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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-14
(45)【発行日】2023-03-23
(54)【発明の名称】プラズマ処理装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/31 20060101AFI20230315BHJP
   H01L 21/3065 20060101ALI20230315BHJP
   C23C 16/505 20060101ALI20230315BHJP
   H05H 1/46 20060101ALI20230315BHJP
【FI】
H01L21/31 C
H01L21/302 101B
C23C16/505
H05H1/46 M
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2019081856
(22)【出願日】2019-04-23
(65)【公開番号】P2020181839
(43)【公開日】2020-11-05
【審査請求日】2022-02-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000231464
【氏名又は名称】株式会社アルバック
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【弁理士】
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100134359
【弁理士】
【氏名又は名称】勝俣 智夫
(74)【代理人】
【識別番号】100192773
【弁理士】
【氏名又は名称】土屋 亮
(72)【発明者】
【氏名】植 喜信
(72)【発明者】
【氏名】小倉 祥吾
【審査官】船越 亮
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-244233(JP,A)
【文献】特開2012-015514(JP,A)
【文献】特表2012-517076(JP,A)
【文献】特表2013-503496(JP,A)
【文献】国際公開第2010/079756(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/221829(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/31
H01L 21/365
H01L 21/205
H01L 21/469
H01L 21/86
H05H 1/00-1/54
C23C 16/00-16/56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラズマ処理装置であって、
電極フランジと、
側壁および底部を有するチャンバと、
前記チャンバと前記電極フランジとの間に配置された絶縁フランジと、
前記チャンバと前記電極フランジと前記絶縁フランジとから構成されて反応室を有する処理室と、
前記反応室内に収容され処理面を有する基板が載置されるとともに前記基板の温度を制御可能な支持部と、
前記支持部を昇降駆動する昇降駆動部と、
前記電極フランジに接続され、高周波電圧を印加する高周波電源と、
前記支持部の上面の縁部に周設されたキャパシタ形成部と、
前記チャンバの前記側壁に形成されて前記底部に向かう下面において、前記支持部の前記キャパシタ形成部に対向する位置に周設されたキャパシタ形成部と、
を有し、
前記昇降駆動部によって前記支持部を昇降させ、前記支持部の前記上面と前記チャンバの前記下面との間にギャップを形成して、
互いに対向する前記キャパシタ形成部どうしの間に、プラズマ形成時の高周波リターン電流に対するキャパシタを前記基板の全周となる位置に形成する
ことを特徴とするプラズマ処理装置。
【請求項2】
前記支持部の上面の縁部に周設された前記キャパシタ形成部、および、前記チャンバの前記側壁に形成されて前記底部に向かう下面において前記支持部の前記キャパシタ形成部に対向する位置に周設された前記キャパシタ形成部は、前記基板の径方向における幅寸法が、前記基板の周方向において略均一に形成される
ことを特徴とする請求項1記載のプラズマ処理装置。
【請求項3】
前記支持部の上面の縁部に周設された前記キャパシタ形成部、および、前記チャンバの前記側壁に形成されて前記底部に向かう下面において前記支持部の前記キャパシタ形成部に対向する位置に周設された前記キャパシタ形成部は、前記基板の周方向において、連続的または断続的に形成される
ことを特徴とする請求項1または2記載のプラズマ処理装置。
【請求項4】
互いに対向する前記支持部の前記上面と前記チャンバの前記下面との少なくともいずれか一方に絶縁部材が配置される
ことを特徴とする請求項1から3のいずれか記載のプラズマ処理装置。
【請求項5】
前記支持部の前記上面において、前記キャパシタ形成部の径方向内側には絶縁部材が配置される
ことを特徴とする請求項1から4のいずれか記載のプラズマ処理装置。
【請求項6】
前記支持部の前記キャパシタ形成部が、隣接する前記支持部の前記上面よりも凹状に形成される
ことを特徴とする請求項5記載のプラズマ処理装置。
【請求項7】
前記処理室には、前記電極フランジに電気的に接続されるとともに前記反応室の上側に位置するシャワープレートが設けられ、
前記支持部における前記キャパシタ形成部の内周輪郭が、前記シャワープレートにおける前記反応室に露出する外周輪郭よりも大きな形状を有する
ことを特徴とする請求項1から6のいずれか記載のプラズマ処理装置。
【請求項8】
前記チャンバの前記側壁には、前記反応室の径寸法が前記電極フランジに近接する位置よりも前記底部に近接する位置を拡径するように周設された段差部が形成され、
前記段差部における前記底部に対向する前記下面に前記キャパシタ形成部が形成されることを特徴とする請求項1から7のいずれか記載のプラズマ処理装置。
【請求項9】
前記チャンバの前記側壁には、前記反応室に前記基板を搬出又は搬入するために用いられる搬出入部が設けられ、
前記段差部の前記下面が、前記搬出入部よりも前記電極フランジに近接する位置に設けられる
ことを特徴とする請求項8記載のプラズマ処理装置。
【請求項10】
前記チャンバの前記下面に対向する前記支持部の前記上面の前記キャパシタ形成部は、前記支持部の前記上面に対向する前記下面の前記キャパシタ形成部に電気的に接続されている
ことを特徴とする請求項1から9のいずれか記載のプラズマ処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はプラズマ処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、プラズマを用いて原料ガスを分解し、例えば、基板の被成膜面に薄膜を形成するプラズマ処理装置が知られている。このプラズマ処理装置においては、例えば、特許文献1,2に示すように、チャンバと、電極フランジと、チャンバおよび電極フランジによって挟まれた絶縁フランジとによって、処理室が構成されている。処理室は、成膜空間(反応室)を有する。
【0003】
処理室内には、シャワープレートと、基板が配置されるヒータとが設けられている。
