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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-08
(45)【発行日】2023-03-16
(54)【発明の名称】電界検出デバイス及び電界検出装置
(51)【国際特許分類】
   G01R 29/08 20060101AFI20230309BHJP
   H01Q 13/08 20060101ALI20230309BHJP
   H01Q 21/06 20060101ALI20230309BHJP
【FI】
G01R29/08 F
H01Q13/08
H01Q21/06
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2019120210
(22)【出願日】2019-06-27
(65)【公開番号】P2020160040
(43)【公開日】2020-10-01
【審査請求日】2022-01-28
(31)【優先権主張番号】P 2019053978
(32)【優先日】2019-03-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】304026696
【氏名又は名称】国立大学法人三重大学
(73)【特許権者】
【識別番号】301021533
【氏名又は名称】国立研究開発法人産業技術総合研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】000147350
【氏名又は名称】株式会社精工技研
(74)【代理人】
【識別番号】100178906
【弁理士】
【氏名又は名称】近藤 充和
(72)【発明者】
【氏名】村田 博司
(72)【発明者】
【氏名】黒川 悟
(72)【発明者】
【氏名】鳥羽 良和
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 正博
【審査官】永井 皓喜
(56)【参考文献】
【文献】特開平7-294575(JP,A)
【文献】特開2002-181861(JP,A)
【文献】特開2000-97980(JP,A)
【文献】特開平4-174369(JP,A)
【文献】特開2002-168896(JP,A)
【文献】特開平9-51307(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0284174(US,A1)
【文献】特開2010-261755(JP,A)
【文献】特開2006-106365(JP,A)
【文献】特開2001-119330(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0002239(US,A1)
【文献】米国特許第5661494(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 29/08
H01Q 13/08
H01Q 21/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気光学効果を有する材料からなる基板と、前記基板上に形成された互いに交差する第1及び第2の光導波路と、前記第1の光導波路及び前記第2の光導波路に電界を印加するために設けた4つの変調電極と、前記基板上に配置された4つのパッチアンテナとを有し、
前記4つのパッチアンテナは、長方形の4つの頂点付近にそれぞれ右回りに順に配置された第1、第2、第3及び第4のパッチアンテナからなり、
前記第1の光導波路は前記第1及び第2のパッチアンテナ間と前記第3及び第4のパッチアンテナ間を通過し、前記第2の光導波路は前記第1及び第4のパッチアンテナ間と前記第2及び第3のパッチアンテナ間を通過するように配置され、
前記4つの変調電極は、前記第1の光導波路に沿って設けられた、前記第1及び第2のパッチアンテナから給電される第1の変調電極と、前記第4及び第3のパッチアンテナから給電される第2の変調電極と、前記第2の光導波路に沿って設けられた、前記第1及び第4のパッチアンテナから給電される第3の変調電極と、前記第2及び第3のパッチアンテナから給電される第4の変調電極とからなり、
前記第1、第2のパッチアンテナ間に誘起される電圧信号と前記第3、第4のパッチアンテナ間に誘起される電圧信号により前記第1の光導波路を伝搬する光波が変調され、前記第1、第4のパッチアンテナ間に誘起される電圧信号と前記第2、第3のパッチアンテナ間に誘起される電圧信号により前記第2の光導波路を伝搬する光波が変調されるように構成されたことを特徴とする電界検出デバイス。
【請求項2】
前記4つの変調電極は、それぞれ、前記4つのパッチアンテナに誘起される電圧信号の周波数において共振するように構成されたことを特徴とする請求項1に記載の電界検出デバイス。
【請求項3】
前記4つの変調電極は、それぞれ、前記第1の光導波路又は第2の光導波路に沿って配置され一定の間隔で互いに対向する1組の帯状の電極部を有し、前記1組の帯状の電極部の両端が互いに短絡又は開放されることにより共振器を構成したことを特徴とする請求項2に記載の電界検出デバイス。
【請求項4】
前記第1の変調電極により変調された光波が前記第2の変調電極を通過することによりその変調度が増大し、前記第3の変調電極により変調された光波が前記第4の変調電極を通過することによりその変調度が増大するように構成されたことを特徴とする請求項3に記載の電界検出デバイス。
【請求項5】
前記第2の変調電極の前記1組の帯状の電極部の前記第1の光導波路の幅方向に対する相対位置が前記第1の変調電極の前記1組の帯状の電極部と異なることにより、前記第2の変調電極により前記第1の光導波路に印加される電界の方向が前記第1の変調電極により前記第1の光導波路に印加される電界の方向とは逆となり、
