(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-10
(45)【発行日】2023-03-20
(54)【発明の名称】植物性ソース
(51)【国際特許分類】
A23L 23/00 20160101AFI20230313BHJP
【FI】
A23L23/00
(21)【出願番号】P 2022188578
(22)【出願日】2022-11-25
【審査請求日】2022-11-25
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000001421
【氏名又は名称】キユーピー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100152423
【氏名又は名称】小島 一真
(72)【発明者】
【氏名】三吉 大地
(72)【発明者】
【氏名】牧野 栄之
【審査官】山村 周平
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-4684(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2021ー0085192(KR,A)
【文献】韓国登録特許第10-2133648(KR,B1)
【文献】韓国登録特許第10-1608460(KR,B1)
【文献】Effects of Cooking Method on the Antioxidant Activity and Inhibition of Lipid Peroxidation of the Javanese Salad “Pecel” Vegetables and Its Peanut Sauce Dressing,International Journal of Food Science,2021年02月18日,pp. 1-9,<DOI: 10.1155/2021/8814606>
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS/FSTA/AGRICOLA(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
Mintel GNPD
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
植物性油脂、植物性具材、及び糖アルコールを含有する、少なくとも一部に乳化相を有する植物性ソースであって、
前記植物性具材が、少なくとも、豆及びニンニクを含有し、
前記植物性油脂の含有量が、前記植物性ソースの全量に対して10質量%以上35質量%以下であり、
前記豆の含有量が、乾燥重量換算で前記植物性ソースの全量に対して1.0質量%以上であり、
前記ニンニクの含有量の前記豆の含有量(乾燥重量換算)に対する比が、0.5以上10以下であり、
前記糖アルコールの含有量の前記植物性油脂の含有量に対する比が、0.05以上1.0以下であり、
前記植物性ソースを目開き500μmの篩にかけて粗大固形分を除き、通過した画分をソース部とし、ソース部を8000rpmで10分間遠心分離を行って得られた沈殿部を微小固形部分とした場合、前記微小固形分の含有量が、前記ソース部の全量に対して20.0質量%以上60.0質量%以下であることを特徴とする、
植物性ソース。
【請求項2】
前記植物性具材が、タマネギをさらに含有することを特徴とする、
請求項1に記載の植物性ソース。
【請求項3】
前記糖アルコールが、還元水飴であることを特徴とする、
請求項1に記載の植物性ソース。
【請求項4】
前記植物性ソース中の乳化剤の含有量が、前記植物性ソースの全量に対して0.1質量%未満であることを特徴とする、
請求項1に記載の植物性ソース。
【請求項5】
前記植物性ソースが、冷凍用であることを特徴とする、
請求項1~4のいずれか一項に記載の植物性ソース。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、植物性ソースに関し、詳細には、特定の植物性具材を含有する植物性ソースに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ソースには、動物性油脂や動物性具材等の動物性素材を配合することで、コクを付与してきた。一方、近年では、動物性油脂の摂取の抑制の観点や低カロリー化の観点等から動物性素材を配合せずに、植物性油脂や植物性具材等の植物性素材を配合した植物性ソースが望まれている。
【0003】
