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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-08
(45)【発行日】2023-03-16
(54)【発明の名称】調味組成物
(51)【国際特許分類】
   A23L 27/00 20160101AFI20230309BHJP
   A23L 29/256 20160101ALI20230309BHJP
【FI】
A23L27/00 D
A23L29/256
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019000817
(22)【出願日】2019-01-07
(65)【公開番号】P2020108363
(43)【公開日】2020-07-16
【審査請求日】2021-11-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000116297
【氏名又は名称】ヱスビー食品株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100186060
【弁理士】
【氏名又は名称】吉澤 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】100145458
【弁理士】
【氏名又は名称】秋元 正哉
(72)【発明者】
【氏名】本間 耕介
(72)【発明者】
【氏名】山口 智世
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 香江子
【審査官】澤田 浩平
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-071503(JP,A)
【文献】特開平05-030941(JP,A)
【文献】特開2014-226133(JP,A)
【文献】特開2007-014324(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水溶性の結晶化調味成分と、寒天由来成分と、食物繊維成分と、
を含み、
半固形状又は固形状であって、
粘度が、300Pa・Sから850Pa・Sである、
調味組成物。
【請求項2】
前記寒天由来成分は、寒天を含んだゲル細片である、
請求項1に記載の調味組成物。
【請求項3】
前記調味組成物の含水率は、30重量%を超えない、
請求項1又は2に記載の調味組成物。
【請求項4】
前記寒天由来成分に含まれる寒天の前記調味組成物全量に対する含有量は、0.04重量%から2.10重量%である、
請求項1から3のいずれか一項に記載の調味組成物。
【請求項5】
前記食物繊維成分の前記調味組成物全量に対する含有量は、3.70重量%から8.00重量%である、
請求項1から4のいずれか一項に記載の調味組成物。
【請求項6】
少なくとも、水溶性の結晶化調味成分と、即溶性の寒天を含む寒天由来成分と、食物繊維成分とを含む原料を非加熱で混合し、半固形状又は固形状であって、
粘度が、300Pa・Sから850Pa・Sである調味組成物を生成する、
調味組成物の製造方法。
【請求項7】
前記寒天由来成分は、前記寒天を含んだゲル細片であり、
前記水溶性の結晶化調味成分、前記食物繊維成分を含む他の原料との混合前に、前記寒天を添加した水溶媒を冷却して寒天ゲルを得、更に得られた前記寒天ゲルを細分して前記ゲル細片を予め生成し、
予め生成した前記ゲル細片と前記他の原料とを非加熱で混合する、
請求項に記載の調味組成物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、調味組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、例えば、中華料理、韓国料理、その他の炒め料理の味付けに用いられ、具材と共に炒め合わされる調味料が市販されている。このような調味料の例として、チューブ形状の容器やアルミ製の袋体などの包装体に充填された高粘性のペースト状調味料などが挙げられる。
【0003】
