(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-16
(45)【発行日】2023-03-27
(54)【発明の名称】アルミニウムの除去方法
(51)【国際特許分類】
C22B 7/00 20060101AFI20230317BHJP
C22B 3/06 20060101ALI20230317BHJP
C22B 3/44 20060101ALI20230317BHJP
C22B 3/46 20060101ALI20230317BHJP
C22B 23/00 20060101ALI20230317BHJP
H01M 10/54 20060101ALI20230317BHJP
【FI】
C22B7/00 C
C22B3/06
C22B3/44 101A
C22B3/46
C22B23/00 102
H01M10/54
(21)【出願番号】P 2022025005
(22)【出願日】2022-02-21
【審査請求日】2022-09-14
(73)【特許権者】
【識別番号】502362758
【氏名又は名称】JX金属株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000523
【氏名又は名称】アクシス国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】樋口 直樹
【審査官】瀧澤 佳世
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-040035(JP,A)
【文献】特開2013-221178(JP,A)
【文献】特表2020-522622(JP,A)
【文献】特開2014-114470(JP,A)
【文献】特開2013-076112(JP,A)
【文献】特開2017-036478(JP,A)
【文献】特開2020-180362(JP,A)
【文献】特開2016-191119(JP,A)
【文献】特開2016-186118(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C22B 7/00
C22B 3/06
C22B 3/44
C22B 3/46
C22B 23/00
H01M 10/54
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルミニウムを除去する方法であって、
リチウムイオン電池廃棄物から得られ、少なくともアルミニウムと、ニッケル及びコバルトのうちの少なくとも一方とを含む電池粉を酸で浸出させ、少なくともアルミニウムイオンと、ニッケルイオン及びコバルトイオンのうちの少なくとも一方とを含む浸出後液を得る浸出工程と、
前記浸出後液のpHを上昇させてアルミニウムイオンを除去することを含む中和工程と
を有し、
前記中和工程でアルミニウムイオンを除去する際に、前記浸出後液にアルカリ性のpH調整剤を添加してpHを上昇させ、pHが3.0~4.0に達したとき、前記pH調整剤に代えて鉄を添加し、pHをさらに上昇さ
せ、
前記中和工程でアルミニウムイオンを除去する際に、前記鉄の添加により、pHを4.0~5.0の範囲内であって、前記鉄を添加する前よりも高い値まで上昇させる、アルミニウムの除去方法。
【請求項2】
前記中和工程でアルミニウムイオンを除去する際に、前記鉄の添加により、酸化還元電位(ORPvsAg/AgCl)を0mV以下とする、請求項
1に記載のアルミニウムの除去方法。
【請求項3】
前記浸出後液がさらに銅イオンを含み、
前記中和工程でアルミニウムイオンを除去する際に、前記鉄の添加により、銅イオンが除去される、請求項1
又は2に記載のアルミニウムの除去方法。
【請求項4】
質量基準にて電池粉中のアルミニウム含有量及びニッケル含有量をそれぞれ100%としたとき、前記中和工程で、前記アルミニウム含有量の80%以上のアルミニウムイオンを除去しつつ、ニッケルのロスを前記ニッケル含有量の10%未満に抑える、請求項1~
3のいずれか一項に記載のアルミニウムの除去方法。
【請求項5】
質量基準にて電池粉中のアルミニウム含有量及びコバルト含有量をそれぞれ100%としたとき、前記中和工程で、前記アルミニウム含有量の80%以上のアルミニウムイオンを除去しつつ、コバルトのロスを前記コバルト含有量の5%未満に抑える、請求項1~
4のいずれか一項に記載のアルミニウムの除去方法。
【請求項6】
前記中和工程が、アルミニウムイオンを除去して得られる脱アルミニウム後液に酸化剤を添加し、鉄イオンを除去することをさらに含む、請求項1~
5のいずれか一項に記載のアルミニウムの除去方法。
【請求項7】
前記浸出後液がさらにマンガンイオンを含み、
前記中和工程で、アルミニウムイオンの一部を除去し、
