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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-10
(45)【発行日】2023-03-20
(54)【発明の名称】成膜装置
(51)【国際特許分類】
   C23C 14/24 20060101AFI20230313BHJP
   H05B 33/10 20060101ALI20230313BHJP
   H10K 50/00 20230101ALI20230313BHJP
【FI】
C23C14/24 G
C23C14/24 J
H05B33/10
H05B33/14 A
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020205210
(22)【出願日】2020-12-10
(65)【公開番号】P2022092405
(43)【公開日】2022-06-22
【審査請求日】2021-10-04
(73)【特許権者】
【識別番号】591065413
【氏名又は名称】キヤノントッキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100076428
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 康徳
(74)【代理人】
【識別番号】100115071
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 康弘
(74)【代理人】
【識別番号】100112508
【弁理士】
【氏名又は名称】高柳 司郎
(74)【代理人】
【識別番号】100116894
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 秀二
(74)【代理人】
【識別番号】100130409
【弁理士】
【氏名又は名称】下山 治
(74)【代理人】
【識別番号】100134175
【弁理士】
【氏名又は名称】永川 行光
(74)【代理人】
【識別番号】100188868
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 智丈
(74)【代理人】
【識別番号】100221327
【弁理士】
【氏名又は名称】大川 亮
(72)【発明者】
【氏名】砂川 貴宏
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 功康
【審査官】末松 佳記
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-092371(JP,A)
【文献】特開2009-064758(JP,A)
【文献】特開2009-019243(JP,A)
【文献】特開2015-113502(JP,A)
【文献】特開2010-174345(JP,A)
【文献】特開2013-249542(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 14/00-14/58
H05B 33/10
H10K 50/00-50/88
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を搬送方向に搬送しながら成膜するインライン型の成膜装置であって、
前記基板が載置されるマスクトレイの下面であって前記基板の前記搬送方向と交差する交差方向の両端部に当接して前記マスクトレイを搬送する搬送ローラを備える搬送装置と、
前記搬送装置の下方に配置され、前記搬送ローラによって搬送される前記基板に蒸着材料を放出する蒸着源を有する蒸着装置と、
前記蒸着源による蒸着材料の放出範囲を規制する防着部材と、を有し、
前記防着部材は、
前記搬送ローラの側面であって、前記搬送ローラによって搬送される前記基板の前記交差方向において中心側の前記側面に対向する第1の面と、
前記第1の面に接続され、前記搬送ローラの下方周面に対向する第2の面と、
を含み、
前記第1の面と前記搬送ローラの側面との間に位置するように、前記搬送ローラの搬送面より鉛直方向で上方に延びる防着板を更に含む、
ことを特徴とする成膜装置。
【請求項2】
