(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-20
(45)【発行日】2023-03-29
(54)【発明の名称】逆浸透膜装置の運転方法
(51)【国際特許分類】
C02F 1/44 20230101AFI20230322BHJP
C02F 1/50 20230101ALI20230322BHJP
B01D 61/04 20060101ALI20230322BHJP
B01D 65/02 20060101ALI20230322BHJP
B01D 65/06 20060101ALI20230322BHJP
【FI】
C02F1/44 C
C02F1/50 510C
C02F1/50 520A
C02F1/50 520B
C02F1/50 520F
C02F1/50 520P
C02F1/50 531M
C02F1/50 532D
C02F1/50 532C
C02F1/50 532E
C02F1/50 532H
C02F1/50 532J
C02F1/50 540B
C02F1/50 550H
C02F1/50 550L
C02F1/50 560E
B01D61/04
B01D65/02 500
B01D65/06
(21)【出願番号】P 2021055489
(22)【出願日】2021-03-29
【審査請求日】2022-02-25
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000001063
【氏名又は名称】栗田工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112874
【氏名又は名称】渡邊 薫
(72)【発明者】
【氏名】中田 耕次
(72)【発明者】
【氏名】高橋 淳一
【審査官】片山 真紀
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-114473(JP,A)
【文献】特開2020-054969(JP,A)
【文献】特開2020-028865(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D61/00-71/82
C02F1/44、50、72-78
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸化系スライム抑制剤を間欠的に添加して、当該酸化系スライム抑制剤を含有する被処理水を逆浸透膜装置に間欠的に供給する第一工程と、
有機系スライム抑制剤を、少なくとも前記第一工程の添加期間以外の期間に添加して、当該有機系スライム抑制剤を含有する被処理水を逆浸透膜装置に供給する第二工程と、を有し、
前記酸化系スライム抑制剤の添加濃度が、前記有機系スライム抑制剤の添加濃度よりも高くなるように調整し、
前記酸化系スライムコントロール剤の添加濃度が、全塩素濃度換算で0.1~600mg/L、及び、前記有機系スライムコントロール剤の添加濃度が0.01~100mg(as 薬剤質量)/Lであり、
前記第一工程は、
1単位当たりの第一間欠添加期間及び1単位当たりの第一無添加期間を有し、当該1単位当たりの第一間欠添加期間が、
当該1単位当たりの第一無添加期間よりも短期間で
あり、前記1単位当たりの第一間欠添加期間が10~300分であり、前記1単位当たりの第一無添加期間が5~100時間であり、
当該第一間欠添加期間及び当該第一無添加期間を順次繰り返し行い、
前記1単位当たりの第一間欠添加期間は、前記酸化系スライム抑制剤の添加開始時から添加終了時までの添加期間であり、前記1単位当たりの第一無添加期間は、前記酸化系スライム抑制剤の添加終了時から添加開始時までの無添加期間であり、
前記第二工程における前記有機系スライムコントロール剤の添加期間は、前記1単位当たりの第一無添加期間の全期間に対して前記有機系スライムコントロール剤を90%以上添加する期間を少なくとも含むものであり、
前記酸化系スライム抑制剤が、結合
塩素系化合物(ハロシアノアセトアミド化合物は除く)を含む薬剤であり、
及び、前記有機系スライム抑制剤が
、結合ハロゲン化合物(ハロシアノアセトアミド化合物は除く)以外の有機系スライム抑制剤である、
前記酸化系スライム抑制剤及び/又は前記有機系スライム抑制剤を含む被処理水が逆浸透膜にて処理された透過水を得るための、逆浸透膜装置の運転方法。
【請求項2】
前記酸化系スライム抑制剤を、運転期間3日間のうちで1回以上添加する、請求項
1に記載の逆浸透膜装置の運転方法。
【請求項3】
前記酸化系スライム抑制剤に含まれる前記結合
塩素系化合物は、クロラミン化合
物である、請求項1
又は2記載の逆浸透膜装置の運転方法。
【請求項4】
酸化系スライム抑制剤を間欠的に添加して、当該酸化系スライム抑制剤を含有する被処理水を逆浸透膜装置に間欠的に供給する第一工程と、
有機系スライム抑制剤を、少なくとも前記第一工程の添加期間以外の期間に添加して、当該有機系スライム抑制剤を含有する被処理水を逆浸透膜装置に供給する第二工程と、を有し、
前記酸化系スライム抑制剤の添加濃度が、前記有機系スライム抑制剤の添加濃度よりも高くなるように調整し、
前記酸化系スライムコントロール剤の添加濃度が、全塩素濃度換算で0.1~600mg/L、及び、前記有機系スライムコントロール剤の添加濃度が0.01~100mg(as 薬剤質量)/Lであり、
前記第一工程は、
1単位当たりの第一間欠添加期間及び1単位当たりの第一無添加期間を有し、当該1単位当たりの第一間欠添加期間が、
当該1単位当たりの第一無添加期間よりも短期間で
あり、前記1単位当たりの第一間欠添加期間が10~300分であり、前記1単位当たりの第一無添加期間が5~100時間であり、当
該第一間欠添加期間及び当該第一無添加期間を順次繰り返し行い、
前記1単位当たりの第一間欠添加期間は、前記酸化系スライム抑制剤の添加開始時から添加終了時までの添加期間であり、前記1単位当たりの第一無添加期間は、前記酸化系スライム抑制剤の添加終了時から添加開始時までの無添加期間であり、
前記第二工程における前記有機系スライムコントロール剤の添加期間は、前記1単位当たりの第一無添加期間の全期間に対して前記有機系スライムコントロール剤を90%以上添加する期間を少なくとも含むものであり、
前記酸化系スライム抑制剤が、結合
塩素系化合物(ハロシアノアセトアミド化合物は除く)を含む薬剤であり、
及び、前記有機系スライム抑制剤が
、結合ハロゲン化合物(ハロシアノアセトアミド化合物は除く)以外の有機系スライム抑制剤である、
前記酸化系スライム抑制剤及び/又は前記有機系スライム抑制剤を含む被処理水が逆浸透膜にて処理された透過水を得るための、逆浸透膜装置に適用するスライム制御方法。
【請求項5】
請求項1~
3のいずれか一項に記載の逆浸透膜装置の運転方法、又は、請求項
4に記載の逆浸透膜装置に適用するスライム制御方法を実施する、水処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、逆浸透膜装置の運転方法、逆浸透膜装置に適用するスライム制御方法、及び当該方法を実施する水処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
逆浸透膜装置に備えられた逆浸透膜(RO膜)は、従来、海水淡水化、超純水製造、工業用水処理、排水回収処理及び排水の再利用などにおいて、原水中のイオン類や有機物などを除去するために用いられている。逆浸透膜装置を有する水系において、被処理水に含まれる細菌や微細藻類などの微生物が細胞外物質(例えば細胞外多糖など)を分泌などしてスライム(バイオフィルム)となり、このスライムが給水時に逆浸透膜に付着し蓄積したり、逆浸透膜に付着したスライムに含まれる微生物によってさらにスライムが増加することなどによって、バイオファウリング(スライムなどによる膜の目詰まりなど)が引き起こされることが問題になっていた。
【0003】
従来においては、逆浸透膜面に付着し増殖したスライムを除去する方法として、逆浸透膜装置の運転を停止し、逆浸透膜を苛性ソーダなどの薬品により洗浄し、スライムを除去する方法が行われていた。しかし、このような方法では逆浸透膜装置の連続運転に支障をきたし、ランニングコストの増大を招いていた。
【0004】
近年においては、逆浸透膜装置の運転を停止することなく、逆浸透膜装置に供給する水系中に、スライム抑制剤を注入し、逆浸透膜面に付着したスライム(バイオフィルム)を除去する方法が行われている。このような方法には、さまざまな種類の化合物がスライム抑制剤として検討され、これを用いたスライム抑制方法が多数提案されている。
【0005】
例えば、特許文献1には、原水にスライムコントロール剤を添加するスライムコントロール剤添加工程と、スライムコントロール剤が添加されスライムコントロール剤含有原水を膜処理する膜処理工程と、膜処理した膜処理水を紫外線照射処理する紫外線照射処理工程と、紫外線照射処理した紫外線照射処理液をイオン交換処理するイオン交換処理工程と、を含む純水製造方法が開示されている。
【0006】
また、特許文献2では、膜逆浸透膜装置のスライム抑制方法は、被処理水の通水工程に適用するスライム抑制方法であって、pHを10以下とした被処理水に、2,2-ジブロモ-3-ニトリロプロピオンアミド(DBNPA)を含有するスライム抑制剤Xと、下記の成分(A)~(D)からなる群より選択される少なくとも1種を含有するスライム抑制剤Yとを添加し、この被処理水を逆浸透膜に通水する第1通水工程を含む方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2009-247992号公報
【文献】特開2020-28865号公報
【非特許文献】
【0008】
【文献】J. S. Vrouwenvelder et. al., ”Biofouling of Spiral Wound Membrane Systems” IWA Publishing(2011).
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
通常、長期にわたり運転を続けると、水系内で発生するスライムが逆浸透膜装置に備える逆浸透膜に付着していったり、逆浸透膜に付着した微生物がスライムをさらに増加させるために、逆浸透膜装置の膜交換又は洗浄などのために逆浸透膜装置の運転を停止させることがある。しかし、逆浸透膜装置を停止した後にこれの再運転時の装置の再調整、また逆浸透膜装置の膜交換又は洗浄などの回数増加は、ランニングコストの増加につながる。このため、本発明者らは、逆浸透膜装置の運転をできるだけ停止させないように、閉塞日数をできるだけ長く確保することで、長期にわたり運転を行うことを検討することとした。
【0010】
すなわち、本発明は、逆浸透膜装置を有する水系をより長期的に運転できる技術を提供することを主な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、鋭意検討した結果、逆浸透膜装置を有する水系において、被処理水に酸化系スライム抑制剤を間欠添加する第一工程と、被処理水に有機系スライム抑制剤を添加する第二工程とを組み合わせてこれらの工程を制御し運転することで、逆浸透膜装置を有する水系をより長期的に運転できることを見出した。本発明者らは、このとき、逆浸透膜装置の逆浸透膜に存在するスライムの低減又はスライムの増加抑制をより良好にでき、これによりバイオファウリングをより良好に抑制できることも見出した。そして、本発明者らは、以下のように、本発明を完成させた。
【0012】
本発明は、酸化系スライム抑制剤を間欠的に添加して、当該酸化系スライム抑制剤を含有する被処理水を逆浸透膜装置に間欠的に供給する第一工程と、
有機系スライム抑制剤を少なくとも前記第一工程の添加期間以外の期間に添加して、当該有機系スライム抑制剤を含有する被処理水を逆浸透膜装置に供給する第二工程と、を有する、逆浸透膜装置の運転方法を提供するものである。
本発明は、酸化系スライム抑制剤を間欠的に添加して、当該酸化系スライム抑制剤を含有する被処理水を逆浸透膜装置に間欠的に供給する第一工程と、
有機系スライム抑制剤を少なくとも前記第一工程の添加期間以外の期間に添加して、当該有機系スライム抑制剤を含有する被処理水を逆浸透膜装置に供給する第二工程と、を有する、逆浸透膜装置に適用するスライム制御方法を提供するものである。
本発明は、前記逆浸透膜装置の運転方法、又は、前記逆浸透膜装置に適用するスライム制御方法を実施する、水処理装置を提供するものである。
【0013】
前記酸化系スライム抑制剤の添加濃度が、前記有機系スライム抑制剤の添加濃度よりも高くなるように調整するしてもよい。
前記酸化系スライム抑制剤を、運転期間3日間のうちで1回以上添加してもよい。
前記酸化系スライム抑制剤を、1回当たり10分以上添加してもよい。
前記酸化系スライム抑制剤を、全塩素濃度として0.1mg/L以上添加してもよい。
前記有機系スライム抑制剤を、0.01mg/L以上添加してもよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、逆浸透膜装置を有する水系をより長期的に運転できる技術を提供することができる。なお、本発明の効果は、ここに記載された効果に必ずしも限定されるものではなく、本明細書中に記載されたいずれかの効果であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の実施形態に係る第一添加工程及び第二添加工程の制御の一例を示す概略図である。a1:第一添加工程では、酸化系スライム抑制剤を等間隔にて間欠添加する。b1:第二添加工程では、有機系スライム抑制剤を常時添加する。このとき有機系スライム抑制剤は、少なくとも第一添加工程の添加期間以外の期間で添加されている。横軸は運転期間(hours)であり、縦軸は添加量である。
