(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-20
(45)【発行日】2023-03-29
(54)【発明の名称】皮膚内傷害検査装置、皮膚内傷害検査システム
(51)【国際特許分類】
A61B 5/00 20060101AFI20230322BHJP
A61B 10/00 20060101ALI20230322BHJP
【FI】
A61B5/00 M
A61B10/00 E
A61B10/00 Q
(21)【出願番号】P 2019084112
(22)【出願日】2019-04-25
【審査請求日】2022-02-16
(73)【特許権者】
【識別番号】311011210
【氏名又は名称】喬 炎
(73)【特許権者】
【識別番号】512309772
【氏名又は名称】北山 秋雄
(73)【特許権者】
【識別番号】301021533
【氏名又は名称】国立研究開発法人産業技術総合研究所
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】喬 炎
(72)【発明者】
【氏名】北山 秋雄
(72)【発明者】
【氏名】張 嵐
(72)【発明者】
【氏名】魯 健
【審査官】磯野 光司
(56)【参考文献】
【文献】特表2018-531652(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2004/0054303(US,A1)
【文献】特開2017-104506(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/00-5/398
A61B 10/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体の皮膚内傷害の有無及び程度を検査するための検査装置であって、
透光性を有
し、被検査者の検査箇所を押圧するために用いられる板状部材と、
前記板状部材の厚み方向の一方から他方へ向けて白色光を照射する第1光源と、
前記第1光源が前記白色光を照射する方向と同じ方向へ向けて、ブルーライトを照射する第2光源と、
前記第1光源及び前記第2光源から照射される光に感度を有し、前記第1光源及び前記第2光源から照射される光の反射光を受光するように配置される撮影手段と、
を備える検査装置。
【請求項2】
前記板状部材の厚み方向への荷重を測定する圧力センサをさらに備える、ことを特徴とする、請求項1に記載の検査装置。
【請求項3】
前記圧力センサにより測定された値を出力する圧力値出力手段、をさらに有することを特徴とする請求項2に記載の検査装置。
【請求項4】
前記板状部材の厚み方向に対して伸縮するように配置され、前記板状部材の厚み方向への荷重が所定の値になった際に限界まで収縮するバネを備える、ことを特徴とする、請求項1から3のいずれか1項に記載の検査装置。
【請求項5】
前記撮影手段により撮影された画像を出力する画像出力手段、をさらに有することを特徴とする、請求項1から4のいずれか1項に記載の検査装置。
【請求項6】
少なくとも前記撮影手段により撮影された画像を送信可能な通信手段、をさらに有することを特徴とする、請求項1から5のいずれか1項に記載の検査装置。
【請求項7】
前記撮影手段により撮影された画像に基づいて、当該画像が示す箇所の皮膚内傷害の有無及び程度について判定を行う、画像解析手段をさらに有することを特徴とする、請求項1から6のいずれか1項に記載の検査装置。
【請求項8】
前記画像解析手段の前記判定は、少なくとも前記撮影手段により撮影された画像と、当該画像が示す箇所の皮膚内傷害の有無及び程度についての診断結果と、を教師データとする学習済みモデルによって行われる、ことを特徴とする、請求項7に記載の検査装置。
【請求項9】
前記ブルーライトは、320nm乃至450nmの波長領域の光であることを特徴とする、請求項1から8のいずれか1項に記載の検査装置。
【請求項10】
請求項1から9のいずれか1項に記載の検査装置を含む、生体の皮膚内傷害検査システム。
【請求項11】
前記検査装置の前記撮影手段により撮影された画像に基づいて、当該画像が示す箇所の皮膚内傷害の有無及び程度について判定を行う画像解析装置を有する、ことを特徴とする、請求項10に記載の生体の皮膚内傷害検査システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体の皮膚内の傷害の有無を検査する検査装置及び検査システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、医療・介護の現場において、寝たきりの患者などの褥瘡への対応が課題となっている。褥瘡とは、長時間または頻回に加わる(圧、すれ力)が原因で生じる皮膚と皮下組織の虚血性壊死であり、日常生活における自立度の低下した寝たきり高齢者や脊髄損傷の患者などによく見られる。
