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特許7247115調節可能なポットライフを有する2成分ポリウレタン組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-17
(45)【発行日】2023-03-28
(54)【発明の名称】調節可能なポットライフを有する2成分ポリウレタン組成物
(51)【国際特許分類】
   C08G 18/38 20060101AFI20230320BHJP
   C08G 18/22 20060101ALI20230320BHJP
   C08G 18/28 20060101ALI20230320BHJP
   C08G 18/76 20060101ALI20230320BHJP
   C09J 175/04 20060101ALI20230320BHJP
【FI】
C08G18/38 055
C08G18/22
C08G18/28 090
C08G18/76 057
C09J175/04
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2019567727
(86)(22)【出願日】2018-06-29
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-08-27
(86)【国際出願番号】 EP2018067555
(87)【国際公開番号】W WO2019002538
(87)【国際公開日】2019-01-03
【審査請求日】2021-06-18
(31)【優先権主張番号】17179020.7
(32)【優先日】2017-06-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】506416400
【氏名又は名称】シーカ テクノロジー アクチェンゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100123593
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 宣夫
(74)【代理人】
【識別番号】100173107
【弁理士】
【氏名又は名称】胡田 尚則
(74)【代理人】
【識別番号】100116975
【弁理士】
【氏名又は名称】礒山 朝美
(72)【発明者】
【氏名】ウルス ブルクハルト
(72)【発明者】
【氏名】ミーケル シュルンプフ
(72)【発明者】
【氏名】アントニオ コーサロ
【審査官】古妻 泰一
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-308705(JP,A)
【文献】特開昭51-070299(JP,A)
【文献】特開平04-227620(JP,A)
【文献】特開2011-079893(JP,A)
【文献】特表平10-511727(JP,A)
【文献】特表2015-534590(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 18/38
C08G 18/22
C08G 18/28
C08G 18/76
C09J 175/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1及び第2の成分からなるポリウレタン組成物であって、
- 前記第1の成分Aは、
- 1.5~4の範囲のOH官能価及び250~15000g/モルの範囲の平均分子量(数平均)Mを有する少なくとも1つのポリオールA1と、
- C2~C9炭素鎖を介して連結される2つのヒドロキシル基を有する少なくとも1つのジオールA2と、
- 少なくとも1つのチオール基を有する少なくとも1つの化合物Tと
を含み、且つ
- 前記第2の成分Bは、
- 少なくとも1つのポリイソシアネートI
を含み、
前記2つの成分の1つは、チオ錯体を形成することが可能であるヒドロキシル基とイソシアネート基との反応のための少なくとも1つの金属触媒Kを追加的に含み、且つ
前記金属触媒Kは、ビスマス(III)化合物を含み、且つ
前記第2の成分は、前記ポリウレタン組成物全体に基づいて少なくとも7.5重量%のイソシアネート基を含むために十分なポリイソシアネートIを含有し、且つ
前記少なくとも1つの化合物T中の全チオール基対前記少なくとも1つの金属触媒K中の全金属原子のモル比は、1:1~250:1である、ポリウレタン組成物。
【請求項2】
前記金属触媒Kは、カルボン酸ビスマス(III)を含むことを特徴とする、請求項1に記載のポリウレタン組成物。
【請求項3】
前記ビスマス(III)化合物は、8-ヒドロキシキノリン配位子又は1,3-ケトアミド配位子を追加的に含有することを特徴とする、請求項1又は2に記載のポリウレタン組成物。
【請求項4】
前記ジオールA2は、C4~C9炭素鎖を介して連結される2つの一級ヒドロキシル基を有する直鎖脂肪族ジオールであることを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載のポリウレタン組成物。
【請求項5】
前記少なくとも1つの化合物Tは、2~6つのチオール基を有するポリチオール化合物又はメルカプトシランを含むことを特徴とする、請求項1~4のいずれか一項に記載のポリウレタン組成物。
【請求項6】
前記少なくとも1つの化合物Tは、エチレングリコールビス(3-メルカプトプロピオネート)、エチレングリコールジメルカプトアセテート、ジペンタエリトリトールヘキサキス(3-メルカプトプロピオネート)及び3-メルカプトプロピルトリメトキシシランからなる群から選択されることを特徴とする、請求項5に記載のポリウレタン組成物。
【請求項7】
前記少なくとも1つの化合物T中の全チオール基対前記少なくとも1つの金属触媒K中の全金属原子の前記モル比は、5:1~100:1であることを特徴とする、請求項1~6のいずれか一項に記載のポリウレタン組成物。
【請求項8】
前記金属触媒Kは、前記第1の成分A中に存在することを特徴とする、請求項1~7のいずれか一項に記載のポリウレタン組成物。
【請求項9】
前記ポリオールA1は、ポリエーテルポリオールを含むことを特徴とする、請求項1~8のいずれか一項に記載のポリウレタン組成物。
【請求項10】
前記ポリイソシアネートIは、室温で液体であるジフェニルメタン4,4’-、2,4’-若しくは2,2’-ジイソシアナート、これらの異性体の混合物、これらの異性体のポリマー、オリゴマー若しくは誘導体、及びそれらの混合物からなる群から選択されることを特徴とする、請求項1~9のいずれか一項に記載のポリウレタン組成物。
【請求項11】
前記第2の成分Bは、イソシアネート基を含有するポリウレタンポリマーを含むことを特徴とする、請求項1~10のいずれか一項に記載のポリウレタン組成物。
【請求項12】
前記組成物全体に基づいて0.5重量%未満のカルボン酸を含むことを特徴とする、請求項1~11のいずれか一項に記載のポリウレタン組成物。
【請求項13】
以下の工程を含む、第1の基材を第2の基材に結合する方法:
- 請求項1~12のいずれか一項に記載のポリウレタン組成物の第1及び第2の成分を混合すること、
- 前記混合されたポリウレタン組成物を、結合する基材表面の少なくとも1つに適用すること、
- 前記結合する基材をオープン時間内に接合すること、
- 前記ポリウレタン組成物を硬化させること。
【請求項14】
請求項13に記載の結合方法から得られる物品。
【請求項15】
