(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-09
(45)【発行日】2023-03-17
(54)【発明の名称】検体搬送システム
(51)【国際特許分類】
G01N 35/02 20060101AFI20230310BHJP
B65G 54/02 20060101ALI20230310BHJP
【FI】
G01N35/02 G
B65G54/02
(21)【出願番号】P 2021534531
(86)(22)【出願日】2020-03-11
(86)【国際出願番号】 JP2020010627
(87)【国際公開番号】W WO2021014676
(87)【国際公開日】2021-01-28
【審査請求日】2022-01-06
(31)【優先権主張番号】P 2019136004
(32)【優先日】2019-07-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】501387839
【氏名又は名称】株式会社日立ハイテク
(74)【代理人】
【識別番号】110001829
【氏名又は名称】弁理士法人開知
(72)【発明者】
【氏名】矢野 茂
(72)【発明者】
【氏名】松家 健史
(72)【発明者】
【氏名】濱野 吏弘
【審査官】草川 貴史
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-242154(JP,A)
【文献】国際公開第2017/163616(WO,A1)
【文献】特開2018-169283(JP,A)
【文献】特開2016-218060(JP,A)
【文献】特開2016-156677(JP,A)
【文献】特開2018-017606(JP,A)
【文献】特開2003-121451(JP,A)
【文献】特開2016-138811(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 35/00-37/00
G01N 1/00- 1/44
B65G 54/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
検体の入った試験管が搭載されたキャリアを搬送する検体搬送システムであって、
平面2次元方向に前記キャリアを移動可能な複数の搬送ユニットと、
複数の前記搬送ユニットの動作を管理する複数の制御部と、
前記搬送ユニットごとに設けられており、前記搬送ユニットの駆動・状況検出を行う制御ドライバと、
前記検体搬送システムを統合管理する管理部と、を備え、
前記搬送ユニットを複数組み合わせて、前記検体に対する分析前の前処理を行う前処理モジュール
と前記検体の分析を行う分析モジュールと
の少なくともいずれか一方に接続可能に構成され、
前記制御部は、前記管理部と複数の前記制御ドライバとの間に接続され、
前記管理部は、前記制御ドライバにより検出された前記搬送ユニットの状況に基づいて前記キャリアの搬送先に関する搬送経路情報を生成し、
前記制御部は、前記搬送経路情報に基づいて接続されている前記制御ドライバの管理する前記搬送ユニット内における前記キャリアの搬送経路を生成し、前記搬送ユニットに対する指令信号を生成し、前記制御ドライバに出力する
ことを特徴とする検体搬送システム。
【請求項2】
請求項1に記載の検体搬送システムにおいて、
前記管理部は、前記制御ドライバにより検出された前記搬送ユニットの混雑状況に基づいて前記搬送経路情報を修正する
ことを特徴とする検体搬送システム。
【請求項3】
請求項1に記載の検体搬送システムにおいて、
前記前処理モジュール、
前記分析モジュールのうち少なくともいずれかが、同一仕様の構成のモジュールを複数備える場合に、
前記管理部は、前記搬送経路情報の宛先を、個別のモジュールではなく、同一仕様のモジュールを群としたモジュール群として扱う
ことを特徴とする検体搬送システム。
【請求項4】
請求項2に記載の検体搬送システムにおいて、
前記制御部は、前記管理部からの前記搬送経路情報が修正された際、修正される前の経路上に前記キャリアが存在する場合は修正前の搬送経路を維持し、前記キャリアを全て搬送し終えた後に前記搬送経路を修正する
ことを特徴とする検体搬送システム。
【請求項5】
請求項1に記載の検体搬送システムにおいて、
前記管理部で管理される前記キャリアの状況の更新サイクルは、前記検体搬送システムの搬送能力に応じて決定される
ことを特徴とする検体搬送システム。
【請求項6】
請求項1に記載の検体搬送システムにおいて、
前記管理部と前記制御部との間でやり取りされる前記搬送経路情報は、前記前処理モジュール、
前記分析モジュールのうち少なくともいずれかへの搬入、搬出のための経路情報に加えて、前記前処理モジュール、
前記分析モジュールのうち少なくともいずれかによる前記試験管への処理を行うための低速、あるいは停止の経路情報を含む
