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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-13
(45)【発行日】2023-03-22
(54)【発明の名称】共役ジエン系ゴムの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08C 19/25 20060101AFI20230314BHJP
   B60C 1/00 20060101ALI20230314BHJP
   C08F 36/04 20060101ALI20230314BHJP
   C08G 81/02 20060101ALI20230314BHJP
   C08K 3/36 20060101ALI20230314BHJP
   C08L 15/00 20060101ALI20230314BHJP
   C08L 87/00 20060101ALI20230314BHJP
【FI】
C08C19/25
B60C1/00 Z
C08F36/04
C08G81/02
C08K3/36
C08L15/00
C08L87/00
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2018184965
(22)【出願日】2018-09-28
(65)【公開番号】P2020055891
(43)【公開日】2020-04-09
【審査請求日】2021-09-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000229117
【氏名又は名称】日本ゼオン株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】317015928
【氏名又は名称】ZSエラストマー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000486
【氏名又は名称】弁理士法人とこしえ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】坂田 雅英
【審査官】佐藤 貴浩
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-119104(JP,A)
【文献】特開2009-084413(JP,A)
【文献】特開2016-089118(JP,A)
【文献】特開2017-082235(JP,A)
【文献】国際公開第2018/025998(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/092716(WO,A1)
【文献】特開2018-172548(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 6/00-246/00
C08C19/00- 19/44
C08L 1/00-101/14
B60C 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
不活性溶媒中で、重合開始剤を用いて、共役ジエン化合物を含む単量体を重合し、活性末端を有する共役ジエン系重合体鎖を得る第1工程と、
前記活性末端を有する共役ジエン系重合体鎖と、シロキサン化合物と、有機リチウム化合物とを反応させる第2工程とを備える共役ジエン系ゴムの製造方法。
【請求項2】
前記第2工程において、前記活性末端を有する共役ジエン系重合体鎖と、前記シロキサン化合物とを混合した後、前記有機リチウム化合物を混合することで、前記活性末端を有する共役ジエン系重合体鎖と、シロキサン化合物と、有機リチウム化合物との反応を行う請求項1に記載の共役ジエン系ゴムの製造方法。
【請求項3】
前記第2工程において、前記活性末端を有する共役ジエン系重合体鎖と、前記有機リチウム化合物とを混合した後、前記シロキサン化合物を混合することで、前記活性末端を有する共役ジエン系重合体鎖と、シロキサン化合物と、有機リチウム化合物との反応を行う請求項1に記載の共役ジエン系ゴムの製造方法。
【請求項4】
前記シロキサン化合物が、ポリオルガノシロキサン化合物である請求項1~3のいずれかに記載の共役ジエン系ゴムの製造方法。
【請求項5】
前記ポリオルガノシロキサン化合物が、下記一般式(1)で表されるポリオルガノシロキサンである請求項4に記載の共役ジエン系ゴムの製造方法。
【化7】
(上記一般式(1)中、R~Rは、炭素数1~6のアルキル基、または炭素数6~12のアリール基であり、これらは互いに同一であっても相違していてもよい。XおよびXは、炭素数1~6のアルキル基、炭素数6~12のアリール基、炭素数1~5のアルコキシ基、および、エポキシ基を含有する炭素数4~12の基からなる群より選ばれるいずれかの基であり、これらは互いに同一であっても相違していてもよい。Xは、炭素数1~5のアルコキシ基、またはエポキシ基を含有する炭素数4~12の基であり、Xが複数あるときは、それらは互いに同一であっても相違していてもよい。Xは、2~20のアルキレングリコールの繰返し単位を含有する基であり、Xが複数あるときは、それらは互いに同一であっても相違していてもよい。mは0~200の整数、nは0~200の整数、kは0~200の整数であり、m+n+kは1以上である。)
【請求項6】
前記有機リチウム化合物が、n-ブチルリチウムである請求項1~5のいずれかに記載の共役ジエン系ゴムの製造方法。
【請求項7】
請求項1~6のいずれかに記載の製造方法により共役ジエン系ゴムを得て、得られた共役ジエン系ゴムにシリカを添加するゴム組成物の製造方法。
【請求項8】
架橋剤をさらに添加する請求項7に記載のゴム組成物の製造方法
【請求項9】
請求項8に記載の製造方法によりゴム組成物を得て、得られたゴム組成物を架橋するゴム架橋物の製造方法。
【請求項10】
請求項8に記載の製造方法によりゴム組成物を得て、得られたゴム組成物を架橋することにより、該ゴム組成物のゴム架橋物を含むタイヤを製造するタイヤの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、共役ジエン系ゴムの製造方法に関し、より詳しくは、優れた加工性を備えるゴム組成物を与えることのできる共役ジエン系ゴムの製造方法に関する。また、本発明は、この製造方法により得られる共役ジエン系ゴム、該ジエン系ゴムを含有するゴム組成物およびそのゴム架橋物にも関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境問題や資源問題から、自動車用のタイヤに低燃費性が強く求められており、さらに安全性の面からは優れたウエットグリップ性が求められている。特許文献1では、ウエットグリップ性の優れたタイヤに用いられるゴム組成物として、共役ジエン系モノマー単位と、ビニル芳香族炭化水素系モノマー単位を含む共役ジエン-ビニル芳香族炭化水素共重合体が提案されている。
【0003】
シリカを配合したゴム組成物から得られるタイヤは、通常使用されるカーボンブラックを配合したゴム組成物から得られるタイヤに比べて低発熱性に優れるため、これを用いることにより低燃費なタイヤを製造することができる。しかしながら、特許文献1に記載のような従来のゴムを用いて得られるゴム組成物は、シリカなどの充填剤を添加するとムーニー粘度が高くなってしまうため、その加工性は、必ずしも十分なものではない。そのため、ゴム組成物としたときの加工性のさらなる向上が望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2016-125050号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、このような実状に鑑みてなされたものであり、優れた加工性を備えるゴム組成物を与えることのできる共役ジエン系ゴムの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者等は、上記目的を達成するために鋭意研究した結果、活性末端を有する共役ジエン系重合体鎖と、シロキサン化合物と、有機金属化合物とを反応させることにより得られる共役ジエン系ゴムによれば、優れた加工性を備えるゴム組成物を与えることができることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0007】
すなわち、本発明によれば、不活性溶媒中で、重合開始剤を用いて、共役ジエン化合物を含む単量体を重合し、活性末端を有する共役ジエン系重合体鎖を得る第1工程と、前記活性末端を有する共役ジエン系重合体鎖と、シロキサン化合物と、有機金属化合物とを反応させる第2工程とを備える共役ジエン系ゴムの製造方法が提供される。
【0008】
本発明の製造方法においては、第1の態様として、前記第2工程において、前記活性末端を有する共役ジエン系重合体鎖と、前記シロキサン化合物とを混合した後、前記有機金属化合物を混合することで、前記活性末端を有する共役ジエン系重合体鎖と、シロキサン化合物と、有機金属化合物との反応を行うように構成することができる。
本発明の製造方法においては、第2の態様として、前記第2工程において、前記活性末端を有する共役ジエン系重合体鎖と、前記有機金属化合物とを混合した後、前記シロキサン化合物を混合することで、前記活性末端を有する共役ジエン系重合体鎖と、シロキサン化合物と、有機金属化合物との反応を行うように構成することができる。
本発明の製造方法において、前記シロキサン化合物が、ポリオルガノシロキサン化合物であることが好ましい。