2つの基材を結合するための構造用接着剤又は複合材料中の母材としての、請求項1~12のいずれか一項に記載のポリウレタン組成物の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2成分ポリウレタン組成物の分野及び特に接着剤又は複合材料中の母材としてのその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリオール及びポリイソシアネートをベースとする2成分ポリウレタン組成物は、以前からすでに使用されている。2成分ポリウレタン組成物は、それらが混合後に急速に硬化し、したがって短期間後により高い力を吸収及び伝達することができるという、1成分組成物を上回る利点を有する。構造用接着剤又は複合材料中の母材(結合剤)としての使用に関して、そのような接着剤は、耐荷構造の要素であるため、そのような組成物は、強度及び接着力に関する高い要求を満たさなければならない。特に、そのような組成物は、硬化時、低い伸び値並びに高い引張強度及び引張せん断強度を有しながら、高い弾性率などの良好な機械的特性を有する必要があるが、同時に脆性であってはならない。さらに、例えば工業的製造において、スループット時間を減少させるために、そのような組成物が可能な限り急速に硬化することが望ましい。
【0003】
所望の機械的特性、特に急速な硬化を達成するために、そのような組成物は、2つの成分の1つにおいて遊離又はポリマー結合ポリイソシアネートの形態で存在し、且つポリオールを含有する他の成分との混合後に硬化してポリマーネットワークを形成するイソシアネートを高い割合で含有することが有利である。しかしながら、イソシアネートの高い含有量は、問題を導く。特に選択的な最適な架橋及び硬化のために必須である架橋触媒の使用により、そのような2成分系は、ほぼ制御不可能なほどに急速となり、例えば構造用接着剤としての使用のためにポットライフが短くなりすぎる。複合材料中の結合剤としての使用に関して、ポットライフは、繊維が母材中で均質に包埋されることが可能となるように十分長くなる必要がある。
【0004】
2成分ポリウレタン組成物の使用に関して、十分に長いポットライフを、その後の非常に急速な硬化及び極めて急速な固化と組み合わせることができることが一般に望ましい。しかしながら、これは、既存の2成分組成物では達成不可能である。ポットライフは、急速に硬化及び固化する組成物の場合に非常に短いか、又は長いポットライフを有する組成物を加工する場合に硬化及び固化が遅いかのいずれかである。
【0005】
したがって、構造用結合剤又は複合材料中での使用時、優れた機械的特性及び接着特性を有し、且つ適用後に非常に急速に硬化し、例えば数時間~数日間の最短の可能な時間内で強度及び弾性を示す2成分ポリウレタン組成物が望ましい。しかしながら、それらは、比較的大きい構造又は製造部品の加工も可能にする十分に長いポットライフを有する必要もある。そのような組成物のポットライフが所望の使用に対して調整可能であることも追加的に望ましいであろう。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、本発明の目的は、構造用接着剤又は複合材料用の母材として適切な機械的に優れた物質を形成するために非常に急速に硬化するが、同時に問題なくそれが加工されることを可能にするように特定の限度内で調節可能である十分長いポットライフを有する2成分ポリウレタン組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この目的は、驚くべきことに、請求項1に記載の本発明によるポリウレタン組成物によって達成される。この組成物は、第1の成分中のポリオール、短鎖ジオール及び少なくとも1つのチオール基を有する化合物と、第2の成分中の高含有量のポリイソシアネートとを含む。組成物の硬化のため、この組成物は、組成物中のチオール基対金属原子の比率が固定された状態でチオ錯体を形成することが可能である金属触媒をさらに含有する。組成物は、硬化時に非常に高い強度及び良好な弾性を有する。成分の混合後及び特定の限度内で調節可能である十分長いポットライフ後、それは、短時間後、例えば数時間~1日後に非常に急速に硬化し、非常に良好な機械的値を達成する。
【0008】
本発明のさらなる態様は、さらなる独立請求項の主題である。特に、本発明の好ましい実施形態は、従属請求項の主題である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明は、第1及び第2の成分からなるポリウレタン組成物であって、
- 第1の成分Aは、
- 1.5~4の範囲のOH官能価及び250~15000g/モルの範囲の平均分子量を有する少なくとも1つのポリオールA1と、
- C2~C9炭素鎖を介して連結される2つのヒドロキシル基を有する少なくとも1つのジオールA2と、
- 少なくとも1つのチオール基を有する少なくとも1つの化合物Tと
を含み、且つ
- 第2の成分Bは、
-少なくとも1つのポリイソシアネートI
を含み、
2つの成分の1つは、チオ錯体を形成することが可能であるヒドロキシル基とイソシアネート基との反応のための少なくとも1つの金属触媒Kを追加的に含み、且つ
第2の成分は、ポリウレタン組成物全体に基づいて少なくとも5重量%のイソシアネート基を含むために十分なポリイソシアネートIを含有し、且つ
少なくとも1つの化合物T中の全チオール基対少なくとも1つの金属触媒K中の全金属原子のモル比は、1:1~250:1である、ポリウレタン組成物に関する。
【0010】
「ポリオール」、「ポリイソシアネート」、「ポリエーテル」又は「ポリアミン」などの物質名の接頭辞「ポリ」は、本明細書では、それぞれの物質が、1分子あたりその名称に存在する官能基の2個以上を正式に含有することを示す。
【0011】
本明細書では、「ポリマー」という用語は、第1に、化学的に均一であるが、重合度、モル質量及び鎖長が異なる巨大分子の群であって、「ポリ」反応(重合、付加重合、縮合重合)によって製造される群を包含する。この用語は、第2に、そのようなポリ反応からの巨大分子の群の誘導体、すなわち定義された巨大分子上の官能基の反応、例えば付加又は置換によって得られ、且つ化学的に均一であるか又は化学的に不均一であり得る化合物も包含する。この用語は、いわゆるプレポリマー、すなわちその官能基が巨大分子の構成に関与する反応性の初期オリゴマー付加物をさらに包含する。
【0012】
「ポリウレタンポリマー」という用語は、いわゆるジイソシアネート重付加プロセスによって製造される全てのポリマーを包含する。これは、実質的に又は完全にウレタン基を含まないポリマーも含む。ポリウレタンポリマーの例は、ポリエーテルポリウレタン、ポリエステルポリウレタン、ポリエーテルポリウレア、ポリウレア、ポリエステルポリウレア、ポリイソシアヌレート及びポリカルボジイミドである。
【0013】
本明細書では、「分子量」は、分子又は分子残基の(1モルあたりのグラムでの)モル質量を意味するものとして理解される。「平均分子量」は、基準としてのポリスチレンに対して典型的にゲル-透過クロマトグラフィー(GPC)によって決定されるオリゴマー若しくはポリマー分子又は分子残基の多分散混合物の数平均Mを指す。本明細書では、「室温」は、23℃の温度を指す。重量%として省略される重量パーセント値は、他に指定されない限り、組成物全体に基づく組成物中の成分の質量による割合を指す。「質量」及び「重量」という用語は、本明細書では同じ意味で使用される。
【0014】
「一級ヒドロキシル基」は、2つの水素を有する炭素原子に結合したOH基を意味する。
【0015】
本明細書では、「ポットライフ」は、2つの成分を混合した後、架橋反応の進行に起因して粘度がさらなる加工のために高くなりすぎる前の、ポリウレタン組成物を加工可能である時間を示す。
【0016】
本明細書では、「強度」という用語は、硬化組成物の強度を意味し、強度は、特に0.05%~0.25%の伸びの領域で特に引張強度及び弾性率を意味する。
【0017】
本明細書では、「室温」は、23℃の温度を意味する。
【0018】
物質又は組成物は、それが室温において適切な容器中で長期間、典型的に少なくとも3カ月~最大6カ月以上まで貯蔵可能であり、この貯蔵により、その使用に関連する範囲までその適用又は使用特性、特に粘度及び架橋レートのいずれかの変化をもたらさない場合、「貯蔵安定性」又は「貯蔵可能」であるとして記載される。
【0019】
本明細書に記載される全ての工業規格及び標準は、最初の出願日において有効であったバージョンに関する。
【0020】
第1の成分Aは、第1に、1.5~4の範囲のOH官能価及び250~15000g/モルの範囲の平均分子量を有する少なくとも1つのポリオールA1を含む。
【0021】