前記第4の変調電極の前記1組の帯状の電極部の前記第2の光導波路の幅方向に対する相対位置が前記第3の変調電極の前記1組の帯状の電極部と異なることにより、前記第4の変調電極により前記第2の光導波路に印加される電界の方向が前記第3の変調電極により前記第2の光導波路に印加される電界の方向とは逆となるように構成されたことを特徴とする請求項4に記載の電界検出デバイス。
【請求項6】
前記基板の前記第2の変調電極により電圧信号が印加される領域及び前記第4の変調電極により電圧信号が印加される領域は、前記第1の変調電極により電圧信号が印加される領域及び前記第3の変調電極により電圧信号が印加される領域に対して分極方向が反転していることを特徴とする請求項4に記載の電界検出デバイス。
【請求項7】
前記第3及び第4のパッチアンテナから前記第2の変調電極に給電するための給電線路が前記第1及び第2のパッチアンテナから前記第1の変調電極に給電するための給電線路とは異なることにより、前記第2の変調電極により前記第1の光導波路に印加される電界の方向が前記第1の変調電極により前記第1の光導波路に印加される電界の方向とは逆となり、
前記第2及び第3のパッチアンテナから前記第4の変調電極に給電するための給電線路が前記第1及び第4のパッチアンテナから前記第3の変調電極に給電するための給電線路とは異なることにより、前記第4の変調電極により前記第2の光導波路に印加される電界の方向が前記第3の変調電極により前記第2の光導波路に印加される電界の方向とは逆となるように構成されたことを特徴とする請求項4に記載の電界検出デバイス。
【請求項8】
前記4つのパッチアンテナはそれぞれ方形パッチアンテナであることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載の電界検出デバイス。
【請求項9】
前記4つの方形パッチアンテナは、それぞれの方形パッチアンテナに接続された変調電極に給電するための給電線路との間のインピーダンス整合をとるために、それぞれの方形アンテナに接続された前記給電線路の両側に切り込み部を有することを特徴とする請求項8に記載の電界検出デバイス。
【請求項10】
前記4つの方形パッチアンテナは、それぞれ、前記切り込み部を有する辺と対向する辺の前記切り込み部と対称な位置に、前記切り込み部と略同一形状の切り込み部を有することを特徴とする請求項9に記載の電界検出デバイス。
【請求項11】
前記第1及び第2の光導波路は互いに70度~110を成す角度で交差していることを特徴とする請求項1乃至10のいずれか1項に記載の電界検出デバイス。
【請求項12】
前記第1の光導波路を伝搬する光波の波長と、前記第2の光導波路を伝搬する光波の波長は、互いに異なることを特徴とする請求項1乃至10のいずれか1項に記載の電界検出デバイス。
【請求項13】
前記基板の平面形状は略4角形であり、
前記第1及び第2の光導波路はそれぞれ曲線状の光導波路を有し、
前記第1及び第2の光導波路の光入射端面は前記4角形の1辺に形成され、前記第1及び第2の光導波路の光出射端面は前記光入射端面と対向する前記4角形の1辺に形成されていることを特徴とする請求項1乃至12のいずれか1項に記載の電界検出デバイス。
【請求項14】
請求項1乃至13のいずれか1項に記載の電界検出デバイスと、
前記第1及び第2の光導波路をそれぞれ伝搬する光波を供給するための光源と、
前記第1及び第2の光導波路をそれぞれ出射した光波を電気信号に変換し、前記電気信号より、前記第1、第2パッチアンテナ間及び前記第4、第3パッチアンテナ間の電界信号に対応する信号と、前記第1、第4パッチアンテナ間及び前記第2、第3パッチアンテナ間の電界信号に対応する信号とを出力する処理装置と、
を備えることを特徴とする電界検出装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電磁波などの電界を検出するデバイス及び装置に関し、特に電磁波の信号を光信号に変換して検出する電界検出デバイス及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
EMC分野における電磁波ノイズの検出やイミュニティ試験等における電磁波強度の測定、放送用又は通信用の送信アンテナから放出される電磁波の監視等において、電磁波の電界強度や位相を任意の場所で正確に測定することが必要とされる。従来、このような目的で、電界を検出するための電界検出デバイスとして、光ファイバにより入力された入力光をその場の電界強度に応じて変調して光ファイバにより出力する光電界センサが使用されている。その変調された出力光をO/E変換器を用いて電気信号に変換し、その電気信号により電界強度を測定するものである。光電界センサや光ファイバが主として非金属材料で構成されるので、測定する電磁波や電磁ノイズ、落雷などによる誘導の影響を受けないで、電磁波の強度や位相特性を正確に測定することができるという特徴がある。
【0003】
通常、光電界センサは、電気光学効果を有する材料から作られた基板、例えばニオブ酸リチウム結晶基板上に、光導波路と、その光導波路近傍に設置された変調電極と、アンテナとを備え、電磁波等の電界によりアンテナに誘起された電圧を変調電極に印加して光導波路を通過する光波の位相を変調することを動作原理としている。この場合、アンテナは基板上に一体として形成されるか、又は基板の外部に設置される。このような光電界センサの従来例としては、高周波数化に対応した光電界センサが特許文献1に、3軸方向の電界検出を可能にした光電界センサが特許文献2に記載されている。また、光電界センサを用いた電磁波の測定システムの例が特許文献3及び4に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平11-352165号公報
【文献】特開2007-78633号公報
【文献】特開2014-2005号公報
