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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-13
(45)【発行日】2023-03-22
(54)【発明の名称】電池用包装フィルムおよび電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 50/105 20210101AFI20230314BHJP
   H01M 50/131 20210101ALI20230314BHJP
   H01M 50/202 20210101ALI20230314BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20230314BHJP
   B65D 65/40 20060101ALI20230314BHJP
【FI】
H01M50/105
H01M50/131
H01M50/202 501P
B32B27/00 L
B65D65/40 D
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019033249
(22)【出願日】2019-02-26
(65)【公開番号】P2020140775
(43)【公開日】2020-09-03
【審査請求日】2022-01-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000002886
【氏名又は名称】DIC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100177426
【弁理士】
【氏名又は名称】粟野 晴夫
(74)【代理人】
【識別番号】100178685
【弁理士】
【氏名又は名称】田浦 弘達
(72)【発明者】
【氏名】山上 晃
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 大亮
【審査官】井原 純
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-073616(JP,A)
【文献】国際公開第2018/194176(WO,A1)
【文献】特開2018-059112(JP,A)
【文献】特開2015-024548(JP,A)
【文献】特開2017-205901(JP,A)
【文献】特開2012-006213(JP,A)
【文献】特開2016-139533(JP,A)
【文献】特開2016-186871(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 50/10-50/198
H01M 50/20-50/298
B32B 27/00
B65D 65/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電池素子を包装する電池用包装フィルムであって、
前記電池用包装フィルムの一方の表面は、水接触角が80~180°であり、厚さが10μm以下である離型部分と、水接触角が0~79°である、前記離型部分以外の部分とを有し、
前記離型部分は、前記電池素子を包装した電池の外表面の角近傍で粘着テープと貼り付くよう前記電池用包装フィルムの表面上に設けられることを特徴とする、電池用包装フィルム。
【請求項2】
前記離型部分は、シリコーン樹脂、フッ素樹脂、ゴム系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、アルキル化メラミンホルムアルデヒド樹脂、長鎖アルキル化合物からなる群より選択される1つ以上の樹脂を含む、請求項1に記載の電池用包装フィルム。
【請求項3】
前記電池用包装フィルムが、少なくとも、基材層、接着層、金属層、及びシーラント層が順次積層された積層フィルムであり、前記基材層側の表面上に前記離型部分を有する、請求項1又は2に記載の電池用包装フィルム。
【請求項4】
前記金属層は、MD方向対して平行方向の引張試験を行ったときの0.2%耐力と、TD方向対して平行方向の引張試験を行った時の0.2%耐力とが、共に55~140N/mm の範囲にある、請求項3に記載の電池用包装フィルム。
【請求項5】
電池素子が包装フィルムで包装された電池であって、
前記電池の角を形成する表面は、当該角に隣接する部分に、水接触角が80~180°であり、厚さが10μm以下である離型部分と、水接触角が0~79°である、前記離型部分以外の部分と、を有し、
前記離型部分は、粘着テープに貼り付けられる部分であることを特徴とする、電池。
【請求項6】
前記離型部分は、当該離型部分に隣接する前記角から当該角の延在方向(幅方向)に直交する方向(長さ方向)に沿って測った長さが0.5~30mmである、請求項5に記載の電池。
【請求項7】
前記離型部分は、当該離型部分に隣接する前記角の延在方向(幅方向)に沿って測った長さが0.5mm以上である、請求項5または6に記載の電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電池用包装フィルムおよび電池に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、用いられる機器の対象に合わせて様々なタイプの電池が開発されている。近年では、パソコン、カメラ、携帯電話等の高性能化に伴い、電池には、多様な形状への対応が要求されるとともに、薄型化や軽量化が求められている。そして、通常、電池においては、電極や電解質等の電池素子を封止するために包装材料が使用されているが、多様な形状の電池に合わせて加工が容易で、薄型化や軽量化を実現し得る電池用包装材料として、基材/金属層/シーラント層が順次積層されたフィルム状の積層体が提案されている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2016-62805号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、パソコンや携帯電話等の高密度実装した機器において、その電池を筐体に組み込む際、組込みおよび固定の簡便性から両面粘着テープ(以下、単に「粘着テープ」とも称す)が用いられることがあり、図4に示すように、筐体21と電池20との間に粘着テープ22が設けられる。しかし、電池を貼り間違えた場合や電池が寿命となった場合には、電池を取り外すために、当該粘着テープの取手部分を引っ張って粘着テープを剥がすことを要するが、従来では粘着テープを剥がせないことがあった。
具体的には、高密度に部品を実装する機器では、例えばゴム基材を有する両面粘着テープを用いて貼り付けた電池に近接して、他の部材も筐体に取り付けられている。そして、当該他の部材を避けて粘着テープを剥がすためには、当該粘着テープの取手部分を貼付け面に対して高角度(例えば60°以上)の方向に引っ張って剥がすこととなり、このように高い角度で引っ張ると両面粘着テープに負荷がかかり、ちぎれることがあった。
【0005】
そこで、本発明は、上記の課題に鑑みてなされた発明であり、上記のように当該粘着テープを貼付け面に対して角度をつけて電池から剥がす場合であっても、粘着テープへの負荷を低減し、粘着テープのちぎれを防止することができる、電池用包装フィルムおよび電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記従来技術の課題を解決するため鋭意検討を行った結果、図4に示すように粘着テープ22を用いて電池20を筐体21等に固定した場合において、粘着テープ22を貼付け面に対して角度をつけて電池20から剥がす際、粘着テープ22の引張を開始したときに、粘着テープ22の中でも電池20の角23付近に貼り付く部分に、その伸び始めに大きな力が加わること、電池20の粘着テープ22側の外表面の角23付近に、離型しやすくするための処理を施すと、粘着テープ22への負荷を低減できること、また、一方で、電池20の角23付近の外表面に離型処理を施した場合、処理部分の厚さが厚いと、処理部分をきっかけに粘着テープ22による電池20の固定力が低下する恐れがあること、の知見を得、本願発明に至った。
すなわち、本願発明は以下の通りである。
【0007】
〔1〕表面上に、接触角が80~180°であり、厚さが10μm以下である離型部分を有することを特徴とする、電池用包装フィルム。
〔2〕前記離型部分は、シリコーン樹脂、フッ素樹脂、ゴム系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、アルキル化メラミンホルムアルデヒド樹脂、長鎖アルキル化合物からなる群より選択される1つ以上の樹脂を含む上記〔1〕に記載の電池用包装フィルム。
〔3〕前記電池用包装フィルムが、少なくとも、基材層、接着層、金属層、及びシーラント層が順次積層された積層フィルムであり、前記基材層側の表面上に前記離型部分を有する、上記〔1〕または〔2〕に記載の電池用包装フィルム。
〔4〕角を形成する表面のうち、当該角に隣接する部分に、接触角が80~180°であり、厚さが10μm以下である離型部分を有することを特徴とする、電池。
〔5〕前記離型部分は、当該離型部分に隣接する前記角から当該角に直交する方向に沿って測った長さが0.5~30mmである、上記〔4〕に記載の電池。
〔6〕前記離型部分は、当該離型部分に隣接する前記角に沿って測った長さが0.5mm以上である、上記〔4〕または〔5〕に記載の電池。
