(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-10
(45)【発行日】2023-03-20
(54)【発明の名称】油脂組成物
(51)【国際特許分類】
A23D 7/00 20060101AFI20230313BHJP
A21D 2/16 20060101ALI20230313BHJP
A21D 10/02 20060101ALI20230313BHJP
A21D 13/80 20170101ALI20230313BHJP
【FI】
A23D7/00 506
A21D2/16
A21D10/02
A21D13/80
(21)【出願番号】P 2019063488
(22)【出願日】2019-03-28
【審査請求日】2021-12-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000227009
【氏名又は名称】日清オイリオグループ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】小澤 拓也
(72)【発明者】
【氏名】櫻田 美穂
(72)【発明者】
【氏名】豊口 柚実子
(72)【発明者】
【氏名】▲羽▼染 芳宗
(72)【発明者】
【氏名】野口 修
【審査官】吉岡 沙織
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-192638(JP,A)
【文献】特開2014-036608(JP,A)
【文献】特開2017-184654(JP,A)
【文献】特開昭61-025434(JP,A)
【文献】国際公開第2010/026928(WO,A1)
【文献】特開2018-068291(JP,A)
【文献】特開2019-085564(JP,A)
【文献】特開2019-216675(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23D
A21D
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
油脂組成物中の全油脂分中に下記油脂Aを
2~10質量%、下記油脂Bを
20~55質量%、下記油脂Cを
7~20質量%、下記油脂Eを20~60質量%含有する
練り込み用油脂組成物。
油脂A:下記の条件(A1)~(A8)、
(A10)を満たす油脂である。
(A1)構成脂肪酸として炭素数12~14の直鎖飽和脂肪酸を15~45質量%含有する。
(A2)構成脂肪酸としてパルミチン酸を20~45質量%含有する。
(A3)構成脂肪酸としてステアリン酸を3~45質量%含有する。
(A4)構成脂肪酸として不飽和脂肪酸を28質量%以下含有する。
(A5)構成脂肪酸として炭素数20以上の脂肪酸を2質量%未満含有する。
(A6)構成脂肪酸のステアリン酸含有量に対するパルミチン酸含有量が0.3~5.0である。
(A7)C42~48TAGを40~65質量%含有する。
(A8)ヨウ素価が30以下である。
(A10)構成脂肪酸としてラウリン酸を13~30質量%含有する。
油脂B:下記の条件(B1)~(B8)を満たす油脂である。
(B1)構成脂肪酸として炭素数12~14の直鎖飽和脂肪酸を15~45質量%含有する。
(B2)構成脂肪酸としてパルミチン酸を20~45質量%含有する。
(B3)構成脂肪酸としてステアリン酸を10質量%未満含有する。
(B4)構成脂肪酸として不飽和脂肪酸を30~50質量%含有する。
(B5)構成脂肪酸として炭素数20以上の脂肪酸を2質量%未満含有する。
(B6)構成脂肪酸のステアリン酸含有量に対するパルミチン酸含有量が5.5~12.0である。
(B7)C42~48TAGを40~70質量%含有する。
(B8)ヨウ素価が32~50である。
油脂C:下記の条件(C1)~(C2)を満たす油脂である。
(C1)20℃で液状である。
(C2)構成脂肪酸として不飽和脂肪酸を70質量%以上含有する。
上記の条件において、C42~48TAGは、構成する脂肪酸残基の総炭素数が42~48であるトリグリセリドのことである。
油脂E:下記の条件(E1)~(E4)を満たす油脂である。
(E1)構成脂肪酸としてパルミチン酸を30~65質量%含有する。
(E2)構成脂肪酸としてステアリン酸を15質量%以下含有する。
(E3)構成脂肪酸のステアリン酸含有量に対するパルミチン酸含有量が6.0以上である。
(E4)構成脂肪酸として不飽和脂肪酸を30~65質量%含有する。
【請求項2】
前記油脂Aの条件(A8)のヨウ素価が5~30である請求項1に記載の
練り込み用油脂組成物。
【請求項3】
前記油脂Aが、下記の条件(A9)を満たす請求項1に記載の
練り込み用油脂組成物。
(A9)融点が38~55℃である。
【請求項4】
乳製品を含有する請求項1~請求項3のいずれか1項に記載の
練り込み用油脂組成物。
【請求項5】
前記
練り込み用油脂組成物が、穀粉100質量部に対して油脂組成物が80質量部~120質量部、油脂組成物100質量部に対して卵類が100質量部~160質量部配合されたベーカリー食品用生地の製造用である
請求項1~請求項4のいずれか1項に記載の
練り込み用油脂組成物。
【請求項6】
請求項1~請求項5のいずれか1項に記載の
練り込み用油脂組成物が
練り込まれたベーカリー食品用生地。
【請求項7】
前記ベーカリー食品用生地が、穀粉100質量部に対して油脂組成物が80質量部~120質量部、油脂組成物100質量部に対して卵類が100質量部~160質量部配合されている
請求項6に記載のベーカリー食品用生地。
【請求項8】
請求項6又は請求項7に記載のベーカリー食品用生地を焼成したベーカリー食品。
【請求項9】
前記ベーカリー食品がバターケーキである
請求項8に記載のベーカリー食品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油脂組成物及びベーカリー食品に関する発明である。
【背景技術】
【0002】
ベーカリー食品のうち、ケーキ類には、通常、卵が配合される。ケーキ類に配合される卵は、ケーキ類に配合されている練り込み用油脂によって、生地中に分散される。この練り込み用油脂が卵を生地中に分散させる性質は、吸卵性と呼ばれている。吸卵性は、練り込み用油脂に求められる性質の一つである。練り込み用油脂の吸卵性が悪いと、卵の生地への分散性が悪くなり、卵が生地から分離してしまう。卵が生地から分離すると、得られるケーキ類は、食感が悪くなる。
【0003】
優れた吸卵性を有する練り込み用油脂は、バターが知られている。バターは、高価であることから、植物油脂が使用された優れた吸卵性を有する練り込み用油脂が開発されてきた。植物油脂が使用された優れた吸卵性を有する練り込み用油脂としては、部分水素添加油が使用された練り込み用油脂が開発された。しかしながら、部分水素添加油はトランス脂肪酸を多く含む油脂であり、昨今のトランス脂肪酸問題から、部分水素添加油が使用された練り込み用油脂は、使用が制限されつつある。
【0004】
その他に、吸卵性を向上させる方法としては、例えば、特許文献1~4の練り込み用油脂が提案されている。特許文献1~4の練り込み用油脂は、いずれも合成乳化剤によって、吸卵性を向上させるものである。しかしながら、昨今の健康志向から、練り込み用油脂においても、合成乳化剤を使用しない製品が求められている。従って、特許文献1~4の練り込み用油脂は、時代に合ったものではなかった。