【文献】特開2017-9445号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
電磁波の電界検出においては、その電磁波の最大の電界強度や偏波状態を把握することが必要とされる場合が多い。しかし、従来の光電界センサは、通常、1つのデバイスでは1つの方向の電界成分しか検出できないので、上記の目的に対しては、そのデバイスに設置されたアンテナの向きを変えながら測定する必要があり、最大電界強度や偏波状態の測定のためには複雑な操作が必要とされた。このため任意の被測定点に設置して偏波の状態を監視するという目的には使用できなかった。
一方、特許文献2に記載の光電界センサは、3つの異なる方位のアンテナを有する3個の光電界センサを組み合わせ、3軸方向の電界成分を検出可能としたものである。しかし、3つのデバイスを使用するので形状が大きくなり、任意の被測定点での電磁波を測定することが難しいことや、厳密には、それぞれの電界成分の検出位置が異なってしまうこと、形状を小型化すると十分な感度が得られないという問題があった。
【0006】
任意の被測定点では、直交する2つの軸方向の電界成分が得られれば、その点の電磁波の電界は算出可能であるので、1つのデバイスで同時に直交する2軸方向の電界の測定が可能で、高感度化が可能な電界検出デバイスが望まれていた。
【0007】
本発明の目的は、上記の課題を解決し、小型で直交する2軸方向の電界成分が測定可能で、かつ、高感度化が可能な電界検出デバイス及びそれを用いた電界検出装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、第1の観点では、本発明は、電気光学効果を有する材料からなる基板と、前記基板上に形成された互いに交差する第1及び第2の光導波路と、前記第1の光導波路及び前記第2の光導波路に電界を印加するために設けた4つの変調電極と、前記基板上に配置された4つのパッチアンテナとを有し、前記4つのパッチアンテナは、長方形の4つの頂点付近にそれぞれ右回りに順に配置された第1、第2、第3及び第4のパッチアンテナからなり、前記第1の光導波路は前記第1及び第2のパッチアンテナ間と前記第3及び第4のパッチアンテナ間を通過し、前記第2の光導波路は前記第1及び第4のパッチアンテナ間と前記第2及び第3のパッチアンテナ間を通過するように配置され、前記4つの変調電極は、前記第1の光導波路に沿って設けられた、前記第1及び第2のパッチアンテナから給電される第1の変調電極と、前記第4及び第3のパッチアンテナから給電される第2の変調電極と、前記第2の光導波路に沿って設けられた、前記第1及び第4のパッチアンテナから給電される第3の変調電極と、前記第2及び第3のパッチアンテナから給電される第4の変調電極とからなり、前記第1、第2のパッチアンテナ間に誘起される電圧信号と前記第3、第4のパッチアンテナ間に誘起される電圧信号により前記第1の光導波路を伝搬する光波が変調され、前記第1、第4のパッチアンテナ間に誘起される電圧信号と前記第2、第3のパッチアンテナ間に誘起される電圧信号により前記第2の光導波路を伝搬する光波が変調されるように構成されたことを特徴とする電界検出デバイスを提供する。
【0009】
上記のように、本発明においては、長方形の4つの頂点付近にそれぞれ右回りに順に配置された第1、第2、第3及び第4のパッチアンテナが測定する電磁波の電界を受信する。先ず、第1及び第2のパッチアンテナ間に誘起される電圧が第1の変調電極に印加され、第4及び第3のパッチアンテナ間に誘起される電圧が第2の変調電極に印加される。第1及び第2の変調電極により第1の光導波路を伝搬する光波が変調される。第1及び第2のパッチアンテナ間を結ぶ向きと第3及び第4のパッチアンテナ間を結ぶ向きは同じであり、これをY方向とすると、検出する電磁波のY方向の電界成分により第1の光導波路を伝搬する光波の位相が変調されることになる。
同様に、第1及び第4のパッチアンテナ間に誘起される電圧が第3の変調電極に印加され、第2及び第3のパッチアンテナ間に誘起される電圧が第4の変調電極に印加される。第3及び第4の変調電極により第2の光導波路を伝搬する光波が変調される。第1及び第4のパッチアンテナ間を結ぶ向きと第2及び第3のパッチアンテナ間を結ぶ向きは共にY方向に直交する向きであり、これをX方向とすると、上記の電磁波のX方向の電界成分により第2の光導波路を伝搬する光波の位相が変調されることになる。
【0010】
この結果、第1及び第2の光導波路を出力したそれぞれの光波の位相変化を検出すれば、X方向、及びY方向の電界成分を分離して測定することができる。ここで、位相変調された光波の位相変化量は、参照光と干渉させた後、O/E変換器により電気信号に変換することにより、又は、光スペクトラムアナライザにより変調光成分のサイドバンドの大きさを測定すること等により得ることができる。
【0011】
なお、第1及び第2の光導波路によりそれぞれ分岐干渉型光導波路を構成し、それぞれの変調電極と組み合わせてマッハツェンダ型変調器を構成すれば、電磁波のX方向及びY方向の電界成分によりそれぞれ強度変調された出力光が得られる。この場合、第1及び第2変調電極、又は第3及び第4の変調電極に対してそれぞれ独立して1つの分岐干渉型光導波路を設けてもよく、又は1つの分岐干渉型光導波路に対して第1及び第2変調電極が配置され、1つの分岐干渉型光導波路に対して第3及び第4の変調電極が配置されるように構成してもよい。
【0012】
また、本発明に用いる電気光学効果を有する基板の代表的なものは、ニオブ酸リチウム結晶基板であり、この場合、Z板のみでなくX板も用いることができる。いずれの基板においても、Z軸方向に電界が印加されるように変調電極を構成する。
【0013】
