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特許7243758粘着シート、粘着部品、フレキシブル画像表示装置部材、積層体、画像表示装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-13
(45)【発行日】2023-03-22
(54)【発明の名称】粘着シート、粘着部品、フレキシブル画像表示装置部材、積層体、画像表示装置
(51)【国際特許分類】
   C09J 133/06 20060101AFI20230314BHJP
   C09J 7/38 20180101ALI20230314BHJP
   C09J 151/00 20060101ALI20230314BHJP
   C09J 153/00 20060101ALI20230314BHJP
   C09J 175/08 20060101ALI20230314BHJP
   C09J 7/35 20180101ALI20230314BHJP
   C09J 11/06 20060101ALI20230314BHJP
   B32B 7/12 20060101ALI20230314BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20230314BHJP
   B32B 27/40 20060101ALI20230314BHJP
   B32B 27/30 20060101ALI20230314BHJP
【FI】
C09J133/06
C09J7/38
C09J151/00
C09J153/00
C09J175/08
C09J7/35
C09J11/06
B32B7/12
B32B27/00 M
B32B27/00 D
B32B27/40
B32B27/30 A
【請求項の数】 29
(21)【出願番号】P 2021075764
(22)【出願日】2021-04-28
(62)【分割の表示】P 2020189730の分割
【原出願日】2020-11-13
(65)【公開番号】P2021161433
(43)【公開日】2021-10-11
【審査請求日】2021-04-28
(31)【優先権主張番号】P 2020064014
(32)【優先日】2020-03-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006035
【氏名又は名称】三菱ケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000707
【氏名又は名称】弁理士法人市澤・川田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田畑 大樹
(72)【発明者】
【氏名】峯元 誠也
【審査官】本多 仁
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-039999(JP,A)
【文献】特開2017-119801(JP,A)
【文献】特開2019-131680(JP,A)
【文献】特開2018-062595(JP,A)
【文献】Elise Degrandi-Contraires、ほか5名,Mechanical Properties of Adhesive Films Obtained from PU-Acrylic Hybrid Particles,Macromolecules,米国,2011年04月26日,Vol.44 No.8,Page.2643-2652
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 1/00-201/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエーテルポリオール成分及びイソシアネート成分由来のウレタン結合を有する分子鎖を有するウレタンポリマー鎖(以下、「ウレタン成分セグメント」と称する)と、
(メタ)アクリル酸アルキルエステル成分由来の分子鎖を有するアクリルポリマー鎖(以下、「アクリル成分セグメント」と称する)とを有し、前記ウレタン成分セグメントの含有質量が、アクリル成分セグメントの質量100部に対して0.3~720/98.8質量部である粘着剤を含み、
下記(I)及び(II)を満足する粘着シート。
(I)周波数1Hzの剪断モードで動的粘弾性測定により得られる-20℃の貯蔵弾性率(G’(-20℃))が300kPa以下。
(II)周波数1Hzの剪断モードで動的粘弾性測定により得られる60℃の貯蔵弾性率(G’(60℃))が10kPa以上。
【請求項2】
前記ポリエーテルポリオールが、ポリエーテルグリコール由来の成分を含む、請求項1に記載の粘着シート。
【請求項3】
前記ポリエーテルグリコール由来の成分の質量割合(質量%)が、前記イソシアネート由来の成分の質量割合(質量%)よりも大きい、請求項2に記載の粘着シート。
【請求項4】
前記粘着剤は、前記ウレタン成分セグメント及び前記アクリル成分セグメントが共有結合により結合している請求項1~3のいずれか一項に記載の粘着シート。
【請求項5】
前記粘着剤は、下記(a)~(c)のいずれか1種以上のポリマーを含む請求項1~4のいずれか一項に記載の粘着シート。
(a)前記ウレタン成分セグメント及び前記アクリル成分セグメントが主鎖を構成するブロックポリマー
(b)前記ウレタン成分セグメント又は前記アクリル成分セグメントが主鎖を構成し、他方のセグメントが側鎖を構成するグラフトポリマー
(c)前記ウレタン成分セグメント又は前記アクリル成分セグメントの一方と、他方のセグメントとが架橋している架橋ポリマー
【請求項6】
前記粘着剤は、下記(d)及び(e)のうちのいずれか1種以上を含む粘着剤組成物から形成される、請求項1~4のいずれか一項に記載の粘着シート。
(d)アクリルポリマー及びポリエーテル型ポリウレタン
(e)アクリルポリマーを構成する単量体成分の混合物又はその部分重合物及びポリエーテル型ポリウレタン
【請求項7】
前記粘着剤組成物は、光又は熱で硬化する、光又は熱硬化性粘着剤組成物である、請求項6に記載の粘着シート。
【請求項8】
前記ポリエーテル型ポリウレタンは、(メタ)アクリロイル基又は水酸基を有する請求6又は7に記載の粘着シート。
【請求項9】
前記粘着剤は、開始剤及び/又は架橋剤を含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の粘着シート。
【請求項10】
ヘイズが1.0%未満である請求項1~9のいずれか一項に記載の粘着シート。
【請求項11】
さらに(III)を満足する請求項1~10のいずれか一項に記載の粘着シート。
(III)粘着シートの両端を反対方向に引っ張って初期長さの4倍の長さに伸長して、その状態を10分間保持し、その後、片端を放して20分間経過後の長さが、初期長さの1.0倍~1.6倍である。
【請求項12】
接触角法により測定される粘着シート表面のハンセン溶解度パラメーター(δd,δp,δh)において、極性項δpが2.0MPa0.5以上であり、且つ、水素結合項δhが5.0MPa0.5以上である請求項1~11のいずれか一項に記載の粘着シート。
【請求項13】
ポリエーテルポリオール成分及びイソシアネート成分由来のウレタン結合を有する分子鎖を有するウレタンポリマー鎖(以下、「ウレタン成分セグメント」と称する)と、
(メタ)アクリル酸アルキルエステル成分由来の分子鎖を有するアクリルポリマー鎖(以下、「アクリル成分セグメント」と称する)とを有し、
前記ウレタン成分セグメントの含有質量が、アクリル成分セグメントの質量100部に対して0.3~720/98.8質量部である粘着剤を含み、
下記(I)及び(II)を満足する、フレキブルデバイスに用いられる粘着部品。
(I)周波数1Hzの剪断モードで動的粘弾性測定により得られる-20℃の貯蔵弾性率(G’(-20℃))が300kPa以下。
(II)周波数1Hzの剪断モードで動的粘弾性測定により得られる60℃の貯蔵弾性率(G’(60℃))が10kPa以上。
【請求項14】
前記ポリエーテルポリオールが、ポリエーテルグリコール由来の成分を含む、請求項13に記載のフレキブルデバイスに用いられる粘着部品。
【請求項15】
前記ポリエーテルグリコール由来の成分の質量割合(質量%)が、前記イソシアネート由来の成分の質量割合(質量%)よりも大きい、請求項14に記載のフレキブルデバイスに用いられる粘着部品。
【請求項16】
前記粘着剤は、前記ウレタン成分セグメント及び前記アクリル成分セグメントが共有結合により結合している請求項13~15のいずれか一項に記載のフレキブルデバイスに用いられる粘着部品。
【請求項17】
前記粘着剤は、下記(a)~(c)のいずれか1種以上のポリマーを含む請求項13~16のいずれか一項に記載のフレキブルデバイスに用いられる粘着部品。
(a)前記ウレタン成分セグメント及び前記アクリル成分セグメントが主鎖を構成するブロックポリマー
(b)前記ウレタン成分セグメント又は前記アクリル成分セグメントが主鎖を構成し、他方のセグメントが側鎖を構成するグラフトポリマー
(c)前記ウレタン成分セグメント又は前記アクリル成分セグメントの一方と、他方のセグメントとが架橋している架橋ポリマー
【請求項18】
前記粘着剤は、下記(d)及び(e)のうちのいずれか1種以上を含む粘着剤組成物の硬化物からなる請求項13~16のいずれか一項に記載のフレキブルデバイスに用いられる粘着部品。
(d)アクリルポリマー及びポリエーテル型ポリウレタン
(e)アクリルポリマーを構成する単量体成分の混合物又はその部分重合物及びポリエーテル型ポリウレタン
【請求項19】
前記粘着剤組成物は、光又は熱で硬化する、光又は熱硬化性粘着剤組成物である、請求項18に記載のフレキブルデバイスに用いられる粘着部品。
【請求項20】
前記ポリエーテル型ポリウレタンは、(メタ)アクリロイル基及び/又は水酸基を有する請求項18又は19に記載のフレキブルデバイスに用いられる粘着部品。
【請求項21】
前記粘着剤は、開始剤及び/又は架橋剤を含む、請求項13~20のいずれか一項に記載のフレキブルデバイスに用いられる粘着部品。
【請求項22】
2つのフレキシブル部材が粘着層を介して貼り合わされた構成を有するフレキシブル画像表示装置部材であって、
前記2つのフレキシブル部材のうち少なくとも1つのフレキシブル部材の表面のハンセン溶解性パラメーターのδpが10.0MPa0.5以上、20.0MPa0.5以下であり、
前記粘着層は、ポリエーテルポリオール成分及びイソシアネート成分由来のウレタン結合を有する分子鎖を有するウレタンポリマー鎖(以下、「ウレタン成分セグメント」と称する)と、(メタ)アクリル酸アルキルエステル成分由来の分子鎖を有するアクリルポリマー鎖(以下、「アクリル成分セグメント」と称する)とを有し、前記ウレタン成分セグメントの含有質量が、アクリル成分セグメントの質量100部に対して0.3~720/98.8質量部である粘着剤を含み、
