(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-08
(45)【発行日】2023-03-16
(54)【発明の名称】活動電位持続時間回復特性を反映した心臓モデル生成方法及び生成装置
(51)【国際特許分類】
A61B 5/367 20210101AFI20230309BHJP
A61B 5/339 20210101ALI20230309BHJP
A61B 5/361 20210101ALI20230309BHJP
【FI】
A61B5/367
A61B5/339
A61B5/361
(21)【出願番号】P 2021564738
(86)(22)【出願日】2020-05-07
(86)【国際出願番号】 KR2020005989
(87)【国際公開番号】W WO2020242078
(87)【国際公開日】2020-12-03
【審査請求日】2021-11-01
(31)【優先権主張番号】10-2019-0063369
(32)【優先日】2019-05-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】514274672
【氏名又は名称】延世大学校 産学協力団
【氏名又は名称原語表記】YONSEI UNIVERSITY,UNIVERSITY-INDUSTRY FOUNDATION(UIF)
【住所又は居所原語表記】50,YONSEI-RO, SEODAEMUN-GU, SEOUL 03722, REPUBLIC OF KOREA
(74)【代理人】
【識別番号】100130111
【氏名又は名称】新保 斉
(72)【発明者】
【氏名】パク,フイ ナム
(72)【発明者】
【氏名】イム,ビョン ヒョン
【審査官】鷲崎 亮
(56)【参考文献】
【文献】特表2018-534034(JP,A)
【文献】特表2013-523344(JP,A)
【文献】特開2007-202957(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/24-5/398
A61B 5/00-5/01
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
活動電位持続時間回復特性を反映した心臓モデル生成装置が、活動電位持続時間回復特性を反映した心臓モデルを生成する方法であって、
(a)N(Nは1以上の自然数)個の座標を含む心臓モデル及び前記心臓モデルが含むN個の座標で第1の所定時間の間隔別に測定した電圧値を含む時間別電圧データをローディングする段階;
(b)前記ローディングした時間別電圧データを用いて前記心臓モデルが含む特定の座標での前記第1の所定時間の間隔内に含まれる電圧値の最高点対比90%下がった電圧値を示す箇所(APD90)から、次の第1の所定時間の間隔内に含まれる電気刺激を受けた箇所までの時間である弛緩期を算定する段階;
(c)前記ローディングした時間別電圧データを用いて前記心臓モデルが含む特定の座標での前記次の第1の所定時間の間隔内に含まれる電気刺激を受けた箇所から、前記次の第1の所定時間の間隔内に含まれる電圧値の最高点対比90%下がった電圧値を示す箇所(APD90)までの時間である活動電位持続時間を算定する段階;
(d)前記算定した心臓モデルが含む特定の座標での弛緩期と活動電位持続時間との相関関係を算定し、前記算定した相関関係を用いて最大勾配(Slope)を算定する段階;および
(e)前記算定した最大勾配を前記心臓モデルが含む特定の座標に反映して視覚的に出力する段階;
を含
み、
上記(e)段階での視覚的出力は、
前記算定した最大勾配の大きさに応じて、前記心臓モデルが含む特定座標上で色を異にして出力するものであって、
上記(e)段階の後、
(f)前記(b)~(e)段階を前記特定の座標を除いた前記心臓モデルが含むN個の全ての座標に対して繰り返し遂行する段階;および
(g)心臓モデルが含むN個の座標を除いた前記心臓モデルの残りの領域に対して、前記心臓モデルが含むN個の座標に対して推定した最大勾配に補間法を適用して視覚的に出力する段階;
をさらに含み、
上記心臓モデルは、
(g)段階により、心臓モデル全体を最大勾配の大きさに応じた色で出力することができ、ユーザが心臓モデル上の任意の座標を選択した場合、その座標における最大勾配が数値で出力され、前記電圧値を測定するために、前記心臓モデルに印加した電気信号の刺激周期と前記電気信号を印加した位置とを一緒に出力する
活動電位持続時間回復特性を反映した心臓モデル生成方法。
【請求項2】
前記心臓モデルは、患者別に生成した3次元心房モデルである、
請求項1に記載の活動電位持続時間回復特性を反映した心臓モデル生成方法。
【請求項3】
前記N個の座標は、450,000個の座標である、
請求項1に記載の活動電位持続時間回復特性を反映した心臓モデル生成方法。
【請求項4】
前記第1の所定時間の間隔は、1ms、2ms、および3msのいずれか一つである、
請求項1に記載の活動電位持続時間回復特性を反映した心臓モデル生成方法。
【請求項5】
前記(d)段階の弛緩期と活動電位持続時間との相関関係は、下記のような相関関係の算出式によって算定される、
請求項1に記載の活動電位持続時間回復特性を反映した心臓モデル生成方法。
相関関係の算出式:y(活動電位持続時間)=y0+A1(1-e
-弛緩期/τ1)
(ここで、y0およびA1は、フリーフィッティング変数(Free-Fitting Variable)、τ1は時常数(Time Constant)である。)
【請求項6】
前記最大勾配は、前記相関関係の算出式を前記弛緩期に対して微分して算定する、
請求項5に記載の活動電位持続時間回復特性を反映した心臓モデル生成方法。
