(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-23
(45)【発行日】2023-03-31
(54)【発明の名称】電圧計測装置
(51)【国際特許分類】
G01R 19/00 20060101AFI20230324BHJP
【FI】
G01R19/00 A
(21)【出願番号】P 2019081129
(22)【出願日】2019-04-22
【審査請求日】2022-01-19
(73)【特許権者】
【識別番号】301021533
【氏名又は名称】国立研究開発法人産業技術総合研究所
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 章夫
(72)【発明者】
【氏名】藤本 淳
【審査官】菅藤 政明
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-109474(JP,A)
【文献】特開2016-195096(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 19/00-19/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電線の表面に設けられた検出電極と前記電線を構成する導体との間に生じるインピーダンスを利用して、前記導体を流れる交流電流の
前記電線間における電圧を
算出する電圧計測装置であって、
基準電位を設定するための電圧源と
、前記交流電流の第一の中性点
が前記基準電位とされ
、各々の前記電線と前記第一の中性点との間でインピーダンスを有するY結線
第一回路と、前記交流電流の第二の中性点
が前記基準電位とされ
、各々の前記電線と前記第二の中性点との間でインピーダンスを有するY結線
第二回路を含み、前記Y結線
第二回路
における各インピーダンスの両端電圧を計測する電圧計測部と、
前記電圧計測部により計測された前記両端電圧の値から前記交流電流の
前記電線間
における電圧を算出する電圧算出部を備えた電圧計測装置。
【請求項2】
電線の表面に設けられた検出電極と前記電線を構成する導体との間に生じるインピーダンスを利用して、前記導体を流れる交流電流の
前記電線間における電圧を
算出する電圧計測装置であって、
基準電位を設定するための電圧源と、前記
電線間のそれぞれにおいてインピーダンスを有するデルタ結
線回路と、前記交流電流の中性点
が前記基準電位とされ
、各々の前記電線と前記中性点との間でインピーダンスを有するY結
線回路を含み、前記Y結
線回路
における各インピーダンスの両端電圧を計測する電圧計測部と、
前記電圧計測部により計測された前記両端電圧の値から前記交流電流の
前記電線間
における電圧を算出する電圧算出部を備えた電圧計測装置。
【請求項3】
前記Y結線
第二回路
、若しくは前記Y結線回路における各インピーダンスは、独立した素子のインピーダンス、若しくは電圧を計測する回路の入力インピーダンスである、請求項1又は2に記載の電圧計測装置。
【請求項4】
前記電圧源の電圧はゼロである、請求項1又は2に記載の電圧計測装置。
【請求項5】
前記交流電流は三相交流電流であり、前記電線は三線からなる、請求項1から4のいずれかに記載の電圧計測装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、交流電圧を計測する装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
これまでに、測定対象に対して非接触な状態で交流電圧や電力を測定する技術が種々考案されており、例えば特許文献1には非接触型の電力測定装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に示された上記の電力測定装置では、同文献の
図3に記されているように、参照電圧Vrefやフィードバック型の制御回路CNT1が用いられているため、消費電力が大きいという課題がある。
【0005】
本発明は、このような課題を解決するためになされたもので、参照電圧を発生させるための装置やそれを制御する回路を必要とせず、消費電力が抑えられた電圧計測装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明は、電線の表面に設けられた検出電極と上記電線を構成する導体との間に生じるインピーダンスを利用して、上記導体を流れる交流電流の電圧を計測する電圧計測装置であって、基準電位を設定するための電圧源と、上記電圧を分圧し、交流電流の第一の中性点が上記電圧源により設定された上記基準電位とされたY結線分圧回路と、交流電流の第二の中性点が上記電圧源により設定された上記基準電位とされたY結線インピーダンス回路を含み、Y結線インピーダンス回路を構成する各インピーダンスの両端電圧を計測する電圧計測部と、電圧計測部により計測された上記両端電圧の値から交流電流の線間電圧を算出する電圧算出部を備えた電圧計測装置を提供する。
