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特許7245600流量制御装置、及び、流量制御装置用プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-15
(45)【発行日】2023-03-24
(54)【発明の名称】流量制御装置、及び、流量制御装置用プログラム
(51)【国際特許分類】
   G05D 7/06 20060101AFI20230316BHJP
【FI】
G05D7/06 Z
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2016243813
(22)【出願日】2016-12-15
(65)【公開番号】P2018097759
(43)【公開日】2018-06-21
【審査請求日】2019-11-18
【審判番号】
【審判請求日】2021-09-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000127961
【氏名又は名称】株式会社堀場エステック
(74)【代理人】
【識別番号】100121441
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 竜平
(74)【代理人】
【識別番号】100154704
【弁理士】
【氏名又は名称】齊藤 真大
(72)【発明者】
【氏名】林 繁之
(72)【発明者】
【氏名】長井 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】山口 正男
【合議体】
【審判長】刈間 宏信
【審判官】中里 翔平
【審判官】田々井 正吾
(56)【参考文献】
【文献】特開平3-137418(JP,A)
【文献】特開2015-158755(JP,A)
【文献】特開2013-88944(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2007/0016333(US,A1)
【文献】特開平9-258832(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05D 7/00-7/06
G01F 1/00-1/30
G01F 1/34-1/54
G01F 3/00-9/02
F16K 37/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
開度を測定するポジションセンサを具備し、流体の流れる流路に設けられたバルブと、
前記バルブよりも上流側に設けられ、流体抵抗素子を具備し、第1流量を出力する流量センサと、
前記流体抵抗素子よりも下流側であり、かつ、前記バルブよりも上流側に設けられた第1圧力センサと、
少なくとも前記バルブの開度、前記バルブの前後の差圧、及び、前記流路を流れる流体の流量との間の関係を示す特性マップを記憶する特性マップ記憶部と、
前記ポジションセンサで測定されている測定開度、前記第1圧力センサで測定されている第1圧力、及び、前記バルブよりも下流側に設けられた第2圧力センサで測定されている第2圧力或いは前記流路の前記バルブよりも下流側に接続されているチャンバ内の圧力に基づいて前記特性マップから第2流量を算出する第2流量算出部と、
前記流路を流れる流体の流量が安定状態か過渡状態であるかを判定する状態判定部と、
前記流路を流れる流体の流量が受け付けられた目標流量となるように前記バルブを制御するバルブ制御部と、を備え、
前記バルブ制御部が、
前記状態判定部が安定状態であると判定している場合には、前記目標流量と前記流量センサから出力される前記第1流量との偏差に基づいて前記バルブの開度を制御し、
前記状態判定部が過渡状態であると判定している場合には、前記目標流量と前記第2流量算出部が算出する第2流量との偏差に基づいて前記バルブの開度を制御するように構成されていることを特徴とする流量制御装置。
【請求項2】
前記状態判定部が安定状態であると判定している場合に、前記流量センサで測定されている第1流量、前記第1圧力センサで測定されている第1圧力、及び、前記ポジションセンサで測定されている測定開度に基づいて前記特性マップ記憶部に記憶されている特性マップを更新する特性マップ更新部をさらに備えた請求項1記載の流量制御装置。
【請求項3】
前記特性マップが、前記流体の温度、前記バルブの開度、前記バルブの前後の差圧、及び、前記流路を流れる流体の流量の関係を示すものである請求項1又は2に記載の流量制御装置。
【請求項4】
前記バルブの下流側に設けられた前記第2圧力センサをさらに備え、
前記第2流量算出部が、前記ポジションセンサで測定されている測定開度、前記第1圧力センサで測定されている第1圧力、及び、前記第2圧力センサで測定されている第2圧力に基づいて前記特性マップから第2流量を算出するように構成されている請求項1乃至3いずれかに記載の流量制御装置。
【請求項5】
前記バルブの下流側に設けられた第2圧力センサをさらに備え、
前記第2流量算出部が、前記ポジションセンサで測定されている測定開度、前記第1圧力センサで測定されている第1圧力、及び、前記第2圧力センサで測定されている第2圧力に基づいて前記特性マップから第2流量を算出するように構成されており、
前記特性マップ更新部が、前記状態判定部が安定状態であると判定している場合に、前記流量センサで測定されている第1流量、前記第1圧力センサで測定されている第1圧力、前記第2圧力センサで測定されている第2圧力、及び、前記ポジションセンサで測定されている測定開度に基づいて前記特性マップ記憶部に記憶されている特性マップを更新するように構成されている請求項2記載の流量制御装置。
【請求項6】
