(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-17
(45)【発行日】2023-03-28
(54)【発明の名称】配線基板及び配線基板の製造方法
(51)【国際特許分類】
H05K 3/46 20060101AFI20230320BHJP
H01L 23/12 20060101ALI20230320BHJP
【FI】
H05K3/46 Q
H05K3/46 B
H01L23/12 B
(21)【出願番号】P 2019139013
(22)【出願日】2019-07-29
【審査請求日】2022-03-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000190688
【氏名又は名称】新光電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】山口 康之
【審査官】柴垣 宙央
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-96170(JP,A)
【文献】特開2016-207958(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0228012(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2009/0057928(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 3/46
H01L 23/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1絶縁層と、
前記第1絶縁層の上面に形成された第2絶縁層と、
前記第2絶縁層を厚さ方向に貫通する開口部と、
前記開口部の底面に設けられた接着層と、
前記開口部内に前記接着層を介して固定された電子部品と、
前記第2絶縁層の上面を被覆するとともに、前記開口部を充填して前記電子部品を被覆する充填絶縁層と、
前記充填絶縁層の上面に形成された配線層と、を有し、
前記接着層は、前記電子部品の下面を密着状態で被覆する基部と、前記電子部品の側面を密着状態で被覆する被覆部とを有し、
前記被覆部におけるフィラーの含有率は、前記基部におけるフィラーの含有率よりも低く、
前記充填絶縁層は、前記被覆部の側面を密着状態で被覆
し、
前記接着層は、前記充填絶縁層よりも剛性が低く、
前記被覆部におけるフィラーの含有率は、前記基部から前記電子部品の上面に向かうほど低くなり、
前記被覆部が前記基部の上面から前記電子部品の側面に沿って這い上がった距離L1と、前記被覆部の厚みが最大となる部分の厚みT1との比率L1/T1が5以上であり、
前記被覆部の最低溶融粘度は、前記基部の最低溶融粘度よりも低い配線基板。
【請求項2】
前記比率L1/T1が10以上である請求項
1に記載の配線基板。
【請求項3】
前記電子部品は、本体部と、前記本体部の表面に形成された電極端子とを有し、
前記被覆部は、前記電極端子から露出する前記本体部の側面を被覆するように形成されている請求項1
又は2に記載の配線基板。
【請求項4】
前記被覆部は、前記電極端子から露出する前記本体部の側面全面を被覆するように形成されている請求項
3に記載の配線基板。
【請求項5】
前記被覆部は、前記基部の上面側から前記電子部品の上面側に向かうに連れて厚みが薄くなる形状に形成されている請求項1から請求項
4のいずれか1項に記載の配線基板。
【請求項6】
前記接着層の最低溶融粘度は、前記充填絶縁層の最低溶融粘度よりも低い請求項1から請求項
5のいずれか1項に記載の配線基板。
【請求項7】
前記接着層は、最低溶融粘度に達するときの温度が前記充填絶縁層よりも低い請求項1から請求項
6のいずれか1項に記載の配線基板。
【請求項8】
前記第1絶縁層の上面に形成された金属層を更に有し、
前記開口部は、前記金属層の上面を露出するように形成されており、
前記基部は、前記金属層の上面に形成されている請求項1から請求項
7のいずれか1項に記載の配線基板。
【請求項9】
前記第2絶縁層は、複数層の絶縁層が積層されてなる請求項1から請求項
8のいずれか1項に記載の配線基板。
【請求項10】
第1絶縁層の上面に金属層を形成する工程と、
前記第1絶縁層の上面に、前記金属層を覆う第2絶縁層を形成する工程と、
前記第2絶縁層を厚さ方向に貫通して前記金属層の上面を露出する開口部を形成する工程と、
前記開口部の底面に接着層を介して電子部品を仮固定し、前記接着層を未硬化状態に維持する工程と、
前記第2絶縁層の上面を被覆するとともに前記開口部を充填する樹脂層を形成し、前記接着層及び前記樹脂層を未硬化状態に維持する工程と、
前記未硬化状態の前記接着層及び前記未硬化状態の前記樹脂層に対して加熱処理を施し、前記接着層及び前記樹脂層を硬化させる工程と、を有し、
前記接着層は、前記電子部品との密着性が前記樹脂層よりも高い配線基板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配線基板及び配線基板の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、チップキャパシタ等の電子部品を内蔵した配線基板が知られている(例えば、特許文献1参照)。この種の配線基板では、絶縁層に形成されたキャビティの底面に接着層を介して電子部品が固定されており、その電子部品の側面及び上面を覆うようにキャビティを充填する充填絶縁層が形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、従来の配線基板では、電子部品と充填絶縁層との密着性が低いため、電子部品がキャビティ内で回転したり平面方向に移動したりするおそれがある。すると、電子部品の電極端子と、その電極端子に接続されるビアとの電気的接続信頼性が低下するという問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一観点によれば、第1絶縁層と、前記第1絶縁層の上面に形成された第2絶縁層と、前記第2絶縁層を厚さ方向に貫通する開口部と、前記開口部の底面に設けられた接着層と、前記開口部内に前記接着層を介して固定された電子部品と、前記第2絶縁層の上面を被覆するとともに、前記開口部を充填して前記電子部品を被覆する充填絶縁層と、前記充填絶縁層の上面に形成された配線層と、を有し、前記接着層は、前記電子部品の下面を密着状態で被覆する基部と、前記電子部品の側面を密着状態で被覆する被覆部とを有し、前記被覆部におけるフィラーの含有率は、前記基部におけるフィラーの含有率よりも低く、前記充填絶縁層は、前記被覆部の側面を密着状態で被覆し、前記接着層は、前記充填絶縁層よりも剛性が低く、前記被覆部におけるフィラーの含有率は、前記基部から前記電子部品の上面に向かうほど低くなり、前記被覆部が前記基部の上面から前記電子部品の側面に沿って這い上がった距離L1と、前記被覆部の厚みが最大となる部分の厚みT1との比率L1/T1が5以上であり、前記被覆部の最低溶融粘度は、前記基部の最低溶融粘度よりも低い。
【発明の効果】
【0006】
本発明の一観点によれば、電気的接続信頼性の低下を抑制できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】(a)は、一実施形態の配線基板を示す概略断面図(
図3における1-1線断面図)、(b)は、一実施形態の配線基板の一部を示す拡大断面図。
【
図2】一実施形態の配線基板を示す概略断面図(
図3における2-2線断面図)。
【
図5】(a)~(c)は、一実施形態の配線基板の製造方法を示す概略断面図。
【
図6】(a),(b)は、一実施形態の配線基板の製造方法を示す概略断面図。
【
図7】(a),(b)は、一実施形態の配線基板の製造方法を示す概略断面図。
【
図8】(a),(b)は、一実施形態の配線基板の製造方法を示す概略断面図。
【
図9】(a),(b)は、一実施形態の配線基板の製造方法を示す概略断面図。
【
図10】(a),(b)は、一実施形態の配線基板の製造方法を示す概略断面図。
【
図11】(a),(b)は、一実施形態の配線基板の製造方法を示す概略断面図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、一実施形態について添付図面を参照して説明する。