【発明の効果】
【0008】
本発明は、粘着テープを貼付け面に対して角度をつけて剥がす場合であっても、粘着テープへの負荷を低減し、粘着テープのちぎれを防止することができる、電池用包装フィルムおよび電池を提供することを目的とする。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の一実施形態に係る電池用包装フィルムを示す図である。
図2図1の電池用包装フィルムの断面を示す図である。
図3】本発明の一実施形態に係る電池を示す図である。
図4】電池を粘着テープを用いて筐体に貼り付けた状態を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施形態(以下、「本実施形態」という。)を詳細に説明するが、本発明は本実施形態に限定されるものではない。
《電池用包装フィルム》
本実施形態の電池用包装フィルムは、表面上に、接触角が80~180°であり、厚さが10μm以下である離型部分を有することを特徴とする。電池用包装フィルムの離型部分が、電池の表面の中でも、電池に粘着テープが貼り付けられる表面(以下、粘着テープが貼り付けられる電池の表面を「貼付け面」とも称す)であって、電池の角に隣接する部分に位置するように、電池用包装フィルムを用いることで、粘着テープを貼付け面に対して角度をつけて剥がす場合であっても、粘着テープへの負荷を低減し、粘着テープのちぎれを防止することができる。
【0011】
ここで、電池用包装フィルムの表面上の離型部分は、電池用包装フィルムの表面側から見たときの形状や大きさが、当該電池用包装フィルムにより包装する電池の形状、大きさ等により変化し得、特に限定されず任意にすることができる。
一方、離型部分は、任意の形状や大きさをとることができるが、一の方向(図1の例では、TD方向)に沿って測った長さが少なくとも0.5mmであり、当該一の方向に直交する方向(図1の例では、MD方向)に沿って測った長さが少なくとも0.5mmであることが好ましい。また、より好ましくは、離型部分は、一の方向に沿って測った長さが少なくとも1mmであり、当該一の方向に直交する方向に沿って測った長さが少なくとも1mmであり、さらに好ましくは、離型部分は、一の方向に沿って測った長さが少なくとも3mmであり、当該一の方向に直交する方向に沿って測った長さが少なくとも3mmである。
離型部分をこのような大きさにすることにより、本実施形態の電池用包装フィルムで電池を包装する際、電池用包装フィルムの離型部分を、電池の表面の中でも貼付け面であって、電池の角に隣接する部分に位置するようにすることで、貼り付けた粘着テープを剥がす場合に、粘着テープのちぎれを有効に防止することができる。
なお、電池用包装フィルムは、一の方向の長さが0.5mm以上であり、当該方向に直交する方向の長さが0.5mm以上である離型部分に対して、当該一の方向に隣接する、少なくとも30mmの長さの範囲内において、接触角が80~180°となる部分が実質的に存在しないことが好ましい。これにより、電池の貼付け面に離型部分を設けても、粘着テープが適切に貼り付く領域を確保しやすくすることができ、電池をより適切に固定することができる。なお、ここでの「実質的に存在しない」とは、離型部分に対して一の方向に隣接する、少なくとも30mmの長さの範囲内に、接触角が80~180°となる部分がわずかに点在していても、全体として本発明の効果を損なわない程度である場合には許容されるものとする。また、より好ましくは、当該範囲内において、接触角が80~180°となる部分が存在しないことである。
【0012】
本実施形態において、図1に示すように、離型部分2は、電池用包装フィルム1の表面上に複数あってもよい。例えば、電池用包装フィルム1の平面視で、離型部分2を複数存在させる場合において、図1に示すようにそれぞれの離型部分をMD方向に延在するようにしたり、また、図示は省略するが、TD方向に延在するようにしたり、さらにMD方向やTD方向に対して傾斜する方向に延在するようにしたりしてもよい。あるいは、図示は省略するが、電池用包装フィルムの表面上に、島状の離型部分を多数設け、離型部分とそれ以外とを海島状にすることもできる。
なお、図1に示す例では、1枚の電池用包装フィルムから複数の電池に用いるフィルム片が得られる電池用包装フィルムについて記載しているが、本実施形態の電池用包装フィルムは、例えば1つの電池に用いるためのフィルム片であってもよい。
【0013】
本実施形態において、離型部分の厚さは、10μm以下である。当該厚さが厚い場合には、電池を筐体等に貼り付けた場合であっても、当該離型部分をきっかけに粘着テープによる電池の固定が低下する恐れがある。しかし、当該厚さが10μm以下であることより、電池の貼付け面に貼り付けられる粘着テープの粘着性への影響を十分に低減することができる。
また、当該厚さは、好ましくは10μm以下であり、より好ましくは7μm以下である。一方、当該厚さは、粘着性の観点から特に限定されないが、その下限値は、離型部分の十分の強度や耐久性の観点から、0.1μmであることが好ましく、より好ましくは0.5μmであり、さらに好ましくは1.0μmである。
【0014】
当該離型部分の厚さは、JIS K6783に従い、ダイヤルゲージを用いた方法により測定することができる。
【0015】
本実施形態において、離型部分の表面は、接触角が80~180°である。当該接触角が80°以上であることにより、粘着テープが粘着しにくくなり、粘着テープを剥がす場合に、粘着テープのちぎれを有効に防止することができる。また、当該接触角を180°以下にすることにより、剥がれを防止することができる。
また、当該接触角は、90~160°であることが好ましく、より好ましくは100~120°である。
【0016】
当該離型部分の接触角は、JIS R3257に従い、静滴法により測定することができる。具体的には、実施例に記載の方法で測定することができる。
【0017】
接触角を上記の所定の範囲にする方法としては、特に限定されないが例えば、離型部分の材料として疎水性となるものを用いることが挙げられる。
このような材料としては、特に限定されないが例えば、シリコーン樹脂、フッ素樹脂、ゴム系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、アルキル化メラミンホルムアルデヒド樹脂、長鎖アルキル化合物が挙げられ、当該材料は、これら樹脂からなる群より選択される1つ以上の樹脂を含む。また、その中でも材料としては、粘着テープのちぎれ防止の観点から、シリコーン樹脂やフッ素樹脂や長鎖アルキル化合物が好ましい。
【0018】
-シリコーン樹脂-
ここで、シリコーン樹脂とは、従来からシリコーン系離型剤として一般的に知られているシリコーン系化合物を指す。シリコーンとは、有機基(例えばアルキル基やフェニル基など)をもつケイ素と酸素が交互に結合してできた主鎖より成るポリマーである。基本骨格としてジメチルポリシロキサンを有するシリコーン系化合物が好ましい。
【0019】
-フッ素樹脂-
フッ素系樹脂としては、特に限定されるものではなく、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等のフッ素樹脂や、パーフルオロポリエーテルオイル、パーフルオロアルキル基で変性されたノニオン系界面活性剤、パーフルオロアルキル基、パーフルオロポリエーテル基で変性された(メタ)アクリレートを重合単位として有するポリ(メタ)アクリレートなどが挙げられ、市販されたものを用いてもよい。
【0020】
-ゴム系樹脂-
ゴム系樹脂としては、例えば、ブタジエン系、スチレンブタジエン系、コロロプレン系、ブチル系、エチレン・プロピレン系、アクリル系のゴムが挙げられる。
【0021】
-ポリオレフィン系樹脂-
上記の離型部分の成分であるポリオレフィン系重合体としては、エチレン、プロピレン、ブテン、ヘキセン、オクテン等のα-オレフィンの単独重合体および共重合体が挙げられる。また、エチリデンノルボルネン、ノルボルネン等とエチレン等のα-オレフィンとの共重合体も挙げられる。更に、ポリイソプレンに代表されるリビング重合で得られたジエンゴム及びそれらを水素添加して得られたポリマー、環状オレフィンの開環重合によって得られたエラストマー等の炭化水素系エラストマーも使用することが出来る。
【0022】
環状オレフィンの開環重合によって得られたオレフィン系重合体としては、シクロペンテン、シクロオクテン、ノルボルネン等の脂環式オレフィンの開環重合体を挙げることが出来る。更に、スチレン・ブタジエン共重合体の核水素添加物、スチレンイソプレン共重合体の核水素添加物などの水素添加によって得られるポリオレフィンを使用することが出来る。
【0023】
本実施形態においては、ポリオレフィン系エラストマー、特にメタロセン触媒によって重合して得られたポリオレフィン系エラストマーを使用することが好ましい。メタロセン触媒を使用して重合すれば、分子量分布が狭くて低分子量成分が少ないポリオレフィン系エラストマーを得ることが出来る。また、メタロセン触媒を使用すれば、均一な共重合が可能であり、コモノマー含有量が平均組成と著しく離れた低分子量成分の生成を抑制することが出来る。このため、離型部分(塗膜)とした際のべた付きを抑えることが出来る上、塗膜へ耐薬品性を付与するための架橋基の導入が均一にでき、その結果、効率的なゲル化が可能であり、耐薬品性、耐熱性、塗膜強度の高い離型部分が得られる。
【0024】
