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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-14
(45)【発行日】2023-03-23
(54)【発明の名称】発電装置及び送信装置
(51)【国際特許分類】
   H02N 2/18 20060101AFI20230315BHJP
   H02N 1/00 20060101ALI20230315BHJP
【FI】
H02N2/18
H02N1/00
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2019023702
(22)【出願日】2019-02-13
(65)【公開番号】P2020137162
(43)【公開日】2020-08-31
【審査請求日】2021-10-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000000262
【氏名又は名称】株式会社ダイヘン
(73)【特許権者】
【識別番号】519135633
【氏名又は名称】公立大学法人大阪
(73)【特許権者】
【識別番号】517132810
【氏名又は名称】地方独立行政法人大阪産業技術研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100114557
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 英仁
(74)【代理人】
【識別番号】100078868
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 登夫
(72)【発明者】
【氏名】上野 雄也
(72)【発明者】
【氏名】巳波 敏生
(72)【発明者】
【氏名】吉村 武
(72)【発明者】
【氏名】村上 修一
【審査官】服部 俊樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-022366(JP,A)
【文献】特開2018-146388(JP,A)
【文献】国際公開第2014/148371(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02N 2/18
H02N 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
交流が流れる導線に対して変位可能に設けられた永久磁石と、
前記永久磁石の配置箇所に形成される交流磁場の空間勾配を増大させる磁性体と、
前記導線の周囲に形成される交流磁場によって前記永久磁石が振動した場合、該永久磁石の振動エネルギーを電気エネルギーに変換する変換部と
を備え
前記磁性体は、
交流磁場が流出入する2つの端部を備え、各端部は交流磁場が流出入する平行的に対向した平面部を有し、
前記永久磁石は、平行的に対向した各平面部を結ぶ線分の外側に配されている
発電装置。
【請求項2】
前記磁性体は、
断面U字状又はC字状をな
請求項1に記載の発電装置。
【請求項3】
前記永久磁石は、
前記導線及び前記永久磁石の離隔方向に対して非直交方向に並ぶS極及びN極を有し、交流の通流方向及び前記離隔方向に交差する方向に振動する
請求項1又は請求項2に記載の発電装置。
【請求項4】
前記永久磁石は、
前記導線及び前記永久磁石の前記離隔方向に並ぶS極及びN極を有し、交流の通流方向及び前記離隔方向に直交する方向に振動する
請求項3に記載の発電装置。
【請求項5】
前記永久磁石は、
交流の通流方向と、前記導線及び前記永久磁石の離隔方向とに直交する方向に並ぶS極及びN極を有し、前記離隔方向に振動する
請求項1又は請求項2に記載の発電装置。
【請求項6】
弾性体と、
該弾性体の第1部位を、交流が流れる前記導線に対して固定する固定部と
を備え、
前記永久磁石は、
外力によって前記導線に対する位置が変化する前記弾性体の第2部位に設けられており、
前記変換部は、
前記弾性体に設けられた圧電部材を備える
請求項1~請求項5までのいずれか一項に記載の発電装置。
【請求項7】
前記変換部は、
エレクトレットを有する第1電極基板と、前記エレクトレットに対向する対向電極を有する導電性の第2電極基板とを有し、該永久磁石の振動を電気エネルギーに変換するエレクトレット発電機を備える
請求項1~請求項6までのいずれか一項に記載の発電装置。
【請求項8】
請求項1~請求項7までのいずれか一項に記載の発電装置と、
信号を送信する送信部と
を備え、
前記送信部は、
前記発電装置にて変換された電気エネルギーにて駆動する送信装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、交流磁場を永久磁石の運動エネルギーに変換し、当該運動エネルギーを電力に変換する発電装置及び送信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
交流磁場をエネルギー源とする発電方法としては、コイルを用いる方法がある。交流磁場は、例えば、系統電源に接続された導線の回りに形成される。導線近傍に配されたコイルには、交流磁場によって起電力が誘起され、発電が行われる。
