(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-13
(45)【発行日】2023-03-22
(54)【発明の名称】硬化性組成物
(51)【国際特許分類】
C08G 59/50 20060101AFI20230314BHJP
【FI】
C08G59/50
(21)【出願番号】P 2018212248
(22)【出願日】2018-11-12
【審査請求日】2021-09-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000002901
【氏名又は名称】株式会社ダイセル
(73)【特許権者】
【識別番号】000125370
【氏名又は名称】学校法人東京理科大学
(74)【代理人】
【識別番号】110002239
【氏名又は名称】弁理士法人G-chemical
(72)【発明者】
【氏名】有光 晃二
(72)【発明者】
【氏名】尾坂 拓也
(72)【発明者】
【氏名】小畑 貴慎
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 弘世
【審査官】久保田 葵
(56)【参考文献】
【文献】特開昭61-195114(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第105082669(CN,A)
【文献】特表2002-504602(JP,A)
【文献】特表2002-501956(JP,A)
【文献】特表平11-508928(JP,A)
【文献】特表平07-501093(JP,A)
【文献】特開2014-54873(JP,A)
【文献】特開2003-176460(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第108948279(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第107722821(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 59/00 ~ 59/72
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記成分(A)と成分(B)とを含有し、成分(B)の含有量が成分(A)100重量部に対して
8.0~
30.0重量部であるアニオン硬化性組成物。
成分(A):脂環式エポキシ化合物
成分(B):イミダゾール
【請求項2】
脂環式エポキシ化合物が、下記式(i)で表される化合物である、請求項1に記載のアニオン硬化性組成物。
【化1】
(式中、Xは単結合又は連結基を示す)
【請求項3】
熱アニオン硬化性組成物である、請求項1又は2に記載のアニオン硬化性組成物。
【請求項4】
請求項1~3の何れか1項に記載のアニオン硬化性組成物を含有する接着剤。
【請求項5】
請求項1~3の何れか1項に記載のアニオン硬化性組成物の硬化物。
【請求項6】
請求項1~3の何れか1項に記載のアニオン硬化性組成物の硬化物を備える電子デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脂環式エポキシ化合物を含む硬化性組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、脂環式エポキシ化合物の硬化には酸無水物等の硬化剤や、スルホニウム塩系化合物やヨードニウム塩系化合物等の酸発生剤(若しくは、カチオン重合開始剤)が使用されてきた(例えば、特許文献1)。
【0003】
ここで、脂環式エポキシ化合物の硬化物は高硬度を有することが特徴であるが、脂環式エポキシ化合物を酸無水物により硬化させる場合は、脂環式エポキシ化合物に対してほぼ等量の酸無水物を添加するため、脂環式エポキシ化合物の含有割合が低下して、高硬度の硬化物が得られにくくなることが問題であった。
【0004】
一方、酸発生剤は脂環式エポキシ化合物の硬化性に優れ、触媒量の使用で、高硬度を有する硬化物を形成することができる。しかし、脂環式エポキシ化合物と酸発生剤を含有する組成物を、電子部品を基板に固定するための接着剤として使用する場合、酸発生剤により基板が腐食し易いことが問題であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って、本発明の目的は、基板の腐食性が低く、硬化により高硬度を有する硬化物を形成する組成物を提供することにある。
本発明の他の目的は、基板の腐食性が低く、硬化により高硬度を有する硬化物を形成する接着剤を提供することにある。