シャワープレートは、電極フランジに接続され複数の噴出口を有する。シャワープレートと電極フランジとの間には空間が形成される。この空間は、原料ガスが導入されるガス導入空間である。つまり、シャワープレートは、処理室内を、基板に膜が形成される成膜空間と、ガス導入空間とに区画している。
【0004】
チャンバは、接地電位に接続されている。これによってヒータは、アノード電極として機能する。一方、電極フランジには高周波電源が接続されている。電極フランジおよびシャワープレートは、カソード電極として機能する。電極フランジの周囲には、例えば、電極フランジを覆うように形成され、かつチャンバに接続されたシールドカバーなどが設けられている。
【0005】
特許文献1,2において、ヒータの下面には、アースプレートの一端が接続されている。アースプレートの他端は、チャンバの内底面近傍に電気的に接続されている。
また、特許文献1において、ヒータの側部には、別のアースプレート(高周波デバイス)の一端が接続されている。このアースプレートの他端は、チャンバの側面の近傍に電気的に接続されている。
【0006】
このような構成において、ガス導入空間に導入されたガスは、シャワープレートの各噴出口から成膜空間に均一に噴出される。このとき、高周波電源を起動して電極フランジに高周波電圧を印加し、成膜空間内にプラズマを発生させる。そして、プラズマによって分解された原料ガスが基板の被成膜面に到達することにより所望の膜が形成される。
【0007】
電極フランジに高周波電圧を印加してプラズマを発生させる際、プラズマの発生に伴って流れる電流は、シャワープレート,ヒータ,およびアースプレートの順に伝達される。さらに、この電流は、チャンバおよびシールドカバーに伝達され、マッチングボックスにリターンされる。プラズマの発生に伴う電流は、このような電流経路を通じて流れる。
【0008】
ところで、特許文献1の図4や、特許文献2に記載されるように、チャンバの側壁には、基板をチャンバ内に搬出又は搬入するために用いられる搬出入部が設けられ、これを開閉するドアバルブが設けられている。
【0009】
しかし、特許文献1の図4や、特許文献2に記載されるように、搬出入部が形成されている場合、搬出入部が形成されているチャンバの内側面を流れる高周波電流の経路は、搬出入部が形成されていないチャンバの内側面を流れる高周波電流の経路よりも長くなる。これによって、搬出入部が形成されている内側面を流れる高周波電流の経路において、インダクタンスが大きくなる。
【0010】
このため、基板およびヒータの周方向において、リターン電流の分布が均一でなくなるため、電場勾配が不均一となり、局所放電(異常放電)やプラズマの偏りを生じ、成膜の均一性に影響を与えるという問題があった。
【0011】
特に、基板のサイズが大型化すると、高周波電圧を大きくする必要があるため、搬出入部の近傍における異常放電が発生するおそれがある。
このため、異常放電に起因するインピーダンスの不整合が生じ、電極フランジに印加できる高周波電圧が低下してしまうという課題がある。
【0012】
特許文献1では、このドアバルブよりもシャワープレートに近接する位置に高周波デバイスを設けて、これを防止している。
また、特許文献2では、ドアバルブを二重にして、これを防止している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【文献】特許第5883652号公報
【文献】再公表WO2010/079756号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
しかし、特許文献1,2に記載されるように、成膜空間に、変形する部分、接触する部分あるいは摺動する部分があると、パーティクルの発生原因となる可能性があるため、好ましくない。
特に、特許文献1に記載されるように、成膜処理時あるいは基板が昇降したときのいずれにおいても、基板よりもシャワープレートに近接する位置に、これら変形する部分、接触する部分あるいは摺動する部分があると、非常に好ましくない。
【0015】
また、特許文献2のように、成膜空間に可動部分あるいは駆動部分があると、パーティクルの発生原因となる場合があるため、好ましくない。
【0016】
また、特許文献1,2に記載されるように、リターン電流が、ヒータの下面、アースプレート、チャンバ底部を経由してシールドカバーに伝達される場合、基板の周方向におけるリターン電流の不均一性は改善されるが、さらにリターン電流の経路を短縮して、インダクタンスを減少させたいという要求があった。
【0017】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたもので、以下の目的を達成しようとするものである。
1.パーティクルの発生を防止すること。
2.成膜空間における変形部、可動部、接触部を削減すること。
3.高周波リターン電流の経路の短縮を図ること。
4.基板周方向における高周波リターン電流の分布均一性を向上すること。
5.高周波リターン電流の経路においてインダクタンスの低減を図ること。
6.これらを同時に実現すること。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明は、プラズマ処理装置であって、
電極フランジと、
側壁および底部を有するチャンバと、
前記チャンバと前記電極フランジとの間に配置された絶縁フランジと、
前記チャンバと前記電極フランジと前記絶縁フランジとから構成されて反応室を有する処理室と、
前記反応室内に収容され処理面を有する基板が載置されるとともに前記基板の温度を制御可能な支持部と、
前記支持部を昇降駆動する昇降駆動部と、
前記電極フランジに接続され、高周波電圧を印加する高周波電源と、
前記支持部の上面の縁部に周設されたキャパシタ形成部と、
前記チャンバの前記側壁に形成されて前記底部に向かう下面において、前記支持部の前記キャパシタ形成部に対向する位置に周設されたキャパシタ形成部と、
を有し、
前記昇降駆動部によって前記支持部を昇降させ、前記支持部の前記上面と前記チャンバの前記下面との間にギャップを形成して、
互いに対向する前記キャパシタ形成部どうしの間に、プラズマ形成時の高周波リターン電流に対するキャパシタを前記基板の全周となる位置に形成することにより上記課題を解決した。
本発明は、前記支持部の上面の縁部に周設された前記キャパシタ形成部、および、前記チャンバの前記側壁に形成されて前記底部に向かう下面において前記支持部の前記キャパシタ形成部に対向する位置に周設された前記キャパシタ形成部が、前記基板の径方向における幅寸法が、前記基板の周方向において略均一に形成されることができる。
本発明は、前記支持部の上面の縁部に周設された前記キャパシタ形成部、および、前記チャンバの前記側壁に形成されて前記底部に向かう下面において前記支持部の前記キャパシタ形成部に対向する位置に周設された前記キャパシタ形成部が、前記基板の周方向において、連続的または断続的に形成されることができる。
本発明は、互いに対向する前記支持部の前記上面と前記チャンバの前記下面との少なくともいずれか一方に絶縁部材が配置されることができる。
本発明は、前記支持部の前記上面において、前記キャパシタ形成部の径方向内側には絶縁部材が配置されることができる。
本発明は、前記支持部の前記キャパシタ形成部が、隣接する前記支持部の前記上面よりも凹状に形成されることができる。
