IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ アプライド マテリアルズ インコーポレイテッドの特許一覧

<>
  • 特許-耐腐食性保持リング 図1
  • 特許-耐腐食性保持リング 図2
  • 特許-耐腐食性保持リング 図3
  • 特許-耐腐食性保持リング 図4A
  • 特許-耐腐食性保持リング 図4B
  • 特許-耐腐食性保持リング 図5A
  • 特許-耐腐食性保持リング 図5B
  • 特許-耐腐食性保持リング 図6A
  • 特許-耐腐食性保持リング 図6B
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-13
(45)【発行日】2023-03-22
(54)【発明の名称】耐腐食性保持リング
(51)【国際特許分類】
   B24B 37/32 20120101AFI20230314BHJP
   H01L 21/304 20060101ALI20230314BHJP
【FI】
B24B37/32 Z
H01L21/304 622G
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2018519753
(86)(22)【出願日】2016-09-22
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2018-11-01
(86)【国際出願番号】 US2016053180
(87)【国際公開番号】W WO2017065951
(87)【国際公開日】2017-04-20
【審査請求日】2019-09-24
(31)【優先権主張番号】14/885,944
(32)【優先日】2015-10-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】390040660
【氏名又は名称】アプライド マテリアルズ インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】APPLIED MATERIALS,INCORPORATED
【住所又は居所原語表記】3050 Bowers Avenue Santa Clara CA 95054 U.S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100088694
【弁理士】
【氏名又は名称】弟子丸 健
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100067013
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 文昭
(74)【代理人】
【識別番号】100086771
【弁理士】
【氏名又は名称】西島 孝喜
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100109335
【弁理士】
【氏名又は名称】上杉 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120525
【弁理士】
【氏名又は名称】近藤 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100139712
【弁理士】
【氏名又は名称】那須 威夫
(74)【代理人】
【識別番号】100141553
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 信彦
(72)【発明者】
【氏名】シーラヴァント ガンガダール
(72)【発明者】
【氏名】ヤヴェルバーグ サイモン
(72)【発明者】
【氏名】フー ヨンチ
【審査官】山内 康明
(56)【参考文献】
【文献】韓国公開特許第10-2008-0028392(KR,A)
【文献】特開2002-079461(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2012-0095280(KR,A)
【文献】特表2015-519012(JP,A)
【文献】特開2006-352108(JP,A)
【文献】特開2002-355753(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0324017(US,A1)
【文献】特開2003-311593(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2007/0034335(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0099437(US,A1)
【文献】特表2008-543058(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0151755(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0120803(US,A1)
