100重量%が1,2-プロピレンオキシ基からなり、前記ポリエーテル中の繰り返し単位の0重量%~30重量%が1,2-エチレンオキシ基からなることを特徴とする、請求項1~のいずれか一項に記載のチキソトロピー剤。
【請求項8】
ブロックされたヒドロキシル基を有する前記ポリエーテルが、移動相としてのテトラヒドロフラン、屈折率検出器、及び200g/molからの評価を用いた、標準としてのポリスチレンに対するゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によって決定される、600~2,500g/molの範囲の平均分子量Mを有することを特徴とする、請求項1~のいずれか一項に記載のチキソトロピー剤。
【請求項9】
ブロックされたヒドロキシル基を有する前記ポリエーテルが、以下のものからなる群から選択される少なくとも一種のヒドロキシ官能性ポリエーテル由来であることを特徴とする、請求項1~のいずれか一項に記載のチキソトロピー剤:
- アルコールを出発物質とする、25~90mg KOH/gの範囲のOH価を有するポリオキシプロピレンモノオール、
- 45~155mg KOH/gの範囲のOH価を有するポリオキシプロピレンジオール、及び
- トリメチロールプロパンを出発物質とする、任意選択的にエチレンオキシド末端の、2.2~3の範囲の平均OH官能基数と90~230mg KOH/gの範囲のOH価とを有するポリオキシプロピレントリオール。
【請求項10】
前記イソシアネートと前記アミンとの間の前記反応が、ブロックされたヒドロキシル基を有する前記ポリエーテル中で行われることを特徴とする、請求項1~のいずれか一項に記載のチキソトロピー剤の調製方法
【請求項11】
硬化性組成物の前記降伏点を増加させるための、前記組成物中での請求項1~のいずれか一項に記載のチキソトロピー剤の使用。
【請求項12】
請求項1~のいずれか一項に記載のチキソトロピー剤と、イソシアネート及び/又はシラン基を含む少なくとも一種のポリマーとを含有する硬化性組成物。
【請求項13】
一成分型湿気硬化性組成物であることを特徴とする、請求項12に記載の硬化性組成物。
【請求項14】
請求項12又は13に記載の硬化性組成物を用いて接着、封止、又はコーティングされた物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、チキソトロピー剤及びこれを用いて増粘された硬化性組成物、特に弾性接着剤、シーラント、又はコーティングに関する。
【背景技術】
【0002】
ポリウレタンポリマー又はシラン変性ポリマー(SMP)に基づく硬化性組成物では、降伏点を高め、その結果その耐垂れ性を高め、そしてその結果製品の処理性を改善するために、いわゆるチキソトロピー剤がしばしば使用される。特にペースト状の接着剤やシーラントでは、重要な要素は、大きすぎない絞り出しに要する力及び塗布工具を置いた際の短い糸引きと組み合わされた大きい耐垂れ性である。特に効果的で安価なチキソトロピー剤は、尿素化合物の微細分散液、特にはジイソシアネートと低分子量一級アミンとの反応生成物であり、これは液体担体材料中で生成され、均質で塗り広げ可能なペーストである。この中の尿素化合物の含有量は、典型的にはわずか約20パーセントであり、その結果、良好なチキソトロピー効果のためには比較的大量のペーストが必要とされ、それに応じて大量の担体材料が増粘すべき製品に入れられる。これは、特に多孔質基材の場合の特ににじみや汚れなどの移行の影響に関する問題、或いは基材又はその上に塗布されたワニス若しくは塗料層の軟化、ひび割れ、変色、又は接着性の喪失に関する問題を引き起こす可能性がある。溶剤や発泡剤と接触すると、膨潤し、続いて担体材料が洗い流され、ポリマーマトリックスの亀裂及び脆化が生じる可能性がある。更に、担体材料は加熱中に蒸発し、その結果ガス放出損失(曇り)が生じる可能性がある。
【0003】
そのようなチキソトロピーペーストに適した担体材料は、特には硬さと弾性を調整するために接着剤及びシーラントの中で使用される通常の可塑剤である。特に適切な可塑剤は、比較的高分子量のフタル酸エステル、特にフタル酸ジイソデシル(DIDP)又はフタル酸ジイソノニル(DINP)である。これらは、良好な増粘性を有する非常に微粉化されたペーストを可能にし、低レベルの移行作用しか起こさない。しかしながら、アルカリと接触すると、例えば生のコンクリートへ塗布されると、又はベース配合成分の結果として、これらは加水分解される可能性があり、使用される脂肪族アルコールから発生する臭気の放出をしばしば伴う脆化又は解重合を生じる可能性がある。これらは、室温と比較した低温条件下で、接着剤及びシーラントの剛性又は弾性率の不均衡な増加も引き起こす。そして最後に、フタル酸エステルに対する懐疑的な見方が広まっていることから、フタル酸エステルを含まない製品が更に望まれている。フタル酸エステル系可塑剤の代替品は、特にシクロヘキサンジカルボン酸エステル、例えばジイソノニルシクロヘキサン-1,2-ジカルボキシレート(DINCH)、又はアジペート、例えばアジピン酸ジオクチル又はアジピン酸ビス(2-エチルヘキシル)(DOA)である。しかしながら、これらは明らかに高い移行作用の傾向を示し、加水分解されると、同様に強い臭気の脂肪族アルコールを放出する。そのため、これらは担体材料としてはあまり適していない。
【0004】
欧州特許第1152019号明細書には、担体材料として可塑剤ではなくポリオールを使用する尿素化合物に基づくチキソトロピー剤が記載されている。得られるペーストは、粘度が高く、取り扱いが難しく、特にポンプ移送が困難であり、耐垂れ性へのその効果は従来の可塑剤に基づくペーストよりもはるかに小さい。ポリオールはイソシアネート基を含む組成物と反応するため、これらは移行作用を有していないものの、粘度が大幅に上昇し、これは、良好な処理性に関して、及びこれを用いて増粘された製品のための塗布工具を置いた際の糸引きに関して不利である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、本発明の目的は、降伏点を高めるために、ポリウレタン又はSMP(シラン変性ポリマー)に基づく硬化性組成物のための、尿素化合物に基づいたチキソトロピー剤を提供することであり、このチキソトロピー剤は、フタル酸エステルを含まず、粘度の増加及び移行若しくは曇りの傾向に関する先行技術の欠点を克服する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この目的は、請求項1に記載のチキソトロピー剤によって達成される。チキソトロピー剤は、単純なプロセスで入手しやすいベース材料から調製可能であり、イソシアネート基及びシラン基に対して非反応性であり、優れた品質を有する。尿素化合物に基づく従来のチキソトロピー剤と比較して、本発明のチキソトロピー剤は、それを用いて増粘された組成物の降伏点を同程度又はそれ以上に増加させ、移行作用の有意な傾向を生じず、揮発性物質、又は担体材料の鹸化若しくは加水分解による強い臭気の開裂生成物を放出しない。驚くべきことに、本発明のチキソトロピー剤は、同じ濃度、配合、及び耐垂れ性とした場合に、更に容易に絞り出し可能であり(数ミリメートルのノズルを通るより小さい絞り出しに要する力)、これはこれを用いて増粘された組成物が特に良好な処理性を有することを意味する。加えて、硬化した組成物は、低温条件下で特に良好な柔軟性を示す。
【0007】
本発明のチキソトロピー剤は、低使用量の場合であっても、高いチキソトロピー作用、すなわち降伏点又は耐垂れ性の増加を示し、にじみや汚れなどの可塑剤の移行によって引き起こされる影響の発生を増加させず、また曇りも増加させない。これは、フタル酸エステルを含まないことが好ましいポリウレタン又はSMPに基づく接着剤、シーラント、又はコーティングにおける使用に特に適している。
【0008】
本発明の追加の態様は別の独立請求項の主題である。本発明の特に好ましい実施形態は従属請求項の主題である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明は、硬化性組成物の降伏点を増加させるためのチキソトロピー剤を提供し、このチキソトロピー剤は、
(i)少なくとも一種のイソシアネートと少なくとも一種のアミンとの反応からの少なくとも一種の尿素化合物、及び
(ii)ブロックされたヒドロキシル基を有しウレタン基を含まない少なくとも一種のポリエーテル
を含む。
【0010】
「ブロックされたヒドロキシル基」は、化学反応によって、イソシアネート基に対して非反応性の基に変換されたヒドロキシル基を指す。
【0011】
「ポリエーテル」は、主にアルキレンオキシ繰り返し単位からなるオリゴマー状及び/又はポリマー状の分子又は基を指す。
【0012】
「一級アミノ基」は、単一の有機基に結合しており且つ2つの水素原子を有するアミノ基を指し;「二級アミノ基」は、一緒に環の一部を形成していてもよい2つの有機基に結合しており且つ1つの水素原子を有するアミノ基を指し;「三級アミノ基」は、そのうちの2つ又は3つが1つ以上の環の一部であってもよい3つの有機基に結合しており且つ水素原子を持たないアミノ基を指す。
【0013】
「一級モノアミン」は、1つの一級アミノ基を有しており且つそれ以上のアミノ基を有さない化合物を指す。
【0014】
「硬化性組成物」は、重合可能な高分子を含有する組成物を指し、これは、その反応性基の架橋反応を通じて、硬化するか、又は機械的強度が上昇した状態を獲得することができる。
【0015】
「シラン基」は、有機基に結合しており、且つケイ素原子上に1~3個、特に2個又は3個の加水分解性アルコキシ基を有するシリル基を指す。
【0016】
「シラン」は、各シラン基上に1~3個の有機置換基を有するオルガノアルコキシシランとテトラアルコキシシランの両方を指す。有機基上のシラン基に加えて1つ以上のヒドロキシル、イソシアナト、アミノ、又はメルカプト基を有するシランは、それぞれ「ヒドロキシシラン」、「イソシアナトシラン」、「アミノシラン」、及び「メルカプトシラン」と呼ばれる。
【0017】
「可塑剤」は、ポリマーの粘度を低下させ、ポリマー内に化学的に組み込まれず、これに対して可塑化効果を発揮する不揮発性物質を指す。
【0018】
ポリアミン、ポリオール、又はポリイソシアネートなどの「ポリ」で始まる物質名は、形式的な意味で、1つの分子当たりにその名前に含まれる2つ以上の官能基を含む物質を指す。
【0019】
「分子量」は、分子又は分子残基のモル質量(g/mol)を指す。「平均分子量」は、オリゴマー状若しくはポリマー状分子又は分子残基の多分散混合物の数平均分子量Mを指す。これは、典型的には標準としてのポリスチレンに対するゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によって決定される。
【0020】
「貯蔵に安定」又は「貯蔵可能」とみなされる硬化性組成物は、適切な容器内で、室温で長期間、典型的には少なくとも3ヶ月から6ヶ月以上にわたって、この貯蔵によってその使用に関連する範囲でその用途又は使用特性が変更されることなく貯蔵可能なものである。
【0021】
「室温」は、23℃の温度を指す。
【0022】
チキソトロピー剤は、好ましくは、少なくとも1種のジイソシアネートと少なくとも1種の一級モノアミンとの反応からの尿素化合物を含む。アミノ基は、好ましくは、本明細書ではイソシアネート基に対する化学量論量で使用される。
【0023】
好ましいジイソシアネートは、ヘキサメチレン1,6-ジイソシアネート、1-イソシアナト-3,3,5-トリメチル-5-イソシアナトメチルシクロヘキサン、ペルヒドロ(ジフェニルメタン4,4’-ジイソシアネート)、フェニレン1,3-ジイソシアネート、フェニレン1,4-ジイソシアネート、トリレン2,4-ジイソシアネート若しくはこれとトリレン2,6-ジイソシアネート(TDI)との混合物、又はジフェニルメタン2,4’-及び/若しくは2,2’-ジイソシアネートのフラクションあり若しくはなしのジフェニルメタン4,4’-ジイソシアネート(MDI)である。
【0024】
トリレン2,4-ジイソシアネート又はジフェニルメタン4,4’-ジイソシアネートが特に優先される。
【0025】
最も好ましいのはジフェニルメタン4,4’-ジイソシアネートである。
【0026】
これは、特に効果的なチキソトロピー剤を与える。
【0027】
好ましい一級モノアミンは、アルキルアミン、特には1~12個の炭素原子を有するアルキルアミンである。4~6個の炭素原子を有するアルキルアミン、特にブチルアミン、ヘキシルアミン、又はシクロヘキシルアミンが特に優先される。最も好ましいのはn-ブチルアミンである。これは、特に効果的なチキソトロピー剤を与える。
【0028】
