(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-17
(45)【発行日】2023-03-28
(54)【発明の名称】被覆除去装置
(51)【国際特許分類】
G02B 6/245 20060101AFI20230320BHJP
【FI】
G02B6/245
(21)【出願番号】P 2020134673
(22)【出願日】2020-08-07
【審査請求日】2022-01-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000005290
【氏名又は名称】古河電気工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】511172003
【氏名又は名称】フルカワファイテル(タイランド)
【氏名又は名称原語表記】Furukawa Fitel(Thailand) Co., Ltd.
【住所又は居所原語表記】Rojana Industrial Park 1/71 Moo 5, Tambol Kanharm, Amphur U-Thai, Phranakorn Sri Ayutthaya 13210, Thailand
(74)【代理人】
【識別番号】100121603
【氏名又は名称】永田 元昭
(74)【代理人】
【識別番号】100141656
【氏名又は名称】大田 英司
(74)【代理人】
【識別番号】100182888
【氏名又は名称】西村 弘
(74)【代理人】
【識別番号】100196357
【氏名又は名称】北村 吉章
(74)【代理人】
【識別番号】100067747
【氏名又は名称】永田 良昭
(72)【発明者】
【氏名】秋山 知広
(72)【発明者】
【氏名】タナタンマティット ブンシン
(72)【発明者】
【氏名】ポルセン サラヴット
(72)【発明者】
【氏名】ワッタナラット ジャガパット
(72)【発明者】
【氏名】ブッサヤプラゴーン ナッタヴット
【審査官】堀部 修平
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-138970(JP,A)
【文献】特開平09-113733(JP,A)
【文献】特開2018-132757(JP,A)
【文献】登録実用新案第3216774(JP,U)
【文献】特開平09-277681(JP,A)
【文献】国際公開第2020/105943(WO,A1)
【文献】特表2019-511349(JP,A)
【文献】特開平11-023851(JP,A)
【文献】中国実用新案第212781335(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 6/00,6/02,6/24-6/255,6/36-6/40,6/46-6/54
H02G 1/02,1/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光ファイバの被覆を、前記光ファイバの軸方向に沿って除去する被覆除去装置であって、
前記光ファイバの前記被覆に切れ込みを入れる切り刃、及び該切り刃よりも被覆先端側の前記被覆を加熱するヒーターを有する加熱部と、
前記ヒーターが電気的に接続された制御基板を有する本体部と、
前記切り刃を挟んで前記ヒーターとは逆側の前記光ファイバを保持する保持部と、
前記軸方向に沿って離間するように、前記加熱部に対して前記保持部をスライド移動可能にするスライド機構部とが備えられ、
前記本体部、前記加熱部、及び前記保持部は、
前記軸方向に沿ってこの順で配置され、
前記加熱部に、
その筐体に固定される金属製のベースプレートと、
作業者への通知を振動で報知する振動報知部
とが備えら
れ、
前記振動報知部は、
前記ベースプレートに固定され、
前記スライド機構部に、
一端が前記保持部に固定されたスライドシャフトが備えられ、
前記ベースプレートは、
前記スライドシャフトを摺動可能に支持する構成である
被覆除去装置。
【請求項2】
前記振動報知部は、
前記加熱部の前記切り刃に近接して配置された
請求項1に記載の被覆除去装置。
【請求項3】
前記光ファイバを保持した前記保持部に対して前記軸方向への付勢力を付与して、前記保持部のスライド移動を助力する助力機構部が備えられ、
該助力機構部に、
前記光ファイバを保持していない前記保持部への付勢力の付与を、所定方向への付勢力によって規制する規制部材が備えられ、
前記振動報知部は、
前記所定方向に対して略直交する方向に振動する構成である
請求項1
または請求項2に記載の被覆除去装置。
【請求項4】
前記本体部に、
前記ヒーター及び前記振動報知部の動作を制御する制御部が備えられ、
該制御部は、
前記被覆の加熱が完了した際、前記振動報知部を振動させる
請求項1から請求項
3のいずれか1つに記載の被覆除去装置。
【請求項5】
前記加熱部に、
作業ラインにおける所定の設置箇所に固定するためのネジ孔が設けられた
請求項1から請求項
4のいずれか1つに記載の被覆除去装置。
【請求項6】
前記作業者への通知を発報によって報知するブザー部が備えられた
請求項1から請求項
5のいずれか1つに記載の被覆除去装置。
【請求項7】
前記切り刃は、
前記被覆を挟み込むようにして切れ込みを入れる2つの刃で構成され、
前記加熱部に、
前記2つの刃の隙間
を変更する隙間調整部が備えら
れ、
前記隙間調整部の回動によって前記2つの刃の隙間が変更される
請求項1から請求項
6のいずれか1つに記載の被覆除去装置。
【請求項8】
前記保持部、及び前記加熱部を照らす照明部が備えられた
請求項1から請求項
7のいずれか1つに記載の被覆除去装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば光ファイバの被覆を除去する際、被覆の密着力を小さくして被覆を除去するような被覆除去装置に関する。
【背景技術】
【0002】
光ファイバは、コア、及びクラッドからなる裸ファイバの外周を、合成樹脂製の被覆で覆って構成されている。そして、光ファイバは、その先端の被覆を除去して、別の光ファイバに接続される。このような光ファイバの被覆を除去する装置として、例えば、特許文献1のような被覆除去装置が知られている。
【0003】
より詳しくは、特許文献1の被覆除去装置は、切り刃で被覆に切れ込みを入れるとともに、ヒーターで除去対象の被覆を加熱して、被覆の密着力を小さくすることで、被覆の除去を容易にしている。
【0004】
この特許文献1の被覆除去装置は、作業者への通知を報知する手段として、LEDランプを備えている。例えば、特許文献1の被覆除去装置は、被覆の加熱が完了した際、LEDランプを点灯させることで、被覆の加熱完了を作業者に報知している。これにより、特許文献1は、被覆の加熱完了という作業者への通知を容易にしている。
【0005】
ところで、特許文献1の被覆除去装置は、作業者が把持して使用するようなハンディタイプであるため、作業者の作業姿勢、周囲の明るさや照明の当たり方によっては、作業者がLEDランプの点灯に気が付かないおそれがある。
【0006】
そこで、LEDランプに加えて、作業者への通知をブザーによって報知することが考えられるが、作業場所周辺の騒音によっては、作業者がブザーを聞き逃すおそれがある。このため、特許文献1の被覆除去装置には、作業者への通知について改善の余地があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上述の問題に鑑み、作業者への通知を容易に作業者に伝えられる被覆除去装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明は、光ファイバの被覆を、前記光ファイバの軸方向に沿って除去する被覆除去装置であって、前記光ファイバの前記被覆に切れ込みを入れる切り刃、及び該切り刃よりも被覆先端側の前記被覆を加熱するヒーターを有する加熱部と、前記ヒーターが電気的に接続された制御基板を有する本体部と、前記切り刃を挟んで前記ヒーターとは逆側の前記光ファイバを保持する保持部と、前記軸方向に沿って離間するように、前記加熱部に対して前記保持部をスライド移動可能にするスライド機構部とが備えられ、前記本体部、前記加熱部、及び前記保持部は、前記軸方向に沿ってこの順で配置され、前記加熱部に、その筐体に固定される金属製のベースプレートと、作業者への通知を振動で報知する振動報知部とが備えられ、前記振動報知部は、前記ベースプレートに固定され、前記スライド機構部に、一端が前記保持部に固定されたスライドシャフトが備えられ、前記ベースプレートは、前記スライドシャフトを摺動可能に支持する構成であることを特徴とする。