【0007】
また、上記課題を解決するため、本発明は、電線の表面に設けられた検出電極と上記電線を構成する導体との間に生じるインピーダンスを利用して、上記導体を流れる交流電流の電圧を計測する電圧計測装置であって、基準電位を設定するための電圧源と、上記電圧を分圧するデルタ結線分圧回路と、交流電流の中性点が上記電圧源により設定された上記基準電位とされたY結線インピーダンス回路を含み、Y結線インピーダンス回路を構成する各インピーダンスの両端電圧を計測する電圧計測部と、電圧計測部により計測された上記両端電圧の値から交流電流の線間電圧を算出する電圧算出部を備えた電圧計測装置を提供する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、消費電力が抑えられた電圧計測装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の実施の形態1に係る電圧計測装置1の全体構成を示すブロック図である。
【
図2】
図1に示された交流電源Avが三相交流電源である場合における電圧計測部4の構成を示す図である。
【
図3】既存の交流電圧計測回路の構成を示す図である。
【
図4】
図2に示された電圧計測部4における対地浮遊容量の影響を説明するための第一の図である。
【
図5】
図2に示された電圧計測部4における対地浮遊容量の影響を説明するための第二の図である。
【
図6】
図1に示された交流電源Avが三相交流電源である場合における本発明の実施の形態2に係る電圧計測装置に含まれた電圧計測部4Aの構成を示す図である。
【
図7】
図6に示された電圧計測部4Aにおける対地浮遊容量の影響を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下において、本発明の実施の形態を図面を参照しつつ詳しく説明する。なお、図中同一符号は同一又は相当部分を示す。
【0011】
[実施の形態1]
図1は、本発明の実施の形態1に係る電圧計測装置1の全体構成を示すブロック図である。
図1に示された電圧計測装置1は、電線Lの表面に設けられた検出電極と電線Lを構成する導体との間に生じるインピーダンスを利用して、電線Lを流れる交流電流の電圧を計測するものである。
【0012】
本発明の実施の形態1に係る電圧計測装置1は、接地された交流電源Avに電線Lを介して接続された入力端子2と、バス3と、入力端子2に接続された電圧計測部4と、バス3を介して電圧計測部4に接続された電圧算出部5、記憶部6、及び表示部7を備える。
【0013】
図2は、
図1に示された交流電源Avが例えば三相交流電源である場合における電圧計測部4の構成を示す図である。
図2において、Za,Zb,Zcはそれぞれ、各相における上記検出電極と電線La,Lb,Lcを構成する導体との間のインピーダンスを示す。また、Ea,Eb,Ecはそれぞれ、三相交流の線間電圧、すなわち電線La,Lb間、電線Lb,Lc間、電線Lc,La間の線間電圧を示す。なお、線間電圧Ea,Eb,Ecの和は常にゼロとなる。
【0014】
また、
図2において、Ia,Ib,Icはそれぞれ、各相の電線La,Lb,Lcを流れる電流を示す。また、Vab,Vbc,Vcaはそれぞれ、ノードna,nb間、ノードnb,nc間、ノードnc,na間の電圧を示し、Van,Vbn,Vcnはそれぞれ、ノードna,n2間、ノードnb,n2間、ノードnc,n2間の電圧を示す。
【0015】
図2に示されるように、電圧計測部4は、中性点であるノードnに基準電位を設定するための電圧源E0と、計測対象となる電圧を分圧し、当該交流電流の第一の中性点(ノードn1)が、ノードnに接続されることにより上記基準電位とされたY結線分圧回路と、上記交流電流の第二の中性点(ノードn2)が、ノードnに接続されることにより上記基準電位とされたY結線インピーダンス回路を含む。なお、以下では、電圧源E0の電圧がゼロである場合について説明する。
【0016】
ここで、上記Y結線分圧回路は、ノードna,n1間に接続されインピーダンスZ1を有する第一の素子と、ノードnb,n1間に接続されインピーダンスZ2を有する第二の素子と、ノードnc,n1間に接続されインピーダンスZ3を有する第三の素子により構成される。