特に好ましい尿素化合物は、ジフェニルメタン4,4’-ジイソシアネートとn-ブチルアミンとの反応生成物である。
【0029】
尿素化合物は、好ましくは式(I)を有する
【化1】
(式中、
Eは1~12個の炭素原子を有するアルキル又はシクロアルキル基であり、
Qは6~15個の炭素原子を有する二価のヒドロカルビル基である)。
【0030】
Eは、好ましくは、4~6個の炭素原子を有するアルキル又はシクロアルキル基、特にはブチル又はヘキシル又はシクロヘキシルである。
【0031】
最も好ましくは、Eはブチル、特にはn-ブチルである。
【0032】
Qは、好ましくは、1,6-ヘキシレン、(1,5,5-トリメチルシクロヘキサン-1-イル)メタン-1,3、メチレンビス(シクロヘキサン-4-イル)、1,3-フェニレン、1,4-フェニレン、4(2)-メチル-1,3-フェニレン、又はメチレンビス(フェン-4-イル)である。
【0033】
より好ましくは、Qは、4-メチル-1,3-フェニレン又はメチレンビス(フェン-4-イル)である。
【0034】
最も好ましくは、Qはメチレンビス(フェン-4-イル)である。
【0035】
チキソトロピー剤は、好ましくは、ブロックされたヒドロキシル基を有するポリエーテル中でイソシアネートとアミンとの間の反応を行うことによって調製される。
【0036】
反応は、好ましくは0~100℃、特に10~80℃の範囲の温度で行われる。
【0037】
チキソトロピー剤の調製において、高いチキソトロピー作用を持つ最大の均質性のペースト生じさせるためには、得られる尿素化合物が非常に微粉化された形態で析出するように使用される反応物及び反応混合物が撹拌及び/又は搬送される方法を使用することが有利である。
【0038】
ブロックされたヒドロキシル基を有するポリエーテルは、最初にイソシアネートと共に入れることができ、アミンはよく撹拌しながら徐々に添加することができる。
【0039】
更に、ブロックされたヒドロキシル基を有するポリエーテルは、最初にアミンと共に入れることができ、イソシアネートはよく撹拌しながら徐々に添加することができる。
【0040】
更に、アミン及び/又はイソシアネートは、ブロックされたヒドロキシル基を有する少量のポリエーテルで使用前に希釈することができる。
【0041】
尿素化合物は、好ましくは連続プロセスで調製され、アミン及び/又はイソシアネートは、ブロックされたヒドロキシル基を有するポリエーテルで希釈された形態で任意選択的に使用される。
【0042】
調製は、好ましくは水分を排除して行われる。
【0043】
好ましくは、調製物中にその他の添加剤は存在せず、特に添加された溶媒と添加された触媒は存在しない。
【0044】
チキソトロピー剤は、好ましくは室温で固い塗り広げ可能なペーストの形態である。
【0045】
チキソトロピー剤は、好ましくは、尿素化合物を5重量%~25重量%、ブロックされたヒドロキシル基を有するポリエーテルを50重量%~95重量%含む。
【0046】
チキソトロピー剤は、より好ましくは、尿素化合物を10重量%~25重量%、ブロックされたヒドロキシル基を有するポリエーテルを75重量%~90重量%含む。
【0047】
ブロックされたヒドロキシル基を有するポリエーテルは、本質的にブロックされていないヒドロキシル基を含まない。本明細書において、「本質的に含まない」とは、存在するヒドロキシル基のうちの95%、好ましくは99%、特には99.9%、最も好ましくは100%がブロックされていることを意味する。
【0048】
ブロックされたヒドロキシル基を有するポリエーテルは、好ましくは、水分又は組成物中に存在する成分との架橋反応に関与する反応性基を含まない。したがって、これは特にイソシアネート基及びシラン基を含まない。
【0049】
ブロックされたヒドロキシル基を有するポリエーテルは、特に室温で液体である。
【0050】
ブロックされたヒドロキシル基を有するポリエーテルは、好ましくは、20℃で30~500mPa・s、特には50~250mPa・sの範囲の粘度を有する。本明細書では、粘度は、せん断速度10s-1で、コーン径25mm、コーン角1°、コーンチップ-プレート間距離0.05mmのコーン-プレート粘度計を用いて決定される。これにより、取り扱いが容易でありチキソトロピー作用の高いペーストが得られる。
【0051】
ポリエーテルは、好ましくは1分子あたり平均1~3個、特には1又は2個のブロックされたヒドロキシル基を有する。
【0052】
ブロックされたヒドロキシル基は、好ましくは、アセタール、エステル、アセトエステル、及びカーボネート基からなる群から選択される。
【0053】
これらのアセタール、エステル、アセトエステル、又はカーボネート基は、好ましくは1~15個の炭素原子を有する。
【0054】
エステル基、特に1~8個の炭素原子を有するエステル基が特に優先される。
【0055】
最も好ましいのはアセテート基である。アセテート基の形態でブロックされたヒドロキシル基を有するポリエーテルは、特に低粘度であり、特に簡単な方法で入手可能であり、特に安価である。
【0056】
好ましいアセタール基は、1-(イソブトキシ)エトキシ又はテトラヒドロピラン-2-オキシ又はテトラヒドロフラン-2-オキシ基、特に1-(イソブトキシ)エトキシ基である。
【0057】
好ましいアセトエステル基はアセトアセテート基である。
【0058】
好ましいカーボネート基はメチルカーボネート基である。
【0059】
これらは低粘度であり、安価な原材料から入手可能である。
【0060】
ブロックされたヒドロキシル基を有するポリエーテル中に存在する繰り返し単位は、好ましくは、1,2-エチレンオキシ、1,2-プロピレンオキシ、1,3-プロピレンオキシ、1,2-ブチレンオキシ、又は1,4-ブチレンオキシ基、特には1,2-プロピレンオキシ基である。
【0061】
好ましくは、繰り返し単位の70重量%~100重量%、特には80重量%~100重量%が1,2-プロピレンオキシ基からなり、繰り返し単位の0重量%~30重量%、特には0重量%~20重量%が1,2-エチレンオキシ基からなる。
【0062】
より好ましくは、繰り返し単位は完全に1,2-プロピレンオキシ基からなる。
【0063】
そのようなポリエーテルは容易に入手可能であり、疎水性であり、また低い吸水性と良好な安定性を有するチキソトロピー性の硬化性組成物を可能にする。
【0064】
ブロックされたヒドロキシル基を有するポリエーテルは、好ましくは600~2,500g/mol、より好ましくは700~2,000g/mol、特には800~1,500g/molの範囲の平均分子量Mを有し、これは、移動相としてのテトラヒドロフラン、屈折率検出器、及び200g/molからの評価を用いた、標準としてのポリスチレンに対するゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によって決定される。これにより、取り扱いが容易であり、チキソトロピー作用が高く、硬化性組成物の放出や臭気の問題を生じさせないペーストが得られる。
【0065】
ブロックされたヒドロキシル基を有するポリエーテルは、好ましくは、
- アルコールを出発物質とする、特に、n-ブタノールを出発物質とする、25~90mg KOH/g、好ましくは50~80mg KOH/gの範囲のOH価を有するポリオキシプロピレンモノオール、
- 45~155mg KOH/g、好ましくは56~125mg KOH/gの範囲のOH価を有するポリオキシプロピレンジオール、及び
- トリメチロールプロパン又は特にグリセロールを出発物質とする、任意選択的にエチレンオキシド末端の、2.2~3の範囲の平均OH官能基数と90~230mg KOH/gの範囲のOH価とを有するポリオキシプロピレントリオール、
からなる群から選択される少なくとも1種のヒドロキシ官能性ポリエーテル由来である。
【0066】
これらの中では、アルコールを出発物質とする、特にn-ブタノールを出発物質とするポリオキシプロピレンモノオール又はポリオキシプロピレンジオールが優先される。
【0067】
ポリオキシプロピレンジオールが特に優先される。これらは特に安価である。
【0068】
ブロックされたヒドロキシル基を有するポリエーテルは、特に、少なくとも1種のヒドロキシ官能性ポリエーテルを、ヒドロキシル基のための少なくとも1種の適切なブロック化剤と反応させることによって得られる。
【0069】
反応のために、ブロック化剤は、ヒドロキシル基に関して少なくとも化学量論量で使用され、その結果、ヒドロキシル基は本質的に完全にブロックされ、したがって得られるポリエーテルは本質的にヒドロキシル基を含まない。ブロック化のためには、それぞれの反応性基について慣例的な方法が使用され、任意選択的には触媒又は溶媒が追加で使用される。ブロック化反応が脱離生成物を形成する場合、これらは適切な方法、特には蒸留によって反応混合物から除去される。
【0070】
適切なブロック化剤は、ヒドロキシル基との付加反応又は置換反応を行う求核性化合物である。
【0071】
特に適切なものは、ビニルエーテル、カルボン酸、塩化カルボニル、カルボン酸エステル又はカルボン酸無水物、ジケテン、2,2,5-トリメチル-4H-1,3-ジオキシン-4-オン、アセト酢酸アルキル、炭酸ジアルキル、(メタ)アクリルアミド、メチレンマロネート、又はシアノアクリレートである。
【0072】
特に、アセタール基の形態でブロックされたヒドロキシル基の形成を伴う、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、イソプロピルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、イソプロペニルメチルエーテル、イソプロペニルエチルエーテル、2,3-ジヒドロフラン、又は3,4-ジヒドロ-2H-ピラン、より好ましくはイソブチルビニルエーテル、2,3-ジヒドロフラン、又は3,4-ジヒドロ-2H-ピランなどのビニルエーテルが優先される。反応は、好ましくは、任意選択的には酸性イオン交換樹脂の形態で触媒としての酸、特に塩酸、硫酸、リン酸、又はスルホン酸の存在下で行われる。
【0073】
エステル基の形態でブロックされたヒドロキシル基の形成を伴うカルボン酸、塩化カルボニル、カルボン酸エステル、又はカルボン酸無水物も優先される。これらの中でも、カルボン酸無水物又はカルボン酸エステル、特に無水酢酸が優先される。
【0074】
ブロック化剤としての無水酢酸の場合、反応により酢酸が放出され、アセテート基の形態でブロックされたヒドロキシル基が形成される。
【0075】
ブロック化剤としての酢酸イソプロペニルの場合、反応によりアセトンが放出され、同様にアセテート基の形態でブロックされたヒドロキシル基が形成される。
【0076】
更に、アセトエステル基の形態のブロック化されたヒドロキシル基の形成を伴うジケテン、2,2,5-トリメチル-4H-1,3-ジオキシン-4-オン、又は特にアセト酢酸tert-ブチルなどの立体障害のあるアセト酢酸アルキルが優先される。
【0077】
更に、カーボネート基、特にはメチルカーボネート基の形態のブロック化されたヒドロキシル基の形成を伴う炭酸ジアルキル、特に炭酸ジメチルが優先される。
【0078】
適切なヒドロキシ官能化ポリエーテルは、特に、1~3の範囲の平均OH官能基数と、500~2,500g/mol、より好ましくは600~2,000g/mol、特には700~1,500g/molの範囲の平均分子量Mを有するものである。
【0079】
25~90mg KOH/g、好ましくは50~80mg KOH/gの範囲のOH価を有するポリオキシプロピレンモノオール、特にアルコールを出発物質とするポリオキシプロピレンモノオール、特にメタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール、イソブタノール、tert-ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、2-エチルヘキサノール、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、パルミチルアルコール、アリルアルコール、シクロヘキサノール、ベンジルアルコール、又はフェノールを出発物質とするものが優先される。これらの中でも、アルキルアルコールを出発物質とする、特にメタノール、エタノール、又はn-ブタノールを出発物質とするポリオキシプロピレンモノオールが優先される。650~2,000g/mol、特には700~1,500g/molの範囲にある平均分子量Mを有する、n-ブタノールを出発物質とするポリオキシプロピレンモノオールが特に優先される。n-ブタノールを出発物質とするポリオキシプロピレンモノオールは、例えば、Synalox(登録商標)100-20B、Synalox(登録商標)100-40B、又はSynalox(登録商標)100-85B(全てDowDuPont Inc.より)として市販されている。