本発明の製造方法において、前記ポリオルガノシロキサン化合物が、下記一般式(1)で表されるポリオルガノシロキサンであることが好ましい。
【化1】
(上記一般式(1)中、R~Rは、炭素数1~6のアルキル基、または炭素数6~12のアリール基であり、これらは互いに同一であっても相違していてもよい。XおよびXは、炭素数1~6のアルキル基、炭素数6~12のアリール基、炭素数1~5のアルコキシ基、および、エポキシ基を含有する炭素数4~12の基からなる群より選ばれるいずれかの基であり、これらは互いに同一であっても相違していてもよい。Xは、炭素数1~5のアルコキシ基、またはエポキシ基を含有する炭素数4~12の基であり、Xが複数あるときは、それらは互いに同一であっても相違していてもよい。Xは、2~20のアルキレングリコールの繰返し単位を含有する基であり、Xが複数あるときは、それらは互いに同一であっても相違していてもよい。mは0~200の整数、nは0~200の整数、kは0~200の整数であり、m+n+kは1以上である。)
本発明の製造方法において、前記有機金属化合物が、有機リチウム化合物であることが好ましい。
本発明の製造方法において、前記有機リチウム化合物が、n-ブチルリチウムであることが好ましい。
【0009】
また、本発明によれば、上記の共役ジエン系ゴムの製造方法により得られる共役ジエン系ゴムが提供される。
【0010】
また、本発明によれば、上記の共役ジエン系ゴムを含むゴム成分と、シリカとを含有するゴム組成物が提供される。
本発明のゴム組成物は、架橋剤をさらに含有することが好ましい。
【0011】
さらに、本発明によれば、上記のゴム組成物を架橋してなるゴム架橋物、および該ゴム架橋物を含むタイヤが提供される。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、優れた加工性を備えるゴム組成物を与えることができる共役ジエン系ゴムの製造方法を提供することができる。また、本発明によれば、このような共役ジエン系ゴムの製造方法によって得られる共役ジエン系ゴム、ならびに、このような共役ジエン系ゴムを用いたゴム組成物、ゴム架橋物およびタイヤも提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
<共役ジエン系ゴムの製造方法>
本発明の共役ジエン系ゴムの製造方法は、
不活性溶媒中で、重合開始剤を用いて、共役ジエン化合物を含む単量体を重合し、活性末端を有する共役ジエン系重合体鎖を得る第1工程と、
前記活性末端を有する共役ジエン系重合体鎖と、シロキサン化合物と、有機金属化合物とを反応させる第2工程とを備える。
【0014】
<第1工程>
本発明の製造方法の第1工程は、不活性溶媒中で、重合開始剤を用いて、共役ジエン化合物を含む単量体を重合し、活性末端を有する共役ジエン系重合体鎖を得る工程である。
【0015】
本発明の製造方法の第1工程において、活性末端を有する共役ジエン系重合体鎖を得るために、単量体として用いる共役ジエン化合物としては、特に限定されないが、1,3-ブタジエン、イソプレン、2,3-ジメチル-1,3-ブタジエン、2-フェニル-1,3-ブタジエン、1,3-ペンタジエン、2-メチル-1,3-ペンタジエン、1,3-ヘキサジエン、4,5-ジエチル-1,3-オクタジエン、3-ブチル-1,3-オクタジエンなどを挙げることができる。これらのなかでも、1,3-ブタジエンおよびイソプレンが好ましく、1,3-ブタジエンがより好ましい。これらの共役ジエン化合物は、1種類を単独で使用しても2種類以上を組合せて用いてもよい。
【0016】
また、本発明の製造方法の第1工程において、重合に用いる単量体として、共役ジエン化合物とともに芳香族ビニル化合物を用いてもよい。単量体として用いる芳香族ビニル化合物としては、スチレン、メチルスチレン、エチルスチレン、t-ブチルスチレン、α-メチルスチレン、α-メチル-p-メチルスチレン、クロルスチレン、ブロモスチレン、メトキシスチレン、ジメチルアミノメチルスチレン、ジメチルアミノエチルスチレン、ジエチルアミノメチルスチレン、ジエチルアミノエチルスチレン、シアノエチルスチレン、ビニルナフタレンなどが挙げられる。これらのなかでも、スチレンが好ましい。本発明の製造方法の第1工程で得られる、活性末端を有する共役ジエン系重合体鎖は、共役ジエン単量体単位50~100重量%を含むものが好ましく、55~95重量%を含むものがより好ましく、また、芳香族ビニル単量体単位0~50重量%を含むものが好ましく、5~45重量%を含むものがより好ましい。
【0017】
さらに、本発明の製造方法の第1工程においては、共役ジエン化合物とともに、芳香族ビニル化合物以外の、共役ジエン化合物と共重合可能な化合物を用いてもよい。このような共役ジエン化合物と共重合可能な化合物としては、エチレン、プロピレン、1-ブテンなどの鎖状オレフィン化合物;シクロペンテン、2-ノルボルネンなどの環状オレフィン化合物;1,5-ヘキサジエン、1,6-ヘプタジエン、1,7-オクタジエン、ジシクロペンタジエン、5-エチリデン-2-ノルボルネンなどの非共役ジエン化合物;(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチルなどの(メタ)アクリル酸エステル;(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリルアミドなどのその他の(メタ)アクリル酸誘導体;などが挙げられる。これらの共役ジエン化合物と共重合可能な化合物は、本発明の製造方法の第1工程で得られる、活性末端を有する共役ジエン系重合体鎖中に、単量体単位として、10重量%以下とするのが好ましく、5重量%以下とするのがより好ましい。
【0018】
重合に用いる不活性溶媒としては、溶液重合において通常使用されるものであり、重合反応を阻害しないものであれば、特に限定されない。不活性溶媒の具体例としては、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタンなどの鎖状脂肪族炭化水素;シクロペンタン、シクロヘキサンなどの脂環式炭化水素;ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素;などが挙げられる。これらの不活性溶媒は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。不活性溶媒の使用量は、特に限定されないが、単量体濃度が、たとえば1~50重量%となる量であり、好ましくは5~40重量%となる量である。
【0019】
また、重合に用いる重合開始剤としては、共役ジエン化合物を含む単量体を重合させることができるものであれば、特に限定されない。その具体例としては、有機アルカリ金属化合物、有機アルカリ土類金属化合物、およびランタン系列金属化合物などを主触媒とする重合開始剤を挙げることができる。有機アルカリ金属化合物としては、たとえば、有機リチウム化合物、有機ナトリウム化合物、有機カリウム化合物などが挙げられ、具体的には、n-ブチルリチウム、sec-ブチルリチウム、t-ブチルリチウム、ヘキシルリチウム、フェニルリチウム、スチルベンリチウムなどの有機モノリチウム化合物;ジリチオメタン、1,4-ジリチオブタン、1,4-ジリチオ-2-エチルシクロヘキサン、1,3,5-トリリチオベンゼン、1,3,5-トリス(リチオメチル)ベンゼンなどの有機多価リチウム化合物;ナトリウムナフタレンなどの有機ナトリウム化合物;カリウムナフタレンなどの有機カリウム化合物;などが挙げられる。また、有機アルカリ土類金属化合物としては、例えば、ジ-n-ブチルマグネシウム、ジ-n-ヘキシルマグネシウム、ジエトキシカルシウム、ジステアリン酸カルシウム、ジ-t-ブトキシストロンチウム、ジエトキシバリウム、ジイソプロポキシバリウム、ジエチルメルカプトバリウム、ジ-t-ブトキシバリウム、ジフェノキシバリウム、ジエチルアミノバリウム、ジステアリン酸バリウム、ジケチルバリウムなどが挙げられる。ランタン系列金属化合物を主触媒とする重合開始剤としては、たとえば、ランタン、セリウム、プラセオジム、ネオジム、サマリウム、ガドリニウムなどのランタン系列金属と、カルボン酸、およびリン含有有機酸などとからなるランタン系列金属の塩を主触媒とし、これと、アルキルアルミニウム化合物、有機アルミニウムハイドライド化合物、有機アルミニウムハライド化合物などの助触媒とからなる重合開始剤などが挙げられる。これらの重合開始剤の中でも、有機モノリチウム化合物、および有機多価リチウム化合物が好ましく用いられ、有機モノリチウム化合物がより好ましく用いられ、n-ブチルリチウムが特に好ましく用いられる。
なお、有機アルカリ金属化合物は、予め、ジブチルアミン、ジヘキシルアミン、ジベンジルアミン、ピロリジン、ピペリジン、ヘキサメチレンイミン、およびヘプタメチレンイミンなどの2級アミン化合物と反応させて、有機アルカリ金属アミド化合物として使用してもよい。有機アルカリ金属アミド化合物を重合開始剤として用いることにより、得られるゴム架橋物を、より低発熱性およびウエットグリップ性に優れたものとすることができる。これらの重合開始剤は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0020】
有機アルカリ金属アミド化合物としては、たとえば、有機アルカリ金属化合物に、2級アミン化合物を反応させたものなどが挙げられ、なかでも、本発明の製造方法においては、下記一般式(2)で表される化合物を好適に用いることができる。
【化2】
【0021】
