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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-23
(45)【発行日】2023-03-31
(54)【発明の名称】合わせガラス
(51)【国際特許分類】
   C03C 27/12 20060101AFI20230324BHJP
   B32B 17/10 20060101ALI20230324BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20230324BHJP
   B32B 27/30 20060101ALI20230324BHJP
   C08F 297/04 20060101ALI20230324BHJP
【FI】
C03C27/12 F
C03C27/12 L
B32B17/10
B32B27/00 101
B32B27/00 104
B32B27/30 B
C08F297/04
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2019201770
(22)【出願日】2019-11-06
(62)【分割の表示】P 2017089617の分割
【原出願日】2015-07-07
(65)【公開番号】P2020045279
(43)【公開日】2020-03-26
【審査請求日】2019-12-06
【審判番号】
【審判請求日】2022-03-04
(31)【優先権主張番号】P 2014141535
(32)【優先日】2014-07-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2015037438
(32)【優先日】2015-02-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000229117
【氏名又は名称】日本ゼオン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】100167623
【弁理士】
【氏名又は名称】塚中 哲雄
(72)【発明者】
【氏名】小原 禎二
(72)【発明者】
【氏名】千葉 大道
【合議体】
【審判長】粟野 正明
【審判官】井上 猛
【審判官】羽鳥 友哉
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2013/176258(WO,A1)
【文献】特開平06-211549(JP,A)
【文献】実開昭58-140137(JP,U)
【文献】特開2008-303084(JP,A)
【文献】特開2013-209234(JP,A)
【文献】特開2009-51713(JP,A)
【文献】特開2008-230894(JP,A)
【文献】特開2010-18505(JP,A)
【文献】特開2012-250891(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03C 27/12
B32B 1/00-43/00
C08C 19/00-19/44
C08F 6/00-283/00,283/02-289/00,291/00-297/08,301/00
B29C 64/00-64/40,67/00-67/08,69/00-69/02,73/00-73/34
B29D 1/00-7/01,11/00-29/10,33/00,99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のガラス板、第1の中間膜、熱線反射膜を積層した透明フィルム、第2の中間膜、及び第2のガラス板の順に積層してなる合わせガラスの製造方法であって、前記第1の中間膜及び第2の中間膜は、エンボスパターン付きのキャストロールを用いて押出し成形されたものであって、
前記第1の中間膜及び第2の中間膜は、いずれも変性ブロック共重合体水素化物[E]から形成されたものであり、
前記変性ブロック共重合体水素化物[E]は、ブロック共重合体[C]の、全不飽和結合の90%以上を水素化したブロック共重合体水素化物[D]に、アルコキシシリル基が導入されたものであり、
前記ブロック共重合体[C]は、芳香族ビニル化合物由来の繰り返し単位を主成分とする少なくとも2つの重合体ブロック[A]と、鎖状共役ジエン化合物由来の繰り返し単位を主成分とする少なくとも1つの重合体ブロック[B]とからなり、全重合体ブロック[A]のブロック共重合体全体に占める重量分率をwAとし、全重合体ブロック[B]のブロック共重合体全体に占める重量分率をwBとしたときに、wAとwBとの比(wA:wB)が30:70~60:40であること、
前記透明フィルムはポリエステル樹脂、アクリル樹脂、シクロオレフィンポリマー、ポリカーボネート、ポリエーテルスルフォン、ポリアリレート、ナイロンのいずれかからなるフィルムであること、
前記熱線反射膜を積層した透明フィルムの端が、第1及び第2のガラス板の端に対して全周囲に亘って2mm以上5mm以下に離れて配置されていること、を特徴とし、
第1のガラス板、第1の中間膜、熱線反射膜を積層した透明フィルム、第2の中間膜、第2のガラス板をこの順に重ね、減圧可能な耐熱性のゴム袋に入れて脱気後、オートクレーブを使用して、加熱加圧下で接着させる、
合わせガラスの製造方法。
【請求項2】
第1のガラス板、第1の中間膜、熱線反射膜を積層した透明フィルム、第2の中間膜、及び第2のガラス板の順に積層してなる合わせガラスの製造方法であって、
前記第1の中間膜及び第2の中間膜は、エンボスパターン付きのキャストロールを用いて押出し成形されたものであって、
前記第1の中間膜及び第2の中間膜は、いずれも変性ブロック共重合体水素化物[E]から形成されたものであり、
前記変性ブロック共重合体水素化物[E]は、ブロック共重合体[C]の、全不飽和結合の90%以上を水素化したブロック共重合体水素化物[D]に、アルコキシシリル基が導入されたものであり、
前記ブロック共重合体[C]は、芳香族ビニル化合物由来の繰り返し単位を主成分とする少なくとも2つの重合体ブロック[A]と、鎖状共役ジエン化合物由来の繰り返し単位を主成分とする少なくとも1つの重合体ブロック[B]とからなり、
全重合体ブロック[A]のブロック共重合体全体に占める重量分率をwAとし、全重合体ブロック[B]のブロック共重合体全体に占める重量分率をwBとしたときに、
wAとwBとの比(wA:wB)が30:70~60:40であり、
前記透明フィルムはポリエステル樹脂、アクリル樹脂、シクロオレフィンポリマー、ポリカーボネート、ポリエーテルスルフォン、ポリアリレート、ナイロンのいずれかからなるフィルムであり、
a.前記熱線反射膜を積層した透明フィルムが、第1及び第2のガラス板の面積より小さい面積を有し、
b.前記熱線反射膜を積層した透明フィルムが、第1及び第2の中間膜の面積より小さい面積を有し、
c.前記熱線反射膜を積層した透明フィルムの端が、第1及び第2のガラス板の端に対して全周囲に亘って2mm以上5mm以下に離れて配置され、
d.前記熱線反射膜を積層した透明フィルムの端が、第1及び第2の中間膜の端に対して全周囲に亘って2mm以上離れて配置されており、