【0080】
また、45~155mg KOH/g、好ましくは56~125mg KOH/gの範囲のOH価を有するポリオキシプロピレンジオールも好ましい。
【0081】
また、平均OH官能基数が2.2~3の範囲であり、90~230mg KOH/gの範囲のOH価を有する、トリメチロールプロパン又は特にグリセロールを出発物質とする、任意選択的にはエチレンオキシドが末端の、ポリオキシプロピレントリオールも好ましい。
【0082】
ブロックされたヒドロキシル基を有する好ましいポリエーテルは、単純なプロセスで容易に入手可能なベース材料から調製可能であり、低粘度であり、ペースト形態の取り扱い易いチキソトロピー剤を可能にし、これは、驚くべきことに、少量であっても、チキソトロピー性を付与する材料の粘度や絞り出し性を過度に増加させることなく、降伏点を大幅に増加させる。
【0083】
本発明は更に、組成物の降伏点を増加させるための、すなわち組成物にチキソトロピー性を付与するための、硬化性組成物における本発明のチキソトロピー剤の使用を提供する。この効果は、しばしば「増粘」とも呼ばれるものの、これは粘度の増加を意味するのではなく、降伏点又は耐垂れ性の増加を意味する。このようなチキソトロピー性の組成物は、有意に流れ落ちたり垂れたりさせることなく、傾斜した基材や垂直な張り出し部に塗布することができる。
【0084】
この使用のために、チキソトロピー剤は、適切な方法によって、好ましくは水分を排除して、任意選択的には減圧下で、硬化性組成物又は硬化性組成物の成分のうちの少なくとも1種と混合される。
【0085】
特に、チキソトロピー剤中に存在する尿素化合物は降伏点の上昇をもたらす一方で、ブロックされたヒドロキシル基を有するポリエーテルは希釈効果を発揮し、硬化後、組成物に対して可塑化効果を発揮する。
【0086】
好ましい硬化性組成物は、イソシアネート及び/又はシラン基を含む組成物である。
【0087】
イソシアネート及び/又はシラン基を含む少なくとも1種のポリマーを含有する硬化性組成物が特に優先される。
【0088】
硬化性組成物は、一液型(一成分型)組成物の形態であってもよく、又は多液型(多成分型)、特には二液型(二成分型)の組成物の形態であってもよい。
【0089】
「一液型(一成分型)」組成物と呼ばれる組成物は、組成物の全ての成分が同じ容器の中にあり、それ自体が貯蔵安定性であり、水分で硬化可能であるものである。
【0090】
「二液型(二成分型)」組成物と呼ばれる組成物は、組成物の成分が別々の容器の中で保管され、組成物塗布の直前又は塗布中まで互いに混合されない2つの異なる成分であるものである。
【0091】
硬化性組成物は、好ましくは一液型の湿気硬化性組成物である。本発明のチキソトロピー剤は、特に一液型組成物に適している。これは湿気を排除した状態でそれと共に貯蔵安定性を有している。
【0092】
特に優れた耐垂れ性を有し、それにもかかわらず大きな力をかけずに容器から塗布可能であることが意図されている硬化性組成物のためのチキソトロピー剤として使用することが特に優先される。そのような特性は、ペースト状の接着剤及びシーラントのために特に望ましい。これらは、カートリッジからの優れた絞り出し性、又はペール缶若しくはドラム缶からのポンプ移送能力を有しており、高い耐垂れ性と短い糸引きにより、複雑でなくクリーンな塗布が保証される。
【0093】
記載されているチキソトロピー剤は、壁から水平に突出する約2~3cmの底面積及び約5~7cmの長さを有するコーン(ノーズ)が静止したままの場合に、塗布後、先端で測定してわずか数ミリメートルしか垂れがないような、フタル酸エステルを含まないペースト状の一液型接着剤及びシーラントを可能にする。
【0094】
本発明は、更に、本発明のチキソトロピー剤と、イソシアネート及び/又はシラン基を含む少なくとも1種のポリマーとを含有する硬化性組成物を提供する。
【0095】
イソシアネート及び/又はシラン基を含むポリマーは、好ましくは1,000~30,000g/mol、特には2,000~20,000g/molの範囲の平均分子量Mを有する。
【0096】
これは、好ましくは室温で液体である。
【0097】
好ましい実施形態では、組成物は、イソシアネート基を含む少なくとも1種のポリマーを含有する。そのような組成物は「ポリウレタン組成物」とも呼ばれる。
【0098】
イソシアネート基を含む適切なポリマーは、特に、少なくとも1種のポリオールと化学量論量より多い少なくとも1種のジイソシアネートとの反応から得られる。反応は、好ましくは20~160℃、特には40~140℃の範囲の温度で、水分を排除して、任意選択的には適切な触媒の存在下で行われる。
【0099】
NCO/OH比は、好ましくは1.3/1~10/1の範囲である。OH基の反応後に反応混合物中に残存しているモノマー状のジイソシアネートは除去することができ、特には蒸留によって除去することができる。
【0100】
過剰のモノマー状ジイソシアネートが蒸留により除去される場合、反応中のNCO/OH比は好ましくは4/1~7/1の範囲であり、得られるイソシアネート基含有ポリマーは、蒸留後、好ましくは0.5重量%以下、より好ましくは0.3重量%以下のモノマー状ジイソシアネートを含む。モノマー状ジイソシアネートは、特に減圧下でのショートパス蒸留によって除去される。
【0101】
過剰のモノマー状ジイソシアネートがポリマーから除去されない場合、反応におけるNCO/OH比は、好ましくは1.3/1~2.5/1の範囲である。
【0102】
得られたポリマーは、好ましくは0.5重量%~10重量%、特には1重量%~5重量%、より好ましくは1重量%~3重量%の範囲のイソシアネート基の含有量、及び1,500~20,000g/mol、特には2,000~15,000g/molの範囲の平均分子量Mを有する。
【0103】
ポリマーは、任意選択的には可塑剤又は溶媒を追加で使用して調製され、この場合、使用される可塑剤又は溶媒は、イソシアネートに対して反応性のある基を含まない。
【0104】
脂肪族、脂環式、又は芳香族のジイソシアネート、特にヘキサメチレン1,6-ジイソシアネート(HDI)、1-イソシアナト-3,3,5-トリメチル-5-イソシアナトメチルシクロヘキサン(イソホロンジイソシアネート又はIPDI)、ペルヒドロ(ジフェニルメタン2,4’-及び/又は4,4’-ジイソシアネート)(H12MDI)、ジフェニルメタン2,4’-及び/若しくは2,2’-ジイソシアネートのフラクションあり若しくはなしのジフェニルメタン4,4’-ジイソシアネート(MDI)、又はトリレン2,4-ジイソシアネート若しくはこれとトリレン2,6-ジイソシアネートとの混合物(TDI)が優先される。
【0105】
特に、HDI、IPDI、MDI、又はTDI、又はこれらの混合物が優先される。
【0106】
適切なポリオールは市販のポリオール又はこれらの混合物であり、特には以下のものである:
- ポリエーテルポリオール、特にポリオキシアルキレンジオール及び/又はポリオキシアルキレントリオール、特にエチレンオキシド又は1,2-プロピレンオキシド又は1,2-若しくは2,3-ブチレンオキシド又はオキセタン又はテトラヒドロフラン又はこれらの混合物の重合生成物であり、これらは2つ又は3つの活性水素原子を有する出発分子(開始剤分子)、特に水、アンモニア、又は複数のOH若しくはNH基を有する化合物、例えばエタン-1,2-ジオール、プロパン-1,2-若しくは-1,3-ジオール、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、異性体ジプロピレングリコール若しくはトリプロピレングリコール、異性体ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、ヘプタンジオール、オクタンジオール、ノナンジオール、デカンジオール、ウンデカンジオール、シクロヘキサン-1,3-若しくは-1,4-ジメタノール、ビスフェノールA、水素化ビスフェノールA、1,1,1-トリメチロールエタン、1,1,1-トリメチロールプロパン、グリセロール又はアニリン、又は前述した化合物の混合物などの出発分子(開始剤分子)を用いて重合されていてもよい。同様に適切なものは、ポリマー粒子が中に分散しているポリエーテルポリオール、特にスチレン/アクリロニトリル(SAN)粒子又はポリ尿素又はポリヒドラゾジカーボンアミド(PHD)粒子を含むものである。
【0107】
好ましいポリエーテルポリオールは、ポリオキシプロピレンジオール若しくはポリオキシプロピレントリオール、又はいわゆるエチレンオキシド末端(EOでキャップされているかEOが先端の)ポリオキシプロピレンジオール若しくはトリオールである。後者は混合ポリオキシエチレン/ポリオキシプロピレンポリオールであり、これらは特に、ポリプロポキシル化反応の結果として、ポリオキシプロピレンジオール又はトリオールがエチレンオキシドで更にアルコキシル化され、結果として一級ヒドロキシル基を有することで得られる。
【0108】
好ましいポリエーテルポリオールは、0.02meq/g未満、特には0.01meq/g未満の不飽和レベルを有する。
- 公知のプロセス、特にヒドロキシカルボン酸若しくはラクトンの重縮合、又は脂肪族及び/若しくは芳香族ポリカルボン酸と二価若しくは多価アルコールとの重縮合によって調製される、オリゴエステロールとも呼ばれるポリエステルポリオール。特に、1,2-エタンジオール、ジエチレングリコール、1,2-プロパンジオール、ジプロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、グリセロール、1,1,1-トリメチロールプロパン、若しくは前述したアルコールの混合物などの二価アルコールと、有機ジカルボン酸又はその無水物又はエステル、例えば特にコハク酸、グルタル酸、アジピン酸、スベリン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸、マレイン酸、フマル酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、シクロヘキサン-1,2-ジカルボン酸、シクロヘキサン-1,3-ジカルボン酸、若しくはシクロヘキサン-1,4-ジカルボン酸、若しくは前述した酸の混合物との反応からのポリエステルジオール、又は特にε-カプロラクトンなどのラクトンから形成されるポリエステルポリオールが優先される。特に、アジピン酸又はセバシン酸又はドデカンジカルボン酸とヘキサンジオール又はネオペンチルグリコールとから形成されるポリエステルポリオールが優先される。
- 例えば、ポリエステルポリオールを形成するために使用される上述したアルコールと、炭酸ジアルキル、炭酸ジアリール、又はホスゲンとの反応により得られるポリカーボネートポリオール。
- 少なくとも2つのOH基を有し、上述したタイプのポリエーテル、ポリエステル、及び/又はポリカーボネート構造を有する少なくとも2つの異なるブロックを有するブロックコポリマー、特にはポリエーテルポリエステルポリオール。
- ポリアクリレート又はポリメタクリレートポリオール。
- ポリヒドロキシ官能性油脂、例えば天然油脂、特にはヒマシ油;又は天然油脂の化学変性によって得られるポリオール(オレオケミカルポリオールと呼ばれる)、例えば不飽和油のエポキシ化とそれに続くカルボン酸若しくはアルコールによる開環によって得られるエポキシポリエステル又はエポキシポリエーテル、又は不飽和油のヒドロホルミル化及び水素化によって得られるポリオール;又はアルコール分解若しくはオゾン分解及びそれに続く例えばこのようにして得た分解生成物又はその誘導体のエステル交換若しくは二量化による化学結合などの分解プロセスによる、天然油脂から得られるポリオール。天然の油脂の適切な分解生成物は、特に脂肪酸及び脂肪族アルコール、並びに脂肪酸エステル、特に、例えばヒドロホルミル化及び水素化によってヒドロキシ脂肪酸エステルに誘導体化することができるメチルエステル(FAME)である。
- 特にはポリヒドロキシ官能性ポリオレフィン、ポリイソブチレン、ポリイソプレンなどの、オリゴヒドロカルボノール(oligohydrocarbonol)とも呼ばれるポリ炭化水素ポリオール;例えばKraton Polymersにより製造されているような、ポリヒドロキシ官能性エチレン/プロピレン、エチレン/ブチレン、又はエチレン/プロピレン/ジエンコポリマー;特にはアニオン重合により調製することも可能な、ジエンの、特には1,3-ブタジエンのポリヒドロキシ官能性ポリマー;1,3-ブタジエン又はジエン混合物などのジエンと、スチレン、アクリロニトリル、塩化ビニル、酢酸ビニル、ビニルアルコール、イソブチレン、又はイソプレンなどのビニルモノマーとのポリヒドロキシ官能性コポリマー、特には具体的にはエポキシド又はアミノアルコールとカルボキシル末端アクリロニトリル/ブタジエンコポリマーとから調製することができるポリヒドロキシ官能性アクリロニトリル/ブタジエンコポリマー(例えばEmerald Performance MaterialsからHypro(登録商標)CTBN又はCTBNX又はETBNという名称で市販);又は水素化ポリヒドロキシ官能性ポリマー又はジエンのコポリマー。