このような調味料の多くは、炒める際の添加段階で、具材から溶出する水分や別途添加される水分等によって希釈されることを想定している。そのため、調理の前(包装体から出される前)の状態では、前記調味料に含まれる各成分の濃度は、比較的濃く調製されている。すなわち、含有成分が濃縮された状態で包装体に充填されている。従って、調味料の含有成分である、例えば、糖類、塩類、各種アミノ酸といった水溶性結晶化調味成分が、調味料内の水分だけでは溶けきらずに調味料内に偏析するあるいは沈殿するなどの事態が生じ得る。
【0004】
ところで、含有される固形成分の均一分散を図るために、寒天を含ませた調味料が、下記特許文献1や特許文献2などに開示されている。より詳しくは、特許文献1は、寒天と、500μm以下の魚節粉末とを含有する液体調味料を開示する。特許文献1の技術によれば、魚節粉末を含む液体調味料に寒天を添加することで、魚や肉の臭みを低減し、だし風味の効いた煮物を調理できると共に、固形分の均一分散性及び安定性を向上させることができる。
【0005】
また、特許文献2は、液体調味料に寒天を添加する不溶性固形物の分散法を開示する。特許文献2の技術によれば、振ったり、撹拌したりしなくても、最初から最後まで内容物の割合が均一な状態で使用できるよう、不溶性物質を分散し、沈殿等を防止することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2008-54518号公報
【文献】特開平7-123934号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1及び特許文献2に開示の調味料は、液体調味料に関するものであり、例えばペーストなどの半固形状の調味料や、ゲルなどの固形状のものとは相違する。また、液体調味料であるため水分を多量に含む。更に、特許文献1及び特許文献2の双方において、寒天を添加して分散性を向上させる対象は、水不溶性固形分であって(特許文献1では魚節粉末であり、特許文献2では液体に添加された不溶性固形物である。)、水溶性成分ではない。
【0008】
すなわち、前記特許文献1及び特許文献2において、例えばペーストやゲルのような半固形状又は固形状の調味料(調味組成物)で生じ得る水溶性結晶化成分由来の固形成分を良好に分散させることは具体的に示されていない。そのため、特許文献1及び特許文献2に開示の技術によっては、これらの固形成分が調味組成物内に偏析するあるいは沈殿するなど事態を有効に防げるか否かは、開示も示唆もされていない。
【0009】
前述の課題に鑑み、本発明は、水溶性結晶化調味成分の偏析や沈殿を有効に防止できる調味組成物、及びこの調味組成物の製造方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
これらの課題を解決するため、本発明に係る調味組成物は、
水溶性の結晶化調味成分と、寒天由来成分と、食物繊維成分と、
を含み、
半固形状又は固形状であることを特徴とする。
本発明に係る調味組成物によれば、低水分性の半固形状又は固形状調味組成物であっても、寒天由来成分と食物繊維成分とを含有させることで、水溶性結晶化調味成分の分散性を高めることができる。ここで、前記水溶性結晶化調味成分は、例えば、調味組成物内の水分が飽和した結果、未溶解となり残存したもの、あるいは前記水分に一度溶解したが析出して結晶化したものを指す。以下、このような状態を「未溶解等」と言う。
また、水溶性結晶化調味成分の偏析又は沈殿が防止できることに伴い、組成物内に局所的に固化した部分が生じない。これにより、組成物を包装体から押し出す際の抵抗因子を有効に除外することが可能となる。そのため、組成物をストレスなく包装体から押し出すことができると共に、例えば局所的に固化して包装体内から押し出せずに使用できない部分を極力低減させることができる。すなわち、調味組成物の使用性を高めることができる。
【0011】
また、本発明に係る調味組成物において、前記寒天由来成分は、寒天を含んだゲル細片であることが好ましい。
本発明のこの態様によれば、未溶解等の水溶性結晶化調味成分を好適に分散させることができると共に、より包装体から押し出し易い状態となり、組成物の使用性を更に高めることができる。
【0012】
更に、本発明に係る調味組成物において、前記調味組成物の含水率は、30重量%を超えないことが好ましい。