【0005】
以上のような背景から、優れた吸卵性を有する、新たな練り込み用油脂の開発が求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2011-205938号公報
【文献】特開205-46039号公報
【文献】特開2003-49191号公報
【文献】特開2003-13086号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、優れた吸卵性を有する油脂組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究を行った。その結果、油脂組成物に含まれる油脂が、特定の油脂を特定量含有することにより、本課題が解決できることが見いだされた。これにより、本発明が完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明の第1の発明は、油脂組成物中の全油脂分中に下記油脂Aを2~10質量%、下記油脂Bを20~55質量%、下記油脂Cを7~20質量%、下記油脂Eを20~60質量%含有する練り込み用油脂組成物である。
油脂A:下記の条件(A1)~(A8)、(A10)を満たす油脂である。
(A1)構成脂肪酸として炭素数12~14の直鎖飽和脂肪酸を15~45質量%含有する。
(A2)構成脂肪酸としてパルミチン酸を20~45質量%含有する。
(A3)構成脂肪酸としてステアリン酸を3~45質量%含有する。
(A4)構成脂肪酸として不飽和脂肪酸を28質量%以下含有する。
(A5)構成脂肪酸として炭素数20以上の脂肪酸を2質量%未満含有する。
(A6)構成脂肪酸のステアリン酸含有量に対するパルミチン酸含有量が0.3~5.0である。
(A7)C42~48TAGを40~65質量%含有する。
(A8)ヨウ素価が30以下である。
(A10)構成脂肪酸としてラウリン酸を13~30質量%含有する。
油脂B:下記の条件(B1)~(B8)を満たす油脂である。
(B1)構成脂肪酸として炭素数12~14の直鎖飽和脂肪酸を15~45質量%含有する。
(B2)構成脂肪酸としてパルミチン酸を20~45質量%含有する。
(B3)構成脂肪酸としてステアリン酸を10質量%未満含有する。
(B4)構成脂肪酸として不飽和脂肪酸を30~50質量%含有する。
(B5)構成脂肪酸として炭素数20以上の脂肪酸を2質量%未満含有する。
(B6)構成脂肪酸のステアリン酸含有量に対するパルミチン酸含有量が5.5~12.0である。
(B7)C42~48TAGを40~70質量%含有する。
(B8)ヨウ素価が32~50である。
油脂C:下記の条件(C1)~(C2)を満たす油脂である。
(C1)20℃で液状である。
(C2)構成脂肪酸として不飽和脂肪酸を70質量%以上含有する。
上記の条件において、C42~48TAGは、構成する脂肪酸残基の総炭素数が42~48であるトリグリセリドのことである。
油脂E:下記の条件(E1)~(E4)を満たす油脂である。
(E1)構成脂肪酸としてパルミチン酸を30~65質量%含有する。
(E2)構成脂肪酸としてステアリン酸を15質量%以下含有する。
(E3)構成脂肪酸のステアリン酸含有量に対するパルミチン酸含有量が6.0以上である。
(E4)構成脂肪酸として不飽和脂肪酸を30~65質量%含有する。
本発明の第2の発明は、前記油脂Aの条件(A8)のヨウ素価が5~30である第1の発明に記載の練り込み用油脂組成物である。
本発明の第3の発明は、前記油脂Aが、下記の条件(A9)を満たす第1の発明に記載の練り込み用油脂組成物である。
(A9)融点が38~55℃である。
本発明の第4の発明は、乳製品を含有する第1の発明~第3の発明のいずれか1つの発明に記載の練り込み用油脂組成物である。
本発明の第5の発明は、前記練り込み用油脂組成物が、穀粉100質量部に対して油脂組成物が80質量部~120質量部、油脂組成物100質量部に対して卵類が100質量部~160質量部配合されたベーカリー食品用生地の製造用である第1の発明~第4の発明のいずれか1つの発明に記載の練り込み用油脂組成物である。
本発明の第6の発明は、第1の発明~第5の発明のいずれか1つの発明に記載の練り込み用油脂組成物が練り込まれたベーカリー食品用生地である。
本発明の第7の発明は、前記ベーカリー食品用生地が、穀粉100質量部に対して油脂組成物が80質量部~120質量部、油脂組成物100質量部に対して卵類が100質量部~160質量部配合されている第6の発明に記載のベーカリー食品用生地である。
本発明の第8の発明は、第6の発明又は第7の発明に記載のベーカリー食品用生地を焼成したベーカリー食品である。
本発明の第9の発明は、前記ベーカリー食品がバターケーキである第8の発明に記載のベーカリー食品である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によると、優れた吸卵性を有する油脂組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の実施の形態の油脂組成物は、含まれる油脂が下記油脂Aを1~25質量%、下記油脂Bを15~80質量%、下記油脂Cを5~30質量%含有する。
油脂A:下記の条件(A1)~(A8)を満たす油脂である。
(A1)構成脂肪酸として炭素数12~14の直鎖飽和脂肪酸を15~45質量%含有する。
(A2)構成脂肪酸としてパルミチン酸を20~45質量%含有する。
(A3)構成脂肪酸としてステアリン酸を3~45質量%含有する。
(A4)構成脂肪酸として不飽和脂肪酸を28質量%以下含有する。
(A5)構成脂肪酸として炭素数20以上の脂肪酸を2質量%未満含有する。
(A6)構成脂肪酸のステアリン酸含有量に対するパルミチン酸含有量が0.3~5.0である。
(A7)C42~48TAGを40~65質量%含有する。
(A8)ヨウ素価が30以下である。
油脂B:下記の条件(B1)~(B8)を満たす油脂である。
(B1)構成脂肪酸として炭素数12~14の直鎖飽和脂肪酸を15~45質量%含有する。
(B2)構成脂肪酸としてパルミチン酸を20~45質量%含有する。
(B3)構成脂肪酸としてステアリン酸を10質量%未満含有する。
(B4)構成脂肪酸として不飽和脂肪酸を30~50質量%含有する。
(B5)構成脂肪酸として炭素数20以上の脂肪酸を2質量%未満含有する。
(B6)構成脂肪酸のステアリン酸含有量に対するパルミチン酸含有量が5.5~12.0である。
(B7)C42~48TAGを40~70質量%含有する。
(B8)ヨウ素価が32~50である。
油脂C:下記の条件(C1)~(C2)を満たす油脂である。
(C1)20℃で液状である。
(C2)構成脂肪酸として不飽和脂肪酸を70質量%以上含有する。
【0012】
本発明で油脂組成物に含まれる油脂とは、含まれる油脂の全てを合わせた全油脂分のことである(例えば、油脂組成物が油脂a、油脂b、油脂cを含む場合、油脂組成物に含まれる油脂は、油脂aと油脂bと油脂cの混合油になる。)。従って、油脂組成物に含まれる油脂には、配合される油脂の他に、バター、全脂粉乳等の含油原料に含まれる油脂(乳脂等)も含む。
