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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-16
(45)【発行日】2023-03-27
(54)【発明の名称】脱調判定装置及び脱調判定方法
(51)【国際特許分類】
   H02J 3/24 20060101AFI20230317BHJP
   G01R 31/34 20200101ALI20230317BHJP
   H02J 13/00 20060101ALI20230317BHJP
【FI】
H02J3/24
G01R31/34 A
H02J13/00 301A
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2019125933
(22)【出願日】2019-07-05
(65)【公開番号】P2021013238
(43)【公開日】2021-02-04
【審査請求日】2022-05-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000156938
【氏名又は名称】関西電力株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】519135633
【氏名又は名称】公立大学法人大阪
(74)【代理人】
【識別番号】100153224
【弁理士】
【氏名又は名称】中原 正樹
(72)【発明者】
【氏名】清水 浩一郎
(72)【発明者】
【氏名】石亀 篤司
【審査官】山本 香奈絵
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-352679(JP,A)
【文献】特開昭55-086323(JP,A)
【文献】特開昭55-117440(JP,A)
【文献】特開平6-038375(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 3/24
G01R 31/34
H02J 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力系統からの発電設備の脱調を判定する脱調判定装置であって、
前記発電設備に接続された系統の電圧、及び、前記電圧の単位時間における変化量である電圧変化量を取得する取得部と、
取得された前記電圧及び前記電圧変化量を用いて、前記電力系統から前記発電設備が脱調するか否かを判定する判定部と、
を備える脱調判定装置。
【請求項2】
前記判定部は、前記電圧と前記電圧変化量とを乗じた値を用いて、前記電力系統から前記発電設備が脱調するか否かを判定する
請求項1に記載の脱調判定装置。
【請求項3】
前記判定部は、前記電圧と前記電圧変化量とを乗じた値の絶対値が所定の閾値以上の場合に、前記電力系統から前記発電設備が脱調すると判定する
請求項2に記載の脱調判定装置。
【請求項4】
さらに、前記発電設備ごとに定められた閾値を記憶している記憶部を備え、
前記判定部は、
前記記憶部から、脱調するか否かを判定する対象の発電設備に対応する閾値を読み出し、
前記電圧と前記電圧変化量とを乗じた値の絶対値が、前記発電設備に対応する閾値以上の場合に、前記電力系統から前記発電設備が脱調すると判定する
請求項3に記載の脱調判定装置。
【請求項5】
さらに、前記判定部が、前記電力系統から前記発電設備が脱調すると判定した場合に、前記電圧変化量を低下させるように制御する制御部を備える
請求項1~4のいずれか1項に記載の脱調判定装置。
【請求項6】
前記制御部は、前記判定部が、前記電力系統から前記発電設備が脱調すると判定した場合に、前記発電設備の発電出力を変化させる
請求項5に記載の脱調判定装置。
【請求項7】
電力系統からの発電設備の脱調を判定する脱調判定方法であって、
前記発電設備に接続された系統の電圧、及び、前記電圧の単位時間における変化量である電圧変化量を取得する取得ステップと、
取得された前記電圧及び前記電圧変化量を用いて、前記電力系統から前記発電設備が脱調するか否かを判定する判定ステップと、
を含む脱調判定方法。
【請求項8】
請求項7に記載の脱調判定方法に含まれるステップをコンピュータに実行させるためのプログラム。
【請求項9】
請求項8に記載のプログラムが記録されたコンピュータ読み取り可能な記録媒体。
【請求項10】
電力系統からの発電設備の脱調を判定する集積回路であって、
前記発電設備に接続された系統の電圧、及び、前記電圧の単位時間における変化量である電圧変化量を取得する取得部と、
取得された前記電圧及び前記電圧変化量を用いて、前記電力系統から前記発電設備が脱調するか否かを判定する判定部と、
を備える集積回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力系統からの発電設備の脱調を判定する脱調判定装置及び脱調判定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電力系統からの発電設備の脱調を判定する技術が知られている。例えば、特許文献1には、送電系統の自端電圧の位相を記憶し、記憶した位相と送電系統の自端電圧の現在位相の差から送電系統の脱調を判別する脱調検出リレーシステムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2016-127657号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来の技術は、位相差を用いて、電力系統から発電設備が脱調したか否かを判別するものである。しかしながら、電力系統の迅速な安定化を図る上で、電力系統から発電設備が脱調するよりも前に、発電設備が脱調するか否かを予測できる技術が望まれる。
【0005】