【0003】
褥瘡は、皮膚の発赤から発生して、皮膚全層に及び、皮下の筋組織の壊死までさまざまの段階にあるが、重度に進行すると治療することには多大な医療労力・費用を要する。このため、早期の発赤段階で褥瘡の発生を発見し、適切に対処を行うことが非常に重要である。しかしながら、褥瘡の早期段階の発赤については、その後消退する発赤(充血した血液)と、悪化していく発赤とを見分けることが非常に難しいという問題がある。
【0004】
発赤が消退するものか否か(即ち当該箇所が褥瘡なのか否か)を判断する方法として、従来から、指押し法、ガラス板圧診法等の方法が知られている。具体的には、指押し法は、発赤部分を指で3秒押して白く変化するかどうか観察し、白くなる場合は消退する発赤(即ち褥瘡ではない)と判断し、そうで無い場合は消退しない発赤、即ち褥瘡と判断する。また、ガラス板圧診法では、透明な板を発赤部に当てて軽く圧迫して白くなる場合は消退する発赤、そうで無い場合は褥瘡と判断する。
【0005】
このような方法は簡便に行うことが可能であるが、処置、判断共に属人的なものであり、どの程度の圧力で押圧すれば適切なのか、押圧の結果「白くなった」といえる状態であるのか否か、が不明であるという問題があった。また処置を行った際の押圧力、発赤の程度、などを記録として残すことができないという問題があった。
【0006】
これに対して、出血のヘモグロビンの吸光性を利用して、いわゆるブルーライトを検査対象箇所(発赤箇所)に照射したうえで撮影を行い、当該撮影画像における発赤箇所の陰影の有無と強弱の差により褥瘡の進行を判断することが提案されている(例えば特許文献1、2など)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2017-104506号公報
【文献】実用新案登録第3211867号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記特許文献のような方法によれば、上述したような指押し法、ガラス板圧診法における問題点が解消され、医学専門知識を有しない者でも診断を行うことが可能になる。しかしながら、単に発赤箇所にブルーライトを照射して撮影するだけでは、撮影された画像には、充血した血液がノイズとして残ってしまうこともあり、このことは正確な診断に悪影響を与える虞があった。
【0009】
上記のような問題点に鑑み、本発明は、生体の皮膚内の傷害を、早期に精度よく検出できる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決するため、本発明に係る検査装置は生体の皮膚内傷害の検査装置であって、透光性を有する板状部材と、前記板状部材の厚み方向の一方から他方へ向けて白色光を照射する第1光源と、前記第1光源が前記白色光を照射する方向と同じ方向へ向けて、ブルーライトを照射する第2光源と、前記第1光源及び前記第2光源から照射される光に感度を有し、前記第1光源及び前記第2光源から照射される光の反射光を受光するように配置される撮影手段と、を備えることを特徴とする。
【0011】
なお、ここでいう「ブルーライト」は、近紫外線の領域及び可視光線のうち短い波長領域の光を意味する用語であり、例えば320nm乃至450nmの波長領域の光が含まれる。ただし、320nm乃至450nmの波長領域内の光に限定されるものでは無い。
【0012】
このような構成によれば、白色光とブルーライトの両方を照射しつつガラス板圧診法を行うことによって、検査箇所の圧迫による発赤消退の有無、及びブルーライト画像による陰影、の二つの観点を合わせた検査を行うことができる。これにより、圧迫すれば発赤消退するものであっても、ブルーライトの透過画像のみでは褥瘡に見えてしまうような状態(即ちノイズ)を抑止して精度よく早期の褥瘡を検出することが可能になる。
【0013】
また、前記検査装置は、前記板状部材の厚み方向への荷重を測定する圧力センサをさらに備えていてもよい。
【0014】
また、前記検査装置は、前記板状部材の厚み方向に対して伸縮するように配置され、前記板状部材の厚み方向への荷重が所定の値になった際に限界まで収縮するバネを備えていてもよい。