ことを特徴とする検体搬送システム。
【請求項7】
請求項1に記載の検体搬送システムにおいて、
前記搬送ユニットは、各々が前記キャリアを平面2次元方向に移動可能な電磁コイルを複数有している
ことを特徴とする検体搬送システム。
【請求項8】
請求項1に記載の検体搬送システムにおいて、
前記搬送ユニットの状況は、
前記キャリアが存在するか否か、
前記前処理モジュール、
あるいは前記検体の分析を行う分析モジュールにおける処理中であるか否か、
エラーであるか否か、
のいずれかである
ことを特徴とする検体搬送システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検体を収容する試験管などの容器を扱う臨床検査システムに好適な検体搬送システムであって、特には、平面2次元に移動可能な搬送ユニットを利用した検体搬送路を効率的に利用する検体搬送システムに関する。
【背景技術】
【0002】
研究室サンプル配送システムを動作させる方法の一例として、特許文献1には、研究室サンプル配送システムは、サンプル容器キャリアとして、1つまたは複数のサンプル容器を保持するように構成され、サンプル容器は、所定の数の研究室ステーションによって分析されるサンプルを収容するものであって、搬送面を備え、搬送面は、サンプル容器キャリアを支持するように構成され、搬送面には所定の数の移送位置が配置され、移送位置は対応する研究室ステーションに割り当てられる、ことが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
臨床検査において、例えば、血液や尿などの人から採取した生体試料(以下検体と記載)の入った試験管に対して遠心、開栓、および分注などの検査前処理を行うモジュールを備えた自動分析装置では、各処理を順次実行するために検体の入った試験管をラックやホルダなどのキャリアに搭載し、目的の処理部に搬送する機能を有する。
【0005】
これら搬送するための搬送路は、物理的にキャリアが安定して搬送されるように1次元の前後方向に移動することが一般的である。
【0006】
このため、通常時間内で処理する通常検体に加えて、緊急処置室や手術室からの至急検体、または各処理が完了した処理中検体、処理後検体等の各種検体を収容した容器が1次元の搬送路上を搬送される。
【0007】
このようなシステムでは、至急検体を処理するためには、通常検体用のラインとは別に至急検体用の搬送路を用意することが一般的である。さらに、通常検体と至急検体の搬送を繋ぐための搬送路を特定箇所に構成することで、至急検体が通常検体を追い抜くことで、至急検体を優先的に処理、搬送することが可能となる。また、通常検体を一時的に待機させるためにも、1次元の搬送路を複数組み合わせて、待機させる方法をとることが考えられる。
【0008】
一方、物理的に搬送路が固定化される1次元搬送路と異なり、平面2次元に移動可能な搬送ユニットは、搬送ユニットの上面を形成する搬送面上に論理的に搬送路を作成することができる特徴を持つ。
【0009】
このような技術の一環として、特許文献1に記載の技術がある。これは、電磁コイルを搬送面下部に備え付け、それらの電磁コイルに順次電流を流すことにより、搬送面上に置かれた磁石を持つホルダを移動させる技術である。
【0010】
ここで、搬送面上に各ポジションを縦横一方向に搬送させるためには、その搬送路となるポジション上に別のホルダが存在しないかを確認する必要がある。このため、搬送ユニット内にはセンサを配置し、同時にその状態を記憶する記憶エリアを持っている。
【0011】
1次元の搬送路を複数組み合わせたシステムの搬送路に代わる、特許文献1にあるような平面2次元に移動可能な搬送面を利用した検体搬送路を採用した検体搬送システムでは、全ての搬送面を含めたシステム全体を管理する管理部が具体的な搬送経路を作成していた。
【0012】
このような場合、システムが大きくなればなるほど管理部に情報が集中することになり、搬送路の決定に必要な経路定義情報、およびホルダ位置情報などの情報の総量が大きくなり、通信系にかかる負荷が大きくなる、との課題がある。また、システムが小さい場合であっても、管理部自体に負荷が掛かる、との課題がある。
【0013】
このため、搬送路の決定に必要な経路定義情報、およびホルダ位置情報などの情報量を抑えて、通信系に負荷を与えない情報保持方式が待たれている。
【0014】
本発明の目的は、通信系への負荷を従来技術に比べて軽減した検体搬送システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、上記課題を解決する手段を複数含んでいるが、その一例を挙げるならば、検体の入った試験管が搭載されたキャリアを搬送する検体搬送システムであって、平面2次元方向に前記キャリアを移動可能な複数の搬送ユニットと、複数の前記搬送ユニットの動作を管理する複数の制御部と、前記搬送ユニットごとに設けられており、前記搬送ユニットの駆動・状況検出を行う制御ドライバと、前記検体搬送システムを統合管理する管理部と、を備え、前記搬送ユニットを複数組み合わせて、前記検体に対する分析前の前処理を行う前処理モジュールと前記検体の分析を行う分析モジュールとの