そこで、本発明は、このような問題に鑑みてなされたものであり、電力系統から発電設備が脱調するか否かを予測することができる脱調判定装置及び脱調判定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明の一態様に係る脱調判定装置は、電力系統からの発電設備の脱調を判定する脱調判定装置であって、前記発電設備に接続された系統の電圧、及び、前記電圧の単位時間における変化量である電圧変化量を取得する取得部と、取得された前記電圧及び前記電圧変化量を用いて、前記電力系統から前記発電設備が脱調するか否かを判定する判定部と、を備える。
【0007】
これによれば、脱調判定装置は、発電設備に接続された系統の電圧、及び、当該電圧の単位時間における変化量である電圧変化量を取得し、取得した電圧及び電圧変化量を用いて、電力系統から発電設備が脱調するか否かを判定する。このように、本願発明者は、当該電圧及び電圧変化量を用いることで、電力系統から発電設備が脱調するか否かを判定することができることを見出した。これにより、脱調判定装置によれば、電力系統から発電設備が脱調するか否かを予測することができる。
【0008】
また、前記判定部は、前記電圧と前記電圧変化量とを乗じた値を用いて、前記電力系統から前記発電設備が脱調するか否かを判定することにしてもよい。
【0009】
これによれば、脱調判定装置は、発電設備に接続された系統の電圧と電圧変化量とを乗じた値を用いて、電力系統から発電設備が脱調するか否かを判定する。ここで、本願発明者は、当該電圧と電圧変化量とを乗じた値を用いることで、比較的早い段階で、電力系統から発電設備が脱調すると判定できることを見出した。これにより、脱調判定装置によれば、判定の高速化を図りつつ、電力系統から発電設備が脱調するか否かを予測することができる。
【0010】
また、前記判定部は、前記電圧と前記電圧変化量とを乗じた値の絶対値が所定の閾値以上の場合に、前記電力系統から前記発電設備が脱調すると判定することにしてもよい。
【0011】
これによれば、脱調判定装置は、発電設備に接続された系統の電圧と電圧変化量とを乗じた値の絶対値が所定の閾値以上の場合に、電力系統から発電設備が脱調すると判定する。ここで、本願発明者は、当該電圧と電圧変化量とを乗じた値は、電力系統の潮流状況の想定の影響を受けにくいため、所定の閾値と比較することで、精度良く、電力系統から発電設備が脱調するか否かを判定することができることを見出した。これにより、脱調判定装置によれば、精度良く、電力系統から発電設備が脱調するか否かを予測することができる。
【0012】
また、さらに、前記発電設備ごとに定められた閾値を記憶している記憶部を備え、前記判定部は、前記記憶部から、脱調するか否かを判定する対象の発電設備に対応する閾値を読み出し、前記電圧と前記電圧変化量とを乗じた値の絶対値が、前記発電設備に対応する閾値以上の場合に、前記電力系統から前記発電設備が脱調すると判定することにしてもよい。
【0013】
これによれば、脱調判定装置は、発電設備ごとに定められた閾値を記憶しており、電圧と電圧変化量とを乗じた値の絶対値が、判定対象の発電設備に対応する閾値以上の場合に、電力系統から発電設備が脱調すると判定する。ここで、本願発明者は、当該電圧と電圧変化量とを乗じた値は、発電設備ごとに固有の値となるため、発電設備ごとに定められた閾値と比較することで、精度良く、電力系統から発電設備が脱調するか否かを判定することができることを見出した。これにより、脱調判定装置によれば、電力系統から各々の発電設備が脱調するか否かを予測することができるため、電力系統全体としての予測精度を向上させることができる。
【0014】
また、さらに、前記判定部が、前記電力系統から前記発電設備が脱調すると判定した場合に、前記電圧変化量を低下させるように制御する制御部を備えることにしてもよい。
【0015】
これによれば、脱調判定装置は、電力系統から発電設備が脱調すると判定した場合に、発電設備に接続された系統の電圧変化量を低下させるように制御する。このように、本願発明者は、電力系統から発電設備が脱調しそうな場合に、当該電圧変化量を低下させることで、発電設備を脱調しにくくすることができることを見出した。これにより、脱調判定装置によれば、電力系統から発電設備が脱調するか否かを予測し、かつ、発電設備が脱調するのを抑制することができる。
【0016】
また、前記制御部は、前記判定部が、前記電力系統から前記発電設備が脱調すると判定した場合に、前記発電設備の発電出力を変化させることにしてもよい。
【0017】
これによれば、脱調判定装置は、電力系統から発電設備が脱調すると判定した場合に、発電設備の発電出力を変化させる。つまり、電力系統から発電設備が脱調しそうな場合に、発電設備の発電出力を変化させて電圧を安定させることで、電圧変化量を低下させ、発電設備を脱調しにくくする。これにより、脱調判定装置によれば、電力系統から発電設備が脱調するか否かを予測し、かつ、発電設備が脱調するのを抑制することができる。
【0018】
また、本発明は、このような脱調判定装置として実現することができるだけでなく、脱調判定装置に含まれる処理部が行う特徴的な処理をステップとする脱調判定方法としても実現することができる。また、脱調判定方法に含まれるステップをコンピュータに実行させるためのプログラムとして実現したり、当該プログラムが記録されたコンピュータ読み取り可能なCD-ROMなどの記録媒体として実現したりすることもできる。そして、当該プログラムは、当該記録媒体及びインターネット等の伝送媒体を介して流通させることができる。また、本発明は、脱調判定装置に含まれる処理部を備える集積回路としても実現することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、電力系統から発電設備が脱調するか否かを予測することができる脱調判定装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】実施の形態に係る脱調判定装置と発電設備と電力系統との接続関係を示す図である。
図2】実施の形態に係る脱調判定装置の機能的な構成を示すブロック図である。
