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特許7242617固形がんおよび/またはその転移を処置する方法、そのための薬剤、ならびに固形がんおよび/またはその転移処置の臨床転帰を予測する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-10
(45)【発行日】2023-03-20
(54)【発明の名称】固形がんおよび/またはその転移を処置する方法、そのための薬剤、ならびに固形がんおよび/またはその転移処置の臨床転帰を予測する方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 33/68 20060101AFI20230313BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20230313BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20230313BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20230313BHJP
   C07K 16/00 20060101ALN20230313BHJP
   C07K 14/475 20060101ALN20230313BHJP
   C07K 14/54 20060101ALN20230313BHJP
   C07K 14/52 20060101ALN20230313BHJP
   C12N 9/02 20060101ALN20230313BHJP
   C12N 9/10 20060101ALN20230313BHJP
   C12N 9/12 20060101ALN20230313BHJP
【FI】
G01N33/68
A61K45/00 ZNA
A61P35/00
A61K39/395 N
A61K39/395 T
C07K16/00
C07K14/475
C07K14/54
C07K14/52
C12N9/02
C12N9/10
C12N9/12
【請求項の数】 6
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020157433
(22)【出願日】2020-09-18
(62)【分割の表示】P 2017514914の分割
【原出願日】2015-08-18
(65)【公開番号】P2021009154
(43)【公開日】2021-01-28
【審査請求日】2020-10-15
(31)【優先権主張番号】62/051,530
(32)【優先日】2014-09-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】591032596
【氏名又は名称】メルク パテント ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Merck Patent Gesellschaft mit beschraenkter Haftung
【住所又は居所原語表記】Frankfurter Str. 250,D-64293 Darmstadt,Federal Republic of Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 博信
(72)【発明者】
【氏名】ストラウブ ヨーゼフ
(72)【発明者】
【氏名】ストウブ エイケ
【審査官】海野 佳子
(56)【参考文献】
【文献】特表2014-516531(JP,A)
【文献】特表2012-513422(JP,A)
【文献】特表2012-529895(JP,A)
【文献】特開2010-107306(JP,A)
【文献】Yuting Ma, et al.,Contribution of IL-17-producing γδ T cells to the efficacy of anticancer chemotherapy,Journal of Experimental Medicine ,2011年03月14日,Vol.208, No.3,491-503
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 33/48-33/98
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象の少なくとも1つの体液を単離し、単離した体液のサンプル中のSTX1A(UniProt ID:Q16623)、TPO(UniProt ID:P07202)、CCL23.1(UniProt ID:P55773)、IGHD_IGK._IGL.(UniProt ID:P01880)、TK1(UniProt ID:P04183)、IL17A(UniProt ID:Q16552)、およびPGF(UniProt ID:P49763)およびTGM3(UniProt ID:Q08188)からなる群から選択される1つまたは複数のタンパク質のレベルを決定すること
を含む、少なくとも1つの汎αvインテグリン阻害剤を用いる処置から効果を得る可能性が高い対象における腫瘍が同定される方法であって、
a)STX1A(UniProt ID:Q16623)、
TPO(UniProt ID:P07202)、
CCL23.1(UniProt ID:P55773)、
IGHD_IGK._IGL.(UniProt ID:P01880)、
TK1(UniProt ID:P04183)、
IL17A(UniProt ID:Q16552)、および
PGF(UniProt ID:P49763)
からなる群から選択される1つまたは複数のタンパク質が高レベルである場合、かつ/または
b)タンパク質TGM3(UniProt ID:Q08188)が低レベルである場合に、
少なくとも1つの汎αvインテグリン阻害剤を用いる処置から効果を得る可能性が高い対象における腫瘍が同定され、
前記体液のサンプル中の前記タンパク質レベルは、
a)前記体液のサンプル中のそれぞれのタンパク質レベルが、それぞれのタンパク質に関して決定された中央値閾値よりも少なくとも2%高い場合、高いと分類され、かつ
b)前記体液のサンプル中のそれぞれのタンパク質レベルが、それぞれのタンパク質に関して決定された中央値閾値よりも少なくとも2%低い場合、低いと分類される、
方法。
【請求項2】
対象の1つまたは複数の体液を単離し、単離した体液のサンプル中のタンパク質STX1A(UniProt ID:Q16623)、および/またはSTX1Aに対して少なくとも90%、少なくとも95%、又は少なくとも99%の配列相同性を有するタンパク質のレベルを決定することを含む、少なくとも1つの汎αvインテグリン阻害剤を用いる処置から効果を得る可能性が高い対象における腫瘍が同定される方法であって、
それらが高レベルである場合に、少なくとも1つの汎αvインテグリン阻害剤を用いる処置から効果を得る可能性が高い対象における腫瘍が同定され
前記レベルは、前記体液のサンプル中のタンパク質STX1A(UniProt ID:Q16623)、および/またはSTX1Aに対して少なくとも90%、少なくとも95%、又は少なくとも99%の配列相同性を有するタンパク質のレベルが、それぞれのタンパク質に関して決定された中央値閾値よりも少なくとも2%高い場合、高いと分類される方法。
【請求項3】
前記体液のサンプル中のタンパク質のレベルは、
a)前記それぞれのサンプル中のタンパク質レベルが、それぞれのタンパク質に関して決定された中央値閾値よりも少なくとも5%高い場合、少なくとも10%高い場合、又は少なくとも25%高い場合、高いと分類され、かつ/または
b)前記それぞれのサンプル中のタンパク質レベルが、それぞれのタンパク質に関して決定された中央値閾値よりも少なくとも5%低い場合、少なくとも10%低い場合、又は少なくとも25%低い場合、低いと分類される、
請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
1つまたは複数の体液が血漿を含む、または血漿からなる、請求項1、2または3に記載の方法。
【請求項5】
少なくとも1つの汎αvインテグリン阻害剤がアビツズマブを含む、またはアビツズマブである、請求項1、2、3または4に記載の方法。
【請求項6】
対象の少なくとも1つの体液を単離し、単離した体液のサンプル中のSTX1A(UniProt ID:Q16623)、TPO(UniProt ID:P07202)、CCL23.1(UniProt ID:P55773)、IGHD_IGK._IGL.(UniProt ID:P01880)、TK1(UniProt ID:P04183)、IL17A(UniProt ID:Q16552)、PGF(UniProt ID:P49763)およびTGM3(UniProt ID:Q08188)からなる群から選択される1つまたは複数のタンパク質のレベルを決定することを含む、少なくとも1つの汎αvインテグリン阻害剤を用いる処置に応答し得る対象が同定される方法であって、
a)STX1A(UniProt ID:Q16623)、
を含む1つまたは複数のタンパク質が高レベルである場合、かつ/または、
b)タンパク質TGM3(UniProt ID:Q08188)が低レベルである場合に、
少なくとも1つの汎αvインテグリン阻害剤を用いる処置に応答し得る対象が同定され、
前記体液のサンプル中の前記タンパク質レベルは、
a)前記体液のサンプル中のそれぞれのタンパク質レベルが、それぞれのタンパク質に関して決定された中央値閾値よりも少なくとも2%高い場合、高いと分類され、かつ
b)前記体液のサンプル中のそれぞれのタンパク質レベルが、それぞれのタンパク質に関して決定された中央値閾値よりも少なくとも2%低い場合、低いと分類される、
方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、対象における結腸直腸がん(CRC)およびその転移、好ましくはまた対象における他の固形がんおよびその転移を処置する新規方法であって、好ましくは、患者が処置前または処置中に1つまたは複数の体液中のある特定タンパク質レベルを示すかどうかに依存し、前記処置が、患者に少なくとも1つの汎(pan)αvインテグリン阻害剤を投与することを含む方法、前記新規方法において使用するための薬剤、および患者の1つまたは複数の体液中の前記特定タンパク質レベルに基づく少なくとも1つの汎αvインテグリン阻害剤を用いる処置の転帰を予測する新規方法を提供する。
より詳しくは、本発明は、対象における固形がんおよび/またはその転移を、特に結腸直腸がん(CRC)および/またはその転移を、少なくとも1つの汎αvインテグリン阻害剤、好ましくは汎αvインテグリン阻害剤アビツズマブ(Abituzumab)またはインテツムマブ(Intetumumab)を用いて処置する新規方法であって、前記対象が処置前または処置中に1つまたは複数の体液中のある特定タンパク質レベルを示す、新規方法を提供する。
【背景技術】
【0002】
結腸直腸がん(結腸がん、直腸がんまたは腸がんとしても知られている)は、結腸または直腸(大腸の一部)においてがんが発症する場合である。これは、身体の他の部分に浸潤または拡散する能力を有する細胞の異常増殖によるものである。
結腸直腸がんに使用される処置には、外科手術、放射線療法、化学療法および標的療法のいくつかの組み合わせが含まれ得る。結腸壁内に限定されるがんは、外科手術によって治療され得るが、広範囲に拡散したがんは、通常、生活の質および症状の改善に注目した管理では治療することができない。米国における5年生存率は、約65%である。しかし、これは、がんがどの程度進行しているのか、外科手術によってすべてのがんを除去することができるかどうか、およびその人の総体的健康に依存する。世界的に、結腸直腸がんは、全症例の約10%を占める、3番目に多い一般的なタイプのがんである。2012年には、140万件の新たな症例が起こり、694,000人が死亡した。65%を超えて発症する先進国においては、より一般的である。このがんは、女性においては、男性ほど一般的ではない。
結腸がんおよび直腸がんの両方において、化学療法が場合により外科手術に加えて使用され得る。直腸がんにおいては、化学療法をネオアジュバント設定で使用することができる。
【0003】
がんがリンパ節に浸潤した場合、化学療法剤フルオロウラシルまたはカペシタビンを加えることによって平均寿命が延びる。リンパ節にがんが含まれていない場合、化学療法の効果について議論の余地がある。がんが広範囲に転移しているか、切除不可能である場合、処置は緩和的である。典型的には、この設定において、多数の異なる化学療法剤を使用することができる。この症状用の化学療法剤としては、カペシタビン、フルオロウラシル、イリノテカン、ロイコボリン、オキサリプラチンおよびUFTを挙げることができる。時々使用される別のタイプの薬剤は、上皮増殖因子受容体阻害剤である。放射線と化学療法の組み合わせは直腸がんに有用であり得るが、結腸がんにおけるその使用は、放射線に対する腸の感受性のため、慣用されてはいない。化学療法の場合と同じく、放射線療法は、直腸がんのいくつかのステージに対してネオアジュバントおよびアジュバント設定で使用することができる。
【0004】
骨転移、または転移性骨疾患は、原発腫瘍浸潤から骨にもたらすがん転移のクラスである。骨は、転移の最も一般的な場所の1つである。[Coleman RE (October 2006. ”Clinical features of metastatic bone disease and risk of skeletal morbidity”. Clin. Cancer Res. 12 (20 Pt 2): 6243s-9s.]任意のタイプのがんが骨の内部に転移性腫瘍を
形成し得るが、骨髄の微小環境は、前立腺がん、乳がんおよび肺がんを含む、特定のタイプのがんに都合がよい傾向がある。[Guise T (October 2010. ”Examining the metastatic niche: targeting the microenvironment”. Semin. Oncol. 37 (Suppl 2): S2-14.
]特に前立腺がんにおいては、骨転移が唯一の転移部位である傾向がある。[Jimenez-Andrade JM, Mantyh WG, Bloom AP, Ferng AS, Geffre CP, Mantyh PW (June 2010.”Bone cancer pain”. Annals of the New York Academy of Sciences 1198: 173-81.]