【文献】特開2001-025962(JP,A)
【文献】米国特許第06390908(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24B 37/32
H01L 21/304
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
研磨システム用の保持リングであって、
頂面、内径側壁、外径側壁および底面を有するリング形の本体であり、前記内径側壁が、基板に外接するように構成されたリング形の本体
を備え、前記リング形の本体が、
リング形の剛性部分と、
前記リング形の剛性部分上に積み重ねられたリング形のポリマー部分であり、前記底面を含む前記リング形の剛性部分の少なくとも3つの側面を覆うリング形のポリマー部分と、
前記底面に形成された複数の溝と、
前記リング形のポリマー部分を貫いて形成された複数の洗浄ポートであり、前記保持リングに捕らえられたスラリを洗い流すことを可能にするように構成されており、前記リング形のポリマー部分と連続するポリマー材料によって前記リング形の剛性部分から隔離された複数の洗浄ポートと
を備える
保持リング。
【請求項2】
前記洗浄ポートが、前記リング形の本体の中心線に対して垂直ではない、請求項1に記載の保持リング。
【請求項3】
前記リング形のポリマー部分が、
前記リング形の剛性部分に延入した突出部
を備え、前記突出部を貫いて前記洗浄ポートが形成された、請求項1に記載の保持リング。
【請求項4】
前記洗浄ポートの内径が、前記ポリマー材料で構成される前記リング形のポリマー部分によって覆われた、請求項3に記載の保持リング。
【請求項5】
前記リング形の剛性部分が、前記ポリマー材料で構成される前記リング形のポリマー部分によって完全に封入された、請求項1に記載の保持リング。
【請求項6】
前記洗浄ポートの内径に形成されたコーティングであり、前記リング形の剛性部分を前記洗浄ポートから隔離するコーティング
をさらに備え、前記コーティングは前記ポリマー材料で構成される、請求項1に記載の保持リング。
【請求項7】
研磨システム用の保持リングであって、
頂面、内径側壁、外径側壁および底面を有するリング形の本体であり、前記内径側壁が、基板に外接するように構成されたリング形の本体
を備え、前記リング形の本体が、
リング形の金属部分と、
前記底面を含む前記リング形の剛性部分の外面を覆うリング形のポリマー部分と、
前記リング形の本体の前記底面に形成された複数の溝と、
前記リング形のポリマー部分を貫いて形成された複数の洗浄ポートであり、前記保持リングに捕らえられたスラリを洗い流すことを可能にするように構成されており、前記リング形のポリマー部分と連続するポリマー材料によって前記リング形の金属部分から隔離された複数の洗浄ポートと
を備える
保持リング。
【請求項8】
前記洗浄ポートが、前記リング形の本体の中心線に対して垂直ではない、請求項7に記載の保持リング。
【請求項9】
前記リング形のポリマー部分が、
前記リング形の金属部分に延入した突出部
を備え、前記突出部を貫いて前記洗浄ポートが形成された、請求項7に記載の保持リング。
【請求項10】
前記洗浄ポートの内径が、前記ポリマー材料で構成される前記リング形のポリマー部分によって覆われた、請求項9に記載の保持リング。
【請求項11】
前記リング形の金属部分が、前記ポリマー材料で構成される前記リング形のポリマー部分によって完全に封入された、請求項7に記載の保持リング。
【請求項12】
前記洗浄ポートの内径に形成されたコーティングであり、前記リング形の金属部分を前記洗浄ポートから隔離するコーティング
をさらに備え、前記コーティングは前記ポリマー材料で構成される、請求項7に記載の保持リング。
【請求項13】
前記リング形の金属部分がステンレス鋼から製造された、請求項7に記載の保持リング。
【請求項14】
前記リング形のポリマー部分が、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、ポリエチレンテレフタレート、ポリエーテルエーテルケトン、およびポリブチレンテレフタレートのうちの少なくとも1つから製造された、請求項13に記載の保持リング。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、半導体基板などの基板を研磨する研磨システムに関する。より詳細には、実施形態は、保持リング、化学機械平坦化(CMP:chemical mechanical planarizaiton)システム、および保持リングの寿命を向上させる方法に関する。
【背景技術】
【0002】
化学機械研磨(CMP:chemical mechanical polishing)は、高密度集積回路の製造において、基板上に堆積させた材料層を平坦化または研磨するために一般的に使用されているプロセスである。キャリアヘッドは、キャリアヘッド内に保持された基板をCMPシステムの研磨ステーションに提供することができ、研磨流体の存在下で、動いている研磨パッドに基板を制御可能に押し付けることができる。化学的活性と機械的活性との組合せによって、研磨面に接触した基板の特徴面(feature)側から材料が除去される。研磨中に基板から除去された材料は、研磨流体中に懸濁する。懸濁した材料は、研磨流体によって研磨ステーションから除去される。
