(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-13
(45)【発行日】2023-03-22
(54)【発明の名称】ブロック共重合体組成物及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
C08F 265/06 20060101AFI20230314BHJP
C08F 4/40 20060101ALI20230314BHJP
【FI】
C08F265/06
C08F4/40
(21)【出願番号】P 2019555366
(86)(22)【出願日】2018-11-22
(86)【国際出願番号】 JP2018043189
(87)【国際公開番号】W WO2019103102
(87)【国際公開日】2019-05-31
【審査請求日】2021-06-11
(31)【優先権主張番号】P 2017226326
(32)【優先日】2017-11-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2018092436
(32)【優先日】2018-05-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2018153588
(32)【優先日】2018-08-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006035
【氏名又は名称】三菱ケミカル株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】506076891
【氏名又は名称】ナンヤン テクノロジカル ユニヴァーシティー
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100152146
【氏名又は名称】伏見 俊介
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【氏名又は名称】大浪 一徳
(72)【発明者】
【氏名】新納 洋
(72)【発明者】
【氏名】茶谷 俊介
(72)【発明者】
【氏名】許 書堯
(72)【発明者】
【氏名】後藤 淳
(72)【発明者】
【氏名】肖 ▲龍▼▲強▼
(72)【発明者】
【氏名】臧 俊傑
【審査官】谷合 正光
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2011/0144263(US,A1)
【文献】特表2017-515940(JP,A)
【文献】特開2007-254758(JP,A)
【文献】特開2009-298989(JP,A)
【文献】国際公開第2017/199562(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 265/06
C08F 4/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
すべてのブロックの構成単位がビニル単量体由来であり、
下記式(I)で表されるマクロモノマー(A)由来のブロックとビニル単量体(B)由来のブロックとが結合し、前記ビニル単量体(B)由来のブロックが分岐構造を有し、当該分岐構造を有するブロックの主鎖と分岐鎖が同じビニル単量体(B)由来の構成単位からな
り、主鎖の末端にヨウ素原子を有するブロック共重合体を含むブロック共重合体組成物。
【化1】
(式(I)中、R及びR
1~R
nは、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基又は複素環基である。Zは、水素原子又はラジカル重合開始剤由来の基である。X
1~X
nは、それぞれ独立に水素原子又はメチル基である。nは2~10,000の整数である。)
【請求項2】
すべてのブロックの構成単位がビニル単量体由来であり、
下記式(I)で表されるマクロモノマー(A)由来のブロックとビニル単量体(B)由来のブロックとが結合し、前記ビニル単量体(B)由来のブロックが分岐構造を有し、当該分岐構造を有するブロックの主鎖と分岐鎖が同じビニル単量体(B)由来の構成単位からなる、前記マクロモノマー(A)、前記ビニル単量体(B)及び有機ヨウ素化合物(C)を含む重合性組成物を重合して得られるブロック共重合体を含むブロック共重合体組成物。
【化2】
(式(I)中、R及びR
1
~R
n
は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基又は複素環基である。Zは、水素原子又はラジカル重合開始剤由来の基である。X
1
~X
n
は、それぞれ独立に水素原子又はメチル基である。nは2~10,000の整数である。)
【請求項3】
分子量分布(Mw/Mn)が1.5~3.4である、請求項1
又は2に記載のブロック共重合体組成物。
【請求項4】
前記ビニル単量体(B)由来の構成単位がメタクリレート系単量体又はアクリレート系単量体由来である、請求項1
~3のいずれか一項に記載のブロック共重合体組成物。
【請求項5】
数平均分子量Mnが3,000以上である、請求項1~4のいずれか一項に記載のブロック共重合体組成物。
【請求項6】
前記ビニル単量体(B)が、スチレン系単量体、メタクリレート系単量体及びアクリレート系単量体からなる群から選ばれる少なくとも1種である、請求項1~
5のいずれか一項に記載のブロック共重合体組成物。
【請求項7】
すべてのブロックの構成単位がビニル単量体由来であり、下記式(I)で表されるマクロモノマー(A)由来のブロックとビニル単量体(B)由来のブロックとが結合し、前記ビニル単量体(B)由来のブロックが分岐構造を有し、当該分岐構造を有するブロックの主鎖と分岐鎖が同じビニル単量体(B)由来の構成単位からなるブロック共重合体を含むブロック共重合体組成物の製造方法であって、
前記マクロモノマー(A)、前記ビニル単量体(B)、及び有機ヨウ素化合物(C)を含む重合性組成物を重合する、ブロック共重合体組成物の製造方法。
【化3】
(式(I)中、R及びR
1
~R
n
は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基又は複素環基である。Zは、水素原子又はラジカル重合開始剤由来の基である。X
1
~X
n
は、それぞれ独立に水素原子又はメチル基である。nは2~10,000の整数である。)
【請求項8】
前記重合性組成物が触媒(D)及びアゾ系ラジカル重合開始剤(E)のいずれか一方又は両方をさらに含む、請求項
7に記載のブロック共重合体組成物の製造方法。
【請求項9】
すべてのブロックの構成単位がビニル単量体由来であり、下記式(I)で表されるマクロモノマー(A)由来のブロックとビニル単量体(B)由来のブロックとが結合し、前記ビニル単量体(B)由来のブロックが分岐構造を有し、当該分岐構造を有するブロックの主鎖と分岐鎖が同じビニル単量体(B)由来の構成単位からなるブロック共重合体を含むブロック共重合体組成物の製造方法であって、
前記マクロモノマー(A)、前記ビニル単量体(B)、アゾ系ラジカル重合開始剤(E)、及びヨウ素を含む重合性組成物を重合する、ブロック共重合体組成物の製造方法。
【化4】
(式(I)中、R及びR
1
~R
n
は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基又は複素環基である。Zは、水素原子又はラジカル重合開始剤由来の基である。X
1
~X
n
は、それぞれ独立に水素原子又はメチル基である。nは2~10,000の整数である。)
【請求項10】
前記重合性組成物が触媒(D)をさらに含む、請求項
9に記載のブロック共重合体組成物の製造方法。
【請求項11】
下記式(i)又は(ii)の少なくとも一つを満たす、請求項
9に記載のブロック共重合体組成物の製造方法。
(i) 0<[Q]/[P]<0.60
(ただし、[P]は前記アゾ系ラジカル重合開始剤(E)のモル当量数を表し、[Q]は前記ヨウ素のモル当量数を表す。)
(ii) 0<Tp-T
10<40
(ただし、Tpは前記重合性組成物を重合する重合温度(℃)を表し、T
10は前記アゾ系ラジカル重合開始剤(E)の10時間半減期温度(℃)を表す。)
【請求項12】
前記触媒(D)が、下記触媒(D1)~(D6)からなる群から選ばれる少なくとも1種である、請求項
8又は
10に記載のブロック共重合体組成物の製造方法。
触媒(D1):ハロゲン化物イオンと、前記ハロゲン化物イオンとイオン結合を形成したカチオン状態の非金属原子とを含む非金属化合物。
触媒(D2):炭素原子と、前記炭素原子に直接結合した少なくとも1つのハロゲン原子とを含む化合物、又は前記化合物の前駆体となる炭化水素化合物。
触媒(D3):窒素原子、リン原子、硫黄原子又は酸素原子を有し、酸化還元性を有する有機化合物。
触媒(D4):エチレン、アセチレン、オリゴアセチレン、ポリアセチレン、フラーレン、カーボンナノチューブ、及びそれらの誘導体からなる群から選ばれる化合物。
触媒(D5):ハロゲン化アルカリ金属化合物又はハロゲン化アルカリ土類金属化合物。
触媒(D6):前記触媒(D1)~(D5)以外のリン化合物、含窒素化合物及び含酸素化合物からなる群から選ばれる化合物。
【請求項13】
前記ビニル単量体(B)が、スチレン系単量体、メタクリレート系単量体及びアクリレート系単量体からなる群から選ばれる少なくとも1種である、請求項
7~
12のいずれか一項に記載のブロック共重合体組成物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブロック共重合体組成物及びその製造方法に関する。
本願は、2017年11月24日に日本に出願された特願2017-226326号、2018年5月11日に日本に出願された特願2018-092436号、及び、2018年8月17日に日本に出願された特願2018-153588号に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。
【背景技術】