【0005】
肺の癌腫または肺癌としても知られている、最も一般的な固形腫瘍の1つである肺がんは、肺組織における制御されない細胞増殖を特徴とする悪性肺腫瘍である。処置しないで放置された場合、この増殖は、隣接組織、または肝臓、脳および骨を含む他の身体各部への転移プロセスによって、肺を越えて拡大する可能性がある。原発性肺がんとして知られている、肺で始まるほとんどのがんは、上皮細胞に由来する癌腫である。その主なタイプは、小細胞肺癌(SCLC)および非小細胞肺癌(NSCLC)である。非小細胞肺癌(NSCLC)は、小細胞肺癌(SCLC)以外の任意のタイプの上皮性肺がんである。クラスとして、NSCLCおよびその転移は、小細胞癌と比べると、化学療法に対して比較的感受性が悪い。様々な化学療法が転移性NSCLCにおいて使用されているが、残念なことに、これまでのところ効果はほとんどない。小細胞癌または小細胞肺癌(SCLC)は、子宮頚部、前立腺および胃腸管などの他の身体部位で時折発生する場合もあるが、肺内で最も一般的に発生する種類の高度悪性がんである。SCLCは、通常、非常に早期に、腫瘍の自然経過において広く転移する。またこの場合、この転移は、主として骨、肝臓および脳に影響を及ぼす。
【0006】
女性において最も一般的な固形がんは乳がんである。乳がんは、乳房組織から発生する。最も一般的には、乳管および乳管に乳汁を供給する小葉の内層の細胞で発生する。乳管から発生するがんは腺管癌として知られて、一方、小葉から発生するものは小葉癌として知られている。さらに、18種を超える乳がんの他の亜型が存在する。乳がんの診断は、関連するしこりの生検を行うことによって定期的に確認される。診断が行われると、がんが乳房を越えて広がっているかどうか、どの処置が対応できるのかを判断するため、さらなる検査が行われる。がんが乳房を越えて広がっている場合、乳がんは転移性疾患として存在する。転移性乳がんによって引き起こされる症状は、転移の位置に依存する。転移の一般的な部位としては、骨、肝臓、肺および脳が挙げられる。
【0007】
転移プロセスは多段階の事象であり、がんの最も恐ろしい側面を呈する。診断の時点で、がんは、多くの場合、それらの自然経過において非常に進行しており、転移の存在は一般的な事象である。実際、患者の約30%が臨床診断の時点で検出可能な転移を有しており、さらに30%の患者が潜在性転移を有している。転移は播種され、同時に異なる臓器に出現し、または特定の臓器に局在する可能性がある。限局性疾患の場合には、手術が処置の選択肢である。しかし、再発および予後は、多くの診断基準、例えば、切除の可能性、患者の臨床状況、および転移の数に依存する。
切除後に再発は一般的であり、診断の時点で、微小転移巣が存在することを示唆している。全身化学療法は理想的な設定ではあるが、それによって治癒される患者はごくわずかであり、多くの場合、全身化学療法は失敗する。多くの生理学的障壁および薬物動態学的パラメーターがその効果の低減に関与している。
【0008】
肝臓、肺およびリンパ節は濾過器官であり、したがって、転移しやすい。転移、特に結腸直腸起原の転移は化学的感受性が低く、多くの研究者に対し、薬剤の時間および濃度を増やす方法を使用することを強いてきた。この重要かつ繊細な器官の副作用を低減または限定することが必要とされており、抗腫瘍薬を潅流するための肝臓隔離の技術開発がもたらされた。(K. R. Aigner, Isolated liver perfusion. In: Morris DL, McArdle CS, Onik GM, eds. Hepatic Metastases. Oxford: Butterworth Heinemann, 1996. 101-107)。1981年以降、変更および技術的改良が連続的に導入されてきた。肝臓転移は異なる起原のものである可能性があり、それらの化学的感受性は、組織学上のタイプおよび熱存在下でのそれらの応答によって変動し得る。
【0009】
がん、特に転移を全身的に処置するための新たな治療戦略を開発する必要性が当技術分野において依然として高まる一方である。
したがって、本発明の目的は、そのような新たな戦略を開発することであった。それは全身処置に適用可能なものであるとし、しかも、適用されるがん治療薬の用量を減らし、かつ/またはその効果を増加させるものである。さらなる目的は、腫瘍血管系を正常化して腫瘍の全身治療薬の送達を増大させること、すなわち、腫瘍血管系を非腫瘍組織の血管系の機能性にリセットすることであった。
【0010】
したがって、本発明の好ましい目的は、より効果的で、より許容性の高い、ヒトに対する、特に、固形がんおよび/またはその転移、好ましくは結腸直腸がん(CRC)および/またはその転移、特に、好ましくは転移の位置から無関係な転移性結腸直腸がん(mCRC)に罹患しているヒトがん患者に対する処置を提供し、それによって、好ましくは、全生存期間(OS)、無増悪生存期間(PFS)、生活の質(QOL)の向上、および/または生存期間中央値の増加をもたらすことである。
【0011】
前立腺がんは、米国において、皮膚がんを別にすると最も一般的に生じている固形がんであり、男性のがん死亡の2番目に多い原因である。
前立腺がんは、4つのステージに分類される。ステージIの前立腺がんは前立腺のみで見つかり、直腸指診の際に感知はされず、画像処理により視覚化もされない。ステージIIの前立腺がんでは、腫瘍は前立腺の内部で増殖しているが、前立腺を越えて広がってはいない。しかしステージIIIでは、がんは前立腺の外側に広がっているが、それは最小限である。多くの場合、ステージIIIの前立腺がんは、精嚢などの隣接する組織にのみ広がっている。最後に、ステージIVでは、がんは、前立腺の外側、例えば、リンパ節、骨、肝臓、および/または肺、または脳などの他の組織に広がっている。
去勢レベルのテストステロンにもかかわらず進行している前立腺がんの範囲には、一次ホルモン処置に対して様々な程度および期間の応答を示した腫瘍、ならびに前立腺特異抗原(PSA)単独の上昇から骨組織および/もしくは軟組織に広がっているPSAの上昇、または主として内臓の疾患パターンに及ぶ臨床症状が含まれる。
【0012】
現在承認されている前立腺がんの処置としては、外科的去勢、化学的去勢、または外科的去勢と化学的去勢の組み合わせが挙げられる。一次テストステロンを産生する器官である精巣を摘出すると、循環するアンドロゲンのレベルが正常レベルの5%未満に減少する。このアンドロゲンレベルの減少は、前立腺腫瘍増殖を抑制する。外科的去勢の抗腫瘍効果は直接的であるが、この抗腫瘍効果は一時的であり得る。外科的去勢は、多くの場合、アンドロゲン非依存性前立腺腫瘍細胞のクローン選択をもたらす。これにより、テストステロンまたはDHTの刺激がなくとも増殖する形態の前立腺腫瘍が再増殖するようになる。化学的去勢(内科的去勢とも呼ばれる)は、多くの場合、初期の処置として、外科的去勢の代わりに用いられる。高い有病率にもかかわらず、前立腺がんに罹患している男性の処置選択肢は比較的限られたままであり、典型的には、がんのステージに依存する。
【0013】
処置選択肢としては、前立腺を完全に切除する根治的前立腺摘除などの外科処置、および体外から前立腺に線量を当てる外部ビームによって適用される放射線、またはがん細胞を局所的に死滅させる前立腺内部に移植された低線量放射性シードによって適用される放射線が挙げられる。抗アンドロゲンホルモン療法もまた、前立腺がんの処置において、単独で、または手術もしくは放射線と共に使用される。ホルモン療法は、典型的には、去勢の使用またはホルモン類似体の投与によってテストステロン産生を刺激するホルモンの産生を脳下垂体から遮断することを目的とし、長期間、患者にこれらのホルモン類似体を注射する必要がある。最終的に、通常、他の手法が失敗した場合の最後の手段として、化学療法の手法が進行した前立腺がんの処置に使用されてきた。2、3年以来、ドセタキセルとプレドニゾンの組み合わせが、アンドロゲンを遮断させた場合でも進行した患者に対するケアの新しい基準として確立された。
上記の処置はいずれも治癒的ではなく、当初アンドロゲン依存性である前立腺がんは、多くの場合、外科療法およびホルモンベース療法にもかかわらず進行し、時間の経過とともに抵抗性となり、「ホルモン難治性がん」または「去勢抵抗性がん」(CRPC)と呼ばれるタイプのがんに至る。
【0014】
CRPCの臨床上の疾患症状は、一般に骨転移と関係しており、疼痛、病的骨折および脊髄圧迫を、骨盤不快感、尿管圧迫による腎機能障害、膀胱出口閉塞症、および性機能不全を随伴し得る局所再発と共に含み得る。さらに、骨がんはCRPCの主たる結果であるが、患者は、軟組織転移(リンパ節)ならびに肝臓、肺、脳および他の器官における内臓転移を発症する可能性がある。CRPCに罹患している患者は、化学療法への応答は最小限であり、大多数の患者は、処置開始から20カ月以内に進行性の前立腺がんにより死亡する。一般に、ビホスホネートが骨転移のある去勢抵抗性前立腺がんの患者において使用される。
【0015】
前立腺腫瘍は、血管新生因子の分泌と、血管新生阻害物質の発現のダウンレギュレートが開始されるまで潜伏したままであり、臨床的に検出不可能であることが明らかになっている。一般に、血管新生が前立腺腫瘍の発症にとって重要であると言うことができる。したがって、抗血管新生剤が前立腺がんの細胞増殖を阻害し得ることは全く驚くべきことではない。
前立腺がんにおいて、腫瘍細胞は異常なインテグリンレパートリーを発現し、極めて異常な細胞外マトリックス(ECM)に囲まれている。それぞれのインテグリンが特定の細胞機能を制御する能力があった場合、これらの変化によって重大な結果が起こる。β3サブユニットおよびβ1サブユニットが発現すると、特定のシグナル伝達経路が活性化し、別々のがん細胞の機能をサポートする。β3は、がん細胞において、cdc2レベルおよびcdc2キナーゼ活性の増加に必要とされる点が独特である。これらの効果はβ3に特異的であり、β6では確認されない。β3およびβ6インテグリン変異体のアップレギュレーションは開示されている。Zhengら(Cancer Research 1999; 59, 1655-1664)は、16の外科標本から単離されたヒト前立腺がん細胞を使用し、これらの細胞がαvβ3を発現するが、正常な前立腺上皮細胞では発現しないことを示した。同様に、αvβ6が腺癌で発現されることも分かった(Li et al.; Molecular and Cellular Biology 2007; 27, 4444)。
インテグリン阻害剤を使用すると、インテグリンが腫瘍細胞よって、ならびに内皮細胞によっても発現されるので、がん細胞の生存および血管新生の両方に影響すると考えられる。腫瘍増殖に対する効果と血管新生に対する効果を識別するのは困難であるが、標的インテグリンが腫瘍および内皮細胞の両方によって発現される場合、これらの阻害剤の最大応答を予測することができる。
【0016】
骨は、前立腺がんに関する最も一般的な転移部位である。Bisanzら(Molecular Therapy 2005; 12, 634-643)は、骨における前立腺腫瘍生存に対するαvインテグリンのポジティブな役割を示している。ヒト前立腺がん骨異種移植片の分析によれば、リポソーム封入したヒトα-v siRNAの腫瘍内投与によって、骨におけるPC3腫瘍の増殖が有意に阻害され、前立腺腫瘍細胞のアポトーシスを増加させることが明らかである。さらなる研究(McCabe et al., Oncogene 2007; 26, 6238-6243)において、腫瘍細胞でのαvβ3インテグリン活性化がキーとなる骨特異的基質タンパク質の認識にとって必須であることが証明されている。これらのデータは、αvβ3インテグリンが遠隔転移における前立腺がん増殖をモジュレートすることを示唆している。インテグリンが腫瘍細胞と骨微小環境との間の相互作用を介在し、骨における増殖を促進するので、インテグリン阻害剤の使用の潜在的な用途は、前立腺がん骨病変を予防することといえる。これらの病変は骨芽細胞性および/または骨溶解性であり、前立腺がん患者において高頻度で検出される(80%を超える前立腺がん患者は、剖検時に骨転移が既に発症している)。
【0017】
最近の研究では、αvβ3インテグリンが、骨に転移する前立腺がん細胞によって介在される骨増加を促進することが明らかになっており、前立腺がん造骨病変を阻止する潜在的治療標的としてαvβ3が指摘されている。免疫組織化学分析よって、多くのヒト前立腺がん組織サンプル中にαvインテグリンが存在していることが証明されている。
これらの結果および他の結果から、抗インテグリン剤が直接的および間接的な抗腫瘍活性の両方を有し得ることが示唆される。しかし、ペプチドインテグリン阻害剤または非ペプチドインテグリン阻害剤が前立腺がん治療法において効果的な薬剤であることを報告する臨床治験はほとんどない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
したがって、骨転移、好ましくは乳がん、肺がんおよび/または前立腺がんの骨転移の処置方法を提供する必要もある。さらに、前立腺がん骨転移、特に去勢抵抗性前立腺がん骨転移の処置方法を提供する必要性が非常に高い。
