(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-10
(45)【発行日】2023-03-20
(54)【発明の名称】超音波撮像システムの電力状態を選択する方法及び装置
(51)【国際特許分類】
A61B 8/00 20060101AFI20230313BHJP
【FI】
A61B8/00
(21)【出願番号】P 2020571637
(86)(22)【出願日】2018-12-14
(86)【国際出願番号】 US2018065864
(87)【国際公開番号】W WO2020023075
(87)【国際公開日】2020-01-30
【審査請求日】2020-12-22
(32)【優先日】2018-07-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】399043060
【氏名又は名称】フジフィルム ソノサイト インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】今井 睦朗
(72)【発明者】
【氏名】ヒッぺ、 リチャード
【審査官】亀澤 智博
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2009/0043203(US,A1)
【文献】国際公開第2008/146208(WO,A2)
【文献】特表2017-513650(JP,A)
【文献】特開2010-227357(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0303899(US,A1)
【文献】特開2003-235845(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0105703(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 8/00 - 8/15
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
超音波撮像システムであって、
超音波エネルギを被検体に送達し、前記被検体からのエコー信号を検出するように構成されたトランスデューサと、
通常動作状態で前記超音波撮像システムを動作させ、且つ、前記通常動作状態よりも消費電力のより小さい2
つ以上の低電力状態で前記超音波撮像システムを動作させるように構成された前記トランスデューサに接続されたプロセッサと、
を備え、
前記プロセッサが、電力遮断状態から前記通常動作状態に遷移するとき、前記通常動作状態に比べて、低減した発信電力、低減したフレームレート、又は低減したパルス反復周波数の1つ以上を用いた前記2つ以上の低電力状態の少なくとも1つで前記超音波撮像システムを動作させるように構成された、超音波撮像システム。
【請求項2】
前記プロセッサが、所定の制限時間内に組織が撮像されなかった場合、又は所定の制限時間内に前記超音波撮像システム又は前記トランスデューサが移動されなかった場合、そのたびに前記2つ以上の低電力状態の少なくとも1つに切り替えるように構成された、請求項1に記載の超音波撮像システム。
【請求項3】
前記プロセッサが、前記2つ以上の低電力状態の少なくとも1つでの動作時に1
つ以上の超音波撮像モードの使用を防ぐ、請求項1に記載の超音波撮像システム。
【請求項4】
前記トランスデューサは温度センサを含み、前記プロセッサが、前記トランスデューサの温度が閾値を超える場合に前記2つ以上の低電力状態の少なくとも1つに切り替えるように構成された、請求項1に記載の超音波撮像システム。
【請求項5】
前記トランスデューサは温度センサを含み、前記プロセッサが、前記トランスデューサの温度が閾値を超える場合に前記通常動作状態への遷移を防止するように構成された、請求項1に記載の超音波撮像システム。
【請求項6】
前記プロセッサが、前記トランスデューサが空中を撮像しているか否かを判定し、前記トランスデューサが所定の制限時間にわたり空中を撮像している場合には現在の電力状態にかえて前記2つ以上の低電力状態の少なくとも1つを選択するように構成された、請求項1に記載の超音波撮像システム。
【請求項7】