適切なポリオールA1は、原則として、現在ポリウレタンポリマーの製造において使用される全てのポリオールである。ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリ(メタ)アクリレートポリオール、ポリブタジエンポリオール、ポリカーボネートポリオール及びまたこれらのポリオールの混合物が特に適切である。
【0022】
ポリオキシアルキレンポリオール又はオリゴエーテロールとしても知られる適切なポリエーテルポリオールは、特に、エチレンオキシド、1,2-プロピレンオキシド、1,2-若しくは2,3-ブチレンオキシド、オキセタン、テトラヒドロフラン又はその混合物の重合生成物であって、任意選択的に、水、アンモニア又は複数のOH若しくはNH基を有する化合物、例えば1,2-エタンジオール、1,2-及び1,3-プロパンジオール、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、異性体ジプロピレングリコール及びトリプロピレングリコール、異性体ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、ヘプタンジオール、オクタンジオール、ノナンジオール、デカンジオール、ウンデカンジオール、1,3-及び1,4-シクロヘキサンジメタノール、ビスフェノールA、水素化ビスフェノールA、1,1,1-トリメチロールエタン、1,1,1-トリメチロールプロパン、グリセロール、アニリン並びに上記化合物の混合物などの2つ以上の活性水素原子を有する開始分子を用いて重合されたものである。例えば、いわゆる二重金属シアニド錯体触媒(DMC触媒)を使用して製造される(ASTM D-2849-69に従って測定され、且つポリオール1グラムあたりの不飽和のミリ当量(mEq/g)で表される)低い不飽和度を有するポリオキシアルキレンリオールと、例えばNaOH、KOH、CsOH又はアルカリ金属アルコキシドなどのアニオン性触媒を使用して製造される比較的高い不飽和度を有するポリオキシアルキレンポリオールとの両方が利用可能である。
【0023】
ポリオキシエチレンポリオール及びポリオキシプロピレンポリオール、特にポリオキシエチレンジオール、ポリオキシプロピレンジオール、ポリオキシエチレントリオール及びポリオキシプロピレントリオールが特に適切である。
【0024】
0.02mEq/g未満の不飽和度を有し、且つ1000~15000g/モルの範囲の分子量を有するポリオキシアルキレンジオール又はポリオキシアルキレントリオールが特に適切であり、400~15000g/モルの分子量を有するポリオキシエチレンジオール、ポリオキシエチレントリオール、ポリオキシプロピレンジオール及びポリオキシプロピレントリオールである。
【0025】
いわゆるエチレンオキシド末端(EO-エンドキャップ/エチレンオキシド-エンドキャップ)ポリオキシプロピレンポリオールも特に適切である。後者は、例えば、純粋なポリオキシプロピレンポリオール、特にポリオキシプロピレンジオール及びトリオールが、ポリプロポキシル化反応の完了後、エチレンオキシドによってさらにアルコキシル化されて、したがって一級ヒドロキシル基を有する場合に入手される特別なポリオキシプロピレンポリオキシエチレンポリオールである。この場合、ポリオキシプロピレンポリオキシエチレンジオール及びポリオキシプロピレンポリオキシエチレントリオールが好ましい。
【0026】
ヒドロキシル末端ポリブタジエンポリオール、例えば1,3-ブタジエン及びアリルアルコールの重合又はポリブタジエンの酸化によって製造されるもの並びにその水素化生成物も適切である。
【0027】
Elastogran GmbH,Germanyから商品名Lupranol(登録商標)で商業的に入手可能なものなどのスチレン-アクリロニトリルグラフト化ポリエーテルポリオールも適切である。
【0028】
適切なポリエステルポリオールとしては、特に少なくとも2つのヒドロキシル基を有し、且つ周知のプロセス、特にヒドロキシカルボン酸の重縮合或いは脂肪族及び/又は芳香族ポリカルボン酸と二価若しくは多価アルコールとの重縮合によって製造されるポリエステルが含まれる。
【0029】
1,2-エタンジオール、ジエチレングリコール、1,2-プロパンジオール、ジプロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、グリセロール、1,1,1-トリメチロールプロパン又は上記アルコールの混合物などの二価~三価アルコールと、有機ジカルボキシル酸又はその無水物若しくはエステル、例えばコハク酸、グルタル酸、アジピン酸、トリメチルアジピン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸、マレイン酸、フマル酸、二量体脂肪酸、フタル酸、無水フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、テレフタル酸ジメチル、ヘキサヒドロフタル酸、トリメリト酸及び無水トリメリト酸又は上記酸の混合物とから製造されたポリエステルポリオールがより適切であり、ε-カプロラクトンなどのラクトンから形成されたポリエステルポリオールである。
【0030】
ポリエステルジオール、特にジカルボン酸としてのアジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸、二量体脂肪酸、フタル酸、イソフタル酸及びテレフタル酸又はε-カプロラクトンなどのラクトンから、及び二価アルコールとしてのエチレングリコール、ジエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、二量体脂肪酸ジオール及び1,4-シクロヘキサンジメタノールから製造されたものが特に適切である。
【0031】
適切なポリカーボネートポリオールとしては、特に、例えばポリエステルポリオールを構成するために使用される上記アルコールと、炭酸ジメチルなどの炭酸ジアルキル、炭酸ジフェニルなどの炭酸ジアリール又はホスゲンとの反応によって入手可能なものが含まれる。COと、エチレンオキシド及びプロピレンオキシドなどのエポキシドとの共重合から入手可能なポリカーボネートも適切である。ポリカーボネートジオール、特に非晶質ポリカーボネートジオールが特に適切である。
【0032】
さらなる適切なポリオールは、ポリ(メタ)アクリレートポリオールである。
【0033】
ポリヒドロキシ官能性油脂、例えば天然油脂、特にヒマシ油又はいわゆる天然油脂の化学変性によって得られるオレオケミカルポリオール、例えば不飽和油のエポキシ化と、それに続くそれぞれカルボン酸又はアルコールによる開環によって得られるエポキシポリエステル又はエポキシポリエーテル或いは不飽和油のヒドロホルミル化及び水素化によって得られるポリオールも適切である。加アルコール分解又はオゾン分解などの分解プロセスによって天然油脂から得られるポリオール及びそのようにして得られる分解生成物又はその誘導体のその後の化学架橋、例えばエステル交換又は二量体化によって得られるポリオールも適切である。天然油脂の適切な分解生成物は、特に脂肪酸及び脂肪アルコール及び脂肪酸エステル、特にメチルエステル(FAME)であり、これは、例えば、ヒドロホルミル化及び水素化によってヒドロキシ脂肪酸エステルに誘導されることが可能である。
【0034】
加えて、オリゴヒドロカルボノールとも記載される多炭化水素ポリオール、例えばポリヒドロキシ官能性エチレン-プロピレン、エチレン-ブチレン又はエチレン-プロピレン-ジエンコポリマー、例えばKraton Polymers,USAによって製造されるもの或いは1,3-ブタンジエン若しくはジエン混合物などのジエン及びスチレン、アクリロニトリル若しくはイソブチレンなどのビニルモノマーのポリヒドロキシ官能性コポリマー又はポリヒドロキシ官能性ポリブタジエンポリオール、例えば1,3-ブタジエン及びアリルアルコールの共重合によって製造され、且つ水素化され得るものも同様に適切である。
【0035】
Emerald Performance Materials,LLC,USAからHypro(登録商標)(以前はHycar(登録商標))CTBNの名称で商業的に入手可能である、エポキシド又はアミノアルコール及びカルボキシル末端アクリロニトリル/ブタジエンコポリマーから製造可能であるものなどのポリヒドロキシ官能性アクリロニトリル/ブタジエンコポリマーも適切である。