図3】実施の形態に係る記憶部が記憶している判定用データの一例を示す図である。
図4】実施の形態に係る脱調判定装置が、電力系統からの発電設備の脱調を判定する処理(脱調判定方法)を示すフローチャートである。
図5】実施の形態に係る判定部が、電力系統から発電設備が脱調するか否かを判定する処理を示すフローチャートである。
図6】実施の形態に係る判定部の判定理論を説明するための図である。
図7】実施の形態に係る脱調判定装置が奏する効果(脱調判定高速化)を説明するための図である。
図8】実施の形態に係る脱調判定装置が奏する効果(脱調判定精度向上)を説明するための図である。
図9】実施の形態の変形例に係る脱調判定装置の設置位置を示す図である。
図10】実施の形態における脱調判定装置を集積回路で実現する一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施の形態(及びその変形例)に係る脱調判定装置について、説明する。なお、以下で説明する実施の形態は、いずれも包括的または具体的な例を示すものである。以下の実施の形態で示される数値、構成要素、構成要素の配置位置及び接続形態、ステップ、ステップの順序などは、一例であり、本発明を限定する主旨ではない。
【0022】
(実施の形態)
[1 脱調判定装置100の全般的な説明]
まず、脱調判定装置100の全般的な説明を行う。図1は、本実施の形態に係る脱調判定装置100と発電設備200と電力系統300との接続関係を示す図である。
【0023】
脱調判定装置100は、電力系統300からの発電設備200の脱調を判定する装置である。本実施の形態では、脱調判定装置100は、電力系統300から発電設備200が脱調するか否かを判定し、判定結果に応じて発電設備200を制御するコンピュータである。なお、脱調判定装置100は、パーソナルコンピュータ等の汎用のコンピュータシステムがプログラムを実行することによって実現されてもよいし、専用のコンピュータシステムによって実現されてもよい。
【0024】
図1に示すように、脱調判定装置100は、複数の発電設備200(同図では、発電設備201、202、203・・・)に接続された複数の系統310(同図では、系統311、312、313・・・)に接続されて、当該複数の系統310のそれぞれから情報を取得する。これにより、脱調判定装置100は、複数の発電設備200のそれぞれについて、電力系統300から脱調するか否かを判定し、判定結果に応じて、それぞれの発電設備200を制御する。
【0025】
例えば、脱調判定装置100は、発電設備201に接続された系統311から情報を取得して、発電設備201が電力系統300から脱調すると判定した場合に、発電設備201の発電出力を変化させて、発電設備201が電力系統300から脱調するのを抑制する。また、脱調判定装置100は、発電設備201及び202が電力系統300から脱調すると判定した場合であって、発電設備201が発電設備202よりも早く脱調すると判定した場合に、発電設備201を電力系統300から遮断することで、発電設備202の脱調を抑制することもできる。
【0026】
ここで、発電設備200は、電力系統300に連系された発電設備であり、例えば、電力会社が保有する火力発電所等である。なお、発電設備200は、火力発電所以外の発電設備(水力発電所、原子力発電所等)でもよいし、発電設備200の所有者も特に限定されない。また、発電設備200は、いくつの発電機(または発電所)を有していてもよい。つまり、1つの発電機しか有していない1つの発電所を発電設備200と称してもよいし、複数の発電機を有する1つの発電所を発電設備200と称してもよいし、複数の発電所をまとめて発電設備200と称してもよい。また、電力系統300は、発電設備200から変電所を介して電力が供給される商用電力系統である。
【0027】
なお、脱調判定装置100の設置場所は特に限定されないが、脱調判定装置100は、例えば、中央給電指令所、または、変電所等に設置されている。
【0028】
[2 脱調判定装置100の機能構成の説明]
次に、脱調判定装置100の機能構成について、詳細に説明する。図2は、本実施の形態に係る脱調判定装置100の機能的な構成を示すブロック図である。
【0029】
図2に示すように、脱調判定装置100は、取得部110と、判定部120と、制御部130と、記憶部140と、を備えている。なお、図示していないが、脱調判定装置100は、キーボードやマウスなどの入力部、及び、液晶ディスプレイなどの表示部等を備えていてもよい。
【0030】
取得部110は、発電設備200に接続された系統310の電圧、及び、当該電圧の単位時間における変化量である電圧変化量を取得する。具体的には、取得部110は、各々の発電設備200に接続された各々の系統310の電圧、及び、当該各々の系統310の電圧変化量を取得する。
【0031】
判定部120は、取得部110が取得した電圧及び電圧変化量を用いて、電力系統300から発電設備200が脱調するか否かを判定する。具体的には、判定部120は、当該電圧と電圧変化量とを乗じた値を用いて、電力系統300から発電設備200が脱調するか否かを判定する。さらに具体的には、判定部120は、当該電圧と電圧変化量とを乗じた値の絶対値が所定の閾値以上の場合に、電力系統300から発電設備200が脱調すると判定する。つまり、判定部120は、記憶部140から、脱調するか否かを判定する対象の発電設備200に対応する閾値を読み出し、電圧と電圧変化量とを乗じた値の絶対値が、発電設備200に対応する閾値以上の場合に、電力系統300から発電設備200が脱調すると判定する。このように、判定部120は、各々の発電設備200について、電力系統300から脱調するか否かを判定する。
【0032】
制御部130は、判定部120が、電力系統300から発電設備200が脱調すると判定した場合に、当該発電設備200に接続された系統310の電圧変化量を低下させるように制御する。具体的には、制御部130は、判定部120が、電力系統300から発電設備200が脱調すると判定した場合に、当該発電設備200の発電出力を変化させるように制御する。