したがって、また、転移性アンドロゲン非依存性前立腺がん(mAIPCa)由来の骨転移および/または転移性アンドロゲン依存性前立腺がん(mADPCa)由来の骨転移の治療法を提供する必要もある。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1-18】中央値より高いレベルまたは中央値より低いレベルに依存する、予測的または予後的であると同定された血漿タンパク質の活性を立証する詳細な結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の態様によれば、1つまたは複数の体液中の特定タンパク質レベルを決定することを含む、少なくとも1つの汎αvインテグリン阻害剤、好ましくはアビツズマブまたはインテツムマブを用いる処置に感受性の強い対象、好ましくはヒト対象の固形がんおよび/または転移を同定する方法であって、前記特定タンパク質の第1の群から選択される1つもしくは複数のタンパク質が高レベルである、および/または前記特定タンパク質の第2の群から選択される1つもしくは複数のタンパク質が低レベルであると、前記処置に腫瘍が感受性であることが示される方法を提供する。
【0021】
したがって、本発明の好ましい主題は、対象の固形がんおよび/またはその転移を処置する方法であって、前記対象が、
a)TPO(UniProt ID:P07202)、
CCL23.1(UniProt ID:P55773)、
IGHD_IGK._IGL.(UniProt ID:P01880)、
TK1(UniProt ID:P04183)、
IL17A(UniProt ID:Q16552)、
STX1A(UniProt ID:Q16623)、および
PGF(UniProt ID:P49763)
からなる群から選択される1つもしくは複数のタンパク質が、前記対象の少なくとも1つの体液中において高レベルであること、ならびに/または
b)TGM3(UniProt ID:Q08188)である1つのタンパク質が、前記対象の少なくとも1つの体液中において低レベルであること
を特徴とし;少なくとも1つの汎αvインテグリン阻害剤を前記対象に投与することを含む、前記方法である。好ましくは、前記の少なくとも1つの汎αvインテグリン阻害剤は、アビツズマブおよび/もしくはインテツムマブを含むか、またはアビツズマブおよび/もしくはインテツムマブである。より好ましくは、前記の少なくとも1つの汎αvインテグリン阻害剤は、アビツズマブおよび/またはインテツムマブであり、特に好ましくは、アビツズマブである。
【0022】
好ましいのは、前記対象の少なくとも1つの体液中の前記タンパク質レベルが、
a)前記血漿中のそれぞれのタンパク質レベルが、それぞれのタンパク質に関して決定された中央値閾値よりも少なくとも2%高い場合、より好ましくは少なくとも5%高い場合、よりさらに好ましくは少なくとも10%高い場合、特に少なくとも25%高い場合、高いと分類され、かつ/または
b)前記血漿中のそれぞれのタンパク質レベルが、それぞれのタンパク質に関して決定された中央値閾値よりも少なくとも2%低い場合、より好ましくは少なくとも5%低い場合、よりさらに好ましくは少なくとも10%低い場合、特に少なくとも25%低い場合、低いと分類される、
前記方法である。
【0023】
好ましいのは、それぞれのタンパク質に関する前記閾値または中央値閾値が、前記固形がん、好ましくは、前記結腸直腸がん(CRC)および/またはその転移、特に転移性結腸直腸がん(mCRC)に罹患している疾患対象個体群の一部である複数の対象の体液から決定される、前記方法である。
体液は、好ましくは、生存している対象、好ましくは生存しているヒト対象の身体内部から生じる液体である。それらは、身体から排泄または分泌される液体、ならびに通常は排泄または分泌されない体内水分を含んでいる。
体液は、好ましくは、細胞内液、細胞外液、血管内液(例えば、全血、血液および血漿)、間質液、リンパ液(時には、間質液のサブタイプとしてみなされるリンパ液)、ならびに細胞透過液などのタイプによって特定され得る。
好ましい体液は、全血(好ましくは「血液」とも呼ばれる)、血清(好ましくは「漿液」とも呼ばれる)、血漿(好ましくは「プラスマ」とも呼ばれる)、滲出液、リンパ液、粘液、腹水、唾液、痰、涙および尿からなる群から選択される。特に好ましい体液は、全血(好ましくは「血液」とも呼ばれる)、血清(好ましくは「漿液」とも呼ばれる)、および血漿(好ましくは「プラスマ」とも呼ばれる)からなる群から選択される好ましい体液からなる群から選択される。特に好ましいのは、血漿(好ましくは「プラスマ」とも呼ばれる)である。あるいは、血清(好ましくは「漿液」とも呼ばれる)および全血(好ましくは「血液」とも呼ばれる)が好ましい。
【0024】
それぞれの前記特定タンパク質に関する「低レベル」または「高レベル」に患者を分類するための閾値は、好ましくは、それぞれの体液中のそのそれぞれの特定タンパク質に関するすべての入手可能なレベルをリスト化し、次いで、前記体液中の前記特定タンパク質レベル値のこのリストから中央値を決定し、この中央値を閾値とすることによって決定される。
【0025】
またこの閾値は、好ましくは、本明細書において中央値閾値とも呼ばれる。好ましくは、前記閾値または中央値閾値は、本明細書に記載したそれぞれの骨転移疾患に罹患している対象の個体群において決定される。より好ましくは、それぞれの特定タンパク質に関する前記閾値または中央値閾値は、それぞれの骨転移疾患に罹患している疾患のある対象個体群の一部である複数の対象の体液から決定される。
【0026】
より好ましくは、前記閾値または中央値閾値は、本明細書に記載したそれぞれの固形がんに罹患している対象の個体群、特に、結腸直腸がん(CRC)および/またはその転移に罹患している対象の個体群において決定される。さらにより好ましくは、それぞれの特定タンパク質に関する前記閾値または中央値閾値は、本明細書に記載したそれぞれの骨それぞれの固形がんに罹患している疾患のある対象個体群の一部である複数の対象の体液から決定される。さらにより好ましくは、それぞれの特定タンパク質に関する前記閾値または中央値閾値は、結腸直腸がん(CRC)および/またはその転移に罹患している疾患のある対象個体群の一部である複数の対象の体液から決定される。特に好ましくは、それぞれの特定タンパク質に関する前記閾値または中央値閾値は、転移性結腸直腸がん(mCRC)に罹患している疾患のある対象個体群の一部である複数の対象の体液から決定される。
【0027】
例えば、1つまたは複数の前記特定タンパク質に関する前記中央値閾値を決定するには、好ましい体液(ここでは:血漿)を提供する約500μLを得るため、体液サンプル(ここでは血液サンプル)を、転移性結腸直腸がん(mCRC)に罹患している197名のヒト対象から得る。含有されている目的の特定タンパク質、例えばSTX1Aのレベルは、アプタマーベースタンパク質検出法、例えば、実施例の項目で詳細に記載しているSomaLogicプロテオミクスアリフィティーアッセイ法を使用して決定し、それにより、目的のそれぞれのタンパク質の結果を、その検出法によって記録された相対的な蛍光読み取り値によって表わす。任意選択の次のステップにおいて、得られた生データセットは、目的以外のタンパク質、例えば、プラスマ調製プロセス中に起こり得る血小板活性化または細胞融解などの、プラスマタンパク質の不適当なサンプル操作によって誘導される、または影響されることが知られているタンパク質のデータを除去することによって単純化することができる。次いで、このようにして得られた(任意選択で単純化された)前記の日は、次いで、好ましくは、データ正規化手順およびフィルタリング手順などのステップに供され、目的のタンパク質に関する安定性のあるシグナルを得る。好ましくは、このデータ分析プロセスにはカットオフ最適化が含まれている。したがって、この手順は、目的の1つまたは複数の特定タンパク質の中央値閾値、例えば、タンパク質STX1Aに関する中央値閾値を提供する。この得られた中央値閾値を用いて、次いで、転移性結腸直腸がん(mCRC)に罹患している前記197名のヒト対象、ならびに今後mCRCに罹患するヒト対象の両方をそれぞれ、の目的の1つまたは複数の特定タンパク質、例えばSTX1Aが高レベルまたは低レベルであるものとして容易に特徴づけ、1つまたは複数の化学療法剤と組み合わせてもよい、少なくとも1つの汎αvインテグリン阻害剤を用いる処置の臨床転帰に対する特定の影響を予測することができる。
【0028】
好ましくは、体液のサンプリングおよび/またはそれぞれの特定タンパク質に関する中央値の評価は、前記の少なくとも1つの汎αvインテグリン阻害剤を用いるそれぞれの固形がん、結腸直腸がんおよび/もしくはその転移、または他の骨転移疾患、好ましくは結腸直腸がんおよび/もしくはその転移、特に転移性結腸直腸がん(mCRC)の処置前に実施される。好ましくは、患者は、前記体液中のそれぞれの特定タンパク質レベルが中央値閾値より高い場合、「高レベル」として分類される。したがって、患者は、好ましくは、前記体液中のそれぞれの特定タンパク質レベルが前記中央値閾値よりも低い場合または等しい場合、「低レベル」として分類される。
より好ましくは、それぞれの前記特定タンパク質に関する「低レベル」または「高レベル」に患者を分類するための閾値は、血漿中のそのそれぞれの特定タンパク質についてのすべての入手可能なレベルをリスト化し、次いで、前記血漿中の前記特定タンパク質レベル値のこのリストから中央値を決定し、この中央値を閾値とすることによって決定される。またこの閾値は、好ましくは、本明細書において中央値閾値とも呼ばれる。好ましくは、血漿のサンプリングおよび/またはそれぞれの特定タンパク質に関する中央値の評価は、前記少なくとも1つの汎αvインテグリン阻害剤を用いるそれぞれの固形がん、結腸直腸がんおよび/もしくはその転移、または他の骨転移疾患、好ましくは結腸直腸がんおよび/もしくはその転移、特に転移性結腸直腸がん(mCRC)の処置前に実施される。好ましくは、患者は、前記血漿中のそれぞれの特定タンパク質レベルが中央値閾値より高い場合、「高レベル」として分類される。したがって、患者は、好ましくは、前記血漿中のそれぞれの特定タンパク質レベルが前記中央値閾値よりも低い場合または等しい場合、「低レベル」として分類される。好ましくは、固形がんおよび/またはその転移は、この点に関して、結腸直腸がんおよび/またはその転移であり、特に転移性結腸直腸がん(mCRC)である。好ましくは、少なくとも1つの汎αvインテグリン阻害剤は、アビツズマブまたはインテツムマブを含む。より好ましくは、少なくとも1つの汎αvインテグリン阻害剤は、アビツズマブまたはインテツムマブである。特に好ましくは、少なくとも1つの汎αvインテグリン阻害剤は、アビツズマブである。
【0029】
より好ましくは、それぞれの前記特定タンパク質に関する「低レベル」または「高レベル」に患者を分類するための閾値は、血漿中のそのそれぞれの特定タンパク質についてのすべての入手可能なレベルをリスト化し、次いで、前記血漿中の前記特定タンパク質レベル値のこのリストから中央値を決定し、この中央値を閾値とすることによって決定される。またこの閾値は、好ましくは、本明細書において中央値閾値とも呼ばれる。好ましくは、血漿のサンプリングおよび/またはそれぞれの特定タンパク質に関する中央値の評価は、前記少なくとも1つの汎αvインテグリン阻害剤を用いるそれぞれの固形がん、結腸直腸がんおよび/もしくはその転移、または他の骨転移疾患、好ましくは結腸直腸がんおよび/もしくはその転移、特に転移性結腸直腸がん(mCRC)の処置前に実施される。好ましくは、患者は、前記血漿中のそれぞれの特定タンパク質レベルが中央値閾値より高い場合、「高レベル」として分類される。したがって、患者は、好ましくは、前記血漿中のそれぞれの特定タンパク質レベルが前記中央値閾値よりも低い場合または等しい場合、「低レベル」として分類される。好ましくは、固形がんおよび/またはその転移は、この点に関して、結腸直腸がんおよび/またはその転移であり、特に転移性結腸直腸がん(mCRC)である。好ましくは、少なくとも1つの汎αvインテグリン阻害剤は、アビツズマブまたはインテツムマブを含む。より好ましくは、少なくとも1つの汎αvインテグリン阻害剤は、アビツズマブまたはインテツムマブである。特に好ましくは、少なくとも1つの汎αvインテグリン阻害剤は、アビツズマブである。
【0030】
前記閾値レベル、特に前記中央値閾値レベルを決定する方法は、当技術分野で公知である。適切な技術の例としては、限定するものではないが、SomaLogic技術、好ましくはSomaLogicプロテオミックアフィニティーアッセイ技術、SomaLogic SOMAscan(商標)/V3/バージョン10.5.1.1、ELISA(酵素結合免疫吸着アッセイ)技術、ならびに高感度改変法としてのRIA(放射能イムノアッセイ)技術、2D SDS-ポリアクリルアミド電気泳動(SDS-PAGE)質量分析技術、および近接ライゲーションアッセイ(PLA)技術を含む、それらの改変技術が挙げられる。
【0031】
より詳しくは、言及したタンパク質の血漿レベルに基づいて患者を「高い」群および「低い」群に分類する閾値は、好ましくは、患者個体群全体の血漿レベル中央値である。閾値は、使用される実際の技術からわずかであるが、無関係な依存性を示し得る。
【0032】