【
図2】本発明の実施形態に係る第一添加工程及び第二工程の制御の一例を示す概略図である。a2:第一添加工程では、酸化系スライム抑制剤を等間隔にて間欠添加する。b2:第二添加工程では、有機系スライム抑制剤を、第一添加工程の添加期間以外の期間の間、連続的に添加する。横軸は運転期間(hours)であり、縦軸は添加量である。
【
図3】本発明の実施形態に係る逆浸透膜装置を有する水系を示す概略図の一例である。
【
図4】試験例2において、通水期間(日)ごとの比較例2-1(●)、実施例2-1(◆)の差圧の変化(kPa)を示す図である。
【
図5】試験例3において、通水期間(日)ごとの比較例3-1(●)、実施例3-1(◆)の差圧の変化(kPa)を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を実施するための形態について説明する。なお、以下に説明する実施形態は、本発明の代表的な実施形態の一例を示したものであり、これにより本発明の範囲が限定されて解釈されることはない。なお、数値における上限値と下限値は、所望により、任意に組み合わせることができる。
【0017】
1.本実施形態に係る逆浸透膜装置の運転方法
本発明は、酸化系スライム抑制剤を間欠的に添加して、当該酸化系スライム抑制剤を含有する被処理水を逆浸透膜装置に間欠的に供給する第一工程と、
有機系スライム抑制剤を少なくとも前記第一工程の添加期間以外の期間に添加して、当該有機系スライム抑制剤を含有する被処理水を逆浸透膜装置に供給する第二工程と、を有する、逆浸透膜装置の運転方法を提供することができる。
本明細書に用いられるスライム抑制剤とは、スライムの増加を抑制できる薬剤であり、膜に存在するスライムを低減又は除去できる薬剤、微生物を殺すことができる薬剤(殺菌剤、殺藻剤など)、微生物の増殖を抑制できる薬剤(抗菌剤など)を含みうる。
【0018】
本実施形態に用いられる酸化系スライム抑制剤とは、酸化還元反応にて、微生物(例えば、細菌、真菌、微細藻類など)由来のスライムを少なくとも抑制できる成分若しくは薬剤又はこれらを有効成分として含む薬剤であり、DPD法で検出することができる。ただし、本明細書では、ハロシアノアセトアミド化合物(好適にはDBNPA)は、酵素代謝機能阻害作用を有することから、有機系スライム抑制剤に分類する。
【0019】
本実施形態に用いられる有機系スライム抑制剤とは、微生物の代謝機能(酵素など)、微生物の細胞(cell)(例えばSH基)と反応することで生体機能などを阻害して、微生物(例えば、細菌、真菌、微細藻類など)由来のスライムを少なくとも抑制できる成分若しくは薬剤又はこれらを有効成分として含む薬剤である。
【0020】
1-1.酸化系スライム抑制剤を使用する第一工程
第一工程は、酸化系スライム抑制剤を間欠的に添加して、当該酸化系スライム抑制剤を含有する被処理水を逆浸透膜装置に間欠的に供給する工程であることが好適である。
さらに、第一工程は、酸化系スライム抑制剤を被処理水に間欠添加する第一添加工程と、添加後の酸化系スライム抑制剤を含有する被処理水を逆浸透膜装置に間欠的に供給する第一供給工程とを有することが好適である。
【0021】
1-1-1.第一添加工程
第一工程は、酸化系スライム抑制剤を被処理水に間欠的に添加する工程である。これにより、当該酸化系スライム抑制剤を含有する被処理水を得ることができ、添加後の酸化系スライム抑制剤を含有する被処理水を逆浸透膜装置に間欠的に供給することができる(例えば、
図1及び
図2参照)。
【0022】
第一添加工程は、酸化系スライム抑制剤を、間欠的に添加することが好適である。
【0023】
酸化系スライム抑制剤の添加頻度は、所定期間のうちで1回以上添加することが好適であり、当該所定期間として、好ましくは5日、より好ましくは4日、さらに好ましくは3日、さらにより好ましくは2日、より好ましくは1日である。なお、「所定期間のうち」を「所定間隔ごと」にして酸化系スライム抑制剤の添加を行ってもよく、例えば3日目ごとに1回の添加や1日目ごとに1回の添加などであってもよい。また、1~2日置き(より好適には1日置き)に、1日1回以上の添加であってもよい。
酸化系スライム抑制剤の添加回数は、特に限定されないが、好適な上限値として、好ましくは10回以下、より好ましくは5回以下、さらに好ましくは3回以下、さらにより好ましくは2回以下、より好ましくは1回である。この添加回数は、「所定期間のうち」であってもよく、「所定間隔ごと」であってもよい。
酸化系スライム抑制剤の添加頻度において、より好適な態様として、好ましくは3日のうちで1回以上の添加であり、より好ましくは2日のうちで1回以上の添加であり、さらに好ましくは1日のうちで1回以上の添加である。
【0024】
酸化系スライム抑制剤の添加期間は、特に限定されないが、1回当たり、好適な下限値として、好ましくは0.1分以上、より好ましくは1分以上、さらに好ましくは10分以上、さらにより好ましくは30分以上であり、また、好適な上限値として、好ましくは1000分以下、より好ましくは500分以下、さらい好ましくは300分以下、さらにより好ましくは120分以下である。当該好適な数値範囲として、好ましくは10分以上300分以下、より好ましくは30分以上120分以下である。
本明細書において、「酸化系スライム抑制剤の添加期間」を、「第一工程の添加期間」又は「第一間欠添加期間」ともいう。
【0025】
本明細書において、「酸化系スライム抑制剤の添加期間」は、「酸化系スライム抑制剤の添加開始時から酸化系スライム抑制剤の添加終了時までの添加期間」をいい、より好ましくは「酸化系スライム抑制剤が本発明の効果を損なわない範囲内で連続的に添加されている期間」をいい、より狭義では、「酸化系スライム抑制剤の添加が停止されずに連続的に添加されている期間」をいう。
本明細書において、「酸化系スライム抑制剤の添加期間」の「1期間(具体的には、薬剤の添加開始時から薬剤の添加終了時までの添加期間)」を、「1単位」としてもよい。
【0026】
本明細書において、「酸化系スライム抑制剤を添加していない期間」は、「酸化系スライム抑制剤の添加期間以外の期間」、「第一工程の添加期間以外の期間」、或いは「第一間欠添加期間以外の期間」ともいい、この期間を「第一無添加期間」ともいう。
本明細書において、「酸化系スライム抑制剤を添加していない期間」は、「酸化系スライム抑制剤の添加終了時から酸化系スライム抑制剤の添加開始時までの期間(すなわち無添加期間)」をいい、より好ましくは酸化系スライム抑制剤が本発明の効果を損なわない範囲内で連続的に添加されていない期間をいい、より狭義では、「酸化系スライム抑制剤の添加が行われずに酸化系スライム抑制剤が連続的に添加されていない期間」をいう。
本明細書において、上記「酸化系スライム抑制剤を添加していない期間」の「1期間(具体的には、薬剤の添加終了時から薬剤の添加開始時までの無添加期間)」を「1単位」としてもよい。
【0027】
水系に対する酸化系スライム抑制剤の添加濃度(mg/水系1L(as 全塩素濃度))は、特に限定されないが、全塩素濃度として、好適な下限値として、好ましくは0.1mg/L以上(より好適には0.5mg/L以上)、より好ましくは1mg/L以上、さらに好ましくは2mg/L以上、さらにより好ましくは5mg/L以上、より好ましくは10mg/L以上、さらにより好ましくは25又は30mg/L以上であり、また、好適な上限値として、好ましくは600mg/L以下、より好ましくは60mg/L以下である。当該好適な数値範囲として、好ましくは0.1~600mg/L、より好ましくは2~60mg/Lである。
【0028】
本発明の好適な態様として、酸化系スライム抑制剤の添加濃度が、後記有機系スライム抑制剤の添加濃度よりも高くなるように調整することが好適である。有機系スライム抑制剤の添加濃度を1mg/L(as 薬剤質量濃度)としたときに、酸化系スライム抑制剤の添加濃度(mg/L(as 全塩素濃度))は、好適な下限値として、好ましくは1以上、より好ましくは1.5以上、さらに好ましくは2以上、さらにより好ましくは3以上であり、また、好適な上限値として、好ましくは100以下、より好ましくは50以下、さらに好ましくは40又は30以下である。当該好適な数値範囲として、有機系スライム抑制剤の添加濃度を1mg/L(as 薬剤質量)としたときに、酸化系スライム抑制剤の添加濃度(mg/L(as 全塩素濃度))は、好ましくは2~50、より好ましくは3~40である。
【0029】
1添加期間当たりの水系に添加する酸化系スライム抑制剤の絶対量(mg/(L/h))は、特に限定されないが、「1単位当たりの酸化系スライム抑制剤の添加期間×そのときの酸化系スライム抑制剤の添加濃度(mg/L(as 全塩素濃度))」から算出することができ、全塩素濃度として、好適な下限値として、好ましくは0.05mg/(L/h)以上、より好ましくは0.1mg/(L/h)以上、さらに好ましくは0.5mg/(L/h)以上、さらにより好ましくは1mg/(L/h)以上、より好ましくは2.5mg/(L/h)以上、より好ましくは5mg/(L/h)以上、より好ましくは10mg/(L/h)以上、より好ましくは20mg/(L/h)以上、より好ましくは25mg/(L/h)以上、より好ましくは30mg/(L/h)以上であり、また、好適な上限値として、好ましくは10000mg/(L/h)以下、より好ましくは10000mg/(L/h)以下、さらに好ましくは5000mg/(L/h)以下、さらにより好ましくは1000mg/(L/h)以下、より好ましくは500mg/(L/h)以下である。当該好適な数値範囲として、好ましくは0.05~10000mg/(L/h)、より好ましくは2.5~5000mg/(L/h)、より好ましくは2.5~1000mg/(L/h)である。
【0030】
また、第一添加工程は、酸化系スライム抑制剤を間欠的に添加することにより、酸化系スライム抑制剤を水系に添加している期間(以下、「第一間欠添加期間」ともいう)と、酸化系スライム抑制剤を添加していない期間(以下、「第一無添加期間」)とを有し、これらの期間は順次又順不同に行うことが好適である。順次行うことが好ましく、この場合、第一間欠添加期間、第一無添加期間のいずれが先にきてもよく、第一間欠添加期間次いで第一無添加期間、又は、第一無添加期間次いで第一間欠添加期間のいずれでもよい。また、水系の全運転期間中における第一間欠添加期間及び第一無添加期間のそれぞれの回数は、単数又は複数であってもよい。
【0031】
第一間欠添加期間の1単位は、特に限定されないが、上記「酸化系スライム抑制剤の添加期間」の説明の構成等を採用することができ、好適な数値範囲として、好ましくは1~1000分、より好ましくは10~300分である。
【0032】
第一無添加期間の1単位は、特に限定されないが、好適な下限値として、好ましくは1時間以上、より好ましくは3時間以上、さらに好ましくは5時間以上、さらにより好ましくは10時間以上であり、また、好適な上限値として、好ましくは200時間以下、より好ましくは150時間以下、さらに好ましくは100時間以下、さらにより好ましくは50時間以下である。当該好適な数値範囲として、好ましくは5~100時間、より好ましくは10~50時間である。
【0033】
「1単位当たりの第一間欠添加期間及び1単位当たりの第一無添加期間」の合計期間中の1単位当たりの第一間欠添加期間と、1単位当たりの第一無添加期間との期間比率は、特に限定されないが、1単位当たりの第一間欠添加期間が、1単位当たりの第一無添加期間よりも短期間であることが、水系に使用する添加薬剤量を低減しつつ水系を長期的に安定して運転する観点から、好適である。1単位当たりの第一間欠添加期間と、1単位当たりの第一無添加期間との期間比率は、好ましくは1:2~500、より好ましくは1:3~200、さらに好ましくは1:5~100、さらにより好ましくは1:7~50である。
【0034】
なお、1単位当たりの第一間欠添加期間は、ある運転期間中の第一間欠添加期間の合計期間(日、時間など)を、この運転期間中の第一間欠添加期間の数で割った平均値であってもよい。また、1単位当たりの第一無添加期間は、ある運転期間中の第一無添加期間の合計期間(日、時間など)を、この運転期間中の第一無添加期間の数で割った平均値であってもよい。
また、本実施形態における第一添加工程の運転期間は、「1単位当たりの第一間欠添加期間及び1単位当たりの第一無添加期間」の単数の期間であってもよいし、同一又は異なる「1単位当たりの第一間欠添加期間及び1単位当たりの第一無添加期間」を複数組み合わせて構成された期間であってもよい。
【0035】
<酸化系スライム抑制剤>
酸化系スライム抑制剤又はこの成分として、特に限定されないが、例えば、結合ハロゲン化合物などが挙げられ、当該酸化系スライム抑制剤は、結合ハロゲン化合物を含む薬剤であってもよく、ハロゲンとして例えば、塩素、臭素などが挙げられる。
当該結合ハロゲン化合物として、結合塩素系化合物、結合臭素系化合物などが挙げられ、これらから選択される1種又は2種以上を使用することができる。
当該結合塩素系化合物として、例えば、ハロゲン化ヒダントイン化合物などに代表される安定化塩素化合物、クロラミン化合物などが挙げられ、結合臭素系化合物として、例えば、安定化臭化物、ハロゲン化ヒダントイン化合物などが挙げられるが、これらに限定されず、これらから選択される1種又は2種以上を使用することができる。酸化系スライム抑制剤又は酸化系スライム抑制剤に使用する化合物は、市販品を用いてもよいし、公知の製造方法にて得たものを用いてもよい。
【0036】