【0003】
キャリアヘッドは通常、基板に外接し、キャリアヘッド内での基板の保持を容易にし得る保持リングを含む。研磨の間、保持リングの底面は通常、研磨パッドと接触する。基板への研磨流体の移動および基板からの研磨流体の移動を促進するために、保持リングが溝を有することがある。基板を研磨する間に、スラリおよび除去された懸濁材料が、基板と保持リングとの間のエリアに付着し、蓄積することがある。付着した材料は保持リングの金属表面を腐食する。さらに、付着した材料が凝集し、研磨パッド上に落下し、基板欠陥の原因になることもある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
したがって、改良された保持リング、改良された保持リングを有する研磨システムが必要である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本明細書に記載された実施態様は、研磨システム用の保持リングを、腐食性の研磨ケミストリから保護する。一実施形態では、保持リングが、頂面、内径側壁(inside diameter sidewall)、外径側壁(outer diameter sidewall)および底面を有するリング形の本体を有する。内径側壁は、基板に外接するように構成されている。リング形の本体は、リング形の剛性部分(rigid ring-shaped portion)と、リング形の剛性部分上に積み重ねられたリング形のポリマー部分(polymeric ring-shaped portion)であり、リング形の剛性部分の少なくとも3つの側面を覆うリング形のポリマー部分と、底面に形成された複数の溝と、リング形のポリマー部分を貫いて形成された複数の洗浄ポート(wash port)であり、リング形の剛性部分から隔離された複数の洗浄ポートとを有する。
【0006】
上に挙げた本発明の特徴を詳細に理解することができるように、本発明のより具体的な説明が、実施形態を参照することによって行われ、その実施形態のうちのいくつかは、添付の図面に示されている。しかしながら、添付の図面は、本発明の典型的な実施形態だけを示したものであり、したがって、本発明の範囲を限定するものと考えるべきではないことに留意すべきである。なぜならば、他の有効な実施形態を本発明が受け入れる可能性があるためである。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】研磨システムの部分断面図である。
図2】保持リングを有するキャリアヘッドの部分断面図である。
図3】保持リングの上面図である。
図4A】耐腐食性保持リングの一実施形態を示す断面図である。
図4B】耐腐食性保持リングの一実施形態を示す断面図である。
図5A】耐腐食性保持リングの別の実施形態を示す断面図である。
図5B】耐腐食性保持リングの別の実施形態を示す断面図である。
図6A】耐腐食性保持リングのさらに別の実施形態を示す断面図である。
図6B】耐腐食性保持リングのさらに別の実施形態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
理解を容易にするために、可能な場合には、上記の図に共通する同一の要素を示すために同一の参照符号を使用した。特段の言及なしに、1つの実施形態において開示された要素が別の実施形態で有益に利用され得ることが予期される。
本明細書には、保持リング、化学機械平坦化システム(CMP)および基板を研磨する方法が記載されている。保持リングの耐用寿命を延ばすため、保持リングは、金属部分の封入(encapsulation)を含む。
【0009】
図1は、化学機械研磨システム(CMP)100の部分断面図である。CMPシステム100はキャリアヘッド150を含む。キャリアヘッド150は、保持リング130の内側に基板135(破線で示されている)を保持し、処理の間、基板135を、研磨パッド175の研磨面180と接触した状態に置く。研磨パッド175はプラテン176上に配されている。プラテン176は、プラテンシャフト182によってモータ184に結合されている。CMPシステム100が基板135を研磨しているときに、モータ184は、プラテンシャフト182の軸186を軸にしてプラテン176、したがって研磨パッド175の研磨面180を回転させる。
CMPシステム100は、化学物質送達システム190およびパッドリンスシステム(pad rinse system)160を含むことができる。化学物質送達システム190は、スラリまたは脱イオン水などの研磨流体191を保持する化学物質タンク196を含む。スプレーノズル198によって研磨流体191を研磨面180に吹き付けることができる。研磨面180は、研磨流体191を回転させ、それによって研磨流体191を基板135と接触させる。基板135は、基板135を平坦化するためにキャリアヘッド150によって研磨面180に押し付けられている。捕集枡(catch basin)192が、回転により研磨パッド175から落下した研磨流体191を集めることができる。集められた研磨流体191を濾過して不純物を除去し、化学物質タンク196に戻して再使用することができる。