好ましくは、分類されるサンプルのタンパク質血漿レベルは、本明細書に記載されているSomaLogic技術、好ましくは、SomaLogicプロオミックアフィニティーアッセイ技術(Somalogic, Inc., 2945 Wilderness Pl, Boulder, CO 80301, USA、本明細書に記載のソフトウェアパッケージおよびバージョン番号)を用いて測定される。従って識別される血漿レベル中央値は、例えば、本明細書に記載した分析で実施されたように、好ましくは、新しいSomaLogic患者プロファイルがデータ正規化ステップで処理された後に、「低い」カテゴリーおよび「高い」カテゴリーへ分類するための閾値として使用することができる。例えば、SomaLogic法によって調製される888の血漿タンパク質レベルに関する患者の前処理プロテオミックプロファイルは、すべてのサンプルに関する既存の前処理データセット、適用されるvsn2パッケージで実施される分散安定化と有利に組み合わせることができる。最後に、本明細書に記載した臨床試験(POSEIDON試験)から得られた、目的の特定タンパク質に関する正規化した患者の前処置レベルは、収集され、目的のタンパク質に関する特定中央値閾値と比較することができる(OSに関する予測の中央値閾値-CCL23:16.1シグナルユニット、IGHD_IGK_IGL:11.3、TPO:11.2、IL17A:7.64、TGM3:8.19、TK1:9.53、STX1A:8.96、PFSに関する予測の中央値閾値-PGF:8.62;すべての中央値閾値は、Somalogic技術によって測定され、データセットの分散-安定化正規化後に、log2スケールのタンパク質レベルユニットとして示されている)。以前のデータセットが入手できない場合、または血漿タンパク質レベルを測定する技術がSomaLogic技術ではない場合、新しい技術または新しい患者個体群(好ましくは、それぞれの適応症について少なくとも120名の患者を含む)に由来する、個体群血漿レベル中央値を、好ましくは、まず測定し、次いで、新しい個体群中央値に基づいて分類を容易に行うことができる。
【0033】
特に好ましくは、前記血漿中のそれぞれの特定タンパク質レベルが、それぞれの特定タンパク質に関する前記中央値閾値よりも少なくとも2%高い場合、より好ましくは少なくとも5%高い場合、さらにより好ましくは少なくとも10%高く場合、特に少なくとも25%高い場合、患者は「高レベル」として分類される。
特に好ましくは、前記血漿中のそれぞれの特定タンパク質レベルが、それぞれの特定タンパク質に関する前記中央値閾値よりも少なくとも2%低い場合、より好ましくは少なくとも5%低い場合、さらにより好ましくは少なくとも10%低い場合、特に少なくとも25%低い場合、患者は「低レベル」として分類される。
【0034】
通常、前記閾値および/または前記中央値閾値は、固形腫瘍および/またはその転移、好ましくは、それぞれの固形腫瘍および/またはその転移を有している対象個体群において決定される。好ましくは、これは、目的の個々のそれぞれの特定タンパク質に対して無関係に行われる。
【0035】
より好ましくは、前記閾値および/または前記中央値閾値は、好ましくは、目的の個々のそれぞれの特定タンパク質に対して無関係に、結腸直腸がんおよび/またはその転移を有している対象個体群において決定される。
【0036】
好ましくは、本発明に記載の前記特定タンパク質は、
a)
TPO(Somamer ID: SL000588; UniProt ID: P07202)、
CCL23.1(Somamer ID: SL003302; UniProt ID: P55773)、
IGHD__IGK._IGL.(Somamer ID: SL000460; UniProt ID: P01880)、
TK1(Somamer ID: SL000057; UniProt ID: P04183)、
IL17A(Somamer ID: SL001713; UniProt ID: Q16552)、
STX1A(Somamer ID: SL004304; UniProt ID: Q16623)、および
PGF(Somamer ID: SL002640; UniProt ID: P49763)
からなる群から選択される1つもしくは複数のタンパク質、ならびに/または
b)TGM3(Somamer ID:SL008945;UniProt ID:Q08188)である、選択された1つのタンパク質;
ならびに/または
好ましくはまた、前記特定タンパク質に対して少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%、よりさらに好ましくは少なくとも95%、特に少なくとも99%の配列相同性を有するタンパク質
を含む。
【0037】
より好ましくは、患者のそれぞれの体液中の、好ましくは血漿中の1つまたは複数の特定タンパク質に関する本明細書で定義した高レベルは、前記体液中の前記高レベルの前記1つまたは複数の特定タンパク質が、
TPO(Somamer ID: SL000588; UniProt ID: P07202)、
CCL23.1(Somamer ID: SL003302; UniProt ID: P55773)、
IGHD__IGK._IGL.(Somamer ID: SL000460; UniProt ID: P01880)、
TK1(Somamer ID: SL000057; UniProt ID: P04183)、
IL17A(Somamer ID: SL001713; UniProt ID: Q16552)、
STX1A(Somamer ID: SL004304; UniProt ID: Q16623)、および
PGF(Somamer ID: SL002640; UniProt ID: P49763)
からなる群から選択される1つもしくは複数のタンパク質、ならびに/または
好ましくはまた、前記特定タンパク質に対して少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%、よりさらに好ましくは少なくとも95%、特に少なくとも99%の配列相同性を有するタンパク質
を含む場合、臨床転帰に関して有利である。
【0038】
より好ましくは、患者のそれぞれの体液中の、好ましくは血漿中の1つまたは複数の特定タンパク質に関する本明細書で定義した低レベルは、前記体液中の前記低レベルの前記1つまたは複数の特定タンパク質がタンパク質TGM3(Somamer ID:SL008945;UniProt ID:Q08188)、ならびに/または
好ましくはまた、前記特定タンパク質に対して少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%、よりさらに好ましくは少なくとも95%、特に少なくとも99%の配列相同性を有するタンパク質
を含む場合、少なくとも1つの汎αvインテグリン阻害剤を用いるそれぞれの固形がん、結腸直腸がんおよび/もしくはその転移、または他の骨転移疾患、好ましくは結腸直腸がんおよび/もしくはその転移、特に転移性結腸直腸がん(mCRC)の処置の臨床転帰に関して有利である。
【0039】
特に好ましいのは、前記対象が、タンパク質STX1A(UniProt ID:Q16623)、および/または前記タンパク質に対して少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%、よりさらに好ましくは95%、特に少なくとも99%の配列相同性を有するタンパク質が高レベルであることを特徴とする、本明細書に記載されている方法である。
好ましくは、本明細書に記載されているタンパク質の配列相同性は、BLASTpアルゴリズムを使用して決定される。
前記特定タンパク質は、好ましくは、以下の配列および/または配列ID(FASTAフォーマットのUniProt IDによって同定される、表1にリスト化したタンパク質のアミノ酸配列)によって特徴づけられる:
【0040】
FASTAフォーマットのUniProt IDによって同定されるタンパク質のアミノ酸配列を表1に記載した:
TPO(サイロイドペルオキシダーゼ):
>sp|P07202| PERT_ヒトサイロイドペルオキシダーゼ OS=ホモサピエンス
GN=TPO PE=1 SV=4
MRALAVLSVTLVMACTEAFFPFISRGKELLWGKPEESRVSSVLEESKRLVDTAMYATMQRNLKKRGILSPAQLLSFSKLPEPTSGVIARAAEIMETSIQAMKRKVNLKTQQSQHPTDALSEDLLSIIANMSGCLPYMLPPKCPNTCLANKYRPITGACNNRDHPRWGASNTALARWLPPVYEDGFSQPRGWNPGFLYNGFPLPPVREVTRHVIQVSNEVVTDDDRYSDLLMAWGQYIDHDIAFTPQSTSKAAFGGGADCQMTCENQNPCFPIQLPEEARPAAGTACLPFYRSSAACGTGDQGALFGNLSTANPRQQMNGLTSFLDASTVYGSSPALERQLRNWTSAEGLLRVHARLRDSGRAYLPFVPPRAPAACAPEPGIPGETRGPCFLAGDGRASEVPSLTALHTLWLREHNRLAAALKALNAHWSADAVYQEARKVVGALHQIITLRDYIPRILGPEAFQQYVGPYEGYDSTANPTVSNVFSTAAFRFGHATIHPLVRRLDASFQEHPDLPGLWLHQAFFSPWTLLRGGGLDPLIRGLLARPAKLQVQDQLMNEELTERLFVLSNSSTLDLASINLQRGRDHGLPGYNEWREFCGLPRLETPADLSTAIASRSVADKILDLYKHPDNIDVWLGGLAENFLPRARTGPLFACLIGKQMKALRDGDWFWWENSHVFTDAQRRELEKHSLSRVICDNTGLTRVPMDAFQVGKFPEDFESCDSITGMNLEAWRETFPQDDKCGFPESVENGDFVHCEESGRRVLVYSCRHGYELQGREQLTCTQEGWDFQPPLCKDVNECADGAHPPCHASARCRNTKGGFQCLCADPYELGDDGRTCVDSGRLPRVTWISMSLAALLIGGFAGLTSTVICRWTRTGTKSTLPISETGGGTPELRCGKHQAVGTSPQRAAAQDSEQESAGMEGRDTHRLPRAL
CCL23.1(ケモカイン(C-Cモチーフ)リガンド23):
>sp|P55773| CCL23_ヒトC-Cモチーフケモカイン23 OS=ホモサピエンス
GN=CCL23 PE=1 SV=3
MKVSVAALSCLMLVTALGSQARVTKDAETEFMMSKLPLENPVLLDRFHATSADCCISYTPRSIPCSLLESYFETNSECSKPGVIFLTKKGRRFCANPSDKQVQVCVRMLKLDTRIKTRKN
IGHD_IGK._IGL.(イムノ-グロブリンD):
>sp|P01880|IGHD_ヒトIgδ鎖C領域 OS=ホモサピエンス
GN=IGHD PE=1 SV=2
APTKAPDVFPIISGCRHPKDNSPVVLACLITGYHPTSVTVTWYMGTQSQPQRTFPEIQRRDSYYMTSSQLSTPLQQWRQGEYKCVVQHTASKSKKEIFRWPESPKAQASSVPTAQPQAEGSLAKATTAPATTRNTGRGGEEKKKEKEKEEQEERETKTPECPSHTQPLGVYLLTPAVQDLWLRDKATFTCFVVGSDLKDAHLTWEVAGKVPTGGVEEGLLERHSNGSQSQHSRLTLPRSLWNAGTSVTCTLNHPSLPPQRLMALREPAAQAPVKLSLNLLASSDPPEAASWLLCEVSGFSPPNILLMWLEDQREVNTSGFAPARPPPQPGSTTFWAWSVLRVPAPPSPQPATYTCVVSHEDSRTLLNASRSLEVSYVTDHGPMK
TGM3(タンパク質-グルタミンγ-グルタミルトランスフェラーゼE)
:>sp|Q08188|TGM3_ヒトタンパク質-グルタミンγ-グルタミルトランスフェラーゼE OS=ホモサピエンス GN=TGM3 PE=1 SV=4
MAALGVQSINWQTAFNRQAHHTDKFSSQELILRRGQNFQVLMIMNKGLGSNERLEFIVSTGPYPSESAMTKAVFPLSNGSSGGWSAVLQASNGNTLTISISSPASAPIGRYTMALQIFSQGGISSVKLGTFILLFNPWLNVDSVFMGNHAEREEYVQEDAGIIFVGSTNRIGMIGWNFGQFEEDILSICLSILDRSLNFRRDAATDVASRNDPKYVGRVLSAMINSNDDNGVLAGNWSGTYTGGRDPRSWNGSVEILKNWKKSGFSPVRYGQCWVFAGTLNTALRSLGIPSRVITNFNSAHDTDRNLSVDVYYDPMGNPLDKGSDSVWNFHVWNEGWFVRSDLGPSYGGWQVLDATPQERSQGVFQCGPASVIGVREGDVQLNFDMPFIFAEVNADRITWLYDNTTGKQWKNSVNSHTIGRYISTKAVGSNARMDVTDKYKYPEGSDQERQVFQKALGKLKPNTPFAATSSMGLETEEQEPSIIGKLKVAGMLAVGKEVNLVLLLKNLSRDTKTVTVNMTAWTIIYNGTLVHEVWKDSATMSLDPEEEAEHPIKISYAQYEKYLKSDNMIRITAVCKVPDESEVVVERDIILDNPTLTLEVLNEARVRKPVNVQMLFSNPLDEPVRDCVLMVEGSGLLLGNLKIDVPTLGPKEGSRVRFDILPSRSGTKQLLADFSCNKFPAIKAMLSIDVAE
STX1A(シンタキシン1α):
>sp|Q16623|STX1A_HUMAN Syntaxin-1A OS=Homo sapiens GN=STX1A PE=1 SV=1
