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  • 特許-差動増幅回路 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-09
(45)【発行日】2023-03-17
(54)【発明の名称】差動増幅回路
(51)【国際特許分類】
   H03F 3/45 20060101AFI20230310BHJP
   G05F 1/56 20060101ALI20230310BHJP
【FI】
H03F3/45 210
G05F1/56 310L
G05F1/56 310F
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021572663
(86)(22)【出願日】2021-07-26
(86)【国際出願番号】 JP2021027588
【審査請求日】2021-12-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000191238
【氏名又は名称】日清紡マイクロデバイス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101454
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 卓二
(74)【代理人】
【識別番号】100132241
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 博史
(72)【発明者】
【氏名】松田 智章
【審査官】工藤 一光
(56)【参考文献】
【文献】特開昭56-37716(JP,A)
【文献】特公平7-44393(JP,B2)
【文献】特開2002-108465(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03F1/00-3/72
G05F1/56-1/595
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1及び第2のトランジスタを含む差動入力回路を含み、
前記第1のトランジスタの制御端子に印加される第1の入力電圧と、前記第2のトランジスタの制御端子に印加される第2の入力電圧との差電圧を増幅して出力する差動増幅回路であって、
前記差動入力回路は、
前記第1のトランジスタの制御端子に接続されたゲートと、前記第2のトランジスタの制御端子に接続されたソースとを有し、前記差動増幅回路のバイアス電流源として動作するPチャネルデプレッション型トランジスタを含む、差動増幅回路。
【請求項2】
前記第1及び第2のトランジスタはそれぞれMOS電界効果トランジスタであり、
前記Pチャネルデプレッション型トランジスタはPチャネルデプレッション型MOS電界効果トランジスタである、請求項1に記載の差動増幅回路。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の差動増幅回路を含む、電力変換装置。
【請求項4】
前記電力変換装置は、レギュレータである、
請求項3に記載の電力変換装置。
【請求項5】
前記電力変換装置は、DCDCコンバータである、
請求項3に記載の電力変換装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばDCDCコンバータの構成要素であるエラーアンプ又はコンパレータに用いる差動増幅回路に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、DCDCコンバータの低消費化が求められている。DCDCコンバータの構成要素であるエラーアンプ又はコンパレータの低消費化技術として、DCDCコンバータの負荷が小さい場合にエラーアンプ又はコンパレータに供給されるバイアス電流を制限することで低消費電流とし、負荷が大きい場合にエラーアンプ又はコンパレータに供給されるバイアス電流を増やすことで高速動作を可能にする技術が既に知られている。
【0003】
例えば特許文献1では、入力差動信号の電位差に応じて電流供給能力を最適化する差動増幅装置を提供するために、差動増幅装置は、入力電圧の電位差に応じた電流駆動能力を有する差動アンプと、入力電圧の電位差に応じた電圧振幅を有する調整信号を出力する調整部と、差動アンプの電流駆動能力を調整信号に応じて調整する電流源とを有する。ここで、調整部において、差動信号間の電位差が設定値以上となった場合に調整信号の電圧値の調整が開始されることを特徴としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2011-035845号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、今までの電流切り替え技術は、バイアス電流を変更するための電流源とスイッチの役割を果たすトランジスタを追加で配置する必要があり、低消費電流と高速動作を両立させるためには回路面積が大きくなるという問題があった。