【0010】
上記作業者への通知を報知するとは、例えば、被覆の加熱完了を報知する、ヒーターの異常を報知する、加熱部の異常を報知する、あるいは本体部の異常を報知することをいう。
上記振動報知部は、例えば、円板状の振動モーターなどのことをいう。
【0011】
この発明によれば、被覆除去装置は、作業者への通知を容易に作業者に伝えることができる。
具体的には、作業者は、被覆除去装置を把持する際、本体部ではなく加熱部を一方の手で把持することが多い。そこで、振動報知部を加熱部に配置したことにより、被覆除去装置は、本体部に振動報知部を配置した場合に比べて、振動報知部の振動をより作業者に伝えることができる。このため、作業者は、被覆除去装置に視線を向けていない状態であっても、作業者への通知を、触覚を通じて知ることができる。
【0012】
さらに、作業者が被覆除去装置を注視し続ける必要がないため、被覆除去装置は、作業者にかかる負担を低減できるだけでなく、作業者が被覆を加熱しながら、次の光ファイバへ視線を向けやすくなる。このため、被覆除去装置は、作業者への通知を伝えるだけでなく、作業効率の向上を図ることができる。
【0013】
加えて、制御基板に対して振動報知部を軸方向に離間して配置できるため、被覆除去装置は、振動報知部の振動が制御基板に伝達されることを、制振部材などを設けることなく抑えられる。このため、被覆除去装置は、振動報知部の振動によって制御基板に意図しない不具合が生じることを防止できる。
【0014】
また、前記加熱部に、その筐体に固定される金属製のベースプレートが備えられ、前記振動報知部は、前記ベースプレートに固定されているため、被覆除去装置は、振動報知部の振動を、金属製のベースプレートで増幅して、加熱部の筐体に伝達することできる。
【0015】
このため、被覆除去装置は、小型の振動報知部であっても、振動報知部の振動を確実に作業者に伝えることができる。これにより、作業者は、筐体に触れているだけの状態であっても、作業者への通知を知ることができる。
加えて、被覆除去装置は、振動報知部を備えた場合であっても、その大きさが大型化することを抑えられる。
【0016】
また、前記スライド機構部に、一端が前記保持部に固定されたスライドシャフトが備えられ、前記ベースプレートは、前記スライドシャフトを摺動可能に支持する構成であるため、被覆除去装置は、スライドシャフトを確実に支持できるため、保持部のスライド移動をより安定させることができる。
【0017】
さらに、被覆除去装置は、振動報知部の振動を、スライドシャフトを介して保持部にも伝達することができる。このため、被覆除去装置は、加熱部を把持する作業者の手、及び保持部を把持する作業者の手の双方に、振動報知部の振動を伝えることができる。これにより、被覆除去装置は、作業者への通知をより確実に作業者に知らせることができる。
【0018】
この発明の態様として、前記振動報知部は、前記加熱部の前記切り刃に近接して配置されてもよい。
この構成によれば、被覆除去装置は、振動報知部の振動をより確実に作業者に伝えることができる。
【0019】
具体的には、保持部にスライド移動のための引張力を作用させるとともに、被覆を確実に除去するため、作業者は、加熱部の切り刃近傍を把持することが多い。そこで、振動報知部を切り刃に近接して配置したことにより、被覆除去装置は、切り刃から離間した位置に振動報知部を配置した場合に比べて、振動報知部の振動をより確実に作業者に伝えることができる。
【0020】
またこの発明の態様として、前記光ファイバを保持した前記保持部に対して前記軸方向への付勢力を付与して、前記保持部のスライド移動を助力する助力機構部が備えられ、該助力機構部に、前記光ファイバを保持していない前記保持部への付勢力の付与を、所定方向への付勢力によって規制する規制部材が備えられ、前記振動報知部は、前記所定方向に対して略直交する方向に振動する構成であってもよい。
【0021】
この構成によれば、被覆除去装置は、助力機構部により、保持部のスライド移動を容易にすることができる。
さらに、規制部材に作用する付勢力の付勢方向と、振動報知部が振動する振動方向とが互いに略直交しているため、被覆除去装置は、振動報知部の振動によって、規制部材に作用する付勢力にバラツキが生じることを抑えられる。
【0022】
これにより、被覆除去装置は、保持部への付勢力の付与を規制部材によって規制された状態が、振動報知部の振動によって解除されることを防止できる。このため、被覆除去装置は、保持部が意図せずスライド移動することを防止できる。
【0023】
またこの発明の態様として、前記本体部に、前記ヒーター及び前記振動報知部の動作を制御する制御部が備えられ、該制御部は、前記被覆の加熱が完了した際、前記振動報知部を振動させてもよい。
この構成によれば、被覆除去装置は、作業者が被覆除去装置に視線を向けていない場合、あるいは周囲の騒音が大きい場合であっても、被覆の加熱完了を作業者に伝えることができる。
【0024】
またこの発明の態様として、前記加熱部に、作業ラインにおける所定の設置箇所に固定するためのネジ孔が設けられてもよい。
上記所定の設置箇所は、作業ラインの一部となるように被覆除去装置を配置するための設置箇所、あるいは所定の載置台などのことをいう。
【0025】
この構成によれば、被覆除去装置は、例えば、光ファイバの被覆を除去してコネクタなどを装着する作業ラインに設けた所定の設置箇所に固定して用いることができる。
さらに、例えば、加熱部の筐体を貫通し、ベースプレートにネジ山を有するネジ孔を設けた場合、被覆除去装置は、ベースプレートで増幅した振動報知部の振動を所定の設置箇所に伝達することができる。このため、被覆除去装置は、作業者への通知を、より確実に作業者に伝えることができる。
【0026】
またこの発明の態様として、前記作業者への通知を発報によって報知するブザー部が備えられてもよい。
この構成によれば、被覆除去装置は、作業者への通知を、振動報知部の振動と、ブザー部の発報とによって、作業者に伝えることができる。つまり、作業者は、作業者への通知を、触覚及び聴覚を通じて知ることができる。このため、被覆除去装置は、作業者への通知を、さらに確実に作業者に伝えることができる。
【0027】
さらに、例えば、振動報知部を振動させるか、ブザー部を発報させるかを決定する制御部を備えることで、被覆除去装置は、作業者に伝える通知に応じて、振動報知部を振動させる、またはブザー部を発報させることができる。このため、被覆除去装置は、作業者への通知を、作業者がより容易に識別することができる。
【0028】
またこの発明の態様として、前記切り刃は、前記被覆を挟み込むようにして切れ込みを入れる2つの刃で構成され、前記加熱部に、前記2つの刃の隙間を変更する隙間調整部が備えられ、前記隙間調整部の回動によって前記2つの刃の隙間が変更されてもよい。
【0029】
この構成によれば、被覆除去装置は、切り刃を着脱することなく、2つの刃の隙間を容易に変更することができる。このため、被覆除去装置は、例えば、光ファイバを配線する現場において、肉厚の異なる光ファイバの被覆の除去を容易にすることができる。
【0030】
またこの発明の態様として、前記保持部、及び前記加熱部を照らす照明部が備えられてもよい。
この構成によれば、被覆除去装置は、被覆の除去にかかる作業性の向上を図ることができる。さらに、例えば、作業者への通知を点灯または点滅によって報知する報知部として照明部を機能させることで、被覆除去装置は、作業者への通知を、より確実に作業者に伝えることができる。
【発明の効果】
【0031】
本発明により、作業者への通知を容易に作業者に伝えられる被覆除去装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【
図1】被覆除去装置の外観を前方上方視で示す外観斜視図。
【
図3】被覆除去装置における内部の外観を示す外観斜視図。
【
図4】被覆除去装置の外観を平面視での示す平面図。
【
図5】
図4中のA-A矢視における保持台座の断面を示す断面図。
【
図6】後方下方視における被覆除去装置の外観を示す外観斜視図。
【
図10】筐体を取外した状態における加熱台座の外観を示す外観斜視図。
【
図12】光ファイバの被覆を除去する工程の概略を説明する説明図。
【
図13】押圧部材がスライドシャフトを押圧した状態をB-B矢視で示す断面図。
【
図14】保持部がスライド移動した状態の被覆除去装置の外観を示す外観斜視図。