e.前記熱線反射膜を積層した透明フィルムが、第1及び第2の中間膜に包埋された状態であり、第1のガラス板、第1の中間膜、熱線反射膜を積層した透明フィルム、第2の中間膜、第2のガラス板をこの順に重ね、減圧可能な耐熱性のゴム袋に入れて脱気後、オートクレーブを使用して、加熱加圧下で接着させる、
合わせガラスの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラス板、中間膜、熱線反射フィルム、中間膜、ガラス板がこの順に積層されてなる合わせガラスであって、特定の材料からなる中間膜を使用した、耐湿性及び耐久性に優れる合わせガラスに関する。
【背景技術】
【0002】
熱線反射機能を有する合わせガラスは、熱線の入射を防ぎ、夏場の冷房効果を高め、省エネルギー化にも効果があるため、自動車の窓ガラスや建築物の窓ガラス等として有用である(特許文献1~3)。
【0003】
熱線反射機能を有する合わせガラスとしては、熱線反射膜をガラスに積層した構造のものと、熱線反射膜を積層した透明フィルムをガラス板間に挟み込んだ構造のものがある。後者の合わせガラスは、熱線反射膜を積層した透明フィルムが連続生産できる点で量産性に優れ、工業的に有利である。
しかしながら、従来の熱線反射膜を積層した透明フィルムを挟み込んだ構造の合わせガラスは、自動車用安全ガラスに要求される、温度50℃、湿度95%RHの環境下での耐久性試験を行うと、変色や合わせガラス端部から熱線反射膜を積層した透明フィルムの白化等が生じ、耐久性に劣るものであった。
【0004】
この問題を解決するために、特許文献3には、合わせガラスの端部全体をシール材で包み込んでなる合わせガラスが提案されている。
しかし、この文献に記載の合わせガラスは、フレームに固定する窓には適用可能であるが、自動車窓のようにガラス板自体が開閉する場合は、シール材の厚さが十分でなく、防湿効果が得難い場合があった。
【0005】
また、特許文献4には、ガラスの端から熱線反射膜の端を後退させて蒸着し、ガラス端部に膜無し領域を設けたガラスを使用する熱線反射合わせガラスが、特許文献5には、熱線反射膜を積層したフィルムの端が、ガラス板の端から中央側に後退して、ガラス端部に熱線反射膜を積層したフィルムの無い領域を設けた合わせガラスが、それぞれ開示されている。
しかし、これらの文献に記載の合わせガラスは、合わせガラスの貼り合わせに、ポリビニルブチラール膜、エチレン・酢酸ビニル共重合体膜、ポリウレタン膜等の、吸湿性や透湿度の高い中間膜を使用するものであるため、より厳しい高温高湿環境下やより長期間の使用において、ガラスの端部から水分が浸透し、周辺部分に白化が生じ易く、耐久性が必ずしも十分なものとは言えなかった。
【0006】
一方、特許文献6には、特定のブロック共重合体水素化物にアルコキシシリル基が導入された変性ブロック共重合体水素化物からなる中間膜を使用した合わせガラスが提案されている。そこでは、中間膜は、耐熱性、低吸湿性等に優れ、高温高湿環境に暴露された後でも、ガラスとの強固な接着性を維持することができることや、熱線反射ガラスを使用できることが記載されている。
しかしながら、この文献には、熱線反射膜を積層したフィルムの封入やその方法は記載されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開昭56-32352号公報
【文献】特開昭63-134232号公報
【文献】特開平7-157344号公報
【文献】特開2000-7389号公報
【文献】WO2009/087869号パンフレット(US2010/0285280 A1)
【文献】WO2013/176258号パンフレット(US2015/0104654A1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、かかる従来技術の実情に鑑みてなされたものであり、従来の熱線反射機能を有する合わせガラスの問題点、即ち、耐湿性及び耐久性の問題を解決し、実用面においても優れた特性を有する合わせガラスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意検討した結果、第1のガラス板、第1の中間膜、熱線反射膜を積層した透明フィルム、第2の中間膜、及び第2のガラス板の順に積層してなる合わせガラスであって、前記第1及び第2の中間膜として、特定のブロック共重合体水素化物[D]にアルコキシシリル基が導入された変性ブロック共重合体水素化物[E]から形成されたものを使用した合わせガラスは、優れた熱線反射機能を有し、かつ、耐湿性及び耐久性に優れることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
かくして本発明によれば、下記(1)、(2)の合わせガラスが提供される。
(1)第1のガラス板、第1の中間膜、熱線反射膜を積層した透明フィルム、第2の中間膜、及び第2のガラス板の順に積層してなる合わせガラスであって、
前記第1の中間膜及び第2の中間膜は、いずれも変性ブロック共重合体水素化物[E]から形成されたものであり、
前記変性ブロック共重合体水素化物[E]は、ブロック共重合体[C]の、全不飽和結合の90%以上を水素化したブロック共重合体水素化物[D]に、アルコキシシリル基が導入されたものであり、
前記ブロック共重合体[C]は、芳香族ビニル化合物由来の繰り返し単位を主成分とする少なくとも2つの重合体ブロック[A]と、鎖状共役ジエン化合物由来の繰り返し単位を主成分とする少なくとも1つの重合体ブロック[B]とからなり、
全重合体ブロック[A]のブロック共重合体全体に占める重量分率をwAとし、全重合体ブロック[B]のブロック共重合体全体に占める重量分率をwBとしたときに、
wAとwBとの比(wA:wB)が30:70~60:40である
ことを特徴とする合わせガラス。
【0011】
(2)第1のガラス板、第1の中間膜、熱線反射膜を積層した透明フィルム、第2の中間膜、及び第2のガラス板の順に積層してなる合わせガラスであって、
前記第1の中間膜及び第2の中間膜は、いずれも変性ブロック共重合体水素化物[E]から形成されたものであり、
前記変性ブロック共重合体水素化物[E]は、ブロック共重合体[C]の、全不飽和結合の90%以上を水素化したブロック共重合体水素化物[D]に、アルコキシシリル基が導入されたものであり、
前記ブロック共重合体[C]は、芳香族ビニル化合物由来の繰り返し単位を主成分とする少なくとも2つの重合体ブロック[A]と、鎖状共役ジエン化合物由来の繰り返し単位を主成分とする少なくとも1つの重合体ブロック[B]とからなり、
全重合体ブロック[A]のブロック共重合体全体に占める重量分率をwAとし、全重合体ブロック[B]のブロック共重合体全体に占める重量分率をwBとしたときに、
wAとwBとの比(wA:wB)が30:70~60:40であり、
a.前記熱線反射膜を積層した透明フィルムが、第1及び第2のガラス板の面積より小さい面積を有し、
b.前記熱線反射膜を積層した透明フィルムが、第1及び第2の中間膜の面積より小さい面積を有し、
c.前記熱線反射膜を積層した透明フィルムの端が、第1及び第2のガラス板の端に対して全周囲に亘って2mm以上離れて配置され、