本発明は、前記処理室には、前記電極フランジに電気的に接続されるとともに前記反応室の上側に位置するシャワープレートが設けられ、
前記支持部における前記キャパシタ形成部の内周輪郭が、前記シャワープレートにおける前記反応室に露出する外周輪郭よりも大きな形状を有することができる。
本発明は、前記チャンバの前記側壁には、前記反応室の径寸法が前記電極フランジに近接する位置よりも前記底部に近接する位置を拡径するように周設された段差部が形成され、
前記段差部における前記底部に対向する前記下面に前記キャパシタ形成部が形成されることができる。
本発明は、前記チャンバの前記側壁には、前記反応室に前記基板を搬出又は搬入するために用いられる搬出入部が設けられ、
前記段差部の前記下面が、前記搬出入部よりも前記電極フランジに近接する位置に設けられることができる。
本発明は、前記チャンバの前記下面に対向する前記支持部の前記上面の前記キャパシタ形成部は、前記支持部の前記上面に対向する前記下面の前記キャパシタ形成部に電気的に接続されていることができる。
【0019】
本発明は、プラズマ処理装置であって、
電極フランジと、
側壁および底部を有するチャンバと、
前記チャンバと前記電極フランジとの間に配置された絶縁フランジと、
前記チャンバと前記電極フランジと前記絶縁フランジとから構成されて反応室を有する処理室と、
前記反応室内に収容され処理面を有する基板が載置されるとともに前記基板の温度を制御可能な支持部と、
前記支持部を昇降駆動する昇降駆動部と、
前記電極フランジに接続され、高周波電圧を印加する高周波電源と、
前記支持部の上面の縁部に周設されたキャパシタ形成部と、
前記チャンバの前記側壁に形成されて前記底部に向かう下面において、前記支持部の前記キャパシタ形成部に対向する位置に周設されたキャパシタ形成部と、
を有し、
前記昇降駆動部によって前記支持部を昇降させ、前記支持部の前記上面と前記チャンバの前記下面との間にギャップを形成して、
互いに対向する前記キャパシタ形成部どうしの間に、プラズマ形成時の高周波リターン電流に対するキャパシタを前記基板の全周となる位置に形成する。
【0020】
この構成においては、例えば、支持部の上面とチャンバの下面との間に数ミリ程度の極小の間隙(ギャップ)が形成される。また、高周波電圧が印加されている際に、高周波リターン電流の経路として、支持部の上面とチャンバの下面とは容量結合を介して互いに電気的に接続される。
【0021】
この構成によれば、電極フランジに高周波の高電力を供給したときに、高周波電流を電極フランジから支持部を介してチャンバに流すことができる。従って、電極フランジと支持部との間にプラズマを発生させることができる。
このとき、プラズマ形成時に、マッチングボックスにリターンする高周波リターン電流の経路を、支持部、キャパシタ形成部、チャンバ、とすることができる。
【0022】
これにより、高周波リターン電流の経路が、チャンバ底部を経由する場合よりも短くすることができる。したがって、高周波リターン電流の経路におけるインダクタンスを減少することができる。
【0023】
同時に、支持部の高さを昇降駆動部によって設定するだけで、支持部と下面との間のギャップを均一幅寸法に形成することが可能となる。このため、高周波リターン電流経路が、基板の周方向において、均等に形成されることになる。
これにより、基板の周方向において、電場勾配の不均一を抑制でき、プラズマ処理特性、つまり、成膜特性の分布を均等に維持することができる。
【0024】
また、高周波リターン電流の経路が、キャパシタ形成部よりも底部に近接する位置を経由しない。これにより、高周波リターン電流の経路が経由しない位置である、キャパシタ形成部よりも底部に近接する位置となるチャンバの側壁に搬出入部を設けることが可能となる。
これにより、高周波リターン電流の経路に対して、搬出入部が影響を及ぼすことを防止できる。これにより、搬出入部によるインダクタンスの増加を防止することができ、高周波リターン電流のインダクタンスを低下させることができる。
【0025】
したがって、プラズマを発生させる際、搬出入部内における異常放電を防止でき、電極フランジに印加できる高周波電圧を大きくすることができる。
また、同時に、高周波リターン電流の経路に対して、搬出入部が影響を及ぼさないことで、高周波リターン電流の経路が、基板の周方向において、均等に形成されることになる。
【0026】
これにより、基板の周方向において、電場勾配の不均一を抑制でき、プラズマ処理特性、つまり、成膜特性の分布を均等に維持することができる。
このような構成においては、支持部の上面とチャンバの下面とが接触しないとともに、昇降駆動部以外の可動部分が処理室内に存在しないため、パーティクル(塵埃)などが発生することを防止できる。
【0027】
本発明は、前記キャパシタ形成部が、前記基板の径方向における幅寸法が、前記基板の周方向において略均一に形成される。
これにより、支持部の上面とチャンバの下面とで形成されるキャパシタが、基板の周方向において均等に形成される。
【0028】
したがって、高周波リターン電流経路が、基板の周方向において、均等に形成されることになる。
これにより、基板の周方向において、電場勾配の不均一を抑制でき、プラズマ処理特性、つまり、成膜特性の分布を均等に維持することができる。
従って、プラズマを発生させる際、インダクタンスが変動した部分で発生する異常放電を防止でき、電極フランジに印加できる高周波電圧を大きくすることができる。
【0029】
本発明は、前記キャパシタ形成部が、前記基板の周方向において、連続的または断続的に形成される。
これにより、前記キャパシタ形成部を、基板の輪郭形状および支持部の輪郭形状に因って影響を受けないように、前記基板の周方向において配置することが容易となる。
【0030】
具体的には、矩形の基板をプラズマ処理するプラズマ処理装置においては、基板の四辺に対応する四本の直線状として、キャパシタ形成部を配置することができる。
【0031】
この場合、キャパシタ形成部において、基板の四辺に対応する四本の直線を、さらに短い線分に分割することもできる。
あるいは、キャパシタ形成部を、同心状に複数本形成することもできる。
【0032】
あるいは、円形輪郭の基板をプラズマ処理するプラズマ処理装置においては、基板における円形縁部に対応して、円弧状のキャパシタ形成部を、等しい中心角を有するように複数配置することができる。
【0033】
この場合、円弧状のキャパシタ形成部を、さらに短い円弧に分割することもできる。
あるいは、キャパシタ形成部を、同心状に複数本形成することもできる。
【0034】
なお、キャパシタ形成部を適宜分割することが可能である。このとき、キャパシタ形成部の形成するキャパシタが、基板の周方向において、略均等であるように見なせることが必要である。
【0035】
本発明は、互いに対向する前記支持部の前記上面と前記チャンバの前記下面との少なくともいずれか一方に絶縁部材が配置される。
これにより、互いに対向するキャパシタ形成部の少なくともいずれか一方が絶縁部材で覆われるため、導電部材が露出しながら対向するように配置されていない。
【0036】
従って、前記支持部の前記上面と前記チャンバの前記下面との間で異常放電が生じるのを抑制することができる。結果として、装置に供給できる高周波電力の上限値を上昇させることができる。
【0037】
本発明は、前記支持部の前記上面において、前記キャパシタ形成部の径方向内側には絶縁部材が配置される。