【0013】
本発明の実施の形態の油脂組成物は、含まれる油脂が下記油脂Aを含有する。
【0014】
本発明の実施の形態の油脂組成物の製造に使用される油脂Aは、下記の条件(A1)~(A8)を満たす油脂である。
【0015】
本発明の実施の形態の油脂組成物の製造に使用される油脂Aは、構成脂肪酸として炭素数12~14の直鎖飽和脂肪酸を15~45質量%含有し、好ましくは20~40質量%含有し、より好ましくは25~35質量%含有する(条件(A1))。
【0016】
本発明の実施の形態の油脂組成物の製造に使用される油脂Aは、構成脂肪酸としてパルミチン酸を20~45質量%含有し、好ましくは23~43質量%含有し、より好ましくは26~40質量%含有する(条件(A2))。
【0017】
本発明の実施の形態の油脂組成物の製造に使用される油脂Aは、構成脂肪酸としてステアリン酸を3~45質量%含有し、好ましくは5~40質量%含有し、より好ましくは6~20質量%含有する(条件(A3))。
【0018】
本発明の実施の形態の油脂組成物の製造に使用される油脂Aは、構成脂肪酸として不飽和脂肪酸を28質量%以下含有し、好ましくは10~28質量%含有し、より好ましくは16~25質量%含有する(条件(A4))。なお、本発明において、不飽和脂肪酸は、炭素数が16~18である。
【0019】
本発明の実施の形態の油脂組成物の製造に使用される油脂Aは、構成脂肪酸として炭素数20以上の脂肪酸を2質量%未満含有し、好ましくは0~1.5質量%含有し、より好ましくは0~1質量%含有する(条件(A5))。なお、本発明において、炭素数20以上の脂肪酸は、炭素数が20~24である。
【0020】
本発明の実施の形態の油脂組成物の製造に使用される油脂Aは、構成脂肪酸のステアリン酸含有量に対するパルミチン酸含有量(パルミチン酸/ステアリン酸)が0.3~5.0であり、好ましくは0.5~4.0であり、より好ましくは1.8~3.5である(条件(A6))。
【0021】
本発明の実施の形態の油脂組成物の製造に使用される油脂Aは、C42~48TAGを40~65質量%含有し、好ましくは45~62質量%含有し、より好ましくは47~60質量%含有する(条件(A7))。
なお、本発明において、C42~48TAGは、構成する脂肪酸残基の総炭素数が42~48であるトリグリセリドのことである。また、トリグリセリドとは、グリセロールに3分子の脂肪酸が結合したトリアシルグリセロールのことである。また、C42~C48TAGを構成する脂肪酸は、好ましくは炭素数8~24の脂肪酸である。
【0022】
本発明の実施の形態の油脂組成物の製造に使用される油脂Aは、ヨウ素価が30以下であり、好ましくは5~30であり、より好ましくは15~30である(条件(A8))。
【0023】
本発明の実施の形態の油脂組成物の製造に使用される油脂Aは、融点が好ましくは33~55℃であり、より好ましくは38~55℃であり、さらに好ましくは42~53℃である(条件(A9))。なお、本発明で融点とは、上昇融点のことである。
【0024】
本発明の実施の形態の油脂組成物の製造に使用される油脂Aは、構成脂肪酸としてラウリン酸を好ましくは10~33質量%含有し、より好ましくは13~30質量%含有し、さらに好ましくは15~28質量%含有する(条件(A10))。
【0025】
本発明の実施の形態の油脂組成物の製造に使用される油脂Aは、構成脂肪酸としてトランス脂肪酸を好ましくは3質量%未満含有し、より好ましくは2質量%未満含有し、さらに好ましくは1質量%未満含有する(条件(A11))。
【0026】
本発明の実施の形態の油脂組成物の製造に使用される油脂Aは、構成脂肪酸のステアリン酸含有量に対する不飽和脂肪酸含有量(不飽和脂肪酸含有量/ステアリン酸含有量)が好ましくは5.0以下であり、より好ましくは3.5以下であり、さらに好ましくは0.5~2.5である(条件(A12)。
【0027】
本発明の実施の形態の油脂組成物の製造に使用される油脂Aは、上記条件を満たす限り、原料油脂として、どのような食用油脂を使用してもよい。油脂Aの原料油脂としては、例えば、大豆油、菜種油、コーン油、綿実油、米油、ヒマワリ油、サフラワー油、胡麻油、ココアバター、シア脂、サル脂、パーム油、パーム核油、ヤシ油、牛脂、豚脂、乳脂、魚油、鯨油等の各種の植物油脂及び動物油脂、並びにこれらに水素添加、分別及びエステル交換から選択された1又は2以上の処理を施した加工油脂が挙げられる。本発明の実施の形態の油脂組成物の製造に使用される油脂Aの原料油脂は、上記食用油脂を1種又は2種以上組み合せて使用することができる。
【0028】
本発明の実施の形態の油脂組成物の製造に使用される油脂Aは、好ましくはエステル交換油脂であり、より好ましくはラウリン系油脂と非ラウリン系油脂とのエステル交換油脂であり、さらに好ましくはラウリン系油脂と非ラウリン系油脂とのランダムエステル交換油脂である。
【0029】
本発明の実施の形態の油脂組成物の製造に使用される油脂Aがラウリン系油脂と非ラウリン系油脂とのエステル交換油脂である場合、ヨウ素価を上記範囲とするために、エステル交換反応前又はエステル交換反応後に水素添加することもできる。
【0030】
本発明でラウリン系油脂とは、油脂を構成する脂肪酸のうちラウリン酸が35質量%以上の油脂であり、例えば、ヤシ油、パーム核油、これらを分別して得られるパーム核オレイン、パーム核ステアリン等の分別油、これらをエステル交換した油脂、及びこれらの硬化油(例えば、パーム核油の極度硬化油、パーム核オレインの極度硬化油)等が挙げられる。ラウリン系油脂は、これらから選ばれる1種又は2種以上を使用することができる。
【0031】
本発明の実施の形態の油脂組成物の製造に使用される油脂Aがエステル交換油脂である場合、エステル交換油脂の製造に使用されるラウリン系油脂は、好ましくはパーム核油の極度硬化油、パーム核オレイン、パーム核オレインの極度硬化油である。
【0032】
本発明で非ラウリン系油脂とは、油脂を構成する脂肪酸のうち炭素数16以上の脂肪酸が90質量%を超える油脂である。非ラウリン系油脂の具体例は、菜種油、大豆油、コーン油、紅花油、綿実油、ヒマワリ油、ココアバター、シア脂、サル脂、パーム油等、並びにこれらに水素添加、分別及びエステル交換から選択された1又は2以上の処理を施した加工油脂である。非ラウリン系油脂は、これらから選ばれる1種又は2種以上を混合して使用することができる。
【0033】
本発明の実施の形態の油脂組成物の製造に使用される油脂Aがエステル交換油脂である場合、エステル交換油脂の製造に使用される非ラウリン系油脂は、好ましくはパーム系油脂である。本発明でパーム系油脂は、パーム油及びパーム分別油等のパーム油の加工油脂のことである。パーム系油脂の具体例は、パーム油、パームオレイン、パームステアリン、パームスーパーオレイン、パーム中融点部(パームミッドフラクション(PMF))、ソフトパーム、ハードステアリン等である。パーム系油脂は、これらから選ばれる1種又は2種以上を混合して使用することができる。
【0034】