【0010】
パッドリンスシステム160は、研磨パッド175の研磨面180に脱イオン水164を吹き付ける水送達管162を含むことができる。パイプが、水送達管162を脱イオン水タンク(図示せず)に接続する。研磨後に、水送達管162からの脱イオン水164が、基板135、キャリアヘッド150および研磨面180から、屑および過剰な研磨流体191を洗い落とすことができる。パッドリンスシステム160と化学物質送達システム190は別個の要素として示されているが、脱イオン水164送達および研磨流体191を送達する両方の機能を単一システムが実行してもよいことを理解すべきである。
【0011】
キャリアヘッド150はシャフト108に結合されている。シャフト108はモータ102に結合されている。モータ102はアーム170に結合されている。モータ102は、アーム170に対してキャリアヘッド150を、横方向(Xおよび/またはY方向)に直線運動で移動させる。キャリアヘッド150はさらにアクチュエータ104を含み、アクチュエータ104は、アーム170および/または研磨パッド175に対してキャリアヘッド150をZ方向に移動させるように構成されている。キャリアヘッド150は、回転アクチュエータまたはモータ106にも結合されており、回転アクチュエータまたはモータ106は、キャリアヘッド150の中心線111と整列した回転軸を軸にしてキャリアヘッド150をアーム170に対して回転させる。モータ/アクチュエータ104、102および106は、研磨パッド175の研磨面180に対してキャリアヘッド150を位置決めしかつ/または移動させる。一実施形態では、モータ/アクチュエータ104、102および106が、研磨面180に対してキャリアヘッド150を回転させ、さらに、処理の間、研磨パッド175の研磨面180に基板135を押し付ける下向きの力を提供する。
【0012】
キャリアヘッド150は、可撓性膜140を収容する本体125を含む。可撓性膜140は、キャリアヘッド150の下側に、基板135と接触する表面を提供する。キャリアヘッド150はさらに、本体125と可撓性膜140との間に配された1つまたは複数のブラダ(bladder)110/112を含むことができる。可撓性膜140は、キャリアヘッド150内に基板135が保持されているときに基板135の裏側と接触する。可撓性膜140に力を加えるため、ブラダ110/112は、ブラダ110/112に流体を選択的に送達する第1の可変圧力源145Aに結合されている。一実施形態では、ブラダ110が可撓性膜140の外側ゾーンに力を加え、ブラダ112が可撓性膜140の中心ゾーンに力を加える。ブラダ110/112から可撓性膜140に加えられた力は基板135の部分に伝えられる。これらの力を使用して、研磨パッド175の研磨面180に対して基板135がアサートする、端から中心までの圧力プロファイルを制御することができる。基板135の別々の領域に対する力を可撓性膜140を通して制御するために、第1の可変圧力源145Aは、ブラダ110/112のそれぞれに流体を独立して送達するように構成されている。さらに、キャリアヘッド150内での基板135の保持を容易にする吸引を基板135の裏側に適用するため、キャリアヘッド150に真空ポート(図示せず)を提供することもできる。
【0013】
本体125および可撓性膜140には保持リング130が外接している。保持リング130は、アクチュエータ132によって本体125に結合されている。アクチュエータ132は、第2の可変圧力源145Bによって制御される。第2の可変圧力源145Bは、流体を供給し、またはアクチュエータ132から流体を除去し、それによって保持リング130は、キャリアヘッド150の本体125に対してZ方向に移動する。第2の可変圧力源145Bは、モータ104によって提供される移動とは無関係に、保持リング130のZ方向の移動を提供するように適合されている。第2の可変圧力源145Bは、アクチュエータ132および/または保持リング130に負圧または正圧を加えることによって、保持リング130の移動を提供することができる。一態様では、研磨パッド175に基板135を押し付けるために使用される力による研磨プロセスの間、研磨パッド175の研磨面180に向かって保持リング130を押しやるために、保持リング130に圧力が加えられる。
【0014】
