(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-16
(45)【発行日】2023-03-27
(54)【発明の名称】複合型自動分析装置、システム、及び異常判定方法
(51)【国際特許分類】
G01N 35/00 20060101AFI20230317BHJP
【FI】
G01N35/00 F
G01N35/00 A
(21)【出願番号】P 2021543942
(86)(22)【出願日】2020-03-19
(86)【国際出願番号】 JP2020012171
(87)【国際公開番号】W WO2021044656
(87)【国際公開日】2021-03-11
【審査請求日】2022-03-01
(31)【優先権主張番号】P 2019160913
(32)【優先日】2019-09-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】501387839
【氏名又は名称】株式会社日立ハイテク
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】藤島 由佳
(72)【発明者】
【氏名】牧野 彰久
(72)【発明者】
【氏名】藪谷 千枝
【審査官】永田 浩司
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-77230(JP,A)
【文献】特開2007-78508(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 35/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の分析を実施する第1の分析部と、
前記第1の分析とは異なる種類の第2の分析を実施する第2の分析部と、
前記第1の分析部に対応する第1の検出器と、
前記第2の分析部に対応する第2の検出器と、
前記第1の分析部、前記第2の分析部に共通に用いられる機構部と、制御部と、を備え、
前記制御部は、
前記第1の分析部または前記第2の分析部のうち、一の分析部の異常要因の特定を、予め記憶された、前記第1の分析部または前記第2の分析部のうち、他の分析部の測定データに基づき実行し、
前記測定データとして、前記第1の検出器または前記第2の検出器によって取得された時系列データを含むことを特徴とする複合型自動分析装置。
【請求項2】
請求項1に記載の複合型自動分析装置であって、
前記制御部で特定した異常要因に対して、必要とされる対策の情報を提供する表示部を更に備える、
ことを特徴とする複合型自動分析装置。
【請求項3】
請求項1に記載の複合型自動分析装置であって、
前記第1の分析部が生化学分析部であり、前記第2の分析部が血液凝固分析部であり、前記測定データは、前記血液凝固分析部で測定した時系列データである、
ことを特徴とする複合型自動分析装置。
【請求項4】
請求項3に記載の複合型自動分析装置であって、
前記第1の検出器または前記第2の検出器は光度計を含み、
前記制御部は、前記光度計から取得した光強度を時系列に並べた反応過程曲線を作成し、前記反応過程曲線に基づいて前記生化学分析部が異常と判定する、
ことを特徴とする複合型自動分析装置。
【請求項5】
請求項4に記載の複合型自動分析装置であって、
前記制御部は、前記生化学分析部が異常と判定した場合に、前記測定データを参照し、異常の発生頻度を考慮することで前記異常要因を特定する、
ことを特徴とする複合型自動分析装置。
【請求項6】
請求項1に記載の複合型自動分析装置であって、
前記第1の分析部が血液凝固分析部であり、前記第2の分析部が生化学分析部であり、前記測定データは、前記生化学分析部のキャリブレーションデータである、
ことを特徴とする複合型自動分析装置。
【請求項7】
請求項1に記載の複合型自動分析装置であって、
前記第1の分析部が免疫分析部であり、前記第2の分析部が生化学分析部又は血液凝固分析部である、
ことを特徴とする複合型自動分析装置。
【請求項8】
請求項1に記載の複合型自動分析装置であって、
前記第1の分析部が生化学分析部であり、前記第2の分析部が免疫分析部、及び血液凝固分析部である、
ことを特徴とする複合型自動分析装置。
【請求項9】
第1の分析を実施する第1の分析部と、前記第1の分析とは異なる種類の第2の分析を実施する第2の分析部と、前記第1の分析部に対応する第1の検出器と、前記第2の分析部に対応する第2の検出器と、前記第1の分析部、前記第2の分析部に共通に用いられる機構部と、を有する複合型自動分析装置と、制御部と、を備え、
前記制御部は、
前記第1の分析部または前記第2の分析部のうち、一の分析部の異常要因の特定を、予め記憶された、前記第1の分析部または前記第2の分析部のうち、他の分析部の測定データに基づき実行し、
前記測定データとして、前記第1の検出器または前記第2の検出器によって取得された時系列データを含むことを特徴とする複合型自動分析システム。
【請求項10】
請求項9に記載の複合型自動分析システムであって、
前記制御部で特定した前記異常要因に対して、必要とされる対策の情報を提供する表示部を更に備える、ことを特徴とする複合型自動分析システム。
【請求項11】
請求項9に記載の複合型自動分析システムであって、
前記第1の分析部が生化学分析部であり、前記第2の分析部が血液凝固分析部であり、前記測定データは、前記血液凝固分析部で測定した時系列データである、
ことを特徴とする複合型自動分析システム。
【請求項12】
請求項11に記載の複合型自動分析システムであって、
前記第1の検出器または前記第2の検出器は光度計を含み、前記制御部は、前記第1の検出器または前記第2の検出器から取得した光強度を時系列に並べた反応過程曲線を作成し、前記反応過程曲線に基づいて前記生化学分析部が異常と判定する、
ことを特徴とする複合型自動分析システム。
【請求項13】
異常判定方法であって、
複合型自動分析装置が、第1の分析を実施する第1の分析部と、前記第1の分析とは異なる種類の第2の分析を実施する第2の分析部と、前記第1の分析部に対応する第1の検出器と、前記第2の分析部に対応する第2の検出器と、前記第1の分析部、前記第2の分析部に共通に用いられる機構部と、制御部と、を備え、
前記制御部は、前記第1の分析部または前記第2の分析部のうち、一の分析部の異常要因の特定を、予め記憶された、前記第1の分析部または前記第2の分析部のうち、他の分析部の測定データに基づき実行する、ことを特徴とする異常判定方法。
【請求項14】
請求項13に記載の異常判定方法であって、
前記第1の分析部が生化学分析部であり、前記第2の分析部が血液凝固分析部であり、前記測定データは、前記血液凝固分析部で測定した時系列データである、ことを特徴とする異常判定方法。
【請求項15】
請求項14に記載の異常判定方法であって、
