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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-13
(45)【発行日】2023-03-22
(54)【発明の名称】SOIウェーハの貼合わせ方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/02 20060101AFI20230314BHJP
   H01L 27/12 20060101ALI20230314BHJP
   H01L 21/683 20060101ALI20230314BHJP
   H01L 21/68 20060101ALI20230314BHJP
   B23K 20/00 20060101ALI20230314BHJP
【FI】
H01L27/12 B
H01L21/02 B
H01L21/68 N
H01L21/68 M
B23K20/00 310L
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020020016
(22)【出願日】2020-02-07
(65)【公開番号】P2021125647
(43)【公開日】2021-08-30
【審査請求日】2022-02-08
(73)【特許権者】
【識別番号】302006854
【氏名又は名称】株式会社SUMCO
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100165696
【弁理士】
【氏名又は名称】川原 敬祐
(72)【発明者】
【氏名】岡部 秀光
(72)【発明者】
【氏名】廣重 毅
(72)【発明者】
【氏名】森川 靖之
【審査官】宇多川 勉
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-005318(JP,A)
【文献】特開2010-245396(JP,A)
【文献】特開平11-274442(JP,A)
【文献】特開2010-034132(JP,A)
【文献】特開2003-031779(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/02
H01L 21/683
H01L 21/68
H01L 27/12
B23K 20/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持基板となる支持側ウェーハおよび、半導体デバイスを作り込む、前記支持側ウェーハより大径の活性側ウェーハのどちらか一方、もしくは両方に酸化膜を形成し、該酸化膜を介して前記径差を有する支持側ウェーハおよび活性側ウェーハを貼合わせる、SOIウェーハの貼合わせ方法であって、
前記支持側ウェーハと前記活性側ウェーハとの貼合わせを行う、円盤状のメインステージと前記メインステージの半径方向外側に隣接して設置するサブステージとを有する貼合わせステージの上に、前記支持側ウェーハを載置する載置工程、
前記載置工程の前または後に、前記メインステージに対して前記サブステージを持ち上げて該サブステージと前記メインステージとに跨がって載置される、前記支持側ウェーハに傾斜および、下方に凸となる撓みを与えるステージ工程および、
前記傾けた支持側ウェーハの上に前記活性側ウェーハを載置し、前記支持側ウェーハ上にて前記支持側ウェーハの傾斜方向へ前記活性側ウェーハを移動させ、前記支持側ウェーハに対して前記活性側ウェーハが前記傾斜方向へずれる相互配置にて、前記活性側ウェーハを前記支持側ウェーハに固定する位置決め工程
を有する、SOIウェーハの貼合わせ方法。
【請求項2】
前記位置決め工程の後に、前記支持側ウェーハと前記活性側ウェーハとの最大ずれ量を測定し、該測定値が所定の範囲から外れる場合は、前記支持側ウェーハから前記活性側ウェーハを剥がし、該支持側ウェーハを前記載置工程に供し、該活性側ウェーハを位置決め工程に供する、請求項1に記載のSOIウェーハの貼合わせ方法。