前記低電力状態は、前記通常動作状態での撮像に使用されるものより少ない撮像用発信素子を使用する、請求項1に記載の超音波撮像システム。
【請求項8】
前記低電力状態は、前記通常動作状態での撮像に使用されるものより少ない撮像用ビームラインを使用する、請求項1に記載の超音波撮像システム。
【請求項9】
前記プロセッサが、生成された画像に対して前記画像内の組織の有無を解析し、前記画像が所定の制限時間内に組織を含まない場合には現在の電力状態から前記2つ以上の低電力状態の少なくとも1つに切り替えるように構成された、請求項1に記載の超音波撮像システム。
【請求項10】
前記プロセッサが、組織を検出するために画像内の強度変化を解析するように構成された、請求項9に記載の超音波撮像システム。
【請求項11】
前記プロセッサが、前記トランスデューサが空中にあるか否かを判定するために反射時間を解析し、前記トランスデューサが所定の制限時間を超えて空中にある場合には前記通常動作状態から前記2
つ以上の低電力状態の少なくとも1つに切り替えるように構成された、請求項1に記載の超音波撮像システム。
【請求項12】
超音波撮像システムであって、
超音波エネルギを被検体に送達し、前記被検体からのエコー信号を検出するように構成されたトランスデューサと、
第1の電力状態で前記超音波撮像システムを動作させ、且つ、電力遮断状態から遷移するときに第2の電力状態で前記超音波撮像システムを動作させるように構成された前記トランスデューサに接続されたプロセッサを備え、
前記電力遮断状態から遷移するときの前記第2の電力状態の前記トランスデューサは、前記電力遮断状態よりも電力を多く、前記第1の電力状態よりも少ない電力を消費する超音波撮像システム。
【請求項13】
前記第2の電力状態で、前記第1の電力状態に比べて低減された前記トランスデューサの発信電力を用いる請求項12記載の超音波撮像システム。
【請求項14】
前記プロセッサが、所定の制限時間内に組織が撮像されなかった場合、前記第1の電力状態から前記第2の電力状態に前記超音波撮像システムを切り替えるように構成された請求項12記載の超音波撮像システム。
【請求項15】
前記プロセッサが、前記超音波撮像システムの動きを検出した場合、第3の電力状態から前記第2の電力状態に前記超音波撮像システムを切り替えるように構成され、
前記第2の電力状態は前記第3の電力状
態よりも電力を多く消費する請求項12記載の超音波撮像システム。
【請求項16】
前記プロセッサが、前記トランスデューサの温度が第1の閾値を超えた場合、前記第1の電力状態から前記第2の電力状態に切り替え、前記トランスデューサ
の温度が第2の閾値を越えた場合、前記第2の電力状態から前記第2の電力状態よりも電力を消費しない第3の電力状態に遷移する請求項12記載の超音波撮像システム。
【請求項17】
前記プロセッサが、ユーザが定義した状態が発生した場合、前記第1の電力状態から前記第2の電力状態に切り替える請求項12記載の超音波撮像システム。
【請求項18】
前記プロセッサが、前記トランスデューサが所定の制限時間にわたり空中を撮像している場合、前記第2の電力状態を選択する請求項12記載の超音波撮像システム。
【請求項19】
前記トランスデューサが、前記第2の電力状態では、前記第1の電力状態よりもより少ない撮像用発信素子を使用する、又はより少ない撮像用ビームラインを使用する請求項12記載の超音波撮像システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波撮像システム、特に超音波撮像システムにおける電力節約のためのシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
集積回路の処理能力が増大するにつれて、医療装置一般、特に超音波撮像システムはより小さく、よりポータブルになってきた。超音波撮像システムは今では持ち運びが容易で充電池での電力供給が可能なほどに小さくなっている。電池技術の進歩にも拘らず、そのようなデバイスの電力消費を低減して動作時間及び待機時間を増大させることが常に求められている。不使用時に電力を選択的に遮断する電子システムが知られているが、これらのシステムは実際に使用されていないときに偶発的に復帰して電池を消耗することがある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