【0003】
一方、特許文献1には、導線に流れる電流を検出するAC電流センサが開示されている。AC電流センサは、くぼみ部を有する基板と、一端部がくぼみ部の縁に固定され、他端部がくぼみ部において変位可能に支持された圧電フィルムと、圧電フィルムの当該他端部に設けられた磁性体とを備える。磁性体は、導線の周囲に形成される磁界の大きさによって変位し、圧電フィルムは当該変位に従って電荷を発生させる。当該電荷の大きさを検出することによって、導線に流れる電流値を検出することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2006-138852号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、コイルを用いた発電方法においては、誘導起電力は周波数に比例するため、50Hz又は60Hzの系統電源に対して小型のコイルを用いる場合、電子回路等を駆動させる十分な出力電圧を得ることは困難である。
【0006】
また、特許文献1のAC電流センサによれば、交流磁場に応じた信号が出力されるものの、電子回路等を駆動させる十分な出力電圧を得ることは困難である。
【0007】
本発明の目的は、導線の周囲に形成される交流磁場の周波数が十Hzオーダの低周波数であっても、当該交流磁場に基づいて発電を行うことが可能な発電装置、及び当該発電装置を備えた送信装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本態様に係る発電装置は、交流が流れる導線に対して変位可能に設けられた永久磁石と、前記永久磁石の配置箇所に形成される交流磁場の空間勾配を増大させる磁性体と、前記導線の周囲に形成される交流磁場によって前記永久磁石が振動した場合、該永久磁石の振動エネルギーを電気エネルギーに変換する変換部とを備える。
【0009】
本態様によれば、導線に流れる交流により、当該導線の周囲に交流磁場が形成される。永久磁石は、導線の周囲に形成される交流磁場によって振動する。永久磁石を振動させる力は、交流磁場が大きい程、また交流磁場が空間勾配を有する程大きい。
本態様に係る発電装置の磁性体は導線の周囲に形成される交流磁場を増強させることができる。また、当該磁性体によって、永久磁石の配置箇所に形成される交流磁場の空間勾配が増大する。従って、より効率的に永久磁石を振動させることができる。変換部は、永久磁石の振動エネルギーを電気エネルギーに変換する。本態様に係る発電装置は、交流磁場の周波数が十Hzオーダの低周波数であっても、当該交流磁場をエネルギー源として発電することが可能である。
なお、永久磁石の振動周波数、即ち共振周波数は、交流磁場の周波数に略一致させる構成が好ましい。例えば、交流磁場の周波数が50Hzである場合、永久磁石の振動周波数を50Hzとし、交流磁場の周波数が60Hzである場合、永久磁石の振動周波数を60Hzとする構成が望ましい。但し、所要の電力が得られる範囲で永久磁石の振動周波数を交流磁場の周波数からずらした構成も本発明に含まれる。
また、本態様に係る導線は、電流を通ずることが可能な材料で形成された線状の部材であり、レール状の導通部材、バスバー、角柱状の導体、長手方向を有する板状の導体も導線に含まれる。また、導線は特定の用途のものに限定されるものでは無く、アース線であっても良い。
【0010】
本態様に係る発電装置は、前記磁性体は、交流磁場が流出入する2つの端部を備え、各端部は交流磁場が流出入する互いに非平行な平面部を有する。
【0011】
本態様によれば、磁性体を構成する第1の端部の平面部と、第2の端部の平面部とが非平行であるため、第1の端部の平面部と、第2の端部の平面部との間で流出入する交流磁場は2つの端部間で空間勾配を有する。空間勾配を有する交流磁場を増大させることによって、永久磁石をより効率的に振動させ、その振動エネルギーを電気エネルギーに変換することができる。
【0012】
本態様に係る発電装置は、前記磁性体は、交流磁場が流出入する2つの端部を備え、各端部は交流磁場が流出入する平行的に対向した平面部を有し、前記永久磁石は、少なくとも一部が、平行的に対向した各平面部を結ぶ線分の外側に配されている。
【0013】
本態様によれば、磁性体を構成する第1の端部の平面部と、第2の端部の平面部とが平行的に対向している。平行的に対向した各平面部を結ぶ線分上にある交流磁場の空間勾配は小さいが、当該線分の外側における交流磁場は増大した空間勾配を有する。本態様に係る永久磁石の少なくとも一部は平行的に対向した各平面部を結ぶ線分の外側に配されているため、増大した空間勾配を有する交流磁場が永久磁石を貫く。従って、永久磁石をより効率的に振動させ、その振動エネルギーを電気エネルギーに変換することができる。
【0014】
本態様に係る発電装置は、前記磁性体は、交流磁場が流出入する2つの端部を備え、前記2つの端部の少なくとも一つは交流磁場が流出入する曲面部を有する。
【0015】