【請求項7】
前記算定した最大勾配の大きさの範囲は、0.3~2.3であ
る、
請求項1に記載の活動電位持続時間回復特性を反映した心臓モデル生成方法。
【請求項8】
一つ以上のプロセッサ;
ネットワークインターフェース;
前記プロセッサによって遂行されるコンピュータプログラムをロード(Load)するメモリー;および
大容量ネットワークデータ及び前記コンピュータプログラムを保存するストレージ;を含み、
前記コンピュータプログラムは、前記一つ以上のプロセッサによって、
(a)N(Nは1以上の自然数)個の座標を含む心臓モデル及び前記心臓モデルが含むN個の座標で第1の所定時間の間隔別に測定した電圧値を含む時間別電圧データをローディングする操作(Operation);
(b)前記ローディングした時間別電圧データを用いて前記心臓モデルが含む特定の座標での前記第1の所定時間の間隔内に含まれる電圧値の最高点対比90%下がった電圧値を示す箇所(APD90)から、次の第1の所定時間の間隔内に含まれる電気刺激を受けた箇所までの時間である弛緩期を算定する操作;
(c)前記ローディングした時間別電圧データを用いて前記心臓モデルが含む特定の座標での前記次の第1の所定時間の間隔内に含まれる電気刺激を受けた箇所から、前記次の第1の所定時間の間隔内に含まれる電圧値の最高点対比90%下がった電圧値を示す箇所(APD90)までの時間である活動電位持続時間を算定する操作;
(d)前記算定した心臓モデルが含む特定の座標での弛緩期と活動電位持続時間との相関関係を算定し、前記算定した相関関係を用いて最大勾配(Slope)を算定する操作;および
(e)前記算定した最大勾配を前記心臓モデルが含む特定の座標に反映して視覚的に出力する操作;
を行
い、
上記(e)操作における視覚的な出力は、
前記算定した最大勾配の大きさに応じて、前記心臓モデルが含む特定座標上で色を異にして出力するものであって、
上記(e)操作の後、
(f)前記(b)~(e)操作を、前記特定の座標を除いた前記心臓モデルが含むN個の全ての座標に対して繰り返し遂行する操作;および
(g)心臓モデルが含むN個の座標を除いた前記心臓モデルの残りの領域に対して、前記心臓モデルが含むN個の座標に対して推定した最大勾配に補間法を適用して視覚的に出力する操作;
をさらに含み、
上記心臓モデルは、
(g)操作により、心臓モデル全体を最大勾配の大きさに応じた色で出力することができ、ユーザが心臓モデル上の任意の座標を選択した場合、その座標における最大勾配が数値で出力され、前記電圧値を測定するために、前記心臓モデルに印加した電気信号の刺激周期と前記電気信号を印加した位置とを一緒に出力する
活動電位持続時間回復特性を反映した心臓モデル生成装置。
【請求項9】
コンピュータ装置と結合して、
(a)N(Nは1以上の自然数)個の座標を含む心臓モデル及び前記心臓モデルが含むN個の座標で第1の所定時間の間隔別に測定した電圧値を含む時間別電圧データをローディングする段階;
(b)前記ローディングした時間別電圧データを用いて前記心臓モデルが含む特定の座標での前記第1の所定時間の間隔内に含まれる電圧値の最高点対比90%下がった電圧値を示す箇所(APD90)から、次の第1の所定時間の間隔内に含まれる電気刺激を受けた箇所までの時間である弛緩期を算定する段階;
(c)前記ローディングした時間別電圧データを用いて前記心臓モデルが含む特定の座標での前記次の第1の所定時間の間隔内に含まれる電気刺激を受けた箇所から、前記次の第1の所定時間の間隔内に含まれる電圧値の最高点対比90%下がった電圧値を示す箇所(APD90)までの時間である活動電位持続時間を算定する段階;
(d)前記算定した心臓モデルが含む特定の座標での弛緩期と活動電位持続時間との相関関係を算定し、前記算定した相関関係を用いて最大勾配(Slope)を算定する段階;および
(e)前記算定した最大勾配を前記心臓モデルが含む特定の座標に反映して視覚的に出力する段階;
を実行させるために媒体に格納されたコンピュータプログラム
において、
上記(e)段階での視覚的出力は、
前記算定した最大勾配の大きさに応じて、前記心臓モデルが含む特定座標上で色を異にして出力するものであって、
上記(e)段階の後、
(f)前記(b)~(e)段階を前記特定の座標を除いた前記心臓モデルが含むN個の全ての座標に対して繰り返し遂行する段階;および
(g)心臓モデルが含むN個の座標を除いた前記心臓モデルの残りの領域に対して、前記心臓モデルが含むN個の座標に対して推定した最大勾配に補間を適用して視覚的に出力する段階;
をさらに含み、
上記心臓モデルは、
(g)段階により、心臓モデル全体を最大勾配の大きさに応じた色で出力することができ、ユーザが心臓モデル上の任意の座標を選択した場合、その座標における最大勾配が数値で出力され、前記電圧値を測定するために、前記心臓モデルに印加した電気信号の刺激周期と前記電気信号を印加した位置とを一緒に出力する
媒体に格納されたコンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は活動電位持続時間回復特性を反映した心臓モデル生成方法及び生成装置に関する。より詳しくは3次元心臓モデルが含むすべての箇所での弛緩期と活動電位持続時間との相関関係に対する最大勾配を視覚的に出力することができる活動電位持続時間回復特性を反映した心臓モデル生成方法及び生成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
不整脈(Arrhythmia)とは、心房細動が発生することによって心臓で電気刺激が作られにくいか、刺激の伝達がまともに行われず、規則的に収縮し続けられなくて心臓拍動が非正常的に早くなったり、遅くなったりするか、あるいは不規則になる症状をいい、急死や脳卒中の原因を提供する。
