(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-17
(45)【発行日】2023-03-28
(54)【発明の名称】ブリルアン周波数シフト分布測定装置及びブリルアン周波数シフト分布測定方法
(51)【国際特許分類】
G01M 11/00 20060101AFI20230320BHJP
G01M 11/02 20060101ALI20230320BHJP
【FI】
G01M11/00 U
G01M11/02 F
(21)【出願番号】P 2019141405
(22)【出願日】2019-07-31
【審査請求日】2022-05-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000004226
【氏名又は名称】日本電信電話株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】504155293
【氏名又は名称】国立大学法人島根大学
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】弁理士法人谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】飯田 大輔
(72)【発明者】
【氏名】真鍋 哲也
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 文彦
【審査官】小野寺 麻美子
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-116451(JP,A)
【文献】特開2017-120186(JP,A)
【文献】国際公開第2016/080415(WO,A1)
【文献】特開2015-197384(JP,A)
【文献】特開2013-195224(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01M 11/00 - G01M 11/02
G01D 5/26 - G01D 5/38
JSTPlus/JST7580/JSTChina(JDreamIII)
Science Direct
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被験体の音響フォノンの寿命よりも短い間隔で配置された2つのパルス信号を有する光パルスペアを前記間隔とは独立な周期にて繰り返し発生する光パルスペア発生部と、
前記光パルスペアを分岐する分岐出力部であり、前記光パルスペアから分岐された1つの光パルスペアをポンプ光とし出力し、前記光パルスペアから分岐された他の1つの光パルスペアをプローブ光として出力する、分岐出力部と、
前記分岐出力部を介して入力された前記プローブ光又は前記ポンプ光のうち少なくとも一方の出力時間を遅延させる遅延制御部と、
前記遅延制御部の後段に配置され、前記プローブ光又は前記ポンプ光のうち少なくとも一方の光周波数を繰り返し変更する光周波数シフト部と、
前記光周波数の変更ごとにプローブ光のパワーを測定するパワー測定部と
を備え、
前記周期をT
cycle、被測定ファイバの長さをL、前記被測定ファイバ内での前記パルス信号の群速度をv
gとすると、T
cycle>2L/v
gとを満足する、ブリルアン周波数シフト分布測定装置。
【請求項2】
被験体の音響フォノンの寿命よりも短い間隔で配置された2つのパルス信号を有する光パルスペアを前記間隔とは独立な周期にて繰り返し発生する光パルスペア発生手順と、
分岐出力部が前記光パルスペアを分岐する分岐出力手順であり、前記光パルスペアから分岐された1つの光パルスペアをポンプ光とし出力し、前記光パルスペアから分岐された他の1つの光パルスペアをプローブ光として出力する、分岐出力手順と、
前記分岐出力部を介して入力された前記プローブ光又は前記ポンプ光のうち少なくとも一方の出力時間を遅延制御部で遅延させる遅延制御手順と、
前記遅延制御部の後段に配置された光周波数シフト部が、前記プローブ光又は前記ポンプ光のうち少なくとも一方の光周波数を繰り返し変更する光周波数シフト手順と、
前記光周波数の変更ごとにプローブ光のパワーを測定するパワー測定手順と
を含み、
前記周期をT
cycle、被測定ファイバの長さをL、前記被測定ファイバ内での前記パルス信号の群速度をv