本態様によれば、磁性体を構成する第1の端部、又は第2の端部の少なくとも一つは曲面部を有するため、第1の端部と、第2の端部との間で流出入する交流磁場は空間勾配を有する。空間勾配を有する交流磁場を形成することによって、永久磁石をより効率的に振動させ、その振動エネルギーを電気エネルギーに変換することができる。
【0016】
本態様に係る発電装置は、前記磁性体は、断面U字状又はC字状をなし、交流磁場が流出入する2つの端部は法線方向が略同一の平面部を有する。
【0017】
本態様によれば、断面略U字状又はC字状の磁性体の第1の端部の平面部と、第2の端部の平面部とが非平行であるため、第1の端部の平面部と、第2の端部の平面部との間で流出入する交流磁場は2つの端部間で増大した空間勾配を有する。各平面部の法線方向は略同一である場合、交流磁場の空間勾配は比較的大きなものとなる。かかる増大した空間勾配を有する交流磁場を形成することによって、永久磁石をより効率的に振動させ、その振動エネルギーを電気エネルギーに変換することができる。
【0018】
本態様に係る発電装置は、前記永久磁石は、前記磁性体の前記法線方向外側に配されている。
【0019】
本態様によれば、磁性体の上記法線方向内側における交流磁場の空間勾配は小さいが、当該法線方向外側における交流磁場の空間勾配は大きい。本態様に係る永久磁石は磁性体の法線方向外側に配されているため、大きな空間勾配を有する交流磁場が永久磁石を貫く。従って、永久磁石をより効率的に振動させ、その振動エネルギーを電気エネルギーに変換することができる。
【0020】
本態様に係る発電装置は、前記永久磁石は、前記導線及び前記永久磁石の離隔方向に対して非直交方向に並ぶS極及びN極を有し、交流の通流方向及び前記離隔方向に交差する方向に振動する。
【0021】
本態様によれば、振動する永久磁石と、導線とが衝突する可能性を低減することができ、交流磁場を用いた効率的な発電が可能である(例えば、図4参照)。仮に、永久磁石が、導線及び永久磁石の離隔方向に対して直交方向に並ぶS極及びN極を有し、前記離隔方向に振動するように構成した場合、永久磁石の振動によって、当該永久磁石が導線に衝突する可能性がある。
一方、本態様によれば、図4に示すように、永久磁石は、導線の中心に向かう方向から逸れた方向へ振動するため、永久磁石が導線に衝突する可能性を低減することができる。なお、上記説明は、本態様に係る発明の範囲を限定するものでは無い。
【0022】
本態様に係る発電装置は、前記永久磁石は、前記導線及び前記永久磁石の前記離隔方向に並ぶS極及びN極を有し、交流の通流方向及び前記離隔方向に直交する方向に振動する。
【0023】
本態様によれば、振動する永久磁石と、導線との衝突を確実に回避することができ、交流磁場を用いた効率的な発電が可能である(例えば、図4参照)。図4に示す実施形態によれば、永久磁石は静止位置において導線から図4中上方に離隔しており、交流磁場によって永久磁石は図4中左右方向に振動する。この場合、永久磁石と、導線との距離は必ず大きくなり、これ以上、導線に接近することは無い。従って、永久磁石が導線と衝突することを確実に回避することができる。なお、上記説明は、本態様に係る発明の範囲を限定するものでは無い。
【0024】
本態様に係る発電装置は、前記永久磁石は、交流の通流方向と、前記導線及び前記永久磁石の離隔方向とに直交する方向に並ぶS極及びN極を有し、前記離隔方向に振動する。
【0025】
本態様に係る発電装置は、前記離隔方向に永久磁石を振動させた発電が可能である。
【0026】
本態様に係る発電装置は、弾性体と、該弾性体の第1部位を、交流が流れる前記導線に対して固定する固定部とを備え、前記永久磁石は、外力によって前記導線に対する位置が変化する前記弾性体の第2部位に設けられており、前記変換部は、前記弾性体に設けられた圧電部材を備える。
【0027】
本態様によれば、弾性体に設けられた永久磁石は、導線の周囲に形成される交流磁場によって振動する。弾性体が有する圧電部材は、永久磁石の振動によって変形して発電する。本態様に係る発電装置は、交流磁場の周波数が十Hzオーダの低周波数であっても、当該交流磁場をエネルギー源として発電することが可能である。
【0028】
本態様に係る発電装置は、前記変換部は、エレクトレットを有する第1電極基板と、前記エレクトレットに対向する対向電極を有する導電性の第2電極基板とを有し、該永久磁石の振動を電気エネルギーに変換するエレクトレット発電機を備える。
【0029】
本態様によれば、エレクトレット発電機は、導線の周囲に形成される交流磁場によって振動する永久磁石の振動エネルギーを電気エネルギーに変換することができる。
【0030】
本態様に係る送信装置は、上記のいずれか一つの発電装置と、信号を送信する送信部とを備え、前記送信部は、前記発電装置にて変換された電気エネルギーにて駆動する。
【0031】
本態様によれば、発電装置にて変換された電気エネルギーを用いて送信部を駆動することができる。従って、電源を用意することができない環境であっても、送信部から信号を送信させることが可能である。
【発明の効果】
【0032】
本発明によれば、導線の周囲に形成される交流磁場の周波数が十Hzオーダの低周波数であっても、当該交流磁場に基づいて発電を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1】本発明の実施形態1に係る発電装置の斜視図である。