d.前記熱線反射膜を積層した透明フィルムの端が、第1及び第2の中間膜の端に対して全周囲に亘って2mm以上離れて配置されており、
e.前記熱線反射膜を積層した透明フィルムが、第1及び第2の中間膜に包埋された状態である合わせガラス。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、優れた熱線反射機能を有し、かつ、耐湿性及び耐久性に優れた合わせガラスが提供される。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の合わせガラスは、第1のガラス板、第1の中間膜、熱線反射膜を積層した透明フィルム、第2の中間膜、及び第2のガラス板の順に積層してなる合わせガラスであって、前記第1及び第2の中間膜が、特定の変性ブロック共重合体水素化物[E]から形成されたものであることを特徴とする。
【0014】
1.変性ブロック共重合体水素化物[E]
本発明に用いる変性ブロック共重合体水素化物[E]は、前駆体であるブロック共重合体水素化物[D]に、アルコキシリル基が導入されたものである。
ブロック共重合体水素化物[D]は、その前駆体であるブロック共重合体[C]の全不飽和結合の90%以上を水素化して得られたものである。
また、ブロック共重合体[C]は、ブロック共重合体水素化物[D]の前駆体であり、少なくとも2つの重合体ブロック[A]と少なくとも1つの重合体ブロック[B]を含有する高分子である。
【0015】
(重合体ブロック[A])
重合体ブロック[A]は、芳香族ビニル化合物由来の構造単位を主成分とする重合体ブロックである。
重合体ブロック[A]中の、芳香族ビニル化合物由来の構造単位の含有量は、通常90重量%以上、好ましくは95重量%以上、より好ましくは99重量%以上である。
重合体ブロック[A]中の芳香族ビニル化合物由来の構造単位の含有量が少な過ぎると、第1及び/又は第2の中間膜の耐熱性が低下するおそれがある。
重合体ブロック[A]は、芳香族ビニル化合物由来の構造単位以外の成分を含有していてもよい。他の成分としては、鎖状共役ジエン由来の構造単位及び/又はその他のビニル化合物由来の構造単位が挙げられる。その含有量は、重合体ブロック[A]に対し、通常10重量%以下、好ましくは5重量%以下、より好ましくは1重量%以下である。
ブロック共重合体[C]に含まれる複数の重合体ブロック[A]同士は、上記の範囲を満足するものであれば、互いに同一であっても、相異なっていても良い。
【0016】
(重合体ブロック[B])
重合体ブロック[B]は、鎖状共役ジエン化合物由来の構造単位を主成分とする重合体ブロックである。
重合体ブロック[B]中の、鎖状共役ジエン化合物由来の構造単位の含有量は、通常70重量%以上、好ましくは80重量%以上、より好ましくは90重量%以上である。重合体ブロック[B]中の、鎖状共役ジエン化合物由来の構造単位の含有量が上記範囲にあると、第1及び/又は第2の中間膜に柔軟性が付与されるので好ましい。
【0017】
重合体ブロック[B]は、鎖状共役ジエン化合物由来の構造単位以外の成分を含有していてもよい。他の成分としては、芳香族ビニル化合物由来の構造単位及び/又はその他のビニル化合物由来の構造単位が挙げられる。その含有量は、重合体ブロック[B]に対して、通常30重量%以下、好ましくは20重量%以下、より好ましくは10重量%以下である。重合体ブロック[B]中の、芳香族ビニル化合物由来の構造単位の含有量があまりに多いと、第1及び/又は第2の中間膜の低温下での柔軟性が低下するおそれがある。
ブロック共重合体[C]が重合体ブロック[B]を複数有する場合、重合体ブロック[B]同士は、互いに同一であっても、相異なっていても良い。
【0018】
芳香族ビニル化合物としては、スチレン;α-メチルスチレン、2-メチルスチレン、3-メチルスチレン、4-メチルスチレン、2,4-ジイソプロピルスチレン、2,4-ジメチルスチレン、4-t-ブチルスチレン、5-t-ブチル-2-メチルスチレン等の、置換基として炭素数1~6のアルキル基を有するスチレン類;4-クロロスチレン、ジクロロスチレン、4-モノフルオロスチレン等の、置換基としてハロゲン原子を有するスチレン類;4-メトキシスチレン等の、置換基として炭素数1~6のアルコキシ基を有するスチレン類;4-フェニルスチレン等の、置換基としてアリール基を有するスチレン類;1-ビニルナフタレン、2-ビニルナフタレン等のビニルナフタレン類;等が挙げられる。これらの中でも、吸湿性の観点から、スチレン、置換基として炭素数1~6のアルキル基を有するスチレン類等の、極性基を含有しない芳香族ビニル化合物が好ましく、工業的な入手の容易さから、スチレンが特に好ましい。
【0019】
鎖状共役ジエン系化合物としては、1,3-ブタジエン、イソプレン、2,3-ジメチル-1,3-ブタジエン、1,3-ペンタジエン等が挙げられ、吸湿性の観点から、極性基を含有しない鎖状共役ジエン系化合物が好ましく、工業的な入手の容易さから、1,3-ブタジエン、イソプレンが特に好ましい。
【0020】
その他のビニル系化合物としては、鎖状ビニル化合物、環状ビニル化合物、不飽和の環状酸無水物、不飽和イミド化合物等が挙げられる。これらの化合物は、ニトリル基、アルコキシカルボニル基、ヒドロキシカルボニル基、ハロゲン原子等の置換基を有していてもよい。これらの中でも、吸湿性の観点から、エチレン、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-ヘプテン、1-オクテン、1-ノネン、1-デセン、1-ドデセン、1-エイコセン、4-メチル-1-ペンテン、4,6-ジメチル-1-ヘプテン等の炭素数2~20の鎖状オレフィン;ビニルシクロヘキサン等の炭素数5~20の環状オレフィン;等の、極性基を含有しないものが好ましく、炭素数2~20の鎖状オレフィンがより好ましく、エチレン、プロピレンが特に好ましい。
【0021】
(ブロック共重合体[C])
ブロック共重合体[C]は、ブロック共重合体水素化物[D]の前駆体であり、少なくとも2つの重合体ブロック[A]と少なくとも1つの重合体ブロック[B]を含有する高分子である。
ブロック共重合体[C]中の重合体ブロック[A]の数は、通常5個以下、好ましくは4個以下、より好ましくは3個以下である。
【0022】
ブロック共重合体[C]において、重合体ブロック[A]及び/又は重合体ブロック[B]が複数存在する際、重合体ブロック[A]の中で、重量平均分子量が最大の重合体ブロックの重量平均分子量をMw(A)max、重量平均分子量が最少の重合体ブロックの重量平均分子量をMw(A)minとし、重合体ブロック[B]の中で、重量平均分子量が最大の重合体ブロックの重量平均分子量をMw(B)max、重量平均分子量が最少の重合体ブロックの重量平均分子量をMw(B)minとしたとき、Mw(A)maxとMw(A)minとの比(Mw(A)max/Mw(A)min)、及びMw(B)maxとMw(B)minとの比(Mw(B)max/Mw(B)min)は、それぞれ4.0以下、好ましくは3.5以下、より好ましくは3.0以下である。