本発明のこの態様によれば、組成物の水分が少ない場合であっても、未溶解等の水溶性結晶化調味成分を適切に組成物内に分散させることができる。それに応じて、包装体から押し出し易い状態とし、組成物の使用性を高めることができる。
【0013】
更に、本発明に係る調味組成物において、寒天由来成分に含まれる寒天の調味組成物全量に対する含有量は、0.04重量%から2.10重量%であることが好ましく、食物繊維成分の調味組成物全量に対する含有量は、3.70重量%から8.00重量%であることがより好ましく、前記調味組成物の粘度が、300Pa・Sから850Pa・Sであることが更に好ましい。
本発明のこの態様によれば、寒天由来成分に含まれる寒天の含有量、食物繊維成分の含有量、組成物粘度を前記数値範囲とすることで、未溶解等の水溶性結晶化調味成分の分散性を更に高め、それに伴い、組成物の使用性を高めることができる。
【0014】
また、本発明に係る調味組成物の製造方法は、
少なくとも、水溶性の結晶化調味成分と、即溶性の寒天を含む寒天由来成分と、食物繊維成分とを含む原料を非加熱で混合し、半固形状又は固形状の調味組成物を生成することを特徴とする。
本発明に係る調味組成物の製造方法によれば、即溶性の寒天を含む寒天由来成分と、食物繊維成分とを含む原料を非加熱で混合することで、製造中の加熱プロセスの一部又は全部を省き、製造コストの低減を図ることができる。それと共に、未溶解等の水溶性結晶化調味成分の分散性を向上させ、包装体からの押出が容易な調味組成物を製造することができる。
【0015】
更に、本発明に係る調味組成物において、前記寒天由来成分は、寒天を含んだゲル細片であり、前記水溶性の結晶化調味成分、食物繊維成分を含む他の原料との混合前に、寒天を添加した水溶媒を冷却して寒天ゲルを得、更に得られた寒天ゲルを細分して前記ゲル細片を予め生成し、予め生成した前記ゲル細片と前記他の原料とを非加熱で混合することが好ましい。
本発明のこの態様によれば、寒天由来成分が混合体内でより混ざりやすい状態となるため、未溶解等の水溶性結晶化調味成分の沈殿や偏析をより抑制した調味組成物を製造することができる。それに伴い包装体からの押出が容易な調味組成物を製造することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、調味組成物内で未溶解等の水溶性結晶化調味成分の分散性を高めることができると共に、調味組成物を包装体から押し出し易い状態として使用性を高めることが可能な調味組成物及び調味組成物の製造方法を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
[調味組成物]
本発明の一実施形態に係る調味組成物を詳細に説明する。本実施形態に係る調味組成物は、水溶性の結晶化調味成分、寒天由来成分、食物繊維成分を含む。また、本実施形態に係る調味組成物は、半固形状又は固形状である。ここで、半固形状とは、常温常圧下において応力が印加されない状態ではほとんど変形しないが、若干の応力が印加されると流動する状態のものを言う。特に限定されるものではないが、半固形状物の例としては、ペースト、ゾル、クリームなどが挙げられる。また、固形状とは、常温下で流動性のない状態のものを言う。ただし、後述するように、本実施形態に係る調味組成物として、チューブ形状容器やアルミ製の袋体などの包装体に充填され、使用時に包装体が押下されて外部へ押出されるものが想定されるため、応力が印加された際に変形可能なものであることが好ましい。限定されるものではないが、このような固形状物として、ゲル、ジェル、ゼリーなどが挙げられる。
【0018】
本実施形態に係る調味組成物の粘度は、300Pa・Sから850Pa・Sであることが好ましい。なお、本実施形態に係る調味組成物の粘度は、東機産業株式会社製のB形粘度計TVB10、ローターNo.M4、ローター回転数0.6rpm、25℃±2℃もしくは5℃の条件で測定された粘度である。
【0019】
更に、本実施形態に係る調味組成物は、低含水性であり、調理の際、共に炒め合される具材の水分や別途添加される水分によって希釈される。調味組成物の含水率は、特に限定されないが、調味組成物全量に対して30重量%を超えなくてもよく、また、25重量%を超えなくてもよく、更に、20重量%を超えなくてもよい。
【0020】