しかし、植物性具材は、動物性具材に比べて、ソースにコクを付与することが困難であった。例えば、ソースにコクを付与するために、植物性油脂の配合量を増やした場合、保存中にソースが分離する恐れがあった。特に冷凍ソースの場合は、解凍時に分離しないように、植物性油脂の配合量をあまり多くすることができない。そこで、植物性ソースに配合する植物性具材の大きさや形状を調節することで、植物性ソースの味を調節することが検討されてきた。例えば、具材を含有するソースと比較して遜色のない風味及び食感を有するソースとして、目開き11200μmの篩をパスし、目開き2000μmの篩にオンする大きさを有し、且つ1.0×104N/m2~1.0×107N/m2のかたさを有する植物性原料の粒状物(第一粒状物)が、5質量%~70質量%含まれている植物性ソースが提案されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1に記載される植物性ソースは、具材の大きさだけでなくかたさを調整する必要があるため、製造管理が煩雑となり、また、自然なコクが得られず、味のバランスやフレーバーリリースが悪くなるという問題を知見した。
【0006】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、保存安定性、コク、味のバランス、及びフレーバーリリースに優れた植物性ソース植物性ソースを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者等は、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、驚くべきことに、植物性油脂、植物性具材、及び糖アルコールを含有する、少なくとも一部に乳化相を有する植物性ソースにおいて、植物性具材として少なくとも豆及びニンニクを配合し、各成分の含有量を調節することによって、上記課題を解決できることを知見した。本発明者等は、当該知見に基づいて、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明によれば、以下の発明が提供される。
[1] 植物性油脂、植物性具材、及び糖アルコールを含有する、少なくとも一部に乳化相を有する植物性ソースであって、
前記植物性具材が、少なくとも、豆及びニンニクを含有し、
前記植物性油脂の含有量が、前記植物性ソースの全量に対して10質量%以上35質量%以下であり、
前記豆の含有量が、乾燥重量換算で前記植物性ソースの全量に対して1.0質量%以上であり、
前記ニンニクの含有量の前記豆の含有量(乾燥重量換算)に対する比が、0.5以上10以下であり、
前記糖アルコールの含有量の前記植物性油脂の含有量に対する比が、0.05以上1.0以下であり、
前記植物性ソースを目開き500μmの篩にかけて粗大固形分を除き、通過した画分をソース部とし、ソース部を8000rpmで10分間遠心分離を行って得られた沈殿部を微小固形部分とした場合、前記微小固形分の含有量が、前記ソース部の全量に対して20.0質量%以上60.0質量%以下であることを特徴とする、
植物性ソース。
[2] 前記植物性具材が、タマネギをさらに含有することを特徴とする、
[1]~[3]のいずれかに記載の植物性ソース。
[3] 前記糖アルコールが、還元水飴であることを特徴とする、
[1]または[2]に記載の植物性ソース。
[4] 前記植物性ソース中の乳化剤の含有量が、前記植物性ソースの全量に対して0.1質量%未満であることを特徴とする、
[1]~[3]のいずれかに記載の植物性ソース。
[5] 前記植物性ソースが、冷凍用であることを特徴とする、
[1]~[4]のいずれかに記載の植物性ソース。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、保存安定性、コク、味のバランス、及びフレーバーリリースに優れた植物性ソースを提供することができる。このような植物性ソースは消費者の食欲を惹起することができ、植物性ソースのさらなる市場拡大が期待できる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
<植物性ソース>
本発明の植物性ソースは、植物性油脂、植物性具材、及び糖アルコールを含有するものであり、水、増粘剤、及び他の原料等をさらに含んでもよい。本発明の植物性ソースは、保存安定性に優れ、油脂が分離しづらく、冷凍用として好適である。
【0011】
植物性ソースは、少なくとも一部に乳化相を有する。すなわち、全部が乳化状態であってもよいし、油相の一部が上部にわずかに浮いている状態であってもよいし、乳化状態の部分の上に油相が積層されている状態であってもよい。ここで、乳化状態とは、水相に油相が油滴状に分散した(水中油滴型(O/W型))状態を指す。