前記中和工程で得られる中和後液から、溶媒抽出によりマンガンイオン及び、アルミニウムイオンの残部を抽出するマンガン抽出工程をさらに含む、請求項1~
6のいずれか一項に記載のアルミニウムの除去方法。
【請求項8】
前記浸出後液がニッケルイオンを含み、
前記中和工程の後、ニッケルイオンを回収する回収工程をさらに有し、
前記回収工程が、溶媒抽出によりニッケルイオンを抽出するとともに逆抽出することを含む、請求項1~
7のいずれか一項に記載のアルミニウムの除去方法。
【請求項9】
前記浸出後液がさらにコバルトイオンを含み、
前記回収工程が、ニッケルイオンの抽出及び逆抽出前に、溶媒抽出によりコバルトイオンを抽出するとともに逆抽出することを含む、請求項
8に記載のアルミニウムの除去方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この明細書は、リチウムイオン電池廃棄物の電池粉の酸浸出で得られる浸出後液から、アルミニウムを除去する方法を開示するものである。
【背景技術】
【0002】
近年は、製品寿命もしくは製造不良その他の理由より廃棄されたリチウムイオン二次電池の正極材を含むリチウムイオン電池廃棄物から、そこに含まれ得るコバルトやニッケル等の有価金属を湿式処理により回収することが、資源の有効活用の観点から広く検討されている。
【0003】
リチウムイオン電池廃棄物から有価金属を回収するプロセスでは、たとえば、リチウムイオン電池廃棄物に対して焙焼等の前処理を行った後の電池粉を酸性浸出液に添加して、電池粉に含まれ得るコバルト、ニッケル等を浸出させ、浸出後液を得る。
その後、複数段階の溶媒抽出等により、液中の各金属イオンを分離させ、有価金属を回収する。複数段階の溶媒抽出では、コバルトイオン及びニッケルイオンのそれぞれを順次に抽出するとともに逆抽出することがある(たとえば特許文献1参照)。
【0004】
ところで、アルミニウムは、導電性及び熱伝導性に優れることからリチウムイオン二次電池に使用されており、それ故にリチウムイオン電池廃棄物にも含まれる。リチウムイオン電池廃棄物中のアルミニウムは、上記の前処理で完全に除去することが困難であり、電池粉に残留して浸出時にコバルト等とともに溶解し、浸出後液中にアルミニウムイオンとして含まれ得る。リチウムイオン電池廃棄物から有価金属を回収するに当っては、浸出後液から有価金属を分離させるに先立ち、アルミニウムイオンを除去することが必要になる。
【0005】
これに関連して、特許文献2には、「少なくともコバルト及びアルミニウムが溶解した酸性溶液から、アルミニウムを除去する方法であって、前記酸性溶液の酸化還元電位(ORPvsAg/AgCl)が、-600mV以上かつ100mV以下である状態で、該酸性溶液を中和して、前記アルミニウムを除去する、アルミニウムの除去方法」が記載されている。特許文献2では、「脱アルミニウム工程における浸出後液のpHは、4.0~6.0とすることがより好ましく、特に、4.5~5.0とすることがさらに好ましい。」、「脱アルミニウム工程では、pHを上述した範囲内に上昇させるため、酸性溶液に、たとえば、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、アンモニア等のアルカリを添加することができる。」としている。
【0006】
なお、特許文献2には、「酸性溶液の酸化還元電位(ORPvsAg/AgCl)を100mV以下にする方法の一例としては、酸性溶液を中和する際に、イオン化傾向が鉛より大きい金属(鉛より卑な金属)の単体(メタル)を存在させることである。従って、イオン化傾向が鉛より大きい金属の単体を中和前に酸性溶液に添加すればよい。イオン化傾向が鉛より大きい金属としては、アルミニウム、ニッケル、鉄、コバルト等を挙げることができる。」との記載もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2014-162982号公報
【文献】特開2017-166028号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献2では、酸性溶液からアルミニウムイオンを除去する際に、所定のpHに達して脱アルミニウム工程が終了するまで、水酸化ナトリウム等のpH調整剤を添加することとしている。この場合、特に酸性溶液としての浸出後液中にニッケルイオンやコバルトイオンがある程度高い濃度で含まれていると、脱アルミニウム時に、アルミニウムイオンとともにニッケルイオンやコバルトイオンが固体となって沈殿し、ニッケルやコバルトのロスが生じることが新たにわかった。
【0009】