なお、添付図面は、便宜上、特徴を分かりやすくするために特徴となる部分を拡大して示している場合があり、各構成要素の寸法比率などが各図面で異なる場合がある。また、断面図では、各部材の断面構造を分かりやすくするために、一部の部材のハッチングを梨地模様に代えて示し、一部の部材のハッチングを省略している。本明細書において、「平面視」とは、対象物を
図1(a)等の鉛直方向(図中上下方向)から見ることを言い、「平面形状」とは、対象物を
図1(a)等の鉛直方向から見た形状のことを言う。なお、本明細書における「直交」や「水平」は、厳密に直交や水平の場合のみでなく、本実施形態における作用効果を奏する範囲内で概ね直交や水平の場合も含まれる。
【0009】
まず、配線基板10の構造について説明する。
図1(a)に示すように、配線基板10は、配線層11と、絶縁層21と、導体層12と、絶縁層22と、配線層13と、絶縁層23と、絶縁層24と、配線層14とが順次積層された構造を有している。本例の配線基板10は、一般的なビルドアップ法を用いて作製される配線基板、つまり支持基板としてのコア基板の両面又は片面に所要数のビルドアップ層を順次形成して積層したものとは異なり、支持基板を含まない、所謂「コアレス基板」の形態を有している。
【0010】
配線基板10は、複数の絶縁層22,23に形成された開口部30内に配置された1つ又は複数(ここでは、1つ)のチップキャパシタ40と、絶縁層21の下面に積層されたソルダーレジスト層61と、絶縁層24の上面に積層されたソルダーレジスト層62とを有している。配線基板10は、チップキャパシタ40を内蔵した配線基板である。
【0011】
ここで、配線層11,13,14及び導体層12の材料としては、例えば、銅(Cu)や銅合金を用いることができる。絶縁層21~24の材料としては、例えば、エポキシ系樹脂やポリイミド系樹脂などの絶縁性樹脂、又はこれら樹脂にシリカやアルミナ等のフィラーを混入した樹脂材を用いることができる。また、絶縁層21~24の材料としては、例えば、ガラス、アラミド、LCP(Liquid Crystal Polymer)繊維の織布や不織布などの補強材に、エポキシ樹脂やポリイミド樹脂等を主成分とする熱硬化性樹脂を含浸させた補強材入りの絶縁性樹脂を用いることもできる。なお、絶縁層21~24の材料としては、熱硬化性樹脂を主成分とする非感光性の絶縁性樹脂や感光性樹脂を主成分とする絶縁性樹脂を用いることができる。
【0012】
配線層11は、配線基板10の最外層(ここでは、最下層)の配線層である。配線層11の下面は、絶縁層21から露出されている。本例の配線層11の下面は、絶縁層21の下面と略面一に形成されている。なお、配線層11の下面は、絶縁層21の下面よりも導体層12側に凹むように形成されていてもよい。
【0013】
配線層11は、例えば、他の導体層12及び配線層13,14よりも微細に形成された配線層である。例えば、配線層11のラインアンドスペース(L/S)としては、1μm/1μm~5μm/5μm程度とすることができる。ここで、ラインアンドスペース(L/S)は、配線の幅と、隣り合う配線同士の間隔とを示す。また、配線層11の厚さは、例えば、3μm~20μm程度とすることができる。
【0014】
絶縁層21は、配線層11の上面及び側面を被覆し、配線層11の下面を露出するように形成されている。絶縁層21には、所要の箇所に、当該絶縁層21を厚さ方向に貫通して配線層11の上面の一部を露出する貫通孔VH1が形成されている。貫通孔VH1は、例えば、
図1(a)において上側(導体層12側)から下側(配線層11側)に向かうに連れて開口幅(開口径)が小さくなるテーパ状に形成されている。例えば、貫通孔VH1は、下側の開口端の開口径が上側の開口端の開口径よりも小さくなる逆円錐台形状に形成されている。なお、配線層11の上面から絶縁層21の上面までの厚さは、例えば、10μm~35μm程度とすることができる。
【0015】
導体層12は、絶縁層21の上面に積層されている。導体層12の厚さは、例えば、10μm~30μm程度とすることができる。
導体層12は、例えば、配線層12Aと、金属層12Bとを有している。配線層12Aと金属層12Bとは、例えば、互いに離れて設けられており、互いに電気的に絶縁されている。配線層12Aと金属層12Bとは同一平面上に形成されている。
【0016】
配線層12Aは、例えば、貫通孔VH1に充填されたビア配線を介して配線層11と電気的に接続されている。配線層12Aは、例えば、貫通孔VH1に充填されたビア配線と一体に形成されている。
【0017】
金属層12Bは、例えば、チップキャパシタ40が搭載される搭載領域に形成されている。金属層12Bは、例えば、チップキャパシタ40と平面視で重なる位置に形成されている。金属層12Bは、例えば、開口部30と平面視で重なる位置に形成されている。金属層12Bの平面形状は、例えば、開口部30の平面形状よりも大きく形成されている。金属層12Bの外周縁は、例えば、平面視において、開口部30の開口縁を外側から囲むように形成されている。金属層12Bは、例えば、平面視矩形状に形成されている。本例の金属層12Bは、他の配線層や導体層に電気的に接続されず、電気的に孤立(フローティング)した金属層である。金属層12Bは、例えば、配線を引き回す配線パターンであってもよいし、電源配線やグランド配線であってもよい。金属層12Bが配線パターン、電源配線やグランド配線である場合には、例えば、金属層12Bは、ビア配線等を介して他の配線層や導体層と電気的に接続される。
【0018】
絶縁層22は、絶縁層21の上面に、導体層12を被覆するように形成されている。絶縁層22の上面は、内蔵されるチップキャパシタ40の上面よりも低い位置に設けられている。なお、導体層12の上面から絶縁層22の上面までの厚さは、例えば、30μm~60μm程度とすることができる。
【0019】
絶縁層22には、所要の箇所に、当該絶縁層22を厚さ方向に貫通して導体層12(ここでは、配線層12A)の上面の一部を露出する貫通孔VH2が形成されている。貫通孔VH2は、例えば、
図1(a)において上側から下側に向かうに連れて開口幅が小さくなるテーパ状に形成されている。例えば、貫通孔VH2は、下側の開口端の開口径が上側の開口端の開口径よりも小さくなる逆円錐台形状に形成されている。
【0020】
配線層13は、絶縁層22の上面に積層されている。配線層13は、貫通孔VH2に充填されたビア配線を介して配線層12Aと電気的に接続されている。配線層13は、例えば、貫通孔VH2に充填されたビア配線と一体に形成されている。配線層13の厚さは、例えば、10μm~20μm程度とすることができる。
【0021】
絶縁層23は、絶縁層22の上面に、配線層13を被覆するように形成されている。なお、配線層13の上面から絶縁層23の上面までの厚さは、例えば、15μm~45μm程度とすることができる。
【0022】
開口部30は、例えば、絶縁層22と絶縁層23とを厚さ方向に貫通するように形成されている。開口部30は、例えば、金属層12Bの上面の一部を露出するように形成されている。開口部30は、内蔵されるチップキャパシタ40に対応して形成されている。すなわち、開口部30は、チップキャパシタ40の搭載位置に形成されている。
【0023】
図3に示すように、本例の開口部30の平面形状は、矩形状に形成されている。開口部30の平面形状は、チップキャパシタ40の平面形状よりも大きく形成されている。開口部30の平面形状は、例えば、金属層12Bの平面形状よりも小さく形成されている。開口部30の大きさは、例えば、平面視で0.7mm×0.4mm~15mm×15mm程度とすることができる。なお、
図3は、
図1(a)に示した配線基板10を上方から見た平面図であり、絶縁層24、配線層14及びソルダーレジスト層62等が透視的に描かれている。
【0024】
図1(a)に示すように、本例の開口部30は、絶縁層22を厚さ方向に貫通する貫通孔22Xと、絶縁層23を厚さ方向に貫通する貫通孔23Xとが連通して構成されている。例えば、貫通孔22Xの内壁面と貫通孔23Xの内壁面とは連続するように形成されている。貫通孔22X,23Xは、例えば、互いに同軸上に形成されている。すなわち、貫通孔22Xの中心軸と貫通孔23Xの中心軸とは、平面位置が互いに一致している。
【0025】
貫通孔22X,23Xは、例えば、