前記流量センサが、
前記流体抵抗素子の上流側に設けられた上流側圧力センサと、
前記上流側圧力センサで測定される上流側圧力と、前記第1圧力センサで測定される第1圧力に基づいて第1流量を算出する第1流量算出部とをさらに備えた請求項1乃至5いずれかに記載の流量制御装置。
【請求項7】
前記流量センサが、
前記流体抵抗素子の上流側から分岐し、当該流体抵抗素子の下流側へ合流する分岐管と、
前記分岐管に設けられた一対の巻線抵抗と、
前記一対の巻線抵抗の出力に基づいて第1流量を算出する第1流量算出部とをさらに備えた請求項1乃至5いずれかに記載の流量制御装置。
【請求項8】
開度を測定するポジションセンサを具備し、流体の流れる流路に設けられたバルブと、
前記バルブよりも下流側に設けられ、流体抵抗素子を具備し、第1流量を出力する流量センサと、
前記流体抵抗素子よりも上流側であり、かつ、前記バルブよりも上流側に設けられた第1圧力センサと、
少なくとも前記バルブの開度、前記バルブの前後の差圧、及び、前記流路を流れる流体の流量との間の関係を示す特性マップを記憶する特性マップ記憶部と、
前記ポジションセンサで測定されている測定開度、前記第1圧力センサで測定されている第1圧力、及び、前記バルブよりも下流側に設けられた第2圧力センサで測定されている第2圧力或いは前記流路の前記バルブよりも下流側に接続されているチャンバ内の圧力に基づいて前記特性マップから第2流量を算出する第2流量算出部と、
前記流路を流れる流体の流量が安定状態か過渡状態であるかを判定する状態判定部と、
前記流路を流れる流体の流量が受け付けられた目標流量となるように前記バルブの開度を制御するバルブ制御部と、を備え、
前記バルブ制御部が、
前記状態判定部が安定状態であると判定している場合には、前記目標流量と前記流量センサから出力される前記第1流量とに基づいて前記バルブの開度を制御し、
前記状態判定部が過渡状態であると判定している場合には、前記目標流量と前記第2流量算出部が前記ポジションセンサで測定されている測定開度に基づいて算出する第2流量とに基づいて前記バルブの開度を制御するように構成されており、
前記流量センサが、
前記流体抵抗素子が設けられた高抵抗流路と、
前記高抵抗流路と並列に設けられ、末端で前記高抵抗流路と合流する低抵抗流路と、
前記高抵抗流路又は前記低抵抗流路のいずれか一方に流体が流れるように流路を切り替える切替弁とをさらに備え、
前記状態判定部が過渡状態であると判定している場合には、前記切替弁が前記低抵抗流路に流体を流すように構成されていることを特徴とする流量制御装置。
【請求項9】
前記安定状態が、ほぼ一定流量で保たれている状態である請求項1乃至いずれかに記載の流量制御装置。
【請求項10】
開度を測定するポジションセンサを具備し、流体の流れる流路に設けられたバルブと、前記バルブよりも上流側に設けられ、流体抵抗素子を具備し、第1流量を出力する流量センサと、前記流体抵抗素子よりも下流側であり、かつ、前記バルブよりも上流側に設けられた第1圧力センサと、を備えた流量制御装置用プログラムであって、
少なくとも前記バルブの開度、前記バルブの前後の差圧、及び、前記流路を流れる流体の流量との間の関係を示す特性マップを記憶する特性マップ記憶部と、
前記ポジションセンサで測定されている測定開度、前記第1圧力センサで測定されている第1圧力、及び、前記バルブよりも下流側に設けられた第2圧力センサで測定されている第2圧力或いは前記流路の前記バルブよりも下流側に接続されているチャンバ内の圧力に基づいて前記特性マップから第2流量を算出する第2流量算出部と、
前記流路を流れる流体の流量が安定状態か過渡状態であるかを判定する状態判定部と、
前記流路を流れる流体の流量が受け付けられた目標流量となるように前記バルブを制御するバルブ制御部と、としての機能をコンピュータに発揮させるものであり、
前記バルブ制御部が、
前記状態判定部が安定状態であると判定している場合には、前記目標流量と前記流量センサから出力される前記第1流量との偏差に基づいて前記バルブの開度を制御し、
前記状態判定部が過渡状態であると判定している場合には、前記目標流量と前記第2流量算出部が前記ポジションセンサで測定されている測定開度に基づいて算出する第2流量との偏差に基づいて前記バルブの開度を制御するように構成されていることを特徴とする流量制御装置用プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流量センサを構成するための流体抵抗素子を備えた流量制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年の半導体製造プロセスにおいて成分ガス等の流量を制御するために用いられるマスフローコントローラには、目標流量が立ち上がる場合、又は、立ち下がる場合といった過渡状態での応答を高速化することが求められる。
【0003】
従来、このような要求に応えるために例えばマスフローコントローラの内部流路の体積をできる限り小さくすることが行われている。
【0004】
しかしながら、マスフローコントローラの内部流路の小容積化は現状ではほぼ限界に達しており、特に目標流量が立ち下がる場合におけるガスの流量の応答速度について要求水準を満たすことは難しくなっている。
【0005】
ところで本願発明者はこのような問題を鋭意検討したところ、従来のマスフローコントローラには以下のような構造的な問題があることを見出した。
【0006】