【0036】
全ての列挙されたポリオールは、250~15000g/モル、好ましくは400~10000g/モル、より好ましくは1000~8000g/モルの平均分子量及び1.5~4、好ましくは1.7~3の範囲の平均OH官能価を有する。しかしながら、組成物がモノオール(1つのみのヒドロキシル基を有するポリマー)の割合を含むことも完全に可能である。
【0037】
特に適切ポリオールは、ポリエステルポリオール及びポリエーテルポリオール、特にポリオキシエチレンポリオール、ポリオキシプロピレンポリオール及びポリオキシプロピレンポリオキシエチレンポリオール、好ましくはポリオキシエチレンジオール、ポリオキシプロピレンジオール、ポリオキシエチレントリオール、ポリオキシプロピレントリオール、ポリオキシプロピレンポリオキシエチレンジオール及びポリオキシプロピレンポリオキシエチレントリオールである。
【0038】
第1の成分Aは、C2~C9炭素鎖を介して連結される2つのヒドロキシル基を有する少なくとも1種のジオールA2をさらに含む。
【0039】
2つの一級又は二級ヒドロキシル基を有する直鎖又は分枝鎖アルキレンジオール、1つの一級及び1つの二級ヒドロキシル基を有するアルキレンジオール並びに脂環式ジオールがジオールA2として適切である。
【0040】
ジオールA2は、好ましくは、C4~C9炭素鎖を介して連結される2つの一級ヒドロキシル基を有する直鎖脂肪族ジオールである。そのようなジオールは、特に構造用接着剤のために有利な低い伸び、例えば0~5%の領域において特に高い弾性率を有するポリウレタンをもたらすという長所を有する。
【0041】
特に、ジオールA2は、エチレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,7-ヘプタンジオール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、1,3-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、2メチル-1,3-プロパンジオール、1,2-ペンタンジオール、2,4-ペンタンジオール、2メチル-1,4-ブタンジオール、2,2-ジメチル-1,3-プロパンジオール(ネオペンチルグリコール)、1,2-ヘキサンジオール、1,4-ブタンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、1,2-オクタンジオール、3,6-オクタンジオール、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオール、2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオール、2,7-ジメチル-3,6-オクタンジオール、1,4-シクロヘキサンジオール、1,3-シクロヘキサンジメタノール及び1,4-シクロヘキサンジメタノールからなる群から選択される。
【0042】
ジオールA2は、より好ましくは、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,7-ヘプタンジオール、1,8-オクタンジオール及び1,9-ノナンジオールからなる群から選択される。
【0043】
ジオールA2は、最も好ましくは、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール及び1,9-ノナンジオールからなる群から選択される。これらのジオールは、商業的に容易に入手可能であり、且つ硬化時に低い伸びで特に高い弾性率を有するポリウレタンを提供する。
【0044】
第1の成分Aは、好ましくは、5~25重量%、より好ましくは10~15重量%のジオールA2を含む。
【0045】
これらの上記されたポリオールA1及びA2に加えて、少量のさらなる低分子量の二価又は多価アルコール、例えばジエチレングリコール、トリエチレングリコール、異性体ジプロピレングリコール及びトリプロピレングリコール、異性体デカンジオール及びウンデカンジオール、水素化ビスフェノールA、二量体脂肪アルコール、1,1,1-トリメチロールエタン、1,1,1-トリメチロールプロパン、グリセロール、ペンタエリトリトール、糖アルコール、例えばキシリトール、ソルビトール又はマンニトール、糖、例えばスクロース、他のより高い多価アルコール、上記二価及び多価アルコールの低分子量のアルコキシル化生成物並びに上記アルコールの混合物を導入することが可能である。加えて、他のヘテロ原子を含有するポリオール、例えばメチルジエタノールアミン又はチオジグリコールも含まれ得る。
【0046】
第1の成分Aは、少なくとも1つのチオール基を有する少なくとも1つの化合物Tをさらに含む。少なくとも1つのチオール/メルカプト基を有し、且つ本発明に従って組成物中に配合され得る全ての化合物が適切である。チオール基は、本明細書では、有機基、例えば脂肪族、脂環式又は芳香族炭素ラジカルに結合した-SH基を意味するものとして理解される。
【0047】
1~6、より好ましくは1~4、最も好ましくは1又は2つのチオール基を有する化合物が好ましい。チオール基を有する化合物は、それらが不完全に溶解性である傾向がある金属触媒Kとの複合体を形成せず、且つポットライフを特に正確に調節することができるという利点を有する。2つのチオール基を有する化合物は、硬化後に組成物の機械的特性が改善されるという利点を有する。
【0048】
チオール基を有する適切な化合物Tの例は、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3-メルカプト-1,2-プロパンジオール、2-メルカプトトルイミダゾール又は2-メルカプトベンゾチアゾールである。
【0049】
2つ以上のチオール基を有する適切な化合物Tの例は、エチレングリコールビス(3-メルカプトプロピオネート)、エチレングリコールジメルカプトアセテート、ジペンタエリトリトールヘキサキス(3-メルカプトプロピオネート)、2,3-ジメルカプト-1,3,4-チアジアゾール又はペンタエリトリトールテトラキス(3-メルカプトプロピオネート)である。
【0050】
化合物Tは、好ましくは、エチレングリコールビス(3-メルカプトプロピオネート)、エチレングリコールジメルカプトアセテート、ジペンタエリトリトールヘキサキス(3-メルカプトプロピオネート)及び3-メルカプトプロピルトリメトキシシランからなる群から選択される。
【0051】
少なくとも1つの化合物T中の全チオール基対少なくとも1つの金属触媒K中の全金属原子のモル比は、1:1~250:1でなければならない。好ましくは、2:1~150:1であり、より好ましくは5:1~100:1である。この量的比率により、ポットライフは、特に特定の組成物の本質的な限度内において、例えば触媒の含有量、存在するイソシアネートの反応性及びその量によって調節されることが可能となる。ポットライフの下限は、化合物Tを添加せずに触媒の定義された量を使用する場合に所与の組成物において得られるポットライフである。構造用接着剤又は複合材料母材としての本発明による使用のために適切な多くの状況において、及び触媒の存在下であるが、化合物Tの不在下における多数のイソシアネート基の結果として、有効なポットライフは、達成されず、組成物は、2つの成分の混合のほぼ直後に硬化し始める。
【0052】
したがって、調節可能なポットライフの上限は、触媒が使用されない場合、未触媒のイソシアネート-ヒドロキシル反応によって達成されるであろうポットライフである。触媒の使用がない場合でも、この反応は、2つの成分の混合後のいくつかの時点で開始するであろう。しかしながら、触媒のない反応は、よりゆっくりと進行し、硬化された材料の機械的特性の発達がより乏しい。
【0053】