本発明においては、第1の光導波路を伝搬する光波に対して、第1及び第2の2つの変調電極により変調電圧が印加され、第2の光導波路を伝搬する光波に対して、第3及び第4の2つの変調電極により変調電圧が印加される。一般的に、光導波路を伝搬する光波の変調効率は、変調電圧が印加される部分の長さに依存して増加する。一方、周波数が高い場合、周波数が増加するほど、電極容量の影響が大きくなることや、電極長を光信号が伝搬する時間より電圧信号の位相変化が速いと変調度が低下することから、有効な変調を行うためには1つの変調電極の長さを短くする必要がある。本発明では、変調電極は2箇所あるので、従来の1つの変調電極で変調する場合に比べて、高効率化が可能となり、電界検出の高感度化が可能となる。このように、本発明においては、4つのパッチアンテナの従来にない新規な配置により、X方向、Y方向のそれぞれ2つの変調電極に電圧を誘起でき、効率的な変調を行うことができる。また、1つの基板上で構成できるので小型化が可能である。
なお、周波数が低い場合は、2つの変調電極に同相で変調電圧を印加すればよいが、周波数が高い場合、最初の変調電極で変調された光信号が2番目の変調電極の光導波路部分を伝搬中に逆極性の電圧を印加されると変調が打ち消されてしまうため、最初の変調電極で変調された光信号の光導波路中の伝搬に合わせて、2番目の変調電極で印加する変調電圧の位相を整合させる必要がある。
【0014】
本発明に用いる4つのパッチアンテナは、測定する周波数の電磁波に対して受信感度を有し、変調電圧を発生させるものであればよい。例えば、方形パッチアンテナや円形パッチアンテナ等であり、その形状は周波数帯や必要な変調電圧に基づいて設計すればよい。この場合、4つのパッチアンテナはすべて同一の形状である必要はないが、X方向及びY方向の同じ電界強度に対して同じ変調電圧を誘起するものが望ましい。また、4つのパッチアンテナは、X方向及びY方向においてそれぞれ互いに対向するように、長方形の頂点付近に配置される。パッチアンテナ間の距離が等しくなるように4つのパッチアンテナを正方形の頂点付近に配置し、さらに4つのパッチアンテナを同一形状とした場合、設計が最も容易となる。なお、X方向、Y方向に対して検出感度が異なっていても、その感度比が一定であれば、電界を検出した後に補正が可能である。
【0015】
第2の観点では、本発明は、前記第1の観点の電界検出デバイスにおいて、前記4つの変調電極は、それぞれ、前記4つのパッチアンテナに誘起される電圧信号の周波数において共振するように構成されたことを特徴とする。
検出する周波数を高くする場合、上述のように変調電極の長さを短くするに従って変調効率は低下する。本観点の発明では、このような高周波帯においても変調効率を増加させるため、変調電極を共振型電極構造として印加する電圧を増大させるものである。このような共振型の変調電極の形態は従来のマイクロ波の平面回路の共振器構造を適用可能であり、光導波路に沿って設置される変調電極部分に共振によって増大した電圧が誘起されるように構成すればよい。
【0016】
第3の観点では、本発明は、前記第2の観点の電界検出デバイスにおいて、前記4つの変調電極は、それぞれ、前記第1の光導波路又は第2の光導波路に沿って配置され一定の間隔で互いに対向する1組の帯状の電極部を有し、前記1組の帯状の電極部の両端が互いに短絡又は開放されることにより共振器を構成したことを特徴とする。
本観点の発明における1組の帯状の電極部は、一般的な変調電極として用いられており、ニオブ酸リチウム結晶基板においてZ板の場合は一方の帯状の電極部が光導波路上に、他方が一定の間隔で対向して配置される。X板の場合は、それらの2つの帯状の電極部は光導波路を挟んで対向して配置される。このような電極部を用いて共振型電極を構成するには、その2つの帯状の電極部をマイクロ波線路と考えてその長さを周波数に応じて選択し、両端を短絡又は開放することにより反射端とし、共振させることができる。いわゆる定在波共振線路電極を構成するものである。
【0017】
第4の観点では、本発明は、前記第3の観点の電界検出デバイスにおいて、前記第1の変調電極により変調された光波が前記第2の変調電極を通過することによりその変調度が増大し、前記第3の変調電極により変調された光波が前記第4の変調電極を通過することによりその変調度が増大するように構成されたことを特徴とする。
【0018】
電磁波の周波数が高い場合、本発明において、第1及び第2の光導波路にそれぞれ設置する2つの変調電極により効率的に変調を行うためには、最初の変調電極で変調された光信号の光導波路中の伝搬に合わせて、2番目の変調電極で印加する変調電圧の位相を整合させる必要がある。例えば、ニオブ酸リチウム結晶基板において屈折率を2.2とする場合、光導波路を伝搬する光波の速度は1.36×1011mm/秒程度となり、変調周波数を30GHzとすると、光導波路中の変調波の波長は4.55mm程度となる。そこで、第1又は第3の変調電極で変調されて生じた光信号がそれぞれ第2又は第4の変調電極に到達するとき、その光信号の位相に合わせて第2又は第4の変調電極に印加する電圧信号の位相を合わせれば変調が加算され、変調度が増大する。
【0019】
第5の観点では、本発明は、前記第4の観点の電界検出デバイスにおいて、前記第2の変調電極の前記1組の帯状の電極部の前記第1の光導波路の幅方向に対する相対位置が前記第1の変調電極の前記1組の帯状の電極部と異なることにより、前記第2の変調電極により前記第1の光導波路に印加される電界の方向が前記第1の変調電極により前記第1の光導波路に印加される電界の方向とは逆となり、前記第4の変調電極の前記1組の帯状の電極部の前記第2の光導波路の幅方向に対する相対位置が前記第3の変調電極の前記1組の帯状の電極部と異なることにより、前記第4の変調電極により前記第2の光導波路に印加される電界の方向が前記第3の変調電極により前記第2の光導波路に印加される電界の方向とは逆となるように構成されたことを特徴とする。
【0020】
