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特許7243143ポリアリーレンスルフィド組成物およびそれからなるガスケット
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-13
(45)【発行日】2023-03-22
(54)【発明の名称】ポリアリーレンスルフィド組成物およびそれからなるガスケット
(51)【国際特許分類】
   C08L 81/02 20060101AFI20230314BHJP
   C08L 23/08 20060101ALI20230314BHJP
   C08K 5/5435 20060101ALI20230314BHJP
   C08K 5/544 20060101ALI20230314BHJP
   H01M 50/183 20210101ALI20230314BHJP
【FI】
C08L81/02
C08L23/08
C08K5/5435
C08K5/544
H01M50/183
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2018216151
(22)【出願日】2018-11-19
(65)【公開番号】P2020083943
(43)【公開日】2020-06-04
【審査請求日】2021-10-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000003300
【氏名又は名称】東ソー株式会社
(72)【発明者】
【氏名】春成 武
(72)【発明者】
【氏名】尾崎 想
(72)【発明者】
【氏名】後藤 博之
【審査官】横山 法緒
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-144002(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0166747(US,A1)
【文献】特表2005-502982(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0166748(US,A1)
【文献】特開平06-122766(JP,A)
【文献】特開2011-029167(JP,A)
【文献】国際公開第2015/046324(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00-101/14
C08K 3/00-13/08
H01M 50/183
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
径1mm、長さ2mmのダイスを装着した高化式フローテスターにて、測定温度315℃、荷重10kgの条件下で測定した溶融粘度が200~1000ポイズであるリニア型アミノ基含有ポリアリーレンスルフィド(A)60~95重量%、エチレン-α、β-不飽和カルボン酸グリシジルエステル-α、β-不飽和カルボン酸ブチルエステル共重合体(B)5~30重量%を含み、無機充填剤が未添加であり、ISO 527-1,2に準拠し測定した引張伸びが8%以上であることを特徴とするガスケット用ポリアリーレンスルフィド組成物。
【請求項2】
さらに、グリシドキシ基を有するトリアルコキシシランカップリング剤及び/又はアミノ基を有するトリアルコキシシランカップリング剤からなるシランカップリング剤(C)を含んでなることを特徴とする請求項1に記載のガスケット用ポリアリーレンスルフィド組成物。
【請求項3】
さらに、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス、脂肪酸アマイド系ワックスからなる群より選択される少なくとも1種以上の離型剤(D)を含んでなることを特徴とする請求項1又は2に記載のガスケット用ポリアリーレンスルフィド組成物。
【請求項4】
請求項1~3のいずれかに記載のガスケット用ポリアリーレンスルフィド組成物からなることを特徴とするガスケット。
【請求項5】
電解液の封止用であることを特徴とする請求項4に記載のガスケット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリアリーレンスルフィドの本来有する耐熱性、耐薬品性などを損なうこともなく、引張伸び、耐ヒートサイクル性に優れるポリアリーレンンスルフィドに関するものであり、特に電気・電子部品又は自動車電装部品などの電気部品用途、耐酸用途、耐アルカリ用途に特に有用なポリアリーレンスルフィド組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ポリアリーレンスルフィドは、耐熱性、耐薬品性などに優れた特性を示す樹脂であり、その優れた特性を生かし、電気・電子機器部材、自動車機器部材およびOA機器部材等に幅広く使用されている。しかしながらポリアリーレンスルフィドは、靭性(引張伸びや耐ヒートサイクル性)に劣るという欠点を有しているため、一部の用途で使用が制限されていた。