すなわち、特許文献1に示されるような半導体製造プロセスに用いられるマスフローコントローラは、バルブの下流側に圧力式の流量センサが設けられている。この流量センサは流量算出に必要な差圧を得るためにオリフィスや層流素子といった流体抵抗素子を備えている。このため、目標流量が立ち下がる場合にはこの流体抵抗素子はバルブを通過したガスが流れるのを阻害し、流体抵抗素子の上流側にガスが貯まることになる。したがって、バルブの開度が大きくなっても下流側へと流れる流量は大きくなりにくく、立ち下がり時にはガスの流量が所望の応答速度で低下させることができていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2015-109022号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は上述したような問題を鑑みてなされたものであり、特に目標流量が立ち下がるような過渡状態でも高速応答が可能な流量制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
すなわち、本発明に係る流量制御装置は、開度を測定するポジションセンサを具備し、流体の流れる流路に設けられたバルブと、前記バルブよりも上流側に設けられ、流体抵抗素子を具備し、第1流量を出力する流量センサと、前記流体抵抗素子よりも下流側であり、かつ、前記バルブよりも上流側に設けられた第1圧力センサと、少なくとも前記バルブの開度、前記バルブの前後の差圧、及び、前記流路を流れる流体の流量との間の関係を示す特性マップを記憶する特性マップ記憶部と、前記ポジションセンサで測定されている測定開度、及び、前記第1圧力センサで測定されている第1圧力に基づいて前記特性マップから第2流量を算出する第2流量算出部と、前記流路を流れる流体の流量が安定状態か過渡状態であるかを判定する状態判定部と、前記流路を流れる流体の流量が受け付けられた目標流量となるように前記バルブを制御するバルブ制御部と、を備え、前記バルブ制御部が、前記状態判定部が安定状態であると判定している場合には、前記目標流量と前記流量センサから出力される前記第1流量とに基づいて前記バルブの開度を制御し、前記状態判定部が過渡状態であると判定している場合には、前記目標流量と前記第2流量算出部が前記ポジションセンサで測定されている測定開度に基づいて算出する第2流量とに基づいて前記バルブの開度を制御するように構成されていることを特徴とする。
【0010】
このようなものであれば、前記流体抵抗素子は前記バルブの上流側に設けられているので前記バルブを通過した後の流体は当該流体抵抗素子を通過しない。したがって、前記流体抵抗素子は流量を低下させる際の流れを阻害することにはならないので前記バルブの開度をそのまま流量の変化へ反映させることができる。
【0011】
さらに前記状態判定部が過渡状態であると判定している場合には、前記流量センサから出力される第1流量よりも応答速度の速い前記バルブ制御部は前記特性マップを参照して算出される前記第2流量により前記バルブを制御するので、短時間で目標流量を実現するのに必要な開度へ変化させることができる。
【0012】
これらの2つの相乗効果によって特に目標流量の立ち下がり時での応答速度を高速にすることができる。
【0013】
前記ポジションセンサで測定される測定開度に基づいて特性マップを参照して算出される第2流量の長期の再現性を実現でき、常に過渡状態の応答を高速化できるようにするには、前記状態判定部が安定状態であると判定している場合に、前記流量センサで測定される第1流量、前記第1圧力センサで測定されている第1圧力、及び、前記ポジションセンサで測定されている測定開度に基づいて前記特性マップ記憶部に記憶されている特性マップを更新する特性マップ更新部をさらに備えたものであればよい。
【0014】
流体の温度による流制制御への影響を加味することができ、過渡状態における応答速度をさらに向上させ、流量制御の精度も高められるようにするには、前前記特性マップが、前記流体の温度、前記バルブの開度、前記バルブの前後の差圧、及び、前記流路を流れる流体の流量の関係を示すものであればよい。
【0015】
前記バルブの下流側の圧力である第2圧力を正確に得られるようにして、より目標流量と実際の流量との誤差を小さくできるようにするには、前記バルブの下流側に設けられた第2圧力センサをさらに備え、前記第2流量算出部が、前記ポジションセンサで測定されている測定開度、前記第1圧力センサで測定されている第1圧力、及び、前記第2圧力センサで測定されている第2圧力に基づいて前記特性マップから第2流量を算出するように構成されていればよい。
【0016】
前記バルブの下流側における第2圧力の変化と、当該バルブを通過する流量との間をの関係を正確に前記特性マップに反映させ、実際の流量の再現性をさらに高められるようにするには、前記特性マップ更新部が、前記状態判定部が安定状態であると判定している場合に、前記流量センサで測定されている第1流量、前記第1圧力センサで測定されている第1圧力、前記第2圧力センサで測定されている第2圧力、及び、前記ポジションセンサで測定されている測定開度に基づいて前記特性マップ記憶部に記憶されている特性マップを更新するように構成されていればよい。
【0017】
応答速度や流量制御の精度を高いものにしやすくするには、前記流量センサが、前記流体抵抗素子の上流側に設けられた上流側圧力センサと、前記上流側圧力センサで測定される上流側圧力と、前記第1圧力センサで測定される第1圧力に基づいて第1流量を算出する第1流量算出部とをさらに備えたものであればよい。このような圧力式の流量センサであれば測定流量の応答速度が速いのでその分流量制御の応答速度も向上させやすい。
【0018】
従来からある流量制御装置の特性マップを利用しやすい具体的な態様としては、前記流量センサが、前記流体抵抗素子の上流側から分岐し、当該流体抵抗素子の下流側へ合流する分岐管と、前記分岐管に設けられた一対の巻線抵抗と、前記一対の巻線抵抗の出力に基づいて第1流量を算出する第1流量算出部とをさらに備えたものが挙げられる。