メタロセン触媒の具体例としては、rac-イソプロピリデンビス(1-インデニル)ジルコニウムジクロライド、rac-ジメチルシリルビス-1-(2-メチルインデニル)ジルコニウムジクロライド、rac-ジメチルシリルビス-1-(2-メチル-4-フェニルインデニル)ジルコニウムジクロライド、rac-ジメチルシリルビス-1-(2-メチル-4.5-ベンゾインデニル)ジルコニウムジクロライド、イソプロピリデン-9-フルオレニルシクロペンタジエニルジルコニウムジクロライド、ジメチルシリレンビス(シクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド等を挙げることが出来る。
【0025】
メタロセン触媒を使用した重合においては、一般に使用される助触媒類、すなわち、トリエチルアルミニウム、メチルアルモキサン等の有機アルミニウム、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート等を使用することが出来る。
【0026】
前記のポリオレフィン系エラストマーは変性ポリオレフィン系エラストマーであってもよい。変性ポリオレフィン系エラストマーとしては、オレフィンモノマーの単独重合体または共重合体に、ヒドロキシル基、アミノ基、カルボキシル基、酸無水物基、エポキシ基などの環状エーテル基、または、イソシアネート基などの官能基を有する化合物を反応させたものが挙げられる。また、オレフィンを主たる成分として他の反応性モノマーと共重合した重合体なども挙げられる。
【0027】
前記のポリオレフィンを製造するモノマーに対し、極性基を有するメタ(アクリレート)モノマーを共重合するか、または、上記のポリオレフィン系エラストマーを溶液中、溶融状態、或いは懸濁状態でラジカル開始剤の存在下に極性基を有するモノマーを反応させることにより、ポリオレフィン鎖に極性基を導入することが出来る。
【0028】
-アルキル化メラミンホルムアルデヒド樹脂-
アルキル化メラミンホルムアルデヒド樹脂としては、炭素数6~20のアルキル基を有するアルキル化メラミンホルムアルデヒド樹脂が挙げられる。これらの樹脂は、例えば、メラミンモノマーにホルムアルデヒドを助剤として添加し、メチロール化メラミンを生成させ、生成したメチロール基に炭素数6~20のアルキル基を導入することによって得られる。
【0029】
-長鎖アルキル化合物-
長鎖アルキル化合物とは、炭素数が8以上の直鎖あるいは分岐のアルキル基(長鎖アルキル基ともいう。)を有する化合物を指し、具体的には、長鎖アルキル基含有ポリビニル樹脂、長鎖アルキル基含有アクリル樹脂、長鎖アルキル基含有ポリエステル樹脂、長鎖アルキル基含有エーテル化合物、長鎖アルキル基含有アミン化合物、長鎖アルキル基含有アルキド樹脂等が挙げられる。
【0030】
長鎖アルキル基の炭素数は、8以上が好ましく、10以上がより好ましく、12以上が特に好ましい。上限の炭素数は30以下が好ましく、28以下がより好ましく、25以下が特に好ましい。
【0031】
長鎖アルキル基含有ポリビニル樹脂は、ポリビニルアルコール重合体(ポリ酢酸ビニルの部分ケン化物を含む)、エチレン-ビニルアルコール重合体(エチレン-酢酸ビニル共重合体の部分ケン化物を含む)あるいはビニルアルコール-アクリル酸共重合体(酢酸ビニル-アクリル酸共重合体の部分ケン化物を含む)と、長鎖アルキル基含有イソシアネート化合物とを反応させることによって合成することができる。この場合、長鎖アルキル基含有イソシアネート化合物の添加量を調整することにより重合体中に水酸基を含有させることができる。
【0032】
長鎖アルキル基含有イソシアネート化合物としては、炭素数が8以上のアルキル基を有するモノイソシアネート化合物が挙げられ、具体的には、オクチルイソシアネート、ノニルイソシアネート、デシルイソシアネート、ドデシルイソシアネート、テトラデシルイソシアネート、ヘキサデシルイソシアネート、オクタデシルイソシアネートなどが挙げられる。
【0033】
長鎖アルキル基含有アクリル樹脂は、長鎖アルキル基を有するアクリルモノマーあるいはメタクリルモノマー、例えば、アクリル酸オクチル、メタクリル酸オクチル、アクリル酸ラウリル、メタクリル酸ラウリル、アクリル酸オクタデシル、メタクリル酸オクタデシルなどの単独重合体あるいは共重合体が挙げられる。
【0034】
上記共重合体に用いられる他のモノマーとしては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、アクリルアミド、メタクリルアミド、スチレンなどが挙げられる。
【0035】
長鎖アルキル基含有アルキド樹脂は、長鎖アルキル基を有する多塩基酸と多価アルコールとの縮合物を脂肪油や脂肪酸で変性したものである。多塩基酸としては、無水フタル酸、テレフタル酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸などの飽和多塩基酸や、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、無水シトラコン酸などの不飽和多塩基酸、シクロペンタジエン-無水マレイン酸付加物、テルペン-無水マレイン酸付加物、ロジン-無水マレイン酸付加物などのその他多塩基酸が挙げられる。多価アルコールとしては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチレングリコール、テトラメチレングリコールなどの二価アルコール、グリセリン、トリメチロールプロパンなどの三価アルコール、ジグリセリン、トリグリセリン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、マンニトール、ソルビトールなどの四価以上のアルコールが挙げられる。変性剤としては、大豆油、アマニ油、キリ油、ヒマ
シ油、脱水ヒマシ油、ヤシ油、及びこれらの脂肪酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレイン酸、エレオステアリン酸、リシノレイン酸、脱水リシノレイン酸などの油脂及び油脂脂肪酸、ロジン、コバール、コハク、セラックなどの天然樹脂、エステルガム、フェノール樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂などの合成樹脂が挙げられる。また、ステアリン酸変性アルキド樹脂及び/又はステアリン酸変性アクリル樹脂とアミノ樹脂との硬化樹脂も塗布性と剥離性のバランスの観点から好ましい。
【0036】
また、上記のように、本実施形態における離型部分は所定の厚さを有し、且つ、所定の接触角を有するところ、それぞれを同時に満たすため、上記のような材料を用いつつ、その塗布を、グラビア印刷、マイクログラビア塗工、スクリーン印刷、ダイ塗工、コンマ塗工の方法で行うことが好ましい。その中でも、任意の部分に離型層を設けやすさの点からグラビア印刷で行うことが好ましい。
【0037】
また、本実施形態において、電池用包装フィルムの表面上に離型部分を設けるにあたっては、易接着層を設けることが好ましい。離型部分の耐久性をより向上させることができる。なお、易接着層を設ける場合には、離形部分の厚さは当該易接着層も含む厚さとする。
【0038】
本実施形態において、電池用包装フィルムのうち離型部分以外のフィルムは、特に限定されないが例えば、図2に示すように、少なくとも、基材層11、接着層12、金属層13、及びシーラント層14が順次積層された積層フィルムとすることができる。このような構成にすることにより、電池用として好適であるとともに、多様な形状に加工が容易で、薄型化や軽量化を実現することができる。
なお、電池用包装フィルム1を上記のように構成する場合、基材層11側が、電池の表面側となり、シーラント層14が電池素子側となり、組み立て時に、電池素子の周縁に位置するシーラント層14同士が熱溶着して電池素子を密封することにより、電池素子が封止される。したがって、本実施形態では、電池用包装フィルム1の1対の表面の中でも、基材層11側の表面上に離型部分2を形成することが好ましい。
【0039】
-基材層-
本実施形態において、基材層11を形成する材料は、特に限定されないが例えば、絶縁性を備えるものが好ましく、具体的には、例えば、ポリエステル、ポリアミド、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、フッ素樹脂、ポリウレタン、珪素樹脂、フェノール樹脂、ポリエーテルイミド、ポリイミド、及びこれらの混合物や共重合物などが挙げられる。
【0040】
ポリエステルとしては、具体的には、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート、ポリエチレンイソフタレート、エチレンテレフタレートを繰り返し単位の主体とした共重合ポリエステル、ブチレンテレフタレートを繰り返し単位の主体とした共重合ポリエステルなどが挙げられる。また、エチレンテレフタレートを繰り返し単位の主体とした共重合ポリエステルとしては、具体的には、エチレンテレフタレートを繰り返し単位の主体としてエチレンイソフタレートと重合する共重合体ポリエステル(以下、ポリエチレン(テレフタレート/イソフタレート)にならって略す)、ポリエチレン(テレフタレート/イソフタレート)、ポリエチレン(テレフタレート/アジペート)、ポリエチレン(テレフタレート/ナトリウムスルホイソフタレート)、ポリエチレン(テレフタレート/ナトリウムイソフタレート)、ポリエチレン(テレフタレート/フェニル-ジカルボキシレート)、ポリエチレン(テレフタレート/デカンジカルボキシレート)などが挙げられる。また、ブチレンテレフタレートを繰り返し単位の主体とした共重合ポリエステルとしては、具体的には、ブチレンテレフタレートを繰り返し単位の主体としてブチレンイソフタレートと重合する共重合体ポリエステル(以下、ポリブチレン(テレフタレート/イソフタレート)にならって略す)、ポリブチレン(テレフタレート/アジペート)、ポリブチレン(テレフタレート/セバケート)、ポリブチレン(テレフタレート/デカンジカルボキシレート)、ポリブチレンナフタレートなどが挙げられる。これらのポリエステルは、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。ポリエステルは、耐電解液性に優れ、電解液の付着に対して白化などが発生し難いという利点があり、基材層11の形成素材として好適に使用される。
