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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-10
(45)【発行日】2023-03-20
(54)【発明の名称】真空処理装置の運転方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/677 20060101AFI20230313BHJP
【FI】
H01L21/68 A
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021555247
(86)(22)【出願日】2020-09-25
(86)【国際出願番号】 JP2020036165
(87)【国際公開番号】W WO2022064623
(87)【国際公開日】2022-03-31
【審査請求日】2021-09-13
(73)【特許権者】
【識別番号】501387839
【氏名又は名称】株式会社日立ハイテク
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】内木 大地
(72)【発明者】
【氏名】末光 芳郎
(72)【発明者】
【氏名】沼田 慎一郎
【審査官】杢 哲次
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-213393(JP,A)
【文献】特開2013-080812(JP,A)
【文献】特開平10-189687(JP,A)
【文献】米国特許第08906163(US,B2)
【文献】特開2011-124564(JP,A)
【文献】特開2013-207013(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/677
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
前後方向に配置され内部の搬送室に処理対象のウエハを搬送する搬送ロボットが配置さ
れ隣り合う2つが連結された複数の真空搬送容器と、前記複数の真空搬送容器のうち最も
前方に配置された真空搬送容器の前方でこれと接続され内部に前記ウエハが収納されるロ
ック室と、前記複数の真空搬送容器の各々に接続され真空容器の内部に配置された前記ウ
エハが処理される複数の処理ユニットとを備えた真空処理装置において複数枚の前記ウエ
ハを順次処理する真空処理装置の運転方法であって、
各々の前記複数の処理ユニットは所定の期間が経過した後に前記処理ユニット内部をク
リーニングする工程が実施されるものであって、
複数の枚数の前記ウエハの処理を開始する前に予め複数の前記処理ユニットのうちから
前記ウエハの各々を処理する処理ユニットの複数の集合が設定され、これら複数の前記処
理ユニットの集合のうち含まれる前記処理ユニットの数が大きい順に、かつ含まれる前記
処理ユニットがロック室から遠い順に、前記所定の期間ずつ遅らせて前記ウエハの処理を
開始する真空処理装置の運転方法。
【請求項2】
請求項1に記載の真空処理装置の運転方法であって、
前記処理ユニットにおいて前記クリーニングの工程に要する時間が前記ウエハの処理に
要する時間より大きい真空処理装置の運転方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載の真空処理装置の運転方法であって、
前記複数の処理ユニットの各々は、前記処理ユニットで処理された前記ウエハの枚数が
所定の値に達した後に前記処理ユニットの内部をクリーニングする工程が実施されるもの
である真空処理装置の運転方法。
【請求項4】
請求項3に記載の真空処理装置の運転方法であって、
前記複数の枚数のウエハの各々は前記複数の処理ユニットの各々において処理に要する
時間を含む同じ条件で処理されるものであって、
各前記処理ユニットの集合において前記ウエハが前記処理ユニットに搬入される間隔が
前記処理に要する時間より大きい場合に、前記所定の期間として前記間隔と前記処理に要
する時間との積の値ずつ遅らせて前記ウエハの処理を開始する真空処理装置の運転方法。
【請求項5】
請求項1または2に記載の真空処理装置の運転方法であって、
前記処理ユニットの集合毎に前記ウエハの搬送がボトルネックとなる箇所を特定して算
出した前記所定の期間ずつ遅らせて前記ウエハの処理を開始する真空処理装置の運転方法
【請求項6】
請求項1または2に記載の真空処理装置の運転方法であって、
前記処理ユニットの集合は、前記複数の真空搬送容器うちの1つに接続された前記処理
ユニットから構成された真空処理装置の運転方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内部に処理対象の半導体ウエハ等の基板状の試料が配置されプラズマを用いて処理がされる真空容器を備えた複数の処理ユニットと処理ユニットに連結され前記試料が内部を搬送される搬送ユニットとを備えた真空処理装置に係り、特に、内部に前記試料が搬送される真空搬送室を有する真空搬送容器を備えた搬送ユニットが複数連結された真空処理装置の運転方法に関する。
【背景技術】
【0002】
このような真空処理装置の一例として、各々の真空搬送室内に試料をアームの先端部に載せて搬送する搬送ロボットが配置された真空搬送容器が少なくとも1つの処理ユニットと両者の内部の処理室と搬送室が連通可能に接続されており、このような真空搬送容器を含む搬送ユニット複数が、間に試料を内部に収納可能にされた収納容器を挟んで前後方向に複数接続された、所謂リンク式の真空処理装置が知られている。
【0003】
このようなリンク式の真空処理装置は、複数の処理ユニットで並行して試料を処理することで、単位時間あたりの試料の処理数(スループット)を向上させることができる。一方で、このような真空処理装置では、試料は少なくとも1つの搬送ユニットを介して処理ユニットまで搬送される構成であり、各搬送ユニットによる試料の搬送の時間と処理ユニットでの試料の処理の開始または終了の時間との間で時間の差が大きいと、試料が搬送されるまでの待ち時間が多くなってスループットが低くなってしまう。このため、試料を搬送する目標の箇所となる処理ユニットと搬送する順序とを、スループットが損なわれないように設定するための運転について従来から考えられてきた。
【0004】
このような従来の技術による運転方法の例としては、例えば、特開2013‐98412号公報(特許文献1)が知られている。本従来技術には、複数の搬送ロボット間で、ウエハの受け渡しを行う線形ツールの真空処理装置において、複数ウエハを連続的に処理する際のスループット(単位時間当たりの処理枚数)を向上させる技術が記載されている。特に本従来技術では、複数のウエハの搬送開始前に処理室の数および配置とウエハの処理時間との組合せの条件毎にウエハの搬送を制御する複数の搬送アルゴリズムをシミュレーションして得られた搬送アルゴリズム判定ルールの中から、最大のスループット値が予測される搬送アルゴリズムを選択し、選択された搬送アルゴリズムに基づいてウエハの搬送先を算出することにより、最高スループットの搬送制御を提供するものが記載されている。
