(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-20
(45)【発行日】2023-03-29
(54)【発明の名称】液晶組成物、モノマー/液晶混合物、高分子/液晶複合材料、液晶素子およびキラル化合物
(51)【国際特許分類】
C09K 19/54 20060101AFI20230322BHJP
C09K 19/30 20060101ALI20230322BHJP
C09K 19/34 20060101ALI20230322BHJP
G02F 1/13 20060101ALI20230322BHJP
G02F 1/1334 20060101ALI20230322BHJP
G02F 1/1337 20060101ALI20230322BHJP
【FI】
C09K19/54 B
C09K19/30
C09K19/34
G02F1/13 500
G02F1/1334
G02F1/1337 520
(21)【出願番号】P 2020513135
(86)(22)【出願日】2019-03-15
(86)【国際出願番号】 JP2019010899
(87)【国際公開番号】W WO2019198422
(87)【国際公開日】2019-10-17
【審査請求日】2021-11-25
(31)【優先権主張番号】P 2018075277
(32)【優先日】2018-04-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】311002067
【氏名又は名称】JNC株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】596032100
【氏名又は名称】JNC石油化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐郷 弘毅
(72)【発明者】
【氏名】山本 真一
(72)【発明者】
【氏名】藤田 浩章
【審査官】中田 光祐
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/003658(WO,A1)
【文献】特開2012-131987(JP,A)
【文献】特開2011-232753(JP,A)
【文献】特表2011-517464(JP,A)
【文献】特開2009-057459(JP,A)
【文献】国際公開第2016/198143(WO,A1)
【文献】Soft Matter,2014年,Vol. 10, No. 34,pp. 6582-6588
【文献】Journal of the American Chemical Society,1996年,Vol. 118, No. 23,pp. 5346-5352
【文献】Tetrahedron Letters,1992年,Vo. 33, No. 30,pp. 4341-4344
【文献】Tetrahedon Letters,1991年,Vol. 32, No. 14,pp. 1729-1732
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09K 19/00- 19/60
G02F 1/13
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
キラル成分(K)として式(K1)で表されるキラル化合物を少なくとも1つ含有し、アキラル成分(T)として式(1-A)または(1-B)で表されるアキラル化合物を少なくとも1つ含有する、液晶組成物。
【化1】
(式(K1)において、
R
k1はそれぞれ独立して、フッ素、塩素、-C≡N、炭素数1~10のアルキル、炭素数2~10のアルケニルであり、このアルキルにおいて、少なくとも1つの-CH
2-は-O-で置き換えられてもよいが、2つの連続する-CH
2-が-O-で置き換えられることはなく、これらの基において、少なくとも1つの水素はハロゲンで置き換えられてもよく;
Y
k1はそれぞれ独立して、単結合、または-(CH
2)
n-であり、nは1~20の整数であり;
nk1、およびnk2はそれぞれ独立して、0~4の整数であり、
Rod
k1は、部分構造式(Rod1)であり、
部分構造式(Rod1)において、
R
k2は水素、フッ素、塩素、-C≡N、炭素数1~10のアルキル、炭素数2~10のアルケニルであり
、これらの基において、少なくとも1つの水素はハロゲンで置き換えられてもよく;
環A
k1、環A
k2、および環A
k3はそれぞれ独立して、1,4-シクロヘキシレン、1,4-フェニレン、少なくとも1つの水素がフッ素で置き換えられた1,4-フェニレン、1,3-ジオキサン-2,5-ジイル、テトラヒドロピラン-2,5-ジイル、またはピリミジン-2,5-ジイルであり;
Z
k1、Z
k2、およびZ
k3はそれぞれ独立して、単結合、-CH
2CH
2-、-COO-、-OCO-、-OCH
2-、-CH
2O-、-CF
2O-、-OCF
2-、-CH=CH-、-CF
2CF
2-、-CF=CF-、または-C≡C-であり;
mk1、およびmk2はそれぞれ独立して、0または1の整数である。
また、下記に示す、環構造に0~4つのR
k1が連結した部分構造(X1)および(X2)では、環構造を形成する水素のうち、0~4つの水素が、R
k1で置き換えられていてもよい。)
【化2】
【化3】
(式(1-A)および(1-B)において、
R
11およびR
12はそれぞれ独立して、水素、炭素数1~10のアルキル、炭素数1~10のアルコキシ、または炭素数2~10のアルケニルであり、このアルキルおよびアルケニルにおいて、少なくとも1つの-CH
2-は-O-で置き換えられてもよいが、2つの連続する-CH
2-が-O-で置き換えられることはなく、これらの基において、少なくとも1つの水素はハロゲンで置き換えられてもよく;
環A
11、環A
12、および環A
13はそれぞれ独立して、1,4-シクロヘキシレン、1,4-フェニレン、少なくとも1つの水素がフッ素で置き換えられた1,4-フェニレン、1,3-ジオキサン-2,5―ジイル、テトラヒドロピラン-2,5-ジイル、ま
たはピリミジン-2,5-ジイルであり;
Z
11、Z
12、およびZ
13はそれぞれ独立して、単結合、-CH
2CH
2-、-COO-、-OCO-、-CH
2O-、-OCH
2-、-CF
2O-、-OCF
2-、-C
H=CH-、-CF=CF-、または-C≡C-であり;
X
11はフッ素、塩素、-SF
5、-CHF
2、-CF
3、-CF
2CH
2F、-CF
2CHF
2、-CF
2CF
3、-(CF
2)
3-F、-CF
2CHFCF
3、-CHFCF
2CF
3、-(CF
2)
4-F、-(CF
2)
5-F、-OCHF
2、-OCF
3、-OCF
2CH
2F、-OCF
2CHF
2、-OCH
2CF
3、-OCF
2CF
3、-O-(CF
2)
3-F、-OCF
2CHFCF
3、-OCHFCF
2CF
3、-O-(CF
2)
4-F、-O-(CF
2)
5-F、-CH=CF
2、-CH=CHCF
3、または-CH=CHCF
2CF
3であり;
L
11およびL
12はそれぞれ独立して、水素またはフッ素であり;
L
13およびL
14はそれぞれ独立して、水素、フッ素、塩素、または-C≡Nであるが、L
13およびL
14がともに水素であることはなく;
S
11は水素またはメチルであり;
mおよびnはそれぞれ独立して、0または1である。)
【請求項2】
式(K1)で表されるキラル化合物が、式(K1-1)で表されるキラル化合物である、請求項1に記載の液晶組成物。
【化4】
(式(K1-1)において、
R
k1はそれぞれ独立して、フッ素、塩素、-C≡N、炭素数1~10のアルキル、または炭素数2~10のアルケニルであり、このアルキルにおいて、少なくとも1つの-CH
2-は-O-で置き換えられてもよいが、2つの連続する-CH
2-が-O-で置き換えられることはなく、これらの基において、少なくとも1つの水素はハロゲンで置き換えられてもよく;
nk1、およびnk2はそれぞれ独立して、0~4の整数であり、
Rod
k1は、部分構造式(Rod1-1)または(Rod1-2)であり、
部分構造式(Rod1-1)および(Rod1-2)において、
R
k2は水素、フッ素、塩素、-C≡N、炭素数1~10のアルキル、または炭素数2~10のアルケニルであり
、これらの基において、少なくとも1つの水素はハロゲンで置き換えられてもよく;
環A
k1、環A
k2、および環A
k3はそれぞれ独立して、1,4-シクロヘキシレン、1,4-フェニレン、少なくとも1つの水素がフッ素で置き換えられた1,4-フェニレン、1,3-ジオキサン-2,5-ジイル、テトラヒドロピラン-2,5-ジイル、またはピリミジン-2,5-ジイルであり;
Z
k2およびZ
k3はそれぞれ独立して、単結合、-CH
2CH
2-、-COO-、-OCO-、-OCH
2-、-CH
2O-、-CF
2O-、-OCF
2-、-CH=CH-、-CF
2CF
2-、-CF=CF-、または-C≡C-であり;
mk1、およびmk2はそれぞれ独立して、0または1の整数である。
また、下記に示す、環構造にR
k1が連結した部分構造(X1)および(X2)では、
環構造を形成する水素のうち、0~4つの水素が、R
k1で置き換えられていてもよい。)
【化5】
【請求項3】
式(K1-1)において、
R
k1はそれぞれ独立して、炭素数1~10のアルキル、または炭素数2~10のアルケニルであり、このアルキルにおいて、少なくとも1つの-CH
2-は-O-で置き換えられてもよいが、2つの連続する-CH
2-が-O-で置き換えられることはなく、これらの基において、少なくとも1つの水素はハロゲンで置き換えられてもよく;
nk1、およびnk2はそれぞれ独立して、0~4の整数であり、
Rod
k1は下記に示される部分構造式(Rod1-1A)~(Rod1-1H)及び(Rod1-2A)~(Rod1-2H)のいずれかである、請求項2に記載の液晶組成物。
【化6】
【化7】
(部分構造式(Rod1-1A)~(Rod1-1H)及び(Rod1-2A)~(Rod1-2H)において、
R
k2は水素、炭素数1~10のアルキル、または炭素数2~10のアルケニルであり
、これらの基において、少なくとも1つの水素はハロゲンで置き換えられてもよく;
また、下記に示す1,4-フェニレンに(F)が連結した部分構造(X3)は、1つまたは2つの水素がフッ素で置き換えられていてもよい1,4-フェニレンを示す。)
【化8】
【請求項4】
式(1-A)で表されるアキラル化合物が、式(1-A-01)~(1-A-22)で表されるいずれかのアキラル化合物である、請求項1~3のいずれか一項に記載の液晶組成物。
【化9】
【化10】
【化11】
式(1-A-01)~式(1-A-22)において、
R
11は独立して、炭素数1から10のアルキルまたは炭素数2から10のアルケニルであり、このアルキルおよびアルケニルにおいて、少なくとも1つの-CH
2-は-O-で置き換えられてもよいが、2つの連続する-CH
2-が-O-で置き換えられることはなく;
環A
11および環A
12は独立して、1,4-シクロヘキシレン、またはテトラヒドロピラン-2,5-ジイル、またはピリミジン-2,5-ジイルであり;
X
11は独立して、フッ素、塩素、-CF
3、または-OCF
3であり;
(F)は、水素またはフッ素である。
【請求項5】
式(1-B)で表されるアキラル化合物が、式(1-B-01)~(1-B-22)で表されるいずれかのアキラル化合物である、請求項1~3のいずれか一項に記載の液晶組成物。
【化12】
【化13】
式(1-B-01)~式(1-B-22)において、
R
11およびR
12は独立して、炭素数1から10のアルキルまたは炭素数2から10のアルケニルであり、このアルキルおよびアルケニルにおいて、少なくとも1つの-CH
2-は-O-で置き換えられてもよいが、2つの連続する-CH
2-が-O-で置き換えられることはなく;
環A
11および環A
12は独立して、1,4-シクロヘキシレン、またはテトラヒドロ
ピラン-2,5-ジイル、またはピリミジン-2,5-ジイルであり;
(F)は、水素またはフッ素である。
【請求項6】
液晶組成物におけるキラル成分(K)の含有量が、0.1~30重量%である請求項1~5のいずれか一項に記載の液晶組成物。
【請求項7】
アキラル成分(T)における、式(1-A)または(1-B)で表される化合物の含有量が50~100重量%である、請求項1~6のいずれか一項に記載の液晶組成物。
【請求項8】
アキラル成分(T)における、式(1-A)で表される化合物の含有量が50~100重量%であり、光学的等方性の液晶相を示す、請求項1~6のいずれか一項に記載の液晶組成物。
【請求項9】
キラル成分(K)に、さらに式(K2)~(K8)で表されるキラル化合物を少なくとも1つ含有する、請求項1~8のいずれか一項に記載の液晶組成物。
【化14】
(式(K2)~(K8)中、R
Kはそれぞれ独立して、水素、ハロゲン、-C≡N、-N=C=O、-N=C=Sまたは炭素数1~20のアルキルであり、このアルキル中の少なくとも1つの-CH
2-は、-O-、-S-、-COO-、-OCO-、-CH=CH-、-CF=CF-または-C≡C-で置き換えられてもよく、このアルキル中の少なくとも1つの水素はハロゲンで置き換えられてもよく;
A
Kはそれぞれ独立して、芳香族性の6~8員環、非芳香族性の3~8員環、または炭素数9~20の縮合環であり、これらの環中の少なくとも1つの水素はハロゲン、炭素数1~3のアルキルまたはハロアルキルで置き換えられてもよく、環の-CH
2-は-O-、-S-または-NH-で置き換えられてもよく、-CH=は-N=で置き換えられてもよく;
Y
Kはそれぞれ独立して、水素、ハロゲン、炭素数1~3のアルキル、炭素数1~3のハロアルキル、芳香族性の6~8員環、非芳香族性の3~8員環、または、炭素数9~20の縮合環であり、これらの環の少なくとも1つの水素がハロゲン、炭素数1~3のアルキルまたはハロアルキルで置き換えられてもよく、-CH
2-は-O-、-S-または-NH-で置き換えられてもよく、-CH=は-N=で置き換えられてもよく;
Z
Kはそれぞれ独立して単結合、または炭素数1~8のアルキレンであるが、少なくと
も1つの-CH
2-は、-O-、-S-、-COO-、-OCO-、-CSO-、-OCS-、-N=N-、-CH=N-、-N=CH-、-CH=CH-、-CF=CF-または-C≡C-で置き換えられてもよく、少なくとも1つの水素はハロゲンで置き換えられてもよく;
X
Kはそれぞれ独立して、単結合、-COO-、-OCO-、-CH
2O-、-OCH
2-、-CF
2O-、-OCF
2-、または-CH
2CH
2-であり;
mKはそれぞれ独立して、1~4の整数である。)
【請求項10】
請求項1~9のいずれか一項に記載の液晶組成物と、重合性モノマーとを含む、モノマー/液晶混合物。