【0041】
また、ポリアミドとしては、具体的には、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン610、ナイロン12、ナイロン46、ナイロン6とナイロン66との共重合体などの脂肪族系ポリアミド;テレフタル酸及び/又はイソフタル酸に由来する構成単位を含むナイロン6I、ナイロン6T、ナイロン6IT、ナイロン6I6T(Iはイソフタル酸、Tはテレフタル酸を表す)などのヘキサメチレンジアミン-イソフタル酸-テレフタル酸共重合ポリアミド、ポリメタキシリレンアジパミド(MXD6)などの芳香族を含むポリアミド;ポリアミノメチルシクロヘキシルアジパミド(PACM6)などの脂環系ポリアミド;さらにラクタム成分や、4,4’-ジフェニルメタン-ジイソシアネートなどのイソシアネート成分を共重合させたポリアミド、共重合ポリアミドとポリエステルやポリアルキレンエーテルグリコールとの共重合体であるポリエステルアミド共重合体やポリエーテルエステルアミド共重合体;これらの共重合体などが挙げられる。これらのポリアミドは、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。延伸ポリアミドフィルムは延伸性に優れており、成形時の基材層11の樹脂割れによる白化の発生を防ぐことができ、基材層11の形成素材として好適に使用される。
【0042】
基材層11は、1軸又は2軸延伸された樹脂フィルムで形成されていてもよく、また未延伸の樹脂フィルムで形成してもよい。中でも、1軸又は2軸延伸された樹脂フィルム、とりわけ2軸延伸された樹脂フィルムは、配向結晶化することにより耐熱性が向上しているので、基材層11として好適に使用される。
【0043】
これらの中でも、基材層11を形成する樹脂フィルムとして、好ましくはナイロン、ポリエステル、さらに好ましくは2軸延伸ナイロン、2軸延伸ポリエステル、特に好ましくは2軸延伸ナイロンが挙げられる。
【0044】
基材層11の厚さとしては、例えば、5~50μmとすることができ、好ましくは15~30μmである。
【0045】
-接着層-
本実施形態において、接着層12は、基材層11と金属層13とを接着させるために設けられる層である。
接着層12は、基材層11と金属層13とを接着可能である接着剤によって形成される。接着層12の形成に使用される接着剤は、2液硬化型接着剤であってもよく、また1液硬化型接着剤であってもよい。さらに、接着層12の形成に使用される接着剤の接着機構についても、特に制限されず、化学反応型、溶剤揮発型、熱溶融型、熱圧型などのいずれであってもよい。
【0046】
接着層12の形成に使用できる接着剤の樹脂成分としては、具体的には、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート、ポリエチレンイソフタレート、ポリカーボネート、共重合ポリエステルなどのポリエステル系樹脂;ポリエーテル系接着剤;ポリウレタン系接着剤;エポキシ系樹脂;フェノール系樹脂;ナイロン6、ナイロン66、ナイロン12、共重合ポリアミドなどのポリアミド系樹脂;ポリオレフィン、酸変性ポリオレフィン、金属変性ポリオレフィンなどのポリオレフィン系樹脂;ポリ酢酸ビニル系樹脂;セルロース系接着剤;(メタ)アクリル系樹脂;ポリイミド系樹脂;尿素樹脂、メラミン樹脂などのアミノ樹脂;クロロプレンゴム、ニトリルゴム、スチレン-ブタジエンゴムなどのゴム;シリコーン系樹脂;フッ化エチレンプロピレン共重合体などが挙げられる。これらの接着剤成分は1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。2種以上の接着剤成分の組み合わせ態様については、特に制限されないが、例えば、その接着剤成分として、ポリアミドと酸変性ポリオレフィンとの混合樹脂、ポリアミドと金属変性ポリオレフィンとの混合樹脂、ポリアミドとポリエステル、ポリエステルと酸変性ポリオレフィンとの混合樹脂、ポリエステルと金属変性ポリオレフィンとの混合樹脂などが挙げられる。これらの中でも、展延性、高湿度条件下における耐久性や黄変抑制作用、ヒートシール時の熱劣化抑制作用などが優れ、基材層11と金属層13との間のラミネート強度の低下を抑えてデラミネーションの発生を効果的に抑制するという観点から、好ましくはポリウレタン系2液硬化型接着剤;ポリアミド、ポリエステル、又はこれらと変性ポリオレフィンとのブレンド樹脂が挙げられる。
【0047】
また、接着層12は異なる接着剤成分で多層化してもよい。接着層12を異なる接着剤成分で多層化する場合、基材層11と金属層13とのラミネート強度を向上させるという観点から、基材層11側に配される接着剤成分を基材層11との接着性に優れる樹脂を選択し、金属層13側に配される接着剤成分を金属層13との接着性に優れる接着剤成分を選択することが好ましい。接着層12は異なる接着剤成分で多層化する場合、具体的には、金属層13側に配置される接着剤成分としては、好ましくは、酸変性ポリオレフィン、金属変性ポリオレフィン、ポリエステルと酸変性ポリオレフィンとの混合樹脂、共重合ポリエステルを含む樹脂などが挙げられる。
【0048】
接着層12の厚さについては、例えば、2~50μmとすることができ、好ましくは3~25μmである。
【0049】
-金属層-
本実施形態において、金属層13は、電池用包装フィルムの強度向上の他、電池内部に水蒸気、酸素、光などが侵入することを防止するためのバリア層として機能する層である。金属層13を構成する金属としては、具体的には、アルミニウム、ステンレス、チタンなどが挙げられ、好ましくはアルミニウムが挙げられる。金属層13は、金属箔や金属蒸着などにより形成することができ、金属箔により形成することが好ましく、アルミニウム箔により形成することがさらに好ましい。電池用包装フィルムの製造時に、金属層13にしわやピンホールが発生することを防止する観点からは、例えば、焼きなまし処理済みのアルミニウム(JIS A8021P-O、JIS A8079P-O)など軟質アルミニウム箔により形成することがより好ましい。
【0050】
金属層13として使用されるアルミニウム箔は、MD方向対して平行方向の引張試験を行ったときの0.2%耐力と、TD方向対して平行方向の引張試験を行った時の0.2%耐力とが、共に55~140N/mm2の範囲にあることが好ましく、60~100N/mm2の範囲にあることがより好ましい。なお、当該0.2%耐力は、JIS Z 2241に規定する引張試験によって測定される値である。
【0051】
金属層13の厚さは、金属層としての機能を発揮すれば特に制限されないが、例えば、10μm~50μmとすることができ、好ましくは20μm~40μmである。
【0052】
また、金属層13は、接着の安定化、溶解や腐食の防止などのために、少なくとも一方の面、好ましくは両面が化成処理されていることが好ましい。ここで、化成処理とは、金属層13の表面に耐酸性皮膜を形成する処理をいう。化成処理としては、例えば、硝酸クロム、フッ化クロム、硫酸クロム、酢酸クロム、蓚酸クロム、重リン酸クロム、クロム酸アセチルアセテート、塩化クロム、硫酸カリウムクロムなどのクロム酸化合物を用いたクロム酸クロメート処理;リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、リン酸アンモニウム、ポリリン酸などのリン酸化合物を用いたリン酸クロメート処理;下記一般式(1)~(4)で表される繰り返し単位を有するアミノ化フェノール重合体を用いたクロメート処理などが挙げられる。
【0053】
【化1】
【0054】
【化2】
【0055】
【化3】
【0056】
【化4】
【0057】
一般式(1)~(4)中、Xは、水素原子、ヒドロキシル基、アルキル基、ヒドロキシアルキル基、アリル基またはベンジル基を示す。また、R1及びR2は、それぞれ同一または異なって、ヒドロキシル基、アルキル基、またはヒドロキシアルキル基を示す。一般式(1)~(4)において、X、R1及びR2で示されるアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基などの炭素数1~4の直鎖または分枝鎖状アルキル基が挙げられる。また、X、R1及びR2で示されるヒドロキシアルキル基としては、例えば、ヒドロキシメチル基、1-ヒドロキシエチル基、2-ヒドロキシエチル基、1-ヒドロキシプロピル基、2-ヒドロキシプロピル基、3-ヒドロキシプロピル基、1-ヒドロキシブチル基、2-ヒドロキシブチル基、3-ヒドロキシブチル基、4-ヒドロキシブチル基などのヒドロキシ基が1個置換された炭素数1~4の直鎖または分枝鎖状アルキル基が挙げられる。一般式(1)~(4)において、X、R1及びR2で示されるアルキル基及びヒドロキシアルキル基は、それぞれ同一であってもよいし、異なっていてもよい。一般式(1)~(4)において、Xは、水素原子、ヒドロキシル基またはヒドロキシアルキル基であることが好ましい。一般式(1)~(4)で表される繰り返し単位を有するアミノ化フェノール重合体の数平均分子量は、例えば、500~100万であることが好ましく、1000~2万程度であることがより好ましい。