前記粘着層は、下記(I)及び(II)を満足する、フレキシブル画像表示装置部材。
(I)周波数1Hzの剪断モードで動的粘弾性測定により得られる-20℃の貯蔵弾性率(G’(-20℃))が300kPa以下。
(II)周波数1Hzの剪断モードで動的粘弾性測定により得られる60℃の貯蔵弾性率(G’(60℃))が10kPa以上。
【請求項23】
前記フレキシブル部材に対する前記粘着層の、60℃における300mm/min剥離速度での180度剥離強度が8N/25mm以上である請求項22に記載のフレキシブル画像表示装置部材。
【請求項24】
請求項1~12のいずれか一項に記載の粘着シートの少なくとも片面に部材シートを備えた積層体であって、
該部材シート表面のハンセン溶解性パラメーターのδpが10.0MPa0.5以上、20.0MPa0.5以下である積層体。
【請求項25】
粘着層の少なくとも片面に部材シートを備えた積層体であって、
前記粘着層は、ポリエーテルポリオール成分及びイソシアネート成分由来のウレタン結合を有する分子鎖を有するウレタンポリマー鎖(以下、「ウレタン成分セグメント」と称する)と、(メタ)アクリル酸アルキルエステル成分由来の分子鎖を有するアクリルポリマー鎖(以下、「アクリル成分セグメント」と称する)とを有し、前記ウレタン成分セグメントの含有質量が、アクリル成分セグメントの質量100部に対して0.3~720/98.8質量部である粘着剤を含み、下記(I)及び(II)を満足し、
該部材シート表面のハンセン溶解性パラメーターのδpが10.0MPa0.5以上、20.0MPa0.5以下である、積層体。
(I)周波数1Hzの剪断モードで動的粘弾性測定により得られる-20℃の貯蔵弾性率(G’(-20℃))が300kPa以下。
(II)周波数1Hzの剪断モードで動的粘弾性測定により得られる60℃の貯蔵弾性率(G’(60℃))が10kPa以上。
【請求項26】
ヘイズが1.0%未満である請求項24又は25に記載の積層体。
【請求項27】
前記部材シートに対する前記粘着シート又は粘着層の、60℃における300mm/min剥離速度での180度剥離強度が8N/25mm以上である請求項24~26のいずれか一項に記載の積層体。
【請求項28】
前記部材シートが、ポリアミド、ポリイミド、エポキシ樹脂、トリアセチルセルロース及びポリエステルからなる群から選択される一種又は二種以上の樹脂からなる請求項24~27のいずれか一項に記載の積層体。
【請求項29】
請求項24~28のいずれか一項に記載の積層体を備えた画像表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粘着シート、フレキシブル画像表示装置部材、粘着部品、積層体、画像表示装置に関する。より詳しくは、本発明は、屈曲可能な画像表示装置に好適に使用され、画僧表示装置を構成する部材シートに対して強固に粘着できる粘着シート、粘着層又は接着部品と、これらを用いた積層体、フレキシブル画像表示装置部材又は画像表示装置に関するものであって、屈曲可能な画像表示装置の信頼性向上に寄与するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、有機発光ダイオード(OLED)や量子ドット(QD)を用いたフレキシブルあるいは屈曲可能な画像表示装置が開発され、広く商用化されつつある。
このような画像表示装置では、複数の部材シートが透明な接着シートで貼り合された構造をしており、折り曲げに伴う部材シート間の歪を吸収できる柔らかさを備えつつ、強固に部材シートを粘着することができる粘着シートが求められている。
【0003】
従来の画像表示装置に広く使用されてきた粘着シートは、酸を実質的に含有しない酸フリーのアクリル系粘着シートであった。
近年、屈曲用の画像表示装置に対応するためにアクリルポリマー組成を見直した、低いTg(ガラス転移温度)を有する粘着シートが提案されている。
【0004】
例えば特許文献1には、(メタ)アクリル酸エステル共重合体と架橋剤とを含有し、所定のクリープコンプライアンス値を有し、復元性を改良した粘着剤が開示されている。
【0005】
また、特許文献2には、接着剤組成物を含む、フレキシブルデバイス用のアセンブリ層であって、約-30℃~約90℃の温度範囲内で、前記アセンブリ層が、振動数1Hzにおいて約2MPaを超えないせん断貯蔵弾性率と、約50kPa~約500kPaのせん断応力を負荷して5秒において測定される少なくとも約6×10-61/Paのせん断クリープコンプライアンス(J)と、約5kPa~約500kPaの範囲内のせん断応力を負荷した少なくとも1点において前記負荷したせん断応力の解除後約1分以内に少なくとも約50%のひずみ回復と、を有する、アセンブリ層が開示されている。
【0006】
さらに、特許文献3には、粘着剤層と、少なくとも偏光膜を含む光学フィルムと、を含むフレキシブル画像表示装置用積層体であって、前記積層体を曲げ半径3mmで折り曲げた場合の前記積層体の端部における前記粘着剤層に基づくズレ量が、100~600μmであることを特徴とするフレキシブル画像表示装置用積層体が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2019-123826号公報
【文献】特表2018-526469号公報
【文献】国際公開パンフレットWO2019/026753号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
屈曲可能な画像表示装置の登場により、それに用いられる部材シートも屈曲に対応したものが用いられつつある。例えば前面のカバーフィルムとして、透明ポリイミドフィルムが採用されてきている。
しかし、このようなポリイミドフィルムは、極性が高いことから、従来の粘着シートでは、屈曲のストレスで剥がれたり、ディスプレイの使用者が保護フィルムの一部と勘違いして剥がされてしまったりする虞があった。
【0009】
また、画像表示装置に対する薄型化や小曲率半径化の要求は年々厳しくなる見通しであり、それに伴い、粘着シートに対する強粘着化のニーズも高まってくることが予測された。
【0010】
そこで、本発明は、極性の高い部材シート又はフレキシブル部材に対して強固に粘着することができ、透明性を有し、しかも屈曲性にも優れた、新たな粘着シート又は粘着層、粘着部品、並びに、これらを用いた積層体、フレキシブル画像表示装置部材及び画像表示装置を提供せんとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、ポリエーテルポリオール成分及びイソシアネート成分由来のウレタン結合を有する分子鎖を有するウレタンポリマー鎖(以下、「ウレタン成分セグメント」とも称する)と、(メタ)アクリル酸アルキルエステル成分由来の分子鎖を有するアクリルポリマー鎖(以下、「アクリル成分セグメント」とも称する)と、を有する粘着剤を含み、下記(I)及び(II)を満足する粘着シートを提案する。
(I)周波数1Hzの剪断モードで動的粘弾性測定により得られる-20℃の貯蔵弾性率(G’(-20℃))が300kPa以下。
(II)周波数1Hzの剪断モードで動的粘弾性測定により得られる60℃の貯蔵弾性率(G’(60℃))が10kPa以上。
【0012】
また、本発明は、ウレタン成分セグメントとアクリル成分セグメントとを有する粘着剤を含む、フレキブルデバイスに用いられる粘着部品を提案する。
【0013】
本発明はまた、2つのフレキシブル部材が粘着層を介して貼り合わされた構成を有するフレキシブル画像表示装置部材であって、前記粘着層は、ポリエーテルポリオール成分及びイソシアネート成分由来のウレタン結合を有する分子鎖を有するウレタンポリマー鎖(以下、「ウレタン成分セグメント」と称する)と、(メタ)アクリル酸アルキルエステル成分由来の分子鎖を有するアクリルポリマー鎖(以下、「アクリル成分セグメント」と称する)と、を有する粘着剤を含み、
前記粘着層は、下記(I)及び(II)を満足する、フレキシブル画像表示装置部材を提案する。
(I)周波数1Hzの剪断モードで動的粘弾性測定により得られる-20℃の貯蔵弾性率(G’(-20℃))が300kPa以下。
(II)周波数1Hzの剪断モードで動的粘弾性測定により得られる60℃の貯蔵弾性率(G’(60℃))が10kPa以上。
なお、本粘着層は、その形態に制限はなく、予めシート状に成形されたシート状粘着製品が本フレキシブル画像表示装置部材に貼り合わされて形成されたものであっても、本フレキシブル画像表示装置部材に粘着層が直接形成されたものであってもよい。
【0014】
本発明はまた、前記粘着シートの少なくとも片面に部材シートを備えた積層体であって、該部材シート表面のハンセン溶解性パラメーターのδpが10MPa0.5以上、20MPa0.5以下であることを特徴とする積層体及び当該積層体を備えた画像表示装置を提案する。
【発明の効果】
【0015】
本発明の粘着シート又は粘着層は、極性の高い部材シート又はフレキシブル部材に対しても大きな粘着力を示し、透明性を有し、さらには、屈曲状態で高温保管しても、デラミや発泡といった欠陥の発生を抑えることができる。
よって、屈曲可能な画像表示装置に好適に使用することができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を詳しく説明する。ただし、本発明の内容が以下に説明する実施形態に限定されるものではない。
【0017】
<<本粘着シート>>
本発明の実施形態の一例に係る粘着シート(以下、「本粘着シート」と称する。)は、ポリエーテルポリオール成分及びイソシアネート成分由来のウレタン結合を有する分子鎖を有するウレタンポリマー鎖(以下、「ウレタン成分セグメント」と称する)と、(メタ)アクリル酸アルキルエステル成分由来の分子鎖を有するアクリルポリマー鎖(以下、「アクリル成分セグメント」と称する)と、を有する粘着剤(以下、「本粘着剤」と称する)を含む。
【0018】
<<本フレキシブル画像表示装置部材>>
本発明の実施形態の一例に係るフレキシブル画像表示装置部材(以下、「本フレキシブル画像表示装置部材」と称することがある。)は、2つのフレキシブル部材が粘着層を介して貼り合わされた構成を有するフレキシブル画像表示装置部材であって、前記粘着層(以下、「本粘着層」と称することがある。)は、本粘着剤を含む。
【0019】
前記アクリル成分セグメント、すなわち、「(メタ)アクリル酸アルキルエステル成分由来の分子鎖を有するアクリルポリマー鎖」とは、(メタ)アクリル酸アルキルエステルが連続して重合された分子鎖構造を意味し、前記アクリル成分セグメントは当該分子鎖構造をもつセグメントである。
一方、ウレタン成分セグメント、すなわち、「ポリエーテルポリオール成分及びイソシアネート成分由来のウレタン結合を有する分子鎖を有するウレタンポリマー鎖」とは、ポリエーテルポリオールとポリイソシアネートの反応よりウレタン結合を形成して重合された分子鎖構造を意味し、前記ウレタン成分セグメントは当該分子鎖構造をもつセグメントである。
【0020】