本発明の実施の形態の油脂組成物の製造に使用される油脂Aがエステル交換油脂である場合、エステル交換油脂の製造に使用されるパーム系油脂は、好ましくはパームステアリン(ヨウ素価5~40、好ましくは15~35)、パームステアリンの極度硬化油、パーム中融点部(ヨウ素価40~50)である。
【0035】
本発明の実施の形態の油脂組成物の製造に使用される油脂Aがラウリン系油脂と非ラウリン系油脂とのエステル交換油脂である場合、エステル交換反応を行う原料油脂のラウリン系油脂と非ラウリン系油脂との混合比(ラウリン系油脂:非ラウリン系油脂)は、好ましくは質量比35:65~65:35であり、より好ましくは質量比40:60~60:40であり、さらに好ましくは質量比45:55~55:45である。
【0036】
本発明の実施の形態の油脂組成物の製造に使用される油脂Aがラウリン系油脂と非ラウリン系油脂とのエステル交換油脂である場合、エステル交換の方法は、特に制限はなく、通常の方法により行うことができ、ナトリウムメトキシド等の合成触媒を使用した化学的エステル交換、リパーゼを触媒とした酵素的エステル交換のどちらの方法でも行うことができる。
【0037】
上記化学的エステル交換によるエステル交換反応は、位置特異性の乏しい反応であり、ランダムエステル交換反応となる。
上記化学的エステル交換は、例えば、原料油脂を十分に乾燥させ、ナトリウムメトキシドを原料油脂に対して0.1~1質量%添加した後、減圧下、80~120℃で0.5~1時間攪拌しながら反応を行うことができる。エステル交換反応終了後は、水洗等により触媒を除去した後、通常の食用油脂の精製工程で行われる脱色・脱臭処理を施すことができる。
【0038】
上記酵素的エステル交換は、1,3位特異性の高いエステル交換反応、又は、ランダムエステル交換反応(位置特異性の乏しいエステル交換反応)のどちらでも行うことができる。1,3位特異性の高いエステル交換反応を行うことのできるリパーゼ製剤としては、リゾプスオリザエ由来及び/又はリゾプスデルマ由来(例えば、国際公開第2009/031679号に記載)や、リゾムコールミーハイ由来の固定化リパーゼ(ノボザイムズ社製のリポザイムTLIM、リポザイムRMIM等)等が挙げられる。ランダムエステル交換反応を行うことのできるリパーゼ製剤としては、アルカリゲネス属由来リパーゼ(例えば、名糖産業株式会社製のリパーゼQLM、リパーゼPL等)、キャンディダ属由来リパーゼ(例えば、名糖産業株式会社製のリパーゼOF等)等が挙げられる。
【0039】
酵素的エステル交換は、例えば、リパーゼ粉末又は固定化リパーゼを原料油脂に対して0.02~10質量%、好ましくは0.04~5質量%添加した後、40~80℃、好ましくは40~70℃で0.5~48時間、好ましくは0.5~24時間攪拌しながら反応を行うことができる。エステル交換反応終了後は、濾過等により触媒を除去した後、通常の食用油脂の精製工程で行われる脱色・脱臭処理を施すことができる。
【0040】
本発明の実施の形態の油脂組成物の製造に使用される油脂Aがエステル交換油脂であって、エステル交換反応前又はエステル交換反応後に水素添加する場合、水素添加の方法は、特に制限はなく、通常の方法で行うことができる。水素添加の方法は、例えば、ニッケル触媒の下、水素圧0.02~0.3Mpa、160~200℃の条件にて行うことができる。
【0041】
本発明の実施の形態の油脂組成物は、含まれる油脂が油脂Aを1~25質量%含有し、好ましくは2~15質量%含有し、より好ましくは2~10質量%含有する。
【0042】
本発明の実施の形態の油脂組成物は、含まれる油脂が下記油脂Bを含有する。
【0043】
本発明の実施の形態の油脂組成物の製造に使用される油脂Bは、下記の条件(B1)~(B8)を満たす油脂である。
【0044】
本発明の実施の形態の油脂組成物の製造に使用される油脂Bは、構成脂肪酸として炭素数12~14の直鎖飽和脂肪酸を15~45質量%含有し、好ましくは17~40質量%含有し、より好ましくは20~30質量%含有する(条件(B1))。
【0045】
本発明の実施の形態の油脂組成物の製造に使用される油脂Bは、構成脂肪酸としてパルミチン酸を20~45質量%含有し、好ましくは23~40質量%含有し、より好ましくは25~35質量%含有する(条件(B2))。
【0046】
本発明の実施の形態の油脂組成物の製造に使用される油脂Bは、構成脂肪酸としてステアリン酸を10質量%未満含有し、好ましくは8質量%未満含有し、より好ましくは1~6質量%含有する(条件(B3))。
【0047】
本発明の実施の形態の油脂組成物の製造に使用される油脂Bは、構成脂肪酸として不飽和脂肪酸を30~50質量%含有し、好ましくは30~48質量%含有し、より好ましくは33~45質量%含有する(条件(B4))。
【0048】
本発明の実施の形態の油脂組成物の製造に使用される油脂Bは、構成脂肪酸として炭素数20以上の脂肪酸を2質量%未満含有し、好ましくは0~1.5質量%含有し、より好ましくは0~1質量%含有する(条件(B5))。
【0049】
本発明の実施の形態の油脂組成物の製造に使用される油脂Bは、構成脂肪酸のステアリン酸含有量に対するパルミチン酸含有量(パルミチン酸/ステアリン酸)が5.5~12.0であり、好ましくは6.0~11.0であり、より好ましくは6.5~10.0である(条件(B6))。
【0050】
本発明の実施の形態の油脂組成物の製造に使用される油脂Bは、C42~48TAGを40~70質量%含有し、好ましくは45~68質量%含有し、より好ましくは50~65質量%含有する(条件(B7))。
【0051】
本発明の実施の形態の油脂組成物の製造に使用される油脂Bは、ヨウ素価が32~50であり、好ましくは32~48であり、より好ましくは35~45である(条件(B8))。
【0052】
本発明の実施の形態の油脂組成物の製造に使用される油脂Bは、融点が好ましくは20~40℃であり、より好ましくは23~38℃であり、さらに好ましくは25~35℃である(条件(B9))。
【0053】
本発明の実施の形態の油脂組成物の製造に使用される油脂Bは、構成脂肪酸としてラウリン酸を好ましくは10~33質量%含有し、より好ましくは10~30質量%含有し、さらに好ましくは13~25質量%含有する(条件(B10))。
【0054】
本発明の実施の形態の油脂組成物の製造に使用される油脂Bは、構成脂肪酸としてトランス脂肪酸を好ましくは3質量%未満含有し、より好ましくは2質量%未満含有し、さらに好ましくは1質量%未満含有する(条件(B11))。
【0055】
本発明の実施の形態の油脂組成物の製造に使用される油脂Bは、上記条件を満たす限り、原料油脂として、どのような食用油脂を使用してもよい。油脂Bの原料油脂としては、例えば、大豆油、菜種油、コーン油、綿実油、米油、ヒマワリ油、サフラワー油、胡麻油、ココアバター、シア脂、サル脂、パーム油、パーム核油、ヤシ油、牛脂、豚脂、乳脂、魚油、鯨油等の各種の植物油脂及び動物油脂、並びにこれらに水素添加、分別及びエステル交換から選択された1又は2以上の処理を施した加工油脂が挙げられる。本発明の実施の形態の油脂組成物の製造に使用される油脂Bの原料油脂は、上記食用油脂を1種又は2種以上組み合せて使用することができる。
【0056】