前記交差方向における前記蒸着源の長さは、前記交差方向において対向する2つの前記搬送ローラの間隔より大きいことを特徴とする請求項1に記載の成膜装置。
【請求項3】
前記防着部材は四角筒状の形状であり、四角筒の端部に、前記第1の面および前記第2の面によって形成される前記搬送ローラのための退避構造が設けられることを特徴とする請求項1または2に記載の成膜装置。
【請求項4】
前記四角筒の内側の表面はメッシュ構造であることを特徴とする請求項3に記載の成膜装置。
【請求項5】
前記防着板は前記搬送ローラの前記側面に対向するように配置されることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の成膜装置。
【請求項6】
前記防着板と前記マスクトレイの下面に設けられた凹部とがラビリンス構造を形成しており、前記防着板は、前記搬送ローラの集塵カバー及び前記搬送ローラに前記蒸着材料が付着することを防ぐように配置されることを特徴とする請求項5に記載の成膜装置。
【請求項7】
前記蒸着装置は、前記搬送装置に対して相対的に移動可能であることを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載の成膜装置。
【請求項8】
前記防着部材は、複数の防着板で構成されることを特徴とする請求項1から7のいずれか1項に記載の成膜装置。
【請求項9】
前記第1の面および前記第2の面は前記複数の防着板のうちの1つに含まれることを特徴とする請求項8に記載の成膜装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インライン型の成膜装置に関する。
【背景技術】
【0002】
有機ELディスプレイ等の製造においては、マスクを用いて基板上に蒸着物質を成膜するインライン型の成膜装置が知られている。引用文献1には、成膜のためのチャンバ内で基板を搬送しながら成膜を行う成膜装置が示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2015-113502号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、蒸着源から放出された蒸着材料の放出範囲を規制するために防着部材が設けられる。ここで、ラインソース型の蒸着源などでは、蒸着材料を放出するために広い放出空間が必要となる場合がある。また、防着部材は、搬送ローラやチャンバ空間の壁面への蒸着材料の付着を防ぐことが必要となる。
【0005】
本発明は、蒸着源の放出空間を確保しながら、高い防着性能を有するインライン型の成膜装置の防着部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一側面によれば、基板を搬送方向に搬送しながら成膜するインライン型の成膜装置であって、
前記基板が載置されるマスクトレイの下面であって前記基板の前記搬送方向と交差する交差方向の両端部に当接して前記マスクトレイを搬送する搬送ローラを備える搬送装置と、
前記搬送装置の下方に配置され、前記搬送ローラによって搬送される前記基板に蒸着材料を放出する蒸着源を有する蒸着装置と、
前記蒸着源による蒸着材料の放出範囲を規制する防着部材と、を有し、
前記防着部材は、
前記搬送ローラの側面であって、前記搬送ローラによって搬送される前記基板の前記交差方向において中心側の前記側面に対向する第1の面と、
前記第1の面に接続され、前記搬送ローラの下方周面に対向する第2の面と、
を含み、
前記第1の面と前記搬送ローラの側面との間に位置するように、前記搬送ローラの搬送面より鉛直方向で上方に延びる防着板を更に含む、
ことを特徴とする成膜装置が提供される。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、蒸着源のための放出空間を確保しながら、高い防着性能を有するインライン型の成膜装置の防着部材を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】一実施形態に係る成膜装置の概略図。
図2】成膜装置の成膜処理を示す図。
図3】搬送ユニットと蒸着ユニットの分離を示す図。
図4】一実施形態に係る搬送ユニットの概略図。
図5】搬送ユニットの断面図。
図6】搬送ユニットおよび蒸着ユニットの断面図。
図7図6の点線650の領域の拡大図。
