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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-13
(45)【発行日】2023-03-22
(54)【発明の名称】液晶表示素子の製造方法
(51)【国際特許分類】
   G02F 1/1337 20060101AFI20230314BHJP
   C08G 73/10 20060101ALI20230314BHJP
【FI】
G02F1/1337 525
C08G73/10
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2020501040
(86)(22)【出願日】2019-02-21
(86)【国際出願番号】 JP2019006598
(87)【国際公開番号】W WO2019163904
(87)【国際公開日】2019-08-29
【審査請求日】2022-01-31
(31)【優先権主張番号】P 2018030875
(32)【優先日】2018-02-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003986
【氏名又は名称】日産化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000095
【氏名又は名称】弁理士法人T.S.パートナーズ
(74)【代理人】
【識別番号】100082887
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 利春
(74)【代理人】
【識別番号】100181331
【弁理士】
【氏名又は名称】金 鎭文
(74)【代理人】
【識別番号】100183597
【弁理士】
【氏名又は名称】比企野 健
(74)【代理人】
【識別番号】100161997
【弁理士】
【氏名又は名称】横井 大一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100090918
【弁理士】
【氏名又は名称】泉名 謙治
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 直史
(72)【発明者】
【氏名】若林 暁子
(72)【発明者】
【氏名】山本 雄介
(72)【発明者】
【氏名】永井 健太郎
【審査官】岩村 貴
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2015/0378193(US,A1)
【文献】特開2012-98715(JP,A)
【文献】国際公開第2015/033921(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02F 1/1337
C08G 73/10
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一の基板に、式(1)の構造を有する第一の液晶配向膜を形成する液晶配向膜形成工程と、
第二の基板に、式(2-1)、式(2-2)、式(2-3)及び式(2-4)からなる群から選ばれる少なくとも1つの構造を有し、第一の液晶配向膜とは異なる組成である第二の液晶配向膜を形成する液晶配向膜形成工程と、
前記第一の基板と第二の基板の間に、光重合性化合物及び液晶化合物を含む液晶層を形成する液晶層形成工程と、
液晶セルに電圧を印加しながら紫外線を照射し、液晶層中の重合性化合物を反応させる工程と、を含むことを特徴とする液晶表示素子の製造方法。
【化1】
(但し、Arはフェニレン、ナフチレン及びビフェニレンからなる群から選ばれる芳香族炭化水素基であり、それらには有機基が置換していてもよく、水素原子はハロゲン原子に置換していてもよい。R、Rは、それぞれ独立して、炭素数1~10のアルキル基、アルコキシ基、ベンジル基又はフェネチル基であり、アルキル基やアルコキシ基の場合、R、Rで環を形成していてもよい。Qは下記式[q-1]、式[q-2]、式[q-3]及び式[q-4]からなる群から選ばれる構造を表す。
【化2】
但し、Rは水素原子又は炭素原子数1~4のアルキル基を表し、Rは-CH-、-NR-、-O-又は-S-を表し、*は結合位置を表す。)
【化3】
(但し、*は、結合位置を表す。)
【請求項2】
前記式(1)の構造が、下記式(1-1)、式(1-2)、式(1-3)、式(1-4)、式(1-5)、式(1-6)、式(1-7)、又は式(1-8)のいずれかである請求項1に記載の液晶表示素子の製造方法。
【化4】
【請求項3】
前記第一の液晶配向膜が、式(1)の構造を有するポリイミド前駆体、及び/又は該ポリイミド前駆体をイミド化したポリイミドから形成される請求項1又は2に記載の液晶表示素子の製造方法。
【請求項4】
前記ポリイミド前駆体が、式(1)の構造を有するジアミンとテトラカルボン酸無水物との重縮合反応物である請求項3に記載の液晶表示素子の製造方法。
【請求項5】
前記式(1)の構造を有するジアミンが、下記式(R-1)で表されるジアミンを含有する請求項4に記載の液晶表示素子の製造方法。
【化5】
(但し、式(R-1)中、Aはフェニレン、ナフチレン、及びビフェニレンから選ばれる芳香族炭化水素基を示し、それらには有機基が置換していてもよく、水素原子はハロゲン原子に置換していてもよい。T、Tはそれぞれ独立して、単結合又は-O-、-COO-、-OCO-、-NHCO-、-CONH-、-NH-、-CHO-、-N(CH)-、-CON(CH)-、-N(CH)CO-の結合基である。Sは単結合、フッ素原子で置換されていてもよい炭素数1~20のアルキレン基、炭素数6~12の芳香族環から選ばれる2価の基、炭素数3~8の2価の脂環式基、及び5員環以上の複素環から選ばれる2価の環状基を表す。Qは前記式(1-1)~(1-8)から選ばれる構造を表す。)
【請求項6】
前記第二の液晶配向膜が、前記式(2-1)、式(2-2)、式(2-3)及び式(2-4)からなる群から選ばれる少なくとも1つの構造を有するポリイミド前駆体、及び/又は該ポリイミド前駆体をイミド化したポリイミドから形成される請求項1~5のいずれかに記載の液晶表示素子の製造方法。
【請求項7】
前記ポリイミド前駆体が、前記式(2-1)、式(2-2)、式(2-3)及び式(2-4)からなる群から選ばれる少なくとも1つの構造を有するジアミンとテトラカルボン酸無水物との重縮合反応物である請求項6に記載の液晶表示素子の製造方法。
【請求項8】
前記ジアミンが、下記式(R-2)で表されるジアミンを含有する請求項7に記載の液晶表示素子の製造方法。
【化6】
(但し、Aはフェニレン、ナフチレン、及びビフェニレンから選ばれる芳香族炭化水素基を示し、それらには有機基が置換していてもよく、水素原子はハロゲン原子に置換していてもよい。T、Tは、それぞれ独立して、単結合、-O-、-COO-、-OCO-、-NHCO-、-CONH-、-NH-、-CHO-、-N(CH)-、-CON(CH)-、又は-N(CH)CO-である。Sは、単結合;フッ素原子で置換されていてもよい炭素数1~20のアルキレン基;ベンゼン環、ナフタレン環などの炭素数6~12の芳香族環から選ばれる2価の基;シクロヘキサン環などの炭素数3~8の2価の脂環式基;ピロール、イミダゾール、ピリジン、ピリミジン、ピラジン、ピリダジン、トリアジン、インドール、キノリン、カルバゾール、チアゾール、プリン、テトラヒドロフラン、チオフェンなどの5員環以上の複素環から選ばれる2価の環状基を表す。Qは前記式(2-1)、(2-2)、(2-3)及び(2-4)からなる群から選ばれる構造を表す。)
【請求項9】
前記光重合性化合物が、アクリロイル基及びメタクリロイル基の少なくともいずれかを2つ以上有する多官能性化合物である請求項1~8のいずれかにに記載の液晶表示素子の製造方法。
【請求項10】
前記光重合性化合物が、下式(L-1)、式(L-2)及び式(L-3)からなる群から選ばれる少なくとも1種である請求項9に記載の液晶表示素子の製造方法。
【化7】
【請求項11】
液晶表示素子がPSA方式の素子である請求項1~10のいずれかに記載の液晶表示素子の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶表示素子の製造方法に関し、特にはPSA方式の液晶表示素子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
基板に対して垂直に配向している液晶分子を電界によって応答させる方式(垂直配向(VA)方式ともいう。)の液晶表示素子には、その製造過程において液晶分子に電圧を印加しながら紫外線を照射する工程を含むものがある。
このような垂直配向方式の液晶表示素子では、予め液晶組成物中に光重合性化合物を添加し、かつポリイミド系などの垂直配向膜を用い、液晶セルに電圧を印加しながら紫外線を照射することで、液晶の応答速度を速くする技術(PSA(Polymer Sustained Alignment)方式素子、例えば、特許文献1、非特許文献1参照)が知られている。
【0003】
かかるPSA方式素子では、通常、電界に応答した液晶分子の傾く方向は、基板上に設けられた突起や表示用電極に設けられたスリットなどによって制御されている。この素子では、液晶組成物中に光重合性化合物を添加し、液晶セルに電圧を印加しながら紫外線を照射することにより、液晶分子の傾いていた方向が記憶されたポリマー構造物が液晶配向膜上に形成されるので、突起やスリットのみで液晶分子の傾き方向を制御する方法と比べて、液晶表示素子の応答速度が速くなるといわれている。
【0004】
近年では、液晶表示素子の品質向上に伴い、電圧印加に対する液晶の応答速度をさらに速くすることや、さらなる信頼性の向上が望まれている。その為には、液晶中の成分の分解を伴わない長波長の紫外線照射で、重合性化合物が効率良く反応し、配向固定化能力を発揮することが必要である。さらに、紫外線照射後に未反応の重合性化合物が残存せず、液晶表示素子の信頼性に悪影響を与えないことも必要である。
【0005】
そこで、液晶配向剤を構成する重合体に対して、紫外線照射によりラジカルを発生する特定構造を導入し、この液晶配向剤の使用を通じて、液晶中及び/又は液晶配向膜中の重合性化合物を反応させる工程を用いて得られる液晶表示素子における、重合性化合物の反応性を高めることにより、液晶表示素子の応答速度を向上させることができる液晶配向剤が提案されている(特許文献2参照)。
【0006】
一方、第1基板に第1配向剤と光開始剤を含む第1配向液を用いて第1配向膜を形成し、第2基板に第2配向剤を含み、光開始剤を含まない第2配向液を用いて第2配向膜を形成し、これらの基板の間に液晶層を挟んで電界を加えながら光照射を行い、第1配向膜に隣接した液晶分子に第1のプレチルト角を発現させ、一方、第2配向膜に隣接した液晶分子に第2プレチルト角を発現させるようにする液晶表示素子の製造方法が提案されている(特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】日本特開2003-307720号公報
【文献】国際公開(WO)2015/033921
【文献】大韓民国公開10-2016-0002599号公報