一般式(2)中、Mはアルカリ金属原子を表し、R、R10は、それぞれ独立して、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、アミノ基の保護基、または加水分解して水酸基を生じうる基を表し、RおよびR10は互いに結合して、これらが結合する窒素原子とともに環構造を形成してもよく、該環構造を形成する場合には、これらが結合する窒素原子に加えて、これらが結合する窒素原子以外のヘテロ原子とともに環構造を形成していてもよい。
【0022】
アルキル基としては、特に限定されないが、炭素数1~20のアルキル基が好ましく、炭素数1~10のアルキル基がより好ましい。このようなアルキル基としては、たとえば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基、n-ヘプチル基、n-オクチル基、n-デシル基などが挙げられる。
【0023】
シクロアルキル基としては、特に限定されないが、炭素数3~20のシクロアルキル基が好ましく、炭素数3~12のシクロアルキル基がより好ましい。このようなシクロアルキル基としては、たとえば、シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロドデシル基などが挙げられる。
【0024】
アリール基としては、特に限定されないが、炭素数6~12のアリール基が好ましく、炭素数6~10のアリール基がより好ましい。このようなアリール基としては、たとえば、フェニル基、1-ナフチル基、2-ナフチル基などが挙げられる。
【0025】
アラルキル基としては、特に限定されないが、炭素数7~13のアラルキル基が好ましく、炭素数7~9のアラルキル基がより好ましい。このようなアラルキル基としては、たとえば、ベンジル基、フェネチル基などが挙げられる。
【0026】
アミノ基の保護基としては、特に限定されず、アミノ基の保護基として作用する基であればよいが、たとえば、アルキルシリル基などが挙げられる。このようなアルキルシリル基としては、たとえば、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、トリフェニルシリル基、メチルジフェニルシリル基、エチルメチルフェニルシリル基、tert-ブチルジメチルシリル基などが挙げられる。
なお、R、および/またはR10がアミノ基の保護基である場合には、アミノ基の保護基が外れることにより、得られる共役ジエン系ゴムを形成する重合体鎖の一方の末端において、後述する一般式(4)におけるR11、および/またはR12が水素原子である構造を導入することができる。
【0027】
加水分解して水酸基を生じうる基としては、特に限定されず、たとえば、酸などの存在下で加水分解することで、水酸基を生成する基であればよいが、たとえば、アルコキシアルキル基、エポキシ基を含有する基などが挙げられる。
アルコキシアルキル基としては、メトキシメチル基、エトキシメチル基、エトキシエチル基、プロポキシメチル基、ブトキシメチル基、ブトキシエチル基、プロポキシエチル基などが挙げられる。
また、エポキシ基を含有する基としては、たとえば下記一般式(3)で表される基などが挙げられる。
-Z-Z-E (3)
一般式(3)中、Zは炭素数1~10のアルキレン基またはアルキルアリーレン基であり、Zはメチレン基、硫黄原子または酸素原子であり、Eはグリシジル基である。
【0028】
また、RおよびR10は互いに結合して、これらが結合する窒素原子とともに環構造を形成していてもよく、この場合における、RおよびR10と、これと結合する窒素原子とで形成される構造の具体例としては、アゼチジン環(RおよびR10が、プロピレン基)、ピロリジン環(RおよびR10が、ブチレン基)、ピペリジン環(RおよびR10が、ペンチレン基)、ヘキサメチレンイミン環(RおよびR10が、ヘキシレン基)などが挙げられる。
およびR10が互いに結合して、これらが結合する窒素原子とともに環構造を形成する場合、環構造は、4~8員環構造であることが好ましい。
【0029】
また、一般式(2)中、Mはアルカリ金属原子であり、このようなアルカリ金属原子としては、リチウム原子、ナトリウム原子、カリウム原子などが挙げられるが、これらの中でも、重合活性の観点より、リチウム原子が好ましい。
【0030】
本発明の製造方法の第1工程において、重合開始剤として、上記一般式(2)で表される化合物を用いた場合、有機アルカリ金属アミド化合物を形成するアミン構造が、重合体鎖の重合開始末端に結合した状態で残存することとなる。そのため、重合開始剤として、上記一般式(2)で表される化合物を用いると、得られる共役ジエン系ゴムを形成する重合体鎖の一方の末端に、下記一般式(4)で表される構造が導入される。
【化3】
【0031】
一般式(4)中、R11、R12は、それぞれ独立して、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、アミノ基の保護基、または加水分解して水酸基を生じうる基を表し、R11およびR12は互いに結合して、これらが結合する窒素原子とともに環構造を形成してもよく、該環構造を形成する場合には、これらが結合する窒素原子に加えて、これらが結合する窒素原子以外のヘテロ原子とともに環構造を形成していてもよい。
【0032】
11、R12となりうるアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、アミノ基の保護基、または加水分解して水酸基を生じうる基としては、一般式(2)におけるR、R10と同じものを挙げることができ、また、R11およびR12は互いに結合して、これらが結合する窒素原子とともに環構造を形成する場合にも、一般式(2)におけるR、R10と同じものとすることができる。
なお、R11、R12となりうる水素原子は、アミノ基の保護基が外れることにより、導入される。
【0033】
本発明の製造方法の第1工程において、重合開始剤として、有機アルカリ金属アミド化合物を用いた場合、得られる共役ジエン系ゴムを、一方の末端にアミン構造を有し、かつ、他方の末端にシロキサン化合物に由来する特定の構造を有するものとすることができる。その結果、このようなアミン構造の効果により、得られる共役ジエン系ゴムを用いたゴム架橋物は、低発熱性およびウエットグリップ性に優れたものとなる。
【0034】
重合開始剤としての有機アルカリ金属アミド化合物を重合系に添加する方法としては、特に限定されず、予め、有機アルカリ金属化合物に、2級アミン化合物を反応させて、有機アルカリ金属アミド化合物を得て、これを共役ジエン化合物を含む単量体と混合して、重合反応を進行させる方法を採用することができる。あるいは、有機アルカリ金属化合物と、2級アミン化合物とを別々に重合系に添加し、これらを共役ジエン化合物を含む単量体と混合することで、重合系において、有機アルカリ金属アミド化合物を生成させることで、重合反応を進行させる方法を採用してもよい。反応温度等の反応条件は、特に限定されるものではなく、たとえば、目的とする重合反応条件に従えばよい。
【0035】
2級アミン化合物の使用量は、目的とする重合開始剤の添加量に応じて決定すればよいが、有機アルカリ金属化合物1ミリモル当り、通常0.01~1.5ミリモル、好ましくは0.1~1.2ミリモル、より好ましくは0.5~1.0ミリモルの範囲である。
【0036】
重合開始剤の使用量は、目的とする共役ジエン系重合体鎖の分子量に応じて決定すればよいが、単量体1000g当り、通常1~50ミリモル、好ましくは1.5~20ミリモル、より好ましくは2~15ミリモルの範囲である。
【0037】
重合温度は、通常-80~+150℃、好ましくは0~100℃、より好ましくは30~90℃の範囲である。重合様式としては、回分式、連続式などのいずれの様式をも採用できるが、共役ジエン化合物と芳香族ビニル化合物とを共重合させる場合は、共役ジエン単量体単位と芳香族ビニル単量体単位との結合のランダム性を制御しやすい点で、回分式が好ましい。また、共役ジエン系重合体鎖における各単量体の結合様式は、たとえば、ブロック状、テーパー状、およびランダム状などの種々の結合様式とすることができる。これらの中でも、ランダム状が好ましい。
【0038】
また、共役ジエン化合物を含む単量体を重合するにあたり、得られる共役ジエン系重合体鎖における共役ジエン単量体単位中のビニル結合含有量を調節するために、不活性有機溶媒に極性化合物を添加することが好ましい。極性化合物としては、たとえば、ジブチルエーテル、テトラヒドロフラン、2,2-ジ(テトラヒドロフリル)プロパンなどのエーテル化合物;テトラメチルエチレンジアミンなどの第三級アミン;アルカリ金属アルコキシド;ホスフィン化合物;などが挙げられる。これらのなかでも、エーテル化合物、および第三級アミンが好ましく、第三級アミンがより好ましく、テトラメチルエチレンジアミンが特に好ましい。これらの極性化合物は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。極性化合物の使用量は、目的とするビニル結合含有量に応じて決定すればよく、重合開始剤1モルに対して、好ましくは0.001~100モル、より好ましくは0.01~10モルである。極性化合物の使用量がこの範囲にあると、共役ジエン単量体単位中のビニル結合含有量の調節が容易であり、かつ重合開始剤の失活による不具合も発生し難い。
【0039】
本発明の製造方法の第1工程で得られる、活性末端を有する共役ジエン系重合体鎖における共役ジエン単量体単位中のビニル結合含有量は、好ましくは1~90重量%、より好ましくは3~85重量%、特に好ましくは5~80重量%である。共役ジエン単量体単位中のビニル結合含有量を上記範囲内とすることにより、得られるゴム組成物の加工性をより向上させることができる。