少なくともいずれか一方に接続可能に構成され、前記制御部は、前記管理部と複数の前記制御ドライバとの間に接続され、前記管理部は、前記制御ドライバにより検出された前記搬送ユニットの状況に基づいて前記キャリアの搬送先に関する搬送経路情報を生成し、前記制御部は、前記搬送経路情報に基づいて接続されている前記制御ドライバの管理する前記搬送ユニット内における前記キャリアの搬送経路を生成し、前記搬送ユニットに対する指令信号を生成し、前記制御ドライバに出力することを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、通信系への負荷を従来技術に比べて軽減することができる。上記した以外の課題、構成および効果は、以下の実施例の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の実施例1の検体搬送システムを備えた自動分析システムの概要と、検体搬送システムのレイアウトの一例を示す図である。
【
図2】実施例1の検体搬送システムにおける搬送タイルの行先情報を生成するためのシステム構成の一例を示す図である。
【
図3】実施例1の検体搬送システムにおける検体状況メモリの内部構造の一例を示す図である。
【
図4】実施例1の検体搬送システムにおける経路定義情報の内部構造の一例を示す図である。
【
図5】実施例1の検体搬送システムにおける経路定義情報の内部構造と使用例の一例を示す図である。
【
図6】実施例1の検体搬送システムにおける搬送タイルの使用例の一例を示す図である。
【
図7】本発明の実施例3の検体搬送システムにおける経路定義情報変更時の処理フローである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に本発明の検体搬送システムの実施例を、図面を用いて説明する。
【0019】
<実施例1>
本発明の検体搬送システムの実施例1について
図1乃至
図6を用いて説明する。
【0020】
最初に、検体搬送システムを含めた自動分析システム全体の概要について
図1を用いて説明する。
図1は検体搬送システムを備えた自動分析システムの概要と、検体搬送システムのレイアウトの一例を示す図である。
【0021】
図1に示すような検体搬送システム100は、血液や尿などの検体の入った試験管31が搭載されたホルダ30を、投入用の検体投入ユニット、検査に必要な血清成分にするための遠心分離ユニット、容器の栓を外す開栓ユニットなどを有する前処理モジュール601,602、検体の分析を行う自動分析モジュール603,604,605,606に対して搬送し、回収するためのシステムである。
【0022】
図1に示す検体搬送システム100は、平面2次元方向にホルダ30を移動可能な、少なくとも2以上の搬送タイル401と、複数の搬送タイル401の動作を管理する制御部201,202,203と、検体搬送システム100を統合管理する管理部101と、を備えている。
【0023】
検体搬送システム100では、平面2次元に移動可能な複数の搬送タイル401によって、前処理モジュール601,602の間や、それらのモジュールと複数の自動分析モジュール603,604,605,606との間が接続されている。
【0024】
これにより、検体投入ユニットを有する前処理モジュール601から投入された試験管31が搬送タイル401を経由して所定の前処理モジュール602へ搬送され、その後で自動分析モジュール603,604,605,606へ搬送タイル401を経由して搬送される。
【0025】
こられ検体の入った試験管31を搬送するために、検体搬送システム100は複数のキャリアを備えている。このキャリアは、底面側、すなわち搬送タイル401側の面に永久磁石等の磁性体を備えているとともに、それぞれ、1つまたは複数の試験管31を保持するように構成される。
図1では、検体が収容された試験管31を1本保持するホルダ30を搬送対象として搬送する場合について例示するが、このような形態に限定されることはなく、試験管31を1本保持するホルダ30以外にも、試験管31を複数本保持する検体ラックをキャリアとして用いることができる。
【0026】
搬送タイル401は、平面2次元でホルダ30を複数待機させる位置を持つタイル状の形状をしており、搬送タイル401は検体搬送システム100全体で平面であることでホルダ30を支持、搬送するように構成されている。
【0027】
1枚の搬送タイル401は、コアとそのコアの外周側にまかれた巻線とで構成される電磁コイル402、電磁コイル402に電流を供給する駆動回路(図示の都合上省略)、その直上にホルダ30が存際するか否かを検出するセンサ等を複数有している。
