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特許7246521リチウム二次電池用負極およびこれを含むリチウム二次電池
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  • 特許-リチウム二次電池用負極およびこれを含むリチウム二次電池 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-16
(45)【発行日】2023-03-27
(54)【発明の名称】リチウム二次電池用負極およびこれを含むリチウム二次電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/133 20100101AFI20230317BHJP
   H01M 4/587 20100101ALI20230317BHJP
   H01M 4/36 20060101ALI20230317BHJP
   H01M 4/485 20100101ALI20230317BHJP
【FI】
H01M4/133
H01M4/587
H01M4/36 D
H01M4/485
H01M4/36 E
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2021563110
(86)(22)【出願日】2020-04-16
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-06-27
(86)【国際出願番号】 KR2020005073
(87)【国際公開番号】W WO2020218773
(87)【国際公開日】2020-10-29
【審査請求日】2021-10-22
(31)【優先権主張番号】10-2019-0047927
(32)【優先日】2019-04-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】590002817
【氏名又は名称】三星エスディアイ株式会社
【氏名又は名称原語表記】SAMSUNG SDI Co., LTD.
【住所又は居所原語表記】150-20 Gongse-ro,Giheung-gu,Yongin-si, Gyeonggi-do, 446-902 Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ジンヒョン・イ
(72)【発明者】
【氏名】ホンジョン・キム
(72)【発明者】
【氏名】ヘリ・オム
(72)【発明者】
【氏名】サンジュン・イ
(72)【発明者】
【氏名】デソプ・リム
【審査官】冨士 美香
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-137879(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2018-0062390(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/00-4/62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電流集電体と、
前記電流集電体の両面にそれぞれ形成され、第1炭素系負極活物質を含む第1層、および前記第1層上に形成され、第2炭素系負極活物質を含む第2層を含む負極活物質層とを含み、
前記第1層のDD(Degree of Divergence)値が前記負極活物質層のDD値の30%~90%であり、
前記DD値は、下記式1で定義される、リチウム二次電池用負極。
[式1]
DD(Degree of Divergence)=(I/Itotal)*100
(上記式1中、
は、CuKα線を用いたXRD測定の際、2θ=42.4±0.2°、43.4±0.2°、44.6±0.2°、77.5±0.2°に現れるピーク強度の合計値であり、
totalは、CuKα線を用いたXRD測定の際、2θ=26.5±0.2°、42.4±0.2°、43.4±0.2°、44.6±0.2°、54.7±0.2°、77.5±0.2°に現れるピーク強度の合計値である。)
【請求項2】
前記第1層のDD値が、前記負極活物質層のDD値の70%~90%である、請求項1に記載のリチウム二次電池用負極。
【請求項3】
前記第1層の両面全体の厚さは80μm~800μmである、請求項1に記載のリチウム二次電池用負極。
【請求項4】
前記第2層の両面全体の厚さは20μm~200μmである、請求項1に記載のリチウム二次電池用負極。
【請求項5】
前記負極活物質層全体の厚さは100μm~1000μmである、請求項1に記載のリチウム二次電池用負極。
【請求項6】
前記第1層の厚さは、前記負極活物質層全体の厚さの80%以内である、請求項1に記載のリチウム二次電池用負極。
【請求項7】
前記負極活物質層のDD値は19~60である、請求項1に記載のリチウム二次電池用負極。
【請求項8】
前記第1層のDD値は18~54である、請求項1に記載のリチウム二次電池用負極。
【請求項9】
前記ピーク強度値は、ピークの積分面積値である、請求項1に記載のリチウム二次電池用負極。
【請求項10】
前記第1または第2炭素系負極活物質は、人造黒鉛、または人造黒鉛と天然黒鉛との混合物である、請求項1に記載のリチウム二次電池用負極。
【請求項11】
前記第1層または第2層は、Si系負極活物質、Sn系負極活物質、リチウムバナジウム酸化物、またはこれらの組み合わせをさらに含む、請求項1に記載のリチウム二次電池用負極。
【請求項12】
請求項1~11のいずれか1項に記載の負極と、
正極と、
電解質と、を含む、リチウム二次電池。
【請求項13】
前記リチウム二次電池は、高出力用電池である、請求項12に記載のリチウム二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リチウム二次電池用負極およびこれを含むリチウム二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
最近の携帯用小型電子機器の電源として注目されているリチウム二次電池は、有機電解液を用いることによって、既存のアルカリ水溶液を用いた電池より2倍以上の高い放電電圧を示し、その結果、高いエネルギー密度を示す電池である。
【0003】
リチウム二次電池の正極活物質としては、LiCoO、LiMn、LiNi1-xCo(0<x<1)などのようにリチウムイオンの挿入が可能な構造を有するリチウムと遷移金属とからなる酸化物が主に使用される。
【0004】
負極活物質としては、リチウムの挿入/脱離が可能な人造、天然黒鉛、ハードカーボンを含む多様な形態の炭素系材料が適用されてきており、最近、より高容量を得るためにシリコンやスズ系をベースとする非炭素系負極活物質に関する研究が進められている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の一実施形態は、電気化学的特性に優れたリチウム二次電池用負極を提供する。
【0006】
また、本発明の他の実施形態は、前記負極を含むリチウム二次電池を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一実施形態は、電流集電体と、前記電流集電体の両面にそれぞれ形成され、第1炭素系負極活物質を含む第1層、および前記第1層上に形成され、第2炭素系負極活物質を含む第2層を含む負極活物質層とを含み、前記第1層のDD(Degree of Divergence)値が前記負極活物質層のDD値の30%~90%であり、前記DD値は、下記式1で定義されるリチウム二次電池用負極を提供する。
【0008】
[式1]
DD(Degree of Divergence)=(I/Itotal)*100
【0009】
(上記式1中、
は、CuKα線を用いたXRD測定の際、非平面角度に現れるピーク強度の合計値であり、
totalは、CuKα線を用いたXRD測定の際、すべての角度に現れるピーク強度の合計値である。)
【0010】
前記第1層のDD値は、前記負極活物質層のDD値の70%~90%であってもよい。
【0011】
前記両面に形成された第1層の両面全体の厚さは、80μm~800μmであってもよい。また、前記第2層の両面全体の厚さは20μm~200μmであってもよい。さらに、前記負極活物質層全体の厚さは100μm~1000μmであってもよい。