【0003】
ポリアリーレンスルフィドの靭性を改良する試みについては、例えば(a)ポリアリーレンスルフィド、(b)エチレン-α、β-不飽和カルボン酸アルキルエステル系共重合体からなる樹脂組成物(例えば特許文献1参照。)、(a)ポリフェニレンスルフィドと非ブロック型多官能イソシアネート化合物とを溶融混練してなる組成物と、(b)エチレン-α、β-不飽和カルボン酸アルキルエステル系共重合体とを配合する樹脂組成物(例えば特許文献2参照。)、さらに、(a)ポリアリーレンスルフィド、(b)エチレン-α、β-不飽和カルボン酸アルキルエステル系共重合体、及び(c)特定の種類のアルコキシシラン化合物からなる樹脂組成物(例えば特許文献3参照。)、(a)ポリアリーレンスルフィド、(b)ポリオレフィン系樹脂、(c)アルコキシシラン基を含有する高分子からなる樹脂組成物(例えば特許文献4参照。)等が提案されている。
【0004】
また、直径1mm、長さ2mmのダイスを装着した高化式フローテスターにて、測定温度315℃、荷重10kgの条件下で測定した溶融粘度が100~1000ポイズのポリアリーレンスルフィド(A)50~89重量%、98MPaでの加圧かさ密度が2.00g/cm以下のα-アルミナ(B)10~30重量%、及び、エチレン-α、β-不飽和カルボン酸アルキルエステル-無水マレイン酸共重合体(c1),エチレン-α、β-不飽和カルボン酸グリシジルエステル共重合体(c2),エチレン-α、β-不飽和カルボン酸グリシジルエステル-酢酸ビニル共重合体(c3),エチレン-α、β-不飽和カルボン酸グリシジルエステル-α、β-不飽和カルボン酸アルキルエステル共重合体(c4),無水マレイン酸グラフト変性エチレン-α-オレフィン共重合体(c5)からなる群より選択される少なくとも1種以上のエチレン系共重合体(C)1~20重量%からなることを特徴とするポリアリーレンスルフィド樹脂組成物が提案されている(例えば特許文献5参照。)。
【0005】
また、耐薬品性を必要とする二次電池に用いられるガスケットとして、熱可塑性エラストマー(A)及びゲル浸透クロマトグラフィーにより求められる分子量分布のピーク分子量として28000~100000であるポリアリーレンスルフィド樹脂(B)を含有するガスケット用樹脂組成物からなり、前記熱可塑性エラストマー(A)の配合量が、前記熱可塑性エラストマー(A)及びポリアリーレンスルフィド樹脂(B)の合計100質量部に対して1~30質量部であり、前記樹脂組成物を射出成形して得られる試験片が、一定条件下(23℃、10%歪み、試験片厚さ3mm、圧縮面側表面積60mm)での圧縮応力緩和試験において、100時間後圧縮応力の絶対値が10MPa以上である二次電池用ガスケットが提案されている。(例えば特許文献6参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開昭62-151460号公報
【文献】特開平02-255862号公報
【文献】特開平05-202245号公報
【文献】特開平04-164962号公報
【文献】特開2012-131896号公報
【文献】特許第5809783号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1~4に提案された樹脂組成物においては、靭性が十分に満足できないという課題があった。
【0008】
また、特許文献5では、優れた耐ヒートサイクル性を有するものの、引張伸びについては何ら言及されておらず、靭性も十分に満足できないという課題があった。
【0009】
また、特許文献6では、優れた引張伸びを有するものの、耐ヒートサイクル性については何ら言及されていない。
【0010】
そこで、本発明は、ポリアリーレンスルフィドが本来有する耐熱性、耐薬品性などを損なうことなく、引張伸び、耐ヒートサイクル性に優れるポリアリーレンスルフィド組成物を提供することを目的とし、されに詳しくは、電気・電子部品又は自動車電装部品などの電気部品用途、さらには耐酸性、耐アルカリ性に優れるガスケットに特に有用なポリアリーレンスルフィド組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、上記の課題を解決すべく鋭意検討した結果、少なくとも特定のポリアリーレンスルフィド、特定のカルボン酸ブチルエステル基含有ポリエチレンを含むポリアリーレンスルフィド組成物とすることで、引張伸び、耐ヒートサイクル性に優れる組成物となりうることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0012】