図1では、1枚の搬送タイル401は6×6=36個の電磁コイル402を有している場合について記載しているが、その数は特に限定されない。
【0028】
通常、搬送タイル401では、電磁コイル402とホルダ30の間にはホルダ30を支持する搬送面(図示省略)が設けられており、そのような搬送面の下部に備え付けられた電磁コイル402に順次架電することにより、搬送面上に置かれた磁性体を持つホルダ30が滑るように移動する。
【0029】
ホルダ30を検出するセンサの詳細は特に限定されず、例えば、ホルダ30の底面に備え付けられた磁性体の磁束を検出するホールセンサや、測長器、カメラなどを用いることができ、更にその他の手法を用いるものとすることができる。
【0030】
管理部101は、検体搬送システム100や前処理モジュール601,602、自動分析モジュール603,604,605,606を含めた検体分析システム全体の動作を制御するものであり、液晶ディスプレイ等の表示機器や入力機器、記憶装置、CPU、メモリなどを有するコンピュータで構成される。
【0031】
また、管理部101は、上記の各モジュール等の様々な動作を制御する。
【0032】
管理部101による各機器の動作の制御は、記憶装置に記録された各種プログラムに基づき実行される。
【0033】
なお、管理部101で実行される動作の制御処理は、1つのプログラムにまとめられていても、それぞれが複数のプログラムに別れていてもよく、それらの組み合わせでもよい。また、プログラムの一部または全ては専用ハードウェアで実現してもよく、モジュール化されていても良い。
【0034】
なお、上述の
図1では、前処理モジュールが2つ、自動分析モジュールが4つ設けられている検体分析システムについて説明しているが、前処理モジュールや自動分析モジュールの数は特に限定されず、いずれかが2つ以上あればよい。更には、後処理モジュールを単独で、あるいは追加で設けることができる。
【0035】
また、前処理モジュールの詳細な構成についても特に限定されず、公知の前処理装置の構成を採用することができる。更に、複数設ける場合に、同一仕様であっても、異なる仕様であってもよく、特に限定されない。
【0036】
これは自動分析モジュールについても同様であり、生化学項目や免疫項目を分析する公知の自動分析装置の構成を採用することができる。更に、複数設ける場合に、同一仕様でも異なる仕様でもよく、特に限定されない。
【0037】
ここで、ホルダ30が搬送タイル401上や複数の搬送タイル401間を移動するためには、行先情報が必要となる。以下、行先情報を生成するための検体搬送システムの構成について
図2乃至
図6を用いて説明する。
【0038】
図2は本実施例の検体搬送システムにおける搬送タイルの行先情報を生成するためのシステム構成の一例を示す図である。
図3は検体状況メモリの内部構造の一例を示す図、
図4は経路定義情報の内部構造の一例を示す図、
図5は経路定義情報の内部構造と使用例の一例を示す図、
図6は搬送タイルの使用例の一例を示す図である。
【0039】
最初に、システム構成について
図2を用いて説明する。
【0040】
図2に示すように、各搬送タイル401には、対応する搬送タイル401による搬送動作を制御するとともに、搬送タイル401上のホルダ30のセンシングを処理する制御ドライバ301,302,303,304が備えられている。
【0041】
また、本実施例では、
図2に示すように、複数の制御ドライバ301,302,303が1つの制御部201と接続されており、制御部201から制御ドライバ301,302,303などに対し各ポジションの駆動指示が出力される。また、制御部201は、制御ドライバ301,302,303からの駆動結果、および駆動中の状況や停止中のホルダ30のセンシング情報を受け取り、管理部101へ出力する。
【0042】
更に、本実施例の制御部201,202,203は、各々が複数の搬送タイル401と接続されており、複数の搬送タイル401を管理する。例えば、
図1に示すように、制御部201のカバー範囲201Aや制御部203のカバー範囲203Aは検体搬送システム100の
図1中9枚分、制御部202のカバー範囲202Aは検体搬送システム100の
図1中10枚分となっているが、管理する対象の搬送タイル401の数は特に限定されない。
【0043】
例えば、1つの制御部201の接続可能な最大の制御ドライバ数、すなわち搬送タイル401の総数は、64という数になる。しかし、CPU性能、システム価格、処理速度などから、システム構築する際に可変であってよい。
【0044】
なお、
図2では、図示の都合上、制御部201に対して制御ドライバ301,302,303の3つの搬送タイル401が接続された状態を示している。
【0045】