なお、クロラミン化合物の塩、安定化臭化物の塩など結合ハロゲン化合物の塩として、特に限定されないが、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩などのアルカリ金属塩;カルシウム塩、ストロンチウム塩、バリウム塩などのアルカリ土類金属塩;マンガン塩、銅塩、亜鉛塩、鉄塩、コバルト塩、ニッケル塩などの他の金属塩;アンモニウム塩、有機アンモニウム塩など;グアニジン塩などのアミノ酸塩;などが挙げられ、これらから選択される1種又は2種以上を使用することができる。
【0037】
<クロラミン化合物>
クロラミン化合物とは、窒素原子と塩素原子との結合(N-Cl結合)を少なくとも1つ有する化合物を指していう。
クロラミン化合物として、例えば、クロラミン、クロロスルファミン酸化合物、これら以外のクロラミン化合物などが挙げられ、これらから選択される1種又は2種以上を使用することができる。
クロラミン化合物としては、例えば、安定化剤と塩素系酸化物とを含むものから生成される安定化塩素化合物など;スルファミン酸化合物と塩素系酸化物とを含むものから生成されるクロロスルファミン酸化合物など;などが挙げられ、これらから選択される1種又は2種以上を使用することができる。
【0038】
安定化剤としては、結合ハロゲン(好適には、安定化結合ハロゲン)を生成できるものであれば、特に限定されず、好ましくはアンモニア塩、スルファミン酸化合物などアミノ基を有する化合物などが挙げられ、これらから選択される1種又は2種以上を使用することができる。なお、本明細書において、アンモニア、第一級アミン又は第二級アミンから水素を除いた1価の官能基(-NH2、-NHR、-NRR’)を「アミノ基」という。
【0039】
アンモニウム塩として、例えば、硫酸アンモニウム、硝酸アンモニウム、塩化アンモニウムなどが挙げられ、これらから選択される1種又は2種以上を使用することができる。これらの中でも、硫酸アンモニウムが好ましい。
【0040】
クロロスルファミン酸化合物を構成するスルファミン酸化合物は、R1R2NSO3H・・・〔1〕で表される化合物であることが好適である。当該一般式〔1〕中の、R1、R2はそれぞれ独立にH又は炭素数1~8のアルキル基やベンゼン環含む官能基であることが好適である。
スルファミン酸化合物として、例えば、2つのR1基及びR2基が共に水素原子であるスルファミン酸(アミド硫酸)又はその塩;N-メチルスルファミン酸、N-エチルスルファミン酸、N-プロピルスルファミン酸、N-イソプロピルスルファミン酸、N-ブチルスルファミン酸などの2つのR1基及びR2基のうち一方が水素原子で他方が炭素数1~8のアルキル基であるスルファミン酸又はその塩;N,N-ジメチルスルファミン酸、N,N-ジエチルスルファミン酸、N,N-ジプロピルスルファミン酸、N,N-ジブチルスルファミン酸、N-メチル-N-エチルスルファミン酸、N-メチル-N-プロピルスルファミン酸などの2つのR1基及びR2基が共に炭素数1~8のアルキル基であるスルファミン酸又はその塩;などが挙げられるが、これらに限定されない。これらから選択される1種又は2種以上を使用することができる。
【0041】
前記塩素系酸化物としては、特に限定されないが、例えば、塩素ガス、二酸化塩素、次亜塩素酸又はその塩、亜塩素酸又はその塩、塩素酸又はその塩、過塩素酸又はその塩、塩素化イソシアヌル酸又はその塩などが挙げられ、これらから選択される1種又は2種以上を使用することができる。
次亜塩素酸塩としては、例えば、次亜塩素酸ナトリウム、次亜塩素酸カリウムなどの次亜塩素酸アルカリ金属塩;次亜塩素酸カルシウム、次亜塩素酸バリウムなどの次亜塩素酸アルカリ土類金属塩;などが挙げられ、これらから選択される1種又は2種以上を使用することができる。
亜塩素酸塩としては、例えば、亜塩素酸ナトリウム、亜塩素酸カリウムなどの亜塩素酸アルカリ金属塩;亜塩素酸バリウムなどの亜塩素酸アルカリ土類金属塩;亜塩素酸ニッケルなどの他の亜塩素酸金属塩;などが挙げられ、これらから選択される1種又は2種以上を使用することができる。
塩素酸塩としては、例えば、塩素酸アンモニウム;塩素酸ナトリウム、塩素酸カリウムなどの塩素酸アルカリ金属塩;塩素酸カルシウム、塩素酸バリウムなどの塩素酸アルカリ土類金属塩;などが挙げられ、これらから選択される1種又は2種以上を使用することができる。
過塩素酸塩としては、例えば、過塩素酸ナトリウム、過塩素酸カリウムなどが挙げられ、これらから選択される1種又は2種以上を使用することができる。
塩素化イソシアヌル酸塩としては、例えば、塩素化イソシアヌル酸ナトリウムなどが挙げられ、これらから選択される1種又は2種以上を使用することができる。
【0042】
クロラミン化合物の製造例としては、例えば、アルカリ存在下で、安定化剤(例えば、スルファミン酸化合物の水溶液等)の水溶液と、塩素系酸化物の水溶液(例えば、次亜塩素酸ナトリウム水溶液等)とを混合する方法が挙げられ、クロラミン化合物は、少なくとも安定化剤と塩素系酸化物とから生成することができる。製造されたクロラミン化合物を含む薬剤のpHは、好ましくは12以上、より好ましくは13以上である。
例えば、クロロスルファミン酸ナトリウムの製造例としては、特許5720964公報の〔実施例〕に記載の方法を参照することができる。
塩素系酸化物と安定化剤(例えば、アンモニア塩、スルファミン酸化合物等)との使用割合は、特に限定されないが、塩素系酸化剤の全塩素濃度(Cl2)1モルに対して、塩素安定化剤(好適にはスルファミン酸化合物)を0.5~5.0モルにすることが好ましく、より好ましくは0.5~2.0モル、さらに1.0~1.5モルとすることがより好ましい。当該使用割合は、薬剤中の含有割合であってもよい。
アルカリと塩素系酸化物との使用割合が、Cl/アルカリ金属(モル比)で、好ましくは0.3~0.4、より好ましくは0.30~0.36であり、当該使用割合は、薬剤中の含有割合であってもよい。
【0043】
スルファミン酸化合物として、R1、R2がそれぞれHである狭義のスルファミン酸がより好ましいが、N-メチルスルファミン酸、N,N-ジメチルスルファミン酸、N-フェニルスルファミン酸、クロラミンTなども使用できる。スルファミン酸化合物は、これらのスルファミン酸を遊離(粉末状)の酸の状態で用いてもよく、またナトリウム塩、カリウム塩、リチウム塩などのアルカリ金属塩などの塩であってもよい。
【0044】
クロロスルファミン酸とは、スルファミン酸(H2NSO2OH)が有するNH2基のうち少なくとも1つの水素原子を塩素原子で置換したものを指していう。クロロスルファミン酸としては、例えば、モノクロロスルファミン酸、ジクロロスルファミン酸などが挙げられる。
【0045】
クロロスルファミン酸塩とは、スルファミン酸(H2NSO2OH)が有するOH基のうち少なくとも1つの水素原子を金属イオン(例えば、リチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオンなどのアルカリ金属イオン)で置換したものをいう。
クロロスルファミン酸塩としては、例えば、クロロスルファミン酸リチウム、クロロスルファミン酸ナトリウム、及びクロロスルファミン酸カリウムなどが挙げられ、これらから選択される1種又は2種以上を使用することができる。これらの中でも、クロロスルファミン酸ナトリウムが好ましい。
また、その他のクロラミン化合物としては、クロラミンTなどを用いることができる。
【0046】
<安定化臭化物>
安定化臭化物とは、窒素原子(N-Cl結合)ないしは炭素原子と臭素原子との結合(C-Br結合)を少なくとも1つ有する化合物を指していう。安定化臭化物とは、水中において分解などによる変化が生じ難く、生成した臭化物が水中で安定して存在することが可能な臭化物が好適である。
安定化臭化物としては、例えば、「臭素系酸化剤又は臭素化合物と、塩素系酸化物との反応物」と「スルファミン酸化合物」との反応生成物などが挙げられるが、これらに限定されない。当該反応生成物のpHは、アルカリであることが好ましく、より好ましくは11以上、さらに好ましくは12以上、さらにより好ましくは13以上である。これらは市販品を用いてもよいし、公知の製造方法にて得たものを用いてもよい。
【0047】
臭素系酸化剤として、特に限定されないが、例えば、臭素(液体臭素)、塩化臭素、臭素酸、臭素酸塩、及び次亜臭素酸などが挙げられ、これらから選択される1種又は2種以上を使用することができる。
【0048】
臭素化合物として、特に限定されないが、例えば、臭化ナトリウム、臭化カリウム、臭化リチウムなどの臭化アルカリ金属塩、臭化アンモニウムなどの臭化塩、及び臭化水素酸などが挙げられ、これらから選択される1種又は2種以上を使用することができる。
【0049】
安定化臭化物に用いられる塩素系酸化物(例えば、次亜塩素酸塩、亜塩素酸塩、塩素酸塩、過塩素酸塩、塩素化イソシアヌル酸塩等)は、上述した<クロラミン化合物>の「塩素系酸化物」などの説明がこれらに当てはまり、当該説明の構成等を適宜採用することができる。このうち、好ましくは、次亜塩素酸塩(例えば、次亜塩素酸ナトリウム)である。
【0050】
「スルファミン酸化合物」は、上記<クロラミン化合物>の「クロロスルファミン酸化合物を構成するスルファミン酸化合物は、R1R2NSO3H・・・〔1〕で表される化合物」における「スルファミン酸化合物」などの説明がこれらに当てはまり、当該説明の構成等を適宜採用することができる。「スルファミン酸化合物」のなかでも、スルファミン酸又はその塩が好ましい。
【0051】
安定化臭化物の製造例としては、例えば、臭化ナトリウム水溶液と次亜塩素酸ナトリウムとを混合して混合溶液1とし、一方、スルファミン酸水溶液と水酸化ナトリウム水溶液とを混合して混合溶液2とし、アルカリ存在下で、混合溶液1と混合溶液2を混合する方法が挙げられる。
例えばアンモニウム塩と臭素からなるブロマミンかブロモスルファミン酸、及びブロモスルファミン酸塩、その他の化合物としてはDBNPAなどを用いることができる。
【0052】
<ハロゲン化ヒダントイン化合物>
ハロゲン化ヒダントイン化合物として、例えば、1-ブロモ-3-クロロ-5,5-ジメチルヒダントイン(「BCDMH」ともいう)、1,3-ジクロロ-5,5-ジメチルヒダントイン、1,3-ジブロモ-5,5-ジメチルヒダントイン、1-ブロモ-3-クロロ-5,5-ジエチルヒダントイン、1,3-ジクロロ-5,5-ジエチルヒダントイン、及び1-ブロモ-3-クロロ-5-メチル-5-エチルヒダントインなどが挙げられ、これらから選択される1種又は2種以上を使用することができる。これらのうち、水と接触した場合の溶出速度の固形剤(B)とのバランスや入手容易性などの観点から、BCDMH、及び1,3-ジクロロ-5,5-ジメチルヒダントインが好ましい。
【0053】
ハロゲン化ヒダントイン化合物は、市販品であってもよく、また公知の製造方法で得ることができ、例えば、ヒダントイン化合物(例えば、ヒダントイン(化学式:C3H4N2O2)等)を安定化剤として、当該安定化剤と、上記塩素系酸化物及び/又は臭素系酸化剤とを反応させることにより得ることができる。当該ヒダントイン化合物は、ヒダントイン骨格を有する化合物が挙げられ、当該ヒダントイン化合物として、例えば、ヒダントイン、5,5-ジアルキルヒダントイン(例えば、5,5-ジメチルヒダントイン、5-メチルエチルヒタントイン、5-メチルブチルヒダントイン、及び5-エチルブチルヒダントインなど)などが挙げられ、これらから選択される1種又は2種以上を使用することができる。当該「ジアルキル」は、同一又は異なるアルキル基でもよく、当該アルキル基として、例えば炭素数1~5(好適には炭素数1~3)のものが挙げられ、また、直鎖状又は分岐状であってもよく、例えば、メチル基、エチル基、ブチル基などが挙げられる。
【0054】
なお、酸化系スライム抑制剤には、本発明の効果を損なわない範囲で、任意成分又は任意薬剤を適宜含んでもよい。任意成分又は任意の薬剤として、例えば、防食剤(腐食抑制剤)、スケール防止剤、スライムコントロール剤、水等の溶媒又は分散媒体、分散剤酵素、殺菌剤及び消泡剤などが挙げられるが、これに限定されるものではなく、また一般的に水処理に使用できる各種薬剤を使用してもよい。これら任意成分又は任意薬剤から1種又は2種以上を適宜選択することができる。
また、本実施形態の第一工程において、前記酸化系スライム抑制剤の添加又は使用とは、別に、さらに任意成分又は任意薬剤を、適宜添加又は使用してもよい。
【0055】
1-1-2.第一供給工程
第一供給工程は、酸化系スライム抑制剤を含有する被処理水を逆浸透膜装置に間欠的に供給する工程であることが好適であり、この第一供給工程と、下記第二工程における第二供給工程とが組み合わさることで、水系をより長期的に運転することができる。より好適な態様として、逆浸透膜装置に備えられている逆浸透膜で発生するバイオファウリングを抑制することができ、当該バイオファウリングを抑制することで、水系を長期的に安定して運転することができる。
【0056】
第一供給工程では、酸化系スライム抑制剤を含有する被処理水を逆浸透膜装置に間欠的に供給する際に、当該酸化系スライム抑制剤を含む被処理水が供給される期間(「第一間欠供給期間」ともいう)と、当該酸化系スライム抑制剤を含む被処理水が供給されない期間(「第一無供給期間」ともいう)とを有する。
【0057】
第一供給工程における各種条件は、上記「1-1-1.第一添加工程」の説明の構成等を適宜採用することができる。
