(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-15
(45)【発行日】2023-03-24
(54)【発明の名称】研磨装置
(51)【国際特許分類】
B24B 37/24 20120101AFI20230316BHJP
B24B 37/00 20120101ALI20230316BHJP
B24B 55/06 20060101ALI20230316BHJP
B24B 57/02 20060101ALI20230316BHJP
H01L 21/304 20060101ALI20230316BHJP
【FI】
B24B37/24 C
B24B37/24 Z
B24B37/00 K
B24B55/06
B24B57/02
H01L21/304 622F
H01L21/304 621D
(21)【出願番号】P 2018213708
(22)【出願日】2018-11-14
【審査請求日】2021-10-25
(73)【特許権者】
【識別番号】504174135
【氏名又は名称】国立大学法人九州工業大学
(74)【代理人】
【識別番号】100090697
【氏名又は名称】中前 富士男
(74)【代理人】
【識別番号】100176142
【氏名又は名称】清井 洋平
(74)【代理人】
【識別番号】100127155
【氏名又は名称】来田 義弘
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 恵友
(72)【発明者】
【氏名】加藤 侑也
【審査官】山内 康明
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-137160(JP,A)
【文献】特開2013-194163(JP,A)
【文献】特開2016-140937(JP,A)
【文献】登録実用新案第3158224(JP,U)
【文献】特開平10-094965(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0098814(US,A1)
【文献】特開昭49-009792(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0195646(US,A1)
【文献】特開平03-154771(JP,A)
【文献】国際公開第2013/129298(WO,A1)
【文献】特開2009-197362(JP,A)
【文献】特開昭60-177865(JP,A)
【文献】特開2000-254854(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24B 37/24
B24B 37/00
B24B 55/06
B24B 57/02
H01L 21/304
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被研磨物に接触する加工面が設けられた研磨パッドを有して、該被研磨物を研磨する研磨装置において、
前記研磨パッドを覆うカバー体と、
前記カバー体に形成された開口を通して前記研磨パッドの前記加工面以外の表面に接している吸引手段と、
研磨スラリーを供給するスラリー供給手段とを備え、
前記研磨パッドは、前記加工面に開口部を形成する空隙が内側に設けられた基材と、砥粒を担持した状態で前記基材に保持された繊維とを備え
、
前記吸引手段は、研磨によって生じた研磨くずを、前記加工面から該吸引手段が接している前記研磨パッドの表面まで連通する前記空隙経由で吸い込み、
前記研磨パッドには、前記スラリー供給手段から出された前記研磨スラリーを前記被研磨物の表面まで送る貫通孔が形成されていることを特徴とする研磨装置。
【請求項2】
請求項1記載の研磨装置において、前記研磨パッドは、円柱状で、底面が前記加工面であり、前記吸引手段は、前記研磨パッドの側面に接していることを特徴とする研磨装置。
【請求項3】
請求項2記載の研磨装置において、前記貫通孔は前記研磨パッドの軸心に沿って形成され、前記スラリー供給手段から出された前記研磨スラリーは、前記被研磨物の表面に向けて、前記貫通孔内を自重で降下することを特徴とする研磨装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、研磨処理の際に使用される研磨パッドを有する研磨装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体基板を製造するにあたって半導体基板に対し行われる化学機械研磨(Chemical Mechanical Polishing)は、研磨パッドと共に、研磨スラリーに化学薬品を混合したものを用いることで、機械的研磨作用に溶解作用を付加して研磨効率の向上を図っている。
半導体基板はSiを素材としたものが主流であるが、自動車向け等のパワー半導体には高耐電圧特性を有するSiCを素材としたものが使用され、LED用としてサファイアを素材としたものが利用される。
【0003】