以下で説明するように、本明細書で述べる技術は、システムが実際に組織を撮像していないとき、ある期間動かされていないとき、又はトランスデューサが許容以上に温度が上がっているとき、などの1以上の動作条件にある時に、消費される電力を低減することにより、超音波撮像システムの動作時間及び/又はスタンバイ時間を増加させるためのシステム及び方法に関する。
【課題を解決するための手段】
【0004】
いくつかの実施形態では、超音波撮像システムは、通常動作状態及び2以上の低電力状態を含む複数の異なる電力状態で動作する。起動すると、システムは低電力状態で動作を開始してから通常動作状態で動作する。いくつかの実施形態では、超音波トランスデューサが組織画像を実際にキャプチャしている場合に初めて通常動作状態になる。いくつかの実施形態において、撮像システムの最初の「電力オン」では、組織が検出されるまではまず低電力状態で動作する。
【図面の簡単な説明】
【0005】
【
図1】本開示技術の一実施形態による超音波撮像トランスデューサのブロック図である。
【
図2】本開示技術の一実施形態による超音波撮像システムのベースユニットのブロック図である。
【
図3】本開示技術の一実施形態による超音波撮像システムで使用される複数の異なる電力状態を示す図である。
【
図4A】超音波撮像システムが実際に組織を撮像しているか、空中にあるかを検出する例示的方法を示す図である。
【
図4B】超音波撮像システムが実際に組織を撮像しているか、空中にあるかを検出する例示的方法を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0006】
以下で詳細に述べるように、本明細書に記載の技術は、実際に組織を撮像していないとき、移動されていないとき、あるいは熱的な閾値を超えたときに、システムの使用電力を低減する複数の異なる動作電力レベル又は動作状態を有する医療用装置、特に、超音波撮像システムに関する。システムの1以上のプロセッサは、撮像トランスデューサが組織撮像に実際に使用されていないとき、あるいはシステムが所定の期間を超えて移動されなかった場合を検出するように構成されている。1以上のプロセッサは、超音波撮像システムを通常動作状態で使用されるよりも電力使用量の低い低電力状態に入らせる。復帰すると、組織が撮像される通常動作状態に進む前に、低電力状態でシステムを運転し始める。
【0007】
図1は、本開示技術のいくつかの実施形態による超音波撮像トランスデューサの簡略化されたブロック図を示す。トランスデューサは好ましくは、圧電トランスデューサ素子50の配列を含む。これは、超音波エネルギを生成し、そのエネルギを体内へ指向させ、対応する音響エコー信号を受信するように構築され、1D、1.5D又は2Dのリニアアレイ、カーブアレイ、又はフェーズドアレイとなったPZT又は他の圧電素子である。いくつかの実施形態において、アレイは中心周波数の周りに単一帯域幅の周波数を生成するように設計される。他の実施形態では、トランスデューサは2以上の中心周波数の周りに超音波を生成するように構成することができる(例えばデュアルモードイメージング)。一般に、超音波撮像システムには発信(TX)チャネルと受信(RX)チャネルの数よりも多い圧電トランスデューサ素子がある。したがって、高電圧マルチプレクサ52を使用して、複数の発信チャネルと受信チャネルを選択されたトランスデューサアレイ要素に接続する。パルス発生時のトランスデューサ素子に高電圧発信パルスが印加されている間、発信/受信スイッチ54が高感度の受信電子回路を切断する役目をする。受信(RX)用の特定用途向け集積回路(ASIC)56が、トランスデューサ素子によって生成されるアナログのエコー信号を受信し、更なる処理のためにそれを調整する。そのような処理には、フィルタリング及び増幅などのステップが含まれ得る。受信ASIC56の出力がアナログ/デジタルコンバータ58のバンクに供給され、そこでアナログエコー信号に対応するデジタル信号に変換される。
【0008】