これにより、絶縁部材により、キャパシタ形成部の径方向内側では電気的に絶縁した状態を維持することができる。したがって、プラズマ処理中に、キャパシタ形成部の径方向内側に位置する基板に対して、発生させるプラズマがキャパシタ形成部付近には到達することを防止できる。
【0038】
これにより、キャパシタ形成部にプラズマが影響を及ぼすことを防止して、高周波リターン電流の経路におけるキャパシタを確実に形成することが可能となる。
したがって、高周波リターン電流経路が、基板の周方向において、均等に形成されることになる。
【0039】
これにより、基板の周方向において、電場勾配の不均一を抑制でき、プラズマ処理特性、つまり、成膜特性の分布を均等に維持することができる。
従って、プラズマを発生させる際、インダクタンスが変動した部分で発生する異常放電を防止でき、電極フランジに印加できる高周波電圧を大きくすることができる。
【0040】
本発明は、前記支持部の前記キャパシタ形成部が、隣接する前記支持部の前記上面よりも凹状に形成される。
これにより、昇降駆動部によって支持部を昇降させて、支持部の上面とチャンバの下面との間に数ミリ程度の極小の間隙(ギャップ)を形成する際に、このギャップの制御を正確におこなうことが可能となる。
【0041】
さらに、昇降駆動部によって支持部を昇降させている際に、支持部の上面とチャンバの下面とが当接しても、キャパシタ形成部は当接しないため、表面状態の変化によってキャパシタの変動が発生することを防止できる。
【0042】
本発明は、前記処理室には、前記電極フランジに電気的に接続されるとともに前記反応室の上側に位置するシャワープレートが設けられ、
前記支持部における前記キャパシタ形成部の内周輪郭が、前記シャワープレートにおける前記反応室に露出する外周輪郭よりも大きな形状を有する。
【0043】
これにより、基板サイズを縮小することなく、高周波リターン電流の経路となるキャパシタを容易に形成することが可能となる。
しかも、昇降駆動部以外の可動部分を処理室内に設ける必要がないため、パーティクル(塵埃)などが発生することを防止して、成膜特性が低下することを防止できる。
【0044】
本発明は、前記チャンバの前記側壁には、前記反応室の径寸法が前記電極フランジに近接する位置よりも前記底部に近接する位置を拡径するように周設された段差部が形成され、
前記段差部における前記底部に対向する前記下面に前記キャパシタ形成部が形成される。
【0045】
これにより、上下方向で段差部より電極フランジに近接する位置に発生するプラズマが、キャパシタ形成部に近接することを防止して、発生させたプラズマがキャパシタ形成部付近に到達してしまうことを防止できる。
【0046】
これにより、キャパシタ形成部にプラズマが影響を及ぼすことを防止して、高周波デバイスリターン電流の経路におけるキャパシタを確実に形成することが可能となる。
したがって、高周波リターン電流経路が、基板の周方向において、均等に形成されることになる。
【0047】
これにより、基板の周方向において、電場勾配の不均一を抑制でき、プラズマ処理特性、つまり、成膜特性の分布を均等に維持することができる。
従って、プラズマを発生させる際、インダクタンスが変動した部分で発生する異常放電を防止でき、電極フランジに印加できる高周波電圧を大きくすることができる。
【0048】
本発明は、前記チャンバの前記側壁には、前記反応室に前記基板を搬出又は搬入するために用いられる搬出入部が設けられ、
前記段差部の前記下面が、前記搬出入部よりも前記電極フランジに近接する位置に設けられる。
【0049】
これにより、リターン電流の経路に対して、搬出入部が影響を及ぼすことを防止できる。これにより、搬出入部によるインダクタンスの増加を防止することができ、高周波リターン電流のインダクタンスを低下させることができる。
【0050】
従って、プラズマを発生させる際、搬出入部内における異常放電を防止でき、電極フランジに印加できる高周波電圧を大きくすることができる。
また、同時に、リターン電流の経路に対して、搬出入部が影響を及ぼさないことで、高周波リターン電流経路が、基板の周方向において、均等に形成されることになる。
【0051】
さらに、キャパシタ形成部よりも底部に近接する位置となるチャンバの側壁に搬出入部が位置するため、搬出入部で発生したパーティクルが基板に到達することを抑制して、成膜特性が低下することを防止できる。
【0052】
本発明は、前記チャンバの前記下面に対向する前記支持部の前記上面の前記キャパシタ形成部は、前記支持部の前記上面に対向する前記下面の前記キャパシタ形成部に電気的に接続されている。
【0053】
これにより、互いに対抗するキャパシタ形成部によって、キャパシタを形成し、高周波リターン電流の経路におけるインダクタンスを低下させるとともに、基板の周方向において、略等しいインダクタンスを形成することが可能となる。
【発明の効果】
【0054】
本発明によれば、成膜空間において昇降駆動部以外の変形部、可動部、接触部を設けることなく、パーティクルの発生を防止し、搬出入部から基板へ到達するパーティクルを低減し、高周波リターン電流の経路を短縮する。
【0055】
これらとともに、基板周方向における高周波リターン電流の分布均一性を向上し、高周波リターン電流の経路においてインダクタンスを低下させることを可能とするとともに、これらを同時に実現することができるという効果を奏することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0056】
図1】本発明に係るプラズマ処理装置の第1実施形態を示す概略縦断面図である。
図2】本発明に係るプラズマ処理装置の第1実施形態におけるキャパシタ形成部を示す説明図である。
図3】本発明に係るプラズマ処理装置の第1実施形態におけるキャパシタ形成部を示す拡大断面図である。
図4】本発明に係るプラズマ処理装置の第1実施形態における高周波リターン電流の経路を示す概略縦断面図である。
図5】本発明に係るプラズマ処理装置の第2実施形態におけるキャパシタ形成部を示す拡大断面図である。
図6】本発明に係るプラズマ処理装置の実施形態におけるキャパシタ形成部の他の例を示す説明図である。
図7】本発明に係るプラズマ処理装置の実施形態におけるキャパシタ形成部の他の例を示す説明図である。
図8】本発明に係るプラズマ処理装置の実施形態におけるキャパシタ形成部の他の例を示す説明図である。
図9】本発明に係るプラズマ処理装置の実施形態におけるキャパシタ形成部の他の例を示す説明図である。
図10】本発明に係るプラズマ処理装置の実施形態におけるキャパシタ形成部の他の例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0057】
以下、本発明に係るプラズマ処理装置の第1実施形態を、図面に基づいて説明する。
図1は、本実施形態におけるプラズマ処理装置を示す概略断面図である。図において、符号1は、プラズマ処理装置である。
また、以下の説明に用いる各図においては、各構成要素を図面上で認識し得る程度の大きさとするため、適宜、各構成要素の寸法および比率を実際のものとは異ならせた場合がある。
【0058】
本実施形態に係るプラズマ処理装置1は、プラズマCVD法を用いた成膜装置である。
プラズマ処理装置1は、図1に示すように、反応室である成膜空間2aを有する処理室101を含む。