SiCやサファイアはSiと比較して化学的安定性が高く、硬度が非常に高い。SiCやサファイアを素材とする半導体基板は、研磨処理に長い時間と大きな労力を要する、所謂、難加工材料に分類される。従来、難加工材料用の研磨パッドとして、繊維素材からなる不織布パッドが用いられている(特許文献1参照)。当該不織布パッドは研磨レートが高く、研磨作業の時間短縮が可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、研磨作業に要する時間の更なる短縮は常に求められる課題である。
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたもので、研磨作業の効率化を図ることが可能な研磨パッドを有する研磨装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
【0007】
前記目的に沿う本発明に係る研磨装置は、被研磨物に接触する加工面が設けられた研磨パッドを有して、該被研磨物を研磨する研磨装置において、前記研磨パッドを覆うカバー体と、前記カバー体に形成された開口を通して前記研磨パッドの前記加工面以外の表面に接している吸引手段と、研磨スラリーを供給するスラリー供給手段とを備え、前記研磨パッドは、前記加工面に開口部を形成する空隙が内側に設けられた基材と、砥粒を担持した状態で前記基材に保持された繊維とを備え、前記吸引手段は、研磨によって生じた研磨くずを、前記加工面から該吸引手段が接している前記研磨パッドの表面まで連通する前記空隙経由で吸い込み、前記研磨パッドには、前記スラリー供給手段から出された前記研磨スラリーを前記被研磨物の表面まで送る貫通孔が形成されている。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る研磨装置は、砥粒を担持した繊維が基材に保持された研磨パッドを用いるので、研磨作業の効率化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の第1の実施の形態に係
る研磨装置の説明図である。
【
図2】本発明の第2の実施の形態に係
る研磨装置の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
続いて、添付した図面を参照しつつ、本発明を具体化した実施の形態につき説明し、本発明の理解に供する。
図1に示すように、本発明の第1の実施の形態に係る
研磨装置20において、研磨パッド10は、被研磨物Wの研磨に用いられるものであって、基材11と、砥粒12を担持した状態で基材11に保持された繊維13を備えている。
【0011】
本実施の形態における被研磨物Wはエンドミル加工がなされて表面にバリが生じた金属製品であるが、被研磨物Wは特に限定されず、例えば、SiCやサファイアを素材とする半導体基板であってもよい。
基材11はウレタン樹脂であり、砥粒12は粒径が4nm~数百nmのシリカ(SiO2)粒子であり、繊維13は長さが0.1μm~10mmで径が0.1μm~10mmの竹繊維である。繊維13として竹繊維を採用しているのは、シリカ粒子を安定的に担持(吸着)できるためである。なお、基材としてエポキシ樹脂等の熱可塑性樹脂やその他の樹脂を採用できる。そして、砥粒として、アルミナ(Al2O3)、セリア(CeO2)、ジルコニア(ZrO2)、チタニア(TiO2)等の粒子を採用でき、繊維として、竹繊維以外の植物性繊維(綿、麻等)や、植物性繊維以外の繊維、例えば、炭素繊維、グラスファイバー等も採用可能である。
【0012】
基材11中には、それぞれ複数の気泡が連続してなる多数の空隙14が形成されている。空隙14には研磨パッド10の加工面15や加工面15以外の表面に達するものが数多く存在し、被研磨物Wに接触する加工面15及び加工面15以外の表面にはそれらの空隙14によって開口部16が形成されている。
本実施の形態では、加工面15が平面であるが、これに限定されず、例えば、被研磨物Wの形状に合わせて凹凸が設けられた面であってもよい。
【0013】
研磨パッド10は、以下の工程を経て製造することができる。
工程1)それぞれ多数の砥粒12を担持した多くの繊維13と溶媒(水やエタノール等)と樹脂の原料(ポリオール及びポリイソシアネート等)とを混合し、多くの繊維13が内側に分散した状態の樹脂の原料を型内に入れ硬化させる。
工程2)硬化した樹脂を冷却し、樹脂中に分散している溶媒を析出させて凍結させ、樹脂内に多数の気泡を設けて連続気泡からなる空隙14を形成し、加工面15を含む全表面それぞれに多数の開口部16が設けられた基材11と、砥粒12を担持した状態で基材11内に分散した繊維13とを有する研磨パッド10を得る。
【0014】
溶媒の代わりに発泡剤を使用し、発砲剤と繊維と樹脂の原料とを混合し、加熱によって発泡剤を発砲させ、空隙が形成された基材を得て、研磨パッドを製造するようにしてもよいし、溶剤や発泡剤を用いる代わりに、繊維の量に対する樹脂の原料の量を調整して基材内に空隙が形成されるようにし、研磨パッドを製造してもよい。
本実施の形態では、樹脂の原料を入れる型に、被研磨物Wを研磨加工により仕上げた理想面が設けられているので、理想面が転写された(理想面に対応した)加工面15を具備する研磨パッド10を安定的に製造することが可能である。本実施の形態では、研磨パッド10が円柱状であり、底面が加工面15である。
【0015】