【0033】
記憶部140は、電力系統300からの発電設備200の脱調を判定するためのデータ等を記憶しているメモリである。具体的には、記憶部140は、取得部110が取得したデータ、判定部120が判定に用いるデータ、及び、制御部130が制御に用いるデータ等を含む判定用データ141を記憶している。図3は、本実施の形態に係る記憶部140が記憶している判定用データ141の一例を示す図である。
【0034】
図3に示すように、判定用データ141は、「発電設備」、「電圧」、「電圧変化量」、「乗算値」、「閾値」、及び、「判定結果」等を含むデータの集まりである。
【0035】
「発電設備」は、判定部120が脱調するか否かを判定する対象の発電設備200を示し、判定用データ141に予め書き込まれているが、判定の過程で書き込まれることにしてもよい。「電圧」は、当該対象の発電設備200に接続された系統310の電圧の値を示し、取得部110が取得したデータが「発電設備」に対応付けられて書き込まれ、判定部120によって判定の際に読み出される。「電圧変化量」は、当該電圧の単位時間における変化量である電圧変化量の値を示し、取得部110が算出した値が「発電設備」に対応付けられて書き込まれ、判定部120によって判定の際に読み出される。
【0036】
「乗算値」は、当該電圧と当該電圧変化量とを乗じた値を示し、判定部120が算出した値が「発電設備」に対応付けられて書き込まれ、判定の際に読み出される。「閾値」は、当該対象の発電設備200ごとに定められた閾値を示し、判定部120によって判定の際に読み出される。なお、「閾値」は、判定用データ141に予め「発電設備」に対応付けられて書き込まれているが、判定の過程で書き込まれたり、変更(更新)されたりしてもよい。「判定結果」は、判定部120が判定した結果を示し、判定部120によって判定の後に「発電設備」に対応付けられて書き込まれ、制御部130によって制御の際に読み出される。
【0037】
なお、「電圧」、「電圧変化量」、「乗算値」、及び、「判定結果」は、時間の経過とともに変化するため、図3では、一例として、各々の発電設備において、これらのデータが都度更新されていく場合を示しているが、これらのデータが蓄積されていくことにしてもよい。
【0038】
[3 脱調判定装置100の処理フローの説明]
次に、脱調判定装置100が、電力系統300からの発電設備200の脱調を判定する処理について、説明する。図4は、本実施の形態に係る脱調判定装置100が、電力系統300からの発電設備200の脱調を判定する処理(脱調判定方法)を示すフローチャートである。
【0039】
図4に示すように、まず、取得部110は、発電設備200に接続された系統310の電圧、及び、当該電圧の単位時間における変化量である電圧変化量を取得する(S102、取得ステップ)。
【0040】
具体的には、取得部110は、各々の発電設備200に接続された各々の系統310から、各々の系統310の電圧を取得する。例えば、取得部110は、系統310に設置された計測器によって電圧を計測したり、他の情報を用いて電圧を算出することで、当該系統310の電圧を取得する。そして、取得部110は、取得した各々の系統310の電圧を、記憶部140の判定用データ141の「電圧」に、「発電設備」に対応付けて書き込み記憶させる。
【0041】
また、取得部110は、各々の発電設備200に接続された各々の系統310の電圧変化量を取得する。例えば、取得部110は、系統310の電圧を単位時間ごとに取得し、取得した単位時間ごとの電圧の差分を算出することで、当該電圧の単位時間における変化量である電圧変化量を取得する。また、取得部110は、系統310の電圧の経時変化から、電圧を時間の関数で表現し、当該関数を時間で微分することで、電圧微分値である電圧変化量を取得することにしてもよい。または、系統310に設置された計測器によって電圧変化量を計測できる場合には、取得部110は、当該計測器によって電圧変化量を計測することで、電圧変化量を取得することにしてもよい。そして、取得部110は、取得した各々の系統310の電圧変化量を、記憶部140の判定用データ141の「電圧変化量」に、「発電設備」に対応付けて書き込み記憶させる。
【0042】
なお、取得部110が当該電圧及び電圧変化量を取得する時間間隔は、1秒、10秒、1分、10分など特に限定されず、ユーザによって適切な数値が定められる。また、取得部110は、一定時間間隔で当該電圧及び電圧変化量を取得するのではなく、ユーザによって任意に定められたタイミングで当該電圧及び電圧変化量を取得することにしてもよい。
【0043】
次に、判定部120は、取得部110が取得した電圧及び電圧変化量を用いて、電力系統300から発電設備200が脱調するか否かを判定する(S104、判定ステップ)。この判定部120が行う判定処理について、以下に詳細に説明する。図5は、本実施の形態に係る判定部120が、電力系統300から発電設備200が脱調するか否かを判定する処理を示すフローチャートである。
【0044】
図5に示すように、まず、判定部120は、脱調するか否かを判定する対象の発電設備200に対応する電圧と電圧変化量とを乗算する(S202、第一判定ステップ)。具体的には、判定部120は、当該対象の発電設備200に対応する電圧及び電圧変化量を、記憶部140の判定用データ141の「電圧」及び「電圧変化量」から読み出し、読み出した電圧と電圧変化量とを乗算する。
【0045】
例えば、判定部120は、発電設備「H1」が脱調するか否かを判定する場合には、発電設備「H1」に対応付けられた電圧「V1」及び電圧変化量「ΔV1」を、判定用データ141から読み出し、これらを乗算(V1×ΔV1)して、乗算値「VΔV1」を取得する。また、判定部120は、算出した電圧と電圧変化量との乗算値を、記憶部140の判定用データ141の「乗算値」に、「発電設備」に対応付けて書き込み記憶させる。例えば、判定部120は、発電設備「H1」に対応付けて、乗算値「VΔV1」を書き込み記憶させる。