【非特許文献】
【0008】
【文献】K.Hanaoka,SID 04 DIGEST、P.1200-1202
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献3の手法では、2種類の性質が大きく異なる液晶配向膜を使用することで、液晶表示素子の電気的性質が非対称になりやすいといった問題が存在する。この問題は、各液晶配向膜のイオン吸着性能などが異なることに由来すると考えられる。液晶中に存在(或いはエージング等によって新しく発生)するイオン性不純物は液晶配向膜に吸着されるが、吸着されるイオン種、吸着量などが、液晶配向膜ごとに異なる場合、液晶セルの内部オフセット電圧が経時的に変化してしまう現象が起こる。
内部オフセット電圧が経時的に変化してしまうと、所謂Vcom値(TFT型LCDにおいてコモン電極に印加する最適電圧値)がシフトしてしまうため、残像や色目の変化、ちらつき等の問題を生じることになる。
本発明の課題は、上述の問題点を伴わずに、より簡便に、両面で配向状態が異なる液晶層を備えた液晶表示素子を製造することができる液晶表示素子の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは鋭意検討を行った結果、一方の基板の液晶配向膜には光ラジカル発生基を導入し、もう一方の基板の液晶配向膜には該光ラジカル発生基と類似構造で且つラジカル発生能が低い基を導入するという着想により、以下の要旨を有する本発明を完成させた。
【0011】
第一の基板に、式(1)の構造(以下、特定構造(1)ともいう。)を有する第一の液晶配向膜を形成する液晶配向膜形成工程と、第二の基板に、式(2-1)、式(2-2)、式(2-3)及び式(2-4)からなる群から選ばれる少なくとも1つの構造(以下、特定構造(2)ともいう。)を有し、第一の液晶配向膜とは異なる組成である第二の液晶配向膜を形成する液晶配向膜形成工程と、前記第一の基板と第二の基板の間に、光重合性化合物及び液晶化合物を含む液晶層を形成する液晶層形成工程と、
液晶セルに電圧を印加しながら紫外線を照射し、液晶層中の重合性化合物を反応させる工程と、を含むことを特徴とする液晶表示素子の製造方法。
【化1】
(但し、Arはフェニレン、ナフチレン及びビフェニレンからなる群から選ばれる芳香族炭化水素基であり、それらには有機基が置換していてもよく、水素原子はハロゲン原子に置換していてもよい。R、Rは、それぞれ独立して、炭素数1~10のアルキル基、アルコキシ基、ベンジル基又はフェネチル基であり、アルキル基やアルコキシ基の場合、R、Rで環を形成していてもよい。Qは下記式[q-1]、式[q-2]、式[q-3]及び式[q-4]からなる群から選ばれる構造を表す。
【化2】
但し、Rは水素原子又は炭素数1~4のアルキル基を表し、Rは-CH-、-NR-、-O-又は-S-を表し、*は結合位置を表す。)
【化3】
(但し、*は、結合位置を表す。)
【0012】
上記式(1)において、Arは、紫外線の吸収を効率的にする観点から、ナフチレンやビフェニレンのような共役長の長い構造が好ましい。また、Arには置換基が置換していてもよく、かかる置換基は、アルキル基、ヒドロキシル基、アルコキシ基、アミノ基などのような電子供与性の有機基が好ましい。紫外線の波長が250nm~380nmの範囲であればフェニル基でも十分な特性が得られるため、フェニル基が最も好ましい。
また、Qは、特定重合体を製造しやすい観点から、好ましくはヒドロキシル基又はアルコキシル基である。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、液晶層の両側で配向状態が異なる液晶層を形成することができ、非対称のチルト角発現能を維持しつつ、液晶セルの内部オフセット電圧が経時的に変化する現象を抑制できる液晶表示素子を製造することができる液晶表示素子の製造方法を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
<液晶表示素子の製造方法>
本発明の液晶表示素子の製造方法は、第一の基板に、特定構造1を有する第一の液晶配向膜を形成する液晶配向膜形成工程(工程(1)ともいう。)と、第二の基板に、特定構造2を有し、第一の液晶配向膜とは異なる組成である第二の液晶配向膜を形成する液晶配向膜形成工程(工程(2)ともいう。)と、その後、前記第一の基板と第二の基板の間に、液晶化合物を含む液晶層を形成する液晶層形成工程と、液晶セルに電圧を印加しながら紫外線を照射し、液晶層中の重合性化合物を反応させる工程(工程(3)ともいう。)と、を含むことを特徴とする。
【0015】
本発明の液晶配向膜形成工程では、異なる組成の液晶配向剤で形成した液晶配向膜を形成した基板を用意する。本発明では、その後、前記一対の基板の間に、重合性化合物を含む液晶層を形成する液晶層形成工程を含む。これにより、ラジカル発生能力が異なる一対の液晶配向膜で挟まれて液晶層が形成されるので、両側でプレチルト角が異なる非対称の液晶層とすることができる。
【0016】
その後、液晶セルに電圧を印加しながら紫外線を照射し、液晶層中の重合性化合物を反応させる工程を含む。これにより、液晶配向膜表面近くにある液晶が重合性化合物により固定化され、得られる液晶表示素子の応答速度を上げることができる。
【0017】
<工程(1)>
本発明において、基板上に特定構造(1)を有する液晶配向膜を形成する方法としては、特定構造(1)を有する液晶配向剤を調製して塗布法で被膜を形成することが好ましい。より具体的には、特定構造(1)を有する化合物(以下、化合物(R1)ともいう。)及び溶媒を混合して液晶配向剤を調製した後、前記液晶配向剤を第1基板上に塗布した後、乾燥し塗膜を形成することが好ましい。化合物(R1)としては、特定構造(1)を有していれば特に限定されない。具体的には繰り返し単位を有さない比較的低分子の化合物であってもよく、重合体であってもよいが、均一にラジカル発生能を付与する観点から、重合体であることが好ましい。なお、化合物(R1)は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0018】
<化合物(R1)>
重合体としての化合物(R1)は、上記特定構造(1)を重合体の主鎖及び側鎖のいずれに有していてもよい。特定構造1を有する重合体(以下、重合体(R1)ともいう。)の主骨格としては、ポリイミド系、ポリ(メタ)アクリレート系、ポリシロキサン系の重合体などが好適である。以下ではポリイミド構造について説明するが、その他の重合体に関しても公知の技術(ラジカル重合や、ゾル・ゲル法など)を用いて重合体を合成できる。
【0019】
特定構造(1)を有するポリイミド前駆体及び該ポリイミド前駆体をイミド化したポリイミドを製造する方法は特に限定されない。例えば、特定構造(1)を含有する側鎖を有するジアミンとテトラカルボン酸二無水物を重合させる方法、特定構造(1)を含有する側鎖を有するジアミンとテトラカルボン酸ジエステルを重合させる方法、特定構造(1)を含有する側鎖を有するテトラカルボン酸二無水物とジアミンを重合させる方法、テトラカルボン酸二無水物とジアミンを重合させた後に、特定構造(1)を含有する化合物を何らかの反応により重合体に修飾させる方法などが挙げられる。なかでも、製造の容易性の観点より、特定構造(1)を含有する側鎖を有するジアミン(以下、特定ジアミン(1)ともいう。)とテトラカルボン酸二無水物、又はテトラカルボン酸ジエステルを重合させる方法が好ましい。
【0020】
<特定ジアミン(1)>
第一の基板に使用する液晶配向剤を形成する重合体の製造に使用されるジアミンは、上記特定構造(1)を含有する。
特定構造(1)の好ましい具体例としては、下記式(1-1)~(1-8)の構造を挙げることができる。
【0021】
【化4】
【0022】
特定ジアミン(1)の好ましい具体例としては、下式(R-1)のジアミンが挙げられる。
【化5】
式(R-1)中、Aはフェニレン、ナフチレン、及びビフェニレンから選ばれる芳香族炭化水素基を示し、それらには有機基が置換していてもよく、水素原子はハロゲン原子に置換していてもよい。
、Tはそれぞれ独立して、単結合、-O-、-COO-、-OCO-、-NHCO-、-CONH-、-NH-、-CHO-、-N(CH)-、-CON(CH)-、又は-N(CH)CO-の結合基である。
【0023】
Sは、単結合;フッ素原子で置換されていてもよい炭素数1~20のアルキレン基;ベンゼン環、ナフタレン環などの炭素数6~12の芳香族環から選ばれる2価の基、シクロヘキサン環などの炭素数3~8の2価の脂環式基;ピロール、イミダゾール、ピリジン、ピリミジン、ピラジン、ピリダジン、トリアジン、インドール、キノリン、カルバゾール、チアゾール、プリン、テトラヒドロフラン、チオフェンなどの5員環以上の複素環から選ばれる2価の環状基を表す。
Qは上記式(1-1)~(1-8)から選ばれる構造を表す。
【0024】
垂直配向型の液晶表示素子の場合は、上記重合体(R1)は、特定構造(1)に加え、液晶を垂直に配向させる側鎖(以下、プレチルト発現基ともいう。)を有することが好ましい。プレチルト発現基を有するポリイミド前駆体及び該ポリイミド前駆体をイミド化したポリイミドを製造する方法についても前述と同様の方法が挙げられる。その好ましい方法も、同様に、プレチルト発現基を含有するジアミン(以下、ジアミン(V)ともいう。)と、テトラカルボン酸二無水物又はテトラカルボン酸ジエステルを重合させる方法が好ましい。
【0025】
<ジアミン(v)>
本発明のジアミン(v)は、下式(S1)、(S2)及び(S3)からなる群より選ばれる少なくとも1種の側鎖構造を有する。
【化6】
【化7】
【化8】
【0026】
但し、式(S1)中、X及びXはそれぞれ独立して、単結合、-(CH-(aは1~15の整数である)、-CONH-、-NHCO-、-CON(CH)-、-NH-、-O-、-COO-、-OCO-、又は-((CHa1-Am1-を表す。このうち、複数のa1は、それぞれ独立して1~15の整数であり、複数のAはそれぞれ独立して酸素原子又は-COO-を表し、mは1~2である。原料の入手性や合成の容易さの点からは、X及びXは、それぞれ独立して、単結合、-(CH-(aは1~15の整数である)、-O-、-CHO-又は-COO-が好ましく、単結合、-(CH-(aは1~10の整数である)、-O-、-CHO-又は-COO-がより好ましい。
【0027】
及びGは、それぞれ独立して、炭素数6~12の2価の芳香族基又は炭素数3~8の2価の脂環式基から選ばれる2価の環状基を表す。該環状基上の任意の水素原子は、炭素数1~3のアルキル基、炭素数1~3のアルコキシ基、炭素数1~3のフッ素含有アルキル基、炭素数1~3のフッ素含有アルコキシ基又はフッ素原子で置換されていてもよい。m及びnは、それぞれ独立して、0~3の整数であって、m及びnの合計は1~4である。
【0028】
は、炭素数1~20のアルキル、炭素数1~20のアルコキシ又は炭素数2~20のアルコキシアルキルを表す。Rを形成する任意の水素はフッ素で置換されていてもよい。このうち、炭素数6~12の2価の芳香族基の例としては、フェニレン、ビフェニレン、ナフタレン等が挙げられる。また、炭素数3~8の2価の脂環式基の例としては、シクロプロピレン、シクロヘキシレン等が挙げられる。