【請求項11】
-20℃~70℃において、少なくとも1℃以上の温度範囲でキラルネマチック相を示し、この温度範囲の少なくとも一部において螺旋ピッチが700nm以下である、請求項10に記載のモノマー/液晶混合物。
【請求項12】
液晶組成物が光学的等方性の液晶相を有する液晶組成物である、請求項10に記載のモノマー/液晶混合物。
【請求項13】
重合性モノマーの含有量が、モノマー/液晶混合物の全量に対して0.1~50重量%の範囲である、請求項10~12のいずれか一項に記載のモノマー/液晶混合物。
【請求項14】
請求項10に記載のモノマー/液晶混合物を非液晶等方相または光学的等方性の液晶相で重合させることで得られる、光学的等方性の液晶相で駆動される液晶素子に用いられる、高分子/液晶複合材料。
【請求項15】
請求項10に記載のモノマー/液晶混合物を重合させることで得られる、キラルネマチック相で駆動する光散乱型の液晶素子に用いられる、高分子/液晶複合材料。
【請求項16】
電極を有する一対の基板と、該一対の基板の間に挟持される調光層と、該調光層に対して前記電極を介して電界を印加するための電界印加手段とを備える液晶素子であって、
前記一対の基板の少なくとも一方は透明であり、前記調光層が請求項14または15に記載の高分子/液晶複合材料から構成される、液晶素子。
【請求項17】
前記高分子/液晶複合材料がキラルネマチック相を示し、光散乱型の液晶素子を構成する、請求項16に記載の液晶素子。
【請求項18】
高分子/液晶複合材料における、高分子の含有量が、0.1~50重量%の範囲である、請求項16または17に記載の液晶素子。
【請求項19】
下記式(K101)、(K102)、または(K103)で表されるキラル化合物。
【化15】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、キラル成分とアキラル成分を含有する液晶組成物、モノマー/液晶混合物、高分子/液晶複合材料、液晶素子およびキラル化合物に関する。
【背景技術】
【0002】
光散乱型液晶表示用デバイスの実用化に要求される重要な特性である低電圧駆動を可能にする技術として、液晶組成物、キラル化合物および光重合性モノマーで構成されるキラルネマチック液晶組成物を用いた調光層が開示されている(特許文献1~3)。キラルネマチック液晶組成物に含有される光重合性モノマーを重合開始剤の存在下で光重合させることで製造された調光層は、低電圧駆動の液晶デバイスに使用されている。具体的には、外光や視界の遮断、透過を電気的に操作し得る液晶デバイスであり、特に建物の窓やショーウインドウ、室内のパーテーション、車のサンルーフ、リアウインドウなどで外光や視界を遮断・透過するための調光窓に利用されている。
ネマチック液晶材料における等方相(以下「非液晶等方相」ということがある)と同様に、光学的等方性の液晶相の一種であるブルー相においても電気複屈折値(等方性媒体に電界を印加した時に誘起される複屈折値)Δn(E)が電場Eの二乗に比例する現象であるカー効果[Δn(E)=KλE2(K:カー係数(カー定数)、λ:波長)]が観測される。また、ブルー相および高分子安定化ブルー相などの光学的等方性の液晶相において電場を印加し、電気複屈折を発現させるモードが開示されている(特許文献4~9、非特許文献1~3)。ブルー相は、このモードの表示素子への応用のみならず、電気複屈折を利用した波長可変フィルター、波面制御素子、液晶レンズ、収差補正素子、開口制御素子、光ヘッド装置などへの応用が提案されている(特許文献7~9)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平5-241119号公報
【文献】特開平5-281525号公報
【文献】特開平5-289064号公報
【文献】特開2003-327966号公報
【文献】国際公開第2005/90520号
【文献】特開2005-336477号公報
【文献】国際公開第2005/080529号
【文献】特開2005-157109号公報
【文献】特開2006-127707号公報
【非特許文献】
【0004】
【文献】Nature Materials, 1, 64, (2002)
【文献】Adv. Mater., 17, 96, (2005)
【文献】Journal of the SID, 14, 551, (2006)
【文献】Soft Matter, 10, 6582, (2014)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
キラルネマチック相、または光学的等方相を示す液晶組成物は、キラル成分とアキラル成分を含有する。一般に、キラル化合物のヘリカルツイストパワー(HTP)が大きいほど、より少量のキラル化合物の液晶組成物への添加で、液晶の螺旋ピッチを短くできる。そのため、少量のキラル化合物の添加で、目的とする螺旋ピッチを有する液晶組成物を実現することができる。また光学的等方性の液晶組成物に使用する場合には、少量のキラル化合物の添加で、キラルネマチック相、または光学的等方相が発現し、液晶素子として使用した場合に、駆動電圧の低下や、キラル化合物の析出の抑制といった効果が期待できる。上記の液晶組成物において、駆動電圧、応答速度などの液晶素子の特性に寄与しているのがアキラル成分であり、HTPが大きなキラル化合物を用いることによりアキラル成分の含有率を増やすことが可能となるためである。また、相溶性の良好なキラル化合物は、結果的に液晶組成物の相溶性を向上させることができ、液晶素子として使用した場合に低温を含めた広い温度範囲で駆動させることが可能になる。また液晶組成物を作成する際にも、溶解に必要な時間を大幅に短縮できるために効率的な製造が可能になり、製造コストを低減することができる。
【0006】
そこで、本発明の課題は、ヘリカルツイストパワー(HTP)が大きく、他の液晶化合物との相溶性が良好であり、耐光性などの信頼性が良好であるキラル成分とアキラル成分で構成され、駆動電圧が低く、高速応答であり、保存安定性が良好である液晶組成物および液晶素子を提供することである。また、外部の光に対して安定であり、外部で長期間使用することが可能な耐光性が優れた液晶組成物および液晶素子を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、鋭意研究の結果、キラル成分として9,10-エタノアントラセン系キラル化合物を使用し、そしてアキラル成分としてフッ素系の液晶化合物を使用した液晶組成物を使用することによって上記課題を解決できることを見出した。具体的には下記の通りである。
【0008】
[1] キラル成分(K)として式(K1)で表されるキラル化合物を少なくとも1つ含有し、アキラル成分(T)として式(1-A)または(1-B)で表されるアキラル化合物を少なくとも1つ含有する、液晶組成物。
【化1】
(式(K1)において、
R
k1はそれぞれ独立して、フッ素、塩素、-C≡N、炭素数1~10のアルキル、炭素数2~10のアルケニルであり、このアルキルにおいて、少なくとも1つの-CH
2-は-O-で置き換えられてもよいが、2つの連続する-CH
2-が-O-で置き換えられることはなく、これらの基において、少なくとも1つの水素はハロゲンで置き換えられてもよく;
Y
k1はそれぞれ独立して、単結合、または-(CH
2)
n-であり、nは1~20の整数であり;
nk1、およびnk2はそれぞれ独立して、0~4の整数であり、
Rod
k1は、部分構造式(Rod1)であり、
部分構造式(Rod1)において、
R
k2は水素、フッ素、塩素、-C≡N、炭素数1~10のアルキル、炭素数2~10のアルケニルであり、このアルキルにおいて、少なくとも1つの-CH
2-は-O-で置き換えられてもよいが、2つの連続する-CH
2-が-O-で置き換えられることはなく、これらの基において、少なくとも1つの水素はハロゲンで置き換えられてもよく;
環A
k1、環A
k2、および環A
k3はそれぞれ独立して、1,4-シクロヘキシレン、1,4-フェニレン、少なくとも1つの水素がフッ素で置き換えられた1,4-フェニレン、1,3-ジオキサン-2,5-ジイル、テトラヒドロピラン-2,5-ジイル、またはピリミジン-2,5-ジイルであり;
Z
k1、Z
k2、およびZ
k3はそれぞれ独立して、単結合、-CH
2CH
2-、-COO-、-OCO-、-OCH
2-、-CH
2O-、-CF
2O-、-OCF
2-、-CH=CH-、-CF
2CF
2-、-CF=CF-、または-C≡C-であり;
mk1、およびmk2はそれぞれ独立して、0または1の整数である。
また、下記に示す、環構造に0~4つのR
k1が連結した部分構造(X1)および(X2)では、環構造を形成する水素のうち、0~4つの水素が、R
k1で置き換えられていてもよい。)
【化2】
【化3】
(式(1-A)および(1-B)において、
R
11およびR
12はそれぞれ独立して、水素、炭素数1~10のアルキル、炭素数1~10のアルコキシ、または炭素数2~10のアルケニルであり、このアルキルおよびアルケニルにおいて、少なくとも1つの-CH
2-は-O-で置き換えられてもよいが、2つの連続する-CH
2-が-O-で置き換えられることはなく、これらの基において、少なくとも1つの水素はハロゲンで置き換えられてもよく;
環A
11、環A
12、および環A
13はそれぞれ独立して、1,4-シクロヘキシレン、1,4-フェニレン、少なくとも1つの水素がフッ素で置き換えられた1,4-フェニレン、1,3-ジオキサン-2,5―ジイル、テトラヒドロピラン-2,5-ジイル、またはピリミジン-2,5-ジイルであり;
Z
11、Z
12、およびZ
13はそれぞれ独立して、単結合、-CH
2CH
2-、-COO-、-OCO-、-CH
2O-、-OCH
2-、-CF
2O-、-OCF
2-、-CH=CH-、-CF=CF-、または-C≡C-であり;
X
11はフッ素、塩素、-SF
5、-CHF
2、-CF
3、-CF
2CH
2F、-CF
2CHF
2、-CF
2CF
3、-(CF
2)
3-F、-CF
2CHFCF
3、-CHFCF
2CF
3、-(CF
2)
4-F、-(CF
2)
5-F、-OCHF
2、-OCF
3、-OCF
2CH
2F、-OCF
2CHF
2、-OCH
2CF
3、-OCF
2CF
3、-O-(CF
2)
3-F、-OCF
2CHFCF
3、-OCHFCF
2CF
3、-O-(CF
2)
4-F、-O-(CF
2)
5-F、-CH=CF
2、-CH=CHCF
3、または-CH=CHCF
2CF
3であり;
L
11およびL
12はそれぞれ独立して、水素またはフッ素であり;
L
13およびL
14はそれぞれ独立して、水素、フッ素、塩素、または-C≡Nであるが、L
13およびL
14がともに水素であることはなく;
S
11は水素またはメチルであり;
mおよびnはそれぞれ独立して、0または1である。)
【0009】
[2] 式(K1)で表されるキラル化合物が、式(K1-1)で表されるキラル化合物である、[1]に記載の液晶組成物。
【化4】
(式(K1-1)において、
R
k1はそれぞれ独立して、フッ素、塩素、-C≡N、炭素数1~10のアルキル、または炭素数2~10のアルケニルであり、このアルキルにおいて、少なくとも1つの-CH
2-は-O-で置き換えられてもよいが、2つの連続する-CH
2-が-O-で置き換えられることはなく、これらの基において、少なくとも1つの水素はハロゲンで置き換えられてもよく;
nk1、およびnk2はそれぞれ独立して、0~4の整数であり、
Rod
k1は、部分構造式(Rod1-1)または(Rod1-2)であり、
部分構造式(Rod1-1)および(Rod1-2)において、
R
k2は水素、フッ素、塩素、-C≡N、炭素数1~10のアルキル、または炭素数2~10のアルケニルであり、このアルキルにおいて中の少なくとも1つの-CH
2-は-O-で置き換えられてもよいが、2つの連続する-CH
2-が-O-で置き換えられることはなく、これらの基において、少なくとも1つの水素はハロゲンで置き換えられてもよく;
環A
k1、環A
k2、および環A
k3はそれぞれ独立して、1,4-シクロヘキシレン、1,4-フェニレン、少なくとも1つの水素がフッ素で置き換えられた1,4-フェニレン、1,3-ジオキサン-2,5-ジイル、テトラヒドロピラン-2,5-ジイル、またはピリミジン-2,5-ジイルであり;
Z
k2およびZ
k3はそれぞれ独立して、単結合、-CH
2CH
2-、-COO-、-OCO-、-OCH
2-、-CH
2O-、-CF
2O-、-OCF
2-、-CH=CH-、-CF
2CF
2-、-CF=CF-、または-C≡C-であり;
mk1、およびmk2はそれぞれ独立して、0または1の整数である。
また、下記に示す、環構造にR
k1が連結した部分構造(X1)および(X2)では、環構造を形成する水素のうち、0~4つの水素が、R
k1で置き換えられていてもよい。)
【化5】
【0010】
[3] 式(K1-1)において、
R
k1はそれぞれ独立して、炭素数1~10のアルキル、または炭素数2~10のアルケニルであり、このアルキルにおいて、少なくとも1つの-CH
2-は-O-で置き換えられてもよいが、2つの連続する-CH
2-が-O-で置き換えられることはなく、これらの基において、少なくとも1つの水素はハロゲンで置き換えられてもよく;
nk1、およびnk2はそれぞれ独立して、0~4の整数であり、
Rod
k1は下記に示される部分構造式(Rod1-1A)~(Rod1-1H)及び(Rod1-2A)~(Rod1-2H)のいずれかである、[2]に記載の液晶組成物。
【化6】
【化7】
(部分構造式(Rod1-1A)~(Rod1-1H)及び(Rod1-2A)~(Rod1-2H)において、
R
k2は水素、炭素数1~10のアルキル、または炭素数2~10のアルケニルであり、このアルキルにおいて中の少なくとも1つの-CH
2-は-O-で置き換えられてもよいが、2つの連続する-CH
2-が-O-で置き換えられることはなく、これらの基において、少なくとも1つの水素はハロゲンで置き換えられてもよく;
また、下記に示す1,4-フェニレンに(F)が連結した部分構造(X3)は、1つまたは2つの水素がフッ素で置き換えられていてもよい1,4-フェニレンを示す。)
【化8】
【0011】
[4] 式(1-A)で表されるアキラル化合物が、式(1-A-01)~(1-A-22)で表されるいずれかのアキラル化合物である、[1]~[3]のいずれかに記載の液晶組成物。
【化9】
【化10】
【化11】
式(1-A-01)~式(1-A-22)において、
R
11は独立して、炭素数1から10のアルキルまたは炭素数2から10のアルケニルであり、このアルキルおよびアルケニルにおいて、少なくとも1つの-CH
2-は-O-で置き換えられてもよいが、2つの連続する-CH