本観点の発明では、第1又は第3の変調電極で変調されて生じた光信号の位相がそれぞれ第2又は第4の変調電極の部分で反転している場合、第2又は第4の変調電極に印加する電圧信号の位相を反転させることにより変調を加算することができる。この目的のためには、例えば、ニオブ酸リチウム結晶基板のZ板において、第1の変調電極において第1のパッチアンテナからの給電線に接続された帯状の電極部を光導波路上に配置する場合、第2の変調電極において、第1の光導波路の反対側にある第3のパッチアンテナからの給電線に接続された帯状の電極部を光導波路上に配置すればよい。本観点の発明は、第1と第2の変調電極の中心間隔、及び第3と第4の変調電極の中心間隔が光導波路中の変調波の波長の1/2の奇数倍に近いときに有効である。なお、上記間隔が光導波路中の変調波の波長の1/2倍の奇数倍よりも偶数倍に近いときは電圧信号の位相は反転の必要はない。
【0021】
第6の観点では、本発明は、前記第4の観点の電界検出デバイスにおいて、前記基板の前記第2の変調電極により電圧信号が印加される領域及び前記第4の変調電極により電圧信号が印加される領域は、前記第1の変調電極により電圧信号が印加される領域及び前記第3の変調電極により電圧信号が印加される領域に対して分極方向が反転していることを特徴とする。本観点の発明は、電気光学効果を有する材料からなる基板、例えばニオブ酸リチウム結晶基板において、その分極方向を反転させることによって、同じ電界を印加しても生じる屈折率変化は正負が逆となることを利用するものである。すなわち、光導波路に対する帯状の電極部の配置が同じであっても、その部分の基板の分極が反転されていれば、光波に対して逆極性の位相変化を与えることになり、印加する電圧信号の位相を反転するのと同じ効果を得ることができる。なお、ニオブ酸リチウム結晶基板における分極反転領域は、その領域に基板のZ軸方向の高電界を印加することにより形成することができる。
【0022】
第7の観点では、本発明は、前記第4の観点の電界検出デバイスにおいて、前記第3及び第4のパッチアンテナから前記第2の変調電極に給電するための給電線路が前記第1及び第2のパッチアンテナから前記第1の変調電極に給電するための給電線路とは異なることにより、前記第2の変調電極により前記第1の光導波路に印加される電界の方向が前記第1の変調電極により前記第1の光導波路に印加される電界の方向とは逆となり、前記第2及び第3のパッチアンテナから前記第4の変調電極に給電するための給電線路が前記第1及び第4のパッチアンテナから前記第3の変調電極に給電するための給電線路とは異なることにより、前記第4の変調電極により前記第2の光導波路に印加される電界の方向が前記第3の変調電極により前記第2の光導波路に印加される電界の方向とは逆となるように構成されたことを特徴とする。
【0023】
本観点の発明は、第1の光導波路に対する帯状の電極部の配置が第1の変調電極と第2の変調電極で同じであっても、又は第2の光導波路に対する帯状の電極部の配置が第3の変調電極と第4の変調電極で同じであっても、それぞれのパッチアンテナからの給電線路の長さ等を変えることにより、第1及び第3の変調電極に対して、それぞれ第2及び第4の変調電極に印加される電圧信号の位相を反転させるものである。例えば、第1及び第2のパッチアンテナから第1の変調電極へは同じ長さの給電線路を接続し、第4及び第3のパッチアンテナから第2の変調電極へはそれらの給電線路を伝わるマイクロ波の1/2波長分だけ給電線路の長さが異なるようにすればよい。例えば、給電線路を蛇行させる等の方法である。この場合、上記の長さの差を実現するため、第3及び第4のパッチアンテナから第2の変調電極に給電するための給電線路、及び第2及び第3のパッチアンテナから第4の変調電極に給電するための給電線路の断面構造をそれぞれ異ならしめてもよい。
【0024】
第8の観点では、本発明は、前記第1乃至第7の観点の電界検出デバイスにおいて、前記4つのパッチアンテナはそれぞれ方形パッチアンテナであることを特徴とする。本発明に用いる4つのパッチアンテナは、同じ形態の方形パッチアンテナとすることにより電界検出デバイスの設計が容易となる。
【0025】
第9の観点では、本発明は、前記第8の観点の電界検出デバイスにおいて、前記4つの方形パッチアンテナは、それぞれの方形パッチアンテナに接続された変調電極に給電するための給電線路との間のインピーダンス整合をとるために、それぞれの方形アンテナに接続された前記給電線路の両側に切り込み部を有することを特徴とする。
方形パッチアンテナに誘起された電気信号を給電線路を介して変調電極に効率的に供給するためには、方形パッチアンテナと給電線路との間のインピーダンス整合をとる必要がある。このため、本観点の発明では、それぞれの方形アンテナに接続された給電線路の両側に切り込み部を備え、その切り込み部の幅及び長さを調整してインピーダンス整合をとるものである。
【0026】
第10の観点では、本発明は、前記第9の観点の電界検出デバイスにおいて、前記4つの方形パッチアンテナは、それぞれ、前記切り込み部を有する辺と対向する辺の前記切り込み部と対称な位置に、前記切り込み部と略同一形状の切り込み部を有することを特徴とする。
方形パッチアンテナは、目的とする電波の受信周波数において共振して出力信号が最大となるように、その形状が設計される。しかし、方形パッチアンテナの給電線路側にのみ切り込み部を設けた場合、形状の対称性が崩れ、共振特性の劣化が生じてしまう。本観点の発明は、切り込み部を有し給電線路が接続された辺と対向する側にも切り込み部を設けて、方形パッチアンテナの形状を対称として、アンテナ形状の非対称性に起因する特性劣化を改善するものである。
【0027】