【0029】
上記式(S1)の好ましい具体例として、下記式(S1-x1)~(S1-x7)が挙げられる。式(S1)の好ましい具体例として、下記式(S1-x1)~(S1-x7)の構造を挙げることができる。
【化9】
【0030】
式(S1-x1)~(S1-x7)中、Rは炭素数1~20のアルキル基、炭素数1~20のアルコキシ基、又は炭素数2~20のアルコキシアルキル基であり、Xは、-(CH-(aは1~15の整数である)、-CONH-、-NHCO-、-CON(CH)-、-NH-、-O-、-CHO-、-CHOCO-、-COO-、又は-OCO-を示し、Aは、酸素原子又は-COO-*(ただし、「*」を付した結合手が(CHa2と結合する)、Aは、酸素原子又は*-COO-(ただし、「*」を付した結合手が(CHa2と結合する)であり、a、aは、それぞれ独立して、0又は1の整数であり、aは1~10の整数であり、Cyは1,4-シクロへキシレン基又は1,4-フェニレン基である。
【0031】
式(S2)中、Xは単結合、-CONH-、-NHCO-、-CON(CH)-、-NH-、-O-、-CHO-、-COO-又は-OCO-を表す。その中でも液晶配向性の観点から、-CONH-、-NHCO-、-O-、-CHO-、-COO-又はOCO-が好ましい。
は炭素数1~20のアルキル又は炭素数2~20のアルコキシアルキルを表し、Rを形成する任意の水素はフッ素で置換されていてもよい。その中でも液晶配向性の観点から、炭素数3~20のアルキル又は炭素数2~20のアルコキシアルキルが好ましい。
【0032】
式(S3)中、Xは-CONH-、-NHCO-、-O-、-COO-又は-OCO-を表す。
はステロイド骨格を有する構造を表し、具体例として前記式(st)で表される骨格を有する構造を挙げることができる。
【0033】
上記式(S3)の例として、下記式(S3-x)が挙げられる。
【化10】
【0034】
式(S3-x)中、Xは、上記式(X1)又は(X2)を表す。また、Colは、上記式(Col1)~(Col4)からなる群から選ばれる少なくとも1種を表し、Gは、上記式(G1)又は(G2)を表す。*は他の基に結合する部位を表す。
式(S3)のより好ましい構造として、下記式(S3-1)~(S3-6)で示される構造を挙げることができる。
【0035】
【化11】
(式中、*は結合位置を示す)
【0036】
前記ジアミン(v)は、重合反応性が高い観点から、下記式(v1)で表されるジアミンであることが好ましい。ジアミン(v)は1種単独又は2種以上混合して用いることができる。
【化12】
【0037】
式(v1)中、Yは、下記式Arで表される構造であり、Zは前記式(S-1)~(S-3)からなる群より選ばれる基を有する置換基である。nは1~2の整数を示す。
【化13】
は単結合、又は芳香族基を有する2価の有機基を表す。
【0038】
上記芳香族基を有する2価の有機基としては、例えば、下記式(R)の構造を挙げることができる。
【化14】
【0039】
式(R)中、Xは、単結合、-O-、-C(CH-、-NH-、-CO-、-NHCO-、-COO-、-(CH-、-SO-、-O-(CH-O-、-O-C(CH-、-CO-(CH-、-NH-(CH-、-SO-(CH-、-CONH-(CH-、-CONH-(CH-NHCO-、又は-COO-(CH-OCO-等である。Qは、ベンゼン環、ナフチル環等の炭素数6~20の芳香族炭化水素基である。mは1~8の整数である。
【0040】
<その他のジアミン>
重合体(R1)は、上記以外のジアミン(その他のジアミンともいう。)を用いてもよい。その他のジアミンの具体的としては、例えば、p-フェニレンジアミン、2,3,5,6-テトラメチル-p-フェニレンジアミン、2,5-ジメチル-p-フェニレンジアミン、m-フェニレンジアミン、2,4-ジメチル-m-フェニレンジアミン、2,5-ジアミノトルエン、2,6-ジアミノトルエン、2,5-ジアミノフェノール、2,4-ジアミノフェノール、3,5-ジアミノフェノール、3,5-ジアミノベンジルアルコール、2,4-ジアミノベンジルアルコール、4,6-ジアミノレゾルシノール、4,4’-ジアミノビフェニル、3,3’-ジメチル-4,4’-ジアミノビフェニル、3,3’-ジメトキシ-4,4’-ジアミノビフェニル、3,3’-ジヒドロキシ-4,4’-ジアミノビフェニル、3,3’-ジカルボキシ-4,4’-ジアミノビフェニル、3,3’-ジフルオロ-4,4’-ビフェニル、3,3’-トリフルオロメチル-4,4’-ジアミノビフェニル、3,4’-ジアミノビフェニル、3,3’-ジアミノビフェニル、2,2’-ジアミノビフェニル、2,3’-ジアミノビフェニル、4,4’-ジアミノジフェニルメタン、3,3’-ジアミノジフェニルメタン、3,4’-ジアミノジフェニルメタン、
【0041】
2,2’-ジアミノジフェニルメタン、2,3’-ジアミノジフェニルメタン、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、3,3’-ジアミノジフェニルエーテル、3,4’-ジアミノジフェニルエーテル、2,2’-ジアミノジフェニルエーテル、2,3’-ジアミノジフェニルエーテル、4,4’-スルホニルジアニリン、3,3’-スルホニルジアニリン、ビス(4-アミノフェニル)シラン、ビス(3-アミノフェニル)シラン、ジメチル-ビス(4-アミノフェニル)シラン、ジメチル-ビス(3-アミノフェニル)シラン、4,4’-チオジアニリン、3,3’-チオジアニリン、4,4’-ジアミノジフェニルアミン、3,3’-ジアミノジフェニルアミン、3,4’-ジアミノジフェニルアミン、2,2’-ジアミノジフェニルアミン、2,3’-ジアミノジフェニルアミン、N-メチル(4,4’-ジアミノジフェニル)アミン、N-メチル(3,3’-ジアミノジフェニル)アミン、N-メチル(3,4’-ジアミノジフェニル)アミン、N-メチル(2,2’-ジアミノジフェニル)アミン、N-メチル(2,3’-ジアミノジフェニル)アミン、4,4’-ジアミノベンゾフェノン、3,3’-ジアミノベンゾフェノン、3,4’-ジアミノベンゾフェノン、1,4-ジアミノナフタレン、2,2’-ジアミノベンゾフェノン、2,3’-ジアミノベンゾフェノン、1,5-ジアミノナフタレン、1,6-ジアミノナフタレン、1,7-ジアミノナフタレン、1,8-ジアミノナフタレン、2,5-ジアミノナフタレン、2,6-ジアミノナフタレン、2,7-ジアミノナフタレン、2,8-ジアミノナフタレン、1,2-ビス(4-アミノフェニル)エタン、1,2-ビス(3-アミノフェニル)エタン、1,3-ビス(4-アミノフェニル)プロパン、
【0042】
1,3-ビス(3-アミノフェニル)プロパン、1,4-ビス(4-アミノフェニル)ブタン、1,4-ビス(3-アミノフェニル)ブタン、ビス(3,5-ジエチル-4-アミノフェニル)メタン、1,4-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4-ビス(4-アミノフェニル)ベンゼン、1,3-ビス(4-アミノフェニル)ベンゼン、1,4-ビス(4-アミノベンジル)ベンゼン、1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4’-[1,4-フェニレンビス(メチレン)]ジアニリン、4,4’-[1,3-フェニレンビス(メチレン)]ジアニリン、3,4’-[1,4-フェニレンビス(メチレン)]ジアニリン、3,4’-[1,3-フェニレンビス(メチレン)]ジアニリン、3,3’-[1,4-フェニレンビス(メチレン)]ジアニリン、3,3’-[1,3-フェニレンビス(メチレン)]ジアニリン、1,4-フェニレンビス[(4-アミノフェニル)メタノン]、1,4-フェニレンビス[(3-アミノフェニル)メタノン]、1,3-フェニレンビス[(4-アミノフェニル)メタノン]、1,3-フェニレンビス[(3-アミノフェニル)メタノン]、1,4-フェニレンビス(4-アミノベンゾエート)、1,4-フェニレンビス(3-アミノベンゾエート)、1,3-フェニレンビス(4-アミノベンゾエート)、
【0043】
1,3-フェニレンビス(3-アミノベンゾエート)、ビス(4-アミノフェニル)テレフタレート、ビス(3-アミノフェニル)テレフタレート、ビス(4-アミノフェニル)イソフタレート、ビス(3-アミノフェニル)イソフタレート、N,N’-(1,4-フェニレン)ビス(4-アミノベンズアミド)、N,N’-(1,3-フェニレン)ビス(4-アミノベンズアミド)、N,N’-(1,4-フェニレン)ビス(3-アミノベンズアミド)、N,N’-(1,3-フェニレン)ビス(3-アミノベンズアミド)、N,N’-ビス(4-アミノフェニル)テレフタルアミド、N,N’-ビス(3-アミノフェニル)テレフタルアミド、N,N’-ビス(4-アミノフェニル)イソフタルアミド、N,N’-ビス(3-アミノフェニル)イソフタルアミド、9,10-ビス(4-アミノフェニル)アントラセン、4,4’-ビス(4-アミノフェノキシ)ジフェニルスルホン、2,2’-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2’-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、2,2’-ビス(4-アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2’-ビス(3-アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2’-ビス(3-アミノ-4-メチルフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2’-ビス(4-アミノフェニル)プロパン、2,2’-ビス(3-アミノフェニル)プロパン、2,2’-ビス(3-アミノ-4-メチルフェニル)プロパン、3,5-ジアミノ安息香酸、2,5-ジアミノ安息香酸、1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)プロパン、1,3-ビス(3-アミノフェノキシ)プロパン、1,4-ビス(4-アミノフェノキシ)ブタン、1,4-ビス(3-アミノフェノキシ)ブタン、
【0044】
1,5-ビス(4-アミノフェノキシ)ペンタン、1,5-ビス(3-アミノフェノキシ)ペンタン、1,6-ビス(4-アミノフェノキシ)へキサン、1,6-ビス(3-アミノフェノキシ)へキサン、1,7-ビス(4-アミノフェノキシ)ヘプタン、1,7-(3-アミノフェノキシ)ヘプタン、1,8-ビス(4-アミノフェノキシ)オクタン、1,8-ビス(3-アミノフェノキシ)オクタン、1,9-ビス(4-アミノフェノキシ)ノナン、1,9-ビス(3-アミノフェノキシ)ノナン、1,10-(4-アミノフェノキシ)デカン、1,10-(3-アミノフェノキシ)デカン、1,11-(4-アミノフェノキシ)ウンデカン、1,11-(3-アミノフェノキシ)ウンデカン、1,12-(4-アミノフェノキシ)ドデカン、1,12-(3-アミノフェノキシ)ドデカンなどの芳香族ジアミン、ビス(4-アミノシクロヘキシル)メタン、ビス(4-アミノ-3-メチルシクロヘキシル)メタンなどの脂環式ジアミン、1,3-ジアミノプロパン、1,4-ジアミノブタン、1,5-ジアミノペンタン、1,6-ジアミノへキサン、1,7-ジアミノヘプタン、1,8-ジアミノオクタン、1,9-ジアミノノナン、1,10-ジアミノデカン、1,11-ジアミノウンデカン、1,12-ジアミノドデカンなどの脂肪族ジアミンが挙げられる。勿論、テトラカルボン酸二無水物も、液晶配向膜にした際の液晶配向性、電圧保持特性、蓄積電荷等の特性に応じて、1種又は2種以上併用してもよい。