【
図15】別の実施形態における被覆除去装置の外観を前方上方視で示す外観斜視図。
【
図16】筐体の一部を取外した状態の被覆除去装置の外観を示す外観斜視図。
【
図18】可倒式照明部を備えた被覆除去装置の外観を示す外観斜視図。
【
図19】照明部を備えた被覆除去装置の外観を説明する説明図。
【
図20】照明部を備えた被覆除去装置の概略を説明する説明図。
【発明を実施するための形態】
【0033】
この発明の一実施形態を以下図面と共に説明する。
本実施形態の被覆除去装置は、光ファイバの被覆を加熱するとともに、光ファイバの軸方向に沿って被覆を除去する装置である。このような被覆除去装置10について、
図1から
図11を用いて説明する。
【0034】
なお、
図1は前方上方視での被覆除去装置10の外観斜視図を示し、
図2は光ファイバ1の断面図を示し、
図3は被覆除去装置10における内部の外観斜視図を示し、
図4は被覆除去装置10の平面図を示している。
さらに、
図5は
図4中のA-A矢視における保持台座21の断面図を示し、
図6は後方下方視における被覆除去装置10の外観斜視図を示し、
図7は被覆除去装置10のブロック図を示している。
【0035】
加えて、
図8は切り刃43の構成を説明する説明図であり、
図8(a)は隙間調整片46が右側へ回動した状態の正面図を示し、
図8(b)は隙間調整片46が左側へ回動した状態の正面図を示し、
図8(c)は加熱蓋42を前方下方から見た外観斜視図を示している。
【0036】
さらにまた、
図9は
図4中のB-B矢視断面図を示している。
図10は筐体を取外した状態における加熱台座41の外観斜視図であり、
図10(a)は後方上方から見たスライド機構部60、及び助力機構部70の外観斜視図を示し、
図10(b)は後方下方から見たスライド機構部60、及び助力機構部70の外観斜視図を示している。
【0037】
そして、
図11は規制部材74の動きを説明する説明図であり、
図11(a)は加熱蓋42が開いた状態における
図4中のC-C矢視断面図を示し、
図11(b)は加熱蓋42が閉じた状態における
図4中のC-C矢視断面図を示している。
また、図示を明確にするため、
図3中において制御基板58の図示を省略し、
図10(a)中において第1付勢バネ73の図示を省略するとともに、
図11中においてバッテリー53、無線充電受信器55、及び制御基板58の図示を省略している。
【0038】
また、図中において、矢印Fr及びRrは被覆除去装置10の前後方向を示しており、矢印Frは前方を示し、矢印Rrは後方を示している。さらに、矢印Rh及びLhは被覆除去装置10の幅方向を示しており、矢印Rhは右方向を示し、矢印Lhは左方向を示している。加えて、
図1の上方側を被覆除去装置10の上方、
図1の下方側を被覆除去装置10の下方とする。
【0039】
まず、本実施形態の被覆除去装置10(
図1参照)で被覆を除去可能な光ファイバの種類は、単心光ファイバ、または複数の単心光ファイバが並置された光ファイバテープ心線であるが、これに限定されない。なお、本実施形態では、説明を容易にするため、単心光ファイバを用いて説明する(以下、単心光ファイバを光ファイバ1とする)。
【0040】
ここで、光ファイバ1の構造を簡単に説明する。光ファイバ1は、光ファイバ素線、または光ファイバ心線であって、
図2に示すように、裸ファイバ2と、裸ファイバ2の外周を覆う合成樹脂製の被覆3とで構成されている。
【0041】
裸ファイバ2は、
図2に示すように、光を伝播するコア2aと、コア2aの外周を覆うクラッド2bとで構成されている。
一方、被覆3は、一種類の合成樹脂、または異なる種類の合成樹脂を積層して構成されている。
【0042】
このような光ファイバ1の被覆3を除去する被覆除去装置10は、
図1に示すように、光ファイバ1を保持する保持部20と、保持部20とは別体で構成され、かつ保持部20のよりも前後方向の長さが長い装置本体30とを備えている。
さらに、被覆除去装置10は、
図3に示すように、装置本体30に対して保持部20をスライド移動可能にするスライド機構部60と、保持部20のスライド移動を助力する助力機構部70とを備えている。
【0043】
保持部20は、
図1に示すように、幅方向略中央が凹設された保持台座21と、保持台座21に対して開閉自在に支持された保持蓋22とで構成されている。
具体的には、保持台座21は、
図1に示すように、光ファイバ1に装着したホルダ4(
図12参照)が載置されるホルダ載置部分21aが、上面の幅方向略中央に凹設されている。
【0044】
さらに、保持台座21には、
図3及び
図5に示すように、前面から後面にかけて前後方向に延びるシャフト孔21bが、幅方向の両端近傍に開口形成されている。なお、このシャフト孔21bには、
図5に示すように、後述するスライド機構部60のスライドシャフト61が挿通されるとともに、スライドシャフト61の前端が固定されている。
【0045】
一方、保持蓋22は、
図1に示すように、前後方向を回転軸として回動可能な状態で、保持台座21の上面左側に枢支されている。この保持蓋22は、閉じた状態において、保持台座21とでホルダ4を挟み込むようにして、ホルダ4に挿通された光ファイバ1を保持している。
【0046】
なお、上述した保持蓋22は、
図1に示すように、保持台座21の上面に対して正面視反時計回りへ回動した状態を開いた状態とし、開いた状態から正面視時計回りへ回動した状態を閉じた状態とする。
【0047】
また、装置本体30は、
図1に示すように、被覆3を加熱する加熱部40と、操作受付部51や制御基板58などが配設された本体部50とを、前方から後方へこの順番で一体的に連結して構成している。
【0048】
なお、加熱部40と本体部50とは、装置本体30の筐体内部に設けた筐体内壁30a(
図9参照)で隔てられている。さらに、装置本体30には、上下方向に間隔を隔てて本体部50の内部を分割するとともに、後述するバッテリー53、無線充電受信器55、及び制御基板58の収容空間を構成する2つの隔壁30b,30c(
図9参照)が設けられている。
【0049】
加熱部40は、
図1に示すように、保持部20の後方に配置され、光ファイバ1が載置される加熱台座41と、加熱台座41を覆う加熱蓋42とで構成されている。
加熱台座41の下面には、
図6に示すように、例えば、被覆3の除去を自動的に連続して行う作業ライン上に設けた所定の設置箇所に固定するためのネジ孔41aが開口形成されている。このネジ孔41aは、詳細な図示を省略するが、加熱台座41の筐体を貫通し、後述するベースプレート62にネジ山を有する形状に形成されている。
【0050】
一方、加熱蓋42は、
図1に示すように、前後方向を回転軸として回動可能な状態で、加熱台座41の上面左側に枢支されている。さらに、加熱蓋42の下面には、
図1に示すように、後述する助力機構部70の規制部材74を押圧する押圧突起42aが突設されている。
【0051】
なお、加熱蓋42は、
図1に示すように、加熱台座41の上面に対して正面視反時計回りへ回動した状態を開いた状態とし、開いた状態から正面視時計回りへ回動した状態を閉じた状態とする。
【0052】
また、本体部50は、
図1に示すように、加熱部40の後方に配置され、その上面に電源ボタンなどが配設された操作受付部51が設けられている。
さらに、本体部50の後面には、
図6に示すように、USB(Universal
Serial Bus)ケーブル(Type-C)の挿入口となるUSB挿入口50aが、上部左側に開口形成されている。
【0053】
加えて、USB挿入口50aよりも下方の本体部50の後面は、
図6に示すように、着脱自在に分割形成されたカバー50bで構成されている。このカバー50bは、
図9に示すように、2つの隔壁30b,30cで囲われた本体部50の内部空間と外部とを連通する開口を覆うように設けられている。
【0054】
上述のUSB挿入口50a及びカバー50bは、本体部50における筐体の分割ラインの一部をなすように形成されている。なお、USB挿入口50aの周縁、及びカバー50bで覆われる開口の周縁には、水の侵入を阻止する防水パッキン(図示省略)が設けられている。
【0055】
このような装置本体30は、
図1及び
図7に示すように、光ファイバ1の被覆3に切れ込みを入れる切り刃43と、切り刃43よりも後方側(被覆先端側)の被覆3を加熱するヒーター44とを備えている。
さらに、装置本体30は、
図1及び
図7に示すように、作業者の操作を受付ける操作受付部51と、加熱蓋42の開閉を検知するマグネットスイッチ52とを備えている。