【0046】
また、判定部120は、脱調するか否かを判定する対象の発電設備200に対応する閾値を取得する(S204、第二判定ステップ)。具体的には、判定部120は、記憶部140の判定用データ141の「閾値」から、脱調するか否かを判定する対象の発電設備200に対応する閾値を読み出し、取得する。例えば、判定部120は、発電設備「H1」が脱調するか否かを判定する場合には、発電設備「H1」に対応付けられた閾値「S1」を、判定用データ141から読み出し、取得する。
【0047】
そして、判定部120は、当該対象の発電設備200に対応する電圧と電圧変化量とを乗じた値を用いて、当該対象の発電設備200が電力系統300から脱調するか否かを判定する。具体的には、判定部120は、当該電圧と電圧変化量との乗算値の絶対値が、取得した閾値以上か否かを判断する(S206、第三判定ステップ)。
【0048】
つまり、判定部120は、当該対象の発電設備200に対応する乗算値を、記憶部140の判定用データ141の「乗算値」から読み出し、当該対象の発電設備200に対応する閾値と比較する。例えば、判定部120は、発電設備「H1」が脱調するか否かを判定する場合には、発電設備「H1」に対応付けられた乗算値「VΔV1」を、判定用データ141から読み出し、閾値「S1」と比較する。
【0049】
判定部120は、当該電圧と電圧変化量とを乗じた値の絶対値が、当該発電設備200に対応する閾値以上であると判断した場合に(S206でYES)、当該対象の発電設備200が電力系統300から脱調すると判定する(S208、第四判定ステップ)。例えば、判定部120は、乗算値「VΔV1」の絶対値が閾値「S1」以上(|VΔV1|≧S1)であると判断した場合に、発電設備「H1」が電力系統300から脱調すると判定する。
【0050】
判定部120は、当該電圧と電圧変化量との乗算値の絶対値が当該閾値よりも小さい(例えば、|VΔV1|<S1)と判断した場合には(S206でNO)、当該対象の発電設備200が電力系統300から脱調しないと判定する(S210、第五判定ステップ)。
【0051】
このように、判定部120は、各々の発電設備200について、電力系統300から脱調するか否かを判定する。そして、判定部120は、判定した結果を、記憶部140の判定用データ141の「判定結果」に、「発電設備」に対応付けて書き込み記憶させる。例えば、判定部120は、発電設備「H1」が電力系統300から脱調すると判定した場合には、発電設備「H1」に対応付けて、判定結果「X」を書き込み記憶させる。また、判定部120は、例えば発電設備「H2」が電力系統300から脱調しないと判定した場合には、発電設備「H2」に対応付けて、判定結果「O」を書き込み記憶させる。
【0052】
なお、判定部120は、対象の発電設備200が電力系統300から脱調する判定した場合に、当該乗算値の絶対値と閾値との差分の大きさから、当該対象の発電設備200が電力系統300から脱調する早さも加味して判定を行うこともできる。つまり、判定部120は、当該乗算値の絶対値から当該閾値を差し引いた値が大きい方が、電力系統300から早く脱調すると判定できる。例えば、当該乗算値の絶対値から閾値を差し引いた値が、発電設備「H3」の方が発電設備「H1」よりも大きい場合には、発電設備「H3」の方が発電設備「H1」よりも早く脱調すると判定できる。この場合、判定部120は、発電設備「H1」の判定結果「X」に対して、発電設備「H3」における判定結果を「XX」として、判定用データ141の「判定結果」に書き込み記憶させる。
【0053】
以上のようにして、判定部120が、電力系統300から発電設備200が脱調するか否かを判定する処理(図4のS104)は、終了する。
【0054】
図4に戻り、制御部130は、判定部120が、電力系統300から発電設備200が脱調すると判定したか否かを判断する(S106、第一制御ステップ)。つまり、制御部130は、記憶部140の判定用データ141の「判定結果」から、各々の発電設備200の判定結果を読み出し、電力系統300から発電設備200が脱調するか否かを判断する。
【0055】
制御部130は、判定部120が、電力系統300から発電設備200が脱調すると判定したと判断した場合に(S106でYES)、当該発電設備200に接続された系統310の電圧変化量を低下させるように制御する(S108、第二制御ステップ)。具体的には、制御部130は、判定部120が、電力系統300から発電設備200が脱調すると判定したと判断した場合に、当該発電設備200の発電出力を変化(例えば低下)させるように制御する。
【0056】
例えば、制御部130は、判定用データ141から発電設備「H1」の判定結果「X」を取得した場合には、判定部120が、発電設備「H1」が電力系統300から脱調すると判定したと判断し、発電設備「H1」の発電出力を低下させるように制御する。具体的には、制御部130は、発電設備「H1」に対して、例えば、発電出力を低下させる信号を送信する。
【0057】
なお、制御部130は、対象の発電設備200に接続された系統310の電圧変化量を低下させることができるのであれば、対象の発電設備200の発電出力を増加させる等、低下させる以外の制御を行うことにしてもよい。また、制御部130は、判定部120が、2つの発電設備200が電力系統300から脱調すると判定した場合には、早く脱調すると判定された方の発電設備200を電力系統300から遮断するように制御を行うことにしてもよい。この場合、制御部130は、例えば、判定用データ141から発電設備「H1」の判定結果「X」と発電設備「H3」の判定結果「XX」とを取得した場合には、発電設備「H3」を電力系統300から遮断するように制御を行う。
【0058】
また、制御部130は、判定部120によって発電設備200の脱調の判定がなされなかったと判断した場合には(S106でNO)、処理を終了する。以上のようにして、脱調判定装置100が、電力系統300からの発電設備200の脱調を判定する処理(脱調判定方法)は、終了する。