【0002】
ビニル単量体を重合して得た重合体は様々な用途に用いられており、特に多様な物性要求に応える目的で、2種以上のビニル単量体を共重合して得た共重合体が広く用いられている。しかし、2種以上のビニル単量体を混合して共重合させると、各単量体単位が有する特性が平均化され、目的の物性が得られにくい傾向にある。2種以上の重合体を混合しても、それら重合体同士が均一に混ざり合わないことで、各重合体の単量体単位が有する特性が充分に得られないことが多い。
【0003】
各単量体単位の特性が発現されやすい共重合体として、ブロック共重合体が知られている。ブロック共重合体は通常のラジカル重合では得られないため、リビングアニオン重合法やリビングラジカル重合法等が用いられる。リビングアニオン重合法やリビングラジカル重合法等によれば、分子量及び分子量分布を制御しつつブロック共重合体を製造でき、分子量分布が狭いブロック共重合体が得られる。しかしながら、重合に特殊な化合物や金属触媒を使用するため、それらの化合物や触媒を除去する工程が必要であり、工業的には煩雑である。
【0004】
ブロック共重合体の製造方法としては、ラジカル反応性の官能基を有する高分子量単量体であるマクロモノマーを用いる方法も知られている(例えば、特許文献1)。しかし、マクロモノマーを用いる方法では、分子構造や分子量分布を制御することが難しい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、特定の分子構造を有するブロック共重合体を含むブロック共重合体組成物を提供することを目的とする。
また本発明は、特定の分子構造を有するブロック共重合体を含み、分子量分布が適度な範囲にあるブロック共重合体組成物を提供することを目的とする。
さらに本発明は、分子構造や分子量分布が充分に制御できるブロック共重合体組成物の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、以下の構成を有する。
[1]すべてのブロックの構成単位がビニル単量体由来であり、
少なくとも一つのブロックが分岐構造を有し、主鎖と分岐鎖が同じ構成単位からなるブロック共重合体を含むブロック共重合体組成物。
[2]すべてのブロックの構成単位がビニル単量体由来であり、
少なくとも一つのブロックが分岐構造を有するブロック共重合体を含み、
分子量分布(Mw/Mn)が1.5~3.4であるブロック共重合体組成物。
[3]前記分岐構造の主鎖と分岐鎖が同じ構成単位からなる、[2]に記載のブロック共重合体組成物。
[4]少なくとも一つのブロックの構成単位がメタクリレート系単量体又はアクリレート系単量体由来である、[1]~[3]のいずれかに記載のブロック共重合体組成物。
[5]前記ブロック共重合体の主鎖の末端にヨウ素原子を有する、[1]~[4]のいずれかに記載のブロック共重合体組成物。
[6]数平均分子量Mnが3,000以上である、[1]~[5]のいずれかに記載のブロック共重合体組成物。
[7]下記式(I)で表されるマクロモノマー(A)、ビニル単量体(B)、及び有機ヨウ素化合物(C)を含む重合性組成物を重合して得られる、ブロック共重合体を含むブロック共重合体組成物。
【0008】
【0009】
(式(I)中、R及びR1~Rnは、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基又は複素環基である。Zは、水素原子又はラジカル重合開始剤由来の基である。X1~Xnは、それぞれ独立に水素原子又はメチル基である。nは2~10,000の整数である。)
[8]前記ビニル単量体(B)由来のブロックが分岐構造を有し、主鎖と分岐鎖が同じ構成単位からなるブロック共重合体を含む、[7]に記載のブロック共重合体組成物。
[9]前記ビニル単量体(B)由来のブロックが分岐構造を有するブロック共重合体を含み、分子量分布が1.5~3.4である、[7]又は[8]に記載のブロック共重合体組成物。
[10]前記ブロック共重合体が主鎖の末端にヨウ素原子を有する、[7]~[9]のいずれかに記載のブロック共重合体組成物。
[11]前記ビニル単量体(B)が、スチレン系単量体、メタクリレート系単量体及びアクリレート系単量体からなる群から選ばれる少なくとも1種である、[7]~[10]のいずれかに記載のブロック共重合体組成物。
[12]下記式(I)で表されるマクロモノマー(A)、ビニル単量体(B)、及び有機ヨウ素化合物(C)を含む重合性組成物を重合する、ブロック共重合体組成物の製造方法。
【0010】
【0011】
(式(I)中、R及びR1~Rnは、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基又は複素環基である。Zは、水素原子又はラジカル重合開始剤由来の基である。X1~Xnは、それぞれ独立に水素原子又はメチル基である。nは2~10,000の整数である。)
[13]前記重合性組成物が触媒(D)及びアゾ系ラジカル重合開始剤(E)のいずれか一方又は両方をさらに含む、[12]に記載のブロック共重合体組成物の製造方法。
[14]下記式(I)で表されるマクロモノマー(A)、ビニル単量体(B)、アゾ系ラジカル重合開始剤(E)、及びヨウ素を含む重合性組成物を重合する、ブロック共重合体組成物の製造方法。
【0012】
【0013】
(式(I)中、R及びR1~Rnは、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基又は複素環基である。Zは、水素原子又はラジカル重合開始剤由来の基である。X1~Xnは、それぞれ独立に水素原子又はメチル基である。nは2~10,000の整数である。)
[15]前記重合性組成物が触媒(D)をさらに含む、[14]に記載のブロック共重合体組成物の製造方法。
[16]下記式(i)又は(ii)の少なくとも一つを満たす、[14]に記載のブロック共重合体組成物の製造方法。
(i) 0<[Q]/[P]<0.60
(ただし、[P]は前記アゾ系ラジカル重合開始剤(E)のモル当量数を表し、[Q]は前記ヨウ素のモル当量数を表す。)
(ii) 0<Tp-T10<40
(ただし、Tpは前記重合性組成物を重合する重合温度(℃)を表し、T10は前記アゾ系ラジカル重合開始剤(E)の10時間半減期温度(℃)を表す。)
[17]前記触媒(D)が、下記触媒(D1)~(D6)からなる群から選ばれる少なくとも1種である、[13]又は[15]に記載のブロック共重合体組成物の製造方法。
触媒(D1):ハロゲン化物イオンと、前記ハロゲン化物イオンとイオン結合を形成したカチオン状態の非金属原子とを含む非金属化合物。
触媒(D2):炭素原子と、前記炭素原子に直接結合した少なくとも1つのハロゲン原子とを含む化合物、又は前記化合物の前駆体となる炭化水素化合物。
触媒(D3):窒素原子、リン原子、硫黄原子又は酸素原子を有し、酸化還元性を有する有機化合物。
触媒(D4):エチレン、アセチレン、オリゴアセチレン、ポリアセチレン、フラーレン、カーボンナノチューブ、及びそれらの誘導体からなる群から選ばれる化合物。
触媒(D5):ハロゲン化アルカリ金属化合物又はハロゲン化アルカリ土類金属化合物。
触媒(D6):前記触媒(D1)~(D5)以外のリン化合物、含窒素化合物及び含酸素化合物からなる群から選ばれる化合物。
[18]前記ビニル単量体(B)が、スチレン系単量体、メタクリレート系単量体及びアクリレート系単量体からなる群から選ばれる少なくとも1種である、[12]~[17]のいずれかに記載のブロック共重合体組成物の製造方法。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、適度な粘度を有し、取扱い性がよく、分散剤や樹脂添加剤等に適したブロック共重合体組成物が得られる。
また本発明によれば、分子構造や分子量分布を充分に制御でき、特定の分子構造を有し、分子量分布が適度な範囲にあるブロック共重合体を含むブロック共重合体組成物が得られる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
(用語の説明)
「ブロック共重合体」とは、重合体中に複数のブロックを有し、互いに隣接するブロックは構成(化学構造)が異なっている共重合体を意味する。例えば、隣接するブロックは、異なる単量体由来の構成単位で構成されている。
「マクロモノマー」とは、ラジカル反応性の官能基(ラジカル重合可能な官能基又は付加反応性の官能基)を持ち、通常繰り返し構造を持ち分子量が比較的大きい単量体を意味する。官能基は末端に有することが好ましい。
「ビニル単量体」とは、少なくとも1つのビニル基(炭素-炭素不飽和二重結合)を含む化合物を意味する。
「(メタ)アクリレート」とは、「アクリレート」又は「メタクリレート」を示す。
「有機ヨウ素化合物」とは、1分子中に炭素-ヨウ素結合を有する化合物を意味する。
【0016】
[ブロック共重合体組成物]
本発明の第一の態様のブロック共重合体組成物は、すべてのブロックの構成単位がビニル単量体由来であり、少なくとも一つのブロックが分岐構造を有し、主鎖と分岐鎖が同じ構成単位からなるブロック共重合体を含むブロック共重合体組成物である。本発明の第一の態様のブロック共重合体組成物は、好ましくはこのようなブロック共重合体を主成分とし、より好ましくは実質的にこのようなブロック共重合体からなるブロック共重合体組成物である。
【0017】
本発明の第二の態様のブロック共重合体組成物は、すべてのブロックの構成単位がビニル単量体由来であり、少なくとも一つのブロックが分岐構造を有するブロック共重合体を含み、分子量分布(Mw/Mn)が1.5~3.4であるブロック共重合体組成物である。本発明の第二の態様のブロック共重合体組成物は、好ましくはこのようなブロック共重合体を主成分とし、より好ましくは実質的にこのようなブロック共重合体からなるブロック共重合体組成物である。
【0018】