【請求項3】
前記所定の範囲が20μm以上1000μm以下である請求項2に記載のSOIウェーハの貼合わせ方法。
【請求項4】
前記ステージ工程において前記活性側ウェーハに与える傾きは、前記サブステージの水平面に対する傾斜角度で0.1°以上1.0°以下である請求項1、2または3に記載のSOIウェーハの貼合わせ方法。
【請求項5】
請求項1から4のいずれかに記載のSOIウェーハの貼合わせ方法により得られる、貼合わせウェーハを、前記活性側ウェーハの、前記支持側ウェーハの周縁部から突出する部分を支点として、ボートに装填して熱処理を行って前記支持側ウェーハと前記活性側ウェーハとを結合する、SOIウェーハの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置の基板として使用されるSOI(Silicon On Insulator)ウェーハの貼合わせ方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
SOIウェーハは、支持側基板上に、酸化シリコン(SiO)等の絶縁膜、およびデバイス活性層として使用される単結晶シリコン層が順次形成された構造を有する。SOIウェーハの代表的な製造方法の一つに、貼合せ法がある。この貼合せ法は、支持基板となる支持側ウェーハおよび活性層用基板となる活性側ウェーハの少なくとも一方に酸化膜(BOX(Buried Oxide)層)を形成し、次いでこれらのウェーハを、酸化膜を介して貼合わせて貼合わせウェーハとした後、該貼合わせウェーハを1200℃程度の高温にて接合するための熱処理を施すことにより、SOIウェーハを製造するものである。
【0003】
前記熱処理は、例えば、特許文献1の図34に記載されるように、複数枚の前記貼合わせウェーハが装填されたボートを、横型拡散炉に導入し、この炉内において貼合わせウェーハを加熱して行われる。各貼合わせウェーハをボートへ装填するには、特許文献1の図36に示されるように、ボートに形成された複数の支持部(158)内に貼合わせウェーハの周縁部を収容することによって、ボートに貼合わせウェーハがその径方向に立つ姿勢にて装填されている。かように、貼合わせウェーハを装填したボートを横型拡散炉に導入して加熱処理を行った場合に、貼合わせウェーハの支持側ウェーハに欠陥が生じることがあり、その改善が希求されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2003-31779号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
さて、貼合わせウェーハをボートへ装填するには、上記した特許文献1の図37に示される、支持部(158)として凹部(160)を用いるのが一般的である。すなわち、図1に示すように、ボート10に形成された複数の凹部11内に貼合わせウェーハ12の周縁部を収容することによって、ボート10に貼合わせウェーハ12をその径方向に直立する姿勢にて装填されるのが一般的である。凹部11は、各貼合わせウェーハ12に対して、例えば同一円弧上の離間する複数点に設けられ、複数点支持によって各貼合わせウェーハ12が直立姿勢にて装填されることになる。
【0006】
この凹部11内に収容された貼合わせウェーハ12は、凹部11の底面に該ウェーハ周縁部が部分的に強く当接することになる。すると、加熱後の貼合わせウェーハ12を凹部11から取り出す際に、図1(b)に示すように、貼合わせウェーハ12を覆っている酸化膜13が前記当接部にて凹部11の底面に固着されて部分的に剥離する。次いで、ボート10から取り出した貼合わせウェーハ12は、図2(a)に示すように、支持側ウェーハ12aに貼り付けた支持側ウェーハ12bの周辺部の面取りを行った後に、同図(b)に示すように、エッチング加工を施してから、支持側ウェーハ12bを研削する薄膜化工程に供することになる。前記した熱処理後において、酸化膜13の剥離が生じると、その剥離部14からエッチングが優先して進行する結果、ここを起点としてピット状の欠陥が拡大することが判明した。