図1(a)において上側(配線層14側)から下側(金属層12B側)に向かうに連れて開口幅が小さくなるテーパ状に形成されている。すなわち、貫通孔22X,23Xは、下側の開口部に対して上側の開口部が拡開されたテーパ状に形成されている。そして、これら貫通孔22X,23Xの内壁面と、貫通孔22X,23Xの底部に露出する金属層12Bの上面とによって囲まれた空間が、チップキャパシタ40を収容するキャビティとなる。このように、本例の配線基板10では、最下層の絶縁層21上に積層された2層の絶縁層22,23がキャビティ形成用の絶縁層となる。
【0026】
貫通孔22Xの内壁面を構成する絶縁層22の下端部には、例えば、凹部22Yが形成されている。例えば、貫通孔22Xの内壁面のうち絶縁層21と接する側の内壁面には、その内壁面を絶縁層22の内部に後退させる凹部22Yが形成されている。凹部22Yは、貫通孔22Xと連通するように形成されている。換言すると、貫通孔22Xの底部には、その貫通孔22Xの開口幅を広げる凹部22Yが形成されている。凹部22Yは、例えば、貫通孔22Xの底部側の外形の全周に亘って形成されている。凹部22Yの幅は、例えば、20μm~80μm程度とすることができる。凹部22Yには、例えば、金属層12Bが充填されている。すなわち、金属層12Bの外周部は、凹部22Yを充填するように形成されている。換言すると、金属層12Bの平面形状は、開口部30の下側の開口部の平面形状よりも一回り大きく形成されている。
【0027】
開口部30から露出する金属層12Bの上面には、接着層50を介してチップキャパシタ40が接着されている。チップキャパシタ40は、開口部30(キャビティ)内に配置されている。
【0028】
図2に示すように、チップキャパシタ40は、例えば、直方体状のキャパシタ本体41と、そのキャパシタ本体41の水平方向の両端に形成された2つの電極端子42とを有している。チップキャパシタ40としては、例えば、セラミックチップキャパシタを用いることができる。キャパシタ本体41は、例えば、誘電体層43と内部電極44とが多層積層された構造を有している。誘電体層43の材料としては、例えば、セラミックを用いることができる。内部電極44の材料としては、例えば、ニッケル(Ni)、Ni合金、Cu、Cu合金を用いることができる。各電極端子42の材料としては、例えば、CuやCu合金を用いることができる。チップキャパシタ40の厚さは、例えば、80μm~120μm程度とすることができる。
【0029】
チップキャパシタ40は、例えば、その上面が絶縁層23の上面と同一平面上、もしくは絶縁層23の上面よりも低い平面上に形成されるように、開口部30内に配置されている。換言すると、本例の絶縁層23の上面は、チップキャパシタ40の上面と同一平面上、又はチップキャパシタ40の上面よりも高い位置に形成されている。但し、絶縁層23の上面とチップキャパシタ40の上面との高低差が僅か(例えば、絶縁層23の上面から絶縁層24の上面までの厚さの1/3以下の距離)であれば、絶縁層23の上面を、チップキャパシタ40の上面よりも下方に形成してもよい。
【0030】
図1(b)に示すように、接着層50は、チップキャパシタ40の下面を密着状態で被覆する基部51と、チップキャパシタ40の側面を密着状態で被覆する被覆部52とを有している。これら基部51と被覆部52とは互いに連続して一体に形成されている。
【0031】
基部51は、例えば、開口部30の底部に露出する金属層12Bの上面に形成されている。基部51は、例えば、金属層12Bの上面において、配線基板10の積層方向(図中上下方向)と断面視で直交する平面方向に広がるように形成されている。
【0032】
図3に示すように、本例の基部51の平面形状は、矩形状に形成されている。基部51の平面形状は、チップキャパシタ40の平面形状よりも大きく形成されている。基部51の平面形状は、例えば、開口部30から露出する金属層12Bの平面形状よりも小さく形成されている。例えば、基部51は、開口部30から露出する金属層12Bの上面の一部を露出するように形成されている。
【0033】
図2に示すように、基部51は、例えば、チップキャパシタ40の下面全面を被覆するように形成されている。基部51は、例えば、チップキャパシタ40の下面全面を密着状態で被覆するように形成されている。基部51の厚さは、例えば、5μm~10μm程度とすることができる。
【0034】
図1(b)に示すように、被覆部52は、例えば、基部51の上面から上方に立ち上がってチップキャパシタ40の側面を被覆するように形成されている。被覆部52は、例えば、チップキャパシタ40の側面のうちキャパシタ本体41の側面を被覆するように形成されている。例えば、被覆部52は、キャパシタ本体41の側面全面を密着状態で被覆するように形成されている。具体的には、被覆部52は、セラミックからなる誘電体層43の側面全面を密着状態で被覆するように形成されている。
【0035】
図3に示すように、被覆部52は、例えば、チップキャパシタ40の側面のうちキャパシタ本体41(誘電体層43)の側面のみを被覆するように形成されている。すなわち、被覆部52は、チップキャパシタ40の側面のうち電極端子42の側面には形成されていない。換言すると、被覆部52は、電極端子42の側面を露出するように形成されている。
【0036】
図1(b)に示すように、被覆部52は、例えば、基部51の上面側からチップキャパシタ40の上面側に向かうに連れて厚みが薄くなる形状に形成されている。すなわち、被覆部52は、基部51の上面側からチップキャパシタ40の上面側に向かうに連れて、キャパシタ本体41の側面と被覆部52の側面との間の厚みが薄くなるように形成されている。換言すると、被覆部52は、チップキャパシタ40の上面側から基部51側に向かうに連れて外側に広がるように形成されている。このような被覆部52の側面は、基部51側からチップキャパシタ40の上面側に向かうに連れて、チップキャパシタ40の外側からキャパシタ本体41の側面に近づくように斜め上方に傾斜した傾斜面に形成されている。被覆部52の断面形状は、例えば、直角三角形状に形成されている。被覆部52の下部における厚みは、例えば、1μm~2μm程度とすることができる。被覆部52の上部における厚みは、例えば、0.1μm~0.2μm程度とすることができる。
【0037】
被覆部52は、例えば、チップキャパシタ40の側面に沿って這い上がる高さが高く形成される一方で、厚みは薄く形成されている。例えば、被覆部52は、被覆部52が基部51の上面からチップキャパシタ40の側面に沿って這い上がった距離L1と、被覆部52の厚みが最大となる部分の厚みT1との比率L1/T1が5以上、好ましくは10以上となるように形成されている。本実施形態では、キャパシタ本体41の側面が基部51の上面に対して垂直に延びるように形成されているため、基部51の上面から被覆部52の上端までの高さが距離L1となる。また、本実施形態の被覆部52では、基部51に最も近い下部の厚みが最大となるため、被覆部52の下部の厚みが厚みT1となる。
【0038】
被覆部52は、例えば、チップキャパシタ40の上面には形成されていない。すなわち、被覆部52は、チップキャパシタ40の上面を露出するように形成されている。なお、被覆部52は、チップキャパシタ40の上面の一部を被覆するように形成されていてもよい。
【0039】
接着層50としては、例えば、エポキシ系、ポリイミド系やシリコーン系等の熱硬化性の接着剤を用いることができる。接着層50は、例えば、シリカやアルミナ等のフィラーを含有していてもよい。本例の接着層50としては、エポキシ系樹脂などからなる基材樹脂にフィラーが混入された接着剤を用いられる。
【0040】
接着層50は、例えば、チップキャパシタ40との密着性が絶縁層24よりも高い。接着層50は、例えば、キャパシタ本体41の誘電体層43との密着性が絶縁層24よりも高い。接着層50は、例えば、絶縁層24よりも剛性が低い。
【0041】
接着層50の最低溶融粘度は、例えば、絶縁層24の最低溶融粘度よりも低く設定されている。ここで、接着層50や絶縁層24などの樹脂組成物層の「最低溶融粘度」とは、樹脂組成物層の樹脂が溶融した際に樹脂組成物層が持つ最低の粘度のことである。詳細には、一定の昇温速度で樹脂組成物層を加熱して樹脂を溶融させると、初期の段階は溶融粘度が温度上昇とともに低下し、その後、ある温度を超えると温度上昇とともに溶融粘度が上昇する。このときの極小点の溶融粘度が「最低溶融粘度」となる。なお、樹脂組成物層の最低溶融粘度は、例えば、動的粘弾性法により測定することができる。
【0042】