さらに、本実施例では、
図1および
図2に示すように、すべての制御部201,202,203は、管理部101と接続されており、各々の制御部201,201,203は、対応する制御ドライバ301,302,303あるいは制御ドライバ304からのセンシング情報に基づいてホルダ30の位置、状態を管理部101の検体状況メモリ2に登録する。
【0046】
管理部101は、検体状況メモリ2を参照することで、検体搬送システム100の混雑部位を把握することができる。その上で、管理部101は検体状況メモリ2から把握した混雑部位を勘案し、ホルダ30の経路定義情報1を定義(生成)することが可能である。更に、管理部101は、定義した搬送経路情報を各々の制御部201,202,203に対して出力する。
【0047】
この搬送経路情報を受信した制御部201,202,203は、自らが管理する範囲内の搬送タイル401内の状況を勘案して、ホルダ30がどのポジションを使用した経路を使用するか算出し、対応する制御ドライバ301,302,303,304に指示することでホルダ30が搬送されることになる。
【0048】
各々の制御部201,202,203は、対応する複数の搬送タイル401を管理しており、その搬送タイル401上のポジションの1つでも状況が変わった際に状況を管理部101に通知するのではなく、例えば3秒周期で制御部201,202,203が管理するすべての搬送タイル401の状況を管理部101に通知することが望ましい。
【0049】
図3は、検体状況メモリ2の1枚の搬送タイル401の検体状況21の内部構造を示し、1つの搬送タイル401の各ポジションの状況を示すイメージ図である。
【0050】
検体状況メモリ2は管理部101のメモリやハードディスクドライブ等の記憶装置上に存在しており、
図3に示すように、例えば36ポジションある搬送タイル401の場合、各ポジションを4ビット列の情報とし、1バイトで2ポジションの検体状況22を表現しており、1つの搬送タイルあたり18バイトの情報で検体状況を表現している。
【0051】
例えば「0x0」はホルダ30が存在しない、「0x1」はホルダ30がその上部に存在する、「0x5」は隣接する前処理モジュール、あるいは分析モジュールにおける処理中である、「0x8」はエラー(ホルダ30がなし)、「0x9」はエラー(ホルダ30がある)、を意味するものとすることができる。
【0052】
ここで、制御部201が20個の搬送タイル401を管理する場合、制御部201と管理部101とでやり取りする搬送タイル401の状況を示すデータは、
20搬送タイル×18バイト=360バイト
の電文となり、平分による通信テキストの半分以下となる。
【0053】
なお、検体状況メモリ2の更新周期は、検体搬送システム100の処理速度に応じて決定する。つまり、搬送能力が1,200キャリア/時の場合、3,600秒÷1,200キャリア=3秒となり、3秒周期で十分となる。しかし、搬送能力が1、800キャリア/時の場合、2秒周期で更新する必要がある。そのため、制御部201が管理部101に検体状況を通知する周期は、可変とすることが望ましい。
【0054】
図4は経路定義情報1の1枚の搬送タイル401の経路定義情報11の内部構造を示し、管理部101のCPUにより検体状況メモリ2を参照することで生成され、メモリやハードディスクドライブ等の記憶装置上に存在する。
【0055】
各々の制御部201,202,203は、起動時、もしくはリセット動作時に、経路定義情報1を参照し、各搬送タイル401の使用目的を判断する。1ポジションの搬送定義情報を1バイトで表現(1ポジションの経路定義情報12)し、経路情報定義の1つの定義列13の意味14に示すようにバッファ、処理部、方向、速度、および縦・横方向の制限有無を定義する。
【0056】
例えば、
図4に示すように、搬送路以外の目的で使用する場合に、経路情報定義の定義列の意味14のA、B、C、Dビットにバッファ、処理部が設定される。例えば、隣接する処理部への分注等の処理のために停止する動作を行う場合が挙げられる。
【0057】
また、2次元に搬送を可能する搬送タイルは搬送路の交差やバッファ領域の進行方向を定義する目的で、経路情報定義の定義列の意味14のE報告に加え、経路情報定義の定義列の意味14のF、Gの縦・横方向の制約の有無を設定することができる。
【0058】
さらに、経路情報定義の定義列の意味14のHは、電磁方式に電磁コイル402に架電する電流を変化させるとことで、低速・高速に搬送することを実現できるよう、定義可能としている。
【0059】
図5は、
図4の定義から進行方向を表現した状態を示す図である。
【0060】
図5に示す搬送路17は低速で
図5中右方向にホルダ30を搬送し、搬送路16は高速でホルダ30を
図5中右方向に搬送する。更に、搬送路16、および搬送路17はシステムの上流から下流に搬送する搬送路をイメージしている。