【0012】
前記第1層の両面全体の厚さは、前記負極活物質層全体の厚さの80%以下であってもよく、20%~80%であってもよい。
【0013】
前記負極活物質層のDD値は19~60であってもよく、前記第1層のDD値は18~54であってもよい。
【0014】
前記Iは、CuKα線を用いたXRD測定の際、2θ=42.4±0.2°、43.4±0.2°、44.6±0.2°、77.5±0.2°に現れるピーク強度の合計値であり、前記Itotalは、CuKα線を用いたXRD測定の際、2θ=26.5±0.2°、42.4±0.2°、43.4±0.2°、44.6±0.2°、54.7±0.2°、77.5±0.2°に現れるピーク強度の合計値であってもよい。
【0015】
前記ピーク強度値は、ピークの積分面積値であってもよい。
【0016】
前記第1または第2炭素系負極活物質は、人造黒鉛、または人造黒鉛と天然黒鉛との混合物であってもよい。
【0017】
また、前記第1層または第2層は、Si系負極活物質、Sn系負極活物質、リチウムバナジウム酸化物、またはこれらの組み合わせをさらに含むことができる。
【0018】
本発明の他の実施形態は、前記負極と、正極活物質を含む正極と、電解質とを含むリチウム二次電池を提供する。
【0019】
その他本発明の実施形態の具体的な事項は以下の詳細な説明に含まれている。
【発明の効果】
【0020】
本発明の一実施形態によるリチウム二次電池用負極は、電池特性に優れたリチウム二次電池を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の一実施形態における配向を説明する概略図である。
図2】本発明の一実施形態による第1層および第2層の配向に対する概略図である。
図3】本発明の一実施形態によるリチウム二次電池の構造を概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態を詳細に説明する。ただし、これは例として提示されるものであり、これによって本発明が限定されず、本発明は後述する請求項の範疇によってのみ定義される。
【0023】
本発明の一実施形態によるリチウム二次電池用負極は、電流集電体と、前記電流集電体の両面にそれぞれ形成され、第1炭素系負極活物質を含む第1層および前記第1層上に形成され、第2炭素系負極活物質を含む第2層を含む負極活物質層とを含む。
【0024】
この時、前記第1層のDD(Degree of Divergence)値が前記負極活物質層、つまり、前記第1層および第2層を合わせた負極活物質層全体のDD値の30%~90%であり、本発明の一実施形態によれば、70%~90%である。
【0025】
前記DD値は、下記式1で定義される値である。
【0026】
[式1]
DD(Degree of Divergence)=(I/Itotal)*100
【0027】
上記式1中、
は、CuKα線を用いたXRD測定の際、非平面角度に現れるピーク強度の合計値であり、
totalは、CuKα線を用いたXRD測定の際、すべての角度に現れるピーク強度の合計値である。
【0028】
この時、前記非平面角度とは、CuKα線を用いたXRD測定の際、2θ=42.4±0.2°、43.4±0.2°、44.6±0.2°、77.5±0.2°を示し、つまり、これは(100)面、(101)R面、(101)H面、(110)面を示すものである。一般に、黒鉛は、グラフェン層(graphene layer)の積層(stacking)順序によりABAB形態の積層配列(stacking sequence)を有する六方晶系(hexagonal)構造と菱面体晶系(rhombohedral)構造とに分類され、前記R面は、菱面体晶系構造を意味し、前記H面は、六方晶系構造を意味する。
【0029】
また、前記すべての角度とは、CuKα線を用いたXRD測定の際、2θ=26.5±0.2°、42.4±0.2°、43.4±0.2°、44.6±0.2°、54.7±0.2°、77.5±0.2°を示し、つまり、これは(002)面、(100)面、(101)R面、(101)H面、(004)面、(110)面を示すものである。2θ=43.4±0.2°に現れるピークは、炭素系物質の(101)R面と電流集電体、例えば、Cuの(111)面に相当するピークが重複(overlap)して現れたものと見なすこともできる。
【0030】
一般に、ピーク強度値は、ピークの高さ値またはピークの積分面積値を意味し、一実施形態によるピーク強度値は、ピークの積分面積値を意味する。
【0031】
本発明の一実施形態において、XRD測定は、ターゲット線としてCuKα線を用いて測定したものであり、ピーク強度解像度(Peak intensity resolution)の向上のために、モノクロメータ(monochromator)装置を除去し、この時、測定条件は、2θ=10°~80°およびスキャンスピード(°/S)が0.044~0.089、ステップサイズ(step size、°/ステップ)は0.013~0.039の測定条件で測定したものである。
【0032】
前記DD値は、第1層および第2層に含まれる負極活物質が一定の角度をもって配向したことを示す値であって、この値が大きいほど、負極活物質がよく配向したことを意味する。つまり、図1に簡略に示すように、DD値が大きいほど、負極活物質3が基材1の一面に対して角度aをもって配向した時、この角度aが増加することを意味する。また、このようなDD値は充放電を進行させても維持される値である。
【0033】
本発明の一実施形態において、前記第1層のDD値が前記負極活物質層のDD値よりも小さいので、具体的には、第1層のDD値が前記負極活物質層(第1層+第2層)のDD値の30%~90%、より好ましくは70%~90%に相当するので、第2層の負極活物質の配向度がさらに高いことが分かる。このように、負極活物質層の表面部に相当する第2層の負極活物質の配向度が高いので、つまり、負極活物質が電流集電体に対して水平に横になっている状態ではなく、一定の角度で立っているので、電解質が負極活物質層により良く含浸され、また、リチウムイオンの移動が容易であり、移動経路を短くすることができて、このような負極は高出力電池により好適に適用することができ、また、高率特性に優れた電池を提供することができる。
【0034】
もし、前記第1層のDD値が前記負極活物質層のDD値の30%より小さい場合には電解液の含浸性が低下することがあり、また、高率充電時、リチウムイオンが第1層まで完全に充電されない問題があり、前記第1層のDD値が前記負極活物質層のDD値の90%より大きい場合には粒子間の接触(contact)に問題が発生して、負極の電子抵抗が大きくなる問題がある。
【0035】
また、一実施形態のように、別途に積層されて存在する第1層および第2層のDD値が互いに異なるのではなく、もし、一つの層において区域別にDD値が異なる場合には、配向部/非配向部に応じて、乾燥時、バインダーの凝集(migration)の発生による接着力の低下および負極イオン抵抗の増加、および電解液の含浸性が配向部/非配向部に応じて異なり、反応の不均一性が大きくなり、満充時の局部的厚さの不均一および1C以上の高率で充電時のLi析出の問題がある。
【0036】
前記負極活物質層のDD値は19~60であってもよく、前記第1層のDD値は18~54であってもよい。前記負極活物質層および前記第1層のDD値が上述した関係であり、このような範囲に含まれる値を有する場合、電解質が負極活物質層によりよく含浸され、かつリチウムイオンの移動が容易であり、移動経路を短くすることができ、このような負極を高出力電池により好適に適用することができ、負極内の電子伝達抵抗が減少して高率特性の向上の長所を得ることができる。もし、前記負極活物質層のDD値または前記第1層のDD値が上記の範囲を外れる場合には、電解液の含浸性の低下と高率充電時にリチウムイオンが第1層まで完全に充電されない問題がある。
【0037】
前記第1層の両面全体の厚さは80μm~800μmであってもよい。前記第1層の両面全体の厚さは、前記負極活物質層の80%以下であり、一実施形態によれば、20%~80%である。前記負極活物質層と前記第1層の厚さ比が上記の範囲に含まれる場合、電解液の含浸性のみならず、負極内の活物質層の電子伝達抵抗が改善されるというメリットがある。