図2】本実施形態1に係る発電装置の平面図である。
図3】本実施形態1に係る発電装置の側面図である。
図4】本実施形態1に係る発電装置の正面図である。
図5】本実施形態1に係る発電装置の回路図である。
図6】導線の周囲に配された永久磁石に働く力を説明するための概念図である。
図7】導線に対する永久磁石の位置と、当該永久磁石に働く力との関係を示すベクトル図である。
図8】導線に対する永久磁石の位置と、当該永久磁石に働くx軸方向の力の大きさ及び向きとの関係を示すコンター図である。
図9】導線及び磁性体によって形成される交流磁場の様子を示した説明図である。
図10】発電装置のシミュレーションモデルを示す模式図である。
図11】シミュレーション結果を示すグラフである。
図12】実験用発電装置を示す模式図である。
図13】実験用発電装置を示す模式図である。
図14】磁性体を備えることによって発電電力が増大することを示すグラフである。
図15】本実施形態2に係る発電装置を示す斜視図である。
図16】本実施形態3に係る発電装置を示す正面図である。
図17】本実施形態4に係る電圧調整装置を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、本発明をその実施形態を示す図面に基づいて詳述する。
(実施形態1)
図1は、本発明の実施形態1に係る発電装置100の斜視図、図2は、発電装置100の平面図、図3は、発電装置100の側面図、図4は、発電装置100の正面図である。本発明の実施形態1に係る発電装置100は、圧電部材(変換部)12を有する弾性体としてのカンチレバー1と、カンチレバー1の固定端1a(第1部位)を、十Hzオーダの低周波数の交流が流れる導線Wに対して固定する固定部2と、カンチレバー1の自由端1b(第2部位)に設けられた永久磁石3と、カンチレバー1の圧電部材12に発生した電圧を出力する出力部4と、永久磁石3の配置箇所に形成される交流磁場の空間勾配を増大させる磁性体5とを備える。本実施形態1においては、導線Wは、電流を通ずることが可能な断面略円形の材料で形成された線状の部材であり、導線Wは50Hz又は60Hzの系統電源に接続されているものとする。発電装置100は、導線Wの周囲に形成される交流磁場を永久磁石3の運動エネルギーに変換し、永久磁石3の運動エネルギーを圧電部材12によって電気エネルギーに変換することによって、発電するものである。
なお、上記導線Wの構成は一例であり、永久磁石3を振動させる交流磁場を形成可能な電流が流れる構成であれば、その形状は特に限定されるものでは無く、レール状の導通部材、バスバー、角柱状の導体、長手方向を有する板状の導体であっても良い。また、導線Wは、部分的に方形板状のような非線状部分を有していても良く、全体として所定方向に交流電流が流れるような形状であれば良い。当該非線状部分に発電装置100を固定する構成も本願発明に含まれる。更に、導線Wは、必ずしも直線状である必要は無く、部分的に湾曲していても良い。更にまた、導線Wは特定の用途のものに限定されるものでは無く、アース線であっても良い。以下、本実施形態1では、導線Wが直線状の部材であるものとして説明する。
【0035】
カンチレバー1は、バイモルフ型圧電素子を用いてなる発電部材である。カンチレバー
1は、外力によって弾性変形が可能な導電部材からなる長板部11と、厚み方向に分極した2枚の板状ないしシート状の圧電部材12とを備え、2枚の圧電部材12が長板部11を挟み込むように当該長板部11の両面に貼り合わされている。圧電部材12の長手方向の長さは、長板部11の固定部2からの突出部分の長さの2/3程度で十分である。また、2枚の圧電部材12には、それぞれシート状の電極13が設けられている。長板部11を構成する部材は、例えばステンレス等の金属である。圧電部材12は、例えば圧電セラミックスである。長板部11の長手方向一端部は固定部2に固定される固定端1aであり、長板部11の長手方向他端部は外力によって変位可能な自由端1bである。自由端1bが変位した場合、2枚の圧電部材12はそれぞれ伸張及び伸縮し、電極13及び長板部11間に電圧が発生する。
なお、ここではバイモルフ型圧電素子を説明したが、片面のみに圧電部材12を張り付けたユニモルフ構造であっても良い。圧電部材12は、導線Wの周囲に形成される交流磁場によって振動する永久磁石3の振動エネルギーを電気エネルギーに変換する変換部の一例である。
【0036】
固定部2は、カンチレバー1の固定端1aを導線Wに対して固定する部材である。固定部2は、例えば、略直方体形状をなし、導線Wが挿通する貫通孔21を有する。貫通孔21は、中心部を貫通する正面視円形状であり、貫通孔21が形成された固定部2の一面側の角部にカンチレバー1の固定端1aが固定され、カンチレバー1を保持している。より詳細には、固定部2は、カンチレバー1の自由端1bが、導線Wの中心線方向及び導線Wの径方向に略直交する方向に変位又は振動するように、カンチレバー1を保持している。言い換えると、カンチレバー1を構成する長板部11の厚み方向と、上記中心線方向及び径方向とが略直交するように、固定部2は、長板部11の固定端1aを保持している。