この明細書では、浸出後液からアルミニウムイオンを除去する際に、ニッケル及び/又はコバルトのロスを有効に抑制することができるアルミニウムの除去方法を開示する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この明細書で開示するアルミニウムの除去方法は、リチウムイオン電池廃棄物から得られ、少なくともアルミニウムと、ニッケル及びコバルトのうちの少なくとも一方とを含む電池粉を酸で浸出させ、少なくともアルミニウムイオンと、ニッケルイオン及びコバルトイオンのうちの少なくとも一方とを含む浸出後液を得る浸出工程と、前記浸出後液のpHを上昇させてアルミニウムイオンを除去することを含む中和工程とを有し、前記中和工程でアルミニウムイオンを除去する際に、前記浸出後液にアルカリ性のpH調整剤を添加してpHを上昇させ、pHが3.0~4.0に達したとき、前記pH調整剤に代えて鉄を添加し、pHをさらに上昇させ、前記中和工程でアルミニウムイオンを除去する際に、前記鉄の添加により、pHを4.0~5.0の範囲内であって、前記鉄を添加する前よりも高い値まで上昇させるというものである。
【発明の効果】
【0011】
上述したアルミニウムの除去方法によれば、浸出後液からアルミニウムイオンを除去する際に、アルカリ性のpH調整剤から鉄に切り替えずにpHを上昇させる場合と比べ、ニッケル及び/又はコバルトのロスを有効に抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】一の実施形態のアルミニウムの除去方法を含む金属回収方法を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、上述したアルミニウムの除去方法の実施の形態について詳細に説明する。
一の実施形態のアルミニウムの除去方法を含む金属回収方法では、
図1に示すように、リチウムイオン電池廃棄物に前処理を施すこと等によって得られる電池粉に対し、浸出工程及び中和工程を順次に行い、その後に回収工程を行う。浸出工程では、酸により電池粉に含まれていた金属を浸出させる。当該金属には、少なくとも、アルミニウムと、コバルト及び/又はニッケルとが含まれており、それらが浸出工程で溶解し、浸出後液には、少なくとも、アルミニウムイオンと、ニッケルイオン及びコバルトイオンの少なくとも一方とが含まれる。
【0014】
中和工程には、脱アルミニウム工程が含まれる。脱アルミニウム工程では、まず浸出後液にアルカリ性のpH調整剤を添加してpHを速やかに上昇させる。それによってpHが3.0~4.0に達したときに、当該pH調整剤の添加を停止するとともに鉄を添加し、pHをさらに上昇させる。pH調整剤を添加するときのpHの上昇速度は、鉄を添加するときのpH上昇速度よりも速くすることが好ましく、例えば1分当たりのpH上昇量を0.005以上とする。更に、0.010以上とするとより好ましい。これにより、詳細については後述するが、ニッケルやコバルトの沈殿を抑制しつつ、アルミニウムを有効に沈殿させることができる。その結果として、アルカリ性のpH調整剤から鉄に切り替えずにpHを上昇させる場合と比べ、ニッケルやコバルトのロスを抑えることが可能になる。なお、中和工程はさらに脱鉄工程を含むことがあり、この場合、上記の脱アルミニウム工程の後、脱アルミニウム後液に対して脱鉄工程を行う。中和工程の後、マンガン抽出工程を行う場合がある。最後に、ニッケルやコバルトを回収する回収工程が行われ得る。
【0015】
(リチウムイオン電池廃棄物)
対象とするリチウムイオン電池廃棄物は、携帯電話その他の種々の電子機器等で使用され得るリチウムイオン二次電池で、電池製品の寿命や製造不良またはその他の理由によって廃棄されたものである。このようなリチウムイオン電池廃棄物から有価金属を回収することは、資源の有効活用の観点から好ましい。
【0016】
リチウムイオン電池廃棄物は、その周囲を包み込む外装として、アルミニウムを含む筐体を有する。この筐体としては、たとえば、アルミニウムのみからなるものや、アルミニウム及び鉄、アルミラミネート等を含むものがある。また、リチウムイオン電池廃棄物は、上記の筐体内に、リチウムと、ニッケル、コバルト及びマンガンからなる群から選択される一種とを含む単独金属酸化物又は、二種以上とを含む複合金属酸化物等からなる正極活物質や、正極活物質が、たとえばポリフッ化ビニリデン(PVDF)その他の有機バインダー等によって塗布されて固着されたアルミニウム箔(正極基材)を含むことがある。またその他に、リチウムイオン電池廃棄物には、銅、鉄等が含まれる場合がある。さらに、リチウムイオン電池廃棄物には通常、筐体内に電解液が含まれる。電解液としては、たとえば、エチレンカルボナート、ジエチルカルボナート等が使用されることがある。
【0017】
(前処理)
リチウムイオン電池廃棄物に対しては、多くの場合、前処理を行う。前処理には、焙焼工程、破砕工程及び篩別工程が含まれることがある。リチウムイオン電池廃棄物は、前処理を経ることにより電池粉になる。