即ち、本発明は、径1mm、長さ2mmのダイスを装着した高化式フローテスターにて、測定温度315℃、荷重10kgの条件下で測定した溶融粘度が200~1000ポイズであるアミノ基含有ポリアリーレンスルフィド(A)60~95重量%、エチレン-α、β-不飽和カルボン酸グリシジルエステル-α、β-不飽和カルボン酸ブチルエステル共重合体(B)5~30重量%を含んでなり、ISO 527-1,2に準拠し測定した引張伸びが8%以上であることを特徴とするポリアリーレンスルフィド組成物に関するものである。
【0013】
以下、本発明に関し詳細に説明する。
【0014】
本発明のポリアリーレンスルフィド組成物を構成するアミノ基含有ポリアリーレンスルフィド(A)としては、一般にポリアリーレンスルフィドと称される範疇に属し、ポリアリーレンスルフィドの末端単位又は鎖中単位にアミノ基を有する単位を含有したものを挙げることができる。そして、該アミノ基含有ポリアリーレンスルフィドを構成するポリアリーレンスルフィドの単位としては、例えばp-フェニレンスルフィド単位、m-フェニレンスルフィド単位、o-フェニレンスルフィド単位、フェニレンスルフィドスルフォン単位、フェニレンスルフィドケトン単位、フェニレンスルフィドエーテル単位、ビフェニレンスルフィド単位等を挙げることができ、ポリアリーレンスルフィドはこれら単位の単独重合体又は共重合体である。該アミノ基含有ポリアリーレンスルフィドの具体的例示としては、例えばアミノ基含有ポリフェニレンスルフィド、アミノ基含有ポリフェニレンスルフィドスルフォン、アミノ基含有ポリフェニレンスルフィドケトン、アミノ基含有ポリフェニレンスルフィドエーテル等が挙げられ、その中でも、特に耐熱性、強度特性に優れることから、アミノ基含有ポリ(p-フェニレンスルフィド)であることが好ましい。
【0015】
本発明を構成するアミノ基含有ポリアリーレンスルフィド(A)は、不純物等の除去を効率的に行い品質に優れるものとなることから、アミノ基含有ポリアリーレンスルフィドを製造する際に、重合後のアミノ基含有ポリアリーレンスルフィドの高圧熱水処理を行い洗浄を行ったものであることが好ましい。その際の高圧熱水処理条件としては、温度150℃以上240℃以下の水にて洗浄を行う方法を挙げることができる。
【0016】
本発明を構成するアミノ基含有ポリアリーレンスルフィド(A)は、アミノ基含有ジハロゲン芳香族化合物をポリハロゲン化芳香族化合物とアミノ基含有ジハロゲン芳香族化合物の総量に対して0.05~3mol%添加し製造されたポリアリーレンスルフィドを挙げることができ、特に引張強度、耐ヒートサイクル性、靱性に優れるポリアリーレンスルフィド組成物となることから0.1~2mol%であることが好ましい。
【0017】
該アミノ基含有ポリアリーレンスルフィドの製造方法としては、特に制限はなく、一般的にアミノ基含有ポリハロゲン芳香族化合物を用いたポリアリーレンスルフィドの製造方法として知られている方法により製造すればよく、例えば重合溶媒中で、アルカリ金属硫化物とポリハロゲン芳香族化合物、アミノ基含有ポリハロゲン芳香族化合物とを反応する方法により製造することが可能である。
【0018】
また、ポリハロゲン化芳香族化合物としては、ポリハロゲン化芳香族化合物の範疇に属するものであれば如何なる化合物を用いることも可能であり、例えばp-ジクロロベンゼン、m-ジクロロベンゼン、o-ジクロロベンゼン、p-ジブロモベンゼン、m-ジブロモベンゼン、o-ジブロモベンゼン、p,p’-ジクロロジフェニル、p,p’-ジブロモジフェニル、2,6-ジクロロナフタレン、2,6-ジブロモナフタレン、1,3,5-トリクロロベンゼン、1,2,4-トリクロロベンゼン等を挙げることができ、その中でも特に高分子量で機械的特性に優れるポリアリーレンスルフィドがより容易に得られることからp-ジクロロベンゼンが好ましい。そして、さらに高分子量のポリアリーレンスルフィドとするために1,3,5-トリクロロベンゼン、1,2,4-トリクロロベンゼンを併用することも可能である。アミノ基含有ポリハロゲン芳香族化合物としては、例えば、2,5-ジクロロアニリン、2,6-ジクロロアニリン、3,5-ジクロロアニリン、3,5-ジアミノクロロベンゼン、2-アミノ-4-クロロトルエン、2-アミノ-6-クロロトルエン、4-アミノ-2-クロロトルエン、3-クロロ-m-フェニレンジアミン、2,5-ジブロモアニリン、2,6-ジブロモアニリン、3,5-ジブロモアニリン、及びそれらの混合物等が挙げられ、特に3,5-ジクロロアニリン、3,5-ジアミノクロロベンゼンが好ましい。
【0019】