【0045】
<テトラカルボン酸二無水物>
上記のジアミン成分と反応させるテトラカルボン酸二無水物成分は特に限定されない。具体的には、ピロメリット酸、2,3,6,7-ナフタレンテトラカルボン酸、1,2,5,6-ナフタレンテトラカルボン酸、1,4,5,8-ナフタレンテトラカルボン酸、2,3,6,7-アントラセンテトラカルボン酸、1,2,5,6-アントラセンテトラカルボン酸、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸、2,3,3’,4-ビフェニルテトラカルボン酸、ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)エーテル、3,3’,4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸、ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)スルホン、ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)メタン、2,2-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)プロパン、1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロ-2,2-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)プロパン、ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)ジメチルシラン、ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)ジフェニルシラン、2,3,4,5-ピリジンテトラカルボン酸、2,6-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)ピリジン、3,3’,4,4’-ジフェニルスルホンテトラカルボン酸、3,4,9,10-ペリレンテトラカルボン酸、1,3-ジフェニル-1,2,3,4-シクロブタンテトラカルボン酸、オキシジフタルテトラカルボン酸、1,2,3,4-シクロブタンテトラカルボン酸、1,2,3,4-シクロペンタンテトラカルボン酸、1,2,4,5-シクロヘキサンテトラカルボン酸、1,2,3,4-テトラメチル-1,2,3,4-シクロブタンテトラカルボン酸、1,2-ジメチル-1,2,3,4-シクロブタンテトラカルボン酸、1,3-ジメチル-1,2,3,4-シクロブタンテトラカルボン酸、
【0046】
1,2,3,4-シクロヘプタンテトラカルボン酸、2,3,4,5-テトラヒドロフランテトラカルボン酸、3,4-ジカルボキシ-1-シクロへキシルコハク酸、2,3,5-トリカルボキシシクロペンチル酢酸、3,4-ジカルボキシ-1,2,3,4-テトラヒドロ-1-ナフタレンコハク酸、ビシクロ[3,3,0]オクタン-2,4,6,8-テトラカルボン酸、ビシクロ[4,3,0]ノナン-2,4,7,9-テトラカルボン酸、ビシクロ[4,4,0]デカン-2,4,7,9-テトラカルボン酸、ビシクロ[4,4,0]デカン-2,4,8,10-テトラカルボン酸、トリシクロ[6.3.0.0<2,6>]ウンデカン-3,5,9,11-テトラカルボン酸、1,2,3,4-ブタンテトラカルボン酸、4-(2,5-ジオキソテトラヒドロフラン-3-イル)-1,2,3,4-テトラヒドリナフタレン-1,2-ジカルボン酸、ビシクロ[2,2,2]オクト-7-エン-2,3,5,6-テトラカルボン酸、5-(2,5-ジオキソテトラヒドロフリル)-3-メチル-3-シクロへキサン-1,2-ジカルボン酸、テトラシクロ[6,2,1,1,0,2,7]ドデカ-4,5,9,10-テトラカルボン酸、3,5,6-トリカルボキシノルボルナン-2:3,5:6ジカルボン酸、1,2,4,5-シクロヘキサンテトラカルボン酸等が挙げられる。勿論、テトラカルボン酸二無水物も、液晶配向膜にした際の液晶配向性、電圧保持特性、蓄積電荷などの特性に応じて、1種類又は2種類以上併用してもよい。
【0047】
工程(1)で用いる液晶配向剤は重合体(R1)を含有するが、重合体(R1)とともに、これ以外の他の重合体を含有していてもよい。該他の重合体としては、主骨格として例えばポリアミック酸、ポリイミド、ポリアミック酸エステル、ポリエステル、ポリアミド、ポリオルガノシロキサン、セルロース誘導体、ポリアセタール誘導体、ポリスチレン誘導体、ポリ(スチレン-フェニルマレイミド)誘導体、ポリ(メタ)アクリレート誘導体などからなる骨格を有する重合体を挙げることができる。他の重合体は、これらのうちから選択される骨格を有する重合体の1種以上を適宜選択して用いることができる。他の重合体としては、これらの中でも、ポリアミック酸、ポリアミック酸エステル、ポリイミド及びポリオルガノシロキサンよりなる群から選択される少なくとも一種であることが好ましく、ポリアミック酸、ポリイミド及びポリオルガノシロキサンよりなる群から選択される少なくとも一種であることがより好ましい。
【0048】
上記他の重合体は、既知の方法により製造することができる。その際、重合体全成分中におけるかかる他の重合体の含有量は0.5~80質量%が好ましく、より好ましくは20~50質量%である。
重合体(R1)の分子量は、得られる液晶配向膜の強度及び、塗膜形成時の作業性、塗膜の均一性を考慮した場合、GPC(Gel Permeation Chromatography)法で測定した重量平均分子量で5,000~1,000,000が好ましく、10,000~150,000がより好ましい。
【0049】
[工程(2)]
本発明において、第二の基板上に特定構造(2)を有する液晶配向膜を形成する方法としては、特定構造(2)を有する液晶配向剤を用いる以外は、工程(1)と同様に行うことができる。具体的には、特定構造(2)を有する化合物(以下、化合物(R2)ともいう。)及び溶媒を混合して液晶配向剤を調製した後、前記液晶配向剤を第2基板上に塗布した後、乾燥し塗膜を形成することが好ましい。
上記特定構造(2)としては、特定構造(1)を用いた液晶配向膜とイオン吸着性能を合わせる目的から、なかでも、式(2-1)又は式(2-4)であることが好ましい。
また、上記化合物(R2)としては、特定構造(2)を有していれば特に限定されない。具体的には、繰り返し単位を有さない比較的低分子の化合物であってもよく、重合体であってもよいが、特定構造(1)を有する液晶配向膜とイオン吸着性能を近づける観点から、特定構造(1)を有する液晶配向膜と同様の重合体であることが好ましい。なお、化合物(R2)は、特定構造(1)を有する液晶配向膜とイオン吸着性能を近づける目的のために1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0050】
(化合物(R2)
重合体としての化合物(R2)は、上記特定構造(2)を重合体の主鎖及び側鎖のいずれに有していてもよい。特定構造(2)を有する重合体(以下、重合体(R2)ともいう。)の主骨格としては、ポリイミド系、ポリ(メタ)アクリレート系、ポリシロキサン系の重合体などを好適に用いることができる。特に、重合体(R2)は、特定構造(1)を有する液晶配向膜とイオン吸着性能を近づける観点から、特定構造(1)を有する液晶配向膜と同じ骨格を有する重合体であることが好ましい。以下では、ポリイミド構造に限って詳細に説明するが、その他の重合体に関しても公知の技術(ラジカル重合や、ゾル・ゲル法など)を用いて重合体を合成できる。
【0051】
特定構造(2)を有するポリイミド前駆体及び該ポリイミド前駆体をイミド化したポリイミドを製造する方法は特に限定されない。例えば、特定構造(2)を含有する側鎖を有するジアミンとテトラカルボン酸二無水物を重合させる方法、特定構造(2)を含有する側鎖を有するジアミンとテトラカルボン酸ジエステルを重合させる方法、特定構造(2)を含有する側鎖を有するテトラカルボン酸二無水物とジアミンを重合させる方法、テトラカルボン酸二無水物とジアミンを重合させた後に、特定構造(2)を含有する化合物を何らかの反応により重合体に修飾させる方法などが挙げられる。なかでも、製造の容易性の観点より、特定構造(2)を含有する側鎖を有するジアミン(以下、特定ジアミン(2)ともいう。)とテトラカルボン酸二無水物、又はテトラカルボン酸ジエステルを重合させる方法が好ましい。
【0052】
<特定ジアミン(2)>
第2の基板に使用する液晶配向剤を形成する重合体(2)の製造に使用されるジアミンは、特定構造(1)を有する液晶配向膜とイオン吸着性能を近づける点から、上記特定構造(2)を含有する特定ジアミン(2)が好ましい。
特定ジアミン(2)の好ましい具体例としては、下式(R-2)のジアミンが挙げられる。
【化15】
式(R-2)中、Aはフェニレン、ナフチレン、及びビフェニレンから選ばれる芳香族炭化水素基を示し、それらには有機基が置換していてもよく、水素原子はハロゲン原子に置換していてもよい。
【0053】
、Tは、それぞれ独立して、単結合、-O-、-COO-、-OCO-、-NHCO-、-CONH-、-NH-、-CHO-、-N(CH)-、-CON(CH)-、又は-N(CH)CO-の結合基である。
Sは、単結合;フッ素原子で置換されていてもよい炭素数1~20のアルキレン基;ベンゼン環、ナフタレン環などの炭素数6~12の芳香族環から選ばれる2価の基;シクロヘキサン環などの炭素数3~8の2価の脂環式基;ピロール、イミダゾール、ピリジン、ピリミジン、ピラジン、ピリダジン、トリアジン、インドール、キノリン、カルバゾール、チアゾール、プリン、テトラヒドロフラン、チオフェンなどの5員環以上の複素環から選ばれる2価の環状基を表す。
は上記式(2-1)、(2-2)、(2-3)及び(2-4)からなる群から選ばれる構造を表す。
【0054】
垂直配向型の液晶表示素子の場合は、上記重合体(R2)は、特定構造(2)に加え、プレチルト発現基を有することが好ましい。プレチルト発現基を有するポリイミド前駆体、及び該ポリイミド前駆体をイミド化したポリイミドを製造する方法についても前述と同様の方法が挙げられる。その好ましい方法も、同様に、ジアミン(V)と、テトラカルボン酸二無水物、又はテトラカルボン酸ジエステルを重合させる方法が好ましい。
重合体(R2)は上記の他、原料の一部にその他のジアミン並びにテトラカルボン酸二無水物を適宜用いることができる。
【0055】
