(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-13
(45)【発行日】2023-03-22
(54)【発明の名称】コンクリート構造物の耐荷性能の評価方法
(51)【国際特許分類】
E01D 19/12 20060101AFI20230314BHJP
G06T 7/00 20170101ALI20230314BHJP
【FI】
E01D19/12
G06T7/00 610B
(21)【出願番号】P 2020047714
(22)【出願日】2020-03-18
【審査請求日】2021-11-09
(73)【特許権者】
【識別番号】396007890
【氏名又は名称】大日本コンサルタント株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】592161372
【氏名又は名称】NSW株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000107044
【氏名又は名称】ショーボンド建設株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】504137912
【氏名又は名称】国立大学法人 東京大学
(74)【代理人】
【識別番号】100107375
【氏名又は名称】武田 明広
(72)【発明者】
【氏名】横山 広
(72)【発明者】
【氏名】野村 貴律
(72)【発明者】
【氏名】安東 祐樹
(72)【発明者】
【氏名】長井 宏平
【審査官】柿原 巧弥
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-035528(JP,A)
【文献】特開2018-185552(JP,A)
【文献】特開2019-194562(JP,A)
【文献】特開2017-211314(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01D 19/12
G06T 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
評価対象となるコンクリート構造物において、コンクリート表面から内部へ向かって発生したひび割れの縁部の一部が破損して、コンクリート小片が欠落することによりコンクリート表面に出現した角欠けを計測することによって取得した角欠け個数の計測データを、
評価対象となるコンクリート構造物に適用された仕様に準じた供試体に対して試験を行って取得した、供試体における角欠け個数と耐荷性能との関係を示す基準データと比較対照することにより、コンクリート構造物の耐荷性能を評価することを特徴とする、コンクリート構造物の耐荷性能の評価方法。
【請求項2】
供試体のコンクリート表面をデジタルカメラで撮影し、取得した画像データに含まれる角欠けの画像を、画像セグメンテーション用のAI解析アルゴリズムを用いたAI画像処理によって検出し、角欠け個数の基準データを自動的に取得することを特徴とする、請求項
1に記載のコンクリート構造物の耐荷性能の評価方法。
【請求項3】
評価対象となるコンクリート構造物のコンクリート表面をデジタルカメラで撮影し、取得した画像データに含まれる角欠けの画像を、画像セグメンテーション用のAI解析アルゴリズムを用いたAI画像処理によって検出し、角欠け個数の計測データを自動的に取得することを特徴とする、請求項1
又は請求項2に記載のコンクリート構造物の耐荷性能の評価方法。
【請求項4】
AI画像処理に際し、予め取得した角欠け画像のサンプルデータを教師データとして利用することを特徴とする、請求項
2又は請求項
3に記載のコンクリート構造物の耐荷性能の評価方法。
【請求項5】
評価対象となるコンクリート構造物において出現した角欠けを計測することによって取得した角欠け個数、及び、角欠けの分布範囲の計測データを、
評価対象となるコンクリート構造物に適用された仕様に準じた供試体に対して試験を行って取得した、供試体における角欠け個数と耐荷性能との関係を示す基準データ、及び、
前記供試体における角欠けの分布範囲と耐荷性能との関係を示す基準データと比較対照することにより、コンクリート構造物の耐荷性能を評価することを特徴とする、請求項1~
4のいずれかに記載のコンクリート構造物の耐荷性能の評価方法。
【請求項6】