アルカリ金属硫化物としては、アルカリ金属硫化物の範疇に属するものであれば如何なるものを用いることも可能であり、例えば無水硫化ナトリウム,2.8水塩硫化ナトリウム,5水塩硫化ナトリウム等の硫化ナトリウム、硫化リチウム、硫化ルビジュウム、硫化水素ナトリウム、硫化水素リチウム等を挙げることができ、その中でも特に高分子量で機械的特性に優れるポリアリーレンスルフィドがより容易に得られることから硫化ナトリウム、硫化リチウム、硫化水素ナトリウム、硫化水素リチウムが好ましい。そして、硫化水素ナトリウム、硫化水素リチウム等の硫化水素化物は、水酸化アルカリ金属塩と併用することにより硫化アルカリ金属塩とし用いることも可能である。
【0020】
本発明を構成するアミノ基含有ポリアリーレンスルフィド(A)は、不活性ガス雰囲気下150℃以上260℃以下の条件で熱処理を行ったものであることが好ましく、特に170℃以上250℃以下で行う事が好ましい。該不活性ガスとしては、例えば窒素、アルゴン等があげられる。
【0021】
本発明を構成するアミノ基含有ポリアリーレンスルフィド(A)は、直径1mm、長さ2mmのダイスを装着した高化式フローテスターにて、測定温度315℃、荷重10kgの条件下で測定した溶融粘度が200~1000ポイズのものであり、特に引張伸び、耐ヒートサイクル性に優れるポリアリーレンスルフィド組成物となることから、300~800ポイズのものであることが好ましい。ここで、200ポイズ未満のものである場合、得られる組成物は引張伸び、耐ヒートサイクル性に劣るものとなる。一方、1000ポイズを越えるものである場合、得られる組成物は耐ヒートサクル性に劣るものとなる。
【0022】
本発明のポリアリーレンスルフィド組成物を構成するアミノ基含有ポリアリーレンスルフィド(A)の配合量は、60~95重量%であり、68~93重量%であることが好ましい。ここで、アミノ基含有ポリアリーレンスルフィドの配合量が60重量%未満である場合、得られる組成物はポリアリーレンスルフィドの特性である耐熱性、耐溶剤性等及び耐ヒートサイクル性に劣るものとなる。一方、95重量%を越える場合、得られる組成物は、引張伸び、耐ヒートサイクル性に劣るものとなる。
【0023】
本発明のポリアリーレンスルフィド組成物を構成するエチレン-α、β-不飽和カルボン酸グリシジルエステル-α、β-不飽和カルボン酸ブチルエステル共重合体(B)としては、この範疇に属するものであれば如何なるものを用いても良く、中でも得られるポリアリーレンスルフィド組成物が、靭性に優れることから、エチレン残基単位:α、β-不飽和カルボン酸グリシジルエステル残基単位:α、β-不飽和カルボン酸ブチルエステル残基単位(重量比)=60~93:2~10:5~30の範囲からなるものであることが好ましい。該エチレン-α、β-不飽和カルボン酸グリシジルエステル-α、β-不飽和カルボン酸ブチルエステル共重合体の具体的例示としては、例えば(商品名)LOTADER AX8700(アルケマ(株)製)、(商品名)LOTADER AX8750(アルケマ(株)製)、等を挙げることができる。そして、本発明は、アミノ基含有ポリアリーレンスルフィドと該エチレン-α、β-不飽和カルボン酸グリシジル-α、β-不飽和カルボン酸ブチルエステル共重合体とを組わせることにより、従来より提案されているポリアリーレンスルフィドとエチレン-α、β-不飽和カルボン酸グリシジルエステル共重合体,エチレン-α、β-不飽和カルボン酸グリシジルエステル-ビニルエステル共重合体,エチレン-α、β-不飽和カルボン酸グリシジルエステル-α、β-不飽和カルボン酸メチルエステル共重合体,エチレン-α,β-不飽和カルボン酸エステル-無水マレイン酸共重合体,エチレン-α-オレフィン-無水マレイン酸共重合体,等との組成物より卓越した引張伸び、耐ヒートサイクル性を示す組成物となることを見出したものである。
【0024】
本発明のポリアリーレンスルフィド組成物は、エチレン-α、β-不飽和カルボン酸グリシジルエステル-α、β-不飽和カルボン酸ブチルエステル共重合体(B)5~30重量%を含むものであり、エチレン-α、β-不飽和カルボン酸グリシジルエステル-α、β-不飽和カルボン酸ブチルエステル共重合体(B)の配合量が5%未満である場合、得られる組成物は、引張伸びに劣るものとなる。一方、30重量%を超える場合、得られる組成物は、耐ヒートサイクル性、耐熱性が低下するものとなる。
【0025】
本発明のポリアリーレンスルフィド組成物は、特に引張伸び、耐ヒートサイクル性に優れるものとなることからグリシジル基を有するトリアルコキシシランカップリング剤及び/又はアミノ基を有するトリアルコキシシランカップリング剤からなるシランカップリング剤(C)を含むものであることが好ましい。その際のシランカプリリング剤(C)としては、グリシジル基あるいはアミノ基を有するトリアルコキシシランカップリングであれば特に制限されるものではなく、この範疇に属するものの具体的な例として、3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン等があげられる。また、該シランカップリング剤(C)の配合量としては、0.1~5重量%であることが好ましい。
