(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-14
(45)【発行日】2023-03-23
(54)【発明の名称】位置測定装置の走査ユニット
(51)【国際特許分類】
G01D 5/12 20060101AFI20230315BHJP
G01D 5/347 20060101ALI20230315BHJP
【FI】
G01D5/12 A
G01D5/347 110X
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2019174923
(22)【出願日】2019-09-26
【審査請求日】2022-04-28
(32)【優先日】2018-10-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】390014281
【氏名又は名称】ドクトル・ヨハネス・ハイデンハイン・ゲゼルシヤフト・ミツト・ベシユレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】DR. JOHANNES HEIDENHAIN GESELLSCHAFT MIT BESCHRANKTER HAFTUNG
(74)【代理人】
【識別番号】100069556
【氏名又は名称】江崎 光史
(74)【代理人】
【識別番号】100111486
【氏名又は名称】鍛冶澤 實
(74)【代理人】
【識別番号】100191835
【氏名又は名称】中村 真介
(72)【発明者】
【氏名】ラインハルト・ズーリク
(72)【発明者】
【氏名】イェルク・ヴァイゼ
【審査官】菅藤 政明
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-139377(JP,A)
【文献】特表2016-532094(JP,A)
【文献】特開2014-102163(JP,A)
【文献】独国特許出願公開第102008022312(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01D 5/12
G01D 5/347
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジング(21)を有する、位置測定装置の走査ユニットであって、前記ハウジングには、スケール(1)を走査する検出ユニット(24)が配置されており、前記ハウジング(21)が、本体部(22)と、該本体部(22)に固定されたカバー(23)とを含んでおり、前記本体部(22)が、測定されるべき物体に前記走査ユニット(2)を螺着するための複数の孔(41,42)を備えている、前記走査ユニットにおいて、
前記本体部(22)には複数の支柱(31,32)が形成されており、該支柱(31,32)には、前記孔(41,42)のそれぞれ1つが設けられており、前記支柱(31,32)がそれぞれ1つの外部輪郭を備えており、該外部輪郭が、前記カバー(23)における孔あき部(51,52)の内部輪郭に、前記カバー(23)を前記本体部(22)に固定するプレスばめを前記外部輪郭及び前記内部輪郭が形成するように対応していることを特徴とする走査ユニット。
【請求項2】
前記本体部(22)にカバー側の端部面(61,62,63,64)が設けられており、該端部面が前記カバー(23)の外面(230)から突出しており、該端部面(61,62,63,64)が、前記測定されるべき物体への螺着時に当接面として機能することを特徴とする請求項1に記載の走査ユニット。
【請求項3】
前記支柱のうち1つが、前記カバー(23)を貫通して延びているとともに、前記カバー(23)の前記外面(230)から突出していることで、前記端部面のうち少なくとも1つ(61)が、前記1つの支柱(31)によって形成されることを特徴とする請求項2に記載の走査ユニット。
【請求項4】
前記支柱(31,32)のジャケット面が、それぞれ1つの輪郭部を備えていることを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の走査ユニット。
【請求項5】
前記輪郭部が、前記支柱(31,32)に沿って延びるエッジ部(29)であることを特徴とする請求項4に記載の走査ユニット。
【請求項6】
前記検出ユニット(24)に電気的なケーブル(25)が接続されており、該電気的なケーブルが、前記ハウジング(21)における開口部を通して外部へ案内されていることを特徴とする請求項1~5のいずれか1項に記載の走査ユニット。
【請求項7】
前記ケーブル(25)が圧着スリーブ(27)を備えており、該圧着スリーブは、一方では前記ケーブル(25)のシールドと導電的に結合されており、他方では前記開口部で前記ハウジング(21)と電気的に接触していることを特徴とする請求項6に記載の走査ユニット。