【0040】
本発明の製造方法の第1工程で得られる、活性末端を有する共役ジエン系重合体鎖の重量平均分子量(Mw)は、特に限定されないが、ポリスチレン換算のゲルパーミエーションクロマトグラフィで測定される値として、50,000~1,000,000が好ましく、100,000~800,000がより好ましく、150,000~700,000が特に好ましい。活性末端を有する共役ジエン系重合体鎖の重量平均分子量(Mw)を上記範囲内とすることにより、得られるゴム組成物の加工性をより向上させることができる。
【0041】
また、本発明の製造方法の第1工程で得られる、活性末端を有する共役ジエン系重合体鎖の重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)で表わされる分子量分布も、特に限定されないが、好ましくは1.0~3.0であり、より好ましくは1.0~2.5である。活性末端を有する共役ジエン系重合体鎖の分子量分布(Mw/Mn)が上記範囲内にあると、変性共役ジエン系ゴムの製造が容易となる。
【0042】
<第2工程>
本発明の製造方法の第2工程は、第1工程にて得られた活性末端を有する共役ジエン系重合体鎖と、シロキサン化合物と、有機金属化合物とを反応させる工程である。
本発明の製造方法の第2工程によれば、第1工程にて得られた活性末端を有する共役ジエン系重合体鎖と、変性剤としてのシロキサン化合物と、有機金属化合物とを反応させることで、共役ジエン系重合体鎖の少なくとも一部の活性末端にシロキサン変性が導入することができる。また、本発明の製造方法の第2工程によれば、第1工程にて得られた活性末端を有する共役ジエン系重合体鎖と、変性剤としてのシロキサン化合物と、有機金属化合物とを反応させることにより、得られる共役ジエン系ゴムに、シリカなどの充填剤を配合してゴム組成物とした際に、得られるゴム組成物を加工性に優れたものとすることができるものである。
【0043】
本発明の製造方法の第2工程で用いるシロキサン化合物としては、シロキサン構造(-Si-O-)を主鎖として有するものであればよく、特に限定されないが、ポリオルガノシロキサン化合物が好ましく、下記一般式(1)で表されるポリオルガノシロキサンがより好ましい。
なお、本発明の製造方法の第2工程において、シロキサン化合物は、第1工程にて得られた活性末端を有する共役ジエン系重合体鎖を変性させるための変性剤として作用する。
【化4】
【0044】
一般式(1)中、R~Rは、炭素数1~6のアルキル基、または炭素数6~12のアリール基であり、これらは互いに同一であっても相違していてもよい。XおよびXは、炭素数1~6のアルキル基、炭素数6~12のアリール基、炭素数1~5のアルコキシ基、および、エポキシ基を含有する炭素数4~12の基からなる群より選ばれるいずれかの基であり、これらは互いに同一であっても相違していてもよい。Xは、炭素数1~5のアルコキシ基、またはエポキシ基を含有する炭素数4~12の基であり、Xが複数あるときは、それらは互いに同一であっても相違していてもよい。Xは、2~20のアルキレングリコールの繰返し単位を含有する基であり、Xが複数あるときは、それらは互いに同一であっても相違していてもよい。mは0~200の整数、nは0~200の整数、kは0~200の整数であり、m+n+kは1以上である。
【0045】
一般式(1)で表されるポリオルガノシロキサンにおいて、一般式(1)中のR~R、XおよびXを構成し得る炭素数1~6のアルキル基としては、たとえば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基およびシクロヘキシル基などが挙げられる。炭素数6~12のアリール基としては、たとえば、フェニル基およびメチルフェニル基などが挙げられる。これらの中でも、ポリオルガノシロキサン自体の製造の容易性の観点から、メチル基およびエチル基が好ましい。
【0046】
また、一般式(1)で表されるポリオルガノシロキサンにおいて、X、XおよびXを構成し得る炭素数1~5のアルコキシ基としては、たとえば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基およびブトキシ基などが挙げられる。これらの中でも、ポリオルガノシロキサン自体の製造の容易性の観点から、メトキシ基およびエトキシ基が好ましい。
【0047】
さらに、一般式(1)で表されるポリオルガノシロキサンにおいて、X、XおよびXを構成し得るエポキシ基を含有する炭素数4~12の基としては、たとえば、下記一般式(5)で表される基が挙げられる。
-Z-Z-E (5)
一般式(5)中、Zは、炭素数1~10のアルキレン基、またはアルキルアリーレン基であり、Zはメチレン基、硫黄原子、または酸素原子であり、Eはエポキシ基を有する炭素数2~10の炭化水素基である。
【0048】
一般式(5)で表される基としては、Zが酸素原子であるものが好ましく、Zが酸素原子であり、かつ、Eがグリシジル基であるものがより好ましく、Zが炭素数1~3のアルキレン基であり、Zが酸素原子であり、かつ、Eがグリシジル基であるものが特に好ましい。
【0049】
また、一般式(1)で表されるポリオルガノシロキサンにおいて、XおよびXとしては、上記の中でも、エポキシ基を含有する炭素数4~12の基、または、炭素数1~6のアルキル基が好ましい。また、Xとしては、上記の中でも、エポキシ基を含有する炭素数4~12の基が好ましい。さらに、XおよびXが炭素数1~6のアルキル基であり、Xがエポキシ基を含有する炭素数4~12の基であることがより好ましい。
【0050】
また、一般式(1)で表されるポリオルガノシロキサンにおいて、X、すなわち2~20のアルキレングリコールの繰返し単位を含有する基としては、下記一般式(6)で表される基が好ましい。
【化5】
一般式(6)中、tは2~20の整数であり、Xは炭素数2~10のアルキレン基またはアルキルアリーレン基であり、R13は水素原子またはメチル基であり、Xは炭素数1~10のアルコキシ基またはアリールオキシ基である。これらの中でも、tが2~8の整数であり、Xが炭素数3のアルキレン基であり、R13が水素原子であり、かつ、Xがメトキシ基であるものが好ましい。
【0051】
一般式(1)で表されるポリオルガノシロキサンにおいて、mは0~200の整数、好ましくは20~150の整数、より好ましくは30~120の整数である。mが200以下であると、一般式(1)で表されるポリオルガノシロキサン自体の製造がより容易になると共に、その粘度が高くなりすぎず、取り扱いもより容易となる。
【0052】
また、一般式(1)で表されるポリオルガノシロキサンにおいて、nは0~200の整数、好ましくは0~150の整数、より好ましくは0~120の整数である。kは0~200の整数、好ましくは0~150の整数、より好ましくは0~130の整数である。m、nおよびkの合計数は1以上であり、1~400であることが好ましく、20~300であることがより好ましく、30~250であることが特に好ましい。m、nおよびkの合計数が1以上であると、一般式(1)で表されるポリオルガノシロキサンと活性末端を有するポリブタジエン鎖との反応が進行し易く、さらに、m、nおよびkの合計数が400以下であると、一般式(1)で表されるポリオルガノシロキサン自体の製造が容易になると共に、その粘度が高くなりすぎず、取り扱いも容易となる。
【0053】
本発明の製造方法の第2工程における、シロキサン化合物の使用量は、上述した第1工程において重合反応に使用した重合開始剤1モルに対するシロキサン化合物中のエポキシ基およびアルコキシ基の合計モル数の比が0.1~1の範囲となる量であることが好ましく、0.2~0.9の範囲となる量であることがより好ましく、0.3~0.8の範囲となる量であることがさらに好ましい。シロキサン化合物の使用量が上記範囲内にあると、得られるゴム組成物の加工性をより向上させることができる。シロキサン化合物は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0054】
本発明の製造方法の第2工程においては、第1工程で用いた重合開始剤とは別途に、有機金属化合物を添加する。本発明の製造方法の第2工程で用いる有機金属化合物としては、有機アルカリ金属化合物などを挙げることができ、有機アルカリ金属化合物としては、たとえば、有機リチウム化合物、有機ナトリウム化合物、有機カリウム化合物などが挙げられ、具体的には、n-ブチルリチウム、sec-ブチルリチウム、t-ブチルリチウム、ヘキシルリチウム、フェニルリチウム、スチルベンリチウムなどの有機モノリチウム化合物;ジリチオメタン、1,4-ジリチオブタン、1,4-ジリチオ-2-エチルシクロヘキサン、1,3,5-トリリチオベンゼン、1,3,5-トリス(リチオメチル)ベンゼンなどの有機多価リチウム化合物;ナトリウムナフタレンなどの有機ナトリウム化合物;カリウムナフタレンなどの有機カリウム化合物;などが挙げられる。これらの有機金属化合物の中でも、n-ブチルリチウムが好ましく用いられる。
【0055】
本発明の製造方法の第2工程における、有機金属化合物の使用量は、使用したシロキサン化合物1モルに対して、好ましくは0.05~10モル、より好ましくは0.01~5モルである。有機金属化合物の使用量が上記範囲内にあると、得られるゴム組成物の加工性をより向上させることができる。有機金属化合物は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0056】