【0005】
さらに、別の従来技術としては、特開2014-195006号公報(特許文献2)が知られている。この従来技術は、任意の一枚のウエハが内部に複数枚のウエハを収納可能なカセットから搬出される前に搬送経路上に存在する搬送中のウエハの枚数が所定の値以下であるかを判定する枚数判定工程と、処理される予定の真空搬送容器内に存在するウエハの残り処理時間と搬送経路上に存在する搬送中のウエハの処理時間との合計が所定の値以下であるかを判定する残り処理時間判定工程と、枚数判定工程または残り処理時間判定工程の条件を満たさない場合には、搬送順に沿って任意の一枚のウエハより後のウエハについて枚数判定工程および残り処理時間判定工程とを実施し、最初にこれらの工程の条件を満たしたウエハを任意の一枚のウエハに替えて次に上記カセットから搬出するウエハに改めて定める搬送スキップ工程を備えることで、スループット或いは試料の処理の効率を向上させる技術が記載されている
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2013-98412号公報
【文献】特開2014-195006号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記の従来技術は、次の点について考慮が不十分であったため、問題が生じていた。
【0008】
すなわち、上記のリンク式の真空処理装置では、半導体デバイスを量産するための製造の運転においては、所定の枚数の複数の試料の各々に対して、複数の処理ユニット各々に搬送して、内部の処理室において予め定められた同じ条件で試料の処理が実施される。さらに、各処理ユニットでは、一般的に定期的に保守や点検の作業が実施される。例えば、先の保守や点検後に処理室内で処理された試料の累積の枚数、或いは処理室内で処理が実施された累積の時間が予め定められた値に到達した場合に、保守や点検の作業を実施するための運転、例えば、対象の処理ユニットの処理室内部の部材の表面の付着物を除去するためのガスを供給してプラズマを所定時間形成する、処理室内を試料の処理中より高い真空度まで減圧する等のクリーニングの工程が開始される。
【0009】
このような保守や点検の運転中では、対象となる処理ユニットでの試料の処理は実施されていない、謂わば非処理の運転中であり、試料の処理により半導体デバイスを製造する真空処理装置の稼働率あるいはスループットが低下していることになる。上記従来技術では、各処理室内での試料の処理の工程が終了して試料が取り出された後に、各処理室内にプラズマを形成するクリーニングを実施する場合に稼働率やスループットの低下を抑制するための考慮が不十分であったため、処理の効率が損なわれていた。
【0010】
また、任意の処理ユニットまで搬送ユニットを介して次に処理される試料が搬送されるまでの搬送の時間に対して当該処理ユニットでの試料を処理する処理時間が短くなると、試料の処理が終了するまでに次の未処理の試料の当該処理ユニットへの搬送の準備が終了しておらず、当該準備が終了して未処理の試料の処理ユニットへの搬入が可能となるまで処理後の試料は当該処理室内で保持されて搬出を待機する、所謂待ち(待機)時間が生じてしまう。複数の処理ユニットを備えてこれらの処理ユニットで並行して同等の構成を有した試料を同じ条件で処理する工程を並行して行う真空処理装置では、これら処理ユニットに順次1枚ずつ試料を搬送する場合は、搬送ユニット内の真空搬送ロボットが1つの処理ユニットに係る試料を搬送している間は、他の処理ユニットに係る試料は待機せざるを得ない。このため、適切に試料の搬送の順序を選択しない場合には処理後の試料の処理室での待ち時間は増加してしまう。
【0011】
つまり、半導体デバイスを量産するために試料を処理する製造の工程の時間に対して保守や点検のための処理室内のクリーニングの工程の時間が十分に長い場合、真空処理装置内のロボットは、複数の処理室に試料を搬送する状態といずれの処理室にも試料を搬送しない状態が連続する。すなわち、ロボットの搬送が間に合わず、搬送動作が原因でスループットが低下する状態と、ロボットがほとんど動作しない状態が連続することになる。このため、処理の効率が損なわれてしまう点について、上記従来技術では考慮されていなかった。
【0012】
本発明の目的は、複数の処理室で十分に短い処理と十分に長いクリーニング処理を連続的に実施する際に、複数の処理室の試料の搬送による搬送待ち時間の発生、すなわち、スループットの低下を抑制することで、スループットの高い最適な搬送制御を継続的に実施する真空処理装置の運転方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的は、真空処理装置の運転方法であって、以下に示す構成を有するものにより達成される。
【0014】
すなわち、前後方向に配置され内部の搬送室に処理対象のウエハを搬送する搬送ロボットが配置され隣り合う2つが連結された複数の真空搬送容器と、前記複数の真空搬送容器のうち最も前方に配置された真空搬送容器の前方でこれと接続され内部に前記ウエハが収納されるロック室と、前記複数の真空搬送容器の各々に接続され真空容器の内部に配置された前記ウエハが処理される複数の処理ユニットとを備えた真空処理装置において複数枚の前記ウエハを順次処理する真空処理装置の運転方法であって、各々の前記複数の処理ユニットは所定の期間が経過した後に前記処理室内部をクリーニングする工程が実施されるものであって、前記複数の枚数のウエハの処理を開始する前に予め前記複数の処理ユニットのうちから前記ウエハの各々を処理する処理ユニットの複数の集合が設定され、これら複数の処理ユニットの集合のうち含まれる処理ユニットの数が大きい順に、かつ前記含まれる処理ユニットがロック室から遠い順に、前記所定の期間ずつ遅らせて前記ウエハの処理を開始する真空処理装置の運転方法により達成される。
【発明の効果】
【0015】
処理ユニットの集合とは、同時に処理する処理ユニットの組み合わせである。先行して処理を開始することで、ある処理ユニットの集合ではクリーニングの工程中に、別の処理ユニットの集合では製品用のウエハの処理を実施する状態となる。集合内に含まれる処理室のみに試料を搬送することで、処理室が試料を待つ時間を減少でき、従来技術より早くクリーニングの周期枚数の製品を処理できる。なお、先行して処理を開始しない集合は、ボトルネックとなる搬送動作の動作時間から算出する周期枚数の製品処理時間分待機して処理を開始する処理順を設定する。