本発明による2成分ポリウレタン組成物によって達成される重要な利点は、使用者に好ましい様式で進行することが可能となるように十分長いポットライフを有しながらも、同時に極めて急速に硬化及び固化する系である。これは、例えば、構造の結合が比較的大きい基材においても実行され得、これは、接着剤適用の非常に短時間後に機械的応力を受けることが可能であることを意味する。これにより、例えば工業生産においてスループット時間の有意な短縮がもたらされる。本発明によるポリウレタン組成物のさらなる利点は、上記のようにポットライフを調節することが可能となる可能性である。これは、特に自動化された用途において非常に有利であり、例えば所望の使用に対してポットライフを調整することができるため、工業生産におけるスループット時間のさらなる最適化が可能となる。
【0054】
第2の成分Bは、第1に、少なくとも1つのポリイソシアネートIを含む。
【0055】
ポリイソシアネートIは、比較的高い量で存在しており、これは、構造用接着剤又は複合材料の母材としての使用のために十分良好である機械的特性の発達に関して非常に有利である。
【0056】
第2の成分は、それがポリウレタン組成物全体に基づいて少なくとも5重量%、好ましくは少なくとも6重量%、より好ましくは少なくとも7.5重量%のイソシアネート基を含むために十分なポリイソシアネートIを含有する。
【0057】
ポリウレタン製造のために適切である全ての商業的に入手可能なポリイソシアネート、特にジイソシアネートは、本発明による組成物中のポリウレタンポリマーの製造のためのポリイソシアネートIとして使用され得る。
【0058】
適切なポリイソシアネートは、特にモノマージ-又はトリイソシアネート並びにモノマージ-又はトリイソシアネートのオリゴマー、ポリマー及び誘導体並びにそのいずれかの混合物である。
【0059】
適切な芳香族モノマージ-又はトリイソシアネートは、特にトリレン2,4-及び2,6-ジイソシアネート並びにこれらの異性体のいずれかの混合物(TDI)、ジフェニルメタン-4,4’-、2,4’-及び2,2’-ジイソシアネート及びこれらの異性体のいずれかの混合物(MDI)、MDI及びMDI同族体の混合物(ポリマーMDI又はPMDI)、1,3-及び1,4-フェニレンジイソシアネート、2,3,5,6-テトラメチル-1,4-ジイソシアナトベンゼン、ナフタレン1,5-ジイソシアネート(NDI)、3,3’-ジメチル-4,4’-ジイソシアナトジフェニル(TODI)、ジアニシジンジイソシアネート(DADI)、1,3,5-トリス(イソシアナトメチル)ベンゼン、トリス(4-イソシアナトフェニル)メタン並びにトリス(4-イソシアナトフェニル)チオホスフェートである。
【0060】
適切な脂肪族モノマージ-又はトリイソシアネートは、特にテトラメチレン1,4-ジイソシアネート、2-メチルペンタメチレン-1,5-ジイソシアネート、ヘキサメチレン-1,6-ジイソシアネート(HDI)、2,2,4-及び2,4,4-トリメチルヘキサメチレン1,6-ジイソシアネート(TMDI)、デカメチレン1,10-ジイソシアネート、ドデカメチレン1,12-ジイソシアネート、リシンジイソシアネート及びリシンエステルジイソシアネート、シクロヘキサン1,3-及び1,4-ジイソシアネート、1-メチル-2,4-及び-2,6-ジイソシアナトシクロヘキサン並びにこれらの異性体のいずれかの混合物(HTDI又はHTDI)、1-イソシアナト-3,3,5-トリメチル-5-イソシアナトメチルシクロヘキサン(=イソホロンジイソシアネート又はIPDI)、ペルヒドロジフェニルメタン2,4’-及び4,4’-ジイソシアネート(HMDI又はH12MDI)、1,4-ジイソシアナート-2,2,6-トリメチルシクロヘキサン(TMCDI)、1,3-及び1,4-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、m-及びp-キシリレンジイソシアネート(m-及びp-XDI)、m-及びp-テトラメチルキシリレン1,3-及び1,4-ジイソシアネート(m-及びp-TMXDI)並びにビス(1-イソシアナト-1-メチルエチル)ナフタレン、二量体及び三量体脂肪酸イソシアネート、例えば3,6-ビス(9-イソシアナトノニル)-4,5-ジ(1-ヘプテニル)シクロヘキセン(ジメチルジイソシアネート)及びα,α,α’,α’,α’’,α’’-ヘキサメチル-1,3,5-メシチレントリイソシアネートである。
【0061】
これらの中で好ましいものは、MDI、TDI、HDI及びIPDIである。
【0062】
列挙されたモノマージ-及びトリイソシアネートの適切なオリゴマー、ポリマー及び誘導体は、特にMDI、TDI、HDI及びIPDIから誘導されたものである。これらの中で特に適切であるものは、商業的に入手可能な種類、特にDesmodur(登録商標)N100及びN3200(Covestroから)、Tolonate(登録商標)HDB及びHDB-LV(Vencorexから)並びにDuranate(登録商標)24A-100(Asahi Kaseiから)などのHDIビウレット;Desmodur(登録商標)N3300、N3600及びN3790BA(全てCovestroから)、Tolonate(登録商標)HDT、HDT-LV及びHDT-LV2(Vencorexから)、Duranate(登録商標)TPA-100及びTHA-100(Asahi Kaseiから)並びにCoronate(登録商標)HX(Nippon Polyurethaneから)などのHDIイソシアヌレート;Desmodur(登録商標)N3400(Covestroから)などのHDIウレトジオン;Desmodur(登録商標)XP2410(Covestroから)などのHDIイミノオキサジアジンジオン;Desmodur(登録商標)VP LS2102(Covestroから)などのHDIアロファネート;例えば、溶液でのDesmodur(登録商標)Z4470(Covestroから)又は固体形態でのVestanat(登録商標)T1890/100(Evonikから)IPDIイソシアヌレート;Desmodur(登録商標)IL(Covestroから)などのTDIオリゴマー;並びに例えばDesmodur(登録商標)HL(Covestroから)などのTDI/HDIをベースとする混合イソシアヌレートである。Desmodur(登録商標)CD、Desmodur(登録商標)PF、Desmodur(登録商標)PC(全てCovestroから)又はIsonate(登録商標)M143(Dowから)などの商品名で既知のMDIと、特にMDIカルボジイミド又はMDIウレトンイミン又はMDIウレタンなどのMDI誘導体との混合物並びにDesmodur(登録商標)VL、Desmodur(登録商標)VL50、Desmodur(登録商標)VL R10、Desmodur(登録商標)VL R20、Desmodur(登録商標)VH 20N及びDesmodur(登録商標)VKS 20F(全てCovestroから)、Isonate(登録商標)M309、Voranate(登録商標)M229及びVoranate(登録商標)M580(全てDowから)又はLupranat(登録商標)M10R(BASFから)などの商品名で入手可能なMDIとMDI同族体(ポリマーMDI若しくはPMDI)の混合物である、室温で液体であるMDI形態(いわゆる「変性MDI」)も特に適切である。上記オリゴマーポリイソシアネートは、実際には、典型的に異なる重合度のオリゴマー化及び/又は化学構造を有する物質の混合物である。それらは、好ましくは、2.1~4.0の平均NCO官能価を有する。
【0063】
ポリイソシアネートは、好ましくは、MDI、TDI、HDI及びIPDI並びに列挙されたイソシアネートのオリゴマー、ポリマー及び誘導体並びにその混合物からなる群から選択される。
【0064】
ポリイソシアネートは、好ましくは、イソシアヌレート、イミノオキサジアジンジオン、ウレトジオン、ビウレット、アロファネート、カルボジイミド、ウレトンイミン又はオキサジアジントリオンの群を含む。
【0065】
特に好ましいポリイソシアネートは、室温で液体であるMDI形態である。これらは、特に、いわゆるポリマーMDI及びそのオリゴマー又は誘導体の割合を含有するMDIである。そのような液体MDI形態中のMDIの含有量(=ジフェニルメタン4,4’-、2,4’-又は2,2’-ジイソシアネート及びこれらの異性体のいずれかの混合物)は、好ましくは、50~95重量%、より好ましくは60~90重量%である。