本発明の実施の形態の油脂組成物の製造に使用される油脂Bは、好ましくはエステル交換油脂であり、より好ましくはラウリン系油脂と非ラウリン系油脂とのエステル交換油脂であり、さらに好ましくはラウリン系油脂と非ラウリン系油脂とのランダムエステル交換油脂である。
【0057】
本発明の実施の形態の油脂組成物の製造に使用される油脂Bがエステル交換油脂である場合、エステル交換油脂の製造に使用されるラウリン系油脂は、好ましくはパーム核油である。
【0058】
本発明の実施の形態の油脂組成物の製造に使用される油脂Bがエステル交換油脂である場合、エステル交換油脂の製造に使用される非ラウリン系油脂は、好ましくはパーム系油脂であり、より好ましくはパーム油である。
【0059】
本発明の実施の形態の油脂組成物の製造に使用される油脂Bがラウリン系油脂と非ラウリン系油脂とのエステル交換油脂である場合、エステル交換反応を行う原料油脂のラウリン系油脂と非ラウリン系油脂との混合比(ラウリン系油脂:非ラウリン系油脂)は、好ましくは質量比25:75~55:45であり、より好ましくは質量比30:70~50:50であり、さらに好ましくは質量比35:65~45:55である。
【0060】
本発明の実施の形態の油脂組成物の製造に使用される油脂Bがラウリン系油脂と非ラウリン系油脂とのエステル交換油脂である場合、エステル交換の方法は、油脂Aの場合と同様である。
【0061】
本発明の実施の形態の油脂組成物は、含まれる油脂が油脂Bを15~80質量%含有し、好ましくは17~65質量%含有し、より好ましくは20~55質量%含有する。
【0062】
本発明の実施の形態の油脂組成物は、含まれる油脂が下記油脂Cを含有する。
【0063】
本発明の実施の形態の油脂組成物の製造に使用される油脂Cは、下記の条件(C1)~(C2)を満たす油脂である。
【0064】
本発明の実施の形態の油脂組成物の製造に使用される油脂Cは、20℃で液状である(条件(C1))。
【0065】
本発明の実施の形態の油脂組成物の製造に使用される油脂Cは、構成脂肪酸として不飽和脂肪酸を70質量%以上含有し、好ましくは80質量%以上含有し、より好ましくは80~95質量%含有する(条件(C2))。
【0066】
本発明の実施の形態の油脂組成物の製造に使用される油脂Cは、構成脂肪酸としてトランス脂肪酸を好ましくは5質量%未満含有し、より好ましくは3質量%未満含有し、さらに好ましくは2質量%未満含有する(条件(C3))。
【0067】
なお、油脂が上記A1~A8及び上記条件C1~C2を満たす場合、該油脂は油脂Aに属するものとする。また、油脂が上記B1~B8及び上記条件C1~C2を満たす場合、該油脂は油脂Bに属するものとする。
【0068】
本発明の実施の形態の油脂組成物の製造に使用される油脂Cの具体例は、例えば、大豆油、菜種油、コーン油、ひまわり油、紅花油、ごま油、綿実油、米油、オリーブ油、落花生油、亜麻仁油やこれらの油脂の加工油脂(エステル交換油脂、分別油、硬化油(水素添加油)等)等が挙げられる。本発明の実施の形態の油脂組成物の製造に使用される油脂Cは、2種以上を併用することもできる。本発明の実施の形態の油脂組成物の製造に使用される油脂Cは、好ましくは、大豆油、菜種油である。
【0069】
本発明の実施の形態の油脂組成物は、含まれる油脂が油脂Cを好ましくは5~30質量%含有し、より好ましくは5~25質量%含有し、さらに好ましくは7~20質量%含有する。
【0070】
本発明の実施の形態の油脂組成物が上記油脂A、上記油脂B、上記油脂Cを前記範囲で含有すると、優れた吸卵性を有する油脂組成物が得られる。
なお、本発明で吸卵性とは、油脂組成物が卵類をベーカリー食品生地中に分散させる性質のことである。
【0071】
本発明の実施の形態の油脂組成物は、含まれる油脂が好ましくは下記油脂Dを含有する。
【0072】
本発明の実施の形態の油脂組成物の製造に使用される油脂Dは、ラウリン系油脂である。また、本発明の実施の形態の油脂組成物の製造に使用される油脂Dは、下記の条件(D1)~(D2)を満たす油脂である。
【0073】
本発明の実施の形態の油脂組成物の製造に使用される油脂Dは、構成脂肪酸として炭素数12~14の直鎖飽和脂肪酸を好ましくは50~80質量%含有し、より好ましくは53~78質量%含有し、さらに好ましくは55~75質量%含有する(条件(D1))。
【0074】
本発明の実施の形態の油脂組成物の製造に使用される油脂Dは、ヨウ素価が好ましくは25以下であり、より好ましくは10以下であり、さらに好ましくは5以下である(条件(D2))。
【0075】
本発明の実施の形態の油脂組成物の製造に使用される油脂Dは、構成脂肪酸としてラウリン酸を好ましくは35質量%以上含有し、より好ましくは38~60質量%含有し、さらに好ましくは40~55質量%含有する(条件(D3))。
【0076】
本発明の実施の形態の油脂組成物の製造に使用される油脂Dは、構成脂肪酸としてトランス脂肪酸を好ましくは3質量%未満含有し、より好ましくは2質量%未満含有し、さらに好ましくは1.5質量%未満含有する(条件(D4))。
【0077】
本発明の実施の形態の油脂組成物の製造に使用される油脂Dは、構成脂肪酸として不飽和脂肪酸を好ましくは30質量%以下含有し、より好ましくは20質量%以下含有し、さらに好ましくは5質量%以下含有する(条件(D5))。
【0078】
本発明の実施の形態の油脂組成物の製造に使用される油脂Dは、好ましくはヤシ油の極度硬化油である。
【0079】
本発明の実施の形態の油脂組成物は、含まれる油脂が油脂Dを好ましくは5~30質量%含有し、より好ましくは7~25質量%含有し、さらに好ましくは10~20質量%含有する。
本発明の実施の形態の油脂組成物が上記油脂Dを前記範囲で含有すると、より優れた吸卵性を有する油脂組成物が得られる。
【0080】
本発明の実施の形態の油脂組成物は、含まれる油脂が好ましくは下記油脂Eを含有する。
【0081】
本発明の実施の形態の油脂組成物の製造に使用される油脂Eは、パーム系油脂である。また、本発明の実施の形態の油脂組成物の製造に使用される油脂Eは、下記の条件(E1)~(E4)を満たす油脂である。
【0082】
本発明の実施の形態の油脂組成物の製造に使用される油脂Eは、構成脂肪酸としてパルミチン酸を好ましくは30~65質量%含有し、より好ましくは35~60質量%含有し、さらに好ましくは40~55質量%含有する(条件(E1))。
【0083】
本発明の実施の形態の油脂組成物の製造に使用される油脂Eは、構成脂肪酸としてステアリン酸を好ましくは15質量%以下含有し、より好ましくは10質量%以下含有し、さらに好ましくは1~10質量%含有する(条件(E2))。
【0084】
本発明の実施の形態の油脂組成物の製造に使用される油脂Eは、構成脂肪酸のステアリン酸含有量に対するパルミチン酸含有量(パルミチン酸/ステアリン酸)が好ましくは6.0以上であり、より好ましくは7.0~12.0であり、さらに好ましくは8.0~11.0である(条件(E3))。
【0085】
本発明の実施の形態の油脂組成物の製造に使用される油脂Eは、構成脂肪酸として不飽和脂肪酸を好ましくは30~65質量%含有し、好ましくは35~60質量%含有し、より好ましくは40~55質量%含有する(条件(E4))。
【0086】