【0016】
本発明によれば、容器内部の搬送室内に搬送用のロボットを有する搬送ユニット複数が連結され、真空容器内部の処理室内で試料を処理する少なくとも1つの処理ユニットが各搬送ユニットに接続されたリンク式の真空処理装置において、1つの処理ユニットのクリーニング処理の工程と他の処理ユニットでの試料の処理を並行して効率的に実施でき、真空処理装置の処理の効率あるいはスループットの低下が抑制される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の実施例に係る真空処理装置の全体の構成の概略を示すブロック図である。
図2】本発明の実施例に係る真空処理装置で一枚のウエハを処理するときのウエハ搬送の流れを示すフローチャートである。
図3】本発明の実施例に係る真空処理装置の搬送スケジュール処理部が実施する処理の流れを示すフローチャートである。
図4図3のステップS305に示すウエハの搬送の順序が決定される手順の流れを示すフローチャートである。
図5図4に示すステップS402の処理室Gr案毎に先行処理の可否を判定する動作の流れを示すフローチャートである。
図6A】従来技術におけるウエハの処理の動作の流れを模式的に示すタイムチャートである。
図6B図1に示す実施例に係る真空処理装置におけるウエハの処理の動作の流れを模式的に示すタイムチャートである。
図7A図1に示す実施例に係る真空処理装置において、同時に使用する真空処理室数が4の場合における真空側搬送ロボットと真空処理室とのタイムチャートである。
図7B図1に示す実施例に係る真空処理装置において、同時に使用する真空処理室数が2の場合における真空側搬送ロボットと真空処理室とのタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明は、複数の真空搬送室とこれらに各々接続された複数の真空処理ユニットとを備えた真空処理装置において、ウエハの各真空搬送室や真空処理ユニットとの間での搬送のスケジュールを、高いスループットが達成できるように設定して運転できるようにしたものである。
【0019】
特に、特定の枚数のウエハを、搬送開始前に、各ウエハの搬送先(搬送経路)と搬送経路での搬送の順序との組み合わせを含む搬送のスケジュールを設定して、これに沿ってウエハを搬送して処理する真空処理装置の運転方法に関するものである。
【0020】
また本発明は、処理対象のウエハを搬送する搬送ロボットを内部に備えた真空搬送容器が複数連結され、この連結された真空搬送容器のそれぞれに接続された処理対象のウエハを処理する処理ユニットを複数備えた真空処理装置を用いて複数枚のウエハを順次処理する真空処理装置の運転方法において、真空搬送容器のそれぞれに接続された処理ユニットを複数のグループに分けて、この複数のグループに分けた処理ユニットを異なるタイミングで運転するまたは複数のグループに分けた処理ユニットで異なる処理を同時に行うようにしたものである。
【0021】
ここで、本発明では次の条件を前提としている。
(1)各ウエハは各処理ユニット処理室で同等(同一)の処理条件で処理される。
(2)各処理室は、所定のウエハ処理の累積枚数(累積の処理時間)毎に、内部が各ウエハの処理より長い時間クリーニング処理がされる。
(3)処理ユニットが接続される真空搬送ユニット(真空搬送室)は、前後方向に連結されて、前端の真空搬送ユニットの前方に(ロード)ロック室が接続され、さらにロック室はその前方に大気搬送ブロック(大気搬送室)が接続されている。
【0022】
本発明は、上記したような条件下で、ウエハの搬送スケジュールを設定する場合に、複数の搬送スケジュール(搬送経路と搬送順との組み合わせ)のうちからスループットがより高いものを選択して設定するものである。
【0023】
さらに、上記搬送スケジュールとして、用いられる処理ユニットの数が多い順に、かつ処理ユニットがロック室から遠い順に、ウエハの搬送の開始を所定の時間遅らせて実施するものである。
【0024】
ここで、所定の時間は、先回のクリーニング処理から次が実施されるまでの期間=累積枚数×各ウエハの処理開始時間間隔(ウエハ処理のサイクル時間)である。
【0025】
また、本発明では、予め定められた処理順で複数のウエハを順次カセットのいずれか1つから搬送して複数の真空処理容器のうちの1つに搬送して処理する真空処理装置の運転方法において、真空処理装置は一部の真空処理ユニット(同時に処理する真空処理容器の組み合わせ)のみに対して先行して処理を開始する処理順および上記真空処理容器のセットおよびその処理順を決定するステップを有する。
【0026】
先行して処理を開始することで、ある真空処理ユニットではクリーニングを、別の真空処理ユニットでは製品処理を実施する状態となる。このような状態で、真空処理ユニット内に含まれる処理室のみに試料を搬送することで、処理室が試料を待つ時間を減少でき、従来技術より早くクリーニングの周期枚数の製品を処理できる。なお、先行して処理を開始しないセットは、ボトルネックとなる搬送動作の動作時間から算出する周期枚数の製品処理時間分待機して処理を開始する処理順を設定する。
【0027】
以下に、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。ただし、本発明は以下に示す実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。本発明の思想ないし趣旨から逸脱しない範囲で、その具体的構成を変更し得ることは当業者であれば容易に理解される。
【実施例
【0028】
まず、図1を用いて、本実施例に係る真空処理装置101の構成の概略を説明する。本図に示す実施例は、半導体デバイスを製造するために用いられる半導体ウエハなどの試料を真空容器内部の処理室内で処理を行う線形ツールの真空処理装置である。図1は、本発明の実施例に係る真空処理装置101の全体の構成の概略を模式的に示すブロック図である。
【0029】
図1に示す本発明の実施例に係る真空処理装置101は、大気側ブロック102と真空側ブロック103とその動作を制御する制御部104で構成される。
【0030】
大気側ブロック102は、大気圧下において内部に複数枚のウエハ1052を収納可能なカセット(以降、本実施例ではFOUPと呼ぶ)1051に対して、ウエハ1052の搬出および搬入を実施する部分である。
【0031】
真空側ブロック103は大気圧から所定の真空度まで減圧された圧力下にてウエハ1052の搬送を行い、真空処理室113、114、118、119の内部でウエハ1052を処理する部分である。真空処理室113、114、118、119は、ウエハ1052に対して同一の処理(例えばエッチング処理、アッシング処理、成膜処理など)を同一のプロセス条件のもとに実行する。