【0059】
[4 判定部120の判定理論の説明]
次に、判定部120が判定時に用いる理論である、発電設備200に接続された系統310の電圧と電圧変化量とを乗じた値の絶対値が所定の閾値以上の場合に、発電設備200が電力系統300から脱調すると判定できることについて、詳細に説明する。図6は、本実施の形態に係る判定部120の判定理論を説明するための図(一機無限大母線系統モデル)である。
【0060】
対象とする発電設備200が有する発電機が、残りの発電機群に対して変動する現象について、図6に示す一機無限大母線系統モデルを用いて下記の通り定義する。なお、対象とする発電設備200が有する発電機を、以下では単に発電機と称し、発電設備200が複数の発電機を有する場合には、当該複数の発電機を1つの発電機とみなして、以下では発電機と称する。
【0061】
【数1】
【0062】
まず、電圧と電流との関係から、以下の式1及び式2の2つの式が得られる。
【数2】
【0063】
式2に式1を代入して整理すると、以下の式3が得られる。
【数3】
【0064】
上記の式3の複素数表記を実数の大きさに変更すると、以下の式4が得られる。
【数4】
【0065】
よって、Vを以下の式5のように表現することができる。
【数5】
【0066】
上記の式5を微分すると、以下の式6が得られる。
【数6】
【0067】
上記の式5と式6との積をとると、以下の式7が得られる。
【数7】
【0068】
本実施の形態では、上記の式7の絶対値を脱調判定の指標とするので、上記の式7の絶対値をVrefと定義すると、以下の式8のように表現することができる。つまり、以下のVrefが、判定部120が発電設備200の脱調を判定する際に用いる、発電設備200に接続された系統310の電圧と電圧変化量とを乗じた値の絶対値である。
【数8】
【0069】
一方で、発電機の加速及び減速を表す動揺方程式は、以下の式9の通りに表される。ここで、Mは、発電機の慣性定数であり、Pは、発電機の機械的入力であり、Pは、発電機の電気的出力であり、ωは、発電機の角速度である。
【数9】
【0070】
上記の式9の両辺にωをかけると、以下の式10が得られる。
【数10】
【0071】
本実施の形態では、Vrefが極大値をとる点を対象としていることから、Vrefを定数とみなす。上記の式10を解くにあたり、ランベルト関数を導入する。ランベルト関数は、y=xeの逆関数であり、以下の式11及び式12の通り定義される。
【数11】
【0072】
式12の両辺を微分すると、以下の式13が得られる。
【数12】
【0073】
ここで、以下の式14の通り、関数を定義する。
【数13】
【0074】
式14を微分すると、以下の式15が得られる。
【数14】
【0075】
上記の式15を整理すると、以下の式16が得られる。
【数15】
【0076】
式10と式16との係数を比較することで、式10のωについて解くことができる。まず、以下の式17及び式18が得られる。
【数16】
【0077】
また、f(0)=ωと仮定すると、以下の式19が得られる。
【数17】
【0078】
上記の式14に、上記の式17、式18及び式19で得られた係数を代入すると、以下の式20が得られる。
【数18】
【0079】
ランベルト関数が一意の解を持つためには、定義域が正である必要があるので、以下の式21が得られる。
【数19】
【0080】
ω/kは、電力系統の構成により決定される固定値である。そのため、V・dV/dtの極大値であるVrefがある一定の値以上となる場合、上記の式9の微分方程式は一意の実数解を持つ必要条件を満たさず、解が発散する。つまり、Vref(電圧と電圧変化量とを乗じた値の絶対値)が所定の閾値以上の場合に、発電設備200が脱調すると判定することができる。
【0081】
以上のことから、解析的(あるいは実測的)にVrefを求めることで、発電機の安定性指標として用いることができる。つまり、判定部120は、発電設備200に接続された系統310の電圧と電圧変化量とを乗じた値の絶対値(Vref)が所定の閾値以上の場合に、電力系統300から発電設備200が脱調すると判定することができる。
【0082】
[5 効果の説明]
次に、脱調判定装置100が奏する効果について、以下に詳細に説明する。図7及び図8は、本実施の形態に係る脱調判定装置100が奏する効果を説明するための図である。具体的には、図7は、脱調判定装置100の脱調判定高速化の効果を説明する図であり、図8は、脱調判定装置100の脱調判定精度向上の効果を説明する図である。
【0083】
図7の(a)は、位相やインピーダンス等を用いて発電設備の脱調を判定する場合の脱調の検出点を示しており、図7の(b)は、本実施の形態と異なる手法で脱調を判定する場合の脱調の検出点の一例を示している。図7の(c)は、本実施の形態の手法を用いて脱調を判定する場合の脱調の検出点を示している。なお、図7の(a)~(c)において、脱調に至るまでの電圧及び電圧変化量の値の推移を実線のグラフで示し、それぞれの場合の脱調を検出する検出点を当該実線のグラフ上にプロットしている。また、図7の(b)及び(c)において、脱調を判定する際に用いる閾値を破線で示している。なお、グラフ中に記載の「脱調する領域」とは、実際に脱調する領域ではなく、脱調すると判定される領域のことを示している。
【0084】
これらの図に示すように、図7の(a)の場合では、脱調の検出が比較的遅く、図7の(b)の場合では、図7の(a)の場合よりも脱調の検出は早くなっているが、図7の(c)の場合が脱調の検出が最も早いのが分かる。つまり、図7の(c)に示す本実施の形態の手法が、脱調に至る前に速やかに脱調を検出できており、脱調判定の高速化が図られている。
【0085】
また、図8の(a)~(c)は、図7の(a)~(c)のそれぞれの場合に対応しており、図7の(a)~(c)のそれぞれの脱調判定手法において、潮流状況の想定によって、脱調に至るまでの電圧及び電圧変化量の値の推移が変化した場合を示している。
【0086】