【0007】
ここで、特許文献1には、上記した酸化膜剥離に起因した課題ではないが、凹部と貼合わせウェーハの周縁部との接触による同周縁部の傷付きを問題として掲げ、その解決手段として、同文献1の図10に示されるように、支持側ウェーハとこの支持側ウェーハより大径の活性側ウェーハとを貼合わせ、該貼合わせ後の貼合わせウェーハを、活性側ウェーハが支持側ウェーハの周縁部から突出する部分が凹部の底面に接触し、支持側ウェーハの周縁部が凹部の底面に接触しない状態にて、貼合わせウェーハをボートに装填することが記載されている。
【0008】
特許文献1に提案された貼合わせウェーハは、支持側ウェーハとこの支持側ウェーハより大径の活性側ウェーハとの径差(以下、単に径差という)を5~10mmとし活性側ウェーハを確実に突出させているが、この突出部分を大きくとることは後工程におけるチャックや加工の障害になって生産性を阻害し、またノッチを設けることを難しくすることから、上記径差は小さいことが希求される。
【0009】
特許文献1に提案されたウェーハの貼合わせ手法において、上記径差を極力小さくするには、支持側ウェーハとこの支持側ウェーハより大径の活性側ウェーハとの貼合わせを、両者の中心が一致するように正確に行う必要がある。この場合、貼合わせ後に突出する活性側ウェーハの部分は当然狭くなるため、正確に貼合わせて径差分の突出を確保しないと、活性側ウェーハのみをボート底面に接触させることが難しくなる。その結果、支持側ウェーハがボートに接触する機会が増加することになって、当接部分が傷付くことになる。支持側ウェーハは切削加工を施さないのが基本であり、この傷は製品においても残ることになる。
【0010】
そこで、本発明は、支持側ウェーハとこの支持側ウェーハより大径の活性側ウェーハとの貼合わせを、例え両者の径差が小さい場合であっても、その径差が確実に活性側ウェーハの突出部となる、貼合わせを実現するための方途について提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
発明者らは、上記課題を解決するため、支持側ウェーハとこの支持側ウェーハより大径の活性側ウェーハとの貼合わせ方法について鋭意検討したところ、貼合わせステージ上での貼合わせ手順を工夫することによって、径差が小さい場合であっても正確な貼合わせを実現できることを見出し、本発明を完成するに到った。
本発明は、以上の知見にさらに検討を加えてなされたものであり、その要旨は以下のとおりである。
【0012】
(1)支持基板となる支持側ウェーハおよび、半導体デバイスを作り込む、前記支持側ウェーハより大径の活性側ウェーハのどちらか一方、もしくは両方に酸化膜を形成し、該酸化膜を介して前記径差を有する支持側ウェーハおよび活性側ウェーハを貼合わせる、SOIウェーハの貼合わせ方法であって、
前記支持側ウェーハと前記活性側ウェーハとの貼合わせを行う、円盤状のメインステージと前記メインステージの半径方向外側に隣接して設置するサブステージとを有する貼合わせステージの上に、前記支持側ウェーハを載置する載置工程、
前記載置工程の前または後に、前記メインステージに対して前記サブステージを持ち上げて該サブステージと前記メインステージとに跨がって載置される、前記支持側ウェーハに傾斜および、下方に凸となる撓みを与えるステージ工程および、
前記傾けた支持側ウェーハの上に前記活性側ウェーハを載置し、前記支持側ウェーハ上にて前記支持側ウェーハの傾斜方向へ前記活性側ウェーハを移動させ、前記支持側ウェーハに対して前記活性側ウェーハが前記傾斜方向へずれる相互配置にて、前記活性側ウェーハを前記支持側ウェーハに固定する位置決め工程
を有する、SOIウェーハの貼合わせ方法。
【0013】
(2)前記位置決め工程の後に、前記支持側ウェーハと前記活性側ウェーハとの最大ずれ量を測定し、該測定値が所定の範囲から外れる場合は、前記支持側ウェーハから前記活性側ウェーハを剥がし、該支持側ウェーハを前記載置工程に供し、該活性側ウェーハを位置決め工程に供する、前記(1)に記載のSOIウェーハの貼合わせ方法。