【0015】
また、前記検査装置は、前記圧力センサにより測定された値を出力する圧力値出力手段、及び/又は、前記撮影手段により撮影された画像を出力する画像出力手段、をさらに有していてもよい。
【0016】
また、前記検査装置は、少なくとも前記撮影手段により撮影された画像を送信可能な通信手段、をさらに有していてもよい。
【0017】
また、前記検査装置は、少なくとも前記撮影手段により撮影された画像を記録可能な記憶手段、をさらに有していてもよい。
【0018】
また、前記検査装置は、前記撮影手段により撮影された画像に基づいて、当該画像が示す箇所の皮膚内傷害の有無及び程度について判定を行う、画像解析手段をさらに有していてもよい。
【0019】
また、前記画像解析手段の前記判定は、少なくとも前記撮影手段により撮影された画像と、当該画像が示す箇所の皮膚内傷害の有無及び程度についての診断結果と、を教師データとする学習済みモデルによって行われるものであってもよい。
【0020】
また、本発明は、上記の検査装置を含む、生体の皮膚内傷害検査システムとしても理解することができる。
【0021】
上記構成及び処理の各々は技術的な矛盾が生じない限り互いに組み合わせて本発明を構成することができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、生体の皮膚内の傷害を早期に精度よく検出できる技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】
図1は、実施形態1に係る皮膚内傷害検査システムの構成例の概略を示す図である。
【
図2】
図2は、実施形態1に係る皮膚内傷害検査システムの機能構成の概略を示す機能ブロック図である。
【
図3】
図3は、実施形態1に係る検査装置の構成の一例を示す図である。
【
図4】
図4は、実施形態1に係る検査装置の光源及びカメラ配置関係を示す図である。
【
図5】
図5は、実施形態1に係る皮膚内傷害検査システムを用いて検査を行う際の流れを示すフローチャートである。
【
図6】
図6Aは、実施形態2に係る検査装置の外観を示す図である。
図6Bは、実施形態2に係る検査装置の機能の一例を示す機能ブロック図である。
【
図7】
図7Aは、実施形態2の変形例に係る検査装置の外観を示す図である。
図7Bは、実施形態2の変形例に係る検査装置の機能の一例を示す機能ブロック図である。
【
図8】
図8は、実施形態3に係る皮膚内傷害検査システム構成例の概略を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の具体的な実施形態について図面に基づいて説明する。
【0025】
<実施形態1>
まず
図1から
図4に基づいて、本発明の実施形態の第1の例について説明する。ただし、この実施形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対配置などは、特に記載がない限りは、この発明の範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。
【0026】
(システム構成)
図1は、本実施形態に係る皮膚内傷害検査システム1の構成例の概略を示す図であり、
図2は、皮膚内傷害検査システム1の機能構成の概略を示す機能ブロック図である。
図1及び
図2に示すように、皮膚内傷害検査システム1は、検査装置100、コントロールユニット200、情報処理端末300を含んで構成される。検査装置100とコントロールユニット200、情報処理端末300のそれぞれとは、通信線により通信可能に接続されている。また、コントロールユニット200、情報処理端末300の少なくともいずれか一方と、検査装置100とは、電気線により電気的にも接続されており、検査装置100は、当該電気線を介して電力の供給を受ける。
【0027】
(検査装置)
検査装置100は、生体の皮膚内傷害の有無、及び/又は、その程度についての検査のために用いられる装置であり、撮影部110、圧力センサ120、白色光源部130、ブルーライト光源部140、通信部150の機能部を含んで構成される。
【0028】
図3は、検査装置100の構造を説明する分解図である。