本発明のブロック共重合体組成物に含まれるブロック共重合体は、分岐構造を有する。ブロック共重合体の分岐構造の数、即ち分岐鎖の数は、平均して1分子あたり1以上、8以下が好ましく、2以上、7以下がより好ましい。分岐鎖の数が下限値以上であれば、粘度が低下し、取扱い性が向上する。分岐鎖の数が上限値以下であれば、ブロック共重合体の相分離構造がより明確になり、ブロック共重合体組成物のもたらす分散等の機能が発現しやすくなり好ましい。
【0019】
本発明において、ブロック共重合体の分岐構造を有するブロックは、主鎖と分岐鎖が同じ構成単位からなることが好ましい。なお、「主鎖と分岐鎖が同じ構成単位からなる」とは、分岐鎖の構成単位が、その分岐が起きる部分の主鎖の構成単位と同じであることを言う。
【0020】
ブロック共重合体が分岐構造を有することで粘度が低下するうえ、ブロックの主鎖と分岐鎖が同じ構成単位からなることで各構成単位が有する特性がブロックとして充分に発現される。そのため、本発明のブロック共重合体組成物は、取扱い性に優れ、樹脂添加剤、分散剤、塗料用組成物、リソグラフィー用重合体等の各種添加剤として高い機能を示す。
【0021】
ブロック共重合体組成物に含まれるブロック共重合体の分岐構造は、例えば、以下の方法で確認できる。
分岐の度合いは、次のMark-Houwink-Sakurada式により見積もることができる。
η=K×Ma
(η:固有粘度、M:絶対分子量、K及びaは定数)
【0022】
同一の温度及び濃度における同一溶媒内の所与の重合体のKは不変であり、指数項aのみが重合体の分岐度を反映し、aの値の減少は分岐の増加を示す。分岐の指標であるaは、例えばGPC-TDAを用いて測定した固有粘度及び絶対分子量の対数プロット(Mark-Houwink-Sakuradaプロット)の傾きから算出することができる。本発明のブロック共重合体組成物に含まれるブロック共重合体は少なくとも1つのブロックが分岐構造を有するため、通常、典型的な柔軟鎖を有する直鎖状重合体(a>0.7)よりもaの値が小さくなる。
【0023】
また、13C-NMR測定を行い、4級炭素隣接メチン基が38~41ppmに検出されれば、ブロック共重合体が分岐構造を有すると判断できる。さらに、そのピーク強度からブロック共重合体組成物中のブロック共重合体の1分子あたりの平均分岐鎖数を求めることができる。
主鎖と分岐鎖が同じ構成単位からなることについては、前記測定結果に加えて、重合過程における組成変化を1H-NMRで追跡することにより確認できる。
【0024】
本発明のブロック共重合体組成物は、実質的にすべてのブロックの構成単位がビニル単量体由来である。ただし、本発明の効果に著しく影響しない範囲でビニル単量体由来以外の構成単位を有してもよい。
ビニル単量体としては、後述するビニル単量体(B)として例示したものが挙げられる。各ブロックは、ビニル単量体1種からなっていてもよく、2種以上からなっていてもよい。本発明のブロック共重合体は、少なくとも1つのブロックの構成単位がメタクリレート系単量体又はアクリレート系単量体由来であることが好ましい。
【0025】
本発明のブロック共重合体は、主鎖の末端にヨウ素原子を有することが好ましい。ヨウ素原子を有する主鎖の末端には、末端のヨウ素原子を求核性試薬で置換することで官能基を導入することができる。また必要に応じて高温で処理すれば、末端のヨウ素原子を除去することもできる。
求核性試薬で置換することで導入できる官能基は、アルキル基、アミノ基、アミド基、カルボキシル基等が挙げられる。例えば、主鎖末端にアミノ基やカルボキシル基等の極性基を有するブロック共重合体は、分散質への吸着等の相互作用により、分散剤として特に優れた性能を示す。なお、この場合、末端のアミノ基やカルボキシル基と重合体の主鎖との間にアルキレン構造(-(CH2)n-)を含んでいてもよい。
【0026】
本発明のブロック共重合体組成物は、分子量分布(Mw/Mn)(以下、単に「Mw/Mn」とも記す。)の値が、1.5以上であることが好ましく、1.6以上であることがより好ましく、1.7以上であることがさらに好ましい。また、Mw/Mnの値が、3.4以下であることが好ましく、3.2以下であることがより好ましく、3.0以下であることがさらに好ましく、2.8以下であることが特に好ましい。本発明のブロック共重合体組成物のMw/Mnは、1.5~3.4が好ましい。Mw/Mnが前記範囲の上限値以下であれば、ブロック共重合体組成物の相構造を高度に制御しやすい。また、Mw/Mnが前記範囲の下限値以上であれば、ブロック共重合体組成物の溶融粘度及び溶液粘度が低下し、取扱い性が向上する。
【0027】
本発明のブロック共重合体組成物の数平均分子量(以下、「Mn」とも記す。)は、下限については3,000以上が好ましく、5,000以上がより好ましく、10,000以上がさらに好ましく、上限については1,000,000以下が好ましく、500,000以下がより好ましく、200,000以下がさらに好ましい。本発明のブロック共重合体組成物のMnは、3,000~1,000,000が好ましい。ブロック共重合体組成物のMnが前記範囲の下限値以上であれば、ブロック共重合体組成物を含む成形体や塗膜の機械強度が良好となる傾向にある。ブロック共重合体組成物のMnが前記範囲の上限値以下であれば、成形体や塗膜を得るために適した溶解性、溶融粘度、溶液粘度を得ることができる。
前述したMn及びMw/Mnは、ゲル透過クロマトグラフィー(GPC)を使用し、ポリメチルメタクリレート(PMMA)の検量線から算出した値である。
【0028】
本発明のブロック共重合体組成物は相構造を形成し、ブロック共重合体が有する高い分散性等の機能を有しつつ良好な溶解性及び溶融粘度を示し、分散剤や樹脂添加剤等として好ましく用いられる。分散剤や樹脂添加剤は通常、溶液状態又は他の樹脂材料との混合状態で扱われるが、取扱い性を考慮すると低粘度であることが好ましい。同等の分子量の重合体であれば、分子量分布が狭いほど粘度が高く、分子量分布が広いほど粘度が低くなるが、分散剤や樹脂添加剤としての機能は分子量分布が狭いほど優れる傾向にある。また、同等の分子量であっても、重合体が分岐構造を有することで粘度が低下する。
分散剤や樹脂添加剤として優れた機能を発現しつつ、粘度等の取扱い性が向上するため、ブロック共重合体組成物は分子量分布が前述の範囲で、かつ前述の分岐構造を有するブロック共重合体を含むことが好ましい。
【0029】
[ブロック共重合体組成物の製造方法]
本発明のブロック共重合体組成物の製造方法は、特に限定されないが、以下に好ましい製造方法を示す。
本発明の第一の態様のブロック共重合体組成物の製造方法としては、マクロモノマー(A)と、ビニル単量体(B)と、有機ヨウ素化合物(C)とを含む重合性組成物を重合することによりブロック共重合体組成物を得る方法が挙げられる。
【0030】
(マクロモノマー(A))
マクロモノマー(A)は、式(I)で表される。
式(I)中、「・・・」は単量体単位が重合している状態を表す。マクロモノマー(A)は、ポリ(メタ)アクリレートセグメントの一方の末端にラジカル反応性の不飽和二重結合を有する基を有する。
【0031】
【0032】
式(I)中、R及びR1~Rnは、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基又は複素環基である。Zは、水素原子又はラジカル重合開始剤由来の基である。X1~Xnは、それぞれ独立に水素原子又はメチル基である。nは2~10,000の整数である。
【0033】
R及びR1~Rnのアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、複素環基は、置換基を有していてもよい。
R及びR1~Rnは、アルキル基及びシクロアルキル基から選ばれる少なくとも1種が好ましく、アルキル基がより好ましい。
【0034】
R及びR1~Rnのアルキル基としては、炭素数1~20の分岐又は直鎖アルキル基を例示できる。具体例としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、i-プロピル基、n-ブチル基、t-ブチル基、i-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基及びイコシル基を例示できる。アルキル基としては、重合制御の容易性から、メチル基、エチル基、n-プロピル基、i-プロピル基、n-ブチル基、t-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基が好ましく、メチル基、エチル基、n-プロピル基、i-プロピル基、n-ブチル基、t-ブチル基がより好ましく、メチル基が特に好ましい。
【0035】
R及びR1~Rnのシクロアルキル基としては、炭素数3~20のシクロアルキル基を例示できる。具体例としては、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、アダマンチル基を例示できる。シクロアルキル基としては、重合制御の容易性から、シクロプロピル基、シクロブチル基、アダマンチル基が好ましい。
【0036】
R及びR1~Rnのアリール基としては、炭素数6~18のアリール基を例示できる。炭素数6~18のアリール基の具体例としては、フェニル基、ベンジル基、ナフチル基を例示できる。
【0037】
R及びR1~Rnの複素環基としては、炭素数5~18の複素環基を例示できる。複素環基に含まれるヘテロ原子としては、酸素原子、窒素原子、硫黄原子を例示できる。複素環基の具体例としては、γ-ラクトン基、ε-カプロラクトン基、モルフォリン基を例示できる。
【0038】
R及びR1~Rnにおける置換基としては、それぞれ独立して、アルキル基、アリール基、カルボキシ基、アルコキシカルボニル基(-COOR’)、カルバモイル基(-CONR’R’’)、シアノ基、ヒドロキシ基、アミノ基、アミド基(-NR’R’’)、ハロゲン原子、アリル基、エポキシ基、アルコキシ基(-OR’)、及び親水性もしくはイオン性を示す基を例示できる。なお、R’又はR’’は、それぞれ独立して、Rと同様の基(ただし、複素環基を除く。)である。
【0039】
R及びR1~Rnの置換基としてのアルコキシカルボニル基としては、メトキシカルボニル基を例示できる。