【0109】
また、ポリオールの混合物も特に適している。
【0110】
ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリ(メタ)アクリレートポリオール、又はポリブタジエンポリオールが優先される。
【0111】
ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、特に脂肪族ポリエステルポリオール、又はポリカーボネートポリオール、特に脂肪族ポリカーボネートポリオールが特に優先される。
【0112】
特に好ましいものは、ポリエーテルポリオール、特にはポリオキシアルキレンポリオールである。
【0113】
最も好ましいものは、ポリオキシプロピレンジ-若しくはトリオール、又はエチレンオキシド末端ポリオキシプロピレンジ-若しくはトリオールである。
【0114】
平均分子量Mが400~20,000g/mol、好ましくは1,000~15,000g/molの範囲であるポリオールが優先される。
【0115】
1.6~3の範囲の平均OH官能基数を有するポリオールが優先される。
【0116】
室温で液体であるポリオールが優先される。
【0117】
イソシアネート基を含むポリマーの調製において、二官能性又は多官能性アルコールのフラクション、特にエタン-1,2-ジオール、プロパン-1,2-ジオール、プロパン-1,3-ジオール、2-メチルプロパン-1,3-ジオール、ブタン-1,2-ジオール、ブタン-1,3-ジオール、ブタン-1,4-ジオール、ペンタン-1,3-ジオール、ペンタン-1,5-ジオール、3-メチルペンタン-1,5-ジオール、ネオペンチルグリコール、ジブロモネオペンチルグリコール、ヘキサン-1,2-ジオール、ヘキサン-1,6-ジオール、ヘプタン-1,7-ジオール、オクタン-1,2-ジオール、オクタン-1,8-ジオール、2-エチルヘキサン-1,3-ジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、シクロヘキサン-1,3-若しくは-1,4-ジメタノール、エトキシル化ビスフェノールA、プロポキシル化ビスフェノールA、シクロヘキサンジオール、水素化ビスフェノールA、二量体脂肪酸アルコール、1,1,1-トリメチロールエタン、1,1,1-トリメチロールプロパン、グリセロール、ペンタエリスリトール、糖アルコール(特にはキシリトール、ソルビトール、又はマンニトールなど)、又は糖(特にはスクロースなど)、又は言及したアルコールのアルコキシル化誘導体又は言及したアルコールの混合物を使用することも可能である。
【0118】
イソシアネート基を含むポリマーは、好ましくは1,500~20,000g/mol、特には2,000~15,000g/molの範囲の平均分子量Mを有する。
【0119】
イソシアネート基を含むポリマーに加えて、組成物は、少なくとも1種のオリゴマー状イソシアネート又は室温で液体であるMDIの形態を含み得る。
【0120】
適切なオリゴマー状イソシアネートは、特に、Desmodur(登録商標)N100若しくはN3200(Covestro AGより)、Tolonate(登録商標)HDB若しくはHDB-LV(Vencorex Holding SASより)、又はDuranate(登録商標)24A-100(旭化成株式会社より)などのHDIビウレット;Desmodur(登録商標)N3300、N3600、若しくはN3790 BA(全てCovestro AGより)、Tolonate(登録商標)HDT、HDT-LV、又はHDT-LV2(Vencorex Holding SASより)、Duranate(登録商標)TPA-100若しくはTHA-100(旭化成株式会社より)、又はCoronate(登録商標)HX(東ソー株式会社より)などのHDIイソシアヌレート;Desmodur(登録商標)N3400(Covestro AGより)などのHDIウレトジオン;Desmodur(登録商標)XP2410(Covestro AGより)などのHDIイミノオキサジアジンジオン;Desmodur(登録商標)VP LS 2102(Covestro AGより)などのHDIアロファネート;例えばDesmodur(登録商標)Z4470(Covestro AGより)のような溶液中の、又はVestanat(登録商標)T1890/100(Evonik Industries AGより)のような固体形態の、IPDIイソシアヌレート;Desmodur(登録商標)IL(Covestro AGより)などのTDIオリゴマー;又はDesmodur(登録商標)HL(Covestro AGより)などのTDI/HDIに基づく混合イソシアヌレートである。
【0121】
室温で液体であるMDIの形態は、部分的な化学修飾(特にカルボジイミド化又はウレトンイミン形成又はポリオールとの付加物形成)によって液化された4,4’-MDIであるか、又はこれは、4,4’-MDIと、ブレンドすることにより選択的に得たものであるか製造プロセスにより得たものである他のMDI異性体(2,4’-MDI及び/又は2,2’-MDI)及び/又はMDIオリゴマー及び/又はMDI類似体(ポリメリックMDI又はPMDI)との混合物である。
【0122】
本発明の好ましい実施形態では、硬化性組成物は、イソシアネート基を含む少なくとも1種のポリマーに加えて、少なくとも1種の潜在性硬化剤を含有する。このようなポリウレタン組成物は、特に硬化中に膨れが発生しにくい。
【0123】
好ましい潜在性硬化剤は、ケチミン、アルジミン、又はオキサゾリジンであり、特にはオキサゾリジン又はアルジミンであり、最も好ましくはアルジミンである。
【0124】

【化2】
のアルジミンが優先され、式中のyは2又は3であり、Aは2~23個の炭素原子を有する有機基であり、Bは6~30個の炭素原子を有する有機基である。
【0125】
Aは、好ましくは、環状成分を任意選択的に有していてもよいアルキレン基、又は5~15個の炭素原子を有する二価若しくは三価のポリオキシアルキレン基、特に、1,6-ヘキシレン、170~300g/molの範囲の平均分子量Mを有する(1,5,5-トリメチルシクロヘキサン-1-イル)メタン-1,3若しくはα,ω-ポリオキシプロピレン、又は330~500g/molの範囲の平均分子量Mを有するトリメチロールプロパンを出発物質とするトリス(ω-ポリオキシプロピレン)である。
【0126】
Bは、好ましくは7~22個の炭素原子を有する有機基、特には2,2-ジメチル-3-アセトキシプロピリデン、2,2-ジメチル-3-ラウロイルオキシプロピリデン、2,2-ジメチル-3-(N-モルホリノ)プロピリデン、ベンジリデン、又はアルキル置換ベンジリデン、特には4-デシルベンジリデン、4-ウンデシルベンジリデン、4-ドデシルベンジリデン、4-トリデシルベンジリデン、又は4-テトラデシルベンジリデンであり、これらの中の4-アルキル基が主に分岐している。
【0127】
より好ましくは、Bは、少なくとも15個の炭素原子を有する基、特には2,2-ジメチル-3-ラウロイルオキシプロピリデン又はアルキル置換ベンジリデンである。そのようなアルジミンは無臭である。
【0128】

【化3】
のアルジミンは、特に、縮合の水を除去しながら式A-(NHのアミンを式O=Bのアルデヒドと反応させることによって得られる。
【0129】
好ましいアミンA-(NHHは、脂肪族又は脂環式の一級ジアミン又はトリアミン、特にはヘキサメチレン-1,6-ジアミン、イソホロンジアミン、200~350g/molの範囲の平均分子量Mを有するα,ω-ポリオキシプロピレンジアミン、特にはJeffamine(登録商標)D-230(Huntsman Corp.より)、又はトリメチロールプロパンを出発物質とするトリス(ω-ポリオキシプロピレンアミン)、特にはJeffamine(登録商標)T-403(Huntsman Corp.より)である。
【0130】
好ましいアルデヒドO=Bは、カルボン酸のアルドールエステル、特には2,2-ジメチル-3-アセトキシプロパナール、2,2-ジメチル-3-ラウロキシロキシプロパナール、2,2-ジメチル-3-(N-モルホリノ)プロパナール、ベンズアルデヒド、又はアルキル基で置換されたベンズアルデヒド、特には4-アルキル基が主に分岐している4-デシルベンズアルデヒド、4-ウンデシルベンズアルデヒド、4-ドデシルベンズアルデヒド、4-トリデシルベンズアルデヒド、又は4-テトラデシルベンズアルデヒド、及びアルキル基によって置換されたこれらのベンズアルデヒドの混合物である。
【0131】
水分に触れると、潜在性硬化剤は、アミノ基と、場合によってはヒドロキシル基を放出し、これらはイソシアネートと反応し、架橋剤として機能する。これにより、アルデヒド又はケトンが放出される。
【0132】
Bが長鎖基、特に15個以上の炭素原子を有する基である式O=Bの好ましいアルデヒドの場合、これは臭気の問題を生じず、硬化後に組成物中に残り、これは優れた相溶性を有し同様に可塑剤として機能する。
【0133】
水とイソシアネートとの直接反応と比較して、潜在性硬化剤による架橋は、COが放出されないという利点を有しており、硬化の過程で膨れが形成される傾向が大幅に減少する。
【0134】
追加の好ましい実施形態では、硬化性組成物は、シラン基を含む少なくとも1種の有機ポリマーを含む。そのようなポリマーは「シラン変性ポリマー」(SMP)とも呼ばれ、そのためそのような組成物はSMP組成物とも呼ばれる。
【0135】
シラン基を含む有機ポリマーは、好ましくは、式
【化4】
のシラン基を有し、式中、
は、1~5個の炭素原子を有する直鎖又は分岐の一価ヒドロカルビル基、特にはメチル又はエチルであり、
は、1~8個の炭素原子を有する直鎖又は分岐の一価ヒドロカルビル基、特にはメチルであり、
xは0又は1又は2、好ましくは0又は1、特には0の値を有する。
【0136】
メトキシシラン基は、これらがここで特に反応性であるという利点を有している。エトキシシラン基は、毒物学的に有利であり、特に貯蔵安定性があるという利点を有する。
【0137】
トリメトキシシラン基、ジメトキシメチルシラン基、又はトリエトキシシラン基が特に優先される。
【0138】
最も好ましいものは、トリメトキシシラン基又はトリエトキシシラン基である。
【0139】
シラン基を含む好ましい有機ポリマーは、ポリオレフィン又はポリエステル又はポリアミド又はポリ(メタ)アクリレート又はポリエーテル又はこれらのポリマーの混合形態である。シラン基は、鎖のペンダント位置にあっても末端の位置にあってもよく、また炭素原子を介して有機ポリマーに結合している。
【0140】
より好ましくは、シラン基を含む有機ポリマーはシラン基を含むポリエーテルである。
【0141】
「シラン基を含むポリエーテル」は、少なくとも1種のシラン基を含む有機ポリマーを指し、ポリマー鎖は主にポリエーテル単位、特に1,2-オキシプロピレン単位を有する。ポリエーテル単位と同様に、ウレタン基、尿素基、チオウレタン基、エステル基、又はアミド基が存在することも特に可能である。
【0142】
シラン基を含むポリエーテルは、好ましくは、少なくとも50重量%、特には少なくとも70重量%、より好ましくは少なくとも80重量%の1,2-オキシプロピレン単位を含む。
【0143】
シラン基を含む適切なポリエーテルを調製するためのプロセスは、当業者に公知である。
【0144】
好ましいプロセスでは、シラン基を含むポリエーテルは、アリル基を含むポリエーテルのヒドロシランとの反応から得られ、任意選択的には例えばジイソシアネートを使用した鎖の延長を伴ってもよい。
【0145】
更に好ましいプロセスでは、シラン基を含むポリエーテルは、アルキレンオキシドとエポキシシランとの共重合から得られ、任意選択的には例えばジイソシアネートを使用した鎖の延長を伴ってもよい。
【0146】
更に好ましいプロセスでは、シラン基を含むポリエーテルは、ポリエーテルポリオールとイソシアナトシランとの反応から得られ、任意選択的にはジイソシアネートを使用した鎖の延長を伴ってもよい。
【0147】
更に好ましいプロセスでは、シラン基を含むポリエーテルは、イソシアネート基を含むポリエーテルとアミノシラン、ヒドロキシシラン、又はメルカプトシランとの反応から得られる。このプロセスからのシラン基を含むポリエーテルが特に優先される。このプロセスにより、様々なポリマー特性、特には高い伸展性、高い強度、低い弾性率、低いガラス転移温度、又は高い耐候性が得られる、市場で容易に入手可能な多数の安価な出発材料を使用することができる。