2-が-O-で置き換えられることはなく;
環A
11および環A
12は独立して、1,4-シクロヘキシレン、またはテトラヒドロピラン-2,5-ジイル、またはピリミジン-2,5-ジイルであり;
X
11は独立して、フッ素、塩素、-CF
3、または-OCF
3であり;
(F)は、水素またはフッ素である。
【0012】
[5] 式(1-B)で表されるアキラル化合物が、式(1-B-01)~(1-B-22)で表されるいずれかのアキラル化合物である、[1]~[3]のいずれかに記載の液晶組成物。
【化12】
【化13】
式(1-B-01)~式(1-B-22)において、
R
11およびR
12は独立して、炭素数1から10のアルキルまたは炭素数2から10のアルケニルであり、このアルキルおよびアルケニルにおいて、少なくとも1つの-CH
2-は-O-で置き換えられてもよいが、2つの連続する-CH
2-が-O-で置き換えられることはなく;
環A
11および環A
12は独立して、1,4-シクロヘキシレン、またはテトラヒドロピラン-2,5-ジイル、またはピリミジン-2,5-ジイルであり;
(F)は、水素またはフッ素である。
【0013】
[6] 液晶組成物におけるキラル成分(K)の含有量が、0.1~30重量%である[1]~[5]のいずれかに記載の液晶組成物。
【0014】
[7] アキラル成分(T)における、式(1-A)または(1-B)で表される化合物の含有量が50~100重量%である、[1]~[6]のいずれかに記載の液晶組成物。
【0015】
[8] アキラル成分(T)における、式(1-A)で表される化合物の含有量が50~100重量%であり、光学的等方性の液晶相を示す、[1]~[6]のいずれかに記載の液晶組成物。
【0016】
[9] キラル成分(K)に、さらに式(K2)~(K8)で表されるキラル化合物を少なくとも1つ含有する、[1]~[8]のいずれかに記載の液晶組成物。
【化14】
(式(K2)~(K8)中、R
Kはそれぞれ独立して、水素、ハロゲン、-C≡N、-N=C=O、-N=C=Sまたは炭素数1~20のアルキルであり、このアルキル中の少なくとも1つの-CH
2-は、-O-、-S-、-COO-、-OCO-、-CH=CH-、-CF=CF-または-C≡C-で置き換えられてもよい、このアルキル中の少なくとも1つの水素はハロゲンで置き換えられてもよく;
A
Kはそれぞれ独立して、芳香族性の6~8員環、非芳香族性の3~8員環、または炭素数9~20の縮合環であり、これらの環中の少なくとも1つの水素はハロゲン、炭素数1~3のアルキルまたはハロアルキルで置き換えられてもよく、環の-CH
2-は-O-、-S-または-NH-で置き換えられてもよく、-CH=は-N=で置き換えられてもよく;
Y
Kはそれぞれ独立して、水素、ハロゲン、炭素数1~3のアルキル、炭素数1~3のハロアルキル、芳香族性の6~8員環、非芳香族性の3~8員環、または、炭素数9~20の縮合環であり、これらの環の少なくとも1つの水素がハロゲン、炭素数1~3のアルキルまたはハロアルキルで置き換えられてもよく、-CH
2-は-O-、-S-または-NH-で置き換えられてもよく、-CH=は-N=で置き換えられてもよく;
Z
Kはそれぞれ独立して単結合、または炭素数1~8のアルキレンであるが、少なくとも1つの-CH
2-は、-O-、-S-、-COO-、-OCO-、-CSO-、-OCS-、-N=N-、-CH=N-、-N=CH-、-CH=CH-、-CF=CF-または-C≡C-で置き換えられてもよく、少なくとも1つの水素はハロゲンで置き換えられてもよく;
X
Kはそれぞれ独立して、単結合、-COO-、-OCO-、-CH
2O-、-OCH
2-、-CF
2O-、-OCF
2-、または-CH
2CH
2-であり;
mKはそれぞれ独立して、1~4の整数である。)
【0017】
[10] [1]~[9]のいずれかに記載の液晶組成物と、重合性モノマーとを含む、モノマー/液晶混合物。
【0018】
[11] -20℃~70℃において、少なくとも1℃以上の温度範囲でキラルネマチック相を示し、この温度範囲の少なくとも一部において螺旋ピッチが700nm以下である、[10]に記載のモノマー/液晶混合物。
【0019】
[12] 液晶組成物が光学的等方性の液晶相を有する液晶組成物である、[10]に記載のモノマー/液晶混合物。
【0020】
[13] 重合性モノマーの含有量が、モノマー/液晶混合物の全量に対して0.1~50重量%の範囲である、[10]~[12]のいずれかに記載のモノマー/液晶混合物。
【0021】
[14] [10]に記載のモノマー/液晶混合物を非液晶等方相または光学的等方性の液晶相で重合させることで得られる、光学的等方性の液晶相で駆動される液晶素子に用いられる、高分子/液晶複合材料。
【0022】
[15] [10]に記載のモノマー/液晶混合物を重合させることで得られる、キラルネマチック相で駆動する光散乱型の液晶素子に用いられる、高分子/液晶複合材料。
【0023】
[16] 電極を有する一対の基板と、該一対の基板の間に挟持される調光層と、該調光層に対して前記電極を介して電界を印加するための電界印加手段とを備える液晶素子であって、
前記一対の基板の少なくとも一方は透明であり、前記調光層が[14]または[15]に記載の高分子/液晶複合材料から構成される、液晶素子。
【0024】
[17] 前記高分子/液晶複合材料がキラルネマチック相を示し、光散乱型の液晶素子を構成する、[16]に記載の液晶素子。
【0025】
[18] 高分子/液晶複合材料における、高分子の含有量が、0.1~50重量%の範囲である、[16]または[17]に記載の液晶素子。
【0026】
[19] 下記式(K101)、(K102)、または(K103)で表されるキラル化合物。
【化15】
【0027】
本明細書中、「液晶化合物」は、ネマチック相、スメクチック相などの液晶相を有する化合物および液晶相を有しないが液晶組成物の成分として有用な化合物の総称である。液晶化合物、液晶組成物、液晶表示素子をそれぞれ化合物、組成物、素子と略すことがある。
【0028】
本明細書中、「液晶素子」は液晶表示パネルおよび液晶表示モジュールの総称である。ネマチック相の上限温度はネマチック相-等方相の相転移温度であり、そして単に透明点または上限温度と略すことがある。ネマチック相の下限温度を単に下限温度と略すことがある。
【0029】
本明細書中、式(1)で表わされる化合物を化合物(1)と略すことがある。この略記は式(2)などで表される化合物にも適用することがある。化学式において、六角形で囲んだA11、A12などの記号はそれぞれ環構造A11、環構造A12などに対応する。
これらは、「環A11」、「環A12」と略すことがある。「環構造」とは、環状の基を言い、ベンゼン環、ナフタレン環、シクロヘキセン環、ビシクロオクタン環またはシクロヘキサン環などを含む。ここで、ナフタレン環のような縮合多環炭化水素やビシクロオクタン環のような橋かけ環炭化水素などの複数の環を含む環構造も、環構造としては1つと数える。
環Ak1、Yk1など複数の同じ記号を同一の式または異なった式に記載したが、これらはそれぞれが同一であってもよいし、または異なってもよい。
化学式における波線は、結合箇所を示す。
【0030】
「少なくとも1つの」は、位置だけでなく個数についても限定されないことを示すが、個数が0である場合を含まない。少なくとも1つのAがB、CまたはDで置き換えられてもよいという表現は、少なくとも1つのAがBで置き換えられる場合、少なくとも1つのAがCで置き換えられる場合および少なくとも1つのAがDで置き換えられる場合に加えて、複数のAがB~Dの少なくとも2つで置き換えられる場合をも含むことを意味する。
例えば、少なくとも1つの-CH2-が-O-または-CH=CH-で置き換えられてもよいアルキルには、アルキル、アルケニル、アルコキシ、アルコキシアルキル、アルコキシアルケニル、アルケニルオキシアルキルなどが含まれる。なお、本発明においては、連続する2つの-CH2-が-O-で置き換えられて、-O-O-のようになることは好ましくない。そして、アルキルにおける末端の-CH2-が-O-で置き換えられることも好ましくない。
また、本明細書中、特に言及しない限り、「%」は「重量%」を意味する。
【発明の効果】
【0031】
本発明の実施形態に係る、キラル成分とアキラル成分を含有する液晶組成物は、耐光性が良好であるため液晶素子用として好適に用いられる。本発明の実施形態に係るキラル化合物はHTPが大きく、アキラル成分に対する相溶性が高いので、0.5μm以下のピッチの調整が可能である。また、低温を含めた広い温度範囲で液晶相を示すことができる。
さらに効果的な光散乱性が得られるので、この液晶組成物を使用した液晶素子は、低電圧駆動であり、電圧の印加時と無印加時における光散乱の変化が大きいため、高いコントラストを示す液晶デバイスに適用することができる。
本発明の実施形態に係る液晶組成物の性能をより良く引き出すためには、キラルネマチック液晶又はコレステリック液晶を併用することが好ましい。本発明の実施形態に係る液晶組成物には、上記式(K1)で表されるキラル化合物に加え、通常この技術分野で液晶材料と認識される材料、および式(K1)で表されるキラル化合物以外のキラル化合物等をさらに適宜添加して用いてもよい。
【0032】
また、光学的等方性の液晶組成物を短時間で効率的に調製することができる。本発明の実施形態に係る、液晶組成物、光学的等方性の液晶相を示す液晶組成物および高分子/液晶複合材料は、比較的大きなカー係数を発現する。すなわち、比較的低い駆動電圧を示す。本発明の実施形態に係る光学的等方性を示す液晶組成物および高分子/液晶複合材料は、応答速度が速い。
本発明の実施形態に係る光学的等方性の液晶相を示す液晶組成物および高分子/液晶複合材料は、広い温度範囲に使用できる。そして、本発明の実施形態に係る光学的等方性の液晶相を示す液晶組成物および高分子/液晶複合材料は、これらの効果に基づいて高速応答用の液晶表示素子等の液晶素子に好適に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【
図3】液晶素子の構造の一例の断面を示す図である。
【
図4】液晶素子の構造の別の一例の断面を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
1.本発明の液晶組成物
本発明の第1の態様は、キラルネマチック相または光学的等方相で駆動される液晶素子に用いることができる液晶組成物である。
本発明の実施形態に係る液晶組成物は、キラル成分として式(K1)で表される化合物、そしてアキラル成分とを有する。ここでキラル成分の掌性は問わない。本発明の実施形態に係る液晶組成物は、キラルネマチック相または光学的等方相を示すことが好ましい。
本発明の実施形態に係る液晶組成物に含まれる化合物は、一般的に、公知の方法、例えば必要な成分を高温度下で反応させる方法などにより合成される。
また、本発明の実施形態に係る液晶組成物を構成する化合物の各元素は、同位体元素からなる類縁体でも、その物理特性に大きな差異がない限り使用できる。
本発明の実施形態に係る液晶組成物において、キラル成分(K)の含有量は、通常、0.1~30重量%であり、0.1~10重量%であることが好ましい。
【0035】
1.1 キラルネマチック相
本発明の実施形態にかかる液晶組成物はキラルネマチック相を有するものを含む。キラルネマチック相は、ネマチック相を発現する化合物で構成されるアキラル成分に少量のキラル化合物を添加することで得られる。本発明の実施形態で使用する液晶組成物の螺旋ピッチ(以下、単に「ピッチ」ということがある)は、光散乱による不透明性と透明性との間の十分なコントラストを得るために0.3~5μmであることが好ましい。一般的に、螺旋ピッチが0.3~0.5μmの範囲では光散乱による透明性が比較的高く、螺旋ピッチが0.6~5μmの範囲では光散乱による不透明性が比較的高くなる。
調光材への用途として、化合物(K1)はHTPが大きく、また化合物(1-A)または(1-B)との相溶性が高いので0.5μm以下のピッチの調整が可能である。さらに効果的な光散乱性が得られ、また光に対する安定性が高いので、低電圧駆動で高いコントラストが得られ、かつ耐光性の高い液晶素子を提供することができる。
【0036】
1.2 光学的等方性の液晶相
本発明の実施形態に係る液晶組成物は光学的等方性の液晶相を有するものを含む。ここで、液晶組成物が光学的等方性を有するとは、巨視的には液晶分子配列は等方的であるため光学的に等方性を示すが、微視的には液晶秩序が存在することをいう。
そして、本明細書において「光学的等方性の液晶相」とは、ゆらぎではなく光学的等方性の液晶相を発現する相を表し、たとえばプレートレット組織を発現する相(狭義のブルー相)はその一例である。
一般的に、ブルー相は3種類に分類され(ブルー相I、ブルー相II、ブルー相III)、これら3種類のブルー相はすべて光学活性であり、かつ、等方性である。ブルー相Iやブルー相IIのブルー相では異なる格子面からのブラッグ反射に起因する2種以上の回折光が観測される。
本発明の実施形態に係る液晶組成物において、光学的等方性の液晶相を発現させるためには、微視的に有する液晶秩序に基づく螺旋ピッチは1000nm以下であることが好ましい。
光学的等方性の液晶相における電気複屈折はピッチが長くなるほど大きくなるので、所望の光学特性(透過率、回折波長など)が満たされる限り、キラル成分の種類と含有量を調整して、ピッチを長く設定することにより、電気複屈折を大きくすることができる。
また、本明細書において、「非液晶等方相」とは一般的に定義される等方相、すなわち、無秩序相であり、局所的な秩序パラメーターがゼロでない領域が生成したとしても、その原因がゆらぎによるものである等方相である。たとえばネマチック相の高温側に発現する等方相は、本明細書では非液晶等方相に該当する。本明細書におけるキラルな液晶化合物についても、同様の定義があてはまるものとする。
【0037】
1.3 キラル成分(K)
1.3.1 キラル化合物(K1)の性質
本発明の実施形態に係る液晶組成物に含まれるキラル成分(K)として、下記式(K1)で表される化合物を挙げることができる。
【化16】
式(K1)において、
R
k1はそれぞれ独立して、フッ素、塩素、-C≡N、炭素数1~10のアルキル、または炭素数2~10のアルケニルであり、このアルキルにおいて、少なくとも1つの-CH
2-は-O-で置き換えられてもよいが、2つの連続する-CH
2-が-O-で置き換えられることはなく、これらの基において、少なくとも1つの水素はハロゲンで置き換えられてもよい。
好ましい例としては、水素、フッ素、炭素数1~5のアルキル、炭素数2~5のアルケニル、および炭素数1~5のアルコキシである。
Y
k1はそれぞれ独立して、単結合、または-(CH
2)
n-であり、nは1~20の整数である。