デジタル化されたエコー信号は通信回路60へ送られ、ケーブル80で有線通信リンクあるいは無線通信リンク82を介して撮像システムのベースユニット(
図2)へ送信される。マイクロコントローラ62がトランスデューサの動作を制御する。マイクロコントローラ62が発信(TX)用FPGA68を操作して、個別のトランスデューサ素子への駆動信号の印加方法及びタイミングを制御する。TXFPGA68からの駆動信号は、発信(TX)用ASIC66へ供給され、トランスデューサ素子に音響超音波信号を生成させて関心領域へ到達させるために、駆動信号の電圧を調整及び昇圧する。
【0009】
マイクロコントローラ62には運動センサ70も接続されており、トランスデューサの移動とトランスデューサの保持角度を検出する。そのような運動センサ70は、加速度計、集積回路、又は運動及び重力を検出する他のデバイスであってもよい。いくつかの実施形態では、トランスデューサには1以上のユーザコントローラ74(ボタン、ノブ、タッチセンサパッドなど)が含まれ、それによってユーザが撮像システムを操作可能である。ユーザコントローラ74で対話的に入力された命令は、有線又は無線の通信リンクを介して撮像システムのベースユニットに送信される。
【0010】
電源72がトランスデューサの電子機器に電力を供給する。電源72は、トランスデューサをベースユニットに繋ぐケーブル80を介して、ベースユニットから電力を受けることも可能である。または、電源72が1以上の再充電可能な電池(図示せず)を含むことも可能である。電源72から供給されるか、あるいは電源から取り込まれる電力量は後でさらに詳細を議論する。
【0011】
温度センサ76(例えばサーミスタ)が、トランスデューサの温度を示す信号をマイクロコントローラ62に対して生成する。
【0012】
図2は、本開示技術の一実施形態による超音波撮像システムのベースユニットの簡略化されたブロック図である。ベースユニットには、コンピュータ読み取り可能な不揮発性メモリに格納されたプログラム命令を実行して、撮像システムの動作を制御するように構成された、1以上のプロセッサ102(CPU、DSP、GPU、又はそれらの組合せ)が含まれる。デジタルエコー信号が、通信回路130(例えば、LVDS受信機、Bluetooth(登録商標)、801.11など)によってトランスデューサから受信され、受信ビームフォーミング電子機器104に送られる。そこで、2以上のトランスデューサチャネルからのエコー信号が結合されて、音波を照射している組織内の複数位置に関するエコー特性が評価される。そのようなエコー特性は、これに限るものではないが、エコー振幅、ドップラー位相シフト、パワースペクトル、高調波、又はそれらの組み合わせであり得る。ビームフォーミング電子機器104の出力は、受信したエコー信号の更なるフィルタリング及び信号調整を行うデジタル信号プロセッサ(DSP)106に提供される。DSP106の出力は、処理されたデジタルエコーデータをビデオディスプレイ120に表示することのできる形式に変換するグラフィックプロセッサユニット(GPU)108に提供される。画像のエコーデータは、患者の記録への組み込み、患者の課金システムへの転送、あるいは、格納やレビュー並びに解析を遠隔コンピュータシステムで行うための転送へ向けて、フレームメモリ110に格納される。通信回路130はまた、トランスデューサのコンポーネントとの間で制御信号を送受信する。
【0013】
キーボード、トラックボール、トラックパッド、タッチスクリーン、ボタン、ノブなどの1以上を含むユーザインタフェース132により、ユーザが、対話的にプロセッサ102のオペレーティングシステムとやり取りして撮像システムの機能の制御が可能となる。撮像システムが移動したり、保持角度が変わったりすると、運動センサ136がプロセッサ102に信号を提供する。そのような運動センサ136は、加速度計又は他の運動検出電子機器を備えてもよい。最後に、電源140は撮像システム、及びいくつかの実施形態ではトランスデューサに電力を供給する。好ましくは、電源140は1以上の再充電可能な電池を含む。当業者には理解されるように、トランスデューサ及びベースユニットには追加的な構成要素が含まれ得るが、開示の技術を不明瞭にすることを避けるためにその詳細はここでは述べない。
【0014】