図3に示すように、本実施形態に係る検査装置100は概略、無色透明のガラス板101、ガラス板101を保持するガラスホルダー102、圧力センサを内蔵する圧力センサ保持部103、白色光源部130及びブルーライト光源部140を備える光源回路104、撮影手段としてのカメラ105、カメラ105を保持するカメラホルダー106、検査装置100の前記各構成を保持するデバイスホルダー107、キャップ108を組み合わせた構成となっている。またキ
ャップ108には、ケーブル口109が設けられており、カメラ105、光源回路104、及び圧力センサ保持部103に接続される通信線及び電気線が、当該ケーブル口109を介して挿通される。
【0029】
図4は、検査装置100をガラス板101側から見た状態を示す図であり、カメラ105と、光源回路104に設けられた白色光源部130及びブルーライト光源部140との位置関係を示している。
【0030】
なお、カメラ105は撮影部110に該当し、例えばCCDカメラなど既知のカメラを採用することができるが、後述するように、ブルーライトに感度を有する撮像素子を備えている必要がある。
【0031】
圧力センサ保持部103には圧力センサ120が備えられており、これによってガラス板101の厚み方向への荷重を計測する。センサの種類は特に限定されないが、例えば金属ひずみゲージによるロードセルなどを採用することができる。
【0032】
白色光源部130は白色可視光を照射する光源、ブルーライト光源部140はブルーライト(例えば、320nm乃至450nmの波長領域の光、望ましくは405nmの光)を照射する光源であり、それぞれLED(Light Emitting Diode)などの既知の発光手段を採用することができる。
図4に示すように、白色光源部130、ブルーライト光源部140はいずれも光源回路104に配置され、ガラス板101に向けて光を照射する。なお、本実施形態においては、白色光源部130が第1光源に、ブルーライト光源部140が第2光源に、それぞれ該当する。
【0033】
通信部150は、通信線を介してコントロールユニット200及び情報処理端末300との間で情報の送受信を行う。具体的には、例えば、撮影部110が取得した撮影画像データを情報処理端末300に送信したり、圧力センサ120が取得した圧力値を、コントロールユニット200に送信したりする。また、コントロールユニット200から、各光源部の発光に関する制御を受け付ける。
【0034】
(コントロールユニット)
図2に示すように、コントロールユニット200は、制御部210、圧力値表示部220、白色光調節部230、ブルーライト調節部240、通信部250、記憶部260を含んで構成される。コントロールユニット200は、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)など(いずれも図示せず)を備えるコンピュータとして構成することができ、この場合CPUが制御部210に該当する。また、RAM、ROMが記憶部260に該当する。制御部210は、コントロールユニット200の各部及び検査装置100の制御を司る。
【0035】
圧力値表示部220は、圧力センサ120が計測した圧力値をリアルタイムで表示する。また、白色光調節部230及びブルーライト調節部240は、ユーザーからの入力を受け付けることによって、対応する各光源の発光のON/OFF、及び発光強度の調整を行う。また、通信部250は、通信線を介して上述の様に検査装置100と情報の送受信を行う。
【0036】
(情報処理端末)
情報処理端末300は、制御部310、画像表示部320、入力部330、記憶部340、通信部350、を含んで構成される。情報処理端末300は、CPU、RAM、ROMなどを備えるコンピュータとして構成することができ、例えばパーソナルコンピュータ
などの汎用の情報処理装置を採用することができる。
【0037】
制御部310は、情報処理端末300の各部の制御を司る。また、画像表示部320は、撮影部120が取得した画像データを表示する出力装置であり、例えば液晶ディスプレイモニタなどを採用することができる。なお、画像データは通信部350を介して受信する。
【0038】
入力部330は、情報処理端末300に対するユーザーの操作を受け付けるための各種入力手段であり、キーボード、マウス、タッチパネルディスプレイなど(いずれも図示せず)、所望の既知の入力手段を採用することができる。
【0039】
記憶部340は、RAM、ROMあるいはHDD(Hard Disk Drive)などの大容量記憶装置によって構成され、通信部350が受信した画像データなどを、ユーザーの指示によって記憶する。
【0040】
(システムを用いた皮膚内傷害検査)
次に、