工程(2)で用いる液晶配向剤は重合体(R2)を含有するが、上記重合体(R2)以外の他の重合体(2)を含有していてもよい。当該他の重合体(2)としては、主骨格として例えばポリアミック酸、ポリイミド、ポリアミック酸エステル、ポリエステル、ポリアミド、ポリオルガノシロキサン、セルロース誘導体、ポリアセタール誘導体、ポリスチレン誘導体、ポリ(スチレン-フェニルマレイミド)誘導体、ポリ(メタ)アクリレート誘導体などからなる骨格を有する重合体を挙げることができる。これらの中でも、ポリアミック酸、ポリアミック酸エステル、ポリイミド及びポリオルガノシロキサンよりなる群から選択される少なくとも一種であることが好ましく、ポリアミック酸、ポリイミド及びポリオルガノシロキサンよりなる群から選択される少なくとも一種であることがより好ましい。また、重合体全成分中におけるかかる上記他の重合体(2)の含有量は0.5~80質量%が好ましく、より好ましくは20~50質量%である。
【0056】
重合体(R2)の分子量は、液晶配向剤を塗布して得られる液晶配向膜の強度及び、塗膜形成時の作業性、塗膜の均一性を考慮した場合、GPC法で測定した重量平均分子量で5,000~1,000,000が好ましく、10,000~150,000がより好ましい。
【0057】
<重合性化合物>
本発明の液晶配向剤には、必要に応じ、2つ以上の末端に光重合又は光架橋する基を有する重合性化合物を含有してもよい。かかる重合性化合物は、光重合又は光架橋する基を有する末端を二つ以上持っている化合物である。ここで、光重合する基を有する重合性化合物とは、光を照射することにより重合を生じさせる官能基を有する化合物である。また、光架橋する基を有する化合物とは、光を照射することにより、重合性化合物の重合体や、ポリイミド前駆体、及び、このポリイミド前駆体をイミド化して得られるポリイミドから選択される少なくとも一種の重合体と反応してこれらと架橋することができる官能基を有する化合物である。なお、光架橋する基を有する化合物は、光架橋する基を有する化合物同士でも反応する。
【0058】
<ポリイミド前駆体の製造>
ジアミン成分とテトラカルボン酸二無水物との反応により、ポリイミド前駆体であるポリアミック酸を得るにあたっては、公知の合成手法を用いることができる。一般的には、ジアミン成分とテトラカルボン酸二無水物成分とを有機溶媒中で反応させる方法である。ジアミン成分とテトラカボン酸二無水物との反応は、有機溶媒中で比較的容易に進行し、かつ副生成物が発生しない点で有利である。
【0059】
上記したポリアミック酸をイミド化させてポリイミドとする方法としては、ポリアミック酸の溶液をそのまま加熱する熱イミド化、ポリアミック酸の溶液に触媒を添加する触媒イミド化が挙げられる。なお、ポリアミック酸からポリイミドへのイミド化率は、必ずしも100%である必要はない。
液晶配向剤が含有する溶媒は、特に限定はなく、例えば、N-メチル-2-ピロリドン、γ-ブチロラクトン、N-エチル-2-ピロリドン、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、3-メトキシ-N,N-ジメチルプロパンアミドは、溶解性の点から好ましい。もちろん、2種類以上の混合溶媒でもよい。
【0060】
また、塗膜の均一性や平滑性を向上させる溶媒を、液晶配向剤の含有成分の溶解性が高い溶媒に混合して使用すると好ましい。かかる溶媒としては、例えば、イソプロピルアルコール、メトキシメチルペンタノール、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、メチルセロソルブアセテート、ブチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、ブチルカルビトール、エチルカルビトール、エチルカルビトールアセテート、エチレングリコール、エチレングリコールモノアセテート、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコール、プロピレングリコールモノアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコール-tert-ブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコール、ジエチレングリコールモノアセテート、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノアセテートモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノアセテートモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノアセテートモノプロピルエーテル、3-メチル-3-メトキシブチルアセテート、トリプロピレングリコールメチルエーテル、3-メチル-3-メトキシブタノール、ジイソプロピルエーテル、エチルイソブチルエーテル、ジイソブチレン、アミルアセテート、ブチルブチレート、ブチルエーテル、ジイソブチルケトン、メチルシクロへキセン、プロピルエーテル、ジヘキシルエーテル、n-へキサン、n-ペンタン、n-オクタン、ジエチルエーテル、乳酸メチル、乳酸エチル、酢酸メチル、酢酸エチル、
【0061】
酢酸n-ブチル、酢酸プロピレングリコールモノエチルエーテル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、3-メトキシプロピオン酸メチル、3-エトキシプロピオン酸メチルエチル、3-メトキシプロピオン酸エチル、3-エトキシプロピオン酸、3-メトキシプロピオン酸、3-メトキシプロピオン酸プロピル、3-メトキシプロピオン酸ブチル、1-メトキシ-2-プロパノール、1-エトキシ-2-プロパノール、1-ブトキシ-2-プロパノール、1-フェノキシ-2-プロパノール、プロピレングリコールモノアセテート、プロピレングリコールジアセテート、プロピレングリコール-1-モノメチルエーテル-2-アセテート、プロピレングリコール-1-モノエチルエーテル-2-アセテート、ジプロピレングリコール、2-(2-エトキシプロポキシ)プロパノール、乳酸メチルエステル、乳酸エチルエステル、乳酸n-プロピルエステル、乳酸n-ブチルエステル、乳酸イソアミルエステル、2-エチル-1-ヘキサノールなどが挙げられる。これらの溶媒は複数種を混合してもよい。これらの溶媒は、液晶配向剤に含まれる溶媒全体の5~80質量%が好ましく、20~60質量%がより好ましい。
【0062】
液晶配向剤には、上記以外の成分を含有してもよい。その例としては、液晶配向剤を塗布した際の膜厚均一性や表面平滑性を向上させる化合物、液晶配向膜と基板との密着性を向上させる化合物などが挙げられる。
膜厚の均一性や表面平滑性を向上させる化合物としては、フッ素系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤、ノ二オン系界面活性剤などが挙げられる。より具体的には、例えば、エフトップEF301、EF303、EF352(トーケムプロダクツ社製)、メガファックF171、F173、R-30(大日本インキ社製)、フロラードFC430、FC431(住友スリーエム社製)、アサヒガードAG710、サーフロンS-382、SC101、SC102、SC103、SC104、SC105、SC106(旭硝子社製)などが挙げられる。これらの界面活性剤の使用割合は、液晶配向剤に含有される重合体の総量100質量部に対して、好ましくは0.01~2質量部、より好ましくは0.01~1質量部である。
【0063】
液晶配向膜と基板との密着性を向上させる化合物の具体例としては、官能性シラン含有化合物やエポキシ基含有化合物などが挙げられる。例えば、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、2-アミノプロピルトリメトキシシラン、2-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3-ウレイドプロピルトリメトキシシラン、3-ウレイドプロピルトリエトキシシラン、N-エトキシカルボニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-エトキシカルボニル-3-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-トリエトキシシリルプロピルトリエチレントリアミン、N-トリメトキシシリルプロピルトリエチレントリアミン、10-トリメトキシシリル-1,4,7-トリアザデカン、10-トリエトキシシリル-1,4,7-トリアザデカン、9-トリメトキシシリル-3,6-ジアザノニルアセテート、9-トリエトキシシリル-3,6-ジアザノニルアセテート、N-ベンジル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-ベンジル-3-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-フェニル-3-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-ビス(オキシエチレン)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-ビス(オキシエチレン)-3-アミノプロピルトリエトキシシラン、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、トリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、グリセリンジグリシジルエーテル、2,2-ジブロモネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,3,5,6-テトラグリシジル-2,4-ヘキサンジオール、N,N,N’,N’-テトラグリシジル-m-キシレンジアミン、1,3-ビス(N,N-ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン、N,N,N’,N’-テトラグリシジル-4,4’-ジアミノジフェニルメタン、3-(N-アリル-N-グリシジル)アミノプロピルトリメトキシシラン、3-(N,N-ジグリシジル)アミノプロピルトリメトキシシランなどが挙げられる。
【0064】
また液晶配向膜の膜強度をさらに上げるために2,2’-ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジヒドロキシメチルフェニル)プロパン、テトラ(メトキシメチル)ビスフェノール等のフェノール化合物を添加してもよい。これらの化合物は、液晶配向剤に含有される重合体の総量100質量部に対して0.1~30質量部が好ましく、1~20質量部がより好ましい。
さらに、液晶配向剤には、上記の他、液晶配向膜の誘電率や導電性などの電気特性を変化させる目的の誘電体や導電物質を添加してもよい。
【0065】
本発明の液晶配向剤を、基板に塗布した後、必要に応じて乾燥し、焼成を行うことで得られる硬化膜、そのまま液晶配向膜として用いることもできるが、この硬化膜をラビングしたり、偏光又は特定の波長の光等を照射したり、イオンビーム等の処理をしたり、PSA用配向膜として液晶充填後の液晶表示素子に電圧を印加した状態でUVを照射することも可能である。特に、PSA用配向膜として使用することが有用である。
【0066】
<基板>
