(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-14
(45)【発行日】2023-03-23
(54)【発明の名称】磁場応答性ソフトマテリアル用ポリウレタンエラストマー組成物
(51)【国際特許分類】
C08L 75/08 20060101AFI20230315BHJP
C08K 3/01 20180101ALI20230315BHJP
C08G 18/48 20060101ALI20230315BHJP
C08G 18/76 20060101ALI20230315BHJP
F16F 15/02 20060101ALN20230315BHJP
【FI】
C08L75/08
C08K3/01
C08G18/48 079
C08G18/76
C08G18/48 004
F16F15/02 Q
(21)【出願番号】P 2018104705
(22)【出願日】2018-05-31
【審査請求日】2021-05-17
(73)【特許権者】
【識別番号】518192448
【氏名又は名称】三俣 哲
(73)【特許権者】
【識別番号】000000387
【氏名又は名称】株式会社ADEKA
(74)【代理人】
【識別番号】110002170
【氏名又は名称】弁理士法人翔和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】三俣 哲
(72)【発明者】
【氏名】川合 巳佳
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 寛之
(72)【発明者】
【氏名】本間 正敏
【審査官】佐藤 のぞみ
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-282636(JP,A)
【文献】特開平08-293115(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 75/00-75/16
C08K 3/00-13/08
C08G 18/00-18/87
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオール化合物とポリイソシアネート化合物との反応物、及び磁性粒子を含有するポリウレタンエラストマー組成物であって、ポリオール化合物が下記一般式(1)で表されるポリオール化合物を含み、ポリイソシアネート化合物が芳香環を有するポリイソシアネート化合物であり、磁性粒子の含量が50~90質量%であ
る磁場応答性ソフトマテリアル用ポリウレタンエラストマー組成物。
【化1】
(式中、Xは、直接結合、酸素原子、硫黄原子、スルフィニル基、スルホン基、又は下記の一般式(2)で表わされる基を表し、R
1、R
2は、炭素数2~4のアルキレン基を表し、a、bは1~80の数を表す。)
【化2】
(式中、R
3、R
4は、水素原子、炭素数1~10の炭化水素基、炭素数1~2のフッ化アルキル基、又はR
3とR
4とが架橋した炭素数6~10の炭化水素基を表す。)
【請求項2】
芳香環を有するポリイソシアネート化合物が、ジイソシアネート化合物である請求項1に記載
の磁場応答性ソフトマテリアル用ポリウレタンエラストマー組成物。
【請求項3】
ポリオール化合物が、前記一般式(1)で表されるポリオール化合物及び、3価以上のポリオール化合物にエチレンオキシド
及び/又はプロピレンオキシドを付加させたポリエーテルポリオールである請求項1又は2に記載
の磁場応答性ソフトマテリアル用ポリウレタンエラストマー組成物。
【請求項4】
磁性粒子が、鉄、ニッケル、コバルト、並びにそれらを含む酸化物及び合金からなる群から選択される磁性粒子である請求項1~3のいずれか1項に記載
の磁場応答性ソフトマテリアル用ポリウレタンエラストマー組成物。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載
の磁場応答性ソフトマテリアル用ポリウレタンエラストマー組成物からな
る磁場応答性ソフトマテリアル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高弾性磁場応答性ソフトマテリアルに好適に使用できるポリウレタンエラストマー組成物、及び当該ポリウレタンエラストマー組成物からなる高弾性磁場応答性ソフトマテリアルに関する。
【背景技術】
【0002】
ゴム状又はゲル状の高分子材料に鉄粉等の磁性材料を均一分散させて得られる高弾性磁場応答性ソフトマテリアルは、磁場を印加すると、その磁場の強度に応じてその弾性率が変化する新素材であり、その特性を利用して防振・制振材やエネルギー伝達材料等としての応用が期待されている。