【0019】
本発明に係る流量制御装置は、開度を測定するポジションセンサを具備し、流体の流れる流路に設けられたバルブと、前記バルブよりも下流側に設けられ、流体抵抗素子を具備し、第1流量を出力する流量センサと、前記流体抵抗素子よりも下流側であり、かつ、前記バルブよりも上流側に設けられた第1圧力センサと、少なくとも前記バルブの開度、前記バルブの前後の差圧、及び、前記流路を流れる流体の流量との間の関係を示す特性マップを記憶する特性マップ記憶部と、前記ポジションセンサで測定されている測定開度、及び、前記第1圧力センサで測定されている第1圧力に基づいて前記特性マップから第2流量を算出する第2流量算出部と、前記流路を流れる流体の流量が安定状態か過渡状態であるかを判定する状態判定部と、前記流路を流れる流体の流量が受け付けられた目標流量となるように前記バルブの開度を制御するバルブ制御部と、を備え、前記バルブ制御部が、前記状態判定部が安定状態であると判定している場合には、前記目標流量と前記流量センサから出力される前記第1流量とに基づいて前記バルブの開度を制御し、前記状態判定部が過渡状態であると判定している場合には、前記目標流量と前記第2流量算出部が算出する第2流量とに基づいて前記バルブの開度を制御するように構成されており、前記流量センサが、前記流体抵抗素子が設けられた高抵抗流路と、前記高抵抗流路と並列に設けられ、末端で前記高抵抗流路と合流する低抵抗流路と、前記高抵抗流路又は前記低抵抗流路のいずれか一方に流体が流れるように流路を切り替える切替弁とをさらに備え、前記状態判定部が過渡状態であると判定している場合には、前記切替弁が前記低抵抗流路に流体を流すように構成されていることを特徴とする。
【0020】
このようなものであれば、目標流量が立ち上がる、あるいは、立ち下がるような過渡状態では前記バルブを通過した流体が前記流体抵抗素子を通過しないようにできるので、当該流体抵抗素子に流れが阻害されて滞留することがなく、応答を高速化できる。
【0021】
状態判定部、及び、第2流量算出部を備えていなくても、バルブの前後の差圧と目標流量から設定すべきバルブの目標開度を算出して、当該目標開度と前記バルブに設けられているポジションセンサが示す測定開度が一致するように制御することで、過渡状態から瞬時に安定状態での開度まで変更して応答速度を高められるようにするには、開度を測定するポジションセンサを具備し、流体の流れる流路に設けられたバルブと、前記バルブよりも上流側に設けられ、流体抵抗素子を具備する流量センサと、前記流体抵抗素子よりも下流側であり、かつ、前記バルブよりも上流側に設けられた第1圧力センサと、前記バルブの下流側に設けられた第2圧力センサと、少なくとも前記バルブの開度、前記バルブの前後の差圧、及び、前記流路を流れる流体の流量との間の関係を示す特性マップを記憶する特性マップ記憶部と、前記流路を流れる流体の流量が受け付けられた目標流量となるように前記バルブの開度を制御する開度制御部と、を備え、前記開度制御部が、目標流量が過渡状態である場合には受け付けつけている目標流量、及び、前記第1圧力センサで測定されている第1圧力に基づいて前記特性マップから目標開度を決定し、前記ポジションセンサで測定される測定開度が前記目標開度となるように前記バルブの開度を制御することを特徴とする流量制御装置であればよい。
【0022】
既存の流量制御装置において、本発明と同様に過渡状態であっても短時間で目標流量を実現するのに必要な開度へ変化させ、応答速度を速くできるようにするには、開度を測定するポジションセンサを具備し、流体の流れる流路に設けられたバルブと、前記バルブよりも上流側に設けられ、流体抵抗素子を具備し、第1流量を出力する流量センサと、前記流体抵抗素子よりも下流側であり、かつ、前記バルブよりも上流側に設けられた第1圧力センサと、を備えた流量制御装置用プログラムであって、少なくとも前記バルブの開度、前記バルブの前後の差圧、及び、前記流路を流れる流体の流量との間の関係を示す特性マップを記憶する特性マップ記憶部と、前記ポジションセンサで測定されている測定開度、及び、前記第1圧力センサで測定されている第1圧力に基づいて前記特性マップから第2流量を算出する第2流量算出部と、前記流路を流れる流体の流量が安定状態か過渡状態であるかを判定する状態判定部と、前記流路を流れる流体の流量が受け付けられた目標流量となるように前記バルブを制御するバルブ制御部と、としての機能をコンピュータに発揮させるものであり、前記バルブ制御部が、前記状態判定部が安定状態であると判定している場合には、前記目標流量と前記流量センサから出力される前記第1流量とに基づいて前記バルブの開度を制御し、前記状態判定部が過渡状態であると判定している場合には、前記目標流量と前記第2流量算出部が前記ポジションセンサで測定されている測定開度に基づいて算出する第2流量とに基づいて前記バルブの開度を制御するように構成されていることを特徴とする流量制御装置用プログラムを既存の流量制御装置にインストールすればよい。なお、流量制御装置用プログラムは電子的に配信されるものであってもよいし、CD、DVD、HDD,フラッシュメモリ等のプログラム記憶媒体に記憶されたものであってもよい。
【発明の効果】
【0023】
このように本発明に係る流量制御装置によれば、目標流量が立ち上がる、あるいは立ち下がるような過渡状態においてバルブを通過した流体が流体抵抗素子を通過しないようにでき、かつ、応答速度の速い第2流量によるバルブの制御によって当該バルブの開度を目標開度へすぐに変更できる。したがって、目標流量の立ち上がり時や立ち下がり時においても高速で流体の流量を目標値へ追従させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明の第1実施形態に係る流量制御装置の過渡状態での制御モードを示す模式図。