図8】防着部材の構成を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照して実施形態を詳しく説明する。尚、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。実施形態には複数の特徴が記載されているが、これらの複数の特徴の全てが発明に必須のものとは限らず、また、複数の特徴は任意に組み合わせられてもよい。さらに、添付図面においては、同一若しくは同様の構成に同一の参照番号を付し、重複した説明は省略する。
【0010】
<成膜装置の概要>
図1(A)および図1(B)は、本実施形態に係る成膜装置を示す概略図である。図1(A)および図1(B)に示す本実施形態に係る成膜装置1は、基板を搬送しながら製膜するインライン型の成膜装置である。本実施形態に係る成膜装置1は、例えば、スマートフォン用の有機EL表示装置の表示パネルなどの電子デバイスの製造ラインに適用される。成膜装置1は、搬送ユニット2、蒸着ユニット3、フレーム4を含む。
【0011】
搬送ユニット2は、基板上に形成する薄膜パターンに対応する開口パターンをもつメタルマスクなどのマスクによってマスクされた基板が配置されたマスクトレイを搬入口5から搬出口6まで搬送するための装置である。また、搬送ユニット2の底面には、蒸着ユニット3の蒸着源から放出された蒸着材料がマスクトレイに配置された基板に蒸着されるよう、開口が配置される。
【0012】
蒸着ユニット3は、後述する蒸着源を有し、蒸着ユニット3の天面側には搬送ユニット2によって搬送される基板に蒸着材料を放出するための開口を有する。また、蒸着ユニット3またはフレーム4に配置された昇降機構41およびスライド機構42によって、後述する搬送ユニット2と蒸着ユニット3との分離が行われる。
【0013】
フレーム4は、搬送ユニット2と蒸着ユニット3とを支持するための構造である。本実施形態では、フレーム4が昇降機構41およびスライド機構42を備えるものとして説明を行うが、昇降機構およびスライド機構の少なくとも一つが蒸着ユニット3に備えられてもよい。
【0014】
また、図1(B)に示すように、本実施形態では、成膜装置1は3つの蒸着ユニット3A~3C(総称して蒸着ユニット3とする)を備え、搬送される基板に1種類以上の蒸着材料を連続して蒸着することができる。なお、図1(B)の例では、昇降機構41は省略して示されている。蒸着ユニット3の数、およびそれぞれの蒸着ユニット3が放出する蒸着材料の種類は任意に変更可能である。また、昇降機構41およびスライド機構42は、複数の蒸着ユニット3をまとめて昇降またはスライドさせてもよいし、別個に昇降またはスライドさせてもよい。
【0015】
図2(A)~図2(D)は、本実施形態に係る成膜装置1の成膜処理を示す。ここで、図1(A)の成膜装置1の面XZでの断面図を示す。なお、図2(A)~図2(D)では、フレーム4は省略して示されている。
【0016】
図2(A)は、基板が配置されたマスクトレイ201が搬入口5から搬入された状態の成膜装置1を示す。搬送ユニット2はそれぞれの蒸着ユニット3に対応する開口21A~21C(総称して開口21とする)を備える。蒸着ユニット3はそれぞれに対応する蒸着源31A~31C(総称して蒸着源31とする)を備える。図2(A)において、搬入されたマスクトレイ201は、搬送ユニット2が備える複数の搬送ローラ22によって、搬送ユニット2の開口21上に搬送される。
【0017】
図2(B)は、マスクトレイ201が開口21A上に搬送され、蒸着ユニット3Aの蒸着源31Aから蒸着材料を放出している状態の成膜装置1を示す。図2(B)では、基板が搬送されている状態で、蒸着源31Aから上方に向かって蒸着材料が放出されている。これによって、マスクパターンに従って基板上に蒸着材料が蒸着される。本実施形態に係る成膜装置1は、マスクトレイ201が移動している状態で蒸着を行うものとして説明するが、マスクトレイ201が開口21上に位置する状態で移動を一時停止または減速するようマスクトレイ201の搬送速度を制御してもよい。これによって、成膜装置1は基板上に適切な厚みの蒸着材料が蒸着するよう制御することができる。
【0018】