評価対象となるコンクリート構造物において出現した角欠けを計測することによって取得した角欠け個数、角欠けの総面積、及び、角欠けの分布範囲の計測データを、
評価対象となるコンクリート構造物に適用された仕様に準じた供試体に対して試験を行って取得した、供試体における角欠け個数と耐荷性能との関係を示す基準データ、
前記供試体における角欠けの総面積と耐荷性能との関係を示す基準データ、及び、
前記供試体における角欠けの分布範囲と耐荷性能との関係を示す基準データと比較対照することにより、コンクリート構造物の耐荷性能を評価することを特徴とする、請求項1~
4のいずれかに記載のコンクリート構造物の耐荷性能の評価方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリート構造物、特に、鉄筋コンクリート(RC)構造物(例えば、RC床版)の耐荷性能(損傷度、残存寿命等)を評価(推定、予測)する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
道路橋のRC床版は、車両の通行等によって次第に疲労し、初期段階において床版の下面にひび割れが発生する。疲労の進行に伴ってこのひび割れが発達すると、床版の変位量が増加して、最終的には陥没破壊に至る。このため、RC床版を用いた道路橋を適切に維持管理するためには、定期点検によって床版の疲労状況を把握し、破壊に至る前のなるべく早い段階において、床版の疲労寿命を予測することが重要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来、床版の耐荷性能の評価は、定期点検によって得られる損傷度評価に加え、その後の詳細調査で計測した床版のたわみ量やひび割れ密度に基づいて行われているが、この従来の点検ならびに詳細調査方法及び評価方法には、次のような問題がある。
【0005】
床版のたわみ量を計測して耐荷性能を評価するという方法は、床版の下側に足場を設置して計測機器を設置し、路面上(床版上)において荷重車を走行(又は停止)させてたわみ量を計測するという、非常に大掛かりな点検作業が必要となるほか、相当な費用が掛かるという問題がある。また、評価に際しては、点検によって取得したたわみ量のデータを、諸元に基づいて想定されるたわみ量と比較して、計測時点での損傷度や残存寿命を推定することになるが、膨大な検討作業が必要となり、完了までに長期間を要するという問題がある。
【0006】
また、輪荷重走行試験等によって得られた知見によると、床版の疲労劣化プロセスにおけるたわみ量やひび割れ密度は、初期段階から中期にかけて比較的緩やかな勾配で安定的に増加し、最終段階で増加傾向が変化(急増)して、破壊に至るという傾向が認められるが、この変化(急増)は、破壊に至る直前の段階で出現する場合が多く、従って、残存寿命を予測するための判断材料として有効に利用することは困難である。つまり、損傷対策を講じるための十分な時間を確保できるように、できるだけ早い段階(終局の前の段階)で、残存寿命を予測することが求められるが、たわみ量やひび割れ密度を計測することによっては、残存寿命を早期に予測することは困難である。
【0007】
本発明は、このような従来技術における問題を解決しようとするものであって、コンクリート構造物の耐荷性能を、より簡便な方法で効率良く、より早い段階で評価することができる、コンクリート構造物の耐荷性能の評価方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係るコンクリート構造物の耐荷性能の評価方法は、コンクリート構造物において、コンクリート表面から内部へ向かって発生したひび割れの縁部の一部が破損して、コンクリート小片が欠落することによりコンクリート表面に出現した角欠けを計測することによって取得した角欠け個数の計測データを、角欠け個数と耐荷性能との関係を示す基準データと比較対照することにより、コンクリート構造物の耐荷性能を評価することを特徴としている。
【0009】
尚、この評価方法においては、計測データと比較対照する基準データとして、評価対象となるコンクリート構造物に適用された仕様に準じた供試体に対して試験を行い、供試体において発生した角欠け個数のデータを使用することが好ましい。
【0010】
