(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-13
(45)【発行日】2023-03-22
(54)【発明の名称】流体供給装置および流体供給方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/304 20060101AFI20230314BHJP
【FI】
H01L21/304 651Z
H01L21/304 648K
(21)【出願番号】P 2019535123
(86)(22)【出願日】2018-07-31
(86)【国際出願番号】 JP2018028601
(87)【国際公開番号】W WO2019031303
(87)【国際公開日】2019-02-14
【審査請求日】2021-06-30
(31)【優先権主張番号】P 2017156193
(32)【優先日】2017-08-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】390033857
【氏名又は名称】株式会社フジキン
(73)【特許権者】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002893
【氏名又は名称】弁理士法人KEN知財総合事務所
(72)【発明者】
【氏名】吉田 俊英
(72)【発明者】
【氏名】皆見 幸男
(72)【発明者】
【氏名】篠原 努
【審査官】小池 英敏
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-159499(JP,A)
【文献】特開2012-087983(JP,A)
【文献】特開2013-077610(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/304
H01L 21/027
B08B 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体状態の流体を処理室に向けて供給する流体供給装置であって、
気体状態の流体を液化するコンデンサと
前記コンデンサにより液化された流体を貯留するタンクと、
前記タンクに貯留された液化された流体を前記処理室へ向けて圧送するポンプと
、
前記ポンプと前記ポンプの吐出側から前記処理室に至る流路の途中に設けられた開閉弁との間に設けた分岐点で分岐し、前記ポンプから吐出された液体を前記コンデンサに戻すための流路と、
前記分岐した流路に設けられ、前記ポンプの吐出側の液体の圧力が所定圧以上になると当該液体を前記コンデンサ側にリリースする背圧弁と、
前記分岐した流路の前記背圧弁と前記分岐点との間に設けられ、伝熱面積が拡大された拡大伝熱管部と、
前記拡大伝熱管部に設けられ、
前記分岐した流路内の液体を部分的に超臨界流体にして前記ポンプから吐出される液体の脈動を吸収するための加熱手段と、を有することを特徴とする流体供給装置。
【請求項2】
前記拡大伝熱管部は、スパイラル管、渦巻形の管、波形の管、プレート式の管および多管式の管のいずれか、またはこれらの組み合わせを含む、ことを特徴とする請求項
1に記載の流体供給装置。
【請求項3】
前記流体は、超臨界状態に変化させ得る流体である、ことを特徴とする請求項1に記載の流体供給装置。
【請求項4】
請求項1ないし
3のいずれかに記載の流体供給装置を用いて、液体状態の流体を処理室に向けて供給することを特徴とする流体供給方法。
【請求項5】
請求項1に記載の流体供給装置供給される流体を用いて基体の処理をすることを特徴とする半導体製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体基板、フォトマスク用ガラス基板、液晶表示用ガラス基板などの各種基板の乾燥工程等に用いられる流体の流体供給装置および流体供給方法に関する。
【背景技術】
【0002】
大規模で高密度、高性能な半導体デバイスは、シリコンウエハ上に成膜したレジストに対して露光、現像、リンス洗浄、乾燥を経てレジストパターンを形成した後、コーティング、エッチング、リンス洗浄、乾燥等のプロセスを経て製造される。特に、レジストは、光、X線、電子線などに感光する高分子材料であり、現像、リンス洗浄工程では現像液、リンス液等の薬液を使用しているため、リンス洗浄工程後は乾燥工程が必須である。