【0017】
また、上記Y結線インピーダンス回路は、ノードna,n2間に接続されインピーダンスZ4を有する第四の素子と、ノードnb,n2間に接続されインピーダンスZ5を有する第五の素子と、ノードnc,n2間に接続されインピーダンスZ6を有する第六の素子により構成される。なお、本Y結線インピーダンス回路は、上記のように第四から第六の独立した素子により構成する他、ノードna,n2間の電圧、ノードnb,n2間の電圧、ノードnc,n2間の電圧を計測する差動アンプ等の計測回路の入力インピーダンスを利用するようにしてもよい。
【0018】
上記のような構成を有する電圧計測部4は、上記Y結線インピーダンス回路を構成する各インピーダンスZ4~Z6の両端の電圧Van,Vbn,Vcnを計測する。
【0019】
図1に示された電圧算出部5は、上記電圧Van,Vbn,Vcnの値に基づいて、以下のような方法により当該交流電圧、より具体的には線間電圧Ea,Eb,Ecを算出する。
【0020】
インピーダンスZ1,Z4の並列結合インピーダンスをZ1y、インピーダンスZ2,Z5の並列結合インピーダンスをZ2y、インピーダンスZ3,Z6の並列結合インピーダンスをZ3yとすると、電圧Van,Vbn,Vcnの値はそれぞれ、インピーダンスZ1yと電流Iaの積、インピーダンスZ2yと電流Ibの積、インピーダンスZ3yと電流Icの積となる。このとき、電圧Van,Vbn,Vcnと線間電圧Ea,Eb,Ecの関係は、以下の式(1)から(3)のように示される。
【0021】
【0022】
【0023】
【0024】
なお、インピーダンスZ
1y,Z
2y,Z
3yは、それぞれ以下の値となる。
【数4】
【0025】
また、電流Ia,Ib,Icの和がゼロになるという関係を利用して電圧Vcnを消去すると、線間電圧Ebは電圧Van,Vbnのみを用いて次式のように表すこともできる。
【0026】
【0027】
以上より、電圧算出部5は、上記の式(1)~(3)、又は式(1),(3),(5)を用いて線間電圧Ea,Eb,Ecを算出する。
【0028】
次に、上記電圧計測装置1は、対地浮遊容量に起因した計測精度の低下を抑えることができる点について説明する。
【0029】
図3は、電力系統10、検出電極11、及びセンサー分圧回路12からなる既存の交流電圧計測回路の構成を示す図である。電力系統10は線間電圧Ea,Eb,Ecの三相交流であり、各相における電線導体と検出電極間の容量結合の値をそれぞれ、値Ca,Cb,Ccとする。また、センサー分圧回路12は、上記各相における電線導体間に接続された容量値が値C
1,C
2,C
3の分圧用コンデンサからなる。
【0030】
上記のような構成を有する交流電圧計測回路において、電力系統10はノードnBで接地され、センサー分圧回路12のシグナルグラウンドはノードnbとされる。このとき、電力系統10の線間電圧Eaは、センサー分圧回路12における電圧Vab,Vbc,Vcaにより次式を用いて算出することができる。
【0031】
【0032】
実際には、
図3に示されるような対地浮遊容量Cfが存在するため、ノードnB,nb間の静電容量値は値Cbではなく、値Cbの電極静電容量と対地浮遊容量Cfの並列結合の値となる。ここで、電極静電容量は通常数pF程度の大きさであるのに対して、未知である対地浮遊容量の大きさはその数十から数百倍にもなり得る。このため、
図3に示された交流電圧計測回路では、上式(6)における値Cbに誤差が生じることからも分かるように、計測された交流電圧に大きな誤差を発生させてしまう。
【0033】
これに対し、上記実施の形態1に係る電圧計測装置1において、シグナルグラウンドと大地間に浮遊容量Cfが存在する場合の影響について説明する。三相交流の一相が大地に接地されている場合、jを虚数単位、ωを計測対象となる交流電流の角速度とすると、
図4に示されるようにノードnB,n間にインピーダンスZf(=1/jωCf)が並列接続されることになる。このとき、線間電圧Ea,Ebはそれぞれ次式(7),(8)により算出される。
【0034】
【0035】
【0036】
ここで、Z
Bnは
図5に示されたノードnB,n間のインピーダンスであり、次式により示される。なお、
図5では、
図2に示されたインピーダンスZ2,Z5により並列結合インピーダンスZ
2yが形成される部分4pが破線の枠で示されている。
【0037】
【0038】
また、
図4における電流Ia,Ib,Ic,Ib1,Ib2間には、次式の関係が成立する。