また、供試体のコンクリート表面をデジタルカメラで撮影し、取得した画像データに含まれる角欠けの画像を、画像セグメンテーション用のAI解析アルゴリズムを用いたAI画像処理によって検出し、角欠け個数の基準データを自動的に取得することが好ましく、また、評価対象となるコンクリート構造物の角欠け個数の計測データについても、コンクリート表面をデジタルカメラで撮影して取得した画像データに含まれる角欠けの画像を、画像セグメンテーション用のAI解析アルゴリズムを用いたAI画像処理によって検出して、自動的に取得することが好ましい。
【0011】
更に、AI画像処理に際しては、予め取得した角欠け画像のサンプルデータを教師データとして利用することが好ましい。
【0012】
また、評価対象となるコンクリート構造物において出現した角欠けを計測することによって取得した角欠け個数、及び、角欠けの分布範囲の計測データを、角欠け個数と耐荷性能との関係を示す基準データ、及び、角欠けの分布範囲と耐荷性能との関係を示す基準データと比較対照することにより、コンクリート構造物の耐荷性能を評価することもでき、更に、評価対象となるコンクリート構造物において出現した角欠けを計測することによって取得した角欠け個数、角欠けの総面積、及び、角欠けの分布範囲の計測データを、角欠け個数と耐荷性能との関係を示す基準データ、角欠けの総面積と耐荷性能との関係を示す基準データ、及び、角欠けの分布範囲と耐荷性能との関係を示す基準データと比較対照することにより、コンクリート構造物の耐荷性能を評価することもできる。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る耐荷性能の評価方法によれば、RC床版等のコンクリート構造物の耐荷性能の評価(損傷度、残存寿命等の予測)を、従来方法よりも簡便に行うことができ、その結果、対策検討期間を短縮し、経費を大幅に削減することができ、維持管理の効率化に貢献することができる。また、たわみ量やひび割れ密度を計測する従来方法よりも、早い段階で残存寿命を予測することができ、損傷対策を講じるための十分な時間を確保することができる。
【0014】
また、評価対象となるコンクリート構造物のコンクリート表面を撮影して得た画像データに対し、AI画像認識技術を適用して角欠けの検出を行った場合、極めて効率的に角欠け個数の計測データを取得することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】
図1は、一般的なRC床版1における疲労劣化プロセスの説明図であって、初期段階においてひび割れ3が発生したRC床版1の断面図である。
【
図2】
図2は、一般的なRC床版1における疲労劣化プロセスの説明図であって、ひび割れ3が上面付近まで進展したRC床版1の断面図である。
【
図3】
図3は、一般的なRC床版1における疲労劣化プロセスの説明図であって、ひび割れ縁部3aが破損して「角欠け」が発生する状況を示すRC床版1の拡大断面図である。
【
図4】
図4は、供試体Sに対して輪荷重走行試験を行って計測した角欠け個数(個/m
2)を示すグラフである。
【
図5】
図5は、供試体Hに対して輪荷重走行試験を行って計測した角欠け個数(個/m
2)を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明に係るコンクリート構造物の耐荷性能の評価方法は、物体力に対して表面力が大きく作用する板構造のコンクリート構造物(特にRC構造物、例えば道路橋のRC床版)や、捻りを受けた際に表面力が作用する梁構造のコンクリート構造物等を対象として実施することができる。ここでは、道路橋のRC床版を対象として、その耐荷性能(損傷度、残存寿命等)を評価する方法を、本発明の実施形態として説明する。
【0017】
本実施形態に係る耐荷性能の評価方法は、評価対象となるRC床版の下面において発生した「角欠け」の個数を計測し、その計測値(取得した角欠け個数の計測データ)に基づいて、RC床版の耐荷性能を評価することを特徴とするものである。
【0018】
「角欠け」とは、コンクリート表面から内部へ向かって発生したひび割れの縁部の一部が破損して、破片(コンクリート小片)が欠落することにより、コンクリート表面において欠損が出現する現象、及び、この現象によって生じた欠損部分を意味する。RC床版における角欠けは、RC床版の疲労劣化プロセスにおいて、コンクリートのひび割れ面同士が局所的に接触することによって生じるものと推察される。