本発明の他の目的は、前記組成物の硬化物を備える電子デバイスを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者等は上記課題を解決するため鋭意検討した結果、イミダゾールは基板を腐食することが無く、且つ脂環式エポキシ化合物のアニオン重合を促進する効果に優れること、脂環式エポキシ化合物をイミダゾールにより硬化させると、高硬度を有する硬化物が得られることを見いだした。本発明はこれらの知見に基づいて完成させたものである。
【0008】
すなわち、本発明は下記成分(A)と成分(B)とを含有し、成分(B)の含有量が成分(A)100重量部に対して3.0~80.0重量部であるアニオン硬化性組成物を提供する。
成分(A):脂環式エポキシ化合物
成分(B):イミダゾール
【0009】
本発明は、また、脂環式エポキシ化合物が、下記式(i)で表される化合物である前記アニオン硬化性組成物を提供する。
【化1】
(式中、Xは単結合又は連結基を示す)
【0010】
本発明は、また、熱アニオン硬化性組成物である前記アニオン硬化性組成物を提供する。
【0011】
本発明は、また、前記アニオン硬化性組成物を含有する接着剤を提供する。
【0012】
本発明は、また、前記アニオン硬化性組成物の硬化物を提供する。
【0013】
本発明は、また、前記アニオン硬化性組成物の硬化物を備える電子デバイスを提供する。
【発明の効果】
【0014】
本発明の組成物は、基板の腐食性が低く、硬化性に優れ、硬化により高硬度を有する硬化物を形成することができる。そのため、本発明の組成物は接着剤、特に電子部品用接着剤として好適に使用することができる。
そして、電子部品が本発明の組成物によって基板に接着されてなる電子デバイスは、基板が腐食されることが無く、また、高硬度を有する硬化物で接着されているため、高い信頼性を有する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】実施例1で得られた硬化性組成物の塗膜の硬化物(硬化時間0分、10分、及び30分)のIR測定結果を示す図である。
【
図2】実施例2で得られた硬化性組成物のDSC測定結果を示す図である。
【
図3】実施例1、2、及び比較例1で得られた硬化性組成物の硬化時間と得られる硬化物の鉛筆硬度の関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
[硬化性組成物]
本発明に係る硬化性組成物は、成分(A)と成分(B)を少なくとも含有するアニオン硬化性組成物である。
【0017】
(成分(A):硬化性化合物)
本発明に係る硬化性組成物は、成分(A)として、若しくは硬化性化合物として、少なくとも脂環式エポキシ化合物を含む。
【0018】
(脂環式エポキシ化合物)
前記脂環式エポキシ化合物は、分子内に、1個以上の脂環と1個以上のエポキシ基(=オキシラン)とを有する化合物である。脂環式エポキシ化合物としては、例えば、以下の化合物が挙げられる。
(1)脂環を構成する隣接する2つの炭素原子と酸素原子とで構成されるエポキシ基(本明細書においては、「脂環エポキシ基」と称する場合がある。脂環エポキシ基には、例えば、シクロヘキセンオキシド基等が含まれる)を有する化合物
(2)脂環にエポキシ基が直接単結合で結合している化合物
(3)脂環及びグリシジルエーテル基を有する化合物(グリシジルエーテル型エポキシ化合物)
【0019】
上記(1)の脂環エポキシ基を有する化合物としては、例えば下記式(i)で表される化合物が挙げられる。
【化2】
【0020】
上記式(i)中、Xは単結合又は連結基(1以上の原子を有する二価の基)を示す。上記連結基としては、例えば、二価の炭化水素基、炭素-炭素二重結合の一部又は全部がエポキシ化されたアルケニレン基、カルボニル基、エーテル結合、エステル結合、カーボネート基、アミド基、及びこれらが複数個連結した基等が挙げられる。
【0021】
上記二価の炭化水素基としては、炭素数1~18の直鎖又は分岐鎖状のアルキレン基、炭素数3~18の二価の脂環式炭化水素基等が挙げられる。炭素数1~18の直鎖又は分岐鎖状のアルキレン基としては、例えば、メチレン基、メチルメチレン基、ジメチルメチレン基、エチレン基、プロピレン基、トリメチレン基等が挙げられる。炭素数3~18の二価の脂環式炭化水素基としては、例えば、1,2-シクロペンチレン基、1,3-シクロペンチレン基、シクロペンチリデン基、1,2-シクロヘキシレン基、1,3-シクロヘキシレン基、1,4-シクロヘキシレン基、シクロヘキシリデン基等のシクロアルキレン基(シクロアルキリデン基を含む)等が挙げられる。
【0022】