第11の観点では、本発明は、前記第1乃至第10の観点の電界検出デバイスにおいて、前記第1及び第2の光導波路は互いに70度~110度を成す角度で交差していることを特徴とする。本発明の電界検出デバイスにおいては、第1の光導波路の出射光から得られるY方向の検出電界に対する信号と第2の光導波路の出射光から得られるX方向の検出電界に対する信号とが分離されていること、すなわち、それぞれの光導波路を伝搬する光波が互いに混じらないことが必要である。2つの光導波路が交差する場合、その交差角度が大きければクロストークはほとんど生じない。また、X方向、Y方向の電界を検出するための4つのパッチアンテナと4つの変調電極の配置を考慮すると、その交差角度は90度に近い方が設計が容易である。
【0028】
第12の観点では、本発明は、前記第1乃至第10の観点の電界検出デバイスにおいて、前記第1の光導波路を伝搬する光波の波長と、前記第2の光導波路を伝搬する光波の波長は、互いに異なることを特徴とする。2つの光導波路を伝搬する光波の波長を変え、それぞれの光導波路の出射光を波長フィルタを通して取り出すことにより、X方向、Y方向の検出電界に対する信号を十分に分離することができる。
【0029】
第13の観点では、本発明は、前記第1乃至第12の観点の電界検出デバイスにおいて、前記基板の平面形状は略4角形であり、前記第1及び第2の光導波路はそれぞれ曲線状の光導波路を有し、前記第1及び第2の光導波路の光入射端面は前記4角形の1辺に形成され、前記第1及び第2の光導波路の光出射端面は前記光入射端面と対向する前記4角形の1辺に形成されていることを特徴とする。
【0030】
本発明の電界検出デバイスを実用化する場合、取り扱いを容易にするためには、光ファイバが第1及び第2の光導波路の入出射端面に結合され固定されていることが望ましい。本観点の発明の電界検出デバイスは、例えば平面形状が長方形の結晶基板を用いる場合、その1辺に第1及び第2の光導波路の光入射端面が形成され、対抗する1辺にそれらの光出射端面が形成される。これにより光ファイバに結合するために端面研磨が必要な面は2つの端面のみとなり、4つの端面を研磨するよりも製作工程が大幅に簡略化される。また、光ファイバが結合固定される端面も2つのみとなるので、4つの端面に光ファイバが結合固定されている場合と比べて、取り扱いも容易である。
【0031】
第14の観点では、本発明は、第1乃至第13の観点の電界検出デバイスと、前記第1及び第2の光導波路をそれぞれ伝搬する光波を供給するための光源と、前記第1及び第2の光導波路をそれぞれ出射した光波を電気信号に変換し、前記電気信号より、前記第1、第2パッチアンテナ間及び前記第4、第3パッチアンテナ間の電界信号に対応する信号と、前記第1、第4パッチアンテナ間及び前記第2、第3パッチアンテナ間の電界信号に対応する信号とを出力する処理装置と、を備えることを特徴とする電界検出装置を提供する。本発明の電界検出装置においては、必要に応じて、EDFA等の光増幅器、参照光源とその関連する光学系、処理装置として、O/E変換器や、オシロスコープやスペクトラムアナライザ等の測定器を備えてもよい。
【発明の効果】
【0032】
上記のように、本発明により、小型で直交する2軸方向の電界成分が測定可能で、かつ、高感度化が可能な電界検出デバイス及びそれを用いた電界検出装置が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1】実施例1に係る電界検出デバイスを用いた電界検出装置の模式的な構成図。
図2】実施例1の電界検出デバイスの構成を示す模式的な平面図。
図3】実施例1の電界検出デバイスの動作を説明するために示す模式的な断面図であり、(a)は変調電極11の部分、(b)は変調電極12の部分を示す図。
図4】実施例2の電界検出デバイスの構成を示す模式的な平面図。
図5】実施例3の電界検出デバイスの構成を示す模式的な平面図。
図6】実施例4の電界検出デバイスの構成を示す模式的な平面図。
図7】実施例5の電界検出デバイスの構成を示す模式的な平面図。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、図面を参照して本発明の電界検出デバイス及び電界検出装置を実施例により詳細に説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一符号を付し、その重複した説明を省略する。
【実施例1】
【0035】
図1は実施例1に係る電界検出デバイスを用いた電界検出装置の模式的な構成図である。図2は実施例1の電界検出デバイスの構成を示す模式的な平面図である。
【0036】
図1において、本実施例の電界検出装置4は、電界検出デバイス10と、光源5と、処理装置としての機能を有する光スペクトラムアナライザ8とを備えている。光源5からの出射光は光分岐9により2つに分岐され、それぞれ光ファイバ25及び26を経由して電界検出デバイス10の第1の光導波路である光導波路1及び第2の光導波路である光導波路2の入射端面に結合される。光導波路1及び光導波路2の出射端面より出射した光波は、それぞれ光ファイバ27及び28を経由して光スペクトラムアナライザ8に入射する。光スペクトラムアナライザ8では、光ファイバ27からの出射光を入力することにより、電界検出デバイス10に設けられた第1のパッチアンテナであるアンテナ21と第2のパッチアンテナであるアンテナ22間及び第4のパッチアンテナであるアンテナ24と第3パッチアンテナであるアンテナ23間で誘起される電界信号、すなわちY方向の電界信号に対応する信号が得られる。同様に、光ファイバ28からの出射光を入力することにより、アンテナ21とアンテナ24間及びアンテナ22とアンテナ23間で誘起される電界信号、すなわちX方向の電界信号に対応する信号が得られる。光スペクトラムアナライザ8では、上記の電界信号は中心光周波数のサイドバンドとして現れるので、その大きさを測定することにより、電界検出デバイス10の位置に置ける電磁波のY方向及びX方向の電界の大きさを検出することができる。
【0037】