図2】第1実施形態の流量制御装置におけるバルブの構造を示す模式図。
図3】第1実施形態の流量制御装置における特性マップの例を示す模式図。
図4】第1実施形態の流量制御装置における安定状態の制御モードを示す模式図。
図5】本発明の第2実施形態に係る流量制御装置の過渡状態の制御モードを示す模式図。
図6】第2実施形態の流量制御装置における安定状態の制御モードを示す模式図。
図7】本発明の第3実施形態に係る流量制御装置の過渡状態の制御モードを示す模式図。
図8】第3実施形態の流量制御装置における安定状態の制御モードを示す模式図。
図9】本発明の第4実施形態に係る流量制御装置を示す模式図。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明の第1実施形態に係る流量制御装置について図1乃至図4を参照しながら説明する。
【0026】
第1実施形態の流量制御装置は半導体製造プロセスにおいてチャンバ内に成分ガスを目標流量で流すために用いられるものである。このマスフローコントローラ100は、例えば目標流量としてステップ関数が入力される。すなわち、目標流量は所定時間内に流量が所定値以上増加する立ち上がりと、ある流量で長期間保たれている一定流量期間と、所定時間内に流量が所定値以上減少する立ち下がりを含むものである。このマスフローコントローラ100は、流体制御機器と各流体制御機器の出力に基づいた演算及び制御を司る制御ボードCとが一体となりパッケージ化されたものである。また、このマスフローコントローラ100は、過渡状態と安定状態において図1及び図4に示すように流量制御モードを異ならせてある。
【0027】
図1に示すように前記マスフローコントローラ100は流体制御機器として、図示しないブロック体内に形成された内部流路Lと、前記内部流路Lに対して設けられたフィルタF、流量センサ1、バルブ2、第2圧力センサP2と、を備えている。
【0028】
各部について説明する。
【0029】
前記フィルタFは最も上流に設けてあり、流体中のゴミなどがチャンバへ流入しないようにするためものである。
【0030】
前記流量センサ1は圧力式であり、前記バルブ2よりも上流側に設けてある。この流量センサ1は上流側圧力センサP0、流体抵抗素子たるリストリクタ11、第1圧力センサP1が上流側から順番に設けてある。前記第1圧力センサP1は前記リストリクタ11の前後の差圧から流量を算出するために用いるとともに、前記バルブ2の前後の差圧を測定するためにも用いている。すなわち、前記リストリクタ11と前記バルブ2の間に設けてある前記第1圧力センサP1は2つの測定目的で共用することで圧力センサの設置数を1つ減らしてある。さらに、この流量センサ1は前記制御モードの演算機能により構成された第1流量算出部12を備えている。この第1流量算出部12は、前記上流側圧力センサP0と前記第1圧力センサP1で測定される圧力に基づいて流量に換算する。
【0031】
前記バルブ2は、図2に示すように開度を測定するためのポジションセンサ24を内蔵したものである。前記ポジションセンサ24は弁座22に対する弁体21の変位について弁体21を移動させるプランジャ23の変位から間接的に測定するものである。このポジションセンサ24はプランジャ23に固定された金属製のターゲット25と、前記ターゲット25と対向するセンサ体26とを備えている。前記ポジションセンサ24は前記ターゲット25と前記センサ体26との離間距離が変化することにより生じる静電容量の変化を前記センサ体26で検知し、開度へと変換している。なお、ポジションセンサ24については静電容量式の変位センサに限られず、渦電流式の変位センサであってもよいし、弁体21を直接測定するものであってもよい。また、プランジャ23を駆動するピエゾアクチュエータ等の変位を測定するものであってもよい。
【0032】
前記第2圧力センサP2は前記バルブ2の下流側に設けてある。なお、上流側圧力センサP0、第1圧力センサP1、第2圧力センサP2はそれぞれ同じ形式のものを用いている。なお、各圧力センサP0、P1、P2についてはそれぞれ異なる形式のものを用いても構わない。
【0033】
前記制御ボードCは、CPU、メモリ、A/D・D/Aコンバータ、入出力手段、ディスプレイ等を備えたコンピュータであって、前記メモリの所定領域に格納されている流量制御装置用プログラムが実行されて各種機器と協業することにより前記第1流量算出部12、特性マップ記憶部3、第2流量算出部4、状態判定部5、バルブ制御部6、マップ更新部7としての機能を発揮するものである。前述した第1流量算出部12以外の各部について詳述する。
【0034】
前記特性マップ記憶部3は、図3に示すように前記バルブ2の開度、前記バルブ2の前後の差圧、流体の温度、及び、前記流路Lを流れる流体の流量との間の関係を示す特性マップを記憶するものである。言い換えると、差圧、温度、開度を入力変数、流量を出力変数とする関数でもある。この特性マップは例えば工場出荷時の試験によって実測データに基づいて作成される。より具体的にはバルブ2をある開度にした時の前記第1圧力センサP1、及び、前記第2圧力センサP2で測定される第1圧力、第2圧力、流体の温度、前記流量センサ1で測定される測定流量を対にして記憶させてある。図3に示されるように動作範囲内において所定点数だけ実測し、実測されているデータについては補間により算出できるようにしてある。
【0035】