本実施形態に係る調味組成物は、前述のように、調理時に希釈されるものであるため、含有される成分の一部又は全部が、調味組成物の有する水分では溶解しない。そのため、溶解しない成分は、調味組成物内で結晶化(又は、元々結晶化していたものはそのまま残存)する。
【0021】
含有される水溶性の結晶化調味成分として、白糖、グラニュー糖、粉糖、蔗糖、はちみつ、ブドウ糖、果糖、黒糖、麦芽糖、乳糖、デキストリン、シクロデキストリン、高甘味度甘味料などの糖類、ソルビトール、食塩、醤油、アミノ酸(L-グルタミン酸ナトリウム等)、核酸(イノシン酸ナトリウム、グアニル酸ナトリウム等)、無水酢酸、有機酸(クエン酸、リンゴ酸、アスコルビン酸、コハク酸ナトリウム等)、無機塩(塩化カリウム等)等が挙げられる。これらのうちの一種を用いてもよいし、二種以上を組み合わせてもよい。ただし、これに限定されるものではない。
【0022】
また、本実施形態に係る調味組成物は、グリセロール、エリスリトール、キシリトール、リビトール、アラビトール、ガラクチトール、イジトール、マンニトール等の単糖アルコールや、還元パラチノース、マルチトール、ラクチトール、マルトトリイトール、イソマルトトリイトール等、オリゴ糖を還元して得られるオリゴ糖アルコール、還元水飴、酢酸、乳酸、酒石酸、燐酸、フィチン酸などの有機酸及び無機酸、醗酵乳等の酸味料や、魚醤、豆板醤、XO醤、芝麻醤、豆鼓醤、甜面醤、コチュジャン、みりん、ウスターソース、ケチャップ、オイスターソース、サルサ、サンバルソース、チリソース、チャツネ、マスタード、マヨネーズ、ドレッシング、ラー油、ごま油、ハーブ、カレー粉、だし汁、酒、化学調味成分、チーズ類、ブイヨン、中華スープ、洋酒、各種香辛料、各種香味油等の他の調味成分を含んでもよい。これらのうちの一種を用いてもよいし、二種以上を組み合わせてもよい。ただし、これに限定されるものではない。
【0023】
更に、本実施形態に係る調味組成物は、水溶性結晶化調味成分の偏析あるいは沈殿を防ぐため、後述の寒天由来成分や食物繊維成分を含有する。ただし、寒天由来成分や食物繊維成分の作用は、これだけに限定されない。
【0024】
寒天由来成分に含有される寒天の種類は、特に限定されるものではなく、例えば、調味組成物の所望の物性やテクスチャー等に応じて適宜選択可能である。ただし、前記した包装体からの押出容易性等に鑑み、本実施形態における寒天は、低ゼリー強度寒天であることが好ましい。それに加えて、製造プロセスの簡素化を図る観点から、加熱なく熱湯に浸すのみで溶解する即溶性寒天であることが更に好ましい。
【0025】
本実施形態における寒天由来成分は、特に限定されるものではないが、前記のような熱湯(又は他の成分を含む熱湯)に寒天を溶解した寒天溶液や、寒天が水和してゲル化した状態のものを想定する。また、このようなゲル状寒天を任意の手段で細分し細片化してもよい(以下、ゲル細片状の寒天を、「ゲル細片状寒天」、「寒天由来のゲル細片」又は単に「ゲル細片」と言う場合がある。)。
【0026】
このように、多数のゲル細片状寒天を組成物内に分散させることで、前述の水溶性結晶化調味成分の偏析や沈殿をより有効に防止することができる。これに伴い、前記調味成分の偏析や沈殿によって局所的に固化した部分の生成が抑制される。その結果、包装体に充填される組成物の押出が阻害される、あるいは前記固化部分が包装体から押し出されないなどの事態を防ぐことができる。
【0027】
調味組成物全量に対する寒天の含有量は、特に限定されるものではないが、0.04重量%から2.10重量%であることが好ましく、0.04重量%から0.93重量%であることがより好ましく、0.08重量%から0.37重量%であることが更に好ましい。寒天の前記含有量が、0.04重量%を下回ると、前記結晶化調味成分の偏析や沈殿が生じ、組成物を包装体外へ押し出す際に支障が生じ始める。これに対して、寒天の前記含有量が、2.10重量%を超えると、寒天を溶かすために大量の水が必要となり、製造面で支障が生じ得るため好ましくない。なお、前記した寒天の含有量は、ゲル状寒天の原料としての寒天(例えば、ところてんを凍結乾燥させて作られる粉末寒天、棒寒天、糸寒天等)の含有量を指す。
【0028】