【0037】
永久磁石3は、矩形板状をなし、厚み方向が導線Wの径方向を向く姿勢でカンチレバー1の自由端1bに接着固定されている。厚み方向とは、永久磁石3の縦寸法、横寸法及び高さ寸法の内、最も長さが短い方向を意味する。なお、接着は、永久磁石3の固定方法の一例である。カンチレバー1の自由端1bには永久磁石3及び接着剤を除く他の構造物を有しない。永久磁石3は、導線W及び永久磁石3の離隔方向、つまり厚み方向に並ぶ単一対のS極3b及びN極3aを有する。なお、永久磁石3の形状及び導線Wに対する姿勢は本発明の本質的な構成では無く、あくまで一構成例を示したものである。本実施形態1では、永久磁石3を構成するS極3b及びN極3aが上記離隔方向に配列している点がより重要である。
カンチレバー1に設けられた永久磁石3の振動周波数は、導線Wの周囲に形成される交流磁場の周波数に略一致するように構成されている。例えば、交流磁場の周波数が50Hzである場合、永久磁石3の振動周波数を50Hzとし、交流磁場の周波数が60Hzである場合、永久磁石3の振動周波数を60Hzとする。なお、振動周波数が交流磁場の周波数に略一致するとは、所要の電力が得られる範囲で、振動周波数を交流磁場の周波数からずれた構成も本実施形態1に係る発電装置100に含まれることを意味する。
【0038】
出力部4は、カンチレバー1の電極13と、長板部11とに接続されており、永久磁石3の振動により伸縮した圧電部材12に発生した電圧を出力する回路である。
【0039】
磁性体5は、断面U字状又はC字状をなし、導線Wを囲繞するように導線Wの周囲に配されている。より詳細には、磁性体5は、導線Wの中心線方向に垂直な平面における断面が略U字状又はC字状であり、円筒状磁性部材をその中心線に略平行な平面で切り欠いたような部材である。
磁性体5は、例えばフェライトである。磁性体5の材質は、透磁率が高い物質であれば特に限定されるものでは無い。
磁性体5は、永久磁石3が配されている側に開口を有し、交流磁場が流出入する2つの端部5a,5aを備える。2つの端部5a,5aは、法線方向が略同一の平面部5b,5bと、交流磁場が流出入する平行的に対向した平面部5c,5cとを有する。永久磁石3は、平行的に対向した各平面部5c,5cを結ぶ線分の外側に配されている。言い換えると、永久磁石3は、磁性体5の法線方向外側に配されている。平面部5b,5bは、永久磁石3のN極3a及びS極3bの並び方向に対して略垂直な面であり、平面部5c、5cは、平面部5b,5bに対して略垂直な面である。
【0040】
図5は、本実施形態1に係る発電装置100の回路図である。出力部4は、整流回路41及び平滑コンデンサ42を備える。整流回路41は、例えばダイオードブリッジ回路である。ダイオードブリッジは2つの順接続されたダイオードからなる直列回路を2組並列させた回路構成である。整流回路41の入力端子は圧電部材12及び長板部11に接続されており、整流回路41の出力端子対には平滑コンデンサ42の各端子が接続されている。整流回路41は、圧電部材12に発生した交流を全波整流し、平滑コンデンサ42にて平滑化された直流の電圧を負荷Rへ出力する。
【0041】
以下、交流磁場を用いた効率的な発電を可能にする発電装置100の構造及び発電特性の詳細を説明する。
【0042】
<導線Wの近くに配された永久磁石3に働く力>
図6は、導線Wの周囲に配された永久磁石3に働く力を説明するための概念図である。導線Wに電流を流すとアンペールの法則に従って、導線Wの周囲に磁界が形成される。図6中、x軸、y軸及びz軸は直交座標系の座標軸であり、z軸の正方向(紙面手前方向)に電流が流れるものとする。導線W周辺の磁界はx軸方向及びy軸方向に勾配を有する。y軸方向を向いた磁気双極子を有する永久磁石3を導線Wの近傍に配した場合、永久磁石3が受ける磁気力は下記式(1)及び(2)で表される。
【0043】
【数1】
【0044】
図7は、導線Wに対する永久磁石3の位置と、当該永久磁石3に働く力との関係を示すベクトル図である。永久磁石3に働く力の大きさは、導線Wからの距離のみに依存するが、永久磁石3に働く力の方向は、導線Wに対する位置によって異なる。永久磁石3は、導線Wに対する位置にかかわらず、図7に示すように、x軸方向に並ぶS極及びN極を有するものとする。電流は紙面奥向きに流れている。図7中、導線Wの上下及び左右の位置では、x軸方向の力が働き、x軸又はy軸に対して45度の位置ではy軸方向の力が働いていることが分かる。
【0045】
図8は、導線Wに対する永久磁石3の位置と、当該永久磁石3に働くx軸方向の力の大きさ及び向きとの関係を示すコンター図である。図8Aは、シミュレーション結果の出力画像をグレースケールで示すコンター図であり、図8Bは、グレースケールで表現できない力の向き(色)を便宜上、ハッチングの有無で模式的に示したコンター図である。図8B中、ハッチングが付されていない白抜きの領域P1は、永久磁石3に左方向の力が働く