図2に示すように、電界検出デバイス10において、電気光学効果を有する材料であるニオブ酸リチウム結晶のZ板からなる基板3上に、直線状で互いに略90度で交差する光導波路1と光導波路2がTi拡散光導波路により形成されている。また、光導波路1に電界を印加するために変調電極11と変調電極12が光導波路1に沿って、光導波路2に電界を印加するために変調電極13と変調電極14が光導波路2に沿って、それぞれ基板3上に設けられている。アンテナ21、22、23、24は正方形の4つの頂点付近にそれぞれ右回りに順に配置された略同一形状の方形パッチアンテナである。光導波路1はアンテナ21、22間及びアンテナ24、23間を通過し、光導波路2はアンテナ21、24間及びアンテナ22、23間を通過するように配置されている。
【0038】
変調電極11はアンテナ21からの給電線31とアンテナ22からの給電線32とにより給電され、変調電極12はアンテナ24からの給電線33とアンテナ23からの給電線34によって給電される。また、変調電極13はアンテナ21からの給電線35とアンテナ24からの給電線36によって給電され、変調電極14はアンテナ22からの給電線37とアンテナ23からの給電線38により給電される。すなわち、アンテナ21と22間に誘起される電圧信号とアンテナ24と23間に誘起される電圧信号により光導波路1を伝搬する光波が変調され、アンテナ21と24間に誘起される電圧信号とアンテナ22と23間に誘起される電圧信号により光導波路2を伝搬する光波が変調されるように構成されている。
【0039】
ここで、4つの変調電極、11、12、13、14は、それぞれ、光導波路1又は光導波路2に沿って配置され一定の間隔で互いに対向する1組の帯状の電極部、すなわち帯状電極11aと11b、帯状電極12aと12b、帯状電極13aと13b、帯状電極14aと14bをそれぞれ有し、それらの帯状電極の両端が短絡されることにより共振器を構成している。すなわち、それぞれ1組の帯状電極により定在波共振線路電極を構成している。
【0040】
さらに、本実施例の電界検出デバイス10においては、変調電極11及び13で変調されて生じた光信号の位相がそれぞれ変調電極12及び14の部分で反転している場合、変調電極12及び14に印加する電圧信号の位相を反転させることにより変調を加算することができるように構成している。このため、変調電極11においてアンテナ21からの給電線31に接続された帯状電極11aを光導波路1上に配置し、変調電極12においてアンテナ21とは光導波路1の反対側にあるアンテナ23からの給電線34に接続された帯状電極12bを光導波路1上に配置している。同様に、変調電極13においてアンテナ24からの給電線36に接続された帯状電極13bを光導波路2上に配置し、変調電極14においてアンテナ24とは光導波路2の反対側にあるアンテナ22からの給電線37に接続された帯状電極14aを光導波路2上に配置している。
【0041】
図3は実施例1の電界検出デバイスの動作を説明するために示す模式的な断面図であり、(a)は変調電極11の部分、(b)は変調電極12の部分を示す。本実施例においては、アンテナ21~24の形状は略同一であり、給電線31~38の形状も略同一であるので、アンテナ21と22間に誘起され変調電極11に印加される電圧信号とアンテナ24と23間に誘起され変調電極12に印加される電圧信号は同じであると考えられる。一方、光導波路1上に配置された帯状電極11aはアンテナ21に接続され、光導波路1上に配置された帯状電極12bはアンテナ23に接続されるので、基板3中の光導波路1への印加電界の方向は変調電極11と変調電極12とでは逆向きとなる。これにより、変調電極12に印加する電圧信号の位相を反転させることができる。
【0042】
次に、本実施例の電界検出デバイス10の具体的な形状の一例を示す。光導波路1及び2の光導波路幅は5~15μm程度、深さは5~10μm程度とすることができる。検出する電磁波の周波数を28GHzとする場合、アンテナ21~24の一辺の長さa=1.8mm、給電線31~38の幅は50μm、長さLm=2.6mm、変調電極11~14の長さLe=2.5mm、帯状電極11a、11b、12a、12b、13a、13b、14a、14bの幅は30μm、各対の対向間隔は30μm、アンテナと給電線とのインピーダンス整合のための切り込み部の長さd=0.59mm、等の値とすることができる。
【実施例2】
【0043】
図4は実施例2の電界検出デバイスの構成を示す模式的な平面図である。図4において、本実施例の電界検出デバイス20は、基板17の第2の変調電極及び第4の変調電極が形成される部分において分極方向が反転した分極反転領域51及び52が基板17に形成されていること、第2の変調電極である変調電極18及び第4の変調電極である変調電極19を構成する帯状電極の幅方向の配置が異なることを除けば、実施例1の電界検出デバイス10と同じ構成である。
【0044】
本実施例の電界検出デバイス20においても、実施例1と同様に、変調電極11及び13で変調されて生じた光信号の位相がそれぞれ変調電極18及び19の部分で反転している場合でも、変調を加算することができるように構成している。本実施例においては、変調電極18及び19に印加される電圧信号の位相は変調電極11及び13に印加される電圧信号の位相と同じである。本実施例においては、変調電極18及び19の部分では分極方向が反転しているので、印加される電圧に対して屈折率変化の極性は変調電極11及び13の部分とは逆となり、分極反転しないで印加する電圧信号の位相を反転させる場合、すなわち実施例1の電界検出デバイス10と同じ効果が得られる。
【実施例3】
【0045】
図5は実施例3の電界検出デバイスの構成を示す模式的な平面図である。図5において、本実施例の電界検出デバイス30は、第1~第4の変調電極が異なることを除けば、実施例1の電界検出デバイス10と同じ構成である。