被覆部52におけるフィラーの含有率は、例えば、基部51におけるフィラーの含有率よりも低い。被覆部52におけるフィラーの含有率は、例えば、基部51側からチップキャパシタ40の上面側に向かうほど(つまり、基部51から離れるほど)低くなる。例えば、被覆部52の上部におけるフィラーの含有率は、ゼロである。このような被覆部52の最低溶融粘度は、例えば、基部51の最低溶融粘度よりも低い。基部51の最低溶融粘度は、絶縁層24の最低溶融粘度よりも低い。
【0043】
接着層50は、例えば、最低溶融粘度に達するときの温度が絶縁層24よりも低くなるように設定されている。すなわち、接着層50は、絶縁層24よりも低い温度で最低溶融粘度に達する。
【0044】
以上説明した接着層50によって、チップキャパシタ40が開口部30内に固定されている。このとき、接着層50がチップキャパシタ40の下面及び側面に密着しているため、接着層50がチップキャパシタ40の下面のみに密着している場合に比べて、接着層50とチップキャパシタ40との接着強度を高めることができる。
【0045】
図1(a)に示すように、絶縁層24は、絶縁層23の上面を被覆するとともに、開口部30を充填してチップキャパシタ40を被覆するように形成されている。絶縁層24は、例えば、接着層50の基部51の側面全面と、チップキャパシタ40から露出する基部51の上面全面と、接着層50の被覆部52の側面全面とを被覆するように形成されている。絶縁層24は、例えば、基部51の側面全面及び上面全面と、被覆部52の側面全面とを密着状態で被覆するように形成されている。絶縁層24は、例えば、接着層50から露出するチップキャパシタ40を全体的に被覆するように形成されている。例えば、絶縁層24は、接着層50から露出するチップキャパシタ40の側面及び上面を被覆するように形成されている。
図2に示すように、絶縁層24は、例えば、電極端子42の側面全面及び上面全面と、キャパシタ本体41の上面全面とを被覆するように形成されている。絶縁層24は、例えば、接着層50から露出する金属層12Bの上面全面と、貫通孔22Xの内壁面全面と、貫通孔23Xの内壁面全面とを被覆するように形成されている。
【0046】
絶縁層24は、例えば、絶縁層23の上面全面を被覆するように形成されている。絶縁層23,24の所要の箇所には、それら絶縁層23,24を厚さ方向に貫通して配線層13の上面の一部を露出する貫通孔VH3が形成されている。また、絶縁層24には、所要の箇所に、当該絶縁層24を厚さ方向に貫通して電極端子42の上面の一部を露出する貫通孔VH4が形成されている。貫通孔VH3,VH4は、例えば、
図2において上側(配線層14側)から下側(配線層13側又は電極端子42側)に向かうに連れて開口幅(開口径)が小さくなるテーパ状に形成されている。例えば、貫通孔VH3,VH4は、下側の開口端の開口径が上側の開口端の開口径よりも小さくなる逆円錐台形状に形成されている。なお、絶縁層23の上面から絶縁層24の上面までの厚さは、例えば、15μm~45μm程度とすることができる。
【0047】
配線層14は、絶縁層24の上面に形成されている。配線層14は、例えば、配線基板10の最外層(ここでは、最上層)の配線層である。配線層14は、例えば、貫通孔VH3に充填されたビア配線を介して配線層13と電気的に接続される配線層を有している。配線層14は、例えば、貫通孔VH4に充填されたビア配線を介して電極端子42と電気的に接続される配線層を有している。配線層14は、例えば、貫通孔VH3又は貫通孔VH4に充填されたビア配線と一体に形成されている。配線層14は、絶縁層24の上面において平面方向に引き回されていてもよい。さらに、このような配線層14により、配線層13に接続される配線層14と、電極端子42に接続される配線層14とが相互に電気的に接続されていてもよい。配線層14の厚さは、例えば、10μm~30μm程度とすることができる。
【0048】
図1(a)に示すように、ソルダーレジスト層61は、最外層(ここでは、最下層)の絶縁層21の下面に積層されている。ソルダーレジスト層61の材料としては、例えば、エポキシ系樹脂やアクリル系樹脂などの絶縁性樹脂を用いることができる。ソルダーレジスト層61の厚さは、例えば、10μm~30μm程度とすることができる。
【0049】
ソルダーレジスト層61には、最下層の配線層11の少なくとも一部をパッドP1として露出させるための開口部61Xが形成されている。本例の開口部61Xは、配線基板10に実装される半導体チップ71(
図4参照)の実装領域に対応して形成されている。例えば、開口部61Xは、実装領域における配線層11の下面及び絶縁層21の下面を露出するように形成されている。また、ソルダーレジスト層61には、配線層11の一部を接続パッドP2として露出させるための開口部61Yが形成されている。本例の開口部61Yは、開口部61Xよりも外側の領域に形成されている。
【0050】
ここで、パッドP1は、例えば、半導体チップ等の電子部品と電気的に接続するための電子部品搭載用のパッドとして機能する。すなわち、パッドP1が形成されている側の面がチップ搭載面になっている。また、接続パッドP2は、例えば、他の配線基板や他の半導体装置が電気的に接続されるパッドとして機能する。
【0051】
なお、必要に応じて、パッドP1の表面及び接続パッドP2の表面に表面処理層を形成するようにしてもよい。表面処理層の例としては、金(Au)層、Ni層/Au層(Ni層とAu層をこの順番で積層した金属層)、Ni層/パラジウム(Pd)層/Au層(Ni層とPd層とAu層をこの順番で積層した金属層)などを挙げることができる。これらNi層、Au層、Pd層としては、例えば、無電解めっき法により形成された金属層(無電解めっき金属層)や、電解めっき法により形成された金属層(電解めっき金属層)を用いることができる。また、Au層はAu又はAu合金からなる金属層、Ni層はNi又はNi合金からなる金属層、Pd層はPd又はPd合金からなる金属層である。また、パッドP1の表面及び接続パッドP2の表面に、OSP処理(Organic Solderability Preservative)などの酸化防止処理を施して表面処理層を形成するようにしてもよい。例えば、OSP処理を施した場合には、パッドP1の表面及び接続パッドP2の表面に、アゾール化合物やイミダゾール化合物等の有機皮膜による表面処理層が形成される。
【0052】
ソルダーレジスト層62は、最外層(ここでは、最上層)の絶縁層24の上面に積層されている。ソルダーレジスト層62の材料としては、例えば、エポキシ系樹脂やアクリル系樹脂などの絶縁性樹脂を用いることができる。ソルダーレジスト層62の厚さは、例えば、10μm~30μm程度とすることができる。
【0053】
ソルダーレジスト層62には、配線層14の一部を外部接続用パッドP3として露出させるための開口部62Xが形成されている。外部接続用パッドP3には、当該配線基板10をマザーボード等の実装基板に実装する際に使用されるはんだボールやリードピン等の外部接続端子が接続されるようになっている。すなわち、本実施形態では、外部接続用パッドP3が形成されている面が外部接続端子面となっている。なお、必要に応じて、外部接続用パッドP3の表面に表面処理層を形成するようにしてもよい。表面処理層の例としては、Au層、Ni層/Au層、Ni層/Pd層/Au層などを挙げることができる。また、外部接続用パッドP3の表面に、例えば、OSP処理などの酸化防止処理を施し、アゾール化合物やイミダゾール化合物等の有機皮膜による表面処理層を形成するようにしてもよい。なお、開口部62Xから露出する配線層14(又は、配線層14上に表面処理層が形成されている場合には、その表面処理層)自体を、外部接続端子としてもよい。
【0054】
(半導体装置70の構造)
次に、
図4に従って、半導体装置70の構造について説明する。なお、
図4において、同図に示す配線基板10は
図1(a)とは上下反転して描かれている。
【0055】
半導体装置70は、配線基板10と、1つ又は複数の半導体チップ71と、アンダーフィル樹脂75とを有している。半導体チップ71は、配線基板10にフリップチップ実装されている。例えば、半導体チップ71の回路形成面(ここでは、下面)に配設された接続端子72を、接合部材73を介して配線基板10のパッドP1に接合することにより、半導体チップ71は、接続端子72及び接合部材73を介してパッドP1(配線層11)と電気的に接続されている。