R及びR1~Rnの置換基としてのカルバモイル基としては、N-メチルカルバモイル基及びN,N-ジメチルカルバモイル基を例示できる。
R及びR1~Rnの置換基としてのハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子を例示できる。
R及びR1~Rnの置換基としてのアルコキシ基としては、炭素数1~12のアルコキシ基を例示でき、具体例としては、メトキシ基を例示できる。
R及びR1~Rnの置換基としての親水性又はイオン性を示す基としては、カルボキシ基のアルカリ塩又はスルホキシル基のアルカリ塩、ポリエチレンオキシド基、ポリプロピレンオキシド基等のポリ(アルキレンオキシド)基及び四級アンモニウム塩基等のカチオン性置換基を例示できる。
【0040】
X1~Xnは、それぞれ独立に水素原子又はメチル基であり、メチル基が好ましい。
マクロモノマー(A)においては、合成し易さの点から、X1~Xnの半数以上がメチル基であることが好ましい。
【0041】
Zは、水素原子又はラジカル重合開始剤由来の基(フラグメント)であり、公知のラジカル重合で得られる重合体の末端基と同様の基を例示できる。製造時にラジカル重合開始剤を用いない場合は、Zは水素原子である。
【0042】
nはマクロモノマー(A)1分子中における単量体単位の数を意味する。nは、2~10,000の整数であり、10~1,000の整数が好ましく、30~500の整数がより好ましい。
【0043】
マクロモノマー(A)のMnは、1,000~1,000,000が好ましい。マクロモノマー(A)のMnが前記範囲の下限値以上であれば、ブロック共重合体の物性、特に機械物性が良好となる傾向がある。マクロモノマー(A)のMnは、3,000以上がより好ましく、5,000以上がさらに好ましい。また、マクロモノマー(A)のMnは、500,000以下がより好ましく、300,000以下がさらに好ましく、100,000以下が特に好ましい。
マクロモノマー(A)のMw/Mnは、1.0~5.0が好ましく、1.5~3.0がより好ましい。
マクロモノマー(A)のMn及びMw/Mnは、ゲル透過クロマトグラフィー(GPC)を使用し、ポリメチルメタクリレート(PMMA)の検量線から算出した値である。
【0044】
本発明のマクロモノマー(A)はビニル単量体単位を構成単位に含むが、マクロモノマー(A)を得るためのビニル単量体は、後述する共重合体成分としてのビニル単量体(B)とは独立して選択することができる。
マクロモノマー(A)を得るためのビニル単量体の例としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシエチル(メタ)アクリレート、n-ブトキシエチル(メタ)アクリレート、イソブトキシエチル(メタ)アクリレート、t-ブトキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシエチル(メタ)アクリレート、3-メトキシブチル(メタ)アクリレートを例示できる。
【0045】
これらのビニル単量体の市販品の例としては、プラクセルFM(商品名、(メタ)アクリレートのカプロラクトン付加単量体、ダイセル化学社製)、ブレンマーPME-100(商品名、メトキシポリエチレングリコールメタクリレート(エチレングリコールの連鎖が2であるもの)、日油社製)、ブレンマーPME-200(商品名、メトキシポリエチレングリコールメタクリレート(エチレングリコールの連鎖が4であるもの)、日油社製)、ブレンマーPME-400(商品名、メトキシポリエチレングリコールメタクリレート(エチレングリコールの連鎖が9であるもの)、日油社製)、ブレンマー50POEP-800B(商品名、オクトキシポリエチレングリコール-ポリプロピレングリコール-メタクリレート(エチレングリコールの連鎖が8であり、プロピレングリコールの連鎖が6であるもの)、日油社製)及びブレンマー20ANEP-600(商品名、ノニルフェノキシ(エチレングリコール-ポリプロピレングリコール)モノアクリレート、日油社製)、ブレンマーAME-100(商品名、日油社製)、ブレンマーAME-200(商品名、日油社製)及びブレンマー50AOEP-800B(商品名、日油社製)を例示できる。
【0046】
これらの例のうち、重合制御のし易さの点では、メタクリレートが好ましい。
メタクリレートとしては、成形体や塗膜の透明性の点から、メチルメタクリレート、n-ブチルメタクリレート、ラウリルメタクリレート、ドデシルメタクリレート、ステアリルメタクリレート、2-エチルヘキシルメタクリレート、グリシジルメタクリレート、2-ヒドロキシエチルメタクリレート、4-ヒドロキシブチルメタクリレートが好ましく、メチルメタクリレート、n-ブチルメタクリレート、2-エチルヘキシルメタクリレートがより好ましく、メチルメタクリレートが特に好ましい。
【0047】
さらに、これらの例のうち、耐滞留劣化性に優れた共重合体を得る点では、メタクリレートの他にも、アクリレートを含むことが好ましい。
アクリレートとしては、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n-プロピルアクリレート、イソプロピルアクリレート、n-ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、t-ブチルアクリレートが好ましく、入手し易さの点から、メチルアクリレートが好ましい。
【0048】
マクロモノマー(A)を得るためのビニル単量体は、メタクリレートとアクリレート以外の他のビニル単量体を含んでもよい。
他のビニル単量体としては、不飽和カルボン酸が好ましい。不飽和カルボン酸としては、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸を例示できる。
マクロモノマー(A)を得るためのビニル単量体は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0049】
マクロモノマー(A)を得るためのビニル単量体の合計のうちのメタクリレートの含有量としては、共重合体の耐滞留劣化性の点から、ビニル単量体の総質量に対して、80~99.5質量%が好ましく、82~99質量%が好ましく、84~99質量%がさらに好ましく、85~99質量%が特に好ましい。
【0050】
マクロモノマー(A)を得るためのビニル単量体の合計のうちのアクリレートの含有量としては、ビニル単量体の総質量に対して、0.1~20質量%が好ましく、1~15質量%がより好ましい。
マクロモノマー(A)としては、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0051】
マクロモノマー(A)の製造方法としては、コバルト連鎖移動剤を用いて製造する方法(米国特許4680352号明細書)、α-ブロモメチルスチレン等のα置換不飽和化合物を連鎖移動剤として用いる方法(国際公開第88/04304号)、重合性基を化学的に結合させる方法(特開昭60-133007号公報、米国特許第5147952号明細書)及び熱分解による方法(特開平11-240854号公報)を例示できる。
マクロモノマー(A)の製造方法としては、製造工程数が少なく、連鎖移動定数の高い触媒を使用する点から、コバルト連鎖移動剤を用いて製造する方法が好ましい。連鎖移動定数の高いコバルト連鎖移動剤を用いることにより、少量で分子量が制御されたマクロモノマー(A)が得られる。
【0052】
コバルト連鎖移動剤を用いてマクロモノマー(A)を製造する方法としては、塊状重合法、溶液重合法、懸濁重合法、乳化重合法等の水系分散重合法を例示できる。これらの中で、マクロモノマー(A)の回収工程の簡略化の点から、懸濁重合法、乳化重合法等の水系分散重合法が好ましく、懸濁重合が特に好ましい。
【0053】
コバルト連鎖移動剤としては、米国特許第4680352号明細書に記載されたものを使用できる。コバルト連鎖移動剤としては、酢酸コバルト(II)とジフェニルグリオキシムと三フッ化ホウ素ジエチルエーテル錯体との反応によって得られる一価のコバルト錯体を使用してもよい。
コバルト連鎖移動剤の使用量は、マクロモノマー(A)の製造に使用されるビニル単量体の合計量に対して、0.1~50ppmが好ましく、1~25ppmがより好ましい。
【0054】
マクロモノマー(A)を溶液重合法で得る際に使用される溶剤としては、トルエン等の炭化水素系溶剤;ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル系溶剤;ジクロロメタン、クロロホルム等のハロゲン化炭化水素系溶剤;アセトン等のケトン系溶剤;メタノール等のアルコール系溶剤;アセトニトリル等のニトリル系溶剤;酢酸エチル等のビニルエステル系溶剤;エチレンカーボネート等のカーボネート系溶剤;及び超臨界二酸化炭素を例示できる。溶剤としては、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0055】
マクロモノマー(A)の製造方法の具体例としては、以下の方法が挙げられる。
分散剤と、水溶性塩と、ビニル単量体と、コバルト連鎖移動剤と、重合開始剤とを含む原料組成物を調製する。前記原料組成物を70~100℃で2~7時間懸濁重合し、マクロモノマー(A)を含む水性懸濁液を調製する。得られた水性懸濁液からマクロモノマー(A)を濾過して回収する。
【0056】
マクロモノマー(A)としては、ビニル単量体を、コバルト連鎖移動剤を用いて懸濁重合することによって得たものであることが好ましい。共重合体の製造には、前述の方法で製造したマクロモノマー(A)を回収、精製した粉体状物を使用してもよく、懸濁重合で合成したマクロモノマー(A)を含む水性懸濁液をそのまま使用してもよい。
マクロモノマー(A)は、市販品を用いてもよい。マクロモノマー(A)の市販品としては、エルバサイト(ELVACITE;登録商標)シリーズ(ルーサイトインターナショナル社製)を例示できる。
【0057】
(ビニル単量体(B))