【0003】
不整脈の治療方法としては、高周波電気メス切除術のように心臓組職を焼灼することで心臓の電気的伝導を遮断して不整脈を防止することができる手術療法があるが、心臓のどの部位にどれくらいの強度で切除手術を施行してこそ最適の効果が奏されるのかを事前に把握し難いという問題点がある。
【0004】
このような高周波電気メス切除術の問題点は、心房細動が発生する箇所、並びに心房細動の発生可能性の高い箇所を高周波電気メス切除術に先立って正確に検出することができたら解決可能なものであるから、これらの箇所に高周波電気メス切除術を施すことで発生した心房細動を除去することができるとともに、今後発生する恐れのある心房細動まで予防することができるようになる。
【0005】
一方、従来は心房細動が発生する箇所と係わって心電図(Electrocardiography、ECG)信号を利用した時間/周波数分析方法が開発されたが、心電図信号それ自体が雑音に露出しており、制限されたデータ長と非定常性(Non Stationary)を内包しているので、心房細動が発生する箇所を正確に検出しにくく、時間/周波数分析方法それ自体に所要となる費用がかなり高いという問題点があるとともに、ひいて心房細動の発生可能性の高い箇所は検出できないという問題点もある。
【0006】
したがって、心房細動が発生する箇所、並びに心房細動の発生可能性の高い箇所を高周波電気メス切除術の以前に負担のない費用で正確に検出することができる新しい技術が求められる。本発明はこれに関するものである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明が解決しようとする技術的課題は、心房細動が発生する箇所、並びに心房細動の発生可能性の高い箇所を高周波電気メス切除術に先立って正確に検出することができる方法及び装置を提供することである。
【0008】
本発明が解決しようとするまた他の技術的課題は、心房細動が発生する箇所、並びに心房細動の発生可能性の高い箇所を負担のない費用で検出することで、患者の経済的な負担を最小化させることができる方法及び装置を提供することである。
【0009】
本発明の技術的課題は、前述した技術的課題に限定されなく、言及されていない別の技術的課題は下記の記載から通常の技術者にとって明確に理解できるはずである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記技術的課題を達成するための本発明の一実施形態による活動電位持続時間回復特性を反映した心臓モデル生成方法は、(a)N(Nは1以上の自然数)個の座標を含む心臓モデル及び前記心臓モデルが含むN個の座標で第1の所定時間の間隔別に測定した電圧値を含む時間別電圧データをローディングする段階、(b)前記ローディングした時間別電圧データを用いて前記心臓モデルが含む特定の座標での前記第1の所定時間の間隔内に含まれる電圧値の最高点対比90%下がった電圧値を示す箇所(APD90)から、次の第1の所定時間の間隔内に含まれる電気刺激を受けた箇所までの時間である弛緩期を算定する段階、(c)前記ローディングした時間別電圧データを用いて前記心臓モデルが含む特定の座標での前記次の第1の所定時間の間隔内に含まれる電気刺激を受けた箇所から、前記次の第1の所定時間の間隔内に含まれる電圧値の最高点対比90%下がった電圧値を示す箇所(APD90)までの時間である活動電位持続時間を算定する段階、(d)前記算定した心臓モデルが含む特定の座標での弛緩期と活動電位持続時間との相関関係を算定し、前記算定した相関関係を用いて最大勾配(Slope)を算定する段階、および(e)前記算定した最大勾配を前記心臓モデルが含む特定の座標に反映して視覚的に出力する段階、を含む。
【0011】
一実施形態によれば、前記心臓モデルは、患者別に生成した3次元心房モデルであることができる。
【0012】
一実施形態によれば、前記N個の座標は、450,000個の座標であることができる。
【0013】
一実施形態によれば、前記第1の所定時間の間隔は、1ms、2ms、および3msのいずれか一つであってもよい。
【0014】
一実施形態によれば、前記(d)段階の弛緩期と活動電位持続時間との相関関係は、下記のような相関関係の算出式によって算定され得る。
【0015】
(数1)
相関関係の算出式:y(活動電位持続時間)=y0+A1(1-e-弛緩期/τ1)
(ここで、y0およびA1は、フリーフィッティング変数(Free-Fitting Variable)、 τ1は時常数(Time Constant)である。)
【0016】
一実施形態によれば、前記最大勾配は、前記相関関係の算出式を前記弛緩期に対して微分して算定することができる。
【0017】
一実施形態よれば、前記(e)段階の以降に、(f)前記(b)~(e)段階を前記特定の座標を除いた前記心臓モデルが含むN個の全ての座標に対して繰り返して遂行する段階をさらに含むことができる。
【0018】
一実施形態よれば、前記(f)段階の以降に、(g)前記心臓モデルが含むN個の座標を除いた前記心臓モデルの残りの領域に対して、前記心臓モデルが含むN個の座標に対して算定した最大勾配に補間法を適用して視覚的に出力する段階をさらに含むことができる。
【0019】
一実施形態よれば、前記算定した最大勾配の大きさの範囲は、0.3~2.3であり、前記(e)段階の視覚的な出力は、前記算定した最大勾配の大きさによって色相を異にして出力するものであってもよい。
【0020】