上記のように、超音波撮像システムのプロセッサ102は、電源140から異なるレベルの電力を引き出すいくつかの電力状態の1つで撮像システムを動作させるようにプログラムされている。通常状態では、最大の電力を電源から引き出し、撮像システムが超音波トランスデューサに接触している組織のライブ画像を実際にキャプチャしているときに使用される。撮像システムがアイドル状態であるか又は組織を撮像していないときは、プロセッサ102は1以上の低電力状態に入るようにプログラムされている。そこでは電源140から引き出される電力が減少し、システムの機能及び/又は生成される画像の忠実度が減少する。プロセッサ102は、以下で述べるような撮像システムの1以上の動作条件の検出によって再活性化されるまでは低電力状態を維持する。
【0015】
低電力状態で動作する医療装置において発生する問題の1つは、装置が偶発的な又は環境による動きにより誤って目覚め得ることである。例えば、撮像システムを車両(例えば救急車、救急処置者車両など)で移動する場合、装置が押し付けられたりすることがある。装置の運動センサがこの押し付ける動きを検出すると、間違って装置を通常動作状態に戻し、電池から不必要に電力を引き出す可能性がある。そのような電力が引き出されることによって、システムのスタンバイ時間が減少し、装置を実際の患者の撮像に使用できる時間が制限される可能性がある。
【0016】
超音波撮像システムの電池管理を改善するために、本開示技術の撮像システムには、事前設定された論理に従って、低電力状態から通常動作状態に複数の段階で目覚め及び復帰するようにプログラムされて動作する1以上のプロセッサが含まれている。撮像システムが組織の撮像に使用されていることをシステムが検出すると、システムのプロセッサが1以上のステップで電力を増加させて通常動作状態に達する。ただし、システムが組織の撮像に使用されていないか、他の既定の動作基準に合致する場合には、プロセッサはシステムをフルパワー未満で動作させ続けることができる。低電力状態はバッテリ寿命を延ばし、それによって装置の組織撮像に使用可能な時間とシステムのスタンバイ時間の長さを増加させる。
【0017】
図3は、本開示技術による、バッテリ寿命を増加させるために超音波撮像システムで使用可能ないくつかの異なる電力状態の例示的な状態を示す。ここに示す実施形態では、超音波撮像システムは、通常動作状態200、低フレームレート状態204、フリーズ状態208、スリープ状態212及び電力遮断状態216の5つの異なる電力状態で動作可能である。低フレームレート状態204、フリーズ状態208、スリープ状態212及び電力遮断状態216はすべて通常動作状態200よりも電力消費が小さい(例えば低電力状態)。本開示の技術に従って、異なるレベルの電力消費をする電力状態の数はこれより多く、又は少なく実装し得ることは理解されるであろう。
【0018】
下の表が本開示技術の一実施形態による、異なる電力状態における撮像システムの機能をまとめたものである。この実施形態では、低電力状態には、小電力状態、フリーズ状態、スリープ状態の少なくとも1つが含まれることに留意されたい。
【表1】
*小電力状態は、受発信の低フレームレート状態、低駆動電圧印加、使用する受発信チャネル数の削減、の少なくとも1つを含む。小電力状態では、ハーモニックイメージングなどの高い電力レベルを必要とする撮像モードのあるものは使用できない。小電力状態の一例は前述した低フレームレート状態204であることに留意されたい。
【0019】
一実施形態において、超音波撮像システムは、事前プログラムされたか、事前定義されたか又はユーザが定義した動作条件の1以上を検出すると、現在の動作状態からより消費電力の小さい電力状態へ移行する。逆に、低電力状態から通常動作状態への引き出し電力の増加は1以上のステップで実行されて、例えば電力遮断状態から通常動作状態へ直接行くのではなく、より段階的に電力引き出しを増加させるようにする。
【0020】