図2(C)は、蒸着された基板が搬送ユニット2によって搬送され、次の蒸着ユニット3Bに対応する開口21B上にマスクトレイ201が搬送されている状態を示す。ここで、蒸着ユニット3Bの蒸着源31Bから蒸着材料が放出される。そして成膜装置1はマスクトレイ201の搬送を進めて次の蒸着ユニット3Cによって次の蒸着を行い、図2(D)に示すように、蒸着が完了したマスクトレイ201が、搬出口6から搬出される。このように、搬送ユニット2の搬送ローラ22によって搬入口5から搬出口6まで搬送されるまでに複数の蒸着ユニット3から蒸着を行うことができる。
【0019】
続いて、図3(A)および図3(B)を参照して、搬送ユニット2と蒸着ユニット3との分離について説明する。蒸着ユニット3の蒸着源31から放出された蒸着材料が搬送ユニット2の側壁や天面に付着し、落下して搬送中の基板に付着することで、蒸着処理が失敗する場合がある。また、搬送ユニット2の側壁や天面に付着した蒸着材料が落下して搬送ローラ22に付着することで搬送している基板が汚損したり、搬送ローラ22の動作不良が生じる場合がある。このため、搬送ユニット2の側壁や天面には防着板が設けられ、防着板を定期的に洗浄または交換するメンテナンスが必要になる。
【0020】
また、搬送ローラ22とマスクトレイ201との接触によって生じる粉塵が、搬送ローラの回転や蒸着材料の放出によって生じる気流によって舞い上がり、基板や成膜装置1の駆動構造に付着し、成膜処理の失敗や搬送ユニット2の動作不良が生じる場合がある。このため、搬送ローラ22には、生じた粉塵が散らばることを防ぐための集塵カバーが設けられ、集塵カバーの交換または清掃などのメンテナンスを定期的に行うことがある。
【0021】
このような場合、搬送ユニット2と蒸着ユニット3とを分離し、搬送ユニット2の底面側の開口21から搬送ユニット2内の搬送空間にアクセスすることで、メンテナンスの際の作業の利便性が向上する。搬送ユニット2と蒸着ユニット3との分離では、図3(A)に示すように、フレーム4が備える昇降機構41によって、蒸着ユニット3が搬送ユニット2に対して相対的に下方に移動する。なお、本実施形態に係る蒸着ユニット3は、後述するように、搬送ユニット2と接続された場合に開口21よりもZ軸上方に進入する部分を備えるため、昇降機構41による蒸着ユニット3の降下が必要となる。これによって、搬送ユニット2に対して水平方向に蒸着ユニット3が移動することが可能となる。
【0022】
続いて、図3(B)に示すように、フレーム4が備えるスライド機構42によって、蒸着ユニット3が搬送ユニット2に対して相対的に水平に移動する。これによって、フレーム4に保持された搬送ユニット2の下方から搬送ユニット2内部の搬送空間にアクセスすることができ、メンテナンスの利便性を向上することができる。また、蒸着ユニット3の上方から蒸着ユニット3内にアクセスすることができるため、蒸着ユニット3のメンテナンスの利便性も向上することができる。
【0023】
続いて、図4に、搬送ユニット2の構造を示す。搬送ユニット2は、底面の開口21、複数の搬送ローラ22、天面防着部23、側壁防着部24、筐体25、天面蓋26を含む。なお、図4において側壁防着部24は一部のみが図示されている。
【0024】
天面防着部23は、搬送ユニット2内の搬送路の天面側に蒸着する蒸着材料の除去などのメンテナンスを容易にするように、筐体25から取り外し可能に配置される。本実施形態では、天面蓋26に天面防着部23が配置され、筐体25から天面蓋26を取り外すと、天面蓋26とともに天面防着部23も筐体25から取り外される。また、天面防着部23は複数の防着板(天面防着板)によって形成され、それぞれの天面防着板は別個に筐体25または天面蓋26から取り外すことができる。天面蓋26が複数の天面防着板を支持する構造については図5および図6を参照して後述する。また、筐体25、天面蓋26、および天面防着部23の詳細な構造については図5および図6を参照して後述する。
【0025】
側壁防着部24は、搬送ユニット2内の筐体25の側壁から脱着可能な防着板を含み、筐体25の内側の側壁に蒸着材料が蒸着することを防ぐ。メンテナンスの際には、側壁防着部24を筐体25から取り外し、交換又は洗浄することでメンテナンス作業を容易に行うことができる。なお、本実施形態に係る側壁防着部24も複数の側壁防着板によって形成され、それぞれの側壁防着板も別個に筐体25から取り外すことができる。
【0026】