前記第1の検出器または前記第2の検出器は光度計を含み、
前記制御部は、前記第1の検出器または前記第2の検出器から取得した光強度を時系列に並べた反応過程曲線を作成し、前記反応過程曲線に基づいて前記生化学分析部が異常と判定する、
ことを特徴とする異常判定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複合型自動分析装置、複合型自動分析システム、及びその異常判定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自動分析装置の異常判定に、反応過程曲線を用いるものがある。本技術分野の背景技術として特許文献1がある。本特許文献では、複数回連続で反応過程曲線に異常があった場合に、血液凝固検査装置の異常部位を特定する手段について開示されている。
【0003】
また、操作者が装置に不慣れな場合に、装置にトラブルを含むエラーミス情報が発生した際に、そのエラーミスの原因特定に時間を要してしまうという課題があった。これを解決するために、特許文献2では、種々のエラーミスが一挙に容易に解消できる自動分析装置が提供されている。
【0004】
さらに、近年、一台の装置で複数の検査項目に対応できる自動分析装置へのニーズが高まってきている。たとえば特許文献3に記載のとおり、生化学分析部と血液凝固分析部を集約した自動分析装置が存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】国際公開番号WO16/002394号公報
【文献】特開2008-051532号公報
【文献】国際公開番号WO13/187210号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献3のとおり、自動分析装置には複数の検査分野が測定可能な複合型自動分析装置が存在する。このような複合型自動分析装置では、異なる検査分野の分析で共有する機構がある。異なる検査分野の分析では、測定データの演算方法も異なるため、個々のデータの解析は煩雑となる。また、共有する機構に異常が発生した場合、複数種類の分析に影響を及ぼしてしまう。
【0007】
ここで、特許文献1では“凝固ユニットにかかわる異常”、特許文献2では“生化学項目にかかわる異常”に特化しており、複合型自動分析装置において異常が発生した場合の異常判定については考慮されていないという問題点があった。
【0008】
そこで、本発明では、異常が発生した場合に、異常の原因を複数の検査分野との関連により迅速に特定し、異常解消のために対応する時間を短縮することを可能とする複合型自動分析装置、システム、及び異常判定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するため、本発明においては、異なる種類の分析部と、分析部に対応する異なる検出器と、異なる種類の分析部が用いる共通の機構部と、一つの分析部の異常の判定又は異常要因の特定を、予め記憶された他の分析部の測定データに基づき実行する制御部と、を備える構成の複合型自動分析装置を提供する。
【0010】
また、上記の目的を達成するため、本発明においては、異なる種類の分析部と、分析部に対応する異なる検出器と、異なる種類の分析部が用いる共通の機構部と、を有する複合型自動分析装置と、一の分析部の異常の判定又は異常要因の特定を、予め記憶された他の分析部の測定データに基づき実行する制御部と、を備える構成の複合型自動分析システムを提供する。
【0011】
更に、上記の目的を達成するため、本発明においては、異常判定方法であって、複合型自動分析装置が、異なる種類の分析部と、分析部に対応する異なる検出器と、異なる種類の分析部が用いる共通の機構部と、複合型自動分析装置を制御する制御部とを備え、制御部は、一つの分析部の異常の判定又は異常要因の特定を、予め記憶された他の分析部の測定データに基づき実行する異常判定方法を提供する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、異なる検出器を備えた複合型自動分析装置において、異常箇所を迅速に特定し、異常解消のために対応する時間を短縮することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1A】各実施例に係る自動分析装置の基本構成を示す図である。
【
図1B】各実施例に係る自動分析装置の他の基本構成を示す図である。
【
図1C】各実施例に係る自動分析装置の他の基本構成を示す図である。
【
図2】各実施例に係る自動分析装置の制御系及び信号処理系の基本構成を示す図である。
【
図3】実施例1に係る異常判別処理を説明するフローチャートを示す図である。
【
図4】実施例1に係る血液凝固分析の測定結果が異常と判定される場合の精度管理画面を示す図である。
【
図5】実施例1に係る生化学分析の吸光度が異常低値となる、全体的にシフトした場合の反応過程曲線を示す図である。
【
図6】実施例1に係る血液凝固分析の測定結果が異常となる、反応過程曲線を示す図である。
【
図7】実施例1に係る生化学分析において、第2試薬分注時に吸光度が急激に下がる場合の反応過程曲線を示す図である。
【
図8】実施例1に係る生化学分析において、反応の途中で吸光度が急激に下がる場合の反応過程曲線を示す図である。
【
図9】実施例2に係る異常判別処理を説明するフローチャートを示す図である。
【
図10】実施例2に係る血液凝固分析の測定結果が短縮となる反応過程曲線を示す図である。
【
図11】実施例3に係る異常判別処理を説明するフローチャートを示す図である。
【
図12】実施例4に係る異常判別処理を説明するフローチャートを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面に従い本発明を実施するための形態として各種の実施例を順次説明する。なお、複数の図面において、同一物に対しては同一符号を付した。
【0015】
<装置の全体構成>
図1Aは、各実施例に係る自動分析装置の基本構成を示す図である。ここでは、自動分析装置の一態様として、生化学分析と、血液凝固線溶マーカー、血液凝固時間測定などの血液凝固分析と、免疫分析を行う複合型自動分析装置の例について説明する。
【0016】
複合型自動分析装置には、一般的に生化学分析部及び血液凝固分析部を有するもの、免疫分析部及び生化学分析部並びに血液凝固分析部を有するもの、免疫分析部及び生化学分析部を有するもの、更には、免疫分析部及び血液凝固分析部を有するものを含む。すなわち、本明細書においては、異なる種類の分析部及び当該分析部に対応する異なる検出器を有する自動分析装置を複合型自動分析装置と称する。
【0017】