【0058】
また、金属層13に耐食性を付与する化成処理方法として、リン酸中に、酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化セリウム、酸化スズなどの金属酸化物や硫酸バリウムの微粒子を分散させたものをコーティングし、150℃以上で焼付け処理を行うことにより、金属層13の表面に耐食処理層を形成する方法が挙げられる。また、耐食処理層の上には、カチオン性ポリマーを架橋剤で架橋させた樹脂層をさらに形成してもよい。ここで、カチオン性ポリマーとしては、例えば、ポリエチレンイミン、ポリエチレンイミンとカルボン酸を有するポリマーからなるイオン高分子錯体、アクリル主骨格に1級アミンをグラフト重合させた1級アミングラフトアクリル樹脂、ポリアリルアミンまたはその誘導体、アミノフェノールなどが挙げられる。これらのカチオン性ポリマーとしては、1種類のみを用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。また、架橋剤としては、例えば、イソシアネート基、グリシジル基、カルボキシル基、及びオキサゾリン基よりなる群から選ばれた少なくとも1種の官能基を有する化合物、シランカップリング剤などが挙げられる。これらの架橋剤としては、1種類のみを用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0059】
化成処理は、1種類の化成処理のみを行ってもよいし、2種類以上の化成処理を組み合わせて行ってもよい。さらに、これらの化成処理は、1種の化合物を単独で使用して行ってもよく、また2種以上の化合物を組み合わせて使用して行ってもよい。化成処理の中でも、クロム酸クロメート処理や、クロム酸化合物、リン酸化合物、及びアミノ化フェノール重合体を組み合わせたクロメート処理などが好ましい。
【0060】
化成処理において金属層13の表面に形成させる耐酸性皮膜の量については、特に制限されないが、例えば、上記のクロメート処理を行う場合であれば、金属層13の表面1m2当たり、クロム酸化合物がクロム換算で約0.5mg~約50mg、好ましくは約1.0mg~約40mg、リン化合物がリン換算で約0.5mg~約50mg、好ましくは約1.0mg~約40mg、及びアミノ化フェノール重合体が約1mg~約200mg、好ましくは約5.0mg~150mgの割合で含有されていることが望ましい。
【0061】
化成処理は、耐酸性皮膜の形成に使用する化合物を含む溶液を、バーコート法、ロールコート法、グラビアコート法、浸漬法などによって、金属層13の表面に塗布した後に、金属層13の温度が70℃~200℃程度になるように加熱することにより行われる。また、金属層13に化成処理を施す前に、予め金属層13を、アルカリ浸漬法、電解洗浄法、酸洗浄法、電解酸洗浄法などによる脱脂処理に供してもよい。このように脱脂処理を行うことにより、金属層13の表面の化成処理をより効率的に行うことが可能となる。
【0062】
-シーラント層-
本実施形態において、シーラント層14は、最内層に該当し、電池の組み立て時にシーラント層14同士が熱溶着して電池素子を密封する層である。
【0063】
シーラント層14に使用される樹脂成分については、熱溶着可能であることを限度として特に制限されないが、例えば、ポリオレフィン、環状ポリオレフィン、カルボン酸変性ポリオレフィン、カルボン酸変性環状ポリオレフィンが挙げられる。
【0064】
前記ポリオレフィンとしては、具体的には、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン等のポリエチレン;ホモポリプロピレン、ポリプロピレンのブロックコポリマー(例えば、プロピレンとエチレンのブロックコポリマー)、ポリプロピレンのランダムコポリマー(例えば、プロピレンとエチレンのランダムコポリマー)等のポリプロピレン;エチレン-ブテン-プロピレンのターポリマー;等が挙げられる。これらのポリオレフィンの中でも、好ましくはポリエチレン及びポリプロピレンが挙げられる。
【0065】
前記環状ポリオレフィンは、オレフィンと環状モノマーとの共重合体であり、前記環状ポリオレフィンの構成モノマーであるオレフィンとしては、例えば、エチレン、プロピレン、4-メチル-1-ペンテン、スチレン、ブタジエン、イソプレン、等が挙げられる。また、前記環状ポリオレフィンの構成モノマーである環状モノマーとしては、例えば、ノルボルネン等の環状アルケン;具体的には、シクロペンタジエン、ジシクロペンタジエン、シクロヘキサジエン、ノルボルナジエン等の環状ジエン等が挙げられる。これらのポリオレフィンの中でも、好ましくは環状アルケン、更に好ましくはノルボルネンが挙げられる。
【0066】
前記カルボン酸変性ポリオレフィンとは、前記ポリオレフィンをカルボン酸でブロック重合又はグラフト重合することにより変性したポリマーである。変性に使用されるカルボン酸としては、例えば、マレイン酸、アクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、無水マレイン酸、無水イタコン酸等が挙げられる。
【0067】
前記カルボン酸変性環状ポリオレフィンとは、環状ポリオレフィンを構成するモノマーの一部を、α,β-不飽和カルボン酸又はその無水物に代えて共重合することにより、或いは環状ポリオレフィンに対してα,β-不飽和カルボン酸又はその無水物をブロック重合又はグラフト重合することにより得られるポリマーである。カルボン酸変性される環状ポリオレフィンについては、前記と同様である。また、変性に使用されるカルボン酸としては、前記酸変性シクロオレフィンコポリマーの変性に使用されるものと同様である。
【0068】
これらの樹脂成分の中でも、好ましくはカルボン酸変性ポリオレフィン;更に好ましくはカルボン酸変性ポリプロピレンが挙げられる。
【0069】
シーラント層14は、1種の樹脂成分単独で形成してもよく、また2種以上の樹脂成分を組み合わせたブレンドポリマーにより形成してもよい。更に、シーラント層14は、1層のみで成されていてもよいが、同一又は異なる樹脂成分によって2層以上で形成されていてもよい。
【0070】
また、シーラント層14の厚さとしては、シーラント層としての機能を発揮すれば特に制限されないが、例えば、10~100μmとすることができ、好ましくは15~50μmである。
【0071】
-第2の接着層-
本実施形態の電池用包装フィルムは、第2の接着層15を、金属層13とシーラント層14を強固に接着させために、これらの間に必要に応じて設けることができる。
【0072】
第2の接着層15は、金属層13とシーラント層14とを接着可能である接着剤によって形成される。第2の接着層15の形成に使用される接着剤について、その接着機構、接着剤成分の種類等は、基材層11と金属層13との間に設ける接着層12の場合と同様である。第2の接着層15に使用される接着剤成分として、好ましくはポリオレフィン系樹脂、更に好ましくはカルボン酸変性ポリオレフィン、特に好ましくはカルボン酸変性ポリプロピレンが挙げられる。
【0073】
第2の接着層15の厚さについては、接着層としての機能を発揮すれば特に制限されないが、例えば、2~50μmとすることができ、好ましくは15~30μmである。
【0074】
-コーティング層-
本実施形態の電池用包装フィルムは、意匠性、耐電解液性、耐擦過性、成形性の向上などを目的として、必要に応じて、基材層11の上(基材層11の1対の表面のうち金属層13とは反対側)に、コーティング層16を有することができる。コーティング層16は、電池を組み立てた時に、表面を形成する層とすることができる。
【0075】
コーティング層16は、例えば、ポリ塩化ビニリデン、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂などにより形成することができる。コーティング層16は、これらの中でも、2液硬化型樹脂により形成することが好ましい。コーティング層16を形成する2液硬化型樹脂としては、例えば、2液硬化型ウレタン樹脂、2液硬化型ポリエステル樹脂、2液硬化型エポキシ樹脂などが挙げられる。また、コーティング層16には、マット化剤を配合してもよい。
【0076】