【0032】
制御部104は、真空処理装置101の複数の部分と通信可能に接続され、通信可能に接続された真空処理装置101の部分或いは全体の状態を検出して異常の発生の有無を判定したり、ウエハ1052の搬送やウエハ1052の処理に伴う各ステーションの動作の調節を行う部分である。
【0033】
大気側ブロック102は、複数枚のウエハ1052を内部に収納可能なFOUP1051が置かれるロードポート105、大気圧下でのウエハ搬送を行う大気側搬送ロボット107、長方形型の大気搬送容器106、ウエハ1052の向き調節、中心位置検出を行うアライナー108およびウエハ1052の一時的な待避用の場所である待避ステーション109を有して構成される。
【0034】
大気側ブロック102は、大気側搬送ロボット107により、FOUP1051から処理対象のウエハ1052を搬出した後に、アライナー108を経由して、真空側ブロック103に接続しているロードロック室110への搬入を行う。また、真空側ブロック103からロードロック室110に搬送されてきたウエハ1052を搬出した後に、FOUP1051への収納を行う。
【0035】
ロードロック室110は、所定の真空圧下までの減圧および大気圧下までの加圧を行うことが可能で、大気側ブロック102からウエハ1052を搬入した後に減圧を行い、真空側ブロック103と同じ真空状態にすることで真空側ブロック103へのウエハ1052の搬入を行う。逆に、真空側ブロック103からウエハ1052を搬入した後は、加圧を行い、ロードロック室110の内部を大気圧状態にすることで、大気側ブロック102への搬送を行うことができる。
【0036】
真空側ブロック103は、真空容器の内部でウエハ1052が搬送される真空搬送室111,116を有し、これらの内部に配置されウエハ1052の搬送を行う真空側搬送ロボット11,117と、複数の真空搬送室111,116の間に設置される待機スペース115と、ウエハ1052に対して施されるエッチングやアッシング、或いは成膜等の処理を行う処理室を内部に有する真空容器を備えた真空処理室113、114、118、119を有して構成される。真空処理室113、114、118、119は、ウエハ1052に対して同一の処理を同じプロセス条件のもとに実行する。
【0037】
なお、上記複数の真空搬送室111,116、真空処理室113、114、118、119、ロードロック室110、待機スペース115の各々を構成する真空容器は、間に配置された図示していないゲートバルブを介して相互に連結されている。これら図示していないゲートバルブは、連結された両側の空間の連通を、ウエハ1052の搬入および搬出に合わせて開放され、必要に応じて気密に閉塞する。
【0038】
待機スペース115は、真空処理装置101の前後方向に並べられた2つの真空搬送室111,116の真空容器同士の間に挟まれて、内部と大気圧にされた外部の雰囲気との間を気密に封止してこれら真空容器に接続された別の真空容器の内部に配置されたウエハ1052が収納される空間である。
【0039】
待機スペース115とゲートバルブを挟んで隣接する真空搬送室111,116の中央部に配置された真空側搬送ロボット112,117は、真空容器中心部に配置された上下方向の回転軸と、複数の梁状の腕部の両端部が上下方向の軸を有した関節部で当該軸回りに回動可能に接続されたアーム部を有し、アーム部の腕部が関節部の軸周りに回転することによってアームを伸長、収縮することでアームの先端部にウエハ1052を載せて搬送できる。
【0040】
例えば、真空処理装置101の前方の真空側搬送ロボット112が待機スペース115にウエハ1052を搬入した後に、真空処理装置101の後方の真空側搬送ロボット117がウエハ1052を搬出する。これにより、真空搬送室間でウエハ1052を受け渡しできる。この点で、待機スペース115は、複数の真空搬送室の間を搬送されるウエハがその途中で格納されて滞留する中間室である。なお、本例の待機スペース115は、2枚の以上のウエハ1052が内部に収納される室を備えた容器が、上下方向に複数重ねられて、2つの真空搬送室に各々がゲートバルブを介して連通可能に構成されていても良い。
【0041】
制御部104は、真空処理装置101全体の状態を監視しながら、ウエハ1052の搬送およびウエハ1052の処理に伴う各ステーションの動作を制御する。また、制御部104は、ウエハ1052の搬送スケジュールの決定やウエハ1052の搬送の動作を指令する信号を算出する半導体デバイスによるマイクロプロセッサ等の演算部120と、ハードディスクやDVD-ROMドライブ等の各種情報を記憶し格納する記憶部121と、外部と信号を送受信するインターフェース部とを有して構成され、これらが有線又は無線の通信用の経路で接続されている。
【0042】
演算部120は、ロードポート105に設置されたFOUP1051に収納されている複数枚のウエハ1052を搬送する順番を決定する搬送スケジュール処理部122や、決定したウエハ1052の搬送順に従い、搬送処理を制御する、例えば、ウエハ1052の搬送を行うロボットやゲートバルブなどの機器の動作を制御する搬送制御処理部123を有している。
【0043】
記憶部121は、演算処理に必要な情報である、装置状態情報124、処理室情報125、処理指示情報126、処理進捗情報127、ウエハ搬送順情報128、搬送制限枚数情報129および装置THP(スループット)情報130を有している。
【0044】
また、制御部104はネットワーク131を介してホスト132と接続されている。これにより、ホスト132は真空処理装置101に対して、必要に応じて処理を命令することや、状態の監視ができる。
【0045】
演算部120に含まれる各処理部についての説明は以下のとおりである。
搬送スケジュール処理部122では、記憶部121に予め記憶されたソフトウェアに記載されたアルゴリズムに沿って記憶部121に記憶された装置状態情報124、処理室情報125、処理指示情報126、処理進捗情報127。装置THP情報130を、通信手段を介して入手した後に、これらの情報からウエハ搬送順情報128の算出を行う。算出されたウエハ搬送順は発信されて搬送制御処理部123で受信される。
【0046】
搬送制御処理部123は、記憶部121に記憶された、搬送スケジュール処理部122で決定した情報であるウエハ搬送順情報128と、搬送制限枚数情報129に基づいて、真空処理装置101に対するウエハ1052の搬送を行う指令信号を算出することにより、搬送ロボットによるウエハ1052の搬入出や移動、ロードロック室の減圧や加圧、処理モジュールの処理やゲートバルブの開閉など、個々の動作の制御を行う。
【0047】
記憶部121に含まれる、各情報が有している情報は以下のとおりである。