【0061】
これに対し、搬送路15は低速で
図5中左方向に搬送し、システムの下流から上流に搬送する搬送路のイメージである。
【0062】
さらに搬送路15,16,17は、横方向にのみ搬送可能である。
【0063】
また、
図5中上から2列目、3列目、4列目は、バッファとして使用することを表している。
【0064】
次に、別例の経路定義から生成された複数の搬送タイル411,412,413,414,415,416,417,418,419,420,421,422,423,424,425,426が集まって生成された検体搬送システム100の搬送イメージを
図6に示す。
【0065】
なお、
図6中、搬送タイル411乃至426は、上述の搬送タイル401と同じ仕様である。
【0066】
搬送経路エリア501は
図6中の左方から右方に搬送するため順方向の搬送路であり、搬送経路エリア503は
図6中の右方から左方に搬送するための逆方向の搬送路である。
【0067】
バッファ定義エリア502は
図6中の中央部分にありホルダ30のバッファとして使用される。
【0068】
処理部定義エリア504は
図6中の右下方に位置する分析モジュール607とのインターフェス部になる部分である。
【0069】
次に、本実施例の効果について説明する。
【0070】
上述した本発明の実施例1の検体搬送システム100のうち、管理部101は、制御ドライバ301,302,303,304により検出された搬送タイル401の状況に基づいてホルダ30を搬送するための搬送経路情報を生成し、制御部201,202,203は、搬送経路情報に基づいてホルダ30の搬送経路を生成し、搬送タイル401に対する指令信号を生成し、制御ドライバ301,302,303,304に出力する。
【0071】
これによって、管理部101と複数の搬送タイル401を管理する制御部201,202,203との間でやり取りされる情報はホルダ30の具体的な搬送経路情報ではなく、大まかな搬送先に関する情報のみとなり、通信系にかかる負荷を従来に比べて小さくしつつ、高い搬送効率を実現することができる。また、具体的な経路情報を一元管理する管理部101で生成する必要もなくなることから、管理部101自体の負荷も従来に比べて小さくでき、管理部101の高性能化を抑制することができる、との効果も奏する。
【0072】
また、管理部101で管理されるホルダ30の状況の更新サイクルは、検体搬送システム100の搬送能力に応じて決定されることにより、ホルダ30の位置情報のやり取りがホルダ30が移動する度にされることを防ぎ、頻度を従来に比べて低減することができる。従って、通信系への負荷をより軽減することができる。
【0073】
更に、搬送経路情報は、前処理モジュール601,602、自動分析モジュール603,604,605,606のうち少なくともいずれかへの搬入、搬出のための経路情報に加えて、前処理モジュール601,602、自動分析モジュール603,604,605,606のうち少なくともいずれかによる試験管31への処理を行うための低速、あるいは停止の経路情報を含むため、様々なホルダ30の搬送状況を作り出すことができ、システム全体でより柔軟な搬送を実現することができる。
【0074】
<実施例2>
本発明の実施例2の検体搬送システムについて説明する。実施例1と同じ構成には同一の符号を示し、説明は省略する。以下の実施例においても同様とする。
【0075】
上述した検体搬送システム100に投入された検体は、測定すべき検査項目、すなわち依頼検査項目から、必要な前処理モジュール601,602への搬送経路や自動分析モジュール603,604,605,606への搬送経路が決定される。
【0076】
管理部101で生成される搬送経路情報は、検体搬送システム100の規模が大きくなると、非同期に動作する自動分析モジュール603,604,605,606も増え、予期しない渋滞が部分的に発生する可能性がある。
【0077】
また、検体搬送システム100の規模が大きくなるにつれて、管理部101がすべての搬送タイル401の状況を確認しながら経路生成を行う方式であっても、管理部101の負担が増大する傾向となり、より負荷を軽減することが望まれる。
【0078】
そのため、搬送経路の決定に際し、例えば、管理部101は、制御ドライバ301,302,303,304により検出され、検体状況メモリ2に記録された搬送タイル401の混雑状況に基づいてホルダ30の混雑具合を判断し、経路定義情報1を参照して最短時間となるよう搬送経路を修正することが望ましい。
【0079】
例えば、上述の
図6に示すようなデフォルトの経路定義として分析モジュール607と接続される搬送タイル426は順方向3列、逆方向3列と定義されている構成の場合で、かつ分析モジュール607の処理速度が検体搬送システム100の搬送能力より大きく劣っている場合、分析モジュール607で測定する検体が増加すると搬送タイル426,425,424の順方向部分にホルダ30がたまり、搬送タイル416から搬送タイル424への搬送が妨げられることになる。