【0056】
半導体チップ71としては、例えば、CPU(Central Processing Unit)チップやGPU(Graphics Processing Unit)チップなどのロジックチップを用いることができる。また、半導体チップ71としては、例えば、DRAM(Dynamic Random Access Memory)チップ、SRAM(Static Random Access Memory)チップやフラッシュメモリチップなどのメモリチップを用いることもできる。なお、配線基板10に複数の半導体チップ71を搭載する場合には、ロジックチップとメモリチップとを組み合わせて配線基板10に搭載するようにしてもよい。
【0057】
接続端子72としては、例えば、金属ポストを用いることができる。接続端子72は、半導体チップ71の回路形成面から下方に伸びる柱状の接続端子である。接続端子72の材料としては、例えば、銅や銅合金を用いることができる。なお、接続端子72としては、金属ポストの他に、例えば、金バンプを用いることもできる。
【0058】
接合部材73は、パッドP1に接合されるとともに、接続端子72に接合されている。接合部材73としては、例えば、錫(Sn)層やはんだ層を用いることができる。はんだ層の材料としては、例えば、Sn-銀(Ag)系、Sn-Cu系、Sn-Ag-Cu系の鉛(Pb)フリーはんだを用いることができる。
【0059】
アンダーフィル樹脂75は、配線基板10と半導体チップ71との隙間を充填するように設けられている。アンダーフィル樹脂75の材料としては、例えば、エポキシ系樹脂などの絶縁性樹脂を用いることができる。
【0060】
本実施形態において、絶縁層21は第1絶縁層の一例、絶縁層22,23は第2絶縁層の一例、絶縁層24は充填絶縁層の一例、開口部30は開口部の一例、接着層50は接着層の一例、チップキャパシタ40は電子部品の一例、配線層14は配線層の一例である。キャパシタ本体41は本体部の一例、電極端子42は電極端子の一例、金属層12Bは金属層の一例である。
【0061】
(配線基板10の製造方法)
次に、配線基板10の製造方法について説明する。
図5(a)に示すように、支持体80の上面にキャリア付金属箔81が貼着された構造体を準備する。支持体80は、例えば、ガラス、アラミド、LCP繊維の織布や不織布などの補強材に、エポキシ系樹脂やポリイミド系樹脂等の熱硬化性樹脂を含浸させたプリプレグである。キャリア付金属箔81は、キャリア層82と、キャリア層82の上面に剥離層(図示略)を介して積層された極薄の金属箔83とを有している。キャリア層82は、金属箔83の取り扱いを容易にするための支持材として設けられている。キャリア層82は、例えば、厚さが15μm~70μm程度の銅箔である。金属箔83は、例えば、厚さが0.5μm~5μm程度の銅箔である。
【0062】
なお、キャリア層82の材料としては、銅に限定されず、銅以外の導電性を有する金属層であってもよいし、樹脂等の絶縁層であってもよい。また、金属箔83の材料としては、銅に限定されず、銅以外の金属であってもよい。
【0063】
次に、
図5(b)に示す工程では、金属箔83の上面に、配線層11を形成する。配線層11は、例えば、セミアディティブ法によって形成することができる。具体的には、まず、金属箔83の上面に、配線層11の形状に対応した開口部を有するレジストパターン(図示略)を形成する。続いて、レジストパターンの開口部から露出する金属箔83の上面に、金属箔83を給電層とする電解銅めっきにより銅めっき皮膜を析出させる。その後、レジストパターンを除去することにより、金属箔83上に配線層11を形成することができる。なお、配線層11の形成方法としては、セミアディティブ法の他にサブトラクティブ法などの各種の配線形成方法を採用することもできる。
【0064】
続いて、
図5(c)に示す工程では、金属箔83の上面に、配線層11を全体的に覆う絶縁層21を形成する。例えば、絶縁層21として樹脂フィルムを用いる場合には、金属箔83の上面に樹脂フィルムをラミネートする。そして、樹脂フィルムを押圧しながら硬化温度以上の温度(例えば、130℃~200℃程度)で熱処理して硬化させることにより、絶縁層21を形成することができる。なお、樹脂フィルムとしては、例えば、エポキシ系樹脂を主成分とする熱硬化性樹脂のフィルムを用いることができる。また、絶縁層21として液状又はペースト状の絶縁性樹脂を用いる場合には、金属箔83の上面に液状又はペースト状の絶縁性樹脂をスピンコート法などにより塗布する。そして、塗布した絶縁性樹脂を硬化温度以上の温度で熱処理して硬化させることにより、絶縁層21を形成することができる。なお、液状又はペースト状の絶縁性樹脂としては、例えば、エポキシ系樹脂を主成分とする熱硬化性樹脂を用いることができる。
【0065】
次いで、
図6(a)に示す工程では、配線層11の上面の一部が露出されるように、絶縁層21を厚さ方向に貫通する貫通孔VH1を形成する。貫通孔VH1は、例えば、CO
2レーザやYAGレーザ等によるレーザ加工法によって形成することができる。なお、絶縁層21が感光性樹脂を用いて形成されている場合には、フォトリソグラフィ法により所要の貫通孔VH1を形成するようにしてもよい。
【0066】
続いて、貫通孔VH1をレーザ加工法によって形成した場合には、デスミア処理を行って、貫通孔VH1の底部に露出する配線層11の上面に付着した絶縁層21の樹脂残渣(樹脂スミア)を除去する。デスミア処理は、例えば、過マンガン酸塩法などを用いて行うことができる。
【0067】
次いで、例えばセミアディティブ法により、貫通孔VH1に充填されたビア配線を形成するとともに、絶縁層21の上面に導体層12を形成する。導体層12は、貫通孔VH1に充填されたビア配線を介して配線層11と電気的に接続される配線層12Aと、チップキャパシタ40(
図1(a)参照)の搭載領域に形成された金属層12Bとを有している。
【0068】
次に、
図6(b)に示す工程では、絶縁層21の上面に、配線層12Aの上面の一部を露出する貫通孔VH2を有する絶縁層22を形成する。このとき、絶縁層22は、金属層12Bの上面全面及び側面全面を被覆するように形成される。続いて、例えばセミアディティブ法により、貫通孔VH2に充填されたビア配線を形成するとともに、絶縁層22の上面に配線層13を形成する。
【0069】
次いで、
図7(a)に示す工程では、
図5(c)に示した工程と同様に、絶縁層22の上面に、配線層13を被覆する絶縁層23を形成する。このとき、絶縁層23は、配線層13の上面全面及び側面全面を被覆するように形成される。
【0070】
次に、
図7(b)に示す工程では、チップキャパシタ40(
図1(a)参照)の搭載領域に対応する部分の金属層12Bが露出されるように、絶縁層23を厚さ方向に貫通する貫通孔23Xと、その貫通孔23Xと連通し絶縁層22を厚さ方向に貫通する貫通孔22Xとを形成する。すなわち、複数層の絶縁層22,23を厚さ方向に貫通して金属層12Bの上面の一部を露出する貫通孔22X,23Xを形成する。このとき、貫通孔22Xの平面形状は、金属層12Bの平面形状よりも一回り小さく形成されている。このため、金属層12Bの周縁部は絶縁層22により被覆されている。貫通孔22X,23Xは、例えば、CO
2レーザやYAGレーザ等によるレーザ加工法によって形成することができる。このとき、金属層12Bがレーザ加工のストッパ層として機能する。これにより、例えば、過剰なレーザ加工によって、絶縁層22の下層の絶縁層21が損傷することを好適に抑制できる。
【0071】
本工程により、貫通孔22Xと貫通孔23Xとが連通され、絶縁層22と絶縁層23とを厚さ方向に貫通する開口部30が形成される。そして、開口部30から金属層12Bの上面の一部が露出される。
【0072】
続いて、
図8(a)に示す工程では、開口部30から露出する金属層12Bの上面に接着層50Aを形成する。接着層50Aは、例えば、接着層50Aとなる液状樹脂やペースト状樹脂の金属層12Bの上面への塗布などによって形成することができる。なお、接着層50Aとしては、例えば、エポキシ系樹脂などからなる基材樹脂にフィラーが混入された接着剤が用いられる。また、本工程における接着層50Aは、未硬化状態のものが使用される。
【0073】
次いで、
図8(b)に示す工程では、マウンタを用いて、開口部30内において、接着層50A上にチップキャパシタ40を仮固定(載置)する。本工程後の接着層50Aは、熱硬化されていない未硬化状態である。すなわち、本工程では、接着層50Aが未硬化状態に維持される。例えば、本工程後の接着層50Aは、半硬化状態である。