この乾燥工程において、基板上に形成したレジストパターン間のスペース幅が90nm程度以下になるとパターン間に残存する薬液の表面張力(毛細管力)の作用により、パターン間にラプラス力が作用してパターン倒れが生ずる問題が発生する。そのパターン間に残存する薬液の表面張力の作用によるパターン倒れを防止するために、パターン間に作用する表面張力を軽減する乾燥プロセスとして、二酸化炭素の超臨界流体を用いた方法が知られている(例えば、特許文献1~4)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2014-22520号公報
【文献】特開2006-294662号公報
【文献】特開2004-335675号公報
【文献】特開2002-33302号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
二酸化炭素の超臨界流体の処理チャンバへの供給は、供給源からの気体状態の二酸化炭素(例えば、20℃、5.0MPa)をコンデンサ(凝縮器)で凝縮液化してタンクに貯留し、これをポンプで処理チャンバへ圧送される(例えば、20℃、20.0MPa)。処理チャンバに圧送された液体状の二酸化炭素は、処理チャンバの直前又は処理チャンバ内で加熱され(例えば、80℃、20.0MPa)、超臨界流体となる。
しかしながら、ポンプで圧送される液体状態の二酸化炭素は、脈動するため、液体の圧力が大きく変動する。このため、処理チャンバの直前又は処理チャンバ内で超臨界状態に変化する二酸化炭素の供給量が不安定となり、二酸化炭素の超臨界流体を安定的に供給するのが困難であった。
【0005】
本発明の目的は、超臨界流体を安定的に供給可能な流体供給装置および流体供給方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の流体供給装置は、液体状態の流体を処理室に向けて供給する流体供給装置であって、
気体状態の流体を凝縮液化するコンデンサと、
前記コンデンサにより凝縮液化された流体を貯留するタンクと、
前記タンクに貯留された液化された流体を前記処理室へ向けて圧送するポンプと、
前記ポンプの吐出側と連通する流路に設けられ、当該流路内の液体を部分的に超臨界流体にするための加熱手段と、を有することを特徴とする。
【0007】
好適には、前記ポンプの吐出側と連通する流路に設けられた伝熱面積が拡大された拡大伝熱管部をさらに有し、
前記加熱手段は、前記拡大伝熱管部に設けられている、構成を採用できる。
【0008】
本発明の流体供給方法は、上記構成の流体供給装置を用いて、超臨界流体へ変化させる前の液体状態の流体を処理室に向けて供給することを特徴とする。
【0009】
本発明の半導体製造装置は、上記構成の流体供給装置を用いて、基体の処理をすることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、拡大伝熱管部の液体を加熱手段により加熱して当該拡大伝熱管部内を速やかに液体と超臨界流体の共存状態にし、超臨界流体の圧縮性を利用して液体の脈動を吸収することで、処理チャンバに超臨界流体を安定的に供給することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1A】本発明の一実施形態に係る流体供給装置の構成図であって、流体を循環させている状態の図。
【
図1B】
図1Aの流体供給装置において処理チャンバに液体を供給している状態を示す図。
【
図4A】拡大伝熱管部および加熱手段の他の実施形態を示す概略構成図。
【
図4B】拡大伝熱管部および加熱手段のさらに他の実施形態を示す概略構成図。
【
図5】本発明の他の実施形態に係る流体供給装置の構成図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
第1実施形態
図1Aおよび
図1Bに本発明の一実施形態に係る流体供給装置を示す。本実施形態では、流体として二酸化炭素を使用する場合について説明する。