次に、含有される食物繊維成分の種類は、特に限定されるものではないが、例として、セルロース、ヘミセルロース、ペクチン、リグニン、アルギン酸、キチン等が挙げられる。前記結晶化調味成分の偏析や沈殿を防ぐ観点から、食物繊維成分を固形状で調味組成物内に分散させることが好ましい。そのため、本実施形態における食物繊維成分は、不溶性であることが好ましく、その中でもセルロースであることがより好ましい。食物繊維成分として、セルロースが用いられることで、前記した寒天と相乗して、組成物内での結晶化調味成分の偏析や沈殿を効果的に防止することができる。
【0029】
調味組成物全量に対する食物繊維成分の含有量は、特に限定されるものではないが、3.7重量%から8.0重量%であることが好ましく、3.7重量%から6.05重量%であることがより好ましく、4.38重量%から5.18重量%であることが更に好ましい。食物繊維成分の前記含有量が、3.70重量%を下回ると、前記結晶化調味成分の偏析や沈殿が生じ、組成物を包装体外へ押し出す際に支障が生じ始める。これに対して、食物繊維成分の前記含有量が、8.00重量%を超えると、包装体から押し出しにくくなる、あるいは他の成分の含有量が相対的に少なくなり、調味組成物により呈される味やテクスチャーが所望のものと離れてしまうため好ましくない。
【0030】
本実施形態に係る調味組成物は、他の成分を適宜含んでもよい。含有される他の成分は、特に限定されるものではないが、例として、澱粉、増粘剤(加工デンプン、並びにキサンタンガム、タマリンドガム、グアーガム、ローカストビーンガム、及びジェランガムなどのガム類等)、その他添加剤等が挙げられる。
【0031】
[調味組成物の製造方法]
次に、本実施形態に係る調味組成物の製造方法を説明する。まず、前記した水溶性の結晶化調味成分、寒天由来成分、食物繊維成分、その他成分(その他調味成分、澱粉、増粘剤、添加剤等)を含む原料を、例えば任意の混合装置を用いて撹拌混合する。このとき、別途水分は添加されない。従って、得られる混合体に含まれる水分は、前記したこれらの原料に由来する水分に相当する。
【0032】
寒天由来成分は、他の原料との混合前に例えば以下のような方法で予め生成されていてもよい。すなわち、水溶媒(例えば、熱湯)に寒天粉末を添加し、寒天溶液を生成する。このとき、粉末寒天を砂糖や食塩と混合して水溶媒に添加してもよい。また、添加する寒天粉末として即溶性のものを用いれば、寒天粉末を溶解させる水溶媒は、熱湯であればよく、これを別途加熱しなくてもよい。このようにして得られる寒天溶液を前記した寒天由来成分として、他の原料と混合する。
【0033】
また、寒天溶液をそのまま他の原料と混合するのではなく、寒天溶液を自然冷却又は強制冷却して寒天をゲル化させ、このゲル状寒天を他の原料と混合するようにしてもよい。ここで、混合するゲル状寒天は、塊状であってもよいし、混合前に任意の手段で細片化(例えば粉砕)されていてもよい。ただし、混合体内での均一分散の観点から、細片化したゲル状寒天を他の原料と混合することが好ましい。
【0034】
前記のように生成された寒天由来成分と、水溶性の結晶化調味成分、食物繊維成分等を含む他の原料とを所定時間撹拌混合する。このとき、混合体は非加熱で混合される。寒天由来成分として寒天溶液を添加する場合、混合体は加熱されないため、混合中に寒天溶液が冷える。その結果、混合体内でゲル状寒天が生成される。また、生成されたゲル状寒天は、混合中に細片化され、所定の大きさで混合体内に分散される。
【0035】
寒天由来成分として塊状のゲル状寒天を添加した場合も、混合中、塊が細分され、混合体内に分散される。また、予め細片化されたゲル状寒天を添加する場合も、混合中の撹拌処理により、ゲル状細片が混合体内に分散される。所定時間経過後、混合体をチューブ形状の容器やアルミ製の袋体などの包装体に充填する。これにより、半固形状又は固形状の調味組成物を製造する。
【0036】
このように、即溶性の寒天を用いることで、本実施形態に係る調味組成物の製造プロセス中、加熱プロセスの一部又は全部を省くことができる。これにより、製造プロセスを簡素化できると共に、ヒータ等の加熱手段を別途設ける必要がなくなり、製造コストの低減を図ることができる。ただし、前記は調味組成物の製造方法の一例であり、これに限定されるものではない。
【実施例
【0037】
以上説明した調味組成物において、具体的な実施の例を以下に示す。ここで、以下の実施例は、中華炒め料理の調味用に提供される調味組成物に関する。ただし、本発明は、下記の実施例により限定及び制限されるものではない。