図1Aに示すように、本構成の自動分析装置1は、主として、反応ディスク10、サンプルディスク20、第1試薬ディスク30-1、第2試薬ディスク30-2、第1の光度計40-1、第2の光度計40-2、血液凝固時間測定ユニット50、およびコンピューター60、インターフェイス61、制御用コンピューター63等から構成されている。なお、本明細書において、コンピューター60、インターフェイス61、制御用コンピューター63を総称して制御部と呼ぶ。
【0018】
反応容器保持部である反応ディスク10は、左右方向に間欠回転可能なディスク状のユニットであり、反応ディスク10上には透光性材料からなる多数の反応セル11を周方向に沿って複数個配置できる。反応セル11は、恒温槽12により例えば37℃などの所定温度に維持されている。
【0019】
検体容器保持部であるサンプルディスク20上には、血液、尿等の生体サンプルを収容する多数の検体容器21を、同図に示す構成の例では内側、外側の二つの円に対し、それぞれ周方向に沿って配置できる。
【0020】
サンプルディスク20の近傍には、サンプル分注機構22が配置されている。サンプル分注機構22は、サンプルディスク20上の分注(吸引)位置20aに位置する検体容器21から所定量のサンプルを吸引し、そのサンプルを反応ディスク10上の分注(吐出)位置10aにある反応セル11内に吐出する。
【0021】
試薬容器保持部である、第1試薬ディスク30‐1、第2試薬ディスク30‐2には、試薬識別情報を表示したラベルが貼られた複数の第1試薬ボトル31‐1、第2試薬ボトル31‐2が、第1試薬ディスク30-1、第2試薬ディスク30-2の周方向に沿ってそれぞれ配置される。試薬識別情報にはバーコードやRFIDなどがあるが、ここでは一例としてバーコードを用いる場合について説明する。これらの第1試薬ボトル31‐1、第2試薬ボトル31‐2には、自動分析装置1により分析される分析項目に対応する試薬液が収容されている。生化学、散乱の第1試薬、凝固試薬は第1試薬ディスク30-1に設置、生化学、散乱の第2試薬は第2試薬ディスク30-2に設置することを確認する。
【0022】
第1試薬バーコード読み取り装置32‐1、第2試薬バーコード読み取り装置32‐2は、試薬登録時に第1試薬ボトル31‐1、第2試薬ボトル31‐2の外壁に付されている試薬バーコードを読み取る。読み取られた試薬情報は、第1試薬ディスク30‐1、第2試薬ディスク30‐2上のポジションの情報とともにメモリー64に登録される。
【0023】
また、第1試薬ディスク30‐1、第2試薬ディスク30‐2の近傍には、第1試薬分注機構33‐1、第2試薬分注機構33‐2がそれぞれ配置されている。試薬分注時には、これらが備えるピペットノズルにより、第1試薬ディスク30-1、第2試薬ディスク30-2上のそれぞれの分注(吸引)位置30-1a、30-2aに位置する、検査項目に応じた第1試薬ボトル31‐1、第2試薬ボトル31‐2から試薬を吸入し、反応ディスク10上の分注(吐出)位置10b、10cにそれぞれ位置する該当する反応セル11内へ吐出する。試薬を吐出すると、攪拌機構34で攪拌する。
【0024】
ここで、第1の光度計40-1は反応ディスク10の外周側に配置されている。反応ディスク10の内周側の中心部付近に配置された第1の光源41-1から照射された光が、反応セル11を通って光度計40-1で測定される。このように、反応ディスク10を間に介して対向するように配置される第1の光度計40-1と、第1の光源41-1とから構成される測定部を、第1の測定部とする。同様に、第2の光度計40-2と、第2の光源41-2が反応ディスク10を間に介して対向するように配置される測定部を、第2の測定部とする。
【0025】
サンプルと試薬との混合液である反応液を収容した各反応セル11は、反応ディスク10の回転動作中に光度計40-1、または、40-2の前を横切る度に測光される。サンプル毎に測定された散乱光のアナログ信号は、A/D(アナログ/デジタル)変換器62に入力される。使用済みの反応セル11は、反応ディスク10の近傍に配置された反応セル洗浄機構35により、内部が洗浄されて繰り返しの使用を可能にする。
【0026】
本装置は、項目間の相互作用による検体や試薬がキャリーオーバーの発生を回避する設定を搭載している。検体や試薬がキャリーオーバーする組み合わせに対して、測定の間に洗浄動作の設定を入れることで、キャリーオーバーを低減または回避ができる。なお、キャリーオーバー回避洗浄は、キャリーオーバーが発生する可能性のある、反応セル11、第1試薬分注機構33-1のピペットノズル、第2試薬分注機構33-2のピペットノズル、および、サンプル分注機構22のピペットノズルで設定可能である。
【0027】
図1Bは、各実施例に係る自動分析装置の他の基本構成として、ターンテーブル方式の生化学分析部と、血液凝固時間測定部とを備えた複合型自動分析装置(ラックタイプ)100の構成例を示す。
図1Bの自動分析装置(ラックタイプ)100と、
図1Aに示した自動分析装置1との構成上の主な違いは、サンプルディスク20に代えて、検体容器保持部として検体ラック101を有する点である。ここで、検体ラック101では、1本または複数本の検体容器を保持することができる。
図1Bでは、一例として5本の検体容器を保持する検体ラック101について示す。
【0028】
また、自動分析装置(ラックタイプ)100は、主として、ラック供給部102、ラック収納部103、検体ラック101を分析部110に搬送する搬送ライン104、搬送ライン104と反対方向に検体ラック101を搬送する帰還ライン105、ラック待機部106、搬送ライン104及び帰還ライン105からラック待機部106へ検体ラック101を引き込む待機部ハンドリング機構107、ラック戻し機構108と、搬送ライン104の検体ラック101に付されたバーコード等の識別情報を読み取る読取部(搬送ライン)109と、分析部110から構成される。ここでは、
図1Aについて上述した内容と重複する説明は省略し、自動分析装置(ラックタイプ)100の構成に特有である検体の供給方法について特に詳細に説明する。なお、ここでは搬送部として搬送ライン104と帰還ライン105からなるラインタイプについて説明するが、双方向に移動可能なハンド機構等、種々の態様に適用することができる。
【0029】
自動分析装置(ラックタイプ)100において、搬送ライン104に沿って配置される分析部110の搬送系は、検体に対する分析依頼情報を照合するための読取部(分析部)111と、搬送ライン104から検体ラック101を受け取るラックハンドリング機構(1)112と、分注開始まで検体ラック101を待機させることができ検体ラック101の検体容器内の検体分注を実施するサンプリングエリア113aまでの検体ラック101を搬送する分注ライン113と、検体分注後の検体ラック101を帰還ライン105に搬送するラックハンドリング機構(2)114を備える。