【0038】
また、前記第2層の両面全体の厚さは20μm~200μmであってもよい。第2層の厚さが上記の範囲に含まれる場合、負極内の電解液の含浸が有利で負極内イオン伝達抵抗が減少するというメリットがある。
【0039】
また、前記負極活物質層全体の厚さ、つまり、第1層の両面全体の厚さおよび第2層の両面全体の厚さを合わせた値は100μm~1000μmであってもよい。このように、一実施形態による負極活物質層は、最大1000μmの厚さに形成され、これは通常の負極活物質層の最大厚さ200μmより非常に大きい値である。一実施形態では、内部層である第1層と負極活物質層のDD値を調節して、電解質の含浸性を向上させたので、このように厚さの厚い厚膜(thick layer)に形成しても、急速充放電を効果的に実施することができ、よって、高出力電池に有用に適用可能である。
【0040】
前記負極活物質層および前記第1層の厚さは、負極の製造工程における圧延および真空乾燥後の厚さを意味する。前記真空乾燥工程は、0.03atm~0.06atmの圧力下および100℃~160℃の条件下で行われる。
【0041】
本発明の一実施形態において、前記負極活物質層のDD値は、前記負極を含むリチウム二次電池を充放電した後、完全放電した状態の電池を解体して得られた負極に対してXRDを測定して得られた値である。第1層のDD値は、充放電後にテープを利用して活物質層を剥離した後、電流集電体側に接している活物質層に対してXRDを測定して得られた値である。
【0042】
前記充放電は、0.1C~0.2Cで1回~2回実施した。
【0043】
前記負極は、CuKα線を用いたXRD測定の際、(002)面のピーク強度に対する(004)面のピーク強度比、つまり、I(004)/I(002)が0.04以上であり、0.04以上、0.07以下である。前記負極のI(004)/I(002)が0.04以上である場合には、直流内部抵抗が増加せず、率特性、特に高率特性を向上し得、サイクル寿命特性を向上し得る。
【0044】
また、前記負極は、CuKα線を用いたXRD測定の際、(004)面のピーク強度に対する(110)面のピーク強度比、つまり、I(110)/I(004)が0.3以上であり、0.3以上、0.7以下である。前記負極のI(110)/I(004)が0.3以上である場合には、直流内部抵抗が増加せず、率特性、特に高率特性を向上し得、サイクル寿命特性を向上し得る。一実施形態において、DD値は、すべての角度に現れるピークに対する非平面角度に現れるピーク値であるので、I(110)/I(004)と互いに連動する値ではないことから、I(110)/I(004)が0.3以上であることは、一実施形態による第1層および第2層のDD値が上記の範囲を有することを意味するのではない。
【0045】
前記負極のBET比表面積は、5.0m/g未満であってもよいし、また、0.6m/g~2.0m/gであってもよい。負極のBET比表面積が5.0m/g未満の場合には、セルの電気化学的寿命特性が良くなるというメリットがある。一実施形態において、前記BET測定は、前記負極を含むリチウム二次電池を充放電した後、3V以下に完全放電した状態の電池を解体して得た負極を一定の大きさに切断して、BET試料ホルダ(sample holder)に入れて、窒素ガス吸着方法で測定したものである。
【0046】
前記負極は、6mg/cm~65mg/cmの断面ローディングレベル(L/L)を有する。
【0047】
前記負極活物質は、人造黒鉛、または人造黒鉛と天然黒鉛との混合物であってもよい。負極活物質として、人造黒鉛、または人造黒鉛と天然黒鉛との混合物である結晶質炭素系物質を用いる場合、非晶質炭素系活物質を用いる場合に比べて粒子の結晶学的特性がより発達しているため、外部磁場に対する極板内炭素物質の配向特性をさらに向上させることができるというメリットがある。前記人造黒鉛または天然黒鉛の形態は、無定形、板状、鱗片状(flake)、球状、繊維状、またはこれらの組み合わせであって、いかなる形態でも構わない。さらに、前記人造黒鉛と天然黒鉛とを混合使用する場合、混合比は70:30重量%~95:5重量%であってもよい。
【0048】
また、前記負極活物質層は、Si系負極活物質、Sn系負極活物質またはリチウムバナジウム酸化物負極活物質のうちの少なくとも1つをさらに含むことができる。負極活物質層がこれらをさらに含む場合、つまり、炭素系負極活物質を第1負極活物質として、前記負極活物質を第2負極活物質として含む場合、第1および第2負極活物質の混合比は50:50~99:1重量比であってもよい。
【0049】
前記Si系負極活物質は、Si、Si-C複合体、SiO(0<x<2)、Si-Q合金(前記Qは、アルカリ金属、アルカリ土類金属、13族元素、14族元素、15族元素、16族元素、遷移金属、希土類元素およびこれらの組み合わせからなる群より選択される元素であり、Siではない)、前記Sn系負極活物質は、Sn、SnO、Sn-R合金(前記Rは、アルカリ金属、アルカリ土類金属、13族元素、14族元素、15族元素、16族元素、遷移金属、希土類元素およびこれらの組み合わせからなる群より選択される元素であり、Snではない)などが挙げられ、また、これらのうちの少なくとも1つとSiOとを混合して使用してもよい。前記元素QおよびRとしては、Mg、Ca、Sr、Ba、Ra、Sc、Y、Ti、Zr、Hf、Rf、V、Nb、Ta、Db、Cr、Mo、W、Sg、Tc、Re、Bh、Fe、Pb、Ru、Os、Hs、Rh、Ir、Pd、Pt、Cu、Ag、Au、Zn、Cd、B、Al、Ga、Sn、In、Tl、Ge、P、As、Sb、Bi、S、Se、Te、Po、およびこれらの組み合わせからなる群より選択されるものを使用することができる。
【0050】
前記第1層において、負極活物質の含有量は、第1層の全体重量に対して95重量%~99重量%であり、前記第2層において、負極活物質の含有量は、第2層の全体重量に対して95重量%~99重量%である。
【0051】
前記第1層および前記第2層はバインダーを含み、導電材をさらに含む。前記第1層または第2層において、バインダーの含有量は、第1層または第2層の全体重量に対して1重量%~5重量%である。また、導電材をさらに含む場合には、負極活物質を90重量%~98重量%、バインダーを1重量%~5重量%、導電材を1重量%~5重量%使用することができる。
【0052】
前記バインダーは、負極活物質粒子を互いによく付着させ、また、負極活物質を電流集電体によく付着させる役割を果たす。前記バインダーとしては、非水系バインダー、水系バインダー、またはこれらの組み合わせを使用することができる。
【0053】
前記非水系バインダーとしては、エチレンプロピレン共重合体、ポリアクリロニトリル、ポリスチレン、ポリビニルクロライド、カルボキシル化されたポリビニルクロライド、ポリビニルフルオライド、ポリウレタン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリビニリデンフルオライド、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアミドイミド、ポリイミド、またはこれらの組み合わせが挙げられる。
【0054】
前記水系バインダーとしては、スチレン-ブタジエンラバー、アクリル化スチレン-ブタジエンラバー(ABR)、アクリロニトリル-ブタジエンラバー、アクリルゴム、ブチルゴム、フッ素ゴム、エチレンオキシドを含むポリマー、ポリビニルピロリドン、ポリエピクロロヒドリン、ポリホスファゼン、エチレンプロピレンジエン共重合体、ポリビニルピリジン、クロロスルホン化ポリエチレン、ラテックス、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリビニルアルコール、アクリレート系樹脂、またはこれらの組み合わせが挙げられる。
【0055】
前記負極バインダーとして水系バインダーを用いる場合、粘性を付与できるセルロース系化合物を増粘剤としてさらに含むことができる。このセルロース系化合物としては、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、またはこれらのアルカリ金属塩などを1種以上混合して使用することができる。前記アルカリ金属としては、Na、K、またはLiを使用することができる。このような増粘剤の使用含有量は、負極活物質100重量部に対して0.1重量部~3重量部である。