上記炭素-炭素二重結合の一部又は全部がエポキシ化されたアルケニレン基(「エポキシ化アルケニレン基」と称する場合がある)におけるアルケニレン基としては、例えば、ビニレン基、プロペニレン基、1-ブテニレン基、2-ブテニレン基、ブタジエニレン基、ペンテニレン基、ヘキセニレン基、ヘプテニレン基、オクテニレン基等の炭素数2~8の直鎖又は分岐鎖状のアルケニレン基等が挙げられる。特に、上記エポキシ化アルケニレン基としては、炭素-炭素二重結合の全部がエポキシ化されたアルケニレン基が好ましく、より好ましくは炭素-炭素二重結合の全部がエポキシ化された炭素数2~4のアルケニレン基である。
【0023】
上記式(i)中のシクロヘキセンオキシド基には置換基が1個又は2個以上結合していても良い。置換基としては、例えば、C1-4アルキル基、C1-4アルコキシ基等が挙げられる。
【0024】
上記式(i)で表される化合物の代表的な例としては、(3,4,3’,4’-ジエポキシ)ビシクロヘキシル、ビス(3,4-エポキシシクロヘキシルメチル)エーテル、1,2-エポキシ-1,2-ビス(3,4-エポキシシクロヘキサン-1-イル)エタン、2,2-ビス(3,4-エポキシシクロヘキサン-1-イル)プロパン、1,2-ビス(3,4-エポキシシクロヘキサン-1-イル)エタンや、下記式(i-1)~(i-10)で表される化合物等が挙げられる。尚、下記式(i-5)中のLは炭素数1~8のアルキレン基であり、なかでも、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、イソプロピレン基等の炭素数1~3の直鎖又は分岐鎖状のアルキレン基が好ましい。また、下記式(i-5)、(i-7)、(i-9)、(i-10)中のn
1~n
8は、それぞれ1~30の整数を示す。
【化3】
【化4】
【0025】
上述の(2)脂環にエポキシ基が直接単結合で結合している化合物としては、例えば、下記式(ii)で表される化合物等が挙げられる。
【化5】
【0026】
式(ii)中、R'は、p価のアルコールの構造式からp個の水酸基(-OH)を除いた基(p価の有機基)であり、p、n9はそれぞれ自然数を表す。p価のアルコール[R'(OH)p]としては、2,2-ビス(ヒドロキシメチル)-1-ブタノール等の多価アルコール(炭素数1~15の多価アルコール等)等が挙げられる。pは1~6が好ましく、n9は1~30が好ましい。pが2以上の場合、それぞれの[ ]内(外側の角括弧内)の基におけるn9は同一でもよく異なっていてもよい。上記式(ii)で表される化合物としては、具体的には、2,2-ビス(ヒドロキシメチル)-1-ブタノールの1,2-エポキシ-4-(2-オキシラニル)シクロヘキサン付加物[例えば、商品名「EHPE3150」((株)ダイセル製)等]等が挙げられる。
【0027】
上述の(3)の脂環及びグリシジルエーテル基を有する化合物としては、例えば、脂環式アルコール(特に、脂環式多価アルコール)のグリシジルエーテルが挙げられる。より詳しくは、例えば、2,2-ビス[4-(2,3-エポキシプロポキシ)シクロへキシル]プロパン、2,2-ビス[3,5-ジメチル-4-(2,3-エポキシプロポキシ)シクロへキシル]プロパンなどのビスフェノールA型エポキシ化合物を水素化した化合物(水素化ビスフェノールA型エポキシ化合物);ビス[o,o-(2,3-エポキシプロポキシ)シクロへキシル]メタン、ビス[o,p-(2,3-エポキシプロポキシ)シクロへキシル]メタン、ビス[p,p-(2,3-エポキシプロポキシ)シクロへキシル]メタン、ビス[3,5-ジメチル-4-(2,3-エポキシプロポキシ)シクロへキシル]メタンなどのビスフェノールF型エポキシ化合物を水素化した化合物(水素化ビスフェノールF型エポキシ化合物);水素化ビフェノール型エポキシ化合物;水素化フェノールノボラック型エポキシ化合物;水素化クレゾールノボラック型エポキシ化合物;ビスフェノールAの水素化クレゾールノボラック型エポキシ化合物;水素化ナフタレン型エポキシ化合物;トリスフェノールメタン型エポキシ化合物の水添物等が挙げられる。
【0028】
脂環式エポキシ化合物としては、なかでも、(1)脂環エポキシ基を有する化合物が好ましく、特に、上記式(i)で表される化合物が好ましい。
【0029】
(他の硬化性化合物)
成分(A)には、脂環式エポキシ化合物以外にも他の硬化性化合物(例えば、カチオン硬化性化合物(脂環式エポキシ化合物以外のエポキシ化合物、オキセタン化合物、ビニルエーテル化合物等)や、ラジカル硬化性化合物)が含まれていても良いが、成分(A)全量(100重量%)における、脂環式エポキシ化合物の含有量(2種以上含有する場合はその総量)の占める割合は、例えば50重量%以上、好ましくは60重量%以上、特に好ましくは70重量%以上、最も好ましくは80重量%以上、とりわけ好ましくは90重量%以上である。
【0030】