好ましい例としては、単結合、-CH
2CH
2-、-(CH
2)
4-、または-(CH
2)
6-、であり、nが小さいとHTPが大きくなり、nが大きいと相溶性が良くなる傾向がある。
nk1、およびnk2はそれぞれ独立して、0~4の整数である。
好ましい例としては、0、1、または2であり、nk1が1または2のときは液晶組成物での相溶性が良くなる傾向がある。
Rod
k1は、部分構造式(Rod1)であり、
部分構造式(Rod1)において、
R
k2は水素、フッ素、塩素、-C≡N、炭素数1~10のアルキル、または炭素数2~10のアルケニルであり、このアルキルにおいて中の少なくとも1つの-CH
2-は-O-で置き換えられてもよいが、2つの連続する-CH
2-が-O-で置き換えられることはなく、これらの基において、少なくとも1つの水素はハロゲンで置き換えられてもよい。
好ましい例としては、炭素数1~6のアルキル、炭素数2~7のアルケニル、または炭素数1~7のアルコキシである。
【0038】
また部分構造式として好ましい例は、(Rod1-1)または(Rod1-2)であり、(Rod1-1)のときはHTPが高く、(Rod1-2)のときは比較的に液晶組成物での相溶性が良好である。
環Ak1、環Ak2、および環Ak3はそれぞれ独立して、1,4-シクロヘキシレン、1,4-フェニレン、少なくとも1つの水素がフッ素で置き換えられた1,4-フェニレン、1,3-ジオキサン-2,5-ジイル、テトラヒドロピラン-2,5-ジイル、またはピリミジン-2,5-ジイルである。
好ましい例としては、1,4-シクロヘキシレン、1,4-フェニレン、1つまたは2つの水素がフッ素で置き換えられた1,4-フェニレン、または1,3-ジオキサン-2,5-ジイルであり、化合物のHTPが大きく、他の液晶組成物での相溶性が良い。
【0039】
Zk1、Zk2、およびZk3はそれぞれ独立して、単結合、-CH2CH2-、-COO-、-OCO-、-OCH2-、-CH2O-、-CF2O-、-OCF2-、-CH=CH-、-CF2CF2-、-CF=CF-、または-C≡C-であり;
好ましい例としては、単結合、-COO-、-OCO-、炭素数1~10のアルキレン、-CH2O-、-OCH2-、-CF2O-、または-OCF2-である。これらの置換基である場合、HTPと、液晶組成物での相溶性の両方がバランスよく良好になる。
mk1、およびmk2はそれぞれ独立して、0または1の整数である。
mk1+mk2が1の化合物は、液晶組成物での相溶性がよい。また、mk1+mk2が2の化合物は、HTPが大きい傾向がある。
【0040】
Rk1、Rk2、Ak1、Zk1、nk1、またはnk2などの同一の記号が複数ある場合は、それぞれ同一でも異なっていてもよい。
なお、炭素数1~10のアルキルは、炭素数1~6のアルキルであることがより好ましい。アルキルの例としては、制限するわけではないが、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n-ブチル、s-ブチル、t-ブチル、ペンチル、ヘキシル、およびドデカニル等を挙げることができる。
【0041】
式(K1)で表されるキラル化合物の好ましい例としては、式(K1-1)で表される化合物であって、Rodk1が(Rod1-1)であり、式(K1-1)の中でも、Rodk1が(Rod1-1C)、(Rod1-1D)、(Rod1-1F)、および(Rod1-1G)で表される化合物がより好ましい。いずれもHTPが高く、比較的に液晶組成物での相溶性がよい。
【0042】
一般的に、本発明の実施形態にかかる液晶組成物におけるキラル成分の含有量は、0.1~20重量%が好ましく、1~10重量%が特に好ましい。これらの範囲でキラル成分を含有する液晶組成物は、光学的に等方性の液晶相を有しやすくなる。
本発明の実施形態に係る液晶組成物を用いて、後述する高分子/液晶複合材料を得ることができる。その高分子/液晶複合材料を調光材として使用する場合には、液晶組成物における螺旋ピッチは、光散乱による不透明性と透明性との間の十分なコントラストを得るために、0.3~0.5μm、0.6~5μmの範囲であることが特に好ましい。
また、本発明の実施形態に係る液晶組成物を液晶表示素子に用いる場合は、キラル成分の濃度を調整して、可視域に回折や反射が実質的に認められないことが好ましい。
尚、本発明の実施形態に係る液晶組成物に含有されるキラル成分を構成するキラル化合物は1種でも2種以上でもよい。
尚、2種以上のキラル化合物を用いる場合には、HTPを相殺しない様に、ねじれ方向が同一であるキラル化合物を用いることが好ましい。螺旋ピッチの温度依存性を調整する目的で、ねじれ方向が逆向きのキラル化合物を組み合わせて用いることもできる。
【0043】
1.3.2 キラル化合物(K1)の合成
次に、式(K1)で表される化合物の合成について説明する。化合物(K1)は有機合成化学における手法を適切に組み合わせることにより合成できる。出発物に目的の末端基、環および結合基を導入する方法は、オーガニックシンセシス(Organic Synthesis, John Wiley & Sons, Inc)、オーガニック・リアクションズ(Organic reactions, John Wiley & Sons, Inc)、コンプリヘンシブ・オーガニック・シンセシス(Comprehensive Organic Synthesis, Pergamon Press)、新実験化学講座(丸善)などに記載されている。
化合物(K1)を合成する方法は複数あり、本明細書の実施例や書籍を参考にして適宜合成することが可能である。
最初に、共通の中間体である化合物(15)を生成する方法の一例を、スキームを用いて説明する。
【0044】
(1)アントラセン誘導体(15)の準備および合成
【化17】
【0045】
アントラセン誘導体は、市販されている化合物から一般的な有機合成法によって合成できる。市販されている化合物としては、例えば化合物(ref.001)および(ref.002)などがある。
Rk1がアルキル、アルケニル、アルキニル、またはアルコキシの場合は、例えば化合物(101)に適切なリチウム試薬、もしくは金属触媒下でアルキルハライドを作用させてカップリング反応を行うことによって化合物(102)を得ることができる。同様に、Rk1がフッ素の場合はN-ベンゼンスルホンイミドなどのフッ素化剤、そしてRk1が-CNの場合はシアン化銅などのシアン化物を化合物(101)に作用させることによって、それぞれ、化合物(103)、化合物(104)を得ることができる。
【0046】
(2)化合物(K1-1)および(K1-2)の合成
【化18】
【化19】
【0047】
フマリルクロリド(111)は市販されている。また光学活性の乳酸エチル(112)は、(S)体もしくは(R)体のいずれも市販されている。フマリルクロリド(111)をトリエチルアミンなどの塩基とともに光学活性の乳酸エチル(112)に作用させて化合物(113)を得ることができる。
その後は、化合物(113)とアントラセン誘導体(114)とのディールズ・アルダー反応を行うことにより立体選択的に化合物(114)として、さらに過剰量の塩基を作用させて化合物(115)に誘導できる。
化合物(115)にジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)およびジメチルアミノピリジン(DMAP)を加え、適切なフェノール誘導体(Rodk1-OH)を作用させると本発明の実施形態に係る化合物(K1-1)が得られる。さらに化合物(K1-1)にLAHなどの還元剤を作用させると化合物(K1-2)を得ることができる。
【0048】
次に結合基Zk1を生成する方法の一例を、スキームを用いて説明する。このスキームにおいて、MSG1またはMSG2は少なくとも一つの環を有する1価の有機基である。スキームで用いた複数のMSG1(またはMSG2)は、同一であってもよいし、または異なってもよい。化合物(1A)から(1K)は化合物(K1)に相当する。
【0049】
(I)単結合の生成
【化20】
アリールホウ酸(21)と公知の方法で合成される化合物(22)とを、炭酸塩水溶液とテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウムのような触媒の存在下で反応させて化合物(1A)を合成する。この化合物(1A)は、公知の方法で合成される化合物(23)にn-ブチルリチウムを、次いで塩化亜鉛を反応させ、ジクロロビス(トリフェニルホスフィン)パラジウムのような触媒の存在下で化合物(22)を反応させることによっても合成される。
【0050】
(II)-CF
2O-と-OCF
2-の生成
【化21】
化合物(1B)をローソン試薬のような硫黄化剤で処理して化合物(26)を得る。化合物(26)をフッ化水素ピリジン錯体とNBS(N-ブロモスクシンイミド)でフッ素化し、-CF
2O-を有する化合物(1C)を合成する(M. Kuroboshi et al., Chem. Lett., 1992,827.を参照)。化合物(1C)は化合物(26)を(ジエチルアミノ)サルファートリフルオリド(DAST)でフッ素化しても合成される(W. H. Bunnelle et al., J. Org. Chem. 1990, 55, 768.を参照)。この方法によって-OCF
2-を有する化合物も合成できる。Peer. Kirsch et al., Angew. Chem. Int. Ed. 2001, 40, 1480.に記載の方法によってこれらの結合基を生成させることも可能である。
【0051】
(III)-CH=CH-の生成
【化22】
化合物(22)をn-ブチルリチウムで処理した後、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)などのホルムアミドと反応させてアルデヒド(28)を得る。公知の方法で合成されるホスホニウム塩(27)をカリウムt-ブトキシドのような塩基で処理して発生させたリンイリドを、アルデヒド(28)に反応させて化合物(1D)を合成する。反応条件によってはシス体が生成するので、必要に応じて公知の方法によりシス体をトランス体に異性化する。
【0052】
(IV)-(CH
2)
2-の生成
【化23】
化合物(1D)をパラジウム炭素のような触媒の存在下で水素化することにより、化合物(1E)を合成する。
【0053】
(V)-(CH
2)
4-の生成
【化24】
ホスホニウム塩(27)の代わりにホスホニウム塩(29)を用い、項(III)または項(IV)の方法に従って-(CH
2)
2-および-CH=CH-を有する化合物を得る。これを接触水素化して化合物(1F)を合成する。
【0054】
(VI)-C≡C-の生成
【化25】
ジクロロパラジウムとハロゲン化銅との触媒存在下で、化合物(23)に2-メチル-3-ブチン-2-オールを反応させたのち、塩基性条件下で脱保護して化合物(30)を得る。ジクロロパラジウムとハロゲン化銅との触媒存在下、化合物(30)を化合物(22)と反応させて、化合物(1G)を合成する。
【0055】
(VII)-CF=CF-の生成
【化26】
化合物(22)をn-ブチルリチウムで処理したあと、テトラフルオロエチレンを反応させて化合物(31)を得る。化合物(22)をn-ブチルリチウムで処理した後、化合物(31)と反応させて化合物(1H)を合成する。
【0056】
(VIII)-CH
2O-または-OCH
2-の生成
【化27】
化合物(28)を水素化ホウ素ナトリウムなどの還元剤で還元して化合物(32)を得る。これを臭化水素酸などでハロゲン化して化合物(33)を得る。炭酸カリウムなどの存在下で、化合物(33)を化合物(25)と反応させて化合物(1J)を合成する。
【0057】
(IX)-(CH
2)
3O-または-O(CH
2)
3-の生成
【化28】
化合物(32)の代わりに化合物(34)を用いて、項(VIII)の方法に従って化合物(1K)を合成する。
【0058】
(X)-(CF2)2-の生成
J. Am. Chem. Soc., 2001, 123, 5414.に記載された方法に従い、ジケトン(-COCO-)をフッ化水素触媒の存在下、四フッ化硫黄でフッ素化して-(CF2)2-を有する化合物を得る。
【0059】
本発明の実施形態に係る液晶組成物には、キラル成分(K)として、上記のキラル化合物(K1)に加え、上記(K2)~(K8)で表される化合物のいずれかを少なくとも1つ含んでもよい。
【0060】
1.4 アキラル成分
本発明の実施形態に係る液晶組成物を構成するアキラル成分は、少なくとも1つのアキラル化合物から構成され、液晶相を発現する。式(1-A)または(1-B)で表されるアキラル化合物を少なくとも1つ含有するアキラル成分は、液晶素子として使用される液晶成分として適切である。本発明の実施形態に係る液晶組成物には、上記キラル成分(K)として、式(K1)で表されるキラル化合物、および式(1-A)または(1-B)で表されるアキラル化合物のうち、少なくとも1つのアキラル化合物に加え、通常この技術分野で液晶材料と認識される材料をさらに他の液晶材料として添加して用いてもよい。
なお、本発明の実施形態に係る液晶組成物において、アキラル成分(T)の含有量は、通常80~99.9重量%であり、90~99.9重量%であることが好ましい。
本発明の実施形態に係る液晶組成物において、アキラル成分(T)における、式(1-A)または(1-B)で表される化合物の含有量は、通常50~100重量%であり、90~100重量%であることが好ましい。
さらに、本発明の実施形態に係る液晶組成物において、アキラル成分(T)における、式(1-A)で表される化合物の含有量が50~100重量%であり、その場合、光学的等方性の液晶相を示すことができる。
【0061】
1.4.1 式(1-A)または(1-B)で表される化合物の構造
【化29】
【0062】
上記式(1-A)および(1-B)において、
R11およびR12はそれぞれ独立して、水素、炭素数1~10のアルキル、炭素数1~10のアルコキシ、または炭素数2~10のアルケニルであり、このアルキルおよびアルケニルにおいて、少なくとも1つの-CH2-は-O-で置き換えられてもよいが、2つの連続する-CH2-が-O-で置き換えられることはなく、これらの基において、少なくとも1つの水素はハロゲンで置き換えられてもよい。
このようなR11およびR12において、炭素数1~10のアルキル、または炭素数2~10のアルケニルが好ましい。より好ましくは炭素数2~8のアルキル、または炭素数2~8のアルケニルである。アルケニルにおける-CH=CH-の好ましい立体配置は、二重結合の位置に依存する。-CH=CHCH3、-CH=CHC2H5、-CH=CHC3H7、-CH=CHC4H9、-C2H4CH=CHCH3、および-C2H4CH=CHC2H5のような奇数位に二重結合をもつアルケニルにおいてはトランス配置が好ましい。-CH2CH=CHCH3、-CH2CH=CHC2H5、および-CH2CH=CHC3H7のような偶数位に二重結合をもつアルケニルにおいてはシス配置が好ましい。好ましい立体配置を有するアルケニル化合物は、高い上限温度または液晶相の広い温度範囲を有する。Mol. Cryst. Liq. Cryst., 1985, 131, 109およびMol. Cryst. Liq. Cryst., 1985, 131, 327に詳細な説明がある。