【0056】
加えて、装置本体30は、
図7に示すように、各部に電力を供給するバッテリー53と、バッテリー53に充電するためのUSBコネクタ(Type-C)54、及び無線充電受信器55と、加熱部40及び本体部50の状態を報知するLEDランプ56、ブザー部57、及び振動モーター45とを備えている。
【0057】
そして、装置本体30は、
図7に示すように、本体部50に内蔵された制御基板58(
図9参照)に実装され、各部の動作を制御する制御部59を備えている。なお、制御基板58は、厚み方向が上下方向に略一致する状態で、本体部50の内部における上部に配置されている(
図9参照)。
【0058】
引き続き、上述した装置本体30の各構成について、さらに詳述する。
切り刃43は、
図1及び
図8に示すように、加熱台座41の前面に固定された下刃43aと、加熱蓋42の前面に固定された上刃43bとで構成されている。この切り刃43は、加熱蓋42が加熱台座41を覆うように回動して、下刃43aと上刃43bとが近接した際、光ファイバ1の被覆3に切れ込みを入れるように構成されている。
【0059】
このため、下刃43aと上刃43bとは、
図8に示すように、加熱蓋42が閉じた状態において、被覆3の肉厚に応じた適切な所定の隙間Gが確保されている。この下刃43aと上刃43bとの所定の隙間Gは、
図8に示すように、加熱蓋42の前部右側に設けた金属製の隙間調整片46によって確保されている。
【0060】
隙間調整片46は、
図8(a)及び
図8(b)に示すように、下刃43aと上刃43bとの所定の隙間Gを、被覆3の外径に応じて切り替え可能にしている。
例えば、隙間調整片46は、被覆3の外径が250μmの光ファイバ1の場合、所定の隙間Gを約145μmに、被覆3の外径が500μmの光ファイバ1の場合、所定の隙間Gを約300μmに切り替え可能に構成されている。
【0061】
具体的には、隙間調整片46は、詳細な図示を省略するが、前後方向に延びる軸体と、軸体の外周面から接線方向へ略平板状に延びる平板部分とで一体形成されている。
この隙間調整片46は、
図8(c)に示すように、軸体を回転中心として、正面視時計回りまたは正面視反時計回りへ回動した位置に平板部分が移動することで、所定の隙間Gを形成している。
なお、隙間調整片46の平面部分は、加熱蓋42に設けた磁石(図示省略)によって、正面視時計回りまたは正面視反時計回りへ回動した状態が維持される。
【0062】
例えば、隙間調整片46は、
図8(a)に示すように、正面視反時計回りへ回動した状態において、平板部分が加熱蓋42の内部に収容されることで、下刃43aと上刃43bとの所定の隙間Gを約145μmに切り替えている。
【0063】
一方で、隙間調整片46は、
図8(b)に示すように、正面視時計回りへ回動した状態において、下刃43aと上刃43bとの間に介在することで、下刃43aと上刃43bとの所定の隙間Gを約300μmに切り替えている。
【0064】
また、ヒーター44は、
図1及び
図4に示すように、前後方向に長い平面視略矩形であって、加熱台座41の上面における幅方向略中央に配置されている。このヒーター44は、本体部50に内蔵された制御基板58のバスを介して制御部59に電気的に接続されたセラミックヒーターなどで構成されている。
【0065】
なお、ヒーター44は、光ファイバ1の裸ファイバ2と被覆3との密着力が低下する温度まで昇温する、あるいは被覆3の加熱開始から所定時間経過するまで発熱するように、制御部59によって制御される。
【0066】
また、操作受付部51は、
図1及び
図4に示すように、本体部50の後部上面に配置されている。この操作受付部51は、制御部59に電気的に接続された電源ボタンや各種設定ボタンなどで構成され、作業者によって押下されたことを示す信号を、制御部59に出力する機能を有している。
【0067】
また、マグネットスイッチ52は、加熱蓋42に内蔵されたマグネット部52a(
図4参照)と、本体部50に内蔵されるとともに、制御基板58のバスを介して制御部59に電気的に接続されたスイッチ部52b(
図4参照)とで構成されている。このマグネットスイッチ52は、例えば、マグネット部52aとスイッチ部52bとが近接すると、制御部59との間で閉回路をなすように構成されている。
【0068】
また、バッテリー53は、USBケーブルまたは無線充電器を介して充電されるとともに、被覆除去装置10の各部に電力を供給するものである。
具体的には、バッテリー53は、
図9に示すように、2つの隔壁30b,30cに囲われた本体部50の内部空間に配置されるとともに、その上方に配置された制御基板58に電気的に接続されている。
【0069】
このバッテリー53は、USBコネクタ(Type-C)54、または無線充電受信器55を介して充電される。
なお、バッテリー53は、カバー50bで覆われた開口を介して、前後方向に挿脱可能な状態で本体部50の内部空間に収容されている。
【0070】
また、USBコネクタ(Type-C)54は、
図9に示すように、本体部50の後面に設けたUSB挿入口50aを介して、USBケーブルを前後方向に挿脱可能な向きで、制御基板58の上面に実装されている。このUSBコネクタ(Type-C)54は、制御基板58のバスを介して制御部59に電気的に接続され、各種信号を授受する機能と、外部電力を受付ける機能とを有している。
【0071】
また、無線充電受信器55は、無線充電器における受信器であって、充電コイルなどで構成されている。この無線充電受信器55は、
図9に示すように、バッテリー53の下方に位置し、かつ本体部50の筐体底部に近接するように、本体部50に内蔵されている。
【0072】
すなわち、無線充電受信器55、バッテリー53、及び制御基板58は、本体部50の内部において、下方から上方へ向けてこの順番で配置されている。これにより、無線充電受信器55が発する熱、及び無線充電受信器55のコイルで生じるノイズが、制御基板58に伝わることを、バッテリー53によって遮断している。
なお、無線充電受信器55は、制御基板58のバスを介して制御部59に電気的に接続されている。
【0073】
また、LEDランプ56は、
図1に示すように、操作受付部51に一体的に設けられるとともに、制御基板58のバスを介して制御部59に電気的に接続されている。このLEDランプ56は、制御部59の指示により、点灯、または消灯、あるいは点滅することで、加熱部40の状態を報知する機能を有している。
【0074】
また、ブザー部57は、詳細な図示を省略するが、制御基板58の上面に実装されるとともに、制御基板58のバスを介して制御部59に電気的に接続されている。このブザー部57は、制御部59の指示により、ブザー音を発報することで、加熱部40、及び本体部50の状態を報知する機能を有している。
【0075】
また、振動モーター45は、
図3及び
図9に示すように、加熱台座41の前部に内蔵されるとともに、制御基板58を介して制御部59に電気的に接続されている。この振動モーター45は、制御部59の指示によって振動することで、加熱部40、及び本体部50の状態を報知する機能を有している。
【0076】
具体的には、振動モーター45は、
図10(a)に示すように、上下方向に薄肉の略円板状であって、前後方向、及び幅方向に振動するように構成されている。
例えば、振動モーター45は、上下方向に延びる回転軸と、重心位置とは異なる位置が回転軸に固定された平板とで構成されることで、回転軸の回転を、前後方向、及び幅方向への振動に変換している。
【0077】
このような振動モーター45は、
図9及び
図10(a)に示すように、制御基板58に対して前方へ所定間隔を隔てた位置、かつ下刃43aの後方側に近接する位置において、後述するスライド機構部60のベースプレート62の上面に載置固定されている。
【0078】
また、制御部59は、制御基板58に実装されたCPUやメモリなどのハードウェアと、制御プログラムなどのソフトウェアとで構成されている。この制御部59は、各種プログラムを実行することで、所定のバスを介して接続された各部の動作を制御する機能を実現している。
【0079】
例えば、制御部59は、ヒーター44を介して光ファイバ1の被覆3を加熱する機能、加熱部40の状態を判定する機能、及び本体部50の状態を判定する機能を実現している。さらに、制御部59は、加熱部40の状態に応じた作業者への通知を、LEDランプ56、ブザー部57、及び振動モーター45に報知させる機能などを実現している。
【0080】