<本粘着剤>
本粘着剤は、ウレタン成分セグメントを含有することで、後述するように、アクリル重合体のみからなる粘着シート又は粘着層に比べて、表面のHSPにおいて、δpを大きくすることが可能となる。よって、δpが大きい各種ディスプレイフィルム(部材シート)との濡れ性が向上し、界面接着力が向上し、結果として剥離試験における粘着力の向上に寄与することができる。
【0021】
本粘着シート又は本粘着層において、本粘着剤中のアクリル成分セグメントは、ウレタン成分セグメントよりも質量割合が多いことが好ましい。中でも、ウレタン成分セグメントの質量は、アクリル成分セグメントの質量100部に対して0.3~40質量部であるのが好ましく、中でも0.5質量部以上或いは30質量部以下、その中でも1質量部以上或いは20質量部以下であるのがさらに好ましい。
【0022】
前記ウレタン成分セグメントとしては、一般的にポリエーテル鎖、ポリエステル鎖、ポリカーボネート鎖等を有するものを挙げることができる。
ただし、本発明においては、アクリル成分との相溶性の観点から、ポリエーテル鎖を有するポリエーテル型のウレタン成分セグメントであることが好ましい。
前記ウレタン成分セグメントは、ポリオールと多官能イソシアネート化合物とから形成され、このポリオールはポリエーテルポリオールであることが好ましい。
さらにポリエーテルポリオールの中でも、ポリエーテルグリコール由来の成分を含むもの、中でも、ポリエーテルグリコールを主成分として選択することが好ましい。
【0023】
ここで「主成分」とは、ポリオールの中で最も質量割合の高い成分の意味であり、ポリオール中50質量%以上を占めるのが好ましく、中でも70質量%以上、その中でも80質量%以上、その中でも90質量%以上(100質量%を含む)を占めるのが好ましい。
【0024】
本粘着シート又は本粘着層において、本粘着剤中のアクリル成分セグメントとウレタン成分セグメントは共有結合により結合しているのが好ましい。
【0025】
また、本粘着剤は、下記(a)~(c)のいずれか1種以上のポリマーを含むことが好ましい。
さらに、アクリル成分セグメントとウレタン成分セグメントが共有結合で結合していることが好ましい。アクリル成分セグメントとウレタン成分セグメントが共有結合で結合するポリマーを含むことで、アクリル成分セグメントとウレタン成分セグメントが相溶しやすくなり、本粘着シート又は本粘着層の透明性が向上する。
【0026】
(a)前記ウレタン成分セグメント及びアクリル成分セグメントの両方が主鎖を構成するブロックポリマー
(b)前記ウレタン成分セグメント又は前記アクリル成分セグメントが主鎖を構成し、他方のセグメントが側鎖を構成するグラフトポリマー
(c)前記ウレタン成分セグメント又は前記アクリル成分セグメントの一方と、他方のセグメントとが架橋している架橋ポリマー
【0027】
<第1の態様>
前記の中でも本粘着シート又は本粘着層の好ましい一態様(以下「第1の態様」という)としては、本粘着剤が、アクリルポリマーからなる幹ポリマーと、ポリエーテル型ポリウレタンからなる枝ポリマー(「グラフト鎖」とも称する)とを有するグラフトポリマーを主成分樹脂として含有する態様を挙げることができる。
【0028】
なお、前記「主成分樹脂」とは、本粘着剤を構成する樹脂の中で最も質量割合の高い樹脂の意味であり、本粘着剤を構成する樹脂の50質量%以上を占めるのが好ましく、中でも70質量%以上、その中でも80質量%以上、その中でも90質量%以上(100質量%を含む)を占めるのが好ましい。
【0029】
ウレタン成分セグメントを枝ポリマーとするグラフト共重合体を主成分樹脂とすれば、ポリウレタン成分の量が少なくても、表面のハンセン溶解度パラメーター(δp,δh、詳細は下述する)を効率良く高めることができるため、更に好ましい。
なお、前記ポリエーテル型ポリウレタンとは、ポリエーテルポリオール成分由来のウレタン結合を有する分子鎖を複数有するポリウレタンであり、詳細については下述する。
【0030】
前記枝ポリマーのポリウレタンは、アクリルポリマーとの相溶性や、伸長後の復元性を高める観点から、(メタ)アクリロイル基末端ポリウレタンであるのが好ましい。
すなわち、アクリルポリマーからなる主鎖に、(メタ)アクリロイル基末端ポリウレタンが枝成分として結合したグラフトポリマーであることが好ましい。
このグラフトポリマーは、このポリマー単独でアクリル成分セグメントとウレタン成分セグメントとを有するものである。
【0031】
前記(メタ)アクリロイル基末端ポリウレタンとしては、ポリウレタンの末端に水酸基含有アクリレートが付加したポリウレタンであるのが好ましい。このようなポリウレタンは、大成ファインケミカル(株)商品名UKWシリーズとして入手可能である。
【0032】
アクリルポリマーを幹として、ポリウレタンが枝成分として結合したグラフトポリマーは、ポリウレタンが粘着シート表面に露出するため、表面HSPにおいて高いδp、δhを有する粘着シートとなる。
【0033】
主鎖であるアクリルポリマーの質量平均分子量は、例えば50,000~1,300,000であるのが好ましく、枝成分のポリウレタン部位の質量平均分子量は、例えば1,000~20,000であるのが好ましい。
ここで、質量平均分子量は、ポリスチレン換算でゲル浸透クロマトグラフィーを用いて測定した値である。
【0034】
前記第1の態様において、本粘着剤は、前記(a)~(c)のポリマー以外に、開始剤及び/又は架橋剤、その他の樹脂成分、添加剤を含む粘着剤組成物から形成することもできる。
中でも、当該粘着剤組成物は、光又は熱硬化性粘着剤組成物であるのが好ましく、その場合には、開始剤及び/又は架橋剤を含有する場合が多い。
【0035】
(開始剤)
前記開始剤は特に限定されず、例えば熱により活性化するもの、活性エネルギー線により活性化するもの、いずれも使用できる。
また、ラジカルを発生し、ラジカル反応を引き起こすもの、カチオンやアニオンを発生し、付加反応を引き起こすものいずれも使用することができる。
【0036】
具体的には、有機過酸化物、アゾ化合物等を挙げることができる。
前記有機過酸化物としては、例えばラウロイルパーオキシド、1,1-ビス(t-ヘキシルパーオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、t-ヘキシルパーオキシピバレート、t-ブチルパーオキシピバレート、2,5-ジメチル-2,5-ビス(2-エチルヘキサノイルパーオキシ)ヘキサン、t-ヘキシルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、t-ブチルパーオキシイソブチレート、t-ブチルパーオキシ-3,5,5-トリメチルヘキサノエート、t-ブチルパーオキシラウレート等を挙げることができる。
【0037】
前記アゾ化合物としては、例えばアゾビスイソブチロニトリル、アゾビスシクロヘキサンカルボニトリル等を挙げることができる。これらの開始剤は単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0038】
前記の他にも、例えば紫外線や可視光線等の光、より具体的には、波長200nm~780nmの光を照射することにより活性なラジカル種を発生する化合物(いわゆる光開始剤)を好ましい例として挙げることができる。
【0039】
前記光開始剤としては、開裂型光開始剤、及び、水素引抜型開始剤のいずれも使用することができ、また、両者を併用することも可能である。
【0040】
前記開裂型光開始剤としては、例えば2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-プロパン-1-オン、1-(4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル)-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オン、2-ヒロドキシ-1-[4-{4-(2-ヒドロキシ-2-メチル-プロピオニル)ベンジル}フェニル]-2-メチル-プロパン-1-オン、オリゴ(2-ヒドロキシ-2-メチル-1-(4-(1-メチルビニル)フェニル)プロパノン)、フェニルグリオキシリック酸メチル、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルフォリノフェニル)ブタン-1-オン、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルフォリノプロパン-1-オン、2-(ジメチルアミノ)-2-[(4-メチルフェニル)メチル]-1-[4-(4-モルホリニル)フェニル]-1-ブタノン、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルフォスフィンオキサイド、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、(2,4,6-トリメチルベンゾイル)エトキシフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,6-ジメトキシベンゾイル)2,4,4-トリメチルペンチルフォスフィンオキサイド、又はこれらの誘導体などを挙げることができる。
【0041】
前記開裂型光開始剤を使用すると、光反応終了後に光開始剤が構造変化して失活するため、硬化反応が終了した後に活性種として残存することがなく、予期せぬ光劣化等をもたらすおそれがないため、好ましい。
【0042】
前記水素引抜型光開始剤としては、例えばベンゾフェノン、4-メチル-ベンゾフェノン、2,4,6-トリメチルベンゾフェノン、4-フェニルベンゾフェノン、3,3’-ジメチル-4-メトキシベンゾフェノン、4-(メタ)アクリロイルオキシベンゾフェノン、2-ベンゾイル安息香酸メチル、ベンゾイル蟻酸メチル、ビス(2-フェニル-2-オキソ酢酸)オキシビスエチレン、4-(1,3-アクリロイル-1,4,7,10,13-ペンタオキソトリデシル)ベンゾフェノン、チオキサントン、2-クロロチオキサントン、3-メチルチオキサントン、2,4-ジメチルチオキサントン、2-メチルアントラキノン、2-エチルアントラキノン、2-tert-ブチルアントラキノン、2-アミノアントラキノン、又はこれらの誘導体などを挙げることができる。
【0043】
前記水素引抜型光開始剤を使用すると、光開始剤がポリマーのさまざまな部位からも水素引き抜き反応をし得ることから、より複雑な架橋構造を形成することができるため好ましい。
また、水素引抜型光開始剤は、一度光硬化反応に用いた後であっても、再度光照射することで繰り返し活性種として機能し得る。
【0044】
特に本発明においては、前述したアクリルポリマーからなる主鎖にポリウレタンが枝成分として結合したポリマーに対して、水素引き抜き型光開始剤を用いて光硬化反応をした場合、高極性の部材シートに対して高い耐屈曲性を有する粘着シート又は粘着層とすることができる。
【0045】