これらの図に示すように、図8の(a)及び(b)の場合では、潮流状況の想定によって電圧及び電圧変化量の値の推移が変化すると、閾値との距離が大きくなったり小さくなったりするため、脱調判定が潮流状況の想定の影響を大きく受けることが分かる。これに対し、図8の(c)の場合では、潮流状況の想定によって電圧及び電圧変化量の値の推移が変化しても、閾値との距離がほぼ変化しないため、脱調判定が潮流状況の想定の影響を受けにくくなっている。つまり、図8の(c)に示す本実施の形態の手法が、精度良く脱調を検出できており、脱調判定の精度向上が図られている。
【0087】
以上のように、本実施の形態に係る脱調判定装置100によれば、発電設備200に接続された系統310の電圧、及び、当該電圧の単位時間における変化量である電圧変化量を取得し、取得した電圧及び電圧変化量を用いて、電力系統300から発電設備200が脱調するか否かを判定する。このように、本願発明者は、当該電圧及び電圧変化量を用いることで、電力系統300から発電設備200が脱調するか否かを判定することができることを見出した。これにより、脱調判定装置100によれば、電力系統300から発電設備200が脱調するか否かを予測することができる。
【0088】
また、脱調判定装置100は、発電設備200に接続された系統310の電圧と電圧変化量とを乗じた値を用いて、電力系統300から発電設備200が脱調するか否かを判定する。ここで、本願発明者は、当該電圧と電圧変化量とを乗じた値を用いることで、比較的早い段階で、電力系統300から発電設備200が脱調すると判定できることを見出した。これにより、脱調判定装置100によれば、判定の高速化を図りつつ、電力系統300から発電設備200が脱調するか否かを予測することができる。
【0089】
また、脱調判定装置100は、発電設備200に接続された系統310の電圧と電圧変化量とを乗じた値の絶対値が所定の閾値以上の場合に、電力系統300から発電設備200が脱調すると判定する。ここで、本願発明者は、当該電圧と電圧変化量とを乗じた値は、電力系統300の潮流状況の想定の影響を受けにくいため、所定の閾値と比較することで、精度良く、電力系統300から発電設備200が脱調するか否かを判定することができることを見出した。これにより、脱調判定装置100によれば、精度良く、電力系統300から発電設備200が脱調するか否かを予測することができる。
【0090】
また、脱調判定装置100は、発電設備200ごとに定められた閾値を記憶しており、電圧と電圧変化量とを乗じた値の絶対値が、判定対象の発電設備200に対応する閾値以上の場合に、電力系統300から発電設備200が脱調すると判定する。ここで、本願発明者は、当該電圧と電圧変化量とを乗じた値は、発電設備200ごとに固有の値となるため、発電設備200ごとに定められた閾値と比較することで、精度良く、電力系統300から発電設備200が脱調するか否かを判定することができることを見出した。これにより、脱調判定装置100によれば、電力系統300から各々の発電設備200が脱調するか否かを予測することができるため、電力系統300全体としての予測精度を向上させることができる。
【0091】
また、脱調判定装置100は、電力系統300から発電設備200が脱調すると判定した場合に、発電設備200に接続された系統310の電圧変化量を低下させるように制御する。このように、本願発明者は、電力系統300から発電設備200が脱調しそうな場合に、当該電圧変化量を低下させることで、発電設備200を脱調しにくくすることができることを見出した。これにより、脱調判定装置100によれば、電力系統300から発電設備200が脱調するか否かを予測し、かつ、発電設備200が脱調するのを抑制することができる。
【0092】
また、脱調判定装置100は、電力系統300から発電設備200が脱調すると判定した場合に、発電設備200の発電出力を変化させる。つまり、電力系統300から発電設備200が脱調しそうな場合に、発電設備200の発電出力を変化させて電圧を安定させることで、電圧変化量を低下させ、発電設備200を脱調しにくくする。これにより、脱調判定装置100によれば、電力系統300から発電設備200が脱調するか否かを予測し、かつ、発電設備200が脱調するのを抑制することができる。
【0093】
[6 変形例の説明]
以上、本実施の形態に係る脱調判定装置100について説明したが、本発明は、上記実施の形態には限定されない。つまり、今回開示された実施の形態は、全ての点で例示であって制限的なものではなく、本発明の範囲は特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれる。
【0094】
例えば、上記実施の形態では、脱調判定装置100は、取得部110、判定部120、制御部130及び記憶部140を備えていることとした。しかし、脱調判定装置100は、取得部110及び判定部120を備えていればよい。例えば、脱調判定装置100は、制御部130を備えておらず、外部の制御装置が制御部130と同様の制御を行うことにしてもよいし、制御部130による制御は行われなくてもよい。また、脱調判定装置100は、記憶部140を備えておらず、外部の記録媒体に情報を記憶させて、当該記録媒体から情報を取得することにしてもよい。
【0095】
また、上記実施の形態では、脱調判定装置100において、判定部120は、電圧と電圧変化量との乗算値の絶対値を、所定の閾値(定数)と比較して、発電設備200が脱調するか否かを判定することとした。しかし、判定部120は、当該乗算値の絶対値を、あるルールに従って変化する変数と比較して、発電設備200が脱調するか否かを判定することにしてもよい。
【0096】