例えば、第一供給工程における供給頻度及びその所定期間、供給回数、供給頻度、供給期間、水系に対する酸化系スライム抑制剤の供給濃度、1供給期間当たりの水系に供給される酸化系スライム抑制剤の絶対量、第一供給期間の1単位、1単位当たりの第一間欠供給期間と1単位当たりの第一無供給期間との期間比率などは、上記「1-1-1.第一添加工程」の添加頻度及びその所定期間、添加回数、添加頻度、添加期間、水系に対する酸化系スライム抑制剤の添加濃度、1添加期間当たりの水系に添加される酸化系スライム抑制剤の絶対量、第一添加期間の1単位、1単位当たりの第一間欠添加期間と1単位当たりの第一無添加期間との期間比率などを、適宜採用することができる。
【0058】
酸化系スライム抑制剤を含む被処理水の供給頻度は、特に限定されないが、所定期間のうちで1回以上供給されることが好適であり当該所定期間として、より好ましくは1回である。この供給頻度は、「所定期間のうち」であってもよく、「所定間隔ごと」であってもよい。
酸化系スライム抑制剤の供給回数は、特に限定されないが、好適な上限値として、より好ましくは2回以下、さらに好ましくは1回である。酸化系スライム抑制剤を含む被処理水の供給頻度は、好ましくは3日のうちで1回以上の供給であり、より好ましくは2日のうちで(より好適には1日置きに)1回以上、さらに好ましくは1日のうちで1回又はそれ以上の供給である。また、この供給回数は、「所定期間のうち」であってもよく、「所定間隔ごと」であってもよい。
酸化系スライム抑制剤の供給頻度において、より好適な態様として、好ましくは3日のうちで1回以上の供給であり、より好ましくは1日のうちで1回以上の供給である。
【0059】
酸化系スライム抑制剤を含む被処理水の供給期間は、特に限定されないが、1回当たり、好適な数値範囲として、好ましくは10分以上300分以下、より好ましくは30分以上120分以下である。
【0060】
本明細書において、「酸化系スライム抑制剤を含む被処理水の供給期間」は、「酸化系スライム抑制剤の供給開始時から酸化系スライム抑制剤の供給終了時までの供給期間」をいい、より狭義では、「酸化系スライム抑制剤の供給が停止されずに連続的に供給されている期間」をいう。
また、本明細書において、「酸化系スライム抑制剤を含む被処理水の供給期間」を、「第一工程の供給期間」又は「第一間欠供給期間」ともいう。
また、本明細書において、「酸化系スライム抑制剤を含む被処理水の供給期間」の「1期間(具体的には、薬剤の供給開始時から薬剤の供給終了時までの供給期間)」を、「1単位」としてもよい。
【0061】
本明細書において、「酸化系スライム抑制剤を含む被処理水を供給していない期間」は、「酸化系スライム抑制剤を含む被処理水の供給期間以外の期間」、「第一工程の供給期間以外の期間」、或いは「第一間欠供給期間以外の期間」ともいい、この期間を「第一無供給期間」ともいう。
本明細書において、「酸化系スライム抑制剤を含む被処理水を供給していない期間」は、「酸化系スライム抑制剤の供給終了時から酸化系スライム抑制剤の供給開始時までの無供給期間」をいい、より狭義では、「酸化系スライム抑制剤の逆浸透膜装置への供給が行われずに連続的に供給されていない期間」をいう。
本明細書において、上記「酸化系スライム抑制剤を含む被処理水を供給していない期間」の「1期間(具体的には、薬剤の供給終了時から薬剤の供給開始時までの無供給期間)」を「1単位」としてもよい。
【0062】
水系に対する酸化系スライム抑制剤の供給濃度(薬剤mg/水系1L)は、特に限定されないが、全塩素濃度として、好適な下限値として好ましくは0.1mg/L以上(より好適には0.5mg/L以上)、より好ましくは1mg/L以上、さらに好ましくは2mg/L以上、さらにより好ましくは5mg/L以上、より好ましくは10mg/L以上、さらに好ましくは25mg/L以上であり、また、好適な数値範囲として、好ましくは5~500mg/L、より好ましくは25~300mg/Lである。
【0063】
1供給期間当たりの逆浸透膜装置に供給される酸化系スライム抑制剤の絶対量(mg×時間)は、特に限定されないが、「1単位当たりの酸化系スライム抑制剤を含む被処理水の供給期間×そのときの酸化系スライム抑制剤の供給濃度」から算出することができ、全塩素濃度として、好適な下限値として、好ましくは0.05mg/(L/h)以上、より好ましくは0.1mg/(L/h)以上、さらに好ましくは0.5mg/(L/h)以上、さらにより好ましくは1mg/(L/h)以上、より好ましくは2.5mg/(L/h)以上、より好ましくは10mg/(L/h)以上、さらに好ましくは25mg/(L/h)以上であり、また、好適な数値範囲として、好ましくは0.05~10000mg/(L/h)、より好ましくは2.5~5000mg/(L/h)、より好ましくは10~1000mg/(L/h)である。
【0064】
また、第一供給工程は、酸化系スライム抑制剤を含む被処理水を逆浸透膜装置に供給することにより、酸化系スライム抑制剤を含む被処理水を逆浸透膜装置に供給する期間(以下、「第一間欠供給期間」ともいう)と、酸化系スライム抑制剤を含む被処理水を逆浸透膜装置に供給しない期間(以下、「第一無供給期間」ともいう)とを有し、これらの期間は順次又順不同に行うことが好適である。順次行うことが好ましい。これら第一間欠供給期間及び第一無添加供給期間の順序は、上述した第一間欠添加期間及び第一無添加期間の順序に基づくことが好適である。また、水系の全運転期間中における第一間欠供給期間及び第一無供給期間のそれぞれの回数数は、単数又は複数であってもよい。
【0065】
第一間欠供給期間の1単位は、特に限定されないが、好適な数値範囲として、好ましくは1~1000分、より好ましくは10~300分である。
第一無供給期間の1単位は、特に限定されないが、好適な数値範囲として、好ましくは5~100時間、より好ましくは10~50時間である。
【0066】
「1単位当たりの第一間欠供給期間及び1単位当たり第一無供給期間」の合計期間中の1単位当たりの第一間欠供給期間と、1単位当たりの第一無供給期間との期間比率は、特に限定されないが、1単位当たりの第一間欠添加期間が、1単位当たりの第一無添加期間よりも短期間であることが好適であり、さらにより好ましくは1:7~50である。
なお、1単位当たりの第一間欠供給期間は、ある運転期間中の第一間欠供給期間の合計期間(日など)を、この運転期間中の第一間欠供給期間の数で割った平均値であってもよい。また、1単位当たりの第一無供給期間は、ある運転期間中の第一無供給期間の合計期間(日など)を、この運転期間中の第一無供給期間の数で割った平均値であってもよい。
また、本実施形態における第一供給工程の運転期間は、「1単位当たりの第一間欠供給期間及び1単位当たりの第一無供給期間」の単数の期間であってもよいし、同一又は異なる「1単位当たりの第一間欠供給期間及び1単位当たりの第一供給期間」を複数組み合わせて構成された期間であってもよい。この単数の期間又は複数の組み合わせの期間は、上述した「1単位当たりの第一間欠添加期間及び1単位当たりの第一無添加期間」の単数の期間又は複数の組み合わせの期間に基づくことが好適である。
【0067】
1-2.有機系スライム抑制剤を使用する第二工程
第二工程は、有機系スライム抑制剤を少なくとも前記第一工程の添加期間以外の期間に添加して、当該有機系スライム抑制剤を含有する被処理水を逆浸透膜装置に供給することが好適である。
さらに、第二工程は、有機系スライム抑制剤を添加する第二添加工程と、添加後の有機系スライム抑制剤を含有する被処理水を逆浸透膜装置に供給する第二供給工程とを有することが好適である。
【0068】
1-2-1.第二添加工程
第二工程は、有機系スライム抑制剤を、少なくとも「前記第一工程の添加期間以外の期間」に添加する工程である。これにより、当該有機系スライム抑制剤を含有する被処理水を得ることができ、添加後の有機系スライム抑制剤を含有する被処理水を逆浸透膜装置に供給することができる(例えば、
図1及び
図2参照)。
【0069】
第二添加工程は、有機系スライム抑制剤を、少なくとも「第一工程の添加期間以外の期間」に添加することが好適である。
【0070】
ここで、第二工程における「少なくとも「第一工程の添加期間以外の期間」に添加する」とは、「少なくとも第一無添加期間において有機系スライム抑制剤を添加すること」ともいうが、第一無添加期間と第一間欠添加期間との両方の期間において有機系スライム抑制剤を添加してもよく、第一無添加期間のみの期間において有機系スライム抑制剤を添加してもよい。
第二工程において、第一無添加期間での有機系スライム抑制剤の添加は、第一無添加期間の全期間又は一部期間での有機系スライム抑制剤の添加であってもよい。
また、第二工程において、第一間欠添加期間での有機系スライム抑制剤の添加は、第一間欠添加期間の全期間又は一部期間での有機系スライム抑制剤の添加であってもよい。
【0071】
また、第二工程において、第一無添加期間の全期間又は一部期間のうち、第一無添加期間の全期間において有機系スライム抑制剤を添加することが好ましい。なお、第一無添加期間の一部期間は、第一無添加期間の全期間に対して、好ましくは50%以上、より好ましくは70%以上、さらに好ましくは90%以上、さらにより好ましくは95%以上、より好ましくは98%以上、さらに好ましくは99%以上、さらにより好ましくは100%(全期間ともいう)である。
【0072】
第二工程において、有機系スライム抑制剤を、「少なくとも第一工程の添加期間以外の期間」中で、連続的に又は不連続的に添加することが、より好ましいが、連続的に添加することがさらに好ましく、常時添加することがさらにより好ましい。
また、第二工程において、有機系スライム抑制剤を、少なくとも「1単位当たりの第一無添加期間」において、連続的に又は不連続的に添加することが、より好ましいが、連続的に添加することがさらに好ましい。
【0073】
本明細書において、「不連続的」とは、本発明の効果が損なわれない範囲内であれば、有機系スライム抑制剤を添加する期間と停止する期間とが存在していてもよいが、添加する期間が停止する期間より長いことが好ましく、停止する期間は、添加する期間に対して、好ましくは1/10以内の期間、より好ましくは5/100以内の期間、さらに好ましくは2.5/100以内、さらにより好ましくは1/500以内である。
【0074】
本明細書において、有機系スライム抑制剤の「連続的に」添加される期間とは、「有機系スライム抑制剤の添加開始時から有機系スライム抑制剤の添加終了時までの添加期間」をいい、より好ましくは「有機系スライム抑制剤が本発明の効果を損なわない範囲内で連続的に添加されている期間」をいい、より狭義では、「有機系スライム抑制剤の添加が停止されずに連続的に添加されている期間」をいい、これを「常時添加の期間」ともいう。この「常時添加の期間」として、例えば、運転期間60分に対し、「無添加期間0分かつ添加期間60分」が挙げられる。
【0075】
本明細書において、「連続的に」には、本発明の常時添加と同程度の効果の範囲内であれば、薬剤の停止する期間を有していてもよく、このより具体的な好適な態様として、1日中で薬剤の停止する期間として、好ましくは60分以内、より好ましくは30分以内、さらに好ましくは15分以内、よりさらに好ましくは5分以内、より好ましくは0分(「常時添加の期間」ともいう)である。また、運転1時間中で薬剤の停止する期間として、好ましくは5分以内、より好ましくは1分以内、さらに好ましくは5分以内、より好ましくは0分(「常時添加の期間」ともいう)である。
【0076】
有機系スライム抑制剤の添加期間は、特に限定されず、例えば、逆浸透膜装置の運転の全期間又は第一工程の全期間を有機系スライム抑制剤の添加期間としてもよいが、より具体的な態様として、1回当たり、好適な下限値として、好ましくは0.1日以上、より好ましくは0.3日以上、さらに好ましくは0.5日以上、さらにより好ましくは1日以上であり、また、好適な上限値として、好ましくは30日以下、より好ましくは10日以下、さらい好ましくは7日以下、さらにより好ましくは3日以下である。当該好適な数値範囲として、好ましくは0.5日以上7日以下、より好ましくは1日以上3日以下である。
【0077】
水系に対する有機系スライム抑制剤の添加濃度(mg(as 薬剤質量)/水系1L)は、特に限定されないが、薬剤質量として、好適な下限値として、好ましくは0.001mg/L以上、より好ましくは0.05mg/L以上、さらに好ましくは0.01mg/L以上、さらにより好ましくは0.1mg/L以上であり、また、好適な上限値として、好ましくは10000mg/L以下、より好ましくは1000mg/L以下、さらに好ましくは100mg/L以下、さらにより好ましくは50mg/L以下である。当該好適な数値範囲として、好ましくは0.01~100mg/L、より好ましくは0.1~50mg/Lである。
【0078】
1添加期間当たりの水系に添加する有機系スライム抑制剤の絶対量(mg(as 薬剤質量))は、特に限定されないが、「有機系スライム抑制剤の添加期間×そのときの有機系スライム抑制剤の添加濃度」から算出することができ、好適な下限値として、好ましくは0.002mg/(L/h)以上、より好ましくは0.02mg/(L/h)以上、さらに好ましくは0.2mg/(L/h)以上、さらにより好ましくは2mg/(L/h)以上であり、また、好適な上限値として、好ましくは6000000mg/(L/h)以下、より好ましくは300000mg/(L/h)以下、さらに好ましくは30000mg/(L/h)以下、さらにより好ましくは3000mg/(L/h)以下である。当該好適な数値範囲として、好ましくは0.2~30000mg/(L/h)、より好ましくは2~3000mg/(L/h)である。
【0079】
<有機系スライム抑制剤>