環A11、環A12、および環A13はそれぞれ独立して、1,4-シクロヘキシレン、1,4-フェニレン、少なくとも1つの水素がフッ素で置き換えられた1,4-フェニレン、1,3-ジオキサン-2,5―ジイル、テトラヒドロピラン-2,5-ジイル、またはピリミジン-2,5-ジイルである。
環A11、環A12、および環A13は、それぞれ独立して、ハロゲンで置換されてもよい1,4-フェニレン、1,3-ジオキサン-2,5-ジイル、テトラヒドロピラン-2,5-ジイル、または1,4-シクロヘキシレンであることが好ましい。
Z11、Z12、およびZ13はそれぞれ独立して、単結合、-CH2CH2-、-COO-、-OCO-、-CH2O-、-OCH2-、-CF2O-、-OCF2-、-CH=CH-、-CF=CF-、または-C≡C-である。
Z11、Z12、およびZ13は、単結合、-CH2CH2-、-CH=CH-、-C≡C-、-COO-、-CF2O-、-OCF2-、-CH2O-、または-OCH2-が好ましく、これらの中でも、単結合、-COO-または-CF2O-が特に好ましい。
また、これらの結合において、-CH=CH-、-CF=CF-、-CH=CH-(CH2)2-、および-(CH2)2-CH=CH-等のような二重結合を有する結合基では、その立体配置はシスよりもトランスが好ましい。
【0063】
X11はフッ素、塩素、-SF5、-CHF2、-CF3、-CF2CH2F、-CF2CHF2、-CF2CF3、-(CF2)3-F、-CF2CHFCF3、-CHFCF2CF3、-(CF2)4-F、-(CF2)5-F、-OCHF2、-OCF3、-OCF2CH2F、-OCF2CHF2、-OCH2CF3、-OCF2CF3、-O-(CF2)3-F、-OCF2CHFCF3、-OCHFCF2CF3、-O-(CF2)4-F、-O-(CF2)5-F、-CH=CF2、-CH=CHCF3、または-CH=CHCF2CF3である。
好ましいX11の例は、フッ素、塩素、-C≡N、-N=C=S、-CF3、-CHF2、-OCF3、および-OCHF2である。最も好ましいX1の例は、フッ素、塩素、-C≡N、-N=C=S、-CF3、および-OCF3である。
L11およびL12はそれぞれ独立して水素またはフッ素であり、L13およびL14はそれぞれ独立して水素、フッ素、塩素、または-C≡Nであるが、L13およびL14がともに水素であることはない。
これらの中でも、L11およびL12のいずれか1つがフッ素であることが好ましく、L13およびL14はそれぞれ独立して、水素、フッ素または-C≡Nであることが好ましい。
S11は水素またはメチルである。
mおよびnはそれぞれ独立して、0または1である。
【0064】
上記式(1-A)で表される化合物として、特に好ましいのは、下記式(1-A-01)~(1-A-22)で表される化合物のいずれかである。
【化30】
【化31】
【化32】
【0065】
上記式(1-B)で表される化合物として、特に好ましいのは、下記式(1-B-01)~(1-B-22)で表される化合物のいずれかである。
【化33】
【化34】
【0066】
(式(1-A-01)~(1-A-22)、および式(1-B-01)~(1-B-22)において、R11およびR12は水素、炭素数1~8のアルキル、炭素数2~8のアルケニル、または炭素数1~8のアルコキシであり、A11およびA12は1,4-シクロヘキシレン、1,3-ジオキサン-2,5-ジイル、またはテトラヒドロピラン-2,5-ジイルであり、X11はフッ素、塩素、-CF3、-CHF2、-CH2F、-OCF3、-OCHF2、-OCH2F、-CN、または-C=C-CF3であり、(F)は水素またはフッ素である。)
【0067】
1.3.2 式(1-A)および(1-B)で表されるアキラル化合物の性質
化合物(1-A)は誘電率異方性が正である化合物である。一方で化合物(1-B)は誘電率異方性が負である化合物である。
化合物(1-A)および(1-B)における左末端基R11、右末端基X11およびR12、環A11~A13の種類、結合基Z11~Z13、末端のフェニレン環上の基およびその置換位置(L11、L12、L13、L14、およびS11)、結合基Z11~Z13、mおよびnの組み合わせ等を適切に選択することによって、アキラル成分(T)の透明点、屈折率異方性、誘電率異方性等の物性を調整することが可能である。
左末端基R11、右末端基X11およびR12、環A11~A13、結合基Z11~Z13、L11~L14、mおよびnの組み合わせの種類等と、化合物(1-A)および(1-B)の物性との一般的な関係を以下に説明する。
【0068】
R11またはR12が直鎖であるときは、化合物(1-A)および(1-B)の液晶相の温度範囲が広く、そして粘度が小さくなる。他方、R11またはR12が分岐鎖であるときは、化合物(1-A)および(1-B)は液晶組成物での相溶性が良い。
R11またはR12がアルケニルのときは、粘度が小さくなり、液晶組成物での相溶性が良い。
R11またはR12がアルコキシのときは、誘電率異方性が大きくなり、液晶組成物での相溶性が良い。
【0069】
環A11~A13に芳香環が多く含まれるほど、化合物(1-A)および(1-B)の屈折率異方性が大きくなる。環A11~A13が、それぞれ少なくとも1つの水素がフッ素で置き換えられた1,4-フェニレン、1,3-ジオキサン-2,5-ジイル、テトラヒドロピラン-2,5-ジイル、またはピリミジン-2,5-ジイルであるとき、大きな誘電率異方性の発現に効果があり、1,4-シクロヘキシレン、テトラヒドロピラン-2,5-ジイル環であるとき、化合物(1-A)または(1-B)の良好な相溶性発現に寄与する。
結合基Z11、Z12、およびZ13がそれぞれ単結合、-CH2CH2-、-CH=CH-、-CF2O-、-OCF2-、-CH2O-、-OCH2-、-CF=CF-、-(CH2)3-O-、-O-(CH2)3-、-(CH2)2-CF2O-、-OCF2-(CH2)2-または-(CH2)4-であるとき、化合物(1-A)または(1-B)の粘度が小さい。また結合基Z11、Z12、およびZ13がそれぞれ単結合、-(CH2)2-、-CF2O-、-OCF2-または-CH=CH-であるとき、化合物(1-A)または(1-B)の粘度がさらに小さくなる。結合基Z11、Z12、およびZ13がそれぞれ-C≡C-のとき、化合物(1-A)または(1-B)の屈折率異方性が大きい。結合基Z11、Z12、およびZ13が、それぞれ-COO-または-CF2O-であるとき、化合物(1-A)または(1-B)の誘電率異方性が大きい。Z11、Z12、およびZ13がそれぞれ、単結合、-(CH2)2-、-CH2O-、-CF2O-、-OCF2-、または-(CH2)4-であるとき、化合物(1―A)または(1-B)は、比較的に化学的に安定であって、劣化が生じにくい。
一般的には屈折率異方性または誘電率異方性が大きい場合、本発明の実施形態に係る液晶素子の駆動電圧が低くなる傾向があり、粘度が低いと応答速度が速くなる。
X11がフッ素、塩素、-SF5、-CHF2、-CF3、-CH2F、-OCF3、-OCHF2または-OCH2Fであるとき、化合物(1-A)の誘電率異方性が大きい。X11がフッ素または-OCF3であるときは、化学的に安定である。
L11およびL12がともにフッ素であり、X11がフッ素、塩素、-SF5、-CF3、-CHF2、-CH2F、-OCF3、-OCHF2、または-OCH2Fであるとき、化合物(1-A)の誘電率異方性が非常に大きい。また、L11がフッ素でありL12が水素であり、X11が-CF3または-OCF3であるとき、L11およびL12がともにフッ素でありX11が-CF3または-OCF3であるとき、または、L11、L12およびX11がすべてフッ素であるとき、化合物(1-A)の誘電率異方性が大きく、液晶相の温度範囲が広く、さらに化学的に安定であり劣化を起こしにくい。
またL13およびL14がともにフッ素であり、R12がアルコキシであるとき、化合物(1-B)の誘電率異方性が大きく、液晶相の温度範囲が広い。また、L13がフッ素であり、R12がアルキルであるとき、化合物(1-B)の誘電率異方性が大きく、化学的に安定であり劣化を起こしにくい。
m+nが大きいほど、化合物の透明点が高く、m+nが小さいほど化合物(1-A)の融点が低い。
【0070】
1.3.3 その他のアキラル成分
本発明の実施形態に係る液晶組成物の特性を最適化する目的で、アキラル成分として、以下の式(1-C)で表される化合物を必要に応じて使用することができる。
【化35】
【0071】
上記式(1-C)において、
R11およびR12はそれぞれ独立して、水素、炭素数1~8のアルキル、炭素数2~8のアルケニル、または炭素数1~8のアルコキシであり;
Z11およびZ12はそれぞれ独立して、単結合、-CH2CH2-、-COO-、-OCO-、-CH2O-、-OCH2-、-CF2O-、-OCF2-、-CH=CH-、-CF=CF-、または-C≡C-であり;
環A11および環A12はそれぞれ独立して、1,4-シクロヘキシレン、1,4-フェニレン、少なくとも1つの水素がフッ素で置き換えられた1,4-フェニレン、1,3-ジオキサン-2,5―ジイル、テトラヒドロピラン-2,5-ジイル、またはピリミジン-2,5-ジイルであり;
pは1、2、または3である。
【0072】
化合物(1-C)は誘電率異方性が小さい化合物であり、粘性が低い特徴を示す。化合物(1-C)の末端基R11およびR12、環A11およびA12、結合基Z11およびZ12の組み合わせの種類等と物性との一般的な関係は、化合物(1-A)および(1-B)で説明した内容と類似である。
pについては、pが1のときは透明点が低く、粘性が低い。pが2のときは透明点と粘性のバランスがよく、pが3のときは透明点が高い。
【0073】
上記式(1-C)で表される化合物として、特に好ましいのは下記式(1-C-01)~(1-C-14)で表されるいずれかの化合物である。
【化36】
【0074】
式(1-C-01)~(1-C-14)において、R11およびR12はそれぞれ独立して、水素、炭素数1~8のアルキル、炭素数2~8のアルケニル、または炭素数1~8のアルコキシであり、A11およびA12はそれぞれ独立して、1,4-シクロヘキシレン、1,3-ジオキサン-2,5-ジイル、またはテトラヒドロピラン-2,5-ジイルであり、(F)は水素またはフッ素である。
【0075】
2. 液晶組成物と重合性モノマーを含むモノマー/液晶混合物、および高分子/液晶複合材料
本発明の第2の態様は、キラルネマチック相または光学的等方性の液晶相を有する液晶組成物と重合性モノマーを含む混合物である。なお、本明細書において「重合性モノマー」は、マクロモノマーやオリゴマーも含む概念である。
前記の液晶組成物と、重合性モノマーを含むモノマー/液晶混合物を、例えば調光窓などの調光層を有する液晶素子の材料として用いた場合に、より低電圧で駆動でき、より高コントラスト特性を持つ液晶素子が作製できる。後述する液晶素子の調光層の一部となる透明物質の構造を目的に応じて制御するためには、本発明の実施形態に係るモノマー/液晶混合物を用いることが好ましい。
本発明の第3の態様は、高分子/液晶複合材料であり、例えば本発明の第2の態様の液晶組成物と重合性モノマーとを含むモノマー/液晶混合物について重合反応を行うことによって製造できる。本発明の実施形態に係る高分子/液晶複合材料は、キラルネマチック相または光学的等方性の液晶相を有することが好ましい。高分子/液晶複合材料とは、液晶組成物と高分子の化合物の両者を含む複合材料であれば特に限定されないが、高分子の一部または全部が液晶組成物に溶解していない状態で高分子が液晶組成物と相分離している状態であってもよい。
【0076】
本発明の実施形態に係る光学的等方性の高分子/液晶複合材料は、光学的等方性の液晶相を広い温度範囲で発現させることが可能である。また低い駆動電圧および極めて速い応答速度を実現できるため、これらの効果に基づいて表示用の液晶素子等に好適に用いることができる。
本発明の好ましい態様に係るキラルネマチック相を示す高分子/液晶複合材料は、キラルネマチック相を広い温度範囲で発現させることが可能である。また電圧印加時と無印加時に、光散乱による不透明性と透明性との間に十分なコントラストを得ることができる。
【0077】
2.1 高分子/液晶複合材料を製造する際の重合条件
本発明の高分子/液晶複合材料は、液晶組成物と予め重合されて得られた高分子とを混合しても製造できるが、高分子の材料となる低分子量のモノマー、マクロモノマー、オリゴマー等(以下、まとめて「重合性モノマー」という)と液晶組成物とを混合してから、当該混合物において重合反応を行うことによって、製造されることが好ましい。
本発明の第2の態様の液晶組成物と重合性モノマーとを含む混合物を、本件明細書では、「モノマー/液晶混合物」ともいう。「モノマー/液晶混合物」には必要に応じて、後述する重合開始剤、硬化剤、触媒、安定剤、二色性色素(メロシアニン系、スチリル系、アゾ系、アゾメチン系、アゾキシ系、キノフタロン系、アントラキノン系、テトラジン系等)、またはフォトクロミック化合物等を、本発明の効果を損なわない範囲で含んでもよい。たとえば、本発明の実施形態に係るモノマー/液晶混合物には必要に応じて、重合開始剤を重合性モノマーの0.1~20重量部含有してもよい。
【0078】
光学的等方性を有する高分子/液晶複合材料を製造する場合には、液晶組成物と重合性モノマーとを含む、モノマー/液晶混合物における重合は、モノマー/液晶混合物を非液晶等方相または光学的等方性の液晶相で行われることが好ましい。すなわち、重合温度は、高分子/液晶複合材料が高透明性と等方性を示す温度であることが好ましい。より好ましくは、重合性モノマーと液晶組成物の混合物が非液晶等方相またはブルー相を発現する温度で、かつ、非液晶等方相または光学的等方性の液晶相で重合を終了する。すなわち、重合後は高分子/液晶複合材料が可視光線より長波長側の光を実質的に散乱せず、かつ光学的に等方性の状態を発現する重合温度にするのが好ましい。
また、本発明の実施形態に係る高分子/液晶複合材料を調光層として使用する場合は、重合反応の際に透明電膜間に電圧を印加した状態で光を照射することもできる。
【0079】
2.2 高分子/液晶複合材料を構成する高分子の原料