【請求項8】
前記ハウジング(21)の前記開口部が、前記本体部(22)における第1の通路(262)と、前記カバー(23)における第2の通路(263)とで形成され、前記圧着スリーブ(27)が、前記両通路(262,263)の間に配置されているとともに、前記本体部(22)及び前記カバー(23)と電気的に接触することを特徴とする請求項7に記載の走査ユニット。
【請求項9】
前記本体部(22)及び前記カバー(23)が、導電性の金属で構成されていることを特徴とする請求項1~8のいずれか1項に記載の走査ユニット。
【請求項10】
前記本体部(22)及び前記カバー(23)が、亜鉛ダイキャスト部材であることを特徴とする請求項9に記載の走査ユニット。
【請求項11】
前記孔(41,42)が、それぞれ雌ネジを備えていることを特徴とする請求項1~10のいずれか1項に記載の走査ユニット。
【請求項12】
スケール(1)と、該スケール(1)を走査する、請求項1~11のいずれか1項に記載の走査ユニット(2)とを有する位置測定装置。
【請求項13】
走査ユニット(2)を製造する方法であって、以下の方法ステップ:
-スケール(1)を走査するために形成された検出ユニット(24)のための収容空間を備えた本体部(22)を提供するステップであって、前記本体部(22)が、測定されるべき物体に前記走査ユニット(2)を螺着するための複数の孔(41,42)を含んでおり、該孔(41,42)のそれぞれ1つが前記本体部(22)の支柱(31,32)に設けられている、前記ステップと、
-前記本体部(22)の前記収容空間に前記検出ユニット(24)を位置決め及び固定するステップと、
-前記収容空間を覆うカバー(23)を提供するステップであって、該カバー(23)に孔あき部(51,52)が設けられており、該孔あき部(51,52)の1つがそれぞれ前記支柱(31,32)のうち1つの外部輪郭に対応している、前記ステップと、
-押し込むことで前記本体部(22)に前記カバー(23)を固定するステップであって、これにより、前記カバー(23)の前記孔あき部(51,52)のうち1つの内部輪郭と前記支柱(31,32)のうち1つの外部輪郭の間にそれぞれプレスばめが生じる、前記ステップと
を有する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
位置測定装置は、互いに対して移動可能な2つの部材の位置を特定するために用いられる。位置測定装置は、加工機械において、加工されるべきワークピースに関して工具の相対移動を測定するために、座標測定機械において、更にはウエハを位置決め及び加工する半導体産業においても用いられる。
【背景技術】
【0002】
位置測定装置は、スケールと、当該スケールを走査する走査ユニットとで構成されている。位置測定装置についての要求はますます大きくなっており、目下、より高い解像度、より高い精度及び位置測定の再現性が要求される。これについての前提は、走査ユニットのコンパクトで安定した機械的な構造である。
【0003】
同種の走査ユニット及び位置測定装置は、特許文献1から知られている。走査ユニットは、検出ユニットが配置されたハウジングで構成されている。ハウジングは、ここでも、本体部と、当該本体部に固定されたカバーとで構成されている。本体部は、測定されるべき物体に走査ユニットを螺着するための複数の開口部を備えている。本体部におけるカバーのボルトなしの固定によりコンパクトな構造が可能となることが既に知られている。このとき、ボルトなしのカバー固定は、接合方向である圧着によって実現されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の基礎をなす課題は、コンパクトに構成されているとともに、精確な位置測定を可能とする位置測定装置の走査ユニットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
当該課題は、本発明により、請求項1の特徴を有する走査ユニットによって解決される。
【0007】
本発明により形成された走査ユニットは、スケールを走査する検出ユニットが配置されたハウジングを含んでおり、当該ハウジングは、本体部と、当該本体部に固定されたカバーとを備えている。本体部は、測定されるべき物体に走査ユニットを螺着するための複数の孔を備えている。当該孔は、本体部に形成された支柱に設けられている。支柱はそれぞれ1つの外部輪郭を備えており、当該外部輪郭は、カバーにおける孔あき部の内部輪郭に、カバーを本体部に固定するプレスばめを当該外部輪郭及び内部輪郭が形成するように対応している。
【0008】