【0019】
より詳細には、
図1に示すようにRC床版1は、疲労劣化プロセスの初期段階において、輪荷重の作用(車輪2の通行)によって下面1a側にひび割れ3(曲げひび割れ)が発生する。このひび割れ3は、まずRC床版1の横断方向へ延び、次いで、劣化の進行に伴って橋軸方向へも延びていくことになる(つまり、格子状に発達する)。輪荷重の繰り返し載荷が継続することによって、ひび割れ3がRC床版1の上面付近まで進展すると、
図2に示すように、輪荷重の移動載荷に伴い、ひび割れ3の発生部位において上下動(鉛直方向へのずれ)が生じるようになる。
【0020】
RC床版1においてこのような上下動が生じると、コンクリートのひび割れ面同士が局所的に接触し、相互に擦り磨きされるような状態となって梁状化する。そして、
図3に示すように、ひび割れ縁部3aの一部が破損し、数mm程度のコンクリート小片3bが剥落して、コンクリート表面(RC床版の下面1a)において欠損が発生する。RC床版における角欠けは、このようにして出現すると推察される。
【0021】
本発明は、RC床版において生じる角欠けの個数と、RC床版の耐荷性能との関係に着目し、特定の仕様のRC床版について、角欠けの個数と耐荷性能との関係を適切に把握したうえで、当該仕様のRC床版において生じている角欠けの個数を計測することにより、その耐荷性能を評価しようとするものである。
【0022】
具体的には、本発明の適用対象となり得るRC床版としては、昭和39年鋼道路橋設計示方書、昭和47年道路橋示方書、及び、平成8年道路橋示方書に示される仕様のものなどが想定される。これらの仕様に準じた各供試体に対して輪荷重走行試験等を行って、仕様毎に、角欠け個数と耐荷性能との関係を示す基準データを取得しておき、評価対象となるRC床版において計測された角欠け個数(計測データ)を、それらの基準データと比較対照して、当該RC床版の耐荷性能を評価する。
【0023】
図4は、供試体S(「昭和39年鋼道路橋設計示方書」に準じた仕様(厚さ、鉄筋量等)のRC床版の供試体)に対して輪荷重走行試験(荷重増加型)を行って経時的に取得した基準データ(供試体Sの下面において発生した角欠け個数)を示すグラフである。
図4のグラフから、走行回数15.8万回で角欠け個数の増加傾向が変化(急増)していること、及び、この時点での角欠け個数が120個/m
2程度であることが読み取れる。尚、この輪荷重走行試験において、供試体Sは、走行回数200,975回目で疲労破壊に至った。
【0024】
図5は、供試体H(「平成8年道路橋示方書」に準じた仕様のRC床版の供試体)に対して輪荷重走行試験(荷重増加型)を行って経時的に取得した基準データ(供試体Hの下面において発生した角欠け個数)を示すグラフである。
図5のグラフから、走行回数37万回付近で角欠け個数の増加傾向が変化(急増)していること、及び、この時点での角欠け個数が100個/m
2程度であることが読み取れる。尚、この輪荷重走行試験において、供試体Hは、走行回数432,087回目で疲労破壊に至った。
【0025】
評価対象となるRC床版が、「昭和39年鋼道路橋設計示方書」に従った仕様のものである場合、当該RC床版において計測した角欠け個数(計測データ)を、
図4に示すデータや、同様の試験を繰り返して蓄積した多数のデータ(基準データ)と比較することにより(或いは、評価対象となるRC床版が、「平成8年道路橋示方書」に従った仕様のものである場合には、
図5に示すデータ等の基準データと比較することにより)、当該RC床版の耐荷性能を評価することができる。
【0026】
より具体的には、計測時点における当該RC床版の損傷度を的確に推定し、残存寿命(供用限界までの残存年数或いは月数)を予測することができる。また、RC床版の疲労劣化プロセスにおいて、角欠け個数の急増(増加傾向の変化)は、たわみ量やひび割れ密度の急増よりも先に出現することになるため、本発明のように角欠け個数に着目して評価を行うことにより、より早い段階でRC床版の残存寿命を予測することができる。
【0027】
尚、RC床版又は供試体の下面における角欠け個数の計測は、作業者の目視によって行うこともできるが、RC床版又は供試体の下面(コンクリート表面)を下方側からデジタルカメラで撮影し、取得した画像データにAI画像認識技術を適用して、取得した画像データに含まれる角欠けの画像を検出し、角欠け個数の計測データ又は基準データを自動的に取得することが有効である。