Mw(A)maxが大きくなる場合、あるいは、Mw(B)minが小さくなって、Mw(B)minのブロック[B]を挟んで両隣の2つのブロック[A]があたかも1つのブロック[A]のように挙動する場合は、弾性率が高くなり、中間膜の柔軟性が低下するおそれがある。
【0023】
ブロック共重合体[C]のブロックの形態は、特に限定されず、鎖状型ブロックでもラジアル型ブロックでも良いが、鎖状型ブロックであるのが、機械的強度に優れ好ましい。ブロック共重合体[C]の最も好ましい形態は、重合体ブロック[B]の両端に重合体ブロック[A]が結合したトリブロック共重合体([A]-[B]-[A])、及び重合体ブロック[A]の両端に重合体ブロック[B]が結合し、更に、該両重合体ブロック[B]の他端にそれぞれ重合体ブロック[A]が結合したペンタブロック共重合体([A]-[B]-[A] -[B]-[A])である。
【0024】
また、ブロック共重合体[C]中の全重合体ブロック[A]が、ブロック共重合体全体に占める重量分率をwAとし、全重合体ブロック[B]が、ブロック共重合体全体に占める重量分率をwBとしたときに、wAとwBとの比(wA:wB)は、30:70~60:40、好ましくは35:65~55:45、より好ましくは40:60~50:50である。wAが高過ぎる場合は、本発明に係る第1及び/又は第2の中間膜の耐熱性が高くなるが、柔軟性が低く、低温熱衝撃でガラスが割れ易くなる。一方、wAが低過ぎる場合は、第1及び/又は第2の中間膜の耐熱性が低下する傾向にある。
【0025】
ブロック共重合体[C]の分子量は、テトラヒドロフラン(THF)を溶媒とするゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)により測定されるポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)で、通常40,000~200,000、好ましくは50,000~150,000、より好ましくは60,000~100,000である。
また、ブロック共重合体[C]の分子量分布(Mw/Mn)は、好ましくは3以下、より好ましくは2以下、特に好ましくは1.5以下である。
【0026】
ブロック共重合体[C]の製造方法は、特に限定されず、公知の方法を採用することができる。例えば、リビングアニオン重合等の方法により、芳香族ビニル化合物を主成分(芳香族ビニル化合物の含有量は、通常90重量%以上、好ましくは95重量%以上、より好ましくは99重量%以上である。以下にて同じ。)として含有するモノマー混合物(a)と、鎖状共役ジエン系化合物を主成分(鎖状共役ジエン化合物の含有量は、通常70重量%以上、好ましくは80重量%以上、より好ましくは90重量%以上である。以下にて同じ。)として含有するモノマー混合物(b)を交互に重合させる方法;芳香族ビニル化合物を主成分として含有するモノマー混合物(a)と鎖状共役ジエン系化合物を主成分として含有するモノマー混合物(b)を順に重合させた後、重合体ブロック[B]の末端同士を、カップリング剤によりカップリングさせる方法;等により、得ることができる。
後者の方法に用いるカップリング剤としては、メチルジクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、メチルトリクロロシラン、ブチルトリクロロシラン、テトラクロロシラン、ジブロモエタン、テトラクロロ錫、ブチルトリクロロ錫、テトラクロロゲルマニウム、ビス(トリクロロシリル)エタン等のハロゲン化合物;エポキシ化大豆油等のエポキシ化合物;アジピン酸ジエチル、アジピン酸ジメチル、ジメチルテレフタル酸、ジエチルテレフタル酸等のジカルボン酸のジエステル化合物;ジビニルベンゼン等のポリビニル化合物;ポリイソシアネート;が挙げられる。
【0027】
(ブロック共重合体水素化物[D])
ブロック共重合体水素化物[D]は、上記のブロック共重合体[C]の全不飽和結合、すなわち、ブロック共重合体[C]の主鎖及び側鎖の炭素-炭素不飽和結合、並びに、芳香環の炭素-炭素不飽和結合を水素化したものである。その水素化率は通常90%以上、好ましくは97%以上、より好ましくは99%以上である。水素化率が高いほど、成形体の耐候性、耐熱性及び透明性が良好である。
ブロック共重合体水素化物[D]の水素化率は、ブロック共重合体水素化物[D]の1H-NMRを測定することにより求めることができる。
【0028】
不飽和結合の水素化方法や反応形態等は特に限定されず、公知の方法にしたがって行えばよいが、水素化率を高くでき、重合体鎖切断反応の少ない水素化方法が好ましい。このような水素化方法としては、例えば、WO2011/096389号パンフレット、WO2012/043708号パンフレット等に記載された方法を挙げることができる。
【0029】
水素化反応終了後においては、水素化触媒、又は水素化触媒及び重合触媒を反応溶液から除去した後、得られた溶液からブロック共重合体水素化物[D]を回収することができる。回収されたブロック共重合体水素化物[D]の形態は限定されるものではないが、通常はペレット形状にして、その後のアルコキシシリル基の導入反応に供することができる。
【0030】
ブロック共重合体水素化物[D]の分子量は、THFを溶媒としたGPCにより測定されるポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)で、通常40,000~200,000、好ましくは50,000~150,000、より好ましくは60,000~100,000である。また、ブロック共重合体水素化物[D]の分子量分布(Mw/Mn)は、好ましくは3以下、より好ましくは2以下、特に好ましくは1.5以下にする。Mw及びMw/Mnが上記範囲となるようにすると、中間膜の耐熱性や機械的強度が良好である。
【0031】
(変成ブロック共重合体水素化物[E])
本発明で使用する変成ブロック共重合体水素化物[E]は、上記ブロック共重合体水素化物[D]に、アルコキシシリル基が導入されたものである。
【0032】
アルコキシシリル基としては、トリメトキシシリル基、トリエトキシシリル基等の、トリ(炭素数1~6アルコキシ)シリル基;メチルジメトキシシリル基、メチルジエトキシシリル基、エチルジメトキシシリル基、エチルジエトキシシリル基、プロピルジメトキシシリル基、プロピルジエトキシシリル基等の、(炭素数1~20アルキル)ジ(炭素数1~6アルコキシ)シリル基;フェニルジメトキシシリル基、フェニルジエトキシシリル基等の、(アリール)ジ(炭素数1~6アルコキシ)シリル基;等が挙げられる。また、アルコキシシリル基は、ブロック共重合体水素化物[D]に、炭素数1~20のアルキレン基や、炭素数2~20のアルキレンオキシカルボニルアルキレン基等の2価の有機基を介して結合していても良い。
【0033】
ブロック共重合体水素化物[D]へのアルコキシシリル基の導入量は、通常、ブロック共重合体水素化物[D]100重量部に対し、0.1~10重量部、好ましくは0.2~5重量部、より好ましくは0.3~3重量部である。アルコキシシリル基の導入量が多過ぎると、得られる変性ブロック共重合体水素化物[E]を所望の形状に溶融成形する前に微量の水分等で分解されたアルコキシシリル基同士の架橋が進み、ゲル化したり、溶融時の流動性が低下して成形性が低下したりする等の問題が生じ易くなる。また、アルコキシシリル基の導入量が少な過ぎると、前記中間膜をガラス板と接着するのに十分な接着力が得られないという不具合が生じ易くなる。アルコキシシリル基が導入されたことは、IRスペクトルで確認することができる。また、その導入量は、1H-NMRスペクトルにて算出することができる。