【0056】
前記導電材は、電極に導電性を付与するために使用されるものであって、構成される電池において、化学変化を引き起こすことのない電子伝導性材料であればいずれのものも使用可能である。導電材の例として、天然黒鉛、人造黒鉛、カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、炭素繊維などの炭素系物質;銅、ニッケル、アルミニウム、銀などの金属粉末または金属繊維などの金属系物質;ポリフェニレン誘導体などの導電性ポリマー;またはこれらの混合物を含む導電性材料を使用することができる。
【0057】
前記集電体としては、銅箔、ニッケル箔、ステレンス鋼箔、チタン箔、ニッケル発泡体(foam)、銅発泡体、伝導性金属がコーティングされたポリマー基材、およびこれらの組み合わせからなる群より選択されるものを使用することができる。
【0058】
このような本発明の一実施形態による負極は、負極活物質組成物を電流集電体に塗布する時、磁場を印加して形成することができる。本発明の一実施形態による負極の製造工程を、図2を参照して、以下に詳しく説明する。
【0059】
図2に示すように、磁石(7、magnet)の下部に電流集電体1を位置させた後、この電流集電体に負極活物質3を含む第1層組成物を塗布する。第1層組成物を塗布した後、乾燥して、第1層U1を形成する。次に、前記第1層上に、負極活物質3を含む第2層組成物を塗布し、乾燥して、第2層U2を形成する。前記第1層および第2層の形成工程は、前記第1層組成物と前記第2層組成物を塗布して形成することもできる。この時、第1層組成物および第2層組成物の塗布時、乾燥工程を共に行い、第1層組成物と第2層組成物が塗布と同時に乾燥されるので、第1層と第2層とが境界なしに一層で形成されず、第1層と第2層が別途形成される。
【0060】
前記電流集電体の両面に第1層および第2層組成物を形成する場合、電流集電体の一面に第1層を形成した後、第1層が形成された面と対応する第1層が形成されない電流集電体の他面に第1層を形成し、二つの第1層の各面に第2層を形成する工程で実施することができ、電流集電体の一面に第1層および第2層を順次形成した後、電流集電体の他面に第1層および第2層を順次形成する工程で実施することもできる。
【0061】
前記磁石による磁場の強さは、1000Gauss~10000Gaussである。また、負極活物質組成物を電流集電体に塗布した後、3秒~9秒間維持して、つまり、磁場に3秒~9秒間露出する。
【0062】
このような磁場の印加によって、特に、前記塗布工程を電流集電体を移動しながら実施すれば、磁石による磁場(magnetic flux)は電流集電体と垂直な方向に形成されるが、コーティング速度(集電体の移動速度)に応じて磁場が形成される方向はベクトル(vector)関数で一定の角度をもって形成されるので、第1層および第2層組成物に含まれる負極活物質が電流集電体の表面に対して一定の傾きを持っている、つまり、配向した形状を有する。
【0063】
特に、前記塗布工程を電流集電体を移動しながら実施すれば、磁石による磁場(magnetic flux)は電流集電体と垂直な方向に形成されるが、コーティング速度(集電体の移動速度)に応じて磁場が形成される方向はベクトル(vector)関数で一定の角度をもって形成されるので、負極活物質組成物に含まれる負極活物質が電流集電体の表面に対して一定の傾きを持っている、つまり、配向した形状を有する。
【0064】
この時、前記第1層組成物の粘度と前記第2層組成物の粘度を調節して、第1層および第2層の形成時に印加される磁場が同一であるにもかかわらず、DD値が異なって形成されるので、図2に示すように、第1層U1および第2層U2において負極活物質が配向される程度が異なることがある。
【0065】
つまり、前記第1層組成物の粘度は、常温(約20℃~約25℃)で2500cps~3500cpsである。前記第2層組成物の粘度は、常温(約20℃~約25℃)で2000cps~3000cpsである。第1層組成物と第2層組成物の粘度は上記の範囲内で調節することができるが、第1層組成物の粘度が第2層組成物の粘度より高い値から選択される。例えば、第1層組成物の粘度が第2層組成物の粘度より100cps~1500cps高いことが好ましく、この差異を有する場合、目的とするDDを有する第1層および第2層が得られる。
【0066】
前記第1層組成物および前記第2層組成物の粘度が上記の範囲を満たす場合、所望のDD値を有する第1層および第2層が得られる。もし、前記第1層組成物の粘度が上記の範囲より低い場合には、第1層に含まれている第1炭素系負極活物質の起立度が高すぎて、つまり、図1に示す角度(a)が非常に増加して、負極活物質の粒子接触(contact)が不良で活物質層の電子伝達抵抗が大きくなる問題があり、上記の範囲より高い場合には配向できない、つまり、第1層に含まれている第1炭素系負極活物質が電流集電体に対して実質的に水平に位置する問題がある。
【0067】
前記第2層組成物の粘度が上記の範囲より低い場合には、第2層に含まれている第2炭素系負極活物質の起立度が高すぎて、負極活物質の粒子接触(contact)が不良で活物質層の電子伝達抵抗が大きくなる問題があり、上記の範囲より高い場合には、配向効果が低下して電解液の含浸性が低下する問題がある。
【0068】
前記第1層組成物および前記第2層組成物は、負極活物質、バインダーおよび導電材を溶媒中で混合して製造することができる。
【0069】
前記負極活物質は、上述した通りである。
【0070】
次いで、第1層および第2層を形成した後、圧延工程および真空乾燥工程を実施して、負極を製造することができる。前記真空乾燥工程は、0.03atm~0.06atmの圧力下で、100℃~160℃の温度で行われる。
【0071】
本発明の他の実施形態によるリチウム二次電池は、前記負極と、正極と、電解質とを含む。
【0072】
前記リチウム二次電池は、高出力用電池であってもよい。つまり、電動工具、自動車、掃除機など高出力を要求する電子機器に有用に使用可能である。これは、一実施形態による負極を含むリチウム二次電池が充放電時に発生する熱、特に高容量セル、高出力用電子機器への使用時に充放電により発生する熱を容易に放出することができ、よって熱の発生による電池の劣化を抑制できるため、高出力用電池として効果的に用いることができる。また、充放電による熱を容易に放出可能で、電池の温度増加を効果的に抑制可能で、サイクル寿命特性、特に高率でのサイクル寿命特性を効果的に向上させることができる。
【0073】
このような高出力用電池は、円筒形電池、パウチ型電池またはスタック型(stack type)電池であってもよい。また、このような円筒形電池は、18650型円筒形電池(直径18mm、高さ65mm)、21700型円筒形電池(直径21mm、高さ70mm)のような大きい規格の電池であるが、これらに限定されるものではない。
【0074】
前記正極は、電流集電体と、該電流集電体に形成される正極活物質層とを含む。前記正極活物質としては、リチウムの可逆的な挿入および脱離が可能な化合物(リチエイテッド挿入化合物)を使用することができる。具体的には、コバルト、マンガン、ニッケル、およびこれらの組み合わせから選択される金属とリチウムとの複合酸化物のうちの1種以上を使用することができる。より具体的な例としては、下記の化学式のいずれか1つで表現される化合物を使用することができる。Li1-b(0.90≦a≦1.8、0≦b≦0.5);Li1-b2-c(0.90≦a≦1.8、0≦b≦0.5、0≦c≦0.05);Li1-b2-c(0.90≦a≦1.8、0≦b≦0.5、0≦c≦0.05);Li2-b4-c(0.90≦a≦1.8、0≦b≦0.5、0≦c≦0.05);LiNi1-b-cCoα(0.90≦a≦1.8、0≦b≦0.5、0≦c≦0.5、0<α≦2);LiNi1-b-cCo2-αα(0.90≦a≦1.8、0≦b≦0.5、0≦c≦0.05、0<α<2);LiNi1-b-cCo2-α(0.90≦a≦1.8、0≦b≦0.5、0≦c≦0.05、0<α<2);LiNi1-b-cMnα(0.90≦a≦1.8、0≦b≦0.5、0≦c≦0.05、0<α≦2);LiNi1-b-cMn2-αα(0.90≦a≦1.8、0≦b≦0.5、0≦c≦0.05、0<α<2);LiNi1-b-cMn2-α(0.90≦a≦1.8、0≦b≦0.5、0≦c≦0.05、0<α<2);LiNi(0.90≦a≦1.8、0≦b≦0.9、0≦c≦0.5、0.001≦d≦0.1);LiNiCoMn(0.90≦a≦1.8、0≦b≦0.9、0≦c≦0.5、0≦d≦0.5、0.001≦e≦0.1);LiNiG(0.90≦a≦1.8、0.001≦b≦0.1)LiCoG(0.90≦a≦1.8、0.001≦b≦0.1);LiMn1-b(0.90≦a≦1.8、0.001≦b≦0.1);LiMn(0.90≦a≦1.8、0.001≦b≦0.1);LiMn1-gPO(0.90≦a≦1.8、0≦g≦0.5);QO;QS;LiQS;V;LiV;LiZO;LiNiVO;Li(3-f)(PO(0≦f≦2);Li(3-f)Fe(PO(0≦f≦2);LiFePO(0.90≦a≦1.8)。