【0018】
焙焼工程では、上記のリチウムイオン電池廃棄物を加熱する。この焙焼工程は、たとえば、リチウムイオン電池廃棄物に含まれるリチウム、コバルト等の金属を、溶かしやすい形態に変化させること等を目的として行う。焙焼工程では、リチウムイオン電池廃棄物を、たとえば450℃~1000℃、好ましくは600℃~800℃の温度範囲で0.5時間~4時間にわたって保持する加熱を行うことが好適である。焙焼は、大気雰囲気下又は窒素等の不活性雰囲気下で行うことができる他、大気雰囲気下と不活性雰囲気下の両雰囲気を順次に又は順不同で行ってもよい。焙焼炉は、バッチ式でも連続式でもよく、例えば、バッチ式では定置炉、連続式ではロータリーキルン炉等があり、その他の各種の炉を用いることもできる。
【0019】
焙焼工程の後は、リチウムイオン電池廃棄物の筐体から正極活物質等を取り出すための破砕工程を行うことができる。破砕工程では、リチウムイオン電池廃棄物の筐体を破壊するとともに、正極活物質が塗布されたアルミニウム箔から正極活物質を選択的に分離させる。なお、正極活物質は焙焼により組成が変化するが、ここでは焙焼工程を経たものであっても正極活物質と呼ぶこととする。
破砕工程には、種々の公知の装置ないし機器を用いることができるが、特に、リチウムイオン電池廃棄物を切断しながら衝撃を加えて破砕することのできる衝撃式の粉砕機を用いることが好ましい。この衝撃式の粉砕機としては、サンプルミル、ハンマーミル、ピンミル、ウィングミル、トルネードミル、ハンマークラッシャ等を挙げることができる。なお、粉砕機の出口にはスクリーンを設置することができ、それにより、リチウムイオン電池廃棄物は、スクリーンを通過できる程度の大きさにまで粉砕されると粉砕機よりスクリーンを通じて排出される。
【0020】
破砕工程でリチウムイオン電池廃棄物を破砕した後は、適切な目開きの篩を用いて篩分けする篩別工程を行う。それにより、篩上にはアルミニウムや銅が残り、篩下にはアルミニウムや銅がある程度除去された電池粉を得ることができる。
【0021】
前処理を経て得られる電池粉は、少なくとも、アルミニウムと、ニッケル及びコバルトのうちの少なくとも一方とを含むものである。電池粉は、アルミニウム含有量が、たとえば1質量%~10質量%、典型的には3質量%~5質量%である。ニッケルを含む場合は、ニッケル含有量が、たとえば1質量%~30質量%、典型的には5質量%~20質量%である。また、コバルトを含む場合は、電池粉中のコバルト含有量は、たとえば1質量%~30質量%、典型的には5質量%~20質量%である。また、電池粉はリチウムを含み、たとえば2質量%~8質量%で含むことがある。
電池粉はさらに、マンガンを含む場合がある。マンガンを含む場合は、マンガン含有量は、たとえば1質量%~30質量%である。また、電池粉は、鉄を1質量%~5質量%で含むことがあり、銅を1質量%~10質量%で含むことがある。
なお、前処理の焙焼工程、破砕工程、篩別工程は、それぞれを必要に応じて行ってもよいし、順不同で行ってもよい。
【0022】
(浸出工程)
浸出工程では、上記の電池粉を硫酸等の酸性浸出液に添加し、酸により浸出させる。その後、フィルタープレスやシックナー等を用いた固液分離により、浸出残渣と浸出後液とに分離させ、浸出残渣を除去する。
【0023】
なお必要に応じて、上記の酸性浸出液による浸出の前に予め、電池粉を水と接触させ、リチウムイオン電池廃棄物に含まれるリチウムのみを浸出して分離させてもよい。この場合、電池粉を水と接触させてリチウムを浸出させた後の水浸出残渣を、上記の酸性浸出液に添加して酸浸出を行う。
【0024】
浸出工程での酸浸出は公知の方法ないし条件で行うことができるが、pHを0.0~3.0とすることが好適である。酸浸出が終了した後、浸出後液のpHは0.5~2.0になることがある。酸化還元電位(ORPvsAg/AgCl)については、たとえば、酸による浸出直後は-250mV~0mVになり、固液分離後の浸出後液では0mV~300mV程度になる場合がある。
【0025】
ここで得られる浸出後液は、少なくとも、アルミニウムイオンと、ニッケルイオン及びコバルトイオンのうちの少なくとも一方とを含む。つまり、浸出後液はアルミニウムイオンを含み、さらに、ニッケルイオン又はコバルトイオンのいずれか一方だけを含む場合があり、あるいは、ニッケルイオン及びコバルトイオンの両方を含む場合がある。浸出後液はその他に、マンガンイオン、鉄イオンを含むことがある。なお、電池粉に含まれ得る銅は、酸浸出で殆ど溶解させずに、浸出残渣に残して除去することができる。但し、この場合でも、浸出後液に銅イオンが含まれることもある。
【0026】