前記技術的課題を達成するための本発明のまた他の実施形態による活動電位持続時間回復特性を反映した心臓モデル生成装置は、一つ以上のプロセッサ、ネットワークインターフェース、前記プロセッサによって遂行されるコンピュータプログラムをロード(Load)するメモリー、および大容量ネットワークデータ及び前記コンピュータプログラムを保存するストレージを含み、前記コンピュータプログラムは、前記一つ以上のプロセッサによって、(a)N(Nは1以上の自然数)個の座標を含む心臓モデル及び前記心臓モデルが含むN個の座標で第1の所定時間の間隔別に測定した電圧値を含む時間別電圧データをローディングする操作(Operation)、(b)前記ローディングした時間別電圧データを用いて前記心臓モデルが含む特定の座標での前記第1の所定時間の間隔内に含まれる電圧値の最高点対比90%下がった電圧値を示す箇所(APD90)から、次の第1の所定時間の間隔内に含まれる電気刺激を受けた箇所までの時間である弛緩期を算定する操作、(c)前記ローディングした時間別電圧データを用いて前記心臓モデルが含む特定の座標での前記次の第1の所定時間の間隔内に含まれる電気刺激を受けた箇所から、前記次の第1の所定時間の間隔内に含まれる電圧値の最高点対比90%下がった電圧値を示す箇所(APD90)までの時間である活動電位持続時間を算定する操作、(d)前記算定した心臓モデルが含む特定の座標での弛緩期と活動電位持続時間との相関関係を算定し、前記算定した相関関係を用いて最大勾配(Slope)を算定する操作、および(e)前記算定した最大勾配を前記心臓モデルが含む特定の座標に反映して視覚的に出力する操作を行う。
【0021】
前記技術的課題を達成するための本発明のまた別の実施形態による媒体に格納されたコンピュータプログラムは、コンピュータ装置と結合して、(a)N(Nは1以上の自然数)個の座標を含む心臓モデル及び前記心臓モデルが含むN個の座標で第1の所定時間の間隔別に測定した電圧値を含む時間別電圧データをローディングする段階、(b)前記ローディングした時間別電圧データを用いて前記心臓モデルが含む特定の座標での前記第1の所定時間の間隔内に含まれる電圧値の最高点対比90%下がった電圧値を示す箇所(APD90)から、次の第1の所定時間の間隔内に含まれる電気刺激を受けた箇所までの時間である弛緩期を算定する段階、(c)前記ローディングした時間別電圧データを用いて前記心臓モデルが含む特定の座標での前記次の第1の所定時間の間隔内に含まれる電気刺激を受けた箇所から、前記次の第1の所定時間の間隔内に含まれる電圧値の最高点対比90%下がった電圧値を示す箇所(APD90)までの時間である活動電位持続時間を算定する段階、(d)前記算定した心臓モデルが含む特定の座標での弛緩期と活動電位持続時間との相関関係を算定し、前記算定した相関関係を用いて最大勾配(Slope)を算定する段階、および(e)前記算定した最大勾配を前記心臓モデルが含む特定の座標に反映して視覚的に出力する段階を実行させる。
【発明の効果】
【0022】
前記のような本発明によれば、心臓モデルに弛緩期と活動電位持続時間との相関関係に対する勾配が視覚的にリアルタイムで出力されるところ、ユーザーは最終的に出力される心臓モデルをリアルタイムで確認しつつ心房細動が発生する箇所、並びに心房細動の発生可能性の高い箇所を高周波電気メス切除術に先立って正確に検出することができるという効果がある。
【0023】
また、最終的に出力される心臓モデルの生成の際に用いられる時間別電圧データは、不整脈患者が通常測定する検査に対する結果データであって、費用が高くないので患者の経済的な負担を最小化させることができるという効果がある。
【0024】
これらの本発明の効果は、前述した効果に限定されなく、言及されていない別の効果は下記の記載から通常の技術者にとって明確に理解できるだろう。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】
図1は、本発明の第1の実施形態による活動電位持続時間回復特性を反映した心臓モデル生成装置が含む全体構成を示した図である。
【
図2】
図2は、本発明の第2の実施形態による活動電位持続時間回復特性を反映した心臓モデル生成方法の代表的な段階を示した流れ図である。
【
図3】
図3は、N個の座標を含む心臓モデルを例示的に示した図である。
【
図4】
図4は、心臓モデルが含むN個の座標で第1の所定時間の間隔別に測定した電圧値を含む時間別電圧データを例示的に示した図である。
【
図5】
図5は、
図4に示された第1座標~第N座標のいずれか一つの特定の座標で第1の所定時間の間隔別に測定した電圧値の一部を拡大して示した図である。
【
図6】
図6は、
図5に示された図において弛緩期を追加で示した図である。
【
図7】
図7は、
図6に示された図において活動電位持続時間を追加で示した図である。
【
図8】
図8は、特定の座標で測定する間の弛緩期と活動電位持続時間との相関関係を相関関係の算出式によって例示的なグラフで示した図である。
【
図9】
図9は、
図8に示された図において複数個の勾配のうち最大勾配を追加で示した図である。
【
図10】
図10は、
図3に示された心臓モデルにおいて特定の座標の最大勾配を色相で表示した図である。
【
図11】
図11は、
図2に示された流れ図においてS250段階の以降に遂行される段階を追加して示した流れ図である。
【
図12】
図12は、
図10に示された心臓モデルに補間法を適用して全ての領域に対する最大勾配を色相で表示した図である。
【
図13】
図13は、ユーザーがマウスを通じて心臓モデルの特定の座標を選択するとき、当該座標での最大勾配が数値的に出力される姿を示した図である。
【
図14】