【0034】
変成ブロック共重合体水素化物[E]の製造方法は特に限定されないが、上記ブロック共重合体水素化物[D]に、有機過酸化物の存在下で、エチレン性不飽和シラン化合物を反応させることにより、アルコキシシリル基を導入する方法が好ましい。
【0035】
用いるエチレン性不飽和シラン化合物としては、ブロック共重合体水素化物[D]とグラフト重合し、ブロック共重合体水素化物[D]に、アルコキシシリル基を導入するものであれば、特に限定されない。例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン等のビニルトリアルコキシシラン;ジメトキシメチルビニルシラン、ジエトキシメチルビニルシラン等のジアルコキシアルキルビニルシラン;アリルトリメトキシシラン、アリルトリエトキシシラン等のアリルトリアルコキシシラン;p-スチリルトリメトキシシラン等のスチリルトリアルコキシシラン;3-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン等の(メタ)アクリロキシトリアルコキシシラン;3-メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン等の(メタ)アクリロキシアルキルジアルコキシシラン;等が好適に用いられる。ここで、(メタ)アクリロキシは、アクリロキシ又はメタクリロキシの意味である。
これらのエチレン性不飽和シラン化合物は、それぞれ単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0036】
エチレン性不飽和シラン化合物の使用量は、ブロック共重合体水素化物[D]100重量部に対して、通常0.1~10重量部、好ましくは0.2~5重量部、より好ましくは0.3~3重量部である。
【0037】
過酸化物としては、1分間半減期温度が170~190℃のものが好ましく使用される。例えば、t-ブチルクミルパーオキシド、ジクミルパーオキサイド、ジ-t-ヘキシルパーオキシド、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルパーオキシ)ヘキサン、ジ-t-ブチルパーオキシド、ジ(2-t-ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン等が好適に用いられる。
これらの過酸化物は、それぞれ単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
過酸化物の使用量は、ブロック共重合体水素化物[D]100重量部に対して、通常0.05~2重量部、好ましくは0.1~1重量部、より好ましくは0.2~0.5重量部である。
【0038】
上記のブロック共重合体水素化物[D]とエチレン性不飽和シラン化合物とを、過酸化物の存在下で反応させる方法は、特に限定されない。例えば、二軸混練機にて所望の温度で所望の時間混練することにより、ブロック共重合体水素化物[D]にアルコキシシリル基を導入することができる。二軸混練機による混練温度は、通常180~220℃、好ましくは185~210℃、より好ましくは190~200℃である。加熱混練時間は、通常0.1~10分、好ましくは0.2~5分、より好ましくは0.3~2分程度である。温度、滞留時間が上記範囲になるようにして、連続的に混練、押出しをすればよい。
【0039】
変性ブロック共重合体水素化物[E]の分子量は、導入されるアルコキシシリル基の量が少ないため、原料として用いたブロック共重合体水素化物[D]の分子量と実質的には変わらない。一方、過酸化物の存在下で、エチレン性不飽和シラン化合物と反応させるため、重合体の架橋反応、切断反応が併発し、変性ブロック共重合体水素化物[E]の分子量分布の値は大きくなる。
【0040】
変性ブロック共重合体水素化物[E]の分子量は、THFを溶媒としたGPCにより測定されるポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)で、通常40,000~200,000、好ましくは50,000~150,000、より好ましくは60,000~100,000である。また、分子量分布(Mw/Mn)は、好ましくは3.5以下、より好ましくは2.5以下、特に好ましくは2.0以下である。Mw及びMw/Mnが上記範囲となるようにすると、本発明で使用する中間膜の耐熱性や機械的強度が維持される。
【0041】
(配合剤)
本発明においては、変性ブロック共重合体水素化物[E]は、樹脂に一般的に配合される各種の配合剤を配合した樹脂組成物として用いることができる。好ましい配合剤としては、柔軟性、接着温度の低下及び金属との接着性等を調整するための軟化剤及び粘着付与剤;耐熱安定性、耐光安定性、加工性等を高めるための、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、及びブロッキング防止剤;等が挙げられる。
【0042】
軟化剤は、変性ブロック共重合体水素化物[E]の柔軟性を改善するために配合される。軟化剤としては、低分子量の炭化水素系重合体が挙げられる。低分子量の炭化水素系重合体としては、変性ブロック共重合体水素化物[E]に均一に溶解ないし分散できるものが好ましく、数平均分子量300~5,000の炭化水素系重合体が好ましい。
【0043】
炭化水素系重合体の具体例としては、ポリイソブチレン、ポリブテン、ポリ-4-メチルペンテン、ポリ-1-オクテン、エチレン・α-オレフィン共重合体等の低分子量体及びその水素化物;ポリイソプレン、ポリイソプレン-ブタジエン共重合体等の低分子量体及びその水素化物等が挙げられる。軟化剤は1種単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの中でも、特に透明性、耐光性を維持し、軟化効果に優れた変性ブロック共重合体水素化物[E]が得られる点で、低分子量のポリイソブチレン水素化物、低分子量のポリイソプレン水素化物が好ましい。低分子量の炭化水素系重合体の配合量は、変性ブロック共重合体水素化物[E]100重量部に対して、通常20重量部以下、好ましくは10重量部以下、より好ましくは5重量部以下である。低分子量の炭化水素系重合体の配合量を多くすると中間膜の柔軟性は高められるが、耐熱性が低下したり、溶出物が増加し易くなる傾向がある。
【0044】
粘着付与剤は、変性ブロック共重合体水素化物[E]に粘着性を付与し、金属との接着性を高めるために配合される。粘着付与剤としては、ロジン系樹脂;テルペン系樹脂;クマロン・インデン樹脂;スチレン系樹脂;脂肪族系、脂環族系又は芳香族系の石油樹脂;及びそれらの水素添加物等が挙げられる。これらの粘着付与剤は1種単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。粘着付与剤の配合量は、変性ブロック共重合体水素化物[E]100重量部に対して、通常20重量部以下、好ましくは10重量部以下、より好ましくは5重量部以下である。粘着付与剤の配合量を多くすると中間膜の粘着性は高められるが、耐熱性が低下したり、溶出物が増加し易くなる傾向がある。