なお、上述した加熱部40及び本体部50の状態を判定する機能としては、例えば、ヒーター44との導通異常を判定するヒーター診断機能、被覆3の加熱が完了したか否かを判定する加熱完了判定機能、及びバッテリー53の充電状態や異常を判定するバッテリー診断機能がある。
【0081】
さらに、加熱部40及び本体部50の状態を判定する機能としては、例えば、LEDランプ56の不点灯を判定するランプ診断機能、操作受付部51の異常を判定する操作受付診断機能、及びブザー部57の異常を判定するブザー診断機能などがある。
【0082】
一方、作業者への通知を報知させる機能としては、例えば、ヒーター44の異常、被覆3の加熱完了、及びバッテリー53の充電状態や異常を、LEDランプ56の点灯、ブザー部57の発報、及び振動モーター45の振動によって報知させる機能がある。
【0083】
さらに、作業者への通知を報知させる機能としては、LEDランプ56の異常を、ブザー部57の発報、及び振動モーター45の振動によって報知させる機能と、操作受付部51の異常を、LEDランプ56の点灯、ブザー部57の発報、及び振動モーター45の振動によって報知させる機能がある。
加えて、作業者への通知を報知させる機能としては、ブザー部57の異常を、LEDランプ56の点灯、及び振動モーター45の振動によって報知させる機能などがある。
【0084】
また、スライド機構部60は、
図3及び
図10に示すように、加熱部40の内部に配設され、加熱部40に対して保持部20を支持するとともに、保持部20に保持された光ファイバ1の軸方向、すなわち前後方向に沿って保持部20をスライド移動可能にしている。
このスライド機構部60は、
図10に示すように、幅方向に所定間隔を隔てて配置された左右一対のスライドシャフト61と、スライドシャフト61を摺動可能に支持する金属製のベースプレート62とで構成されている。
【0085】
詳述すると、スライドシャフト61は、
図10に示すように、前後方向に延びる略円柱状の軸部と、軸部の直径よりも大径の略円板状で軸部の後端に一体形成された後端部とで構成されている。このスライドシャフト61は、
図5に示すように、その前端が保持台座21の筐体に締結固定されている。
なお、スライドシャフト61は、加熱部40に保持部20が当接した状態において、後端部が、後述する助力機構部70の押圧部材72に近接、または当接する前後方向の長さに形成されている。
【0086】
一方、ベースプレート62は、
図9及び
図10に示すように、下刃43aの後方に近接する位置で、加熱台座41の筐体底部に締結固定される略板状の固定部62aと、固定部62aの幅方向両端に設けた前後方向に延びる略筒状のシャフト支持部62bとで一体形成されている。
【0087】
このベースプレート62の固定部62aにおける上面には、
図10(a)に示すように、上述した振動モーター45が下刃43aに近接して載置固定されている。
さらに、ベースプレート62のシャフト支持部62bは、
図5に示すように、その内部に配設されたブッシュ63を介して、スライドシャフト61の軸部を支持している。
【0088】
また、助力機構部70は、
図3及び
図10に示すように、加熱部40の内部に配設されている。この助力機構部70は、光ファイバ1を保持した保持部20に対して、後方から前方への付勢力を付与して、保持部20のスライド移動を助力する機構部である。
さらに、助力機構部70には、光ファイバ1を保持していない保持部20に対する後方から前方への付勢力の付与を、下方から上方への付勢力によって規制する機構を備えている。
【0089】
詳述すると、助力機構部70は、
図10に示すように、スライドシャフト61の間を前後方向に延びる一対の丸棒材71と、丸棒材71に支持され、スライドシャフト61の後端部に当接する押圧部材72と、後方から前方への付勢力を押圧部材72に付与する一対の第1付勢バネ73とを備えている。
【0090】
さらに、助力機構部70は、
図3、
図9、及び
図10に示すように、保持部20に対する後方から前方への付勢力の付与を規制する手段として、押圧部材72に係止される規制部材74と、下方から上方への付勢力を規制部材74に付与する第2付勢バネ75とを備えている。
【0091】
一対の丸棒材71は、
図10に示すように、幅方向に所定間隔を隔てた位置で、その前端がベースプレート62の固定部62aに締結固定されている。この丸棒材71は、その後端が規制部材74の後面に略一致する前後方向の長さで形成されている。
【0092】
また、押圧部材72は、
図10に示すように、一対のスライドシャフト61の間に位置する平板状の中央部72aと、中央部72aの幅方向両端に設けた端部72bとで一体形成されている。
具体的には、押圧部材72の中央部72aは、
図10に示すように、前後方向に厚みを有する平板状に形成されている。この中央部72aには、
図9及び
図10に示すように、幅方向略中央に上方へ向けて凹設した切欠きと、切欠きの幅方向外側で丸棒材71が挿通される開口とが形成されている。
【0093】
一方、押圧部材72の端部72bは、
図10に示すように、中央部72aの幅方向両端から後方へ延設したのち、スライドシャフト61の後端部に対面するように幅方向外側へ向けて延設されている。なお、押圧部材72の端部72bは、
図10に示すように、保持部20が加熱部40に当接した状態において、スライドシャフト61の後端部に近接または当接する位置に形成されている。
【0094】
また、一対の第1付勢バネ73は、
図10(b)に示すように、所謂、コイルバネであって、押圧部材72よりも後方に突出した丸棒材71に挿通されている。この第1付勢バネ73は、前端が押圧部材72の中央部72aに当接し、後端が加熱部40と本体部50とを隔てる筐体内壁30aに当接することで、後方から前方への付勢力を押圧部材72に付与している。
【0095】
また、規制部材74は、
図3、
図9、及び
図10に示すように、押圧部材72の後方に配置されている。この規制部材74は、第2付勢バネ75が収容されるバネ収容部74aと、バネ収容部74aから押圧部材72の下方をとおって前方へ延びて、押圧部材72に係止される係止部74bと、バネ収容部74aから押圧部材72の上方をとおって幅方向右側へ延設された延設部74cとで一体形成されている。
なお、規制部材74は、
図9に示すように、上下方向に延びるとともに、下端が加熱台座41の筐体底部に締結固定された柱状部材76に、バネ収容部74aを挿通することで支持されている。
【0096】
具体的には、バネ収容部74aには、
図9及び
図10に示すように、第2付勢バネ75を収容する空間が下方から上方へ向けて凹設されるとともに、柱状部材76が挿通される挿通孔が開口形成されている。
係止部74bは、
図3及び
図9に示すように、押圧部材72の前方で上方へ突出した爪部分を先端に有する形状に形成されている。
【0097】
延設部74cは、
図10(a)に示すように、バネ収容部74aから右側へ延設されたのち、前方へ向けて延設されている。この延設部74cの先端には、
図10(a)に示すように、上方へ向けて突出した平面視略矩形の矩形突起74dが突設されている。
【0098】
この矩形突起74dは、
図11(a)及び
図11(b)に示すように、加熱蓋42が閉じた状態において、加熱蓋42の押圧突起42aが当接するように、加熱台座41の上面右側に設けた開口に遊嵌されている。
【0099】
また、第2付勢バネ75は、所謂、コイルバネであって、
図9及び
図10に示すように、柱状部材76に挿通された状態で、規制部材74のバネ収容部74aに収容されている。なお、第2付勢バネ75は、上端が規制部材74に当接し、下端が加熱台座41の筐体底部に当接することで、下方から上方への付勢力を規制部材74に付与している。
【0100】
このような助力機構部70を有する被覆除去装置10は、
図9に示すように、保持蓋22が開いた状態では、第2付勢バネ75の付勢力によって、規制部材74の係止部74bが押圧部材72に係止されている。
【0101】
引き続き、上述した構成の被覆除去装置10において、光ファイバ1を加熱して、被覆3を除去する工程について
図12から
図14を用いて説明する。
なお、
図12は光ファイバ1の被覆3を除去する工程の概略を説明する説明図であり、
図12(a)は光ファイバ1が載置された状態の被覆除去装置10の外観斜視図を示し、
図12(b)は保持蓋22、及び加熱蓋42が閉じた状態の被覆除去装置10の外観斜視図を示している。
【0102】
さらに、