【0026】
本発明のポリアリーレンスルフィド組成物は、成形品とする際の金型離型性や外観を改良するために離型剤(D)を含有することが好ましい。該離型剤としては、例えばポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス、脂肪酸アマイド系ワックスが好適に用いられる。該ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックスとしては、一般的な市販品を用いることができる。また、該脂肪酸アマイド系ワックスとは、高級脂肪族モノカルボン酸、多塩基酸及びジアミンからなる重縮合物でありこの範疇に属するものであれば如何なるものを用いることも可能であり、例えばステアリン酸、セバシン酸、エチレンジアミンからなる重縮合物である、(商品名)ライトアマイドWH-255(共栄社化学(株)製)等を挙げることができる。
【0027】
本発明のポリアリーレンスルフィド組成物は、ISO 527-1,2に準拠し測定した引張伸びが8%以上のものであり、特に10%以上であるものが好ましい。ここで、引張伸びが8%未満である場合、耐ヒートサイクル性に劣るものとなり、ガスケット等に適用した場合に封止効果に課題を有するものとなる。そして、本発明のポリアリーレンスルフィド組成物は、8%以上の伸びを発現するために通常ポリアリーレンスルフィド組成物に用いされているガラス繊維、ガラスビーズ、ガラスフレーク、炭素繊維、炭酸カルシウム等の無機充填剤を用いないものであることが好ましい。
【0028】
本発明のポリアリーレンスルフィド組成物は、本発明の目的を逸脱しない範囲で、各種熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂、例えばエポキシ樹脂、シアン酸エステル樹脂、フェノール樹脂、ポリイミド、シリコーン樹脂、ポリエステル、ポリアミド、ポリフェニレンオキサイド、ポリカーボネート、ポリスルホン、ポリエーテルイミド、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン等の1種以上を混合して使用することができる。
【0029】
また、本発明のポリアリーレンスルフィド組成物は、本発明の目的を逸脱しない範囲で、従来公知の熱安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、結晶核剤、発泡剤、金型腐食防止剤、難燃剤、難燃助剤、染料、顔料等の着色剤、帯電防止剤等の添加剤を1種以上併用しても良い。
【0030】
本発明のポリアリーレンスルフィド組成物の製造方法としては、従来使用されている加熱溶融混練方法を用いることができる。例えば単軸または二軸押出機、ニーダー、ミル、ブラベンダー等による加熱溶融混練方法が挙げられ、特に混練能力に優れた二軸押出機による溶融混練方法が好ましい。また、この際の混練温度は特に限定されるものではなく、通常250~360℃の中から任意に選ぶことが出来る。また、本発明のポリアリーレンスルフィド組成物は、射出成形機、押出成形機、トランスファー成形機、圧縮成形機等を用いて任意の形状に成形することができる。
【0031】
本発明のポリアリーレンスルフィド組成物は、引張伸び、耐ヒートサイクル性、靱性に優れることから、電気・電子機器部材、自動車部材等の各種用途として適用でき、中でもポリアリーレンスルフィドの有する耐溶剤性、耐酸性、耐アルカリ性を維持したまま耐ヒートサイクル性に優れるから、パッキン類、封止材類、ガスケット類として適したものとなる。そして、特に温度変化、電解液などの過酷な条件で使用されるアルカリ電池、リチウム電池等に代表される電池のガスケットに適したものとなる。図1にリチウム電池用封口板におけるガスケットの一例を示す。ガスケットとする際の形状は特に制限されるものでなく、例えば、シート型、コイン型、円筒型、角型など、種々の形状のガスケットとして用いることができる。
【発明の効果】
【0032】
本発明は、ポリアリーレンスルフィドの本来有する耐熱性、耐薬品性などを損なうこともなく、引張伸び、耐ヒートサイクル性に優れるポリアリーレンンスルフィド組成物に関するものであり、さらに詳しくは、電気・電子部品又は自動車電装部品などの電気・電子部品用途、パッキン類、封止材類、電池等のガスケットに特に有用なポリアリーレンスルフィド組成物に関するものである。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1】;リチウム電池の封口板の概略図。