処理室101は、真空チャンバ(チャンバ)2と、電極フランジ4と、真空チャンバ2および電極フランジ4に挟持された絶縁フランジ81とから構成されている。
【0059】
真空チャンバ2は、底部(内底面)11と、底部(内底面)11の周縁から立設された側壁(壁部)24とを有する。
真空チャンバ2は、アルミニウム、アルミニウム合金で形成される。
【0060】
真空チャンバ2の底部(内底面)11には、開口部が形成されている。この開口部には支柱16が挿通され、支柱16は真空チャンバ2の下部に配置されている。
支柱16の先端は、真空チャンバ2内に位置する。支柱16の先端には、板状のサセプタ(支持部)15が接続されている。
底部(内底面)11と側壁(壁部)24とは、アルミニウム、アルミニウム合金で形成される。
【0061】
支柱16は、真空チャンバ2の外部に設けられた昇降駆動部(昇降機構)16Aに接続されている。支柱16は、昇降駆動部(昇降機構)16Aによって、上下方向に移動可能である。つまり、支柱16の先端に接続されているサセプタ15は、上下方向に昇降可能に構成されている。
【0062】
真空チャンバ2の外部においては、支柱16の外周を覆うようにベローズ(不図示)が設けられている。ベローズにより、支柱16が上下動した際に、成膜空間2aの密閉が維持される。
【0063】
真空チャンバ2には、サセプタ15よりも底部11に近接する位置に、排気管27が接続されている。排気管27の先端には、真空ポンプ28が設けられている。真空ポンプ28は、真空チャンバ2内が真空状態となるように減圧する。
【0064】
真空チャンバ2の上部には、絶縁フランジ81を介して電極フランジ4が取り付けられている。
真空チャンバ2において、壁部24その上端には、段差部25、および、高周波電極支持部23が設けられている。段差部25および高周波電極支持部23は、それぞれ導電材で構成されている。
段差部25および高周波電極支持部23は、アルミニウム、アルミニウム合金などで形成される。
【0065】
段差部25は、壁部24の上端に載置される。段差部25は、チャンバ2の径方向内側に突出するように周設されている。つまり、段差部25の内径寸法は、チャンバ2の壁部24の内径寸法に比べて小さくなる。
高周波電極支持部23は、段差部25とほぼ同じ内径寸法を有して、段差部25に積層されている。
高周波電極支持部23の上端には、シールドカバー13の下端が載置されている。
【0066】
段差部25および/または高周波電極支持部23の径方向内側には、絶縁フランジ81が接している。
絶縁フランジ81は壁部24よりも小さい径方向寸法を有する。絶縁フランジ81の径方向断面は、略Z字状に形成される。すなわち、絶縁フランジ81は、段差部25および/または高周波電極支持部23の径方向内側に接するとともに、壁部24に平行に延在する枠部81bを有する。
【0067】
絶縁フランジ81における枠部81bの上端には、径方向外側に向けて突出する上絶縁フランジ部81cが設けられる。絶縁フランジ81における枠部81bの下端には、径方向内側に向けて突出する下絶縁フランジ部81aが設けられる。
上絶縁フランジ部81cは、高周波電極支持部23の上端に接して、絶縁フランジ81を支持可能とする。
【0068】
下絶縁フランジ部81aおよび枠部81bの径方向内側には、電極フランジ4の下端およびシャワープレート5が接している。
なお、下絶縁フランジ部81aの径方向内側輪郭は、電極フランジ4およびシャワープレート5が成膜空間2aに露出する範囲を制限している。下絶縁フランジ部81aは、電極絶縁カバーとして機能する。
【0069】
電極フランジ4は、上板41と周壁43とを有する。
電極フランジ4は、周壁43の開口部が基板10の鉛直方向において下方に位置するように配置されている。
【0070】
周壁43の下端によって形成される開口部には、シャワープレート5が取り付けられている。上板41とシャワープレート5とは上下方向に離間して、互いに略平行に配置される。これにより、電極フランジ4とシャワープレート5との間に空間14が形成される。
【0071】
電極フランジ4の上板41は、シャワープレート5に対向している。上板41には、ガス導入口42が設けられている。
また、処理室101の外部に設けられたプロセスガス供給部21とガス導入口42との間には、ガス導入管7が設けられている。
【0072】
ガス導入管7の一端は、ガス導入口42に接続される。ガス導入管7の他端は、プロセスガス供給部21に接続されている。
ガス導入管7は、後述するシールドカバー13を貫通している。ガス導入管7を通じて、プロセスガス供給部21から空間14にプロセスガスが供給される。
【0073】
空間14は、プロセスガスが導入されるガス導入空間として機能する。
シャワープレート5には、複数のガス噴出口6が形成されている。
空間14内に導入されたプロセスガスは、ガス噴出口6から真空チャンバ2内の成膜空間2aに噴出される。
【0074】
電極フランジ4とシャワープレート5は、それぞれ導電材で構成されている。
電極フランジ4の周囲には、電極フランジ4を覆うようにシールドカバー13が設けられている。
シールドカバー13は、電極フランジ4と非接触である。シールドカバー13は、真空チャンバ2に電気的に接続するように配置されている。
【0075】
電極フランジ4には、真空チャンバ2の外部に設けられた高周波電源9(高周波電源)がマッチングボックス12を介して接続されている。
マッチングボックス12は、シールドカバー13に取り付けられている。
電極フランジ4およびシャワープレート5は、カソード電極として構成されている。
真空チャンバ2は、シールドカバー13を介して接地されている。
【0076】
サセプタ15は、表面が平坦に形成された板状の部材である。サセプタ15の上面には、基板10が載置される。サセプタ15は、載置された基板10の法線方向が、支柱16の軸線と平行となるように形成される。
サセプタ15は、ヒータを内蔵してもよい。サセプタ15は、載置した基板10をヒータによって加熱および温度調節可能としてもよい。
【0077】
サセプタ15は、接地電極、つまりアノード電極として機能する。このため、サセプタ15は、導電性を有する金属等で形成されている。例えば、サセプタ15は、アルミニウム、アルミニウム合金などで形成されている。
【0078】
サセプタ15は、アルミニウム、アルミニウム合金の表面にアルマイト処理したものとされる。
基板10がサセプタ15上に配置されると、基板10とシャワープレート5とは互いに近接して平行に位置される。
【0079】
サセプタ15に基板10が配置された状態で、ガス噴出口6からプロセスガスを噴出させると、プロセスガスは基板10の処理面10a上の空間に供給される。
サセプタ15の内部には図示しないヒータ線が設けられている。ヒータ線によってサセプタ15の温度が所定の温度に調整される。
【0080】
ヒータ線は、サセプタ15の鉛直方向から見たサセプタ15の略中央部の裏面から下方に向けて突出されている。
ヒータ線は、サセプタ15の略中央部および支柱16に形成された貫通孔の内部に挿通されて、真空チャンバ2の外部へと導かれている。
【0081】
ヒータ線は、真空チャンバ2の外部において、電源(不図示)に接続される。
ヒータ線は、電源から供給される電力に応じて、サセプタ15および基板10の温度を調節する。
【0082】
サセプタ15の上面には、基板10の径方向外側に隣接する位置に、基板絶縁カバー82が周設される。