【0038】
<実施例1から実施例8>
表1に示される原料及び配合に基づき、実施例1から実施例8を作製した。実施例1から実施例8は、いずれも次のプロセスを経て作製された。まず、表1に示される割合の寒天粉末を砂糖と混合し、熱湯に添加溶解させた。これを所定時間冷却した後、寒天を含むゲル状物を作製した。更に、得られたゲル状物を粉砕し細片化(寒天由来成分)した。その状態の寒天由来成分と、表1に示される他の原料とを非加熱で混合し、ペースト様の調味組成物を作製した。
【0039】
【表1】
【0040】
実施例1から実施例8において、伊那食品工業株式会社,ウルトラ即溶性寒天UX-30を用いた。また、実施例1から実施例8において、調味料(アミノ酸)として、コハク酸二ナトリウム、L-グルタミン酸ナトリウム、塩化カリウム、5’-イノシン酸二ナトリウムの混合体を用いた。
【0041】
<比較例1,2>
表1に示される原料及び配合に基づき、比較例1及び比較例2を作製した。比較例1及び比較例2は、原料として寒天を含まず、寒天に関連する製造プロセスを省いた以外に関して、前記した実施例1から実施例8と同様のプロセスで作製された。
【0042】
作製された各実施例及び比較例に対して、調味組成物(サンプル)での沈殿防止、及びチューブに充填された調味組成物(サンプル)の押し出しの評価を行った。ここで、沈殿防止に関する評価は、遠心分離機を用いた沈殿加速テスト後のサンプル状態の目視確認に基づく。沈殿加速テストは、遠心加速度860G、1分の条件での遠心分離により行った。また、押し出しに関する評価は、サンプルをチューブから押し出す際の2名の評価者による感覚に基づく。評価結果を表2に示す。
【0043】
【表2】
【0044】
表2の評価指標は、下記の通りである。
(1)沈殿防止
◎:製造直後から沈殿加速テストで沈殿が発生しない。
○:製造1日程度経過後、セルロース等が水分を取り込んだ状態では、沈殿加速テスト沈殿が発生しない。
△:製造数日経過後で沈殿が発生した。
×:製造後1日以内に沈殿が発生した。
【0045】
(2)押し出し性
◎:品温5℃の状態でもチューブから押し出しやすい。
○:品温25℃±2℃では押し出しやすいが、冷蔵状態では押し出しにくい。
△:品温25℃±2℃でも押し出しにくい。
×:品温25℃±2℃でチューブから押し出せない、もしくは、非常に押し出しにくい。
【0046】
表2に示されるように、寒天とセルロースのうちセルロースのみを含有するサンプル(比較例1及び比較例2)では、沈殿・偏析防止効果が乏しいが、寒天とセルロースを共に含有するサンプル(実施例1から実施例8)では、沈殿・偏析防止効果が顕著に発揮された。それに伴い、良好な押し出し性が発揮された。
【0047】
<実施例9から実施例12>
表3に示される原料及び配合に基づき、実施例9から実施例12を作製した。ここで、実施例9から実施例12の原料は、寒天粉末として、伊那食品工業株式会社,ウルトラ即溶性寒天UX-200を用いた点で実施例1から実施例8と異なるが、それ以外に関しては、実施例1から実施例8と同じである。また、実施例9から実施例12の作製プロセスも、実施例1から実施例8と同様である。
【0048】
【表3】
【0049】
作製された各実施例(実施例9から実施例12)に対して、実施例1から実施例8に対して行われたものと同様の沈殿防止及び押し出しに関わる評価を行った。評価結果を表4に示す。評価指標に関しても、実施例1から実施例8の場合と同様である。
【0050】
【表4】
【0051】
表4に示されるように、寒天とセルロースを共に含有するサンプル(実施例9から実施例12)で、沈殿・偏析防止効果が顕著に発揮された。それに伴い、良好な押し出し性が発揮された。特に、実施例9から実施例12の寒天含有割合は、実施例1から実施例8に比べて、極めて少量であるにも関わらず、それと同等以上の沈殿・偏析防止機能が発揮された。
【0052】
以上、本発明の実施形態を詳細に説明した。ただし、前述の説明は本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定する趣旨で記載されたものではない。本発明には、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得るものを含み得る。また、本発明にはその等価物が含まれる。