【0030】
コンピューター60から分析開始の指示を受けると、ラック供給部102に並べられた検体ラック101は、搬送ライン104に移載される。ここで、搬送ライン104上の検体ラック101及び検体ラックに収容される検体容器21に貼り付けられた個体識別媒体は、読取部(搬送ライン)109により読み取られて、検体ラック番号及び検体容器番号が認識される。
【0031】
読み取り部(搬送ライン)109により読み取られた検体は、分注ライン113に検体ラック101があれば、ラック待機部106に収容されて分析を待つ。分注ライン113の検体の分注が終了した段階で待機していた検体ラック101は分析部110に送られ、読取部(分析部)111にて検体ラック番号及び検体容器番号が認識される。続いて、ラックハンドリング機構(1)112を介して、分注ライン113に送られ、検体分注機構22によって検体が分注される。このとき、分注ライン113に検体ラック101がなければ、ラック待機部106へ収容されることなく直接、分注ライン113に搬送することもできる。
【0032】
分注が終了した検体は、ラックハンドリング機構(2)114を介して帰還ライン105に搬送され、待機部ハンドリング機構107を介してラック待機部106へ送られる。このラック待機部106では、複数の検体ラック101が収容でき、測定順序の入れ替えによってその都度必要な検体ラック101を搬送ライン104に移載することで、臨機応変に対応することができる。
【0033】
図1Cは、各実施例に係る自動分析装置の他の基本構成として、生化学分析部、血液凝固時間測定部、ヘテロジニアス免疫測定部を備えた複合型自動分析装置の基本構成を示す図である。
図1Cにおいて、
図1A、
図1Bに示した制御用コンピューター63以降の制御部の構成については図示を省略したが、同様の制御部を備えている。
【0034】
図1Cの複合型自動分析装置において、反応容器移送機構55の稼働範囲内に、ヘテロジニアス免疫項目測定用のヘテロジニアス免疫検出部67、B/F分離機構68が配置され、ディスポーザブル反応容器52、反応容器温調ブロック50、反応容器移送機構55、反応容器供給部53、反応容器廃棄部57は、血液凝固時間測定部と共用する構成となっている。また、ヘテロジニアス免疫用試薬ディスク69が、試薬昇温機能付き第2試薬分注機構56の稼働範囲内に追加されている。
【0035】
次に、
図1A、
図1B、
図1Cの複合型自動分析装置に共通する制御系及び信号処理系について説明する。なお、
図1A,
図1Bに示した制御用コンピューター63以降の制御部が一つで、ネットワークを介して複数の複合型自動分析装置が接続された構成が複合型自動分析システムであり、異なる種類の分析部と、分析部に対応する異なる検出器と、異なる種類の分析部が用いる共通の機構部と、を有する複合型自動分析装置と、一の分析部の異常の判定又は異常要因の特定を、予め記憶された他の分析部の測定データに基づき実行する制御部とを備えている。
【0036】
上述の通り、コンピューター60は、インターフェイス61を介して、A/D変換器62や制御用コンピューター63に接続されている。操作画面65を備えるコンピューター60は、制御用コンピューター63に対してサンプル分注機構22や第1試薬分注機構33-1、第2試薬分注機構33-2等の各機構動作を制御するよう指示する。A/D変換器62によってデジタル信号に変換された測光値は、コンピューター60に取り込まれる。
【0037】
またインターフェイス61には、記憶装置であるメモリー64が接続されており、試薬識別情報、検体識別情報、分析パラメータ、分析項目依頼内容、キャリブレーション結果、測定結果等の情報が記憶される。なお、
図1A,
図1Bにおいて制御用コンピューター63等の制御部は各々の構成部に接続され、複合型自動分析装置の全体を制御するものとしたが、各構成部にて各々独立した制御部を備えるように構成することもできる。
【0038】
次に、
図1Aの自動分析装置1の光度計40-1における、サンプルの生化学検査、及び血液凝固検査のうち、DダイマーやFDPなどの血液凝固線溶マーカーに関する第1の測定項目の分析動作について説明する。自動分析装置1によって分析可能な項目に関する分析パラメータは、予めオペレーターにより操作画面65を介して入力され、メモリー64に記憶されている。各サンプルに対して依頼、指示された検査項目を分析するために、サンプル分注機構22は、分析パラメータに従って、分注位置10aにて検体容器21から反応セル11へ所定量のサンプルを分注する。
【0039】
サンプルが分注された反応セル11は、反応ディスク10の回転によって移送され、分注(試薬受け入れ)位置10bまたは10cにて停止する。第1試薬分注機構33‐1、第2試薬分注機構33‐2は、該当する検査項目の分析パラメータにしたがって、反応セル11に所定量の試薬液を分注する。ここで、サンプルと試薬の分注順序は、サンプルより試薬が先であってもよい。
【0040】
反応セル11が測光位置を横切る際、光度計40-1により測光され、A/D変換器62によって光量に比例した信号値である数値に変換される。その後、変換されたデータはインターフェイス61を経由して、コンピューター60に取り込まれる。このようなターンテーブル方式の反応ディスク10を用いた構成によれば、ディスクの回転動作によって連続して検体を分注することができるため、高い処理能力を得ることができる。
【0041】
次に、コンピューター60では、上述の通り信号値に変換された数値のデータと、検査項目毎に指定された分析法によって予め測定、記憶されている検量線のデータと、に基づき、濃度データを算出し、操作画面65に出力される。なお、上述した濃度データの算出は、コンピューター60に代えて、制御用コンピューター63において行うことも可能である。
【0042】
続いて、
図1Aの自動分析装置1における、止血機能検査項目の測定、すなわち、血液凝固時間の測定に関する分析動作について説明する。反応容器収容部53に収容されたディスポーザブルな反応容器52は、反応容器移送機構55によりサンプル分注ステーション54に移送される。サンプル分注機構22は、検体容器21からサンプルを吸引し、上述の通りサンプル分注ステーション54に移送された反応容器52に分注する。
【0043】
次に、サンプルが分注された反応容器52は、反応容器移送機構55によって血液凝固時間測定ユニット50へ運ばれ、37℃へ昇温される。一方、第1試薬ディスク30-1にて保冷された試薬は、第1試薬分注機構33‐1により、検査項目に応じた第1試薬ボトル32‐1から試薬を吸入し、反応ディスク10上に設置された該当する空の反応セル11内へ吐出され、約37℃に昇温される。
【0044】