図2】;実施例で用いたガスケットのシール性評価用の容器の概略図。
【符号の説明】
【0034】
1;アルミニウム製電極端子。
2;銅製電極端子。
3;ガスケット。
4;アルミニウム製蓋板。
【実施例
【0035】
次に、本発明を実施例により説明するが、本発明はこれらの例になんら制限されものではない。
【0036】
実施例及び比較例において用いたポリアリーレンスルフィド、ポリエチレン系共重合体、シランカップリング剤、離型剤の詳細を以下に示す。
【0037】
<ポリアリーレンスルフィド(A)>
アミノ基含有ポリ(p-フェニレンスルフィド)(A1-2)(以下、単にPPS(A1-2)と記す。):溶融粘度360ポイズ。
アミノ基含有ポリ(p-フェニレンスルフィド)(A2-2)(以下、単にPPS(A2-2)と記す。):溶融粘度720ポイズ。
アミノ基含有ポリ(p-フェニレンスルフィド)(A3-2)(以下、単にPPS(A3-2)と記す。):溶融粘度150ポイズ。
アミノ基含有ポリ(p-フェニレンスルフィド)(A4-2)(以下、単にPPS(A4-2)と記す。):溶融粘度1200ポイズ。
ポリ(P-フェニレンスルフィド)(A5-2)(以下、単にPPS(A5-2)と記す。);溶融粘度900ポイズ。
【0038】
<ポリエチレン系共重合体(B)>
エチレン-α、β-不飽和カルボン酸グリシジルエステル-α、β-不飽和カルボン酸ブチルエステル共重合体(B-1)(以下、単にポリエチレン系共重合体(B-1)と記す。):アルケマ株式会社製、(商品名)LOTADER AX8700、エチレン残基単位:メタクリル酸グリシジルエステル残基単位:アクリル酸ブチルエステル残基単位(重量比)=67:8:25。
エチレン-α、β-不飽和カルボン酸グリシジルエステル-α、β-不飽和カルボン酸ブチルエステル共重合体(B-2)(以下、単にポリエチレン系共重合体(B-2)と記す。):アルケマ株式会社製、(商品名)LOTADER AX8750、エチレン残基単位:メタクリル酸グリシジルエステル残基単位:アクリル酸ブチルエステル残基単位(重量比)=70:5:25。
エチレン-α、β-不飽和カルボン酸ブチルエステル-無水マレイン酸共重合体(B’-3(以下、単にポリエチレン系共重合体(B’-3)と記す。):アルケマ株式会社製、(商品名)LOTADER 3410、エチレン残基単位:アクリル酸ブチルエステル残基単位:無水マレイン酸(重量比)=80:17:3。
エチレン-α、β-不飽和カルボン酸グリシジルエステル-α、β-不飽和カルボン酸メチルエステル共重合体(B’-4)(以下、単にポリエチレン系共重合体(B’-4)と記す。):アルケマ株式会社製、(商品名)LOTADER AX9800、エチレン残基単位:メタクリル酸グリシジルエステル残基単位:アクリル酸エチルエステル残基単位(重量比)=68:8:24。
【0039】
<シランカップリング剤(C)>
グリシジル基を有するトリアルコキシシランカップリング剤(C-1);信越化学工業株式会社製、(商品名)KBM-403;3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン。
【0040】
<離型剤(D)>
離型剤(D-1);共栄社化学株式会社製、(商品名)ライトアマイドWH-255。
ポリアリーレンスルフィドの評価・測定方法を以下に示す。
【0041】
合成例1
攪拌機を装備する50リットルオートクレーブに、NaS・2.9HO、6214g及びN-メチル-2-ピロリドン、17000gを仕込み、窒素気流下攪拌しながら徐々に205℃まで昇温して、1355gの水を留去した。この系を140℃まで冷却した後、p-ジクロロベンゼン7168g、3,5-ジクロロアニリン12g、N-メチル-2-ピロリドン5000gを添加し、窒素気流下に系を封入した。この系を2時間かけて225℃に昇温し、225℃にて2時間重合させた後、30分かけて250℃に昇温し、さらに250℃にて3時間重合を行った。重合終了後、室温まで冷却し、遠心分離器により固形分を単離した。該固形分を220℃の熱水で洗浄し100℃で一昼夜乾燥することにより、ポリ(p-フェニレンスルフィド)(以下、PPS(A1-1)と記す。)を得た。
【0042】
このPPS(A1-1)を、真空乾燥機による減圧条件下、250℃で4時間の乾燥を行い、リニア型アミノ基含有ポリ(p-フェニレンスルフィド)(以下、PPS(A1-2)と記す。)を得た。PPS(A1-2)の溶融粘度は360poiseであった。
【0043】
合成例2