前記第2流量算出部4は、現時点において前記ポジションセンサ24で測定されている測定開度、前記第1圧力センサP1で測定されている第1圧力、及び、前記第2圧力センサP2で測定されている第2圧力に基づいて前記特性マップから第2流量を算出する。すなわち、前記特性マップ記憶部3から特性マップを読み出し、現時点での測定開度、第1圧力、第2圧力を関数に入力して対応する第2流量を得る。なお、第2流量算出部4は流量センサ1とともに常時流量を算出し続けるようにしてある。この第2流量算出部4が算出する第2流量は、リストリクタ11による圧力降下を利用せずに算出されるものであるので、流量センサ1よりも時間遅れが小さく、前記バルブ2を通過している実際の流量を実質的に同時に表すことができる。
【0036】
前記状態判定部5は、前記流量センサ1から出力される第1流量、又は、前記第2流量算出部2が算出する第2流量に基づいて、流路Lを流れる流体の状態が安定状態であるか過渡状態であるかを判定するものである。ここで、安定状態とは流路Lを流れる流体の流量がほぼ一定流量で保たれていることを言う。過渡状態とは流路Lを流れる流体の流量が所定値以上変化している状態を言う。この状態判定部5は判定結果に応じて図1図4に示すようにこのマスフローコントローラ100の制御モードは変更する。安定状態ではないと判定されている間、すなわち、前記状態判定部5は過渡状態であると判定している間は図1に示すように特性マップを参照して得られる応答速度の速い第2流量を前記バルブ制御部6へ入力する。また、前記状態判定部5は、過渡状態であると判定している間は例えば現在の流量値として第2流量が外部出力し、ディスプレイに表示させる。このようにしてマスフローコントローラ100は、過渡状態においてはポジションセンサ24の出力に基づいた流量制御モードを実行する。
【0037】
一方、安定状態であると判定されている場合には図4に示すように前記状態判定部5は流量センサ1からの出力である第1流量を前記バルブ制御部6と前記マップ更新部7へと入力する。また、前記状態判定部5は、安定状態であると判定している間は例えば現在の流量値として第1流量が外部出力し、ディスプレイに表示させる。このようにしてマスフローコントローラ100は、安定状態においてはリストリクタ11において生じる圧力差から算出される第1流量に基づいた流量制御モードを実行する。
【0038】
流路Lを流れる流体の流量が過渡状態か安定状態のいずれであるかは、一定目標流量が入力されている状態において測定流量がある一定期間所定の誤差範囲内で追従しているかどうかで判定が行われるようにしてある。例えば所定時間内において一定目標流量に対して第1流量又は第2流量が例えば5%以内の誤差で追従している場合には安定状態であると判定される。逆に5%以上の誤差が発生している場合には過渡状態であると判定される。なお、より厳しい基準として第1流量又は第2流量が2%以内の誤差で一定目標流量に対して所定時間追従している場合に安定状態であると前記状態判定部5が判定するように構成してもよい。また、第1流量又は第2流量を判断基準にするのではなく、例えば目標流量において不連続点がある時点から所定時間を過渡状態と判定し、所定時間経過後は安定状態であると判定するように前記状態判定部5を構成してもよい。
【0039】
前記バルブ制御部6は、図1及び図4に示すように過渡状態と安定状態においてその動作が異なるようにしてある。前記バルブ制御部6は図1に示す過渡状態での制御モードでは特性マップを参照して得られる第2流量に基づいた開度制御を行うようにしてある。すなわち、目標流量が立ち上がる場合、又は、立ち下がり過渡状態となっている場合には、前記バルブ制御部6は受け付けている目標流量と、第2流量とに基づいて前記バルブ2への印加電圧のフィードバック制御を行う。すなわち、過渡状態では第1流量は算出されているが、前記バルブ2の開度制御のためには使用されない状態となる。
【0040】
一方、図4に示すように安定状態での制御モードでは前記流量センサ1で測定される第1流量が前記バルブ制御部6にフィードバックされて、目標流量と第1流量とに基づいて印加電圧のフィードバック制御が行われる。すなわち、第2流量は算出されているが、前記バルブ2の開度制御のためには使用されない状態となる。
【0041】
前記特性マップ更新部7は、図4に示す安定状態での制御モードにおいて測定されている第1流量、第1圧力、第2圧力、温度、開度に基づいて特性マップを更新する。例えば特性マップ更新部7は第1流量算出部12に入力されている各時刻において第1圧力、第2圧力、温度を前記特性マップ記憶部3の一時メモリに逐次記憶させており、安定状態において前記特性マップ更新部7に第1流量が入力されている場合にそれらの値を特性マップの値として更新する。すなわち、安定状態での制御モードで達成されている状態量の1点が図3の特性マップにおいて書き換えられる。
【0042】
このように構成された第1実施形態のマスフローコントローラ100によれば、前記バルブ2よりも上流側にリストリクタ11を有する流量センサ1が設けてあるので、目標流量が立ち下がる場合にも前記バルブ2を通過した流体の流れが前記リストリクタ11で阻害されることがない。すなわち、前記バルブ2の開度が小さくなるとすぐに流体の流量も小さくすることができる。
【0043】
また、過渡状態での制御モードではリストリクタ11の前後の圧力に基づいて算出されるために流量変化時に時間遅れが発生する第1流量ではなく、ポジションセンサ24の測定開度とバルブ2の前後の差圧と温度と特性マップに基づいて算出され、実際に変化している流量に対して時間遅れが発生しにくい第2流量がバルブ2の制御に用いられる。このため、目標流量が大きく変化する場合でも目標流量が達成される開度へ即時に変更できる。
【0044】
これらのことから立ち下がり時においても短時間で目標流量を実現できる。また、立ち上がり時においてもほぼ同様であるので過渡状態における流量制御の応答速度を従来よりも向上させることができる。
【0045】