【0006】
また、LDO(Low Drop-Out)レギュレータ向けの技術のようにシームレスに負荷に応じたバイアス電流を増加させようとすると、DCDCコンバータの場合はインダクタ電流を監視する必要があり、専用の回路が必要となるなど、やはり回路面積が大きくなるという問題があった。
【0007】
本発明の目的は以上の問題点を解決し、例えばDCDCコンバータの構成要素であるエラーアンプ又はコンパレータに用いる差動増幅回路において、低消費電流と高速動作の両立を、回路面積を大きくすることなく実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様に係る差動増幅回路は、
第1及び第2のトランジスタを含む差動入力回路を含み、
前記第1のトランジスタの制御端子に印加される第1の入力電圧と、前記第2のトランジスタの制御端子に印加される第2の入力電圧との差電圧を増幅して出力する差動増幅回路であって、
前記差動入力回路は、
前記第1のトランジスタの制御端子に接続されたゲートと、前記第2のトランジスタの制御端子に接続されたソースとを有し、前記差動増幅回路のバイアス電流源として動作するPチャネルデプレッション型トランジスタを含む。
【発明の効果】
【0009】
従って、本発明に係る差動増幅回路によれば、前記差動入力回路が、前記第1のトランジスタの制御端子に接続されたゲートと、前記第2のトランジスタの制御端子に接続されたソースとを有し、前記差動増幅回路のバイアス電流源として動作するPチャネルデプレッション型トランジスタを含む。それ故、例えばDCDCコンバータの構成要素であるエラーアンプ又はコンパレータに用いる差動増幅回路において、低消費電流と高速動作の両立を、回路面積を大きくすることなく実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施形態1に係る差動増幅回路1の構成例を示す回路図である。
図2図1のPチャネルデプレッション型MOSトランジスタQ10のソース-ゲート間電圧Vgsに対するドレイン-ソース電流Ids特性の一例を示すグラフである。
図3】実施形態2に係る、差動増幅回路1を用いたリニアレギュレータ10の構成例を示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明に係る実施形態及び変形例について図面を参照して説明する。なお、同一又は同様の構成要素については同一の符号を付している。
【0012】
(発明者の知見)
本発明に係る実施形態は、低消費電流と高速動作が求められるDCDCコンバータに用いられるエラーアンプ(誤差増幅器)又はコンパレータ(比較器)に際して、以下の特徴を有する。本実施形態では、バイアス電流源として、しきい値が0V近辺のPチャネルデプレッション型トランジスタを採用し、差動入力段の2つの入力端子をそのPチャネルデプレッション型トランジスタのゲートとソースに接続することで、2つの入力端子の電位差に応じた電流がPチャネルデプレッション型トランジスタにより自動的にかつシームレスに回路に供給される構成にしたことが特徴になっている。
【0013】
以下、本実施形態の実施形態及び変形例について、図面を参照して詳細に説明する。
【0014】
(実施形態1)
図1は実施形態1に係る差動増幅回路1の構成例を示す回路図である。図1において、差動増幅回路1は、差動入力回路DIと、ソース接地増幅回路SAとを備えて構成される。ここで、差動入力回路DIは、PチャネルMOS(Metal-Oxide Semiconductor)電界効果トランジスタ(以下、PMOSトランジスタ又はMOSトランジスタという。)Q1,Q2を含むカレントミラー負荷回路と、非反転入力端子T1と、反転入力端子T2と、一対の差動対を構成するNチャネルMOS電界効果トランジスタ(以下、NMOSトランジスタ又はMOSトランジスタという。)Q4,Q5と、Pチャネルデプレッション型MOS電界効果トランジスタ(以下、デプレッション型PMOSトランジスタ又はMOSトランジスタという。)Q10と、NMOSトランジスタQ6,Q8を含むバイアス電流源回路とを備えて構成される。また、ソース接地増幅回路SAは、PMOSトランジスタQ3と、NMOSトランジスタQ7と、出力端子T3とを備えて構成される。ここで、3個のNMOSトランジスタQ6,Q7,Q8によりカレントミラー回路CMを構成し、差動増幅回路1及びソース接地増幅回路SAのバイアス電流源として動作する。
【0015】