【0075】
前記化学式において、Aは、Ni、Co、Mn、およびこれらの組み合わせからなる群より選択され;Xは、Al、Ni、Co、Mn、Cr、Fe、Mg、Sr、V、希土類元素およびこれらの組み合わせからなる群より選択され;Dは、O、F、S、P、およびこれらの組み合わせからなる群より選択され;Eは、Co、Mn、およびこれらの組み合わせからなる群より選択され;Tは、F、S、P、およびこれらの組み合わせからなる群より選択され;Gは、Al、Cr、Mn、Fe、Mg、La、Ce、Sr、V、およびこれらの組み合わせからなる群より選択され;Qは、Ti、Mo、Mn、およびこれらの組み合わせからなる群より選択され;Zは、Cr、V、Fe、Sc、Y、およびこれらの組み合わせからなる群より選択され;Jは、V、Cr、Mn、Co、Ni、Cu、およびこれらの組み合わせからなる群より選択される。
【0076】
もちろん、この化合物の表面にコーティング層を有するものも使用することができ、または前記化合物とコーティング層を有する化合物とを混合して使用してもよい。このコーティング層は、コーティング元素のオキシド、コーティング元素のヒドロキシド、コーティング元素のオキシヒドロキシド、コーティング元素のオキシカーボネートおよびコーティング元素のヒドロキシカーボネートからなる群より選択される少なくとも1つのコーティング元素化合物を含むことができる。これらのコーティング層をなす化合物は、非晶質または結晶質であってもよい。前記コーティング層に含まれるコーティング元素としては、Mg、Al、Co、K、Na、Ca、Si、Ti、V、Sn、Ge、Ga、B、As、Zrまたはこれらの混合物を使用することができる。コーティング層の形成工程としては、前記化合物にこれらの元素を用いて正極活物質の物性に悪影響を与えない方法(例えば、スプレーコーティング、浸漬法など)でコーティングできれば、いかなるコーティング方法を用いても良いし、これについては当該分野に従事する者によく理解できる内容であるので、詳しい説明は省略する。
【0077】
前記正極において、前記正極活物質の含有量は、正極活物質層の全体重量に対して90重量%~98重量%である。
【0078】
本発明の一実施形態において、前記正極活物質層は、バインダーおよび導電材をさらに含むことができる。この時、前記バインダーおよび導電材の含有量は、正極活物質層の全体重量に対してそれぞれ1重量%~5重量%である。
【0079】
前記バインダーは、正極活物質粒子を互いによく付着させ、また、正極活物質を電流集電体によく付着させる役割を果たす。バインダーの代表例としては、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ジアセチルセルロース、ポリビニルクロライド、カルボキシル化されたポリビニルクロライド、ポリビニルフルオライド、エチレンオキシドを含むポリマー、ポリビニルピロリドン、ポリウレタン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリビニリデンフルオライド、ポリエチレン、ポリプロピレン、スチレンブタジエンラバー、アクリル化スチレンブタジエンラバー、エポキシ樹脂、ナイロンなどを使用することができるが、これらに限定されるものではない。
【0080】
前記導電材は、電極に導電性を付与するために使用されるものであって、構成される電池において、化学変化を引き起こすことのない電子伝導性材料であればいずれのものも使用可能である。導電材の例として、天然黒鉛、人造黒鉛、カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、炭素繊維などの炭素系物質;銅、ニッケル、アルミニウム、銀などの金属粉末または金属繊維などの金属系物質;ポリフェニレン誘導体などの導電性ポリマー;またはこれらの混合物を含む導電性材料が挙げられる。
【0081】
前記電流集電体としては、Alを使用することができるが、これに限定されるものではない。
【0082】
前記電解質は、非水性有機溶媒およびリチウム塩を含む。
【0083】
前記非水性有機溶媒は、電池の電気化学的反応に関与するイオンが移動可能な媒質の役割を果たす。
【0084】
前記非水性有機溶媒としては、カーボネート系、エステル系、エーテル系、ケトン系、アルコール系、または非プロトン性溶媒を使用することができる。
【0085】
前記カーボネート系溶媒としては、ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、ジプロピルカーボネート(DPC)、メチルプロピルカーボネート(MPC)、エチルプロピルカーボネート(EPC)、メチルエチルカーボネート(MEC)、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、ブチレンカーボネート(BC)などが使用できる。前記エステル系溶媒としては、メチルアセテート、エチルアセテート、n-プロピルアセテート、t-ブチルアセテート、メチルプロピオネート、エチルプロピオネート、デカノリド(decanolide)、メバロノラクトン(mevalonolactone)、カプロラクトン(caprolactone)などが使用できる。前記エーテル系溶媒としては、ジブチルエーテル、テトラグリム、ジグリム、ジメトキシエタン、2-メチルテトラヒドロフラン、テトラヒドロフランなどが使用できる。また、前記ケトン系溶媒としては、シクロヘキサノンなどが使用できる。さらに、前記アルコール系溶媒としては、エチルアルコール、イソプロピルアルコールなどが使用可能であり、前記非プロトン性溶媒としては、R-CN(Rは、炭素数2~20の直鎖状、分枝状、または環構造の炭化水素基であり、二重結合芳香環またはエーテル結合を含む)などのニトリル類、ジメチルホルムアミドなどのアミド類、1,3-ジオキソランなどのジオキソラン類、スルホラン(sulfolane)類などが使用できる。
【0086】
前記有機溶媒は、単独でまたは1つ以上混合して使用可能であり、1つ以上混合して使用する場合の混合比率は、目的とする電池性能に応じて適切に調節可能であり、これは当該分野に従事する者には幅広く理解される。
【0087】
また、前記カーボネート系溶媒の場合、環状(cyclic)カーボネートと鎖状(chain)カーボネートとを混合して使用することが好ましいい。この場合、環状カーボネートと鎖状カーボネートは、1:1~1:9の体積比で混合して使用する方が、電解液の性能に優れることができる。
【0088】
前記有機溶媒は、前記カーボネート系溶媒に芳香族炭化水素系有機溶媒をさらに含む。この時、前記カーボネート系溶媒と芳香族炭化水素系有機溶媒は、1:1~30:1の体積比で混合される。
【0089】
前記芳香族炭化水素系有機溶媒としては、下記の化学式1の芳香族炭化水素系化合物が使用できる。
【0090】
【化1】
【0091】
(前記化学式1中、R~Rは、互いに同一または異なり、水素、ハロゲン、炭素数1~10のアルキル基、ハロアルキル基、およびこれらの組み合わせからなる群より選択される。)
【0092】