本発明の実施形態に係る高分子/液晶複合材料を構成する高分子の原料としては、重合性モノマーである、例えば低分子量のモノマー、マクロモノマー、オリゴマーを使用することができる。また、得られる高分子が三次元架橋構造を有するものが好ましく、そのために、高分子の原料として、2つ以上の重合性官能基を有する多官能性モノマーを用いることが好ましい。重合性の官能基は特に限定されないが、アクリル基、メタクリル基、グリシジル基、エポキシ基、オキセタニル基、ビニル基などを挙げることができるが、重合速度の観点からアクリル基およびメタクリル基が好ましい。高分子の原料中、二つ以上の重合性のある官能基を持つモノマーを原料中に10重量%以上含有させると、本発明の実施形態に係る高分子/液晶複合材料において高度な透明性と等方性を発現しやすくなるので好ましい。
また、好適な複合材料を得るためには、高分子はメソゲン部位を有するものが好ましく、高分子の原料としてメソゲン部位を有するモノマーをその一部に、あるいは全部に用いることができる。
【0080】
2.2.1 メソゲン部位を有するモノマー(単反応性、二反応性、および三反応性モノマー)
メソゲン部位を有する単反応性、二反応性または三反応性モノマーは構造上特に制限されないが、例えば下記式(M1)、(M2)または(M3)で表されるいずれかの化合物を挙げることができる。
【化37】
【0081】
式(M1)~(M3)において、R
MAは水素、ハロゲン、-CF
3、-OCF
3、-C≡N、または炭素数1~20のアルキル、炭素数2~20のアルケニル、炭素数1~20のアルコキシ、または炭素数2~20のアルコキシカルボニルである。好ましいR
MAは、炭素数1~20のアルキル、または炭素数1~20のアルコキシである。
R
MBは、それぞれ独立して、基(M3-1)~基(M3-7)の重合性基である。
【化38】
【0082】
ここで、基(M3-1)~基(M3-7)におけるRdは、それぞれ独立して水素、ハロゲンまたは炭素数1~5のアルキルであり、これらのアルキルにおいて少なくとも1つの水素はハロゲンで置き換えられてもよい。好ましいRdは、水素、フッ素およびメチルである。
また、基(M3-2)、基(M3-3)、基(M3-4)、基(M3-7)はラジカル重合で重合するのが好適である。基(M3-1)、基(M3-5)、基(M3-6)はカチオン重合で重合するのが好適である。いずれもリビング重合なので、少量のラジカルあるいはカチオン活性種が反応系内に発生すれば重合は開始する。活性種の発生を加速する目的で重合開始剤を使用できる。活性種の発生には例えば光または熱を使用できる。
AMは、それぞれ独立して芳香族性または非芳香族性の5員環、6員環または炭素数9以上の縮合環であるが、環中の-CH2-は-O-、-S-、-NH-、または-NCH3-で、環中の-CH=は-N=で置き換わってもよく、環中の水素原子はハロゲン、および炭素数1~5のアルキル、またはハロゲン化アルキルで置き換わってもよい。
好ましいAMの具体例は、1,4-シクロヘキシレン、1,4-フェニレン、1,4-シクロヘキセニレン、2-フルオロ-1,4-フェニレン、2,3-ジフルオロ-1,4-フェニレン、2,5-ジフルオロ-1,4-フェニレン、2,6-ジフルオロ-1,4-フェニレン、2-メチル-1,4-フェニレン、2-トリフルオロメチル-1,4-フェニレン、2,3-ビス(トリフルオロメチル)-1,4-フェニレン、ナフタレン-2,6-ジイル、テトラヒドロナフタレン-2,6-ジイル、フルオレン-2,7-ジイル、9-メチルフルオレン-2,7-ジイル、1,3-ジオキサン-2,5-ジイル、ピリジン-2,5-ジイル、およびピリミジン-2,5-ジイルである。なお、前記1,4-シクロヘキシレンおよび1,3-ジオキサン-2,5-ジイルの立体配置はシスよりもトランスの方が好ましい。
尚、2-フルオロ-1,4-フェニレンは、3-フルオロ-1,4-フェニレンと構造的に同一であるので、後者は例示していない。この規則は、2,5-ジフルオロ-1,4-フェニレンと3,6-ジフルオロ-1,4-フェニレンの関係などにも適用される。
YMは、それぞれ独立して単結合または炭素数1~20のアルキレンであり、これらのアルキレンにおいて少なくとも1つの-CH2-は-O-、-S-、-CH=CH-、-C≡C-、-COO-、または-OCO-で置き換えられてもよいが、-O-O-のように2つの酸素原子が隣接することはない。好ましいYMは、単結合、-(CH2)m2-、-O(CH2)m2-、および-(CH2)m2O-(前記式中、m2は1~20の整数である)である。
ZMは、それぞれ独立して単結合、-(CH2)m3-、-O(CH2)m3-、-(CH2)m3O-、-O(CH2)m3O-、-CH=CH-、-C≡C-、-COO-、-OCO-、-(CF2)2-、-(CH2)2-COO-、-OCO-(CH2)2-、-CH=CH-COO-、-OCO-CH=CH-、-C≡C-COO-、-OCO-C≡C-、-CH=CH-(CH2)2-、-(CH2)2-CH=CH-、-CF=CF-、-C≡C-CH=CH-、-CH=CH-C≡C-、-OCF2-(CH2)2-、-(CH2)2-CF2O-、-OCF2-、または-CF2O-(前記式中、m3は1~20の整数である)である。
好ましいZMは単結合、-(CH2)m3-、-O(CH2)m3-、-(CH2)m3O-、-CH=CH-、-C≡C-、-COO-、-OCO-、-(CH2)2-COO-、-OCO-(CH2)2-、-CH=CH-COO-、-OCO-CH=CH-、-OCF2-、および-CF2O-(前記式中、m3は1~20の整数である)である。
m1はそれぞれ独立して0~2の整数である。m1の合計が1のときは、6員環などの環を2つ有する二環の化合物である。m1の合計が2または3のときは、それぞれ三環と四環の化合物である。またm1が複数あるとき、2つ以上のAM、または2つ以上のZMは同一であってもよいし、または異なってもよい。RMBおよびYMについても同様である。
【0083】
式(M1)~(M3)で表される化合物は2H(重水素)、13Cなどの同位体を天然存在比の量よりも多く含んでいても同様の特性を有するので好ましく用いることができる。
化合物(M1)~(M3)の更に好ましい例は、下記式(M1-1)~(M1-16)、(M2-1)~(M2-14)、および(M3-1)~(M3-3)で表される化合物である。これらの化合物において、RMA、RMB、ZM、AM、およびYMの意味は、本発明の態様に記載した式(M1)および式(M2)のそれらと同一である。
【0084】
化合物(M1-1)~(M1-16)、(M2-1)~(M2-14)、および(M3-1)~(M3-3)における下記の部分構造について説明する。部分構造(a1)は、少なくとも1つの水素がフッ素またはメチルで置き換えられてもよい1,4-フェニレンを表す。部分構造(a2)は、9位の水素がメチルで置き換えられてもよいフルオレンを表す。
【化39】
【化40】
【化41】
【化42】
【化43】
【化44】
下記のメソゲン部位を有さないモノマー、およびメソゲン部位を持つモノマー(M1)、および(M2)以外の重合性化合物を必要に応じて使用することができる。
【0085】
2.2.2 メソゲン部位を有さない重合性のある官能基を持つモノマー
メソゲン部位を有さない重合性のある官能基を持つモノマーとして、例えば、炭素数1~30の直鎖あるいは分岐アクリレート、炭素数1~30の直鎖あるいは分岐メタクリレート、炭素数1~30の直鎖あるいは分岐ジアクリレート、および炭素数1~30の直鎖あるいは分岐ジメタクリレートであり、三つ以上の重合性官能基を有するモノマーとしては、グリセロール・プロポキシレート(1PO/OH)トリアクリレート、ペンタエリスリトール・プロポキシレート・トリアクリレート、ペンタエリスリトール・トリアクリレート、トリメチロールプロパン・エトキシレート・トリアクリレート、トリメチロールプロパン・プロポキシレート・トリアクリレート、トリメチロールプロパン・トリアクリレート、ジ(トリメチロールプロパン)テトラアクリレート、ペンタエリスリトール・テトラアクリレート、ジ(ペンタエリスリトール)ペンタアクリレート、およびジ(ペンタエリスリトール)ヘキサアクリレート、などを挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0086】
2.3 重合開始剤
本発明の実施形態に係る高分子/液晶複合材料を構成する高分子の製造における重合反応は特に限定されず、例えば、光ラジカル重合、熱ラジカル重合、光カチオン重合等が行われる。
光ラジカル重合において用いることができる光ラジカル重合開始剤の例は、ダロキュア(DAROCUR)1173および4265(いずれも商品名、BASFジャパン(株))、イルガキュア(IRGACURE)184、369、500、651、784、819、907、1300、1700、1800、1850、および2959(いずれも商品名、BASFジャパン(株))、などである。
熱ラジカル重合において用いることができる熱によるラジカル重合の好ましい開始剤の例は、過酸化ベンゾイル、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、t-ブチルパーオキシピバレート、t-ブチルパーオキシジイソブチレート、過酸化ラウロイル、2,2’-アゾビスイソ酪酸ジメチル(MAIB)、ジt-ブチルパーオキシド(DTBPO)、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、アゾビスシクロヘキサンカルボニトリル(ACN)などである。
光カチオン重合において用いることができる光カチオン重合開始剤として、ジアリールヨードニウム塩(以下、「DAS」という。)、トリアリールスルホニウム塩(以下、「TAS」という。)などがあげられる。光カチオン重合開始剤の具体的な商品名の例は、サイラキュア(Cyracure)UVI-6990、サイラキュアUVI-6974、サイラキュアUVI-6992(それぞれ商品名、UCC(株))、アデカオプトマーSP-150、SP-152、SP-170、SP-172(それぞれ商品名、(株)ADEKA)、Rhodorsil Photoinitiator 2074(商品名、ローディアジャパン(株))、イルガキュア(IRGACURE)250(商品名、BASFジャパン(株))、およびUV-9380C(商品名、GE東芝シリコーン(株))などである。
【0087】
2.4 硬化剤等
本発明の実施形態に係る高分子/液晶複合材料を構成する高分子の製造において、前記モノマー等および重合開始剤の他にさらに1種または2種以上の他の好適な成分、例えば、硬化剤、触媒、安定剤、連鎖移動剤、光増感剤、および染料架橋剤等から選ばれる1種以上を加えてもよい。
硬化剤としては、通常、エポキシ樹脂の硬化剤として使用されている従来公知の潜在性硬化剤が使用できる。潜在性エポキシ樹脂用硬化剤は、アミン系硬化剤、ノボラック樹脂系硬化剤、イミダゾール系硬化剤、および酸無水物系硬化剤等が挙げられる。
また、グリシジル、エポキシ、オキセタニルを有する重合性化合物と硬化剤との硬化反応を促進するための硬化促進剤をさらに用いてもよい。硬化促進剤としては、例えば、ベンジルジメチルアミン、トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、ジメチルシクロヘキシルアミン等の3級アミン類、1-シアノエチル-2-エチル-4-メチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール等のイミダゾール類、トリフェニルホスフィン等の有機リン系化合物、テトラフェニルホスホニウムブロマイド等の4級ホスホニウム塩類、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン-7等やその有機酸塩等のジアザビシクロアルケン類、テトラエチルアンモニウムブロマイド、テトラブチルアンモニウムブロマイド等の4級アンモニウム塩類、三フッ化ホウ素、およびトリフェニルボレート等のホウ素化合物などが挙げられる。これらの硬化促進剤は単独または2種以上を混合して使用することができる。
また、例えば貯蔵中の不所望な重合を防止するために、安定剤を添加することが好ましい。安定剤として、当業者に知られているすべての化合物を用いることができる。安定剤の代表例としては、4-エトキシフェノール、ハイドロキノン、およびブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)等が挙げられる。
【0088】
2.5 モノマー/液晶混合物における重合性モノマー等の含有率
本発明の実施形態に係る、モノマー/液晶混合物に含まれる重合性モノマーの含有量は、使用目的に応じて調整することができる。液晶素子の調光層を形成するための材料として用いる場合には、光散乱による不透明性と透明性との間の十分なコントラストを得るために、モノマー/液晶混合物中、重合性モノマーは0.1~50重量%の範囲で含有されることが好ましく、0.1~40重量%の範囲で含有されることがより好ましく、0.1~10重量%の範囲で含有されることがより好ましい。
本発明の実施形態に係る高分子/液晶複合材料中における液晶組成物の含有率は使用目的によって異なるが、高分子/液晶複合材料が光学的等方性を発現できる範囲、もしくは複合材料が必要な螺旋ピッチを発現できる範囲であれば可能な限り含有率が低い方が好ましく、本発明の実施形態に係る高分子/複合材料の駆動電圧の低減、応答の高速化、電気複屈折(カー係数)の向上、および高いコントラストを実現させることができる。
【0089】
2.6 その他の成分
本発明の実施形態に係る高分子/液晶複合材料は、たとえば二色性色素、フォトクロミック化合物を本発明の効果を損なわない範囲で含有していてもよい。
【0090】
3 液晶素子
3.1 光学的等方性の液晶組成物を使用した液晶素子
本発明の第4の態様は、本発明に実施形態に係る液晶組成物または高分子/液晶複合材料(以下、液晶組成物と高分子/液晶複合材料をあわせて「液晶媒体」ということがある)のうち、光学的等方性のものを含む光学的に等方性の液晶相で駆動される液晶素子である。
光学的等方性の液晶組成物を使用した液晶表示素子の構造例としては、
図1に示すように、櫛歯電極基板の電極が、左側から伸びる電極1と右側から伸びる電極2が交互に配置された構造を挙げることができる。電極1と電極2との間に電位差がある場合、
図1に示すような櫛歯電極基板上では、上方向と下方向の2つの方向の電界が存在する状態を提供できる。
【0091】
3.2 キラルネマチック相を示す液晶組成物を使用した液晶素子
本発明の第5の態様は、本発明に実施形態に係る液晶組成物または高分子/液晶複合材料のうち、キラルネマチック相を示すものを調光材料として使用する液晶素子である。