【0074】
次に、
図9(a)に示す工程では、絶縁層23の上面全面を被覆し、開口部30を充填する樹脂層24Aを形成する。樹脂層24Aとして樹脂フィルムを用いる場合には、絶縁層23の上面に樹脂フィルムをラミネートした後に、樹脂フィルムに対して上方から圧力を加える。これにより、開口部30の内壁面とチップキャパシタ40との間に樹脂層24Aが充填され、開口部30を充填する樹脂層24Aが形成される。なお、樹脂フィルムとしては、例えば、エポキシ系樹脂を主成分とする熱硬化性樹脂のフィルムを用いることができる。本工程後における樹脂層24A及び接着層50Aは、熱硬化されていない未硬化状態である。すなわち、本工程では、樹脂層24A及び接着層50Aが未硬化状態に維持される。例えば、本工程後の樹脂層24A及び接着層50Aは、半硬化状態である。未硬化状態の樹脂層24Aは、チップキャパシタ40の側面及び上面を被覆するように形成される。但し、未硬化状態の樹脂層24Aとチップキャパシタ40の側面及び上面との界面の密着性は低い。特に、未硬化状態の樹脂層24Aとキャパシタ本体41(誘電体層43)との界面の密着性は低い。なお、未硬化状態の接着層50Aは、金属層12Bの上面のみに広がって形成されている。すなわち、本工程の接着層50Aには、
図1(b)に示した被覆部52がまだ形成されておらず、金属層12Bの上面に広がる基部51のみが形成されている。
【0075】
続いて、
図9(b)に示す工程では、未硬化状態の樹脂層24A及び未硬化状態の接着層50Aに対して加熱処理を施し、それら樹脂層24A及び接着層50Aを硬化させる。本工程では、例えば、一定の昇温速度で樹脂層24A及び接着層50Aの硬化温度以上の温度(例えば、130℃~200℃程度)まで昇温し、その温度で熱処理して樹脂層24A及び接着層50Aを硬化させる。本加熱処理により、未硬化状態の接着層50Aが溶融して接着層50Aの粘度が下がり、チップキャパシタ40と樹脂層24Aとの界面に、チップキャパシタ40との密着性の高い接着層50Aが流動して、樹脂層24Aをかき分けて入り込む。本例では、未硬化状態の樹脂層24Aとキャパシタ本体41との界面の密着性が特に低い。このため、樹脂層24Aよりもキャパシタ本体41との密着性の高い接着層50Aが、キャパシタ本体41の側面に沿って流動して、樹脂層24Aをかき分けてキャパシタ本体41の側面と樹脂層24Aとの間に入り込む。これにより、接着層50Aの一部がキャパシタ本体41の側面に這い上がるように形成され、基部51の上面から上方に立ち上がってキャパシタ本体41の側面を被覆する被覆部52が形成される。このとき、接着層50Aのうち加熱処理によって粘度の下がった基材樹脂が主に、キャパシタ本体41の側面に流動して上方に這い上がる。換言すると、接着層50Aのうちフィラーは、キャパシタ本体41の側面に流動しにくい。このため、被覆部52におけるフィラーの含有率は、基部51におけるフィラーの含有率よりも低くなる。また、被覆部52におけるフィラーの含有率は、基部51から離れるほど低くなる。
【0076】
また、接着層50Aの最低溶融粘度は樹脂層24Aの最低溶融粘度よりも低く設定されている。これにより、接着層50Aの流動性が樹脂層24Aの流動性よりも高くなるため、樹脂層24Aとの密着性の低いキャパシタ本体41の側面に対して接着層50Aを好適に流動させることができる。この結果、キャパシタ本体41の側面を被覆する被覆部52を好適に形成できる。
【0077】
さらに、接着層50Aは、最低溶融粘度に達するときの温度が樹脂層24Aよりも低く設定されている。このため、本工程において、接着層50A及び樹脂層24Aを一定の昇温速度で加熱した場合には、樹脂層24Aよりも先に接着層50Aが最低溶融粘度に達し、樹脂層24Aよりも先に接着層50Aの流動性が高くなる。これにより、熱硬化により樹脂層24Aとキャパシタ本体41との間に密着力が発現する前に、キャパシタ本体41の側面に対して流動性の高くなった接着層50Aを好適に流動させることができる。この結果、キャパシタ本体41の側面を被覆する被覆部52を好適に形成できる。
【0078】
その後、加熱処理が進むと、キャパシタ本体41の側面を被覆する被覆部52が形成され、その被覆部52が樹脂層24Aで被覆された状態において、樹脂層24A及び接着層50Aが硬化される。これにより、チップキャパシタ40の下面及び側面を密着状態で被覆する接着層50と、接着層50から露出するチップキャパシタ40の表面を被覆するように開口部30を充填する絶縁層24とが形成される。このとき、チップキャパシタ40と接着層50との間に密着力が発現する。具体的には、基部51とチップキャパシタ40の下面との間に密着力が発現し、被覆部52とキャパシタ本体41の側面との間に密着力が発現する。また、接着層50と絶縁層24の側面との間に密着力が発現する。さらに、チップキャパシタ40と絶縁層24との間に密着力が発現する。具体的には、電極端子42(
図2参照)の上面及び側面と絶縁層24との間に密着力が発現する。これらチップキャパシタ40と接着層50との密着力、接着層50と絶縁層24との密着力、及びチップキャパシタ40と絶縁層24との密着力によって、チップキャパシタ40が開口部30内の所定の位置に固定される。
【0079】
なお、絶縁層24は、開口部30の内壁面を密着状態で被覆するとともに、絶縁層23の上面を密着状態で被覆するように形成される。本工程において、絶縁層23の上面がチップキャパシタ40の電極端子42の上面と同一平面上、又は電極端子42の上面よりも上方に形成されているため、絶縁層24の上面を平坦に形成することができる。
【0080】
続いて、
図10(a)及び
図10(b)に示す工程では、絶縁層23,24の所要箇所にそれら絶縁層23,24を厚さ方向に連続して貫通する貫通孔VH3を形成する。また、
図10(b)に示すように、絶縁層24の所要箇所にその絶縁層24を厚さ方向に貫通する貫通孔VH4を形成する。これら貫通孔VH3,VH4は、例えば、CO
2レーザやYAGレーザ等によるレーザ加工法によって形成することができる。次いで、例えばセミアディティブ法により、貫通孔VH3,VH4を充填するビア配線を形成するとともに、それらビア配線を介して配線層13又は電極端子42と電気的に接続される配線層14を絶縁層24の上面に形成する。
【0081】
次に、支持体80及びキャリア付金属箔81(キャリア層82及び金属箔83)を除去する。例えば、まず、キャリア層82及び支持体80を金属箔83から機械的に剥離する。このとき、キャリア層82と金属箔83との間には剥離層(図示略)が介在されているため、キャリア層82と金属箔83との間の接着力は弱い。このため、キャリア層82及び支持体80を金属箔83から容易に剥離することができる。続いて、金属箔83をエッチングにより除去する。このとき、配線層14の最表層がCu層である場合には、その配線層14が金属箔83と一緒にエッチングされることを防止するため、配線層14をマスクしてエッチング処理が行われる。本工程により、
図11(a)に示すように、配線層11の下面及び絶縁層21の下面が外部に露出される。
【0082】
次に、
図11(b)に示す工程では、絶縁層21の下面に、開口部61X,61Yを有するソルダーレジスト層61を積層するとともに、絶縁層24の上面に、開口部62Xを有するソルダーレジスト層62を積層する。これらソルダーレジスト層61,62は、例えば、感光性のソルダーレジストフィルムをラミネートし、又は液状のソルダーレジストを塗布し、当該レジストを所要の形状にパターニングすることにより形成することができる。これにより、開口部61Xから露出する配線層11がパッドP1となり、開口部61Yから露出する配線層11が接続パッドP2となり、開口部62Xから露出する配線層14が外部接続用パッドP3となる。なお、必要に応じて、パッドP1上、接続パッドP2上及び外部接続用パッドP3上に、例えば、Ni層とAu層をこの順番で積層した金属層を形成するようにしてもよい。金属層は、例えば、無電解めっき法により形成することができる。
【0083】
以上の製造工程により、
図1(a)に示した配線基板10を製造することができる。なお、配線基板10は、天地逆の状態で用いることができ、又は任意の角度で配置することができる。
【0084】
次に、本実施形態の作用効果を説明する。