【0039】
【0040】
このことから、電流Ibは次式により表すことができる。
【0041】
【0042】
式(11)を上記の式(7),(8)に代入すると、それぞれ次式(12),(13)を得ることができる。
【0043】
【0044】
【0045】
ここで、式(12),(13)はそれぞれ、上記の式(1),(2)と一致することから、上記のような浮遊容量が存在する場合であっても、実施の形態1に係る電圧計測装置1は、当該交流電圧の計測精度において何らの影響も受けないことが分かる。
【0046】
次に、
図2に示された電圧計測部4において、各相の検出電極と電線導体間のインピーダンスが等しい大きさの静電容量Caのみからなり、Y結線分圧回路が静電容量C
1を有する等しいコンデンサからなり、Y結線インピーダンス回路のインピーダンスが等しい、すなわち以下の関係が成立する場合について説明する。
【0047】
【0048】
式(14)の関係が成立する場合には、上記の式(1),(2)はそれぞれ、次式(15),(16)と表記することができる。
【0049】
【0050】
【0051】
さらに、次式の関係が成立する場合には、式(1),(2)で示された線間電圧Ea,Ebはそれぞれ式(18),(19)と表すことができる。
【0052】
【0053】
【0054】
【0055】
ここで、式(18),(19)及び式(3)から、上記のような条件下では三相交流電圧(線間電圧)が測定電圧の差の定数倍となることが分かる。
【0056】
また、この場合には、
図1に示された電圧計測部4は、
図2に示されたノードna,nb間の線間電圧Vabとノードnb,nc間の線間電圧Vbcを計測し、
図1に示された電圧算出部5は上記計測により得られた線間電圧Vab,Vbcの値から式(18),(19)及び式(3)を利用して三相交流電圧、すなわち線間電圧Ea,Eb,Ecを算出するようにしてもよい。
【0057】
以上より、本発明の実施の形態1に係る電圧計測装置1によれば、以下の効果を得ることができる。
【0058】
第一に、計測対象とされる三相交流電流が流れる全ての線との接続が容量結合とされるため、電力系統に直接接続するための工事が不要であり、安全かつ容易に設置することができる。
【0059】
第二に、三相交流電流の各相における電圧(線間電圧Ea,Eb,Ec)を同時に得ることができる。
【0060】
第三に、参照電圧を発生させるための装置やそれを制御する回路を必要としないため、消費電力を抑えることができる。なお、消費電力を抑えることによって、電圧計測装置1を駆動するためのエネルギー源として電池を使用する場合にはその交換頻度を下げることができ、また再生可能エネルギーを利用する場合には最低限必要な設置環境の基準を下げることにより汎用性を高めることができる。
【0061】
第四に、対地浮遊容量が存在する場合においても、計測精度の低下を小さく抑えることができる。
【0062】
[実施の形態2]
本発明の実施の形態2に係る電圧計測装置は、
図1に示された電圧計測装置1と同様な構成を有するため、以下においては相違点についてだけ説明し、共通する部分については説明を省略する。
【0063】
図6は、
図1に示された交流電源Avが三相交流電源である場合における本発明の実施の形態2に係る電圧計測装置に含まれた電圧計測部4Aの構成を示す図である。
図6において、Za,Zb,Zcはそれぞれ、各相における上記検出電極と電線La,Lb,Lcを構成する導体との間のインピーダンスを示す。また、Z4,Z5,Z6はそれぞれ、後述するY結線インピーダンス回路を構成する各素子のインピーダンス、Z7,Z8,Z9はそれぞれ、後述するデルタ結線分圧回路を構成する各素子のインピーダンスを示す。また、Ea,Eb,Ecはそれぞれ、三相交流の線間電圧、すなわち電線La,Lb間、電線Lb,Lc間、電線Lc,La間の線間電圧を示す。なお、線間電圧Ea,Eb,Ecの和は常にゼロとなる。
【0064】
また、
図6において、Ia,Ib,Ic,I4,I5,I6,Iab,Ibc,Icaはそれぞれ、電線La,Lb,Lc、インピーダンスZ4,Z5,Z6
,Z7,Z8,Z9を流れる電流を示す。また、Vab,Vbc,Vcaはそれぞれ、ノードna,nb間、ノードnb,nc間、ノードnc,na間の電圧を示し、Van,Vbn,Vcnはそれぞれ、ノードna,n間、ノードnb,n間、ノードnc,n間の電圧を示す。
【0065】