図1Aおよび
図1Bにおいて、1は流体供給装置、10は拡大伝熱管部、20は加熱手段(例えば、ヒータ)、100はCO2供給源、110は開閉弁、120はチェック弁、121はフィルタ、130はコンデンサ、140はタンク、150はポンプ、160は自動開閉弁、170は背圧弁、500は処理チャンバを示す。また、図中のPは圧力センサ、TCは温度センサを示す。
図1Aは自動開閉弁160が閉じた状態を示しており、
図1Bは自動開閉弁160が開放された状態を示す。
【0013】
処理チャンバ500では、シリコンウエハ等の半導体基板の処理が行われる。なお、本実施形態では、処理対象として、シリコンウエハを例示するが、これに限定されるわけではなく、ガラス基板等の他の処理対象でもよい。
CO2供給源100は、気体状態の二酸化炭素(例えば、20℃、5.0MPa)をメイン流路2へ供給する。
図2を参照すると、CO2供給源100から供給される二酸化炭素は、
図2のP1の状態にある。この状態の二酸化炭素は、開閉弁110、チェック弁120、フィルタ121を通じてコンデンサ130に送られる。
コンデンサ130では、供給される気体状態の二酸化炭素を冷却することで、液化凝縮し、液化凝縮された二酸化炭素はタンク140に貯留される。タンク140に貯留された二酸化炭素は、
図2のP2のような状態(3℃、5MPa)となる。タンク140の底部から
図2のP2のような状態にある液体状態の二酸化炭素がポンプ150に送られ、ポンプ150の吐出側に圧送されることで、
図2のP3のような液体状態(20℃、20MPa)となる。
【0014】
ポンプ150と処理チャンバ500とを結ぶメイン流路2の途中には、自動開閉弁160が設けられている。メイン流路2のポンプ150と自動開閉弁160の間からは、分岐流路3が分岐している。分岐流路3は、ポンプ150と自動開閉弁160の間で、メイン流路2から分岐し、フィルタ121の上流側で再びメイン流路2に接続されている。分岐流路3には、拡大伝熱管部10および背圧弁170が設けられている。
背圧弁170は、ポンプ150の吐出側の流体(液体)の圧力が設定圧力(例えば20MPa)以上になると、フィルタ121側へ液体をリリースする。これにより、ポンプ150の吐出側の液体の圧力が設定圧力を超えるのを防ぐ。
【0015】
自動開閉弁160が閉じられた状態では、
図1Aに示すように、ポンプ150から圧送される液体は、分岐流路3を通って再びコンデンサ130およびタンク140に戻る。
自動開閉弁160が開放されると、
図1Bに示すように、液体状態の二酸化炭素が処理チャンバ500へ圧送される。圧送された液体状態の二酸化炭素は、処理チャンバ500の直前又は処理チャンバ500内に設けられた図示しない加熱手段により加熱され、
図2に示すP5のような超臨界状態(80℃、20MPa)となる。
【0016】
ここで、ポンプ150から吐出される液体は少なからず脈動する。
ポンプ150から吐出される液体を処理チャンバ500へ供給する際に、処理チャンバ500までメイン流路2は液体で充填されているとともに、分岐流路3も背圧弁170まで液体が充填されている。このため、ポンプ150から吐出される液体が脈動すると、メイン流路2および分岐流路3内の液体状態の二酸化炭素の圧力が周期的に変動する。
液体状態の二酸化炭素は、圧縮性が乏しい。このため、液体状態の二酸化炭素の圧力が周期的に変動すると、処理チャンバ500に供給される液体状態の二酸化炭素の流量もそれに応じて大きく変動する。供給される液体状態の二酸化炭素の流量が大きく変動すると、処理チャンバ500の直前あるいは処理チャンバ500内で超臨界状態に変化させた二酸化炭素の供給量も大きく変動してしまう。
【0017】
このため、本実施形態では、分岐流路3に拡大伝熱管部10と加熱手段20を設けている。
拡大伝熱管部10は、通常のストレート管よりも単位容積当りの伝熱面積を拡大するために、分岐流路3に直列に接続されたスパイラル管(螺旋管)11で構成される。
スパイラル管11は、下端部および上端部にそれぞれ管継手12,15が設けられており、これらの管継手12,15によりスパイラル管11が分岐流路3に直列に接続される。