また、前記特性マップ更新部7により逐次特性マップが更新されていくので、例えばバルブ2の印加電圧と開度との間にヒステリシスが存在し、経時変化が生じやすいものであったとしても常に目標流量を正確に実現することができる。すなわち、ポジションセンサ24から出力に基づいたバルブ制御でありながら、長期間にわたって流量制御の再現性を保障できる。
【0046】
次に本発明の第2実施形態に係るマスフローコントローラ100について図5及び図6を参照しながら説明する。
【0047】
図5及び図6に示すように第2実施形態のマスフローコントローラ100は、第1実施形態における圧力式の流量センサ1の代わりに熱式の流量センサ1を用いている点で異なっている。この熱式の流量センサ1も前記バルブ2の上流側に配置してあり、熱式の流量センサ1が具備する流体抵抗素子である分流素子11が前記バルブ2の上流側に配置されるようにしてある。また、図5及び図6の機能ブロックに示されるように過渡状態における制御モード、安定状態における制御モードの構成、及び、動作は同じものにしてある。
【0048】
熱式の前記流量センサ1について詳述すると、前記流量センサ1は、前記分流素子11の上流側から分岐し、当該分流素子11の下流側へ合流する分岐管13と、前記分岐管13に設けられた一対の巻線抵抗14と、前記一対の巻線抵抗14の出力に基づいて流量を算出する第1流量算出部12と、を備えている。なお、熱式の流量センサ1は圧力センサを備えていないので前記バルブ2の前後の差圧を測定するために第1圧力センサP1が熱式の流量センサ1と前記バルブ2との間に設けてある。
【0049】
前記分岐管13は金属製の細管であり、この細管の外側に温度センサ兼ヒータの役割を果たす一対の巻線抵抗14が設けてある。各巻線抵抗14の温度を一定に保つようにそれぞれの印加電圧は制御され、その時の電圧に基づいて前記第1流量算出部12は流量を算出する。なお、印加電圧を一定にして各巻線抵抗14の温度の違いに基づき流量を算出するように第1流量算出部12を構成しても構わない。
【0050】
このような第2実施形態のマスフローコントローラ100であれば、第1実施形態と同様の効果を得られる。すなわち、熱式の流量センサ1が具備する分流素子11の下流側にバルブ2が設けてあるので、目標流量がステップ状に変化しており、流量が過渡状態となる間でも分流素子11はバルブ2を通過する流体の流れを阻害しない。また、図5に示されるように過渡状態においてはポジションセンサ24の測定開度、第1圧力、第2圧力、温度に基づいて特性マップを参照して算出される第2流量がフィードバックされてバルブ制御部6はバルブ2の開度制御を行うので時間遅れが発生しにくい。これらのことから目標流量におけるステップ状の変化に対してバルブ2を通過する実際の流量を短時間で追従させることができる。
【0051】
さらに図6に示されるように安定状態における制御では熱式の流量センサ1で測定される第1流量に基づいたバルブ2の制御が実行されるとともに流量センサ1で測定される第1流量とその時点で第1圧力、第2圧力、温度で特性マップを更新する。したがって、バルブ2にヒステリシスが発生していても長期に亘って第2流量の正確さを担保することが可能となる。また、ヒステリシス以外の要因により誤差が発生したとしても特性マップが更新されることにより、常に正確な第2流量を算出する事が可能となる。
【0052】
次に第3実施形態のマスフローコントローラ100について図7及び図8を参照しながら説明する。第3実施形態のマスフローコントローラ100は、第1実施形態と比較してバルブ2に対する圧力式の流量センサ1の配置、及び、構成が異なっている。
【0053】
より具体的には圧力式の流量センサ1が前記バルブ2の下流側に設けてあるとともに、前記流量センサ1内においてリストリクタ11が設けられている高抵抗流路15と、リストリクタ11の設けられていない中空配管のみで形成された低抵抗流路16の何れか一方にのみ流体を流されるように構成してある。すなわち、第3実施形態の流量センサ1は前記バルブ2の下流側に設けられた第2圧力センサP2と、前記第2圧力センサP2の下流側に設けられた切替弁である三方弁17と、前記三方弁17の2つの出口にそれぞれ接続された前記高抵抗流路15及び前記低抵抗流路16と、低抵抗流路16に対して高抵抗流路15が合流している地点よりも下流側に設けられた下流側圧力センサP3と、を備えている。この流量センサ1は状態判定部6が過渡状態であると判定している場合の制御モードでは図7に示されるように前記低抵抗流路16に流体が流され、前記状態判定部6が安定状態であると判定している制御モードでは図8に示されるように前記高抵抗流路15に流体が流されるように三方弁17の切り替えが行われる。このため前記流量センサ1は高抵抗流路15に流体が流れリストリクタ11の作用により差圧が発生する場合にのみ流量が測定可能となる。この場合には第1流量算出部12は第2圧力センサP2で測定される第2圧力と、前記下流側圧力センサP3で測定される下流側圧力に基づいて測定流量を算出する。
【0054】
一方、過渡状態では低抵抗流路16に流体が流すことで、流体がリストリクタ11を経由して下流側に流れるのを阻害されないようにしてある。このようにして過渡状態における流量制御の応答速度を向上させてある。なお、低抵抗流路16に流体が流れている間は差圧が発生しないため前記第1流量算出部12は流量を算出できない。このため第2流量算出部4が特性マップ記憶部3に記憶されている特性マップに対して現時点での測定開度、第1圧力、第2圧力、温度を入力して得られる第2流量に基づいてバルブ制御部7によるバルブ2の開度制御が行われる。図7及び図8の機能ブロック図に示すようにその他の制御態様については第1実施形態と同様にしてある。
【0055】