【0028】
AI画像処理(角欠け画像の検出)には、画像セグメンテーション用のAI解析アルゴリズム、例えば、U-Net、FCN、SegNet、DeepLab、RefineNet、PSPNet、Gated-SCNN等のモデルを好適に利用することができる。これらのうちU-Netは、元画像から局所的特徴を抽出し、圧縮するエンコーダと、圧縮された情報から元画像を復元するデコーダとを有し、圧縮された局所的特徴からデコーダによって元画像を復元する際に、エンコーダが保有する元画像の位置情報をスキップコネクションによって結合し、元画像の情報を有効に活用するという特徴を有しており、本発明においてこのモデルを利用した場合、RC床版又は供試体の下面の画像データに含まれる角欠け画像を十分な精度で検出することができ、極めて効率的に角欠け個数を計測することができる。
【0029】
尚、AI画像処理に際しては、前記供試体S又は供試体Hに対する輪荷重走行試験において取得した角欠け画像やひび割れ画像のデータ、或いは、予め取得しておいた角欠け画像等のサンプルデータを、教師データとして利用することができる。また、基準データを取得するために、輪荷重走行試験において用いる供試体の下面を下方側からデジタルカメラで撮影する際には、AI画像処理における角欠けの認識率を向上させるために、供試体の下面を、コンクリート内部の色に対して明度差の大きい色に塗装することが好ましい。
【0030】
また、道路橋RC床版の下面における角欠けは、通行車両の車輪の軌跡に沿った位置から発生し始め、その後、劣化の進行に従って次第に周囲へ拡がっていき、RC床版が陥没破壊に至る寸前においては、角欠けの分布範囲が支持桁付近まで拡がることが判明している。従って、角欠け個数だけではなく、その分布範囲を把握して、つまり、角欠けの個数と分布範囲の計測データに基づいて、評価対象となるRC床版の耐荷性能を評価することも有効である。
【0031】
この場合も、評価対象となり得るRC床版の各種の仕様に対応した複数種類の供試体を製作して、輪荷重走行試験等を実施することにより、RC床版の仕様毎に、角欠けの分布範囲と耐荷性能との関係を予め適切に把握しておき(基準データを取得しておき)、評価対象となるRC床版から取得した角欠けの分布範囲の計測データと、比較対照することが好ましい。
【0032】
更に、評価対象となるRC床版において生じている角欠けの総面積を計算し、角欠けの個数、総面積、及び、分布範囲の計測データに基づいて、耐荷性能を評価することもできる。尚、角欠けの総面積の計測データは、RC床版の下面を撮影して取得した画像データに含まれている角欠け画像のピクセル数をカウントすることによって得ることもできるし、或いは、RC床版の下面の画像データから読み取った角欠けの幅と長さの寸法から計算して得ることもできる。
【0033】
この場合も、評価対象となり得るRC床版の各種の仕様に対応した複数種類の供試体を製作して、輪荷重走行試験等を実施することにより、RC床版の仕様毎に、角欠けの総面積と耐荷性能との関係を予め適切に把握しておき(基準データを取得しておき)、評価対象となるRC床版から取得した角欠けの総面積の計測データと、比較対照することが好ましい。
【0034】
尚、評価対象となるRC床版における角欠けの計測時と、比較対照される基準データの取得時のいずれにおいても、角欠けの大きさに関して同一の基準(角欠けの大きさの定義)を適用することが必要である。例えば、径又は一辺が1mm以上の大きさの欠損部分を「角欠け」と定義して、輪荷重走行試験等において供試体に発生した欠損部分のうち、径又は一辺が1mm以上の大きさの欠損部分のみを「角欠け」としてカウントして基準データを取得した場合には、評価対象となるRC床版において発生した欠損部分のうち、径又は一辺が1mm以上の大きさの欠損部分のみを「角欠け」としてカウントして計測データとする。
【0035】
尚、この角欠けの大きさに関する基準(径又は一辺の下限値の定義)は、各種の条件(例えば、使用するデジタルカメラの解像度、角欠け画像の検出に用いるAI画像処理プログラムの検出能力等)に応じて、適宜決定することができる。
【符号の説明】
【0036】
1:RC床版、
1a:下面、
2:車輪、
3:ひび割れ、
3a:縁部、
3b:コンクリート小片、