攪拌機を装備する50リットルオートクレーブに、NaS・2.9HO、6214g及びN-メチル-2-ピロリドン、17000gを仕込み、窒素気流下攪拌しながら徐々に205℃まで昇温して、1355gの水を留去した。この系を140℃まで冷却した後、p-ジクロロベンゼン7180g、3,5-ジクロロアニリン6g、N-メチル-2-ピロリドン5000gを添加し、窒素気流下に系を封入した。この系を2時間かけて225℃に昇温し、225℃にて2時間重合させた後、30分かけて250℃に昇温し、さらに250℃にて3時間重合を行った。重合終了後、室温まで冷却し、遠心分離器により固形分を単離した。該固形分を200℃の熱水で洗浄し100℃で一昼夜乾燥することにより、ポリ(p-フェニレンスルフィド)(以下、PPS(A2-1)と記す。)を得た。
【0044】
このPPS(A2-1)を、真空乾燥機による減圧条件下、240℃で6時間の乾燥を行い、リニア型アミノ基含有ポリ(p-フェニレンスルフィド)(以下、PPS(A2-2)と記す。)を得た。PPS(A2-2)の溶融粘度は720poiseであった。
【0045】
合成例3
攪拌機を装備する50リットルオートクレーブに、NaS・2.9HO、6214g及びN-メチル-2-ピロリドン、17000gを仕込み、窒素気流下攪拌しながら徐々に205℃まで昇温して、1355gの水を留去した。この系を140℃まで冷却した後、p-ジクロロベンゼン7155g、3,5-ジクロロアニリン20g、N-メチル-2-ピロリドン5000gを添加し、窒素気流下に系を封入した。この系を2時間かけて225℃に昇温し、225℃にて2時間重合させた後、30分かけて250℃に昇温し、さらに250℃にて3時間重合を行った。重合終了後、室温まで冷却し、遠心分離器により固形分を単離した。該固形分を220℃の熱水で洗浄し100℃で一昼夜乾燥することにより、ポリ(p-フェニレンスルフィド)(以下、PPS(A3-1)と記す。)を得た。
【0046】
このPPS(A3-1)を、真空乾燥機による減圧条件下、250℃で4時間の乾燥を行い、アミノ基含有ポリ(p-フェニレンスルフィド)(以下、PPS(A3-2)と記す。)を得た。PPS(A3-2)の溶融粘度は150poiseであった。
【0047】
合成例4
攪拌機を装備する50リットルオートクレーブに、NaS・2.9HO、6214g及びN-メチル-2-ピロリドン、17000gを仕込み、窒素気流下攪拌しながら徐々に205℃まで昇温して、1355gの水を留去した。この系を140℃まで冷却した後、p-ジクロロベンゼン7180g、3,5-ジクロロアニリン6g、N-メチル-2-ピロリドン5000gを添加し、窒素気流下に系を封入した。この系を2時間かけて225℃に昇温し、225℃にて2時間重合させた後、30分かけて250℃に昇温し、さらに250℃にて3時間重合を行った。更に、250℃で水1503gを圧入し、再度255℃まで昇温し、225℃にて3時間重合を行った。重合終了後、室温まで冷却し、遠心分離器により固形分を単離した。該固形分を200℃の熱水で洗浄し100℃で一昼夜乾燥することにより、ポリ(p-フェニレンスルフィド)(以下、PPS(A4-1)と記す。)を得た。
【0048】
このPPS(A4-1)を、真空乾燥機による減圧条件下、240℃で3時間の乾燥を行い、アミノ基含有ポリ(p-フェニレンスルフィド)(以下、PPS(A4-2)と記す。)を得た。PPS(A4-2)の溶融粘度は1200poiseであった。
【0049】
合成例5
攪拌機を装備する50リットルオートクレーブに、NaS・2.9HO、6214g及びN-メチル-2-ピロリドン、17000gを仕込み、窒素気流下攪拌しながら徐々に205℃まで昇温して、1355gの水を留去した。この系を140℃まで冷却した後、p-ジクロロベンゼン7180g、N-メチル-2-ピロリドン5000gを添加し、窒素気流下に系を封入した。この系を2時間かけて225℃に昇温し、225℃にて2時間重合させた後、30分かけて250℃に昇温し、さらに250℃にて3時間重合を行った。重合終了後、室温まで冷却し、遠心分離器により固形分を単離した。該固形分を200℃の熱水で洗浄し100℃で一昼夜乾燥することにより、ポリ(p-フェニレンスルフィド)(以下、PPS(A5-1)と記す。)を得た。
【0050】
このPPS(A5-1)を、真空乾燥機による減圧条件下、240℃で4時間の乾燥を行い、ポリ(p-フェニレンスルフィド)(以下、PPS(A5-2)と記す。)を得た。PPS(A5-2)の溶融粘度は900poiseであった。
【0051】
ポリアリーレンスルフィドの評価・測定方法を以下に示す。
【0052】
~溶融粘度測定~
直径1mm、長さ2mmのダイスを装着した高化式フローテスター(株式会社島津製作所製、(商品名)CFT-500)にて、測定温度315℃、荷重10kgの条件下で溶融粘度の測定を行った。
【0053】
ポリアリーレンスルフィド組成物の評価・測定方法を以下に示す。