MKDRTQELRTAKDSDDDDDVAVTVDRDRFMDEFFEQVEEIRGFIDKIAENVEEVKRKHSAILASPNPDEKTKEELEELMSDIKKTANKVRSKLKSIEQSIEQEEGLNRSSADLRIRKTQHSTLSRKFVEVMSEYNATQSDYRERCKGRIQRQLEITGRTTTSEELEDMLESGNPAIFASGIIMDSSISKQALSEIETRHSEIIKLENSIRELHDMFMDMAMLVESQGEMIDRIEYNVEHAVDYVERAVSDTKKAVKYQSKARRKKIMIIICCVILGIVIASTVGGIFA
TK1(チミジンキナーゼ1):
>sp|P04183|KITH_ヒトチミジンキナーゼ、細胞質ゾル OS=ホモサピエンス GN=TK1 PE=1、SV=2
MSCINLPTVLPGSPSKTRGQIQVILGPMFSGKSTELMRRVRRFQIAQYKCLVIKYAKDTRYSSSFCTHDRNTMEALPACLLRDVAQEALGVAVIGIDEGQFFPDIVEFCEAMANAGKTVIVAALDGTFQRKPFGAILNLVPLAESVVKLTAVCMECFREAAYTKRLGTEKEVEVIGGADKYHSVCRLCYFKKASGQPAGPDNKENCPVPGKPGEAVAARKLFAPQQILQCSPAN
IL17A(インターロイキン17A):
>sp|Q16552|IL17_ヒトインターロイキン17A OS=ホモサピエンス GN=IL17A PE=1、SV=1
MTPGKTSLVSLLLLLSLEAIVKAGITIPRNPGCPNSEDKNFPRTVMVNLNIHNRNTNTNPKRSSDYYNRSTSPWNLHRNEDPERYPSVIWEAKCRHLGCINADGNVDYHMNSVPIQQEILVLRREPPHCPNSFRLEKILVSVGCTCVTPIVHHVA
PGF(胎盤増殖因子):
>sp|P49763|PLGF_ヒト胎盤増殖因子 OS=ホモサピエンス GN=PGF PE=1 SV=2
MPVMRLFPCFLQLLAGLALPAVPPQQWALSAGNGSSEVEVVPFQEVWGRSYCRALERLVDVVSEYPSEVEHMFSPSCVSLLRCTGCCGDENLHCVPVETANVTMQLLKIRSGDRPSYVELTFSQHVRCECRHSPGRQSPDMPGDFRADAPSFLPPRRSLPMLFRMEWGCALTGSQSAVWPSSPVPEEIPRMHPGRNGKKQQRKPLREKMKPERCGDAVPRR
【0041】
本発明に記載の特定タンパク質はまた、好ましくは、前述の配列に対して少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%、よりさらに好ましくは少なくとも95%、特に少なくとも99%の配列相同性を有するタンパク質である。
【0042】
さらに本明細書に記載されているように、前記特定タンパク質の第1の群の1つもしくは複数のタンパク質が高レベルである、および/または特定タンパク質の第2の群の1つもしくは複数のタンパク質が低レベルであると、結腸直腸がん(CRC)および/またはその転移に罹患している対象に対する、特に転移性結腸直腸がん(mCRC)に罹患している対象に対する、好ましくはアビツズマブを含むまたはアビツズマブからなる少なくとも1つの汎αvインテグリン阻害剤を用いる処置の下で、臨床上の効果、好ましくは、本明細書に記載されている臨床上の効果の改善が期待される。好ましくは、前記特定タンパク質の第1の群の1つもしくは複数のタンパク質が高レベルである、および/または特定タンパク質の第2の群の1つもしくは複数のタンパク質が低レベルであると、限定するものではないが、固形がんおよび/またはその転移に罹患している対象に対する、好ましくはアビツズマブを含むまたはアビツズマブからなる少なくとも1つの汎αvインテグリン阻害剤を用いる処置の下で、全生存期間の改善および/または無増悪生存期間の改善が期待される。
【0043】
あるいは好ましい実施形態において、インテツムマブ(CNTO-95)は、本発明に記載の方法において少なくとも1つの汎αvインテグリン阻害剤として、アビツズマブの代わりに使用することができる。
前記特定タンパク質に関する前記タンパク質レベルは、好ましくは、同時に、予後にネガティブであって、そのことは、疾患予後にとって両役割を果たすことがマーカーによって生物学的に説明されていることを示している(表2に要約した)。
【0044】
アビツズマブ処置下におけるそれぞれの特定タンパク質レベルに依存する臨床転帰:
【表1】
【0045】
SoC処置下におけるそれぞれの特定タンパク質レベルに依存する(本明細書でOSによって決定される)臨床転帰:
【表2】
【0046】
腫瘍および/または転移(好ましくは、腫瘍病変または病変とも呼ばれる)を有する患者の臨床転帰は、好ましくは、応答(完全応答および部分応答)、効果(応答および安定性疾患)および進行性疾患により分析される。病変は、好ましくは、固形腫瘍における応答判定基準(Response Evaluation Criteria in Solid Tumors)(すなわち、RECIST基準)を用いて評価し、それにより、「完全応答」(CR)は、好ましくは、標的病変の消失として定義され;「部分応答」(PR)は、好ましくは、標的病変の最長径の合計が、好ましくは基準最長直径合計と比べた場合に少なくとも30%減少として定義され;「進行性疾患」(PD)は、好ましくは、標的病変の最長直径の合計が、好ましくは処置が開始されてから記録された最小最長径合計と比べた場合に少なくとも20%増加として定義されるか、または1つもしくは複数の新しい病変が出現したとして定義され、;「安定性疾患」(SD)とは、好ましくは、処置が開始されてからの最小の最長径合計と比べた場合に、部分応答とみなされる十分な縮小でもなく、進行性疾患とみなすのに十分な増大でもないものとして好ましくは定義される。
【0047】
好ましくは、少なくとも1つの汎αvインテグリン阻害剤、好ましくはアビツズマブまたはインテツムマブ(CNTO-95)は、1つまたは複数の化学療法剤と組み合わせて、前記対象に投与される。
好ましくは、前記の1つまたは複数の化学療法剤は、セツキシマブ、パニツムマブ、イリノテカン、ビノレルビン、カペシタビン、ロイコボリン、オキサリプラチン、シスプラチン、カルボプラチン、5-フルオロウラシル(5-FU)、ベバシズマブ、アフリバーセプトおよびレゴラフェニブからなる群から選択される。
【0048】
あるいは、またはさらには、
a)リュープロレリンアセテート、ビカルタミド、ニルタミド、トリプトレリン、ゴセレリン、フルタミド、シプロテロン、ブセレリンおよびデガレリクスからなる群から選択される、
b)ゾレドロン酸、パミドロン酸、クロドロネート二ナトリウム、アレンドロン酸およびイバンドロン酸からなる群から選択される、ならびに/または
c)アビラテロン、アビラテロンアセテート、プレドニゾン、エンザルタミド、ラジウム Ra 223ジクロライド、ドセタキセル、シプロイセル-T、カバジタキセルおよびミトキサントロンからなる群から選択される
1つまたは複数の化学療法剤を使用することができる。
【0049】
特に好ましくは、少なくとも1つの汎αvインテグリン阻害剤、好ましくはアビツズマブまたはインテツムマブ(CNTO-95)、より好ましくは、アビツズマブは、好ましくはスタンダードオブケア(SoC)と呼ばれる2つ以上の化学療法剤と組み合わせて前記対象に投与する。
好ましいスタンダードオブケア(SoC)としては、限定するものではないが、次のものが挙げられる:
5-フルオロウラシル(5-FU)、ロイコボリン(フォリン酸)およびオキサリプラチンを含む、FOLFOXレジメン;
フォリン酸(ロイコボリン)、フルオロウラシル(5-FU)およびイリノテカンを含む、FOLFIRIレジメン;または
カペシタビンおよびオキサリプラチンを含む、CAPOXレジメン。
【0050】
好ましくは、FOLFOXレジメン、FOLFIRIレジメンおよびCAPOXレジメンは、次のものと有利に組み合わせることができる:
- セツキシマブもしくはパニツムマブを含む、またはセツキシマブもしくはパニツムマブからなる、好ましくはkrasの野生型患者における抗EGFR治療法
- ベバシズマブもしくはアフリバーセプトを含む、またはベバシズマブもしくはアフリバーセプトからなる、抗VEGF治療法、あるいは
- レゴラフェニブを含む、またはレゴラフェニブからなる、マルチキナーゼ治療法。
より好ましいスタンダードオブケア(SoC)としては、限定するものではないが、次のものが挙げられる:
イリノテカンと組み合わせたセツキシマブ、
イリノテカンおよびロイコボリンと組み合わせたセツキシマブ、
イリノテカン、5-FUおよびロイコボリンと組み合わせたセツキシマブ。
【0051】
セツキシマブ含有レジメンは、k-rasコドン2野生型がん組織状態にある対象/患者において好ましい。
特に好ましいスタンダードオブケア(SoC)としては、限定するものではないが、次のものが挙げられる:
イリノテカンと組み合わせたセツキシマブ。
好ましくは、セツキシマブは、第1のサイクルの第1日目に400mg/m2の量で対象に投与され、その後、2週間ごとに250mg/m2の量で投与される。
好ましくは、イリノテカンは、2週間ごとに180mg/m2の量で対象に投与される。
しかし、固形がんおよび/またはその転移の処置としては、外科手術、近距離照射療法および外照射放射線療法を含む放射線療法、高強度集束超音波(HIFU)、化学療法、経口化学療法薬(テモゾロミド/TMZ)、凍結外科療法、ホルモン療法、またはそれらの組み合わせを挙げることができる。
【0052】
ほとんどのホルモン依存性がんは1~3年後には難治性になり、ホルモン療法にかかわらず増殖が再開する。これまで「ホルモン難治性がん」または「アンドロゲン非依存性がん」と考えられていたが、それらが去勢処置にもはや応答しなくなったため(化学的手段または外科的手段による利用可能なアンドロゲン/テストステロン/DHTの減少)、去勢抵抗性という用語が「ホルモン難治性」に置き換わったが、これらのがんは、依然として、アンドロゲン受容体活性化のためのホルモンに対する依存を示す。
この点における化学療法薬としては、好ましくは、限定するものではないが、ドセタキセル、カバジタキセル、ベバシズマブ、ドセタキセル、サリドマイドおよびプレドニゾン、ならびにそれらの組み合わせが挙げられる。例えば、ベバシズマブ、ドセタキセル、サリドマイドおよびプレドニゾンの組み合わせが臨床上の効果を示した。
【0053】
黄体形成ホルモン放出ホルモン(LH-RH)アゴニストおよび/またはアンタゴニスト、ならびにゴナドトロピン放出ホルモン(GnRH)アゴニスト、黄体形成ホルモン放出ホルモン(LH-RH)は、男性体内におけるテストステロンの産生を低下させるホルモン療法薬である。このテストステロンの低下は、通常、ある期間の前立腺がんの増殖および/またはその転移を遅らせるか、または停止させる。
疼痛は、転移がんにおいて、特に骨転移の場合において一般的であり、骨転移に関連するがん性疼痛は、ビスホスホネート、オピオイドなどの薬剤投与、および既知の転移に対する緩和放射線療法により処置することができる。脊髄圧迫は脊椎への転移により生じる可能性があり、ステロイド、手術または放射線療法により処置することができる。
従来のがんの処置は放射線療法および化学療法であり、通常、相互に併用されている。科学者および製薬会社は、転移性骨疾患を含む様々なタイプのがんを標的とする薬剤を研究している。
【0054】
高強度集束超音波(HIFU)は、骨転移に対する緩和治療のCE承認を取得している。全く副作用のない非侵襲的処置として、HIFUは、がんの処置において順調に適用されており、骨、脳、乳房、肝臓、膵臓、直腸、腎臓、精巣および前立腺の腫瘍を消失させる。
考慮すべき骨転移に対する処置の1つの選択肢は、多くの場合、他の化学療法および/または(抗)ホルモン処置の組み合わせにおける、ビスホスホネートによる処置である。ビホスホネートは、骨がんの疼痛、骨破壊および腫瘍増殖を軽減させることにおいて著しい期待がよせられた。
ラジウム-223クロライド(Xofigo、以前の名称はAlpharadin)の毎月の注射は、骨転移を伴う去勢抵抗性前立腺がん(CRPC)に対して、2013年5月にFDAによって承認された。
【0055】
インテグリンは、動物モデルにおいて腫瘍進行、転移、および血管新生に影響を及ぼす様々な細胞機能に作用する(Desgrosellier JS, et al. Nat Rev Cancer 2010;10:9-22)。
αvインテグリンは、細胞の生存、増殖、遊走および血管新生に関与する細胞接着分子である。これらは、様々ながんのタイプにおいて制御解除されている(Legate KR, et al. Nat Rev Mol Cell Biol 2006;7:20-31; Guise TA, et al. Clin Cancer Res 2006;12:6213s-16s)。
【0056】
アビツズマブは、特にすべてのαvインテグリンを標的とするヒト化モノクローナルIgG2抗体である(Mitjans F, et al. J Cell Sci 1995;108:2825-38; Monnier Y, et al. Cancer Res 2008:68;7323-31)。
結腸直腸がん(CRC)において、インテグリンαvβ6は腫瘍細胞で発現される(Goodman SL, et al. Biol Open 2012;1:329-40);αvβ6の過剰発現は、CRCが進行した患者における全生存期間(OS)中央値の低下に有意に関係している(Bates RC, et al. J Clin Invest 2005;115:339-47)。