ビニル単量体(B)としては、マクロモノマー(A)を得るためのビニル単量体として挙げたものと同じものを例示できる。
ビニル単量体(B)は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0058】
ビニル単量体(B)としては、重合制御の点から、スチレン系単量体、メタクリレート系単量体及びアクリレート系単量体からなる群から選ばれる少なくとも1種が好ましい。
スチレン系単量体としては、スチレン、α-メチルスチレン、o-、m-又はp-メチルスチレン、o-、m-又はp-メトキシスチレン、o-、m-又はp-t-ブトキシスチレン、o-、m-又はp-クロロメチルスチレン、o-、m-又はp-クロロスチレン、o-、m-又はp-ヒドロキシスチレン、o-、m-又はp-スチレンスルホン酸及びその誘導体、o-、m-又はp-スチレンスルホン酸ナトリウム、o-、m-又はp-スチレンボロン酸及びその誘導体を例示できる。なかでも、重合制御の点から、スチレンが好ましい。
【0059】
メタクリレート系単量体及びアクリレート系単量体としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシエチル(メタ)アクリレート、n-ブトキシエチル(メタ)アクリレート、イソブトキシエチル(メタ)アクリレート、t-ブトキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシエチル(メタ)アクリレート、3-メトキシブチル(メタ)アクリレートが好ましく、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n-ブチルアクリレート、ラウリルアクリレート、ドデシルアクリレート、ステアリルアクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、グリシジルアクリレート、2-ヒドロキシエチルアクリレート、4-ヒドロキシブチルアクリレート、メトキシエチルアクリレートがより好ましい。
【0060】
(有機ヨウ素化合物(C))
本発明の第一の態様のブロック共重合体組成物の製造方法においては、炭素-ヨウ素結合を有する有機ヨウ素化合物(C)(ドーマント種)を添加し、この有機ヨウ素化合物(C)から成長鎖に与えられるヨウ素を保護基として用いる。有機ヨウ素化合物(C)としては、分子中に少なくとも1個の炭素-ヨウ素結合を有しており、ドーマント種として作用するものであればよく、特に限定されるものではない。有機ヨウ素化合物(C)としては、1分子中にヨウ素原子が1個又は2個含まれている化合物が好ましい。
有機ヨウ素化合物(C)は、重合性組成物に有機ヨウ素化合物(C)として添加してもよいし、他の化合物として添加したものが重合性組成物中で反応して有機ヨウ素化合物(C)を生成してもよい。
【0061】
有機ヨウ素化合物(C)としては、ヨードトリクロロメタン、ジクロロジヨードメタン、ヨードトリブロモメタン、ジブロモジヨードメタン、ブロモトリヨードメタン、ヨードホルム、ジヨードメタン、ヨウ化メチル、トリヨードエタン、ヨウ化エチル、ジヨードプロパン、ヨウ化イソプロピル、ヨウ化t-ブチル、ヨードジクロロエタン、クロロジヨードエタン、ジヨードプロパン、クロロヨードプロパン、ヨードジブロモエタン、ブロモヨードプロパン、2-ヨード-2-ポリエチレングリコシルプロパン、2-ヨード-2-アミジノプロパン、2-ヨード-2-シアノブタン、2-ヨード-2-シアノ-4-メチルペンタン、2-ヨード-2-シアノ-4-メチル-4-メトキシペンタン、4-ヨード-4-シアノペンタン酸、メチル-2-ヨードイソブチレート、2-ヨード-2-メチルプロパンアミド、2-ヨード-2,4-ジメチルペンタン、2-ヨード-2-シアノブタノール、2-ヨード-2-メチル-N-(2-ヒドロキシエチル)プロピオンアミド-4-メチルペンタン、2-ヨード-2-メチル-N-(1,1-ビス(ヒドロキシメチル)-2-ヒドロキシエチル)プロピオンアミド-4-メチルペンタン、2-ヨード-2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン、2-ヨード-2-(2-(5-メチル-2-イミダゾリン-2-イル)プロパン、ヨードベンジルシアニド(PhCN-I)、エチル-2-ヨードフェニルアセテート(PhE-I)、ジエチル-2-ヨード-2-メチルマロネート(EEMA-I)、2-ヨード-2-シアノプロパン(CP-I)、1-ヨード-1-シアノエタン(CE-I)、1-ヨード-1-フェニルエタン(PE-I)、エチル-2-ヨードイソブチレート(EMA-I)、エチル-2-ヨードヴァレレート(EPA-I)、エチル-2-ヨードプロピオネート(EA-I)、エチル-2-ヨードアセテート(E-I)、2-ヨードイソ酪酸(MAA-I)、ヒドロキシエチル-2-ヨードイソブチレート(HEMA-I)、2-ヨードプロピオン酸アミド(AAm-I)、エチレングリコール ビス(2-ヨードイソブチレート)(EMA-II)、ジエチル-2,5-ジヨードアジペート(EA-II)、グリセロール-トリス(2-ヨードイソブチレート)(EMA-III)、6-(2-ヨード-2-イソブチロキシ)ヘキシルトリエトキシシラン(IHE)を例示できる。
有機ヨウ素化合物(C)は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0062】
有機ヨウ素化合物(C)の中で、重合制御の点から、PhCN-I、PhE-I、EEMA-I、CP-I、CE-I、PE-I、EMA-I、EPA-I、EA-I、E-I、MAA-I、HEMA-I、AAm-I、EMA-II、EA-II、EMA-III、及びIHEからなる群から選ばれる少なくとも1種が好ましい。
本製造方法においては、重合性組成物に、後述する重合性組成物が触媒(D)やアゾ系ラジカル重合開始剤(E)をさらに含むことが、重合速度や単量体転化率を向上させやすく、好ましい。
【0063】
好ましい製造方法として、マクロモノマー(A)と、ビニル単量体(B)と、有機ヨウ素化合物(C)と、触媒(D)とを含む重合性組成物を重合することによりブロック共重合体組成物を得る方法が挙げられる。
【0064】
マクロモノマー(A)、ビニル単量体(B)、及び有機ヨウ素化合物(C)については前述したものと同様のものを用いることができる。
【0065】
(触媒(D))
触媒(D)は、炭素原子-ヨウ素原子結合のヨウ素原子を引き抜く目的で用いられる。触媒(D)を添加することにより、炭素原子-ヨウ素原子結合からの、ヨウ素原子の均一解離反応が促進され、重合速度を上げることができる。なお、触媒(D)としては、触媒そのもののほか、重合性組成物に添加すると重合反応時に触媒が生成される前駆体も含む。
【0066】
触媒(D)としては、以下の触媒(D1)~(D6)からなる群から選ばれる少なくとも1種が好ましい。
触媒(D1):ハロゲン化物イオンと、前記ハロゲン化物イオンとイオン結合を形成したカチオン状態の非金属原子とを含む非金属化合物。
触媒(D2):炭素原子と、前記炭素原子に直接結合した少なくとも1つのハロゲン原子とを含む化合物(以下、「化合物(D21)」とも記す。)、又は前記化合物(D21)の前駆体となる炭化水素化合物。
触媒(D3):窒素原子、リン原子、硫黄原子又は酸素原子を有し、酸化還元性を有する有機化合物。
触媒(D4):エチレン、アセチレン、オリゴアセチレン、ポリアセチレン、フラーレン、カーボンナノチューブ、及びそれらの誘導体からなる群から選ばれる化合物。
触媒(D5):ハロゲン化アルカリ金属化合物又はハロゲン化アルカリ土類金属化合物。
触媒(D6):前記触媒(D1)~(D5)以外のリン化合物、含窒素化合物及び含酸素化合物からなる群から選ばれる化合物。
【0067】
触媒(D1)としては、以下の化合物を例示できる。
非金属原子として窒素原子を有する非金属化合物としては、イミダゾール塩化合物、ピリジン塩化合物、4級アミン塩化合物、及びこれらの誘導体を例示できる。
【0068】
イミダゾール塩化合物としては、1-メチル-3-メチル-イミダゾリウムヨージド(EMIZI)、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムブロマイド(EMIZBr)を例示できる。
ピリジン塩化合物としては、2-クロロ-1-メチルピリジニウムヨージド(CMPI)を例示できる。
4級アミン塩化合物としては、テトラ-n-ブチルアンモニウムヨージド(BNI)、テトラ-n-ブチルアンモニウムトリヨージド(BNI3)、テトラ-n-ブチルアンモニウムブロモジヨージド(BNBrI2)を例示できる。
【0069】
非金属原子としてリン原子を有する非金属化合物としては、メチルトリブチルホスホニウム ヨージド(BMPI)等のホスホニウム塩化合物、テトラフェニルホスホニウムヨージド(PPI)、及びその誘導体を例示できる。
非金属原子として硫黄原子を有する非金属化合物としては、トリブチルスルホニウムヨージド(BSI)、及びその誘導体を例示できる。
非金属原子としてヨウ素原子を有する非金属化合物としては、ジフェニルヨードニウムヨージド(PII)を例示できる。
2種類の非金属原子を有する非金属化合物としては、ヘキサフェニルジホスファゼニウムクロリド(PPNCl)、及びその誘導体を例示できる。
【0070】
触媒(D2)としては、以下の化合物を例示できる。
化合物(D21)としては、ハロゲン化炭素(CI4等)、ハロゲン化アルキル((CH3)3CI、(CH3)2CI2、CH3CI3等)、ハロゲン化アリール(ヨウ化ジフェニルメタン等)、ハロゲン化ヘテロアリールを例示できる。
【0071】
化合物(D21)の前駆体となる炭化水素化合物としては、化合物(D21)中の炭素原子に結合したハロゲン原子を水素原子に置換した化合物を例示できる。
例えば、炭素原子に、1つ又は2つの水素原子と、2つ又は3つのラジカル安定化用置換基が結合している化合物が好ましい。ラジカル安定化用置換基としては、中心元素の炭素原子とともに共鳴構造を形成する置換基が好ましい。中心元素の炭素原子には、水素原子及びラジカル安定化用置換基以外の他の置換基が1つ結合していてもよいが、他の置換基が中心元素の炭素原子に結合していないことが好ましい。