浸出後液は、たとえば、アルミニウムイオン濃度が1.0g/L~20g/L、ニッケルイオン濃度が10g/L~50g/L、コバルトイオン濃度が10g/L~50g/L、マンガンイオン濃度が0g/L~50g/L、鉄イオン濃度が0.1g/L~5.0g/L、銅イオン濃度が0.005g/L~0.2g/Lとなる場合がある。浸出後液には、ニッケルイオン及びコバルトイオンのうちの少なくとも一方が含まれていれば、他方が含まれていなくてもよい。
【0027】
(中和工程)
中和工程には、脱アルミニウム工程(脱Al工程)が含まれる。脱アルミニウム工程では、浸出後液のpHを上昇させることにより、アルミニウムイオンの少なくとも一部を析出させて除去する。中和工程は、好ましくは、アルミニウムイオンを除去する脱アルミニウム工程の後に、鉄イオンを除去する脱鉄工程(脱Fe工程)も含む。脱鉄工程では、脱アルミニウム工程により得られる脱アルミニウム後液に酸化剤を添加し、更にアルカリを添加してpHを上昇させることによって鉄イオンを除去することができる。これにより、脱鉄後液等としての中和後液が得られる。
【0028】
(脱アルミニウム工程)
アルミニウムイオンを除去するに際しては、はじめに、浸出後液にアルカリ性のpH調整剤を添加してpHを速やかに上昇させる。ここで、アルカリ性のpH調整剤としては、たとえば水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、アンモニア等を用いることができるが、なかでも水酸化ナトリウムが好ましい。
【0029】
一方、脱アルミニウム工程においてpHがある程度高くなった後も上記のpH調整剤を添加すると、鉄イオンが存在する条件下では、浸出後液中のニッケルイオンがニッケルの酸化物やニッケルと鉄の複合酸化物となって沈殿することが新たにわかった。これを抑制するため、この実施形態では、上記のpH調整剤の添加によってpHが3.0~4.0に達したときに、当該pH調整剤に代えて鉄を添加する。鉄を添加すると、Fe+2H+→Fe2++H2の反応式により液中のH+の量が少なくなり、pHは上昇する。また、酸化還元電位は低下する。このとき、アルカリ性のpH調整剤から鉄に切り替えずにpHを上昇させる場合と比べ、ニッケルの沈殿が抑制されるので、ニッケルのロスを有効に防止することができる。
【0030】
鉄の添加でニッケルの沈殿が抑制される理由は、必ずしも明らかではないが、鉄の添加によって酸化還元電位が低下し、上記の酸化物の生成が抑えられることによるものと考えられる。また、鉄は、その固体の表面から徐々に反応するので、水酸化ナトリウムその他の強アルカリであって液体状等のpH調整剤に比して、緩やかに反応が進行することも影響している可能性がある。その他、鉄を添加すると、Fe+2H+→Fe2++H2の反応式により水素が発生し、溶存酸素が低減されて、上記の酸化物の生成が抑制されるとも考えられる。いずれにしても、そのような理論に関わらず、pHを上昇させる途中でpH調整剤から鉄に切り替えることにより、ニッケルのロスを抑制することができる。
【0031】
また、浸出後液にコバルトイオンが含まれる場合であっても、上述の通りアルカリ性のpH調整剤の添加によってpHが3.0~4.0に達したときに、当該pH調整剤に代えて鉄を添加することにより、コバルトのロスを抑制することができる。
更に、浸出後液に銅イオンが含まれる場合、中和工程のアルミニウムイオンの除去時に、鉄を添加することにより、Cu2++Fe→Cu+Fe2+の反応式に基づいて、銅イオンも除去することができる。
【0032】
浸出後液に添加する鉄は、固体であれば具体的な形状については特に問わず、金属粉、金属片、金属塊等が考えられるが、反応性の観点から鉄の金属粉(いわゆる鉄粉)とすることが好ましい。鉄粉は必ずしも純度が100%である必要はなく、酸素、炭素、マグネシウム、アルミニウム、ケイ素、リン、イオウ、クロム、マンガン、ニッケル、銅などの不純物が含まれている市販品でもよい。但し、不純物の割合が高すぎるとその後の抽出工程に影響を与えるおそれがあるため、高純度のものが好ましい。
【0033】
浸出後液に添加するものをアルカリ性のpH調整剤から鉄に切り替えるタイミングは、好ましくはpHが3.0~4.0に達したときとする。鉄に切り替えるときのpHが低すぎると、鉄の添加は水酸化ナトリウムの添加と比べて中和に要する時間が長くなるため、脱アルミニウム工程に要する時間も長くなるおそれがある。また、鉄を添加する量が増えることにより、浸出後液中の鉄イオン濃度が飽和するおそれがある。一方、当該pHが高すぎると、ニッケルやコバルトのロスがある程度生じてしまうことが懸念される。
【0034】