本発明の実施の形態の油脂組成物の製造に使用される油脂Eは、構成脂肪酸として炭素数12~14の直鎖飽和脂肪酸を好ましくは10質量%未満含有し、より好ましくは7質量%未満含有し、さらに好ましくは5質量%未満含有する(条件(E5))。
【0087】
本発明の実施の形態の油脂組成物の製造に使用される油脂Eは、構成脂肪酸としてトランス脂肪酸を好ましくは3質量%未満含有し、より好ましくは2質量%未満含有し、さらに好ましくは1質量%未満含有する(条件(E6))。
【0088】
本発明の実施の形態の油脂組成物の製造に使用される油脂Eは、好ましくはパーム油、パーム分別油であり、さらに好ましくはパーム油、パーム中融点部である。
【0089】
本発明の実施の形態の油脂組成物は、含まれる油脂が油脂Eを好ましくは15~65質量%含有し、より好ましくは17~63質量%含有し、さらに好ましくは20~60質量%含有する。
【0090】
本発明の実施の形態の油脂組成物は、上記油脂A~油脂E以外の油脂を使用することもできる。本発明の実施の形態の油脂組成物は、含まれる油脂が乳脂等の動物油脂を含有させることができる。
【0091】
本発明の実施の形態の油脂組成物は、含まれる油脂が好ましくは動物油脂を含有しない。
また、本発明の実施の形態の油脂組成物は、含まれる油脂が構成脂肪酸としてトランス脂肪酸を好ましくは3質量%未満含有し、より好ましくは2質量%未満含有し、さらに好ましくは1質量%未満含有する。
本発明によると、動物油脂を含むバター、トランス脂肪酸を多く含む部分水素添加油脂を使用せずとも、優れた吸卵性を有する油脂組成物が得られる。
【0092】
本発明の実施の形態の油脂組成物は、油脂を好ましくは60質量%以上含有し、より好ましくは70質量%以上含有し、さらに好ましくは75~90質量%含有する。
【0093】
油脂の各脂肪酸含有量は、AOCS Ce1f-96に準じて、ガスクロマトグラフィー法で測定することができる。
油脂のC42~48TAG含有量は、AOCS Ce5-86に準じて、ガスクロマトグラフィー法で測定することができる。
油脂のヨウ素価は、「基準油脂分析試験法(社団法人日本油化学会編)」の「2.3.4.1-1996 ヨウ素価(ウィイス-シクロヘキサン法)」に準じて測定することができる。
油脂の融点は、「基準油脂分析試験法(社団法人日本油化学会編)」の「2.2.4.2-1996 融点(上昇融点)」に準じて測定することができる。
【0094】
本発明の実施の形態の油脂組成物は、好ましくは乳製品を含有する。本発明の実施の形態の油脂組成物の製造に使用される乳製品は、好ましくは粉乳、乳ペプチド、乳蛋白質、バター酵素処理分解物であり、より好ましくは脱脂粉乳、乳ペプチドであり、さらに好ましくは乳ペプチドである。
【0095】
本発明の実施の形態の油脂組成物は、乳製品を好ましくは0.1~10質量%含有し、より好ましくは0.1~5質量%含有し、さらに好ましくは0.2~3質量%含有する。
本発明の実施の形態の油脂組成物が乳製品を前記範囲で含有すると、より優れた吸卵性を有する油脂組成物が得られる。
【0096】
本発明の実施の形態の油脂組成物は、油脂、乳製品以外に、通常油脂組成物の製造に使用される原料を配合することができる。具体的には、砂糖、乳糖及び液糖等の糖類、糖アルコール類、ステビア及びアスパルテーム等の甘味料、水、合成乳化剤、増粘安定剤、食塩及び塩化カリウム等の塩味剤、酢酸、乳酸及びグルコン酸等の酸味料、β-カロテン、カラメル及び紅麹色素等の着色料、トコフェロール、茶抽出物(カテキン等)及びルチンなどの酸化防止剤、小麦蛋白及び大豆蛋白等の植物蛋白、卵、卵加工品、香料、調味料、pH調整剤、食品保存料、果実、果汁、コーヒー、ナッツペースト、香辛料、カカオマス、ココアパウダー、穀類、豆類、野菜類、肉類及び魚介類等の食品素材若しくは食品添加物を本発明の実施の形態の油脂組成物に配合することができる。
【0097】
本発明の実施の形態の油脂組成物は、好ましくは合成乳化剤を含有しない。
本発明によると、合成乳化剤を使用せずとも、優れた吸卵性を有する油脂組成物が得られる。
【0098】
本発明の実施の形態の油脂組成物は、水相を有する乳化物(マーガリン、ファットスプレッド)又は水相を有さないショートニングである。本発明の実施の形態の油脂組成物が水相を有する乳化物の場合、好ましくは油中水型乳化物である。本発明の実施の形態の油脂組成物が油中水型乳化物の場合、水の含有量は、好ましくは2~40質量%であり、より好ましくは4~25質量%であり、さらに好ましくは5~20質量%である。
【0099】
本発明の実施の形態の油脂組成物の製造方法は、特に制限されるものではなく、公知の練り込み用油脂の製造条件及び製造方法を適用できる。具体的には、油脂組成物は、配合する油溶成分を混合溶解することで製造できる。また、油脂組成物に可塑性を付与する場合は、油脂組成物は、配合する油溶成分を混合溶解した油相を、必要に応じて、調製した水相と混合乳化した後、冷却し、結晶化させる工程により製造できる。冷却、結晶化の工程では、油脂組成物は、好ましくは冷却可塑化される。冷却条件は、好ましくは-0.5℃/分以上、より好ましくは-5℃/分以上である。この際、冷却は、徐冷却より急冷却の方が好ましい。また、油相の調製後又は混合乳化後、油脂組成物は、好ましくは殺菌処理される。殺菌方法としては、タンクでのバッチ式や、プレート型熱交換機、掻き取り式熱交換機を用いた連続式が挙げられる。冷却する機器としては、密閉型連続式チューブ冷却機、例えば、ボテーター、コンビネーター、パーフェクターなどのマーガリン製造機や、プレート型熱交換機などが挙げられる。また、冷却する機器としては、開放型のダイアクーラーとコンプレクターとの組み合わせも挙げられる。
【0100】
本発明の実施の形態の油脂組成物は、好ましくは可塑化される。本発明の実施の形態の油脂組成物は、好ましくは可塑性油脂組成物である。
【0101】
本発明の実施の形態の油脂組成物は、優れた吸卵性を有する。そのため、本発明の実施の形態の油脂組成物は、練り込み用に適している。
本発明の実施の形態の油脂組成物は、好ましくは練り込み用油脂組成物である。なお、本発明で練り込み用油脂組成物とは、ベーカリー食品の製造で焼成前の生地に練り込まれる油脂のことである。
【0102】
本発明の実施の形態の油脂組成物は、優れた吸卵性を有する。油脂組成物の吸卵性が優れていると、ベーカリー食品生地により多くの卵を配合することができる。なお、本発明でベーカリー食品用生地は、穀粉、油脂組成物、砂糖、乳製品、卵、食塩、水等の原料を捏ね上げることで得られる焼成前の生地のことである。
本発明で油脂組成物が優れた吸卵性を有するとは、以下の油脂組成物の吸卵性の評価方法で評価した時の吸卵率が100%以上である。
【0103】
<油脂組成物の吸卵性の評価方法>
以下手順1~6で操作し、油脂と全卵が分離するまでの全卵の添加量をXとし、下記式で吸卵率を算出する。
1.前日から油脂組成物250gと上白糖250gを15~25℃に調温する(温度は油脂の硬さによって調整する。)。
2.前日から全卵を20℃に調温する。
3.油脂組成物と篩った上白糖を、ホバートミキサー(N―50、ホバート・ジャパン社製)を用い、中速にて、比重0.75になるまで攪拌する。
4.全卵50gを、中速にて、30秒かけて少しずつ加える。