本発明の製造方法の第2工程における、活性末端を有する共役ジエン系重合体鎖と、シロキサン化合物と、有機金属化合物を反応させる方法としては、例えば、第1の態様として、第1の工程で得られた活性末端を有する共役ジエン系重合体鎖と、シロキサン化合物とを混合した後、有機金属化合物を混合する方法、第2の態様として、第1の工程で得られた活性末端を有する共役ジエン系重合体鎖と、有機金属化合物を混合した後、シロキサン化合物を混合する方法が挙げられる。
【0057】
<第1の態様>
第1の態様においては、第1工程で得られた活性末端を有する共役ジエン系重合体鎖と、シロキサン化合物とを混合した後、有機金属化合物を混合する。すなわち、第1の態様においては、活性末端を有する共役ジエン系重合体鎖と、シロキサン化合物とを混合することで、共役ジエン系重合体鎖の活性末端に、シロキサン化合物を反応させ、次いで、ここに、有機金属化合物を添加することで、シロキサン化合物を反応させた共役ジエン系重合体鎖と、有機金属化合物とを反応させる。このような第1の態様によれば、優れた加工性を備えるゴム組成物を与えることができることに加えて、得られる共役ジエン系ゴムを、貯蔵安定性により優れたものとすることができる。
【0058】
第1の態様においては、活性末端を有する共役ジエン系重合体鎖を得るための重合に用いた重合溶液に、シロキサン化合物を添加して、活性末端を有する共役ジエン系重合体鎖とシロキサン化合物とを反応させた後、反応後の溶液に有機金属化合物を添加する方法が簡便であり好ましい。また、この際においては、シロキサン化合物は、不活性溶媒に溶解して重合溶液に添加することが好ましく、その溶液濃度は、1~50重量%の範囲とすることが好ましい。シロキサン化合物を反応させる際の反応温度は、特に限定されないが、通常0~120℃であり、反応時間も特に限定されないが、通常1~60分である。
【0059】
活性末端を有する共役ジエン系重合体鎖を含有する溶液に、シロキサン化合物を添加する時期は特に限定されないが、重合反応が完結しておらず、活性末端を有する共役ジエン系重合体鎖を含有する溶液が単量体をも含有している状態、より具体的には、活性末端を有する共役ジエン系重合体鎖を含有する溶液が、100ppm以上、より好ましくは300~50,000ppmの単量体を含有している状態で、この溶液にシロキサン化合物を添加することが望ましい。シロキサン化合物の添加をこのように行なうことにより、活性末端を有する共役ジエン系重合体鎖と重合系中に含まれる不純物などとの副反応を抑制して、反応を良好に制御することが可能となる。
【0060】
共役ジエン系重合体鎖に、シロキサン化合物を反応させた後、有機金属化合物を添加する際においては、有機金属化合物は、不活性溶媒に溶解して添加することが好ましく、その溶液濃度は、1~50重量%の範囲とすることが好ましい。有機金属化合物を反応させる際の反応温度は、特に限定されないが、通常0~120℃であり、反応時間も特に限定されないが、通常1~60分である。
【0061】
また、シロキサン化合物を反応させた共役ジエン系重合体鎖を含有する溶液に、有機金属化合物を添加する時期は、活性末端を有する共役ジエン系重合体鎖を含有する溶液にシロキサン化合物を添加した後であれば、特に限定されないが、活性末端を有する共役ジエン系重合体鎖を含有する溶液にシロキサン化合物を添加し、好ましくは1~180分、より好ましくは5~60分、さらに好ましくは15~45分反応させてから、この溶液に有機金属化合物を添加することが望ましい。有機金属化合物の添加をこのように行うことにより、得られるゴム組成物の加工性をより向上させることができる。
【0062】
なお、第1工程で得られた活性末端を有する共役ジエン系重合体鎖と、シロキサン化合物とを混合した後、有機金属化合物を混合する方法により得られる、反応後の共役ジエン系重合体鎖は、重合体鎖末端にシロキサン化合物による変性構造が導入され、さらに有機金属化合物が反応したものを含むものであるが、これ以外にも、シロキサン化合物による変性がされていない未変性の共役ジエン系重合体鎖や、有機金属化合物が反応していないシロキサン変性した共役ジエン系重合体鎖を含むものであってもよい。
【0063】
<第2の態様>
第2の態様においては、第1工程で得られた活性末端を有する共役ジエン系重合体鎖と、有機金属化合物を混合した後、シロキサン化合物を混合する。すなわち、第2の態様においては、活性末端を有する共役ジエン系重合体鎖と有機金属化合物とを予め混合しておくことにより、共役ジエン系重合体鎖とシロキサン化合物とを、有機金属化合物の存在下で反応させる。このような第2の態様によれば、得られるゴム組成物の加工性をより向上させることができる。
【0064】
第2の態様においては、活性末端を有する共役ジエン系重合体鎖を得るための重合に用いた重合溶液に、有機金属化合物を添加し、混合した後、当該混合溶液にシロキサン化合物を添加する方法が簡便であり好ましい。また、この際においては、有機金属化合物は、不活性溶媒に溶解して重合溶液に添加することが好ましく、その溶液濃度は、1~50重量%の範囲とすることが好ましい。有機金属化合物を添加する際の温度は、特に限定されないが、通常0~120℃である。
【0065】
活性末端を有する共役ジエン系重合体鎖を含有する溶液に、有機金属化合物を添加する時期は特に限定されないが、有機金属化合物の存在下でのシロキサン化合物の反応性を高めるという観点より、重合転化率が好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上となってから、この溶液に有機金属化合物を添加することが望ましく、また、単量体が5000ppm以下となった状態で、この溶液に有機金属化合物を添加することが望ましい。
【0066】
活性末端を有する共役ジエン系重合体鎖と有機金属化合物とを含有する溶液にシロキサン化合物を添加する際においては、シロキサン化合物は、不活性溶媒に溶解して重合系内に添加することが好ましく、その溶液濃度は、1~50重量%の範囲とすることが好ましい。シロキサン化合物を反応させる際の反応温度は、特に限定されないが、通常0~120℃であり、反応時間も特に限定されないが、通常1~60分である。
【0067】
また、活性末端を有する共役ジエン系重合体鎖と有機金属化合物とを含有する溶液に、シロキサン化合物を添加する時期は、活性末端を有する共役ジエン系重合体鎖を含有する溶液に有機金属化合物を添加した後であれば、特に限定されないが、活性末端を有する共役ジエン系重合体鎖を含有する溶液に有機金属化合物を添加して、好ましくは1~180分、より好ましくは5~60分、さらに好ましくは10~30分混合してから、この溶液にシロキサン化合物を添加することが望ましい。シロキサン化合物の添加をこのように行うことにより、得られるゴム組成物の加工性をより向上させることができる。
【0068】
なお、第1工程で得られた活性末端を有する共役ジエン系重合体鎖と、有機金属化合物とを混合した後、シロキサン化合物を混合する方法により得られる、反応後の共役ジエン系重合体鎖は、重合体鎖末端にシロキサン化合物による変性構造が導入され、さらに有機金属化合物が反応したものを含むものであるが、これ以外にも、シロキサン化合物による変性がされていない未変性の共役ジエン系重合体鎖や、有機金属化合物が反応していないシロキサン変性した共役ジエン系重合体鎖を含むものであってもよい。
【0069】
また、第2工程においては、上述した第1の態様および第2の態様に代えて、活性末端を有する共役ジエン系重合体鎖に、シロキサン化合物と、有機金属化合物とを同時に添加し(あるいは、シロキサン化合物と、有機金属化合物とを続けて添加し)、混合することで、これらを反応させるような態様を採用してもよい。
【0070】
なお、活性末端を有する共役ジエン系重合体鎖に、シロキサン化合物および有機金属化合物を反応させる前の状態のとき、シロキサン化合物のみを反応させた後であって、有機金属化合物を反応させる前の状態のとき、有機金属化合物のみを添加した後であって、シロキサン化合物を反応させる前の状態のとき、あるいは、シロキサン化合物および有機金属化合物のいずれも反応させた後において、活性末端を有する共役ジエン系重合体鎖が残存している状態のときに、本発明の効果を阻害しない範囲で、活性末端を有する共役ジエン系重合体鎖の活性末端の一部を、従来から通常使用されているカップリング剤や変性剤などを重合系内に添加して、カップリングや変性を行ってもよい。
【0071】
そして、第2工程において、共役ジエン系重合体鎖に、シロキサン化合物および有機金属化合物を反応させた後は、メタノールおよびイソプロパノールなどのアルコールまたは水などの、重合停止剤を添加して未反応の活性末端を失活させることが好ましい。
【0072】
共役ジエン系重合体鎖の活性末端を失活させた後、所望により、フェノール系安定剤、リン系安定剤、イオウ系安定剤などの老化防止剤、クラム化剤、およびスケール防止剤などを反応溶液に添加し、その後、直接乾燥またはスチームストリッピングなどにより反応溶液から重合溶媒を分離して、共役ジエン系ゴムを回収する。なお、反応溶液から重合溶媒を分離する前に、重合溶媒に伸展油を混合し、共役ジエン系ゴムを油展ゴムとして回収してもよい。
【0073】
共役ジエン系ゴムを油展ゴムとして回収する場合に用いる伸展油としては、たとえば、パラフィン系、芳香族系およびナフテン系の石油系軟化剤、植物系軟化剤、ならびに脂肪酸などが挙げられる。石油系軟化剤を用いる場合には、IP346の方法(英国のTHE INSTITUTE PETROLEUMの検査方法)により抽出される多環芳香族の含有量が3%未満であることが好ましい。伸展油を使用する場合、その使用量は、共役ジエン系ゴム100重量部に対して、好ましくは5~100重量部、より好ましくは10~60重量部、さらに好ましくは20~50重量部である。