装置状態情報124は、真空処理装置101の複数の部分の動作の状態や圧力値などの情報が含まれている。
【0048】
処理室情報125は、現在の真空処理室の処理室内部の状態、処理の状況を示すデータが格納されている。
【0049】
これらの上記における情報は、真空処理装置101あるいは真空処理室113、114、118、119、真空搬送室111、116内部の真空側搬送ロボット112、117の運転の進行に伴い変化するものであり、所定の時間間隔で周期的に更新され、最新のデータとともに過去のデータを含んでおり、これらが区別されて装置状態情報124または処理室情報125として記憶される。
【0050】
処理指示情報126には、複数個のシーケンスレシピが使用者により、処理前に予め設定されている。シーケンスレシピは、任意のウエハ1052が収納されたFOUP1051から搬出されて何れかの真空処理室PU1、PU2、PU3、PU4に搬送されて処理された後、再度搬送されて元のFOUP1051内の位置に戻されるまでに経由するステーションとその順番を含む経路、目標の真空処理室内部での処理の情報およびクリーニングの処理時間、処理条件を含んで構成される。クリーニングの処理条件とは、例えば、製品ウエハ10枚毎に実施等である。各シーケンスレシピは、処理指示情報126内で、番号または名前により管理および識別される。
【0051】
本実施例においては、真空処理装置101は、ホスト132からの処理の指令信号に従い、ウエハを各真空処理室に搬送した後に、各真空処理室でウエハに対しての処理を実施する。処理を指令する信号には、処理対象の単一もしくは複数のウエハ毎に、処理指示情報126のシーケンスレシピを指定する番号が含まれる。本実施例では、ホスト132からの処理の指示(指令)をJOBと呼び、そのJOBの信号に含まれた情報をJOB情報と呼ぶ。また、ホスト132はJOBの信号を、ネットワーク131を経由して制御部104に送信する。
【0052】
処理進捗情報127は、真空処理装置101において指令として含まれる処理が進行しているJOBに対して、当該JOBでの処理の進捗の状況を示すデータが格納されている。例としてFOUP1051にはウエハ1052が複数枚、例えば25枚収納されており、所定の時間の間隔で情報を取得している場合、任意の時刻に対して、予め与えられたウエハ1052の処理順序の何枚目のウエハ1052がFOUP1051から搬出され、処理されているか、また、対応するウエハ1052の処理指示情報126におけるどのシーケンスを実行中であるかを示す情報が格納されている。
【0053】
ウエハ搬送順情報128は、FOUP1051内に収納された複数枚のウエハ1052各々について搬送の順番を示す情報が格納されている。この情報は各ウエハ1052の搬送順を示す番号、各ウエハ1052が収納されているFOUP1051内のスロットを示す番号、各ウエハ1052が処理される真空処理室113、114、118、119についての番号、そして、各ウエハ1052が搬送可能となるイベントの設定が情報として格納されている。イベントとは、ある処理室での処理の終了や、指定された待機時間の経過などである。真空処理装置101は搬送可能なウエハ1052から、搬送順序に従ってウエハ1052の搬送を開始する。
【0054】
搬送制限枚数情報129は、JOBの情報に含まれる処理の指令が実行中である真空処理装置101において、任意の処理ユニットにおいて真空処理室で処理中であるウエハ1052と搬送中のウエハ1052の枚数が一定数以下になるように制限するための情報である。これは、同時に多数のウエハ1052が搬送中になることによって、真空処理装置101内におけるステーション内にウエハ1052が詰まってしまい、ある一定の時間ウエハ1052の搬送が行えない状態を避けるための情報である。本実施例では、搬送制限枚数情報129を用いてFOUP1051から未搬出のウエハ1052について、その搬出の可否を判定する。
【0055】
なお、ウエハ無しのクリーニング処理がある時、真空処理装置101内におけるステーション内にウエハ1052が詰まっていると、クリーニングを実施する対象の真空処理室内にウエハ1052が存在しない空き状態をつくる必要性から、デッドロック状態になってしまうケースが発生するため、ウエハ無しクリーニング用の搬送制限枚数の条件を備えており、その条件に基づいてFOUP1051から未搬出のウエハ1052について、搬出の可否の判定を行っている。
【0056】
装置THP情報130は、真空処理装置101において、各真空処理室の組み合わせと処理室内でのウエハ1052の処理時間における装置のスループット(THP)情報を予め記録されている。また、装置THP情報130は、真空処理装置101において、各真空処理室の組み合わせと各真空処理室内でのウエハ1052の処理時間における、装置が搬送律速になる基準値を持つ。
【0057】
搬送律速とは、真空処理室113、114、118、119のいずれかでウエハ1052に対して実施される処理の処理時間が十分に短い場合、その真空処理室への次のウエハ1052の搬送が間に合わない状態である。例えば、真空処理室113と114の2つの真空処理室を使用する場合、搬送律速基準値:40sとなる。これらの値は、真空処理装置101の各種機器の動作時間をもとに算出されるものであるので、装置の仕様が分った時点で算出またはシミュレーションできるものである。
【0058】
真空処理装置101の構成は図1に示されるものに限られるものではなく、ロードポート105は5つより少なくても多くてもよい。また真空側ブロック103において、4つの真空処理室113、114、118、119を有する真空処理装置101に限定されるものではなく、4つより少なくても多くてもよい。さらに、真空搬送室111、116に真空処理室が2つ接続する装置に限定されるものではなく、2つより少なくても、多くてもよい。なお、本実施例では、ウエハ1052に対して施されるエッチングやアッシング、成膜等の処理を行う処理室を内部に有する真空処理室113、114、118、119各々を便宜的に、PU1、PU2、PU3、PU4と呼ぶ。
【0059】
ここで、真空処理装置101における搬送動作の一連の流れについて以下に説明する。仮に、処理対象の真空処理室がPU3で、処理対象に対して一枚のウエハ1052に対する真空処理装置101の一連の搬送の動作について、以下、図1を参照しながら図2を用いて順番に列挙して説明を行う。これらの真空処理装置101の搬送の動作は、演算部120における搬送制御処理部123により制御される。
【0060】
まず、ロードポート105に設置された複数枚のウエハ1052を収納することが可能な任意のFOUP1051が設定される(S201)。
【0061】
次に、ホスト132からネットワーク131を経由して、任意のJOBが真空処理装置101またはその制御部104に発信される(S202)。