【0003】
磁気応答性材料に使用される高分子材料としては、シリコーン(例えば、特許文献1~4を参照)、ポリウレタン(例えば、特許文献3~7を参照)等が検討されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平4-266970号公報
【文献】特開平5-025316号公報
【文献】特開2013-064441号公報
【文献】特許6113351号公報
【文献】特開平9-102411号公報
【文献】特表2010-513630号公報
【文献】WO2016/163179号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来知られた磁気応答性材料は、弾性率の変化が十分大きいとはいえず、磁場の印加により弾性率が大きく変化する材料が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、芳香環を有するポリエーテル化合物と芳香環を有するポリイソシアネート化合物の中に磁性粒子が分散したポリウレタンエラストマー組成物を用いることにより弾性率の変化の大きな高弾性磁場応答性ソフトマテリアルが得られることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は、ポリオール化合物とポリイソシアネート化合物との反応物、及び磁性粒子を含有するポリウレタンエラストマー組成物であって、ポリオール化合物が下記一般式(1)で表されるポリオール化合物を含み、ポリイソシアネート化合物が芳香環を有するポリイソシアネート化合物であるポリウレタンエラストマー組成物である。
【0007】
【化1】
(式中、Xは、直接結合、酸素原子、硫黄原子、スルフィニル基、スルホン基、又は下記の一般式(2)で表される基を表し、R
1、R
2は、炭素数2~4のアルキレン基を表し、a、bは1~80の数を表す。)
【0008】
【化2】
(式中、R
3、R
4は、水素原子、炭素数1~10の炭化水素基、炭素数1~2のフッ化アルキル基、又はR
3とR
4とが架橋した炭素数6~10の炭化水素基を表す。)
【発明の効果】
【0009】
本発明により、磁場の印加により弾性率が大きく変化する材料が得られる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
〔ポリオール化合物〕
本発明に用いるポリオール化合物は、上記一般式(1)で表されるポリオール化合物を含む。一般式(1)において、Xは、直接結合、酸素原子、硫黄原子、スルフィニル基、スルホン基、又は一般式(2)で表わされる基を表す。Xとしては、高い弾性率が得られることから、一般式(2)で表わされる基が好ましい。
【0011】
一般式(2)において、R3、R4は、水素原子、炭素数1~10の炭化水素基、炭素数1~2のフッ化アルキル基、又はR3とR4とが架橋した炭素数6~10の炭化水素基を表わす。炭素数1~10の炭化水素基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、2級ブチル基、t-ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、2級ペンチル基、t-ペンチル基、ヘキシル基、2級ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、2-メチルヘキシル基、2-エチルヘキシル基、ノニル基、デシル基、シクロヘキシル基、フェニル基、ベンジル基、シクロヘキシル基、シクロペンチル基、2-ノルボルニル基等が挙げられる。炭素数1~2のフッ化アルキル基としては、フルオロメチル基、ジフルオロメチル基、トリフルオロメチル基、2-フルオロエチル基、1,1,2,2-テトラフルオロエチル基、パーフルオロエチル基等が挙げられる。R3とR4とが架橋した炭化水素基としては、Xが、シクロヘキシリデン基[下式(3)]、3,3,5-トリメチルシクロヘキシリデン基[下式(4)]、オクタヒドロ-4,7-メタノ-5H-インデン-5-イリデン基[下式(5)]、9H―フルオレン-9-イリデン基[下式(6)]となるような炭化水素基が挙げられる。
【0012】
【0013】
R3、R4としては、高い弾性率が得られることから、炭素数1~10の炭化水素基、炭素数1~2のフッ化アルキル基又はR3とR4とが架橋した炭素数6~10の炭化水素基が好ましく、炭素数1~10の炭化水素基がさらに好ましい。炭素数1~10の炭化水素基の中でも、少なくとも一方がメチル基であることが好ましい。R3、R4は同一の基であっても、異なる基であってもよい。