【0074】
このようにして本発明の製造方法により得られる共役ジエン系ゴムは、上述した第2工程において、シロキサン化合物および有機金属化合物を用いて反応を行うことにより、得られるものである。そのため、本発明の製造方法により得られる共役ジエン系ゴムは、重合体鎖末端にシロキサン化合物による変性構造が導入され、さらに有機金属化合物が反応したものであるが、このようなもの以外にも、シロキサン化合物による変性がされていない未編成の共役ジエン系重合体鎖や、有機金属化合物が反応していないシロキサン変性した共役ジエン系重合体鎖などを含有するものであってもよい。
【0075】
本発明の製造方法により得られる共役ジエン系ゴムのカップリング率は、特に限定されないが、好ましくは10重量%以上、より好ましくは15重量%以上、特に好ましくは20重量%以上であり、また、好ましくは80重量%以下、より好ましくは75重量%以下、特に好ましくは70重量%以下である。カップリング率が上記範囲であると、得られるゴム組成物の加工性をより向上させることができる。なお、カップリング率は、シロキサン化合物および有機金属化合物、ならびに、必要に応じて用いられるカップリング剤やその他の変性剤と反応させる前の活性末端を有する共役ジエン系重合体鎖のピークトップ分子量の1.8倍以上の分子量を有する重合体分子の、最終的に得られた共役ジエン系ゴムの全量に対する重量分率であり、このときの分子量の測定は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィによりポリスチレン換算分子量として求めるものとする。
【0076】
本発明の製造方法により得られる共役ジエン系ゴムの重量平均分子量(Mw)は、特に限定されないが、ポリスチレン換算のゲルパーミエーションクロマトグラフィで測定される値として、100,000~3,000,000が好ましく、150,000~2,000,000がより好ましく、200,000~1,500,000が特に好ましい。共役ジエン系ゴムの重量平均分子量(Mw)を上記範囲内とすることにより、共役ジエン系ゴムへのシリカの配合が容易となり、ゴム組成物の加工性をより高めることができる。
【0077】
また、本発明の製造方法により得られる共役ジエン系ゴムの重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)で表される分子量分布も、特に限定されないが、1.1~3.0であることが好ましく、1.2~2.5であることがより好ましく、1.2~2.2であることが特に好ましい。共役ジエン系ゴムの分子量分布(Mw/Mn)が上記範囲内にあると、得られるゴム組成物の加工性をより向上させることができる。
【0078】
また、本発明の製造方法により得られる共役ジエン系ゴムのムーニー粘度(ML1+4,100℃)も、特に限定されないが、通常、20~100、好ましくは30~90、より好ましくは35~80の範囲である。なお、共役ジエン系ゴムを油展ゴムとする場合は、その油展ゴムのムーニー粘度を上記の範囲とすることが好ましい。
【0079】
このようにして本発明の製造方法により得られる共役ジエン系ゴムは、充填剤および架橋剤などの配合剤を添加した上で、種々の用途に好適に用いることができる。
【0080】
<ゴム組成物>
本発明のゴム組成物は、上述した本発明の製造方法により得られる共役ジエン系ゴムを含むゴム成分に対して、シリカを含有してなる組成物である。
【0081】
本発明のゴム組成物には、上述した本発明の共役ジエン系ゴム以外のその他のゴムを含有してもよい。その他のゴムとしては、たとえば、天然ゴム(エポキシ化天然ゴム(ENR)、水素化天然ゴム(HNR)、脱タンパク質天然ゴム(DPNR)、高純度天然ゴム(UPNR)、グラフト化天然ゴムなどの改質天然ゴムであってもよい。)、ポリイソプレンゴム、乳化重合スチレン-ブタジエン共重合ゴム、溶液重合スチレン-ブタジエン共重合ゴム、ポリブタジエンゴム(高シス-BR、低シスBRであってもよい。また、1,2-ポリブタジエン重合体からなる結晶繊維を含むポリブタジエンゴムであってもよい。)、スチレン-イソプレン共重合ゴム、ブタジエン-イソプレン共重合ゴム、スチレン-イソプレン-ブタジエン共重合ゴム、アクリロニトリル-ブタジエン共重合ゴム、アクリロニトリル-スチレン-ブタジエン共重合ゴム、ブチルゴム(IIR)、エチレン-プロピレン共重合体、クロロプレンゴム、ニトリルクロロプレンゴム、およびニトリルイソプレンゴム、などのうち、上述した本発明の共役ジエン系ゴム以外のものをいう。これらのなかでも、天然ゴム、ポリイソプレンゴム、ポリブタジエンゴム、および溶液重合スチレン-ブタジエン共重合ゴムが好ましい。これらのゴムは、それぞれ単独で、あるいは、天然ゴムとポリブタジエンゴム、天然ゴムとスチレン-ブタジエン共重合ゴム等、2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0082】
本発明のゴム組成物において、本発明の共役ジエン系ゴムは、ゴム組成物中のゴム成分の10~100重量%を占めることが好ましく、50~100重量%を占めることが特に好ましい。このような割合で、本発明の共役ジエン系ゴムをゴム成分中に含めることにより、加工性により優れたゴム組成物を得ることができる。
【0083】
本発明で用いるシリカとしては、たとえば、乾式法ホワイトカーボン、湿式法ホワイトカーボン、コロイダルシリカ、沈降シリカ、ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウムなどが挙げられる。これらの中でも、含水ケイ酸を主成分とする湿式法ホワイトカーボンが好ましい。また、カーボンブラック表面にシリカを担持させたカーボン-シリカデュアル・フェイズ・フィラーを用いてもよい。これらのシリカは、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。用いるシリカの窒素吸着比表面積(ASTM D3037-81に準じBET法で測定される)は、好ましくは20~400m/g、より好ましくは50~220m/g、特に好ましくは80~170m/gである。また、シリカのpHは、5~10であることが好ましい。
【0084】
本発明で用いるシリカとしては、ジブチルフタレート(DBP)吸収値が、好ましくは約100~約400の範囲、特に約150~約300の範囲にあるものが好ましい。
【0085】
本発明で用いるシリカとしては、電子顕微鏡による測定で0.01~0.05μmの範囲の平均極限粒径を有するものが好ましいが、シリカの平均極限粒径はこの範囲に限定されず、さらに小さくても、またはさらに大きくてもよい。
【0086】
本発明で用いるシリカとしては、たとえば、様々な市販シリカが使用できる。例えば、PPG Industries社製のHi-Sil、210、Hi-Sil233、Hi-Sil243LD;ソルベイ社製のZeosil 1115MP、Zeosil 1165MP、Zeosil 165GR、Zeosil Premium 200MP;エボニック社製のULTRASIL VN2、ULTRASIL VN3;などが挙げられる。
【0087】
本発明のゴム組成物におけるシリカの配合量は、ゴム組成物中のゴム成分100重量部に対して、好ましくは10~250重量部であり、より好ましくは15~150重量部、さらに好ましくは20~130重量部である。シリカの配合量を上記範囲とすることにより、得られるゴム組成物の加工性をより高めることができる。
【0088】
本発明のゴム組成物には、加工性をさらに改良するという観点より、さらにシランカップリング剤を配合してもよい。シランカップリング剤としては、特に限定されず、種々のシランカップリング剤を用いることができるが、本発明においては、スルフィド系、メルカプト系、保護化メルカプト系(たとえば、カルボニルチオ基を持つもの)、チオシアネート系、ビニル系、アミノ系、メタクリレート系、グリシドキシ系、ニトロ系、エポキシ系またはクロロ系のシランカップリング剤を好適に用いることができる。シランカップリング剤の具体例としては、ビス(3-(トリエトキシシリル)プロピル)ジスルフィド、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)トリスルフィド、ビス(3-(トリエトキシシリル)プロピル)テトラスルフィド、γ-メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3-[エトキシビス(3,6,9,12,15-ペンタオキサオクタコサン-1-イルオキシ)シリル]-1-プロパンチオール、3-オクタノイルチオ-1-プロピル-トリエトキシシラン、3-トリメトキシシリルプロピル-N,N-ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、γ-トリメトキシシリルプロピルベンゾチアジルテトラスルフィド、3-トリメトキシシリルプロピルベンゾチアゾールテトラスルフィド、3-チオシアネートプロピルトリエトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、N-(β-アミノエチル)-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-トリメトキシシリルプロピルメタクリレートモノスルフィド、γ-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3-ニトロプロピルトリメトキシシラン、β-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、および3-クロロプロピルトリメトキシシランなどを挙げることができる。また、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社製のNXT-Z100、NXT-Z30、NXT-Z45、NXT-Z60、NXT-Z45、NXT、エボニック社製のSi69、Si75、VP Si363なども用いることができる。これらのシランカップリング剤は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。また、これらの1種または2種以上を予めオリゴマー化させて、オリゴマー化させた状態にて用いてもよい。シランカップリング剤の配合量は、シリカ100重量部に対して、好ましくは0.1~30重量部、より好ましくは1~15重量部である。