ヒト腫瘍異種移植モデルにおいては、抗腫瘍活性がアビツズマブで観察されており、アビツズマブは、セツキシマブまたはイリノテカンのいずれかと組み合わされた場合に、抗腫瘍効果の増強が認められた。
【0057】
スタンダードオブケア(SoC:セツキシマブおよびイリノテカン)と組み合わせたアビツズマブで試験する、第1選択のオキサリプラチン治療法に失敗した転移性CRC(mCRC)の患者におけるPOSEIDON、非盲検無作為化対照比較の複数施設フェーズI/II試験は、非常に興味深い結果を示した。
この無作為化二重盲検プラセボ対照フェーズII試験において、計216人の患者を1:1:1に無作為化し、
a)スタンダードオブケア(SoC)、例えば、セツキシマブおよびイリノテカンおよびプラセボ、
b)a)で記載したSoC+アビツズマブ500mg、
c)a)で記載したSoC+アビツズマブ1000mg
を投与した。
これによれば、ITT個体群において、いずれの用量のアビツズマブも、PFS中央値またはRR中央値を有意に改善しなかったことが明らかであった。しかし、OSの改善傾向は認められ(アビツズマブ500mg:15.0[95% CI 10.9~19.2]か月、HR 0.83[0.54~1.28] vs SOC;アビツズマブ1,000mg 14.4[9.8~19.3]か月、HR 0.80[0.52~1.25] vs SOC;vs SOCに関しては11.6[9.8~15.7]か月)、このことは、臨床上の活性を示唆している。
【0058】
血漿タンパク分析用の血液サンプリングは、処置前に予定した。血漿タンパク分析(高タンパク質特異的アプタマー[SomaLogic法]に基づく分析)は、サイクル1における処置前に197人の患者から採取したサンプルで実施した。
同時に決定された1,129の血漿タンパク質レベルのオリジナルセットは、データレベルで888のタンパク質に制限し、血漿調製中の細胞融解または血小板活性化による潜在的な偏りを回避した。9つのグローバルバイオマーカーサーチ分析は、アビツズマブ治療法を成功させるために、予測バイオマーカーである特定タンパク質をフィルタリングする目的で、異なる正規化手順、データセットおよびバイオマーカー二分化閾値を用いて実施した。個別のタンパク質が予測バイオマーカーであるかどうかの判断は、処置(SoCまたはアビツズマブ)およびバイオマーカーレベル(連続レベル、および調査した患者個体群の中央値を閾値として使用する「高」および「低」という2つのカテゴリー)に依存した転帰(OSまたはPFS)の評価に基づいた。統計的検定をタンパク質ごとに実施し、予測可能と考えられるそれらのタンパク質を同定した。統計的検定は従来技術であり、含まれている。他の判定基準の中には、例えば、異なる処置群(アビツズマブおよびSOC;閾値p<=0.05)に関する転帰(ここではOSおよび/またはPF)の差異を検出するためのバイオマーカーの「高い」個体群およびバイオマーカーの「低い」個体群などの選択された個体群に対するログランク検定、ならびに処置と連続的マーカーレベルとの間の相互作用効果に対する転帰の依存を調査するCox回帰モデル(相互作用項p<=0.05)がある。さらに、予後のマーカーレベルは、「高い」サブグループおよび「低い」サブグループのログランク検定(閾値p<=0.05)を用いて、SOC治療法を受けている患者群に基づいて評価した。
【0059】
このプロセスによって、血漿中の8種のバイオマーカー特異的タンパク質が同定された。同定された8種のバイオマーカー特異的タンパク質が活性であり、中央値よりもレベルが高いかまたは低いかが予測的および/または予後的であると判断される特徴を表1および/または表2に示す。
【0060】
血漿タンパク質分析
完全なSomaLogicデータ(888遺伝子)を有する前処置サンプルは、192(アビツズマブによる処置が122;SoCによる単独処置が70)の腫瘍に対して利用可能であった。同定されたバイオマーカー特異的血漿タンパク質のそれぞれの血漿レベルは、「高」レベルのタンパク質または「低」レベルのタンパク質のいずれかを有する患者において、SoC単独と比較した場合のアビツズマブによる生存期間の延長を予測し、ほとんどが生存期間に関する予後徴候であった(CCR18を介したCRC予後に関連するCCL23に関する代表例な曲線については図1を参照、他のタンパク質については、図1図18の1つまたは複数を参照)。
さらに、他のマーカーの生物学的状況の分析によって、アビツズマブの既知の分子相互作用(骨代謝調節および血管新生)に関連するマーカーがアビツズマブ治療法によるOSおよび/またはPFSの予測が明らかであることが示された。
したがって、それぞれの同定されたバイオマーカー血漿タンパク質の血漿レベルは、驚いたことに、SoC単独と比較した場合、生存の予後を予測すること、およびアビツズマブの使用で生存期間または無増悪生存期間の増加が予測されることが分かった。
したがって、この臨床研究は、アビツズマブの薬物動態および免疫原性に関するデータ、ならびに予測バイオマーカーの探索において可能な分析を提供し、また驚いたことに、体液中の特定の予測タンパク質レベル、特に、好ましくは、汎αvインテグリン阻害剤アビツズマブを含む、少なくとも1つの汎αvインテグリン阻害剤を用いる処置下での治療転帰を予測することができる特定血漿タンパク質レベルを提供した。
アビツズマブは、DI-17E6、DI17E6、EMR62242および/またはEMD525797として本明細書でさらに表示されているモノクローナル抗αv抗体である。
【0061】
DI17E6は、α-vインテグリン(受容体)に対して技術的に特別に操作されたIgG2ハイブリッドモノクローナル抗体である。この抗体によるがん治療は、このタイプの治療法に伴う副作用、とりわけ免疫反応を低下させる。それによって免疫原性が低下する。この抗体は、国際公開第2009/010290号パンフレットに詳細に開示されており、その開示はその全体を本明細書に組み入れるものとする。
【0062】
その超可変領域(CDR)は、マウスmAb 17E6(EMD73034)に由来する。この親マウスIgG1抗体は、例えば、Mitjans et al.(1995; J.Cell Sci. 108, 2825)ならびに米国特許第5,985,278号およびEP719 859に記載されている。マウスmAb 17E6は、ハイブリドーマ細胞株272-17E6によって産生され、アクセッション番号DSM ACC2160として寄託されている。
その軽鎖ドメインは、ヒト化モノクローナル抗EGFR抗体425(マツズマブ)に由来する。この抗体は、例えばEP0 531 472B1に詳細に記載されており、そのマウスカウンターパート425(マウスMAb425、ATCC HB9629)に由来する。この抗体はヒトA431癌細胞株に対して産生され、ヒト上皮増殖因子受容体(EGFR)の外部ドメイン上のポリペプチドエピトープに結合することがわかった。マツズマブは臨床試験において高い効果を示した。
【0063】
一般に、本発明に従って使用されるDI17E6は、
(i)マウスモノクローナル抗αvインテグリン抗体17E6に由来するCDR軽鎖領域および重鎖領域、
(ii)ヒト化モノクローナル抗EGFR抗体425から得られる軽鎖フレームワーク領域、
(iii)特定位置のアミノ酸の1つまたは複数の変異を含んでもよい、マウスモノクローナル抗αvインテグリン抗体17E6に由来する重鎖フレームワーク領域、
(iv)ヒトIgG2に由来する重鎖定常領域およびヒト定常κ軽鎖領域
を含み、
ここで、前記IgG2ドメインでは、IgG2ヒンジ領域はヒトIgG1ヒンジドメインで置換されており;
ここで、IgG2内で1つまたは複数の変異が導入されていてもよい。
【0064】
特に、特許請求の範囲に記載した処置において使用され、また上記および下記の臨床試験で使用される、DI17E6(「DI-17E6γ2h(N297Q)」または「EMD525797」と指定されているもの)は、以下のアミノ酸配列を有する:
(i)可変および定常軽鎖配列(配列番号1):
および
(ii)可変および定常重鎖配列(配列番号2):
配列中、下線を付けた配列は、CDR(太字、親マウス抗体と同一)を有する可変領域を表わす。改変IgG1ヒンジ領域は、EPKSSDKTHTCPPCP(配列番号3)によって表わされ、AQはIgG2ドメイン内の置換である。
【0065】
しかし、国際公開第2009/010290号パンフレットで開示されているように、DI17E6の変異体もまた、本発明の教示に従って使用することができる。したがって、
(配列中、太字で下線が付いた位置の1つまたは複数は変異されている)
の重鎖フレームワーク領域内に1つまたは複数の改変を含むDI17E6変異体は、記載されているように、前立腺がん患者の処置において使用することができる。より詳細には、重鎖フレームワーク領域の以下の位置は1つ、複数または全部の位置で変異され得る:A9、E13、M20、K38、R40、A72、S76、Q82、G85、T87、S91およびS113。これらの変異体は、その上記配列によって定義されているDI17E6と比較して、同一か、または非常に類似した生物活性および効果を示す。
【0066】
一般に、記載されている本発明はまた、非改変DI17E6と機能的および/または薬学的に同一または類似しており、またCDR領域ならびに重鎖可変領域および軽鎖可変領域が、DI17E6のそれぞれの可変領域と比較した場合、それらのアミノ酸配列において少なくとも80%、または少なくとも85%、または少なくとも90%、または少なくとも95%同一である、DI17E6抗体の改変体および変異体を含んでいる。さらに、本発明はまた、非改変DI17E6と機能的および/または薬学的に同一または類似しており、また定常領域が、DI17E6のそれぞれの定常領域と比較した場合、それらのアミノ酸配列において少なくとも80%、または少なくとも85%、または少なくとも90%、または少なくとも98%同一である、DI17E6抗体の改変体および変異体を含んでいる。この抗体のIgG鎖の定常領域に変化があると、免疫原性、ADCCなどの特定の特性を改善することができる。
したがって、本発明による使用の場合、DI17E6の機能的誘導体、生物学的に活性のある変異体または改変体を使用することもできる。
したがって、本発明の文脈において、用語「アビツズマブ」および/または「DI17E6」は、好ましくは、次のものも含む:
【0067】
CDR領域および重鎖可変領域および軽鎖可変領域を含み、アビツズマブの可変領域と比較して、アミノ酸配列において80%~95%同一である、その生物学的に活性のある変異体または改変体;
定常領域を含み、アビツズマブの定常領域と比較して、アミノ酸配列で少なくとも80%~98%同一である、その生物学的に活性のある変異体または改変体;
(配列中、太字で下線が付いた位置の1つまたは複数は変異されており、アビツズマブのオリジナルのそれぞれの配列と比較した場合異なる)
の重鎖フレームワーク領域内に1つもしくは複数の改変体を含む抗体;ならびに/または
【0068】
ヒトIgG2の代わりにヒトIgG1定常領域を含む改変DI17E6抗体、もしくはヒトIgG1ヒンジの代わりにヒトIgG2ヒンジ領域を含む改変DI17E6抗体。
インテツムマブまたはCNTO-95は、好ましくは、固形腫瘍の処置において使用されるヒトモノクローナル抗体である。それはまた、好ましくは、それぞれ下記に示した配列番号および配列番号に示したアミノ酸配列を含むヒト重鎖可変領域およびヒト軽鎖可変領域を含む、抗αvインテグリン抗体である。
【0069】
【化1】
【0070】
【化2】
【0071】
および/または
遺伝子座 ABN29020 119aa
ライナー(linear) PAT 2007年2月07日
限定 米国特許第7163681号の配列7(配列番号8)
アクセッション ABN29020
バージョン ABN29020.1 GI:125142205
DBソース アクセッション ABN29020.1
キーワード .
起源 未確認
生物体 未確認
未分類
参考文献1 (残基1~119)
著者 Giles-Komar,J., Snyder,L., Trikha,M. and Nakada,M.T.
表題 Anti-integrin antibodies, compositions, methods and uses
刊行物 特許:米国特許第7163681号、2007年1月16日;Centocor, Inc.; Malvern, PA; US;
備考 CAMBIA Patent Lens: US 7163681
特徴 位置/クォリファイアー
ソース 1..119
/生物体=”未確認”
起点
1 qvqlvesggg vvqpgrsrrl scaasgftfs rytmhwvrqa pgkglewvav isfdgsnkyy
61 vdsvkgrfti srdnsently lqvnilraed tavyycarea rgsyafdiwg qgtmvtvss
//
【0072】
遺伝子座 ABN29021 108aa
ライナー PAT 2007年2月07日
限定 米国特許第7163681号の配列8(配列番号9)
アクセッション ABN29021
バージョン ABN29021.1 GI:125142207
DBソースアクセッション ABN29021.1
キーワード .
起源 未確認
生物体 未確認。
未分類。
参照文献 1 (残基1~108)
著者 Giles-Komar,J., Snyder,L., Trikha,M. and Nakada,M.T.