有機系スライム抑制剤又はこの成分として、特に限定されないが、例えば、イソチアゾリン化合物、ハロシアノアセトアミド化合物、アルデヒド化合物、及びテトラゾリルオキシムやジクロログリオキシムに代表されるオキシム化合物などが挙げられ、これらから1種又は2種以上を使用することができる。また、当該有機系スライム抑制剤は、これらから選択される1種又は2種以上の化合物を含む薬剤であってもよい。有機系スライム抑制剤又は有機系スライム抑制剤に使用する化合物は、市販品を用いてもよいし、公知の製造方法にて得てたものを用いてもよい。
【0080】
<イソチアゾリン化合物>
イソチアゾリン化合物として、特に限定されないが、例えば、5-クロロ-2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オン(Cl-MIT)、2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オン(MIT)、2-エチル-4-イソチアゾリン-3-オン、2-n-オクチル-4-イソチアゾリン-3-オン、5-クロロ-2-エチル-4-イソチアゾリン-3-オン、5-クロロ-2-t-オクチル-4-イソチアゾリン-3-オン、4,5-ジクロロ-2-n-オクチル-4-イソチアゾリン-3-オン、4,5-ジクロロ-2-シクロヘキシル-4-イソチアゾリン-3-オンなどを挙げることができ、これらから1種又は2種以上を使用することができる。また、イソチアゾリン化合物としては、上述のイソチアゾリン化合物と塩化マグネシウム、硝酸マグネシウム、塩化銅、硝酸銅、塩化カルシウムなどとの錯化合物を用いてもよい。
イソチアゾリン化合物の中でも、5-クロロ-2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オン(Cl-MIT)、及び2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オン(MIT)又はこれらの混合物が好ましい。
【0081】
<ハロシアノアセトアミド化合物>
ハロシアノアセトアミド化合物として、特に限定されないが、例えば、2-クロロ-3-ニトリロプロピオンアミド、2-ブロモ-3-ニトリロプロピオンアミドなどの2-ハロ-3-ニトリロプロピオンアミド;2,2-ジクロロ-3-ニトリロプロピオンアミド、2,2-ジブロモ-3-ニトリロプロピオンアミド(DBNPA)、2-クロロ-2-ブロモ-3-ニトリロプロピオンアミドなどの2,2-ジハロ-3-ニトリロプロピオンアミド;N-メチル-2-クロロ-3-ニトリロプロピオンアミド、N-メチル-2-ブロモ-3-ニトリロプロピオンアミドなどのN-C1-3アルキル-2-ハロ-3-ニトリロプロピオンアミド;N-メチル-2,2-ジクロロ-3-ニトリロプロピオンアミド、N-メチル-2,2-ジブロモ-3-ニトリロプロピオンアミドなどのN-C1-3アルキル-2,2-ジハロ-3-ニトリロプロピオンアミドなどが挙げられる。
なお、ハロシアノアセトアミド化合物は、NC-CX1X2-(C=O)-NHR3・・・〔2〕で表される化合物であってもよい。当該一般式〔2〕中、X1,X2は各々独立にハロゲン原子又は水素原子を表し、X1,X2のうち少なくとも一方はハロゲン原子である。R3は水素原子又は炭素数1~3のアルキル基を表す。ハロゲン原子として、塩素原子、臭素原子が挙げられ、臭素原子が好ましい。C1-3アルキルとして、直鎖状又は分枝鎖状のいずれでもよいが、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、iso-プロピル基などが挙げられる。
【0082】
ハロシアノアセトアミド化合物の中でも、ジハロニトリロプロピオンアミドが好ましく、さらにこれらの中でも2,2-ジブロモ-3-ニトリロプロピオンアミド(DBNPA)がより好ましい。
【0083】
<アルデヒド化合物>
アルデヒド化合物として、特に限定されないが、例えば、アセトアルデヒドなどのモノアルデヒド化合物;グリオキザール、オルトフタルアルデヒドなどのジアルデヒド化合物などが挙げられ、これらから選択される1種又は2種以上を使用することができる。
アルデヒド化合物の中でも、ジアルデヒド化合物が好ましく、ジアルデヒド化合物の中でも、安全性が高い観点から、グルタルアルデヒドが好ましい。
【0084】
<オキシム化合物>
オキシム化合物として、特に限定されないが、テトラゾール環(CH2N4)を有するオキシム化合物(例えば、テトラゾリルオキシムなど)、及びハロゲン化オキシム化合物、(例えば、ジクロログリオキシムなど)などが挙げられ、これらから選択される1種又は2種以上を使用することができる。当該オキシム化合物は、分子内に>C=N-OHで表される構造を有する化合物である。
テトラゾール環を有するオキシム化合物として、例えば、ピカルブトラゾクス(分子式 :C20H23N7O3、分子量:409.44、CASNo.500207-04-5)などが挙げられる。
ハロゲン化オキシム化合物として、例えば、ジクロログリオキシム、α-クロロベンズアルドキシム、α-クロロベンズアルドキシムアセテート、4-ヒドロキシフェニル-α-ケトアセトヒドロキシム酸クロライド(別名パラクロックス)などが挙げられ、これらから選択される1種又は2種以上を使用することができる。
【0085】
有機系スライム抑制剤の中で、2,2-ジブロモ-3-ニトリロプロピオンアミド(DBNPA)、5-クロロ-2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オン(Cl-MIT)、及び2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オン(MIT)、又はこれらの混合物、グルタルアルデヒドなどから選択される1種又は2種以上が好ましい。
【0086】
なお、有機系スライム抑制剤には、本発明の効果を損なわない範囲で、任意成分又は任意薬剤を適宜含んでもよい。また、本実施形態の第二工程において、有機系スライム抑制剤の添加又は使用とは別に、さらに任意成分又は任意薬剤を、適宜添加又は使用してもよい。当該任意成分又は任意の薬剤は、一般的に水処理に使用できる各種薬剤を使用してもよく、また、上記の<酸化系スライム抑制剤>の「任意成分又は任意薬剤」の説明の構成等を適宜採用することができる。
【0087】
1-2-2.第二供給工程
第二供給工程は、有機系スライム抑制剤を含有する被処理水を逆浸透膜装置に供給する工程であることが好適である。この第二供給工程と、上記第一工程における第一供給工程とが組み合わさることで、水系をより長期的に運転することができる。より好適な態様として、逆浸透膜装置に備えられている逆浸透膜で発生するバイオファウリングを抑制することができ、当該バイオファウリングを抑制することで、水系を長期的に安定して運転することができる。
【0088】
第二供給工程における各種条件は、上記「1-2-1.第二添加工程」の説明の構成等を適宜採用することができる。
例えば、第二供給工程における供給期間、水系に対する有機系スライム抑制剤の供給濃度、1供給期間当たりの水系に供給される有機系抑制剤の絶対量などは、上記「1-2-1.第二添加工程」の添加期間、水系に対する有機系スライム抑制剤の添加濃度、1添加期間当たりの水系に添加される有機系スライム抑制剤の絶対量などを、適宜採用することができる。
【0089】
第二供給工程では、有機系スライム抑制剤を含む被処理水が、「少なくとも第一工程の供給期間以外の期間」中で、逆浸透膜装置に供給されることが好適である。有機系スライム抑制剤を含む被処理水は、運転期間中、逆浸透膜装置に連続的に又は不連続的に供給されることが好ましく、連続的に供給されることがより好ましく、常時供給されることがより好ましい。
本明細書において、有機系スライム抑制剤の「連続的に」供給される期間とは、「有機系スライム抑制剤の供給開始時から有機系スライム抑制剤の供給終了時までの供給期間」をいい、より狭義では、「有機系スライム抑制剤の供給が停止されずに連続的に供給されている期間」をいい、この狭義を「常時供給の期間」とする。
【0090】
有機系スライム抑制剤の供給期間は、特に限定されず、逆浸透膜装置の運転の全期間又は第一工程の全期間を有機系スライム抑制剤の供給期間としてもよいが、より具体的な態様として、1回当たり、好適な数値範囲として、好ましくは0.5日以上7日以下、より好ましくは1日以上3日以下である。
【0091】
逆浸透膜装置に対する有機系スライム抑制剤の供給濃度(mg/水系1L(as 薬剤質量濃度))は、特に限定されないが、好適な数値範囲として、好ましくは0.01~100mg/L、より好ましくは0.1~50mg/Lである。
【0092】
1供給期間当たりの逆浸透膜装置に供給する有機系スライム抑制剤の絶対量(mg)は、特に限定されないが、好適な数値範囲として、好ましくは0.2~30000mg/(L/h)、より好ましくは2~3000mg/(L/h)である。
【0093】
1-3.本実施形態における第一工程及び第二工程の制御
本実施形態の方法において、第一工程及び第二工程を制御することが好適であり、これにより浸透膜装置を有する水系をより長期的に運転できる。
本実施形態の方法において、より好適な態様として、第一添加工程及び第二添加工程を制御することであり、これにより、酸化系スライム抑制剤及び/又は有機系スライム抑制剤を含む被処理水を逆浸透膜装置により良好に供給することができ、これにより浸透膜装置を有する水系をより長期的に安定して運転できる。さらに、第一添加工程及び第二添加工程を制御することにより、逆浸透膜装置の逆浸透膜に存在するスライムの低減又はスライムの増加抑制をより良好にでき、これによりバイオファウリングをより良好に抑制することもできる。
【0094】
本実施形態の方法において、第一工程及び第二工程は、同時期に又は別々の時期に行うことができ、同時期に行うことがより好適である。
また、本実施形態の方法において、第一工程及び第二工程は、並列的に又は直列的に行ってもよいが、並列的に行うことが好適である。
本実施形態の方法において、より好適な態様として、第一工程及び第二工程を同時期にかつ並列的に行うことがより好適である。
また、本実施形態の方法において、第一工程の酸化系スライム抑制剤を添加する間(好適には、連続的に添加する間)は、第二工程の有機系スライム抑制剤を添加してもよいし添加停止としてもよく、さらに第一工程の酸化系スライム抑制剤を添加しない間は、第二工程の有機系スライム抑制剤を連続的に添加することが好適である。
【0095】
本実施形態の方法において、より好適な態様として、第一工程及び/又は第二程の運転起点に基づき、第一工程及び/又は第二工程の制御を行うことがより好適であり、それぞれの運転起点は、同一に又は別々のものであってもよい。
運転起点として、特に限定されず、任意に設定してもよいが、例えば、日付(年月日時分秒)、並びに、第一工程及び/又は第二工程の運転状況(例えば、運転開始時、運転再開時、薬剤添加時、任意の期間設定など)などが挙げられ、これらから選択される1種又は2種以上の組み合わせを用いることができる。
【0096】
より具体的な運転起点の好適な態様として、例えば、第一工程の第一間欠添加開始時又は第一無添加開始時を運転起点としてもよいし、第二工程の第二添加期間内のどこかを運転起点としてもよいし、第二工程の第二添加期間内であってかつ第一工程の第一間欠添加開始時又は第一無添加開始時を、運転起点としてもよい。また、第一工程及び第二工程の両方が無添加期間(例えば、メンテナンス、両工程の添加タイミングの調整目的、両方停止など)になった場合には、少なくとも第一工程及び第二工程のいずれか一方の薬剤の添加開始時(添加再開時)を運転起点としてもよく、第一工程及び第二工程の両方の薬剤の同時添加時を運転起点としてもよい。
【0097】
本実施形態における第一添加工程及び第二添加工程の制御について、
図1及び
図2を参照して説明するが、本実施形態はこれに限定されない。
【0098】
図1は、本発明の実施形態に係る第一添加工程及び第二添加工程の制御の例1を示す概略図である。例1のa1:第一添加工程では、酸化系スライム抑制剤を等間隔にて間欠添加する。例1のb1:第二添加工程では、有機系スライム抑制剤を常時添加する。このとき有機系スライム抑制剤は、少なくとも第一添加工程の添加期間以外の期間で添加されている。横軸は運転期間(hours)であり、縦軸は添加量である。さらに、第一添加工程の運転期間0hと、第二添加工程の運転期間0hを、それぞれ運転起点としてもよい。なお、第一添加工程の各間欠添加期間は、同じ又は異なる期間であってもよく、各間欠添加量は、同じ又は異なる量であってもよい。また、間欠添加の各間隔は、同じ又は異なる間隔であってもよい。
【0099】
本実施形態における制御の例1によって、酸化系スライム抑制剤及び/又は有機系スライム抑制剤を含む被処理水にすることができる。そして、本実施形態における制御の例1によって、酸化系スライム抑制剤及び/又は有機系スライム抑制剤を含む被処理水は、第一供給工程及び第二供給工程として、逆浸透膜装置に供給される。このとき、
図1に示すようなa1及びb1の添加パターンと同様なパターンにて、酸化系スライム抑制剤及び/又は有機系スライム抑制剤を含む被処理水を逆浸透膜装置に供給することができる。より具体的な例として、有機系スライム抑制剤のみを含む被処理水、酸化系スライム抑制剤及び有機系スライム抑制剤を含む被処理水・・・の順に、逆浸透膜装置に供給される。
これにより、逆浸透膜装置を有する水系をより長期的に安定して運転できる。逆浸透膜装置の逆浸透膜に存在するスライムの低減又はスライムの増加抑制をより良好にでき、これによりバイオファウリングをより良好に抑制することもできる。
【0100】