前記芳香族炭化水素系有機溶媒の具体例としては、ベンゼン、フルオロベンゼン、1,2-ジフルオロベンゼン、1,3-ジフルオロベンゼン、1,4-ジフルオロベンゼン、1,2,3-トリフルオロベンゼン、1,2,4-トリフルオロベンゼン、クロロベンゼン、1,2-ジクロロベンゼン、1,3-ジクロロベンゼン、1,4-ジクロロベンゼン、1,2,3-トリクロロベンゼン、1,2,4-トリクロロベンゼン、ヨードベンゼン、1,2-ジヨードベンゼン、1,3-ジヨードベンゼン、1,4-ジヨードベンゼン、1,2,3-トリヨードベンゼン、1,2,4-トリヨードベンゼン、トルエン、フルオロトルエン、2,3-ジフルオロトルエン、2,4-ジフルオロトルエン、2,5-ジフルオロトルエン、2,3,4-トリフルオロトルエン、2,3,5-トリフルオロトルエン、クロロトルエン、2,3-ジクロロトルエン、2,4-ジクロロトルエン、2,5-ジクロロトルエン、2,3,4-トリクロロトルエン、2,3,5-トリクロロトルエン、ヨードトルエン、2,3-ジヨードトルエン、2,4-ジヨードトルエン、2,5-ジヨードトルエン、2,3,4-トリヨードトルエン、2,3,5-トリヨードトルエン、キシレン、およびこれらの組み合わせからなる群より選択される。
【0093】
前記電解質は、電池寿命を向上させるために、ビニレンカーボネート、または下記の化学式2のエチレンカーボネート系化合物を寿命向上添加剤としてさらに含む。
【0094】
【化2】
【0095】
(前記化学式2中、RおよびRは、互いに同一または異なり、水素、ハロゲン基、シアノ基(CN)、ニトロ基(NO)、およびフッ素化された炭素数1~5のアルキル基からなる群より選択され、前記RおよびRの少なくとも1つは、ハロゲン基、シアノ基(CN)、ニトロ基(NO)、およびフッ素化された炭素数1~5のアルキル基からなる群より選択されるが、ただし、RおよびRがすべて水素ではない。)
【0096】
前記エチレンカーボネート系化合物の代表例としては、ジフルオロエチレンカーボネート、クロロエチレンカーボネート、ジクロロエチレンカーボネート、ブロモエチレンカーボネート、ジブロモエチレンカーボネート、ニトロエチレンカーボネート、シアノエチレンカーボネート、またはフルオロエチレンカーボネートなどが挙げられる。このような寿命向上添加剤をさらに使用する場合、その使用量は適切に調節可能である。
【0097】
前記リチウム塩は、有機溶媒に溶解して、電池内でリチウムイオンの供給源として作用して基本的なリチウム二次電池の作動を可能にし、正極と負極との間のリチウムイオンの移動を促進する役割を果たす物質である。このようなリチウム塩の代表例としては、LiPF、LiBF、LiSbF、LiAsF、LiN(SO、Li(CFSON、LiN(SO、Li(FSON(リチウムビスフルオロスルホニルイミド(lithium bis(fluorosulfonyl)imide:LiFSI)、LiCSO、LiClO、LiAlO、LiAlCl、LiN(C2x+1SO)(C2y+1SO)(ここで、xおよびyは、自然数であり、例えば1~20の整数である)、LiCl、LiIおよびLiB(C(リチウムビスオキサラトボレート(lithium bis(oxalato)borate:LiBOB)からなる群より選択される1つまたは2つ以上が挙げられる。リチウム塩の濃度は、0.1M~2.0Mの範囲内で使用することが好ましい。リチウム塩の濃度が上記の範囲に含まれると、電解質が適切な伝導度および粘度を有するので、優れた電解質性能を示すことができ、リチウムイオンが効果的に移動することができる。
【0098】
リチウム二次電池の種類によって、正極と負極との間にセパレータが存在してもよい。このようなセパレータとしては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリビニリデンフルオライド、またはこれらの2層以上の多層膜が使用可能であり、ポリエチレン/ポリプロピレンの2層セパレータ、ポリエチレン/ポリプロピレン/ポリエチレンの3層セパレータ、ポリプロピレン/ポリエチレン/ポリプロピレンの3層セパレータなどの混合多層膜が使用できることはもちろんである。
【0099】
図3に本発明の一実施形態によるリチウム二次電池の分解斜視図を示す。本発明の一実施形態によるリチウム二次電池は、円筒形電池であってもよい。
【0100】
図3を参照すると、前記リチウム二次電池100は円筒形で、負極112と、正極114と、前記負極112と正極114との間に配置されたセパレータ113と、前記負極112、正極114およびセパレータ113に含浸された電解質(図示せず)と、電池容器120と、前記電池容器120を封入する封入部材140とを主な部分として構成されている。
【0101】
このようなリチウム二次電池100は、負極112、正極114およびセパレータ113を順次積層した後、スパイラル状に巻取られた状態で電池容器120に収納して構成される。
【実施例
【0102】
以下、本発明の実施例および比較例を記載する。下記の実施例は本発明の一実施例に過ぎず、本発明は下記の実施例に限定されるものではない。
【0103】
(実施例1)
人造黒鉛97.5重量%、スチレンブタジエンラバー1.5重量%、カルボキシメチルセルロース1.0重量%を水溶媒中で混合して、粘度(25℃で)が2500cpsの第1層用負極活物質スラリーを製造した。
【0104】
人造黒鉛97.5重量%、スチレンブタジエンラバー1.5重量%、カルボキシメチルセルロース1.0重量%を水溶媒中で混合して、粘度(25℃で)が2000cpsの第2層用負極活物質スラリーを製造した。
【0105】
磁場の強さが4000Gaussの磁石下部にCu箔を位置させた後、前記Cu箔を移動しながら、このCu箔に前記第1層用負極活物質スラリーを塗布し、9秒間磁場に露出した後、これを乾燥して、断面の厚さが100μmの第1層を形成し、第1層が形成された面と対応するCu箔の他面が磁石下部に位置するようにCu箔を位置させた後、Cu箔を移動しながら、このCu箔に前記第1層用負極活物質スラリーを塗布し、9秒間磁場に露出した後、これを乾燥して、断面の厚さが100μmの第1層を形成した。つまり、前記Cu箔の両面に第1層をそれぞれ形成し、結果的に第1層の両面全体の厚さは200μmとなるようにした。
【0106】
次に、前記第1層の形成工程と同様に、前記第1層上に前記第2層用負極活物質スラリーを塗布し、9秒間磁場に露出した後、これを乾燥する工程を2回実施して、両面全体の厚さが70μmの第2層を形成した。
【0107】
第1層および第2層を形成した後、圧延工程および真空乾燥工程(0.04atmおよび140℃で実施)を実施して、断面ローディングレベル(L/L)が15mg/cmの負極を製造した。製造された負極において、圧延後の第1層および第2層の両面全体の厚さは、それぞれ140μmおよび45μmであった。つまり、第1層の両面全体の厚さは、負極活物質層全体の厚さの約76%であった。
【0108】
LiCoO正極活物質96重量%、カーボンブラック導電材2重量%、およびポリビニリデンフルオライドバインダー2重量%をN-メチルピロリドン溶媒中で混合して、正極活物質スラリーを製造した。製造されたスラリーを用いてAl基材に塗布、乾燥および圧延して正極を製造した。
【0109】
前記負極、前記正極、および電解質を用いて電池容量が550mAh、電流密度が4.70mAh/cmの全電池(full cell)である18650型円筒形リチウム二次電池を製造した。この時、電解質としては、1M LiPFが溶解したエチレンカーボネートおよびジエチルカーボネートの混合溶媒(50:50の体積比)を使用した。
【0110】
(実施例2)
人造黒鉛97.5重量%、スチレンブタジエンラバー1.5重量%、カルボキシメチルセルロース1.0重量%を水溶媒中で混合して、粘度(25℃で)が3500cpsの第1層用負極活物質スラリーを製造した。
【0111】
人造黒鉛96.5重量%、スチレンブタジエンラバー1.5重量%、カルボキシメチルセルロース2.0重量%を水溶媒中で混合して、粘度(25℃で)が2000cpsの第2層用負極活物質スラリーを製造した。
【0112】
前記第1層用負極活物質スラリーおよび前記第2層用負極活物質スラリーを使用したことを除いては、前記実施例1と同様に実施して、圧延および真空乾燥工程前には、前記1層の両面厚さ200μmおよび前記2層の両面厚さ70μmの断面ローディングレベル(L/L)が15mg/cmの負極を製造した。製造された負極において、圧延および真空乾燥工程後の第1層および第2層の両面全体の厚さは、それぞれ140μmおよび45μmであった。つまり、第1層の両面全体の厚さは、負極活物質層全体の厚さの約76%であった。