【0054】
~引張伸びの測定~
射出成形機(住友重機械工業株式会社製、(商品名)SE-75S)によって試験片を作製し、引張試験機(株式会社島津製作所製、(商品名)オートグラフAG-5000B)を用いて、ISO 527-1,2に準拠し測定を行った。引張伸びが8%以上のものを引張伸びに優れているとした。
【0055】
~耐ヒートサイクル性の測定~
射出成形機(住友重機械工業株式会社製、(商品名)SE-75S)によって、30mm×20mm×10mmの直方体の鋼材(炭素鋼)をインサートするインサート成形を行い、肉厚1mmのポリアリーレンスルフィド組成物で被覆する耐ヒートサイクル用テストピースを10個作製した。得られたテストピースを150℃で30分保持した後、-40℃で30分保持を行うことを1サイクルとする冷熱サイクルに供し、目視によりテストピース10個中6個にクラックが発生するまで該サイクルを継続し、テストピース10個中6個にクラックの発生が認められるまでの冷熱サイクル処理数を耐ヒートサイクル性として評価した。該冷熱サイクル処理数が300サイクル以上のものを耐ヒートサイクル性に優れると判断した。
【0056】
~ガスケットのシール性評価~
電解液(キシダ化学製、(商品名)LBG-96533(エチレンカーボネート:ジメチルカーボネート=1:1の混合溶媒に六フッ化燐酸リチウムが1mol%/リットル添加された電解液))を上部が開放されたアルミニウム製容器に入れ、容器と図1に示す封口板とを溶接して密閉し、図2に示すリチウム電池用容器を作製した。該リチウム電池用容器を60℃で1時間保持した後、-40℃で1時間保持することを1サイクルとする冷熱サイクルに1000サイクル供し、蓋板とシール材との界面及び電極とシール材との界面を検査用液体で浸した。該リチウム電池用容器内を0.2MPaに昇圧して1分間保持し、シール性を評価した。
○:検査用液体に浸された界面から気泡が発生しない場合、ガスケットとしてのシール性に優れると判断した。
×:検査用液体に浸された界面から気泡が発生した場合。ガスケットとしてのシール性に劣ると判断した。
【0057】
実施例1
PPS(A1-2)90重量%、ポリエチレン系共重合体(B-1)10重量%の割合で配合して、シリンダー温度300℃に加熱した二軸押出機(株式会社日本製鋼所製、(商品名)TEX-25αIII)のホッパーに投入し、スクリュー回転数300rpmにて溶融混練し、ダイより流出する溶融組成物を冷却後裁断し、ペレット状のポリアリーレンスルフィド組成物を作製した。その際のポリアリーレンスルフィド組成物の構成割合は,PPS(A1-2)90重量%、ポリエチレン系共重合体(B-1)10重量%であった。
【0058】
該ポリアリーレンスルフィド組成物を、シリンダー温度300℃に加熱した射出成形機(住友重機械工業株式会社製、(商品名)SE75)のホッパーに投入し、引張伸びを測定するための試験片、耐ヒートサイクル性を測定するための試験片をそれぞれ成形し、それぞれの評価を行った。更に、得られたポリアリーレンスルフィド組成物がガスケットとなるように図1に示す形状にインサート成形を行い、ガスケットとしてのシール性の評価を行った。
【0059】
得られたポリアリーレンスルフィド組成物は、引張伸び、耐ヒートサイクル性、ガスケットとしてのシール性に優れていた。
【0060】
実施例2~9
ポリアリーレンスルフィド(A)、ポリエチレン系共重合体(B)、シランカップリング剤(C-1)、離型剤(D-1)を表1に示す配合割合とした以外は、実施例1と同様の方法によりポリアリーレンスルフィド組成物を作製し、実施例1と同様の方法により評価した。評価結果を表1に示した。
【0061】
得られたポリアリーレンスルフィド組成物は、引張伸び、耐ヒートサイクル性、ガスケットとしてのシール性に優れていた。
【0062】
【表1】
【0063】
比較例1~
ポリアリーレンスルフィド(A)、ポリエチレン系共重合体(B)、シランカップリング剤(C-1)、離型剤(D-1)を表2に示す配合割合とした以外は、実施例1と同様の方法によりポリアリーレンスルフィド組成物を作製し、実施例1と同様の方法により評価した。評価結果を表2に示した。
【0064】
比較例1、3、5、6より得られた組成物は、引張伸び劣るものであった。比較例1~7より得られた組成物は、耐ヒートサイクル性が劣るものであった。比較例1~7より得られた組成物は、ガスケットのシール性が劣るものであった。
【0065】
【表2】
【産業上の利用可能性】
【0066】
本発明のポリアリーレンスルフィド組成物は、耐熱性、耐薬品性などを損なうこともなく、引張伸び、耐ヒートサイクル性に優れるものであり、電気・電子部品又は自動車電装部品などの電気・電子部品用途、さらにはシール部材、封止材、ガスケットに有用なものである。
図1
図2