【0066】
ポリイソシアネートとしてより好ましいものは、室温で液体であり、且つMDIカルボジイミド又はその付加物の割合を含有するポリマーMDI及びMDI形態である。
【0067】
これらのポリイソシアネートにより、特に良好な加工特性及び特に高い強度が得られる。
【0068】
第2の成分のポリイソシアネートは、イソシアネート基を有するポリウレタンポリマーの割合を含有し得る。第2の成分は、別々に製造されたイソシアネート基を有するポリウレタンポリマーを含み得るか、又はポリイソシアネートは、少なくとも1つのポリオール、特にポリエーテルポリオールと混合されており、イソシアネート基がOH基よりも化学量論的過剰量で存在する。
【0069】
本発明による組成物において、ポリイソシアネートIは、組成物全体に基づいて好ましくは10重量%~35重量%、より好ましくは15重量%~30重量%、特に好ましくは20重量%~25重量%の量で存在する。
【0070】
第1の成分A及び/又は第2の成分Bは、チオ錯体を形成することが可能であるヒドロキシル基とイソシアネート基との反応のための少なくとも1つの金属触媒Kをさらに含む。したがって、適切な金属触媒Kは、ポリウレタン化学において架橋触媒として使用され得、且つ同時にその存在下でチオールとチオ錯体を形成することが可能である全ての金属触媒である。
【0071】
金属触媒Kは、好ましくは、第1の成分A中にのみ存在する。これは、より良好な貯蔵安定性を達成するという利点を有する。
【0072】
適切な金属触媒の例は、これらの金属の錯体及び塩を含めて、ビスマス、亜鉛、スズ又はジルコニウム化合物である。
【0073】
金属触媒Kは、好ましくは、ビスマス化合物、特にビスマス(III)化合物を含む。チオ錯体を形成することが可能である触媒としての所望の特性に加えて、ビスマス化合物は、低い急性毒性の利点を有する。
【0074】
多数の従来のビスマス触媒がビスマス化合物として使用され得る。例としては、カルボン酸ビスマス、例えば酢酸ビスマス、オレイン酸ビスマス、オクタン酸ビスマス又はネオデカン酸ビスマス、硝酸ビスマス、臭化物、塩化物又はヨウ化物などのハロゲン化ビスマス、硫化ビスマス、ネオデカン酸ビスムチル、次没食子酸ビスマス又は次サリチル酸ビスマスなどの塩基性カルボン酸ビスマス及びその混合物である。
【0075】
好ましい実施形態において、金属触媒Kは、8-ヒドロキシキノリンをベースとする少なくとも1つの配位子を含有するビスマス(III)錯体である。このような錯体は、欧州特許第1551895号明細書に記載される。これは、好ましくは、8-ヒドロキシキノリン配位子の1モル当量を含有するカルボン酸ビスマス(III)である。
【0076】
さらに好ましい実施形態において、金属触媒Kは、1,3-ケトアミドをベースとする少なくとも1つの配位子を含有するビスマス(III)錯体である。このような錯体は、欧州特許第2791153号明細書に記載される。これは、好ましくは、1,3-ケトアミド配位子の1~3モル当量を含有するカルボン酸ビスマス(III)である。
【0077】
ポリウレタン組成物は、すでに記載された成分に加えて、2成分ポリウレタン化学から当業者に既知のさらなる成分を含有し得る。これらは、一方の成分中にのみ又は両方の成分中に存在し得る。
【0078】
好ましいさらなる成分は、無機又は有機充填剤、例えば特に天然、重質又は沈殿炭酸カルシウムであって、任意選択的に脂肪酸、特にステアリン酸によってコーティングされたもの、バライト(重晶石)、タルク、石英粉、ケイ砂、ドロマイト、ウォラストナイト、カオリン、焼成カオリン、マイカ(ケイ酸カリウムアルミニウム)、モレキュラーシーブ、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、熱分解プロセスからの微粉砕シリカを含むシリカ、工業的に製造されたカーボンブラック、黒鉛、金属粉末、例えばアルミニウム、銅、鉄、銀又は鉄鋼、PVC粉末又は中空球並びに難燃性充填剤、例えば水酸化物又は水和物、特にアルミニウムの水酸化物又は水和物、好ましくは水酸化アルミニウムである。
【0079】
充填剤の添加は、硬化されたポリウレタン組成物の強度を増加させるという利点がある。
【0080】
ポリウレタン組成物は、好ましくは、炭酸カルシウム、カーボンブラック、カオリン、バライト、タルク、石英粉末、ドロマイト、ウォラストナイト、カオリン、焼成カオリン及びマイカからなる群から選択される少なくとも1つの充填剤を含む。充填剤として、重質炭酸カルシウム、焼成カオリン又はカーボンブラックが特に好ましい。
【0081】
異なる充填剤の混合物を使用することが有利となり得る。重質炭酸カルシウム又は焼成カオリン及びカーボンブラックの組合せが最も好ましい。
【0082】
組成物中の充填剤Fの含有量は、好ましくは、組成物全体に基づいて5重量%~50重量%、より好ましくは10重量%~40重量%、特に好ましくは15重量%~30重量%である。
【0083】
さらなる成分、特に溶媒、可塑剤及び/又は増量剤、顔料、レオロジー変性剤、例えば特に非晶質シリカ、乾燥剤、例えば特にゼオライト、接着促進剤、例えば特に有機官能性トリアルコキシシラン、酸化、熱、光及びUV放射に対する安定剤、難燃性物質及び界面活性物質、特に湿潤剤及び脱泡剤が追加的に存在することも可能である。
【0084】
ポリウレタン組成物は、組成物全体に基づいて好ましくは0.5重量%未満、特に0.1重量%未満のカルボン酸を含む。金属触媒によって導入されたカルボキシレート配位子は、ここで記載されたカルボン酸に含まれない。
【0085】
好ましいポリウレタン組成物は、
- 30~90重量%、好ましくは40~80重量%、特に50~70重量%のポリオールA1と、
- 5~25重量%、好ましくは10~20重量%、特に12~18重量%のジオールA2と、
- 1~5重量%、好ましくは1.25~3重量%、特に1.5~2重量%の、少なくとも1つのチオール基を有する化合物Tと、
- 0.05~0.5重量%、好ましくは0.1~0.3重量%、特に0.15~0.2重量%の金属触媒Kと、
- 10~50重量%、好ましくは15~40重量%、特に20~30重量%の充填剤と、
任意選択的に、さらなる成分と
を含む第1の成分Aを含む。
【0086】
好ましいポリウレタン組成物は、40~100重量%、特に45~80重量%のポリイソシアネートIを含む第2の成分Bを含む。
【0087】
重量部でのそれらの混合比が10:1~1:10、好ましくは5:1~1:5、特に2:1~1:2であるように第1及び第2の成分が配合される場合に有利である。
【0088】
混合ポリウレタン組成物中、イソシアネート基の数と、イソシアネートに対して反応性である基の数との硬化前の比率は、好ましくは、約1.2~1の範囲、より好ましくは1.15~1.05である。しかしながら、通常、好ましくはないが、イソシアネートに対して反応性である基に対してイソシアネート基の割合が準化学量論的であることも可能である。
【0089】
2つの成分の製造は、別々に実行され、好ましくは湿分を排除して行われる。2つの成分は、典型的に別個の容器中でそれぞれ貯蔵される。ポリウレタン組成物のさらなる成分は、第1又は第2の成分の成分として存在し得、イソシアネート基に対して反応性であるさらなる成分は、好ましくは、第1の成分の成分である。それぞれの成分の貯蔵のために適切な容器は、特にドラム、ホブボック、バッグ、バケツ、缶、カートリッジ又はチューブである。成分が両方とも貯蔵安定性であることは、それらの使用に関連する度合まで、それらのそれぞれの特性のいずれの変化も生じることなく、それらが数カ月~最高1年以上まで使用前に貯蔵可能であることを意味する。
【0090】
2つの成分は、組成物を混合する前に別々に貯蔵され、使用時又は使用の直前に互いに混合される。それらは、有利には、2つの別個のチャンバーからなるパッケージ中に存在する。
【0091】
さらなる態様において、本発明は、それぞれ組成物の第1の成分及び第2の成分を含有する2つの別個のチャンバーを有するパッケージからなるパックを含む。
【0092】