【0012】
植物性ソースとしては、特に限定されず、従来公知のソースに用いることができ、例えば、カルボナーラソースやジェノベーゼソース等のパスタソース、チーズソース等のバーガーソース、スープが挙げられる。これらの中でも、カルボナーラソースやジェノベーゼソース等のパスタソースが好適である。
【0013】
(植物性油脂)
植物性ソースに用いる植物性油脂は、特に限定されず従来公知の食品用の植物性油脂を用いることができる。植物性油脂としては、例えば、菜種油、大豆油、パーム油、綿実油、コーン油、ひまわり油、サフラワー油、胡麻油、オリーブ油、亜麻仁油、米油、椿油、荏胡麻油、グレープシードオイル、ピーナッツオイル、アーモンドオイル、アボカドオイル等が挙げられる。これらの中でも、菜種油、大豆油、コーン油、パーム油、又はこれらの混合油を用いることが好ましい。
【0014】
植物性油脂の含有量は、植物性ソースの全量に対して、10質量%以上35質量%以下であり、下限値は好ましくは12質量%以上であり、より好ましくは15質量%以上であり、さらに好ましくは20質量%以上であり、また、上限値は好ましくは33質量%以下であり、より好ましくは31質量%以下であり、さらに好ましくは30質量%以下である。植物性油脂の含有量が上記範囲内であれば、植物性ソースの乳化状態を維持して保存安定性を向上し、また、ソースのコク、味のバランス、及びフレーバーリリースを向上することができる。
【0015】
(植物性具材)
植物性ソースは、植物性具材として少なくとも豆及びニンニクを含有する。豆の種類は特に限定されないが、例えば、ひよこ豆、青えんどう豆、白いんげん豆、レッドキドニー、レンズ豆及び大豆等が挙げられる。
【0016】
豆の含有量は、乾燥重量換算で植物性ソースの全量に対して1.0質量%以上であり、好ましくは1.5質量%以上であり、より好ましくは2.0質量%以上であり、また、好ましくは10質量%以下であり、より好ましくは9.0質量%以下であり、さらに好ましくは8.0質量%以下である。さらに、ニンニクの含有量の豆の含有量(乾燥重量換算)に対する比は、0.5以上10以下であり、下限値は好ましくは1.0以上であり、より好ましくは2.0以上であり、さらに好ましくは3.0以上であり、また、上限値は好ましくは9.0以下であり、より好ましくは8.0以下であり、さらに好ましくは7.0以下である。豆及びニンニクの含有量を上記範囲内に調節することで、ソースのコク、味のバランス、及びフレーバーリリースを向上することができる。
【0017】
ニンニクの含有量は、植物性ソースの全量に対して、例えば、3質量%以上25質量%以下であり、下限値は好ましくは5質量%以上であり、より好ましくは7質量%以上であり、さらに好ましくは9質量%以上であり、また、上限値は好ましくは23質量%以下であり、より好ましくは20質量%以下であり、さらに好ましくは18質量%以下である。ニンニクの含有量が上記範囲内であれば、植物性ソースの乳化状態を維持して保存安定性を向上し、また、ソースのコク、味のバランス、及びフレーバーリリースを向上することができる。
【0018】
植物性ソースには、本発明の効果を損なわない範囲で、豆およびニンニク以外の他の植物性具材をさらに配合してもよい。他の植物性具材としては、タマネギ、ニンジン、ネギ、ダイコン、ショウガ、ミョウガ、クレソン、パセリ、セロリ、シソ、リーキ、ミツバ、バジル、レモングラス、フェンネル、ワサビ、ごま及びマスタード等が挙げられる。これらの中でもタマネギを用いることが好ましい。これらの野菜は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。
【0019】
植物性具材の形状や大きさは特に限定されず、下記のソース部中の微小固形分の含有量の条件を満たすものであればよい。植物性具材は、例えば、常法により石臼、コロイドミル、コミットロール、フードカッター、マイルダー、及びロール粉砕器等を用いて処理した粉砕物やピューレであってもよい。
【0020】
植物性ソースの微小固形分の含有量は、植物性ソースのソース部の全量に対して、20.0質量%以上60.0質量%以下であり、下限値は好ましくは22.0質量%以上であり、より好ましくは25.0質量%以上であり、さらに好ましくは27.0質量%以上であり、また、上限値は好ましくは55.0質量%以下であり、より好ましくは50.0質量%以下であり、さらに好ましくは45.0質量%以下である。ソース部中の微小固形分の含有量が上記範囲内であれば、植物性ソースの乳化状態を維持して保存安定性を向上し、また、ソースのコク、味のバランス、及びフレーバーリリースを向上することができる。