【0148】
より好ましくは、シラン基を含むポリエーテルは、イソシアネート基を含むポリエーテルとアミノシラン及び/又はヒドロキシシラン及び/又はメルカプトシランとの反応から得られる。
【0149】
イソシアネート基を含む適切なポリエーテルは、ポリエーテルポリオール、特にはポリオキシアルキレンジオール又はポリオキシアルキレントリオール、好ましくはポリオキシプロピレンジオール又はポリオキシプロピレントリオールと化学量論量より多い量のジイソシアネートとの反応から特に得られる。
【0150】
ジイソシアネートとポリエーテルポリオールとの間の反応が、50℃~160℃の温度で、任意選択的には適切な触媒の存在下で水分を排除して行われ、そのイソシアネート基がポリオールのヒドロキシル基に対して化学量論量より過剰に存在するようにジイソシアネートが添加されていることが好ましい。特に、過剰のジイソシアネートは、全てのヒドロキシル基の反応後に、ポリマー全体を基準として0.1重量%~5重量%、好ましくは0.2重量%~4重量%、より好ましくは0.3重量%~3重量%の遊離イソシアネート基の含有量を残すように選択される。
【0151】
好ましいジイソシアネートは、既に上で述べたものである。IPDI又はTDIが特に優先される。最も好ましいものはIPDIである。これにより、特に優れた耐光性を有するシラン基含有ポリエーテルが得られる。
【0152】
ポリエーテルポリオールとして特に適切なものは、不飽和度が0.02meq/g未満、特には0.01meq/g未満であり、平均分子量Mが400~25,000g/mol、特には1,000~20,000g/molの範囲であるポリオキシプロピレンジオールである。
【0153】
ポリエーテルポリオールに加えて、一定割合の他のポリオール、特にはポリアクリレートポリオール、及び低分子量ジオール又はトリオールを使用することも可能である。
【0154】
イソシアネート基を含むポリエーテルとの反応に適したアミノシランは、一級、特には二級アミノシランである。3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルジメトキシメチルシラン、4-アミノブチルトリメトキシシラン、4-アミノ-3-メチルブチルトリメトキシシラン、4-アミノ-3,3-ジメチルブチルトリメトキシシラン、N-ブチル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、一級アミノシラン(3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルジメトキシメチルシラン、又はN-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシランなど)とマイケル受容体(アクリロニトリル、(メタ)アクリルエステル、(メタ)アクリルアミド、マレイン酸若しくはフマル酸ジエステル、シトラコン酸ジエステル、又はイタコン酸ジエステルなど)とから形成される付加体、特にはジメチル又はジエチルN-(3-トリメトキシシリルプロピル)アミノスクシネートが優先される。同様に適切なものは、ケイ素上のメトキシ基の代わりにエトキシ基を有する列挙されたアミノシランの類似体である。
【0155】
イソシアネート基を含むポリエーテルとの反応に適したヒドロキシシランは、ラクトン又は環状カーボネート又はラクチドへのアミノシランの付加から特に得られる。
【0156】
このようにして得られる好ましいヒドロキシシランは、N-(3-トリエトキシシリルプロピル)-2-ヒドロキシプロパンアミド、N-(3-トリメトキシシリルプロピル)-2-ヒドロキシプロパンアミド、N-(3-トリエトキシシリルプロピル)-4-ヒドロキシペンタンアミド、N-(3-トリエトキシシリルプロピル)-4-ヒドロキシオクタンアミド、N-(3-トリエトキシシリルプロピル)-5-ヒドロキシデカンアミド、又はN-(3-トリエトキシシリルプロピル)-2-ヒドロキシプロピルカルバメートである。
【0157】
更に適切なヒドロキシシランは、エポキシドへのアミノシランの付加から、又はエポキシシランへのアミンの付加から得られる。
【0158】
このようにして得られる好ましいヒドロキシシランは、2-モルホリノ-4(5)-(2-トリメトキシシリルエチル)シクロヘキサン-1-オール、2-モルホリノ-4(5)-(2-トリエトキシシリルエチル)シクロヘキサン-1-オール、又は1-モルホリノ-3-(3-(トリエトキシシリル)プロポキシ)プロパン-2-オールである。
【0159】
イソシアネート基を含むポリエーテルとの反応に適したメルカプトシランは、特には3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン又は3-メルカプトプロピルトリエトキシシランである。
【0160】
シラン基を含む更に適切なポリエーテルは、市販の製品、特には以下のものである:MS Polymer(商標)(株式会社カネカより;特にはS203H、S303H、S227、S810、MA903、及びS943製品);MS Polymer(商標)又はSilyl(商標)(株式会社カネカより;特にはSAT010、SAT030、SAT200、SAX350、SAX400、SAX725、MAX450、MAX951製品);Excestar(登録商標)(旭硝子株式会社より;特にはS2410、S2420、S3430、S3630製品);SPUR+(Momentive Performance Materials Inc.より;特には1010LM、1015LM、1050MM製品より);Vorasil(商標)(DowDuPont Inc.より;特には602及び604製品);Desmoseal(登録商標)(Covestro AGより;特にはS XP 2458、S XP 2636、S XP 2749、S XP 2774、及びS XP 2821製品)、TEGOPAC(登録商標)(Evonik Industries AGより;特にはSeal 100、Bond 150、Bond 250製品)、Polymer ST(Hanse Chemie AG/Evonik Industries AGより;特には47、48、61、61LV、77、80、81製品);Geniosil(登録商標)STP(Wacker Chemie AGより;特にはE10、E15、E30、E35製品)。
【0161】
より好ましくは、シラン基を含むポリエーテルは、イソシアネート基を含む少なくとも1種のポリエーテルと、少なくとも1種のアミノシラン及び/又はヒドロキシシラン及び/又はメルカプトシランとの反応から得られる。
【0162】
好ましくは、ここでのアミノシラン及び/又はヒドロキシシラン及び/又はメルカプトシランは、ジメチルN-(3-トリメトキシシリルプロピル)アミノスクシネート、ジエチルN-(3-トリメトキシシリルプロピル)アミノスクシネート、ジメチルN-(3-トリエトキシシリルプロピル)アミノスクシネート、ジエチルN-(3-トリエトキシシリルプロピル)アミノスクシネート、N-(3-トリメトキシシリルプロピル)-2-ヒドロキシプロパンアミド、N-(3-トリエトキシシリルプロピル)-2-ヒドロキシプロパンアミド、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、及び3-メルカプトプロピルトリエトキシシランからなる群から選択される。
【0163】
シラン基を含む有機ポリマーの好ましい実施形態は、良好な貯蔵安定性、迅速な硬化、及び特に良好な機械的特性、特には良好な強度及び高い熱安定性と組み合わされた高い弾性及び伸展性を有する組成物を可能にする。
【0164】
硬化性組成物は、好ましくは、特に可塑剤、充填剤、接着促進剤、乾燥剤、及び触媒からなる群から選択される1種以上の追加の成分を更に含有する。
【0165】
適切な可塑剤は、特に、フタル酸エステル、特にはフタル酸ジイソノニル(DINP)、フタル酸ジイソデシル(DIDP)又はフタル酸ジ(2-プロピルヘプチル)(DPHP)、水素化フタル酸エステル又はシクロヘキサン-1,2-ジカルボキシレート、特には水素化フタル酸ジイソノニル又はジイソノニルシクロヘキサン-1,2-ジカルボキシレート(DINCH)、テレフタル酸エステル、特にはテレフタル酸ビス(2-エチルヘキシル)(DOTP)又はテレフタル酸ジイソノニル(DINT)、水素化テレフタル酸エステル又はシクロヘキサン-1,4-ジカルボキシレート、特には水素化テレフタル酸ビス(2-エチルヘキシル)又はビス(2-エチルヘキシル)シクロヘキサン-1,4-ジカルボキシレート、又は水素化テレフタル酸ジイソノニル又はジイソノニルシクロヘキサン-1,4-ジカルボキシレート、イソフタル酸エステル、トリメリット酸エステル、アジピン酸エステル、特にアジピン酸ジオクチル、アゼライン酸エステル、セバシン酸エステル、安息香酸エステルなどのカルボン酸エステル、グリコールエーテル、グリコールエステル、特にはブロックされたヒドロキシル基を有する本明細書に記載のポリエーテルなどのポリエーテル構造を有する可塑剤、有機リン酸エステル又はスルホン酸エステル、ポリブテン、ポリイソブテン、天然の油脂(特にはエポキシ化大豆油又は亜麻仁油)由来の可塑剤である。
【0166】
好ましい可塑剤は、ブロックされたヒドロキシル基を有する本明細書に記載のポリエーテルである。
【0167】
適切な充填剤は、特には、任意選択的には脂肪酸(特にステアリン酸エステル)でコーティングされていてもよい粉砕若しくは沈降炭酸カルシウム、重晶石、石英粉、石英砂、ドロマイト、ウォラストナイト、焼成カオリン、マイカやタルクなどの層状ケイ酸塩、ゼオライト、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、シリカ(熱分解プロセスからの微粉化されたシリカを含む)、セメント、石膏、フライアッシュ、工業的に製造されたカーボンブラック、黒鉛、金属粉末、例えばアルミニウム、銅、鉄、銀、又は鋼、PVC粉末、又は中空ビーズである。
【0168】
任意選択的には脂肪酸(特にステアリン酸エステル)でコーティングされていてもよい炭酸カルシウム、焼成カオリン、又は工業的に製造されたカーボンブラックが優先される。
【0169】
適切な接着促進剤は、特にアミノシラン、具体的には3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルジメトキシメチルシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルジメトキシメチルシラン、N-(2-アミノエチル)-N’-[3-(トリメトキシシリル)プロピル]エチレンジアミン若しくはメトキシ基の代わりにエトキシを有するその類似体、並びにN-フェニル-、N-シクロヘキシル-、若しくはN-アルキルアミノシラン、メルカプトシラン、エポキシシラン、(メタ)アクリロイルシラン、アンヒドリドシラン、カルバマトシラン、アルキルシラン、又はイミノシラン、これらのシランのオリゴマー形態、一級アミノシランとエポキシシラン又は(メタ)アクリロイルシラン又はアンヒドリドシランとから形成された付加物、アミノ官能性アルキルシルセスキオキサン、特にはアミノ官能性メチルシルセスキオキサン又はアミノ官能性プロピルシルセスキオキサン、又はチタネートである。
【0170】
イソシアネート基を含む組成物のための接着促進剤として特に適しているものは、特に、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン又は3-グリシドキシプロピルトリエトキシシランなどのエポキシシラン、(メタ)アクリロイルシラン、アンヒドリドシラン、カルバマトシラン、アルキルシラン、又はイミノシラン、又はこれらのシランのオリゴマー形態などである。
【0171】
シラン基を含むポリマーを含有する組成物に適した乾燥剤は、特にはテトラエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、又はシラン基に対してα位に官能基を有するオルガノアルコキシシラン、特にN-(メチルジメトキシシリルメチル)-O-メチルカルバメート、(メタクリロイルオキシメチル)シラン、メトキシメチルシラン、オルトギ酸エステル、酸化カルシウム、又はモレキュラーシーブ粉末である。
【0172】
イソシアネート基を含む組成物に適した乾燥剤は、特にはモレキュラーシーブ粉末、酸化カルシウム、p-トシルイソシアネートなどの高反応性イソシアネート、モノマー状ジイソシアネート、又はオルトギ酸エステルである。
【0173】