【0072】
触媒(D3)としては、窒素原子、リン原子、硫黄原子、酸素原子を有し、酸化還元性を有する有機化合物を例示できる。
窒素原子を有する有機化合物としては、トリアルキルアミン(トリエチルアミン、トリブチルアミン等)、テトラキスジメチルアミノエテン(TDAE)、1,4,8,11-テトラメチル-1,4,8,11-テトラアザシクロテトラデカントリブチルホスフィン(TDME)を例示できる。ホール輸送能を有する有機化合物を使用してもよい。また、フタル酸イミド類、ピリジン類、ビピリジン類、N,N,N’,N”,N”-ペンタメチルジエチレントリアミン(PMDETA)、エチレンジアミン、ジメチルエチレンジアミン、テトラメチルエチレンジアミン、テトラメチルジアミノメタン、トリス(2-アミノエチル)アミン、トリス(2-(メチルアミノ)エチル)アミン、ヘマトポルフィリン、及びこれらの誘導体を使用してもよい。
【0073】
リン原子を有する有機化合物としては、トリアルキルホスフィン(トリエチルホスフィン等)、トリアリールホスフィン(トリフェニルホスフィン等)、ホスホン酸、1,2-ビス(ジフェニルホスフィノ)メタン、及びこれらの誘導体を例示できる。
【0074】
硫黄原子を有する有機化合物としては、チオフェン、オリゴチオフェン、ポリチオフェン、テトラチオフルバレン(TTF)、ビス(エチレンジチオ)テトラチアフルバレン(BTTF)、3,4-エチレンジオキシチオフェン(EDOT)、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン(PEDOT)、及びこれらの誘導体を例示できる。
【0075】
酸素原子を有する有機化合物としては、フラン、オリゴフラン、ポリフラン、及びそれらの誘導体を例示できる。
【0076】
触媒(D4)は、エチレン、アセチレン、オリゴアセチレン、ポリアセチレン、フラーレン、カーボンナノチューブといった中心元素として炭素原子を有する化合物及びそれらの誘導体である。
【0077】
触媒(D5)におけるハロゲン化アルカリ金属化合物のアルカリ金属原子としては、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、フランシウムを例示できる。ハロゲン化アルカリ土類金属化合物のアルカリ土類金属原子としては、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、ラジウムを例示できる。これらの中でも、ナトリウム、カリウム、セシウム、マグネシウム、カルシウムが好ましく、ナトリウム、カリウムが特に好ましい。
ハロゲン化アルカリ金属化合物及びハロゲン化アルカリ土類金属化合物に含まれるハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子を例示できる。これらの中でも、分子量分布を狭くしやすい点から、臭素原子又はヨウ素原子が好ましく、ヨウ素原子が特に好ましい。
【0078】
ハロゲン化アルカリ金属化合物としては、ヨウ化ナトリウム、ヨウ化カリウム、ヨウ化セシウムを例示できる。
ハロゲン化アルカリ土類金属化合物としては、ヨウ化マグネシウム、ヨウ化カルシウムを例示できる。
【0079】
触媒(D6)としては、以下の化合物を例示できる。
リン化合物としては、亜リン酸エステル、フォスフィネート系化合物を例示できる。
亜リン酸エステルとしては、ジメチルフォスファイト、ジエチルフォスファイト、ジブチルフォスファイト、ジフェニルフォスファイト、ジベンジルフォスファイト、ビス(2-エチルヘキシル)フォスファイト、ビス(2,2,2-トリフルオロエチル)フォスファイト、ジアリルフォスファイト、エチレンフォスファイトを例示できる。
フォスフィネート系化合物としては、ジパーフロロエチルフォスフィネート、エトキシフェニルフォスフィネート、フェニルフェノキシフォスフィネート、エトキシメチルフォスフィネート、フェノキシメチルフォスフィネートを例示できる。
リン化合物としては、入手のし易さ、溶解性の点から、ジメチルフォスファイト、ジエチルフォスファイト、ジブチルフォスファイト、ジフェニルフォスファイトが好ましい。これらのリン化合物は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0080】
含窒素化合物としては、イミド系化合物を例示できる。
イミド系化合物としては、スクシンイミド、2,2-ジメチルスクシンイミド、α,α-ジメチル-β-メチルスクシンイミド、3-エチル-3-メチル-2,5-ピロリジンジオン、シス-1,2,3,6-テトラヒドロフタルイミド、α-メチル-α-プロピルスクシンイミド、5-メチルヘキサヒドロイソインドール-1,3-ジオン、2-フェニルスクシンイミド、α-メチル-α-フェニルスクシンイミド、2,3-ジアセトキシスクシンイミド、マレイミド、フタルイミド、4-メチルフタルイミド、N-クロロフタルイミド、N-ブロモフタルイミド、4-ニトロフタルイミド、2,3-ナフタレンカルボキシイミド、ピロメリットジイミド、5-ブロモイソインドール-1,3-ジオン、N-クロロスクシンイミド、N-ブロモスクシンイミド、N-ヨードスクシンイミド(NIS)を例示できる。
含窒素化合物としては、入手のし易さ、溶解性の点から、スクシンイミド、フタルイミド、N-クロロスクシンイミド、N-ブロモスクシンイミド、NISが好ましい。これらの含窒素化合物は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0081】
含酸素化合物としては、フェノール性水酸基を有するフェノール系化合物、フェノール性水酸基のヨウ素化物であるアイオドオキシフェニル化合物、ビタミン類を例示できる。
フェノール系化合物としては、フェノール、ヒドロキノン、メトキシヒドロキノン、t-ブチルフェノール、t-ブチルメチルフェノール、カテコール、レゾルシン、ジ-t-ブチルヒドロキシトルエン、ジメチルフェノール、トリメチルフェノール、ジ-t-ブチル基担持重合体微粒子を例示できる。これらは保存のための重合禁止剤としても使用できる。
アイオドオキシフェニル化合物としては、チモールアイオダイドを例示できる。
ビタミン類としては、ビタミンC、ビタミンEを例示できる。
【0082】
含酸素化合物としては、入手のし易さ、溶解性の点から、フェノール、カテコール、ビタミンC、ビタミンEが好ましい。これらの含酸素化合物は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
本製造方法は、重合性反応物がさらに、後述するアゾ系ラジカル重合開始剤(E)を含んでいてもよい。
【0083】
他の好ましい製造方法として、マクロモノマー(A)と、ビニル単量体(B)と、有機ヨウ素化合物(C)と、アゾ系ラジカル重合開始剤(E)とを含む重合性組成物を重合することによりブロック共重合体組成物を得る方法が挙げられる。
【0084】
マクロモノマー(A)、ビニル単量体(B)、及び有機ヨウ素化合物(C)については前述したものと同様のものを用いることができる。
【0085】
(アゾ系ラジカル重合開始剤(E))
アゾ系ラジカル重合開始剤(E)は、マクロモノマー(A)と、ビニル単量体(B)と、有機ヨウ素化合物(C)とを含む重合性組成物を重合する際に、重合性組成物中のラジカル濃度を上昇させ、重合速度を上げる目的で用いられる。
【0086】
アゾ系ラジカル重合開始剤(E)としては、2,2’-アゾビス(イソブチロニトリル)、2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、1,1’-アゾビス(シクロヘキサン-1-カルボニトリル)、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチル-4-メトキシバレロニトリル)を例示できる。
アゾ系ラジカル重合開始剤(E)は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0087】
アゾ系ラジカル重合開始剤(E)の中でも、2,2’-アゾビス(イソブチロニトリル)(10時間半減期温度65℃)、2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)(10時間半減期温度67℃)、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)(10時間半減期温度51℃)、1,1’-アゾビス(シクロヘキサン-1-カルボニトリル)(10時間半減期温度88℃)が好ましい。これらのアゾ系ラジカル重合開始剤は10時間半減期温度が適切な範囲にあり、重合制御が行いやすいためである。
【0088】
本発明の第二の態様のブロック共重合体組成物の製造方法としては、マクロモノマー(A)と、ビニル単量体(B)と、アゾ系ラジカル重合開始剤(E)と、ヨウ素(I2)とを含む重合性組成物を重合することによりブロック共重合体組成物を得る方法が挙げられる。
本製造方法では、重合性組成物を重合する過程でアゾ系ラジカル重合開始剤(E)とヨウ素のそれぞれ少なくとも一部が反応して重合性組成物中に有機ヨウ素化合物(C)が生成し、ドーマント種として機能する。
【0089】
マクロモノマー(A)、ビニル単量体(B)、及びアゾ系ラジカル重合開始剤(E)については前述したものと同様のものを用いることができる。
本製造方法においては、重合性組成物が、前述した触媒(D)をさらに含むことが重合速度や単量体転化率を向上させやすく好ましい。触媒(D)については前述したものと同様のものを用いることができる。
【0090】
(重合性組成物の組成)
以上述べたブロック共重合体組成物の製造方法に用いる重合性組成物の組成について説明する。以下、「使用量」とは、重合性組成物への仕込み量のことを示す。