なお、本発明において、ソース部中の微小固形分の含有量とは、以下の方法により測定した値である。
まず、植物性ソースを、目開き500μmの篩にかけて粗大固形分を除き、通過した画分をソース部とする。続いて、ソース部から一部を取り、その重量を測定する。取り出したソース部を8000rpmで10分間遠心分離を行って、上清と沈殿部に分離させ、沈殿部を得る。沈殿部を微小固形部分とし、微小固形分の質量を測定する。ソース部中の微小固形分の質量の割合(質量%)を算出する。本発明においては、ソース部中の微小固形分の含有量は、500μm未満の大きさの植物性具材ペーストの配合量を調整したり、製造過程において植物性具材の粉砕条件を調整したりすることにより、適宜、調節することができる。
【0021】
(糖アルコール)
植物性ソースに用いる糖アルコールとしては、特に限定されず、従来公知の食品用の糖アルコールを用いることができる。糖アルコールとしては、例えば、還元水飴、ソルビトール、キシリトール、エリスリトール、マンニトール、マルチトール、ラクチトール、及び還元パラチノース等が挙げられる。これらの中でも還元水飴が好ましい。これらの糖アルコールは、1種単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。
【0022】
糖アルコールの含有量の植物性油脂の含有量に対する比(糖アルコール/植物性油脂)は、0.05以上1.0以下であり、下限値は好ましくは0.10以上であり、より好ましくは0.15以上であり、さらに好ましくは0.20以上であり、また、上限値は好ましく0.80以下であり、より好ましくは0.60以下であり、さらに好ましくは0.40以下である。糖アルコールの含有量の植物性油脂の含有量に対する比が上記範囲内であれば、植物性ソースの乳化状態を維持して保存安定性を向上することができる。
【0023】
(増粘剤)
植物性ソースには、乳化状態を維持し易くするために増粘剤をさらに配合してもよい。増粘剤としては、ガム類及び/又は加工澱粉を用いることができる。ガム類としては、例えば、キサンタンガム、コンニャクガム、グアーガム、タマリンドシードガム、ローカストビーンガム、ジェランガム、及びアラビアガム等が上げられる。加工澱粉としては、例えば、アセチル化アジピン酸架橋澱粉、アセチル化リン酸架橋澱粉、アセチル化酸化澱粉、オクテニルコハク酸澱粉ナトリウム、酢酸澱粉、酸化澱粉、ヒドロキシプロピル澱粉、ヒドロキシプロピル化リン酸架橋澱粉、リン酸モノエステル化リン酸架橋澱粉、リン酸架橋澱粉、及びリン酸化澱粉等が挙げられる。これらの増粘剤は1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0024】
増粘剤の含有量は、植物性ソースの全量に対して、例えば、0.01質量%以上1.0質量%以下であり、下限値は好ましくは0.02質量%以上であり、より好ましくは0.03質量%以上であり、さらに好ましくは0.04質量%以上であり、また、上限値は好ましくは0.8質量%以下であり、より好ましくは0.5質量%以下であり、さらに好ましくは0.2質量%以下である。増粘剤の含有量が上記範囲内であれば、植物性ソースの乳化状態を維持して保存安定性を向上し、また、ソースのコク、味のバランス、及びフレーバーリリースを向上することができる。
【0025】
(乳化剤)
本発明の植物性ソースは、乳化剤特有の苦みを生じさせないため、乳化剤を配合しないことが好ましい。例えば、植物性ソース中の乳化剤の含有量は、好ましくは0.1質量%未満であり、より好ましくは0.01質量%未満であり、さらに好ましくは0.001質量%未満であり、植物性ソースは乳化剤を実質的に含有しないことが特に好ましい。乳化剤としては特に限定されず、従来公知の乳化剤であり、例えば、卵黄、レシチン、リゾレシチン、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル等が挙げられる。
【0026】
(他の原料)
植物性ソースは、上述した原料以外に、本発明の効果を損なわない範囲で液状調味料に通常用いられている各種原料を適宜選択し含有させることができる。例えば、醤油、みりん、食塩、胡麻、グルタミン酸ナトリウム、ブイヨン等の調味料、ぶどう糖、果糖、蔗糖、麦芽糖、オリゴ糖、トレハロース等の糖類、からし粉、胡椒等の香辛料、アスコルビン酸、ビタミンE等の酸化防止剤、静菌剤等が挙げられる。