gとすると、T
cycle>2L/v
gとを満足する、ブリルアン周波数シフト分布測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブリルアン周波数シフト分布測定装置及びブリルアン周波数シフト分布測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、光ファイバや光デバイス中のブリルアン周波数シフトの分布をmm程度以下の空間分解能で測定する技術として、ブリルアン光相関領域解析法が知られている(例えば、非特許文献1参照)。また、被験体の音響フォノンの寿命よりも短い周期T=1/Δf(Δf:光コムの周波数間隔)を有するコヒーレント光コム(コヒーレントな光パルス列)を用いて、極めて簡便な装置構成でブリルアンスペクトルを高空間分解能に測定する方式が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【非特許文献】
【0004】
【文献】K.Y.Song, Z.He, and K.Hotate, Distributed strain measurement with millimeter-order spatial resolution based on Brillouin optical correlation domain analysis, OPTICS LETTERS Vol. 31, No. 17, 2006
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、非特許文献1では、ポンプ光およびプローブ光の周波数の相関は、光ファイバ内の測定したい場所以外でも完全にゼロではない。このために、関連技術では目的とするブリルアン周波数シフトを検出するための相関信号のほかに、測定したい場所以外で生じた信号が大きな割合で生じ、これを除外するための様々な手段が必要になる。この結果、測定器の構成は極めて複雑で、構成部品が多数必要であった。
【0006】
また、特許文献1の方式においては、測定可能な光ファイバの長さはパルス列の周期内に光が伝搬する距離以下に制約される。また、パルス列周期は、被験体の音響フォノンの寿命よりも短くなくてはならない。光ファイバ内での音響フォノンの寿命はおおよそ20nsであるので、被測定光ファイバの長さは約4m以内に制約されてしまう。このため、特許文献1の方式は、cmからmmの高い空間分解能を実現可能という特徴を持ちつつも、適用可能な応用は、光集積回路や精密機器など、比較的小さい寸法のデバイスや構造物におけるドーパントや歪などの分布の測定に限られていた。
【0007】
このような状況を鑑みて、本発明の一実施形態は、空間分解能に優れたブリルアン周波数シフトの分布測定を、非常に簡便な装置構成で実現する手段を提供すること、及び、特許文献1の課題であった測定距離の制約を大幅に緩和し、長尺の光ファイバのブリルアン周波数シフトの分布測定を可能とすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
このような目的を達成するために、本発明の一実施形態に係るブリルアン周波数シフト分布測定装置は、被験体の音響フォノンの寿命よりも短い間隔で配置された2つのパルス信号を有する光パルスペアを当該間隔とは独立な周期にて繰り返し発生する光パルスペア発生部と、光パルスペアを分岐する分岐出力部であり、光パルスペアから分岐された1つの光パルスペアをポンプ光とし出力し、光パルスペアから分岐された他の1つの光パルスペアをプローブ光として出力する、分岐出力部と、分岐出力部を介して入力されたプローブ光又はポンプ光のうち少なくとも一方の出力時間を遅延させる遅延制御部と、遅延制御部の後段に配置され、プローブ光又はポンプ光のうち少なくとも一方の光周波数を繰り返し変更する光周波数シフト部と、光周波数の変更ごとにプローブ光のパワーを測定するパワー測定部とを備え、周期をTcycle、被測定ファイバの長さをL、被測定ファイバ内でのパルス信号の群速度をvgとすると、Tcycle>2L/vgとを満足する。
【0009】