本発明の実施形態に係る液晶素子は、電極層を有する少なくとも一方が透明な2枚の基板と、この基板間に支持された調光層を有する。この調光層は、上記で説明した高分子/液晶複合材料からなる。ここで、高分子/液晶複合材料に含まれる高分子は透明であることが好ましい。 また、高分子/液晶複合材料は連続層を形成することが好ましく、液晶分子の無秩序な状態を形成することにより、光学的境界面を形成し、光の散乱を発現させる上で重要である。
上記調光層中の高分子/液晶複合材料中の高分子は、モノマー/液晶混合物に含まれる重合性モノマーの重合体からなるものであるが、繊維状あるいは粒子状に分散されたもの、前述した高分子/液晶複合材料を小滴状に分散させたフィルム状のもの、あるいは三次元網目状の構造を有しゲル状のものであってもよい。
上記の基板には、目的に応じて透明、または不透明の電極が、その全面または部分的に適宜配置されてもよい。また、その基板の少なくとも一方は透明性を有するものであるが、完全な透明性を必須とするものではない。もし、この液晶素子が、液晶素子の一方の側から他方の側へ通過する光に対して作用させるために使用される場合は、2枚の基板は、共に適宜な透明性が与えられる。
上記液晶素子で使用する基板は、堅固な材料、例えば、ガラス、金属等であってもよく、柔軟性を有する材料、例えば、プラスチックフィルムであってもよい。そして、液晶素子では、基板は2枚が対向して適当な間隔を隔て得るものである。
またポリイミド等の配向膜が、必要に応じて少なくとも一方の基板の全面又は部分的に配置されていてもよい。尚、2枚の基板間には、通常、周知の液晶素子と同様、間隔保持用のスペーサーを介在させることもできる。
【0092】
本発明の実施形態に係る液晶素子のうち、リバースモード駆動の液晶素子については、例えば、次のようにして製造することができる。即ち、電極層を有する少なくとも一方が透明性を有する2枚の基板間に、前記のモノマー/液晶混合物を介在させて、該透明性基板を通して紫外線の照射や透明性基板を加熱することで上記モノマー/液晶混合物に含まれる重合性モノマーを重合させることにより、高分子と液晶化合物から構成される調光層を有する液晶素子を製造することができる。
リバースモード駆動の液晶素子の例として、模式図を
図3に示した。
図3(a)は電圧無印加の状態であり、液晶化合物の配向はプレーナーとなり、光は透過するのでパネルは透明となる。
図3(b)は電圧印加の状態であり、液晶化合物の配向はホモジニアスであり、光は散乱するのでパネルは白濁する。
【0093】
本発明の実施形態に係る液晶素子のうち、ノーマルモード駆動の液晶素子については、例えば、次のようにして製造することができる。即ち、電極層を有する少なくとも一方が透明性を有する2枚の基板間に、前記のモノマー/液晶混合物を介在させて、液晶化合物に特有の飽和電圧を印加しながら、該透明性の基板を通して紫外線の照射を行うか、透明性の基板を加熱することでモノマー/液晶混合物に含まれる重合性モノマーを重合させることにより、高分子と液晶化合物から構成される調光層を有する液晶素子を製造することができる。
本発明のノーマルモード駆動の液晶素子の例として、模式図を
図4に示した。
図4(a)は電圧無印加の状態であり、液晶化合物の配向はフォーカルコニックであり、光は散乱するのでパネルは白濁する。
図4(b)は電圧印加の状態であり、液晶化合物の配向はホメオトロピックであり、光は透過するのでパネルは透明となる。
【0094】
なお、調光層を形成する材料であるモノマー/液晶混合物を2枚の基板間に介在させる方法は特に制限はなく、このモノマー/液晶混合物を公知の注入技術により基板間に注入すればよい。例えば、一方の基板上に適当な溶液塗布機やスピンコーター等を用いて均一に塗布し、次いで他方の基板を重ね合わせ圧着させればよい。
本発明の液晶素子における光散乱性を有する調光層の層厚は、使用目的に応じてその層厚を調整することができるが、光散乱による不透明性と透明性との間の十分なコントラストを得るために、層厚(基板間隔)は、2~40μmの範囲が好ましく、6~25μmの範囲が特に好ましい。
本発明に実施形態に係る液晶素子は、調光窓、光変調素子(light modulation device)などとして、室内インテリアなどの建築用途、自動車用リーフなどの自動車用途などの種々の用途に使用できる。
【0095】
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。なお特に断りのない限り、「%」は「重量%」を意味する。
【実施例】
【0096】
本明細書の実施例において、Iは非液晶等方相、Nはネマチック相、N*はキラルネマチック相、BPはブルー相、BPXは二色以上の回折光が観測されない光学的に等方性の液晶相を表す。本明細書において、I-N相転移点をN-I点ということがある。I-N*相転移点をN*-I点ということがある。I-BP相転移点をBP-I点ということがある。
本明細書の実施例において、物性値等の測定・算出は特に断らない限り、日本電子機械工業規格(Standard of Electronic Industries Association of Japan)、EIAJ・ED-2521Aに記載された方法に従った。具体的な測定方法、算出方法等は以下のとおりである。
【0097】
1)I-N相転移点(TNI)
偏光顕微鏡を備えた融点測定装置のホットプレートに試料を置き、クロスニコルの状態で、まず試料が非液晶等方相になる温度まで昇温した後、1℃/分の速度で降温し、完全にキラルネマチック相または光学的異方性の相を出現させた。その過程での相転移温度を測定し、次いで1℃/分の速度で加熱し、その過程における相転移温度を測定した。光学的に等方性の液晶相においてクロスニコル下では暗視野で相転移点の判別が困難な場合は、偏光板をクロスニコルの状態から1~10°ずらして相転移温度を測定した。
【0098】
2)屈折率(n∥およびn⊥;25℃で測定)
測定は、波長589nmの光を用い、接眼鏡に偏光板を取り付けたアッベ屈折計により行なった。主プリズムの表面を一方向にラビング(rubbing)したあと、試料を主プリズムに滴下した。屈折率(n∥)は偏光の方向がラビングの方向と平行であるときに測定した。屈折率(n⊥)は偏光の方向がラビングの方向と垂直であるときに測定した。
【0099】
3)ピッチ(P;25℃で測定;nm)
ピッチ長は選択反射を用いて測定した(液晶便覧196頁、2000年発行、丸善)。選択反射波長λには、関係式<n>p/λ=1が成立する。ここで<n>は平均屈折率を表し、次式で与えられる。<n>={(n∥2+n⊥2)/2}1/2。選択反射波長は顕微分光光度計(大塚電子株式会社、商品名FE-3000)で測定した。得られた反射波長を平均屈折率で除すことにより、ピッチを求めた。
可視光の長波長領域あるいは短波長領域に反射波長を有するコレステリック液晶、および、測定が困難であったコレステリック液晶のピッチは、可視光領域に選択反射波長を有するような濃度でキラル化合物を添加(濃度C’)して、選択反射波長(λ’)を測定し、本来の選択反射波長(λ)を本来のキラル化合物の濃度(濃度C)から、直線外挿法(λ=λ’×C’/C)で算出することにより求めた。
【0100】
4)HTP(ヘリカルツイストパワー)(25℃で測定;μm-1)
上記の方法で求められた平均屈折率<n>、およびピッチの値を用いて、HTPを次式で与えられる。HTP=<n>/(λ×C)。λは選択反射波長(nm)、Cはキラル化合物の濃度(wt%)を示す。
【0101】
5)電圧保持率(VHR;60℃で測定;%)
測定に使用したTN素子はポリイミド配向膜を有し、そして2枚のガラス基板の間隔(セルギャップ)は5μmであった。この素子は試料を注入した後、紫外線で硬化する接着剤で密閉した。このTN素子にパルス電圧(5Vで60μs)を印加して充電した、減衰する電圧を高速電圧計で16.7msの間で測定し、単位周期(30Hz)における電圧曲線と横軸との間の面積Aを求めた。面積Bは減衰しなかったときの面積であった。電圧保持率(%)は面積Bに対する面積Aの百分率で表した。
【0102】
6)セルの透過光強度の測定およびセルの透過率の算出
日本分光株式会社製紫外可視分光光度計V650DSに、光源光がセル面に対して垂直となるようにセルを設置し、波長450nmの透過光強度を計測した。その際の入射光のバンド幅は、5nmであった。セルの透過率/%は、計測対象のセルの透過光強度/(計測対象のセルを該分光計に入れてない状態で測った光強度)×100で算出した。電界印加ユニットとバイポーラー電源を用い、セルに電圧を印加した状態のセルの透過光強度および電圧を印加しない状態のセルの透過光強度を測定した。該電界印加ユニットはアジレント社製波形発生装置33210A、バイポーラー電源はNF社製nf ELECTRONIC INSTRUMENTS 4010を使用した。
【0103】
7)コントランス比の算出
コントラスト比とは、特定の状況下の透過光強度と、異なる状況下の透過光強度の比である。
【0104】
成分または液晶化合物の割合(百分率)は、液晶化合物の全重量に基づいた重量百分率(重量%)である。組成物は、液晶化合物などの成分の重量を測定してから混合することによって調製される。したがって、成分の重量%を算出するのは容易である。
【0105】
[実施例1]
<化合物(K101)の合成>
【化45】
【0106】
(化合物(K1-1)において、Rodk1=Rod1-1Cであり、nk1=nk2=0、R
k2=C
5H
11である化合物)
下記のスキームに従って、化合物(K101)を合成した。
【化46】
【0107】
(第1段)化合物(103)の合成
窒素雰囲気下で、化合物(102)(38.6g, 326mmol)、およびトリエチルアミン(36.4g, 360mmol)のトルエン(150mL)溶液を調製し、室温にて化合物(101)(25.0g, 163mmol)をゆっくりと滴下して、そのままの温度で1時間攪拌した。反応液をろ過して不溶物を取り除き、水にあけてトルエン(100mL)を追加し、水で2回洗浄し、次いで有機相を濃縮した後に、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:トルエン/酢酸エチル=1/1)にて単離精製して化合物(103)(15.7g, 163mmol)を得た。
【0108】
(第2段)化合物(104)の合成
窒素雰囲気下で、前段で得られた化合物(103)(29.6g, 93.5mmol)、アントラセン(25g, 140mmol)のトルエン(150mL)溶液を110℃で3日間加熱攪拌した。反応液を溶かして残留したアントラセンを取り除いた後で有機相を濃縮した後に、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:トルエン/酢酸エチル=4/1)にて単離精製して白色結晶の化合物(104)(46.2g, 93.5mmol)を得た。
【0109】
(第3段)化合物(105)の合成
窒素雰囲気下で、前段で得られた化合物(104)(20g, 40.4mmol)のTHF(100mL)/水(100mL)の混合溶液を調製し、室温にて水酸化リチウム(2.91g, 121mmol)のメタノール溶液をゆっくりと加えて、そのままの温度で24時間攪拌した。反応液を5℃まで冷却して、pH=4になるまでゆっくりと1N-HCl溶液を加え、水にあけてジエチルエーテル(300mL)にて抽出し、水で2回洗浄した。有機相を濃縮して、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:トルエン/酢酸エチル=2/1)にて単離精製して白色結晶の化合物(105)(8.50g, 28.9mmol)を得た。
【0110】
(第4段)化合物(K101)の合成
窒素雰囲気下で、フェノール誘導体(106)(7.37g, 29.9mmol)のジクロロメタン(5mL)溶液を-10℃まで冷却し、N,N’-ジシクロヘキシルカルボジイミド(6.17g, 29.9mmol)、4-ジメチルアミノピリジン(1.00g, 8.15mmol)、および前段で得られたカルボン酸誘導体(105)(4.00g, 13.6mmol)を加え、常温にて5時間攪拌した。反応液をろ過し、水にあけてジクロロメタン(50mL)を追加し、重曹水で2回、水で2回洗浄した。次いで有機相を濃縮した後に、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:トルエン)にて単離精製して化合物(K101)(6.30g, 8.39mmol)を得た。この化合物の融点は85℃であった。
1H-NMR(CDCl3、ppm): δ0.932-0.985(6H, t), 1.37-1.43(8H, m), 1.66-1.71(4H, m), 2.66-2.69(4H, t), 3.93(2H, s), 5.07(2H, s), 7.04-7.07(4H, d), 7.24-7.31(8H, m), 7.46-7.51(8H, m), 7.58-7.60(4H, d).
【0111】
[実施例2]
<化合物(K102)の合成>
【化47】
(化合物(K1-1)において、Rodk1=Rod1-1Gであり、nk1=nk2=0、R
k2=C
5H
11である化合物)
実施例1と同様の方法で、化合物(106)の代わりに下記の化合物(107)を使用して、化合物(K102)(2.40g, 2.66mmol)を得た。この化合物の融点は182℃であった。
【化48】
1H-NMR(CDCl
3、ppm): δ0.885-0.914(6H, t), 1.02-1.10(4H, m), 1.20-1.35(18H, m), 1.45-1.55(4H, m), 1.86-1.93(8H, m), 2.47-2.58(2H, tt), 3.88(2H, s), 5.03(2H, s), 7.00-7.02(4H, d), 7.21-7.22(4H, m), 7.26-7.28(4H, d), 7.42-7.48(8H, m), 7.53-7.55(4H, d).
【0112】
[実施例3]
<化合物(K103)の合成>
【化49】
(化合物(K1-1)において、Rodk1=Rod1-1Dであり、nk1=nk2=0、R
k2=C
5H
11である化合物)
実施例1と同様の方法で、化合物(106)の代わりに下記の化合物(108)を使用して、化合物(K103)(9.04g, 12.0mmol)を得た。この化合物は常温でアモルファス状態であった。
【化50】
1H-NMR(CDCl
3、ppm): δ0.879-0.907(6H, t), 0.990-1.06(4H, m), 1.18-1.33(18H, m), 1.38-1.43(4H, m), 1.84-1.86(8H, d), 2.40-2.48(2H, tt), 3.82(2H, s), 4.98(2H, s), 6.84-6.86(4H, d), 7.16-7.20(8H, m), 7.38-7.40(2H, d), 7.42-7.43(2H, m).