一実施形態において、撮像ユニットのプロセッサ102とトランスデューサのマイクロコントローラ62は、電力状態間での遷移を起こす動作条件(事前プログラムされていた動作条件、事前定義された動作条件、又はユーザが定義した動作条件)を検出するようにプログラムされている。一実施形態では、トランスデューサプローブ温度が設定限界より高い(例えば41℃より高い)か、トランスデューサプローブが所定限界より長く(例えばトランスデューサの移動なしに3分を超えて)患者の皮膚に接触し続けているか、あるいはトランスデューサプローブが空中にあるか、などの1以上の条件250に合致すれば、撮像システムが関心領域から実際に超音波データを取得して表示している通常動作状態200から、より低いレートで超音波信号をキャプチャする低フレームレート状態204への遷移が発生する。これらの条件の1以上に合致すればプロセッサ102は撮像システムを通常動作状態から低フレームレート状態204へ遷移させる。プロセッサ102、62はこれらの条件を周期的にチェックして、これらの条件のいずれかが検出されると、撮像システムを低電力状態へ移す。
【0021】
システムが実際に超音波データを取得している低フレームレート状態204から、新規の超音波データは取得されていなくて1以上の画像がビデオディスプレイ120に表示されたままになっているフリーズ状態208への遷移は、1以上の条件254が検出されると発生する。条件254には、トランスデューサプローブが所定の制限時間以上に空中にある場合、トランスデューサプローブ温度が閾値(例えば42.5℃)を超える場合、あるいは移動が検出されないままトランスデューサプローブが所定の制限時間を超えて皮膚に接触したままになっている場合、が含まれ得る。
【0022】
フリーズ状態208から、システムが超音波データの取得もビデオモニタへの画像表示もしないスリープ状態212への遷移は、条件258のいずれかが検出されると発生する。これらの条件には、所定の制限時間を超えて、トランスデューサプローブ又はベースユニットの移動が検出されない場合、所定の制限時間を超えてトランスデューサプローブが空中に放置されている場合、又は所定の制限時間を超えてユーザ入力が受信されなかった場合が含まれ得る。
【0023】
フリーズ状態208から、すべての機能が遮断される電力遮断状態216への遷移は、条件262の1つが検出されると発生する。条件262には、電池の電力レベルが所定の閾値未満に落ちている場合、電力ボタンが押されるか遮断状態にされた場合、あるいはトランスデューサプローブ又はベースユニットの移動が検出されずにある時間が経過した場合が含まれる。
【0024】
開示技術の一実施形態において、システムが電力遮断状態216から離れる前に、ユーザは電力ボタンを押すか作動させることが必要である。電力ボタンが作動されたことを検出すると、電力遮断状態216から通常動作状態200へ直接移行するのではなく、システムはまずフリーズ状態208などの低電力状態の1つへ進む。
【0025】
説明したように、システムは電力遮断状態216から通常動作状態200への直接移行はしない。その代わり、通常動作状態200に進む前に、フリーズ状態208又は低フレームレート状態204などの低電力状態がまず作動される。一実施形態では、電力遮断状態ではなくなった後に選択される電力状態はフリーズ状態208であり、それによって1以上の画像が表示されるが、新規の超音波データは取得されない。フリーズ状態208から低フレームレート状態204への遷移は、条件270のいずれかが検出されると発生する。条件270には、トランスデューサ又はメインユニットの移動の検出、プローブ温度が所定の限界未満(例えば42.5℃未満)である場合、あるいはプローブが所定の制限時間を超えて空気中に放置されていない場合、が含まれ得る。
【0026】
低フレームレート状態204から通常動作状態200への遷移は、条件274のいずれかが検出されると発生する。条件274には、トランスデューサプローブ温度が所定の限界未満(例えば41℃未満)である場合、プローブが所定の制限時間を超えて皮膚に接触している場合、又はプローブが空気中に放置されていない場合、が含まれ得る。スリープ状態212からフリーズ状態208へ戻る遷移は、条件268のいずれかが検出されると発生する。条件268には、プローブ又はメインユニットの移動の検出又はユーザ入力制御へのユーザ入力の検出が含まれ得る。
【0027】