図13は押圧部材72がスライドシャフト61を押圧した状態の断面図を示し、
図14は保持部20がスライド移動した状態における被覆除去装置10の外観斜視図を示している。
また、図示を明確にするため、
図13中において、光ファイバ1、ホルダ4、バッテリー53、無線充電受信器55、及び制御基板58の図示を省略している。
【0103】
まず、作業者は、被覆除去装置10の操作受付部51を操作して、電源ボタンを押下する。電源ボタンが押下された被覆除去装置10の制御部59は、ヒーター診断機能、バッテリー診断機能、ランプ診断機能、操作受付診断機能、及びブザー診断機能によって、加熱部40、及び本体部50の各部の状態を再び電源ボタンが押下されるまで繰り返し判定する。
【0104】
この際、加熱部40、及び本体部50の各部のうち、いずれかに異常が生じていることを検知した場合、制御部59は、作業者への通知である加熱部40または本体部50の異常を、LEDランプ56の点灯、ブザー部57の発報、及び振動モーター45の振動によって報知する。
電源ボタンを押下した作業者は、保持部20を加熱部40に当接させた状態の被覆除去装置10に、ホルダ4を装着した光ファイバ1を載置する。
【0105】
具体的には、作業者は、
図12(a)に示すように、保持部20における保持台座21のホルダ載置部分21aにホルダ4を載置し、ホルダ4よりも後方側に突出した光ファイバ1を、加熱台座41のヒーター44に載置する。
その後、作業者は、
図12(b)に示すように、保持台座21の上面を覆うように保持蓋22を閉じる。これにより、保持部20は、ホルダ4を介して、光ファイバ1を保持する。
【0106】
さらに、作業者は、
図12(b)に示すように、加熱台座41の上面を覆うように加熱蓋42を閉じる。これにより、加熱部40は、光ファイバ1を保持するとともに、切り刃43によって被覆3に切れ込みを入れる。
なお、保持蓋22、及び加熱蓋42を閉じた作業者は、保持部20のスライド移動に備えて、例えば、加熱部40の前端近傍を左手で把持し、保持部20を右手で把持する。
【0107】
加熱蓋42が閉じられると、加熱蓋42のマグネット部52aが、本体部50のスイッチ部52bに近接するため、マグネットスイッチ52は、閉回路となる。マグネットスイッチ52が閉回路になったことを検知すると、被覆除去装置10の制御部59は、ヒーター44に電力を供給して、被覆3の加熱を開始する。
【0108】
被覆3と裸ファイバ2との密着力が小さくなる温度までヒーター44を昇温させる、あるいは所定時間経過までヒーター44を昇温させると、制御部59は、LEDランプ56の点灯、ブザー部57の発報、及び振動モーター45の振動によって、被覆3の加熱完了を作業者に報知する。
【0109】
この際、制御部59は、ブザー部57の発報による報知、及び振動モーター45の振動による報知を所定時間だけ行うとともに、加熱蓋42が開いた状態になるまでLEDランプ56の点灯による報知を行う。
【0110】
被覆3の加熱完了を知ると、作業者は、第2付勢バネ75の付勢力に抗して、左手で加熱蓋42を押圧しながら、右手で保持部20を後方から前方へ向けて引っ張る。
この際、加熱蓋42の押圧突起42aが助力機構部70の矩形突起74dを押圧するため、規制部材74は、
図11及び
図13に示すように、第2付勢バネ75の付勢力に抗して下方へ移動して、係止部74bが押圧部材72から離脱する。このようにして、助力機構部70は、押圧部材72への規制部材74の係止を解除する。
【0111】
規制部材74の係止部74bが押圧部材72から離脱すると、助力機構部70の第1付勢バネ73は、
図13に示すように、押圧部材72の中央部72aを後方から前方へ向けて押圧開始する。この際、押圧部材72の端部72bがスライドシャフト61の後端部に当接して押圧するため、保持部20は、スライドシャフト61を介して、後方から前方へ向けて押圧される。
【0112】
すなわち、保持部20には、後方から前方へ向けた作業者による引張荷重と、後方から前方へ向けた第1付勢バネ73の付勢力とが作用することになる。これにより、助力機構部70は、保持部20をスライド移動させる作業者を、第1付勢バネ73の付勢力によって助力して、加熱部40に対する保持部20のスライド移動を容易にしている。
そして、被覆除去装置10は、
図14に示すように、後方から前方へ向けた保持部20のスライド移動によって、光ファイバ1の被覆3を除去して、裸ファイバ2を露出させている。
【0113】
以上のように、被覆除去装置10は、光ファイバ1の被覆3を、前後方向に沿って除去する装置である。この被覆除去装置10は、光ファイバ1の被覆3に切れ込みを入れる切り刃43、及び切り刃43よりも被覆先端側の被覆3を加熱するヒーター44を有する加熱部40と、ヒーター44が電気的に接続された制御基板58を有する本体部50と、切り刃43を挟んでヒーター44とは逆側の光ファイバ1を保持する保持部20とを備えている。
【0114】
さらに、被覆除去装置10は、前後方向に沿って離間するように、加熱部40に対して保持部20をスライド移動可能にするスライド機構部60を備えている。この本体部50、加熱部40、及び保持部20は、後方から前方に向けてこの順で配置されている。
そして、加熱部40は、作業者への通知を振動で報知する振動モーター45を備えたものである。
【0115】
これによれば、被覆除去装置10は、作業者への通知を容易に作業者に伝えることができる。
具体的には、作業者は、被覆除去装置10を把持する際、本体部50ではなく加熱部40を一方の手で把持することが多い。そこで、振動モーター45を加熱部40に配置したことにより、被覆除去装置10は、本体部50に振動モーターを配置した場合に比べて、振動モーター45の振動をより作業者に伝えることができる。このため、作業者は、被覆除去装置10に視線を向けていない状態であっても、作業者への通知を、触覚を通じて知ることができる。
【0116】
さらに、作業者が被覆除去装置10を注視し続ける必要がないため、被覆除去装置10は、作業者にかかる負担を低減できるだけでなく、作業者が被覆3を加熱しながら、次の光ファイバ1へ視線を向けやすくなる。このため、被覆除去装置10は、作業者への通知を伝えるだけでなく、作業効率の向上を図ることができる。
【0117】
加えて、制御基板58に対して振動モーター45を前後方向に離間して配置できるため、被覆除去装置10は、振動モーター45の振動が制御基板58に伝達されることを、制振部材などを設けることなく抑えられる。このため、被覆除去装置10は、振動モーター45の振動によって制御基板58に意図しない不具合が生じることを防止できる。
【0118】
また、振動モーター45は、加熱部40の切り刃43に近接して配置されている。
これにより、被覆除去装置10は、振動モーター45の振動をより確実に作業者に伝えることができる。
【0119】
具体的には、保持部20にスライド移動のための引張力を作用させるとともに、被覆3を確実に除去するため、作業者は、加熱部40の切り刃43近傍を把持することが多い。そこで、振動モーター45を切り刃43に近接して配置したことにより、被覆除去装置10は、切り刃43から離間した位置に振動モーター45を配置した場合に比べて、振動モーター45の振動をより確実に作業者に伝えることができる。
【0120】
また、加熱部40は、その筐体に固定される金属製のベースプレート62を備えている。そして、振動モーター45は、ベースプレート62に固定されたものである。
これにより、被覆除去装置10は、振動モーター45の振動を、金属製のベースプレート62で増幅して、加熱部40の筐体に伝達することできる。
【0121】
このため、被覆除去装置10は、小型の振動モーター45であっても、振動モーター45の振動を確実に作業者に伝えることができる。これにより、作業者は、筐体に触れているだけの状態であっても、作業者への通知を知ることができる。
加えて、被覆除去装置10は、振動モーター45を備えた場合であっても、その大きさが大型化することを抑えられる。
【0122】
また、スライド機構部60は、一端が保持部20に固定されたスライドシャフト61を備えたものである。そして、ベースプレート62は、スライドシャフト61を摺動可能に支持する構成である。
これにより、被覆除去装置10は、スライドシャフト61を確実に支持できるため、保持部20のスライド移動をより安定させることができる。
【0123】