5.全卵50g添加後、中速にて、さらに30秒攪拌し、混合物の状態を確認する。
6.油脂と全卵が分離するまで、前記4と前記5の操作を繰り返して行う。
吸卵率(%)=X÷250×100
【0104】
本発明の実施の形態の油脂組成物は、優れた吸卵性を有することから、卵類の配合量の多いベーカリー食品生地の製造用に適している。
本発明の実施の形態の油脂組成物は、好ましくは穀粉100質量部に対して油脂組成物が20質量部~160質量部、油脂組成物100質量部に対して卵類が20質量部~200質量部配合されたベーカリー食品用生地の製造用であり、より好ましくは穀粉100質量部に対して油脂組成物が40質量部~140質量部、油脂組成物100質量部に対して卵類が80質量部~180質量部配合されたベーカリー食品用生地の製造用であり、さらに好ましくは穀粉100質量部に対して油脂組成物が80質量部~120質量部、油脂組成物100質量部に対して卵類が100質量部~160質量部配合されたベーカリー食品用生地の製造用である。
通常、バターや部分水素添加油を含む練り込み用油脂を使用しない場合、ベーカリー食品用生地への卵類の配合量は、油脂組成物100質量部に対して100質量部未満である。しかしながら、本発明の実施の形態の油脂組成物を使用すると、ベーカリー食品用生地に通常よりも多くの卵類を配合することができる。
なお、本発明で穀粉とは、穀物を挽いて粉状にしたもののことである。穀粉の具体例は、小麦粉(強力粉、中力粉、薄力粉等)、大麦粉、米粉、とうもろこし粉、ライ麦粉、そば粉、大豆粉等である。また、本発明の実施の形態のベーカリー食品用生地に配合される穀粉は、好ましくは小麦粉である。本発明の実施の形態のベーカリー食品用生地に配合される穀粉は、小麦粉を好ましくは50~100質量%含有し、より好ましくは70~100質量%含有し、さらに好ましくは90~100質量%含有する。
【0105】
本発明の実施の形態のベーカリー食品用生地は、本発明の実施の形態の油脂組成物が配合されており、好ましくは本発明の実施の形態の油脂組成物が練り込まれている。
【0106】
本発明の実施の形態のベーカリー食品用生地は、穀粉100質量部に対して本発明の実施の形態の油脂組成物が好ましくは20質量部~160質量部配合され、より好ましくは40質量部~140質量部配合され、さらに好ましくは80質量部~120質量部配合される。
【0107】
本発明の実施の形態のベーカリー食品用生地は、穀粉100質量部に対して卵類が好ましくは20質量部~200質量部配合され、より好ましくは80質量部~180質量部配合され、さらに好ましくは100質量部~160質量部配合される。
なお、本発明の実施の形態のベーカリー食品用生地の製造に使用される卵類は、全卵、液卵、卵黄、卵白やこれらの凍結品等であり、好ましくは全卵である。
【0108】
本発明の実施の形態のベーカリー食品用生地は、好ましくは穀粉100質量部に対して本発明の実施の形態の油脂組成物が20質量部~160質量、本発明の実施の形態の油脂組成物100質量部に対して卵類が20質量部~200質量部配合され、より好ましくは穀粉100質量部に対して本発明の実施の形態の油脂組成物が40質量部~140質量部、本発明の実施の形態の油脂組成物100質量部に対して卵類が80質量部~180質量部配合され、さらに好ましくは穀粉100質量部に対して本発明の実施の形態の油脂組成物が80質量部~120質量部、本発明の実施の形態の油脂組成物100質量部に対して卵類が100質量部~160質量部配合される。
本発明の実施の形態のベーカリー食品用生地は、通常よりも多くの卵類を配合することができる。
【0109】
本発明の実施の形態のベーカリー食品用生地には、油脂組成物、穀粉、卵類以外の原料として、通常、ベーカリー食品用生地に配合される原料(活性グルテン、でんぷん、セルロース粉末等の粉類、イースト、イーストフード、酵素、食塩、砂糖(グラニュー糖、上白糖)等の糖類・糖アルコール類、脱脂粉乳、牛乳等の乳製品、水、豆乳等の水性成分等)を、通常量配合することができる。
【0110】
本発明の実施の形態のベーカリー食品用生地の製造方法は、特に制限されるものではなく、公知のベーカリー食品用生地の製造条件及び製造方法を適用できる。本発明の実施の形態のベーカリー食品用生地は、例えば、シュガーバッター法により、油脂組成物と砂糖を混合した後、次に卵を添加して混合し、最後に穀粉を添加して混合することで製造することができる。
【0111】
本発明によると、卵類が分離していないベーカリー食品用生地を得ることができる。
【0112】
本発明の実施の形態のベーカリー食品は、本発明の実施の形態のベーカリー食品用生地を焼成することで得られる。
【0113】
本発明の実施の形態のベーカリー食品は、ビスケット、クッキー、クラッカー、乾パン、プレッツェル、カットパン、ウェハース、サブレ、ラングドシャ、マカロン等の焼き菓子、パウンドケーキ、フルーツケーキ、マドレーヌ、バウムクーヘン、カステラ等のバターケーキ、ショートケーキ、ロールケーキ、トルテ、デコレーションケーキ、シフォンケーキ等のスポンジケーキ、チーズケーキ、ガトーショコラ、蒸しケーキ、シュー菓子、発酵菓子、パイ、ワッフル等の洋生菓子、タルト、菓子パン、フランスパン、シュトーレン、パネトーネ、ブリオッシュ、ドーナツ、デニッシュ、クロワッサン等のパンである。本発明の実施の形態のベーカリー食品は、好ましくはバターケーキであり、より好ましくはパウンドケーキである。
【0114】
本発明の実施の形態のベーカリー食品の焼成方法(製造方法)は、特に制限されるものではなく、従来公知のベーカリー食品と同様の焼成方法(製造方法)により焼成することができる。焼成方法の具体例は、オーブン加熱、直焼き、高周波加熱(電子レンジ加熱)等である。
本発明の実施の形態のベーカリー食品の焼成方法は、好ましくはオーブン加熱である。オーブン加熱は、加熱温度が好ましくは160~180℃であり、加熱時間が好ましくは40~60分間である。
【0115】
本発明によると、良好な食感を有するベーカリー食品が得られる。
【実施例】
【0116】
次に実施例により本発明を説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
油脂の各脂肪酸含有量は、AOCS Ce1f-96に準じて、ガスクロマトグラフィー法で測定した。
油脂のC42~48TAG含有量は、AOCS Ce5-86に準じて、ガスクロマトグラフィー法で測定した。
油脂のヨウ素価は、「基準油脂分析試験法(社団法人日本油化学会編)」の「2.3.4.1-1996 ヨウ素価(ウィイス-シクロヘキサン法)」に準じて測定した。
油脂の融点は、「基準油脂分析試験法(社団法人日本油化学会編)」の「2.2.4.2-1996 融点(上昇融点)」に準じて測定した。
【0117】
〔油脂A1の製造〕
パームステアリン(ヨウ素価:32、炭素数16以上脂肪酸含有量:98.4質量%)15質量部とパーム中融点部(ヨウ素価:45、炭素数16以上脂肪酸含有量:98.8質量%)35質量部とパーム核油の極度硬化油(ラウリン酸含有量:48.4質量%)50質量部を混合した。得られた混合油を、ランダムエステル交換反応を行うことにより、油脂A1(炭素数12~14の直鎖飽和脂肪酸含有量:30.6質量%、ラウリン酸含有量:22.1質量%、パルミチン酸含有量:31.2質量%、ステアリン酸含有量:13.1質量%、不飽和脂肪酸含有量:20.6質量%、炭素数20以上の脂肪酸含有量:0.5質量%、パルミチン酸/ステアリン酸:2.39、不飽和脂肪酸/ステアリン酸:1.58、トランス脂肪酸含有量:0.2質量%、C42~48TAG含有量:54.4質量%、ヨウ素価:23、融点:37.0℃)を得た。