従って、成分(A)全量(100重量%)における、脂環式エポキシ化合物以外の硬化性化合物の含有量(2種以上含有する場合はその総量)の占める割合は、例えば50重量%以下、好ましくは40重量%以下、特に好ましくは30重量%以下、最も好ましくは20重量%以下、とりわけ好ましくは10重量%以下である。
【0031】
(成分(B):イミダゾール)
本発明に係る硬化性組成物は、成分(B)として、若しくは上記硬化性化合物の硬化触媒(特に、アニオン硬化触媒、若しくはアニオン重合開始剤)として、イミダゾールを含む。イミダゾールは求核試薬として上記成分(A)に作用することで、成分(A)のアニオン重合を開始させ、更に成分(A)のアニオン重合を促進する作用を発揮する。
【0032】
イミダゾールの含有量は、上記成分(A)(好ましくは、脂環式エポキシ化合物)100重量部に対して、3.0~80.0重量部であり、下限は、好ましくは5.0重量部、更に好ましくは8.0重量部、特に好ましくは10重量部、最も好ましくは15重量部である。また、上限は、好ましくは50.0重量部、特に好ましくは40.0重量部、最も好ましくは30.0重量部である。
【0033】
また、本発明に係る硬化性組成物には、イミダゾール以外にもイミダゾール誘導体(例えば、1-メチルイミダゾール等)を含有していても良いが、本発明に係る硬化性組成物に含まれる、イミダゾール環を有する化合物全量における、イミダゾールの占める割合は、例えば60重量%以上、好ましくは70重量%以上、特に好ましくは80重量%以上、最も好ましくは90重量%以上、とりわけ好ましくは95重量%以上である。
【0034】
従って、本発明に係る硬化性組成物に含まれる、イミダゾール環を有する化合物全量における、イミダゾール以外の化合物の占める割合は、例えば40重量%以下、好ましくは30重量%以下、特に好ましくは20重量%以下、最も好ましくは10重量%以下、とりわけ好ましくは5重量%以下である。
【0035】
(その他)
本発明に係る硬化性組成物は上記成分(A)、(B)以外にも他の成分を含有していてもよい。
【0036】
本発明に係る硬化性組成物は、上記成分(A)、(B)以外に、任意の成分として、例えば、充填材、絶縁材料、硬化助剤、溶剤、安定化剤、難燃剤、難燃助剤、シランカップリング剤、滑剤、可塑剤、離型剤、粘度調整剤、着色剤(染料、顔料等)、帯電防止剤、表面調整剤(レベリング剤、スリップ剤等)、艶消し剤、消泡剤、防腐剤等の慣用の添加剤を含んでいてもよい。これらの添加剤は1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて使用できる。
【0037】
本発明に係る硬化性組成物に含まれる不揮発分全量における、上記成分(A)、(B)以外の成分の含有量(2種以上含有する場合はその総量)は、例えば50重量%以下、好ましくは30重量%以下、特に好ましくは20重量%以下、最も好ましくは10重量%以下、とりわけ好ましくは5重量%以下、更に好ましくは1重量%以下である。
【0038】
本発明に係る硬化性組成物は酸無水物を含有していても良いが、酸無水物の含有量は、成分(A)100重量部に対して、例えば30重量部以下、好ましくは20重量部以下、特に好ましくは10重量部以下、最も好ましくは5重量部以下、とりわけ好ましくは1重量部以下である。
【0039】
本発明に係る硬化性組成物は酸発生剤(若しくは、カチオン重合開始剤)を含有していても良いが、酸発生剤(若しくは、カチオン重合開始剤)の含有量は、成分(A)100重量部に対して、例えば0.1重量部以下、好ましくは0.05重量部以下、特に好ましくは0.01重量部以下、最も好ましくは0.005重量部以下、とりわけ好ましくは0.001重量部以下である。そのため、本発明に係る硬化性組成物は基板の腐食性が低く、電子部品を基板に固定する用途に好適である。
【0040】
本発明に係る硬化性組成物は、成分(B)が求核試薬として、成分(A)に作用して成分(A)のアニオン重合反応を開始させ、更にアニオン重合反応を促進することにより成分(A)が硬化して(詳細には、成分(A)が三次元架橋構造体を形成して)、硬化物を形成することができる。尚、前記アニオン重合反応は、加熱処理を施すことによって促進される。
【0041】
加熱の手段としては、公知乃至慣用の手段を利用することができ、特に限定されない。加熱温度(硬化温度)は、例えば100~250℃、好ましくは100~200℃、特に好ましくは110~200℃である。尚、加熱温度は、硬化させる間、一定温度を保持しても良く、段階的又は連続的に変動させても良い。
【0042】
加熱時間(硬化時間)は、加熱温度に応じて適宜調整することができ、例えば0.5~10時間、好ましくは1~5時間である。
【0043】
本発明に係る硬化性組成物の硬化は、常圧下で行うこともできるし、減圧下又は加圧下で行うこともできる。また、上記硬化は、一段階で行うこともできるし、二段階以上の多段階に分けて行うこともできる。