図2は、本発明の実施形態に係る第一添加工程及び第二工程の制御の例2を示す概略図の一例である。例2のa2:第一添加工程では、酸化系スライム抑制剤を等間隔にて間欠添加する。例2のb2:第二添加工程では、有機系スライム抑制剤を、「第一添加工程の添加期間以外の期間」の間、連続的に添加する。横軸は運転期間(hours)であり、縦軸は添加量である。さらに、第一添加工程の運転期間0hと、第二添加工程の運転期間0hを、それぞれ運転起点としてもよい。上記
図1の説明にて重複する部分については適宜省略する。
なお、第一添加工程の各間欠添加期間は、同じ又は異なる期間であってもよく、各間欠添加量は、同じ又は異なる量であってもよい。また、間欠添加の各間隔は、同じ又は異なる間隔であってもよい。
また、第二添加工程において、有機系スライム抑制剤を、「第一添加工程の添加期間以外の期間」の全期間又は一部期間で連続的に添加してもよい。また、第二添加工程において、有機系スライム抑制剤を不連続的に添加してもよい。
【0101】
また、本実施形態に係る第一添加工程及び第二添加工程の制御の例3として、上記制御の例1及び上記制御の例2を組み合わせてもよく、これら上記制御の例1及び上記制御の例2を繰り返し又は順不同にて行ってもよい。例えば、上記制御の例1次いで上記制御の例2の順に、又は、上記制御の例2次いで上記制御の例1の順に行ってもよく、また、上記制御の例1、上記制御の例2、上記制御の例2の順に行ってもよい。
【0102】
本実施形態における制御の例2によって、酸化系スライム抑制剤及び/又は有機系スライム抑制剤を含む被処理水にすることができる。そして、本実施形態における制御の例2によって、酸化系スライム抑制剤及び/又は有機系スライム抑制剤を含む被処理水は、第一供給工程及び第二供給工程として、逆浸透膜装置に供給される。このとき、
図2に示すようなa2及びb2の添加パターンと同様なパターンにて、酸化系スライム抑制剤及び/又は有機系スライム抑制剤を含む被処理水を逆浸透膜装置に供給することができる。より具体的な例として、有機系スライム抑制剤のみを含む被処理水、酸化系スライム抑制剤のみを含む被処理水・・・の順に、逆浸透膜装置に供給される。
これにより、逆浸透膜装置を有する水系をより長期的に安定して運転できる。逆浸透膜装置の逆浸透膜に存在するスライムの低減又はスライムの増加抑制をより良好にでき、これによりバイオファウリングをより良好に抑制することもできる。
【0103】
酸化系スライム抑制剤及び/又は有機系スライム抑制剤の添加場所は、同一又は異なる場所であってもよい(例えば、
図3参照)。当該添加場所は、逆浸透膜処理を行う逆浸透膜装置及びそれ以前の上流であることが好適である。
さらに逆浸透膜装置に供給する被処理水を保安フィルター処理するために、逆浸透膜装置の前に保安フィルター装置を設ける場合には、酸化系スライム抑制剤及び/又は有機系スライム抑制剤の添加場所は、保安フィルター装置又はその前後であることが好適であり、さらに、保安フィルター装置及びその上流に設けることが好適であり、より具体的には、保安フィルター装置とその上流にある処理装置との間の添加用の流路に設けることがより好適である。
保安フィルター装置は、後述する除濁膜処理工程を行うことができ、除濁膜装置であってもよい。保安フィルター装置は、除濁膜装置に使用可能な膜(例えばMF膜など)を、保安フィルターとして、適宜採用することができる。
これにより、保安フィルター処理装置内のスライムも抑制し、これの下流となる逆浸透膜装置のスライムも抑制することができる。また、これら膜装置のバイオファウリングも抑制することができ、より逆浸透膜装置のバイオファウリングを抑制することができる。このため、水系をより長期的に安定して運転できる。
【0104】
1-4.本実施形態における運転方法の適用
【0105】
本実施形態における運転方法は、逆浸透膜装置に適用することができる。本実施形態の方法は、スライム抑制方法、バイオファウリング抑制方法、水系、装置又はシステムに適用することができる。
本実施形態に係る工程は、装置又はシステムに適用することができる。例えば第一工程及び第二工程を、それぞれ、第一方法及び第二方法、第一装置及び第二装置、第一システム及び第二システムとしてもよい。
本実施形態における運転方法は、少なくとも逆浸透膜装置を有する水系に適用することができる。
【0106】
逆浸透膜装置を備える水系として、特に限定されないが、例えば、水処理水系;冷却塔などの循環水系;紙パルプ製造などのプロセス水系、用水系や排水回収などが挙げられる。
【0107】
逆浸透膜装置を備える水系の一例として、原水が流入し、原水に凝集剤を注入して濁質などを凝集形成又はフロック形成させる凝集処理工程、凝集物を含む被処理水から沈殿物と上澄みとに分離する固液分離工程、流入した上澄みから濁質などを、逆浸透膜処理の前にさらに除去する除濁膜処理工程が、順次又は順不同に配置して、備えられていてもよい。また、これら処理工程は、それぞれ処理工程を行うように構成されている処理装置又は処理部を用いて行ってもよい。
【0108】
逆浸透膜装置を備える水系の一例として、例えば
図3に示す水系1を参照して説明するが、本実施形態に係る水系はこれに限定されない。逆浸透膜装置2を備える水系1において、原水が流入し、原水に凝集剤を注入して濁質などを凝集形成又はフロック形成させるように構成されている凝集処理装置5にて行う凝集工程、凝集物を含む被処理水から沈殿物と上澄みとに分離するように構成されている固液分離装置4にて行う固液分離工程、流入した上澄みから濁質などを逆浸透膜処理の前にさらに除去する除濁膜処理を行うように構成されている保安フィルター3にて行う前処理工程、前処理された酸化系スライム抑制剤及び/又は有機系スライム抑制剤を含む被処理水が供給される逆浸透膜装置2にて行う逆浸透膜処理工程を含む。逆浸透膜処理工程にて濃縮水と透過水とに分離される。
【0109】
また、逆浸透膜装置を備える水系の一例として、原水を供給するように構成されている原水供給路と、前記原水供給路から供給された前記原水を、透過水と濃縮水とに分離するように構成されている逆浸透膜装置とを備える水処理装置(好適には超純水装置)が挙げられる。
【0110】
また、逆浸透膜装置を備える水系の一例として、原水を供給するように構成されている原水供給路と、前記原水供給路から供給された前記原水を濾過するように構成されている濾過装置及び濾過処理水槽、この濾過された被処理水を逆浸透膜処理の前処理として構成されている保安フィルター装置、及び逆浸透膜装置が備えられている水処理装置が挙げられる。保安フィルター装置にて、上述した除濁膜処理を行ってもよい。
【0111】
1-4-1.原水
本実施形態で用いられる原水(例えば、被処理水)は、特に限定されず、例えば、有機物を含んだ産業用排水、海水・かん水、淡水(河川水、湖水など)、工業用水・市水などが挙げられる。
【0112】
原水又は被処理水のpHは、特に限定されないが、好ましくは3~9、より好ましくは4~8、さらに好ましくは5~8である。当該pHは、pH調整剤で調整してもよい。
原水又は被処理水の水温は、特に限定されないが、好ましくは4~50℃、さらに好ましくは10~40℃である。
原水又は被処理水のTOCは、特に限定されないが、好ましくは1~100mg/L、より好ましくは1~50mg/L、さらに好ましくは1~10mg/Lである。
原水又は被処理水のORPは、好ましくは200~600mV、より好ましくは200~400mVである。
【0113】
1-4-2.逆浸透膜装置
本実施形態に用いられる逆浸透膜装置は、特に限定されず、逆浸透膜を用いて原水中のイオン類や有機物などを除去できるように構成されていることが好適である。逆浸透膜装置は、海水淡水化、超純水製造、工業用水処理、排水回収処理及び排水の再利用などを行いうるように構成されていることが好適である。また、逆浸透膜装置は、逆浸透膜を有するユニットを単数又は複数備えていてもよい。また、水系は、単数又は複数の逆浸透膜装置を有していてもよい。
【0114】
<逆浸透膜>
本実施形態に用いる膜は逆浸透膜(以下、「RO膜」ともいう)やナノろ過膜(以下、「NF膜」ともいう)などである。RO膜は、特に限定されず、例えば、ポリアミド系、ポリエーテルスルホン系、ポリスルホン系、ポリイミド系、ポリエチレンイミン系、ポリエチレンオキシド系、酢酸セルロース系などが挙げられる。この中でも、ポリアミド系RO膜は、イオン性物質の阻止率が高く、流束が大きいので好適に用いることができる利点を有する。
【0115】
本実施形態における逆浸透膜装置に供給する被処理水(以下、「供給水」ともいう)の条件は、逆浸透膜装置又は逆浸透膜工程の処理能力又は目的に応じて適宜設定することができるが、特に限定されない。
【0116】
逆浸透膜装置に供給する被処理水(供給水)として、例えば、供給水pH、供給水量、供給水温、供給水の水圧(MPa)、供給水のTOC(全有機炭素:Total Organic Carbon)、供給水の酸化還元電位(ORP)などが挙げられるが、これら条件から1種又は2種以上を選択することができる。供給水の有機物をTOCとする。
なお、本発明において、「逆浸透膜装置に供給する被処理水」を「給水」ともいうが、当該給水は、逆浸透膜装置に導入されて逆浸透膜処理される水をさし、通常逆浸透膜装置の入口水が該当する。
【0117】
供給水のpHは、特に限定されないが、好ましくは3~9、より好ましくは4~8、さらに好ましくは5~8である。当該pHは、pH調整剤で調整してもよい。
供給水量は、特に限定されないが、好ましくは5~200mL/minである。
供給水の水圧は、特に限定されないが、好ましくは0.1~10MPaである。
供給の水温は、特に限定されないが、好ましくは4~50℃、さらに好ましくは10~40℃である。
供給水のTOCは、特に限定されないが、好ましくは1~100mg/L、より好ましくは1~50mg/L、さらに好ましくは1~10mg/Lである。
供給水のORPは、好ましくは200~600mV、より好ましくは200~400mVである。
また、供給水の流速は、8インチスパイラルモジュール1本あたり3~10m3/hが好ましい。
【0118】
本実施形態において、より好適な態様として、逆浸透膜装置に被処理水を供給する前に前処理部にて被処理水から有機物や濁質などを除去する前処理工程を含んでもよい。
逆浸透膜装置に供給する被処理水は、保安フィルター装置にて前処理することが好適である。例えば、前処理工程として、原水(被処理水)を、濾過装置で濾過し、濾過処理水は濾過処理水槽、及び保安フィルターを経る工程などが挙げられる。
これにより、前処理した逆浸透膜装置又は逆浸透膜工程に供給するための被処理水を得ることができる。
保安フィルターとして、特に限定されないが、例えば、単数又は複数の精密濾過膜(MF膜)処理、単数又は複数の限外濾過膜(UF)処理などが挙げられ、これらから1種又は2種以上を使用することができ、これらを適宜組み合わせてもよい。これにより、逆浸透膜装置に供給する被処理水の濁質などの不純物を低減することができる。
【0119】
本実施形態において、逆浸透膜装置に供給する被処理水中には、酸化系スライム抑制剤及び/又は有機系スライム抑制剤をより良好に含むので、適宜、逆浸透膜装置で発生するバイオファウリングをより良好に抑制でき、また、適宜、酸化系スライム抑制剤及び/又は有機系スライム抑制剤に起因する効果(例えば、抗菌、殺菌、殺藻、微生物生育阻害、微生物代謝阻害など)をより良好に効率よく発揮させることもできる。これによって、逆浸透膜装置で発生するバイオファウリングを抑制する効果、及び使用する薬剤による効果も期待できる。
【0120】
1-5.各測定方法
<全残留塩素濃度の算出方法>
なお、全残留塩素濃度は以下の方法をもとに算出する。なお、、JIS K 0400-33-10:1999を参照することができる。
全残留塩素濃度=遊離塩素濃度+活性化結合塩素濃度+安定化結合塩素濃度。
遊離塩素濃度:DPD法(ポケット残留塩素計、HACH社製)による遊離塩素濃度[ここで、DPD法による遊離塩素濃度は、遊離塩素測定用試薬であるDPD(Free)試薬による5~30秒後の塩素濃度測定結果(mg-Cl2/L)]。
活性化結合塩素濃度:遊離塩素測定用試薬であるDPD(Free)試薬による300秒後の塩素濃度測定結果(mg-Cl2/L)から、上記遊離塩素濃度(mg-Cl2/L)の測定結果を差し引いた値。
安定化結合塩素濃度:全塩素測定用試薬であるDPD(Total)試薬による180秒後の塩素濃度測定結果(mg-Cl2/L)から、遊離塩素測定用試薬であるDPD(Free)試薬による300秒後の塩素濃度測定結果(mg-Cl2/L)を差し引いた値。
遊離塩素比率(%)=(遊離塩素濃度/全残留塩素濃度)×100
安定化結合塩素比率(%)=(安定化結合塩素濃度/全残留塩素濃度)×100
なお、試験環境の温度は25℃とする。
【0121】
被処理水のpH(25℃)は、HRIBA社製のハンディpHメータにて測定することができる。また、被処理水のTOCは、TOC計にて測定することができる。被処理水のORPは、ORP計にて測定することができる。
【0122】
なお、本実施形態に係る逆浸透膜装置の運転方法は、逆浸透膜の処理方法であってもよい。また、本実施形態に係る運転方法は、装置又はシステムに適用することができる。
また、本発明に係る逆浸透膜装置の運転方法は、下記「2.」「3.」などの構成と重複する、第一工程、第二工程、酸化系スライム抑制剤、有機系スライム抑制剤などの各構成などの説明については適宜省略するが、当該「2.」「3.」などの説明が、本実施形態にも当てはまり、当該説明の構成等を適宜採用することができる。
【0123】
2.本実施形態に係る逆浸透膜装置に適用するスライム制御方法