【0080】
そのため、管理部101は分析モジュール607で測定する検体が多いと判断した場合、経路定義情報1を、分析モジュール607と接続される搬送タイル426,425,424は順方向に5列、逆方向に1列と搬送経路定義を変更し、分析モジュール607手前の渋滞を緩和することができる。
【0081】
また、検体搬送システム100が前処理モジュール601,602、自動分析モジュール603,604,605,606の中に、同一仕様の構成のモジュールが複数存在する場合は、管理部101が指示する搬送経路情報では、搬送タイル401上のポジションを指示することに替わって、個別のモジュールではなく、同一仕様のモジュールを群としたモジュール群として扱うことが望ましい。
【0082】
例えば、処理の必要な前処理モジュールに加えて、あるいは替わって複数の同一処理モジュールを纏めた前処理モジュール群を含めた行先情報とすることができる。また、分析モジュール、もしくは同一検査を測定できる複数の分析モジュール群を含めた行先情報とすることができる。
【0083】
この群管理された行先情報を受信した制御部201,202,203は、各々の制御部201,202,203が管理する搬送タイル401内の状況を勘案して、ホルダ30がどのポジションを使用した経路とするか算出し、対象の制御ドライバ301,302,303,304に指示する。
【0084】
制御部201,202,203が経路を算出する際、
図4の経路情報を参照し、複数の同一搬送路を定義できる場合、制御部201が最新のセンシング情報をもとにホルダ30の有無情報から、搬送経路を決定する。
【0085】
その他の構成・動作は前述した実施例1の検体搬送システムと略同じ構成・動作であり、詳細は省略する。
【0086】
本発明の実施例2の検体搬送システムにおいても、前述した実施例1の検体搬送システムとほぼ同様な効果が得られる。
【0087】
また、管理部101は、制御ドライバ301,302,303,304により検出された搬送タイル401の混雑状況に基づいて搬送経路情報を修正することにより、1次元の搬送路で解決することが困難であった緊急検体の追い越し、渋滞箇所の回避などのボトルネックを解消する経路変更が可能となり、検体搬送システム100の搬送効率の更なる向上を図ることができる。
【0088】
更に、前処理モジュール601,602、自動分析モジュール603,604,605,606のうち少なくともいずれかが、同一仕様の構成のモジュールを複数備える場合に、管理部101は、搬送経路情報の宛先を、個別のモジュールではなく、同一仕様のモジュールを群としたモジュール群として扱うことで、管理部101と制御部201,202,203との間でやり取りされる搬送経路情報をよりまとめてデータ量を小さくすることができるため、システムが大規模化しても負荷を軽減することができる、との効果が得られる。
【0089】
<実施例3>
本発明の実施例3の検体搬送システムについて
図7を用いて説明する。
図7は本実施例3の検体搬送システムにおける経路定義情報変更時の処理フローである。
【0090】
経路定義情報1は、管理部101の起動時、もしくはリセット時などの検体搬送システム100が動作する前に変更されることが基本である。
【0091】
しかし、検体搬送システム100内のホルダ30の混雑状況や、前処理モジュール601,602、あるいは自動分析モジュール603,604,605,606の処理の進捗状況に応じてホルダ30の行先や搬送経路を変えることにより、より速やかに検体の分析結果を得ることができる。
【0092】
このような場合に対応するため、本実施例の検体搬送システムにおける管理部101は、制御ドライバ301,302,303,304により検出された搬送タイル401の混雑状況に基づいて搬送経路情報を修正する。
【0093】
その上で、制御部201,202,203は、管理部101からの搬送経路情報が修正された際、修正される前の経路上にホルダ30が存在する場合は修正前の搬送経路を維持し、ホルダ30を全て搬送し終えた後に搬送経路を修正する。以下、修正方法の詳細について
図7を用いて説明する。
【0094】
前提として、管理部101は、オペレーション中に定期的に更新される検体状況メモリ2を参照して、経路定義を変更する必要があるか否かを判定する。この判定では、上述のように、検体搬送システム100内のホルダ30の混雑状況や、前処理モジュール601,602、あるいは自動分析モジュール603,604,605,606の処理の進捗状況に基づいて実行することが望ましい。
【0095】
経路定義の変更が必要と判定されたときは、管理部101は経路定義を変更し、変更後の経路定義を制御部201,202,203に対して出力する。これに対し、経路定義の変更が必要でないと判定された場合は、従前の経路情報を維持し、経路定義を制御部201,202,203に対して出力する。