【0014】
R1、R2は、炭素数2~4のアルキレン基を表す。炭素数2~4のアルキレン基としては、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、メチルエチレン基、エチルエチレン基、プロピレン基、ブチレン基、メチルエチレン基等が挙げられる。R1、R2としては、高い弾性率が得られることから、エチレン基、メチルエチレン基、エチルエチレン基が好ましく、メチルエチレン基がさらに好ましい。R1、R2は同一の基であっても、異なる基であってもよい。
【0015】
a、bは1~80の数を表わす。a、bとしては、高い弾性率が得られることから、aとbの合計が10~80の数であることが好ましく、15~60の数であることが更に好ましく、20~40の数であることが最も好ましい。a、bの数は同一であっても、異なっていてもよい。
【0016】
本発明では、ポリウレタンエラストマー組成物の弾性率変化に影響を与えない範囲であれば、他のポリオール化合物を配合することができる。他のポリエーテル化合物としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,4-ブタンジオール等の脂肪族ジオール化合物;シクロヘキサンジメタノール、シクロヘキサンジオール等の脂環式ジオール化合物;トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ヘキシトール類、ペンチトール類、グリセリン、ペンタエリスリトール、テトラヒドロキシプロピルエチレンジアミン等の3価以上のポリオール化合物及びこれらにエチレンオキシドやプロピレンオキシドを付加させたポリエーテルポリオール;ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等のポリエーテルジオール等が挙げられる。なかでも、大きな弾性率変化が得られることから、ポリエーテルポリオールが好ましい。
【0017】
本発明においては、高い弾性率が得られることから、ポリオール化合物中の上記一般式(1)で表されるポリオール化合物の含有量が50質量%以上であることが好ましく、70質量%以上であることがより好ましい。上記一般式(1)で表されるポリオール化合物は、1種のみを用いることができ、2種以上を併用することもできる。
【0018】
〔ポリイソシアネート化合物〕
本発明に用いるポリイソシアネート化合物は、芳香環を有するポリイソシアネート化合物である。前記ポリイソシアネート化合物としては、例えば、1,3-ベンゼンジイソシアネート、1,4-ベンゼンジイソシアネート、2,4-トルエンジイソシアネート、2,6-トルエンジイソシアネート、1,3-キシレンジイソシアネート、1,4-キシレンジイソシアネート、1,3-テトラメチルキシレンジイソシアネート、1,4-テトラメチルキシレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、1,4-ナフタレンジイソシアネート、1,5-ナフタレンジイソシアネート、ジフェニルエーテルジイソシアネート、ジフェニルチオエーテルジイソシアネート、トルエントリイソシアネート等の2官能イソシアネート;トリフェニルメタントリイソシアネート等の3官能イソシアネート、並びに前述したジイソシアネートのイソシアヌレート(三量体)及びビウレット三量体等が挙げられる。芳香環を有するポリイソシアネート化合物としては、高い弾性率が得られることから、ジイソシアネート化合物(2官能性イソシアネート化合物)が好ましい。芳香環を有するポリイソシアネート化合物は、単独で用いることができ、2種以上を併用することもできる。
【0019】
本発明に用いるポリイソシアネート化合物は、イソシアネート基の一部又は全部が、ブロック化剤でブロック化されたブロック化イソシアネートであってもよい。ブロック化剤としては、例えば、ε-カプロラクタム、δ-バレロラクタム、γ-ブチロラクタム、β-ブチロラクタム等のラクタム系ブロック化剤;アセト酢酸エチル、アセチルアセトン等の活性メチレン系ブロック化剤;ホルムアルドキシム、アセトアルドキシム、アセトキシム、メチルエチルケトオキシム、ジアセチルモノオキシム、シクロヘキサンオキシム等のオキシム系ブロック化剤;ピラゾール、3,5-ジメチルピラゾール、4-ベンジル-3,5-ジメチルピラゾール、4-ニトロ-3,5-ジメチルピラゾール、4-ブロモ-3,5-ジメチルピラゾール及び3-メチル-5-フェニルピラゾール等のピラゾール系ブロック化剤;2-エチルイミダゾール等のイミダゾール系ブロック化剤等が挙げられる。