保持リング130は、金属、セラミック、プラスチックなどの1種または数種の材料から形成することができる。これらの材料は、保持リング130に剛性および長寿命を提供するように選択することができる。保持リング130は、複数のスラリ放出溝(slurry release groove)244(図2に示されている)を有することができる。保持リング130はさらに、1つまたは複数の洗浄ポート120を有することができる。洗浄ポート120およびスラリ放出溝244は、キャリアヘッド150および保持リング130内に捕らえられたスラリを洗い流すことを可能にする。洗浄ポート120を通して脱イオン水を吹き付けて、保持リング130および可撓性膜140に付着した粒子を洗い落とすことは、粒子が研磨面180に再導入されることを有利に防ぐ。この研磨面への粒子の再導入は、研磨中に基板を引っかいたりまたは他の態様で基板を傷つけたりすることにつながることがある。
キャリアヘッド150の保持リング130は、基板135の研磨中に研磨面180および研磨流体191と接触する。化学物質送達システム190は、研磨中に、研磨面180および基板135に研磨流体191を送達する。保持リング130のスラリ放出溝244および洗浄ポート120は、研磨流体191および同伴研磨屑を保持リング130を通して輸送して基板135から遠ざけることを容易にする。保持リング130は、保持リング130を構成する金属などのある種の材料を研磨流体191から保護するような方式で、したがって、保持リング130の寿命を延ばし、プロセス汚染の潜在的な供給源を低減させるような方式で形成することができる。
【0015】
図2は、キャリアヘッド150および保持リング130の一部分の断面図である。保持リング130とキャリアヘッド150の本体125の支持構造体214との間に間隙222を形成することができる。間隙222は、支持構造体214が、保持リング130から垂直方向に独立して移動することを可能にする。さらに、支持構造体と保持リング130との間にボイド(void)220が存在してもよい。基板135を研磨している間に、研磨流体、すなわちスラリ、および研磨流体中に懸濁した粒子がボイド220および間隙222に入る可能性がある。懸濁した固体(粒子)が、ボイド220および間隙222の中でキャリアヘッド150に付着することがある。キャリアヘッド150内の同伴された粒子は脱離することがあり、それらの粒子が除去されない場合には、研磨中に基板135を傷つけることがある。
保持リング130はリング形とすることができ、図1に示された中心線111と一致する中心線を有することができる。保持リング130はさらに、底面210、内径側壁254および外径側壁252を含むことができる。内径側壁254は、基板135を受け入れるようにサイズが決められた内半径(inner radius)を有する。保持リング130の内径側壁254は、間隙222およびボイド220によって支持構造体214から分離されている。
【0016】
保持リング130は、2つ以上の部分から形成された本体202からなることができる。本体202のそれらの部分は、ぴったりと合着して本体202のリング形状を形成する1つまたは複数の部片を含むことができる。一実施形態では、保持リング130の本体202が、リング形の2つの部分から形成される。例えば、保持リング130は、剛性部分284に取り付けられたポリマー部分280を有することができる。別の実施形態では、3つ以上の部分から、保持リング130を形成することができる。例えば、一緒に保持された別個の複数のセグメントから、またはポリマー部分280によって封入された別個の複数のセグメントから、剛性部分284を形成することができる。
【0017】
保持リング130の剛性部分284を、保持リング130のポリマー部分280に結合することができる。一実施形態では、剛性部分284を保護するために、剛性部分284が、ポリマー部分280によって完全に封入される。このような構成は、成形によってまたは付加製造(additive manufacturing)によって達成することができる。別の実施形態では、剛性部分284が、ポリマー部分280によって部分的に封入されており、検査のために剛性部分284の一部が露出している。
【0018】
剛性部分284は、ステンレス鋼、アルミニウム、モリブデンまたは他の金属もしくは合金、あるいはセラミックまたはセラミックが充填されたポリマープラスチック、あるいはこれらの材料または他の適当な材料の組合せから形成することができる。一例では、本体202の剛性部分284は、ステンレス鋼(SST)などの金属から形成することができる。ポリマー部分280は、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、ポリブチレンナフタレート(PBN)、ポリエチレンテレフタレート、ポリエーテルエーテルケトン、ポリブチレンテレフタレート、ERTALYTE(登録商標)TX、PEEK、TORLON(登録商標)、DELRIN(登録商標)、PET、VESPEL(登録商標)、DURATROL(登録商標)、またはこれらの材料および/もしくは他の適当な材料の組合せなどのプラスチック材料から製造することができる。一例では、パッド175および基板135と接触する摩耗面を形成するために本体202のポリマー部分280がプラスチック材料から製造され、ポリマー部分280に剛性を提供するために剛性部分284がSSTから形成される。
【0019】