天面蓋26は、筐体25の天面側に配置され、天面蓋26を上方に持ち上げることで筐体25から天面蓋26を取り外すことができる。これによって、筐体25の天面側から搬送空間にアクセスすることができる。すなわち、天面蓋26は搬送ユニット2の内部の搬送空間の天井を形成する天井部であり、筐体25は搬送空間の側壁を形成する側壁部である。また、天面防着部23は搬送空間の天井部を覆う防着部であり、側壁防着部24は搬送空間の側壁部を覆う防着部である。
【0027】
続いて、図5を参照して搬送ユニット2の詳細な構造について説明する。図5は、図4の面401で切断したときの搬送ユニット2の断面図である。また、図5では、蒸着ユニット3も図示されている。
【0028】
図5では、天面蓋26にはガイドローラ27が配置され、天面防着板501~504は、ガイドローラ27によって支持される。すなわち、ガイドローラ27と、天面防着板501~504のガイドローラ27に当接する部分が、天面蓋26に沿って防着板を移動可能に支持するスライド構造(着脱構造)として機能する。本実施形態では、ガイドローラ27の移動方向は、基板の搬送方向と交差する方向であり、図5ではY軸方向である。なお、図5の例では、天面蓋26にガイドローラ27が配置され、天面防着板501~504は、ガイドローラ27が転動する転動面を含むものとして図示している。しかしながら別の例では、天面蓋26にレールが配置され、当該レールに沿って転動するローラが天面防着板501~504に配置されてもよい。また、天面蓋26が天面防着板501~504を着脱可能に支持する着脱構造としては、スライド構造以外にもフック型の留め部材などの任意の構造を用いてもよい。
【0029】
また、円506~508に示すように、天面防着板と水平な面においてスライド方向と交差する方向で隣り合う天面防着板はラビリンス構造を形成する。ここでラビリンス構造とは、防着板が覆う面に対して垂直な方向、すなわち上下方向で隣接する防着板が重なり合うことを意味する。天面防着板501~504では、基板搬送方向(X方向)で隣接する防着板が上下方向(Z軸)において重なり合う。これによって、隣接する天面防着板501~504の位置が多少変化しても、天面防着板501~504が搬送空間の天井の内面を覆うことができ、ガイドローラ27、天面蓋26、および筐体25に蒸着材料が付着することを防ぐことができる。
【0030】
また、円509に示すように、筐体25の側面に取りつけられ、搬送空間の側面を覆う側壁防着部24は、側壁防着部24に隣接する天面防着板501とラビリンス構造を形成する。これによって、天面防着板501の位置が多少変化しても、ガイドローラ27、天面蓋26、および筐体25に蒸着材料が付着することを防ぐことができる。
【0031】
また、本実施形態に係る天面蓋26は、筐体25との係合構造を有し、筐体25と天面蓋26との係合を解除することで筐体25から取り外すことができる。筐体25から天面蓋26を取り外す際には、天面蓋26に設けられたフック穴505にクレーンのフックを取りつけることで、クレーンを用いて天面蓋26を取り外すことができる。
【0032】
なお、搬送ユニット2の開口21Aを通じて、搬送ユニット2の筐体25の内部空間に防着部材32Aおよび防着部材33Aが配置される。防着部材32Aおよび防着部材33Aは、上方に点線で示す開口を示す筒状の防着板である。防着部材32Aが搬送ローラ22によって搬送されるマスクトレイ201の下方に配置されることで、蒸着源31Aからの蒸着材料の放出範囲を規制することができる。
【0033】
続いて、図6を参照して搬送ユニット2の詳細な構造について説明する。図6では、図4の面402で切断したときの搬送ユニット2の断面図である。また、図6では蒸着ユニット3も図示されている。
【0034】
図6では、ガイドローラ27のスライド方向上の一方では搬送ユニット2の筐体25または天面蓋26に設けられたストッパ606に当たる。また、スライド方向上の他方ではカバー28に当たる。カバー28は、ガイドローラ27によって天面防着板601~605を取り外し可能にするか否かを切り替え可能な係止構造である。図6の例では、カバー28は天面防着板601~605を天面蓋26から個別に取り外すことはできない閉状態である。一方、カバー28を開状態に切り替えることで、閉状態でカバー28が覆っていた筐体25の開口から天面防着板601~605をガイドローラ27に沿って個別に取り外すことができる。また、筐体25の開口から個別にガイドローラ27に沿って天面防着板を取りつけて、ストッパ606または既に取りつけられた他の天面防着板に当接するまでスライドさせることで、天面防着板をスライド方向で位置合わせすることなく取りつけることができる。このように、脱着構造としてスライド構造を採用することで、天面防着板を着脱する際の作業の効率が向上する。