【0014】
(3)前記所定の範囲が20μm以上1000μm以下である前記(2)に記載のSOIウェーハの貼合わせ方法。
【0015】
(4)前記ステージ工程において前記活性側ウェーハに与える傾きは、前記ステージの水平面に対する傾斜角度で0.1°以上1.0°以下である前記(1)、(2)または(3)に記載のSOIウェーハの貼合わせ方法。
【0016】
(5)前記(1)から(4)のいずれかに記載のSOIウェーハの貼合わせ方法により得られる、貼合わせウェーハを、前記活性側ウェーハの、前記支持側ウェーハの周縁部から突出する部分を支点として、ボートに装填して熱処理を行って前記支持側ウェーハと前記活性側ウェーハとを結合する、SOIウェーハの製造方法。
【発明の効果】
【0017】
本発明の方法によれば、支持側ウェーハとこの支持側ウェーハより大径の活性側ウェーハとの貼合わせを、例え両者の径差が小さい場合であっても、その径差が確実に活性側ウェーハの突出部となる、貼合わせを実現することができる。従って、得られる貼合わせウェーハには明確な突出部が存在するため、この貼合わせウェーハを熱処理用のボートに装着する際、ボートにおいて、活性側ウェーハの周縁部を接触させる一方で、支持側ウェーハの周縁部並びに表面のいずれも接触させない、貼合わせウェーハの装填姿勢を実現できる。従って、この貼合わせウェーハ装填後のボートを例えば横型拡散炉に導入して熱処理を行う際に、貼合わせウェーハの支持側ウェーハがボートと接触することが未然に防がれるため、接合強度が高くかつ欠陥のないSOIウェーハを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】ウェーハを装着したボートの側面図である。
図2】ボートの凹溝に対するウェーハの着脱を示す図である。
図3】載置工程の説明図である。
図4】ステージ工程の説明図である。
図5】位置決め工程の説明図である。
図6】位置決め工程の説明図である。
図7】位置決め工程の説明図である。
図8】位置決め工程の説明図である。
図9】ウェーハを装着したボートの側面図である。
図10】第3実施形態を示す工程フロー図である。
図11】貼合わせウェーハのずれ量の測定装置を示す図である。
図12】(a)は貼合わせウェーハの周方向位置の表示法を示す図であり、(b)はずれ量の測定結果を示す図である。
図13】貼合わせウェーハを熱処理に供した際のピット発生率を比較する図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明のSOIウェーハの貼合わせ方法は、次のa)からc)の工程を行うところに特徴がある。
a)前記支持側ウェーハと前記活性側ウェーハとの貼合わせを行う、円盤状のメインステージと該メインステージの半径方向外側に隣接して設置するサブステージとを有する貼合わせステージ上に前記支持側ウェーハを載置する載置工程。
b)前記載置工程の前または後に、前記メインステージに対して前記サブステージを持ち上げて該サブステージと前記メインステージとに跨がって載置される、前記支持側ウェーハに傾斜および、下方に凸となる撓みを与えるステージ工程。
c)前記傾けた支持側ウェーハの上に前記活性側ウェーハを載置し、前記支持側ウェーハ上にて前記支持側ウェーハの傾斜方向へ前記活性側ウェーハを移動させ、前記支持側ウェーハに対して前記活性側ウェーハが前記傾斜方向へずれる、相互配置にて、前記活性側ウェーハを前記支持側ウェーハに固定する位置決め工程。
上記の各工程について、以下の実施形態毎に詳しく説明する。
【0020】
(i)第1実施形態
[載置工程]
載置工程では、図3に示すように、支持側ウェーハ1を貼合わせステージ2上に載置する。この貼合わせステージ2は、円盤状のメインステージ20および該メインステージ20の半径方向外側に隣接して設置するサブステージ21をそなえる。図示例において、サブステージ21は、メインステージ20の半径方向外側に延びる長辺を有する矩形状の台座であり、メインステージ20との接触部を中心に上方に向かって揺動可能に設けられる。