【0027】
<植物性ソースの製造方法>
本発明の植物性ソースの製造方法の一例について説明する。例えば、まず、ニンニク、豆類、及び清水等の水相原料を投入した後で加熱する。その後、糖アルコール、増粘剤、及び調味料を追加で投入し、均一に混合することにより、水相を調製する。続いて、調製した水相をミキサー等で撹拌しながら、植物性油脂等の油相原料を注加し、乳化処理及びペースト化処理を行って、水相中に油相を乳化分散させた植物性ソースを得ることができる。
【0028】
本発明の植物性ソースの製造には、通常のソースの製造に使われる装置を用いることができる。このような装置としては、例えば、一般的な撹拌機、スティックミキサー、スタンドミキサー、ホモミキサー等が挙げられる。撹拌機の撹拌羽形状としては、例えばプロペラ翼、タービン翼、パドル翼、アンカー翼等が挙げられる。
【実施例】
【0029】
以下に、実施例と比較例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は以下の実施例の内容に限定して解釈されるものではない。
【0030】
<植物性ソース1(カルボナーラ風ソース)の製造例>
[実施例1]
表1に記載の配合割合に準じ、植物性ソースを製造した。具体的には、撹拌タンクに、ニンニク、タマネギ、ひよこ豆(乾物)、還元水飴、キサンタンガム、調味料及び清水を投入し、100℃で20分間加熱する。その後、還元水飴、キサンタンガム、及び調味料を追加で投入し、均一に混合することにより水相を調製した。続いて、調整した水相に、油相原料である植物性油脂(大豆油)を注加し、ミキサー(株式会社エフ・エム・アイ社製、フードブレンダーCB-15T)により乳化処理及びペースト化処理(中速、3分間)を行って、乳化状の植物性ソースを製造した。
【0031】
[実施例2]
植物性油脂の含有量を35質量%に変更し、還元水飴の含有量を2質量%に変更した以外は、実施例1と同様にして乳化状の植物性ソースを製造した。
【0032】
[実施例3]
植物性油脂の含有量を10質量%に変更し、還元水飴の含有量を10質量%に変更した以外は、実施例1と同様にして乳化状の植物性ソースを製造した。
【0033】
[実施例4]
にんにくの含有量を5質量%に変更し、ひよこ豆(乾物)の含有量を8.0質量%に変更した以外は、実施例1と同様にして乳化状の植物性ソースを製造した。
【0034】
[実施例5]
ひよこ豆(乾物)の含有量を1.5質量%に変更した以外は、実施例1と同様にして乳化状の植物性ソースを製造した。
【0035】
[実施例6]
にんにくの含有量を20質量%に変更し、ひよこ豆(乾物)の含有量を5.0質量%に変更した以外は、実施例1と同様にして乳化状の植物性ソースを製造した。
【0036】
[実施例7]
ミキサーでのペースト化条件を低速、1分間に変更して実施例1よりも植物性具材を粗く砕いた以外は、実施例1と同様にして乳化状の植物性ソースを製造した。
【0037】
[実施例8]
還元水飴の代わりにソルビトールを7質量%配合した以外は、実施例1と同様にして乳化状の植物性ソースを製造した。
【0038】
[比較例1]
植物性油脂の含有量を40質量%に変更し、還元水飴の含有量を1質量%に変更した以外は、実施例1と同様にして乳化状の植物性ソースを製造した。
【0039】
[比較例2]
植物性油脂の含有量を5質量%に変更した以外は、実施例1と同様にして乳化状の植物性ソースを製造した。
【0040】
[比較例3]
にんにくの含有量を20質量%に変更し、ひよこ豆(乾物)の含有量を1.5質量%に変更した以外は、実施例1と同様にして乳化状の植物性ソースを製造した。
【0041】
[比較例4]
にんにくの含有量を2質量%に変更し、ひよこ豆(乾物)の含有量を5.0質量%に変更した以外は、実施例1と同様にして乳化状の植物性ソースを製造した。
【0042】
[比較例5]
ミキサーでの乳化処理及びペースト化処理の条件を低速、10秒間に変更して実施例7よりもさらに野菜を粗く砕いた以外は、実施例1と同様にして乳化状の植物性ソースを製造した。
【0043】
<植物性ソース1の評価>
(具材量の測定)
上記で得られた各植物性ソースを、目開き500μmの篩にかけて500μm以上の粗大固形分を除き、篩を通過した画分(以下、ソース部という)を得た。ソース部から30gを取り、8000rpmで10分間遠心分離を行い、上清と沈殿に分離させ、沈殿部(以下、微小固形分という)の重量を測定した。測定結果より、ソース部中の微小固形分の含有量(%)を算出した。測定結果を表1に示した。
【0044】