図5に基づいて、本実施形態に係る皮膚内傷害検査システム1を用いて生体の皮膚内傷害の検査を行う方法について説明する。なお、以下で説明するのは、被検査者において早期の褥瘡が疑われる箇所を検査箇所とする場合であるが、本発明の検査対象は褥瘡のみに限られない。
【0041】
図5は、本実施形態に係る皮膚内傷害検査システム1により、生体の皮膚内傷害の検査を行う際の流れを示すフローチャートである。
図5に示すように、まず検査者は、被検査者の検査箇所に検査装置100のガラス板101を押し当て、検査箇所を軽く押圧する(ステップS101)。次に、検査者は検査装置100を押圧した状態で、コントロールユニット200の圧力値表示部220を確認し、圧力値が適切な値となるように押圧力を調節する(ステップS102)。
【0042】
なお、押圧力が弱すぎると、充血した血液を完全に排出させることができず、発赤残留の偽陽性となる虞があり、押圧する意義が薄れる。一方、押圧力が強すぎると、早期褥瘡及びその前段階における皮膚内傷害において、出血の一部が無理やりに周囲に押し出されて白くなるために偽陰性になる虞と、いたずらに傷を悪化させる虞がある。このため、適切な圧力値を、例えば従来からのガラス板圧診法を用いた実験などによって、予め取得しておくとよい。
【0043】
続いて、検査者は白色光源部130及びブルーライト光源部140から、それぞれの波長領域の光を検査箇所に向けて照射する(ステップS103)。これにより各照射光は、ガラス板101を透過して検査箇所に到達する。このようにして光が照射された状態の検査箇所を、撮影部110によって撮影する(ステップS104)。この際、撮影画像は、情報端末の画像表示部320に表示されるため、検査者(又は検査を補助する者)は必要に応じてコントロールユニット200を操作して、各光源の照明の強弱を調節するとよい。
【0044】
そして検査者は、上記のようにして適切な圧力で押圧され、白色光及びブルーライトで照射された検査箇所の画像に基づいて、検査箇所における褥瘡の有無及びその程度を判断する(ステップS105)。
【0045】
なお、上記の検査の流れにおいて、ステップS102とステップS103の処理は順番が入れ替わっても構わない。なお、撮影部110での撮影(ステップS104)も、常時行われているのであってもよい。
【0046】
上記のような本実施形態に係る皮膚内傷害検査システム1の構成により、適切な圧力で検査箇所を押圧することで充血した血液を排除した上で、ブルーライトと白色光によって照射された検査箇所の画像を取得することができるため、ノイズの少ない画像による皮膚内傷害の検査を行うことができる。このため、生体の皮膚内の傷害を早期に精度よく検出することができる。
【0047】
<実施形態2>
次に、
図6に基づいて、本発明の他の実施形態について説明する。
図6Aは、本実施形態に係る検査装置500の外観を示す概略図、
図6Bは本実施形態に係る検査装置500の機能構成を示すブロック図である。
【0048】
図6に示すように、本実施形態に係る検査装置500は、本体501にハンドル502を備えており、ハンドル502とは反対側にガラス板503を備えている。また、検査装置500は、制御部510、撮影部520、圧力センサ530、白色光源部541、ブルーライト光源部542、無線通信部550、圧力値表示部560、電源部570、入力部580の、各機能部を含んでいる。
【0049】
これらの構成要素のうち、撮影部520、圧力センサ530、白色光源部541、ブルーライト光源部542、については実施形態1の検査装置100と同様の機能であり、構成も同様であるため、詳細な説明は省略する。
【0050】
制御部510は、CPU(図示せず)などによって構成され、検査装置500各部の制御を司る。また、無線通信部550は無線通信の方式により、図示しない情報処理端末、その他の機器などと情報通信を行う。具体的には、撮影部520が撮影した画像を、外部の表示装置などに送信して、当該表示装置に検査箇所の画像を表示するようにしてもよい。なお、無線通信の方式は、例えばBluetooth(登録商標)、Wi-Fi(登録商標)、赤外線通信、などの既知の方式を採用することができ、無線通信部550はそれぞれの無線通信方式に対応したアンテナとすればよい。
【0051】
圧力値表示部560は、圧力センサ530が計測した圧力値をリアルタイムで表示する。また、電源部570は、検査装置500各部に電力を供給する電源であり、乾電池、蓄電池などの携帯可能なバッテリーを採用することができる。また、外部電源と電気的に接続可能な端子を設けてもよい。