図1において、電源電圧VDDは、MOSトランジスタQ1のソース及びドレインと、MOSトランジスタQ4のドレイン及びソースと、MOSトランジスタQ6のドレイン及びソースとを介して接地されるとともに、MOSトランジスタQ2のソース及びドレインと、MOSトランジスタQ5のドレイン及びソースと、MOSトランジスタQ6のドレイン及びソースとを介して接地される。また、電源電圧VDDは、MOSトランジスタQ3のソース及びドレインと、MOSトランジスタQ7のドレイン及びソースとを介して接地される。MOSトランジスタQ1のゲートとMOSトランジスタQ2のゲートは互いに接続されるとともに、MOSトランジスタQ1のドレインに接続される。MOSトランジスタQ2のドレインはMOSトランジスタQ3のゲートに接続される。
【0016】
差動入力回路DIにおいて、入力電圧VINPが印加される非反転入力端子T1はMOSトランジスタQ5のゲート(制御端子)及びMOSトランジスタQ10のゲート(制御端子)に接続される。また、入力電圧VINNが印加される反転入力端子T2はMOSトランジスタQ4のゲート及びMOSトランジスタQ10のソースに接続される。
【0017】
カレントミラー回路CMにおいて、MOSトランジスタQ10のドレインは、MOSトランジスタQ8のドレインに接続されるとともに、MOSトランジスタQ6,Q7,Q8の各ゲートに接続される。MOSトランジスタQ6,Q7,Q8のソースは接地される。ここで、MOSトランジスタQ6,Q7,Q8はカレントミラー回路を構成し、MOSトランジスタQ6,Q7の各ドレイン-ソース電流は、MOSトランジスタQ8の流れるドレイン-ソース電流であるバイアス電流に比例して対応するように流れる。
【0018】
以上のように構成された差動増幅回路1は、非反転入力端子T1に入力される入力電圧VINPから、反転入力端子T2に入力される入力電圧VINNを減算し、減算結果の差電圧を増幅した電圧を出力電圧VOUTとして出力端子T3から出力する。
【0019】
本実施形態に係る差動増幅回路1は、一般的なエラーアンプの構成要素である差動入力回路DIとソース接地増幅回路SAの2段構成において、差動増幅回路1のバイアス電流源として、デプレッション型PMOSトランジスタQ10を採用したことを特徴とする。なお、低消費電流と高速動作を両立するにあたり、デプレッション型PMOSトランジスタQ10のしきい値電圧は0Vに近い方が望ましい。
【0020】
例えばDCDCコンバータのVFM制御コンパレータの場合、入力端子T1,T2にはそれぞれ出力電圧と基準電圧が接続されることが多い。出力電圧が基準電圧を上回っている場合、すなわちデプレッション型PMOSトランジスタQ10のゲート電圧がソース電圧よりも高い場合、デプレッション型PMOSトランジスタQ10はオフ状態となり、差動増幅回路1に供給されるバイアス電流は制限される。出力電圧が基準電圧を下回っている場合、すなわちデプレッション型PMOSトランジスタQ10のゲート電圧がソース電圧よりも低い場合、デプレッション型PMOSトランジスタQ10はオン状態となり、差動増幅回路1に供給されるバイアス電流は増加する。出力電圧が基準電圧を下回っていて、しかもその差が大きい場合、デプレッション型PMOSトランジスタQ10のゲート-ソース間電圧Vgsが広がることになり、差動増幅回路1に供給されるバイアス電流はより増大する。
【0021】
図2は、図1のデプレッション型PMOSトランジスタQ10のソース-ゲート間電圧Vgsに対するドレイン-ソース電流Ids特性(以下、電流電圧特性という。)の一例を示すグラフである。
【0022】
図2から明らかなように、ソース-ゲート間電圧Vgsが-0.2Vのとき、図2の電流電圧特性から発生するドレイン-ソース電流Idsは1nAである。また、ソース-ゲート間電圧Vgsが0.2Vのとき、発生するドレイン-ソース電流Idsは1μAである。すなわちデプレッション型PMOSトランジスタQ10のゲート電圧とソース電圧の大小関係により発生する電流は桁違いに異なることになる。
【0023】
以上説明したように、本実施形態によれば、低消費電流と高速動作が求められるDCDCコンバータに用いられる差動増幅回路1のバイアス電流源として、しきい値が0V近辺のデプレッション型PMOSトランジスタQ10を採用し、差動入力回路DIの2つの入力端子T1,T2をそのデプレッション型PMOSトランジスタQ10のゲートとソースに接続することで、2つの入力端子T1,T2の電位差に応じた電流がデプレッション型PMOSトランジスタQ10により、自動的にかつシームレスに差動増幅回路1に供給される。これにより、差動増幅回路1において、低消費電流と高速動作の両立を、回路面積を大きくすることなく実現できる。
【0024】
(特許文献1との相違点)
特許文献1には、低消費電流と高速動作を両立させることが目的で、差動入力段のバイアス電流源をその入力される差動信号の電圧差が小さい時は小さく、差動信号の電圧差が大きい時は大きくすることが開示されている。本実施形態とは確かに低消費電流と高速動作を両立させる点では似ている点がある。しかし、上述のように、回路面積が大きくなるという問題は解消できていない。