【0062】
次に、搬送スケジュール処理部122により、ウエハ搬送順情報128が更新される(S203)。
【0063】
次に、ウエハ搬送順情報128および搬送制限枚数情報129に従い、FOUP1051からウエハ1052が大気側搬送ロボット107により搬出される(S204)。
【0064】
次に、大気側搬送ロボット107により搬出されたウエハ1052は、アライナー108へ搬入され、ウエハ1052のアライメントが実施される(S205)。
【0065】
次に、アライメントが終了したウエハ1052は、大気側搬送ロボット107により搬出される(S206)。
【0066】
次に、ロードロック室110内部を大気圧状態まで加圧した後、大気搬送容器106とロードロック室110に連結している図示していないゲートバルブが開き、大気側搬送ロボット107がウエハ1052を搬入する(S207)。その後、ゲートバルブが閉まる。
【0067】
次に、ロードロック室110内部にて大気圧状態から所定の真空度まで減圧された後、ロードロック室110と真空搬送室111に連結している図示していないゲートバルブが開き、真空側搬送ロボット112がロードロック室110内部のウエハ1052を搬出する(S208)。その後、ゲートバルブが閉まる。
【0068】
次に、真空側搬送ロボット112はウエハ1052を保持したまま待機スペース115の方を向くまで旋回した後、待機スペース115にウエハ1052を搬入する(S209)。
【0069】
次に、真空処理装置101後方の真空側搬送ロボット117が待機スペース115からウエハ1052を搬出する(S210)。
【0070】
次に、真空側搬送ロボット117はウエハ1052を保持したままPU3の方を向くまで旋回した後、PU3の図示していないゲートバルブが開き、PU3にウエハ1052を搬入する(S211)。その後、ゲートバルブが閉まる。
【0071】
次に、PU3内部にて、ウエハ1052に対する処理が行われる(S212)。
【0072】
次に、PU3内部での処理終了後、PU3の図示していないゲートバルブが開き、真空側搬送ロボット117がPU3からウエハ1052を搬出する(S213)。その後、ゲートバルブが閉まる。
【0073】
次に、真空側搬送ロボット117はウエハ1052を保持したまま待機スペース115の方を向くまで旋回した後、待機スペース115にウエハ1052を搬入する(S214)。
【0074】
次に、真空処理装置101前方の真空側搬送ロボット112は待機スペース115からウエハ1052を搬出する(S215)。
【0075】
次に、真空側搬送ロボット112はウエハ1052を保持したままロードロック室110の方を向くまで旋回した後、ロードロック室110と真空搬送室111に連結した図示していないゲートバルブが開き、ウエハ1052を搬入する(S216)。その後、ゲートバルブが閉まる。
【0076】
次に、ロードロック室110内部にて大気圧状態まで加圧された後、大気搬送容器106とロードロック室110に連結しているゲートバルブが開き、大気側搬送ロボット107はロードロック室110からウエハ1052を搬出する(S217)。その後、ゲートバルブが閉まる。
【0077】
最後に、大気側搬送ロボット107はウエハ1052を搬出したFOUP1051の元のスロット場所にウエハ1052を収納する(S218)。
【0078】
ここで説明した一連の搬送動作において、対象の真空処理室がPU4の場合、真空側搬送ロボット117が搬入する真空処理室がPU4に変わるだけで、その他の一連の搬送動作は上記と同様である。また、対象の真空処理室がPU1またはPU2の場合は、真空側搬送ロボット112に搬送された時点で、対象の真空処理室PU1またはPU2への搬送を行う搬送動作となり、搬送動作の流れについて大きな変化はない。また、上記搬送動作は一枚のウエハ1052に対するものであるが、本真空処理装置101は、複数のウエハを同時に扱うことができるものである。複数のウエハ1052それぞれに対して上記搬送動作を行う。また、複数のFOUP1052を対象に上記搬送動作を行うことも可能である。
【0079】
次に、S203で更新するウエハ搬送順情報について、図3図4および図5を用いて、演算部120におけるウエハ搬送順情報128の決定方法、すなわち、搬送スケジュール処理部122の流れについて説明する。
【0080】
演算部120は、制御部104が内部に備えた割込みタイマにより、搬送スケジュール処理部122による処理を周期的に実施する。または、演算部120は、例えばホスト132からの指示や真空処理装置101の状態等から、搬送スケジュール処理部122による処理をイベント駆動式に実施する。
【0081】
図3は、図1に示す実施例に係る真空処理装置101の搬送スケジュール処理部122が実施する処理の流れを示すフローチャートである。本図は、搬送スケジュール処理部122の処理の概要であり、フローチャートに基づく動作は以下のとおりである。
【0082】
まず、ステップS301にて、制御部104の演算部120は、ネットワーク131を経由してホスト132から新たに発信されたJOBの有無をインターフェース部または記憶部121を用いて確認し、当該JOBがあることが検出された場合にはこれに含まれたJOB情報を取得する。搬送スケジュール処理部122は、演算部120の一時バッファにJOB情報を保持する。
【0083】
次に、ステップS302にて、演算部120は、演算部120の一時バッファに保持されているJOB情報数の分だけ、ステップS303のJOB実行可能状態確認を繰り返し実施する。具体的には、演算部120は、記憶部121における、装置状態情報124、処理室情報125、処理指示情報126および処理進捗情報127から、真空処理装置101が該当JOB情報に記載された処理に係るウエハの搬送が可能か確認する。
【0084】
なお、本例において、真空処理装置101は、複数のJOBに係る動作を並行して実行可能であればこれらを並行して実施することができる。また、複数のJOBが検出された場合には、例えば、ホスト132から先に要求されたJOBを優先する等、並行して実行する複数のJOBについて所定の評価基準に沿って設定した順序に沿って実施してもよい。
【0085】
演算部120は、繰り返しステップであるS302が終了した後に、新たに実行するJOBの有無を判定して、無いことが判定されると搬送スケジュール処理部122を終了する。
【0086】
新たに実行するJOBが選択されると、演算部120は、ステップS304およびステップS305にて、新たに実行されるJOBに割り当てられたウエハも含めて、ウエハ搬送順情報128を更新する。具体的には、演算部120は、ステップS304にて、JOB情報およびJOBに含まれる処理に係るシーケンスレシピ情報から、各真空処理室113、114、118、119に搬送するウエハの枚数の比率の計算および比率の決定を行う。