【0046】
図5において、本実施例の電界検出デバイス30では、第1~第4の変調電極はすべて共振器構造を有していない。4つの変調電極、41、42、43、44は、それぞれ、光導波路1又は光導波路2に沿って配置され一定の間隔で互いに対向する1組の帯状の電極部、すなわち帯状電極41aと41b、帯状電極42aと42b、帯状電極43aと43b、帯状電極44aと44bをそれぞれ有している。それらの帯状電極は光導波路の幅方向に対して同じ配置となっている。また、帯状電極の両端部は開放となっている。
【0047】
ここで、本実施例の電界検出デバイス30は実施例1や実施例2に比べて、周波数の低い電磁波の電界を検出するときに使用することができる。例えば、光導波路中の変調波の半波長の長さが変調電極41の入射端から変調電極42の出射端までの長さより大きい場合等である。この場合には変調電極41と42には同相で電圧信号を印加すればよい。変調電極43と44についても同様である。
【実施例4】
【0048】
図6は実施例4の電界検出デバイスの構成を示す模式的な平面図である。図6において、本実施例の電界検出デバイス40は、基板、及び、第1の光導波路及び第2の光導波路の形状が異なることを除けば、実施例1の電界検出デバイス10と同様である。なお、図6では、4つのアンテナや4つの変調電極の構成、形状は実施例1の電界検出デバイス10と同じ構成としているが、実施例2や実施例3の電界検出デバイス20又は30と同じ構成とすることができる。
【0049】
図6において、本実施例の電界検出デバイス40は、基板53の平面形状は略長方形であり、第1の光導波路である光導波路54及び第2の光導波路である光導波路55の光入射端面は長方形の1辺である辺53aに形成され、光導波路54及び光導波路55の光出射端面は辺53aと対向する辺53bに形成されている。このため、光導波路54及び光導波路55は、それぞれ入射端からの入射光を変調電極に導く曲線状の光導波路54a及び55aと、変調電極からの出射光を出射端に導く曲線状の光導波路54b及び55bとを有している。これにより光ファイバに結合するために端面研磨が必要な面は2つの端面のみとなり、製作工程が大幅に簡略化される。また、光ファイバが固定される端面も2つのみであるので、取り扱いも容易である。なお、例えば、ニオブ酸リチウム結晶基板のTi拡散光導波路の場合は光導波路の曲率半径が30mm程度以上であれば放射損失は十分に小さいので、本実施例の電界検出デバイス40は容易に実現可能である。
【実施例5】
【0050】
図7は実施例5の電界検出デバイスの構成を示す模式的な平面図である。図7において、本実施例の電界検出デバイス50は、第1~第4のパッチアンテナが異なることを除けば、実施例1の電界検出デバイス10と同じ構成である。
【0051】
図7において、本実施例の電界検出デバイス50では、第1のパッチアンテナであるアンテナ61、第2のパッチアンテナであるアンテナ62、第3のパッチアンテナであるアンテナ63及び第4のパッチアンテナであるアンテナ64は、すべて、それらのアンテナに接続された給電線路のそれぞれの両側に設けた切り込み部を有する辺と対向する辺のそれぞれの切り込み部と対称な位置に、それらの切り込み部と同一形状の切り込み部を有している。すなわち、アンテナ61は、給電線路31の両側に設けた切り込み部61aと対向する辺の対称な位置に切り込み部61aと同形状の切り込み部61cを有し、給電線路35の両側に設けた切り込み部61bと対向する辺の対称な位置に切り込み部61bと同形状の切り込み部61dを有している。同様に、アンテナ62では、切り込み部62a、62bとそれぞれ対称な切り込み部62c、62dを有し、アンテナ63では、切り込み部63a、63bとそれぞれ対称な切り込み部63c、63dを有し、アンテナ64では、切り込み部64a、64bとそれぞれ対称な切り込み部64c、64dを有している。
【0052】
なお、本実施例において、アンテナ61~64の一辺の長さや1つの切り込み部の長さ等の値は実施例1と同じとすることができる。例えば、検出する電磁波の周波数を28GHzとする場合、各切り込み部の長さは0.59mm程度、各切り込み部の空隙幅は30μm程度とすることができる。
【0053】
方形パッチアンテナにおいて、実施例1のアンテナ21~24のように非対称な切り込み部がある場合、その切り込み部の大きさが小さくても、X方向、Y方向の形状の対称性が崩れ、アンテナの共振特性が若干劣化してしまう。本実施例のアンテナ61~64では、給電線路が接続された辺と対向する側にも切り込み部を設けることにより、X方向、Y方向の対称性を高め、アンテナ形状の非対称性に起因する特性劣化を改善することができる。
【0054】
本発明は上記の実施例に限定されるものではないことは言うまでもなく、光導波路、アンテナ、変調電極、給電線等の構成や形状は様々な変形が可能である。
【符号の説明】
【0055】
1,2,54,55 光導波路
3,17,53 基板
4 電界検出装置
5 光源
8 光スペクトラムアナライザ
9 光分岐
10,20,30,40,50 電界検出デバイス
11,12,13,14,18,19,41,42,43,44 変調電極
11a,11b,12a,12b,13a,13b,14a,14b,41a,41b,42a,42b,43a,43b,44a,44b 帯状電極
21,22,23,24,61,62,63,64 アンテナ
25,26,27,28 光ファイバ
31,32,33,34,35,36,37,38 給電線
51,52 分極反転領域
54a,54b,55a,55b 曲線状の光導波路
61a,61b,61c,61d,62a,62b,62c,62d,63a,63b,63c,63d,64a,64b,64c,64d 切り込み部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7