【0089】
また、本発明のゴム組成物には、さらに、ファーネスブラック、アセチレンブラック、サーマルブラック、チャンネルブラック、およびグラファイトなどのカーボンブラックを配合してもよい。これらのなかでも、ファーネスブラックが好ましい。これらのカーボンブラックは、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。カーボンブラックの配合量は、ゴム組成物中のゴム成分100重量部に対して、通常、120重量部以下である。
【0090】
なお、本発明の共役ジエン系ゴムを含むゴム成分に、シリカを添加する方法としては特に限定されず、固形のゴム成分に対して添加して混練する方法(乾式混練法)や共役ジエン系ゴムを含む溶液に対して添加して凝固・乾燥させる方法(湿式混練法)などを適用することができる。
【0091】
また、本発明のゴム組成物は、架橋剤をさらに含有していることが好ましい。架橋剤としては、たとえば、硫黄、ハロゲン化硫黄などの含硫黄化合物、有機過酸化物、キノンジオキシム類、有機多価アミン化合物、メチロール基を有するアルキルフェノール樹脂などが挙げられる。これらの中でも、硫黄が好ましく使用される。架橋剤の配合量は、ゴム組成物中のゴム成分100重量部に対して、好ましくは0.1~15重量部、より好ましくは0.5~5重量部、特に好ましくは1~4重量部である。
【0092】
さらに、本発明のゴム組成物には、上記成分以外に、常法に従って、架橋促進剤、架橋活性化剤、老化防止剤、充填剤(上記シリカおよびカーボンブラックを除く)、活性剤、プロセス油、可塑剤、滑剤、粘着付与剤、相溶化剤、界面活性化剤などの配合剤をそれぞれ必要量配合できる。
【0093】
架橋剤として、硫黄または含硫黄化合物を用いる場合には、架橋促進剤および架橋活性化剤を併用することが好ましい。架橋促進剤としては、たとえば、スルフェンアミド系架橋促進剤;グアニジン系架橋促進剤;チオウレア系架橋促進剤;チアゾール系架橋促進剤;チウラム系架橋促進剤;ジチオカルバミン酸系架橋促進剤;キサントゲン酸系架橋促進剤;などが挙げられる。これらのなかでも、スルフェンアミド系架橋促進剤を含むものが好ましい。これらの架橋促進剤は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いられる。架橋促進剤の配合量は、ゴム組成物中のゴム成分100重量部に対して、好ましくは0.1~15重量部、より好ましくは0.5~5重量部、特に好ましくは1~4重量部である。
【0094】
架橋活性化剤としては、たとえば、ステアリン酸などの高級脂肪酸;酸化亜鉛;などを挙げることができる。これらの架橋活性化剤は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いられる。架橋活性化剤の配合量は、ゴム組成物中のゴム成分100重量部に対して、好ましくは0.05~20重量部、特に好ましくは0.5~15重量部である。
【0095】
また、本発明のゴム組成物には、ゴム成分以外に樹脂を配合してもよい。樹脂を配合することにより、ゴム組成物に粘着性を付与させたり、ゴム組成物中の充填剤の分散性を高めることができる。その結果、得られるゴム架橋物のウエットグリップ性や耐摩耗性の向上が期待できる。また、可塑剤と同様な効果として、ゴム組成物の加工性を向上させることもできる。樹脂としては、例えば、C5系石油樹脂、C5/C9系石油樹脂、C9系石油樹脂、ジシクロペンタジエン系樹脂、テルペン系樹脂、テルペンフェノール樹脂、芳香族変性テルペン樹脂、アルキルフェノール-アセチレン樹脂、ロジン系樹脂、ロジンエステル樹脂、インデン系樹脂、インデンを含有するC9系樹脂、α-メチルスチレン・インデン共重合体樹脂、クマロン-インデン樹脂、ファルネセン系樹脂、ポリリモネン樹脂などが挙げられる。これらの樹脂は、変性されていたり、水素添加されていたりするものであってもよい。これらの樹脂は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いられる。樹脂の配合量は、ゴム組成物中のゴム成分100重量部に対して、好ましくは25重量部以下である。
【0096】
本発明のゴム組成物を得るためには、常法に従って各成分を混練すればよく、たとえば、架橋剤や架橋促進剤などの熱に不安定な成分を除く成分と共役ジエン系ゴムとを混練後、その混練物に架橋剤や架橋促進剤などの熱に不安定な成分を混合して目的の組成物を得ることができる。熱に不安定な成分を除く成分と共役ジエン系ゴムとの混練温度は、好ましくは80~200℃、より好ましくは120~180℃であり、その混練時間は、好ましくは30秒~30分である。また、その混練物と熱に不安定な成分との混合は、通常100℃以下、好ましくは80℃以下まで冷却した後に行われる。
【0097】
<ゴム架橋物>
本発明のゴム架橋物は、上述した本発明のゴム組成物を架橋してなるものである。
本発明のゴム架橋物は、本発明のゴム組成物を用い、たとえば、所望の形状に対応した成形機、たとえば、押出機、射出成形機、圧縮機、ロールなどにより成形を行い、加熱することにより架橋反応を行い、ゴム架橋物として形状を固定化することにより製造することができる。この場合においては、予め成形した後に架橋しても、成形と同時に架橋を行ってもよい。成形温度は、通常、10~200℃、好ましくは25~120℃である。架橋温度は、通常、100~200℃、好ましくは130~190℃であり、架橋時間は、通常、1分~24時間、好ましくは2分~12時間、特に好ましくは3分~6時間である。
【0098】
また、ゴム架橋物の形状、大きさなどによっては、表面が架橋していても内部まで十分に架橋していない場合があるので、さらに加熱して二次架橋を行ってもよい。
【0099】
加熱方法としては、プレス加熱、スチーム加熱、オーブン加熱、熱風加熱などのゴムの架橋に用いられる一般的な方法を適宜選択すればよい。
【0100】
このようにして得られる本発明のゴム架橋物は、たとえば、タイヤにおいて、キャップトレッド、ベーストレッド、カーカス、サイドウォール、ビード部などのタイヤ各部位の材料;ホース、ベルト、マット、防振ゴム、その他の各種工業用品の材料;樹脂の耐衝撃性改良剤;樹脂フィルム緩衝剤;靴底;ゴム靴;ゴルフボール;玩具;などの各種用途に用いることができる。とりわけ、本発明のゴム架橋物は、タイヤの材料、特に低燃費タイヤの材料として好適に用いることができ、トレッド用途に最適である。
【実施例
【0101】
以下に、実施例および比較例を挙げて、本発明についてより具体的に説明する。なお、各例中の「部」および「%」は、特に断りのない限り、重量基準である。各種の測定および評価については、以下の方法に従って行った。
【0102】
[重量平均分子量]
重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィによりポリスチレン換算の分子量に基づくチャートを得て、得られたチャートに基づいて求めた。ゲルパーミエーションクロマトグラフィの具体的な測定条件は、以下のとおりとした。
測定機:高速液体クロマトグラフ(東ソー社製、商品名「HLC-8320」)
カラム:東ソー社製、商品名「GMH-HR-H」を二本直列に連結した。
検出器:示差屈折計
溶離液:テトラヒドロフラン
カラム温度:40℃
【0103】
[芳香族ビニル単量体単位含有量、ビニル結合含有量]
芳香族ビニル単量体単位含有量、およびビニル結合含有量は、H-NMRにより測定した。H-NMRの具体的な測定条件は、以下のとおりとした。
測定器:JEOL社製「JNM-ECA-400WB」
測定溶媒:重クロロホルム
【0104】
[ムーニー粘度(ML1+4,100℃)]
ゴム組成物のムーニー粘度は、JIS K6300に従い、ムーニー粘度計(島津製作所社製、製品名「SMV-300」)を用いて測定した。測定した値は、実施例1~4については比較例1の測定値を100とする指数で示し、実施例5については比較例2の測定値を100とする指数で示し、実施例6については比較例3の測定値を100とする指数で示した。この指数が低いほど、加工性に優れる。
【0105】
[実施例1]