本発明の他の実施形態に係るブリルアン周波数シフト分布測定方法は、被験体の音響フォノンの寿命よりも短い間隔で配置された2つのパルス信号を有する光パルスペアを当該間隔とは独立な周期にて繰り返し発生する光パルスペア発生手順と、分岐出力部が光パルスペアを分岐する分岐出力手順であり、光パルスペアから分岐された1つの光パルスペアをポンプ光とし出力し、光パルスペアから分岐された他の1つの光パルスペアをプローブ光として出力する、分岐出力手順と、分岐出力部を介して入力されたプローブ光又はポンプ光のうち少なくとも一方の出力時間を遅延制御部で遅延させる遅延制御手順と、遅延制御部の後段に配置された光周波数シフト部が、プローブ光又はポンプ光のうち少なくとも一方の光周波数を繰り返し変更する光周波数シフト手順と、光周波数の変更ごとにプローブ光のパワーを測定するパワー測定手順とを含み、周期をTcycle、被測定ファイバの長さをL、被測定ファイバ内でのパルス信号の群速度をvgとすると、Tcycle>2L/vgとを満足する。
【発明の効果】
【0010】
以上説明したように、本発明の一実施形態によれば、空間分解能に優れたブリルアン周波数シフトの分布測定を、非常に簡便な装置構成で実現する手段を提供することができるとともに、長尺の光ファイバにおけるブリルアン周波数シフトの分布測定を可能とする方式が提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】一実施形態に係るブリルアン周波数シフト分布測定装置の構成図の一例を示す図である。
【
図2】一実施形態で使用する光パルスペアの波形を表す図である。
【
図3】一実施形態に係るパルスペアの衝突の様子を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態について詳細に説明する。以下に説明する本発明の実施形態は、例示であり、本発明の実施形態は、これに限定されず、他の種々の変形および修正が可能である。
【0013】
(実施形態1)
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は、本発明の実施形態のブリルアン周波数シフト分布測定装置の構成例を示す図である。本実施形態のブリルアン周波数シフト分布測定装置は、光パルスペア発生部1と、光パルスペアを2つの経路に分岐する分岐出力部7と、一端が一方の経路に接続されるとともに他端が他方の経路に接続された被測定光ファイバ6と、一方の経路に配置された光サーキュレータ5と、他方の経路を構成する反射部8と、他方の経路に配置された遅延制御部3および光周波数シフト部2と、光サーキュレータ5を介して被測定光ファイバ6と接続されたパワー測定部4とを備える。
【0014】
光サーキュレータ5は、3の入出力ポートを有しする。分岐出力部7により分岐された2つの光パルスペアの一方が、第1の入出力ポートから入力され、被測定光ファイバ6に向けて第2の入出力ポートから出力される。また、被測定光ファイバ6の一端から出力された光が、第2の入出力ポートから入力され、パワー測定部4に向けて第3の入出力ポートから出力される。
【0015】
分岐出力部7により分岐された2つの光パルスペアの一方が、ポンプ光として、光サーキュレータ5を介して被測定光ファイバ6の一端へ入力される。分岐出力部7により分岐された2つの光パルスペアの他方が、ポンプ光として、被測定光ファイバ6の他端へ入力される。
【0016】
光パルスペア発生部1は、光パルスペアを繰り返し発生する。
図2は、光パルスペア発生部1が発生する光パルスペアの波形を示す図である。
図2において、Δtは1つのパルスのパルス幅を表す。Tはパルスペアを構成する2つのパルスの時間間隔である。そしてT
cycleは繰り返し発生するパルスペアの周期を表す。このようなパルスペアは、単一周波数で発振するレーザ光を外部変調器により変調するように構成することで、容易に得ることができる。
【0017】
本実施形態で使用するパルスペア列のパラメータは以下のように設定される。
まず、パルス幅Δtは光ファイバ内のブリルアン周波数シフト分布を測定するにあたっての空間分解能を決定する。すなわち、光ファイバ内でのパルスの群速度をvgとすると、分布測定の空間分解能Δzは、式(1)で与えられる。
【0018】
【0019】
従って、測定に求められる空間分解能が決定されれば、それに必要となるパルス幅を直ちに決定することができる。
【0020】
次に、パルス間隔Tは、被測定光ファイバ6においてブリルアン散乱をもたらす音響フォノンの寿命よりも短くする必要がある。室温環境に置かれた光ファイバの音響フォノンの寿命は約20nsであるので、Tはこれよりも短くしなければならない。この理由については、本実施例の詳細な動作の説明とともに後述する。