スパイラル管11を構成する管13は、例えば、ステンレス鋼等の金属材料で形成されている。管13の直径は6.35mm、スパイラル部14の全長Lは280mm、スパイラル部14の直径D1が140mm程度、スパイラル部14の巻数は22巻、管13の全長は9800mm程度である。本発明はこれに限定されるわけではなく、スパイラル管以外にも、渦巻形の管、波形の管等である。螺旋や渦巻の形状は、円形である必要はなく、角型であっても良い。また、拡大伝熱管10は、熱交換器で使用されるのと同様に、プレート式や多管式の管であってもよい。
【0018】
加熱手段20は、拡大伝熱管部10を加熱するが、拡大伝熱管部10の全体を覆うように設けられていてもよいし、スパイラル管11の外周面を被覆するように設けられていてもよい。要は、加熱手段20は、拡大伝熱部10の少なくとも一部、すなわち、スパイラル管11の一部または全部を加熱できるように構成されればよい。
【0019】
拡大伝熱管部10のスパイラル管11内は、加熱手段20が作動していない状態では、ポンプ150から圧送される液体状態(
図2のP3の状態:20℃、20MPa)の二酸化炭素で充填されている。ここで、加熱手段20を作動させてスパイラル管11内の液体を加熱すると、伝熱面積が拡大されていることから、液体の温度は瞬時に上昇し、スパイラル管11の液体の少なくとも一部は
図2に示すP4(60℃、20MPa)のような超臨界状態となる。超臨界状態の二酸化炭素は圧縮性に富むため、ポンプ150から吐出される液体の脈動を吸収する。この結果、処理チャンバ500に超臨界流体を安定的に供給することができる
【0020】
第2実施形態
図4Aに拡大伝熱管部の他の実施形態を示す。
図4Aに示す拡大伝熱管部10Bは、分岐流路3に対してスパイラル管11を並列に接続し、分岐流路3とスパイラル管11との間にオリフィス30を設けている。
このような構成としても、第1実施形態と同様に、ポンプ150から吐出される液体の脈動(周期的な圧力変動)が抑制され、処理チャンバ500の直前あるいは処理チャンバ500内で超臨界状態に変化させた二酸化炭素の供給量を安定化させることができる。
【0021】
第3実施形態
図4Bに拡大伝熱管部のさらに他の実施形態を示す。
図4Bに示す拡大伝熱管部10Cは、2つのスパイラル管11を並列に接続し、これらを分岐流路3に挿入するとともに、分岐流路3と一方のスパイラル管11との間にオリフィス30を設けている。
このような構成としても、第1実施形態と同様に、ポンプ150から吐出される液体の脈動(周期的な圧力変動)が抑制され、処理チャンバ500の直前あるいは処理チャンバ500内で超臨界状態に変化させた二酸化炭素の供給量を安定化させることができる。
【0022】
図5に本発明の他の実施形態に係る流体供給装置1Aを示す。なお、
図5において、
図1Aと同様の構成部分については、同様の符号を使用している。
流体供給装置1Aでは、拡大伝熱管部10が存在せず、加熱手段20は分岐流路3内の液体を加熱して部分的に超臨界流体にする。
このような構成によれば、拡大伝熱管部10が不要となり装置構成を簡素化できる。
【0023】
上記した両実施形態では、拡大伝熱管部10および加熱手段20を分岐流路3に設けた場合について例示したが、本発明はこれに限定されるわけではなく、ポンプ150の吐出側のメイン流路2の途中に拡大伝熱管部10を設けることも可能である。
【0024】
上記実施形態では、ポンプで加圧して処理チャンバへ送る流体として二酸化炭素を例示したが、これに限定されるわけではなく、超臨界状態に変化させ得る流体、例えば、水、メタン、エタン、プロパン、メタノール、エタノールなどであれば、本発明を適用可能である。
【符号の説明】
【0025】
1、1A 流体供給装置
2 メイン流路
3 分岐流路
10,10B,10C 拡大伝熱管部
11 スパイラル管
20 加熱手段
30 オリフィス
100 CO2供給源
110 開閉弁
120 チェック弁
121 フィルタ
130 コンデンサ
140 タンク
150 ポンプ
160 自動開閉弁
170 背圧弁
500 処理チャンバ