さらに、被覆除去装置10は、振動モーター45の振動を、スライドシャフト61を介して保持部20にも伝達することができる。このため、被覆除去装置10は、加熱部40を把持する作業者の手、及び保持部20を把持する作業者の手の双方に、振動モーター45の振動を伝えることができる。これにより、被覆除去装置10は、作業者への通知をより確実に作業者に知らせることができる。
【0124】
また、被覆除去装置10は、光ファイバ1を保持した保持部20に対して前後方向への付勢力を付与して、保持部20のスライド移動を助力する助力機構部70を備えている。この助力機構部70は、光ファイバ1を保持していない保持部20への付勢力の付与を、上下方向への付勢力によって規制する規制部材74を備えている。さらに、振動モーター45は、上下方向に対して略直交する方向に振動する構成である。
【0125】
これにより、被覆除去装置10は、助力機構部70により、保持部20のスライド移動を容易にすることができる。
さらに、規制部材74に作用する付勢力の付勢方向と、振動モーター45が振動する振動方向とが互いに略直交しているため、被覆除去装置10は、振動モーター45の振動によって、規制部材74に作用する付勢力にバラツキが生じることを抑えられる。
【0126】
これにより、被覆除去装置10は、保持部20への付勢力の付与を規制部材74によって規制された状態が、振動モーター45の振動によって解除されることを防止できる。このため、被覆除去装置10は、保持部20が意図せずスライド移動することを防止できる。
【0127】
また、本体部50は、ヒーター44及び振動モーター45の動作を制御する制御部59が備えられている。この制御部59は、被覆3の加熱が完了した際、振動モーター45を振動させるものである。
これにより、被覆除去装置10は、作業者が被覆除去装置10に視線を向けていない場合、あるいは周囲の騒音が大きい場合であっても、被覆3の加熱完了を作業者に伝えることができる。
【0128】
また、加熱部40は、作業ラインにおける所定の設置箇所に固定するためのネジ孔41aが設けられたものである。
これにより、被覆除去装置10は、光ファイバ1の被覆3を除去してコネクタなどを装着する作業ラインに設けた所定の設置箇所に固定して用いることができる。
【0129】
さらに、加熱部40の筐体を貫通し、ベースプレート62にネジ山を有するネジ孔41aを設けているため、被覆除去装置10は、ベースプレート62で増幅した振動モーター45の振動を所定の設置箇所に伝達することができる。このため、被覆除去装置10は、作業者への通知を、より確実に作業者に伝えることができる。
【0130】
また、被覆除去装置10は、作業者への通知を発報によって報知するブザー部57を備えたものである。
これにより、被覆除去装置10は、作業者への通知を、振動モーター45の振動と、ブザー部57の発報とによって、作業者に伝えることができる。つまり、作業者は、作業者への通知を、触覚及び聴覚を通じて知ることができる。このため、被覆除去装置は、作業者への通知を、さらに確実に作業者に伝えることができる。
【0131】
また、切り刃43は、被覆3を挟み込むようにして切れ込みを入れる下刃43a及び上刃43bで構成されている。さらに、加熱部40は、下刃43aと上刃43bとの所定の隙間Gを回動によって変更する隙間調整片46を備えたものである。
【0132】
これにより、被覆除去装置10は、切り刃43を着脱することなく、下刃43aと上刃43bとの所定の隙間Gを容易に変更することができる。このため、被覆除去装置10は、例えば、光ファイバ1を配線する現場において、肉厚の異なる光ファイバ1の被覆3の除去を容易にすることができる。
【0133】
また、光ファイバ1を保持した保持部20に対して前後方向への付勢力を付与して、保持部20のスライド移動を助力する助力機構部70を備えたことにより、被覆除去装置10は、保持部20をスライド移動させる作業者を手助けすることができるため、作業者の負担を軽減することができる。
【0134】
また、USBケーブルの挿脱方向及びバッテリー53の挿脱方向が同じため、被覆除去装置10は、例えば、作業ライン上に設けた所定の設置箇所に固定された場合であっても、USBケーブルを介した給電、及びバッテリー53の交換を容易にすることができる。このため、被覆除去装置10は、電源の確保にかかる作業性の向上を図ることができる。
【0135】
さらに、USBケーブルの挿脱方向及びバッテリー53の挿脱方向を同じにしたことにより、被覆除去装置10は、USBケーブルの挿脱方向及びバッテリー53の挿脱方向が異なる場合に比べて、水の侵入経路を限定的にできるため、止水構造の簡略化を図ることができる。
【0136】
この発明の構成と、上述の実施形態との対応において、
この発明の光ファイバの軸方向は、実施形態の前後方向に対応し、
以下同様に、
作業者への通知は、ヒーター44の異常、被覆3の加熱完了、バッテリー53の充電状態や異常、LEDランプ56の異常、操作受付部51の異常、及びブザー部57の異常に対応し、
振動報知部は、振動モーター45に対応し、
所定方向は、前後方向に対応し、
所定方向に対して略直交する方向は、上下方向に対応し、
隙間調整部は、隙間調整片46に対応するが、
この発明は、上述の実施形態の構成のみに限定されるものではなく、多くの実施の形態を得ることができる。
【0137】
例えば、上述した実施形態において、被覆3の加熱完了、ヒーター44の異常、バッテリー53の充電状態や異常、LEDランプ56の異常、操作受付部51の異常、及びブザー部57の異常が検知された場合、振動モーター45の振動によって報知する構成としたが、これに限定せず、上述した各部の異常のうち、少なくとも1つの異常を振動モーター45の振動によって報知する構成であってもよい。
【0138】
また、制御部59は、加熱部40の状態、及び本体部50の状態に応じて、振動モーター45を振動させるか、ブザー部57を発報させるかを決定してもよい。例えば、ヒーター44の異常やバッテリー53の異常を検知した場合、制御部59は、作業者への通知であるヒーター44の異常やバッテリー53の異常を、振動モーター45の振動によって報知する。一方で、被覆3の加熱完了を検知した場合、制御部59は、作業者への通知である被覆3の加熱完了を、ブザー部57の発報によって報知する。
このように、作業者に伝える通知に応じて、振動モーター45を振動させる、またはブザー部57を発報させることで、被覆除去装置10は、作業者への通知を、作業者がより容易に識別することができる。
【0139】
また、被覆3の加熱完了を、振動モーター45の振動及びブザー部57の発報によって報知したが、被覆3の加熱完了を、振動モーター45またはブザー部57のいずれか一方によって報知する構成であってもよい。この場合、振動モーター45または/およびブザー部57による加熱完了の報知を、作業者による操作を操作受付部51で受付けて選択設定する構成であってもよい。
これにより、被覆除去装置10は、振動モーター45を振動させる、またはブザー部57を発報させるかを、例えば被覆3が除去される現場の環境に応じて作業者に選択させることができる。
【0140】
さらに、操作受付部51で受付けた設定に応じてLEDランプ56の点灯色を異ならせることで、加熱完了の報知が振動または/および音によって行われることを作業者に報知してもよい。例えば、被覆3の加熱完了を振動モーター45の振動で報知する場合、LEDランプ56を黄色に点灯させ、ブザー部57の発報で報知する場合、LEDランプ56を青色に点灯させ、振動モーター45及びブザー部57で報知する場合、LEDランプ56を緑色に点灯させる。
【0141】
また、制御部59が、振動モーター45の振動による報知を所定時間だけ行う構成としたが、これに限定せず、例えば、振動モーター45の振動による報知を、加熱蓋42が開いた状態になるまで行う構成であってもよい。
【0142】
また、装置本体30のマグネットスイッチ52を、マグネット部52aとスイッチ部52bとが近接した際、閉回路となる構成としたが、これに限定せず、マグネット部52aとスイッチ部52bとが近接した際、開回路となる構成であってもよい。この場合、制御部59は、マグネットスイッチ52が開回路になったことを検知して、ヒーター44に電力を供給する。
【0143】
また、作業者への通知を振動によって報知する振動モーター45としたが、これに限定せず、振動によって報知可能な振動報知手段であれば、適宜の構成であってもよい。
また、振動モーター45を加熱台座41の筐体底部に配置したが、これに限定せず、幅方向における加熱台座41の側面をなす筐体側部に配置してもよい。あるいは、上下方向に振動する振動モーターとしてもよい。