【0045】
変性ブロック共重合体水素化物[E]に配合される、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、ブロッキング防止剤等は、それぞれ1種単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの配合剤の配合量は、変性ブロック共重合体水素化物[E]100重量部に対して、通常10重量部以下、好ましくは5重量部以下、より好ましくは1重量部以下である。
【0046】
酸化防止剤としては、リン系酸化防止剤、フェノ-ル系酸化防止剤、イオウ系酸化防止剤等が挙げられる。
リン系酸化防止剤としては、トリフェニルホスファイト、ジフェニルイソデシルホスファイト、フェニルジイソデシルホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリス(ジノニルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)ホスファイト、10-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)-9,10-ジヒドロ-9-オキサ-10-ホスファフェナントレン-10-オキサイド等のモノホスファイト系化合物;4,4’-ブチリデン-ビス(3-メチル-6-t-ブチルフェニル-ジ-トリデシルホスファイト)、4,4’-イソプロピリデン-ビス(フェニル-ジ-アルキルホスファイト)(アルキル部分の炭素数12~15)等のジホスファイト系化合物が挙げられる。
【0047】
フェノール系酸化防止剤としては、2-t-ブチル-6-(3-t-ブチル-2-ヒドロキシ-5-メチルベンジル)-4-メチルフェニルアクリレート、2,4-ジ-t-アミル-6-(1-(3,5-ジ-t-アミル-2-ヒドロキシフェニル)エチル)フェニルアクリレート等の特開昭63-179953号公報や特開平1-168643号公報に記載されるアクリレート系化合物;オクタデシル-3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、2,2’-メチレン-ビス(4-メチル-6-t-ブチルフェノール)、1,1,3-トリス(2-メチル-4-ヒドロキシ-5-t-ブチルフェニル)ブタン、1,3,5-トリメチル-2,4,6-トリス(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)ベンゼン、テトラキス(メチレン-3-(3’,5’-ジ-t-ブチル-4’-ヒドロキシフェニルプロピオネート)メタン[すなわち、ペンタエリスリメチル-テトラキス(3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニルプロピオネート)]、トリエチレングリコール ビス(3-(3-t-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロピオネート)等のアルキル置換フェノール系化合物;6-(4-ヒドロキシ-3,5-ジ-t-ブチルアニリノ)-2,4-ビスオクチルチオ-1,3,5-トリアジン、4-ビスオクチルチオ-1,3,5-トリアジン、2-オクチルチオ-4,6-ビス-(3,5-ジ-t-ブチル-4-オキシアニリノ)-1,3,5-トリアジン等のトリアジン基含有フェノール系化合物;等が挙げられる。
【0048】
イオウ系酸化防止剤としては、例えば、ジラウリル 3,3-チオジプロピオネート、ジミリスチル 3,3’-チオジプロピオネート、ジステアリル 3,3-チオジプロピオネート、ラウリルステアリル 3,3-チオジプロピオネート、ペンタエリスリトール-テトラキス(β-ラウリル-チオ-プロピオネート)、3,9-ビス(2-ドデシルチオエチル)-2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン等が挙げられる。
【0049】
紫外線吸収剤としては、オキシベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、サリチル酸エステル系化合物、ベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、アクリロニトリル系化合物、トリアジン系化合物、ニッケル錯塩系化合物、無機粉体などが挙げられる。
【0050】
光安定剤としては、2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジルベンゾエート、ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル) セバケート、ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)-2-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)-2-n-ブチルマロネート、4-(3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ)-1-(2-(3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ)エチル)-2,2,6,6-テトラメチルピペリジンなどのヒンダードアミン系光安定剤が挙げられる。
【0051】
変性ブロック共重合体水素化物[E]と配合剤を含有する樹脂組成物を得る方法としては、特に限定されず、公知の方法が採用できる。例えば、二軸混錬機、ロール、ブラベンダー、押出し機等で変性ブロック共重合体水素化物[E]を溶融状態にして、各種配合剤を添加し、混練する方法;二軸混錬機、ロール、ブラベンダー、押出し機等でブロック共重合体水素化物[D]を溶融状態にして、低分子量の炭化水素系重合体及び/又は粘着付与剤を混練した後、ブロック共重合体水素化物[D]とエチレン性不飽和シラン化合物とを、過酸化物の存在下で反応させて変性ブロック共重合体水素化物[E]とし、次いで、他の配合剤を配合する方法;ブロック共重合体水素化物[D]とエチレン性不飽和シラン化合物とを、過酸化物の存在下で反応させる際に、同時に各種配合剤を混練する方法等が挙げられる。
【0052】
2.第1及び第2の中間膜
第1及び第2の中間膜は、前記の変性ブロック共重合体水素化物[E]をシート状に成形したものであり、第1のガラス板と第2のガラス板を貼り合わせるために用いられる。第1の中間膜と第2の中間膜は、前記の変性ブロック共重合体水素化物[E]から形成されたものであれば、互いに同一であっても、相異なるものであってもよい。
【0053】
第1及び第2の中間膜を成形する方法としては、特に限定されず、公知の、溶融押出し成形法、インフレーション成形法、カレンダー成形法等が適用できる。
【0054】