【0096】
制御部201,202,203は、オペレーションの開始(ステップS701)後、現在使用中の経路定義が変更されたか否かを判定する(ステップS702)。制御部201,202,203は、経路定義が変更されていたと判定された時は処理をステップS703に進め、経路定義が変更されていないと判定されたときは処理をステップS707に進める。
【0097】
現在使用中の経路定義が変更されたと判定されたときは、制御部201,202,203は、最初に各々の制御部201,202,203が管理する搬送タイル401上に、従前の搬送定義に基づいて搬送されている最中のホルダ30が存在するか否かを判定する(ステップS703)。ホルダ30が存在すると判定されたときは処理をステップS704に進める。これに対し、ホルダ30が存在しないと判定されたときは処理をステップS706に進める。
【0098】
ステップS703においてホルダ30が存在すると判定されたときは、制御部201,202,203は、現在の搬送経路をロックして(ステップS704)、ホルダ30の搬送を継続する(ステップS705)。その後は処理をステップS703に戻し、従前の経路定義でのホルダ30の搬送を完了させる。この際、変更後に使用目的が変更されるポジション上に新たなホルダ30が搬入されないように優先的に制御することが望ましい。
【0099】
これに対し、ステップS703においてホルダ30が存在しないと判定されたときは、制御部201,202,203は、変更後の経路にホルダ30が存在しない状態になったことで、搬送定義を切り替え(ステップS706)、新たな搬送定義に基づいたホルダ30の搬送経路の搬送制御を開始する。
【0100】
また、ステップS702において経路定義が変更されていないと判定されたときは、制御部201,202,203は、ステップS704、S705と同様に、現在の搬送経路をロックして(ステップS707)、ホルダ30の搬送を継続する(ステップS708)。
【0101】
その後は処理を終了する(ステップS709)。
【0102】
制御部201,202,203は、オペレーション中に経路定義情報1を定期的に参照し、上述の
図7に示す各ステップの処理を実行する。
【0103】
その他の構成・動作は前述した実施例1の検体搬送システムと略同じ構成・動作であり、詳細は省略する。
【0104】
本発明の実施例3の検体搬送システムにおいても、前述した実施例1の検体搬送システムとほぼ同様な効果が得られる。
【0105】
また、制御部201,202,203は、管理部101からの搬送経路情報が修正された際、修正される前の経路上にホルダ30が存在する場合は修正前の搬送経路を維持し、ホルダ30を全て搬送し終えた後に搬送経路を修正することにより、オペレーション中に経路定義をダイナミックに変更し、時間帯による下流方向・上流方向の搬送量変更や、エラー発生時の迂回のための経路変更など、柔軟な搬送経路の管理が可能となり、搬送効率の更なる効率化が可能となる。
【0106】
<その他>
なお、本発明は、上記の実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。上記の実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。
【0107】
また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることも可能であり、また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることも可能である。
【符号の説明】
【0108】
1…経路定義情報
2…検体状況メモリ
11…1搬送タイルの経路定義情報
12…1ポジションの経路定義情報
13…1ポジション内の経路情報定義の1定義列
14…経路情報定義の定義列の意味
15,16,17…搬送路
21…1枚の搬送タイルの検体状況
22…2ポジションの検体状況
30…ホルダ(キャリア)
31…試験管
100…検体搬送システム
101…管理部
201,202,203…制御部
201A,202A,203A…カバー範囲
301,302,303,304…制御ドライバ
401…搬送タイル(搬送ユニット)
402…電磁コイル
411,412,413,414,415,416,417,418,419,420,421,422,423,424,425,426…搬送タイル
501,503…搬送経路エリア
502…バッファ定義エリア
504…処理部定義エリア
601,602…前処理モジュール
603,604,605,606…自動分析モジュール
607…分析モジュール
701,702,703,704,705,706,707,708,709…経路定義情報変更時の処理フロー