図14は、心臓モデルと一緒に電気信号の刺激周期が一緒に出力される姿を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、添付の図面を参照して本発明の望ましい実施形態を詳しく説明する。
発明の利点及び特徴、そしてそれらを達成する方法は、添付される図面と共に詳細に後述する実施形態を参照すれば明確になるだろう。しかし、本発明は以下に開示される実施形態に限定されるものではなく、相異なる多様な形態で具現されることができ、ただ本実施形態は本発明の開示を完全にし、本発明の属する技術分野における通常の知識を持つ者に発明の範疇を完全に知らせるために提供されるものであり、もっぱら本発明は特許請求の範囲の範疇によって定義されるものである。明細書の全体に亘って同一の符号は、同じ構成要素を指す。
【0027】
他の定義がなければ、本明細書で使われるすべての用語(技術及び科学的用語を含む)は、本発明の属する技術分野における通常の知識を持つ者に共通的に理解され得る意味で使われることができるはずである。また一般に使用される辞典に定義されている用語は、明白に特に定義されていない限り、理想的にまたは過度に解釈されない。本明細書で使用された用語は、実施形態を説明するためのものであって、本発明を限定しようとするものではない。本明細書において、単数型は文言で特に言及しない限り複数型をも含む。
【0028】
明細書で使用される「含む(comprises)」及び/または「包含する(comprising)」は、言及した構成要素、段階、動作及び/または素子は一つ以上の他の構成要素、段階、動作及び/または素子の存在または追加を排除しない。
【0029】
図1は本発明の第1の実施形態による活動電位持続時間回復特性を反映した心臓モデル生成装置100が含む全体構成を示した図である。
【0030】
しかし、これは本発明の目的を達成するための望ましい実施形態に過ぎず、必要に応じて一部の構成が追加または削除されることができ、ある一つの構成が遂行する役割を他の構成が一緒に遂行することもできることは勿論のことである。
【0031】
本発明の第1の実施形態による活動電位持続時間回復特性を反映した心臓モデル生成装置100は、プロセッサ10、ネットワークインターフェース20、メモリー30、ストレージ40、及びこれらを連結するデータバス50を含むことができる。
【0032】
プロセッサ10は各構成の全般的な動作を制御する。プロセッサ10は、CPU(Central Processing Unit)、MPU(Micro Processer Unit)、MCU(Micro Controller Unit)または本発明の属する技術分野において広く知られている形態のプロセッサのいずれか一つであってもよい。尚、プロセッサ10は、本発明の第2の実施形態による活動電位持続時間回復特性を反映した心臓モデル生成方法を遂行するための少なくとも一つのアプリケーションまたはプログラムに対する演算を行うことができる。
【0033】
ネットワークインターフェース20は、本発明の第1の実施形態による活動電位持続時間回復特性を反映した心臓モデル生成装置100の有無線インターネット通信を支援し、その他の公知の通信方式を支援することもできる。したがって、ネットワークインターフェース20はそれに応じた通信モジュールを含んでなることができる。
【0034】
メモリー30は、各種データ、命令及び/または情報を保存し、本発明の第2の実施形態による活動電位持続時間回復特性を反映した心臓モデル生成方法を遂行するためにストレージ40から一つ以上のコンピュータプログラム41をロードすることができる。
図1ではメモリー30の一つとしてRAMを示したが、これと一緒に多様な格納媒体をメモリー30として利用することができることは言うまでもない。
【0035】
ストレージ40は、一つ以上のコンピュータプログラム41及び大容量ネットワークデータ42を非臨時的に保存することができる。このようなストレージ40は、ROM(Read Only Memory)、EPROM(Erasable Programmable ROM)、EEPROM(Electrically Erasable Programmable ROM)、フラッシュメモリーなどのような不揮発性メモリー、ハードディスク、着脱可能ディスク、または本発明の属する技術分野において広く知られている任意の形態のコンピュータで読み取り可能な記録媒体のいずれか一つであることができる。
【0036】
コンピュータプログラム41は、メモリー30にロードされて、一つ以上のプロセッサ10によって(a)N(Nは1以上の自然数)個の座標を含む心臓モデル及び前記心臓モデルが含むN個の座標で第1の所定時間の間隔別に測定した電圧値を含む時間別電圧データをローディングする操作、(b)前記ローディングした時間別電圧データを用いて前記心臓モデルが含む特定の座標での前記第1の所定時間の間隔内に含まれる電圧値の最高点対比90%下がった電圧値を示す箇所(APD90)から、次の第1の所定時間の間隔内に含まれる電気刺激を受けた箇所までの時間である弛緩期を算定する操作、(c)前記ローディングした時間別電圧データを用いて前記心臓モデルが含む特定の座標での前記次の第1の所定時間の間隔内に含まれる電気刺激を受けた箇所から、前記次の第1の所定時間の間隔内に含まれる電圧値の最高点対比90%下がった電圧値を示す箇所までの時間である活動電位持続時間を算定する操作、(d)前記算定した心臓モデルが含む特定の座標での弛緩期と活動電位持続時間との相関関係を算定し、前記算定した相関関係を用いて最大勾配を算定する操作、および(e)前記算定した最大勾配を前記心臓モデルが含む特定の座標に反映して視覚的に出力する操作を行うことができる。