【0035】
また、円607~610に示すように、スライド方向で隣り合う防着板同士も、ラビリンス構造を形成する。これによって、スライド方向で隣接する天面防着板601~605の位置が多少変化しても、ガイドローラ27、天面蓋26、および筐体25に蒸着材料が付着することを防ぐことができる。
【0036】
また、スライド方向で同一列の天面防着板601~605は、同じ形状を有する。これによって、防着板を設置する順序を考慮する必要がなく、天面防着板を着脱する作業が容易になる。
【0037】
また、円611~612に示すように、筐体25の側面に取りつけられ、搬送空間の側面を覆う側壁防着部24は、側壁防着部24に隣接する天面防着板601、605とラビリンス構造を形成する。これによって、天面防着板601、605の位置が多少変化しても、ガイドローラ27、天面蓋26、および筐体25に蒸着材料が付着することを防ぐことができる。
【0038】
また、搬送ローラ22は、シャフト621を介して搬送ローラ駆動部622によって駆動される。
【0039】
また、蒸着ユニット3側には、蒸着源31からの蒸着材料が蒸着ユニット3の壁部や周辺の他の機構に付着しないように放出範囲を規制する防着部材32および33が設けられる。防着部材32は、防着部材33の上側に位置し、上部が搬送ユニット2に侵入している。本実施形態において、防着部材32および防着部材33は蒸着ユニット3の筐体によって支持されている。
【0040】
防着部材32および防着部材33は、それぞれ筒状の形状をしており、蒸着源31から放出された蒸着材料がマスクトレイ201方向に放出される放出空間(換言すると蒸着源31の上方空間)を囲むように構成される。例えば、金属製である。本実施形態の場合、蒸着源31がY方向に延設されたラインソースの形態であるため、防着部材32および防着部材33は蒸着源31の形状に沿った四角筒形状を有している。防着部材32の下端部は、防着部材33の内側に侵入しており、防着部材32の下端部と防着部材33の上端部とは鉛直方向において互いに重なっている。これによって、防着部材32と防着部材33との間にZ方向の隙間がなくなり、防着部材32と防着部材33との間から蒸着材料が漏れ出ることを防止できる。
【0041】
また、防着部材32および防着部材33は、四角筒の内側がメッシュ構造の表面を有する。これによって、蒸着材料が防着部材32および防着部材33の表面に付着しやすくなり、防着効果を高めることができる。
【0042】
<蒸着ユニット側の防着板の配置>
続いて、図7を参照して蒸着ユニット3側の防着板の配置について説明する。図7は、図6の点線650で示す部分の拡大図である。
【0043】
図6に示すように、搬送ローラ22は、シャフト621と接続され、搬送ローラ駆動部(不図示)によって回転する。また、シャフト621を覆う搬送ユニット2側の筐体702には、搬送ローラ22の集塵カバー703が取りつけられる。また、集塵カバー703より基板側には、搬送ローラ22の側面を覆うように防着板704が配置される。防着板704は支持部材705によって筐体702に接続される搬送ユニット2側の防着部材である。また、筐体702には、筐体702の側面を覆う搬送ユニット2側の側壁防着部24が配置される。防着板704および側壁防着部24によって、搬送ユニット2の筐体702が形成する搬送空間側方を防着板によって覆うことができる。
【0044】
上述したように、蒸着ユニット3側の防着部材32は、上方の開口がマスクトレイ201に近接するように配置される。ここで、図6に示すように、搬送方向に交差する方向(Y方向)の蒸着源31の長さは、搬送ローラ22の回転軸上で対向する1対の搬送ローラ22の間隔より広い。これは蒸着源31から放出される蒸着材料がマスクトレイ201に配置された基板にY方向で均一に蒸着することを目的としている。このため、防着部材32の開口701のY方向の長さは、蒸着源31のY方向の長さより短い。これによって、蒸着源31のための広い放出空間を確保しながら、搬送ローラ22および搬送ユニット2の壁面への防着性能を高めることができる。