【0087】
さらに、演算部120は、ステップS305にて、実行するJOBのJOB情報、シーケンスレシピ情報およびステップS305で算出したウエハ枚数の比率から、各真空処理室113、114、118、119に搬送するウエハ順序を決定した後に、ウエハ搬送順情報128を更新する。
【0088】
図4を用いて、図3のステップS305、すなわち、ウエハ1052の搬送順序を決定する手順について、詳細に説明する。
【0089】
図4は、図3のステップS305に示すウエハ1052の搬送の順序が決定される手順の流れを示すフローチャートである。真空処理装置101におけるウエハ1052の搬送順には二通りあり、本実施例の特徴である一部の真空処理室を先行して処理する処理順序、または、従来技術である全ての真空処理室で同時に処理する処理順序である。
【0090】
また、上記二通りの処理順序内で、ステップS304で算出したウエハの枚数の比率情報を用いて、各ウエハ1052が実際にFOUP1051から搬送される順序を決定する。ウエハ1052の搬送順は、ステップS404またはステップS405にて決定される。図4のフローチャートに基づく動作は以下のとおりである。
【0091】
まず、ステップS401にて、演算部120は、実行するJOBの信号に含まれるJOB情報およびシーケンスレシピ情報から、真空処理室のグループ(以下、真空処理室Grと記載する)の案を一つ以上作成する。ここで、真空処理室Grとは単一もしくは複数の真空処理室のセットで構成される。真空処理室のセットとは、単体もしくは複数個の同時に処理される真空処理室の組み合わせであり、例えば、(PU1)、(PU1とPU2)等である。
【0092】
真空処理室Grは、実行するJOBが使用する真空処理室を過不足無く持つ。例えば、PU1、PU2、PU3およびPU4を用いるJOBであれば、{(PU1とPU2)、(PU3とPU4)}等である。本実施例では、真空処理室のメンテナンス性を考慮して、真空処理室のセットは、同じ真空側搬送ロボットがウエハ1052を搬送できる真空処理室で構成する。
【0093】
次に、ステップS402にて、演算部120は、ステップS401で作成した真空処理室Gr案毎に、一部の真空処理室のセットを先行して処理が可能かを判定する。
【0094】
すべての真空処理室Gr案を判定後、ステップS403にて、先行して処理が可能な上記Gr案が一つ以上存在するかを確認する。先行して処理が可能な上記Gr案が一つでも存在する場合(ステップS403でYesの場合)は、ステップS404にて、真空処理室Grを確定する。先行して処理が可能な上記Gr案が一つも存在しない場合(ステップS403でNoの場合)は、ステップS405にて、従来技術を用いた同時にすべての真空処理室で処理を開始するような処理順序を作成する。
【0095】
ステップS403において、複数の上記Gr案が、一部の真空処理室を先行して処理が可能と判定された場合(ステップS403でYesの場合)には、ステップS404にて各々を比較することで、いずれかのGr案に確定する。本実施例では、できる限り多くの真空処理室セットに対して、真空処理室の待機時間が短くなるように、最も真空処理室セットの数が多いことを条件とする。
【0096】
最後に、ステップS404において、一部の真空処理室を先行して処理するように処理順序を決定した後に、ウエハ搬送順情報128を更新する。具体的には、含まれる処理室が最も多い処理セットを、次にロードロック室110から遠い処理室を含む処理室セットから順に、ウエハ1052が搬送開始となるイベントに、待機時間(n-1)×Trを設定する。ここで、nは1から始まる処理セットの開始順である。Trは、後述する設定されたクリーニングの枚数周期分の製品ウエハを処理する時間を表す。ここで、ウエハ1052が搬送開始となるイベントとは、例えば、ある処理室での処理の終了や、指定された待機時間が経過などである。
【0097】
なお、本実施例では、ロードロック室110から遠い処理室とは、ロードロック室110から見てより奥の真空側搬送ロボットに連結された処理室を指す。また、本実施例では、JOBの開始時にはウエハ1052を用いないクリーニング処理を実施する。ここで、各処理室における処理開始とは、上記クリーニング処理の開始である。
【0098】
JOBの開始時にクリーニングを実施しない、もしくは、ウエハ1052を用いるクリーニング処理を実施する場合は、各処理室における処理開始とはその処理室に搬送される最初のウエハ1052のFOUP1051からの搬出である。
【0099】
図5を用いて、図4のステップS402、すなわち、一部の真空処理室セットを先行して処理することの可否を判定する手順を説明する。図5は、図4に示すステップS402の処理室Gr案毎に先行処理の可否を判定する動作の流れを示すフローチャートである。図5のフローチャートに基づく動作は以下のとおりである。
【0100】
まず、ステップS501にて、演算部120は、真空処理室Gr案に含まれる各真空処理室セットにおける処理室へのウエハ搬入の時間間隔(図7AのTbw707又は図7BのTbw717に相当)を求める。Tbw707又はTbw717は、真空処理装置のボトルネックとなる部位から算出する、または、予め装置THP情報130に記録された装置のTHP情報をもとに算出する。
【0101】
次に、ステップS502において、すべての処理室セットを単独に実行したときに搬送律速になるかを確認する。具体的には、各処理室セットの処理室へのウエハ搬入の時間間隔Tbw707又はTbw717のうち、最小のTbw707又はTbw717が、JOBに設定された製品処理時間(Tp)より大きいかを判定する。小さければ(S502でNoの場合)、先行処理は不可能と判定する(S505)。大きければ(S502でYesの場合)、ステップS503に進んで、設定されたクリーニングの枚数周期分の製品ウエハを処理する時間Trを、枚数周期×(Tbw707又はTbw717)で求め、先行処理可能と判定する(S504)。
【0102】
次に図6A図6Bを用いて、本発明の効果を説明する。図6Aの601は、従来技術における時間の経過に伴うウエハの処理の動作の流れを模式的に示すタイムチャートである。図6Bの602は、図1に示す本実施例に係る真空処理装置101における時間の経過に伴うウエハの処理の動作の流れを模式的に示すタイムチャートである。
【0103】
図6A図6Bにおいて、603は真空処理室でのクリーニングを行う時間、604は処理室で製品を処理する時間、6041は従来技術において真空処理室が次のウエハの搬送完了を待つアイドリング時間、6042は本実施例において真空処理室が次のウエハの搬送完了を待つアイドリング時間を示し、それぞれの時間に対応して領域の横方向(時間軸方向)の幅を変えて示したチャートで両者が比較されている。従来技術、本実施例の何れもPU1、PU2、PU3、PU4を使用する。