【0037】
これまで簡単に言及したコンピュータプログラム41が遂行する操作(Operation)は、コンピュータプログラム41の一機能として見られ、より詳しい説明は本発明の第2の実施形態による活動電位持続時間回復特性を反映した心臓モデル生成方法に対する説明で後述する。
【0038】
以下、本発明の第2の実施形態による活動電位持続時間回復特性を反映した心臓モデル生成方法について
図2~
図14を参照して説明する。
【0039】
図2は本発明の第2の実施形態による活動電位持続時間回復特性を反映した心臓モデル生成方法の代表的な段階を示した流れ図である。
【0040】
これは本発明の目的を達成するにおいて望ましい実施形態に過ぎず、必要に応じて一部の段階が追加または削除されてもよく、ひいてある一つの段階が他の段階に含まれてもよいことは言うまでもない。
【0041】
一方、すべての段階は、本発明の第1の実施形態による活動電位持続時間回復特性を反映した心臓モデル生成装置100によって遂行されることを前提とする。
【0042】
まず、N(Nは1以上の自然数)個の座標を含む心臓モデル及び心臓モデルが含むN個の座標で第1の所定時間の間隔別に測定した電圧値を含む時間別電圧データをローディングする(S210)。
【0043】
ここで、N個の座標を含む心臓モデルは、
図3に例示的に示されているので、これを参照すれば心臓モデルは患者別に生成した3次元の心房モデルであることができるが、必ずしもこれに限定するものではなく、場合によって2次元の心房モデルを利用することもできる。しかし、実際の患者の心臓は、立体的な形状を有しており、心房細動が発生する箇所、並びに心房細動の発生可能性の高い箇所が、2次元で表現できない領域に存在する可能性もあるから3次元の心房モデルを使用することが望ましいと言える。
【0044】
一方、
図3には視覚的に識別し難いN個の座標を別途示していないが、N個の座標は心臓モデル上の特定箇所に対する座標であることができる。
【0045】
より具体的に、Nは1以上の自然数であるが、心臓モデルが含むすべての箇所で心房細動が発生する箇所、並びに心房細動の発生可能性の高い箇所を検出するための発明の趣旨上、Nを高い数字に設定して正確度を向上させることが望ましい。例えば、Nは250,000~650,000の間の数字であることができ、Nが小さい場合、演算速度は早くなるものの正確度は低下し、Nが大きい場合、正確度は向上するものの演算速度が遅くなることがあり得るので、演算速度と正確度をいずれも考慮してNを450,000に設定することが最も望ましいと言え、これは本発明の第1の実施形態による活動電位持続時間回復特性を反映した心臓モデル生成装置100の設計者またはこれを使用する医者などのようなユーザーが自由に設定可能である。
【0046】
図4は、心臓モデルが含むN個の座標で第1の所定時間の間隔別に測定した電圧値を含む時間別電圧データを例示的に示した図である。
【0047】
図4を参照すれば、時間別電圧データは前述したN個の座標皆に対して測定した電圧値をいずれも含んでいることを確認することができ、そうではなければ、心臓モデルが含む座標の個数と時間別電圧データが含む電圧値を測定した座標の個数とに対する同期化が必要であると言える。
【0048】
例えば、心臓モデルが含むN個の座標が450,000個の座標であり、測定した電圧値は500,000個の座標に関するものである場合、これらを450,000個の座標に対するものに一致させる同期化が必要なことである。
【0049】
しかし、心臓モデルと時間別電圧データが同一の装置または同一のプログラムを通じて同時または順次に生成された場合、生成した心臓モデルが含むN個の座標に対して電圧値を測定した上で時間別電圧データが生成されるはずなので別途の同期化は必要ではない。
【0050】
第1の所定時間の間隔は、電圧値の周期性を考慮して設定することができるため、心臓から測定した電圧値は一定の周期をもって繰り返す性質があり、これは
図4にも例示的に示されている。したがって、第1の所定時間の間隔は、このような電圧値の周期を反映して設定することが望ましいので、1ms、2ms及び3msのいずれか一つを第1の所定時間の間隔に設定するのが好ましく、
図4では1msを第1の所定時間の間隔にして電圧値を測定したことを確認することができ、次にこれを基準として説明を続ける。
【0051】
一方、以上のようなS210段階は、心臓モデル及び時間別電圧データをローディングすることを基準として説明したが、ここでローディングは心臓モデル及び時間別電圧データが本発明の第1の実施形態による活動電位期間回復特性を反映した心臓モデル生成装置100に既に保存されている場合に該当し、外部装置を通じて心臓モデル及び時間別電圧データを受信する場合には、ローディングは入力と認められる。
【0052】
心臓モデルと時間別電圧データをローディングしたら、ローディングした時間別電圧データを用いて心臓モデルが含む特定の座標での第1の所定時間の間隔内に含まれる電圧値の最高点対比90%下がった電圧値を示す箇所(APD90)から、次の第1の所定時間の間隔内に含まれる電気刺激を受けた箇所までの時間である弛緩期を算定する(S220)。
【0053】
図5は、
図4に示された第1座標~第N座標の中でいずれか一つの特定の座標で第1の所定時間の間隔別に測定した電圧値の一部を拡大して示した図であり、第1の所定時間の間隔は1msである。
【0054】
図5を参照すれば、第1の所定時間の間隔である1msを周期として電圧値が比較的類似した傾向で繰り返されていることを確認することができ、第1の所定時間の間隔内の電圧値にO印とX印が付してあることを確認することができる。ここで、O印を付した箇所が電圧値の最高点対比90%下がった電圧値を示す箇所であるAPD90であり、X印を付した箇所が後述する電気刺激を受けた箇所である脱分極または再分極が開始される箇所である。