【0052】
また、入力部580は、検査装置500自体の電源のON/OFF、白色光源部541、ブルーライト光源部542の発光の電源のON/OFF、光量の調節などについてのユーザーの入力を受け付ける操作部であり、所望のスイッチ、ボタンなどを採用することができる。また、タッチパネルディスプレイを採用して圧力値表示部560を兼ねるようにしてもよい。
【0053】
本実施形態に係る検査装置500を用いて、生体の皮膚内傷害の検査を行う場合には、ハンドル502を把持して、ガラス板503を検査箇所に押し当てて押圧する。そして、圧力値表示部560を確認し、圧力値が適切な値となるように押圧力を調節する。続けて白色光源部541及びブルーライト光源部542から、それぞれ検査箇所に向けて光を照射し、光が照射された状態の検査箇所を、撮影部520によって撮影する。撮影画像は無線通信部550によって、外部の表示装置(図示せず)に送信されるため、検査者は当該画像を参照して、皮膚内傷害の有無、その程度について判断を行う。
【0054】
上記のように、本実施形態に係る検査装置500は、実施形態1におけるコントロール
ユニット200の構成を全て組み込んだ構成となっている。このため、検査のために必要な機器を省略することができ、携帯性に優れた検査システムを構成することができる。
【0055】
(変形例)
次に、
図7に基づいて、実施形態2の検査装置の変形例について説明する。
図7Aは、本変形例に係る検査装置600の外観を示す概略図、
図7Bは本変形例に係る検査装置600の機能構成を示すブロック図である。
【0056】
図7に示すように、本変形例に係る検査装置600は、本体601にガングリップ型のハンドル603を備えており、ハンドル603とは反対側に、圧力センサ部630を介して、押圧部602を備えている。また、図示しないが、押圧部602には、ガラス板、光源回路、カメラが設けられている。
【0057】
また、検査装置600は、制御部610、撮影部620、圧力センサ部630、白色光源部641、ブルーライト光源部642、無線通信部650、表示部660、記憶部670、電源部680、入力部690の、各機能部を含んでいる。
【0058】
本変形例に係る検査装置600は、実施形態2の検査装置500と比べて、形態が大きく異なっている他、表示部660の機能が異なっている点、記憶部670を備えている点、が異なっている。その他の各機能部については検査装置500の場合と同様であるため、詳細な説明を省略する。
【0059】
検査装置600の表示部660は、圧力値のみならず、撮影部620によって取得された画像データも表示できる点に置いて、検査装置500の圧力値表示部560とは異なっている。また、記憶部670は、ROMやフラッシュメモリなどによって構成することができ、撮影部620が取得した画像データなどを記憶する。
【0060】
即ち、本変形例に係る検査装置600は、実施形態1に係る皮膚内傷害検査システム1の機能構成を全て備えている。このため、検査装置600のみで検査を完結させることができ、ユーザーの利便性を大きく向上させることができる。
【0061】
また、本変形例に係る検査装置600は、ガングリップ型のハンドル603を備えており、検査を行う際には、
図7A中の白矢印方向に向かって押し当てるように操作するため、保持し易く、操作性を向上させることができる。
【0062】
<実施形態3>
次に、
図8に基づいて、本発明のさらに他の実施形態について説明する。
図8は本実施形態に係る皮膚内傷害検査システム2の概略を示す図である。皮膚内傷害検査システム2は検査装置500、画像解析装置700、医師側端末800を含んで構成され、これらがネットワークN1によって相互に接続される。ネットワークN1には、例えば、インターネット等の世界規模の公衆通信網であるWAN(Wide Area Network)やその他の通信網が採用されてもよい。また、ネットワークN1は、携帯電話等の電話通信網、Wi-Fi等の無線通信網を含んでもよい。
【0063】
検査装置500は、実施形態2において説明したものと同様の構成であるため、説明は省略する。画像解析装置700は、CPU、RAM、ROMなどを備えるコンピュータとして構成することができ、後述するように例えばディープラーニングの手法によって学習されたAIによる画像解析を行う機能を有する。医師側端末800は、医師が随時アクセス可能な情報処理端末である。据置型の端末であってもよいが、例えば、ノートパソコン、タブレット端末、などの可搬型の端末であってもよい。また、スマートフォンなど、医