支持側ウェーハ1は、メインステージ20上において、例えば円周等分位置に配置するガイドピン22aおよび22bと、ウェーハに予め形成されているノッチまたはオリフラ部分と係合するガイド23とに案内され、メインステージ20と同心となる位置に保持される。なお、ガイド23には、支持側ウェーハ1に設けてあるノッチ1aを係合させてメインステージ20上の支持側ウェーハ1の位置決めを行うものであり、このガイド23によりノッチ1aの位置を正確に把握することができる。
【0021】
[ステージ工程]
ステージ工程では、図4に示すように、貼合わせステージ2上に支持側ウェーハ1を載せた状態において、上記したサブステージ21を上方に向かって揺動し、メインステージ20との接触部とは逆側をメインステージ20より持ち上げる。このとき、ガイドピン22aおよび22bとガイド23は支持側ウェーハ1から離間させておく。サブステージ21を持ち上げると、該サブステージ21とメインステージ20との間を跨いでいる支持側ウェーハ1には、サブステージ21側からメインステージ20へ下る傾斜Sが与えられるとともに、メインステージ20およびサブステージ21の上面と支持側ウェーハ1の下面との間に隙間が生じて、この隙間に向かって支持側ウェーハ1が自重により撓む結果、下方に凸となる撓みBが与えられる。
【0022】
なお、上記したステージ工程では、貼合わせステージ2上に支持側ウェーハ1を載せた状態において、上記したサブステージ21を上方に向かって揺動しているが、貼合わせステージ2上に支持側ウェーハ1を載せる前に、サブステージ21を上方に向かって揺動しておいてもよい。すなわち、サブステージ21を上方に向かって揺動し、メインステージ20との接触部とは逆側をメインステージ20より持ち上げた状態の、貼合わせステージ2に支持側ウェーハ1を載せる。この場合においても、支持側ウェーハ1は、サブステージ21とメインステージ20との間を跨ぐことになり、上記と同様に、支持側ウェーハ1には、サブステージ21側からメインステージ20へ下る傾斜Sが与えられるとともに、下方に凸となる撓みBが与えられる。
【0023】
ここで、支持側ウェーハ1を載せる貼合わせステージ2において、前記サブステージ21の水平面に対する傾斜角度αは0.1°以上1.0°以下であることが好ましい。すなわち、傾斜角度αが0.1°未満になると、支持側ウェーハ1の撓みが小さくなって、後述する位置決め工程において、支持側ウェーハ1の上に載せた活性側ウェーハ3を傾斜Sに沿ってスムーズに滑らせることが難しくなる、おそれがある。一方、傾斜角度αが1.0°を超えると、支持側ウェーハ1の撓みが大きくなって、後述する位置決め工程において、支持側ウェーハ1の上に載せた活性側ウェーハ3が傾斜Sに沿って滑りすぎて活性側ウェーハ3の位置合わせが難しくなる、おそれがある。さらに、支持側ウェーハ1の撓みが大きくなりすぎると、支持側ウェーハ1と活性側ウェーハ3との貼合わせが周端側から先に進展し、ウェーハ中央域に大きなボイドが発生する、おそれもある。
【0024】
さらに、メインステージ20も水平面に対して傾斜して設置することが好ましい。すなわち、メインステージ20に与える傾斜は、該ステージ20に載置した支持側ウェーハ1において、その中心からガイド23に向かって下る方向になる。この傾斜を設けることによって、ガイド23にウェーハのノッチを合わせることが容易になる。このメインステージ20の傾斜方向とサブステージの傾斜方向とが合成される結果、図4(a)に示すように、支持側ウェーハ1は斜め右下に傾斜することになる。なお、このメインステージ20の水平面に対する傾斜角度は0.1~0.5°が好ましい。
【0025】