それに加えてまたはその代わりに、CMPシステム100内で基板135を処理するために使用される研磨流体のケミストリに基づいて選択されたポリマー材料などの、プロセス流体との化学的相互作用に抵抗する疎水性材料または疎水性コーティングを有するように、ポリマー部分280を形成することもできる。このポリマー材料は、パリレン(ポリパラキシリレン)などの炭素含有材料、またはPEEK(ポリエーテルエーテルケトン)、ダイヤモンドライクカーボン(diaond-like carbon:DLC)などの他の炭素含有材料とすることができる。このコーティングについては図5Aおよび図5Bに関して後により詳細に論じる。
【0020】
続けて図2を参照する。上で簡単に論じたとおり、本体202は、底面210に形成されたスラリ放出溝244を含むことができる。スラリ放出溝244は、内径側壁254から外径側壁252まで延びる。保持リング130が回転すると、研磨流体191、および研磨によって基板135から除去された材料などの同伴研磨屑は、パッド175およびキャリアヘッド150の回転により、スラリ放出溝244を通って移動する傾向がある。
【0021】
洗浄ポート120は、本体202の任意の部分に形成することができる。洗浄ポート120は第1の中心線290を有する。第1の中心線290は、キャリアヘッド150の中心線111(したがって保持リング130の中心線)に対して実質的に垂直とすることができる。洗浄ポート120は、保持リング130の外径側壁252に導かれた洗浄流体(すなわち脱イオン水164)が保持リング130の本体202を通り抜け、キャリアヘッド150内に画定されたボイド220および間隙222に入るための経路を提供する。洗浄ポート120のサイズは、キャリアヘッド150のボイド220内および間隙222内に捕らえられているかもしれない同伴研磨屑を除去するのに十分な洗浄流体の流れを提供するように決められる。洗浄ポート120の向きは、研磨パッド175の頂部研磨面180に対して第1の中心線290が平行になるような向きとすることができる。あるいは、第1の中心線290が第2の中心線293の位置まで回転し、洗浄ポート120が外径側壁252から上向きの角度になるような鉛直角(vertical angle)292で、洗浄ポート120を傾けることもできる。第1の中心線290(または水平線)に対する洗浄ポート120の鉛直角292は、+/-30度など、約-80度よりも大きくかつ約80度よりも小さくすることができる。
【0022】
洗浄ポート120の数および構成は、構成可能(configurable)としても、および/またはプロセス条件に依存してもよい。例えば、保持リング130は、キャリアヘッド150に付着した固体を洗い落とし、それらの固体をキャリアヘッド150から遠ざけることを可能にするために、間隔を置いて配置された18個までまたは19個以上の洗浄ポート120を有することができる。キャリアヘッド150のボイド220および間隙222の全ての表面を洗浄流体で洗浄することができることを保証するため、洗浄ポート120は、保持リング130に沿って等間隔にまたは異なる間隔で配置することができる。洗浄ポート120を、4つまたは5つの洗浄ポート120からなるグループなど小さなグループとして形成することもでき、締め具のための空間または後に詳細に論じる図4Aから図6Aに示された剛性部分284の部分などの他の構成要素のための空間を提供するために、それらのグループを間隔を置いて配置することもできる。
図3は、保持リング130の上面図である。保持リング130は中心302を有することができる。保持リング130は頂面312を有する。頂面312は、1つまたは複数の取付特徴部(mounting feature)310を有することができる。取付特徴部310は、本体202のポリマー部分280内に延びることができる。あるいは、取付特徴部310は、本体202の剛性部分284内に延びることができる。取付特徴部310は、穴、タブ(tab)、または保持リング130をアクチュエータ132に取り付けるのに適した他の特徴とすることができる。保持リング130は、中心302と半径方向に整列した断面X-Xを有する。
【0023】
図4Aから図6Bは、断面X-Xに沿って切った、耐腐食性保持リング130の異なる実施形態を示す。図4Aから図6Bに示された1つまたは複数の実施形態では、ポリマー部分280がプラスチック材料から形成されており、剛性部分284が、ステンレス鋼などの金属から形成されている。有利には、保持リング130の長寿命を促進するために、ポリマー部分280の材料が、保持リング130の洗浄ポート120を流れている腐食性の流体から剛性部分284を保護する。一方、剛性部分284の材料は、保持リング130に構造的な剛性を提供する。
【0024】
図4Aおよび図4Bは、耐腐食性保持リング130の一実施形態を示す断面図である。保持リング130は加工流体(working fluid)にさらされる。保持リング130は、保持リング130を横切って流体を導く洗浄ポート120およびスラリ放出溝244を有する。図4Aおよび図4Bは、ポリマー部分280によって封入された剛性部分284と、ポリマー部分280を貫いて配された洗浄ポート120とを有する保持リング130の一実施形態を示す。すなわち、剛性部分284は、ポリマー部分280によって完全に包囲されている。