本発明に係る逆浸透膜装置に適用するスライム制御方法は、上記「1.」下記「3.」などの構成と重複する、第一工程、第二工程、酸化系スライム抑制剤、有機系スライム抑制剤などの各構成などの説明については適宜省略するが、当該「1.」「3.」などの説明が、本実施形態にも当てはまり、当該説明の構成等を適宜採用することができる。また、本実施形態に係るスライム制御方法は、装置又はシステムに適用することができる。
【0124】
本実施形態に係る逆浸透膜装置に適用するスライム制御方法は、酸化系スライム抑制剤を間欠的に添加して、当該酸化系スライム抑制剤を含有する被処理水を逆浸透膜装置に間欠的に供給する第一工程と、
有機系スライム抑制剤を少なくとも前記第一工程の添加期間以外の期間に添加して、当該有機系スライム抑制剤を含有する被処理水を逆浸透膜装置に供給する第二工程と、を有することが好適である。
【0125】
前記酸化系スライム抑制剤の1添加期間における添加濃度が、前記有機系スライム抑制剤の1添加期間における添加濃度よりも多くなるように調整することが好適である。
前記酸化系スライム抑制剤を、運転期間3日間のうちで1回以上添加することが好適である。
前記酸化系スライム抑制剤を、1回当たり10分以上添加することが好適である。
前記酸化系スライム抑制剤を、全塩素濃度として0.1mg/L以上添加することが好適である。
前記有機系スライム抑制剤を、0.01mg/L以上添加することが好適である。
【0126】
3.本実施形態に係る水処理装置
本発明に係る水処理装置は、上記「1.」「2.」などの構成と重複する、第一工程、第二工程、酸化系スライム抑制剤、有機系スライム抑制剤などの各構成などの説明については適宜省略するが、当該「1.」「2.」などの説明が、本実施形態にも当てはまり、当該説明の構成等を適宜採用することができる。
また、本実施形態に係る水処理装置は、逆浸透膜装置を少なくとも有する水処理装置又は水系であってもよい。当該水処理装置は、水処理水系、又は水処理システムであってもよい。
【0127】
本実施形態に係る水処理装置は、
酸化系スライム抑制剤を間欠的に添加して、当該酸化系スライム抑制剤を含有する被処理水を逆浸透膜装置に間欠的に供給する第一工程と、
有機系スライム抑制剤を少なくとも前記第一工程の添加期間以外の期間に添加して、当該有機系スライム抑制剤を含有する被処理水を逆浸透膜装置に供給する第二工程と、を有する、本実施形態の方法を実施する水処理装置であることが好適である。
本実施形態に係る水処理装置は、本実施形態の逆浸透膜装置の運転方法、又は、本実施形態の逆浸透膜装置に適用するスライム制御方法を実施することが好適である。
【0128】
本実施形態に係る水処理装置は、第一薬剤添加部、第二薬剤添加部、逆浸透膜部を備え、これら部を制御する制御部を備えることが好適であり、逆浸透膜部の前に前処理部として、保安フィルター部をさらに備えることが好適である。第一薬剤添加部及び第二薬剤添加部は、保安フィルター部の上流又は下流の流路、逆浸透膜部の上流の流路に接続されていることが好適であり、これにより、各薬剤を被処理水に添加し、各薬剤を含む被処理水を逆浸透膜装置に供給することができる。また、これら各部は、単数又は複数であってもよく、また、これら部は、装置であってもよい。
【0129】
本実施形態の実施の一例を以下に示すが、本実施形態の実施はこれに限定されない。また、本実施形態の実施は、制御部が実施してもよいし、水処理の制御装置又は水処理装置、水処理システム、水系などの装置が実施してもよい。
【0130】
本実施形態での一例として、前記第一工程と第二工程とを実施できるように構成されている制御部又はこのような制御部を備える装置が好ましい。これにより、本実施形態の方法をより良好に実施することができる。
制御部は、第一薬剤添加部及び第二薬剤添加部に対して、被処理水に添加される酸化系スライム抑制剤及び有機系スライム抑制剤の薬剤添加条件(添加タイミング(例えば間欠的、連続的)、添加量など)を指示することで、第一工程及び第二工程を制御し実施することができる。
また、制御部は、第一工程及び第二工程において、逆浸透膜装置への薬剤を含む被処理水の供給状態を各種測定装置を用いて監視してもよく、必要に応じてこの測定結果を第一添加工程及び第二添加工程にフィードバックし、これらを制御することもできる。
【0131】
好適な態様として、制御部は、供給状態に基づき、第一薬剤添加部及び第二薬剤添加部に対し、それぞれより好適な薬剤添加状況(添加タイミング(例えば間欠的、連続的)、添加濃度など)を指示することで、第一工程及び第二工程を制御し実施することができる。これにより、逆浸透膜装置を有する水系をより長期的に安定して運転できる。さらに、これにより、逆浸透膜装置の逆浸透膜に存在するスライムの低減又はスライムの増加抑制をより良好にでき、これによりバイオファウリングをより良好に抑制することもできる。
【0132】
より好適な態様として、制御部は、以下のステップ11及びステップ21を同時期に並列的に実行することが好適であり、さらにステップ12及びステップ22を同時期に並列的に実行することがより好適である。また、制御部は、第一添加工程及び第二添加工程における、被処理水に対する酸化系スライム抑制剤及び酸化系スライム抑制剤の添加量やこれらの添加時期や添加期間などを調整しながら、酸化系スライム抑制剤及び/又は有機系スライム抑制剤を含む被処理水を調製することができる。制御部は、第一供給工程及び第二供給工程において、第一添加工程及び第二添加工程にて調製された酸化系スライム抑制剤及び/又は有機系スライム抑制剤を含む被処理水を逆浸透膜装置に供給することができる。このようにして、制御部は、逆浸透膜装置を有する水系をより長期的に安定して運転できる。これにより、逆浸透膜装置で発生するバイオファウリングなども抑制することができる。
【0133】
第一工程のステップ11として、制御部は、酸化系スライム抑制剤を水系の被処理水に間欠的に添加するように、第一薬剤添加部を制御する。制御部の指示により、第一薬剤添加部は、酸化系スライム抑制剤を水系の被処理水に間欠的に添加する。
第一工程のステップ12として、制御部は、添加後、酸化系スライム抑制剤を含有する被処理水を逆浸透膜装置に間欠的に供給するように制御する。
第二工程のステップ21として、制御部は、有機系スライム抑制剤を少なくとも前記第一工程の添加期間以外の期間に添加するように、第二薬剤添加部を制御する。制御部の指示により、第二薬剤添加部は、有機系スライム抑制剤を少なくとも前記第一工程の添加期間以外の期間に添加する。
第二工程のステップ22として、制御部が、添加後有機系スライム抑制剤を含有する被処理水を逆浸透膜装置に供給するように制御する。
【0134】
制御部は、第一薬剤添加部及び第二薬剤添加部に対して、酸化系スライム抑制剤の添加濃度(as 全塩素濃度)が、有機系スライム抑制剤の添加濃度(as 薬剤質量濃度)よりも高くなるように調整するように指示することが好適であり、これによりそれぞれの所望の薬剤添加量にすることができる。
また、制御部は、第一薬剤添加部に対して、酸化系スライム抑制剤を、運転期間3日間のうちで1回以上添加するように指示することが好適であり、これにより所望の添加期間にすることができる。
また、制御部は、酸化系スライム抑制剤を、第一薬剤添加部に対して、1回当たり0.1分以上添加するように指示することが好適であり、これにより所望の添加期間にすることができる。
【0135】
一例として、
図3に示すように、制御部(図示せず)は、逆浸透膜装置を有する水系に備えられている第一薬剤添加装置10及び第二薬剤添加装置20を制御することができる。制御部は、第一薬剤添加装置10に、第一工程に沿って、酸化系スライム抑制剤を保安フィルター3又は逆浸透膜装置2の上流にて添加するように指示をすることができる。制御部は、第二薬剤添加装置20に、第二工程に沿って、有機系スライム抑制剤を保安フィルター3又は逆浸透膜装置2の上流にて添加するように指示をすることができる。このようにして制御部は、酸化系スライム抑制剤及び/又は有機系スライム抑制剤を含む被処理水を逆浸透膜装置2に供給することができる。このようにして、制御部は、第一添加工程及び第二添加工程を制御し実施することで、逆浸透膜装置を有する水系をより長期的に安定して運転できる。
【0136】
なお、本実施形態の方法を、上述した逆浸透膜装置の運転方法、スライム制御方法などの方法(例えば、上記「1.」及び「2.」に記載の方法)を実施又は管理するための装置又は当該装置に備える制御部(当該制御部はCPU又はプロセッサなどを含む)によって実現させることも可能であり、これら装置又は制御部を提供することができる。当該実施又は管理するための装置として、例えば、コンピュータ、ノートパソコン、デスクトップパソコン、タブレットPC、PLC、サーバ、クラウドサービスなどが挙げられる。さらに、前記実施又は管理するための装置などには、タッチパネルやキーボードなどの入力部、各部間の送受信部やネットワーク、ネットワークアクセス部などの通信部、タッチパネルやディスプレイなどの表示部などを適宜備えてもよい。これにより、本実施形態の方法を実施することができる。前記実施又は管理するための装置は、構成として、例えば、CPU、RAM、記憶部、表示部及び通信部などを適宜備えることができ、当該構成は、必要に応じて、それぞれ、例えばデータの伝送路としてのバスで接続されていてもよい。
【0137】
また、本実施形態の方法を、記憶媒体(不揮発性メモリ(USBメモリなど)、SSD(Solid State Drive)、HDD(Hard Disk Drive)、CD、DVD、ブルーレイなど)などを備えるハードウェア資源にプログラムとして格納し、前記制御部によって実現させることも可能である。本実施形態の方法をプログラムとして提供することができる。本実施形態の方法を記憶した記憶媒体を提供することができる。これにより、本実施形態の方法を実施することができる。
【0138】
また、前記制御部、前記記憶媒体又は前記プログラムなどを含む、逆浸透膜装置を運転できるように又は逆浸透膜装置のスライムを制御できるように構成されている、逆浸透膜装置の運転又はスライム制御などを実施するための、装置、水処理装置、システム又は水系システムなどを提供することができる。これにより、本実施形態の方法を実施することができる。これら装置、水処理装置、システム又は水系システムなどは、適宜目的に応じて対応できるように構成していてもよい。
【0139】
また、本実施形態での一例として、コンピュータに、酸化系スライム抑制剤を間欠的に添加して、当該酸化系スライム抑制剤を含有する被処理水を逆浸透膜装置に間欠的に供給するように構成されている第一機能と、有機系スライム抑制剤を少なくとも前記第一工程の添加期間以外の期間に添加して、当該有機系スライム抑制剤を含有する被処理水を逆浸透膜装置に供給するように構成されている第二機能と、を含む、逆浸透膜装置の運転又はスライム制御などを、実現させるプログラムを提供することができ、これに限定されない。これにより、本実施形態の方法を実施することができる。
【0140】
なお、本実施形態に係るプログラムでは、上記「1.」「2.」などの構成と重複する第一工程、第二工程、酸化系スライム抑制剤、有機系スライム抑制剤などの各構成などの説明については適宜省略するが、当該「1.」「2.」などの説明が、本実施形態にも当てはまり、当該説明の構成等を適宜採用することができる。
【0141】
本技術は、以下の構成を採用することができる。
〔1〕
酸化系スライム抑制剤を間欠的に添加して、当該酸化系スライム抑制剤を含有する被処理水を逆浸透膜装置に間欠的に供給する第一工程と、
有機系スライム抑制剤を少なくとも前記第一工程の添加期間以外の期間に添加して、当該有機系スライム抑制剤を含有する被処理水を逆浸透膜装置に供給する第二工程と、を有する、逆浸透膜装置の運転方法。
〔2〕
酸化系スライム抑制剤を間欠的に添加して、当該酸化系スライム抑制剤を含有する被処理水を逆浸透膜装置に間欠的に供給する第一工程と、
有機系スライム抑制剤を少なくとも前記第一工程の添加期間以外の期間に添加して、当該有機系スライム抑制剤を含有する被処理水を逆浸透膜装置に供給する第二工程と、を有する、逆浸透膜装置に適用するスライム制御方法。
【0142】
〔3〕
前記酸化系スライム抑制剤の添加濃度が、前記有機系スライム抑制剤の添加濃度よりも高くなるように調整する、前記〔1〕又は〔2〕に記載の方法。
〔4〕
前記酸化系スライム抑制剤を、運転期間3日間のうちで1回以上添加する、前記〔1〕~〔3〕のいずれか一つに記載の方法。
〔5〕
前記酸化系スライム抑制剤を、1回当たり10分以上添加する、前記〔1〕~〔4〕のいずれか一つに記載の方法。
〔6〕
前記酸化系スライム抑制剤を、全塩素濃度として0.1mg/L以上添加する、前記〔1〕~〔5〕のいずれか一つに記載の方法。
〔7〕
前記有機系スライム抑制剤を、0.01mg/L以上添加する、前記〔1〕~〔6〕のいずれか一つに記載の方法。
〔8〕
前記酸化系スライム抑制剤が、結合ハロゲン剤であり、好適にはクロラミン化合物、安定化臭化物及びハロゲン化ヒダントイン化合物から選択される1種又は2種以上、より好適には、クロラミン化合物及び/又は安定化臭化物である、前記〔1〕~〔7〕のいずれか一つに記載の方法。
〔9〕
前記有機系スライム抑制剤が、イソチアゾリン化合物、ハロシアノアセトアミド化合物、アルデヒド化合物、及びオキシム化合物から選択される1種又は2種以上であり、好適には、2,2-ジブロモ-3-ニトリロプロピオンアミド(DBNPA)、5-クロロ-2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オン(Cl-MIT)、及び2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オン(MIT)、及びグルタルアルデヒドから選択される1種又は2種以上である、前記〔1〕~〔8〕のいずれか一つに記載の方法。