第1及び第2の中間膜は、前記の変性ブロック共重合体水素化物[E]から形成されたものであって、熱架橋性を付与するための有機過酸化物や架橋助剤の配合を必要としないため、溶融成形温度の選択領域が広い。例えば、溶融押出し成形法により、第1及び第2の中間膜を形成する場合は、樹脂温度は、通常170~230℃、好ましくは180~220℃、より好ましくは190~210℃の範囲で適宜選択される。樹脂温度が低過ぎる場合は、流動性が悪化し、第1及び第2の中間膜にゆず肌やダイライン等の不良を生じ易く、また、第1及び第2の中間膜の押出し速度が上げられず、工業的に不利となる。樹脂温度が高過ぎる場合は、第1及び第2の中間膜のガラスヘの接着性が不良となったり、第1及び第2の中間膜の貯蔵安定性が低下して、中間膜を常温常湿環境下で長期間貯蔵した後のガラスに対する接着性が低下したりする等の不具合を生じ易くなる。
【0055】
第1及び第2の中間膜の厚みは、特に制限されないが、通常0.1~5mm、好ましくは0.2~2mm、より好ましくは0.3~1mmの範囲である。第1の中間膜と第2の中間膜の厚みは、同一であっても相異なっていてもよい。第1及び第2の中間膜の厚みが0.1mmよりも小さい場合、後述するように、第1及び第2のガラス板よりも小さい面積を有する、熱線反射膜を積層した透明フィルムを挟んでガラス板の貼り合わせを行ったときに、前記熱線反射膜を積層した透明フィルムの無い合わせガラス端部で厚み差を生じ、ガラスが割れるおそれがある。また、第1及び第2の中間膜の厚みが5mmよりも大きい場合、合わせガラス全体での光線透過率が低下したり、変性ブロック共重合体水素化物[E]の使用量が多くなり経済性が低下したりするおそれがある。
【0056】
第1及び第2の中間膜は、変性ブロック共重合体水素化物[E]に、必要に応じて前記配合剤を配合した組成物からなる単層のシートであっても、ブロック共重合体水素化物[D]に、必要に応じて前記配合剤を配合した組成物からなるシートの片面もしくは両面に、変性ブロック共重合体水素化物[E]からなる層が積層されている多層シートであっても良い。
【0057】
多層シートを成形する方法としては、例えば、2種3層共押出し成形法;ブロック共重合体水素化[D]からなるシートの片面もしくは両面に、変性ブロック共重合体水素化物[E]をからなるシートを、熱圧着して積層する方法;等が挙げられる。
【0058】
第1及び第2の中間膜が多層シートの場合、変性ブロック共重合体水素化物[E]からなる層の厚みは、通常0.005mm以上、好ましくは0.01mm以上、より好ましくは0.015mm以上である。変性ブロック共重合体水素化物[E]からなる層の厚みの上限は、特に限定されないが、通常4.995mm未満である。
変性ブロック共重合体水素化物[E]からなる層の厚みが0.005mmよりも小さいと、ガラス板との接着性が十分に得られ難くなる。
【0059】
第1及び/又は第2の中間膜の表面は、平面状やエンボス加工を施した形状等とすることができる。また、第1及び/又は第2の中間膜同士のブロッキングを防止するために、第1及び/又は第2の中間膜の片面に、離型フィルムを重ねて保管することもできる。
【0060】
3.熱線反射膜を積層した透明フィルム
本発明に用いる熱線反射膜を積層した透明フィルムは、波長550nmの光線透過率が50%以上、好ましくは60%以上、より好ましくは70%以上のフィルムである。
【0061】
前記熱線反射膜を積層した透明フィルムは、例えば、基材となる透明な樹脂フィルム上に、金属酸化物層と金属層とを交互に積層した熱線反射膜や、金属酸化物等からなる誘電体の高屈折率層と低屈折率層を交互に多層に積層した熱線反射膜等が形成されたものである。熱線反射膜の表面、すなわち樹脂フィルムと接していない面には、例えば保護層等の別の機能を有する層が形成されていてもよい。
【0062】
樹脂フィルムとしては、透明(波長550nmの光線透過率が50%以上、好ましくは60%以上、より好ましくは70%以上)なものであれば特に限定されない。例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル樹脂;ポリメチルメタクリレート等のアクリル樹脂;シクロオレフィンポリマー;ポリカーボネート;ポリエーテルスルフォン;ポリアリレート;ナイロン;等の合成樹脂からなるフィルムが使用できる。これらの中でも、透明性、強度、経済性等の観点から、ポリエステル樹脂からなるフィルムが好ましく、ポリエチレンテレフタレートからなるフィルムが特に好ましい。
樹脂フィルムの厚みは、特に限定されず、通常10~300μm、好ましくは20~200μm、より好ましくは40~100μmである。
【0063】
熱線反射膜としては、Au、Ag、Cu、Al、Pd、Pt、Sn、In、Zn、Ti、Cd、Fe、Co、Cr、Ni等の金属からなる金属膜;これらの金属の2種以上からなる合金からなる合金膜;TiO2、Nb25、Ta25、SiO2、Al23、ZrO2、MgF2等からなる誘電体層を多層に積層してなる多層膜;等を好適に用いることができる。誘電体膜を多層に積層してなる多層膜(赤外線反射膜)は、電磁波を透過するため、自動車等の車両において、車内の通信機器の通信機能を損なうことなく使用可能であり、特に好ましい。
【0064】
また本発明においては、熱線反射膜を積層した透明フィルムとして、熱線反射フィルム、遮熱フィルム、赤外線反射フィルム、赤外線カットフィルム等として一般的に市販されているフィルムを使用することもできる。
【0065】
4.合わせガラス
本発明の合わせガラスは、少なくとも、第1のガラス板、第1の中間膜、熱線反射膜を積層した透明フィルム、第2の中間膜、及び第2のガラス板の順に積層してなる合わせガラスであって、前記第1及び第2の中間膜が、前記変性ブロック共重合体水素化物[E]から形成されたものである。すなわち、本発明の合わせガラスは、変性ブロック共重合体水素化物[E]を、第1のガラスと熱線反射膜を積層した透明フィルム、熱線反射膜を積層した透明フィルムと第2のガラスとを強固に接着させて一体化してなるものである。
【0066】
本発明の合わせガラスにおいて、用いる第1のガラス板と第2のガラス板同士は、厚みや材質等が互いに同一であっても、相異なっていてもよく、透明導電膜や赤外線反射膜等が施されたものであってもよい。
【0067】
使用するガラス板の厚みは特に限定されないが、通常0.5~10mm程度である。厚みが0.05~0.4mm程度の極薄ガラス板を使用することもできる。例えば、厚み5mmの強化ガラス板(第1のガラス板)/第1の中間膜/熱線反射膜を積層した透明フィルム/第2の中間膜/厚み0.2mmの薄膜ガラス板(第2のガラス板)のように、異なる厚みのガラス板を使用することもできる。変性ブロック共重合体水素化物[E]は、-50℃程度の低温領域から、+120℃程度の高温領域まで幅広い温度帯域で柔軟性を維持するため、熱膨張係数の異なるガラス板を貼り合わせることもでき、急激な温度変化によってもガラスの割れを低減することができる。
【0068】
使用するガラス板の材質は特に限定されず、例えば、アルミノシリケート酸ガラス、アルミノホウケイ酸ガラス、ウランガラス、カリガラス、ケイ酸ガラス、結晶化ガラス、ゲルマニウムガラス、石英ガラス、ソーダガラス、鉛ガラス、バリウム瑚珪酸ガラス、瑚珪酸ガラス等が挙げられる。