架橋構造形成には、光重合開始剤以外にも熱重合開始剤を使用することができる。
【0046】
熱重合開始剤としては、例えばアゾ化合物、キニーネ、ニトロ化合物、アシルハロゲン化物、ヒドラゾン、メルカプト化合物、ピリリウム化合物、イミダゾール、クロロトリアジン、ベンゾイン、ベンゾインアルキルエーテル、ジケトン、フェノン、並びにジラウロイルペルオキシド及びNOF Co.からPERHEXA TMHとして入手可能な1,1-ジ(t-ヘキシルペルオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン等の有機ペルオキシドを挙げることができる。
【0047】
(架橋剤)
架橋構造形成のために、架橋剤を使用することができる。
水酸基などの活性水素基を含有した高分子量成分であれば、イソシアネートやカルボジイミドなどによって架橋することが可能である。
【0048】
前記架橋剤としては、イソシアネート化合物が好ましく、下記ポリウレタンの章で記載するイソシアネート化合物を好適に用いることができる。
また、架橋反応の促進のために、遷移金属触媒などをさらに添加することも、粘着シート又は粘着層形成のプロセス上好ましい。
【0049】
開始剤は、本粘着剤の総質量に基づいて0.01~10質量%、又は0.01~5質量%の濃度で用いられることが多い。開始剤の混合物を用いてもよい。
【0050】
(その他の樹脂成分)
前記第1の態様において、本粘着剤は、前記の他に、必要に応じて、例えばポリエステル、ポリアミド、ポリオレフィン、オレフィン系モノマーなどの他の樹脂成分を含んでいてもよい。
【0051】
(その他の添加剤)
前記第1の態様において、本粘着剤は、前記の他に、必要に応じて、その他の添加剤として、例えば粘着付与剤、硬化促進剤、充填剤、カップリング剤、紫外線吸収剤、紫外線安定剤、酸化防止剤、安定剤、顔料、防錆剤などのうちの一種又は二種以上を含んでいてもよい。
これら添加剤の量は、典型的には、粘着シート及び粘着層の硬化に悪影響を与えないように、又は粘着シート及び粘着層の物理的特性に悪影響を与えないように選択するのが好ましい。
【0052】
上記粘着付与剤は、一般に、粘着剤組成物の粘着性を高める任意の化合物又は化合物の混合物であってもよい。
粘着付与剤としては、特に限定されるものではなく、従来公知のものを使用することができる。例えば、テルペン系粘着付与剤、フェノール系粘着付与剤、ロジン系粘着付与剤、脂肪族系石油樹脂、芳香族系石油樹脂、共重合系石油樹脂、脂環族系石油樹脂、キシレン樹脂、エポキシ系粘着付与剤、ポリアミド系粘着付与剤、ケトン系粘着付与剤、エラストマー系粘着付与剤などが挙げられ、これらを1種又は2種以上を組み合わせて使用できる。
【0053】
<第2の態様>
本粘着シート又は本粘着層の好ましい他の一態様(以下「第2の態様」という)としては、本粘着剤が、下記(d)及び(e)のうちのいずれか一種以上を含む粘着剤組成物から形成される態様を挙げることができる。
【0054】
(d)アクリルポリマー及びポリエーテル型ポリウレタン
(e)アクリルポリマーを構成する単量体成分の混合物又はその部分重合物及びポリエーテル型ポリウレタン
【0055】
前記(d)では、本粘着剤において、アクリルポリマーによりアクリル成分セグメントが形成され、ポリエーテル型ポリウレタンによりウレタン成分セグメントが形成される。
【0056】
前記(e)では、本粘着剤において、アクリルポリマーを構成する単量体成分の混合物又はその部分重合物によりアクリル成分セグメントが形成され、ポリエーテル型ポリウレタンによりウレタン成分セグメントが形成される。
【0057】
前記(d)又は(e)のいずれかを含む粘着剤組成物は、上記(d)又は(e)以外にも前記第1の態様と同じく、開始剤及び/又は架橋剤、その他の樹脂成分、添加剤を含むことができる。
前記粘着剤組成物は、光又は熱で硬化する、光又は熱硬化性粘着剤組成物であるのが好ましく、その場合には、開始剤及び/又は架橋剤を含有することが多い。
なお、これら開始剤、架橋剤、その他の樹脂成分及び添加剤の好ましい態様は上述と同じであるため省略する。
【0058】
(アクリルポリマー)
前記第1の態様及び第2の態様において、前記アクリルポリマーとしては、(メタ)アクリル酸アルキルエステルを単量体として含む重合体又は共重合体を挙げることができる。
【0059】
上記(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば本粘着シート又は本粘着層のG’(-20℃)を300kPa以下とするため、-45~-30℃の低いTgにする単量体としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、tert-ブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n-ヘキシル(メタ)アクリレート、n-オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、イソミリスチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸アルキルエステルや、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等の水酸基を有する(メタ)アクリル酸エステルや、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、2-ブトキシエチル(メタ)アクリレート、2-フェノキシエチル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、2-イソシアナトエチル(メタ)アクリレート等を挙げることができる。これらの(メタ)アクリル酸エステルは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0060】
また、前記アクリルポリマーを構成する単量体成分として、前記(メタ)アクリル酸アルキルエステル以外にも各種ビニル化合物等を使用してもよい。
【0061】
前記ビニル化合物は特に限定されず、例えばN,N-ジメチルアクリルアミド、N,N-ジエチルアクリルアミド、N-イソプロピルアクリルアミド、N-ヒドロキシエチルアクリルアミド、アクリルアミド等の(メタ)アクリルアミド化合物、N-ビニルピロリドン、N-ビニルカプロラクタム、N-ビニルアセトアミド、N-アクリロイルモルフォリン、アクリロニトリル、スチレン、酢酸ビニル等を挙げることができる。これらのビニル化合物は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0062】
前記アクリルポリマーの水酸基価(mgKOH/g樹脂)は、5~200が好ましく、中でも20以上或いは180以下であるのがさらに好ましい。
前記アクリルポリマーの水酸基価は、前記(メタ)アクリル酸エステルの中から水酸基含有単量体成分の重合組成比率により制御できる。
水酸基価が上記範囲であることで、水酸基との反応を利用したウレタン成分セグメントの導入が可能となる。
【0063】
前記アクリルポリマーの質量平均分子量(Mw)の好ましい下限は40万、好ましい上限は130万である。
前記アクリルポリマーの質量平均分子量(Mw)が40万以上であれば、粘着シート又は粘着層のベタツキが高くなり過ぎることがなく、打ち抜き加工性を維持できるとともに、粘着力と復元性の両立が可能となる。
他方、上記アクリルポリマーの質量平均分子量(Mw)が130万以下であれば、表面が平滑でヘイズの小さい粘着シート又は粘着層を成形することが可能である。
【0064】
前記アクリルポリマーを得るには、前記単量体成分を開始剤の存在下にてラジカル反応させればよい。
前記単量体成分をラジカル反応させる方法、即ち、重合方法としては、例えば溶液重合(沸点重合又は定温重合)、乳化重合、懸濁重合、塊状重合等を挙げることができる。なかでも、開始剤や重合温度等を調整することにより、分子量分布(Mw/Mn)を制御できることから、溶液重合が好ましい。
【0065】
前記重合方法として溶液重合を用いる場合、反応溶剤として、例えば酢酸エチル、トルエン、メチルエチルケトン、メチルスルホキシド、エタノール、アセトン、ジエチルエーテル等を挙げることができる。これらの反応溶剤は単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記重合方法として溶液重合を用いる場合、重合温度としては、40~90℃程度が好ましい。
【0066】
(ポリエーテル型ポリウレタン)
前記第2の態様において、前記ポリエーテル型ポリウレタンは、ポリエーテルポリオールと多官能イソシアネート化合物を反応して得られるウレタン結合を有する分子鎖を複数有するポリウレタンである。
本発明において、前記ポリエーテル型ポリウレタンは、ウレタン結合を分子内に2以上有することが好ましい。
【0067】
通常ポリウレタンの原料であるポリオールとしては、例えばポリエーテルポリオール類、ポリエステルポリオール類、ポリカーボネート系ポリオール類、ポリオレフィンポリオール類、アクリルポリオール類などを挙げることができる。本発明においては、中でも、ポリエーテルポリオール類を有することが、アクリルポリマーへの相溶性の観点から好ましい。
【0068】
前記多官能イソシアネート化合物としては、好ましくはジイソシアネートである。
また、ゲル化防止やアクリル重合体との相溶性の観点から特に好ましくは、4,4’-メチレンビス(フェニルイソシアネート)(MDI);トルエンジイソシアネート(TDI);m-キシレンジイソシアネート(XDI);ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI);メチレンビス(4-シクロヘキシルジイソシアネート)(HDMI(登録商標));ナフタレン-1,5-ジイソシアネート(NDI);3,3’-ジメチル-4,4’-ビフェニルジイソシアネート(TODI);1,4-ジ-イソシアナトベンゼン(PPDI);フェニル-1,4-4-ジイソシアネート;トリメチルヘキサメチルジイソシアネート(TDMI);イソフォロンジイソシアネート(IPDI);1,4ーシクロヘキシルジイソシアネート(CHDI);ジフェニルエーテル4,4’-ジイソシアネート;p,p’-ジフェニルジイソシアネート;リジンジイソシアネート(LDI);1,3-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン;ポリメチルポリフェニルイソシアネート(PMDI);及びそれらの異性体及び/又は混合物からなる群から選択される。
【0069】