また、支持側ウェーハ1に与える撓みBは、撓みが最大になる箇所の撓み量で86μm以上864μm以下であることが好ましい。すなわち、撓み量が86μm未満になると、支持側ウェーハ1の撓みが小さくなって、後述する位置決め工程において、支持側ウェーハ1の上に載せた活性側ウェーハ3を傾斜Sに沿ってスムーズに滑らせることが難しくなる、おそれがある。一方、撓み量が864μmを超えると、支持側ウェーハ1の撓みが大きくなって、後述する位置決め工程において、支持側ウェーハ1の上に載せた活性側ウェーハ3が傾斜Sに沿って滑りすぎて活性側ウェーハ3の位置合わせが難しくなる、おそれがある。さらに、支持側ウェーハ1の撓みが大きくなりすぎると、支持側ウェーハ1と活性側ウェーハ3との貼合わせが周端側から先に進展し、ウェーハ中央域に大きなボイドが発生する、おそれもある。
【0026】
以上のステージ工程において、メインステージ20には例えば径が90mm程度およびサブステージ21には例えば長さ60mm程度の各ステージが適合するが、ステージのサイズは特に限定されず、支持側ウェーハ1に上記した傾斜Sおよび撓みBが与えられる範囲において自由に設計可能である。
【0027】
[位置決め工程]
位置決め工程では、図5に示すように、上記のステージ工程において前記傾斜Sおよび撓みBが付与された支持側ウェーハ1の上に活性側ウェーハ3を載置する。支持側ウェーハ1と活性側ウェーハ3との間には、前記撓みBに起因する空間Aが形成されるとともに、支持側ウェーハ1に傾斜S(図4参照)が与えられているため、支持側ウェーハ1上の活性側ウェーハ3は、前記傾斜Sに従って傾斜Sの向きに滑動する。この滑動は、例えば活性側ウェーハ3がガイド23に当接することで停止する。或いは、ガイド23に当接する手前で滑動が止まる場合や、ガイド23に当接後も滑動が続く場合があってもよい。いずれの場合も、次のガイドピン22aおよび22bとガイド23の移動によって、活性側ウェーハ3は所期した位置まで案内されることになる。
【0028】
次いで、支持側ウェーハ1上での活性側ウェーハ3の滑動が停止したならば、図7に示すように、離間させていたガイドピン22aおよび22bとガイド23を活性側ウェーハ3側に移動する。ガイドピン22aおよび22bとガイド23を所定の位置まで移動する過程において、例えば活性側ウェーハ3がガイド23に当接して停止した場合は、活性側ウェーハ3は傾斜Sと逆向きに若干移動する。或いは、活性側ウェーハ3がガイド23に当接する手前で滑動が止まった場合は、ガイドピン22aおよび22bとガイド23を所定の位置まで移動する過程において、活性側ウェーハ3は傾斜Sの向きに若干移動する。
このガイドピン22aおよび22bとガイド23による操作を、活性側ウェーハ3の例えばノッチ3aが前記ガイド23に係合するまで行う。活性側ウェーハ3のノッチ3aが前記ガイド23に係合したならば、当該活性側ウェーハ3は前記ガイドピン22aおよび22bとガイド23との3点にて保持される。その結果、支持側ウェーハ1に対して活性側ウェーハ3がずれる相互配置が実現される。なお、支持側ウェーハ1に対する活性側ウェーハ3のずれは、支持側ウェーハ1と活性側ウェーハ3との径差分が前記傾斜S方向へずれていることが好ましい。
【0029】
なお、上記した位置決め工程では、支持側ウェーハ1に対する活性側ウェーハ3の位置決めをガイドピン22aおよび22bとガイド23の操作によって行っているが、ガイド23は所定の位置に固定し、ガイドピン22aおよび22bの移動操作によって上記した位置決めを行ってもよい。
【0030】
かくして得られる支持側ウェーハ1と活性側ウェーハ3とが前記傾斜S方向へずれる、相互配置は、最もずれている位置(以下、最大ずれ位置ともいう)を、例えばノッチ位置に対して特定することが容易である。すなわち、前記傾斜Sの向きをノッチ基準で特定しておけば、この傾斜Sの延長上に最大ずれ位置が存在することになるため、最大ずれ位置の特定が容易である。
【0031】
前記相互配置にある支持側ウェーハ1と活性側ウェーハ3は、前記サブステージ21の端部側から荷重が付加されるように錘(図示せず)を載せることによって、図8に示すように、支持側ウェーハ1と活性側ウェーハ3との隙間(空気層)を排除して両者の貼合わせを実現する。