上記第1基板、及び第2基板に用いる基板としては、透明性の高い基板であれば特に限定されず、ガラス板、ポリカーボネート、ポリ(メタ)アクリレート、ポリエーテルサルホン、ポリアリレート、ポリウレタン、ポリサルホン、ポリエーテル、ポリエーテルケトン、トリメチルペンテン、ポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート、(メタ)アクリロニトリル、トリアセチルセルロース、ジアセチルセルロース、アセテートブチレートセルロースなどのプラスチック基板などを用いることができる。また、液晶駆動のためのITO電極などが形成された基板を用いることがプロセスの簡素化の観点から好ましい。また、反射型の液晶表示素子では片側の基板のみにならばシリコンウエハー等の不透明な物でも使用でき、この場合の電極はアルミ等の光を反射する材料も使用できる。
【0067】
液晶配向剤の塗布方法は特に限定されず、スクリーン印刷、オフセット印刷、フレキソ印刷等の印刷法、インクジェット法、スプレー法、ロールコート法や、ディップ、ロールコーター、スリットコーター、スピンナー等が挙げられる。生産性の面から工業的には転写印刷法が広く用いられており、本発明でも好適に用いられる。
上記乾燥は、基板の搬送等により塗膜形状が変形しない程度に溶媒が除去されていればよく、その乾燥手段については特に限定されない。例えば、温度40~150℃、好ましくは60~100℃のホットプレート上で、0.5~30分、好ましくは1~5分乾燥させる方法が挙げられる。
【0068】
上記乾燥後に、必要に応じて、重合体に存在するアミック酸構造を熱イミド化することを目的として焼成(ポストベーク)工程が実施される。ポストベークの温度は、例えば100~350℃、好ましくは120~300℃であり、さらに好ましくは、150~250℃である。焼成時間は5~240分、好ましくは10~90分であり、より好ましくは20~90分である。加熱は、通常公知の方法、例えば、ホットプレート、熱風循環炉、赤外線炉などで行うことができる。
また、焼成して得られる液晶配向膜の厚みは特に限定されないが、好ましくは5~300nm、より好ましくは20~200nmである。
【0069】
<工程(3)>
本発明において、前記で得られた第1又は第2の基板の間に、液晶化合物を含む液晶層を形成する方法としては、例えば以下の2つの方法が挙げられる。
第一の方法は、従来から知られている方法(真空注入方式)である。先ず、それぞれの液晶配向膜が対向するように間隙(セルギャップ)を介して2枚の基板を対向配置し、2枚の基板の周辺部をシール剤を用いて貼り合わせ、基板表面及びシール剤により区画されたセルギャップ内に液晶性化合物及び光重合性化合物を注入して充填した後、注入孔を封止することにより、液晶セルを製造する。
第二の方法は、ODF(One Drop Fill)方式と呼ばれる手法である。液晶配向膜を形成した2枚の基板のうちの一方の基板上の所定の場所に、例えば紫外光硬化性のシール剤を塗布し、さらに液晶配向膜面上の所定の数箇所に、液晶性化合物と光重合性化合物との混合物を滴下した後、液晶配向膜が対向するように他方の基板を貼り合わせるとともに、液晶性化合物を基板の全面に押し広げ、次いで基板の全面に紫外光を照射してシール剤を硬化することにより、液晶セルを製造する。
【0070】
上記第一及び第二の方法のいずれの方法による場合でも、上記のようにして製造した液晶セルにつき、さらに、用いた液晶性化合物が等方相をとる温度まで加熱した後、室温まで徐冷することにより、液晶充填時の流動配向を除去してもよい。
シール剤としては、例えば硬化剤及びスペーサーとしての酸化アルミニウム球を含有するエポキシ樹脂などを用いることができる。
液晶性化合物としては、負の誘電異方性を有するネマチック液晶を好ましく用いることができる。例えばジシアノベンゼン系液晶、ピリダジン系液晶、シッフベース系液晶、アゾキシ系液晶、ビフェニル系液晶、フェニルシクロヘキサン系液晶、ターフェニル系液晶などを用いることができる。また、液晶性化合物としては、PSAモード液晶表示素子の応答速度をより速くできる点において、アルケニル基及びフルオロアルケニル基のうちいずれかを1つ有する単官能性の液晶性化合物であるアルケニル系液晶を併用することが好ましい。このようなアルケニル系液晶としては、従来公知のものを使用することができる。
【0071】
光重合性化合物としては、アクリロイル基、メタクリロイル基、ビニル基などのラジカル重合が可能な官能基を有する化合物を用いることができる。反応性の観点からすると、中でもアクリロイル基及びメタクリロイル基の少なくともいずれかを2つ以上有する多官能性の化合物を用いることが好ましい。また、液晶分子の配向性を安定に維持する観点から、光重合性化合物としては、液晶骨格として、シクロヘキサン環及びベンゼン環のうちの少なくともいずれか一種の環を合計2つ以上有する化合物を用いることが好ましい。かかる光重合性化合物の具体例を挙げると、例えば、下記式(L-1)、(L-2)、(L-3)などの化合物を使用することができる。
【0072】
【化16】
【0073】
光重合性化合物の配合割合は、使用する液晶性化合物の全体量に対して0.1~0.5重量%とすることが好ましい。液晶層の厚さは、1~5μmとすることが好ましい。
【0074】
[光照射工程]
PASモード液晶表示素子を作製する場合、液晶セルを得た後、一対の基板の有する導電膜間に電圧を印加した状態で液晶セルに光照射する。ここで印加する電圧は、例えば5~50V、好ましくは5~30V、さらに好ましくは5~20Vの直流又は交流とすることができる。また、照射する光としては、例えば、150~800nmの波長の光を含む紫外線及び可視光線を用いることができるが、300~400nmの波長の光を含む紫外線が好ましい。照射光の光源としては、例えば低圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、重水素ランプ、メタルハライドランプ、アルゴン共鳴ランプ、キセノンランプ、エキシマレーザーなどを使用することができる。なお、上記の好ましい波長領域の紫外線は、光源を、例えばフィルター回折格子などと併用する手段などにより得ることができる。光の照射量としては、好ましくは0.1J/cm以上60J/cm未満であり、より好ましくは0.1~40J/cm、さらに好ましくは1~40J/cmである。
【0075】
次に、必要に応じて、液晶層に電圧を印加しない状態で、上記の光照射により得られた液晶セルにさらに光を照射することによって、光重合物をさらに生成させてもよい。この2次照射によって、液晶層中に残存する未反応モノマーの量を低減させることができる。
そして、光照射後の液晶セルの外側表面に偏光板を貼り合わせることにより、PSAモード液晶表示素子を得ることができる。ここで使用する偏光板としては、ポリビニルアルコールを延伸配向させながらヨウ素を吸収させた偏光膜(H膜と称されることがある。)を酢酸セルロース保護膜で挟んだ偏光板又はH膜そのものからなる偏光板を挙げることができる。
本発明のPSAモード液晶表示素子は、種々の装置に有効に適用することができ、例えば、時計、携帯型ゲーム、ワープロ、ノート型パソコン、カーナビゲーションシステム、カムコーダー、PDA、デジタルカメラ、携帯電話、スマートフォン、各種モニター、液晶テレビ、インフォメーションディスプレイなどの各種表示装置に用いることができる。
【実施例
【0076】
以下、実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定して解釈削除されるものではない。以下で使用される略号の意味は以下のとおりである。
【0077】
(酸二無水物)
BODA:ビシクロ[3,3,0]オクタン-2,4,6,8-テトラカルボン酸二無水物
CBDA:1,2,3,4-シクロブタンテトラカルボン酸二無水物
(ジアミン)
DDM: 4,4´-メチレンジアニリン
p-PDA:p-フェニレンジアミン、DBA:3,5-ジアミノ安息香酸
3AMPDA:3,5-ジアミノ-N-(ピリジン-3-イルメチル)ベンズアミド
【化17】
【0078】
【化18】
【0079】
【化19】
【0080】
(溶媒)
THF:テトラヒドロフラン、 DMF:N,N-ジメチルホルムアミド
EtN:トリエチルアミン、 NMP:N-メチル-2-ピロリドン、
BCS:ブチルセロソルブ
(添加剤)
3AMP:3-ピコリルアミン
【0081】
<<ジアミンDA2-1~DA2-4の合成>>
下記合成例1~4によりジアミンDA2-1~DA2-4を合成した。これらの合成例における各生成物は、下記条件による1H-NMR分析により同定した。
装置:Varian NMR System 400 NB (400 MHz)
測定溶媒:DMSO-d
基準物質:テトラメチルシラン(TMS)(δ0.0 ppm for H)
【0082】
<<合成例1:DA2-1の合成>>
【化20】
【0083】
<化合物[1]の合成>
四つ口フラスコへ、1-(4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル)-2-メチル-1-プロパノン(28.4g,136mmol)、N,N-ジメチルホルムアミド(56.9g)、及びトリエチルアミン(18.1g,178mmol)を加え、50℃に昇温後、2,4-ジニトロフルオロベンゼン(26.1g,141mmol)を滴下し、4時間撹拌後、さらにトリエチルアミン(6.90g,68.2mmol)、2,4-ジニトロフルオロベンゼン(1.27g,6.82mmol)を加え、室温で60時間撹拌した。反応終了後、トルエン(135g)と水(83g)を加え、分液洗浄した。さらに有機相を酢酸10%水溶液(83.0g×2回)で洗浄し、得られた有機相を内容物が92.5gとなるまで濃縮した後に、ヘキサン97.5gを入れて結晶化させた。
得られた結晶を濾過し、メタノール(200g)を入れ60℃に昇温させて完溶させた後に2℃まで冷却し、析出した結晶をろ過し、結晶をメタノール(40.0g×2回)でケーキ洗浄した。結晶を乾燥させ、化合物[1]を得た(収量:39.7g,106mmol,収率77%)。
【0084】
<DA2-1の合成>
化合物[1](26.1g,69.7mmol)に対し、テトラヒドロフラン(177g)、及び3%プラチナカーボン(60wt%含水品)(2.6g)を加え、水素雰囲気下室温で撹拌させた。反応終了後、ろ過によりプラチナカーボンを濾別して得られた濾液を内容物が48.5gになるまで濃縮した後に、メタノール120gを加え60℃に昇温させた。その後、2℃に冷却して析出した結晶を濾過した。得られた結晶をメタノール(40.0g×2回)にてケーキ洗浄し、その後、乾燥させ、DA2-1を得た(収量14.9g,47.4mmol,収率68%)。
H-NMR(400MHz) in DMSO-d:7.96(d,J=9.0Hz,2H),7.10(d,J=9.0Hz,2H),6.56(d,J=8.4Hz,1H),5.95(s,1H),5.75(d,J=10.8Hz,1H),4.48(s,2H),4.43(s,2H),4.33(d,J=8.8Hz,2H),4.11(d,J=8.8Hz,2H),3.62(Hep,J=6.4Hz,1H),1.10(s,6H).