(1)絶縁層22,23を厚さ方向に貫通する開口部30と、その開口部30の底面に接着層50を介して固定されたチップキャパシタ40と、開口部30を充填し、チップキャパシタ40を被覆する絶縁層24とを有する。接着層50は、チップキャパシタ40の下面を密着状態で被覆する基部51と、チップキャパシタ40の側面を密着状態で被覆する被覆部52とを有する。
【0085】
この構成によれば、接着層50がチップキャパシタ40の側面及び下面に接着される。これにより、接着層50がチップキャパシタ40の下面のみに接着される場合に比べて、チップキャパシタ40と接着層50との接着面積を大きくすることができるため、チップキャパシタ40と接着層50との接着強度を向上させることができる。この結果、開口部30内におけるチップキャパシタ40の固定強度を向上させることができる。これにより、開口部30内でチップキャパシタ40が回転したり平面方向に移動したりすることを好適に抑制できる。このため、チップキャパシタ40の電極端子42と貫通孔VH4に充填されたビア配線との電気的接続信頼性が低下することを好適に抑制できる。
【0086】
(2)被覆部52の側面を密着状態で被覆するように絶縁層24を形成した。これにより、被覆部52と絶縁層24との間に密着力を発現させることができ、被覆部52と接着層50との接着強度を向上させることができる。この結果、被覆部52の側面と開口部30の内壁面との間の空間に空気層が形成される場合に比べて、開口部30内におけるチップキャパシタ40の固定強度を向上させることができる。
【0087】
(3)ところで、被覆部52の側面と開口部30の内壁面との間の空間が空気層に形成されている場合、すなわち被覆部52の側面と開口部30の内壁面との間に絶縁層24が形成されていない場合には、次のような問題が生じやすい。すなわち、被覆部52の側面と開口部30の内壁面との間に空気層が形成されていると、チップキャパシタ40の熱膨張収縮の自由度が高くなるため、被覆部52とチップキャパシタ40との密着力が低下しやすくなる。このため、被覆部52とチップキャパシタ40との界面に剥離が生じやすくなるという問題がある。
【0088】
これに対し、本実施形態の配線基板10では、開口部30を充填するように絶縁層24を形成しているため、被覆部52の側面と開口部30の内壁面との間の空間が絶縁層24で充填されている。これにより、被覆部52の側面と開口部30の内壁面との間に空気層がほとんど存在しないため、チップキャパシタ40の熱膨張収縮の自由度が小さくなる。このため、被覆部52とチップキャパシタ40の側面との密着力が低下することを抑制でき、被覆部52とチップキャパシタ40との界面に剥離が生じることを抑制できる。
【0089】
(4)被覆部52が基部51の上面からチップキャパシタ40の側面に沿って這い上がった距離L1と、被覆部52の厚みが最大となる部分の厚みT1との比率L1/T1が5以上(好ましくは10以上)となるように被覆部52を形成した。これにより、被覆部52を、チップキャパシタ40の側面に沿って這い上がる高さを高く形成しつつも、厚みを薄く形成することができる。チップキャパシタ40の側面に沿って這い上がる被覆部52の高さを高く形成できると、チップキャパシタ40と被覆部52との接触面積を増大させることができる。このため、チップキャパシタ40と接着層50との接着強度を向上させることができ、チップキャパシタ40を強固に固定することができる。
【0090】
一方、接着層50は絶縁層24よりも剛性が低い。このため、接着層50の比率が高くなると、配線基板10全体の剛性低下につながる。これに対し、本実施形態では、被覆部52の厚みが薄く形成されている。これにより、被覆部52の這い上がり距離L1が長くなった場合であっても、接着層50の比率が高くなることを抑制できるため、配線基板10全体の剛性が低下することを抑制できる。このように、本実施形態では、被覆部52の這い上がり距離L1を長く確保することでチップキャパシタ40の固定強度を向上できるとともに、被覆部52の厚みを薄くすることで配線基板10全体の剛性低下を抑制できる。
【0091】
(5)被覆部52は、チップキャパシタ40のうち電極端子42から露出するキャパシタ本体41の側面を被覆するように形成されている。この構成によれば、絶縁層24との密着性が低くなるキャパシタ本体41の側面に対して、接着層50の被覆部52を密着させることができる。これにより、チップキャパシタ40の固定強度を好適に向上させることができる。
【0092】
(6)被覆部52は、キャパシタ本体41の側面全面を被覆するように形成されている。これにより、キャパシタ本体41の側面と接着層50との接着面積を大きくすることができるため、チップキャパシタ40と接着層50との接着強度を向上させることができる。この結果、チップキャパシタ40の固定強度を向上させることができる。
【0093】
(7)被覆部52を、基部51の上面側からチップキャパシタ40の上面側に向かうに連れて幅が狭くなる形状に形成した。この構成によれば、チップキャパシタ40の下部の側面を被覆する被覆部52の幅が広く形成される。これにより、チップキャパシタ40のうち動きやすい部分を被覆する被覆部52を厚く形成できるため、チップキャパシタ40が開口部30内で回転したり平面方向に移動したりすることを好適に抑制できる。
【0094】
(8)ところで、従来の配線基板の製造方法では、
図8(b)に示した工程に対応する工程、つまりキャビティの底面に接着層を介してチップキャパシタを載置する工程において、接着層を完全に硬化させて接着層とチップキャパシタとを接着させる。その後、キャビティを充填してチップキャパシタを被覆する充填絶縁層を形成する。すなわち、従来の配線基板の製造方法では、接着層を完全に硬化させた後に、充填絶縁層がキャビティに充填され、その充填絶縁層が硬化される。この場合には、充填絶縁層を硬化する際に、接着層がすでに完全に硬化された状態であるため、チップキャパシタの側面に接着層が流動することはない。このため、従来の製造方法で製造された配線基板では、チップキャパシタの側面を被覆する接着層は形成されない。この場合には、チップキャパシタの側面が充填絶縁層によって被覆される。但し、充填絶縁層は、チップキャパシタの電極端子以外の側面との密着性が低い。このため、チップキャパシタの電極端子以外の側面を被覆する充填絶縁層は、チップキャパシタの固定にほとんど寄与しない。したがって、従来の配線基板では、チップキャパシタの固定強度が弱くなりやすく、開口部内においてチップキャパシタが移動しやすくなる。
【0095】
これに対し、本実施形態の製造方法では、開口部30の底面に接着層50Aを介してチップキャパシタ40を仮固定した後に、接着層50Aを未硬化状態に維持した状態で開口部30に樹脂層24Aを充填するようにした。その後、未硬化状態の接着層50A及び未硬化状態の樹脂層24Aに対して加熱処理を施し、接着層50A及び樹脂層24Aを一緒に硬化させるようにした。この加熱処理により、未硬化状態の接着層50Aが溶融して接着層50Aの粘度が下がり、チップキャパシタ40と樹脂層24Aとの界面に、チップキャパシタ40との密着性の高い接着層50Aを流動させることができる。これにより、接着層50Aが、樹脂層24Aをかき分けて、密着性の低いチップキャパシタ40の側面と樹脂層24Aとの間に入り込み、接着層50Aの一部がチップキャパシタ40の側面に這い上がるように形成される。この結果、基部51の上面から上方に立ち上がってキャパシタ本体41の側面を被覆する被覆部52を形成することができる。これにより、チップキャパシタ40と接着層50との接着面積を大きくすることができるため、チップキャパシタ40と接着層50との接着強度を向上させることができる。この結果、チップキャパシタ40の固定強度を向上させることができるため、チップキャパシタ40の電極端子42と貫通孔VH4に充填されたビア配線との電気的接続信頼性が低下することを好適に抑制できる。
【0096】
(9)絶縁層21の上面に積層された絶縁層22,23を貫通する貫通孔22X,23Xにより、チップキャパシタ40を収容するキャビティを形成した。ここで、例えば絶縁層21の上面を薄化することによりキャビティを形成した場合には、そのキャビティに配置されたチップキャパシタ40と配線層11との間の絶縁層21が薄くなる。このため、チップキャパシタ40と配線層11との間の絶縁信頼性が低下するという問題がある。これに対し、本実施形態では、絶縁層21を薄化せずに、絶縁層22,23のみにキャビティを形成するようにした。これにより、チップキャパシタ40と配線層11との間の絶縁層21の厚さを十分に確保することができるため、チップキャパシタ40と配線層11との間の絶縁信頼性を向上させることができる。