【0021】
最後に、パルスペアの繰返し周期Tcycleは、被測定ファイバの長さをLとするとき、以下の式(2)で表される条件を満足するように決定される。
【0022】
【0023】
式(2)は、パルスペアを被測定光ファイバの両端から反対向きに対向させて入射したときに、パルスペア同士の衝突点が光ファイバ内でただ1つとなるための条件であり、この条件を満足することによって、光ファイバのある1つの点でのブリルアン周波数シフトを観測することができる。
【0024】
本実施形態の重要な特徴は、これら3つのパラメータ(Δz、T、Tcycle)、特に、パルス間隔Tとパルスペア繰返し周期Tcycleは、お互いに制約しあうことなくまったく独立に決定できることである。すなわち、パルス間隔Tを決定する音響フォノン寿命に制約されることなく、繰返し周期Tcycleを制約する被測定光ファイバの長さを選択できることになる。この点は、同じく光パルス列を用いたブリルアン周波数シフト分布測定方法である特許文献1において、被測定光ファイバ長が音響フォノン寿命に制約されて決定されていたことと根本的に異なり、特許文献1において課題であった測定距離の制約を打破できる理由である。
【0025】
分岐出力部7は、例えば、ビームスプリッタやハーフミラーを用いて構成できる。光パルスペア発生部1からのパルスペアは、分岐出力部7で2分岐され、被測定光ファイバ6の反対の両端から、それぞれポンプ光、プローブ光として入力される。分岐出力部7は、光パルスペア発生部1からのパルスペアを3つ以上に分岐するように構成されてもよい。3つ以上に分岐されたパルスペアの1つがポンプ光として、他の1つがプローブ光として入力されてもよい。
【0026】
反射部8は、例えば、ミラーで構成され、分岐出力部7で分岐された2つのパルスペアのうちの1つを被測定光ファイバ6に光学的に結合する経路を形成する。本実施形態では、反射部は、プローブ光の経路を形成しているが、反射部8は、ポンプ光の刑を形成してもよいし、プローブ光の経路及びポンプ光の経路の双方を形成してもよい。
【0027】
光周波数シフト部2は、ポンプ光とプローブ光の相対的な周波数を変更するように構成される。本実施形態では、プローブ光の経路に光周波数シフト部2が配置されるが、これは後の説明により明らかになるとおり、ポンプ光の経路に置かれても構わない。光周波数シフト部2は、単一側波帯変調器を所望の周波数シフトに相当する正弦波信号で駆動するように構成することにより、容易に実現することができる。単一側波帯変調器に入力する正弦波信号の周波数を可変とすることにより、単一側波帯変調器における所望の周波数シフト量を実現する。そして、この周波数シフト量に対して、パワー測定部4によってブリルアン散乱によって増幅されたプローブ光のパワーを測定し、ブリルアン散乱スペクトルを得る。このブリルアン散乱スペクトルを解析することにより、ブリルアン周波数シフトがわかる。
【0028】
遅延制御部3は、ポンプ光とプローブ光の相対的な遅延を調整して、それら2つのパルスが被測定光ファイバ6内で衝突し、誘導ブリルアン散乱を生じる位置を調整するためのものであり、これを操作して衝突位置を光ファイバ全体に走査することにより、分布測定を実現する。遅延制御部3は、ミラーで構成することができる。本実施形態では、プローブ光の光路長を調整するように置かれているが、そしてその趣旨からして、ポンプ光の経路またはプローブ光の経路のどちらに置かれても構わないことは当然である。
【0029】
以下では、本実施例の動作について、光ファイバ中で生じる2つのパルスペア(プローブ光とポンプ光)の間で生じるブリルアン散乱現象とともに説明する。
【0030】
一例として、連続光レーザを外部変調器によって変調することで、パルス幅Δt=100ps、パルス間隔T=10nsのパルスペアを発生することは極めて容易である。光ファイバにおけるパルスの群速度は約2×108m/sであるので、 式(1)に上記パルス幅を代入すれば、約1cmの空間分解能を得る。また、T=10nsは、光ファイバ中の音響フォノンの寿命の典型値(~20ns)よりも短い。
【0031】
以後の説明のため、ポンプ光およびプローブ光のパルスペアの複素振幅波形を以下の式(3)及び式(4)のように表す。
【0032】