ポリエーテルポリオール由来の成分である前記ポリエーテルポリオールと、イソシアネート由来の成分である前記多官能イソシアネート化合物の質量比は、アクリルポリマーとの相溶性の観点から、ポリエーテルポリオールの質量割合(質量%)が多官能イソシアネート化合物の質量割合(質量%)より大きいことが好ましい。特にポリエーテルグリコール由来の成分であるポリエーテルグリコール類の質量割合(質量%)が、イソシアネート由来の成分である多官能イソシアネート化合物の質量割合(質量%)よりも大きいことで、アクリルポリマーとの相溶性を向上させつつ、ウレタン成分の分子間水素結合の影響を少なくできるため、伸長後の復元性を高める観点からも好ましい。
よって、ポリエーテルグリコール由来の成分の質量割合(質量%)が、前記イソシアネート由来の成分の質量割合(質量%)よりも大きいことが好ましい。
【0070】
前記第2の態様において、本粘着剤は、上記(d)及び(e)のうちの少なくとも何れか一種以上を含む粘着剤組成物を硬化して形成されることが好ましい。とりわけ、前記粘着剤組成物は光又は熱により硬化することが好ましい。
前記粘着剤組成物を硬化することで、本粘着シート又は本粘着層の接着力及び凝集力を高めることができる。
【0071】
前記の観点から、前記ポリエーテル型ポリウレタンは、1分子中に1個以上のアクリロイル基又はメタクリロイル基を有することが好ましい。該アクリロイル基又はメタクリロイル基を有する粘着剤組成物を光硬化して使用することで本粘着シート又は本粘着層の接着力及び凝集力を高めることができる。
【0072】
また、前記第2の態様において、前記1分子中に1個以上のアクリロイル基又はメタクリロイル基を有するポリエーテル型ポリウレタンと、水素引抜型光開始剤とを含む粘着剤組成物を使用することで、アクリル成分セグメント及びウレタン成分セグメント間で架橋構造を形成する架橋ポリマーが生成され、本粘着シート又は本粘着層の接着力及び凝集力を高めることができる。
【0073】
前記1分子中に1個以上のアクリロイル基又はメタクリロイル基(以下、総括して(メタ)アクリロイル基と称する)を有するポリエーテル型ポリウレタンとしては、例えば片末端又は両末端に(メタ)アクリロイル基を有するポリエーテル型ポリウレタンを挙げることができる。
また、その他にも、一分子中に水酸基及び(メタ)アクリロイル基を有するポリエーテル型ポリウレタンであってもよく、また、一分子中にイソシアネート基及び(メタ)アクリロイル基を有するポリエーテル型ポリウレタンであってもよい。
【0074】
また、同様の観点から、前記ポリエーテル型ポリウレタンは、1分子中に1個以上の水酸基を有することが好ましい。該水酸基を有するポリエーテル型ポリウレタンと、イソシアネートのような架橋剤とを含む粘着剤組成物を熱硬化して使用することでアクリル成分セグメント及びウレタン成分セグメント間で架橋構造を形成する架橋ポリマーが生成され、本粘着シート又は本粘着層の接着力及び凝集力を高めることができる。
前記1分子中に1個以上の水酸基を有するポリエーテル型ポリウレタンとしては、例えば片末端又は両末端に水酸基を有するポリエーテル型ポリウレタンを挙げることができる。
【0075】
<貯蔵弾性率>
本粘着シート及び本粘着層は、周波数1Hzの剪断モードで動的粘弾性測定により得られる-20℃の貯蔵弾性率(G’(-20℃))が300kPa以下であることが好ましく、200kPa以下であることがさらに好ましい。
G’(-20℃)を上記範囲とすることで、本粘着シート又は本粘着層に後述する部材シートを貼り合わせて折り曲げ操作をした際、部材シートの割れを防止することができる。
屈曲可能な画像表示装置に使用される粘着シート及び本粘着層は、折り畳む速度(周波数)において柔らかくしてある必要があり、高周波数にて柔軟であるためには、動的粘弾性の温度-時間換算測により、低温域でG’が低いこと、つまり、粘着シート及び粘着層のガラス転移温度Tgが低いことが求められるため、-20℃の貯蔵弾性率(G’(-20℃))が300kPa以下であることが求められる。
【0076】
上記のG’(-20℃)を達成するには、本粘着シート及び本粘着層において、周波数1Hzの剪断モードで動的粘弾性測定により得られる損失正接(tanδ)の極大値が-20℃以下であることが好ましい。
本粘着シート及び本粘着層において、-20℃の貯蔵弾性率(G’(-20℃))を上記範囲に調整するには、ウレタン成分セグメント及びアクリル成分セグメントを有する粘着剤を使用して上記範囲に調整すればよく、とりわけ、上記第1の態様又は第2の態様で示した粘着剤を使用することが好ましい。但し、その方法に限定するものではない。
【0077】
本粘着シート及び本粘着層は、周波数1Hzの剪断モードで動的粘弾性測定により得られる60℃の貯蔵剪断弾性率(G’(60℃))が、10kPa以上であることが好ましく、20kPa以上であることがさらに好ましい。
貯蔵剪断弾性率(G’(60℃))を上記範囲とすることで、例えば本粘着シート又は本粘着層を部材シートに貼着して積層シートを形成した際、常温から高温において、積層シートの折り曲げ時の層間応力を小さくすることができ、部材シートのデラミや割れを抑制することができる。
【0078】
本粘着シート及び本粘着層において、-20℃の貯蔵弾性率(G’(-20℃))を上記範囲に調整するには、ウレタン成分セグメント及びアクリル成分セグメントを有する粘着剤を使用して上記範囲に調整すればよく、とりわけ、上記第1の態様又は第2の態様で示した粘着剤を使用することが好ましい。
【0079】
<損失正接(tanδ)>
本粘着シート及び本粘着層は、周波数1Hzの剪断モードで動的粘弾性測定により得られる損失正接(tanδ)の極大値が-20℃以下にあることが好ましい。
この極大値は-30℃以下にあることがより好ましく、-40℃以下にあることがさらに好ましい。下限については特に定めないが通常-70℃以上である。
この極大値の温度は、粘着シートのガラス転移温度(Tg)の目安となるものであり、この値が-20℃以下であることで、低温での貯蔵弾性率が十分下がり、屈曲操作によるストレスを低減することが可能となる。
本粘着シート及び本粘着層は、周波数1Hzの剪断における損失正接(tanδ)の極大値0.1以上のピークが、-60~-20℃の温度範囲に存在することが特に好ましい。
【0080】
本発明において、種々の温度における弾性率(貯蔵弾性率)G’と粘性率(損失弾性率)G”及び損失正接(tanδ=G”/G’)はひずみレオメーターを用いて測定することができる。
【0081】
本粘着シート及び本粘着層において、損失正接(tanδ)の極大値を上記範囲に調整するには、ウレタン成分セグメント及びアクリル成分セグメントを有する粘着剤を使用して上記範囲に調整すればよく、とりわけ、上記第1の態様又は第2の態様で示した粘着剤を使用することが好ましい。但し、これらの方法に限定するものではない。
【0082】
<復元力>
本粘着シート及び本粘着層は、粘着シート又は本粘着層の両端を反対方向に引っ張って初期長さの4倍の長さに伸長して、その状態を10分間保持し、その後、片端を放して20分間経過後の長さが、初期長さの1.0倍~1.6倍であることが好ましい。
上記の操作は、粘着シート又は本粘着層を部材シートに貼り合わせた積層体、本フレキシブル画像表示装置部材及び画像表示装置の折り曲げ後に広げた際の復元性に関連しており、上記の範囲内にあることで、積層体や本フレキシブル画像表示装置部材や画像表示装置の折り目を目立たなくできる。
【0083】
本粘着シート及び本粘着層において、復元力を上記範囲に調整するには、ウレタン成分セグメント及びアクリル成分セグメントを有する粘着剤を使用して上記範囲に調整すればよく、とりわけ、上記第1の態様又は第2の態様で示した粘着剤を使用することが好ましい。但し、これらの方法に限定するものではない。
【0084】
<ヘイズ>
本粘着シート及び本粘着層は、ヘイズが1.0%未満であることが好ましく、0.7%未満であることがさらに好ましい。
本粘着シート及び本粘着層のヘイズが上記範囲にあることで、画像表示装置用の粘着シート及び粘着層として好適に用いることができる。
ここで、ヘイズはJIS K7136に準じてそれぞれ測定されるものである。
粘着シート又は本粘着層が部材シートと貼着された積層体になっている場合、積層体のヘイズを測定することで、粘着シート及び本粘着層のヘイズはその値以下であるとみなすことができる。
【0085】
本粘着シート及び本粘着層において、ヘイズを上記範囲に調整するには、ウレタン成分セグメント及びアクリル成分セグメントを有する粘着剤を使用して上記範囲に調整すればよく、とりわけ、上記第1の態様又は第2の態様で示した粘着剤を使用することが好ましい。但し、これらの方法に限定するものではない。
【0086】
<全光線透過率>
本粘着シート及び本粘着層は、厚み100μmの時の全光線透過率が85%以上であることが好ましく、88%以上であることがより好ましく、91%以上であることがより好ましい。
ここで、全光線透過率は、JIS K7361-1に準じて測定されるものである。
【0087】
本粘着シート及び本粘着層において、全光線透過率を上記範囲に調整するには、ウレタン成分セグメント及びアクリル成分セグメントを有する粘着剤を使用して上記範囲に調整すればよく、とりわけ、上記第1の態様又は第2の態様で示した粘着剤を使用することが好ましい。但し、これらの方法に限定するものではない。
【0088】
<ハンセン溶解度パラメーター>
本粘着シート及び本粘着層は、粘着シート又は粘着層表面のハンセン溶解度パラメーター(δd,δp,δh)において、極性項δpが2.0MPa0.5以上であり、且つ、水素結合項δhが5.0MPa0.5以上であるのが好ましい。
本粘着シート及び本粘着層は、ウレタン成分セグメントを含有することで、アクリル成分セグメントのみからなる粘着シート又は粘着層よりも、表面のHSPにおいてδpを大きくすることが可能である。
よって、δpが大きい各種ディスプレイフィルム(部材シート)との濡れ性が向上し、界面接着力が向上し、結果として剥離試験における粘着力の向上に寄与することができる。
【0089】
ここで、ハンセンの溶解度パラメーター(HSP)は、ある物質が他のある物質にどのくらい溶けるのかという溶解性を表す指標である。HSPは、ヒルデブランド(Hildebrand)によって導入された溶解度パラメーターを、分散項δd、極性項δp、水素結合項δhの3成分に分割し、三次元空間に表したものである。
【0090】
分散項δdはLondon分散力による効果、極性項δpは双極子間力による効果、水素結合項δhは水素結合力による効果を示す値である。
δd: 分子間のLondon分散力に由来するエネルギー
δp: 分子間の極性力に由来するエネルギー
δh: 分子間の水素結合力に由来するエネルギー
と、表記される。(ここで、それぞれの単位はMPa0.5である。)
【0091】
HSPの定義と計算は、下記の文献に記載されている。
Charles M. Hansen著、Hansen Solubility Parameters: A Users Handbook(CRCプレス、2007年)。
【0092】