【0097】
(10)絶縁層21の上面に金属層12Bを形成し、その金属層12Bの表面全面を被覆するように絶縁層22,23を形成した後に、レーザ加工法により絶縁層22,23に金属層12Bよりも一回り小さい貫通孔22X,23Xを形成した。このように金属層12Bが設けられた状態で貫通孔22X,23Xが形成されるため、レーザ加工により絶縁層21の上面が薄化されることを抑制できる。
【0098】
(11)絶縁層22,23の貫通孔22X,23Xが絶縁層23の上面側から絶縁層21側に向かうに連れて開口幅が小さくなるテーパ状に形成されている。このため、貫通孔22X,23X内に絶縁層24を形成する際に、絶縁層22,23とチップキャパシタ40との隙間への樹脂の充填性を向上させることができる。これにより、絶縁層24中へのボイドの巻き込みを好適に抑制することができる。
【0099】
(他の実施形態)
上記実施形態は、以下のように変更して実施することができる。上記実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0100】
・上記実施形態のおける配線基板10の構造は特に限定されない。例えば、配線基板10における配線層の層数や取り回し及び絶縁層の層数などは様々に変形・変更することができる。
【0101】
・例えば
図12に示すように、
図1(a)に示した配線層12Aを省略してもよい。この場合には、例えば、絶縁層21,22を厚さ方向に貫通して配線層11の上面の一部を露出する貫通孔VH5が形成されている。絶縁層22の上面に形成された配線層13は、貫通孔VH5に充填されたビア配線を介して配線層11と電気的に接続されている。配線層13は、例えば、貫通孔VH5に充填されたビア配線と一体に形成されている。
【0102】
・例えば、
図1(a)に示した配線基板10において、絶縁層23の上面に、配線層13と電気的に接続される配線層を形成するようにしてもよい。この場合の配線層14は、例えば、絶縁層24を厚さ方向に貫通するビア配線を介して、絶縁層23の上面に形成された配線層と電気的に接続される。
【0103】
・例えば、
図1(a)に示した配線層13を省略してもよい。この場合において、配線層14を、絶縁層22,23,24を厚さ方向に貫通するビア配線を介して配線層12Aと電気的に接続するようにしてもよい。
【0104】
・例えば、
図1(a)に示した金属層12Bを省略してもよい。この場合には、例えば、開口部30の底部に露出する絶縁層21の上面に、接着層50を介してチップキャパシタ40が固定される。すなわち、接着層50は、開口部30に露出する絶縁層21の上面に形成される。
【0105】
・上記実施形態の配線基板10において、配線層11、導体層12及び配線層13,14の上面及び側面を粗化面に形成してもよい。
・上記実施形態の配線基板10では、キャビティ形成用の絶縁層(第2絶縁層)を2層の絶縁層22,23で構成するようにした。これに限らず、キャビティ形成用の絶縁層を、1層の絶縁層で構成してもよいし、3層以上の絶縁層で構成してもよい。
【0106】
・上記実施形態の配線基板10において、キャビティ充填用の絶縁層24の上面に積層される配線層及び絶縁層の層数は特に限定されない。例えば、絶縁層24の上面に、配線層14と、その配線層14を被覆する絶縁層と、その絶縁層上に積層される配線層とを順に積層するようにしてもよい。
【0107】
・上記実施形態の配線基板10において、キャビティ形成用の絶縁層22の下面に積層される配線層及び絶縁層の層数は特に限定されない。例えば、絶縁層21の上面に、複数層の配線層と複数層の絶縁層とを順次積層した後に、キャビティ形成用の絶縁層22,23を積層するようにしてもよい。換言すると、上記実施形態では、1層の絶縁層21によって「第1絶縁層」を具体化したが、複数層の絶縁層によって「第1絶縁層」を具体化してもよい。
【0108】
・上記実施形態におけるソルダーレジスト層61を省略してもよい。
・上記実施形態におけるソルダーレジスト層62を省略してもよい。
・上記実施形態の配線基板10では、パッドP1が形成されている側の面をチップ搭載面とし、外部接続用パッドP3が形成されている側の面を外部接続端子面とした。これに限らず、例えば、パッドP1が形成されている側の面を外部接続端子面とし、外部接続用パッドP3が形成されている側の面をチップ搭載面としてもよい。
【0109】
・上記実施形態の配線基板10では、コアレス基板の形態を有する配線基板に具体化した。これに限らず、例えば、配線基板10を、コア基板を有するビルドアップ配線基板に具体化してもよい。
【0110】
・上記実施形態の配線基板10に内蔵するチップキャパシタ40の数は限定されない。例えば、複数のチップキャパシタ40を配線基板10に内蔵するようにしてもよい。この場合に、内蔵されるチップキャパシタ40と同じ数の開口部30を形成するようにしてもよいし、1つの開口部30に対して複数のチップキャパシタ40を配置するようにしてもよい。
【0111】
・上記実施形態では、2つの電極端子42を有するチップキャパシタ40を配線基板10に内蔵するようにした。これに限らず、例えば、3つ以上の電極端子42を有するキャパシタなどの電子部品を配線基板に内蔵するようにしてもよい。
【0112】
・上記実施形態では、配線基板10にチップキャパシタ40を内蔵したが、これに限定されない。例えば、チップキャパシタ40に代えて、チップ抵抗やチップインダクタ等のチップ部品や水晶振動子などの電子部品を内蔵するようにしてもよい。また、配線基板10に内蔵する電子部品は1種類に限らず、複数種類の電子部品を内蔵するようにしてもよい。
【0113】
・上記実施形態の配線基板10に内蔵する電子部品の構造は特に限定されない。例えば、電子部品は、本体部と、その本体部の表面に形成された電極端子とを有していれば、その他の構造は特に限定されない。例えば、本体部の上面のみに電極端子を有する構造であってもよい。例えば、本体部の上面及び下面のみに電極端子を有する構造であってもよい。すなわち、本体部の側面に電極端子が形成されていない構造であってもよい。
【0114】
・上記実施形態における半導体装置70の配線基板10に実装される半導体チップ71の数、その半導体チップ71の実装の形態(例えば、フリップチップ実装、ワイヤボンディングによる実装、又はこれらの組み合わせ)などは様々に変形・変更することが可能である。
【0115】
・上記実施形態では、主にビルドアップ工法により支持基板の片側(一方の面)に配線層及び絶縁層を積層し、最後に支持基板を除去してコアレスの配線基板を製造するようにした。これに限らず、例えば、支持基板の両側(一方の面及び他方の面)にキャリア付金属箔81を設け、主にビルドアップ工法により支持基板の両側(一方の面及び他方の面)に配線層及び絶縁層を積層し、最後に支持基板を除去して複数のコアレスの配線基板を製造するようにしてもよい。この場合には、支持基板の一方の面及び他方の面の何れにも、例えば
図5~
図11に示した工程と同様にチップ搭載面側から配線層及び絶縁層を順次積層し、最後に支持基板を除去する。
【0116】
・上記実施形態の配線基板10の製造方法では、支持体80とキャリア層82とからなる支持基板を使用した。これに限らず、例えば、キャリア層82を省略し、支持体80のみからなる支持基板を使用してもよい。
【0117】
・上記実施形態の配線基板10の製造方法において、金属箔83を省略してもよい。
・上記実施形態では、単数個取り(一個取り)の製造方法に具体化したが、多数個取りの製造方法に具体化してもよい。
【符号の説明】
【0118】
10 配線基板
11 配線層
12 導体層
12A 配線層
12B 金属層
13 配線層
14 配線層
21 絶縁層
22 絶縁層
22X 貫通孔
23 絶縁層
23X 貫通孔
24 絶縁層
24A 樹脂層
30 開口部
VH1~VH5 貫通孔
40 チップキャパシタ
41 キャパシタ本体
42 電極端子
43 誘電体層
44 内部電極
50 接着層
50A 接着層
51 基部
52 被覆部
61,62 ソルダーレジスト層
70 半導体装置
71 半導体チップ
L1 距離
T1 厚み