【0032】
ここで、支持側ウェーハ1および活性側ウェーハ3間での傾斜S方向への最大ずれ量tは、20μm以上1000μm以下であることが好ましい。すなわち、最大ずれ量tを20μm以上とすることによって、図9に示すように、貼合わせウェーハWをボートに装填して行う熱処理において、ボート10に対して、活性側ウェーハ3の周縁部を接触させる一方で、支持側ウェーハ1の周縁部並びに表面のいずれも接触させない、貼合わせウェーハの装填が確実に実現される。一方、最大ずれ量tを1000μm以下とすることによって、支持側ウェーハ1および活性側ウェーハ3の各ノッチがガイド23に確実に収容されて、支持側ウェーハ1および活性側ウェーハ3の位置決めが確実になされる。
【0033】
なお、ボート10に対して活性側ウェーハ3の周縁部を接触させる位置は、最大ずれ量tを有する前記最大ずれ位置であることが重要である。なぜなら、図9に示すように、ボート10に対して支持側ウェーハ1の周縁部並びに表面のいずれも接触させないためには、ボート10の凹部底から支持側ウェーハ1の周縁部が十分に離隔している必要があり、そのためには、最大ずれ位置において、ボート10の凹部底に活性側ウェーハ3の周縁部が接している必要がある。この点、本発明で得られる貼合わせウェーハは、上記のとおり、ノッチ基準で最大ずれ位置が特定できるため、この最大ずれ位置において、ボート10の凹部底に活性側ウェーハ3の周縁部を確実に当接することができる。
【0034】
(ii)第2実施形態
第2実施形態は、上記した載置工程において、ガイドピン22aおよび22bとガイド23とによって、支持側ウェーハ1をメインステージ20に対して位置決めした後、ガイドピン22aおよび22bとガイド23とを支持側ウェーハ1から離間し、上記したステージ工程および位置決め工程を行う。すなわち、ステージ工程において支持側ウェーハ1に傾斜Sおよび撓みBを付与し、次いで位置決め工程において、傾斜Sおよび撓みBが付与された支持側ウェーハ1の上に活性側ウェーハ3を載置し支持側ウェーハ1上の活性側ウェーハ3を、前記傾斜Sに従って傾斜Sの向きに滑動させる。活性側ウェーハ3の滑動が停止した段階で、離間させていたガイドピン22aおよび22bとガイド23とを元の位置に復帰させ、ガイド23に支持側ウェーハ1のノッチ1aおよび活性側ウェーハ3のノッチ3aを収めて、好ましくは支持側ウェーハ1と活性側ウェーハ3との径差分が前記傾斜S方向へずれる、所期した相互配置とする。
【0035】
この第2実施形態では、ステージ工程において支持側ウェーハ1に付与する傾斜Sの大きさにもよるが、位置決め工程において、支持側ウェーハ1上での活性側ウェーハ3の滑動が続いて活性側ウェーハ3が支持側ウェーハ1より傾斜S方向に径差分を超えて突出する位置まで移動する場合がある。その際にも、離間させていたガイドピン22aおよび22bとガイド23とを元の位置に復帰させれば、ガイド23に支持側ウェーハ1のノッチ1aおよび活性側ウェーハ3のノッチ3aが収まり、支持側ウェーハ1と活性側ウェーハ3との径差分が前記傾斜S方向へずれる、所期した相互配置が実現する。すなわち、支持側ウェーハ1上での活性側ウェーハ3の滑動方向が傾斜S方向に規制されていることから、ガイドピン22aおよび22bとガイド23とを元の位置に復帰させれば、所期した相互配置が自ずと実現することになる。
【0036】
(iii)第3実施形態
第3実施形態は、図10に工程フローを示すように、上記した位置決め工程の後に、貼合わせウェーハにおける最大ずれ量tを測定し、該測定値が所定の範囲から外れる場合は、支持側ウェーハ1から活性側ウェーハ3を剥がし、位置決め工程を再度行うものである。具体的には、支持側ウェーハ1から活性側ウェーハ3を剥がし、支持側ウェーハを前記載置工程に供し、活性側ウェーハを位置決め工程に供して位置合わせを行うことになる。最大ずれ量tの測定値が所定の範囲内にあれば、貼合わせ強化熱処理工程における熱処理に供する。この熱処理を経た貼合わせウェーハは、面取りが施されて製品SOIウェーハとして出荷される。