マット化剤としては、例えば、粒径が0.5nm~5μm程度の微粒子が挙げられる。マット化剤の材質については、特に制限されないが、例えば、金属、金属酸化物、無機物、有機物等が挙げられる。また、マット化剤の形状についても、特に制限されないが、例えば、球状、繊維状、板状、不定形、バルーン状等が挙げられる。マット化剤として、具体的には、タルク、シリカ、グラファイト、カオリン、モンモリロイド、モンモリロナイト、合成マイカ、ハイドロタルサイト、シリカゲル、ゼオライト、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、酸化ネオジウム、酸化アンチモン、酸化チタン、酸化セリウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、炭酸リチウム、安息香酸カルシウム、シュウ酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、アルミナ、カーボンブラック、カーボンナノチューブ類、高融点ナイロン、架橋アクリル、架橋スチレン、架橋ポリエチレン、ベンゾグアナミン、金、アルミニウム、銅、ニッケル等が挙げられる。これらのマット化剤は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。これらのマット化剤の中でも、分散安定性やコスト等の観点から、好ましくはりシリカ、硫酸バリウム、酸化チタンが挙げられる。また、マット化剤には、表面に絶縁処理、高分散性処理等の各種表面処理を施しておいてもよい。
【0077】
コーティング層16を形成する方法としては、特に制限されないが、例えば、コーティング層16を形成する2液硬化型樹脂を基材層11の一方の表面上に塗布する方法が挙げられる。マット化剤を配合する場合には、2液硬化型樹脂にマット化剤を添加して混合した後、塗布すればよい。
【0078】
コーティング層16の厚さとしては、コーティング層としての上記の機能を発揮すれば特に制限されないが、例えば、0.5~10μmとすることができ、好ましくは1~5μmである。
【0079】
-離型部分以外の表面-
本実施形態の電池用包装フィルムにおいて、離型部分以外の電池用包装フィルムの表面の接触角は、0~79°であることが好ましく、より好ましくは10~75°であり、さらに好ましくは30~70°である。接触角がこのような範囲にあることにより、電池を固定するための粘着テープを良好に接着させることができる。
【0080】
〔電池用包装フィルムの製造方法〕
本実施形態において、電池用包装フィルムの製造方法は、特に制限されないが、例えば、以下の方法が例示される。
まず、基材層11、接着層12、金属層13が順に積層された積層体(以下、「積層体A」と表記することもある)を形成する。積層体Aの形成は、具体的には、基材層11上又は必要に応じて表面が化成処理された金属層13に接着層12の形成に使用される接着剤を、押出し法、グラビアコート法、ロールコート法等の塗布方法で塗布・乾燥した後に、当該金属層13又は基材層11を積層させて接着層12を硬化させるドライラミネーション法によって行うことができる。
【0081】
次いで、積層体Aの金属層13上に、シーラント層14を積層させる。金属層13上にシーラント層14を直接積層させる場合には、積層体Aの金属層13上に、シーラント層14を構成する樹脂成分をグラビアコート法、ロールコート法等の方法により塗布すればよい。また、金属層13とシーラント層14の間に第2の接着層15を設ける場合には、例えば、(1)積層体Aの金属層13上に、第2の接着層15及びシーラント層14を共押出しすることにより積層する方法(共押出しラミネーション法)、(2)別途、第2の接着層15とシーラント層14が積層した積層体を形成し、これを積層体Aの金属層13上に熱ラミネーション法により積層する方法、(3)積層体Aの金属層13上に、第2の接着層15を形成させるための接着剤を押出し法や溶液コーティングした高温で乾燥さらには焼き付ける方法等により積層させ、この接着層上に予めシート状に製膜したシーラント層14をサーマルラミネーション法により積層する方法、(4)積層体Aの金属層13と、予めシート状に製膜したシーラント層14との間に、溶融させた第2の接着層15を流し込みながら、第2の接着層15を介して積層体Aとシーラント層14を貼り合せる方法(サンドラミネーション法)等が挙げられる。
【0082】
コーティング層16を設ける場合には、基材層11の金属層13とは反対側の表面に、コーティング層16を積層する。コーティング層16は、例えばコーティング層16を形成する上記の樹脂を基材層11の表面に塗布することに形成することができる。なお、基材層11の表面に金属層13を積層する工程と、基材層11の表面にコーティング層16を積層する工程の順番は、特に制限されない。例えば、基材層11の表面にコーティング層16を形成した後、基材層11のコーティング層16とは反対側の表面に金属層13を形成してもよい。
【0083】
上記のようにして、基材層11/接着層12/必要に応じて表面が化成処理された金属層13/必要に応じて設けられる接着層/シーラント層14/必要に応じて設けられるコーティング層16からなる積層体が形成されるが、接着層12及び必要に応じて設けられる第2の接着層15の接着性を強固にするために、更に、熱ロール接触式、熱風式、近又は遠赤外線式等の加熱処理に供してもよい。このような加熱処理の条件としては、例えば150~250℃で1~5分間が挙げられる。
【0084】
本実施形態において、積層体を構成する各層は、必要に応じて、製膜性、積層化加工、最終製品2次加工(パウチ化、エンボス成形)適性等を向上又は安定化するために、コロナ処理、ブラスト処理、酸化処理、オゾン処理等の表面活性化処理を施していてもよい。
【0085】
本実施形態において、上記のようにして得られた積層体の基材層11側の表面上(具体的には、基材層11の表面上またはコーティング層16の表面上)に、離型部分を形成する。離型部分の形成は、印刷および塗工の方法で施すことができる。
【0086】
〔電池用包装フィルムの用途〕
本実施形態の電池用包装フィルムは、正極、負極、電解質等の電池素子を密封して収容するための包装材料として使用される。具体的には後述の電池の包装材料として使用することができる。
【0087】
〔電池〕
本実施形態の電池3は、図3に示すように、角5を形成する表面4のうち、当該角5に隣接する部分に、接触角が80~150°であり、厚さが10μm以下である離型部分2を有する。
具体的には、本実施形態の電池は、少なくとも正極、負極、及び電解質を備えた電池素子を、先述の本発明の実施形態に係る電池用包装フィルムなどの電池用包装フィルムで包装されたものである。より具体的には、電池は、電池素子を、電池用包装フィルムを用いて、前記正極及び負極の各々に接続された金属端子が外側に突出させた状態で、電池素子の周縁にフランジ部(シーラント層14同士が接触する領域)が形成できるようにして被覆し、前記フランジ部のシーラント層14同士をヒートシールして密封させることによって、電池が提供される。また、或いは、離型部分を有しない電池用包装フィルムを用いて電池を製造し、次いで、その表面に離型部分を形成させてもよい。
【0088】
本実施形態において、電池は、一次電池、二次電池のいずれでもよいが、好ましくは二次電池である。二次電池の種類としては、特に制限されず、例えば、リチウムイオン電池、リチウムイオンポリマー電池、鉛畜電池、ニッケル・水素畜電池、ニッケル・カドミウム畜電池、ニッケル・鉄畜電池、ニッケル・亜鉛畜電池、酸化銀・亜鉛畜電池、金属空気電池、多価カチオン電池、コンデンサー、キャパシター等が挙げられる。これらの二次電池の中でも、電池としては、リチウムイオン電池及びリチウムイオンポリマー電池が挙げられる。
【0089】
本実施形態において、電池3の形状は、電池3の種類、用途等によって、任意にすることができるが、電池3は、図3に示すように、少なくとも1つの角5を有する。具体的には、少なくとも隣り合う2つの表面を有し、その2つの表面に挟まれる部分に少なくとも1つの角5が形成されている。そして、当該2つの表面のうち1つの表面4において、角5に隣接する部分に離型部分2が形成されている(以下、2つの表面のうち、角に隣接する部分に離型部分2が形成されている表面4を第1の表面と称し、他方の表面を第2の表面と称す)。また、当該第1の表面4を、電池を機器等の筐体に取り付ける際に、粘着テープが貼り付けられる貼付け面とすることができる。
具体的な電池3の形状は、特に限定されないが例えば、図3に示すように、平板状の形状にすることができる。電池3の形状が平板状である場合、1つの角5を形成する2つの表面のうち一方の表面(第1の表面)4が、平板の1対の平面の一方になり、1つの角5を形成する2つの表面のうち他方の表面(第2の表面)が、平板の側面とすることができる。換言すれば、離型部分2に隣接する角5は、電池を構成する複数の表面のうち広い範囲を占める相対的に大きい表面4を画定する角5とすることができる。
【0090】
このように、本実施形態の電池3において、角5を形成する表面のうち、当該角5に隣接する部分に所定の離型部分2を有することにより、粘着テープを貼付け面に対して角度をつけて電池から剥がす場合であっても、粘着テープへの負荷を低減し、粘着テープのちぎれを防止することができる。具体的には、図4に示すように電池3を筐体等の被着体に固定する際、粘着テープを、粘着テープの取手部分に隣接する粘着部分を電池3の離型部分2上に位置するように貼り付けることで、その後の粘着テープを取り剥がす際、粘着テープの取手部分を角度をつけて引っ張っても、粘着テープの中でも電池3の角5付近に貼り付く部分に、その伸び始めに大きな力が負荷されないようにすることができる。したがって、粘着テープへの負荷が低減され、ちぎれを有効に防止することができる。
また、離型部分2の厚さは比較的薄いので、離型部分2をきっかけに粘着テープによる電池の固定力が低下することを防止することができる。
【0091】