【0045】
また、蒸着材料が搬送ローラ22および集塵カバー703に付着することを防ぐために、蒸着ユニット3側の防着部材32は、搬送ローラ22の側面709に対向する第1の面706と、搬送ローラ22の下方周面に対向する第2の面707とを有する。搬送ローラ22の側面709は、搬送ローラ22によって搬送される基板のY方向における中心側の側面である。言い換えると、側面709は、Y方向で対向する2つの搬送ローラ22の互いに向かい合う面である。第1の面706と第2の面707とによって、蒸着ユニット側の防着部材32が搬送ローラ22に当接することを防ぎながら、搬送ローラ22の防着性能を高めることができる。言い換えると、第1の面706と第2の面707は、蒸着源31の放出方向を規制する四角筒状の防着部材32のうちの搬送ローラの退避構造として機能する。また、この退避構造が防着板704とともにラビリンス構造を形成することで、蒸着材料がY方向で搬送ローラ22や集塵カバー703、搬送ユニット2の壁面に付着することを防ぐことができ、搬送ローラ22の防着性能を高めることができる。
【0046】
なお、図7に示すように、本実施形態に係るマスクトレイ201の下側には、搬送方向と平行に搬送ローラ22の付近に凹部(溝)708が配置されており、防着板704が搬送ローラ22の周面上端、すなわち搬送面より鉛直方向(Z方向)で上方に延伸する。また、搬送ローラ22の凹部708と防着板704とがラビリンス構造を形成する。これによって、防着板704の防着性能を高め、防着板704の上方から蒸着材料が搬送ローラ22、集塵カバー703、および搬送ユニット2の壁面に付着することを防ぐことができる。また、蒸着ユニット3と搬送ユニット2との位置が多少変化して防着部材32の位置が搬送ユニット2に対して相対的に変化した場合であっても、搬送ローラ22および集塵カバー703への防着性能を維持することができる。なお、防着板704は、搬送ローラ22の側面709のみを覆うものとして図示しているが、搬送ローラ22の下方周面も覆うように、YZ面の断面でL字状の形状を有してもよい。
【0047】
なお、図7に示すように第1の面706は鉛直方向(Z方向)に対して基板側に傾斜し、搬送ローラ22の側面709に対向するものとして説明を行ったが、第1の面706は側面709に対して平行な面を有してもよい。
【0048】
続いて、図8を参照して防着部材32および防着部材33の構造について説明する。上側の防着部材32は、着脱可能な8つの防着板801~808によって構成される。下側の防着部材33は、着脱可能な8つの防着板851~858によって構成される。防着部材32および防着部材33において、隣接する2つの防着板は、係止構造(不図示)によって固定されることで四角筒を形成する。防着板801および805は、図7を参照して説明した搬送ローラ22の退避構造を有する防着板である。
【0049】
このように、防着部材32が着脱可能な複数の防着板によって形成されることで、メンテナンスの際には容易に蒸着ユニット3から着脱することができる。
【0050】
また、上側の防着部材32の防着板801および805、802および806、803および807、並びに804および808はそれぞれ同じ構造の防着板を反転して用いている。これによって、防着板の種類を減らすことができる。
【0051】
同様に、下側の防着部材33の防着板851および855、852および856、853および857、並びに854および858はそれぞれ同じ構造の防着板を反転して用いている。これによって、防着板の種類を減らすことができる。
【0052】
<他の実施形態>
発明は上記実施形態に制限されるものではなく、発明の精神及び範囲から離脱することなく、様々な変更及び変形が可能である。従って、発明の範囲を公にするために請求項を添付する。
【符号の説明】
【0053】
1 成膜装置、2 搬送ユニット、22 搬送ローラ、31 蒸着源、32 防着部材、201 マスクトレイ、703 集塵カバー、704 防着板
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8