このような第3実施形態のマスフローコントローラ100であれば、流量センサ1をバルブ2の下流側に配置しても目標流量が立ち下がる場合に流体がリストリクタ11を迂回して流れるようにすることで流量制御の応答速度を向上させることができる。また、リストリクタ11での差圧による流量が算出できない過渡状態の間はバルブ2の前後の差圧、温度、測定開度に基づいて特性マップから算出される第2流量でバルブ2の制御を継続できる。さらに安定状態において特性マップは流量センサ1で測定される第1流量とその時の特性パラメータである測定開度、第2圧力、下流側圧力に基づいて更新されるので、バルブ2のヒステリシスにより特性マップに変化が生じても適宜補正されていくので、測定開度に基づいて算出される第2流量の正確さを長期間に亘って保証することができる。
【0056】
次に第4実施形態のマスフローコントローラ100について図9を参照しながら説明する。第4実施形態のマスフローコントローラ100は、目標流量が変化している過渡状態においてバルブ2の前後の差圧と最終的な目標流量に基づいて特性マップ記憶部3に記憶されている特性マップを参照し、達成されるべきバルブ2の開度を取得し、ポジションセンサ24で測定される測定開度が取得された開度となるように制御するものである。具体的には第4実施形態のマスフローコントローラ100は、前記各実施形態のバルブ制御部5の代わりに開度制御部51を備えている。この開度制御部51は、受け付けている目標流量、と第1圧力センサP1で測定されている第1圧力と、第2圧力センサP2で測定されている第2圧力とに基づいて前記特性マップから対応する目標開度を決定する。この目標開度は過去の制御実績において流路Lを流れる流体が第1圧力と第2圧力の差圧が前記バルブ2の前後で発生している状態において目標流量が実現されたときに当該バルブ2で達成されていた開度と同じものである。
【0057】
さらに前記開度制御部51が、前記ポジションセンサ24で測定される測定開度が特性マップから取得された前記目標開度となるように前記バルブ2への印加電圧を変化させてその開度を制御する。この開度制御部51は、測定流量と目標流量との偏差に基づくフィードバック制御ではなく、最初から達成すべき目標開度へ実際の開度をフィードフォワード制御することになるので、応答速度を非常に速いものにすることができる。
【0058】
その他の実施形態について説明する。
【0059】
過渡状態における制御モードについては少なくとも目標流量が立ち下がる場合に実施されるように流量制御装置は構成すればよい。すなわち、目標流量が立ち上がる場合には安定状態における制御モードと同様に流量センサで測定される第1流量がフィードバックされる制御を行うようにしてもよい。
【0060】
各実施形態ではコンピュータの機能を利用して実現される各機能ブロックについては単一の制御ボードによりその機能が実現されるようにしたが、例えば流量算出部は別の制御ボードでその機能が実現されるようにしてもよいし、外部のパソコン等で各機能ブロックの機能が実現されるようにしてもよい。
【0061】
安定状態における制御モードでも流量フィードバックを行わずに特性マップから得られる第2流量でバルブの制御を行うようにしても構わない。この場合、流量センサで測定される第1流量は特性マップの更新にのみ用いればよい。
【0062】
低抵抗流路の内部に、高抵抗流路に設けられているリストリクタよりも抵抗の小さいリストリクタを設けてもよい。このようにすることで立ち下がり時の応答特性を従来よりも良くしつつ、低抵抗流路に流体を流している場合でも差圧による流量の算出が可能となる。また、切替弁については三方弁に限られるものではなく、その他の弁であってもよい。
【0063】
例えば流路の下流側がMOCVDやチャンバに接続されており、バルブの下流側ほぼ真空圧等で一定に保たれる場合には、第2圧力センサを設けずに第2圧力はチャンバ内とほぼ同じ圧力に保たれていると仮定して第1圧力との差圧を算出し、特許マップを参照するようにしてもよい。また、流路を流れる流体の供給源であるボンベから供給圧がほぼ一定に保たれる場合には上流側圧力センサを省略し、流体抵抗素子の上流側の圧力は供給圧とほぼ同じ圧力保たれている仮定して流量センサが測定流量を出力するようにしてもよい。
【0064】
特性マップについては温度を省略し、開度、バルブの前後の差圧、流量の間の関係だけを示すものであってもよい。また、特性マップを用いた過渡状態における流量制御については、測定開度、バルブの前後の差圧、温度に基づいて現在バルブを通過する流体の流量である第2流量を算出して、目標流量と第2流量の偏差による流量フィードバック制御を行うものに限られない。例えば目標流量、バルブの前後の差圧、温度に基づいて特性マップから設定されるべき目標開度を算出し、測定開度が目標開度となる印加電圧を即時に印加するように開度のフィードフォワード制御が実行されるように流量制御装置を構成しても構わない。
【0065】
その他、本発明の趣旨に反しない限りにおいて様々な実施形態の組み合わせや変形を行っても構わない。
【符号の説明】
【0066】
100・・・マスフローコントローラ(流量制御装置)
1 ・・・流量センサ
P0 ・・・上流側圧力センサ
11 ・・・リストリクタ、分流素子(流体抵抗素子)
P1 ・・・第1圧力センサ
12 ・・・第1流量算出部
13 ・・・分岐管
14 ・・・巻線抵抗
15 ・・・高抵抗流路
16 ・・・低抵抗流路
17 ・・・三方弁(切替弁)
2 ・・・バルブ
24 ・・・ポジションセンサ
3 ・・・特性マップ記憶部
4 ・・・第2流量算出部
5 ・・・状態判定部
6 ・・・バルブ制御部
7 ・・・マップ更新部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9