基板絶縁カバー82は、基板10の全周に設けられる。基板絶縁カバー82の厚さ寸法は、基板10の厚さ寸法よりも大きくされる。つまり、基板絶縁カバー82の高さは、基板10の処理面10aよりも上向きに突出することができる。
【0083】
または、基板絶縁カバー82の高さは、基板10の処理面10aと同じとすることができる。
あるいは、基板絶縁カバー82の高さは、基板10の処理面10aよりも低くすることができる。
【0084】
真空チャンバ2の側壁24には、基板10を搬出又は搬入するために用いられる搬出入部26(搬出入口)が形成されている。
真空チャンバ2の側壁24における外側面には、搬出入部26を開閉するドアバルブ26aが設けられている。ドアバルブ26aは、上下方向にスライド可能である。
【0085】
ドアバルブ26aが下方(真空チャンバ2の底部11に向けた方向)にスライド移動したときは、搬出入部26が開口され、基板10を搬出又は搬入することができる。
一方、ドアバルブ26aが上方(電極フランジ4に向けた方向)にスライド移動したときは、搬出入部26が閉口され、基板10の処理(成膜処理)を行うことができる。
【0086】
図2は、本実施形態におけるプラズマ処理装置のキャパシタ形成部を説明するための図1におけるIIA方向およびIIB方向に向かう矢視図である。図において、紙面上半分は、段差部の下面を上方に向けて見た図であり、紙面下半分は、サセプタの上面を下方に向けて見た図である。
図3は、本実施形態におけるプラズマ処理装置のキャパシタ形成部を説明するための拡大断面図である。
サセプタ15の外周縁には、図1図3に示すように、キャパシタ形成部30が形成されている。
段差部25の内周縁部には、図1図3に示すように、キャパシタ形成部30が形成されている。
【0087】
キャパシタ形成部30としては、サセプタ15の上面において、基板絶縁カバー82の径方向外側に近接する位置に、導電帯部31が周設される。
導電帯部31は、サセプタ15の全周に亘って設けられる。
導電帯部31は、サセプタ15の全周に亘って等幅に設けられる。
【0088】
導電帯部31は、サセプタ15の全周に亘って連続して設けられる。
導電帯部31は、矩形とされるサセプタ15の各辺と平行に設けられる。
導電帯部31は、サセプタ15の全周に亘って基板絶縁カバー82の外縁と離間して設けられる。
【0089】
導電帯部31と基板絶縁カバー82の外縁との離間距離は、サセプタ15の全周に亘って等しく設けられる。
導電帯部31は、サセプタ15の全周に亘ってサセプタ15の外形輪郭と離間して設けられる。
導電帯部31とサセプタ15の外形輪郭との離間距離は、サセプタ15の全周に亘って等しく設けられる。
【0090】
導電帯部31と基板絶縁カバー82との間には、絶縁膜32で覆われた領域が存在する。
絶縁膜32は、基板絶縁カバー82の下側となる領域まで連続して設けられてもよい。
【0091】
導電帯部31よりも、側壁(壁部)24に近接するサセプタ15の表面には、絶縁膜33で覆われた領域が存在する。
絶縁膜33は、サセプタ15の側方端面まで連続して設けられてもよい。
絶縁膜32および絶縁膜33は、いずれも、絶縁体からなる。
【0092】
絶縁膜32および絶縁膜33は、アルマイト合金等とすることができる。
絶縁膜32および絶縁膜33は、同じ厚さ寸法を有する。
基板絶縁カバー82、絶縁膜32および絶縁膜33は、絶縁部材を構成する。
【0093】
導電帯部31は、サセプタ15の上面において、全面に形成された絶縁膜32および絶縁膜33を剥離することで形成される。
導電帯部31は、サセプタ15の上面において、絶縁膜32および絶縁膜33よりも凹んだ状態とされる。
導電帯部31は、サセプタ15の上面において、基板絶縁カバー82よりも凹んだ状態とされる。
【0094】
キャパシタ形成部30としては、段差部25の下面において、サセプタ15の導電帯部31に対向する位置に、導電帯部35が周設される。
導電帯部35は、導電帯部31に対応して、段差部25の全周に亘って設けられる。
導電帯部35は、段差部25の全周に亘って等幅に設けられる。
【0095】
導電帯部35は、導電帯部31と同様に、段差部25の全周に亘って連続して設けられる。
導電帯部35は、導電帯部31と同様に、矩形とされる段差部25の内側輪郭の各辺と平行に設けられる。
導電帯部35は、段差部25の全周に亘って段差部25の内側輪郭と離間して設けられる。
【0096】
導電帯部35と段差部25の内側輪郭との離間距離は、段差部25の全周に亘って等しく設けられる。
導電帯部35は、段差部25の全周に亘って壁部(側壁)24の上端における内面と離間して設けられる。
導電帯部35とサセプタ15の外形輪郭との離間距離は、導電帯部31と同様に、サセプタ15の全周に亘って等しく設けられる。
【0097】
なお、本実施形態において、導電帯部35と段差部25の内側輪郭との間には、領域36が存在する。
また、導電帯部35よりも、側壁(壁部)24に隣接する段差部25の表面には、領域37が存在する。
【0098】
領域37は、段差部25における側壁(壁部)24の端面に接する位置まで連続している。
領域36および領域37は、いずれも、導電帯部35と面一で連続している。導電帯部35、領域36および領域37は、段差部25の下面に位置している。
つまり、段差部25の下面は、たとえば、アルミニウムとされる導電体が全面で露出している。
【0099】
導電帯部35は、導電帯部31に対向する段差部25の下面として、その範囲が規定される。
つまり、導電帯部35は、導電帯部31と対向することで、段差部25の下面において形成される。
【0100】
次に、プラズマ処理装置1を用いて基板10の処理面10aに膜を形成する場合の作用について説明する。
図4は、本実施形態におけるプラズマ処理装置の高周波リターン電流を説明するための断面図である。
【0101】
まず、真空ポンプ28を用いて真空チャンバ2内を減圧する。真空チャンバ2内が真空に維持された状態で、ドアバルブ26aが開き、真空チャンバ2の搬出入部26を介して、真空チャンバ2の外部から成膜空間2aに向けて基板10が搬入される。基板10は、サセプタ15上に載置される。基板10は、基板絶縁カバー82によって、サセプタ15上における載置位置を規定される。
【0102】
基板10を搬入した後、ドアバルブ26aが閉じる(閉動作)。
基板10を載置する前は、サセプタ15は真空チャンバ2内の下方に位置している。
基板10を載置する前は、サセプタ15は搬出入部26よりも下方に位置している。
つまり、サセプタ15とシャワープレート5との間隔が広くなっているので、ロボットアーム(不図示)を用いて基板10をサセプタ15上に容易に載置することができる。
【0103】
基板10がサセプタ15上に載置された後には、昇降駆動部16Aが起動し、支柱16を上昇する。上方へ押し上げられたサセプタ15上に載置された基板10も上方へ移動する。これによって、適切に成膜を行うために必要な間隔になるようにシャワープレート5と基板10との間隔が所望の値に決定され、この間隔が維持される。
【0104】
同時に、サセプタ15の上面において、その周縁部分が段差部25の下面に近接する。
ここで、サセプタ15の上面と段差部25の下面とのギャップGは、後述する高周波リターン電流の経路におけるキャパシタを形成するために、必要な間隔になるように所望の値に決定され、この間隔が維持される。