【0044】
本発明に係る硬化性組成物の硬化物は高い硬化度を有する。尚、硬化物の硬化度は、例えばDSCにより発熱量を測定することで求められる。そして、本発明に係る硬化性組成物の硬化物は前記の通り高い硬化度を有するため硬度が高く、鉛筆硬度(JIS K 5600-5-4準拠)は、例えば2H以上、好ましくは2H~5Hである。
【0045】
<接着剤>
本発明に係る接着剤は、上記硬化性組成物を含有する。本発明に係る接着剤は上記硬化性組成物以外にも必要に応じて他の成分を含有しても良い。
【0046】
本発明に係る接着剤は上記構成を有し、酸発生剤を含有する必要がない。そのため、酸発生剤によって引き起こされる基板腐食の問題を回避することができる。また、本発明に係る接着剤の硬化物は高硬度を有する。そのため、接着信頼性が高い。
【0047】
従って、本発明に係る接着剤は、電子部品を基板に接着する用途、すなわち電子部品用接着剤として好適に使用することができる。
【0048】
<電子デバイス>
本発明に係る電子デバイスは、上記硬化性組成物の硬化物を備えることを特徴とする。
【0049】
例えば、電子部品が、本発明に係る硬化性組成物の硬化物によって基板に接着固定されてなる電子デバイスは、基板の腐食が無く、また、電子部品と基板との接着信頼性が高いので、良好な性能を長期に亘って安定的に維持することができる。
【実施例】
【0050】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
【0051】
実施例1
サンプル瓶に、セロキサイド2021P(=3,4-エポキシシクロヘキシルメチル(3,4-エポキシ)シクロヘキサンカルボキシレート)10g、及びイミダゾール1.0gを入れ、更にスターラーチップを入れて、スターラーで撹拌した。これにより硬化組成物を得た。
【0052】
得られた硬化性組成物3.15gに、クロロホルム10gを加え、撹拌してサンプルを得た。
得られたサンプルをシリコンウェハに数滴乗せ、スピンコーター(1000rpm×30秒)を用いて薄膜化し、更に60℃で3分間プリベイクすることによりクロロホルムをほぼ蒸発させて、塗膜を得た。
得られた塗膜のIRスペクトル(=赤外線吸収スペクトル)測定を行った。また、得られた塗膜を120℃で10分間、又は30分間加熱後の塗膜についてもIRスペクトル測定を行った。結果を
図1に示す。
図1より、加熱時間が長くなるにつれて、910cm
-1に存するエポキシ基のピークが減少していた。このことから、加熱により、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル(3,4-エポキシ)シクロヘキサンカルボキシレートの重合反応が進行することが確認できた。
【0053】
実施例2~3(実施例3は参考例とする)、比較例1~7
表1に記載の通りに処方を変更した以外は実施例1と同様にして、硬化性組成物を得た。
【0054】
実施例及び比較例で得られた硬化性組成物の総発熱量、及び発熱ピーク温度(第1発熱ピーク温度:エポキシ化合物の初期重合反応による発熱のピーク温度、第2発熱ピーク温度:初期重合反応による発熱によって、促進されたエポキシ化合物の重合反応による発熱のピーク温度)を、DSC(型番「DSC6200」、セイコーインスツルメンツ(株)製)を使用し、昇温条件5℃/分、30~300℃の範囲で測定した。実施例2で得られた硬化性組成物のDSC測定結果を
図2に示す。
【0055】
実施例及び比較例で得られた硬化性組成物をガラス板に数滴乗せ、スピンコーター(1000rpm×30秒)を用いて薄膜化した。
薄膜化した硬化性組成物を60℃で3分間プリベイクして溶媒をほぼ蒸発させた後、120℃で60分間ポストベイクを行って硬化物を得た。
得られた硬化物について電動鉛筆引っかき硬度試験機(No.553-M、安田精機製作所製)を用いて鉛筆硬度を求めた。尚、硬化性組成物が未硬化の場合は、鉛筆硬度測定を行わなかった。
【0056】
また、実施例1、2、及び比較例1で得られた硬化性組成物について、ポストベイク時間を0分、10分、30分、45分、又は60分に変更した以外は前記と同様にして、鉛筆硬度を測定した。結果を
図3に示す。
【0057】
【0058】
表中の略号を以下に説明する。
セロキサイド2021P:3,4-エポキシシクロヘキシルメチル(3,4-エポキシ)シクロヘキサンカルボキシレート、商品名「セロキサイド2021P」、(株)ダイセル製
jER828:ビスフェノールAジグリシジルエーテル、三菱化学(株)製
SI-100L:酸発生剤、芳香族スルホニウム塩、商品名「サンエイド SI-100L」、三新化学工業(株)製