【0025】
剛性部分284は、頂面414および底面416を有する。底面416は、輪郭480を有することができる。輪郭480は、不規則な輪郭または波形などの規則的な輪郭とすることができる。輪郭480は、剛性部分284の底面416にポリマー部分280を延入させる突出部481を有することができる。輪郭480は、正方形、正弦波または他の形状のパターンを形成する突出部481を有することができる。一実施形態では、剛性部分284の底面416の輪郭480が、実質的に長方形の突出部481を有する。有利には、剛性部分284の底面416に延入するポリマー部分280の突出部481が、ポリマー部分280を貫いて形成された洗浄ポート120を収容するためのスペースを提供する。このようにすると、洗浄ポート120は剛性部分284から隔離され、したがって、洗浄ポート120を流れている化学物質および他の材料は、保持リング130の剛性部分284と接触することができない。
輪郭480は周期486を有することができる。周期486は、隣接する突出部481の始点間の距離の尺度である。周期486を短くすることができ、その場合、隣接する突出部481は近くなる。あるいは、周期486を長くすることもでき、その場合、隣接する突出部481は遠くなる。周期486を規則的とし、それによって、周期486を、剛性部分284の底面416の全体に沿って実質的に同様の間隔で発生させることができる。規則的な周期486が、規則的な波形を有する輪郭480を表してもよい。あるいは、洗浄ポート120の配置または洗浄ポート120のグループの配置に対応するために周期486を変化させることもできる。
【0026】
突出部481は、幅484の分だけ離すことができる。突出部481間に1つまたは複数の洗浄ポート120を形成することができるように幅484を構成することができる。一実施形態では、1つの洗浄ポート120が形成されるように幅484が構成される。別の実施形態では、4つの洗浄ポート120など2つ以上の洗浄ポート120が形成されるようにこの幅が構成される。いくつかの実施形態では、ポリマー部分280の突出部481の幅484のサイズが実質的に同様である。他の実施形態では、ポリマー部分280の突出部481の幅484が、異なるサイズにされてもよい。例えば、保持リング130の1つの位置に1つの洗浄ポート120を収容し、保持リング130の別の位置に2つの洗浄ポート120を収容するなど、突出部481はそれぞれ、異なる数の洗浄ポート120を収容することができる。
【0027】
任意選択で、剛性部分284は、取付特徴部310のための受部(receiver)410を有してもよい。受部410は穴として示されているが、その代わりに、スタッド(stud)、ピン、または外部に突き出た他の特徴部とすることもできる。受部410はねじ山を有することができ、または、締め具によって保持リング130をキャリアヘッド150に取り付けることを可能にする他の特徴部を有することができる。有利には、受部410が、剛性部分284の材料に形成される。こうすると、保持リング130をキャリアヘッド150に取り付ける固定点が、ポリマー部分280のより軟かい材料に受部が形成されている場合よりも強くなる。
有利には、剛性部分284は、SSTなどの剛性材料から形成され、ポリマー部分280のプラスチック保護材料によって完全に封入することができる。剛性部分284の底面416の突出部481は、剛性部分284を腐食性の加工流体にさらさない洗浄ポート120を保持リング130に形成することを可能にする。このようにすると、剛性部分284が腐食性の加工流体にさらされる従来の保持リングよりも保持リング130の耐用寿命が長くなる。
図5Aおよび図5Bは、耐腐食性保持リング130の別の実施形態を示す断面図である。保持リング130は加工流体にさらされる。保持リング130は、保持リング130を横切って流体を導く洗浄ポート120およびスラリ放出溝244を有する。図5Aおよび図5Bは、ポリマー部分280によって封入された剛性部分284と、ポリマー部分280および剛性部分284を貫いて配された洗浄ポート120とを有する保持リング130の一実施形態を示す。
【0028】
剛性部分284は、頂面414および底面516を有する。頂面414および底面516は、保持リング130の頂面312と実質的に平行とすることができる。剛性部分284は、剛性部分284を貫いて配された穴520を有することができる。ポリマー部分280は、剛性部分284の穴520と実質的に整列した穴522を有することができる。洗浄ポート120は、穴520、522を通って内径側壁254から外径側壁252まで延びている。
【0029】