鉄の添加により、酸化還元電位(ORPvsAg/AgCl)は低下する。脱アルミニウム工程終了時の酸化還元電位は0mV以下であることが好ましい。それにより、先に述べたようにニッケルの酸化物の生成が抑制されるからである。更に、脱アルミニウム工程終了時の酸化還元電位を0mV以下とすることで、銅の溶解を抑制することができる。なお、脱アルミニウム工程終了時の酸化還元電位が低すぎると、ニッケルやコバルトが単体金属(メタル)に還元されて沈殿することが懸念されるため、-400mV以上とすることが好ましい。
【0035】
鉄の添加に切り替えた後は、鉄を添加することにより、pHを4.0~5.0の範囲内であって、前記鉄を添加する前(すなわち、アルカリ性のpH調整剤を添加してpHを上昇させた後であって、当該pH調整剤から鉄に切り替える直前)よりも高い値まで上昇させることが好適である。アルミニウムの除去終了時の当該pHが低すぎる場合は、アルミニウムが十分に除去されない可能性があり、この一方で高すぎる場合は、ニッケルやコバルトも沈殿し得る。この観点から、アルミニウムの除去終了時のpHは4.3~4.5とすることがより一層好ましい。
【0036】
なお、アルミニウムイオンを除去する際は、浸出後液の温度を、50℃~90℃とすることができる。浸出後液の温度を50℃未満とした場合は、反応性が悪くなることが懸念され、また、90℃より高くした場合は高熱に耐えられる装置が必要になる他、安全上も好ましくない。また、鉄を添加する際は、浸出後液を攪拌することが好ましい。
【0037】
質量基準で電池粉中に含まれていたアルミニウム含有量を100%とした場合、脱アルミニウム工程では、上述したようにしてpHを上昇させることにより、電池粉中に含まれていたアルミニウム含有量の80%以上を沈殿させることが好ましい。例えば、浸出後液中のアルミニウムイオンが0.8g/L以下、特に0.2g/L以下になるまで、脱アルミニウム工程でアルミニウムイオンを除去することが好適である。なお、脱アルミニウム後液中に残留したアルミニウムイオンは、後述するマンガン抽出工程で除去可能である。また、このときに沈殿するニッケルの量は、質量基準で、電池粉中に含まれていたニッケル含有量を100%とした場合に10%未満とするのが好ましく、また、沈殿するコバルトの量は、質量基準で、電池粉中に含まれていたコバルト含有量を100%とした場合に5%未満とするのが好ましい。
【0038】
アルミニウムを沈殿させた後は、フィルタープレスやシックナー等の公知の装置及び方法を用いて濾過等の固液分離を行い、主として、沈殿したアルミニウムを除去し、脱アルミニウム後液を得る。
【0039】
このとき、アルミニウムを含む沈殿物にリチウムを含ませて、その濾過を容易にするため、浸出後液中のアルミニウムに対するリチウムのモル比(Li/Al比)が1.1以上になるように予め調整しておくことが好ましい。この場合、アルミニウム沈殿後の沈殿物に含まれるアルミニウムが、結晶性のあるLiAlO2、LiAl2(OH)7等の複合酸化物、複合水酸化物を含むこととなり、濾過時間の短縮化を図ることができる。
【0040】
(脱鉄工程)
アルミニウムイオンを除去して得られる脱アルミニウム後液から、鉄イオンを除去するため、脱アルミニウム後液に酸化剤を添加することができる。酸化剤の添加により液中の鉄が2価から3価へ酸化され、3価の鉄は2価の鉄よりも低いpHで酸化物又は水酸化物として沈殿する。多くの場合、鉄は、水酸化鉄(Fe(OH)3)等の固体となって沈殿する。沈殿した鉄は、固液分離により除去することができる。
【0041】
鉄を沈殿させるため、酸化時のORP値は、好ましくは300mV~900mVとする。なお、酸化剤の添加後、たとえば、硫酸、塩酸、硝酸等の酸を添加して、pHを低下させておくことができる。たとえば、pHは3未満まで低下させる。
【0042】
酸化剤は、鉄を酸化できるものであれば特に限定されないが、二酸化マンガン、正極活物質、及び/又は、正極活物質を浸出して得られるマンガン含有浸出残渣とすることが好ましい。正極活物質を酸等により浸出して得られるマンガン含有浸出残渣には、二酸化マンガンが含まれ得る。酸化剤として上記の正極活物質等を用いる場合、液中に溶解しているマンガンが二酸化マンガンとなる析出反応が生じるので、析出したマンガンを鉄とともに除去することができる。
【0043】
酸化剤の添加後は、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、アンモニア等のアルカリを添加して、pHを所定の範囲に調整することができる。例えば、pHを3~4の範囲に調整することで鉄を沈殿させることができる。
【0044】
(マンガン抽出工程)
中和工程後に得られる中和後液に対しては、溶媒抽出により、マンガンイオン、場合によってはアルミニウムイオンの残部も抽出して除去するマンガン抽出工程を行うことができる。この場合、マンガンイオンおよびアルミニウムイオンの残部が抽出されることにより、それらが除去された抽出後液(水相)としてのマンガン抽出後液が得られる。