適切な触媒は、シラン基の架橋のための触媒、特に、具体的にはスズ、チタン、ジルコニウム、アルミニウム、若しくは亜鉛の化合物などの金属触媒、及び/又は窒素化合物である。特に、ジブチルスズ(IV)ジアセテート、ジブチルスズ(IV)ジラウレート、ジブチルスズ(IV)ジネオデカノエート、ジブチルスズ(IV)ビス(アセチルアセトネート)、又はジオクチルスズ(IV)ジラウレートなどのジオルガノスズ(IV)化合物;特にはアルコキシ、カルボキシレート、1,3-ジケトネート、1,3-ケトエステレート、又は1,3-ケトアミデート配位子とのチタン(IV)又はジルコニウム(IV)又はアルミニウム(III)又は亜鉛(II)錯体、特にはオルガノチタネート;並びに特には1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデク-7-エン(DBU)、1,5-ジアザビシクロ[4.3.0]ノン5-エン(DBN)、6-ジブチルアミノ-1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデク-7-エン、6-ジブチルアミノ-1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデク-7-エン、N,N’-ジ-n-ヘキシルアセトアミジン(DHA)、2-メチル-1,4,5,6-テトラヒドロピリミジン、1,2-ジメチル-1,4,5,6-テトラヒドロピリミジン、2,5,5-トリメチル-1,4,5,6-テトラヒドロピリミジン、N-(3-トリメトキシシリルプロピル)-4,5-ジヒドロイミダゾール、N-(3-トリエトキシシリルプロピル)-4,5-ジヒドロイミダゾール、1-(3-ジメチルアミノプロピル)-2-メチル-1,4,5,6-テトラヒドロピリミジン、1-(3-アミノプロピル)-2-メチル-1,4,5,6-テトラヒドロピリミジン又はその反応生成物などのアミン、アミジン;又は特には1-ブチルグアニジン、1,1-ジメチルグアニジン、1,3-ジメチルグアニジン、1,1,3,3-テトラメチルグアニジン(TMG)、2-(3-(トリメトキシシリル)プロピル)-1,1,3,3-テトラメチルグアニジン、2-(3-(メチルジメトキシシリル)プロピル)-1,1,3,3-テトラメチルグアニジン、2-(3-(トリエトキシシリル)プロピル)-1,1,3,3-テトラメチルグアニジン、1,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]デク-5-エン(TBD)、7-メチル-1,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]デク-5-エン、7-シクロヘキシル-1,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]デク-5-エン、1-フェニルグアニジン、1-(o-トリル)グアニジン(OTG)、1,3-ジフェニルグアニジン、1,3-ジ(o-トリル)グアニジン、2-グアニジノベンズイミダゾール、又はモノアミン、ポリアミン、若しくはアミノシランとカルボジイミド、特にジシクロヘキシルカルボジイミド若しくはジイソプロピルカルボジイミドとの反応からのグアニジン;並びにビグアニド又はイミダゾールが優先される。
【0174】
オルガノチタネート、特にビス(エチルアセトアセタト)ジイソブトキシチタン(IV)(例えばDorf KetalからTysor(登録商標)IBAYとして市販)、ビス(エチルアセトアセタト)ジイソプロポキシチタン(IV)(例えばDorf KetalからTyzor(登録商標)DCとして市販)、ビス(アセチルアセトナト)ジイソプロポキシチタン(IV)、ビス(アセチルアセトナト)ジイソブトキシチタン(IV)、トリス(オキシエチル)アミンイソプロポキシチタン(IV)、ビス[トリス(オキシエチル)アミン]ジイソプロポキシチタン(IV)、ビス(2-エチルヘキサン-1,3-ジオキシ)チタン(IV)、トリス[2-((2-アミノエチル)アミノ)エトキシ]エトキシチタン(IV)、ビス(ネオペンチル(ジアリル)オキシ)ジエトキシチタン(IV)、テトラ(イソプロポキシ)チタネート、テトラ(n-ブトキシ)チタネート、テトラ(2-エチルヘキシルオキシ)チタネート、又はポリブチルチタネート、特にはビス(エチルアセトアセタト)ジイソブトキシチタン(IV)又はビス(エチルアセトアセタト)ジイソプロポキシチタン(IV)が優先される。
【0175】
更に、アミジン又はグアニジン、特にはDBU、1-(3-ジメチルアミノプロピル)-2-メチル-1,4,5,6-テトラヒドロピリミジン、1-(3-アミノプロピル)-2-メチル-1,4,5,6-テトラヒドロピリミジン若しくはその反応生成物、又はモノアミン、ポリアミン、若しくはアミノシランとジシクロヘキシルカルボジイミド若しくはジイソプロピルカルボジイミドとの反応からのグアニジンが優先される。
【0176】
これらの触媒の組み合わせ、特に少なくとも1種のオルガノチタネートと少なくとも1種のアミジン又はグアニジンとの組み合わせが更に優先される。
【0177】
適切な触媒は、イソシアネート基の反応を加速するための触媒でもあり、特にはジブチルスズジアセテート、ジブチルスズジラウレート、ジブチルスズジクロリド、ジブチルスズジアセチルアセトネート、ジメチルスズジラウレート、ジオクチルスズジアセテート、ジオクチルスズジラウレート、又はジオクチルスズジアセチルアセトネートなどの有機スズ(IV)化合物;ビスマス(III)又はジルコニウム(IV)の、特にアルコキシド、カルボキシレート、1,3-ジケトネート、オキシネート、1,3-ケトエステレート、及び1,3-ケトアミデートから選択される配位子を有する錯体;又は特に2,2’-ジモルホリノジエチルエーテル(DMDEE)などの三級アミノ基を含む化合物である。
【0178】
適切な触媒は、潜在性硬化剤の加水分解のための触媒でもあり、特には2-エチルヘキサン酸、ラウリン酸、ステアリン酸、ネオデカン酸、安息香酸、サリチル酸、又は2-ニトロ安息香酸などのカルボン酸、有機カルボン酸無水物、カルボン酸のシリルエステル、有機スルホン酸、スルホン酸エステル、他の有機酸若しくは無機酸、又は上記酸若しくはエステルの混合物である。安息香酸、2-ニトロ安息香酸、又は特にサリチル酸などの芳香族カルボン酸が優先される。
【0179】
硬化性組成物は、特に以下のさらなる添加剤を含有していてもよい:
- 無機若しくは有機顔料、特に二酸化チタン、酸化クロム、又は酸化鉄;
- 繊維、特にガラス繊維、炭素繊維、金属繊維、セラミック繊維、ポリマー繊維(ポリアミド繊維やポリエチレン繊維など)、又は天然繊維(ウール、セルロース、麻、又はサイザルなど);
- グラフェンやカーボンナノチューブなどのナノフィラー;
- 染料;
- イソシアネート基及び/又はシラン基の反応を促進する追加の触媒、特にはスズ(II)、鉄、アルミニウム、モリブデン、ジオキソモリブデン、又はカリウムの塩、石鹸、又は錯体、特には乳酸アルミニウム、オレイン酸アルミニウム、又は酢酸カリウム;三級アミノ基を含む化合物、特にN-エチルジイソプロピルアミン、N,N,N’,N’-テトラメチルアルキレンジアミン、ペンタメチルアルキレントリアミン及びそれらのより高次の類似体、ビス(N,N-ジエチルアミノエチル)アジペート、トリス(3-ジメチルアミノプロピル)アミン、1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(DABCO)、N-アルキルモルホリン、N,N’-ジメチルピペラジン;4-ジメチルアミノピリジン、N-メチルイミダゾール、N-ビニルイミダゾール、又は1,2-ジメチルイミダゾールなどの芳香族窒素化合物;ベンジルトリメチルアンモニウムヒドロキシド又はアルコキシル化三級アミンなどの有機アンモニウム化合物;及び公知の金属又はアミン触媒の修飾物である、いわゆる「遅延作用」触媒;
- 追加のレオロジー調整剤、特にはベントナイトなどの層状ケイ酸塩、ヒマシ油の誘導体、水添ヒマシ油、ポリアミド、ポリウレタン、ヒュームドシリカ、セルロースエーテル、又は疎水化変性ポリオキシエチレン;
- 溶媒、特にはアセトン、酢酸メチル、酢酸tert-ブチル、酢酸1-メトキシ-2-プロピル、3-エトキシプロピオン酸エチル、ジイソプロピルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノ-2-エチルヘキシルエーテル、アセタール(プロピラール、ブチラール、2-エチルヘキシラール、ジオキソラン、グリセロールホルマール、又は2,5,7,10-テトラオキサウンデカン(TOU)など)、トルエン、キシレン、ヘプタン、オクタン、ナフサ、ホワイトスピリット、石油エーテル若しくはガソリン、特にはSolvesso(商標)グレード(ExxonMobil Chemical Co.より)、及びプロピレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ブチロラクトン、N-メチルピロリドン、N-エチルピロリドン、p-クロロベンゾトリフルオリド、又はベンゾトリフルオリド;
- ロジン、シェラック、亜麻仁油、ヒマシ油、又は大豆油などの天然樹脂、油脂;
- 非反応性ポリマー、特に不飽和モノマーのホモポリマー又はコポリマー、特にはエチレン、プロピレン、ブチレン、イソブチレン、イソプレン、酢酸ビニル、又はアルキル(メタ)アクリレートを含む群からのもの、特にポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリイソブチレン、エチレン/酢酸ビニルコポリマー(EVA)、又はアタクチックポリ-α-オレフィン(APAO);
- 難燃性物質、特に前述した水酸化アルミニウム又は水酸化マグネシウムフィラー、並びに特にトリエチルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリフェニルホスフェート、ジフェニルクレジルホスフェート、イソデシルジフェニルホスフェート、トリス(1,3-ジクロロ-2-プロピル)ホスフェート、トリス(2-クロロエチル)ホスフェート、トリス(2-エチルヘキシル)ホスフェート、トリス(クロロイソプロピル)ホスフェート、トリス(クロロプロピル)ホスフェート、イソプロピル化トリフェニルホスフェート、様々なイソプロピル化度のモノ-、ビス-、若しくはトリス(イソプロピルフェニル)ホスフェート、レゾルシノールビス(ジフェニルホスフェート)、ビスフェノールAビス(ジフェニルホスフェート)、又はアンモニウムポリホスフェートなどの特に有機リン酸エステル;
- 添加剤、特には湿潤剤、レベリング剤、消泡剤、脱気剤、酸化や熱や光や紫外線に対する安定剤、又は殺生物剤;
又は硬化性組成物で一般的に使用されるその他の物質。
【0180】
特定の物質を組成物の中に混合する前に、それらを化学的又は物理的に乾燥させることが望ましい場合がある。
【0181】
硬化性組成物は、好ましくはフタル酸エステルを含まない。
【0182】
硬化性組成物は、好ましくは1重量%~30重量%、特には2.5重量%~25重量%の範囲の本発明のチキソトロピー剤の成分を含有する。
【0183】
本発明のチキソトロピー剤の含有量は、特に組成物の用途に依存する望まれる程度のチキソトロピー化によって導かれる。
【0184】
硬化性組成物は、特に水分を排除して製造され、防湿容器の中に周囲温度で保管される。適切な防湿容器は、特には任意選択的にコーティングされた金属及び/又はプラスチックからなり、特にはドラム、輸送ボックス、ペール缶、バケツ、キャニスター、缶、バッグ、管状バッグ、カートリッジ、又はチューブである。
【0185】
硬化性組成物は、好ましくは一液型湿気硬化性組成物である。適切に包装及び貯蔵するとこれは貯蔵に安定であり、典型的には数か月から最大1年以上にわたって安定である。
【0186】
組成物を塗布すると、硬化プロセスが開始する。これにより硬化した組成物が得られる。
【0187】
一液型湿気硬化性組成物の場合、それはそのまま塗布され、その後、湿気又は水の影響下で硬化を開始する。硬化を促進するために、水及び/又は触媒を含有又は放出する促進剤成分を、塗布時に組成物の中に混合することができ、或いは組成物をその塗布後にそのような促進剤成分と接触させることができる。
【0188】
二液型組成物の場合、二成分の混合後に塗布され、内部反応により硬化し始め、硬化は外的な水分の作用により完了することができる。2つの成分は、動的ミキサー又は静的ミキサーを用いて、連続的に又はバッチ形式で混合することができる。
【0189】