理解されるように、1つの電力状態から別の状態への遷移に必要な特定の条件は上記とは異なる場合がある。いくつかの実施形態では、ユーザが遷移の発生に必要な制限時間や温度閾値などの条件を定義することができる。
【0028】
開示技術の一態様では、電力は少なくとも2段階を経て(例えば、電力遮断状態から通常動作状態に進む前に、少なくとも1つのより低い状態へ、というように)段階的に通常動作状態へ回復する。したがって、電力ボタンが誤って作動されかつユニットが組織を撮像する実際の位置にない場合には、画像システムが誤って通常動作状態での動作を開始する可能性はより小さい。
【0029】
いくつかの実施形態では、電力遮断状態においても電源が切れない小電力タイマーが、撮像システムが電力遮断状態にどのくらいの時間いるかを監視する。時間が所定の制限時間を超える場合(例えば2時間超)には、電力が投入されると撮像システムは通常動作状態で動作を開始し得る。
【0030】
上に示したように、低フレームレート状態204では撮像はまだ行われていて、組織の存在が検出可能である。ただし、システムは通常動作状態200で使用可能であるよりも低い電力を用いて組織を撮像する。より小さい発信エネルギ(例えば発信電圧を下げて)若しくは低フレームレートでの発信を使用するか、より少ないトランスデューサ素子を使用するか、より少ない発信/受信チャネルを使用してより少ないビームラインで発信するか、より低いPRF(パルス繰り返し周波数)を使用するか、又は低解像度の画像の生成若しくはその他の使用電力を減少させる撮像パラメータを調節するかによって、電力を節約可能である。一実施形態において、ベースユニットのプロセッサ102がトランスデューサのマイクロコントローラ62に命令を送って、TXFPGA68及び/又はTXASIC66を制御して、組織の撮像中の消費電力を下げる。そのような撮像はライブ画像の観察には最適ではないかもしれないが、トランスデューサが組織を撮像しているか組織でないものや空中を撮像しているかどうかを判定するには十分である。
【0031】
一実施形態によればフリーズ状態208はトランスデューサからの画像生成を停止し、したがって低フレームレート状態204よりも電力消費が小さい。ただしプロセッサは実行し続けて、トランスデューサ又はベースユニットの移動を検出することによって復活する。
【0032】
スリープ状態212は、画像表示を停止することによりフリーズ状態208のレベルよりもさらに電力消費を低減する。トランスデューサからの画像は生成されないか表示されなくなり、さらにシステム上の電力を消費する機能が停止される。
【0033】
電力遮断状態では、超音波撮像システムが完全に停止され、一実施形態ではユーザが電力ボタンを押すか、作動させることによってのみ再起動する。
【0034】
ある低電力状態から高電力状態への遷移を生じさせる条件の例としては、電力ボタンが押されたことの検出、トランスデューサ若しくはプローブの移動の検出、又はプローブが被験者の皮膚上に配置されて組織画像が取得されていることを検出することが含まれる。電力遮断状態から通常動作状態へ直接的に移行しないことで、電池からの引き出しが最小化され、押し付けられたり、他の不用意に動いたりすることによってシステムが誤って再起動する可能性が小さくなる。同様に、フリーズ状態から、まず低フレームレート状態を経由して通常動作状態に、電力を増やすことができる。それに加え、システムが組織の検出を判定し、患者又はオペレータに更なる安全を提供可能となるまでは、トランスデューサの全電力は使用されない。
【0035】
上記のように、プロセッサ102は受信するエコー信号内に組織が検出されるか否かを判定する命令を実行するように構成されている。いくつかの実施形態では、プロセッサはトランスデューサの視野内で、1以上のエコーパラメータ(例えばエコー強度)の変化を検出するようにプログラムされている。