【0113】
[実施例4-1]
下図に示す液晶化合物を、下記の割合で混合することにより液晶組成物NLC-Aを調製した。
【0114】
【0115】
この液晶組成物NLC-Aの相転移温度(℃)はN 79.7 Iであり、平均屈折率<n>は1.56であった。
【0116】
液晶組成物NLC-A(98.0重量%)に、実施例1で得られた化合物(K101)(2.00重量%)を100℃で加熱溶解させて、液晶組成物CLC-A1を得た。この液晶組成物CLC-A1の相転移温度(℃)はN* 79.1 Iであった。
この際、完全溶解した液晶組成物CLC-A1が得られるのに要した加熱時間は2分間であった。この結果、化合物(K101)は非常に高い溶解性を示すことが分かった。
液晶組成物CLC-A1の選択反射波長(λ)は484.0(nm)であり、これらの値から計算された化合物(K101)のHTPは161(μm-1)であった。また液晶組成物CLC-A1のVHRを測定したところ、96.1%であった。この結果、組成物CLC-A1は高い電圧保持率を示すことがわかった。
【0117】
[実施例4-2]
下図に示す液晶化合物を、下記の割合で混合することにより液晶組成物NLC-Bを調製した。
【化53】
【化54】
【0118】
この液晶組成物NLC-Bの相転移温度(℃)はN 87.9 Iであり、平均屈折率<n>は1.56であった。
【0119】
液晶組成物NLC-B(95.2重量%)に、実施例1で得られた化合物(K101)(4.80重量%)を100℃で2分間加熱撹拌することにより完全溶解させて液晶組成物CLC-B1を得た。
この液晶組成物CLC-B1の相転移温度(℃)はN* 79.1 BP 79.2 Iであった。
【0120】
[実施例4-3]
モノマー/液晶混合物の調製
液晶組成物と重合性モノマーとの混合物として液晶組成物CLC-B1を89.2重量%、n-ヘキサデシルアクリレート(C16A)を5.4重量%、化合物(MC3-12)を5.4重量%、光重合開始剤として2,2’-ジメトキシフェニルアセトフェノンを0.4重量%混合した液晶組成物MLC-B1を調製した。この液晶組成物MLC-B1の相転移温度(℃)はN* 51.1 BP 54.6 I、I 53.3 BP 49.7 N*であった。
【0121】
【0122】
[実施例4-4]
高分子/液晶複合材料の調製
液晶組成物MLC-B1を配向処理の施されていない櫛型電極基板と対向ガラス基板(非電極付与)の間に挟持し(セル厚8μm)、得られたセルを52.0℃のブルー相まで加熱した。この状態で、紫外光(紫外光強度23mWcm
-2(365nm))を1分間照射して、重合反応を行った。
このようにして得られた高分子/液晶複合材料PSBP-B1は室温まで冷却しても光学的に等方性の液晶相を維持していた。
なお、
図1に示すように、櫛型電極基板の電極は、左側の接続用電極部から右方向に伸びる電極1と右側の接続用電極部から左方向に伸びる電極2が交互に配置される。したがって、電極1と電極2との間に電位差がある場合、
図1に示すような櫛型電極基板上では、1本の電極に注目すると、図面上の上方向と下方向の2つの方向の電界が存在する状態を提供できる。
【0123】
[実施例4-5]
実施例4-4で得られた高分子/液晶複合材料PSBP-B1が挟持されたセルを、
図2に示した光学系にセットし、電気光学特性を測定した。
図2の測定光学系は、光源3と、偏光子4と、櫛形電極5と、検光子6と、受光器7とを備える。光源3として偏光顕微鏡(ニコン製 エクリプス LV100POL)の白色光源を用い、セルへの入射角度がセル面に対して垂直となるようにし、櫛型電極5の線方向がPolarizer4とAnalyzer6偏光板に対してそれぞれ45°となるように前記セルを光学系にセットした。室温で印加電圧と透過率の関係を調べた。68.4Vの矩形波を印加すると、透過率が89.7%となり、透過光強度は飽和した。コントラストは1614と非常に高い値を示した。
【0124】
[実施例5-1]
液晶組成物NLC-A(98.0重量%)に、実施例2で得られた化合物(K102)(2.00重量%)を100℃で加熱溶解させて、液晶組成物CLC-A2を得た。この液晶組成物CLC-A2の相転移温度(℃)はN* 79.1 Iであった。
この際、完全溶解した液晶組成物CLC-A2が得られるのに要した加熱時間は3分間であった。この結果、化合物(K102)は非常に高い溶解性を示すことが分かった。
液晶組成物CLC-A2の選択反射波長(λ)は560(nm)であった。これらの値から計算された化合物(K102)のHTPは139(μm-1)であった。また液晶組成物CLC-A2のVHRを測定したところ、95.6%であった。この結果、組成物CLC-A2は高い電圧保持率を示すことがわかった。
【0125】
[実施例5-2]
液晶組成物NLC-B(95.2重量%)に、実施例2で得られた化合物(K102)(4.80重量%)を100℃で2分間加熱撹拌することにより完全溶解させて液晶組成物CLC-B2を得た。
この液晶組成物CLC-B2の相転移温度(℃)はN* 83.5 BP 83.7 Iであった。
【0126】
[実施例5-3]
モノマー/液晶混合物の調製
液晶組成物と重合性モノマーとの混合物として液晶組成物CLC-B2を89.2重量%、n-ヘキサデシルアクリレート(C16A)を5.4重量%、化合物(MC3-12)を5.4重量%、光重合開始剤として2,2’-ジメトキシフェニルアセトフェノンを0.4重量%混合した液晶組成物MLC-B2を調製した。この液晶組成物MLC-B2の相転移温度(℃)はN* 55.4 BP 55.5 I、I 55.6 BP 54.7 N*であった。
【0127】
[実施例5-4]
高分子/液晶複合材料の調製
液晶組成物MLC-B2を配向処理の施されていない櫛型電極基板と対向ガラス基板(非電極付与)の間に挟持し(セル厚8μm)、得られたセルを55.4℃のブルー相まで加熱した。この状態で、紫外光(紫外光強度23mWcm-2(365nm))を1分間照射して、重合反応を行った。
このようにして得られた高分子/液晶複合材料PSBP-B2は室温まで冷却しても光学的に等方性の液晶相を維持していた。
【0128】
[実施例5-5]
実施例5-4で得られた高分子/液晶複合材料PSBP-B2が挟持されたセルを、
図2に示した光学系にセットし、電気光学特性を測定した。光源として偏光顕微鏡(ニコン製 エクリプス LV100POL)の白色光源を用い、セルへの入射角度がセル面に対して垂直となるようにし、櫛型電極の線方向がPolarizerとAnalyzer偏光板に対してそれぞれ45°となるように前記セルを光学系にセットした。室温で印加電圧と透過率の関係を調べた。59.5Vの矩形波を印加すると、透過率が88.9%となり、透過光強度は飽和した。コントラストは1656と非常に高い値を示した。
【0129】
[実施例6-1]
下図に示す液晶化合物を、下記の割合で混合することにより液晶組成物NLC-Cを調製した。
【0130】
【0131】
この液晶組成物NLC-Cの相転移温度(℃)はN 79.9 Iであり、平均屈折率<n>は1.60であった。
【0132】
液晶組成物NLC-C(95.8重量%)に、実施例1で得られた化合物(K101)(4.2重量%)を100℃で2分間加熱撹拌することにより完全溶解させて液晶組成物CLC-C1を得た。
この液晶組成物CLC-C1の相転移温度(℃)はN* 75.9 Iであった。また液晶組成物CLC-C1の螺旋ピッチは0.29μm、VHRは99.1%であった。この結果、組成物CLC-C1は高い電圧保持率を示すことがわかった。
【0133】
[実施例6-2]
モノマー/液晶混合物の調製
液晶組成物NLC-C(92.9重量%)に、実施例1で得られた化合物(K101)(0.9重量%)、化合物(MC2-04)を5.90重量%、光重合開始剤として2,2’-ジメトキシフェニルアセトフェノンを0.3重量%混合した液晶組成物MLC-C1を調製した。
【化57】
【0134】
[実施例6-3]
高分子/液晶複合材料の調製
液晶組成物MLC-C1を配向処理の施されていない2枚の透明導電膜の電極が付与されたガラス基板の間に挟持し(セル厚10μm)、得られたセルをMLC-04が等方相になるまで加熱する。この状態で、紫外光(紫外光強度18mWcm-2(365nm))を1分間照射して、重合反応を行った。
このようにして得られた高分子/液晶複合材料PDLC-C1は室温まで冷却してもキラルネマチック相を維持していた。
【0135】
[実施例6-4]
実施例6-3で得られた高分子/液晶複合材料PDLC-C1が挟持されたセルを光学系にセットし、電気光学特性を測定した。光源として偏光顕微鏡(ニコン製 エクリプス LV100POL)の白色光源を用い、セルへの入射角度がセル面に対して垂直となるように光学系にセットした。室温で印加電圧と透過率の関係を調べた。20Vの電圧を印加すると、高分子/液晶複合材料PDLC-C1がノーマルモードで駆動することを確認した。高分子/液晶複合材料PDLC-C1の電極間に10Vの電圧を印加したとき透過光強度が96.9%となり、22Vの電圧を印加したとき透過光強度は10.0%となり、低電圧で駆動し、コントラストが高い液晶デバイスが得られた。
【0136】
[実施例7-1]
液晶組成物NLC-C(95.8重量%)に、実施例2で得られた化合物(K102)(4.2重量%)を100℃で3分間加熱撹拌することにより完全溶解させて液晶組成物CLC-C2を得た。
この液晶組成物CLC-C2の相転移温度(℃)はN* 82.5 Iであった。また液晶組成物CLC-C2の螺旋ピッチは0.33μm、VHRは99.2%であった。この結果、組成物CLC-C2は高い電圧保持率を示すことがわかった。
【0137】
[実施例7-2]
モノマー/液晶混合物の調製
液晶組成物NLC-C(92.9重量%)に、実施例2で得られた化合物(K102)(0.9重量%)、化合物(MC2-04)を5.90重量%、光重合開始剤として2,2’-ジメトキシフェニルアセトフェノンを0.3重量%混合した液晶組成物MLC-C2を調製した。
【0138】
[実施例7-3]
高分子/液晶複合材料の調製
液晶組成物MLC-C2を配向処理の施されていない2枚の透明導電膜の電極が付与されたガラス基板の間に挟持し(セル厚10μm)、得られたセルをMLC-04が等方相になるまで加熱する。この状態で、紫外光(紫外光強度18mWcm-2(365nm))を1分間照射して、重合反応を行った。
このようにして得られた高分子/液晶複合材料PDLC-C2は室温まで冷却してもキラルネマチック相を維持していた。
【0139】
[実施例7-4]
実施例7-3で得られた高分子/液晶複合材料PDLC-C2が挟持されたセルを、光学系にセットし、電気光学特性を測定した。光源として偏光顕微鏡(ニコン製 エクリプス LV100POL)の白色光源を用い、セルへの入射角度がセル面に対して垂直となるように光学系にセットした。室温で印加電圧と透過率の関係を調べた。20Vの電圧を印加すると、高分子/液晶複合材料PDLC-C2がノーマルモードで駆動することを確認した。高分子/液晶複合材料PDLC-C2の電極間に10Vの電圧を印加したとき透過光強度が91.1%となり、18Vの電圧を印加したとき透過光強度は10.0%となり、低電圧で駆動し、コントラストが高い液晶デバイスが得られた。
【0140】
[実施例8-1]
液晶組成物NLC-C(95.8重量%)に、実施例3で得られた化合物(K103)(4.2重量%)を100℃で2分間加熱撹拌することにより完全溶解させて液晶組成物CLC-C3を得た。
この液晶組成物CLC-C3の相転移温度(℃)はN* 75.4 Iであった。また液晶組成物CLC-C3の螺旋ピッチは0.31μm、VHRは98.0%であった。この結果、組成物CLC-C3は高い電圧保持率を示すことがわかった。
【0141】
[実施例8-2]
モノマー/液晶混合物の調製
液晶組成物NLC-C(92.9重量%)に、実施例3で得られた化合物(K103)(0.9重量%)、化合物(MC2-04)を5.90重量%、光重合開始剤として2,2’-ジメトキシフェニルアセトフェノンを0.3重量%混合した液晶組成物MLC-C3を調製した。
【0142】
[実施例8-3]
高分子/液晶複合材料の調製
液晶組成物MLC-C3を配向処理の施されていない2枚の透明導電膜の電極が付与されたガラス基板の間に挟持し(セル厚10μm)、得られたセルをMLC-04が等方相になるまで加熱する。この状態で、紫外光(紫外光強度18mWcm-2(365nm))を1分間照射して、重合反応を行った。
このようにして得られた高分子/液晶複合材料PDLC-C3は室温まで冷却してもキラルネマチック相を維持していた。
【0143】
[実施例8-4]
実施例8-3で得られた高分子/液晶複合材料PDLC-C3が挟持されたセルを光学系にセットし、電気光学特性を測定した。光源として偏光顕微鏡(ニコン製 エクリプス LV100POL)の白色光源を用い、セルへの入射角度がセル面に対して垂直となるように前記セルを光学系にセットした。室温で印加電圧と透過率の関係を調べた。20Vの電圧を印加すると、高分子/液晶複合材料PDLC-C3がノーマルモードで駆動することを確認した。高分子/液晶複合材料PDLC-C3の電極間に10Vの電圧を印加したとき透過光強度が91.0%となり、20Vの電圧を印加したとき透過光強度は10.0%となり、低電圧で駆動し、コントラストが高い液晶デバイスが得られた。
【産業上の利用可能性】
【0144】
本発明の活用法として、たとえば、高分子/液晶複合材料を用いる表示素子などの液晶素子、または調光ガラスが挙げられる。
【符号の説明】
【0145】
1 電極1
2 電極2
3 光源
4 偏光子(偏光板)(Polarizer)
5 櫛型電極セル
6 検光子(偏光板)(Analyzer)
7 受光器(Photodetector)