<重合性組成物がマクロモノマー(A)、ビニル単量体(B)、及び有機ヨウ素化合物(C)を含む場合>
マクロモノマー(A)の使用量は任意であるが、マクロモノマー(A)とビニル単量体(B)の合計量に対して、仕込比(質量比)で15質量%を超えることが好ましく、30質量%を超えることがより好ましい。また85質量%未満が好ましく、70質量%未満がより好ましい。マクロモノマー(A)の使用量が前記範囲であれば、マクロモノマー(A)を用いることによってブロック共重合体への付与が期待される諸物性が、より共重合体に反映されやすくなる。
【0091】
ビニル単量体(B)の使用量は任意であるが、マクロモノマー(A)とビニル単量体(B)の合計量に対して、仕込比(質量比)で15質量%を超えることが好ましく、30質量%を超えることがより好ましい。また85質量%未満が好ましく、70質量%未満がより好ましい。ビニル単量体(B)の使用量が前記範囲であれば、ビニル単量体(B)を用いることによって共重合体への付与が期待される諸物性がより共重合体に反映されやすくなる。
【0092】
有機ヨウ素化合物(C)の使用量は任意であるが、ビニル単量体(B)1モルあたり0.001~0.5モルであることが好ましく、0.002~0.1モルがより好ましい。有機ヨウ素化合物(C)の使用量が前記範囲であれば、成長鎖にヨウ素を保護基として提供するのに充分であり、尚且つ、重合速度を極端に低下させない。
【0093】
<重合性組成物がマクロモノマー(A)、ビニル単量体(B)、有機ヨウ素化合物(C)、及びアゾ系ラジカル重合開始剤(E)を含む場合>
アゾ系ラジカル重合開始剤(E)の使用量は、有機ヨウ素化合物(C)に対するモル当量数で、0.001当量を超えることが好ましく、0.002当量を超えることがより好ましい。また、アゾ系ラジカル重合開始剤(E)の使用量は、有機ヨウ素化合物(C)に対するモル当量数で、10当量を超えないことが好ましく、5当量を超えないことがより好ましい。アゾ系ラジカル重合開始剤(E)の使用量が前記範囲の下限値以上であると、適度な重合速度を得ることができる。また、アゾ系ラジカル重合開始剤(E)の使用量が前記範囲の上限値以下であると、ブロック共重合体組成物中に副生するビニル単量体(B)の単独重合体の生成量を抑制することができる。
【0094】
<重合性組成物がマクロモノマー(A)、ビニル単量体(B)、アゾ系ラジカル重合開始剤(E)、及びヨウ素を含む場合>
アゾ系ラジカル重合開始剤(E)の使用量は任意であるが、ビニル単量体(B)1モルあたり0.001~0.05モルであることが好ましく、0.002~0.02モルがより好ましい。アゾ系ラジカル重合開始剤(E)の使用量が前記範囲であれば、適度な重合速度を得ることができる。
【0095】
また、ヨウ素の使用量は、下記の条件(i)を満たすことが好ましい。
(i) 0<[Q]/[P]<0.60
ただし、[Q]は重合性組成物中のヨウ素のモル当量数であり、[P]はアゾ系ラジカル開始剤(E)のモル当量数である。
【0096】
[Q]/[P]は、0.01以上が好ましく、0.1以上がより好ましい。[Q]/[P]が前記範囲の下限値以上であれば、分子量及び分子量分布が充分に制御される。[Q]/[P]が0.60未満であれば、副反応により重合が阻害されることを抑制しやすい。アゾ系ラジカル重合開始剤(E)の開始剤効率は一般的に0.6~0.7程度である。そのため、ヨウ素の使用量は、0.1≦[Q]/[P]<0.60を満たすことが最も好ましい。
後述する重合性組成物が触媒(D)を含む場合も[Q]/[P]を前記範囲とすることが好ましいが、重合性組成物が触媒(D)を含まない場合は重合制御がより必要となるため、特に、[Q]/[P]を前記範囲とすることが好ましい。
【0097】
<重合性組成物が少なくともマクロモノマー(A)、ビニル単量体(B)、及び触媒(D)を含む場合>
重合性組成物はこのほかに有機ヨウ素化合物(C)、アゾ系ラジカル重合開始剤(E)、及びヨウ素から選択される1種以上を適宜含む。
触媒(D)の使用量は、反応溶液1リットルに対して、0.1~1000ミリモルが好ましく、0.5~500ミリモルがより好ましい。触媒(D)の使用量が前記範囲内であれば、重合速度が充分に促進され、分子量分布を狭くすることができる。
【0098】
(溶媒)
重合性組成物には適宜溶媒を添加できる。溶媒としては、マクロモノマー(A)を得るための重合で挙げたものと同じ溶剤を例示できる。
溶媒を用いる場合、溶媒の使用量は、ビニル単量体(B)100質量部に対して、30質量部以上700質量部以下が好ましい。
【0099】
重合性組成物には必要に応じてその他の添加剤を加えることができる。その他の添加剤としては、メルカプタン等の連鎖移動剤を例示できる。
【0100】
[重合条件]
本発明のブロック共重合体組成物の製造方法における重合方法としては、特に限定されず、塊状重合法、溶液重合法、懸濁重合法、乳化重合法等を例示できる。
重合反応は、空気存在下で行ってもよいが、ラジカル重合の効率の点から、窒素やアルゴン等の不活性ガスで空気を置換した条件下で行うことが好ましい。
【0101】
重合温度は、重合速度等の点から、0~150℃が好ましく、重合制御の点から、20~120℃がより好ましい。
重合温度は、単量体転化率の高い領域まで重合を進行させやすい点から、ビニル単量体(B)の転化率が60%に達するまで一定に維持することが好ましい。単量体転化率が60%を超えた後の温度条件は、一定には限定されず、例えば、さらに昇温させることができる。
また、重合制御の点から、重合温度は、下記の条件(ii)を満たすことが好ましい。
(ii) 0<Tp-T10<40
ただし、Tpは重合温度(℃)であり、T10はアゾ系ラジカル重合開始剤(E)の10時間半減期温度(℃)である。なお、10時間半減期温度は、ラジカル重合開始剤の構成に固有の値である。
Tp-T10を前記範囲とすることで、重合速度を維持し、単量体転化率を高めつつ、重合制御が行いやすくなる。重合性組成物が触媒(D)を含まない場合は重合制御がより必要となるため、特に、Tp-T10を前記範囲とすることが好ましい。
【0102】
重合時間は、特に限定されず、例えば、0.5~24時間とすることができる。
【0103】
(重合機構)
本発明で用いるマクロモノマー(A)は、付加開裂型連鎖移動剤としても機能する。そのため、重合過程ではビニル単量体(B)由来の構成単位を有するマクロモノマーも生成し得るため、本発明のブロック共重合体組成物に含まれるブロック共重合体は、ビニル単量体(B)由来のブロックが分岐構造を有する。
【0104】
具体的な重合機構について、マクロモノマー(A)としてメチルメタクリレート(MMA)由来の構成単位を有するマクロモノマーを用い、ビニル単量体(B)としてn-ブチルアクリレート(BA)、有機ヨウ素化合物(C)として2-ヨード-2-シアノプロパン(CP-I)、触媒(D)としてテトラ-n-ブチルアンモニウムヨージド(BNI)を用いた場合を例にして説明する。この例の重合は以下の(1)~(4)のように進行すると考えられる。
【0105】
(1)下記式(1)に示すように、まず、触媒(D)であるBNIの働きにより有機ヨウ素化合物(C)であるCP-Iから炭素ラジカルが生成する。生成した炭素ラジカルはビニル単量体(B)であるBAと反応し、BA由来の構成単位を有する成長ラジカルとなる。
(2)下記式(2)に示すように、成長ラジカルはマクロモノマー(A)と反応する際に付加開裂連鎖移動を起こし、BA由来の構成単位を有するマクロモノマー(B’)と、マクロモノマー(A)由来の成長ラジカル(A’)とを系中で生成する。
(3)下記式(3)に示すように、成長ラジカル(A’)はヨウ素と結合し休眠種を生成する。
(4)下記式(4)に示すように、休眠種は触媒(D)の働きにより繰り返し成長ラジカルを生成する。この成長ラジカルとBAとの反応が進行することによりブロック共重合体が成長する。
【0106】
【0107】
前述した機構により、重合初期はマクロモノマー(A)が消費され、マクロモノマー(A)由来のブロックとビニル単量体(B)であるBA由来のブロックが結合したブロック共重合体が生成する。それに加え、BA由来の構成単位を有するマクロモノマー(B’)が生成する。また、重合は末端ヨウ素の存在により制御された状態で進行する。
成長ラジカルは、BA由来の構成単位を有するマクロモノマー(B’)と反応することもできる。この結果、BA由来のブロックに分岐鎖が導入され、系中で生成したBA由来の構成単位を有するマクロモノマー(B’)が消費される。
【0108】
以上がマクロモノマー(A)、ビニル単量体(B)、有機ヨウ素化合物(C)、及び触媒(D)を含む重合性組成物の重合反応の機構であるが、前述した他の複数の好ましい製造方法についても類似の反応機構により重合反応が進行すると考えられる。
重合反応の結果、最終的には、すべてのブロックの構成単位がビニル単量体由来であり、少なくとも1つのブロックが分岐構造を有し、主鎖と分岐鎖が同じ構成単位からなるブロック共重合体が得られる。
前述の製造方法により製造されたブロック共重合体は、主鎖の末端にヨウ素原子を有する。この末端のヨウ素原子は、高温で処理したり、求核性試薬で置換したりすることにより、必要に応じて除去したり、求核性試薬に由来した官能基を導入したりすることができる。
【0109】
典型的な制御重合で得られる重合体のMw/Mnは、一般に1.5未満である。本発明の重合反応の重合機構も制御重合のモードで進行するが、分岐構造が生成することにより、Mw/Mnは通常より大きくなり、1.5~3.4の範囲となる。
【0110】
本発明のブロック共重合体組成物の用途は、特に限定されず、分散剤、樹脂添加剤、塗料用組成物、リソグラフィー用重合体を例示できる。
【0111】
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明は以下の記載によっては限定されない。なお、「eq」は「モル当量数」を示す。また溶剤の量は、溶剤を含む全体の量を100質量%とした場合の溶剤量(質量%)で表す。
[数平均分子量(Mn)及び分子量分布(Mw/Mn)]