一定時間経過後、上述の通り昇温された反応セル11内に収容される試薬は、試薬昇温機能付き試薬分注機構56によって吸引されたのち、この機構内にて更に昇温され、例えば40℃となる。ここで、上述の通り37℃に昇温された、サンプルを収容する反応容器52は、反応容器移送機構55によって後述する血液凝固時間測定ユニット50内の測定チャンネル51に移送される。その後、試薬昇温機能付き試薬分注機構56は、昇温された試薬を反応容器52に吐出する。この試薬の吐出により、反応容器52内にてサンプルと試薬との血液凝固反応が開始する。
【0045】
第2の測定部である血液凝固時間測定ユニット50は、各々が光源と受光部から構成された測定チャンネル51を複数備えており、上述のようにして試薬が吐出された後、受光部は所定の短い測定時間間隔、例えば0.1秒ごとに測定データを収集する。収集された測定データは、A/D変換器62により光量に比例した数値に変換された後、インターフェイス61を経由して、コンピューター60に取り込まれる。
【0046】
コンピューター60は、このように変換された数値のデータを用いて、血液凝固時間を求める。その後、求めた血液凝固時間と、検査項目によって予め作成、記憶しておいた検量線のデータとに基づき、目的の検査項目の濃度データを求め、コンピューター60の操作画面65に出力される。また、使用済の反応容器52は、反応容器移送機構55によって移送され、反応容器廃棄部57に廃棄される。ここで、上述した血液凝固時間、濃度データは、制御用コンピューター63により算出することもできる。
【0047】
ここで、血液凝固時間測定ユニット50では、上述の通り所定の短い測定時間間隔、例えば0.1秒ごとで測定データを収集しなければならないため、1つの測定チャンネル51に対しては1つの反応しか分析することができない。
【0048】
図1Aでは、一例として、6つの測定チャンネル51を有する血液凝固時間測定ユニット50について示したが、測定チャンネル51のいずれにも空きが無い場合には、自動分析装置1は、血液凝固時間の測定項目については、次の測定を受け付けることができず、待機状態となる。そのため、当然のことながら分析条件によってはより多くの測定チャンネル51を有する構成とすることもできる。
【0049】
<装置の制御系及び信号処理系の基本構成>
図2は、
図1A,
図1B,
図1C、すなわち各実施例に係る複合型自動分析装置の制御系及び信号処理系の基本構成を示す図である。同図に示す通り、操作部である操作画面65は、測定の依頼をする入力部651と、アラーム等を出力する表示部652から、制御用コンピューター63は、各種機構の動作を制御する機構制御部631、測定順序を制御する測定管理部632、データ処理を実施する演算部633、測定データを解析する解析部634、異常を判定する特定部635から構成される。これらは所定の機能プログラムの実行により実現される。メモリー64には、試薬識別情報、検体識別情報、分析パラメータ、分析項目依頼内容、キャリブレーション結果、測定結果等の情報が記憶されているが、ここでは、キャリブレーション結果、測定結果を格納するデータ格納部641のみを示す。
【0050】
操作画面65の入力部651で測定を依頼すると、機構制御部631により各機構が作動し、測定を開始する。測定管理部632で、測定依頼が管理され、順番に測定が進み、得られた信号は演算部633で測定データとして算出される。算出された測定データは、データ格納部641に保管される。保管された測定データを参照し、異常特定のために解析部634で解析する。なお、解析部は、生化学分析の項目を測定する吸光分析634a、免疫分析の項目を測定する散乱分析634b、血液凝固分析項目を測定する血液時間分析634cから構成される。解析により得られた情報を基に、特定部635で異常の起因を判定する。異常が特定された後は、表示部652に、アラームや抽出された推奨メンテナンスなどの異常解消につながる最適な対策情報を表示する。
【実施例1】
【0051】
実施例1の自動分析装置を
図3~
図8に基づいて説明する。本実施例は、生化学分析において、生化学分析の吸光度がデータ低値の異常が発生した場合、過去の血液凝固分析の測定データを参照する複合型自動分析装置、システムの実施例である。言い換えるなら、異なる種類の分析部及び分析部に対応する異なる検出器を有し、生化学分析の異常の判定及び異常要因の特定を、予め記憶された血液凝固分析の測定結果に基づき実行する構成の実施例である。更に、異常判定方法であって、複合型自動分析装置が、異なる種類の分析部と、分析部に対応する異なる検出器と、異なる種類の分析部が用いる共通の機構部と、複合型自動分析装置を制御する制御部とを備え、制御部は、一つの分析部の異常の判定又は異常要因の特定を、予め記憶された他の分析部の測定データに基づき実行する異常判定方法の実施例である。
【0052】
なお、以下の実施例1の構成において、その構成要素は、特に明示した場合および原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必ずしも必須のものではないことは言うまでもない。
【0053】
図3は実施例1の自動分析装置で実行される異常判別処理のフローチャートである。
図4は本実施例に係る血液凝固分析の測定結果が異常と判定される場合の精度管理画面例を示す図である。
図5は本実施例に係る生化学分析の吸光度が異常低値となる、全体的にシフトした場合の反応過程曲線の一例である。
図6は本実施例に係る血液凝固分析の測定結果が異常となる反応過程曲線の一例である。
図7は本実施例に係る生化学分析において、第2試薬分注時に吸光度が急激に下がる場合の反応過程曲線の一例である。
図8は本実施例に係る生化学分析において、反応の途中で吸光度が急激に下がる場合の反応過程曲線の一例である。なお、
図1Aの複合型自動分析装置のうち、既に説明した
図1Aに示された同一符号を付された構成と、同一の機能を有する部分については、説明を省略する。
【0054】
本実施例の生化学分析における吸光度の異常低値の要因には、洗浄水の混入や、サンプル分注量の低下、試薬分注量の低下、攪拌不良、試薬の誤設置、試薬の薄まりなどが考えられる。本実施例の自動分析装置の分析フローの詳細について
図3を用いて説明する。
【0055】
同図に示すように、
図1Aに示した複合型自動分析装置は、測定データを取得し(ステップ、以下S301)、コンピューター60に測定データを格納する(S302)。S301、S302は、
図2の測定管理部632が行う。ここで、生化学分析の測定データとは、<装置の全体構成>に記載の、光度計40-1により測光され、A/D変換器62によって光量に比例した信号値が変換された吸光度を時系列に並べたデータ(反応過程曲線)、または、算出された濃度データなどを指す。制御用コンピューター63は取得した当該データを使用して、異常の有無を判定する(S303)。ここで、異常とは例えば基準範囲の上限値を超えた測定値、アラームが付与された測定値などがあるが、本実施例に限定されない。