混合は、典型的に、静的混合機により又は動的混合機を用いて実行される。混合中、2つの成分が可能な限り均質に混合することを確実にするように注意しなければならない。2つの成分を不完全に混合した場合、有利な混合比からの局在的な偏りが生じ、それによって機械的特性の低下がもたらされる可能性がある。
【0093】
第1の成分と第2の成分とが接触すると、化学反応によって硬化が開始する。これには、ヒドロキシル基及びイソシアネート基に対して反応性の存在する他のいずれかの物質と、イソシアネート基との反応が含まれる。過剰量のイソシアネート基は、主に湿分と反応する。これらの反応の結果として、ポリウレタン組成物は、硬化し、固体材料が得られる。この作用は、架橋とも呼ばれる。
【0094】
本発明は、本明細書に記載のポリウレタン組成物の硬化から得られる硬化されたポリウレタン組成物をさらに提供する。
【0095】
記載の2成分ポリウレタン組成物は、有利には、構造用接着剤、ポッティング化合物又は複合材料中の母材として有用である。
【0096】
したがって、本発明は、第1の基材を第2の基材に結合する方法であって、以下の工程:
- 上記第1及び第2の成分を混合すること、
- 混合されたポリウレタン組成物を、結合する基材表面の少なくとも1つに適用すること、
- 結合する基材をポットライフ以内に接合すること、
- ポリウレタン組成物を硬化させること
を含む方法に関する。
【0097】
これらの2つの基材は、同一材料又は異なる材料からなり得る。
【0098】
したがって、本発明は、2つの基材間の接合部及び空隙を充填する方法であって、以下の工程:
- 上記第1及び第2の成分を混合すること、
- 混合したポリウレタン組成物を、接合部又は空隙に適用すること、
- ポリウレタン組成物を硬化させること
を含む方法にさらに関する。
【0099】
結合のため又は接合部及び空隙の充填のためのこれらの方法において、適切な基材は、特に、
- ガラス、ガラスセラミック、ガラス鉱物繊維マット;
- アルミニウム、鉄、鉄鋼及び非鉄金属などの金属及び合金並びに亜鉛メッキ又はクロムメッキされた金属などの表面仕上げされた金属及び合金;
- 粉末コーティングされた金属又は合金及び印刷シート金属などのコーティング及び印刷された基材;
- ポリ塩化ビニル(剛性及び可撓性PVC)、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレンコポリマー(ABS)、ポリカーボネート(PC)、ポリアミド(PA)、ポリ(メタクリル酸メチル)(PMMA)、ポリエステル、エポキシ樹脂、特にエポキシベースの熱硬化性樹脂、ポリウレタン(PUR)、ポリオキシメチレン(POM)、ポリオレフィン(PO)、ポリエチレン(PE)又はポリプロピレン(PP)、エチレン/プロピレンコポリマー(EPM)及びエチレン/プロピレン/ジエンターポリマー(EPDM)などのプラスチックであって、好ましくはプラズマ、コロナ又は火炎によって表面処理されているプラスチック;
- 炭素繊維強化プラスチック(CFP)、ガラス繊維強化プラスチック(GFP)及びシート-モールディング化合物(SMC)などの繊維強化プラスチック;
- 木材、樹脂、例えばフェノール樹脂、メラミン樹脂又はエポキシ樹脂によって結合された木材ベースの材料、樹脂織物複合材料及びさらにいわゆるポリマー複合材料;及び
- コンクリート、モルタル、れんが、石膏並びに花こう岩、石灰岩、砂岩又は大理石などの天然石
である。
【0100】
これらの方法において、基材の1つ又は両方は、好ましくは、金属、又はガラスセラミック、又はガラス、又はガラス繊維強化プラスチック、又は炭素繊維強化プラスチック、又はエポキシベースの熱硬化性樹脂である。
【0101】
必要に応じて、組成物の適用前に基材を前処理することができる。そのような前処理は、特に、物理的及び/又は化学的クリーニングプロセス並びに接着促進剤、接着促進剤溶液若しくはプライマーの適用を含む。
【0102】
記載の結合プロセスにより、組成物が互いに2つの基材を接合する物品がもたらされる。
【0103】
この物品は、特に軽量構造、建築構造、例えば橋、工業製品若しくは消費者製品、特にウインドウ、風力タービンの動翼若しくは輸送モード、特に車両、好ましくは自動車、バス、トラック、列車若しくは船或いは航空機若しくはヘリコプターのサンドウィッチ要素又はそのような物品の取り付け可能な部品である。
【0104】
記載のポリウレタン組成物は、-35℃~85℃の広範な温度範囲において高度に一定の高い強度及び弾性により、及び金属基材上の良好な、主に温度に依存しない接着性によって特徴付けられる。これらの特性のため、それらは、周囲温度において屋外での応力を受ける結合のための構造用接着剤として非常に特に適切である。
【0105】
したがって、本発明は、2つの基材を結合するための構造用接着剤としての、記載のポリウレタン組成物の使用をさらに提供する。
【0106】
記載のポリウレタン組成物は、ポッティング化合物として、特に修復目的で間隙及び接合部を充填するためのポッティング化合物として、バラスト補償化合物として又は電子部品の保護のために同様に有利に有用である。
【0107】
ポリウレタン組成物は、さらに好ましくは、ポッティング化合物として、特に電気用ポッティング化合物として使用される。したがって、さらなる態様において、本発明は、ポッティング化合物として、特に電気用ポッティング化合物としての2成分ポリウレタン組成物の使用を包含する。
【0108】
したがって、さらなる態様において、本発明は、基材中の接合部及び間隙を充填するための方法であって、以下の工程:
a)上記2成分ポリウレタン組成物の第1及び第2の成分を混合すること、
b)混合したポリウレタン組成物を、2つの基材間に架橋される接合部又は基材の表面上で充填される間隙に適用すること、
c)接合部又は間隙中のポリウレタン組成物を硬化させること
を含む方法を包含する。
【0109】
特に適切な基材は、金属、プラスチック、木材、ガラス、セラミック及び繊維強化プラスチック、特に金属及び繊維強化プラスチックである。
【0110】
したがって、さらなる態様において、本発明は、上記方法によって充填された充填物品を包含する。
【0111】
ポリウレタン組成物は、さらに好ましくは、複合材料中で母材として使用される。ここで、ポリウレタン組成物は、その中に繊維又は他の強化性構造が包埋される結合剤として作用する。したがって、さらなる態様において、本発明は、複合材料中での母材としての2成分ポリウレタン組成物の使用を包含する。
【0112】
本発明は、以下に実施例によってさらに説明されるが、これらは、決して本発明を限定するように意図されない。
【実施例
【0113】
【表1-1】
【0114】
ポリマー1の調製
1300gのポリオキシプロピレンジオール(Acclaim(登録商標)4200 N,Covestro;OH価28.5mg KOH/g)、2600gのポリオキシプロピレンポリオキシエチレントリオール(Voranol(登録商標)CP 4755,Dow Chemical Company;OH価34.0mg KOH/g)、600gの4,4’-メチレンジフェニルジイソシアネート(4,4’-MDI;Desmodur(登録商標)44 MC L,Covestro)及び500gのフタル酸ジイソデシル(DIDP;Palatinol(登録商標)Z、BASF SE,Germany)を既知の方法で80℃において反応させて、2.3重量%のイソシアネート基の含有量を有するNCO末端ポリウレタンポリマーを得た。
【0115】
ポリウレタン組成物の調製
それぞれの組成物に関して、表に明示された第1の成分Aの成分を、湿分を排除して減圧溶解機を使用して、(重量部又は重量%で)明示された量で加工して均質のペーストを作成及び貯蔵した。表に明示された第2の成分Bの成分も類似の方法で加工及び貯蔵した。次いで、SpeedMixer(登録商標)(DAC 150 FV,Hauschild)を使用して2成分を30秒間加工して均質のペーストを作成し、これを直ちに以下の通り試験した。
【0116】