師が常時携帯することが可能な情報処理端末であってもよい。
【0064】
皮膚内傷害検査システム2においては、検査装置500を用いて検査された検査対象の画像及び検査時の圧力値が、ネットワークN1を介して、画像解析装置700、及び/又は、医師側端末800に送信される。
【0065】
画像解析装置700には、予め検査の結果が出た(例えば、医師による診断が確定した)検査箇所の画像(以下、既検査画像ともいう)を複数用いて、当該画像から抽出される特徴量と、検査結果(皮膚内傷害の有無及び程度)を教師データとして機械学習を行った学習済みモデルが実装されている。なお、教師データとして画像取得時の圧力値をさらに用いてもよい。
【0066】
上記の学習済モデルは、具体的には、入力された検査画像に基づいて、皮膚内傷害の有無及び程度に関して定量化した値を出力するようコンピュータを機能させるためのものであり、第1のニューラルネットワークと、第1のニューラルネットワークからの出力が入力されるように結合された第2のニューラルネットワークと、から構成される。
【0067】
画像解析装置700は、学習済みモデルからの指令に従って第1のニューラルネットワークの入力層に入力された入力データ(例えば、検査画像データから得られる、所定の値
以下の輝度値を有する画素の量)に対し、第1及び第2のニューラルネットワークにおけ
る学習済みの重み付け係数と応答関数等に基づく演算を行い、第2のニューラルネットワークの出力層から結果(皮膚内傷害の有無及び程度について定量化した値、例えば「ステ
ージ2」といった値)を出力するように動作する。
【0068】
そして、上記のようにして出力された結果が、ネットワークN1を介して、検査装置500、及び/又は、医師側端末800に送信される。なお、この際に入力された入力データ及び出力結果をさらに教師データとして、学習済みモデルを更新するようになっていてもよい。
【0069】
このような画像解析装置700の判定結果を参照することで、被検査者の治療・介護を行う者は、医師の診断を仰ぐことができない状況であっても、対応の指針を得る事ができる。
【0070】
また、医師側端末800は、検査装置500から送信された検査画像及び圧力値を受信し、これを医師の指示に基づいて表示させる。これにより、医師は当該検査画像及び圧力値に基づいて、遠隔地にいる被検査者の皮膚内傷害の有無及び程度について診断を行うことが可能になる。
【0071】
当該医師の診断結果は、ネットワークN1を介して検査装置500、及び/又は、画像解析装置700に送信される。画像解析装置700は、このようにして送信された、診断結果と、診断対象の画像データとを更に教師データとすることができる。
【0072】
これによって、へき地などの医療従事者がいない場所であっても、あるいは在宅医療・介護を行っている場合であっても、皮膚内傷害の有無及び程度について医師の診断を仰ぐことが可能になる。
【0073】
<その他>
上記の各例の説明は、本発明を例示的に説明するものに過ぎず、本発明は上記の具体的な形態には限定されない。本発明は、その技術的思想の範囲内で種々の変形及び組み合わせが可能である。
【0074】
例えば、上記の各実施形態においては、圧力センサにより検査装置を検査箇所に押し付ける際の押圧力を圧力センサにより計測し、この値を参照しながら、適切な押圧力となるように調整できるようにしていたが、必ずしもこのようにする必要は無い。具体的には、圧力センサに代えて、或いは圧力センサと併せて、適切な圧力を加えた際に限界まで収縮するようなバネ定数を有するバネを設けるようにしてもよい。このようにすると、検査者はバネが縮み切ったことをもって適切な圧力を加えていることを把握することができる。このため、誰であっても適切な圧力を加えて検査を行うことが可能になる。
【符号の説明】
【0075】
1、2・・・皮膚内傷害検査システム
100、500、600・・・検査装置
101、503・・・ガラス板
102・・・ガラスホルダー
103・・・圧力センサ保持部
104・・・光源回路
105・・・カメラ
106・・・カメラホルダー
107・・・デバイスホルダー
108・・・キャップ
109・・・ケーブル口
200・・・コントロールユニット
300・・・情報処理端末
501、601・・・本体
502、603・・・ハンドル
602・・・押圧部
700・・・画像解析装置
800・・・医師側端末