【0056】
ここで
図3の他のステップの動作主体を纏めて説明すると、S303~S306、S310~S313は解析部634が実行する。S307~S309、S314、S316は特定部635が実行し、S315は測定管理部632が実行する。
【0057】
S304で、前述の生化学分析の測定データが、同一項目コントロール測定と比較し、反応過程曲線が全体的にシフトしていると判定されると、コンピューター60に記憶されている過去の血液凝固分析の測定データを参照し、同一測定日の血液凝固分析項目のキャリブレーションやコントロールといった測定データにおける異常の発生頻度を確認する(S305)。
【0058】
ここで、
図4を用いて異常の発生頻度について説明する。
図4は、Control Aを毎日連続測定したときの測定値の変動を表すグラフである。
図4では楕円331に示すように3日連続で異常値が発生した場合は異常と判定し、異常多発を報知する。この場合の異常の発生頻度とは、3日連続で異常値が発生し、異常多発を報知することを指すが、異常発生の日数や回数は一例でありこの限りでない。異常発生を報知するための頻度について、日数、および、回数を画面上で設定しても良い。
【0059】
上述の全体的にシフトしている反応過程曲線とは、
図5の実線で示すような反応過程曲線などがある。
図5の縦軸は吸光度を示し、同図の破線は、同一項目コントロールの反応過程曲線である。ただし、前述の反応過程曲線は一例であり、この限りでない。同一項目コントロールの反応過程曲線に比べ、当該測定から得られた反応過程曲線は、全体が低値側にシフトしている。また、凝固時間分析においては、反応過程曲線に限らず、キャリブレーションの測定値やコントロールの測定値を比較することによっても異常の有無の判定が可能である。
【0060】
S306で過去の血液凝固分析の測定データに異常があると判定されると、サンプル分注量の低下といったサンプル分注機構22起因の異常、または、洗浄水の落下といった反応セル洗浄機構35起因の異常であると判定する(S307)。ここで、血液凝固分析において、異常短縮、または、異常延長となる場合、反応過程曲線は
図6の実線に示すようになる。なお、
図6の縦軸は散乱光強度を示し、同図の破線は正常な場合の反応過程曲線である。
【0061】
異常が特定された後は、制御用コンピューター63の特定部635は異常の解消につながる最適な対策情報を提供する(S308)。異常の解消につながる最適な対策情報とは、例えば、操作画面65の表示部652に、反応セル洗浄機構35、または、サンプル分注機構22において異常があることを示すアラームを出力する、反応セル洗浄機構35、または、サンプル分注機構22を清掃するといったメンテナンスを推奨する表示を行う、などがあるがこの限りでない。
【0062】
これに対し、S306で血液凝固分析の測定データに異常がないと判定されると、試薬分注量の低下といった第1試薬分注機構33-1起因の異常、または、攪拌不良といった攪拌機構34起因の異常と判定する(S309)。ここで、第1試薬分注機構33-1が異常の起因と判定される理由を説明する。第1試薬分注機構33-1は血液凝固分析においても使用するが、反応セル11には、最終的な分注設定値よりも多い試薬が吐出されてから、昇温機能付き試薬分注機構56で吸引する。この時、反応セル11には若干の試薬が残るため、第1試薬分注機構33-1での分注量が正確でない場合でも昇温機能付き試薬分注機構56での吸引に直接影響しない。
【0063】
異常が特定された後は、異常の解消につながる最適な対策情報を表示部652に表示することで提供する(S308)。異常の解消につながる最適な対策情報とは、例えば、操作画面に第1試薬分注機構33-1、または、攪拌機構34起因の異常であることを示すアラームを出力する、第1試薬分注機構33-1のピペットノズルの清掃や、攪拌機構34の攪拌棒の清掃を推奨する、などがあるがこの限りでない。
【0064】
S304で、反応過程曲線が全体的なシフトはないと判断され、S310で、反応過程曲線が途中で離脱したと判定され、S311で、前述の反応過程曲線の離脱のタイミングが第2試薬分注時であると判定されると、S305と同様に、過去の血液凝固分析の測定データを参照する(S312)。ここで、第2試薬分注時に反応過程曲線の離脱とは、
図7の実線で示すような反応過程曲線である。破線で示すコントロール結果と比較すると、第2試薬分注時601において吸光度が低下し、最終的な吸光度も小さくなる。これにより、測定値は異常低値を示す。
【0065】
次に、S313で過去の血液凝固分析の測定データに異常があると判定されると、反応セル洗浄機構35起因の異常と判定する(S314)。ここで、反応セル洗浄機構35起因の異常には、洗浄水の混入がある。なお、判定方法は特に限定せず公知の手法で判定すればよい。一方、S313で異常がないと判定されると、第2試薬分注機構、または、生化学の第2試薬起因による異常と判定する(S316)。ここで、第2試薬分注機構起因の異常には、試薬分注量の低下があり、生化学の第2試薬起因による異常には、試薬の誤設置や試薬の薄まりなどがある。
【0066】
S311で、反応過程曲線の離脱のタイミングが第2試薬分注時でないと判定されると、反応セル洗浄機構35起因の異常と判定する。ここで、第2試薬分注時でない反応過程曲線の離脱とは、
図8の実線で示すような反応過程曲線である。破線で示すコントロール結果と比較すると、反応の途中701において吸光度が低下し、最終的な吸光度も小さくなる。これにより、測定値は異常低値を示す。
【0067】
異常が特定された後は、異常の解消につながる最適な対策情報を提供する(S308)。解消につながる最適な対策情報とは、例えば、表示部652に、異常箇所を示すアラームを出力する、異常解消のためのメンテナンスを推奨する表示を行うなどがあるがこの限りでない。
【0068】
S303で測定値の異常有と判定されたが、反応過程曲線において全体的なシフトや、途中の離脱がないと判定された場合、当該検体が患者検体であるために異常値を示している可能性があるため、当該検体の再検を実施する(S315)。
【0069】
本実施例では生化学分析における異常発生時に有効である。過去の測定結果をチェックし、異常発生の傾向から異常箇所を特定する構成としたので、効果として、異常箇所の特定、および、異常解消に要する時間を短縮することが可能となる。
【実施例2】
【0070】
実施例2の複合型自動分析装置を
図9~10に基づいて説明する。本実施例は、異なる種類の分析部と、分析部に対応する異なる検出器と、異なる種類の分析部が用いる共通の機構部と、一つの分析部の異常の判定又は異常要因の特定を、予め記憶された他の分析部の測定データに基づき実行する制御部とを備える構成の複合型自動分析装置、システム、異常判定方法の他の実施例であり、血液凝固分析において、データの異常が発生した場合、過去の生化学分析のキャリブレーションデータを参照する実施例である。