【0020】
本発明のポリウレタンエラストマー組成物では、一般式(1)で表されるポリオール化合物を含むポリオール化合物と芳香環を有するポリイソシアネート化合物との反応物が、ポリウレタンエラストマーとなる。ポリオール化合物と芳香環を有するポリイソシアネート化合物との反応物における、ポリオール化合物の水酸基(OH基)と芳香環を有するポリイソシアネート化合物のイソシアネート基(NCO基)のモル比(NCO基/OH基:NCO Indexともいう)は、エラストマーとしての機械的強度を確保でき、優れた弾性が得られることから、0.87~1.5が好ましく、0.9~1.3が更に好ましく、1.0~1.2が最も好ましい。
【0021】
ポリオール化合物と芳香環を有するポリイソシアネート化合物との反応は、水酸基とイソシアネート基のウレタン化反応であり、従来公知の方法を用いることができる。ウレタン化反応は、無触媒で行ってもよいが、反応の制御が容易になることから触媒の存在下で反応することが好ましい。上記触媒としては、1,2-ジメチルイミダゾール、トリエチレンジアミン等の第3級アミン等のアミン類;ジブチルスズジラウレート、ジオクチルスズジラウレート、ジブチルスズジオクトエート、2-エチルヘキサン酸スズ等のスズ化合物等の有機金属化合物;アルカリ金属水酸化物;脂肪酸塩;トリフェニルホスフィン等を挙げることができる。
【0022】
〔磁性粒子〕
磁性粒子としては磁性を有する物質であれば特に限定されず、例えば、鉄、ニッケル、コバルト、並びにそれらを含む酸化物及び合金からなる群から選択される磁性粒子が挙げられる。このような磁性粒子としては、バリウムフェライト、ストロンチウムフェライト、マグネシウムフェライト、ナトリウムフェライト等のフェライト類;鉄、窒化鉄、炭化鉄、カルボニル鉄、炭素鋼、ニッケル、コバルト;酸化クロム、酸化鉄、γ-酸化鉄、コバルト含有磁性酸化鉄等の磁性酸化鉄類;アルミニウム含有鉄合金、ケイ素含有鉄合金、コバルト含有鉄合金、ニッケル含有鉄合金、バナジウム含有鉄合金、モリブデン含有鉄合金、クロム含有鉄合金、タングステン含有鉄合金、マンガン含有鉄合金、銅含有鉄合金等の鉄合金;アルニコ磁石、サマリウム磁石、ネオジム磁石等の希土類磁石;ガドリニウム、ガドリニウム有機誘導体;フラーレン、カーボンナノチューブ、カーボンナノホーン、カーボンナノコイル、カーボンナノファイバー;へマタイト、マグネタイト、ゲーサイト、カーボン繊維等の常磁性、超常磁性又は強磁性化合物粒子を挙げることができる。これらの磁性粒子は、単独で用いることができ、2種以上を併用することもできる。
【0023】
上記磁性粒子のなかでも、磁場の印加後に粘弾性材料中で凝集構造をとりやすく、弾性率変化が大きくなることから、カルボニル鉄、フェライト類、磁性酸化鉄類が好ましく、カルボニル鉄、バリウムフェライト、ストロンチウムフェライト、γ-酸化鉄が特に好ましい。
【0024】
上記磁性粒子は、これらの磁性粒子の表面に表面処理を施したものを用いることができる。表面に表面処理が施された磁性粒子(表面処理磁性粒子)としては、磁性粒子の表面をシランカップリング剤で処理したもの等を挙げることができる。
【0025】
磁性粒子の一次粒子形状は、非球状であることが好ましい。非球状とは、真球状以外の形状であり、三~六角形状等の多角形状、針状、柱状、数珠状、棒状、板状、扁平状、塊状、繊維状、紡錘状、立方形状、直方形状、鱗片状、不定形状、ウィスカー状等が挙げられる。
【0026】
磁性粒子があまりに小さい場合及びあまりに大きい場合には、大きな弾性率変化が得られにくいことから、磁性粒子の平均粒子径は、0.01μm~100μmであることが好ましく、0.5μm~20μmであることが好ましい。なお、本発明において、平均粒子径とは、レーザー回折光散乱法により測定された50%粒子径(D50)を言う。粒子径は体積基準の直径であり、レーザー回折光散乱法では、二次粒子の直径が測定される。
【0027】
ポリウレタンエラストマー組成物中の磁性粒子の含量があまりに少ない場合及びあまりに多い場合には、大きな弾性率変化が得られにくいことから、ポリウレタンエラストマー組成物中の磁性粒子の含量は50~90質量%であることが好ましく、70~87質量%であることが更に好ましく、75~85質量%であることが最も好ましい。
【0028】
本発明のポリウレタンエラストマー組成物は、弾性率変化を大きく低下させない範囲内において、上記構成成分以外の成分、例えば、分散剤、防腐剤、酸化防止剤、老化防止剤、紫外線吸収剤、安定剤、粘度調整剤、補強充填材、増容材、軟化剤、粘着付与剤、スコーチ防止剤、滑剤、難燃剤、帯電防止剤、内部離型剤、変性剤、着色剤等を含有することができる。