エステル交換反応は、常法に従い、原料油脂を十分に乾燥させ、ナトリウムメトキシドを原料油脂に対して0.2質量%添加した後、減圧下、120℃で0.5時間攪拌しながら反応を行った。エステル交換反応は50質量%のクエン酸水溶液を添加して中和することで終了させた。エステル交換反応を終了させた後、等量の熱湯で3回洗浄して脱水乾燥し、常法により脱色、脱臭することでエステル交換油脂を得た。
【0118】
〔油脂A2の製造〕
パーム核オレイン(ラウリン酸含量:41質量%)50質量部とパームステアリン(ヨウ素価:32、炭素数16以上脂肪酸含有量:98.4質量%)50質量部とを混合した。得られた混合油を、ランダムエステル交換反応を行った後、ヨウ素価が2以下になるまで水素添加を行うことにより、油脂A2(炭素数12~14の直鎖飽和脂肪酸含有量:27.4質量%、ラウリン酸含有量:20.3質量%、パルミチン酸含有量:33.5質量%、ステアリン酸含有量:34.9質量%、不飽和脂肪酸含有量:0.3質量%、炭素数20以上の脂肪酸含有量:0.6質量%、パルミチン酸/ステアリン酸:0.96、不飽和脂肪酸/ステアリン酸:0.01、トランス脂肪酸含有量:0質量%、C42~48TAG含有量:54.4質量%、ヨウ素価:1未満、融点:47.8℃)を得た。
エステル交換反応は、油脂A1と同様の方法で行った。
水素添加反応は、ニッケル触媒を用いて160~200℃にて、ヨウ素価が2以下になるまで行った。水素添加反応が終了後、ニッケル触媒をろ過により除去し、脱色、脱臭を行うことで、極度硬化油を得た。
【0119】
〔油脂B1の製造〕
パーム油(ヨウ素価:51、炭素数16以上脂肪酸含有量:98.5質量%)60質量部とパーム核油(ラウリン酸含有量:47.1質量%)40質量部を混合した。得られた混合油を、ランダムエステル交換反応を行うことにより、油脂B1(炭素数12~14の直鎖飽和脂肪酸含有量:26.0質量%、ラウリン酸含有量:18.8質量%、パルミチン酸含有量:29.9質量%、ステアリン酸含有量:3.7質量%、不飽和脂肪酸含有量:37.6質量%、炭素数20以上の脂肪酸含有量:0.6質量%、パルミチン酸/ステアリン酸:8.08、トランス脂肪酸含有量:0.6質量%、C42~48TAG含有量:57.1質量%、ヨウ素価:39、融点:30.0℃)を得た。
エステル交換反応は、油脂A1と同様の方法で行った。
【0120】
〔油脂b1の製造〕
パームオレイン(ヨウ素価:56)を、ランダムエステル交換反応を行うことにより、油脂b1(炭素数12~14の直鎖飽和脂肪酸含有量:1.6質量%、ラウリン酸含有量:0.5質量%、パルミチン酸含有量:40.8質量%、ステアリン酸含有量:4.7質量%、不飽和脂肪酸含有量:52.4質量%、炭素数20以上の脂肪酸含有量:0.6質量%、パルミチン酸/ステアリン酸:8.76、トランス脂肪酸含有量:0.5質量%、C42~48TAG含有量:10.1質量%、ヨウ素価:56、融点:41.2℃)を得た。
エステル交換反応は、油脂A1と同様の方法で行った。
【0121】
〔油脂C1〕
菜種油を油脂C1(20℃の性状:液状、不飽和脂肪酸含有量:92.5質量%、トランス脂肪酸含有量:1.4質量%)とした。
【0122】
〔油脂D1〕
ヤシ油の硬化油を油脂D1(炭素数12~14の直鎖飽和脂肪酸含有量:67.0質量%、ラウリン酸含有量:47.9質量%、不飽和脂肪酸含有量:0質量%、トランス脂肪酸含有量:0質量%、ヨウ素価:0)とした。
【0123】
〔油脂E1〕
パーム中融点部(ヨウ素価:45)を油脂E1(炭素数12~14の直鎖飽和脂肪酸含有量:1.2質量%、パルミチン酸含有量:47.8質量%、ステアリン酸含有量:5.1質量%、不飽和脂肪酸含有量:45.2質量%、パルミチン酸/ステアリン酸:9.37、トランス脂肪酸含有量:0.2質量%)とした。
【0124】
〔油脂E2〕
パーム油(ヨウ素価:51)を油脂E2(炭素数12~14の直鎖飽和脂肪酸含有量:1.5質量%、パルミチン酸含有量:44.3質量%、ステアリン酸含有量:4.5質量%、不飽和脂肪酸含有量:49.2質量%、パルミチン酸/ステアリン酸:9.84、トランス脂肪酸含有量:0.3質量%)とした。
【0125】
〔練り込み用マーガリンの製造〕
表1~2の配合に従って、油相と水相とをそれぞれ調製し、油相に水相を混合、乳化した。当該乳化物を、急冷混捏して、実施例1~7、比較例1~2の練り込み用マーガリンを製造した。
【0126】
〔練り込み用マーガリンの評価1〕
以下手順1~6で操作し、油脂と全卵が分離するまでの全卵の添加量をXとし、下記式で吸卵率を算出した。吸卵率が100%以上の場合、練り込み用マーガリンが優れた吸卵性を有すると判断した。
1.前日から油脂組成物250gと上白糖250gを20℃に調温する。
2.前日から全卵を20℃に調温する。
3.油脂組成物と篩った上白糖を、ホバートミキサー(N―50、ホバート・ジャパン社製)を用い、中速にて、比重0.75になるまで攪拌する。
4.全卵50gを、中速にて、30秒かけて少しずつ加える。
5.全卵50g添加後、中速にて、さらに30秒攪拌し、混合物の状態を確認する。
6.油脂と全卵が分離するまで、前記4と前記5の操作を繰り返して行う。
吸卵率(%)=X÷250×100
【0127】
〔練り込み用マーガリンの評価2〕
小麦粉100質量部、練り込み用マーガリン100質量部、全卵100質量部、上白糖100質量部、ベーキングパウダー0.5質量部の配合で、シュガーバッター法により、パウンドケーキ用生地を製造した。該パウンドケーキ用生地を調製し、オーブンで焼成(上火温度:180℃、下火温度:160℃、時間:52分間)することでパウンドケーキを製造した。得られたパウンドケーキの食感を、以下の方法に従って評価した。結果を表1~2に示した。
【0128】
<食感>
焼成から3日後のパウンドケーキを、5名の専門パネルが食し、以下の基準に従って採点した。評価結果は、平均点の評価がA又はBの場合、良好な食感であると判断した。なお、パウンドケーキの食感を評価した専門パネルは、食品の食感等の官能評価の訓練を定期的に受けており、食品の食感等の官能評価結果に個人差が少ない。
2点:非常にしっとりしており、口溶けも非常に良好である。
1点:しっとりしており、口溶けも良好である。
0点:ぱさつきがあり、口溶けもあまり良くない。
<平均点>
A:1.5点以上
B:1.0点以上1.5点未満
C:1.0点未満
【0129】
【0130】
【0131】
実施例の練り込み用マーガリンは、優れた吸卵性を有していた。また、実施例の練り込み用マーガリンを使用して製造したパウンドケーキは、良好な食感を有していた。
一方、比較例の練り込み用マーガリンは、優れた吸卵性を有していなかった。また、比較例の練り込み用マーガリンを使用して製造したパウンドケーキは、良好な食感を有していなかった。