具体的には、サセプタ15の上面と段差部25の下面とのギャップGは、0.1mm~10mm程度の範囲、即ち、ナローギャップに設定される。
【0105】
サセプタ15の上面と段差部25の下面とにおいて、導電帯部31と導電帯部35とは、平面視して互いに重なる位置に形成されている。したがって、サセプタ15の外周に沿って、高周波リターン電流の経路におけるキャパシタが形成される。
これによって、適切に成膜を行うために必要なキャパシタが、サセプタ15の外周に沿って全周に形成される。
【0106】
導電帯部31と導電帯部35との間で形成されるキャパシタは、サセプタ15の外周に沿って全周で均一な値を有する。
したがって、サセプタ15の外周に沿って全周に均一な高周波リターン電流が形成可能となる。
【0107】
しかも、この、サセプタ15の全周におけるキャパシタ形成は、昇降駆動部16Aによるサセプタ15の昇降位置を設定するだけで、容易におこなうことができる。
ここで、導電帯部31の周縁部は、絶縁膜32および絶縁膜33で覆われている。
【0108】
このため、サセプタ15の全周におけるキャパシタを確実に形成することができる。
同時に、サセプタ15の全周において均一な値のキャパシタを確実に形成することができる。
【0109】
その後、プロセスガス供給部21からガス導入管7およびガス導入口42を介して空間14にプロセスガスが導入される。そして、シャワープレート5のガス噴出口6から成膜空間2a内にプロセスガスが噴出される。
【0110】
次に、高周波電源9を起動して電極フランジ4に高周波電力を印加する。
すると、電極フランジ4の表面からシャワープレート5の表面を伝って高周波電流が流れ、シャワープレート5とサセプタ15との間に放電が生じる。そして、シャワープレート5と基板10の処理面10aとの間にプラズマPが発生する。
【0111】
こうして発生したプラズマP内でプロセスガスが分解され、プラズマ状態のプロセスガスが得られ、基板10の処理面10aで気相成長反応が生じ、薄膜が処理面10a上に成膜される。
サセプタ15に伝達された高周波電流は、キャパシタ形成部30を介して段差部25および高周波電極支持部23の内周面に流れる(図4)。
そして、高周波電流は、シールドカバー13を伝ってリターンされる(リターン電流)。
【0112】
このとき、キャパシタ形成部30から、段差部25より下側の真空チャンバ2の側壁(壁部)24に、高周波リターン電流はリターンされない。
つまり、真空チャンバ2における搬出入部26の有無に関係なく、高周波リターン電流は、真空チャンバ2の底部11および側壁24を伝ってリターンされない。
【0113】
したがって、高周波リターン電流の経路を削減して、サセプタ15の全周に亘って、インダクタンスを小さくすることができる。
また、高周波リターン電流の経路の距離を、サセプタ15の全周に亘って等しくすることができる。つまり、サセプタ15の全周に亘って、高周波リターン電流の経路におけるインダクタンスを同一にすることができる。
【0114】
しかも、キャパシタ形成部30は、高周波リターン電流の経路において、特許文献1,2のアースプレートのように、導体を介したリアクタンスではないため、インダクタンスを小さくすることが可能である。
【0115】
本実施形態におけるプラズマ処理装置1においては、サセプタ(支持部)15の上面と段差部25の下面との間に、数ミリ程度の極小の間隙(ギャップ)Gを形成することで、対向する導電帯部31と導電帯部35により、高周波リターン電流の経路としてキャパシタを形成することができる。
【0116】
このとき、プラズマ形成時に、マッチングボックス16にリターンする高周波リターン電流の経路を、サセプタ15、キャパシタ形成部30、段差部25、高周波電極支持部23、シールドカバー13とすることができる。
【0117】
これにより、高周波リターン電流の経路を、チャンバ2の底部11を経由する場合よりも短い距離にすることができる。したがって、高周波リターン電流の経路におけるインダクタンスを減少することができる。
【0118】
同時に、サセプタ15の高さを昇降駆動部16Aによって設定するだけで、サセプタ15と段差部25との間のギャップGをサセプタ15の全周に亘って均一幅寸法に形成することが可能となる。このため、高周波リターン電流経路が、サセプタ15の周方向において、均等に形成されることになる。
【0119】
これにより、サセプタ15の周方向において、電場勾配の不均一を抑制でき、プラズマ処理特性、つまり、成膜特性の分布を均等に維持することができる。
したがって、プラズマを発生させる際、搬出入部26等における異常放電を防止でき、電極フランジ4に印加できる高周波電圧を大きくすることができる。
【0120】
また、同時に、高周波リターン電流の経路に対して、搬出入部26が影響を及ぼさないことで、高周波リターン電流の経路が、サセプタ15の周方向において、均等に形成されることになる。
【0121】
このような構成においては、サセプタ15の上面と段差部25の下面とが接触しないとともに、昇降駆動部16Aによる支柱16以外の可動部分が処理室101内に存在しないため、パーティクル(塵埃)などが発生することを防止できる。
【0122】
導電帯部31が、絶縁膜32および絶縁膜33よりも凹んでいる。
なお、絶縁膜32および絶縁膜33の膜厚、つまり、導電帯部31の凹んだ寸法は、0.1mm~1mmとすることができる。
これにより、昇降駆動部16Aによってサセプタ15を昇降させて、サセプタ15の上面と段差部25の下面との間に、キャパシタとなる間隙(ギャップ)Gを形成する際に、このギャップGの制御を正確におこなうことが可能となる。
【0123】
さらに、昇降駆動部16Aによってサセプタ15を昇降させている際に、サセプタ15の上面と段差部25の下面とが当接しても、導電帯部31および導電帯部35は当接しないため、導電帯部31および導電帯部35における表面状態の変化によってキャパシタの変動が発生することを防止できる。
【0124】
また、成膜空間2aの周囲には、段差部25と高周波電極支持部23とが配置されているため、プラズマPがキャパシタ形成部30に近接することを防止して、発生させたプラズマPがキャパシタ形成部30付近に到達してしまうことを防止できる。
【0125】
以下、本発明に係るプラズマ処理装置の第2実施形態を、図面に基づいて説明する。
【0126】
図5は、本実施形態におけるキャパシタ形成部を示す拡大断面図であり、本実施形態において、上述した第1実施形態と異なるのは、キャパシタ形成部30に関する点であり、これ以外の上述した第1実施形態と対応する構成には同一の符号を付してその説明を省略する。
【0127】
本実施形態におけるキャパシタ形成部30は、図5に示すように、段差部25の下面において、導電帯部35と近接する位置に、絶縁膜36aおよび絶縁膜37aが形成されている。
絶縁膜36aは、導電帯部35と段差部25の内側輪郭との間に設けられる。
絶縁膜36aは、第1実施形態における領域36を覆うように形成される。
【0128】
絶縁膜37aは、導電帯部35よりも、側壁(壁部)24に近接する段差部25の表面に設けられる。
絶縁膜37aは、第1実施形態における領域37を覆うように形成される。
絶縁膜37aは、段差部25における側壁(壁部)24の上端面に接する位置まで連続して設けられてもよい。
【0129】