(保存安定性評価)
上記で得られた各植物性ソースについて、直射日光が当たらない場所、25℃、1時間の条件で静置し、下記の基準で保存安定性を評価した。評価結果を表1に示した。
[保存安定性の評価基準]
◎:油脂が分離せず、均一な状態であった。
○:油脂がやや分離していたが、問題の無い範囲であった。
×:油脂の分離が顕著にみられ、好ましくない外観であった。
【0045】
(官能評価)
上記で得られた各植物性ソースについて、複数の訓練されたパネルが、試食よる官能評価を行い、コク、味のバランス、及びフレーバーリリースを下記の基準で評価した。評価結果を表1に示した。
[コクの評価基準]
◎:コクが十分に感じられた。
○:コクがやや不足していたが、問題のない範囲であった。
×:コクが不足しており、物足りなさを感じた。
[味のバランスの評価基準]
◎:素材の味が調和しており、極めてバランスのとれた自然な味わいであった。
○:素材の味がややばらばらに感じられたが、バランスのとれた自然な味わいであった。
×:素材の味がばらばらに感じられ、バランスが取れておらず不自然な味わいであった。
[フレーバーリリースの評価基準]
◎:フレーバーリリースが非常に良かった。
○:フレーバーリリースがやや悪いものの、問題の無い範囲であった。
×:フレーバーリリースが悪かった。
【0046】
上記の4項目の評価結果より、下記の基準で総合評価を行った。評価結果を表1に示した。
[総合評価の評価基準]
◎:4項目の全てが◎であった。
○:4項目の内、2つまたは3つが◎であり、それら以外が○であった。
×:4項目の内、1つ以上が×があった。
【0047】
実施例1~8の植物性ソースは、いずれも、保存安定性、コク、味のバランス、及びフレーバーリリースに優れるものであった。
【0048】
【0049】
<植物性ソース2(ジェノベーゼ風ソース)の製造例>
[実施例9]
表2に記載の配合割合に準じ、植物性ソースを製造した。具体的には、撹拌タンクに、ニンニク、タマネギ、青えんどう豆(乾物)、バジルペースト、還元水飴、キサンタンガム、調味料及び清水を投入して均一に混合することにより水相を調製した。その後、調整した水相に、油相である植物性油脂を注加し、乳化処理を行って、乳化状の植物性ソースを製造した。
【0050】
<植物性ソース2の評価>
上記で得られた植物性ソースについて、<植物性ソース1の評価>と同様にして、微小固形分量の測定、保存安定性、コク、味のバランス、及びフレーバーリリースの評価を行った。評価結果を表2に示した。実施例9の植物性ソースは、保存安定性、コク、味のバランス、及びフレーバーリリースに優れるものであった。
【0051】
【0052】
<植物性ソース3(カルボナーラ風ソース)の製造例>
[実施例10]
表3に記載の配合割合に準じ、植物性ソースを製造した。具体的には、撹拌タンクに、ニンニク、タマネギ、白いんげん豆(乾物)、還元水飴、キサンタンガム、調味料及び清水を投入して均一に混合することにより水相を調製した。その後、調整した水相に、油相である植物性油脂を注加し、乳化処理を行って、乳化状の植物性ソースを製造した。
【0053】
<植物性ソース3の評価>
上記で得られた植物性ソースについて、<植物性ソース1の評価>と同様にして、微小固形分量の測定、保存安定性、コク、味のバランス、及びフレーバーリリースの評価を行った。評価結果を表3に示した。実施例10の植物性ソースは、保存安定性、コク、味のバランス、及びフレーバーリリースに優れるものであった。
【0054】
【要約】
【課題】保存安定性、コク、味のバランス、及びフレーバーリリースに優れた植物性ソースの提供。
【解決手段】本発明は、植物性油脂、植物性具材、及び糖アルコールを含有する、少なくとも一部に乳化相を有する植物性ソースであって、前記植物性具材が、少なくとも、豆及びニンニクを含み、前記植物性油脂の含有量が、前記植物性ソースの全量に対して10質量%以上35質量%以下であり、前記豆の含有量が、乾燥重量換算で前記植物性ソースの全量に対して1.0質量%以上であり、前記豆の含有量(乾燥重量換算)の前記ニンニクの含有量に対する比が、0.5以上10以下であり、前記植物性油脂の含有量の前記糖アルコールの含有量に対する比が、0.05以上1.0以下であり、前記植物性ソースを目開き500μmの篩にかけて粗大固形分を除き、通過した画分をソース部とし、ソース部を8000rpmで10分間遠心分離を行って得られた沈殿部を微小固形部分とした場合、前記微小固形分の含有量が、前記ソース部の全量に対して20.0質量%以上60.0質量%以下であることを特徴とする。
【選択図】なし