【0071】
図9は実施例2で説明する異常判別処理のフローチャートを示す。
図10は本実施例で例示する血液凝固分析において異常な反応過程曲線の一例である。以下の実施例の説明において、その構成要素は、特に明示した場合および原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必ずしも必須のものではないことは言うまでもない。なお、
図1Aの複合型自動分析装置のうち、既に説明した
図1Aに示された同一の符号を付された構成と、同一の機能を有する部分については、説明を省略する。
【0072】
本実施例の血液凝固分析におけるデータ異常の要因には、試薬分注量の低下、反応セルの洗浄不足、洗浄水の混入、試薬の薄まり、試薬の誤設置、試薬の劣化などが考えられる。
図9に示した本実施例のフローの詳細について説明する。
【0073】
血液凝固分析の測定データを取得し(S901)、実施例1と同様に、コンピューター60に測定データを格納する(S902)。ここで、血液凝固分析の測定データとは、<装置の全体構成>で説明した
図1Aの測定チャンネル51により測光され、A/D変換器62によって光量に比例した信号値が変換された散乱光強度を時系列に並べたデータ(反応過程曲線)、または、算出された濃度データなどを指す。制御用コンピューター63は取得した当該データを使用して、異常の有無を判定する(S903)。ここで、異常とは例えば基準範囲の上限値を超えた測定値、アラームが付与された測定値などがあるが、それらに限定されない。
【0074】
血液凝固分析において異常を有する反応過程曲線の一例を
図10の実線で示す。破線は正常な場合の反応過程曲線を示す。気泡による山状のノイズ1001を有している。前述の山状のノイズ1001の有無は、異常を有する反応過程曲線に、近似曲線を近似すると、山状のノイズ1001が発生している時間範囲において、反応過程曲線と近似曲線との乖離が大きくなることにより判定できる。
【0075】
S904で、前述の血液凝固分析の測定データにおいて、反応過程曲線で山状のノイズ1001を有すると判定されると、コンピューター60に記憶されている過去の生化学分析の測定データを参照し、異常の頻度を確認する(S905)。ここで、異常の頻度とは、
図4の楕円331に示すように3日連続で異常値が発生した場合は異常と判定し、異常多発を報知することなどを指すが、異常発生の日数や回数は一例でありこの限りでない。異常発生を報知するための頻度について、日数、および、回数を画面上で設定しても良い。
【0076】
S906で異常があると判定されると、試薬分注量の低下といった第1試薬分注機構33-1起因の異常、または、洗浄不足といった反応セル洗浄機構34起因の異常であると判定する(S907)。これに対し、S906の生化学分析の結果に異常がないと判定されると、試薬分注量の低下といった昇温機能付き試薬分注機構56起因の異常と判定する(S909)。
【0077】
S904で、反応過程曲線に山状のノイズ1001がないと判断され、S910で、測定値で異常短縮があると判定されると、S905と同様に、過去の生化学分析の測定データを参照する(S911)。
【0078】
次に、S912で過去の生化学分析の測定データに異常があると判定されると、S913で前述の生化学分析の項目においてキャリーオーバー回避洗浄の設定の有無を確認する。キャリーオーバー回避洗浄が有と判定されると、洗浄水の混入といった反応セル機構34起因の異常と判定する(S914)。
【0079】
一方、S913で前述の生化学分析の項目においてキャリーオーバー回避洗浄がないと判定されると、試薬分注量の低下といった第1試薬分注機構33-1起因による異常と判定する(S915)。S912で過去の生化学分析の測定データに異常がないと判定されると、凝固試薬起因の異常と判定(S916)する。ここで、凝固試薬起因の異常とは、試薬の薄まりや、試薬の誤設置、試薬の劣化などがあるがこの限りでない。
【0080】
S907、S909、S914、S915、S916で異常が特定された後は、異常の解消につながる最適な対策情報を提供する(S908)。異常の解消につながる最適な対策情報とは、例えば、操作画面の表示部652に、アラームを出力する、推奨するメンテナンスを表示する、などがあるがこの限りでない。
【0081】
S903で測定値の異常有と判定されたが、反応過程曲線において山状のノイズ1001がなく(S904)、測定値が異常短縮でない(S910)と判定された場合、当該検体が患者検体であるために異常値を示している可能性があるため、当該検体の再検を実施する(S917)。
【0082】
本実施例では血液凝固分析における異常発生時に有効である。実施例1と同じく、異常箇所の特定、および、異常解消に要する時間を短縮することが可能となる。
【実施例3】
【0083】
実施例3の自動分析装置は免疫分析において、異常を有するデータを取得した場合、過去の生化学分析、および、血液凝固分析の測定データを参照する実施例である。本実施例において、その構成要素は、特に明示した場合および原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必ずしも必須のものではないことは言うまでもない。
【0084】
図11は本実施例で説明する異常判別処理のフローチャートを示す。なお、
図1Aの複合型自動分析装置、および、
図3の実施例1におけるフローチャートのうち、既に説明した
図1A、および
図3に示された同一の符号を付された構成と、同一の機能を有する部分については、説明を省略する。
【0085】
本実施例の免疫分析における異常の要因には、洗浄水の混入や、サンプル分注量の低下、試薬分注量の低下、攪拌不良、試薬の誤設置、試薬の薄まり、光源の劣化などが考えられる。本実施のフローの詳細について説明する。
【0086】
S1101で免疫分析の測定データを取得した後、実施例1、および、実施例2と同様に、コンピューター60に測定データを格納する(S1102)。ここで、生化学分析の測定データとは、<装置の全体構成>に記載の、光度計40-2により測光され、A/D変換器62によって光量に比例した信号値が変換された散乱光強度を時系列に並べたデータ(反応過程曲線)、または、算出された濃度データなどを指す。制御用コンピューター63は取得した当該データを使用して、異常の有無を判定する(S1103)。
【0087】
S1103で異常があると判定されると、S1104で反応過程曲線の全体的なシフトの有無を判定する。一方、S1103で異常がないと判定されると、フローは終了する。