それぞれ、分散項はLondon分散力、極性項はダイポール・モーメント、水素結合項は水、アルコールなどによる作用を反映している。そしてHSPによるベクトルが似ているもの同士は溶解性が高いと判断でき、ベクトルの類似度はハンセン溶解度パラメーターの距離(HSP距離)で判断し得る。又はンセンの溶解度パラメーターは、溶解性の判断だけではなく、ある物質が他のある物質中にどの程度存在しやすいか、すなわち分散性がどの程度良いかの判断の指標ともなり得る。
【0093】
本発明において表面のHSP[δd、δp、δh]は、HSP既知の各種溶媒の液滴2μLを、粘着シート又は粘着層表面へ接触させ30秒後の接触角の値から、Young-Dupreの式及び、畑・北崎、拡張ホークスの式からγSLを算出し、ハンセン溶解度パラメーターと表面張力の関係(式1)(Hansen Solubility Parameters 50th anniversary conference,preprint 2017 PP.14-21(2017))から、Raと(γSL/(VL 1/3))1/2が最も相関するように決定される。
(式1)δd2+δp2+0.068δh2=13.9γSL(1/(VL 1/3))
【0094】
本粘着シート及び本粘着層は、粘着シート又は粘着層表面のハンセン溶解度パラメーター(δd,δp,δh)において、極性項δpは、2.0MPa0.5以上であることが好ましく、3.0MPa0.5以上であることがさらに好ましい。
また、水素結合項δhは、5.0MPa0.5以上が好ましく、6.0MPa0.5以上がさらに好ましい。
本粘着シート及び本粘着層のδp及びδhが上記範囲にあることで、ポリアミド、ポリイミド、エポキシ、ポリエステル、TACフィルムなどの高極性の(光学)部材シートへの濡れが良くなり、界面接着力が高まり、従来アクリル系の粘着シートよりも粘着力を向上することができる。
【0095】
本粘着シート及び本粘着層は、上述のように、δp,δhの高い成分であるウレタン成分セグメントを含有しているため、アクリル成分セグメントのみからなる粘着シートよりも、表面のHSPにおけるδp,δhを大きくすることができる。
さらに表面のHSPにおけるδp,δhを大きくするためには、ウレタン成分セグメントが粘着シート表面に露出するように、配合量を調整したりするか、或いは、上記第1又は第2の態様で示した粘着剤を使用して本粘着シート及び本粘着層を形成するのが好ましい。
【0096】
<ゲル分率>
本粘着シート及び本粘着層のゲル分率は55%以上であることが好ましく、60%以上であることがさらに好ましく、65%以上であることがより好ましい。
本粘着シート及び本粘着層のゲル分率が55%以上であることにより、形状を十分に保持することができる。
【0097】
本粘着シート及び本粘着層において、ゲル分率を上記範囲に調整するには、本粘着シート及び本粘着層の製造工程において、例えば後述するように粘着剤組成物を光又は熱により硬化させる際、架橋度合を調整すればよい。例えばポリエーテル型ポリウレタンとアクリルポリマーとを光架橋させる場合であれば、光の照射量などを調整するなどして架橋度合を調整し、ゲル分率を調整することができる。但し、この方法に限定するものではない。
【0098】
<厚み>
本粘着シート及び本粘着層の厚みは、特に制限されるものではない。0.005mm以上であるのが好ましく、より好ましくは0.010mm以上、更に好ましくは0.150mm以上である。
一方、上限として、好ましくは1.000mm以下、より好ましくは0.700mm以下、更に好ましくは0.500mm以下である。
厚みが0.005mm以上であれば、ハンドリング性が良好であり、また、厚みが1.000mm以下であれば、部材シートを貼り合わせた積層体の薄型化に寄与することができる。
【0099】
<本粘着シートの好ましい用途>
本粘着シートは、ディスプレイ部材を構成する部材(「ディスプレイ部材」とも称する)、とりわけ、ディスプレイを作製するのに用いるディスプレイ用のフレキシブル部材の貼合に使用することが好ましく、フレキシブルディスプレイを作製するのに用いるフレキシブルディスプレイ用の粘着部品として使用することが特に好ましい。
なお、フレキブル部材については、後述するものと同一のものを使用することができる。
【0100】
<本フレキシブル画像表示装置部材の構成要素>
次に、本フレキシブル画像表示装置部材の構成要素のうち、本粘着層以外の要素について説明する。
【0101】
<フレキシブル部材>
本フレキシブル画像表示装置部材を構成するフレキシブル部材としては、例えば有機エレクトロルミネッセンス(EL)ディスプレイ等のフレキシブルディスプレイ、カバーレンズ(カバーフィルム)、偏光板、偏光子、位相差フィルム、バリアフィルム、視野角補償フィルム、輝度向上フィルム、コントラスト向上フィルム、拡散フィルム、半透過反射フィルム、電極フィルム、透明導電性フィルム、金属メッシュフィルム、タッチセンサーフィルム等のディスプレイ用のフレキシブル部材を挙げることができる。これらのうちのいずれか1種又は2種のうちの2つを組み合わせて使用すればよい。例えばフレキシブルディスプレイと、その他のフレキシブル部材との組み合わせや、カバーレンズと、その他のフレキシブル部材との組み合わせを挙げることができる。
【0102】
なお、フレキシブル部材とは、屈曲可能な部材、とりわけ、繰り返し屈曲可能な部材であることを意味する。特に、屈曲半径が25mm以上の湾曲形状に固定が可能な部材、とりわけ、屈曲半径25mm未満、より好ましくは、屈曲半径3mm未満での繰り返しの曲げ作用に耐えることができる部材であるのが好ましい。
【0103】
<フレキシブル部材のHSP>
また、下述する理由から、上記2つのフレキブル部材のうち少なくとも1つのフレキブル部材の表面のHSPは、δpが10.0MPa0.5以上、20.0MPa0.5以下であることが好ましい。ポリアミド、ポリイミド、ポリエステル、エポキシ樹脂などは通常、この範囲にあることが多いが、コロナ処理やプラズマ処理、プライマー処理などで、上記範囲に調整することで、粘着層との界面接着力を高めることができる。
【0104】
<HSP距離(Ra)>
また、同じく下述する理由から、本フレキシブル画像表示装置部材においては、前記フレキシブル部材表面のハンセン溶解性パラメーターと、本粘着層表面のハンセン溶解性パラメーターのHSP距離(Ra)が17.0以下であることが好ましく、16.0以下であることがより好ましく、15.0以下であることがさらに好ましい。
また、HSP距離(Ra)の算出方法も下述するとおりである。
【0105】
下述する理由から、例えば、前記フレキシブル部材、特に極性の高いフィルムからなるフレキシブル部材に対する前記粘着層の、60℃における300mm/min剥離速度での180度剥離強度(JIS Z 0237)を8N/25mm以上とすることができ、さらに好ましくは10N/25mm以上とすることができる。
フレキシブル部材と本粘着層との粘着力が上記範囲であることで、屈曲時のストレスでフレキシブル部材が剥離することなく、画像表示装置の信頼性を向上させることができる。
【0106】
なお、フレキシブル部材とは、屈曲可能な部材、とりわけ、繰り返し屈曲可能な部材であることを意味し、特に、屈曲半径が25mm以上の湾曲固定形状が可能な部材、とりわけ、屈曲半径25mm未満、より好ましくは、屈曲半径3mm未満での繰り返しの曲げ作用に耐えることができる部材をいう。
【0107】
<<粘着部品>>
本発明の実施態様の一例に係る粘着部品(以下「本部品」と称する)は、上述したウレタン成分セグメントとアクリル成分セグメントを有する粘着剤(上述した本粘着剤)を含むものであり、例えばウェアラブル電子機器、フォルダブルディスプレイ等のフレキシブルデバイスに好適に用いることができる。
【0108】
本部品は、上述した所定の性質(貯蔵弾性率、損失正接(Tanδ)、復元力、ヘイズ、全光線透過率、ハンセン溶解度パラメーター及びゲル分率)のいずれか1つ以上を具備することが好ましい。
中でも、とりわけ、本部品の表面のハンセン溶解度パラメーター(δd,δp,δh)において、極性項δpが2.0MPa0.5以上であり、且つ、水素結合項δhが5.0MPa0.5以上であるのが好ましい。
【0109】
屈曲可能な画像表示装置の登場により、それに用いられる部材シートも屈曲に対応したものが用いられつつある。例えば前面のカバーフィルムとして、屈曲による引張ストレスに強く、白化しにくく、高温信頼性が高く、耐擦性に優れた、透明なポリイミドフィルムが採用されてきている。
このような透明ポリイミドフィルムは、高温信頼性と透明性を両立するために、芳香族骨格とイミド基及び/又はアミド基を多く含有しており、種類によってはフッ素系の官能基を含有していることもある。
よって、極めて極性の高いフィルムとなっており、従来のディスプレイに使用されていた粘着部品では、フレキシブルデバイスに適用した際には、強固に粘着することができず、屈曲のストレスで剥がれたり、ディスプレイの使用者が保護フィルムの一部と勘違いして剥がされてしまったりするという課題がある。
【0110】
また、偏光板アッセンブリに関して増々の薄型化が進んでおり、塗布型の液晶層やTACフィルム(セルローストリアセテートフィルム)を最表面に積層するなどして、最表面が高極性である薄型の部材シートが登場してきており、このような部材シートも従来の粘着部品では強固に粘着することが困難であった。
【0111】
これに対して、本部品の表面のハンセン溶解度パラメーター(δp及びδh)が上記範囲にあることで、ポリアミド、ポリイミド、エポキシ、ポリエステル、TACフィルムなどの高極性の(光学)部材シートへの濡れが良くなり、界面接着力が高まり、従来アクリル系粘着部品よりも粘着力を向上することができる。
【0112】
<<本積層体>>
本発明の実施形態の一例に係る積層体(以下、「本積層体」と称することがある)は、上述した本粘着シート又は本粘着層の少なくとも片面に部材シートを備えた積層体である。
【0113】
本積層体は、部材シート(以下「第1の部材シート」と称することがある)と、本粘着シート又は本粘着層と、任意の部材シート(以下「第2の部材シート」と称することがある)とが、この順で積層されてなる構成を備えた積層シートであってもよい。
この際、第1の部材シートと第2の部材シートは同じでもよいし、異なるものでもよい。
【0114】
<部材シート>
本粘着シート又は本粘着層の被着体となる部材シートの主成分としては、例えばポリシクロオレフィン、トリアセチルセルロース、ポリメチルメタクリレート、ポリエステル、エポキシ樹脂、ポリイミド、ポリアミドなどが挙げられ、これらのうちに一種の樹脂であっても、又は二種以上の樹脂であってもよい。
ここで、前記「主成分」とは、最も多い質量比率を占める成分であることをいい、具体的には部材シート又は該部材シートを形成する組成物の50質量%以上を占めるものであり、55質量%以上、中でも60質量%以上(100質量%包含する)を占めるのがさらに好ましい。
【0115】
また、部材シートは超薄膜ガラス(UTG)であってもよい。ここで、超薄膜ガラスとは、厚みが70μm以下の化学強化されたガラスを指す。