本発明による走査ユニットを有する位置測定装置が請求項12に記載されている。
【0009】
当該位置測定装置は、スケールと、該スケールを走査するために形成された、請求項1による走査ユニットとを含んでいる。
【0010】
本発明により形成された走査ユニットを製造する方法が請求項13に記載されている。
【0011】
走査ユニットを製造する当該方法は、以下の方法ステップ:
-スケールを走査するために形成された検出ユニットのための収容空間を備えた本体部を提供するステップであって、前記本体部が、測定されるべき物体に前記走査ユニットを螺着するための複数の孔を含んでおり、該孔のそれぞれ1つが前記本体部の支柱に挿入されている、前記ステップと、
-前記本体部の前記収容空間に前記検出ユニットを位置決め及び固定するステップと、
-前記収容空間を覆うカバーを提供するステップであって、該カバーに孔あき部が設けられており、該孔あき部の1つがそれぞれ前記支柱のうち1つの外部輪郭に対応している、前記ステップと、
-押し込むことで前記本体部に前記カバーを固定するステップであって、これにより、前記カバーの前記孔あき部のうち1つの内部輪郭と前記支柱のうち1つの外部輪郭の間にそれぞれプレスばめが生じる、前記ステップと
を含んでいる。
【0012】
本発明の有利な形成は、各従属請求項から見て取れる。
【0013】
本発明による走査ユニットの詳細及び利点は、添付の図面に基づく実施例の以下の説明から明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明による走査ユニットを有する位置測定装置及び走査ユニットが走査するスケールの斜視図である。
【
図2】カバーが取り外された走査ユニットを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明を、
図1~
図4に基づき、測定方向Xにおいて相対してスライド可能な2つの物体の相対位置を測定するようになっている光学的な長さ測定装置の例において説明する。このとき、
図1において概略的に図示されているように、スケール1が、これに対して相対的に測定方向Xへ移動可能な走査ユニット2によって走査される。スケール1は測定目盛り11を備えており、当該測定目盛りは、反射光において、走査ユニット2によって走査される。
【0016】
測定目盛り11は、インクリメントな測定目盛りであるか、又は絶対的なコードであってもよい。
【0017】
本発明は、測定目盛り11の光学的な操作のための走査ユニット2に限定されておらず、これに代えて、本発明による操作ユニット2は、磁気的、誘導式又は容量式に操作可能な測定目盛りを操作するために形成されることも可能である。
【0018】
走査ユニット2は、本体部22及びカバー23から成るハウジング21を備えている。本体部22は、カバー23と共に閉鎖された収容空間を形成しており、当該収容空間には、検出ユニット24が配置されている。検出ユニット24は不図示の照明ユニットを含んでおり、当該照明ユニットは、本体部22のウィンドウ28を通って延びてスケール1へ当たる光束を発出し、当該光束は、そこで測定目盛り11によって位置に依存して変調されて反射され、最後に検出ユニット24の感光式のセンサに当たる。本体部22におけるウィンドウ28はガラスプレートを用いて閉鎖されており、ガラスプレートは、格子構造を備えることで走査プレートの機能を有することができる。検出ユニット24は、例えばレンズ及び走査信号を処理する電気的な構造要素、例えばA/Dコンバータ、増幅器、マイクロプロセッサ及びインターフェースユニットのような別の光学的な構成要素を備えることが可能である。
【0019】
位置測定時には、位置に依存した電気的な走査信号が検出ユニット24によって生成され、当該走査信号は、電気的なケーブル25を介して外部へ導かれる。このために、ハウジング21は開口部を備えている。当該開口部は、本体部22における第1の通路262と、カバー23における第2の通路263とによって形成される。通路262,263は、それぞれ半円状あるいはU字状に成形されている。通路262,263の範囲では、ケーブル25が圧着スリーブ27を備えており、当該圧着スリーブには、ケーブル25のシールドが電気的に接続されている。当該圧着スリーブ27は、取り付けられた状態では両通路262,263の間に配置されており、これにより、本体部22及びカバー23に接触する。したがって、本体部22は、カバー23と共に、内部空間に配置された検出ユニット24のための電磁的な遮蔽部を形成している。このために、圧着スリーブ27、本体部22及びカバー23は、有利には導電性の金属で構成されている。有利には、本体部22及びカバー23は、金属である亜鉛で構成されている。本体部22及びカバー23は、安価に亜鉛ダイキャスト方法において製造されることが可能である。