基材11中に含有されている繊維13の一部は、加工面15を含む研磨パッド10の表面で露出している。そのため、加工面15を被研磨物Wに接触させて研磨パッド10を被研磨物Wに対し往復動(又は回転)させることによって、加工面15で露出した繊維13と被研磨物Wとが擦り合い、被研磨物Wを研磨する。繊維13には砥粒12が担持されていることから、研磨パッド10を用いることで、被研磨物Wを効率的に研磨することができる。なお、基材11は、主として研磨パッド10を所望の形状に成形する役割と、各繊維13を支持する役割を担っている。
【0016】
また、本実施の形態では、
図1に示すように、被研磨物Wを研磨する研磨装置20が、研磨パッド10、研磨パッド10を覆うカバー体21、及び、研磨によって生じた研磨くずを吸引する吸引手段22を有して、構成されている。カバー体21は、実質的に空気を通さない合成樹脂からなり、研磨パッド10の加工面15を除く表面(側面及び上面)を覆った状態で環状のスポンジパッキン23によって研磨パッド10に固定されている。
【0017】
吸引手段22は、真空ポンプ部24と、一端部が真空ポンプ部24に連結され他端部が研磨パッド10の表面(側面)に接した管部材25を備えている。カバー体21は管部材25の他端部が配された箇所に開口が形成されており、管部材25の他端部はその開口内に配された状態で図示しない支持部材によって固定されている。
本実施の形態では、研磨パッド10に連結された図示しない駆動手段の作動によって、研磨パッド10がカバー体21及び管部材25の他端部と共に往復動して、被研磨物Wに接触している加工面15で被研磨物Wを研磨する。
【0018】
被研磨物Wの研磨によって生じる研磨くずは、真空ポンプ部24による吸引によって、研磨パッド10の加工面15近傍の空気と共に研磨パッド10の加工面15の開口部16から研磨パッド10内に取り込まれ、空隙14を管部材25の他端部に向かって(空隙14経由で)進み、管部材25を通って真空ポンプ部24内に回収される。従って、被研磨物Wの表面(研磨パッド10の加工面15が接する面)に研磨くずが残存するのを抑制した状態で被研磨物Wを研磨でき、被研磨物Wの表面を精度よく研磨して理想面に仕上げることが可能である。
【0019】
本実施の形態では、研磨装置20が、更に、加工面15に研磨スラリー(例えば、シリカスラリー)を供給するスラリー供給手段26を備えている。スラリー供給手段26は、研磨スラリーを蓄えているタンク部27と、一端部がタンク部27に接続され他端部が研磨パッド10の表面(上面)に接した管部材28を有している。カバー体21には、管部材28の他端部が内側に配された開口が形成されている。
【0020】
タンク部27内の研磨スラリーは、タンク部27に設けられた図示しないポンプの作動によって、タンク部27から管部材28を通って研磨パッド10に進み、研磨パッド10内の空隙14経由で自重によって加工面15に送られる。
なお、スラリー供給手段26から研磨パッド10の空隙14内に入った研磨スラリーの一部は、空隙14を通って吸引手段22に吸い込まれることとなる。従って、吸引手段及びスラリー供給手段のいずれか一方のみを設けるようにしてもよい。
【0021】
また、
図2に示すように、本発明の第2の実施の形態に係る
研磨装置40において、研磨パッド30には、研磨スラリーを被研磨物Wの表面に送る貫通孔31が形成されている。以下、研磨パッド30及びそれを有する研磨装置40について説明する。なお、研磨パッド10及び研磨装置20と同様の構成については、同じ符号を付して詳しい説明を省略する。
【0022】
研磨パッド30は円柱形状であり、底部に平面状の加工面32が設けられ、加工面32から、砥粒12を担持した状態で基材33中に分散している繊維13が露出している。加工面32及びそれ以外の表面には、空隙34の一部からなる多くの開口部36が形成されている。研磨くずは、開口部36から空隙34内に入り、空隙34、管部材25を順に通って真空ポンプ部24に回収される。
【0023】
貫通孔31は研磨パッド30の軸心に沿って形成され、貫通孔31の上端部(一端部)とスラリー供給手段26の管部材28が連通している。タンク部27に設けられたポンプの作動によって、タンク部27から出た研磨スラリーは管部材28を通って、貫通孔31内に流入し自重により貫通孔31内を降下して被研磨物Wの表面に送られる。
【0024】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、本発明は、上記した形態に限定されるものでなく、要旨を逸脱しない条件の変更等は全て本発明の適用範囲である。
例えば、研磨パッドの形状は円柱状に限定されない。また、研磨パッドには必ずしも空隙を設ける必要はなく、研磨パッドの形状は切断加工によって形状を整えるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0025】
10:研磨パッド、11:基材、12:砥粒、13:繊維、14:空隙、15:加工面、16:開口部、20:研磨装置、21:カバー体、22:吸引手段、23:スポンジパッキン、24:真空ポンプ部、25:管部材、26:スラリー供給手段、27:タンク部、28:管部材、30:研磨パッド、31:貫通孔、32:加工面、33:基材、34:空隙、36:開口部、40:研磨装置、W:被研磨物