【0116】
中でも、ポリアミド、ポリイミド、エポキシ樹脂、トリアセチルセルロース及びポリエステルからなる群から選択される一種又は二種以上の樹脂を主成分とする部材シートは、特に高極性であるが、本粘着シートはδp、δhが高いため、特に効果を見出すことができる。
【0117】
中でも、ポリイミドを主成分とするポリイミドフィルムは、高Tg、かつ低線膨張係数で高温信頼性に優れ、引張強度も高く、折り曲げによる白化も起こり難いため、フレキシブルディスプレイの部材シートとして好適に使用される。通常のポリイミドは、褐色であることが多いが、ジアミン成分とジカルボン酸成分の化学構造を適切に選択し、バンドギャップを調整した透明なポリイミドフィルムが特に好ましい。
【0118】
<厚み>
本積層体の厚みは、特に制限されるものではない。例えば画像表示装置に使用される場合の一例としては、本積層体はシート状であり、その厚みが0.01mm以上であれば、ハンドリング性が良好であり、また、厚みが1.0mm以下であれば、積層体の薄型化に寄与することができる。
よって、本積層体の厚みは、0.01mm以上であるのが好ましく、中でも0.03mm以上、特に0.05mm以上であるのがより好ましい。一方、上限に関しては、1.0mm以下であるのが好ましく、中でも0.7mm以下、特に0.5mm以下であるのがさらに好ましい。
【0119】
<部材シートのHSP>
本積層体において、部材シート表面のHSPはδpが10.0MPa0.5以上、20.0MPa0.5以下であることが好ましい。ポリアミド、ポリイミド、ポリエステル、エポキシ樹脂などは通常、この範囲にあることが多いが、コロナ処理やプラズマ処理、プライマー処理などで、上記範囲に調整することで、粘着シートとの界面接着力を高めることができる。
【0120】
<HSP距離(Ra)>
部材シートと粘着シート又は本粘着層との粘着力は、剥離周波数(速度)における損失弾性率(G’’)の大きさといった粘弾性的な要素と、濡れなどの界面接着力の要素などにより決まるのが通常である。
しかし、屈曲用の低Tgの粘着シート乃至粘着層は、粘弾性上の制約から大きな改善が見込めない可能性が高く、粘着シート乃至粘着層の表面HSPを制御し、界面接着力の向上を図った方が効果的に粘着力を高められることが分かってきた。
【0121】
そこで、本積層体においては、部材シート表面のハンセン溶解性パラメーターと、本粘着シート又は本粘着層表面のハンセン溶解性パラメーターのHSP距離(Ra)が17以下であることが好ましく、16以下であることがより好ましく、15以下であることがさらに好ましい。
【0122】
ここで、HSP距離(Ra)は(式2)で算出される。
(式2)HSP距離(Ra)={4×(δd-δd+(δp-δp+(δh-δh0.5
なお、式2中、δd、δp及びδhはそれぞれ、本粘着シートのδd、δp及びδhを示し、δd、δp及びδhはそれぞれ、本部材シートのδd、δp及びδhを示す。
【0123】
前記HSP距離(Ra)を上記範囲とすることで、部材シートと本粘着シート又は本粘着層との粘着力を十分に高めることができる。
粘着力の評価方法は様々であるが、例えば、部材シート、特に極性の高いフィルムからなる部材シートに対する本粘着シートの、60℃における300mm/min剥離速度での180度剥離強度(JIS Z 0237)を8N/25mm以上とすることができ、さらに好ましくは10N/25mm以上とすることができる。
部材シートと本粘着シート又は本粘着層との粘着力が上記範囲であることで、屈曲時のストレスで部材シートが剥離することなく、画像表示装置の信頼性を向上させることができる。
【0124】
前記HSP距離を上記範囲とするためには、例えば本粘着シート又は本粘着層のウレタン成分を増量し、δp,δhを高めるか、部材シート側に本粘着シート又は本粘着層のHSPに近いHSPを有するプライマーを塗布するなどすればよい。但し、これらの方法に限定するものではない。
【0125】
<積層体のヘイズ>
本積層体は、ヘイズが1.0%未満であることが好ましく、0.7%未満であることがさらに好ましい。
本積層体のヘイズが上記範囲にあることで、画像表示装置用の構成部材として好適に用いることができる。
ここで、ヘイズはJIS K7136に準じてそれぞれ測定されるものである。
【0126】
<<本粘着シート及び本粘着層の製造方法>>
本粘着シートの製造方法の一例として、「本粘着シート中のウレタン成分セグメントを形成するポリエーテル型ポリウレタン」と、「本粘着シート中のアクリル成分セグメントを形成するアクリルポリマー」とを含有する粘着剤組成物をシート状に成形した後、光又は熱などにより組成物を硬化させ、必要に応じて適宜加工を施すことにより、本粘着シートを製造する方法を挙げることができる。但し、かかる方法に限定するものではない。
【0127】
本粘着シートの製造方法の他例として、アクリルポリマーからなる幹ポリマーと、ポリエーテル型のポリウレタンからなる枝ポリマー(「グラフト鎖」とも称する)とを有するグラフトポリマーを主成分樹脂として含有する組成物をシート状に成形した後、光又は熱などにより粘着剤組成物を硬化させ、必要に応じて適宜加工を施すことにより、本粘着シートを製造する方法を挙げることができる。但し、かかる方法に限定するものではない。
【0128】
本粘着層の製造方法の一例として、上記と同様にして、粘着剤組成物を調整した後、これを部材シート又はフレキブル部材上にコーティングし、当該樹脂組成物を光又は熱などにより硬化させることにより、本粘着層を形成することができる。但し、かかる方法に限定するものではない。
【0129】
上記粘着剤組成物をさらに光又は熱によりさらに反応させることで、結果として、アクリル成分セグメントとウレタン成分セグメントとが結合した構造が得られるため、粘着シート又は本粘着層の粘弾性が上記の範囲に調整された本粘着シートを得ることができると考えられる。
【0130】
但し、これらの製造方法は、本粘着シート及び本粘着層を製造する方法の一例であり、本粘着シート及び本粘着層はかかる製造方法により製造されるものに限定されるものではない。
【0131】
<原料の混合・混練>
粘着剤組成物を調製する際、上記原料を、温度調節可能な混練機(例えばディスパー、一軸押出機、二軸押出機、プラネタリーミキサー、二軸ミキサー、加圧ニーダー等)を用いて混練すればよい。
なお、種々の原料を混合する際、シランカップリング剤、酸化防止剤等の各種添加剤は、予め樹脂とともにブレンドしてから混練機に供給してもよいし、予め全ての材料を溶融混合してから供給してもよいし、添加剤のみを予め樹脂に濃縮したマスターバッチを作製し供給してもよい。
【0132】
<成形>
粘着剤組成物をシート状に成形する方法としては、公知の方法、例えばウェットラミネーション、ドライラミネート、Tダイを用いる押出キャスト法、押出ラミネート法、カレンダー法やインフレーション法、射出成型、注液硬化法等を採用することができる。中でも、シートを製造する場合は、ウェットラミネーション法、押出キャスト法、押出ラミネート法が好適である。
【0133】
<硬化>
本粘着シート及び本粘着層を硬化させるためには、離型シートなどの部材シートに上記粘着剤組成物を塗布して重合させてもよいし、粘着剤組成物を重合させて硬化させた後に部材シートなどに貼着してもよい。
【0134】
粘着剤組成物が開始剤を含む場合、熱及び/又は活性エネルギー線を照射し硬化させることにより、硬化物を製造することができる。特に、粘着剤組成物を成形体成形したものに、熱及び/又は活性エネルギー線を照射することにより、本粘着シート及び本粘着層を製造することができる。
【0135】
ここで、照射する活性エネルギー線としては、α線、β線、γ線、中性子線、電子線などの電離性放射線、紫外線、可視光線などが挙げられ、中でも光学装置構成部材へのダメージ抑制や反応制御の観点から紫外線が好適である。
また、活性エネルギー線の照射エネルギー、照射時間、照射方法などに関しては特に限定されない。
【0136】
<別の方法>
本粘着シート及び本粘着層の製造方法の別の実施態様として、上記粘着剤組成物を適切な溶剤に溶解させ、各種コーティング手法を用いて実施することもできる。
コーティング手法を用いた場合、上記の活性エネルギー線照射硬化の他、熱硬化させることにより本粘着シートを得ることもできる。
【0137】
コーティングの場合、粘着シートの厚みは塗工厚みと塗工液の固形分濃度によって調整できる。
【0138】
<表面加工>
本粘着シート又は本粘着層の少なくとも片面に、ブロッキング防止や異物付着防止の観点から、保護フィルムを積層させることが好ましい。
また、必要に応じて、本粘着シート又は本粘着層の少なくとも片面に、エンボス加工や種々の凹凸(円錐や角錐形状や半球形状など)加工を行ってもよい。
また、各種被着部材への接着性を向上させる目的で、本粘着シートの表面にコロナ処理、プラズマ処理及びプライマー処理などの各種表面処理を行ってもよい。
【0139】
特に、本粘着シート又は本粘着層は、その少なくとも片面に離型フィルムが積層された積層体としてもよい。
ここで、離型フィルムとしては、光透過性とコストの観点から、離型処理したポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムを採用することが好ましい。
【0140】
<本フレキシブル画像表示装置部材の製造方法>
本フレキシブル画像表示装置部材の製造方法としては、特に制限されるものではなく、上述のように、本粘着層形成用の樹脂組成物をフレキブル部材上に塗布して形成してもよいし、予め当該樹脂組成物を用いてシート状に成形した後に、フレキブル部材と貼合してもよい。
【0141】
<<本画像表示装置>>
本積層体を組み込むことで、例えば本積層体を他の画像表示装置構成部材に積層することで、本積層体を備えた画像表示装置(「本画像表示装置」とも称する)を形成することができる。
特に本積層体は、低温及び高温における環境下で折り畳み操作をしても、積層シートのデラミや割れを防止でき、復元性も良好であるから、フレキシブル画像表示装置を形成することができる。
【0142】
フレキシブル画像表示装置とは、より具体的には、屈曲半径が25mm以上の湾曲形状に固定が可能な部材、とりわけ、屈曲半径25mm未満、より好ましくは、屈曲半径3mm未満での繰り返しの曲げ作用に耐えることができる部材からなる画像表示装置をいう。
【0143】
上記他の画像表示装置構成部材としては、上述した、カバーレンズ保護膜、カバーレンズ、偏光フィルム、位相差フィルム等の光学フィルム、液晶材料及びバックライトパネルなどのフレキシブル部材を挙げることができる。
【0144】
<<語句の説明など>>
本発明においては、「フィルム」と称する場合でも「シート」を含むものとし、「シート」と称する場合でも「フィルム」を含むものとする。
また、画像表示パネル、保護パネル等のように「パネル」と表現する場合、板体、シート及びフィルムを包含するものである。
【0145】