【0143】
〔10〕
前記〔1〕及び〔3〕~〔9〕のいずれか一つに記載の逆浸透膜装置の運転方法、又は、前記〔2〕~〔9〕のいずれか一つに記載の逆浸透膜装置に適用するスライム制御方法を実施する、水処理装置又は水処理水系。水処理装置又は水処理水系には、逆浸透膜装置を少なくとも有し、さらに当該逆浸透膜装置の上流に保安フィルター装置を有することが好ましい。また、逆浸透膜装置に供給する前に前処理をするための保安フィルター装置を有することが好ましく、これにより保安フィルター処理された被処理水を逆浸透膜装置に供給することができる。
〔11〕
前記〔1〕~〔9〕のいずれか一つに記載の方法を実施するように構成されている、水処理装置若しくは水処理水系、又は制御部若しくは制御装置を備えてもよく、当該制御部にはCPUを備えてもよく、当該制御装置は、好適には、コンピュータ装置である。当該制御部又は当該制御装置を有する水処理装置又は水処理水系であってもよい。
【0144】
〔12〕
コンピュータに、前記〔1〕~〔9〕のいずれか一つに記載の方法を実施させる、浸透膜装置の運転システム又は逆浸透膜装置に適用するスライム制御システム。
〔13〕
コンピュータに、前記〔1〕~〔9〕のいずれか一つに記載の方法を実施させる、プログラム。
〔14〕
コンピュータに、 酸化系スライム抑制剤を間欠的に添加して、当該酸化系スライム抑制剤を含有する被処理水を逆浸透膜装置に間欠的に供給する第一工程を実行する第一機能と、
有機系スライム抑制剤を少なくとも前記第一工程の添加期間以外の期間に添加して、当該有機系スライム抑制剤を含有する被処理水を逆浸透膜装置に供給する第二工程を実行する第二機能と、を含む、逆浸透膜装置の運転を実現させるプログラム又は当該プログラムを格納したコンピュータ可読媒体、若しくは当該プログラム或いは当該媒体を含む装置。当該プログラムを実施するように構成されている、制御部、水処理装置、制御システム又は水処理水系。
【実施例】
【0145】
以下の実施例及び比較例を挙げて、本発明の実施形態について説明をする。なお、本発明の範囲は実施例に限定されるものではない。
【0146】
<試験例1>
原水に、基質を添加し、微生物によるバイオファウリング効果を促進させた。具体的には、原水に、基質として、エタノール 50mg/L as C、塩化アンモニウム 10mg/L as N、リン酸二水素ナトリウム 0.5mg/L as Pになるように添加したものを被処理水とした。原水(被処理水)のpHは6~8、TOCは1 mg/L、ORPは300mV、水温は25℃であった。
この被処理水を、ポンプで1.5MPaに加圧し、供給水(水量は100mL/min、水圧は0.2 MPa、水温は25℃)として、RO膜装置の濃縮液室に供給してRO膜処理を行った。RO膜装置は芳香族ポリアミド系RO膜の4インチスパイラル型RO膜エレメント(日東電工(株)製、ES20)を1本ベッセルに充填したものを用いた。供給水の流速は、8インチスパイラルモジュール1本あたり3~10m3/hであった。差圧の変化とは、測定開始時の圧を0kPaと設定し、開始後の通水時間ごとの圧との差の変化を意味する。
【0147】
<逆浸透膜に対するスライム抑制の評価方法>
逆浸透膜に対するスライム抑制の評価に際しては、非特許文献1(J. S. Vrouwenvelder et. al.)にある膜ファウリングシミュレータを用いて、表1にある条件で差圧が100kPa増加するまでにかかる日数を測定し、この差圧に達した日をバイオファウリングが発生した日、すなわち閉塞日とした。この閉塞になる日数が長いほど、スライム抑制できていると評価する。
【0148】
〔比較例1-1〕:薬品無添加
〔比較例1-2〕:モノクロロスルファミン酸ナトリウム 1.5mg/L as全塩素濃度(T-Cl)にて、この単独の薬剤を開始0日から閉塞になるまで、常時添加を行った。
比較例3:Cl-MIT 0.15 mg/L as Cl-MITにて、この単独の薬剤を開始0日から閉塞になるまで、常時添加を行った。
〔実施例1-1〕:<J1-1>の第一工程と<J2-2>の第二工程とを、並列的に一緒に行った。
<J1-1>において、開始0日から、毎日、午前8時から2時間、酸化系スライム抑制剤であるモノクロロスルファミン酸ナトリウムを6mg/L as T-Clにて、被処理水に添加し、当該薬剤を含む被処理水がRO膜装置に供給された。
<J2-2>において、開始0日から、有機系スライム抑制剤であるCl-MIT(5-クロロ-2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オン)を0.15mg/L as薬剤質量(Cl‐MIT)にて常時添加し、当該薬剤を含む被処理水がRO膜装置に供給された。常時添加の場合、薬剤を被処理水に0日から添加開始後、閉塞になるまで、その薬剤の添加を停止させずに、その薬剤を連続的に被処理水に添加し、当該薬剤を含む被処理水が逆浸透膜に供給された。<J1-1>及び<J2-2>の添加時期が重複する期間については、これらを含む被処理水がRO膜装置に供給された。
【0149】
<モノクロロスルファミン酸ナトリウムを含む薬剤の調製>
水酸化ナトリウム(キシダ化学株式会社製)が48質量%となるように、純水を用いて水酸化ナトリウム水溶液を調製した。この予め調製した水酸化ナトリウム水溶液19.5gと純水7.5gとを混合した後、アミド硫酸(スルファミン酸)(キシダ化学株式会社製)15.0gを添加混合した。その後、さらに、有効塩素濃度12質量%の次亜塩素酸ソーダ(旭硝子株式会社製)58.0gを添加混合し、モノクロロスルファミン酸試薬を調製した。なお、本薬剤の全塩素濃度は7質量% as Cl2である。
【0150】
【0151】
表1に示されるこれらの通水結果から以下のことが確認できた。
単一のスライム抑制剤をそれぞれ常時添加するよりも、異なる系統のスライム抑制剤を数日ごとに交互に添加する方がよいことが確認できた。
酸化系スライム抑制剤を、一日一回、2時間、間欠添加する第一添加工程、及び有機系スライム抑制剤を常時添加する第二添加工程を、並列的に、行うことにより、閉塞日数が長くなり、スライム抑制作用がより優れていたことが確認できた。
【0152】
<試験例2>
原水に、基質として、IPA 1.4 mg/L as C、リン酸二水素ナトリウム 0.02mg/L as Pになるように添加した被処理水を用いたこと、被処理水の水温を30℃に設定調整したこと、そして殺菌剤添加条件として以下の条件を採用したこと以外は、上記<試験例1>と同じ条件で試験を実施した。
【0153】
〔比較例2-1〕
有機系スライム抑制剤であるCl-MITを、0.1 mg/L as薬剤質量(Cl‐MIT)にて連続添加し、RO膜装置に連続通水した。これにより、薬剤を含む被処理水は、その下流のRO膜装置に連続通水されている。
【0154】
〔実施例2-1〕
第二工程の有機系スライム抑制剤を「一定時間」連続添加し、次いで、第二工程の有機系スライム抑制剤の添加停止の期間に、第一工程の酸化系スライム抑制剤を「一定時間」連続添加することを、この順序で繰り返し行った。
これにより、酸化系スライム抑制剤を間欠的に添加して、当該酸化系スライム抑制剤を含有する被処理水を逆浸透膜装置に、「一定時間」連続通水している。一方で、有機系スライム抑制剤を、「前記第一工程の添加期間以外の期間」に連続添加して、当該有機系スライム抑制剤を含有する被処理水を、逆浸透膜装置に「前記第一工程の添加期間以外の期間」で連続通水している。
【0155】
具体的には、第二工程で用いる有機系スライム抑制剤であるCl-MITを0.1 mg/L as薬剤質量(Cl‐MIT)にて、毎日9:30から翌日の9:00までの23.5時間の期間、連続添加し、その下流のRO膜装置にこの所定の期間連続通水し、かつ、(2)第一工程で用いる酸化系スライム抑制剤であるモノクロロスルファミン酸を、5 mg/L as T-Clにて、毎日9:00から9:30までの0.5時間の期間、連続添加し、その下流のRO膜装置にこの所定の期間連続通水した。これにより、有機系スライム抑制剤を含む被処理水、酸化系スライム抑制剤を含む被処理水、有機系スライム抑制剤を含む被処理水・・・の順で、逆浸透膜装置に供給されている。
【0156】
実施例2-1及び比較例2-1における、6日までの差圧の変化(kpa)の結果を、
図4に示す。明らかに実施例2-1の方が、差圧上昇が鈍化したので、実施例2-1の方法に、非常に優れたスライム抑制機能があることを示唆する結果が得られた。さらに、実施例2-1では有機系スライム抑制剤及び酸化系スライム抑制剤の両方ともに低い濃度で実施しているが、この差圧の変化が6日経過しても10KPa以下であることから、非常に良好なスライム抑制が得られており、これにより有機系スライム抑制剤及び酸化系スライム抑制剤の両方ともに低い濃度であっても、良好にスライム抑制機能を発揮できることも効果確認できた。
【0157】
<試験例3>
原水に、基質として、エタノール 50mg/L as C、塩化アンモニウム 20mg/L as N、リン酸二水素ナトリウム 1.0mg/L as Pになるように添加した被処理水を用いたこと、そして殺菌剤添加条件として以下の条件を採用したこと以外は、上記<試験例1>と同じ条件で試験を実施した。
【0158】
〔比較例3-1〕
有機系スライム抑制剤であるCl-MITを、0.5 mg/L as 薬剤質量(Cl‐MIT)にて連続添加し、RO膜装置に常時連続通水した。これにより、薬剤を含む被処理水は、その下流のRO膜装置に連続通水されている。
【0159】
〔実施例3-1〕
第二工程の有機系スライム抑制剤を「常時」連続添加すること、及び、第一工程の酸化系スライム抑制剤を「一定間隔にて一定時間」連続添加することを、並列的に行った。
これにより、酸化系スライム抑制剤を間欠的に添加して、当該酸化系スライム抑制剤を含有する被処理水を逆浸透膜装置に、「一定時間」連続通水している。一方で、有機系スライム抑制剤を、少なくとも「前記第一工程の添加期間以外の期間」に「常時」連続添加して、当該有機系スライム抑制剤を含有する被処理水を、逆浸透膜装置に「常時」連続通水している。これにより、有機系スライム抑制剤を含む被処理水、酸化系スライム抑制剤及び有機系スライム抑制剤を併用して含む被処理水、有機系スライム抑制剤を含む被処理水・・・の順で、逆浸透膜装置に供給されている。
【0160】
具体的には、第二工程で用いる有機系スライム抑制剤であるCl-MITを0.5 mg/L as 薬剤質量(Cl‐MIT)にて常時連続通水し、当該薬剤を含む被処理水は、その下流のRO膜装置に常時連続通水されている。かつ、第一工程で酸化系スライム抑制剤であるモノクロロスルファミン酸を、1日置きで9:00から10:00までの1時間の間、25 mg/L as T-Clにて、連続添加し、当該薬剤を含む被処理水は、その下流のRO膜装置に、所定の期間、連続通水されている。
【0161】
実施例3-1及び比較例3-1における19日までの結果を、
図5に示す。明らかに実施例3-1の方が差圧上昇が鈍化したので、実施例3-1の方法に、非常に優れたスライム抑制機能があることを示唆する結果が得られた。さらに、実施例3-1では、酸化系スライム抑制剤が高い濃度で実施しているが、この差圧の変化が16日経過しても10KPa以下であることから、非常に良好なスライム抑制が得られており、これにより、良好にスライム抑制機能を発揮できることも効果確認ができた。
【0162】
<試験例4>
原水に、基質として、エタノール 30mg/L as C、塩化アンモニウム 10mg/L as N、リン酸二水素ナトリウム 0.5mg/L as Pになるように添加した被処理水を用いたこと、被処理水の水温を20℃に設定調整したこと、そして、表2に示す、スライム抑制剤の添加期間及び添加濃度に設定した以外は、上記<試験例1>と同じ条件で試験を実施した。
【0163】
表2中の「間欠添加(毎日 9:00-9:30)」では、酸化系スライム抑制剤を、毎日9:00-9:30の間は連続添加し、これ以外9:30-翌日9:00の間は添加しなかった。当該酸化系スライム抑制剤を「30分間」連続添加され、当該薬剤を含む被処理水は、その下流のRO膜装置に、「30分間」連続通水されている。
【0164】
表2中の「間欠添加(毎日 21:00-21:30)」では、有機系スライム抑制剤を、毎日21:00-21:30の間は連続添加し、これ以外の21:30-翌日21:00の間は添加しなかった。当該有機系スライム抑制剤を「30分間」連続添加され、当該薬剤を含む被処理水は、その下流のRO膜装置に、「30分間」連続通水されている。
【0165】
表2中の「常時添加」では、薬剤を、試験開始時から試験終了時まで「常時」連続添加した。この間、薬剤を「常時」連続添加され、当該薬剤を含む被処理水は、RO膜装置に「常時」連続通水されている。
【0166】
また、比較例4-6、比較例4-7、実施例4-1では、表2に示すように、第一工程及び第二工程を並列的に行った。
【0167】
以下の表2に薬品添加条件と差圧が100kPaに到達するまでに要した日数を示す。表2に示すとおり、酸化系スライム抑制剤を間欠的に添加する第一添加工程、及び有機系スライム抑制剤を常時添加する第二添加工程を、並列的に行う処理が、最も閉塞日数が長くなり、スライム抑制作用が最も優れていたことを示唆する結果が得られた。
【0168】
【符号の説明】
【0169】
1 水系;2 逆浸透膜装置;3 保安フィルター;4固液分離装置;5凝縮装置;10 第一薬剤添加装置;第二薬剤添加装置