また、上記実施の形態では、脱調判定装置100において、判定部120は、電圧と電圧変化量とを乗じた値を用いて、電力系統300から発電設備200が脱調するか否かを判定することとした。しかし、判定部120は、脱調を判定する際に、電圧と電圧変化量とを乗じた値を用いることには限定されない。例えば、判定部120は、電圧に電圧変化量の二乗を乗じた値を用いたり、電圧に電圧変化量の平方根を乗じた値を用いたり、電圧の二乗に電圧変化量を乗じた値を用いたり、電圧の平方根に電圧変化量を乗じた値を用いたりする等、様々なケースが考えられる。このような場合でも、少なくとも電圧と電圧変化量とを用いて脱調を判定することで、僅かであっても上述したいずれかの効果を得ることができる。
【0097】
また、上記実施の形態では、脱調判定装置100は、中央給電指令所または変電所等に設置されていることとした。しかし、脱調判定装置100は、図9に示すように、各々の発電設備200に設置されていることにしてもよい。図9は、本実施の形態の変形例に係る脱調判定装置100の設置位置を示す図である。
【0098】
この場合、脱調判定装置100が備える記憶部140の判定用データ141には、脱調判定装置100が設置されている発電設備200についての各種情報が記憶されている。そして、脱調判定装置100は、脱調判定装置100が設置されている発電設備200が電力系統300から脱調するか否かを判定し、当該発電設備200を制御する。また、脱調判定装置100は、脱調の判定結果や制御結果等の各種情報を外部の制御装置400に送信する。
【0099】
なお、制御装置400は設けられておらず、脱調判定装置100は、外部に情報を送信することなく、制御等を行うことにしてもよい。また、脱調判定装置100は、制御部130を備えておらず、制御装置400が制御部130と同様の制御を行うことにしてもよい。また、脱調判定装置100は、発電設備200の構内ではなく、発電設備200近傍の施設内に設置されていることにしてもよい。
【0100】
また、本発明は、脱調判定装置100として実現することができるだけでなく、脱調判定装置100に含まれる処理部が行う特徴的な処理をステップとする脱調判定方法としても実現することができる。つまり、当該脱調判定方法は、電力系統300からの発電設備200の脱調を判定する脱調判定方法であって、発電設備200に接続された系統310の電圧、及び、電圧の単位時間における変化量である電圧変化量を取得する取得ステップ(図4のS102)と、取得された電圧及び電圧変化量を用いて、電力系統300から発電設備200が脱調するか否かを判定する判定ステップ(図4のS104)と、を含む。
【0101】
また、本発明は、当該脱調判定方法に含まれるステップをコンピュータに実行させるためのプログラムとしても実現することができる。つまり、脱調判定装置100が備える各構成要素は、CPUまたはプロセッサなどのプログラム実行部が、ハードディスクまたは半導体メモリなどの記録媒体に記録されたソフトウェアプログラムを読み出して実行することによって実現されてもよい。さらに、本発明は、当該プログラムが記録されたコンピュータ読み取り可能な非一時的な記録媒体、例えば、フレキシブルディスク、ハードディスク、CD-ROM、MO、DVD、DVD-ROM、DVD-RAM、BD(Blu-ray(登録商標) Disc)、半導体メモリとしても実現することができる。そして、当該プログラムは、当該記録媒体及びインターネット等の伝送媒体を介して流通させることができる。
【0102】
また、本発明は、脱調判定装置100に含まれる処理部を備える集積回路としても実現することができる。つまり、図2に示した脱調判定装置100の各機能ブロックは、集積回路であるLSI(Large Scale Integration)として実現されてもよい。これらは個別に1チップ化されてもよいし、一部または全てを含むように1チップ化されてもよい。図10は、上記実施の形態における脱調判定装置100を集積回路101で実現する一例を示す図である。
【0103】
図10に示すように、集積回路101は、図2に示された脱調判定装置100の記憶部140以外の機能を備えている。集積回路101は、各処理部が個別に1チップ化されても良いし、一部または全ての処理部を含むように1チップ化されても良い。なお、集積回路101は、制御部130を備えないことにしてもよい。つまり、集積回路101は、取得部110及び判定部120を備えていればよく、これらの構成により本発明の目的を達成することができる。また、集積回路101は、記憶部140を備えていることにしてもよい。
【0104】
ここでは、LSIとしたが、集積度の違いにより、IC、システムLSI、スーパーLSI、ウルトラLSIと呼称されることもある。また、集積回路化の手法はLSIに限るものではなく、専用回路または汎用プロセッサで実現してもよい。LSI製造後に、プログラムすることが可能なFPGA(Field Programmable Gate Array)や、LSI内部の回路セルの接続や設定を再構成可能なリコンフィギュラブル・プロセッサを利用しても良い。さらには、半導体技術の進歩または派生する別技術によりLSIに置き換わる集積回路化の技術が登場すれば、当然、その技術を用いて機能ブロックの集積化を行ってもよい。バイオ技術の適応等が可能性としてありえる。
【0105】
このように、脱調判定装置100は、各構成要素が、専用のハードウェアで構成されてもよいし、各構成要素に適したソフトウェアプログラムを実行することによって実現されてもよい。
【0106】
また、上記実施の形態及びその変形例における任意の構成要素を組み合わせて構築される形態も、本発明の範囲内に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0107】
本発明は、電力系統から発電設備が脱調するか否かを予測することができる脱調判定装置等に適用できる。
【符号の説明】
【0108】
100 脱調判定装置
101 集積回路
110 取得部
120 判定部
130 制御部
140 記憶部
141 判定用データ
200、201、202、203 発電設備
300 電力系統
310、311、312、313 系統
400 制御装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10