図6に示されるように、電圧計測部4Aは、中性点であるノードnに基準電位を設定するための電圧源E0と、計測対象となる電圧を分圧するデルタ結線分圧回路と、交流電流の中性点(ノードn)が上記基準電位とされたY結線インピーダンス回路を含む。なお、以下では、電圧源E0の電圧がゼロである場合について説明する。
【0066】
ここで、上記デルタ結線分圧回路は、ノードna,nb間に接続されインピーダンスZ7を有する第一の素子と、ノードnb,nc間に接続されインピーダンスZ8を有する第二の素子と、ノードnc,na間に接続されインピーダンスZ9を有する第三の素子により構成される。
【0067】
また、上記Y結線インピーダンス回路は、ノードna,n間に接続されインピーダンスZ4を有する第四の素子と、ノードnb,n間に接続されインピーダンスZ5を有する第五の素子と、ノードnc,n間に接続されインピーダンスZ6を有する第六の素子により構成される。なお、本Y結線インピーダンス回路は、上記のように第四から第六の独立した素子により構成する他、ノードna,n間の電圧、ノードnb,n間の電圧、ノードnc,n間の電圧を計測する差動アンプ等の計測回路の入力インピーダンスを利用するようにしてもよい。
【0068】
上記のような構成を有する電圧計測部4Aは、上記Y結線インピーダンス回路を構成する各インピーダンスZ4~Z6の両端の電圧Van,Vbn,Vcnを計測する。なお、これらの電圧Van,Vbn,Vcnはそれぞれ、インピーダンスZ4と電流I4の積、インピーダンスZ5と電流I5の積、インピーダンスZ6と電流I6の積に該当する。
【0069】
図1に示された電圧算出部5は、上記電圧Van,Vbn,Vcnの値に基づいて、以下の式を用いて当該交流電圧、より具体的には線間電圧Ea,Eb,Ecを算出する。
【0070】
【0071】
【0072】
また、以下の関係が成立する。
【0073】
【0074】
【0075】
ここで、式(22),(23)を式(20),(21)に代入すると、次式を得ることができる。
【0076】
【0077】
【0078】
以上より、電圧算出部5は、上記の式(24),(25)、及び式(3)を用いて線間電圧Ea,Eb,Ecを算出する。
【0079】
次に、上記実施の形態1に係る電圧計測装置1と同様に、
図6に示された電圧計測部4Aにおいてシグナルグラウンドと大地間に浮遊容量Cfが存在する場合の影響について説明する。三相交流の一相が大地に接地されている場合、jを虚数単位、ωを計測対象となる交流電流の角速度とすると、
図7に示されるようにノードnB,n間にインピーダンスZf(=1/jωCf)が並列接続されることになる。このとき、線間電圧Ea,Ebはそれぞれ次式(26),(27)により算出される。
【0080】
【0081】
【0082】
また、式(22)が成立し、式(23)は以下のようになる。
【0083】
【0084】
ここで、式(22),(28)を式(26),(27)に代入すると、線間電圧Ea,Ebはそれぞれ、式(24),(25)と一致することから、上記浮遊容量に全く影響されずに算出されることが分かる。
【0085】
次に、
図6に示された電圧計測部4Aにおいて、各相の検出電極と電線導体間のインピーダンスが等しい大きさの静電容量Caのみからなり、デルタ結線分圧回路が静電容量C
7を有する等しいコンデンサからなり、Y結線インピーダンス回路のインピーダンスが等しい、すなわち以下の関係が成立する場合について説明する。
【0086】
【0087】
このとき、式(24),(25)はそれぞれ以下のようになる。
【0088】
【0089】
【0090】
さらに、次式の関係が成立する場合、線間電圧Ea,Ebはそれぞれ式(33),(34)のように表すことができる。
【0091】
【0092】
【0093】
【0094】
ここで、式(33),(34)及び式(3)から、上記のような条件下では三相交流電圧(線間電圧)が測定電圧の差の定数倍となることが分かる。
【0095】
また、この場合には、
図6に示された電圧計測部4Aは、
図6に示されたノードna,nb間の線間電圧Vabとノードnb,nc間の線間電圧Vbcを計測し、
図1に示された電圧算出部5は上記計測により得られた線間電圧Vab,Vbcの値から式(33),(34)及び式(3)を利用して線間電圧Ea,Eb,Ecを算出するようにしてもよい。
【0096】
以上より、本発明の実施の形態2に係る電圧計測装置によっても、上記実施の形態1に係る電圧計測装置1と同様な効果を得ることができる。
【符号の説明】
【0097】
1 電圧計測装置、4,4A 電圧計測部、5 電圧算出部、E0 電圧源、L,La,Lb,Lc 電線、n,n1,n2 ノード、Z1~Z9 インピーダンス。