【0088】
S1104で、反応過程曲線の全体的なシフトが有ると判定されると、過去の生化学分析の測定データを参照する(S1105)。前述の参照した生化学分析の測定データで異常があると判定されると(S1106)、異常を分類する。ここで、異常の分類は、実施例1のS304ですでに記載しているため、説明は省略し、以降のフローは実施例1のS304以降に従う。
【0089】
S1104で、反応過程曲線の全体的なシフトがないと判定されると、当該検体を再検する(S1108)。S1105で参照した生化学分析の測定データに異常がないと判定されると光源の低下といった第2の光源40-2起因の異常と判定する。異常が特定された後は、S1110で異常の解消につながる最適な対策情報を提供する。
【0090】
本実施例では免疫分析における異常発生時に有効である。実施例1及び実施例2と同じく、異常箇所の特定、および、異常解消に要する時間を短縮することが可能となる。さらに、免疫分析は生化学分析と比べて感度が高いため、生化学分析では見つけられなかった異常の原因が発見できる可能性がある。
【実施例4】
【0091】
実施例4は生化学分析において、データの異常が発生した場合、過去の免疫分析、および、血液凝固分析の測定データを参照する実施例である。以下の実施例4の説明において、その構成要素は、特に明示した場合および原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必ずしも必須のものではないことは言うまでもない。
【0092】
図12は本実施例で説明する異常判別処理のフローチャートを示す。なお、
図1Aの複合型自動分析装置、および
図3の実施例1におけるフローのうち、既に説明した
図1A、および
図3に示された同一の符号を付された構成と、同一の機能を有する部分については、説明を省略する。
【0093】
本実施例の装置の生化学分析における異常の要因には、試薬分注量の低下、攪拌不良、サンプル分注量の低下や、洗浄水の落下、光源の劣化、などが考えられる。本実施例のフローチャートの詳細について説明する。
【0094】
S1201で異常があると判定されると、S1202で反応過程曲線を確認する。反応過程曲線が全体的にシフトしている場合、コンピューター60に記憶されている過去の免疫分析の測定データを参照する(S1203)。シフトしていない場合は、データ異常の検体を再検する(S1209)。
【0095】
S1204で異常があると判定されると、第1試薬分注機構33-1、攪拌機構34、サンプル分注機構22、反応セル洗浄機構35のいずれかが起因の異常と判定する(S1205)。これらの異常をさらに、絞り込むために、S1206で血液凝固分析の測定データを参照する。以降は、実施例1のS305からのフローと同様に進み、S1207で異常の解消につながる最適な対策情報を提供する。
【0096】
一方、S1204で異常がないと判定されると、光源の劣化といった第1の光源起因40-1の異常と判定する(S1208)。異常が特定された後は、S1207で異常の解消につながる最適な対策情報を提供する。
【0097】
以上詳述したように、本発明の複合型自動分析装置においては、異常が発生した場合でも、異常の原因を複数の検査分野との関連により迅速に特定し、異常解消のために最適な対策情報を提供することで異常解消のために対応する時間を短縮する。例えば、反応過程曲線の異常を引き起こす原因を複数の検査分野の過去データを参照することで特定する。このとき、異常の発生頻度を考慮して異常箇所や異常要因を特定したのち、異常解消のために最適な対策を抽出することができる。
【0098】
なお、本発明は上述した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上述した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成および判断条件を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施の形態の構成の一部を他の実施の形態の構成に置き換えることも可能であり、また、ある実施の形態の構成に他の実施の形態の構成を加えることも可能である。また、各実施の形態の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【0099】
更に、上述した各構成、機能、制御コンピューター等は、それらの一部又は全部を実現するプログラムを作成する例を中心に説明したが、それらの一部又は全部を例えば集積回路で設計する等によりハードウェアで実現しても良いことは言うまでもない。すなわち、制御コンピューターの全部または一部の機能は、プログラムに代え、例えば、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field Programmable Gate Array)などの集積回路などにより実現してもよい。
【符号の説明】
【0100】
1…自動分析装置
10…反応ディスク
10a…分注(吐出)位置
10b…分注(吐出)位置
10c…分注(吐出)位置
11…反応セル
12…恒温槽
20…サンプルディスク(検体ディスク)
20a…分注(吸引)位置
21…検体容器
22…サンプル分注機構
23…サンプルバーコード読み取り装置
30-1…第1試薬ディスク
30-2…第2試薬ディスク
30-1a…分注(吸引)位置
30-2a…分注(吸引)位置
31-1…第1試薬ボトル
31-2…第2試薬ボトル
32-1…第1試薬バーコード読み取り装置
32-2…第2試薬バーコード読み取り装置
33-1…第1試薬分注機構
33-2…第2試薬分注機構
34…攪拌機構
35…反応セル洗浄機構
40-1…第1の光度計
40-2…第2の光度計
41-1…第1の光源
41-2…第2の光源
50…血液凝固時間測定ユニット
51…測定チャンネル
52…反応容器
53…反応容器収納部
54…サンプル分注ステーション
55…反応容器移送機構
56…昇温機能付き試薬分注機構
57…反応容器廃棄部
60…コンピューター
61…インターフェイス
62…A/D変換器
63…制御用コンピューター
64…メモリー
65…操作画面
66…キーボード
67…ヘテロジニアス免疫項目測定用のヘテロジニアス免疫検出部
68…B/F分離機構
69…ヘテロジニアス免疫用試薬ディスク
70…検査情報システム
100…自動分析装置(ラックタイプ)
101…検体ラック
102…ラック供給部
103…ラック収納部
104…搬送ライン
105…帰還ライン
106…ラック待機部
107…待機部ハンドリング機構
108…ラック戻し機構
109…読取部(搬送ライン)
110…分析部
111…読取部(分析部)
112、114…ラックハンドリング機構
113…分注ライン
113a…サンプリングエリア