攪拌機付きオートクレーブに、窒素雰囲気下、シクロヘキサン792g、テトラメチルエチレンジアミン0.67mmol、1,3-ブタジエン76.3g、およびスチレン28.7gを仕込んだ後、重合開始剤として、n-ブチルリチウムを0.50mmol加え、60℃で重合を開始した。60分間重合反応を継続し、重合転化率が95%から100%の範囲になったことを確認してから、有機金属化合物として、n-ブチルリチウムを0.50mmol加えて、20分混合した後、下記式(7)で表されるポリオルガノシロキサンを、エポキシ基の含有量が0.27mmolとなるように添加し、下記式(7)で表されるポリオルガノシロキサンを、n-ブチルリチウムの存在下で30分間反応させた。その後、重合停止剤として、使用したn-ブチルリチウムの合計の2倍molに相当する量のメタノールを添加して、共役ジエン系ゴムを含有する溶液を得た。この溶液に、老化防止剤として、イルガノックス1520L(チバスペシャリティーケミカルズ社製)を、共役ジエン系ゴム100部に対して0.20部添加した後、スチームストリッピングにより溶媒を除去し、60℃で24時間真空乾燥して、固形状の共役ジエン系ゴムを得た。得られた実施例1の共役ジエン系ゴムの重量平均分子量(Mw)は723,000、スチレン単量体単位含有量は27重量%、ビニル結合含有量は58重量%であった。
【0106】
【化6】
【0107】
[実施例2]
攪拌機付きオートクレーブに、窒素雰囲気下、シクロヘキサン792g、テトラメチルエチレンジアミン0.67mmol、1,3-ブタジエン76.3g、およびスチレン28.7gを仕込んだ後、重合開始剤として、n-ブチルリチウムを0.50mmol加え、60℃で重合を開始した。60分間重合反応を継続し、重合転化率が95%から100%の範囲になったことを確認してから、上記式(7)で表されるポリオルガノシロキサンを、エポキシ基の含有量が0.27mmolとなるように添加し、上記式(7)で表されるポリオルガノシロキサンを30分間反応させた。次いで、有機金属化合物として、n-ブチルリチウムを0.50mmol加えて、n-ブチルリチウムを20分反応させた後に、重合停止剤として、使用したn-ブチルリチウムの2倍molに相当する量のメタノールを添加して、共役ジエン系ゴムを含有する溶液を得た。この溶液に、老化防止剤として、イルガノックス1520L(チバスペシャリティーケミカルズ社製)を、共役ジエン系ゴム100部に対して0.20部添加した後、スチームストリッピングにより溶媒を除去し、60℃で24時間真空乾燥して、固形状の共役ジエン系ゴムを得た。得られた実施例1の共役ジエン系ゴムの重量平均分子量(Mw)は836,000、スチレン単量体単位含有量は27重量%、ビニル結合含有量は59重量%であった。
【0108】
[実施例3]
上記式(7)で表されるポリオルガノシロキサンを添加し、反応させた後に有機金属化合物として添加したn-ブチルリチウムの添加量を、0.50mmolから0.20mmolに変更した以外は、実施例2と同様にして、固形状の共役ジエン系ゴムを得た。得られた実施例3の共役ジエン系ゴムの重量平均分子量(Mw)は1,030,000、スチレン単量体単位含有量は27重量%、ビニル結合含有量は58重量%であった。
【0109】
[実施例4]
ピペリジン0.50mmolをスチレン添加直後に添加した以外は、実施例1と同様にして、固形状の共役ジエン系ゴムを得た。得られた実施例4の共役ジエン系ゴムの重量平均分子量(Mw)は705,000、スチレン単量体単位含有量は27重量%、ビニル結合含有量は58重量%であった。
【0110】
[比較例1]
上記式(7)で表されるポリオルガノシロキサンを添加し、反応させた後に有機金属化合物としてn-ブチルリチウムを加えなかった点以外は、実施例2と同様にして、固形状の共役ジエン系ゴムを得た。得られた比較例1の共役ジエン系ゴムの重量平均分子量(Mw)は1,250,000、スチレン単量体単位含有量は27重量%、ビニル結合含有量は58重量%であった。
【0111】
[ゴム組成物の製造と評価]
容量250mlのブラベンダータイプミキサー中で、実施例1の共役ジエン系ゴム100部を30秒素練りし、次いでシリカ(ローディア社製、商品名「Zeosil1115MP」)50部、プロセスオイル(新日本石油社製、商品名「アロマックス T-DAE」)20部、およびシランカップリング剤:ビス(3-(トリエトキシシリル)プロピル)テトラスルフィド(デグッサ社製、商品名「Si69」)6.0部を添加して、110℃を開始温度として1.5分間混練後、シリカ(ローディア社製、商品名「Zeosil1115MP」)25部、酸化亜鉛3部、ステアリン酸2部および老化防止剤:N-フェニル-N’-(1,3-ジメチルブチル)-p-フェニレンジアミン(大内新興社製、商品名「ノクラック6C」)2部を添加し、更に2.5分間混練し、ミキサーから混練物を排出させた。混錬終了時の混練物の温度は150℃であった。混練物を、室温まで冷却した後、再度ブラベンダータイプミキサー中で、110℃を開始温度として2分間混練した後、ミキサーから混練物を排出させた。次いで、50℃のオープンロールで、得られた混練物に、硫黄1.40部、架橋促進剤:N-tert-ブチル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド(商品名「ノクセラーNS-P」、大内新興化学工業社製)1.2部、およびジフェニルグアニジン(商品名「ノクセラーD」、大内新興化学工業社製)1.2部を加えてこれらを混練した後、シート状のゴム組成物を取り出した。次いで、得られたゴム組成物の加工性の評価を行なった。表1に結果を示す。
また、実施例2~4および比較例1の共役ジエン系ゴムについても、それぞれ、同様にして、ゴム組成物を作製し、それぞれ、加工性の評価を行なった。表1にこれらの結果をまとめて示す。
【0112】
【表1】
【0113】
[実施例1~4、比較例1の評価]
表1に示すように、1,3-ブタジエンとスチレンとを共重合させた共役ジエン系重合体鎖に変性剤としてシロキサン化合物を反応させた後に、有機金属化合物を反応させることにより得られる共役ジエン系ゴムは、ゴム組成物としたときの加工性に優れるものであった(実施例2、3)。
また、1,3-ブタジエンとスチレンとを共重合させた共役ジエン系重合体鎖に変性剤としてシロキサン化合物を反応させる前に、有機金属化合物を反応させることにより得られる共役ジエン系ゴムは、ゴム組成物としたときの加工性により優れるものであった(実施例1、4)。
一方、1,3-ブタジエンとスチレンとを共重合させた共役ジエン系重合体鎖に変性剤としてシロキサン化合物を反応させる際に、有機金属化合物を反応させずに得られる共役ジエン系ゴムは、ゴム組成物としたときの加工性に劣るものであった(比較例1)。
【0114】
[実施例5]
テトラメチルエチレンジアミンの使用量を0.67mmolから0.005mmolに、1,3-ブタジエンの使用量を76.3gから105.0gに変更し、スチレン28.7gを使用しなかった以外は、実施例1と同様にして、固形状の共役ジエン系ゴムを得た。得られた実施例5の共役ジエン系ゴムの重量平均分子量(Mw)は760,000、スチレン単量体単位含有量は0重量%、ビニル結合含有量は11重量%であった。
【0115】
[比較例2]
ポリオルガノシロキサン添加直前に有機金属化合物としてn-ブチルリチウムを加えなかった点以外は、実施例5と同様にして、固形状の共役ジエン系ゴムを得た。得られた比較例2の共役ジエン系ゴムの重量平均分子量(Mw)は1,310,000、スチレン単量体単位含有量は0重量%、ビニル結合含有量は11重量%であった。
【0116】
[ゴム組成物の製造と評価]
実施例5および比較例2の共役ジエン系ゴムについて、それぞれ、実施例1と同様にして、ゴム組成物を作製し、それぞれ、加工性の評価を行なった。表2にこれらの結果をまとめて示す。
【0117】
【表2】
【0118】
[実施例5、比較例2の評価]
表2に示すように、1,3-ブタジエンを重合させた共役ジエン系重合体鎖に変性剤としてシロキサン化合物を反応させる前に、有機金属化合物を反応させることにより得られる共役ジエン系ゴムは、ゴム組成物としたときの加工性により優れるものであった(実施例5)。
一方、1,3-ブタジエンを重合させた共役ジエン系重合体鎖に変性剤としてシロキサン化合物を反応させる際に、有機金属化合物を反応させずに得られる共役ジエン系ゴムは、ゴム組成物としたときの加工性に劣るものであった(比較例2)。
【0119】
[実施例6]
スチレンの使用量を28.7gから24.7gに変更し、p-メチルスチレン3.9g使用した以外は、実施例1と同様にして、固形状の共役ジエン系ゴムを得た。得られた実施例6の共役ジエン系ゴムの重量平均分子量(Mw)は690,000、p-メチルスチレンを含むスチレン単量体単位含有量は27重量%、ビニル結合含有量は58重量%であった。
【0120】
[比較例3]
ポリオルガノシロキサン添加直前に有機金属化合物としてn-ブチルリチウムを加えなかった点以外は、実施例6と同様にして、固形状の共役ジエン系ゴムを得た。得られた比較例3の共役ジエン系ゴムの重量平均分子量(Mw)は1,010,000、p-メチルスチレンを含むスチレン単量体単位含有量は27重量%、ビニル結合含有量は58重量%であった。
【0121】
[ゴム組成物の製造と評価]
実施例6および比較例3の共役ジエン系ゴムについて、それぞれ、実施例1と同様にして、ゴム組成物を作製し、それぞれ、加工性の評価を行なった。表3にこれらの結果をまとめて示す。
【0122】
【表3】
【0123】
[実施例6、比較例3の評価]
表3に示すように、1,3-ブタジエンと、スチレンと、p-メチルスチレンとを共重合させた共役ジエン系重合体鎖に変性剤としてシロキサン化合物を反応させる前に、有機金属化合物を反応させることにより得られる共役ジエン系ゴムは、ゴム組成物としたときの加工性により優れるものであった(実施例6)。
一方、1,3-ブタジエンと、スチレンと、p-メチルスチレンとを共重合させた共役ジエン系重合体鎖に変性剤としてシロキサン化合物を反応させる際に、有機金属化合物を反応させずに得られる共役ジエン系ゴムは、ゴム組成物としたときの加工性に劣るものであった(比較例3)。