なお、本実施形態において、電池3中の離型部分2に隣接する角5は、特に限定されず、電池3を筐体に取り付ける際に粘着テープを貼り付ける表面、および当該粘着テープを取り剥がすための粘着テープの取手部分の位置によって任意に選択することができる。また、電池3の第1の表面4において、図3に示すように第1の表面4を画定する角のうちの1つの角5に隣接させて離型部分2を設けてもよいが、本実施形態では、第1の表面4を画定する複数の角のうちの複数の角5に隣接させて離型部分を設けてもよい。
また、電池の形状は湾曲した形状になっていてもよい。さらに、電池3の角5は、角ばった形状のものだけでなく、例えば面取り等されて丸みを帯びた形状となっていてもよい。
【0092】
本実施形態において、電池の形状は上述のように任意にすることができるが、例えば、厚さは0.1~50mmとすることができ、好ましくは1~20mmである。また、長さは30~300mmとすることができ、好ましくは50~150mmである。さらに幅は10~300mmとすることができ、好ましくは20~140mmである。
【0093】
本実施形態において、電池3の表面4に離型部分2を有しており、当該離型部分2は、電池3の角5を形成する表面のうち第1の表面4に少なくとも存在していれば、当該第1の表面4以外の当該電池3を構成する表面(第2の表面等)に離型部分が存在していてもよい。
【0094】
ところで、本実施形態において、第1の表面4において角5に隣接して形成される離型部分2は、当該角5の延在方向に直交する方向に沿って測った長さが0.5~30mmであることが好ましく、より好ましくは3~25mmであり、さらに好ましくは5~20mmである。当該長さを0.5mm以上にすることにより、粘着テープを取り剥がす際、粘着テープの取手部分を角度をつけて引っ張っても、粘着テープへの負荷が低減され、ちぎれを有効に防止することができる。
また、粘着テープの取手部分を角度をつけて引っ張る際、粘着テープの引張を開始したときに、粘着テープの中でも電池3の角5付近に貼り付く部分に、その伸び始めにより大きな力が加わることから、剥離部分2の長さは、粘着テープの伸び始めに剥離しやすくするのに足りる長さがあればよい。そして、離型部分2を、角5の延在方向に直交する方向に沿って測った長さは30mm以下とすることにより、粘着テープを剥がす際に粘着テープへの負荷を十分に低減することができる。また、当該長さを30mm以下にすることにより、剥離部分2が大きくなりすぎず、粘着テープによる電池3の固定力への影響を抑えることができる。
【0095】
また、第1の表面4中に角5に隣接して形成される離型部分2は、当該角の延在方向に沿って測った長さが5mm以上であることが好ましく、より好ましくは10mm以上であり、さらに好ましくは15mm以上である。
当該長さが、5mm以上であることにより、粘着テープを、離型部分2に合わせて貼り付けやすくすることができる。
また、当該長さの上限は、電池3の形状により変化するが、150mm以下であることが好ましく、より好ましくは、剥離部分2に隣接する角5の全て(電池の一辺の端から端までの全て)に設ける。角5の延在方向に沿って測った長さが100mm以下であることにより、高い接着性を実現することができる。
【0096】
また、本実施形態の第1の表面4において、第1の表面4中の、角5に隣接して形成された離型部分2以外の表面には、接触角が80~180°である部分が実質的に存在しないことが好ましい。ここでの「実質的に存在しない」とは、接触角が80~180°となる部分がわずかに点在していても、全体として本発明の効果を損なわない程度である場合には許容されるものとする。また、より好ましくは、第1の表面4中の、角5に隣接して形成された離型部分2以外の表面には、接触角が90~160°となる部分が存在しないことがより好ましい。
【0097】
ここで、本実施形態において、離型部分2についての接触角、厚さ、材料、またその形成方法等の構成および好適な構成は、先述した本実施形態の電池用包装フィルムと同様にすることができる。
【0098】
以上、図面を参照して本発明の実施形態を説明したが、本発明の電池用包装フィルムおよび電池は、上記の例に限定されることは無く、適宜変更を加えることができる。
【実施例
【0099】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明は下記の実施例になんら限定されるものではない。
【0100】
<測定及び評価方法>
各実施例および比較例で得られた電池用包装フィルムおよび電池の物性の測定及び評価は、次の方法に基づいて行った。
【0101】
(1)接触角の測定
協和界面科学株式会社製全自動接触角計「DM-501HI型」を用い、23℃及び50%RH中にて、離型ライナー表面へ精製水2μLを着滴させた後、1秒後の接触角を測定した。本測定における接触角の算出方法は、JIS R3257に記載の試験方法のうち、静滴法に従う。
【0102】
(2)離型部分の厚さの測定
当該離型部分の厚さは、NIKON社製DIGI MICRO MFC-101を用いて測定した。具体的には、電池用包装フィルムの離型部分での厚さを測定し、次いで電池用包装フィルムの離型部分でない部分での厚さを測定した。離型部分の厚さはそれぞれの差を計算することで得た。
【0103】
(3)剥離性
各実施例および比較例で得られた電池を、後述の方法により得た長さ120mm×幅20mmの粘着テープを用いて固定させた後、当該粘着テープの剥がしやすさについて評価した。具体的には、長さ120mm×幅20mmの粘着テープを準備し、当該粘着テープを、先端側の長さ20mmの部分を取手部分としてはみ出させた状態で、ステンレス板に貼った。ついで、実施例および比較例の電池を、粘着テープ上に、粘着テープの長手方向が電池の長手方向になるような向きで、電池の第1の表面の離型部分に隣接する角が、当該粘着テープの取手部分と粘着部分との境目に位置するように貼り付けた。さらに、5kgの荷重ローラーで1往復圧着した後、23℃に1時間または85℃に500時間放置し、その後、取手部分をつかみ、電池の第1の表面に対して90°の方向(テープ面と垂直の方向)に引き出した。実施例、比較例の電池を、固定して23℃に1時間放置した場合、また固定して85℃500時間放置した場合について、10個の試験片を評価してちぎれがなく剥がすことができるかを評価した。なお、剥離部分が電池の第1の表面に形成されていない場合(比較例1)も実施例1等と同様な方法でステンレス板に固定した。
◎:10個中10個が剥がすことができた。
〇:10個中7~9個が剥がすことができた。
△:10個中1~6個が剥がすことができた。
×:10個中1個も剥がすことができなかった。
【0104】
(4)接着性
各実施例および比較例で得られた重さ38gの電池を、後述の方法により得た長さ120mm×幅20mmの粘着テープを用いて固定させた後、当該粘着テープの接着性について評価した。具体的には、長さ120mm×幅20mmの粘着テープを準備し、当該粘着テープを、先端側の長さ10mmの部分を取手部分としてはみ出させた状態で、ステンレス板(厚さ1.5mm、長さ150mm、幅50mm、重さ85g)に貼った。
1時間後に23℃で1.5mの高さから試験片をコンクリート板に自由落下させ、電池がステンレス板から剥がれないかを評価した。
尚、落下のさせ方はステンレスの平面がコンクリート板に落ちるように落下させた。
◎:10個中10個とも剥がれなかった。
〇:10個中8~9個が剥がれなかった。
×:10個中1~7個が剥がれた。
【0105】
続いて、実施例、比較例で用いた各材料等は下記のとおりである。
【0106】
〔電池用包装フィルム(離型部分以外の部分)〕
まず、ポリエチレンテレフタレート樹脂とナイロン6をTダイ法により押出して共押出フィルムを作製し、逐次延伸法でMD、TD方向に二軸延伸した後、200℃で熱処理することにより、樹脂フィルムAを製造した。延伸倍率は、流れ方向(MD)3.4倍、幅方向(TD)3.8倍の条件とした。樹脂フィルムAの積層構造は、ポリエチレンテレフタレート(5μm)/ナイロン6(20μm)である。
次に、ガラス転移点0℃、重量平均分子量20×103、水酸基等量1.2個/molのポリオール化合物とトルエンジイソシアネート(TDI)のトリメチロールプロパン(TMP)アダクト体を主成分とする芳香族イソシアネートを1:3の比率で混合したウレタン樹脂系接着剤を用いて、樹脂フィルムAと、アルミニウム箔20μm(8021材、引張破断強度100MPa、引張破断伸度10%、0.2%耐力70MPa)を積層した。尚、接着剤の厚みは3μmであった。またポリエチレンテレフタレート樹脂層が基材層のシーラント層とは反対側に位置するようにした。
別途、接着層を構成する酸変性ポリプロピレン樹脂(不飽和カルボン酸でグラフト変性した不飽和カルボン酸グラフト変性ランダムポリプロピレン)と、シーラント層を構成するポリプロピレン(ランダムコポリマー)を共押出しすることにより、接着層とシーラント層からなる2層共押出しフィルムを作製した。次いで、前記で作製した基材層(樹脂フィルムA)/接着層(ウレタン樹脂系接着剤)/金属層(アルミニウム箔)からなる積層体の金属層に、前記で作製した2層共押出しフィルムの接着層が接するように重ねあわせ、金属層が120℃となるように加熱してサーマルラミネーションを行うことにより、基材層/接着層/金属層/接着層/シーラント層が順に積層された積層体を得た。得られた積層体を一旦冷却した後に、180℃になるまで加熱し、1分間その温度を保持して熱処理を施すことにより、電池用包装フィルムを得た。
【0107】