ことを示し、ハッチングが付されている領域P2は、永久磁石3に右方向の力が働くことを示している。破線で示すように、x軸及びy軸に対して略45度の境界で区分けされた4つの領域中、図8中、左右の領域P1(図8B中、白抜きの領域P1)に配された永久磁石3には、白抜き左矢印で示すように左方向の力が働き、図8中、上下の領域P2(図8B中、ハッチングが付された領域P2)に配された永久磁石3には、白抜き右矢印で示すように右方向の力が働く。このように、領域P1と、領域P2とでは、永久磁石3に働く力の向きが左右逆向きである。発電装置100の永久磁石3を振動させて発電を行う場合、同一方向の力が働くように、領域P1又は領域P2のいずれか一方の領域を利用することが好ましい。
【0046】
<圧電振動発電素子の支配方程式>
カンチレバー1の自由端1bに永久磁石3を設けてなる圧電振動発電素子の支配方程式は、図8中、導線Wの上下、即ちy軸上に永久磁石3を配した場合、下記式(3)及び(4)で表される。なお、導線Wの左右、即ちx軸上に永久磁石3を配した場合の支配方程式も同様にして表される。
【0047】
【数2】
【0048】
以上の結果を総括すると、発電量と4乗の比例関係を有するパラメータは、導線W及び永久磁石3間の距離であり、2乗の比例関係を有するのは永久磁石3の残留磁束密度であり、1乗の比例関係を有するのは永久磁石3の質量及び機械的品質係数Qであることが分かる。大きな発電量を得るためには、4乗又は2乗の比例関係を有するパラメータを優先して発電装置100を設計すると良い。
例えば、カンチレバー1の自由端1bに部品を取り付ける場合、可能な限り、磁性体からなる部品を用いることが望ましい。カンチレバー1の自由端1bに非磁性体部品を取り付けた場合、その質量に比例して発電量が増加すると考えられるが、磁性体部品を取り付ける場合に比べて、2乗の比例関係を有する残留磁束密度が低下し、結果として発電特性は低下してしまう。
【0049】
また、永久磁石3は可能な限り導線Wに近い位置に配置し、永久磁石3の振動方向が導線Wに接近しない方向に設定することが望ましい。
【0050】
更に、振動を抑制する力が永久磁石3に作用しないよう、振動方向における永久磁石3の寸法を短く形成することが望ましい。
つまり、永久磁石3の厚み方向が導線Wの径方向を向き、永久磁石3の長辺方向が導線Wに沿うように配置すると良い。
【0051】
一方、永久磁石3に振動を抑制する力が作用しないようにするためには、振動する永久磁石3が常に図8に示す領域P2にあることが望ましいことが分かる。
【0052】
また、上記式(3)、(4)から、永久磁石3が受ける力を増大させるためには、交流磁場の空間勾配を大きくすることが重要であることが分かる。
【0053】
図9は、導線W及び磁性体5によって形成される交流磁場の様子を示した説明図である。図9に示すように、磁性体5の2つの端部5a,5a間に交流磁場が流出入している。磁性体5における平面部5b,5bの法線方向外側、例えば四角枠Aで囲まれる箇所には空間勾配を有する交流磁場が形成されていることが分かる。一方、平行的に対向する平面部5c,5cに挟まれる箇所、例えば四角枠Bで囲まれる箇所には空間勾配が小さい平行的な交流磁場が形成されていることが分かる。以上のことから、永久磁石3は、四角枠Aで示す箇所に配置することが好ましいことが分かる。
【0054】
図10は発電装置100のシミュレーションモデルを示す模式図、図11はシミュレーション結果を示すグラフである。rは磁性体5の外径を示し、dは磁性体5の開口の距離を示している。磁性体5の内径は11mmである。永久磁石3は10mm四方の正方形状である。永久磁石3と、磁性体5との距離Lは3mmとした。
図11中、横軸は開口の距離dを示し、縦軸は永久磁石3に働く力を示している。丸印のプロット、四角印のプロット、三角印のプロット、アスタリスクのプロット、菱形印のプロットは、それぞれ磁性体5の外径が12mm、13mm、14mm、15mm、16mmであることを示している。図11のグラフから磁性体5の開口の大きさは、永久磁石3の振動方向における幅よりも大きい構成が好ましい。また磁性体5の開口が大き過ぎると永久磁石3に働く力が低減してしまう。具体的には、開口の大きさを示す距離dは、永久磁石3の横幅の1.2倍以上1.5倍以下が好ましい。より好ましくは、距離dは、永久磁石3の横幅の1.3倍以上1.5倍以下、更に好ましくは1.4倍が望ましい。
【0055】
<実験結果>
図12は実験用発電装置を示す模式図である。図13は、導線Wの中心線方向からみた永久磁石3、導線W及び磁性体5の断面図である。実験用発電装置の基本的な構成は、図1に示した発電装置100と同様である。図13に示すように磁性体5が鉄板を曲げ加工により略U字状に形成してなる点が異なるが、永久磁石3に働く磁気力Fの向き、永久磁石3の振動方向、磁気双極子の向き等は同じであり、原理的には同一構造と見なせる。磁性体5の2つの端部は平面部ないし曲面部を有する。圧電発電部であるカンチレバー1にはPZTセラミックスをガラスエポキシ基板の両面に接着したバイモルフ素子を用いた。永久磁石3にはネオジウム磁石を用いた。
また、素子の共振周波数が50Hz程度になるように永久磁石3の質量や取り付け位置を調整した。永久磁石3は双極子が下向きになるように固定している。発電量の評価のために負荷Rとして抵抗を接続した。共振周波数との関係からインピーダンス整合する負荷Rの抵抗値は50kΩであった。負荷Rに発生する起電力はロックインアンプで測定した。