【0025】
これに対して、本実施形態では、差動増幅回路1のバイアス電流源として、しきい値が0V近辺のデプレッション型PMOSトランジスタQ10を採用し、差動入力回路DIの2つの入力端子T1,T2をそのデプレッション型PMOSトランジスタQ10のゲートとソースに接続することで、2つの入力端子T1,T2の電位差に応じた電流がデプレッション型PMOSトランジスタQ10により、自動的にかつシームレスに差動増幅回路1に供給される。従って、DCDCコンバータの構成要素である差動増幅回路1において、低消費電流と高速動作の両立を、回路面積を大きくすることなく実現することができる。
【0026】
(実施形態2)
図3は実施形態2に係る、差動増幅回路1を用いた三端子リニアレギュレータ10の構成例を示す回路図である。リニアレギュレータ10は、レギュレータ又はDCDCコンバータの一例である。また、レギュレータ又はDCDCコンバータは、電力変換装置の一例である。
【0027】
図3において、リニアレギュレータ10は、入力端子T11と、出力端子T12と、接地端子T13と、基準電圧源11と、差動増幅回路1と、出力ドライバトランジスタQ20と、分圧抵抗R1,R2とを備えて構成される。リニアレギュレータ10の出力端子T12の出力電圧Voutは分圧抵抗R1,R2により分圧され、分圧された電圧が帰還電圧Vfbとして差動増幅回路1の非反転入力端子に印加される。差動増幅回路1の反転入力端子には基準電圧源11からの基準電圧Vrefが印加される。差動増幅回路1は非反転入力端子と反転入力端子の差電圧(Vfb-Vref)を増幅してゲート制御電圧として出力ドライバトランジスタQ20のゲートに印加され、これにより、出力ドライバトランジスタQ20に流れる電流を制御することで、出力電圧Voutを制御する。
【0028】
以上のように構成されたリニアレギュレータ10において、入力電圧源21からの入力電圧Vinは入力コンデンサC1を介してリニアレギュレータ10の入力端子T11に印加される。リニアレギュレータ10は、出力電圧Voutが所定の出力電圧Voutになるように制御し、制御された出力電圧Voutは出力コンデンサC2を介して負荷22に出力される。
【0029】
図3のリニアレギュレータ10では、誤差増幅器として図1の差動増幅回路1を用いているので、上述のように、DCDCコンバータの構成要素である差動増幅回路1において、低消費電流と高速動作の両立を、回路面積を大きくすることなく実現することができる。
【0030】
(変形例)
以上の実施形態において、Pチャネルデプレッション型MOSトランジスタQ10を用いているが、本発明はこれに限らず、種々のPチャネルデプレッション型トランジスタを用いてもよい。
【0031】
以上の実施形態において、MOSトランジスタQ1~Q8を用いて差動増幅回路1を構成しているが、本発明はこれに限らず、バイポーラトランジスタなどのトランジスタを用いて差動増幅回路を構成してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0032】
以上詳述したように、本発明に係る差動増幅回路によれば、前記差動入力回路が、前記第1のトランジスタの制御端子に接続されたゲートと、前記第2のトランジスタの制御端子に接続されたドレインとを有し、前記差動増幅回路のバイアス電流源として動作するPチャネルデプレッション型トランジスタを含む。それ故、例えばDCDCコンバータの構成要素であるエラーアンプ(誤差増幅器)又はコンパレータ(比較器)に用いる差動増幅回路において、低消費電流と高速動作の両立を、回路面積を大きくすることなく実現することができる。
【符号の説明】
【0033】
1 差動増幅回路
10 リニアレギュレータ
11 基準電圧源
21 入力電圧源
22 負荷
C1 入力コンデンサ
C2 出力コンデンサ
CM カレントミラー回路
DI 差動入力回路
Q1~Q8 MOSトランジスタ
Q10 Pチャネルデプレッション型MOSトランジスタ(デプレッション型PMOSトランジスタ)
Q20 出力ドライバトランジスタ
R1,R2 分圧抵抗
SA ソース接地増幅回路
T1 非反転入力端子
T2 反転入力端子
T3 出力端子
T11 入力端子
T12 出力端子
T13 接地端子
【要約】
本発明の差動増幅回路(1)は、第1及び第2のトランジスタ(Q4,Q5)を含む差動入力回路(DI)を含み、前記第1のトランジスタ(Q5)の制御端子に印加される第1の入力電圧(VINP)と、前記第2のトランジスタ(Q4)の制御端子に印加される第2の入力電圧(VINN)との差電圧を増幅して出力する。前記差動入力回路(DI)は、前記第1のトランジスタ(Q5)の制御端子に接続されたゲートと、前記第2のトランジスタ(Q4)の制御端子に接続されたソースとを有し、前記差動増幅回路(1)のバイアス電流源として動作するPチャネルデプレッション型トランジスタ(Q10)を含む。
図1
図2
図3