〔粘着テープ〕
粘着テープは、以下の方法により製造した。
(粘着テープT1)
粘着テープの粘着剤層を下記のようにして作製した。
攪拌機、還流冷却管、窒素導入管、温度計、及び滴下漏斗を備えた反応容器に、n-ブチルアクリレート75.94質量部、2-エチルヘキシルアクリレート5質量部、シクロヘキシルアクリレート15質量部、アクリル酸4質量部、4-ヒドロキシブチルアクリレート0.06質量部、及び酢酸エチル200質量部を仕込み、攪拌下、窒素を吹き込みながら65℃まで昇温させて混合物(1)を得た。次に、前記混合物(1)に、予め酢酸エチルに溶解した2,2’-アゾビスイソブチロニトリル溶液4質量部(固形分2.5質量%)を添加し、攪拌下、65℃で10時間ホールドして混合物(2)を得た。次に、前記混合物(2)を酢酸エチル98質量部で希釈し、200メッシュ金網でろ過することによって、質量平均分子量160万(ポリスチレン換算)のアクリル共重合体溶液(1)溶液を得た。次に、前記アクリル共重合体溶液(1)100質量部に対して、重合ロジンエステル系粘着付与樹脂(D-125、荒川化学工業株式会社)5質量部と石油系粘着付与樹脂(FTR(登録商標)6125、三井化学株式会社製)15質量部とを混合攪拌したのち、酢酸エチルを加えることによって固形分31質量%の粘着剤樹脂溶液(1)を得た。次に、前記粘着剤樹脂溶液(1)100質量部に対し、架橋剤(バーノックD-40、DIC株式会社製;トリレンジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体、イソシアネート基含有率7質量%、不揮発分40質量%)1.3質量部を添加し、均一になるよう攪拌混合した後、100メッシュ金網で濾過することによって固形分31.1質量%の粘着剤樹脂(1)を得た。
次に、得られた粘着剤樹脂(1)の固形分100質量部に対して、フィラー1(水酸化アルミニウム、BW153、日本軽金属株式会社製、体積平均粒径:18μm、粒度分布(D90/D10):12.3)を30質量部添加し、粘着剤組成物(1)を得た。
なお、前記フィラー粒子の粒度分布(D90/D10)は、レーザー回折散乱法を用いた測定機(マイクロトラック)を使用することにより前記フィラー粒子の粒子径を測定して、粒度分布に換算することで得られた値である。
前記粘着剤組成物(1)をアプリケーターにより乾燥後の厚みが30μmになるように離型ライナー(フィルムバイナ75E‐0010GT、藤森工業株式会社製、以下同様)上に塗布し、80℃にて3分間乾燥させることによって粘着剤層(I)を作製した。
【0108】
粘着テープの基材層を下記のようにして作製した
樹脂組成物(2)(スチレン-イソプレン共重合体及びスチレン-イソプレン-スチレン共重合体の混合物、前記化学式(1)で示されるスチレン由来の構造単位15質量%、前記樹脂組成物(2)の全量に対するスチレン-イソプレン共重合体の割合が12質量%)をヒートプレス(圧力0.5MPa、プレス板温度が130℃、プレス時間2分)により厚さが50μmの基材層を作製した。
続いて、基材層の両面に前記で作成した粘着剤層(1)を貼り合わせ0.2MPaで加圧しラミネートすることによって、粘着テープT1を作製した。
【0109】
(粘着テープT2)
攪拌機、還流冷却管、窒素導入管、温度計、及び滴下漏斗を備えた反応容器に、n-ブチルアクリレート97.97質量部、アクリル酸2.0質量部、4-ヒドロキシブチルアクリレート0.03質量部、及び重合開始剤としての2,2’-アゾビスイソブチロニトリル0.1質量部を、酢酸エチル100質量部からなる溶剤に溶解し、70℃で12時間重合して、質量平均分子量が200万(ポリスチレン換算)のアクリル共重合体溶液(2)を得た。次に、前記アクリル共重合体溶液(2)100質量部に対して、不均化ロジンのグリセリンエステル(スーパーエステルA100、荒川化学工業株式会社)25質量部と、重合ロジンのペンタエリスリトールエステル(ペンセルD135、荒川化学工業株式会社製、)5質量部と、スチレン系石油樹脂(FTR(登録商標)6100、三井化学株式会社製)20質量部とを添加し、酢酸エチルを加えて均一に混合し、固形分31質量%の粘着剤溶液(2)を得た。次に、前記粘着剤溶液(2)100質量部に対し、イソシアネート系架橋剤(コロネートL-45、日本ポリウレタン工業株式会社製、不揮発分45質量%)1.3質量部を添加し、均一になるよう攪拌混合することで固形分31.1質量%の粘着剤樹脂(2)を得た。
次に、得られた粘着剤樹脂(2)の固形分100質量部に対して、フィラー1(水酸化アルミニウム、BW153、日本軽金属株式会社製、体積平均粒径:18μm、粒度分布(D90/D10):12.3)を30質量部添加し、粘着剤組成物(2)を得た。
前記粘着剤組成物(1)をアプリケーターにより乾燥後の厚みが30μmになるように離型ライナー(フィルムバイナ75E‐0010GT、藤森工業株式会社製、以下同様)上に塗布し、80℃にて3分間乾燥させることによって粘着剤層(II)を作製した。
【0110】
粘着剤層(1)の代わりに粘着剤層(2)を用いて、粘着テープT1と同様に粘着テープT2を作製した。
【0111】
〔実施例1〕
上述の方法で製造した離型部分を有しない電池用包装フィルムの表面に、シリコーン離型剤をグラビア印刷の方法で塗布し離型部分を形成した。尚、シリコーン系離型剤は、シリコーン系剥離剤(信越化学工業社製、製品名「KS-847H」)100質量部と、白金触媒(信越化学工業社製、製品名「CAT-PL-50T」)2質量部とからなるものを用いた。
離型剤の厚さ及び接触角は表1の通りであった。
次いで、得られた電池用包装フィルムを所定の形状に切り出し、正極、負極、電解質等の電池素子を包装した。包装後の電池の形状は、平板状であり、厚さ2.8mm、長さ110mm、幅49mmであった。また、離型部分を、平板の1対の平面のうち一方の平面(第1の表面)であって、幅方向に延びる角(49mmの幅)に沿うように位置させた。また、この際、角から、角の延在方向(幅方向)に直交する方向(長さ方向)に沿って測った長さが表1に示す所定の長さになるように位置させた。また、離型部分の角の延在方向(幅方向)に沿って測った長さは49mmであった。
【0112】
〔実施例2、3〕
離型部分を、当該角から角の延在方向(幅方向)に直交する方向(長さ方向)に沿って測った長さを表1に示すように変更した以外、実施例1と同様に製造した。
【0113】
〔実施例4〕
シリコーン離型剤をポリエチレン離型剤に変更した以外、実施例2と同様に製造した。
離型剤の厚さ及び接触角は表1の通りであった。尚、ポリエチレン系離型剤はエチレンプロピレン共重合体(JSR株式会社製「EP02P」、エチレン/プロピレン=81/19(モル比)、重量平均分子量96700(ポリスチレン換算)、分子量分布2.24、MFR=3.2g/10分)2gを、トルエン、メチルエチルケトンの混合溶媒100g(トルエン/メチルエチルケトン=85/15(重量比))に溶解したものを用いた。
【0114】
〔実施例5〕
シリコーン離型剤をフッ素樹脂離型剤に変更した以外、実施例2と同様に製造した。
離型剤の厚さ及び接触角は表1の通りであった。尚、フッ素樹脂離型剤としては、MS175(ダイキン工業社製)を用いた。
【0115】
〔実施例6〕
実施例2の電池用包装フィルムを用い、粘着テープ1の代わりに粘着テープ2を用いた以外、実施例2と同様に製造した。
【0116】
〔比較例1〕
離型部分を形成していない電池用包装フィルムを用いて電池を作製した以外、実施例1と同様に製造した。
【0117】
〔比較例2〕
シリコーン離型剤を塗布する代わりにナイロン6(5μm)を接着剤(1μm)で貼り合せた以外、実施例2と同様に製造した。離型部分の厚さ及び接触角は表1の通りであった。
【0118】
〔比較例3〕
シリコーン離型剤の厚みを1μmから20μmに変更した以外、実施例2と同様に製造した。離型部分の厚さ及び接触角は表1の通りであった。
【0119】
〔参考例〕
市販のスマートフォンの電池(Apple社製iPhone(登録商標)8)を用いて評価した。離型部分はなく、表層の接触角は表1の通りであった。
【0120】
【表1】
【0121】
表1より、表面上に、接触角が80~180°であり、厚さが10μm以下である離型部分を有する電池用包装フィルムである実施例1~6は、粘着テープを貼付け面に対して角度をつけて剥がす場合であっても、粘着テープへの負荷を低減し、粘着テープのちぎれを防止することができることがわかる。一方、剥離部分を有しない比較例1は、粘着テープを貼付け面に対して角度をつけて剥がす場合、粘着テープのちぎれを防止することができなかった。また、剥離部分の接触が80°未満である比較例2は、長時間経過後に粘着テープを貼付け面に対して角度をつけて剥がす場合、粘着テープのちぎれを防止することができなかった。さらに、剥離部分の厚さが10μm超である比較例3は、接着性が十分ではなかった。
【産業上の利用可能性】
【0122】
本発明によれば、粘着テープを貼付け面に対して角度をつけて剥がす場合であっても、粘着テープへの負荷を低減し、粘着テープのちぎれを防止することができる、電池用包装フィルムおよび電池を提供することができる。
【符号の説明】
【0123】
1:電池用包装フィルム
2:離型部分
3:電池
4:第1の表面
5:角
11:基材層
12:接着層
13:金属層
14:シーラント層
15:第2の接着層
16:コーティング層
20:電池
21:筐体
22:粘着テープ
23:角
図1
図2
図3
図4