【0085】
<<合成例2:DA2-2の合成>>
【化21】
【0086】
<化合物[2]の合成>
テトラヒドロフラン(174g)中へ、tert-ブチル 4-(2-ヒドロキシエトキシ)ベンゾエート(58.2g,244mmol)、及びトリエチルアミン(32.1g,318mmol)を加えて、50℃加熱条件にて撹拌した。テトラヒドロフラン(58.2g)に溶解させた2,4-ジニトロフルオロベンゼン(50.0g,269mmol)を1時間かけて滴下し、4時間撹拌した。反応終了後、室温に冷却後、溶液を減圧濃縮し、得られた粗物にテトラヒドロフラン/メタノール=1/1混合溶媒(174g)でスラリー洗浄し、濾過し、メタノール(150g×2回)で洗浄した。得られた結晶にテトラヒドロフラン(174g)を加え50℃で加熱撹拌し、室温に冷却しながらメタノール(290g)を加えて晶析させた。これを濾過し、メタノール(150g×3回)でケーキ洗浄し、得られた結晶を乾燥させ、化合物[2]を得た(収量:68.7g,170mmol,収率70%)。
【0087】
<化合物[3]の合成>
ギ酸(130g)中へ、化合物[2](13.4g,33.1mmol)を加え、45℃で加熱撹拌した。30分程で白色結晶が析出し、7時間後、水(130g)を加え、室温に冷却し、濾過し、べたついた結晶をメタノール(130g)でスラリー洗浄し、再度濾過後、メタノール(20g×2回)でケーキ洗浄し、得られた結晶を乾燥させ、化合物[3]を得た(収量:10.1g,28.9mmol,収率88%)。
H-NMR(400MHz) in DMSO-d:12.7ppm(br,1H),8.78ppm(d,J=5.6Hz,1H),8.55-8.52ppm(m,1H),7.91-7.88ppm(m,2H),7.67ppm(d,J=9.6Hz,1H),7.08-7.04ppm(m,2H),4.74-4.72ppm(m,2H),4.47-4.45ppm(m,2H).
【0088】
<DA2-2の合成>
N,N-ジメチルホルムアミド(309g)中へ、化合物[3](9.11g,26.2mol)、及び3%プラチナカーボン(60wt%含水品)(0.720g)を加えて、水素雰囲気下50℃加熱条件で終夜撹拌した。反応終了後、濾過することでプラチナカーボンを除去し、濾液を減圧濃縮した。濃縮粗物を乾燥させ、析出した固体に対し、メタノール(27.0g)を加えて55℃で加熱撹拌し、室温に冷却しながらトルエン(27.0g)を加え、濾過した。得られた結晶をトルエン(27.0g×3回)でケーキ洗浄し、得られた結晶をテトラヒドロフラン(27.0g)でスラリー洗浄し、濾過し、得られた結晶を乾燥させ、DA2-2を得た(収量:5.75g,19.9mmol,収率76%)。
H-NMR(400MHz) in DMSO-d:7.91-7.84ppm(m,2H),7.02ppm(d,J=9.2Hz,2H),6.52ppm(d,J=8.4Hz,1H),5.91ppm(d,J=2.8Hz,1H),5.72ppm(dd,J=8.2Hz,2.4Hz,1H),4.29-4.27ppm(m,2H),4.08-4.06ppm(m,2H).
(-COOH,-NHは塩形成しピーク検出不可)
【0089】
<<合成例3:DA2-3の合成>>
【化22】
【0090】
<化合物[3]の合成>
テトラヒドロフラン(96.0g)中へ、メチル 4-(2-ヒドロキシエトキシ)ベンゾエート(32.0g,163mmol)、及びトリエチルアミン(27.9g,212mmol)を加えて、50℃加熱条件にて撹拌した。テトラヒドロフラン(32.0g)に溶解させた2,4-ジニトロフルオロベンゼン(33.4g,179mmol)を1時間かけて滴下し、9時間撹拌した。反応終了後、室温に冷却後、濾過し、結晶Aをメタノール(128g)でスラリー洗浄し、回収した。濾液は減圧濃縮し、得られた粗物Bを回収した。結晶Aをメタノール/水=1/1混合溶媒(96.0g)でスラリー洗浄し、濾過し、メタノール(96.0g×2回)で洗浄し、ケーキCを得た。粗物Bをメタノール/水=1/1混合溶媒(128g)でスラリー洗浄し、濾過し、メタノール(96.0g×3回)で洗浄し、ケーキDを得た。ケーキC、Dの合わせたものに対して、テトラヒドロフラン(160g)を加え50℃で加熱撹拌し、室温に冷却しながらメタノール(224g)を加えて晶析させた。これを濾過し、メタノール(96g×3回)でケーキ洗浄し、得られた結晶を乾燥させ、化合物[4]を得た(収量:51.3g,141mmol,収率87%)。
【0091】
<DA2-3の合成>
テトラヒドロフラン(120g)、メタノール(30g)混合溶媒中へ、化合物[4](10.2g,282mmol)、及び5%パラジウムカーボン(含水品)(0.816g)を加えて、水素雰囲気下室温条件で約4日間撹拌した。反応終了後、濾過することでパラジウムカーボンを除去し、濾液を減圧濃縮した。濃縮粗物に対し、酢酸エチル(90.0g)を加えて70℃で加熱撹拌し、室温に冷却しながらヘキサン(120g)を加え、濾過し、得られた結晶をヘキサン(30.6g×3回)でケーキ洗浄し、得られた結晶を乾燥させ、DA2-3を得た(収量:7.31g,242mmol,収率86%)。
H-NMR(400MHz) in DMSO-d:7.92ppm(d,J=9.2Hz,2H),7.10ppm(d,J=9.2Hz,2H),6.55ppm(d,J=8.4Hz,1H),5.93ppm(d,J=2.8Hz,1H),5.75ppm(dd,J=8.6Hz,2.8Hz,1H),4.47ppm(s,2H),4.42ppm(s,2H),4.34-4.32ppm(m,2H),4.12-4.09ppm(m,2H),3.82ppm(s,3H).
【0092】
<<合成例4:DA2-4の合成>>
【化23】
【0093】
<化合物[5]の合成>
四つ口フラスコへ、2,4-ジニトロフルオロベンゼン(29.6g,159mmol)、1-(4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル)エタノン(31.6g,175mmol)、N,N-ジメチルホルムアミド(118g)、及びトリエチルアミン(24.1g,238mmol)を加えて室温で反応を開始した。24時間撹拌後、メタノール(240g)を加えて結晶を析出させた後、さらに水(75g)を加えた。0℃で30分撹拌後、ろ過し、水(150g)で2回、その後、メタノール(120g)で1回の順にケーキ分を洗浄し、得られた固体を乾燥させて化合物[5]を得た(収量:51.5g,149mmol,収率94%)。
【0094】
<DA2-4の合成>
四つ口フラスコへ、化合物[5](51.5g,149mmol)、テトラヒドロフラン(400g)、及び3%プラチナカーボン(60wt%含水品)(10.3g)を加え、水素雰囲気下室温で撹拌した。48時間撹拌して原料の消失を確認した後、60℃に昇温させて熱時ろ過を行った。このとき、未溶解の結晶がプラチナカーボンと一緒に得られたため、結晶とプラチナカーボンの混合物へN,N-ジメチルホルムアミド(250g)を加え60℃で加熱撹拌し結晶を溶解させた後、再度熱時ろ過を行った。得られたテトラヒドロフラン溶液とN,N-ジメチルホルムアミド溶液を混合して濃縮後、析出した結晶に、アセトン(250g)を入れ、還流下でスラリー洗浄を1時間行った後、イソプロピルアルコール(250g)を入れ1時間撹拌後、室温に冷却してから結晶をろ過、乾燥させてDA2-4を得た(収量:30.7g,107mmol,収率72%)。
H-NMR(400MHz) in DMSO-d:7.94(d,J=8.8Hz, 2H),7.09(d,J=8.8Hz,2H),6.55(d,J=8.8Hz,1H),5.94(s,1H),5.75(d,J=10.8Hz,1H),4.47(s,2H),4.43(s,2H),4.33(d,J=8.4Hz,2H),4.10(d,J=8.8Hz,2H),2.52(s,3H).