絶縁膜36aおよび絶縁膜37aは、いずれも、絶縁体からなる。
絶縁膜36aおよび絶縁膜37aは、アルマイト合金等とすることができる。
絶縁膜36aおよび絶縁膜37aは、同じ厚さ寸法を有する。
絶縁膜36aおよび絶縁膜37aは、絶縁部材を構成する。
【0130】
導電帯部35の周縁部は、絶縁膜36aおよび絶縁膜37aで覆われている。
導電帯部35は、段差部25の下面において、全面に形成された絶縁膜36および絶縁膜37を剥離することで形成される。
導電帯部35は、段差部25の下面において、絶縁膜36および絶縁膜37よりも凹んだ状態とされる。
なお、絶縁膜36aおよび絶縁膜37aの膜厚、つまり、導電帯部35の凹んだ寸法は、0.1mm~1mmとすることができる。
【0131】
本実施形態におけるキャパシタ形成部30は、第1実施形態と同様に、導電帯部31と、導電帯部31に対向する導電帯部35とで高周波リターン電流の経路におけるキャパシタを形成することができる。
【0132】
本実施形態においては、上述した第1実施形態と同等の効果を奏することができる。
【0133】
さらに、本実施形態においては、絶縁膜36aおよび絶縁膜37aによって、導電帯部35の幅寸法を設定することもできる。
つまり、絶縁膜36aおよび絶縁膜37aによって、導電帯部35の幅寸法を設定して、導電帯部31と導電帯部35とによって高周波リターン電流の経路におけるキャパシタの大きさを設定することができる。この場合、導電帯部31と導電帯部35との幅寸法を等しくする、あるいは、導電帯部31と導電帯部35との幅寸法を異なるように設定することも可能である。
【0134】
以下、本発明の実施形態における他の例を、図面に基づいて説明する。
図6は、本発明の実施形態における導電帯部をサセプタ15の上面へ配置する際の例を示す上面図である。
なお、図において、基板絶縁カバー82は省略している。
【0135】
本例においては、導電帯部31aが、サセプタ15の上面において、輪郭外周となる位置まで設けられている。
これにより、絶縁膜33は、サセプタ15の上面には設けられていない。
【0136】
本例においては、上述した各実施形態と同等の効果を奏することができる。
【0137】
以下、本発明の実施形態における他の例を、図面に基づいて説明する。
図7は、本発明の実施形態における導電帯部をサセプタ15の上面へ配置する際の例を示す上面図である。
なお、図において、基板絶縁カバー82は省略している。
【0138】
本例においては、導電帯部31bおよび導電帯部31cが、サセプタ15の上面において、サセプタ15の輪郭と同心となるように二重に設けられている。
つまり、導電帯部31bおよび導電帯部31cは、互いに平行に設けられる。
導電帯部31bと導電帯部31cとの間には、絶縁膜32aが、設けられている。
これにより、絶縁膜33は、サセプタ15の径方向の幅寸法が小さくされている。
【0139】
本例においては、上述した各実施形態と同等の効果を奏することができる。
【0140】
以下、本発明の実施形態における他の例を、図面に基づいて説明する。
図8は、本発明の実施形態における導電帯部をサセプタ15の上面へ配置する際の例を示す上面図である。
なお、図において、基板絶縁カバー82は省略している。
【0141】
本例においては、導電帯部31dが、サセプタ15の上面において、破断線状に断続して周設されている。導電帯部31dは、破断線における線分の長さがほぼ等しくなるように配置されている。
これにより、絶縁膜32と絶縁膜33とは、連続する部分を有する。
【0142】
本例においては、上述した各実施形態と同等の効果を奏することができる。
【0143】
以下、本発明の実施形態における他の例を、図面に基づいて説明する。
図9は、本発明の実施形態における導電帯部をサセプタ15の上面へ配置する際の例を示す上面図である。
なお、図において、基板絶縁カバー82は省略している。
【0144】
本例においては、導電帯部31eが、サセプタ15の上面において、断続して周設されている。導電帯部31eは、矩形のサセプタ15の輪郭形状における各辺に対応して、四本の直線として配置されている。導電帯部31eは、矩形のサセプタ15の輪郭形状の角部に対応する部分において、サセプタ15の周方向に連続していない。
これにより、絶縁膜32と絶縁膜33とは、矩形のサセプタ15の輪郭形状の角部に対応する部分において、連続する部分を有する。
【0145】
本例においては、上述した各実施形態と同等の効果を奏することができる。
【0146】
以下、本発明の実施形態における他の例を、図面に基づいて説明する。
図10は、本発明の実施形態における導電帯部をサセプタ15の上面へ配置する際の例を示す上面図である。
なお、図において、基板絶縁カバー82は省略している。
【0147】
本例においては、導電帯部31fが、サセプタ15の上面において、断続して周設されている。導電帯部31fは、矩形のサセプタ15の輪郭形状における各辺に対応して、四本の直線として配置されている。
【0148】
導電帯部31fは、矩形のサセプタ15の輪郭形状の四辺の中央部に対応する部分において、サセプタ15の周方向に連続していない。導電帯部31fは、矩形のサセプタ15の輪郭形状の角部に対応する部分において連続するL字状に形成される。
これにより、絶縁膜32と絶縁膜33とは、矩形のサセプタ15の輪郭形状の四辺の中央部に対応する部分において、連続する部分を有する。
【0149】
本例においては、上述した各実施形態と同等の効果を奏することができる。
【0150】
なお、キャパシタ形成部30において形成するキャパシタの容量は100pF以上とすることが好ましい。
また、キャパシタ形成部30における導電帯部31の幅は10mm以上とすることが好ましく、20mm以上とすることがより好ましい。
【0151】
段差部25とサセプタ15間のギャップGは、0.1mm以上10mm以下とすることが好ましく、0.5mm以上5mm以下とすることが好ましい。
【産業上の利用可能性】
【0152】
本発明の活用例として、プラズマCVD装置、プラズマエッチング装置、プラズマドーピング装置等を挙げることができる。
【符号の説明】
【0153】
1…プラズマ処理装置
2…真空チャンバ(チャンバ)
2a…成膜空間
4…電極フランジ
5…シャワープレート
6…ガス噴出口
7…ガス導入管
9…高周波電源
10…基板
10a…処理面
11…底部(内底面)
12…マッチングボックス
13…シールドカバー
14…空間
15…サセプタ(支持部)
16…支柱
16A…昇降駆動部(昇降機構)
23…高周波電極支持部
24…壁部(側壁)
25…段差部
26…搬出入部
26a…ドアバルブ
27…排気管
28…真空ポンプ
30…キャパシタ形成部
31…導電帯部
31a,31b,31c,31d,31e,31f,35…導電帯部
32,32a,33,36a,37a…絶縁膜
41…上板
42…ガス導入口
43…周壁
81…絶縁フランジ
82…基板絶縁カバー
101…処理室
G…間隙(ギャップ)
G…ギャップ
P…プラズマ
図1
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図3
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図8
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図10