この場合、助力機構部は、規制部材が押圧部材に対して幅方向から係止され、第2付勢バネが規制部材に対して幅方向への付勢力を付与する構成でもよい。
【0144】
また、加熱部40の内部に助力機構部70を備えた被覆除去装置10としたが、これに限定せず、助力機構部70を備えていない被覆除去装置としてもよい。あるいは、別の実施形態における被覆除去装置100の外観斜視図を示す
図15及び
図16に示すように、加熱部110ではなく保持部120の内部に助力機構部130を備えた被覆除去装置100としてもよい。
なお、
図15は別の実施形態における被覆除去装置100の外観斜視図を示し、
図16は筐体の一部を取外した状態の被覆除去装置100の外観斜視図を示している。
【0145】
具体的には、被覆除去装置100の助力機構部130は、
図15及び
図16に示すように、保持台座121の内部に配置された押圧部材131と、前方から後方への付勢力を押圧部材131に付与する一対の第1付勢バネ132と、押圧部材131の前方に配置された被押圧部材133とを備えている。
【0146】
さらに、助力機構部130は、
図16及び
図17に示すように、押圧部材131に係止される係止部134aを後端に有する規制部材134と、上方から下方への付勢力を規制部材134に付与する第2付勢バネ135とを備えている。
【0147】
押圧部材131は、
図16に示すように、前後方向に厚みを有する略平板状であって、幅方向の両端にスライドシャフト111が挿通される開口を有する形状に形成されている。
被押圧部材133は、
図16に示すように、その前端がベースプレート112に固定され、保持台座121の前面に設けた開口を介して内部に突出した厚肉の板状に形成されている。
【0148】
規制部材134は、
図16及び
図17に示すように、幅方向を回転軸として回動可能な状態で、保持台座21の筐体に支持されている。この規制部材134は、
図16及び
図17に示すように、回転軸から後方へ延びて、押圧部材131に上方から係止される係止部134aと、回転軸から前方へ延びる延設部134bとで一体形成されている。
【0149】
さらに、延設部134bの先端には、保持台座21の上面開口を介して外部に露出するとともに、保持蓋122に設けた押圧突起122aに押圧される矩形突起134cが上方へ向けて突設されている。
第2付勢バネ135は、
図16及び
図17(a)に示すように、規制部材134の係止部134aに対して上方から下方への付勢力を付与するように配置されている。
【0150】
このような助力機構部130を有する被覆除去装置100は、
図17(a)に示すように、保持蓋122が開いた状態では、第2付勢バネ135の付勢力によって、規制部材134の係止部134aが押圧部材131に係止されている。
【0151】
そして、保持蓋122が閉じられた際、保持蓋122の押圧突起122aは、
図17(b)に示すように、第2付勢バネ135の付勢力に抗して規制部材134の矩形突起134cを押圧する。このため、規制部材134は、
図17(b)に示すように、回転軸を中心に係止部134aが上方へ向かうように回動する。
【0152】
規制部材134が回動すると、係止部134aが押圧部材131から離脱するため、第1付勢バネ132は、押圧部材131を介して、被押圧部材133を前方から後方へ向けて押圧開始する。換言すると、第1付勢バネ132は、被押圧部材133が加熱部110に固定されているため、保持部120に対して後方から前方への押圧荷重を付与する。
【0153】
これにより、助力機構部130は、保持部120をスライド移動させる作業者を、第1付勢バネ132の付勢力によって助力して、加熱部110に対する保持部120のスライド移動を容易にしている。このように、被覆除去装置100は、上述の実施形態と同様の効果を奏することができる。
【0154】
また、被覆除去装置10は、上述した構成に限定せず、適宜の構成をさらに備えてものであってもよい。例えば、
図18に示すように、被覆除去装置10の装置本体30における上面に、可倒式照明部31を備えてもよい。
【0155】
具合的には、可倒式照明部31は、
図18に示すように、本体部50の筐体上面に凹設した凹溝に収容可能な前後方向に延びる略柱状であって、前端が本体部50の筐体上部に回転自在に支持されている。さらに、可倒式照明部31は、
図18に示すように、収容状態における後端上面にLEDランプ31aを備えている。
【0156】
この可倒式照明部31は、
図18(a)に示すように、本体部50の上面に収容するように倒した状態では、作業者への通知をLEDランプ31aの点灯または点滅によって報知する報知手段として機能するように構成されている。
さらに、可倒式照明部31は、
図18(b)に示すように、LEDランプ31aが保持台座21を向くように起立した状態では、LEDランプ31aが保持台座21、及び加熱台座41を照らす照明として機能するように構成されている。
【0157】
これにより、被覆除去装置10は、被覆3の除去にかかる作業性の向上を図ることができる。さらに、作業者への通知を点灯または点滅によって報知する報知部として可倒式照明部31を機能させることで、被覆除去装置10は、作業者への通知を、より確実に作業者に伝えることができる。
【0158】
また、例えば、
図19及び
図20に示すように、装置本体30における本体部50の前面に照明部32を備えるとともに、照明部32が照射した照射光を上方へ反射する反射部33を加熱蓋42に備えた被覆除去装置10であってもよい。
【0159】
具体的には、照明部32は、
図19(a)及び
図20(a)に示すように、本体部50の前面上部における幅方向中央に設けられている。この照明部32は、例えば、制御部59に電気的に接続されたLEDランプなどで構成され、加熱台座41の上面、及び加熱蓋42の下面へ向けて照射光を照射可能に配置されている。
【0160】
一方、反射部33は、
図19(b)及び
図20(b)に示すように、加熱蓋42が閉じた状態において、照明部32に対して前後方向で対向するように、加熱蓋42の後部に設けられている。この反射部33は、照明部32に前後方向で対向する加熱蓋42の後面と加熱蓋42の上面後部とに跨って開口形成された内部空間(符号省略)と、加熱蓋42の後面及び上面の開口をそれぞれ覆う透明板(符号省略)と、照明部32が照射した照射光を上方へ向けて偏向する鏡面33aとで構成されている。
【0161】
このような被覆除去装置10の照明部32は、
図20(a)に示すように、加熱蓋42の開閉状態に応じて点灯するように、その動作が制御部59によって制御されている。
例えば、加熱蓋42が開いた状態では、照明部32は、加熱台座41の上面、及び加熱蓋42の下面を照らす照明として機能するように、その動作が制御部59によって制御される。これにより、被覆除去装置10は、作業員による光ファイバ1の載置や、作業員による加熱台座41及び加熱蓋42の清掃を容易にすることができる。
【0162】
一方、加熱蓋42が閉じた状態では、照明部32は、例えば、被覆3の加熱が完了した際に点灯または点滅するように、制御部59によって制御される。この際、反射部33は、鏡面33aによって照明部32の照射光を上方へ向けて反射させ、加熱蓋42の上面に設けた透明板を介して、照明部32の照射光を外部に照射する。
これにより、被覆除去装置10は、加熱蓋42が閉じた状態であっても、照明部32の点灯または点滅を作業員へ知らせることができる。このため、被覆除去装置10は、例えば、被覆3の加熱完了を点灯または点滅によって報知する報知部として、照明部32を機能させることができる。
【0163】
このように、被覆除去装置10は、被覆3の除去にかかる作業性の向上を図ることができる。さらに、作業者への通知を点灯または点滅によって報知する報知部として照明部32を機能させることで、被覆除去装置10は、作業者への通知を、より確実に作業者に伝えることができる。
【符号の説明】
【0164】
1…光ファイバ
3…被覆
10…被覆除去装置
20…保持部
31…可倒式照明部
40…加熱部
41a…ネジ孔
43…切り刃
43a…下刃
43b…上刃
44…ヒーター
45…振動モーター
46…隙間調整片
50…本体部
57…ブザー部
58…制御基板
59…制御部
60…スライド機構部
61…スライドシャフト
62…ベースプレート
70…助力機構部
74…規制部材
100…被覆除去装置
110…加熱部
111…スライドシャフト
112…ベースプレート
120…保持部
130…助力機構部
134…規制部材