マクロモノマー及びブロック共重合体組成物の数平均分子量(Mn)及び分子量分布(Mw/Mn)は、GPC(東ソー社製、「HLC-8220」)を使用し、PMMAの検量線からMn及びMw/Mnを算出した。測定条件は、以下のとおりとした。
カラム:TSK GUARD COLUMN SUPER HZ-L(4.6mm×35mm)とTSK-GEL SUPER HZM-N(6.0mm×150mm)の直列接続、
溶離液:テトラヒドロフラン、
測定温度:40℃、
流速:0.6mL/分。
【0112】
[単量体転化率]
各例の単量体転化率(%)は、NMR(Bruker社製、「BBF0400」、400MHz)測定から求められる、残存単量体量と生成重合体量の総和に対する生成重合体量の比率として算出した。
【0113】
[分岐構造の評価]
ブロック共重合体組成物に含まれるブロック共重合体の分岐構造の確認は以下の通り行った。
GPC-TDA(Viscotek社製)を用いて共重合体の固有粘度η及び絶対分子量Mを測定し、それらの対数プロット(Mark-Houwink-Sakuradaプロット)の傾きを、分岐の指標である指数項aとして求めた。この値を、典型的な柔軟鎖を有する直鎖状重合体(a>0.7)と比較することで、分岐構造の有無を判断した。
次に、13C-NMR測定を行い、4級炭素隣接メチン基が検出(38~41ppm)されれば分岐構造を有すると判断し、そのピーク強度からブロック共重合体1分子あたりの平均分岐鎖数を求めた。
【0114】
本発明の重合過程においては、マクロモノマー(A)由来のブロックとビニル単量体(B)との重合で生成するブロック共重合体以外に、ビニル単量体(B)が重合し、前記単量体由来の構成単位からなるマクロモノマー(B’)が共存する。この反応機構を利用して、「ビニル単量体(B)を構成単位とするマクロモノマー(B’)」の生成と消費とを1H-NMRで追跡することで、ビニル単量体(B)由来のブロックの主鎖と分岐鎖が同じ構成単位からなることを確認する。
すなわち、マクロモノマー(B’)が消費されブロック共重合体に取り込まれる際には、ビニル単量体(B)を構成単位とするブロックの主鎖に、分岐鎖として取り込まれる。従ってこれを検知すれば、ブロック共重合体の主鎖であるビニル単量体(B)と、分岐鎖であるマクロモノマー(B’)由来のビニル単量体(B)とは構成単位が同じであり、主鎖と分岐鎖が同じ構成単位からなることが確認できる。
【0115】
[略称]
本実施例における略称は、以下のとおりである。
<マクロモノマー(A)>
ELVACITE:PMMA系マクロモノマー(ルーサイトインターナショナル社製、ELVACITE 1010、Mn=3,900)
【0116】
<ビニル単量体(B)>
BA:n-ブチルアクリレート(東京化成工業社製)
St:スチレン(東京化成工業社製)
【0117】
<有機ヨウ素化合物(C)>
CP-I:2-ヨード-2-シアノプロパン(東京化成工業社製)
【0118】
<アゾ系ラジカル重合開始剤(E)>
AIBN:2,2’-アゾビス(イソブチロニトリル)(東京化成工業社製)
V-40:1,1’-アゾビス(シクロヘキサン-1-カルボニトリル)(富士フイルム和光純薬社製)
V-65:2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)(富士フイルム和光純薬社製)
【0119】
<ヨウ素>
I2:ヨウ素(東京化成工業社製)
【0120】
<触媒(D)>
BNI:テトラ-n-ブチルアンモニウムヨージド(東京化成工業社製)
ONI:テトラ-n-オクチルアンモニウムヨージド(東京化成工業社製)
DPM:ジフェニルメタン(東京化成工業社製)
DEPh:ジエチルフォスファイト(東京化成工業社製)
【0121】
<その他(非アゾ系ラジカル重合開始剤)>
BPO:過酸化ベンゾイル(東京化成工業社製)
【0122】
[10時間半減期温度T10]
アゾ系ラジカル重合開始剤(E)(AIBN、V-40、V-65)の10時間半減期温度を表1に示す。
【0123】
【0124】
[実施例1]
マクロモノマー(A)、ビニル単量体(B)、アゾ系ラジカル重合開始剤(E)、ヨウ素及び触媒(D)を表2に示す組成で重合性組成物を調製した。前記重合性組成物をガラス製反応容器に移し、気相をアルゴンガスで置換した後、撹拌しながら重合温度110℃、重合時間24時間で反応させてブロック共重合体組成物を得た。
なお、反応系内でアゾ系ラジカル重合開始剤(E)とヨウ素が反応して有機ヨウ素化合物(C)が生成していると考えられる。以下の実施例においても同様である。
【0125】
[実施例2~9]
重合性組成物の組成を表2に示す組成とした以外は実施例1と同様にしてブロック共重合体組成物を得た。
【0126】
[実施例10]
重合性組成物の組成を表2に示す組成とし、重合温度を80℃、重合時間を6時間に変更した以外は実施例1と同様にしてブロック共重合体組成物を得た。
【0127】
[比較例1、2]
重合性組成物の組成を表2に示す組成とした以外は実施例1と同様にしてブロック共重合体組成物を得た。
【0128】
[比較例3]
重合性組成物の組成を表2に示す組成とし、重合温度を80℃、重合時間を4時間に変更した以外は実施例1と同様にしてブロック共重合体組成物を得た。
【0129】
各例のブロック共重合体組成物の数平均分子量Mn、分子量分布Mw/Mn及び単量体転化率の測定結果を表2に示す。表2における単量体転化率の欄の「>99」は99%超を意味する。
【0130】
【0131】
[実施例11]
マクロモノマー(A)、ビニル単量体(B)、アゾ系ラジカル重合開始剤(E)及びヨウ素を表3に示す組成で溶解させて重合性組成物を調製した。前記重合性組成物をガラス製反応容器に移し、気相を窒素ガスで置換した後、撹拌させながら表3に示す重合温度及び重合時間で重合反応させてブロック共重合体組成物を得た。
なお、反応系内でアゾ系ラジカル重合開始剤(E)とヨウ素が反応して有機ヨウ素化合物(C)が生成していると考えられる。以下の実施例においても同様である。
【0132】
[実施例12~29]
重合性組成物の組成、重合温度及び重合時間を表3及び表4に示すようにした以外は実施例12と同様にしてブロック共重合体組成物を得た。
【0133】
[比較例4~6]
重合性組成物の組成、重合温度及び重合時間を表4に示すようにした以外は実施例12と同様にしてブロック共重合体組成物を得た。
各例のブロック共重合体組成物の数平均分子量Mn、分子量分布Mw/Mn及び単量体転化率の測定結果を表3及び表4に示す。表4における単量体転化率の欄の「>99」は99%超を意味する。
【0134】
【0135】
【0136】
次に、実施例4、9及び比較例1で得たブロック共重合体組成物に含まれるブロック共重合体について、Mark-Houwink-Sakuradaプロット)の傾きから求めた指数項aを表5に示す。
また実施例4、9の重合反応中の「マクロモノマー(A)」及び「ビニル単量体(B)を構成単位とするマクロモノマー(B’)」の量を時間追跡した結果を表6に示す。
【0137】
【0138】
【0139】
表5から、実施例4、9及び比較例1のブロック共重合体組成物は、指数項aが0.7以下であり、典型的な柔軟鎖を有する直鎖状重合体(a>0.7)よりもaの値が小さく、このブロック共重合体組成物に含まれるブロック共重合体が分岐構造を有していることが示される。即ちこれらのブロック共重合体組成物は、少なくとも一つのブロックが分岐構造を有するブロック共重合体を主成分として含む。比較例1はaが実施例4及び9よりも小さく、分岐がより多いことが示唆された。実施例4、9と同様に製造した他の実施例についても、同様に、ブロック共重合体組成物に含まれるブロック共重合体が分岐構造を有していると考えられる。
【0140】
また、実施例4及び9のブロック共重合体組成物について13C-NMR測定を行ったところ、4級炭素隣接メチン基が検出(38~41ppm)され、これらの組成物に含まれるブロック共重合体は少なくとも一つのブロックが分岐構造を有することが確認できた。また実施例4、9のいずれも、4級炭素隣接メチン基のピーク強度から、平均してブロック共重合体1分子あたり4本の分岐鎖を有していることが確認できた。実施例4、9と同様に製造した他の実施例についても、同様にブロック共重合体組成物に含まれるブロック共重合体が少なくとも一つのブロックが分岐構造を有し、また2~7本程度の分岐鎖を有していると考えられる。
【0141】
さらに表6に示すように、重合過程におけるビニル単量体(B)由来の構成単位を有するマクロモノマー(B’)の生成及び消費が確認できた。即ち、実施例4、9のブロック共重合体組成物に含まれるブロック共重合体は、ビニル単量体(B)由来の構成単位を有するブロックに分岐構造を有し、その主鎖と分岐鎖のいずれもがビニル単量体(B)由来の構成単位からなるので、主鎖と分岐鎖が同じ構成単位であることがわかる。実施例4、9と同様に製造した他の実施例についても、同様にビニル単量体(B)由来の構成単位を有するブロックに分岐構造を有し、前記ブロックは主鎖と分岐鎖が同じ構成単位であると考えられる。
【0142】
表2~4より、各実施例のブロック共重合体組成物はいずれも分子量分布Mw/Mnが適度な範囲(1.5~3.4)にあることが分かる。また、数平均分子量Mnがある程度高いと単量体転化率も高い。
本実施例により得られたブロック共重合体組成物は、相構造が高度に制御され、かつ良好な溶解性及び溶融粘度を示し、樹脂添加剤、分散剤、塗料用組成物、リソグラフィー用重合体等に使用できる。すなわち本発明のブロック共重合体組成物の効果が実施例により裏付けられた。
【0143】
一方、比較例1、3~6で得られたブロック共重合体組成物は分子量分布Mw/Mnが大きく、充分に制御できていなかった。比較例1に示す共重合体組成物は、表5から分岐構造の形成が示唆されるが実施例に比べてaが小さく分岐が多く、Mw/Mnが大きいため相構造が制御しにくく、分散剤や樹脂添加剤等の用途には好ましくない。
比較例2は重合が進行せず、ブロック共重合体組成物が得られなかった。