表題 Anti-integrin antibodies, compositions, methods and uses
刊行物 特許:米国特許第7163681号、2007年1月16日;Centocor, Inc.; Malvern, PA; US;
備考 CAMBIA Patent Lens: US 7163681
特徴 位置/クォリファイアー
ソース 1..108
/生物体=「未確認」
領域 2..107
/領域名称=「IgV_L_カッパ」
/注記=「免疫グロブリン(Ig)軽鎖、カッパタイプ、
改変(V)ドメイン;cd04980」
/db_xref=「CDD:143181」
領域 8..100
/領域名称=「IG_様」
/注記=「免疫グロブリン様;smart00410」
/db_xref=「CDD:214653」
部位 オーダー(12,104,106..107)
/部位のタイプ=「その他」
/注記=「鎖内ドメインインターフェース」
/db_xref=「CDD:143181」
部位 25..27
/部位のタイプ=「その他」
/注記=「L1超可変領域」
/db_xref=”CDD:143181”
部位 オーダー(32,49,93)
/部位のタイプ=「その他」
/注記=「抗原結合部位」
/db_xref=「CDD:143181」
部位 オーダー(34,36,38,43,46,50,87)
/部位のタイプ=「その他」
/注記=「ヘテロダイマーインターフェース[ポリペプチド結合]」
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部位 66..70
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/db_xref=「CDD:143181」
部位 オーダー(92..94,96..98)
/部位のタイプ=「その他」
/注記=「L3超可変領域」
/db_xref=「CDD:143181」
起点
1 eivltqspat lslspgerat lscrasqsvs sylawyqqkp gqaprlliyd asnratgipa
61 rfsgsgsgtd ftltisslep edfavyycqq rsnwppftfg pgtkvdik
//
【0073】
さらに、インテツムマブは、国際公開第02/12501号パンフレットおよび米国特許第7,163,681号で特徴づけられており、それらの開示は、参照によりその全体を本願へ組み入れるものとする。
好ましくは、インテツムマブの機能的誘導体、生物学的に活性のある変異体または改変体も、本発明において使用することができる。
【0074】
利用しやすくするため、本発明の文脈における、好ましくはバイオマーカーとして活性のある1つまたは複数のタンパク質、すなわち、
TPO(Somamer ID:SL000588;UniProt ID:P07202)、
CCL23.1(Somamer ID:SL003302;UniProt ID:P55773)、
IGHD__IGK._IGL.(Somamer ID:SL000460;UniProt ID:P01880)、
TK1(Somamer ID:SL000057;UniProt ID:P04183)、
IL17A(Somamer ID:SL001713;UniProt ID:Q16552)、
STX1A(Somamer ID:SL004304;UniProt ID:Q16623)、および
PGF(Somamer ID:SL002640;UniProt ID:P49763)、ならびに/または
TGM3(UniProt ID:Q08188)、
からなる群から選択される1つまたは複数のタンパク質
は、好ましくは総称として本発明の「特定タンパク質」または「前記特定タンパク質」とも呼ばれ、また好ましくは個別に「特定タンパク質」または「前記特定タンパク質」とも呼ばれる。
【0075】
本明細書で使用される場合、用語「配列相同性」は当業者によって理解され、配列相同性を決定する方法もまた当技術分野で公知である。
本明細書で使用される場合、配列相同性は、好ましくは、BLASTアルゴリズムを使用して決定される。BLASTは、好ましくは、Basic Local Alignment Search Toolを示すものであり、主要な生物学的配列情報、例えば、異なるタンパク質のアミノ酸配列またはDNA配列のヌクレオチドを比較するためのアルゴリズムである。研究者はBLAST探索によって、照会配列を配列のライブラリーまたはデータベースと比較し、ある閾値より上の照会配列に類似するライブラリー配列を同定することができる。BLASTアルゴリズムおよびそれを実行するコンピュータプログラムは、米国国立バイオテクノロジー情報センター(NCBI)のStephen Altschul、Warren Gish、およびDavid Lipman、ペンシルベニア州立大学のWebb Miller、ならびにアリゾナ大学のGene Myersによって開発された。これはNCBIウェブサイトのウェブで利用可能である。代替の手段としては、AB-BLAST(以前はWU-BLASTとして公知)、FSA-BLAST(2006年に最終更新)、およびScalaBLASTが挙げられる。
【0076】
照会する配列によって異なるタイプのBLASTが利用可能である。例えば、マウスにおけるこれまで未知の遺伝子が発見され、その後、科学者は、典型的には、ヒトゲノムのBLAST探索を実施し、ヒトが類似の遺伝子を有しているかどうか確認する。BLASTは、配列類似性に基づいて、マウス遺伝子に類似しているヒトゲノム中の配列を同定する。BLASTアルゴリズムおよびプログラムは、NIHのStephen Altschul、Warren Gish,Webb Miller、Eugene Myers、およびDavid J.Lipmanによって設計され、1990年にJournal of Molecular Biologyで公表されている。
【0077】
本発明の文脈において、本明細書に記載されているタンパク質の配列相同性は、好ましくは、BLASTpを使用して決定される。
【0078】
本発明の文脈において、本明細書に記載されているタンパク質の配列相同性は、より好ましくは、BLASTpを使用して生成された最長ローカルアラインメントに基づいて決定される。
本発明の文脈において、対象、特にヒト対象は、好ましくは患者とも呼ばれる。
本明細書で使用される場合、数、量、投薬、時間、回数、タイミング、持続時間などに関する用語「約」とは、好ましくは、前記の数、量、投薬、時間、回数、タイミング、持続時間などに関する「およそ」を意味するものと理解する。より好ましくは、「約」とは、数、量、投薬、時間、回数、タイミング、持続時間などに関する所定の特定値の+/-10%、より好ましくは+/-5%を意味する。
特に指定がない場合は、対象、ヒト対象または患者に対して投与される「mg」で示す量、例えば、500mg、1000mgなどは、好ましくは、それぞれの量を「フラット」で投与すること、すなわち、それぞれの対象、ヒト対象または患者の体重および/または体表面積ついて調整されない固定用量として投与されることを意味するものとする。
【0079】
明示的に別段の指示がない場合は、例えば、化合物、薬剤、がん共治療剤、がん化学療法剤などの数に関する、本明細書で使用される場合の用語「1つまたは複数の」とは、好ましくは「1つまたは1つより多くの」を意味し、したがって、好ましくは「2つ以上の」(または「2つもしくは2つより多くの」)、「3つ以上の」(または「3つもしくは3つより多くの」)、および/または「4つ以上の」(または「4つもしくは4つより多くの」)を含む。したがって、本明細書で使用される場合の用語「1つまたは複数の」には、好ましくは、1、2、3、4、5、6、および/またはそれより大きい数が含まれる。薬剤、がん共治療剤、がん化学療法剤の数に関して、これは特に好ましくは、1、2、3、4および/または5の数、さらにより好ましくは1、2、3および/または4の数、特に1、2および/または3の数を含む。
好ましくは、本発明の特に好ましい主題は、2つ以上の本明細書に記載されている態様、対象、用途、方法および/または実施形態の1つまたは複数の特徴が1つの主題において組み合わされている、態様、対象、用途、方法および/または実施形態に関する。
以下の実施例は、当業者が例示によってよりよく本発明を理解するのを助けるために挙げられている。実施例は、特許請求の範囲によって付与される保護の範囲を限定するものではない。実施例において定義された化合物および使用に関して例示された特徴、特性および利点は、好ましくは実施例に詳細に記載および/または定義されていないが、特許請求の範囲で定義されている範囲内である、他の化合物および使用に当てはめることができる。
本発明を、実施例によってより詳細に以下に説明する。本発明は特許請求の範囲にわたって実施することができ、ここで挙げられた実施例に限定されるものではない。
【実施例
【0080】
実験のセクション
(例1)
POSEIDON臨床試験
スタンダードオブケア(SoC:セツキシマブ+イリノテカン)と組み合わせたアビツズマブを調べる、第1選択のオキサリプラチン治療法に失敗した転移性CRC(mCRC)の患者におけるPOSEIDON、非盲検無作為化対照比較の複数施設フェーズI/II試験は、非常に興味深い結果を示した。
【0081】
この無作為化二重盲検プラセボ対照フェーズII治験において、計216人の患者が1:1:1で無作為化され、
a)スタンダードオブケア(SoC)、例えば、イリノテカンおよびセツキシマブ、およびプラセボ、
b)a)で記載したSoC、およびアビツズマブ500mg、または
c)a)で記載したSoC、およびアビツズマブ1000mg
が投与された。
【0082】
薬物動態分析
・群当たり等しい数の患者が薬物動態分析のサブグループに含まれた。
・薬物動態評価の血液サンプリングは、治療法の1、3、4、5、6および7サイクル中の様々な時点で予定した。
・薬物動態パラメーターは、プログラムKINETICATM v4.1.1(Innaphase)を使用し、標準ノンコンパートメント法によって計算した。
【0083】
免疫原性
・免疫原性の血液サンプリングは、1、3、5および6サイクル、ならびに処置来院の終了時および安全性フォローアップ来院時に予定した。
・アビツズマブに対する抗体の産生は、有効なELISA法を中心に使用して評価した。
【0084】
バイオマーカー分析
・保存腫瘍ブロックまたはパンチ生検材料を収集し、インテグリンおよびそれらのリガンド、ならびに血管新生および基礎疾患に関連するタンパク質の腫瘍発現、ならびに臨床転帰とのそれらの潜在的な関係を調査した。
-サンプルの利用可能性は患者スクリーニング時に確認するものとした。
-分析は免疫組織化学を使用して実施した。
・血漿タンパク質分析の血液サンプリングは、前処理を予定した。
・血漿タンパク質分析(高タンパク質特異的アプタマー[SomaLogic法]に基づいたもの)は、サイクル1の処置前に、197人の患者から得たサンプルで実施した。
-同時に決定された1,129の血漿タンパク質レベルのオリジナルセットは、血漿調製中の細胞融解または血小板活性化に起因する潜在的な偏りを回避するため、データレベルで888のタンパク質に限定された。
-9種のグローバルバイオマーカーサーチ分析は、バイオマーカーをフィルタリングする目的で、異なる正規化手順、データセットおよびバイオマーカー二分化閾値を使用して行った;判定基準は、データ堅牢性および特定の生物学的注釈の独立性を含んでいた。探索プロセスは、低レベルまたは高レベルのいずれかの患者について、同定されたタンパク質が転帰(ここでは例示的な放射線学的PFS)と有意に(p<0.05)関連していることを保証する一連の判定基準を含んでいた。これらの試験は、とりわけ、中央値閾値による低バイオマーカー群および高バイオマーカー群のアビツズマブ処置患者/未治療患者における生存期間の差異(ここではPFS)についてのログランク検定、連続的マーカーレベルとCox回帰モデルに基づいた処置との間の転帰(ここではPFS)に対する相互作用効果に関する試験を含む。
【0085】
-この方法によって、8種のバイオマーカー活性血漿タンパク質が同定された。
【0086】
結果
バイオマーカー分析
分析プロセスは、ITT個体群において、以下のことを示した:
- いずれの用量のアビツズマブもPFS中央値またはRR中央値を有意に改善しなかった
- OSの改善傾向は認められ(アビツズマブ500mg:15.0[95% CI 10.9~19.2]か月、HR 0.83[0.54~1.28] vs SOC;アビツズマブ1,000mg 14.4[9.8~19.3]か月、HR 0.80[0.52~1.25] vs SOC;vs SOCに関しては11.6[9.8~15.7]か月)、このことは、臨床上の活性を示唆している
- SoCと組み合わせたアビツズマブの全体的な安全性プロファイルは許容可能であった
- 高αvβ6発現(試験した個体群[n=197]のヒストスコア(histoscore)中央値[中央値=70]よりも高い)は、SOC群(n=65)におけるOSに関して負の予後徴候であった;また、アビツズマブで処置した患者において、OSの改善についても予測的であった(アビツズマブ500mg:15.0[95% CI 10.5~23.2]か月、HR 0.55[0.30~1.00] vs SOC;アビツズマブ1,000mg:到達せず[9.7か月-到達せず]、HR 0.41[0.21~0.81]; vs SOC:10.2[5.8~13.1]か月およびRR(30.6%[16.3~48.1%] vs 32.3% 16.7~51.4%] vs 16.1% [5.5~33.7%])。
- 探索バイオマーカー分析は、免疫組織化学分析および血漿タンパク質分析による関連マーカーの腫瘍発現分析を含んでいた。
- インテグリンαvβ3、αvβ5、αvβ6、αvβ8および汎αvの事前計画した免疫組織化学に基づく発現分析は、原発腫瘍組織において実施した。
- データは、登録されている216人の患者のうちの197人について得た。
- 血漿タンパク質分析(高タンパク質特異的アプタマーに基づく分析[SomaLogic法])は、前処置患者のスクリーニング中に得られたサンプルで実施した。