【0033】
【0034】
ただし、a(t’)はt’=0近傍にのみ振幅を持つ単独のパルスの波形を表し、vshiftは光周波数シフト部2によって与えられた周波数シフト量を表す。Vは光の位相速度または群速度であり、簡単のためこれらは相等しいものとする。
【0035】
図3は、被測定光ファイバ6におけるパルスペアの衝突の様子を説明する図である。被測定光ファイバ6へ反対向きに入射したポンプ光とプローブ光は、
図3に示すように、まず、ポンプ光のパルスペアのうちの第1のパルスとプローブ光のパルスペアのうちの第1のパルスが被測定光ファイバ6のある地点で衝突する。この時刻をt=0とし、衝突位置をz=0とする。次に、
【0036】
の2箇所において、ポンプ光のパルスペアのうちの第1のパルスとプローブ光のパルスペアのうちの第2のパルスの衝突およびプローブ光のパルスペアのうちの第1のパルスとポンプ光のパルスペアのうちの第2のパルスの衝突がおこる。続いて再びz=0において、ポンプ光のパルスペアのうちの第2のパルスとプローブ光のパルスペアのうちの第2のパルスの衝突が起こる。
【0037】
ブリルアン散乱をとおしてプローブ光がポンプ光から受け取る利得は、これらのパルスが上記の3箇所において衝突するときに形成される音響波が分かれば解析することができる。まず、z=0において形成される音響波の振幅を考える。z=0では、t=0において最初の衝突が生じる。このとき衝突するパルス、すなわち音響波の形成に寄与するパルスは式(3)a(t-z/V)と式(4)のa(t+z/V)とであり、光波の振幅の2乗に比例する駆動力は
【0038】
に比例し、この駆動力に比例した振幅の音響波が発生する。この音響波は、光ファイバに固有のブリルアン周波数シフトvBなる周波数で振動するため、時刻tにおける音響波は、
【0039】
【0040】
と表される。一方、t=Tにおいてポンプ光およびプローブ光の第2のパルス同士の衝突によって発生する音響波の駆動力は
【0041】
【0042】
であり、発生する音響波もこれに比例する。最初に発生した音響波は音響波の寿命τAで減衰するため、z=0に生じる音響波の駆動力は、
【0043】
【0044】
であり、この音響波のパワーは、式(7)の絶対値の2乗を取ることにより、
【0045】
【0046】
と求められる。この結果を見ると、プローブ光が受け取る利得の大きさは、vshiftを変化させた場合に1/Tを周期として変動することがわかる。
【0047】
【0048】
においては1回の衝突しか起こらず、ここで音響波の形成に寄与するパルスは、式(3)の第1項のa(t-z/V)と式(4)の第2項のa(t+z/V)とである。これらより与えられる駆動力は、
【0049】
【0050】
であり、発生する音響波のパワーは、式(9)の絶対値の2乗を取ることにより、a
4と求められる。同様に、
【0051】
において発生する音響波のパワーもa4である。したがって発生する音響波の全パワーは、
【0052】
【0053】
となり、v
shiftを変化させた場合の1/Tを周期とする変動は保存される。そしてこの利得変動はz=0における第1と第2のパルスの干渉によって生じたものであり、
【0054】
に形成される音響波とは無関係である。したがって、利得が最大となるvshiftを求めることにより、衝突地点z=0におけるブリルアン周波数シフトvBを求めることができる。
【0055】
このように、プローブ光の光周波数を変更しながらプローブ光のパワーを観測すれば、そのパワーは光周波数の変更量の周期1/Tごとに変動を繰り返す。この極大もしくは極小を与える周波数シフト量がわかれば、1/Tを測定レンジとして、ブリルアン周波数シフトを測定することができる。このときに、パルスペアの周期Tcycleは式(2)を満足するように設定されているため、パルスペアの衝突は被測定光ファイバ6内のただ1箇所でのみ起こる。したがって、z=0以外の地点でのブリルアン周波数シフトによるスペクトルが混入することはない。
【0056】
以上説明したように本発明によれば、光ファイバ中のブリルアン周波数シフト量を、1/Tを測定レンジとして、極めて高い位置分解能によって測定することができる。
【符号の説明】
【0057】
1 光パルスペア発生部
2 光周波数シフト部
3 遅延制御部
4 パワー測定部
5 光サーキュレータ
6 被測定光ファイバ
7 分岐出力部
8 反射部