【0020】
図2には、整合され、かつ、固定された検出ユニット24を有する本体部22が示されている。
図2には、圧着スリーブ27が本体部22の通路262にどのように挿入されているかも示されている。圧着スリーブ27は、有利には、本体部22の段部でケーブル25の引張方向へ作用する係合部と、したがってケーブル25用の引張負荷軽減部とを形成する当接つば部271を備えたつばスリーブである。
【0021】
走査ユニット2は、本体部22を用いて、測定されるべき物体に螺着によって位置固定して取り付けられることが可能である。走査ユニット2の螺着は、特に安定的かつ防振的に構成される必要がある。このために、本体部22には複数の支柱31,32が形成されており、当該支柱には、それぞれ1つの孔41,42が設けられている。支柱31,32は、本体部22に一体的に形成あるいは成形されている。孔41,42はネジ部を有さない貫通孔であってよく、当該貫通孔を通して、走査ユニット2を螺着するボルトを通過させることができる。これに代えて、孔41,42は、ボルトを螺入するための雌ネジを備えることもでき、この場合、貫通するネジ孔又は雌ネジを有する止まり穴であり得る。
【0022】
支柱31,32はそれぞれ1つの外部輪郭を備えており、当該外部輪郭は、カバー23に設けられた孔あき部51,52の内部輪郭に、カバー23を本体部22に固定するプレスばめを当該外部輪郭及び内部輪郭が形成するように対応している。取り付けられた状態では、プレスばめされたカバー23は、検出ユニット24を少なくとも塵埃に対して密に覆っている。プレスばめは、機械的な結合技術であるプレス接合によって形成される。このために、支柱31,32及び孔あき部51,52は、接合過程後に接合箇所でプレスばめが生じるように寸法設定されている。このとき、孔あき部51,52の内部輪郭は、それぞれその全周にわたって、したがって360°にわたって、当該内部輪郭に割り当てられた各支柱31,32の外部輪郭を包囲している。プレスばめを形成するために、カバー23は、方向Zにおいて本体部22に対して相対的に押し込まれる(方向Zは
図2に記入されている)。
【0023】
できる限り良好かつ広範な面圧を達成するために、孔あき部51,52が貫通孔であれば特に有利である。これにより、カバー23の厚さ全体にわたる面圧が構成されている。
【0024】
本体部22が鋳造部材、例えばダイキャスト部材であれば、製造技術的な理由から、支柱31,32の外部輪郭は、容易に円すい状に構成されることが可能である。円すい状の形成により、押し込み過程時の接合が容易となる。
【0025】
さらに、支柱31,32及び/又は孔あき部51,52の外部輪郭あるいはジャケット面は、例えば軸平行なローレット加工部として、あるいは軸平行なエッジ部29の形状で構成された輪郭部を備えることが可能である。本体部22がダイキャスト部材であれば、エッジ部29は、例えば半円状の幾何形状を備えている。輪郭部を設けることで、接合相手方の許容製造公差が拡大される。この場合、プレスばめは、とりわけ例えばエッジ部29として構成された輪郭部の局所的な材料変形あるいは材料押しのけによって形成される。
【0026】
有利には、本体部22にはカバー側の端部面61,62,63,64が設けられており、当該端部面は、カバー23の外面から突出し、したがって、走査ユニット2の螺着時に、測定されるべき物体の取付面と接触し、当接面として機能する。これが少なくとも3つの端部面61,62,63,64であれば、当該端部面が互いに離間して配置されることが有利である。本発明の有利な一形態によれば、支柱31のうち少なくとも1つがカバー23における対応する孔あき部51を完全に貫通して延びることができ、その結果、その端部面61が、カバー23の外面230から突出し、当接面のうち1つを形成している。
【0027】
本発明により、走査ユニット2のコンパクトな構造が可能となる。カバー23は、ボルト又は他の追加的な手段なしに本体部22に安定的に固定されている。本体部22におけるカバー23の簡易な取付が可能となり、必要な部材が最小化されている。内部に固定された検出ユニット23を有する本体部22は、コンパクトにもかかわらず安定的に構成されることができるとともに、支柱31,32の安定的かつ空間を削減した配置によって、測定されるべき物体に安定的に位置固定して螺着されることが可能である。カバー23と本体部22の間の機械的な結合技術であるプレス接合によって、検出ユニット24を支持する本体部22の範囲の変形あるいは変位が回避されることが保証されている。本体部22における検出ユニット24の位置決めは、維持されるとともに、プレス接合時にネガティブに影響されない。