【0045】
マンガン抽出工程では、燐酸エステル系抽出剤を含有する抽出剤を使用することが好ましい。ここで、燐酸エステル系抽出剤としては、たとえばジ-2-エチルヘキシルリン酸(商品名:D2EHPA又はDP8R)等が挙げられる。また、抽出剤は、燐酸エステル系抽出剤に加えて、オキシム系抽出剤を混合させたものであってもよい。この場合、オキシム系抽出剤は、アルドキシムやアルドキシムが主成分のものが好ましい。具体的には、たとえば2-ヒドロキシ-5-ノニルアセトフェノンオキシム(商品名:LIX84)、5-ドデシルサリシルアルドオキシム(商品名:LIX860)、LIX84とLIX860の混合物(商品名:LIX984)、5-ノニルサリチルアルドキシム(商品名:ACORGAM5640)等があり、そのなかでも価格面等から5-ノニルサリチルアルドキシムが好ましい。
【0046】
上記のジ-2-エチルヘキシルリン酸等を使用したアルミニウムイオン及びマンガンイオンを抽出する際の溶媒抽出では、平衡pHを、好ましくは2.5~4.0、より好ましくは2.8~3.3とする。溶媒抽出は、複数段階で行うことが望ましい。これにより、マンガンイオン及びアルミニウムイオンをより確実に中和後液から除去することができる。複数段階の抽出を行う場合、少なくとも複数段階のうち、いずれかの段階の抽出時の平衡pH、たとえば一段階目の抽出時の平衡pHを上述の範囲内の値とし、段階を重ねるごとに抽出時の平衡pHを下げていくことも有効である。
【0047】
(回収工程)
マンガン抽出工程後は、マンガン抽出後液からニッケル及び/又はコバルトを回収するとともに、必要に応じてさらにリチウムを回収する回収工程を行うことができる。
【0048】
より詳細には、はじめにコバルトの回収を行い、ここでは、マンガン抽出後液に対して、好ましくはホスホン酸エステル系抽出剤を使用して溶媒抽出を行って、コバルトイオンを溶媒に抽出する。ホスホン酸エステル系抽出剤としては、ニッケルイオンとコバルトイオンの分離効率の観点から2-エチルヘキシルホスホン酸2-エチルヘキシル(商品名:PC-88A、Ionquest801)が好ましい。コバルトイオンの抽出時には、平衡pHを、好ましくは4.5~5.5、より好ましくは4.8~5.2とする。溶媒抽出後のコバルトイオンを含有する溶媒(有機相)に対しては、逆抽出を行うことができる。逆抽出工程によって、コバルトを溶液として得ることができる。得られたコバルト溶液にマグネシウムイオンが含まれる場合は、たとえばカルボン酸系抽出剤を使用して溶媒抽出を行い、マグネシウムイオンを分離してもよい。また、必要に応じて得られたコバルト溶液に対し結晶化工程を行うことができる。これにより、コバルト塩(例えば硫酸コバルト、塩酸コバルト、硝酸コバルト)を製造することができる。なお、マンガン抽出後液にコバルトイオンが含まれない場合は、コバルトの回収を行わなくてもよい。
【0049】
次いで、ニッケルの回収として、コバルトイオンの溶媒抽出で得られる抽出後液に対して、好ましくはカルボン酸系抽出剤を使用して溶媒抽出を行い、ニッケルイオンを分離する。カルボン酸系抽出剤としては、たとえばネオデカン酸、ナフテン酸等があるが、なかでもニッケルの抽出能力の理由によりネオデカン酸が好ましい。溶媒抽出後のニッケルイオンを含有する抽出剤(有機相)に対して、逆抽出を行うことができる。逆抽出工程によって、ニッケルを溶液として得ることができる。また、必要に応じて得られたニッケル溶液に対し結晶化工程を行うことができる。これにより、ニッケル塩(例えば硫酸ニッケル、塩酸ニッケル、硝酸ニッケル)を製造することができる。なお、マンガン抽出後液にニッケルイオンが含まれない場合は、ニッケルの回収を行わなくてもよい。
【0050】
その後、ニッケルの回収時の溶媒抽出で得られる抽出後液からニッケルイオンの残部およびリチウムイオンを抽出するとともに逆抽出し、当該抽出および逆抽出の操作を繰り返してリチウムイオンを濃縮する。このリチウム濃縮で用いる抽出剤としては、2-エチルヘキシルホスホン酸2-エチルヘキシルやジ-2-エチルヘキシルリン酸を含むものを用いることが好ましい。それによりリチウム濃縮液が得られる。
【実施例】
【0051】
次に、上述したようなアルミニウムの除去方法を試験的に実施し、その効果を確認したので以下に説明する。但し、ここでの説明は単なる例示を目的としたものであり、これに限定されることを意図するものではない。
【0052】
(発明例1)
リチウムイオン電池廃棄物から得られた表1に示す電池粉を、硫酸酸性浸出液で浸出させ、表2に示す浸出後液を得た。
【0053】
【0054】
【0055】