【0113】
前記負極を使用したことを除いては、前記実施例1と同様に実施してリチウム二次電池を製造した。
【0114】
(実施例3)
人造黒鉛97.0重量%、スチレンブタジエンラバー1.5重量%、カルボキシメチルセルロース1.5重量%を水溶媒中で混合して、粘度(25℃で)が3300cpsの第1層用負極活物質スラリーを製造した。
【0115】
人造黒鉛96.5重量%、スチレンブタジエンラバー1.5重量%、カルボキシメチルセルロース2.0重量%を水溶媒中で混合して、粘度(25℃で)が2000cpsの第2層用負極活物質スラリーを製造した。
【0116】
前記第1層用負極活物質スラリーおよび前記第2層用負極活物質スラリーを使用したことを除いては、前記実施例1と同様に実施して、圧延および真空乾燥工程前には、前記1層の両面厚さ202μmおよび前記2層の両面厚さ72μmの断面ローディングレベル(L/L)が15mg/cmの負極を製造した。製造された負極において、圧延および真空乾燥工程後の第1層および第2層の両面全体の厚さは、それぞれ143μmおよび42μmであった。つまり、第1層の両面全体の厚さは、負極活物質層全体の厚さの約77%であった。
【0117】
前記負極を使用したことを除いては、前記実施例1と同様に実施してリチウム二次電池を製造した。
【0118】
(実施例4)
人造黒鉛97.5重量%、スチレンブタジエンラバー1.5重量%、カルボキシメチルセルロース1.0重量%を水溶媒中で混合して、粘度(25℃で)が3100cpsの第1層用負極活物質スラリーを製造した。
【0119】
人造黒鉛97.5重量%、スチレンブタジエンラバー1.5重量%、カルボキシメチルセルロース1.0重量%を水溶媒中で混合して、粘度(25℃で)が2300cpsの第2層用負極活物質スラリーを製造した。
【0120】
前記第1層用負極活物質スラリーおよび前記第2層用負極活物質スラリーを使用したことを除いては、前記実施例1と同様に実施して、圧延および真空乾燥工程前には、前記1層の両面厚さ201μmおよび前記2層の両面厚さ73μmの断面ローディングレベル(L/L)が15mg/cmの負極を製造した。製造された負極において、圧延および真空乾燥工程後の第1層および第2層の両面全体の厚さは、それぞれ141μmおよび43μmであった。つまり、第1層の両面全体の厚さは、負極活物質層全体の厚さの約77%であった。
【0121】
前記負極を使用したことを除いては、前記実施例1と同様に実施してリチウム二次電池を製造した。
【0122】
(実施例5)
人造黒鉛97.5重量%、スチレンブタジエンラバー1.5重量%、カルボキシメチルセルロース1.0重量%を水溶媒中で混合して、粘度(25℃で)が2700cpsの第1層用負極活物質スラリーを製造した。
【0123】
人造黒鉛97.5重量%、スチレンブタジエンラバー1.5重量%、カルボキシメチルセルロース1.0重量%を水溶媒中で混合して、粘度(25℃で)が2500cpsの第2層用負極活物質スラリーを製造した。
【0124】
前記第1層用負極活物質スラリーおよび前記第2層用負極活物質スラリーを使用したことを除いては、前記実施例1と同様に実施して、圧延および真空乾燥工程前には、前記1層の両面厚さ202μmおよび前記2層の両面厚さ70μmの断面ローディングレベル(L/L)が15mg/cmの負極を製造した。製造された負極において、圧延および真空乾燥工程後の第1層および第2層の両面全体の厚さは、それぞれ142μmおよび43μmであった。つまり、第1層の両面全体の厚さは、負極活物質層全体の厚さの約77%であった。
【0125】
前記負極を使用したことを除いては、前記実施例1と同様に実施してリチウム二次電池を製造した。
【0126】
(実施例6)
人造黒鉛97.0重量%、スチレンブタジエンラバー1.5重量%、カルボキシメチルセルロース1.5重量%を水溶媒中で混合して、粘度(25℃で)が2500cpsの第1層用負極活物質スラリーを製造した。
【0127】
人造黒鉛97.0重量%、スチレンブタジエンラバー1.5重量%、カルボキシメチルセルロース1.5重量%を水溶媒中で混合して、粘度(25℃で)が2000cpsの第2層用負極活物質スラリーを製造した。
【0128】
前記第1層用負極活物質スラリーおよび前記第2層用負極活物質スラリーを使用したことを除いては、前記実施例1と同様に実施して、圧延および真空乾燥工程前には、前記1層の両面厚さ200μmおよび前記2層の両面厚さ71μmの断面ローディングレベル(L/L)が15mg/cmの負極を製造した。製造された負極において、圧延および真空乾燥工程後の第1層および第2層の両面全体の厚さは、それぞれ141μmおよび46μmであった。つまり、第1層の両面全体の厚さは、負極活物質層全体の厚さの約75%であった。
【0129】
前記負極を使用したことを除いては、前記実施例1と同様に実施してリチウム二次電池を製造した。
【0130】
(比較例1)
人造黒鉛97.5重量%、スチレンブタジエンラバー1.5重量%、カルボキシメチルセルロース1.0重量%を水溶媒中で混合して、粘度(25℃で)が2300cpsの負極活物質スラリーを製造した。
【0131】
磁場の強さが4000Gaussの磁石下部にCu箔を位置させた後、前記Cu箔を移動しながら、このCu箔に前記負極活物質スラリーを塗布し、9秒間磁場に露出した後、これを乾燥して、断面の厚さが135μmの第1層を形成し、第1層が形成された面と対応するCu箔の他面が磁石下部に位置するようにCu箔を位置させた後、Cu箔を移動しながら、このCu箔に前記第1層用負極活物質スラリーを塗布し、9秒間磁場に露出した後、これを乾燥して、断面の厚さが135μmの第1層を形成した。つまり、前記Cu箔の両面に第1層をそれぞれ形成し、結果的に第1層の両面全体の厚さは270μmとなるようにした。
【0132】
第1層が形成された後、圧延工程を実施して、両面厚さ185μmであり、断面ローディングレベル(L/L)が15mg/cmの負極を製造した。
【0133】
製造された負極において、圧延および真空乾燥工程後の第1層の両面全体の厚さは185μmであった。
【0134】
前記負極を使用したことを除いては、前記実施例1と同様に実施してリチウム二次電池を製造した。
【0135】
(比較例2)
人造黒鉛97.5重量%、スチレンブタジエンラバー1.5重量%、カルボキシメチルセルロース1.0重量%を水溶媒中で混合して、粘度(25℃で)が5000cpsの第1層用負極活物質スラリーを製造した。
【0136】
人造黒鉛97.5重量%、スチレンブタジエンラバー1.5重量%、カルボキシメチルセルロース1.0重量%を水溶媒中で混合して、粘度(25℃で)が1800cpsの第2層用負極活物質スラリーを製造した。
【0137】
磁場の強さが4000Gaussの磁石下部にCu箔を位置させた後、前記Cu箔を移動しながら、このCu箔に前記第1層用負極活物質スラリーを塗布し、12秒間磁場に露出した後、これを乾燥して、断面の厚さが100μmの第1層を形成し、第1層が形成された面と対応するCu箔の他面が磁石下部に位置するようにCu箔を位置させた後、Cu箔を移動しながら、このCu箔に前記第1層用負極活物質スラリーを塗布し、12秒間磁場に露出した後、これを乾燥して、断面の厚さが100μmの第1層を形成した。つまり、前記Cu箔の両面に第1層をそれぞれ形成し、結果的に第1層の両面全体の厚さは200μmとなるようにした。
【0138】
次に、前記第1層の形成工程と同様に、前記第1層に前記第2層用負極活物質スラリーを塗布し、12秒間磁場に露出した後、これを乾燥する工程を2回実施して、両面全体の厚さが70μmの第2層を形成した。
【0139】
第1層および第2層を形成した後、圧延および真空乾燥工程を実施して、断面ローディングレベル(L/L)が15mg/cmの負極を製造した。製造された負極において、圧延および真空乾燥工程後の第1層および第2層の両面全体の厚さは、それぞれ140μmおよび44μmであった。
【0140】
前記負極を使用したことを除いては、前記実施例1と同様に実施してリチウム二次電池を製造した。
【0141】
(比較例3)