機械的特性を決定するために、ISO 527、第2部、1Bに従い、接着剤をダンベル形状に形成し、表に明示される期間(1日及び7日)、23℃及び50% RH(相対湿度)において、次いで90℃で7日間、硬化/貯蔵した。23℃及び50% RHにおける24時間のコンディション調整の期間後、そのようにして製造された試験片の0.05~0.25%の伸び領域における弾性率、引張強度及び破断点伸びを23℃及び50% RH及び10mm/分の試験速度において、DIN EN ISO 527に従ってZwick Z020引張試験機上で測定した。
【0117】
引裂伝播抵抗は、DIN ISO34-1に従って決定した。
【0118】
引張せん断強度を測定するため、それぞれの場合において、厚さ2mmの層の2つのへプタン脱グリースされた陰極電着塗鉄鋼プレート間での混合時間の終了から1分後、15×45mmの重複結合領域上で接着剤を適用することにより、様々な試験片を製造した。試験片を24時間23℃で、次いで3時間80℃で貯蔵/硬化した。23℃及び50% RHにおける24時間のコンディション調整の期間後、引張せん断強度をDIN EN 1465に従って決定した。
【0119】
Tg値(ガラス転移温度)は、標準気候条件(「SC」;23℃、50%の相対湿度「RH」)下で7日間硬化されたディスク形試料(厚さ2~3mm、直径10mm)上でのDMTA測定に基づき、Mettler DMA/SDTA 861e機器を使用して決定した。測定条件は、せん断モードでの測定、励起周波数10Hz及び5K/分の加熱速度であった。試料を-60℃まで冷却し、200℃まで加熱し、損失角の曲線における最大「tan δ」をTg値として読み、複素せん断弾性率G[MPa]を決定した。
【0120】
ポットライフは、2つの成分の混合後、粘度が急激に上昇し始めるまでの時間として粘度計で測定した。特に、時間(x軸)に対する粘度(y軸)の勾配の切片をポットライフとして定義した。粘度は、10秒-1の振動数及び20℃の温度において25mmのプレート直径及び1mmのプレート距離を有するMCR 302パラレル-プレートレオメーター(Anton Paar)において測定した。これは、最初にSpeedMixer(Hauschild)において30秒間2成分を混合し、その直後にそれを測定用のプレートに適用することによって実行された。
【0121】
測定結果を表に示す。
【0122】
表1~6は、少なくとも1つのチオール基を有する化合物Tの量のポットライフに対する影響を実証する実験を示す。
【0123】
表7~10は、ポットライフ、硬化プロフィール及び機構に関して試験された接着剤組成物を示す。ここで、本発明による組成物は、「I」(I-1~I-4)として、本発明によらない参照組成物は、「R」(R-1~R-6)として示される。
【0124】
【表1-2】
【0125】
【表2】
【0126】
【表3】
【0127】
【表4】
【0128】
【表5】
【0129】
【表6】
【0130】
予備実験V1a~V6fは、少なくとも1つのチオール基を有する様々な化合物Tのポットライフに対する影響及び特定の限度内でポットライフを調節することが可能である可能性を実証する実験を示す。
【0131】
この結果は、完全に化合物Tの不在下で加工され得なかった2成分ポリウレタン組成物におけるポットライフが、触媒中の金属原子に対するチオールのモル比を介して化合物Tの使用によって調節可能であることを明らかに示す。
【0132】
【表7】
【0133】
【表8】
【0134】
表9及び10の結果は、本発明による組成物が非常に急速に強度、特に引張強度及び引張せん断強度を増強し、機械的特性、硬化速度及び均一接着プロフィールに関して、本発明によるものではない組成物よりも優れていることを明らかに示す。
【0135】
【表9】
【0136】
【表10】
本明細書に開示される発明は以下の態様を含む:
[1]第1及び第2の成分からなるポリウレタン組成物であって、
- 前記第1の成分Aは、
- 1.5~4の範囲のOH官能価及び250~15000g/モルの範囲の平均分子量(数平均)M を有する少なくとも1つのポリオールA1と
- C2~C9炭素鎖を介して連結される2つのヒドロキシル基を有する少なくとも1つのジオールA2と、
- 少なくとも1つのチオール基を有する少なくとも1つの化合物Tと
を含み、且つ
- 前記第2の成分Bは、
- 少なくとも1つのポリイソシアネートI
を含み、
前記2つの成分の1つは、チオ錯体を形成することが可能であるヒドロキシル基とイソシアネート基との反応のための少なくとも1つの金属触媒Kを追加的に含み、且つ
前記第2の成分は、前記ポリウレタン組成物全体に基づいて少なくとも5重量%のイソシアネート基を含むために十分なポリイソシアネートIを含有し、且つ
前記少なくとも1つの化合物T中の全チオール基対前記少なくとも1つの金属触媒K中の全金属原子のモル比は、1:1~250:1である、ポリウレタン組成物。
[2]前記金属触媒Kは、ビスマス(III)化合物、好ましくはカルボン酸ビスマス(III)を含むことを特徴とする、上記[1]に記載のポリウレタン組成物。
[3]前記ビスマス(III)化合物は、8-ヒドロキシキノリン配位子又は1,3-ケトアミド配位子を追加的に含有することを特徴とする、上記[2]に記載のポリウレタン組成物。
[4]前記ジオールA2は、C4~C9炭素鎖を介して連結される2つの一級ヒドロキシル基を有する直鎖脂肪族ジオールであり、特に1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール及び1,9-ノナンジオールからなる群から選択されることを特徴とする、上記[1]~[3]のいずれか一つに記載のポリウレタン組成物。
[5]前記少なくとも1つの化合物Tは、2~6つのチオール基を有するポリチオール化合物又はメルカプトシランを含むことを特徴とする、上記[1]~[4]のいずれか一つに記載のポリウレタン組成物。
[6]前記少なくとも1つの化合物Tは、エチレングリコールビス(3-メルカプトプロピオネート)、エチレングリコールジメルカプトアセテート、ジペンタエリトリトールヘキサキス(3-メルカプトプロピオネート)及び3-メルカプトプロピルトリメトキシシランからなる群から選択されることを特徴とする、上記[5]に記載のポリウレタン組成物。
[7]前記少なくとも1つの化合物T中の全チオール基対前記少なくとも1つの金属触媒K中の全金属原子の前記モル比は、5:1~100:1であることを特徴とする、上記[1]~[6]のいずれか一つに記載のポリウレタン組成物。
[8]前記金属触媒Kは、前記第1の成分A中に存在することを特徴とする、上記[1]~[7]のいずれか一つに記載のポリウレタン組成物。
[9]前記ポリオールA1は、ポリエーテルポリオールを含むことを特徴とする、上記[1]~[8]のいずれか一つに記載のポリウレタン組成物。
[10]前記ポリイソシアネートIは、室温で液体であるジフェニルメタン4,4’-、2,4’-若しくは2,2’-ジイソシアナートの形態及びポリマーMDI又はオリゴマー若しくは誘導体、特にカルボジイミドの割合を含有するMDIの形態の前記異性体(MDI)のいずれかの混合物であることを特徴とする、上記[1]~[9]のいずれか一つに記載のポリウレタン組成物。
[11]前記第2の成分Bは、イソシアネート基を含有するポリウレタンポリマーを含むことを特徴とする、上記[1]~[10]のいずれか一つに記載のポリウレタン組成物。
[12]前記組成物全体に基づいて0.5重量%未満のカルボン酸を含むことを特徴とする、上記[1]~[11]のいずれか一つに記載のポリウレタン組成物。
[13]以下の工程を含む、第1の基材を第2の基材に結合する方法:
- 上記[1]~[12]のいずれか一つ請求項1~12のいずれか一項に記載のポリウレタン組成物の第1及び第2の成分を混合すること、
- 前記混合されたポリウレタン組成物を、結合する基材表面の少なくとも1つに適用すること、
- 前記結合する基材をオープン時間内に接合すること、
- 前記ポリウレタン組成物を硬化させること。
[14]上記[13]に記載の結合方法から得られる物品。
[15]2つの基材を結合するための構造用接着剤又は複合材料中の母材としての、上記[1]~[12]のいずれか一つに記載のポリウレタン組成物の使用。