- CL/PAによって影響を受けなかった1129のタンパク質を888までデータ制限し、その後、9つのグローバルバイオマーカーサーチ分析は、異なる正規化データセットおよび異なるバイオマーカー二分化閾値を用いて実施した。
- このプロセスによって、バイオマーカーとして活性のある血漿中の8つの特定タンパク質が同定された。
血漿タンパク質分析
- 完全なSomaLogicデータ(888遺伝子)を有する前処置サンプルは、192(アビツズマブによる処置が122;SoCによる単独処置が70)の腫瘍に対して利用可能であった。
- 同定されたバイオマーカー活性血漿タンパク質のそれぞれの血漿レベルは、生存期間の予後徴候であり、SoC単独と比較した場合のアビツズマブによる生存期間の延長を予測した(CCR18を介したCRC予後に関連するCCL23に関する代表例な曲線については図1および図2を参照)。
したがって、前処置血漿タンパク質レベルの分析により、OSおよび/またはPFSを予測する8つのバイオマーカータンパク質が同定され、そのほとんどがSOC下の予後マーカーでもあった。これらは、転移性腫瘍増殖における役割を有し、予後不良に関係していると思われる、CCR1のリガンドのCCL23を含んでいる。
同定されたすべての8種のバイオマーカー活性血漿タンパク質をここに列挙する:
TPO(Somamer ID:SL000588;UniProt ID:P07202)、
CCL23.1(Somamer ID:SL003302;UniProt ID:P55773)、
IGHD_IGK._IGL.(Somamer ID:SL000460;UniProt ID:P01880)、
TK1(Somamer ID:SL000057;UniProt ID:P04183)、
IL17A(Somamer ID:SL001713;UniProt ID:Q16552)、
STX1A(Somamer ID:SL004304;UniProt ID:Q16623)、
PGF(Somamer ID:SL002640;UniProt ID:P49763)、
TGM3(Somamer ID:SL008945;UniProt ID:Q08188)。
中央値より高いレベルまたは中央値より低いレベルに依存する、予測的または予後的であると同定された血漿タンパク質の活性を立証する詳細な結果は、表1、表2、および/または図1図18に示した。
【0087】
(例2)
プロテオミクスアフィニティーアッセイ法
プロテオミクスアフィニティーアッセイのすべてのステップは、特に明記しない限り、室温で実施する。
【0088】
サンプル解凍およびプレーティング。
-80℃で保存された100%血清またはEDTA-血漿のアリコートを、10分間、25℃の水浴中でインキュベートすることによって解凍する。解凍後、サンプルを混合中、およびサンプル希釈前、氷上で保存する。サンプルは、8秒間、穏やかにボルテックス処理する(Vortex Genie,Scientific Industriesで#4に設定)ことにより混合する。20%サンプル溶液は、4℃で、1ウェル当たり64μLの適切なサンプル希釈液を含有している96ウェルプレート(Hybaid Omnitube 0.3mL、ThermoFisher Scientific)へ16μLの解凍サンプルを移すことにより調製する。血清用のサンプル希釈液は、0.6mM MgCl2、2mM EGTA、2μM Z-Block_2、0.05% Tweenを含む0.8×SB17であり、EDTA-血漿用のサンプル希釈液は、0.8mM MgCl2、2mM EGTA、2μM Z-Block_2、0.05% Tweenを含む0.8×SB18である。このプレートは、次のサンプル希釈ステップが開始されるまで、氷上に保存する。
【0089】
10%、1%および0.03%のSOMAmer溶液の調製
SOMAmersは、3つの固有ミックスにグループ分けされる。ミックス中のSOMAmerのプレーシングは、希釈系列の血清または血漿をそれぞれのSOMAmerでアッセイし、最大線形範囲のシグナルを提供したサンプル希釈液を同定することによって経験的に決定される。SOMAmersの単離、および異なる希釈のサンプル(10%、1%または0.03%)との混合によって、アッセイはタンパク濃度の107倍の範囲に及ぶようになる。カスタムSOMAmerミックスの組成は、これらの2つの媒体のタンパク質組成の相違から予測されるように、血漿と血清との間でわずかに異なる。10%、1%および0.03%の血清および血漿のカスタム保存SOMAmer溶液を調製しSB17T中8×濃度で保存する。それぞれのアッセイを実施するため、3つの8×SOMAmer溶液をSB17Tに1:4で別々に希釈し、2×濃度にする。希釈した各SOMAmerマスターミックスを5分間、95℃で加熱し、その後15分間、37℃で加熱する。55μLの2×SOMAmerミックスをそれぞれ96ウェルプレートへピペットで手動により移し、10%、1%または0.03%のSOMAmerミックスを含む3枚のプレートを得る。サンプルと混合した後、それぞれの最終SOMAmer濃度は、血清については0.25~4nMであり、血漿については0.5nMである。
【0090】
平衡
2%サンプルプレートは、Beckman Coulter Biomek FxP(Beckman Coulter)を使用し、20%サンプルを1:10にSB17Tで希釈することによって調製する。0.06%サンプルプレートは、2%サンプルプレートを1:31にSB17Tで希釈することによって調製する。次いで、3つのサンプル希釈液は、55μLのサンプルを55μLの適切な2×SOMAmerミックスに添加することにより、それぞれのSOMAmer溶液に移す。プレートをホイルシール(Microseal ’F’ Foil、Bio-Rad)でシールし、3.5時間、37℃でインキュベートする。
【0091】
Catch-1ビーズプレートの調製
SB17T中の7.5%ストレプトアビジン-アガロースビーズスラリー133.3μLを、予備洗浄した3つの0.45μmの各ウェルに添加する。各ウェルのビーズを200μLのSB17Tで1回洗浄し、洗浄液を除去するために真空濾過を使用し、次いで、200μLのSB17T中に再懸濁する。
Catch-1ビーズ捕捉。
後続のすべてのステップは、特に指定のない限り、Beckman Coulter Biomek FxPロボットによって実施する。3.5時間平衡化した後、10%、1%および0.03%の平衡結合反応物100μLをそれぞれCatch-1ストレプトアビジンアガロースフィルタープレートに移し、10分間振盪しながらインキュベートする。未結合の溶液を真空濾過によって除去する。Catch-1ビーズのそれぞれのセットを、SB17T中の100Mビオチン190μLで洗浄し、次いでSB17T中190mLで洗浄し、洗浄液を除去するために真空濾過を使用する。190μLのSB17TをCatch-1プレートの各ウェルに添加し、振盪しながら25℃で10分間インキュベートする。洗浄液を真空濾過によって除去し、フィルタプレートの底部を吸い取り、オンデッキブロットステーションを使用して液滴を除去する。
【0092】
タンパク質のビオチン化
DMSO中の100mM NHS-PEO4-ビオチンのアリコートを6分間、37℃で解凍し、pH7.25のSB17Tを用いて1mMに希釈する。100μLのNHSPEO4-ビオチンをそれぞれのCatch-1フィルタプレートの各ウェルに添加し、振盪しながら5分間インキュベートする。それぞれのビオチン化反応は、NHS-PEO4-ビオチンを含むCatch-1プレートにSB17T中の20mMグリシン150μLを添加することにより停止する。プレートを振盪しながら1分間インキュベートし、真空濾過し、190μLの20mMグリシンSB17Tをプレートの各ウェルに添加する。プレートは振盪しながら1分間インキュベートし、その後、真空濾過により除去する。190μLのSB17Tを各ウェルに添加し、真空濾過により除去する。Catch-1プレートのウェルは、190μLのSB17Tを添加し、振盪しながら1分間インキュベートし、その後、真空濾過することによって続けて3回洗浄する。最後の洗浄後、プレートを1mLのディープウェルプレート上で、1分間1000rpmで遠心分離し、溶出前に無関係な容積を除去する。遠心分離は、デッキオフで実施する。
【0093】
キネティックチャレンジおよび光切断
SB17T中の10mM硫酸デキストラン85μLをフィルタプレートの各ウェルに添加する。フィルタプレートをBlackRay光源下のThermal Shaker(Eppendorf)上に置き、振盪しながら10分間照射する。光切断溶液は、順次、1000rpmでそれぞれ1分間遠心分離することによって、各Catch-1プレートから共通のディープウェルプレートに溶出させる。
【0094】
Catch-2ビーズ捕捉
バルクにおいて、MyOne-ストレプトアビジンC1ビーズを、等容量の20mM NaOHで5分間2回洗浄し、等容量のSB17Tで3回洗浄する。ビーズをSB17Tに10mg/mLの濃度で再懸濁する。再懸濁液後、この溶液50μLを96ウェルプレートの各ウェルに手動によりピペットで移し、Catch-2まで4℃で保存する。Catch-2の間、洗浄上清は磁気分離によって除去する。すべての光切断溶出液をMyOne磁気ビーズにピペットで移し、5分間、25℃で振盪しながらインキュベートする。上清を磁気分離によってMyOneビーズから除去し、75μLのSB17Tを各ウェルに移す。プレートを振盪しながら37℃で1分間混合し、次いで、37℃の60%グリセロール(SB17T中)75μLを各ウェルに移す。プレートを、振盪しながら37℃でさらに1分間混合させる。洗浄液は、磁気分離によって除去する。これらの洗浄は、さらに2回繰り返す。MyOneビーズから3回目のグリセロール洗浄液を除去した後、150μLのSB17Tを各ウェルに添加し、プレートを振盪しながら37℃で1分間インキュベートした後、磁気分離により除去する。MyOneビーズは、150μLのSB19Tを用いて1分間インキュベーションして最終時間洗浄した後、磁気分離する。
【0095】
Catch-2ビーズ溶出および中和
SOMAmersは、各ビーズのウェルを100mMのCAPSO pH10、1M NaCl、0.05%Tweenの105μLと5分間振盪しながらインキュベートすることによってMyOneビーズから溶出させる。90μLのそれぞれの溶出液は、磁気分離中に、500mM HCl、500mM HEPES、0.05%Tween-20、pH7.5の10μLを含有する新しい96ウェルプレートに移す。
【0096】
ハイブリダイゼーション
それぞれ中和されたCatch-2溶出液20μLを新しい96ウェルプレートに移し、10×スパイクのハイブリダイゼーションコントロール(10 Cy3 SOMAmers)のを含有する、5μLの10×Agilent Block(Oligo aCGH/ChIP-on-chipハイブリダイゼーションキット、Large Volume、Agilent Technologies 5188-5380)を各ウェルに添加する。ロボットからプレートを取り出した後、25μLの2×Agilentハイブリダイゼーションバッファー(Oligo aCGH/ChIP-on-chipハイブリダイゼーションキット、Agilent Technologies)を、中和したサンプルおよびブロッキングバッファーを含有するプレートの各ウェルにピペットで手動により移す。この溶液の40μLをハイブリダイゼーションガスケットスライドの各「ウェル」にピペットで手動により入れる(ハイブリダイゼーションガスケットスライド-スライドフォーマット当たり8つのマイクロアレイ、Agilent Technologies)。20×dTリンカーを有する各SOMAmerの40ヌクレオチド選択領域に相補的な、アレイ当たり10個のプローブを含有するカスタムAgilentマイクロアレイスライドを、メーカーのプロトコルに従ってガスケットスライド上に置く。それぞれのアセンブリ(ハイブリダイゼーションチャンバーキット-SureHyb対応、Agilent Technologies)はしっかりとクランプし、60℃で、19時間20rpmで回転するハイブリダイゼーションオーブンに装填する。
【0097】
ハイブリダイゼーション後の洗浄
約400mLの洗浄バッファー1(Oligo aCGH/ChIP-on-chip洗浄バッファー1、Agilent Technologies)を、2つの別々のガラス染色皿にそれぞれ入れる。12個のスライド/ガスケットアセンブリのうちの6個を順次取り外し、洗浄バッファー1を含有する第1の染色皿に入れる。取り外されたら、スライドは、洗浄バッファー1を含有する第2の染色皿内のスライドラックへ速やかに移す。スライドは、磁気攪拌棒によって混合しながら、洗浄バッファー1中で5分間インキュベートされる。次いで、スライドラックを37℃の洗浄バッファー2(Oligo aCGH/ChIP-onchip洗浄バッファー2、Agilent Technologies)に移し、撹拌しながら5分間インキュベートする。スライドラックを、アセトニトリルを含有する第4の染色皿に移し、5分間撹拌しながらインキュベートする。
【0098】
マイクロアレイ画像診断
マイクロアレイスライドは、100%PMT設定にて5μm分解能でCy3-チャネルにおいてマイクロアレイスキャナー(Agilent G2565CAマイクロアレイスキャナーシステム、Agilent Technologies)を用いて画像化し、XRDオプションは0.05で有効である。得られたtiff画像は、GE1_105_Dec08プロトコルを用いるAgilent feature extractionソフトウェアバージョン10.5.1.1を使用して処理する。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
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図15
図16
図17
図18
【配列表】
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