硬化の過程で、存在するイソシアネート基は、水分の影響下で互いに、及び/又は組成物中に存在する任意の追加の反応性基、特にヒドロキシル基又はアミノ基と反応する。更に、存在するイソシアネート基は、存在する任意の潜在性硬化剤の加水分解反応性基と反応する。存在するシラン基は、硬化の過程で水分の影響下で互いに反応する。これらは水分と接触すると加水分解されてシラノール基(Si-OH基)を与えることができる。存在するシラン基は、存在するシラノール基と縮合してシロキサン基(Si-O-Si基)を与えることができる。
【0190】
湿気硬化型組成物の硬化に必要な水分は、好ましくは、空気からの拡散(空気の湿気)によって組成物の中に入る。その過程で、空気と接触する組成物の表面に、硬化した組成物の固体層(スキン)が形成される。硬化は、外側から内側への拡散の方向に続き、スキンはますます厚くなって行き、最終的には塗布された組成物全体を取り囲む。水分は、組成物が塗布された1つ以上の基材から追加的若しくは完全に組成物の中に入ることもでき、及び/又は塗布時に組成物の中に混合されるか、或いは塗布後に、例えば塗装や噴霧によって塗布した後にこれと接触する促進剤成分からもたらされる場合がある。
【0191】
硬化性組成物は、好ましくは周囲温度で、特には約-10~50℃の範囲で、好ましくは-5~45℃の範囲で、特には0~40℃で塗布される。
【0192】
組成物は、好ましくは周囲温度で同様に硬化される。
【0193】
硬化性組成物は、構造的に粘性のある特性、特に本発明のチキソトロピー剤によって広い範囲内で調整可能な高い降伏点を有する。
【0194】
硬化性組成物は、特に接着剤又はシーラントとして使用するために、高い降伏点を有しペースト状の稠度を有するように配合することができる。そのような組成物は、スパチュラによって、又は適切な装置によって、例えばカートリッジガンやドラムポンプや塗布ロボットによって圧力下で、塗布することができ、本質的に円形又は三角形の断面積を有するビードの形態で特に放出される。塗布装置を引き離すと、これによって非常に短い糸しか生じず(糸引き)、結果として汚染のリスクが低くなり、また組成物は低い粘度を有しており、これは小さい力を掛けることで搬送することができ、その結果特に機械式カートリッジガンなどの手動装置によっても良好な塗布性を有することを意味する。
【0195】
硬化性組成物は、特にシーリングコンパウンド又はコーティングとして使用するために、わずかなチキソトロピー性のみ有するように配合することもできる。そのような組成物は、塗布のために注ぎ出すか、こてによって、特にクシメ鏝、レンガ鏝、スキージ、又はローラーによって塗布することができる。1回の作業では、典型的には0.5~5mm、特には1~3mmの範囲の層の厚さが塗布される。
【0196】
本発明のチキソトロピー剤は、粘度が増加することによって利用可能性が制限されるような組成物中の反応を引き起こさず、また容器内での貯蔵中に分離又は移行する傾向も示さない。結果として、硬化性組成物は非常に良好な貯蔵安定性を有する。組成物が硬化した後、チキソトロピー剤は組成物中に残存したままである。尿素化合物は、硬化した組成物中で充填剤のように機能し、ブロックされたヒドロキシル基を有するポリエーテルは、可塑化、柔軟化効果を発揮し、移行する傾向を有さず、臭気も曇りも生じさせない。
【0197】
硬化性組成物は、多くの用途に適している。
【0198】
接着剤又はシーラント又はコーティングが特に弾性を有する接着剤又はシーラント又はコーティングとしての使用が優先される。
【0199】
この組成物は、接着剤並びに/又は接着及びシーリング用途のシーラントとして、特に建設及び製造業又は自動車組み立てにおいて、特に寄木張りの接着、取り付け可能な部品の接着、空洞のシーリング、アセンブリ、モジュールの接着、車体の接着、窓ガラスの接着、又はジョイントシーリングのために、特に適している。
【0200】
自動車組み立てにおける弾性接着は、例えば、プラスチックカバー、トリムストリップ、フランジ、フェンダー、運転室、又は他の取り付け可能な構成要素などの部品の、自動車の塗装された本体への接着取り付け、又は自動車が特に自動車、トラック、バス、鉄道車両、又は船舶である車体への窓ガラスの接着である。
【0201】
この組成物は、あらゆる種類の接合部、継ぎ目、又は空洞部、特に伸縮継手又は構造部品間の接続接合部などの構造の接合部の弾性シーリングのためのシーラントとして特に適している。柔軟な特性を有するシーラントは、特に建築構造物の伸縮継手のシーリングに特に適している。
【0202】
組成物は、コーティングとして、例えば、床若しくは壁の保護、特にバルコニー、テラス、オープンスペース、橋、駐車場のコーティングとして、又は屋根のシーリングのために、又は例えばウェットセル若しくは台所のタイル若しくはセラミックスラブの下などの、防水のための建物の内装において、又は回収タンク、チャネル、シャフト、サイロ、タンク、若しくは廃水処理システムのシールとして、又はパイプのシームシールや保護コーティングとして、適している。
【0203】
例えば目的に合わなくなった漏れのある屋根の膜や床のカバーのシール若しくはコーティングとして修理の目的で、又は特に反応性の高いスプレーシールの修理用コンパウンドとして、使用することもできる。
【0204】
組成物を用いて接着又は封止又はコーティングすることができる適切な基材は、特には、
- ガラス、ガラスセラミック、コンクリート、モルタル、繊維セメント、特には繊維セメント板、レンガ、タイル、石膏、特には石膏板、又は花崗岩や大理石などの天然石;
- PCC(ポリマー変性セメントモルタル)又はECC(エポキシ樹脂変性セメントモルタル)に基づくコンパウンドの補修又はレベリング;
- 亜鉛メッキ金属やクロムメッキ金属などの表面仕上げされた金属又は合金を含む、アルミニウム、銅、鉄、鋼、非鉄金属などの金属又は合金;
- アスファルト又はビチューメン;
- 皮革、繊維、紙、木、樹脂(フェノール樹脂、メラミン樹脂、又はエポキシ樹脂など)と接着された木材、樹脂/繊維複合材料、又はポリマー複合材料と呼ばれるその他の材料;
- 硬質及び軟質のPVC、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリエステル、ポリアミド、PMMA、ABS、SAN、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、PUR、POM、TPO、PE、PP、EPM、又はEPDMなどのプラスチック、いずれの場合も未処理であるか、例えばプラズマ、コロナ、又は炎により表面処理されたものである;
- 炭素繊維強化プラスチック(CFP)、ガラス繊維強化プラスチック(GFP)、及びシート成形コンパウンド(SMC)などの繊維強化プラスチック;
- 断熱発泡材、特にはEPS、XPS、PUR、PIR、ロックウール、グラスウール、又は発泡ガラス製のもの;
- コーティング又は塗装された基材、特には塗装されたタイル、コーティングされたコンクリート、粉体塗装された金属若しくは合金、又は塗装された金属板;
- 塗料又はワニス、特には自動車のトップコート;
である。
【0205】
必要に応じて、特には物理的及び/若しくは化学的洗浄方法、又は活性化剤若しくはプライマーの塗布によって、塗布前に基材を前処理することができる。
【0206】
2つの同一又は2つの異なる基材を接着及び/又はシールすることが可能である。
【0207】
組成物の塗布及び硬化により、物品が得られる。
【0208】
したがって、本発明は、更に、組成物で接着又は封止又はコーティングされた物品を提供する。
【0209】
この物品は、地上又は地下又はその一部の建築構造、特には橋、屋根、階段、又はファサードであってもよく、或いはこれは、工業製品又は消費者製品、特には窓、パイプ、風力タービンのローターブレード、家電製品、又は輸送手段(特には自動車、バス、トラック、鉄道車両、船舶、航空機、又はヘリコプターなど)、又はそれらの取り付け可能な構成要素であってもよい。
【実施例
【0210】
以降で、より詳しく記載された本発明を明らかにすることを目的とした実施例を提示する。当然、本発明はこれらの記載されている実施例に限定されない。
【0211】
「標準気候条件」(「SCC」)は、23±1℃の温度且つ50±5%の相対湿度を指す。
【0212】
別段の記載がない限り、使用した化学物質はSigma-Aldrich Chemie GmbHからのものであった。
【0213】
ブロックされたヒドロキシル基を有するポリエーテルの調製:
粘度は、サーモスタット付きRheotec RC30コーン-プレート粘度計(コーン径25mm、コーン角1°、コーンチップ-プレート距離0.05mm、せん断速度10s-1)で測定した。
【0214】
赤外線スペクトル(FT-IR)は、ダイヤモンド結晶を有する水平ATR測定ユニットを備えたThermo ScientificのNicolet iS5 FT-IR装置で未希釈フィルムとして測定した。吸収帯は波数(cm-1)で報告されている。
【0215】
H NMRスペクトルは、Bruker Ascend400タイプの分光計で、400.14MHzで測定した。ケミカルシフトδは、テトラメチルシラン(TMS)に対するppmで報告されている。真のカップリングパターンと疑似カップリングパターンは区別されなかった。
【0216】
ポリエーテル-1:平均分子量約800g/molのn-ブタノールを出発物質とするアセチル化PPGモノオール
120.00gのn-ブタノールを出発物質とするポリオキシプロピレンモノオール(Synalox(登録商標)100-20B、平均分子量約750g/mol;DowDuPont Inc.より)、及び18.74gの無水酢酸を、窒素雰囲気下、蒸留アタッチメントを備えた丸底フラスコの中に最初に入れた。次いで、酢酸を蒸留物として回収しながら、130℃で穏やかな窒素流下で反応混合物を撹拌した。続いて、揮発性成分を、80℃及び10mbarの減圧下で反応混合物から除去した。20℃で75mPa・sの粘度を有する無色透明の液体が得られた。
FT-IR:2970、2931、2867、1738、1454、1372、1345、1296、1241、1098、1014、959、925、866、827。
【化5】
【0217】
ポリエーテル-2:1-(イソブトキシ)エトキシ末端基を有し平均分子量が約1,200g/molであるn-ブタノールを出発物質とするポリプロピレングリコール
n-ブタノールを出発物質とする平均分子量1,100g/molのポリオキシプロピレンモノオール(Synalox(登録商標)100-40B、DowDuPont Inc.より)300.00g及びメタンスルホン酸(無水)0.17gを窒素雰囲気下で最初に丸底フラスコに入れた。次いで、28.16gのイソブチルビニルエーテル(0.1%水酸化カリウムで安定化)を、反応混合物の温度が70℃を超えないように撹拌しながらゆっくりと滴下し、次いで、IR及びGC分光法によってヒドロキシル基が検出されなくなるまで混合物を窒素雰囲気下で、70℃で撹拌した。続いて、0.07gのナトリウムメトキシドを添加して撹拌し、続いて0.06gの酢酸を添加した。その後、揮発性成分を、最初に80℃で5mbarの減圧で、次いで100℃及び2mbarで、反応混合物から除去した。20℃で205mPa・sの粘度を有する透明な黄色がかった液体が得られた。
FT-IR:2969、2931、2868、1455、1372、1344、1296、1257、1099、1012、924、906、867、831。
【0218】
ポリエーテル-3:平均分子量が約1,100g/molのジアセチル化PPGジオール
80.00gのポリオキシプロピレンジオール(Voranol(登録商標)P1010、OH価110mg KOH/g;DowDuPont Inc.より)及び18.74gの無水酢酸をポリエーテル-1について説明した通りに変換した。20℃で145mPa・sの粘度を有する無色透明の液体が得られた。
【0219】
チキソトロピー剤の調製:
チキソトロピー剤T-1(本発明):
真空ミキサーに最初に300gのポリエーテル-1と48gのメチレンジフェニル4,4’-ジイソシアネート(Desmodur(登録商標)44MCL、Covestro AGより)を入れ、わずかに加熱した後、激しく撹拌しながら27gのn-ブチルアミンをゆっくりと滴下した。得られたペーストを、冷却しながら減圧下で更に1時間撹拌した。白色の微粉化された均質な塗り広げ可能なペーストが得られた。
【0220】
チキソトロピー剤T-2(本発明):
ポリエーテル-1の代わりに300gのポリエーテル-2を使用したことを除いては、チキソトロピー剤T-1について説明した通りに調製した。黄色味を帯びた微粉化された均質な塗り広げ可能なペーストが得られた。
【0221】
チキソトロピー剤T-3(本発明):
ポリエーテル-1の代わりに300gのポリエーテル-3を使用したことを除いては、チキソトロピー剤T-1について説明した通りに調製した。白色の微粉化された均質な塗り広げ可能なペーストが得られた。