【0029】
〔ポリウレタンエラストマー組成物の製造方法〕
本発明のポリウレタンエラストマー組成物の製造方法は、ポリウレタンエラストマー中に磁性粒子を分散させることができる方法であれば特に限定されず、例えば一般式(1)で表されるポリオール化合物を含むポリオール化合物、芳香環を有するポリイソシアネート化合物及び磁性粒子を従来公知の方法で混合して得られた原料組成物を、従来公知の成型手段を用いて成型する方法が挙げられる。原料組成物を硬化させる場合は、必要に応じて加熱してもよい。原料組成物を硬化させる場合は、磁場を印加しながら硬化させることができ、磁場を印加せずに硬化させることもできる。
【0030】
上記成型手段としては特に限定されず、例えば、注型、押出し成型、射出成型、反応射出成型(RIM)、カレンダー成型、ブロー成型、圧縮成型、トランスファー成型、インサート成型、回転成型、紡糸等を用いた方法を挙げることができる。
【0031】
上記磁場印加手段としては、例えば、プラスティック磁石、加工製磁石、フェライト磁石、希土類磁石等の永久磁石、電磁石等の公知の磁力を発生させる手段を挙げることができる。
【0032】
磁場を印加しながら硬化させる場合の磁場の印加条件は、例えば、磁束密度0.1~200mTの磁場を1秒~2時間、より好ましくは1秒~20分間、印加する。
【0033】
本発明のポリウレタンエラストマー組成物は、磁場を印加することにより、組成物中の磁性粒子が磁力線に沿って配向し、大きな弾性率変化を得ることができ、磁場の強さを調節することにより弾性率の変化量を連続的に且つ任意にコントロールすることもできる。本発明のポリウレタンエラストマー組成物は、高弾性磁場応答性ソフトマテリアルとして好適に用いることができ、例えば、車両、音響装置、組み立てロボット、建造物用の制振支持装置等の振動制御材料又は変振動吸収材料や、医療・福祉用ロボットハンドの力触覚デバイス等に応用できる。
【実施例】
【0034】
以下に実施例によって、本発明を更に詳細に説明する。特に断りのない限り「部」および「%」はそれぞれ「質量部」および「質量%」を意味する。
【0035】
〔ポリオール化合物〕
A1:ビスフェノールAのプロピレンオキシド付加物 水酸基価112.2mgKOH/g
(一般式(1)において、Xが、R3及びR4がメチル基である一般式(2)で表わされる基、R1及びR2がメチルエチレン基、aとbの合計が13である化合物に相当)
A2:ビスフェノールAのプロピレンオキシド付加物 水酸基価56.1mgKOH/g
(一般式(1)において、Xが、R3及びR4がメチル基である一般式(2)で表わされる基、R1及びR2がメチルエチレン基、aとbの合計が30.5である化合物に相当)
A3:トリメチロールプロパンのプロピレンオキシド付加物 水酸基価56.1mgKOH/g
【0036】
〔ポリイソシアネート化合物〕
B1:トルエンジイソシアネート(2,4体/2,6体=80/20 モル比)
B2:ヘキサメチレンジイソシアネート
【0037】
〔磁性粒子〕
C1:カルボニル鉄粉(BASF社製、商品名CI-CS、平均粒子径6μm)
【0038】
〔試験片の調製〕
表1に示す組成(質量比)のポリオール化合物、ポリイソシアネート化合物及び磁性粒子を用いて実施例1~4及び比較例1~3の円形の試験片を調製した。
ポリオール化合物とポリイソシアネート化合物のNCO Indexは1.0とし、ポリオール化合物とポリイソシアネート化合物の合計量20質量部に対して磁性粒子80質量部を混合後、直径20mm、高さ1.5mmの円型に流し込み、100℃で1時間加熱して硬化させた。
【0039】
【0040】
〔粘弾性測定〕
粘弾性測定装置(Anton Paar社製、型式:MCR301)および磁場発生装置(Anton Paar社製、型式:PS-MRD)を用い下記の条件にて、各試験片の、磁場を印加しない場合及び磁場を印加した場合の貯蔵弾性率を測定した。なお、磁場強度は、テスラメータ(カネタック社製、型式:TM-601)を用いて確認した。結果を表2に示す。
<測定条件>
・測定温度:20℃
・ノーマルフォース:約0.3N
・ひずみ:10-4~1
・周波数:1Hz
・磁場強度:0mT、500mT
【0041】
【0042】
比較例1~3のポリウレタンエラストマー組成物と比較して、実施例1~4のポリウレタンエラストマー組成物は、いずれも磁場の印加前後の弾性率変化率が大きいものであった。中でも、一般式(1)においてaとbの合計が30.5であるポリオール化合物を使用した実施例2~4のポリウレタンエラストマー組成物は、非常に大きな弾性率変化率を有するものであった。