人造黒鉛97.5重量%、スチレンブタジエンラバー1.5重量%、カルボキシメチルセルロース1.0重量%を水溶媒中で混合して、粘度(25℃で)が2000cpsの第1層用負極活物質スラリーを製造した。
【0142】
人造黒鉛97.5重量%、スチレンブタジエンラバー1.5重量%、カルボキシメチルセルロース1.0重量%を水溶媒中で混合して、粘度(25℃で)が1800cpsの第2層用負極活物質スラリーを製造した。
【0143】
磁場の強さが4000Gaussの磁石下部にCu箔を位置させた後、前記Cu箔を移動しながら、このCu箔に前記第1層用負極活物質スラリーを塗布し、9秒間磁場に露出した後、これを乾燥して、断面の厚さが100μmの第1層を形成し、第1層が形成された面と対応するCu箔の他面が磁石下部に位置するようにCu箔を位置させた後、Cu箔を移動しながら、このCu箔に前記第1層用負極活物質スラリーを塗布し、9秒間磁場に露出した後、これを乾燥して、断面の厚さが100μmの第1層を形成した。つまり、前記Cu箔の両面に第1層をそれぞれ形成し、結果的に第1層の両面全体の厚さは200μmとなるようにした。
【0144】
次に、前記第1層の形成工程と同様に、前記第1層に前記第2層用負極活物質スラリーを塗布し、20秒間磁場に露出した後、これを乾燥する工程を2回実施して、両面全体の厚さが70μmの第2層を形成した。
【0145】
第1層および第2層を形成した後、圧延および真空乾燥工程を実施して、断面ローディングレベル(L/L)が15mg/cmの負極を製造した。製造された負極において、圧延および真空乾燥工程後の第1層および第2層の両面全体の厚さは、それぞれ141μmおよび45μmであった。
【0146】
前記負極を使用したことを除いては、前記実施例1と同様に実施してリチウム二次電池を製造した。
【0147】
(実施例7)
第1層および第2層の両面全体の厚さをそれぞれ115μmおよび70μmに変更したことを除いては、前記実施例3と同様に実施して断面ローディングレベル(L/L)が15mg/cmの負極を製造した。つまり、第1層の両面全体の厚さは、負極活物質層全体の厚さの約62%であった。
【0148】
前記負極を使用したことを除いては、前記実施例3と同様に実施してリチウム二次電池を製造した。
【0149】
(実施例8)
第1層および第2層の両面全体の厚さをそれぞれ128μmおよび57μmに変更したことを除いては、前記実施例3と同様に実施して断面ローディングレベル(L/L)が15mg/cmの負極を製造した。つまり、第1層の両面全体の厚さは、負極活物質層全体の厚さの約69%であった。
【0150】
前記負極を使用したことを除いては、前記実施例3と同様に実施してリチウム二次電池を製造した。
【0151】
(実施例9)
第1層および第2層の両面全体の厚さをそれぞれ142μmおよび43μmに変更したことを除いては、前記実施例3と同様に実施して断面ローディングレベル(L/L)が15mg/cmの負極を製造した。つまり、第1層の両面全体の厚さは、負極活物質層全体の厚さの約77%であった。
【0152】
前記負極を使用したことを除いては、前記実施例3と同様に実施してリチウム二次電池を製造した。
【0153】
*X線回折特性の測定
前記実施例1~実施例9および前記比較例1~比較例3により製造されたリチウム二次電池を0.1Cで2回充放電を実施した後、2.75Vまで0.1Cで完全放電した。第1層のDD値は、充放電後にテープを利用して極板を取り外した後、基材側に接している活物質層に対してXRDを測定して得られた値である。
【0154】
この完全放電された電池を解体して、負極を得た。この負極に対してCuKα線をターゲット線として、X’Pert(PANalytical社)XRD装置を用い、peak intensityの解像度向上のためにモノクロメータ装置は除去して、XRDを測定した。この時、測定条件は2θ=10°~80°、スキャンスピード(°/S)=0.06436、ステップサイズは0.026°/ステップとした。
【0155】
測定されたXRD結果から負極活物質層全体および第1層のDD値を求めて、その結果を下記表1に示す。
【0156】
DD値は、測定されたXRD結果のうち、2θ=26.5±0.2°((002)面)、42.4±0.2°((100)面)、43.4±0.2°((101)R面)、44.6±0.2°((101)H面)、54.7±0.2°((004)面)、77.5±0.2°((110)面)に現れるピーク面積を測定し、2θ=42.4±0.2°((100)面)、43.4±0.2°((101)R面)、44.6±0.2°((101)H面)、77.5±0.2°((110)面)に現れるピーク面積を合わせた値をI、2θ=26.5±0.2°((002)面)、42.4±0.2°((100)面)、43.4±0.2°((101)R面)、44.6±0.2°((101)H面)、54.7±0.2°((004)面)、77.5±0.2°((110)面)に現れるピーク面積を合わせた値をItotalとし、この値からDD(Itotal/I)値を計算して求めた。その結果を下記表1に示す。
【0157】
さらに、I(004)/I(002)およびI(110)/I(004)を計算して下記表2に示す。特に、43.4±0.2°には黒鉛の(101)R面と、Cu電流集電体の(111)面に相当するピークが重複して現れた値であった。
【0158】
*率特性評価
前記実施例1~実施例9および前記比較例1~比較例3による全電池を0.2C、0.5C、1C、1.5Cおよび2Cで各C-rateで1回ずつ充放電を実施し、0.2C放電容量に対する各C-rateでの容量比を計算した。その結果を下記表1に示す。
【0159】
【表1】
【0160】
上記表1に示すように、第1層のDD値が負極活物質層のDD値の30%~90%含まれる実施例1~実施例9の場合、このような範囲を外れる比較例1~比較例3に比べて、優れた率特性を示すことが分かった。
【0161】
【表2】
【0162】
上記表2に示すように、実施例1~実施例9および比較例1~比較例3により製造された負極のI(004)/I(002)は0.04以上、0.07以下であり、I(110)/I(004)は0.3以上、0.7以下であることが分かった。
【0163】
*BET測定
前記実施例1~実施例9および前記比較例1~比較例3により製造されたリチウム二次電池を0.1Cで充放電した後、3Vで完全放電した後、電池を解体して負極を得た。得られた負極から5cm×5cmサイズの試料を採取した後、この試料を0.5cm×0.5cmに切断して、BET試料ホルダに入れて、窒素ガス吸着方法でBETを測定し、その結果を下記表3に記載した。
【0164】
【表3】
【0165】
上記表3に示すように、実施例1~実施例9および比較例1~比較例3により製造された負極の比表面積はまた、0.6m/g~2.0m/gの範囲に含まれることが分かった。
【0166】
*サイクル寿命特性評価
前記実施例1~実施例9および前記比較例1~比較例3による全電池を常温(25℃)で、1.0C、4.4V、0.1Cカット-オフ条件で定電流定電圧充電を実施し、5分間休止した後、1.0C、3.0Vカット-オフ条件で定電流放電を実施し、5分間休止する条件を1回の充放電サイクルとして、計200回の充放電を実施した。この充放電サイクルによる容量維持率は、1回の放電容量に対する各サイクルでの放電容量比で計算した。
【0167】
その結果を下記表4に示す。
【0168】
【表4】
【0169】
上記表4に示すように、第1層のDDが負極活物質層のDDの30%~90%に相当する実施例1~実施例6の負極を用いたリチウム二次電池のサイクル寿命特性が、第1層のみが形成された比較例1と、第1層のDDが負極活物質層のDDの20%および95%である比較例2および比較例3よりも非常に優れていることが分かった。
【0170】
以上、本発明の好ましい実施例について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、特許請求の範囲と発明の詳細な説明および添付した図面の範囲内で多様に変形して実施することが可能であり、これも本発明の範囲に属することは当然である。
【符号の説明】
【0171】
1 基材
3 負極活物質
7 磁石
U1 第1層
U2 第2層
100 リチウム二次電池
112 負極
113 セパレータ
114 正極
120 電池容器
140 封入部材
図1
図2
図3