【0056】
図14は発電装置100の発電電力を示すグラフである。横軸は負荷Rの抵抗値、縦軸は発電電力を示すグラフである。符号P0で示すグラフは、磁性体5を備えない発電装置の発電電力を示し、符号P1で示すグラフは磁性体5を備えた発電装置100の発電電力を示している。図14に示すように、本実施形態1に係る発電装置100の発電電力は、磁性体5を備えない場合に比べて、発電電力が約3.5倍に改善されていることが分かる。
【0057】
<本実施形態に係る発電装置100の作用効果>
以上の通り、本実施形態1に係る発電装置100によれば、導線Wの周囲に形成される交流磁場の周波数が十Hzオーダの低周波数であっても、当該交流磁場に基づいて発電を行うことができる。特に、磁性体5によって、永久磁石3の配置箇所に形成される交流磁場の空間勾配を増大させることにより、より効率的に永久磁石3を振動させ、発電することができる。本実施形態1では、圧電部材12を用いた簡単な構成で永久磁石3の振動エネルギーを電気エネルギーに変換することができる。
【0058】
また、永久磁石3は、平行的に対向した各平面部5c,5cを結ぶ線分の外側に配され、更に磁性体5の各平面部5b,5bの法線方向外側に配されているため、大きな空間勾配を有する交流磁場が永久磁石3を貫くことになる。従って、永久磁石3をより効率的に振動させ、その振動エネルギーを電気エネルギーに変換することができる。
【0059】
更にまた、振動する永久磁石3と、導線Wとの衝突を確実に回避することができ、交流磁場を用いて効率的に発電することができる。
【0060】
更に、永久磁石3を離隔方向に偏平となる姿勢で配置することにより、永久磁石3の各部を導線Wに接近させることができ、効率的に発電することができる。
【0061】
更にまた、本発明によれば、永久磁石3の各部を導線Wに沿って配置することにより、永久磁石3の各部を導線Wに接近させることができ、効率的に発電することができる。
【0062】
更にまた、永久磁石3の静止位置及び振動時の任意の位置において、永久磁石3の各部に逆向きの力が働かないようにすることができ、効率的に発電することができる。
【0063】
更にまた、余分な非磁性体部品を備え無いため、効率的に発電することができる。
【0064】
更にまた、カンチレバー1の自由端1bに永久磁石3を設ける簡単な構成で、交流磁場を用いた発電を行うことができる。
【0065】
更にまた、カンチレバー1を構成する長板部11の両面に圧電部材12を配することによって、効率的に発電することができる。
【0066】
なお、本実施形態1では主に図4に示すように磁性体5が有する2つの端部5a,5aは平面部5b,5cを有する例を説明したが、図13に示すように磁性体5が有する2つの端部5a,5aの少なくとも一方が曲面部を有するように構成しても良い。
この場合も、空間勾配を有する交流磁場を形成することができ、永久磁石3をより効率的に振動させ、その振動エネルギーを電気エネルギーに変換することができる。
【0067】
また、本実施形態1では、導線W及び永久磁石3の離隔方向に並ぶN極3a及びS極3bを有する永久磁石3を説明したが、その並びは完全に永久磁石3の径方向に一致する必要は無く、導線W及び永久磁石3の離隔方向に対して非直交方向であれば、導線Wと永久磁石3とが衝突する可能性を低減することができる。
【0068】
(実施形態2)
実施形態2に係る発電装置200は、導線Wに対する永久磁石3の配置及び姿勢、振動方向が実施形態1と異なるため、以下では主に上記相違点を説明する。その他の構成及び作用効果は実施形態1と同様であるため、対応する箇所には同様の符号を付して詳細な説明を省略する。
【0069】
図15は、本実施形態2に係る発電装置200を示す斜視図である。本実施形態3に係る永久磁石203は、交流の通流方向と、導線W及び永久磁石203の離隔方向とに直交する方向に並ぶS極203b及びN極203aを有する。そして、カンチレバー201は、永久磁石203の離隔方向、つまり導線Wの径方向に振動するように固定部2に固定されている。
【0070】
実施形態3に係る発電装置300によれば、実施形態1と同様、導線Wの周囲に形成される交流磁場の周波数が十Hzオーダの低周波数であっても、導線Wの周囲に形成される交流磁場に基づいて発電を行うことができる。実施形態3では、永久磁石3は導線Wの径方向に振動することになる。
【0071】
(実施形態3)
本実施形態3に発電装置300は永久磁石3の振動エネルギーを電気エネルギーに変換する構成が実施形態1と異なるため、以下では主に上記相違点を説明する。その他の構成及び作用効果は実施形態1と同様であるため、対応する箇所には同様の符号を付して詳細な説明を省略する。
【0072】
図16は本実施形態3に係る発電装置300を示す正面図である。作図の便宜上、固定部2の図示を省略している。実施形態3に係る発電装置300は、弾性体としてのカンチレバー301と、カンチレバー301の固定端1a(第1部位)を、十Hzオーダの低周波数の交流が流れる導線Wに対して固定する固定部2と、カンチレバー301の自由端1b(第2部位)に設けられた永久磁石3と、永久磁石3の振動エネルギーを電気エネルギーに変換するエレクトレット発電機306と、エレクトレット発電機306によって変換された電気エネルギーを出力する出力部4とを備える。