【0055】
最も先に開始される第1の所定時間の間隔内の電圧値を参照すると、中間程度の箇所で電圧値が最高点を示していることを確認することができ、APD90は電圧値の最高点対比90%下がった電圧値を示す箇所なので電圧値の最高点以後の箇所であらざるを得ない。
【0056】
一方、弛緩期を算定するためには、前述したAPD90だけでなく電気刺激を受けた箇所も検出が必要であるため、ここで電気刺激を受けた箇所の検出はAPD90を含む第1の所定時間の間隔の次の第1の所定時間の間隔を基準とする。例えば、
図5に示された第1の所定時間の間隔のうち、最も先に開始される第1の所定時間の間隔を第Aの所定時間とし、その次の第1の所定時間の間隔を第Bの所定時間としたら、第Aの所定時間内で検出されたAPD90に対して弛緩期の算定のための電気刺激を受けた箇所は、第Bの所定時間に含まれる箇所である。
【0057】
図6は、
図5に示された図において弛緩期を追加で示した図であるので、弛緩期はAPD90と電気刺激を受けた箇所との間の期間、より具体的に第1の所定時間の間隔内に含まれるAPD90と、その次の第1の所定時間の間隔内に含む電気刺激を受けた箇所との間の期間であることを確認することができる。
【0058】
【0059】
弛緩期を算定したらローディングした時間別電圧データを用いて心臓モデルが含む特定の座標での次の第1の所定時間の間隔内に含まれる電気刺激を受けた箇所から、次の第1の所定時間の間隔内に含まれる電圧値の最高点対比90%下がった電圧値を示す箇所(APD90)までの時間である活動電位持続時間を算定する(S230)。
【0060】
ここで、次の第1の所定時間の間隔内に含まれる電気刺激を受けた箇所は、前述したS220段階に関する説明で言及した次の第1の所定時間の間隔内に含まれる電気刺激を受けた箇所と同一なので、重複説明を避けるために詳しい説明は省略する。
【0061】
一方、次の第1の所定時間の間隔内に含まれる電圧値の最高点対比90%下がった電圧値を示す箇所であるAPD90に対する説明も前述したS220段階に関する説明で言及した第1の所定時間の間隔内に含むAPD90と基本的に同一であるが、S220段階との相違点は、APD90が第1の所定時間の間隔内に含まれる箇所ではなく、次の第1の所定時間の間隔内に含まれる箇所であるということである。例えば、先のS220段階でのAPD90が第Aの所定時間の間隔内に含まれる箇所であったら、S230段階でのAPD90は第Bの所定時間の間隔内に含まれる箇所であるわけである。
【0062】
図7は、
図6に示された図において、活動電位持続時間を追加で示した図であるので、活動電位持続時間は電気刺激を受けた箇所とAPD90との間の期間、より具体的に第1の所定時間の次の第1の所定時間の間隔内に含まれる電気刺激を受けた箇所と、当該第1の所定時間の間隔内に含まれるAPD90との間の期間であることを確認することができる。
【0063】
以上で説明したS220段階及びS230段階をまとめると、算定した弛緩期の終点は、算定した活動電位持続時間の始点となり、このような弛緩期と活動電位持続時間との関係は、第1の所定時間の間隔の次の第1の所定時間の間隔の以後でも引き続き維持されるといえる。すなわち、特定の座標を基準で弛緩期-活動電位持続時間-弛緩期-活動電位持続時間-弛緩期-活動電位持続時間…の関係が維持されるはずであり、それによってS230段階後に、S220段階及びS230段階がすべての測定時間に対して繰り返して遂行するS235段階がさらに行われることができる。
【0064】
なお、説明の便宜上、S220段階とS230段階に対する説明を分離したが、S220段階とS230段階、およびS235段階は、並列プロセッシングを通じて同時に行われることができ、この場合、演算速度が飛躍的に向上することができる。
【0065】
弛緩期と活動電位が期間を算定したら、算定した心臓モデルが含む特定の座標での弛緩期と活動電位持続時間との相関関係を算定し、算定した相関関係を用いて最大勾配(Slope)を算定する(S240)。
【0066】
ここで、特定の座標での弛緩期と活動電位持続時間との相関関係は下記のような相関関係算出式を通じて算出されることができる。
【0067】
(数2)
相関関係の算出式:y(活動電位持続時間)=y0+A1(1-e-弛緩期/τ1)
(ここで、y0およびA1は、フリーフィッティング変数(Free-Fitting Variable)、τ1は時常数(Time Constant)であり、y0は最初50、弛緩期は10、τ1は30に設定することができ、最小値がそれぞれ-50、-10、-30であり、最大値がそれぞれ1000、1000、1000である範囲内で自由に設定することができる。
【0068】
図8は、特定の座標で弛緩期と活動電位持続時間との相関関係を、相関関係算出式を通じて例示的なグラフで示した図であるところ、相関関係算出式それ自体と
図8を参照すれば確認できるように一種の関数であるから、弛緩期に対する微分をすれば勾配を算定することができる。
【0069】
(数3)
勾配:(A1/τ1)・e-弛緩期/τ1)
【0070】
一方、S240段階で算定しようとする勾配は、最大勾配であるから、特定の座標での弛緩期及び活動電位持続時間がそれぞれ1つだけ算定された場合、当該弛緩期と活動電位持続時間との相関関係に対する勾配が最大勾配となるはずであるが、先にS235段階が行われることによって特定の座標で全ての測定時間に対して弛緩期及び活動電位持続時間が算定されることができるので、この場合、算定した勾配は、複数個になり、これらの中で最も大きい勾配が最大勾配と算定されることができ、