【0095】
<<液晶配向剤の製造>>
[製造例1]
BODA(1.25g、5.0mmol)、DA-1(1.65g、5.0mmol)、及びDA-3(1.90g、5.0mmol)をNMP(14.2g)中で溶解し、60℃で3時間反応させた後、CBDA(0.96g、5.0mmol)とNMP(3.8g)を加え、40℃で12時間反応させポリアミック酸溶液を得た。このポリアミック酸溶液のMnは12,479であり、Mwは33,961であった。
このポリアミック酸溶液(20.0g)にNMPを加え6.5質量%に希釈した後、イミド化触媒として無水酢酸(3.6g)、及びピリジン(1.1g)を加え、80℃で3時間反応させた。この反応溶液をメタノール(232ml)に投入し、得られた沈殿物を濾別した。この沈殿物をメタノールで洗浄し、60℃で減圧乾燥しポリイミド粉末(A)を得た。ポリイミドのイミド化率は75%であった。
得られたポリイミド粉末(A)(4.5g)にNMP(36.9g)を加え、70℃にて12時間攪拌して溶解させた。この溶液に3AMP(1wt%NMP溶液)4.5g、BCS(30.9g)を加え、室温で5時間攪して液晶配向剤(P-1)を得た。
【0096】
[製造例2]
BODA(1.13g、4.5mmol)、DA2-1(1.41g、4.5mmol)、及びDA-3(1.71g、4.5mmol)をNMP(17.0g)中で溶解し、60℃で3時間反応させた後、CBDA(0.85g、4.5mmol)とNMP(3.4g)を加え、40℃で12時間反応させポリアミック酸溶液を得た。このポリアミック酸溶液のMnは13,514であり、Mwは42,678であった。
このポリアミック酸溶液(15.0g)にNMPを加え6.5質量%に希釈した後、イミド化触媒として無水酢酸(2.7g)、及びピリジン(0.8g)を加え、80℃で3時間反応させた。この反応溶液をメタノール(170ml)に投入し、得られた沈殿物を濾別した。この沈殿物をメタノールで洗浄し、60℃で減圧乾燥しポリイミド粉末
(B)を得た。このポリイミドのイミド化率は75%であった。
得られたポリイミド粉末(B)(1.5g)にNMP(12.3g)を加え、70℃にて12時間攪拌して溶解させた。この溶液に3AMP(1wt%NMP溶液)1.5g、BCS(10.3g)を加え、室温で5時間攪して液晶配向剤(P2-1)を得た。
【0097】
[製造例3]
BODA(1.25、5.0mmol)、DA2-2(1.44g、5.0mmol)、及びDA-4(1.90g、5.0mmol)をNMP(13.4)中で溶解し、60℃で3時間反応させた後、CBDA(0.96g、5.0mmol)とNMP(3.8g)を加え、40℃で12時間反応させポリアミック酸溶液を得た。このポリアミック酸溶液のMnは16,178であり、Mwは63,403であった。
このポリアミック酸溶液(22.4g)にNMPを加え6.5質量%に希釈した後、イミド化触媒として無水酢酸(4.1g)、及びピリジン(1.3g)を加え、70℃で3時間反応させた。この反応溶液をメタノール(260ml)に投入し、得られた沈殿物を濾別した。この沈殿物をメタノールで洗浄し、60℃で減圧乾燥しポリイミド粉末(C)を得た。このポリイミドのイミド化率は74%であった。
得られたポリイミド粉末(C)(5.0g)にNMP(39.4g)を加え、70℃にて12時間攪拌して溶解させた。この溶液に3AMP(1wt%NMP溶液)5.0g、BCS(32.8g)を加え、室温で5時間攪拌して液晶配向剤(P2-2)を得た。
【0098】
[製造例4]
BODA(1.25、5.0mmol)、DA2-3(1.51g、5.0mmol)、及びDA-4(1.90g、5.0mmol)をNMP(18.7)中で溶解し、60℃で3時間反応させた後、CBDA(0.96g、5.0mmol)とNMP(3.8g)を加え、40℃で12時間反応させポリアミック酸溶液を得た。このポリアミック酸溶液のMnは11,881であり、Mwは38,132であった。
このポリアミック酸溶液(23.0g)にNMPを加え6.5質量%に希釈した後、イミド化触媒として無水酢酸(4.2g)、及びピリジン(1.3g)を加え、70℃で3時間反応させた。この反応溶液をメタノール(267ml)に投入し、得られた沈殿物を濾別した。この沈殿物をメタノールで洗浄し、60℃で減圧乾燥しポリイミド粉末(D)を得た。このポリイミドのイミド化率は74%であった。
得られたポリイミド粉末(D)(5.0g)にNMP(39.4g)を加え、70℃にて12時間攪拌して溶解させた。この溶液に3AMP(1wt%NMP溶液)5.0g、BCS(32.8g)を加え、室温で5時間攪拌して液晶配向剤(P2-3)を得た
【0099】
[製造例5]
BODA(1.25g、5.0mmol)、DA2-4(1.43g、5.0mmol)、及びDA-3(1.90g、5.0mmol)をNMP(18.3g)中で溶解し、60℃で3時間反応させた後、CBDA(0.96g、4.9mmol)とNMP(3.8g)を加え、40℃で12時間反応させポリアミック酸溶液を得た。このポリアミック酸溶液のMnは12,406であり、Mwは42,813であった。
このポリアミック酸溶液(21.7g)にNMPを加え6.5質量%に希釈した後、イミド化触媒として無水酢酸(4.0g)、及びピリジン(1.2g)を加え、80℃で3時間反応させた。この反応溶液をメタノール(252ml)に投入し、得られた沈殿物を濾別した。この沈殿物をメタノールで洗浄し、60℃で減圧乾燥しポリイミド粉末(E)を得た。このポリイミドのイミド化率は75%であった。
得られたポリイミド粉末(E)(3.6g)にNMP(28.8g)を加え、70℃にて12時間攪拌して溶解させた。この溶液に3AMP(1wt%NMP溶液)3.6g、BCS(24.0g)を加え、室温で5時間攪拌して液晶配向剤(P2-4)を得た。
【0100】
[比較製造例1]
BODA(1.03、4.1mmol)、DDM(1.13g、5.7mmol)、及びDA-4(1.07g、2.5mmol)をNMP(12.9)中で溶解し、60℃で3時間反応させた後、CBDA(0.77g、4.1mmol)とNMP(3.1g)を加え、40℃で12時間反応させポリアミック酸溶液を得た。このポリアミック酸溶液のMnは10,786であり、Mwは29,545であった。
このポリアミック酸溶液(24.0g)にNMPを加え6.5質量%に希釈した後、イミド化触媒として無水酢酸(5.2g)、及びピリジン(1.6g)を加え、50℃で3時間反応させた。この反応溶液をメタノール(282ml)に投入し、得られた沈殿物を濾別した。この沈殿物をメタノールで洗浄し、60℃で減圧乾燥しポリイミド粉末(F)を得た。このポリイミドのイミド化率は70%であった。
得られたポリイミド粉末(F)(1.1g)にNMP(14.7g)を加え、70℃にて12時間攪拌して溶解させた。この溶液に3AMP(1wt%NMP溶液)1.1g、BCS(17.0g)を加え、室温で5時間攪拌して液晶配向剤(RP-1)を得た
【0101】
<液晶セルの作製>
(実施例1)
液晶配向剤(P-1)、(P2-1)を、それぞれ、第一のITO基板、第二のITO基板にスピンコートし、80℃のホットプレートで90秒間乾燥した後、230℃の熱風循環式オーブンで20分間焼成を行い、膜厚100nmの液晶配向膜(A-1)、(A2-1)を形成した。
この2枚の基板について一方の基板の液晶配向膜上に直径4μmのビーズスペーサーを散布した後、その上からシール剤(三井化学社製 熱硬化性シール剤XN-1500T)を印刷した。次いで、もう一方の基板の液晶配向膜が形成された側の面を内側にして、先の基板と貼り合せた後、上記シール剤を150℃で90分の条件で硬化させて空セルを作製した。この空セルにPSA用の重合性化合物を含有するネガ型液晶MLC-3023(メルク社製商品名)を減圧注入法によって注入し、液晶セルを作製した。
【0102】
この液晶セルに15VのDC電圧を印加した状態で、この液晶セルの外側から325nmのバンドパスフィルターを通した高圧水銀ランプのUVを10J/cm照射した(1st-UV)。その後、液晶セルに電圧を印加しない状態で蛍光UVランプ(FLR40SUV32/A-1)を用いて30分間照射し(2nd-UV)、液晶セル中に存在する未反応の重合性化合物を失活させた。
その後、得られた液晶表示素子に振幅7.8V、30Hzの方形波を印加して60℃の環境下で48時間駆動させた後、最適な内部オフセット電圧をファンクションジェネレーター(横河計測社製、FG200)を用いて測定し、駆動前後で比較した。
【0103】
(実施例2~4、比較例1)
液晶配向剤(P2-1)の代りに、それぞれ、液晶配向剤(P2-2、P2-3、P2-4,RP-1)を用いた以外は実施例1と同様にして液晶セルを作製し、かつ液晶セルについて実施例1と同様の操作を行って最適な内部オフセット電圧を測定し、駆動前後で比較した。それぞれの結果を表1に示す。
【0104】
【表1】
【0105】
実施例1~4に示すオフセット電圧の変化量が、比較例1に比べて小さい値となり、本発明の液晶表示素子を用いることで内部オフセット電圧の経時的な変化を抑制できることが確認された。
なお、2018年2月23日に出願された日本特許出願2018-30875号の明細書、特許請求の範囲、図面、及び要約書の全内容をここに引用し、本発明の明細書の開示として、取り入れるものである。