【0037】
ここで、前記所定の範囲としては、上記した最大ずれ量tの好適値である20μm以上1000μm以下の範囲を適用することができる。特には、最大ずれ量tが支持側ウェーハ1と活性側ウェーハ3との径差分であることが最も好ましい。或いは、熱処理に用いるボートの形状等に応じて所定の範囲を設定してもよい。
【0038】
なお、最大ずれ量tの測定手法は特に限定されないが、例えば図11に示す測定装置4を用いればよい。すなわち、台座41に貼合わせ後のウェーハWを載置し、このウェーハWの端面に対して照明器42から照明を当て、照明器42と対向配置したカメラ43にて撮影を行って、得られたウェーハWの端面写真から、ずれ量を測定する。この測定を、ウェーハWの全周にわたって行い、測定された最大値を最大ずれ量tとする。
【0039】
さらには、例えば、ウェーハWのノッチを基準にして特定位置のみを測定することも可能である。この測定手法を経て最終的に特定位置のずれ量が上記した所定の範囲を満足することになれば、ずれ量が所定の範囲にある位置がノッチを基準に特定される。従って、ずれ量が所定の範囲にある位置をボードとの接触点にすることを確実に実現できる。
【実施例
【0040】
図3から図8に示した要領に従って、支持側ウェーハ1に対して直径で40μm大きい径の活性側ウェーハ3との貼合わせウェーハを作製した。まず、図3および4に示したところに従って、図12(a)に示すように、支持側ウェーハ1のノッチ1aを0°として周方向位置を時計回りに一周360°までの角度表示としたときの、315°の位置に向かって傾斜Sおよび撓み量250~260μmの撓みBを、支持側ウェーハ1に付与した。なお、このときのサブステージの傾斜角度αは0.3°とした。次いで、この支持側ウェーハ1上に活性側ウェーハ3を載せ、図5から図8に示したところに従って、支持側ウェーハ1と活性側ウェーハ3との位置合わせを行った。
【0041】
以上の位置合わせを行って得られた貼合わせウェーハWについて、その周方向各位置における、ずれ量を測定した。その測定結果を図12(b)に示すように、傾斜Sの向きに合致する315°の位置において、上記の径差40μmと同じずれ量が得られていることが確認された。
【0042】
また、上記の貼合わせ後の貼合わせウェーハWを、図9に示した通りにボートに装填し、貼合わせ強化熱処理を施した。その際、図1(b)にて説明した、支持側ウェーハにおけるピットの発生率を測定した結果について図13に示す。ここで、図13における従来とは、支持側ウェーハ1に対して直径で40μm大きい径の活性側ウェーハ3とを従前の手法に従って、すなわちサブステージを持ち上げて支持側ウェーハ1に傾きおよび撓みを与えることなしに、単に貼合わせを行った事例である。なお、ピットの発生率は、検査したウェーハ全数においてピットが発生していたウェーハの割合を調査し、従来の割合を1.0としたときの指数とした。このように算出したピットの発生率を、図13に示す。図13に示すように、ピットの発生率は、従来の1.0から0.15まで低下することができた。
【0043】
ちなみに、上述の特許文献1の図10に示された貼合わせウェーハの作製を試みた。すなわち、十分な直径差(同文献1に提示の径差は5mm以上)があるウェーハ同士を同文献1の図10に示されるように貼合わせるには、支持側ウェーハと活性側ウェーハとの中心を正確に合致させる必要があり、そのためには、両方のウェーハを別別にクランプした上で負荷をかけて貼り合わせる等、大掛かりな装置を用いることになり、実操業では作製することが難しいものであった。
【符号の説明】
【0044】
1 支持側ウェーハ
1a ノッチ
2 貼合わせステージ
20 メインステージ
21 サブステージ
22a、22b ガイドピン
23 ガイド
3 活性側ウェーハ
3a ノッチ
w 貼合わせウェーハ
S 傾斜
B 撓み
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13