洗浄ポート120は、ポリマー部分280および剛性部分284を貫いて形成することができる。穴520、522に、特に洗浄ポート120に対して剛性部分284を露出させる穴520に、コーティング526を配することができる。コーティング526は、洗浄ポート120の通路を内張りして、洗浄ポート120を流れている流体が保持リング130の剛性部分284と接触することを防ぐ。コーティング526は、炭素含有材料などのポリマー材料から形成することができる。この炭素含有材料は、パリレン(ポリパラキシリレン)、例えばパリレンC(塩素化線状ポリパラキシリレン)、パリレンN(線状ポリパラキシリレン)およびパリレンX(橋かけポリパラキシリレン)を含むことができる。使用することができる他の炭素含有材料は、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)およびダイヤモンドライクカーボン(DLC)を含む。コーティング526は、洗浄ポート120を流れているケミストリによって剛性部分284が腐食することを防ぐ。
【0030】
コーティング526は、保持リング130を形成するために使用される印刷プロセス中など、付加製造操作において塗布することができる。あるいは、吹付け、浸漬または他の適当な方法によってコーティング526を塗布することもできる。別の代替実施形態では、コーティング526が、ポリマー部分280の連続した一体の部分である。例えば、剛性部分284をポリマー部分280でオーバーモールディング(over-molding)するオーバーモールディングプロセスでコーティング526を形成することができる。有利には、コーティング526が、洗浄ポート120を流れているケミストリから剛性部分284を保護し、流体が剛性部分284を腐食し劣化させることを防ぐ。したがって、コーティング526は、保持リング130の耐用年数を延ばす。
図6Aおよび図6Bは、耐腐食性保持リング130のさらに別の実施形態を示す断面図である。保持リング130は加工流体にさらされる。保持リング130は、内径側壁254から外径側壁252まで保持リング130を横切って流体を導く洗浄ポート120およびスラリ放出溝244を有する。図6Aおよび図6Bは、剛性部分284がポリマー部分280によって部分的に封入され、洗浄ポート120がポリマー部分280を貫いて配された、保持リング130の一実施形態を示す。
【0031】
剛性部分284は、頂面612および底面616を有する。底面616は、図4を参照して説明した輪郭と同様の輪郭680を有することができる。輪郭680は、ポリマー部分280から延び、剛性部分284の底面616に延入する突出部681を有することができる。突出部681は、長方形、半円形または他の適当な形状とすることができる。一実施形態では、剛性部分284の底面616が、輪郭680を形成する実質的に半円形の突出部681を有する。有利には、剛性部分284の底面616に延入するポリマー部分280の突出部681が、洗浄ポート120のないポリマー部分280を貫いて形成された洗浄ポート120を形成するためのスペースを提供し、それによって、剛性部分284が、洗浄ポート120を流れている化学物質にさらされることを防ぐ。
【0032】
輪郭680の突出部681は周期686を有することができる。洗浄ポート120の配置に対応するため、周期686は、上で論じたとおり、規則的な周期または不規則な周期とすることができる。それぞれの突出部681に1つまたは複数の洗浄ポート120を形成することができるように突出部681を構成することができる。一実施形態では、1つの洗浄ポート120が形成されるように突出部681が構成される。別の実施形態では、3つの洗浄ポート120など2つ以上の洗浄ポート120が形成されるように突出部681が構成される。いくつかの実施形態では、剛性部分284の突出部681のサイズが、隣接する突出部681のサイズと実質的に同様である。他の実施形態では、剛性部分284の突出部481が異なるサイズにされてもよい。
【0033】
剛性部分284の頂面612を、保持リング130の頂面312と一致させることができる。頂面612の取付特徴部310が、保持リング130をキャリアヘッド150に固定する。ポリマー部分280は、頂面612を除く剛性部分284の全体を封入することができる。ポリマー部分280の側面690は、剛性部分284がその中に配された開口610を形成する。ポリマー部分280の開口610にスナップ式にはめられ、またはポリマー部分280の開口610からスナップ式に取り外されるように、剛性部分284を構成することができる。側面690は、頂面612を除く剛性部分284の全体が処理ケミストリにさらされることを防ぐ。頂面612はキャリアヘッド150に取り付けられ、キャリアヘッド150は、剛性部分284の頂面612が処理ケミストリにさらされることを実質的に防ぐ。有利には、保持リング130の剛性部分284の頂面612が露出していることが、保持リング130のポリマー部分280および/または剛性部分284の容易な組立ておよび独立した交換を可能にする。
【0034】
以上の説明は本発明の実施形態を対象としているが、本発明の基本的な範囲を逸脱することなく本発明の他の追加の実施形態を考案することができる。
図1
図2
図3
図4A
図4B
図5A
図5B
図6A
図6B