【0222】
チキソトロピー剤T-4(比較例):
ポリエーテル-1の代わりに300gのフタル酸ジイソデシル(Palatinol(登録商標)10-P、BASF SEより)を使用したことを除いては、チキソトロピー剤T-1について説明した通りに調製した。白色の微粉化された均質な塗り広げ可能なペーストが得られた。
【0223】
チキソトロピー剤T-5(比較例):
ポリエーテル-1の代わりに300gのジイソノニルシクロヘキサン-1,2-ジカルボキシレート(Hexamoll(登録商標)DINCH、BASF SEより)を使用したことを除いては、チキソトロピー剤T-1について説明した通りに調製した。白色の微粉化された均質な塗り広げ可能なペーストが得られた。
【0224】
チキソトロピー剤T-6(比較例):
ポリエーテル-1の代わりに300gのアジピン酸ジ(2-エチルヘキシル)(Plastomoll(登録商標)DOA、BASF SEより)を使用したことを除いては、チキソトロピー剤T-1について説明した通りに調製した。白色の微粉化された均質な塗り広げ可能なペーストが得られた。
【0225】
いくつかのチキソトロピー剤を、耐垂れ性と絞り出しに要する力について以下の通りに試験した:
耐垂れ性は、標準気候条件下で、内径10mmのカートリッジチップによって、垂直の段ボールの表面上に約8mlのペーストを塗布し、水平方向に約50mm突き出た直径約20mmのノーズを得ることにより決定した。3時間後、チップで測定された、水平位置からの垂れたノーズの程度を決定した。垂れが2mm未満を「よい」、2~5mmを「ふつう」、5mm超を「わるい」と評価した。
【0226】
絞り出しに要する力(5mm;3mm;2mm)は、ペーストを標準のアルミニウムカートリッジの中に入れ、内径5mm又は3mm又は2mmのノズルをねじ込んで取り付け、絞り出し装置(Zwick/Roell Z005)を使用し、60mm/分の絞り出し速度でそれぞれのノズルを通してチキソトロピー剤を絞り出すために費やされた力を測定することにより決定した。報告された値は、22mm、24mm、26mm、及び28mmの絞り出し距離の後に測定された力の平均である。
【0227】
結果を表1に示す。
【0228】
【表1】
【0229】
硬化性(一液型)組成物の製造:
ポリマーP1:
590gのポリオキシプロピレンジオール(Acclaim(登録商標)4200、CovestroAGより;OH価28.5mg KOH/g)、1180gのポリオキシプロピレンポリオキシエチレントリオール(Caradol(登録商標)MD34-02、Shell Chemicals Co.より;OH価35.0mg KOH/g)、及び230gのイソホロンジイソシアネート(Vestanat(登録商標)IPDI、Evonik Industries AGより)を公知の方法で、80℃で反応させることで、室温で液体であり遊離イソシアネート基の含有量が2.1重量%であるイソシアネート基含有ポリマーを得た。
【0230】
ポリマーP2:
400gのポリオキシプロピレンジオール(Acclaim(登録商標)4200、CovestroAGより;OH価28.5mg KOH/g)及び52gのジフェニルメタン4,4’-ジイソシアネート(Desmodur(登録商標)44MCL、Covestro AGより)を公知の方法で、80℃で反応させることで、室温で液体であり遊離イソシアネート基の含有量が1.85重量%であるNCO-末端ポリマーを得た。
【0231】
ポリマーP3:
3080gのポリオキシプロピレンジオール(Acclaim(登録商標)4200、Covestro AGより;OH価28.5mg KOH/g)、1540gのポリオキシプロピレンポリオキシエチレントリオール(Caradol(登録商標)MD34-02、Shell Chemicals Co.より;OH価35.0mg KOH/g)、及び385gのトリレンジイソシアネート(Desmodur(登録商標)T80P、Covestro AG)を公知の方法で、80℃で反応させることで、室温で液体であり遊離イソシアネート基の含有量が1.5重量%であるNCO-末端ポリウレタンポリマーを得た。
【0232】
アルジミン-1:N,N’-ビス(2,2-ジメチル-3-ラウロイルオキシプロピリデン)-3-アミノメチル-3,5,5-トリメチルシクロヘキシルアミン
598g(2.1mol)の2,2-ジメチル-3-ラウロイルオキシプロパナールを最初に窒素雰囲気下で丸底フラスコの中に入れた。次いで、170.3g(1mol)の3-アミノメチル-3,5,5-トリメチルシクロヘキシルアミン(Vestamin(登録商標) IPD、Evonik Industries AG)をよく撹拌しながら添加し、次いで揮発性成分を80℃及び10mbarの減圧下で除去した。アミン含有量が2.73mmol N/gである732gの無色の液体が得られ、これは367g/molの計算されたアルジミン当量に相当する。
【0233】
組成物Z1及びZ2
各組成物について、表2で指定した成分を、遠心ミキサー(SpeedMixer(商標)DAC150、FlackTek Inc.)を使用して、水分を排除しながら3000rpmで1分間指定された量(重量部)で混合した。
【0234】
各組成物の耐垂れ性は、標準気候条件下で、内径10mmのカートリッジチップによって、垂直の段ボールの表面上に約8mlの組成物を塗布し、水平方向に約50mm突き出た直径約20mmのノーズを得ることにより決定した。標準気候条件下で硬化した後、チップで測定された、水平位置から垂れたノーズの程度を決定した。垂れが15mm未満を「よい」、15~30mmを「ふつう」、30mm超を「わるい」と評価した。
【0235】
結果は表2に報告されている。
【0236】
「(Ref.)」と表示された組成物は比較例である。
【0237】
【表2】
【0238】
組成物Z3~Z6
各組成物について、表3で指定した成分を、遠心ミキサー(SpeedMixer(商標)DAC 150、FlackTek Inc.)により、水分を排除しながら3000rpmで1分間混合した。
【0239】
各組成物について、段ボール上のしみの形成を、可塑剤の移行の尺度として決定した。この目的のために、各組成物を、直径15mm及び高さ4mmの丸い底面積を有するように段ボール片に塗布し、標準気候条件下で7日間保管した。その後、各組成物の周囲で、段ボールに暗い楕円形の染みが形成された。その寸法(高さ及び幅)を測定し、表3に移行として報告した。
【0240】
「(Ref.)」と表示された組成物は比較例である。
【0241】
【表3】
【0242】
組成物Z7~Z9
各組成物について、表4で指定した成分を、遠心ミキサー(SpeedMixer(商標)DAC 150、FlackTek Inc.)により、水分を排除しながら3000rpmで1分間指定された量で混合し、水分を排除した状態で保管した。
【0243】
各組成物を以下の通りに試験した:
耐垂れ性は、組成物Z1について記載した通りに決定した。更に、「ノーズ」の塗布後に塗布ツールを引き抜いた際に長い糸が引いたか否かについても評価を行った。糸引きが起こらず10mm未満の短い先端である場合に、糸引きを「なし」と評価した。
【0244】
オープンタイムの尺度として、スキンタイム(ST)を決定した。この目的のために、数グラムの組成物を約2mmの層厚さで段ボールに塗布し、標準気候条件下、組成物の表面を穏やかに叩くために使用されるLDPEピペット上にもはや残留物が残らない最初の時間を決定した。
【0245】
ショアA硬度は、標準気候条件下で14日間硬化した試験片でDIN53505により決定した。
【0246】
機械的特性を決定するために、組成物をPTFEコーティングされたフィルムに塗布して厚さ2mmのフィルムを得てから、このフィルムを標準気候条件下で14日間保管し、30mmのバー長さを有する長さ75mmのいくつかのダンベルと幅4mmバーをフィルムから打ち抜き、これらを引張強さ(破壊力)、破断点伸び、弾性率5%(0.5%~5%の伸び)、及び弾性率25%(0.5%~25%の伸び)について200mm/分のひずみ速度でDIN EN53504に従って試験した。
【0247】
製造されたフィルムの外観を視覚的に評価した。「よい」は、膨れのない非粘着性のフィルムを表すために使用した。
【0248】
臭気は、製造したてのフィルムから2cmの距離で、鼻で匂いを嗅ぐことによって評価した。「なし」は、臭いが知覚されなかったことを意味する。
【0249】
結果を表4に報告する。
【0250】
【表4】
本明細書に開示される発明は以下の態様を含む:
[1]
(i)少なくとも一種のイソシアネートと少なくとも一種のアミンとの反応からの少なくとも一種の尿素化合物、及び
(ii)ブロックされたヒドロキシル基を有しウレタン基を含まない少なくとも一種のポリエーテル
を含む、硬化性組成物の降伏点を増加させるためのチキソトロピー剤
[2]前記尿素化合物が、下記の式(I)を有することを特徴とする、上記[1]に記載のチキソトロピー剤:
【化6】
(式中、Eは1~12個の炭素原子を有するアルキル又はシクロアルキル基であり、
Qは6~15個の炭素原子を有する二価のヒドロカルビル基である)。
[3]前記チキソトロピー剤が、室温で固い塗り広げ可能なペーストの形態をとることを特徴とする、上記[1]又は[2]に記載のチキソトロピー剤。
[4]前記尿素化合物が5重量%~25重量%、及びブロックされたヒドロキシル基を有する前記ポリエーテルが50重量%~95重量%存在することを特徴とする、上記[1]~[3]のいずれか一つに記載のチキソトロピー剤。
[5]ブロックされたヒドロキシル基を有する前記ポリエーテルが、20℃で30~500mPa・sの範囲の粘度を有し、前記粘度は、せん断速度10s -1 で、コーン径25mm、コーン角1°、コーンチップ-プレート間距離0.05mmのコーン-プレート粘度計を用いて決定されることを特徴とする、上記[1]~[4]のいずれか一つに記載のチキソトロピー剤。
[6]前記ポリエーテルが1分子あたり平均1~3個のブロックされたヒドロキシル基を有することを特徴とする、上記[1]~[5]のいずれか一つに記載のチキソトロピー剤。
[7]前記ブロックされたヒドロキシル基が、アセタール、エステル、アセトエステル、及びカーボネート基からなる群から選択されることを特徴とする、上記[1]~[6]のいずれか一つに記載のチキソトロピー剤。
[8]前記ポリエーテル中の繰り返し単位の70重量%~100重量%が1,2-プロピレンオキシ基からなり、前記ポリエーテル中の繰り返し単位の0重量%~30重量%が1,2-エチレンオキシ基からなることを特徴とする、上記[1]~[7]のいずれか一つに記載のチキソトロピー剤。
[9]ブロックされたヒドロキシル基を有する前記ポリエーテルが、移動相としてのテトラヒドロフラン、屈折率検出器、及び200g/molからの評価を用いた、標準としてのポリスチレンに対するゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によって決定される、600~2,500g/molの範囲の平均分子量M を有することを特徴とする、上記[1]~[8]のいずれか一つに記載のチキソトロピー剤。
[10]ブロックされたヒドロキシル基を有する前記ポリエーテルが、以下のものからなる群から選択される少なくとも一種のヒドロキシ官能性ポリエーテル由来であることを特徴とする、上記[1]~[9]のいずれか一つに記載のチキソトロピー剤:
- アルコールを出発物質とする、特にn-ブタノールを出発物質とする、25~90mg KOH/gの範囲のOH価を有するポリオキシプロピレンモノオール、
- 45~155mg KOH/gの範囲のOH価を有するポリオキシプロピレンジオール、及び
- トリメチロールプロパン又は特にグリセロールを出発物質とする、任意選択的にエチレンオキシド末端の、2.2~3の範囲の平均OH官能基数と90~230mg KOH/gの範囲のOH価とを有するポリオキシプロピレントリオール。
[11]前記イソシアネートと前記アミンとの間の前記反応が、ブロックされたヒドロキシル基を有する前記ポリエーテル中で行われることを特徴とする、上記[1]~[10]のいずれか一つに記載のチキソトロピー剤の調製。
[12]硬化性組成物の前記降伏点を増加させるための、前記組成物中での上記[1]~[10]のいずれか一つに記載のチキソトロピー剤の使用。
[13]上記[1]~[10]のいずれか一つに記載のチキソトロピー剤と、イソシアネート及び/又はシラン基を含む少なくとも一種のポリマーとを含有する硬化性組成物。
[14]一成分型湿気硬化性組成物であることを特徴とする、上記[13]に記載の硬化性組成物。
[15]上記[13]又は[14]に記載の硬化性組成物を用いて接着、封止、又はコーティングされた物品。