図4Aに示すように、視野300は複数のセクタ302a、302bなどに分割可能である。セクタ内の各点のエコー振幅値は、平均化されるかあるいは結合される。トランスデューサが患者の体に押し付けられると、組織の構造に依存して、様々なセクタ内にエコー特性の何らかの変化が生じ得る。各セクタが同一(又は例えば+/-5dBでほぼ同一)の平均振幅値であれば、トランスデューサは体に押し付けられていなくて、トランスデューサが自由空間又は他の組織ではない物体を撮像している可能性がある。したがって一実施形態において、プロセッサは受信した超音波フレーム内のエコー特性の検出された変化に基づいて、画像内に組織を検出するようにプログラムされている。理解されるように、システムが通常動作状態で動作している場合には低電力状態とは異なる強度閾値又は組織検出が適用され得る。それは低減された発信電圧、低減されたチャネル数、低いPRFなどのために、通常電力状態で組織の識別に使用されるものと同一のテストは低電力状態での組織の識別に使用できないからである。
【0036】
さらに別の実施形態では、エコー信号の戻り時間を使用して、トランスデューサが対象に押し付けられているか又は自由空間を撮像しているかを判定可能である。
図4Bに示すように、トランスデューサは、レンズと周辺媒体(例えば空気)との間の音響インピーダンスの不一致のためにレンズ表面から第1のエコー信号を受信する。組織はレンズ反射の後のある時点において第2のエコーを生成する。組織反射が生じない場合には、プロセッサは、トランスデューサが自由空間を撮像している可能性があると判定可能であり、低電力状態へ入ることができる。
【0037】
本明細書に記載の主題及び動作の実施形態は、本明細書で開示した構造及びそれらの等価物又はそれらの1以上の組み合せを含む、デジタル電子回路、又はソフトウェア、ファームウェア若しくはハードウェアで実装可能である。本明細書に記載の主題の実施形態は、1以上のプログラム、すなわちデータ処理装置により実行又はその動作を制御するために非一時的なコンピュータ記憶媒体に符号化されたプログラム命令の1以上のモジュールとして実装可能である。
【0038】
「プロセッサ」という用語は、一例としてプログラマブルプロセッサ、マイクロコントローラ、コンピュータ、システムオンチップ、又はそれらの複数若しくは組み合せを含む、データ処理のための全ての種類の装置、デバイス及び機械を含む。プロセッサは、例えばFPGA(フィールドプログラマブルゲートアレイ)又はASIC(特定用途向け集積回路)などの専用ロジック回路を含むことができる。プロセッサにはまた、ハードウェアに加えて問題のコンピュータプログラムの実行環境を作成する、例えばプロセッサファームウェアを構成するコードなどのコンピュータプログラムコードも含まれる。
【0039】
コンピュータプログラム(プログラム、ソフトウェア、ソフトウェアアプリケーション、スクリプト、あるいはコードとしても知られる)は、コンパイル言語、インタープリタ言語、宣言型言語又は手続き型言語を含む任意の形式のプログラミング言語で書くことが可能であり、かつ、スタンドアロンプログラムとして又はモジュール、コンポーネント、サブルーチン、オブジェクト、あるいは計算環境での使用に適する他のユニットとしてなどの、任意の形式で展開可能である。コンピュータプログラムは、必ずしもそうである必要はないが、ファイルシステムのファイルに対応可能である。プログラムは他のプログラムやデータ(例えばマークアップ言語ドキュメントに格納された1以上のスクリプト)を含むファイルの一部、問題のプログラム専用の単一ファイル、又は複数の連携ファイル(例えば、1以上のモジュール、サブプログラム、又はコードの一部を格納するファイルなど)に、格納可能である。
【0040】
本明細書に記載のプロセス及び論理フローは、1以上のコンピュータプログラムを実行して入力データに作用して出力を生成することで動作を遂行する、1以上のプログラマブルプロセッサによって遂行可能である。プロセス及び論理フローはまた、例えばFPGA(フィールドプログラマブルゲートアレイ)又はASIC(特定用途向け集積回路)などの専用ロジック回路によって遂行可能であり、装置は専用ロジック回路として実装することも可能である。通常、プロセッサは、読み出し専用メモリ、又はランダムアクセスメモリ、又はその両方から命令及びデータを受信する。
【0041】
以上より、本発明の特定の実施形態が例示の目的で本明細書に記述されたが、本発明の精神及び範囲から逸脱することなく様々な変更を成し得ることが理解されるであろう。したがって、本発明は、添付の特許請求の範囲によって限定される場合を除き限定を受けない。