【0104】
図6Bの本実施例に係るタイムチャート602においては、本実施例のステップS502にて、先行処理可能と判断され、ステップS403にて、PU3,PU4を先行して処理するように処理順序が決定されている場合を示している。
【0105】
図6BのTwait605は、PU1およびPU2の真空処理室セットが処理を待機している時間である。各真空処理室でのクリーニング603は、製品処理の開始前および製品処理を5枚実施する毎に実施されるウエハを使用しないクリーニング処理であり、処理時間は同一である。
【0106】
各真空処理室での製品処理604は、一枚のウエハの製品処理であり、従来技術におけるタイムチャート601と本実施例に係るタイムチャート602において、処理時間は同一である。ある製品処理604と次の製品処理604との間には、真空処理室が次のウエハの搬送完了を待つ時間すなわち、アイドル時間6041または6042が発生する。図6Aのタイムチャート601におけるアイドル時間6041と、図6Bのタイムチャート602におけるアイドル時間6042とを比較すると、図6Bのアイドル時間6042のほうが短い。すなわち、スループットが高いことを示している。
【0107】
次に、図7A及び図7Bを用いて、真空処理装置101が同時に使用する真空処理室数の違い、すなわち、図6Aの601および図6B602における、各真空処理室でのアイドル時間6041及び6042について説明する。図7A及び図7Bは、真空処理装置101において、同時に使用する真空処理室数の違いによる真空側搬送ロボット112と真空処理室113の、それぞれのタイムチャートの比較である。ここでは、真空処理装置のボトルネックとなる部位が真空側搬送ロボット112とする。
【0108】
図7Aの701を用いて、真空処理室113、114、118および119の四つの真空処理室にウエハを搬送する場合を、同様に、図7Bの702を用いて真空処理室113と114の二つの真空処理室にウエハを搬送する場合を考える。
【0109】
図7AのWm703及び図7BのWm713は、真空側搬送ロボット112が、自処理室、すなわち、真空処理室113にウエハを搬送(搬入:S210とS211に相当)している時間である。次に、図7AのWo704及び図7BのWo714は、真空側搬送ロボット112が、自処理室以外にウエハを搬送(搬入:S210とS211に相当)している時間である。自処理室以外とは、図7Aの701においては、真空処理室114、または、待機スペース115である。また、図7Bの702においては、真空処理室114である。
【0110】
図7AのTp705及び図7BのTp715は、真空処理室113が、製品ウエハを処理する時間(S212に相当)である。図7AのTp705と図7BのTp715において、全てのTpの時間は同一である。
【0111】
図7AのTw706及び図7BのTw716は、真空処理室113が、製品ウエハの処理を終えてから、次の製品ウエハの搬送が完了されるまでのアイドル時間である。
【0112】
ここで、図7Bの702におけるTw716の時間は、図7Aの701におけるTw706の時間よりも短い。図7Aの701においては、真空側搬送ロボット112が真空処理室113にウエハを搬送するまでに、三枚の別のウエハを搬送している時間が存在する。一方で、図7Bの702においては、真空側搬送ロボット112が真空処理室113にウエハを搬送するまでに、一枚の別のウエハを搬送している時間のみが存在する。すなわち、真空処理装置101における、同時に使用する真空処理室の数が減ることにより、Tw716も短くなる。
【0113】
以上の実施例によれば、容器内部の搬送室内に搬送用のロボットを有する搬送ユニット複数が連結され、真空容器内部の処理室内で試料を処理する少なくとも1つの処理ユニットが各搬送ユニットに接続されたリンク式の真空処理装置において、先行して処理を開始することで、ある処理ユニットの集合ではクリーニングの工程中に、別の処理ユニットの集合では製品用のウエハの処理を実施する状態となる。集合内に含まれる処理室のみに試料を搬送することで、処理室が試料を待つ時間を減少でき、従来技術より早くクリーニングの周期枚数の製品を処理できる。なお、先行して処理を開始しない集合は、ボトルネックとなる搬送動作の動作時間から算出する周期枚数の製品処理時間分待機して処理を開始する処理順を設定する。
【0114】
このことにより、真空処理装置のクリーニングの工程の時間に対して処理ユニットでのウエハの処理に要する時間が十分に長い場合で、一纏まりの枚数のウエハ、例えば1つのロットのウエハを連続的に処理するような製品を量産する真空処理装置の運転において、予め設定されるロット中の各ウエハの搬送及び処理の順序が、真空処理装置の1つの処理ユニットがクリーニングの工程中であって他の処理ユニットにおいて製品用のウエハを処理する工程が実施される状態においてもウエハの搬送の待ち時間が低減されスループットの低下が抑制される。
【0115】
このように上記実施例によれば、1つの処理ユニットのクリーニング処理の工程と他の処理ユニットでの試料の処理を並行して効率的に実施でき、真空処理装置の処理の効率あるいはスループットの低下が抑制される。
【0116】
以上、本発明者によってなされた発明を実施例に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施例に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることは言うまでもない。例えば、上記した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【符号の説明】
【0117】
101・・・真空処理装置
102・・・大気側ブロック
103・・・真空側ブロック
104・・・制御部
105・・・ロードポート
106・・・大気搬送容器
107・・・大気側搬送ロボット
108・・・アライナー
109・・・待避ステーション
110・・・ロードロック室
111、116・・・真空搬送室
112、117・・・真空側搬送ロボット
113、114、118、119・・・真空処理室
115・・・待機スペース
120・・・演算部
121・・・記憶部
122・・・搬送スケジュール処理部
123・・・搬送制御処理部
124・・・装置状態情報
125・・・処理室情報
126・・・処理指示情報
127・・・処理進捗情報
128・・・ウエハ搬送順情報
129・・・搬送制限枚数情報
130・・・装置THP情報
131・・・ネットワーク
132・・・ホスト。
図1
図2
図3
図4
図5
図6A
図6B
図7A
図7B