本明細書において、「X~Y」(X,Yは任意の数字)と記載した場合、特にことわらない限り「X以上Y以下」の意と共に、「好ましくはXより大きい」或いは「好ましくはYより小さい」の意も包含するものである。
また、「X以上」(Xは任意の数字)と記載した場合、特にことわらない限り「好ましくはXより大きい」の意を包含し、「Y以下」(Yは任意の数字)と記載した場合、特にことわらない限り「好ましくはYより小さい」の意も包含するものである。
【実施例
【0146】
本発明は、以下の実施例により更に説明する。但し、実施例はいかなる方法でも本発明を限定することを意図するものではない。
【0147】
<原料>
(A-1):アクリル重合体 アクリット6HY-3030(大成ファインケミカル(株)商品名、ブチルアクリレートと2-ヒドロキシエチルアクリレートの共重合体、質量平均分子量:約60万、水酸基価24[KOH・mg/g])
【0148】
(A&B):アクリル重合体―グラフト―ポリウレタン(ブチルアクリレートと2-ヒドロキシエチルアクリレートとの共重合体を幹ポリマーとし、分子量8600のポリウレタン(片末端アクリロイル基)をグラフト鎖として1.2wt%含有するアクリルポリマー、質量平均分子量:約70万)
【0149】
(B-1):アクリロイル基末端ポリウレタン(ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)とポリプロピレングリコール(PPG)からなるポリウレタンで、両末端にヒドロキシエチルアクリレート(HEA)を付加したポリウレタン、質量平均分子量:約8,000、PPGの質量割合(ポリウレタン100wt%):約69wt%)
【0150】
(B-2):OH基末端ポリウレタン(ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)19wt%,イソフォロンジイソシアネート5wt%,ポリプロピレングリコール(PPG)76wt%、質量平均分子量:約60万)
【0151】
(C);その他の樹脂:ウレタンアクリレート:紫光UV-3700B(三菱ケミカル(株)商品名、2官能ウレタンアクリレート)
【0152】
(D):光重合開始剤 Esacure TZT(IGM社製、光重合開始剤、2,4,6-トリメチルベンゾフェノン及び4-メチルベンゾフェノンの混合物)
【0153】
(E):架橋剤 コロネートL;東ソー(株)製、イソシアネート系架橋剤
(F):触媒 ナーセルアルミニウム;アセチルアセトン金属錯体、日本化学産業(株)製
【0154】
<粘着シートの製造方法>
表1に記載した配合(固形分)となるように均一に混合し、固形分が30wt%になるように酢酸エチルを添加して塗工液を調整した。
次に、離型処理されたポリエチレンテレフタレートフィルム(三菱ケミカル株式会社製、ダイアホイルMRV(V03)厚さ:100μm)上に、エルコメーター社製 バードフィルムアプリケーターを用いて液を展開し、90℃のオーブンで10分間乾燥させた。
【0155】
実施例5、及び比較例1に関しては、更に120℃,3分の熱処理によって熱架橋し、その上から離型処理されたポリエチレンテレフタレートフィルム(三菱ケミカル株式会社製、ダイアホイルMRQ厚さ:50μm)をハンドロールでラミネートし、50℃で24h養生することで、離型フィルムに挟まれた粘着シートを得た。
【0156】
一方、光重合開始剤を含有する実施例1~4及び比較例2に関しては、乾燥後、離型処理されたポリエチレンテレフタレートフィルム(三菱ケミカル株式会社製、ダイアホイルMRQ厚さ:50μm)をハンドロールでラミネートし、両面を離型PETフィルムでラミネートされた状態で、高圧水銀灯により0.7J/cmのUVを照射し、硬化した。
【0157】
粘着シートの厚みは、それぞれアプリケーターのギャップを調整することで表1のようにした。
【0158】
<粘着シートの評価試験>
(ゲル分率)
実施例及び比較例で作製した粘着シートから離型フィルムを取り除いたものについて、下記の測定を行った。
1)粘着シート約150mgを秤量し(W1)、予め重さを測った200メッシュのSUS(ステンレス製)メッシュ(W0)に包む。
2)上記SUSメッシュを100mLの酢酸エチルに24時間浸漬する。
3)SUSメッシュを取り出し、75℃で4時間半乾燥する。
4)乾燥後の質量(W2)を求め、下記式より粘着シートのゲル分率を測定する。
ゲル分率(%)=100×(W2-W0)/W1
【0159】
(表面HSP、HSP距離(Ra))
粘着シートの表面のHSPは以下のように測定した。
粘着シートの離型PETフィルムを片面剥がして粘着シートを露出させ、そこにHSP既知の11種の溶媒2.0μLの液滴を滴下し、30秒後の接触角を記録し、接触角の値から、Young-Dupreの式及び、畑・北崎、拡張ホークスの式からγSLを算出し、ハンセン溶解度パラメーターと表面張力の関係(式1)(Hansen Solubility Parameters 50th anniversary conference,preprint 2017 PP.14-21(2017))から、Raと(γSL/(VL 1/3))1/2が最も相関するように決定される。
(式1)δd2+δp2+0.068δh2=13.9γSL(1/(VL 1/3))
【0160】
また、部材シートの表面に関しても、同様の手順でHSPを決定した。結果を表1に示す。
さらに上記で測定された粘着シートの表面HSP及び部材シートの表面HSPの値から、HSP距離(Ra)を算出した。
【0161】
(動的粘弾性)
実施例及び比較例で作製した粘着シートの両面の離型フィルムを剥がし、粘着シートを複数枚重ねることで、厚みが約0.8mmのシートを作製し、直径8mmの円形に打ち抜いたものを、レオメーター(ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン株式会社製、DHR-2)を用いて、粘着治具:Φ8mmパラレルプレート、歪み:0.1%、周波数:1Hz、温度:-70~100℃、昇温速度:3℃/minの条件で測定することで、粘着シートの貯蔵弾性率(G’)、損失弾性率(G”)、損失正接(tanδ)を得た。表1に結果を示す。
【0162】
(リカバリー特性)
実施例及び比較例で得られた粘着シートを長さ70mm×幅10mmの短冊状に切り出し、両端の10mm×10mmの両面に紙を貼りつけ、持ち手とした。(持ち手のない部分は長さ50mm×幅10mm)
持ち手を掴み、持ち手間の距離4倍の長さ(200mm)になるまで長手方向に伸長して10分間保持し、その後片端を放して20分間後の長さを測定し、下記の様に判定した。
【0163】
〇:試験後の持ち手間の長さが、初期長さの1.0倍~1.6倍である。
×:試験後の持ち手間の長さが、初期長さの1.6倍超である。
【0164】
<積層体の作製>
実施例及び比較例で作製した粘着シートの一方の離型フィルムを剥がし、該粘着シートをKOLON社製CPI(50μm)にロール貼合し、残る離型フィルムを剥がして、もう一枚のKOLON社製CPI(50μm)を該粘着シートに貼合した。この積層体を、オートクレーブ処理(60℃、ゲージ圧0.2MPa、20分)して仕上げ貼着し、積層体とした。
なお、実施例4では、部材シートとして、KOLON社製CPIの表面をOプラズマ処理した部材シートを使用した。
【0165】
(動的屈曲試験 Dynamic Folding)
得られた積層体を、40mm×100mmに裁断して屈曲保管性の評価用サンプルとした。評価サンプルをユアサシステム社製、DLDMLH-FSを用いて、IEC 63715に準拠して、U字曲げを繰り返し行った。試験条件は、-30℃、周波数1Hz、曲率半径r:3mm、10万サイクルであり、下記基準で折り曲げ性を評価した。
○:10万回折り曲げ後に、積層体に外観上の変化がみられない。
×:10万回折り曲げ後に、積層体に破断、剥離(デラミ)、気泡、発泡などの異常がみられる。
【0166】
(ヘイズ)
部材シートを両面に貼合して作製した積層体を評価用サンプルとした。ヘーズメータ(日本電色工業社製「NDH5000」)を用いて、JIS K7136に準拠して、ヘイズ値を測定した。結果を表1に示す。
【0167】
(粘着力)
SUS板に部材シートとしてKOLON社製CPI(50μm)を両面テープで貼り付け、粘着シートの離型PETフィルムを片面剥がして粘着シートを露出させ、粘着シートの一方の離型フィルムを剥がし、裏打ちフィルムとしてポリエチレンテレフタレートフィルム(三菱ケミカル社製「ダイアホイルS-100」、厚さ50μm)をハンドローラーにてロール圧着した。これを、25mm幅×150mm長の短冊状に裁断し、残る離型フィルムを剥がして露出した粘着面を、部材シートとしてKOLON社製CPI(50μm)にハンドローラーを用いてロール貼着して、部材シート面を両面テープでSUS板に貼り付け、SUS板/両面テープ/部材シート(CPI)/粘着シート/裏打ちフィルム(PET)からなる積層体を作成し、この積層体にオートクレーブ処理(60℃、ゲージ圧0.2MPa、20分)を施して仕上げ貼着し、粘着シート/部材シート間の粘着力測定サンプルを作製した。
【0168】
裏打ちフィルムを180°をなす角度に60℃において剥離速度300mm/分にて引っ張りながら、部材シートから裏打ちフィルムを剥離し、ロードセルで引張強度を測定して、粘着シートの部材シートに対する180°剥離強度(N/25mm)を測定した。表1に結果を示す。
【0169】
表1に、粘着シート配合、粘着シートのゲル分率、粘着シートの動的粘弾性、粘着シートの表面HSP、粘着シートと部材シートとのHSP距離、粘着力、動的屈曲試験の結果を示した。
【0170】
【表1】
【0171】
表1より、アクリル成分セグメントとウレタン成分セグメントの両方を含有する配合(実施例1~5)の方が、リカバリー特性と粘着力の両立が出来ていた。
また、ウレタン成分セグメントを含有した方が、δp、δhが大きくなり、部材シートとのHSP距離が小さくなる傾向が確認された。
60℃の粘着力は、G’(60℃)とHSP距離の両方の影響を受けていることが示唆された。特に実施例1~3の光重合可能なウレタン成分を含んだものが、ヘイズも含めた性能のバランスがとれていることが分かった。
なお、別試験において、実施例3の(B-1)の代わりに、ポリカプロラクトン型ポリウレタン(ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート47.8wt%、ポリカプロラクトン34.8wt%、ネオペンチルグリコール4.2wt%、1,4-ブタンジオール13.2wt%の組成からなるオリゴマー)を使用したところ、ポリカプロラクトン型などのウレタン成分セグメントと、アクリル成分セグメントは相溶せず、ヘイズを悪化させた。これに対し、ポリエーテル型のウレタン成分セグメントとアクリル成分セグメントは、一定の相溶性が認められ、上記の結果を踏まえると、画像表示装置に好適に使用できる粘着シート及び積層体であることが分かった。