上記の浸出後液に250g/Lの水酸化ナトリウムを4ml/分の速度で添加し、pHが3.0に達したところで水酸化ナトリウムの添加を停止し、工業用の鉄粉(ヘガネス社製、品名NC100.24)を0.25g/20分の速度で添加してpHを4.3まで上昇させた。これにより、表3に示す脱アルミニウム後液を得た。鉄粉の添加により、酸化還元電位(ORPvsAg/AgCl)は-80mVになった。その後、固液分離を行い、表4に示す脱アルミニウム残渣を得た。なお、脱アルミニウム残渣の分配率とは、質量基準で、浸出前の電池粉に含まれる各金属の割合を100%としたとき、脱アルミニウム残渣に含まれる各金属の割合を算出したものである。
【0056】
【0057】
【0058】
表4から解かるように、アルミニウムイオンを有効に除去しつつ、ニッケルのロスは5%と十分に少なくすることができた。また、コバルトのロスも1%と十分に少なくすることができた。更に、銅イオンも効果的に除去されたことが解かる。
【0059】
(比較例)
リチウムイオン電池廃棄物から得られた表5に示す電池粉を、硫酸酸性浸出液で浸出させ、表6に示す浸出後液を得た。
【0060】
【0061】
【0062】
上記の浸出後液に250g/Lの水酸化ナトリウムを4ml/分の速度で添加し、pHを4.5まで上昇させた。これにより、表7に示す脱アルミニウム後液を得た。このときの酸化還元電位(ORPvsAg/AgCl)は31mVであった。その後、固液分離を行い、表8に示す脱アルミニウム残渣を得た。
【0063】
【0064】
【0065】
表8より、脱アルミニウム残渣にニッケルが10%含まれており、ニッケルのロスが多かったことが解かる。また、コバルトも5%含まれており、コバルトのロスも多かったことが解かる。
【0066】
(発明例2)
リチウムイオン電池廃棄物から得られた表9に示す電池粉を、硫酸酸性浸出液で浸出させ、表10に示す浸出後液を得た。
【0067】
【0068】
【0069】
上記の浸出後液に100g/Lの水酸化ナトリウムを4ml/分の速度で添加し、pHが3.0に達したところで水酸化ナトリウムの添加速度を1ml/分の速度に変更し、更にpHが4.0に達したところで水酸化ナトリウムの添加を停止し、工業用の鉄粉(ヘガネス社製、品名NC100.24)を0.25g/20分の速度で添加してpHを4.5まで上昇させた。これにより、表11に示す脱アルミニウム後液を得た。鉄粉の添加により、中和後液の酸化還元電位(ORPvsAg/AgCl)は-353mVになった。その後、固液分離を行い、表12に示す脱アルミニウム残渣を得た。
【0070】
【0071】
【0072】
表12から解かるように、アルミニウムイオンを有効に除去しつつ、ニッケルのロスは9%と十分に少なくすることができた。また、コバルトのロスも1%と十分に少なくすることができた。更に、銅イオンも効果的に除去されたことが解かる。
【0073】
(参考例)
リチウムイオン電池廃棄物から得られた表13に示す電池粉を、硫酸酸性浸出液で浸出させ、表14に示す浸出後液を得た。
【0074】
【0075】
【0076】
上記の浸出後液に100g/Lの水酸化ナトリウムを4ml/分の速度で添加し、pHが3.0に達したところで水酸化ナトリウムの添加速度を1ml/分の速度に変更し、pHを4.5まで上昇させた。これにより、表15に示す脱アルミニウム後液を得た。このときの酸化還元電位(ORPvsAg/AgCl)は97mVであった。その後、固液分離を行い、表16に示す脱アルミニウム残渣を得た。
【0077】
【0078】
【0079】
表16より、脱アルミニウム残渣にニッケルが17%含まれており、ニッケルのロスが多かったことが解かる。また、コバルトも5%含まれており、コバルトのロスも多かったことが解かる。
【0080】
以上より、先述したアルミニウムの除去方法によれば、浸出後液からアルミニウムイオンを除去する際に、ニッケル及び/又はコバルトのロスを有効に抑制できることが解かった。
【要約】
【課題】浸出後液からアルミニウムイオンを除去する際に、ニッケル及び/又はコバルトのロスを有効に抑制することができるアルミニウムの除去方法を提供する。
【解決手段】アルミニウムを除去する方法であって、リチウムイオン電池廃棄物から得られ、少なくともアルミニウムと、ニッケル及びコバルトのうちの少なくとも一方とを含む電池粉を酸で浸出させ、少なくともアルミニウムイオンと、ニッケルイオン及びコバルトイオンのうちの少なくとも一方とを含む浸出後液を得る浸出工程と、前記浸出後液のpHを上昇させてアルミニウムイオンを除去することを含む中和工程とを有し、前記中和工程でアルミニウムイオンを除去する際に、前記浸出後液にアルカリ性のpH調整剤を添加してpHを上昇させ、pHが3.0~4.0に達したとき、前記pH調整剤に代えて鉄を添加し、pHをさらに上昇させる。
【選択図】なし