【0073】
エレクトレット発電機306は、実施形態1の圧電部材12に代えて設けられたものであり、永久磁石3の振動エネルギーを電気エネルギーに変換する装置である。エレクトレット発電機306は、複数のエレクトレット361aを有する第1電極基板361と、複数の各エレクトレット361aそれぞれに対向する複数の対向電極362aを有する導電性の第2電極基板362とを備える。エレクトレット361aは電荷を蓄えた荷電体である。エレクトレット361aは半永久的に電荷を保持し、電場を形成する。第1電極基板361は、複数のエレクトレット361aが永久磁石3の振動方向に並ぶような姿勢で永久磁石3に固定されている。
【0074】
第2電極基板362は、複数の対向電極362aが複数のエレクトレット361aそれぞれに対向する姿勢で、導線Wに対する位置が変化しないように固定されている。例えば、第2電極基板362は固定部2に固定されている。対向電極362aは導電性の部材であり、静電誘導によって電荷が蓄えられる。
【0075】
導線Wの周囲に形成される交流磁場によって永久磁石3は図16中、横方向に振動する。永久磁石3が振動すると、エレクトレット361aと、対向電極362aとの相対位置が変化し、電荷が移動する。エレクトレット発電機306は、このようにして、永久磁石3の振動エネルギーを電気エネルギーに変換することができ、電荷の移動によって生じた電圧は出力部4から出力される。
【0076】
本実施形態3に係る発電装置300によれば、導線Wの周囲に形成される交流磁場の周波数が十Hzオーダの低周波数であっても、当該交流磁場に基づいて発電を行うことができる。本実施形態3では、エレクトレット発電機306を用いた簡単な構成で永久磁石3の振動エネルギーを電気エネルギーに変換することができる。
【0077】
実施形態3では、実施形態1の圧電部材12に代えてエレクトレット発電機306を備える例を説明したが、実施形態2に係る圧電部材12に代えて、エレクトレット発電機306を備えても良い。また、第1電極基板361を永久磁石3に設け、第2電極基板362を導線Wに対して固定する例を説明したが、第2電極基板362を永久磁石3に設け、第1電極基板361を導線Wに対して固定しても良い。
【0078】
圧電部材12の代替手段としてエレクトレット発電機306を説明したが、磁歪素子を有する発電機等、永久磁石3の振動エネルギーを電気エネルギーに変換可能な公知の発電機を圧電部材12に代えて用いても良い。
【0079】
(実施形態4)
図17は、本実施形態4に係る電圧調整装置を示すブロック図である。実施形態4に係る電圧調整装置は、系統に接続された導線Wの電圧を調整するための電圧調整機407と、電圧調整機407の状態を検出する検出装置408と、当該検出装置408にて検出された検出情報を外部へ無線送信する送信装置409とを備える。電圧調整機407は、例えば、SVR(Step Voltage Regulator)、SVC(static var compensator)等であり、
検出情報は、電圧調整機407の上流側及び下流側の電圧、電流、電圧調整内容等である。
【0080】
実施形態4に係る送信装置409は、実施形態1に係る発電装置100と、当該発電装置100が出力する電力にて駆動し、検出装置408によって検出された検出情報に係る信号を無線送信する送信部491とを備える。発電装置100は、導線Wの周囲に形成される交流磁場に基づいて発電し、電圧を送信部491へ出力し、送信部491は、発電装置100から出力される電圧にて駆動する。
【0081】
実施形態4に係る電圧調整装置によれば、発電装置100が出力する電圧を用いて送信部491を駆動することができる。従って、電源を用意することができない環境、例えば、送電線の途中に設けられた電圧調整機407の側に発電装置100及び送信部491を配し、電圧調整機407に係る情報を外部へ無線送信することができる。
【0082】
なお、実施形態4では、実施形態1に係る発電装置100を備える例を説明したが、言うまでも無く、実施形態2~3に係る発電装置200,300を用いて、実施形態4に係る電圧調整装置を構成しても良い。
また、永久磁石3を変位可能に支持する構成としてカンチレバー1を例示したが、振動磁場によって永久磁石3が移動できる構成であれば、支持機構は特にカンチレバー1に限定されるものでは無い。
【0083】
今回開示された実施形態はすべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した意味ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0084】
100発電装置、1カンチレバー、1a固定端、1b自由端、2固定部、3永久磁石、4出力部、5磁性体、W導線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17