図8もこれを基準で示しており、
図9には複数個の勾配の中で最大勾配を別途表示した。
【0071】
最大勾配を算定したら、算定した最大勾配を心臓モデルが含む特定の座標に反映して視覚的に出力する(S250)。
【0072】
ここで視覚的に出力することは、多様な方法で具現することができるところ、算定した最大勾配の大きいに応じて当該座標での色相を異にして出力するか、最大勾配の数値、例えば、0.3~2.3の範囲で当該最大勾配の大きさの数値を直接的に出力するものであってもよい。
【0073】
図10は、
図3に示された心房モデルにおいて、特定の座標の最大勾配を色相で表示した図であるところ、特定の座標は一つの点であるから色相で点を表示するだけではユーザーが識別しにくいので、それによって
図11に示されたように、S250段階の以降に、S220段階~S250段階を特定の座標を除いた心臓モデルが含むN個のすべての座標に対して繰り返し行う段階(S260)と、心臓モデルが含むN個の座標を除いた心臓モデルの残りの領域に対して、心臓モデルが含むN個の座標に対して算定した最大勾配に補間法を適用して視覚的に出力する段階(S270)とがさらに行われることができる。
【0074】
前述のS220段階~S250段階に関する説明は、心臓モデルが含むN個の座標のうち、いずれか一つの特定の座標に対するものであって、S260段階によって当該特定の座標を除いたN個のすべての座標に対してS220段階~S250段階を行うと、N個のすべての座標に対して最大勾配が視覚的に出力されることができる。しかし、この場合もN個の座標はN個の点であるから座標の中で視覚的に出力されない領域が発生するしかないので、これを解決することができるものがS270段階である。
【0075】
ここで、補間法は、補間しようとする領域の周りに視覚的に出力された事項または最大勾配に基づいて当該補間しようとする領域を視覚的に出力するものなので、最大勾配の大きさ順に、赤色、橙色、黄色、緑色、青色、藍色及び紫色を用いて視覚的に出力することができ、それに従う心臓モデルを
図12に示した。
【0076】
一方、
図12に示された心臓モデルの左側中間の黒色領域は、電気刺激を与えた位置を意味し、
図13に示されているように、ユーザーがマウスなどのような入力装置を通じて心臓モデルの特定の座標を選択する場合、前述の如く当該座標での最大勾配が数値で出力されることもでき、
図14に示されているように、電気信号の刺激周期を心臓モデルと一緒に数値で一緒に出力することもできる。
【0077】
これまで本発明の第2の実施形態による活動電位持続時間回復特性を反映した心臓モデル生成方法について説明した。弛緩期と活動電位持続時間との相関関係に対する最大勾配の大きさが1以上の座標は、心房細動が発生した箇所または心房細動の発生可能性の高い箇所と認められることが研究を通じて導出された事項であるから、ユーザーは最終的に出力される心臓モデルをリアルタイムで確認しつつ心房細動が発生する箇所、並びに心房細動の発生可能性の高い箇所を高周波電気メス切除術に先立って正確に検出することができる。これに併せて、最終的に出力される心臓モデルの生成の際に用いられる時間別電圧データは、不整脈患者が通常測定する検査に対する結果データであり、費用が高くないので患者の経済的な負担を最小化させることができる。
【0078】
一方、本発明の他の第2の実施形態による活動電位持続時間回復特性を反映した心臓モデル生成方法は、コンピュータで実行させるために格納媒体に格納されたコンピュータプログラムで具現することもできる。
【0079】
重複説明を避けるために詳しく説明しないが、格納媒体に格納されたコンピュータプログラムも、前述した本発明の他の第2の実施形態による活動電位持続時間回復特性を反映した心臓モデル生成装置と同一の段階を遂行することができ、それによって同じ効果を導くことができる。例えば、媒体に格納されたコンピュータプログラムは、コンピュータ装置と結合して、(a)N(Nは1以上の自然数)個の座標を含む心臓モデル及び前記心臓モデルが含むN個の座標で第1の所定時間の間隔別に測定した電圧値を含む時間別電圧データをローディングする段階、(b)前記ローディングした時間別電圧データを用いて前記心臓モデルが含む特定の座標での前記第1の所定時間の間隔内に含まれる電圧値の最高点対比90%下がった電圧値を示す箇所(APD90)から、次の第1の所定時間の間隔内に含まれる電気刺激を受けた箇所までの時間である弛緩期を算定する段階、(c)前記ローディングした時間別電圧データを用いて前記心臓モデルが含む特定の座標での前記次の第1の所定時間の間隔内に含まれる電気刺激を受けた箇所から、前記次の第1の所定時間の間隔内に含まれる電圧値の最高点対比90%下がった電圧値を示す箇所(APD90)までの時間である活動電位持続時間を算定する段階、(d)前記算定した心臓モデルが含む特定の座標での弛緩期と活動電位持続時間との相関関係を算定し、前記算定した相関関係を用いて最大勾配(Slope)を算定する段階、および(e)前記算定した最大勾配を前記心臓モデルが含む特定の座標に反映して視覚的に出力する段階を実行させることができる。
【0080】
以上、添付された図面を参照して本発明の実施形態を説明したが、本発明の属する技術分野における通常の知識を持つ者ならその技術的思想や必須の特徴を変更することなく他の具体的な形態で実施可能であることを理解することができるだろう。したがって、以上で述べた実施形態はあらゆる面で例示的なものに過ぎず、限定的なものではないことを理解しなければならない。