【0069】
合わせガラスを製造するには、少なくとも、第1のガラス板、第1の中間膜、熱線反射膜を積層した透明フィルム、第2の中間膜、第2のガラス板をこの順に重ね、真空ラミネータを用いて加熱減圧下で接着させる方法や、減圧可能な耐熱性のゴム袋に入れて脱気後、オートクレーブを使用して、加熱加圧下で接着させる方法等が適用できる。
【0070】
本発明の合わせガラスは、吸湿性及び透湿性が小さく、接着性に優れた変性ブロック共重合体水素化物[E]からなる中間膜(第1及び第2の中間膜)を使用することを特徴としている。従って、高温高湿度環境下で使用した場合であっても、第1及び第2の中間膜に挟み込まれた熱線反射膜を積層した透明フィルムが白化する等の不具合が発生することが少ない。
【0071】
本発明の合わせガラスにおいては、高温高湿度環境下で使用した場合にも、より効果的に不具合の発生を低減するために、下記のa~eの方策を講じることが好ましい。
a.熱線反射膜を積層した透明フィルムとして、第1及び第2のガラス板の面積より小さい面積を有するものを用いる。本発明の合わせガラスは、通常、長方形又は正方形の形状を有する。この場合、熱線反射膜を積層した透明フィルムは、第1及び第2のガラス板の一方向及びこれ直交する方向(縦方向及び横方向)のいずれの方向においても、第1及び第2のガラス板よりも小さいものであることが好ましい。例えば、第1及び第2のガラス板として、300mm×300mmのものを使用する場合、熱線反射膜を積層した透明フィルムとして、294mm×294mmの大きさのものを使用する。第1及び第2のガラス板の面積に対する、熱線反射膜を積層した透明フィルムの面積の割合は、好ましくは90%~100%、より好ましくは95~100%、さらに好ましくは95~99%である。
【0072】
b.熱線反射膜を積層した透明フィルムとして、第1及び第2の中間膜の面積より小さい面積を有するものを用いる。本発明の合わせガラスは、通常、長方形又は正方形の形状を有する。この場合、熱線反射膜を積層した透明フィルムは、第1及び第2の中間膜の一方向及びこれ直交する方向(縦方向及び横方向)のいずれの方向においても、第1及び第2の中間膜よりも小さいものであることが好ましい。例えば、第1及び第2の中間膜として、300mm×300mmのものを使用する場合、熱線反射膜を積層した透明フィルムとして、194mm×294mmの大きさのものを使用する。第1及び第2の中間膜の面積に対する、熱線反射膜を積層した透明フィルムの面積の割合は、好ましくは90%~100%、より好ましくは95~100%、さらに好ましくは95~99%である。
【0073】
c.熱線反射膜を積層した透明フィルムを、該透明フィルムの端が、第1及び第2のガラス板の端に対して全周囲に亘って2mm以上、好ましくは2mm~10mm、より好ましくは2mm~5mm離れるように配置する。
例えば、大きさが300mm×300mmの、第1及び第2のガラス板を用いる場合、大きさが294mm×294mmの、熱線反射膜を積層した透明フィルムを、前記第1及び第2のガラス板の端からともに3mmの距離を離して、第1及び第2のガラス板の中央に配置する。
【0074】
d.熱線反射膜を積層した透明フィルムを、該透明フィルムの端が、第1及び第2の中間膜の端に対して全周囲に亘って2mm以上、好ましくは2mm~10mm、より好ましくは2mm~5mm離れるように配置する。
例えば、大きさが300mm×300mmの、第1及び第2の中間膜を用いる場合、大きさが294mm×294mmの、熱線反射膜を積層した透明フィルムを、前記第1及び第2の中間膜の端からともに3mmの距離を離して、第1及び第2の中間膜の中央に配置する。
【0075】
e.熱線反射膜を積層した透明フィルムが、第1及び第2の中間膜に包埋された状態とする。ここで、「包埋」とは、「熱線反射膜がガラスや外気に接することなく、第1及び第2の中間膜に埋め込まれた状態をいう。この場合、端部の第1の中間膜と第2の中間膜の界面も接着一体化している。
【0076】
f.なお、第1及び第2の中間膜の大きさは、接着性の観点から、第1及び第2のガラス板と同じであることが好ましい。
【0077】
本発明の合わせガラスは、第1のガラス板/第1の中間膜/熱線反射膜を積層した透明フィルム/第2の中間膜/ディスプレイ素子/第3の中間膜/第2のガラス板、第1のガラス板/第1の中間膜/熱線反射膜を積層した透明フィルム/第2の中間膜/調光素子/第3の中間膜/第2のガラス板、等のような多層構成のものであっても良い。
ディスプレイ素子や調光素子は、液晶素子、サーモクロミック素子、フォトクロミック素子、エレクトロクロミック素子等からなり、熱線反射膜と同様に、合わせガラス端部から侵入する水分や酸素により劣化し易いものが多い。したがって、本発明の合わせガラスと同様の構成、すなわち、ディスプレイ素子や調光素子の端が、第1及び第2の中間膜の端に対して全周囲に亘って2mm以上離れて配置された、第1のガラス板/第1の中間膜/ディスプレイ素子/第2の中間膜/第2のガラス板、第1のガラス板/第1の中間膜/調光素子/第2の中間膜/第2のガラス板、等の構成は、高温高湿環境下でのディスプレイ素子や調光素子の劣化を防止するためにも効果的である。
【0078】
本発明の合わせガラスは、建築物の窓ガラス、屋根用ガラス、部屋用遮熱壁材、自動車のフロントガラスやサンルーフ用ガラス、鉄道車両や船舶用の窓ガラス等として有用である。
【実施例
【0079】
以下に、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明は以下の実施例のみに限定されるものではない。なお、「部」及び「%」は特に断りのない限り、重量基準である。
【0080】
本実施例における評価は、以下の方法によって行う。
(1)重量平均分子量(Mw)及び分子量分布(Mw/Mn)
ブロック共重合体及びブロック共重合体水素化物の分子量は、THFを溶離液とするGPCによる標準ポリスチレン換算値として、38℃において測定した。
測定装置として、東ソー社製、HLC8020GPCを用いた。
(2)水素化率
ブロック共重合体水素化物[D]の主鎖、側鎖及び芳香環の水素化率は、1H-NMRスペクトルを測定して算出した。
(3)光線透過率
光線透過率の測定は、紫外可視分光光度計(V-670、日本分光社製)を使用して、波長550nn及び2500nmで光線透過率を測定した。
【0081】
(4)耐湿性
平面な合わせガラス試験片(縦300mm、横300mm)を、温度50℃、相対湿度95%RHの恒温恒湿槽内で、336時間ほぼ水平に配置して保存した後、外観変化の目視評価を行った。
目視観察の結果、試験片に、ひび割れ、膨れ、剥離、変色、泡、濁り等の変化が認められない場合を「◎(良好)」、試験片に、ひび割れ、膨れ、剥離が無く、変色、泡、濁りが有っても、試験片端部から10mm以内に限られる場合を「○(許容)」、試験片に、ひび割れ、膨れ、剥離が有り、試験片端部から10mm以上内側に、変色、泡、濁り等のいずれかの変化がある場合を「×(不良)」と評価した。
(5)耐熱性
平面な合わせガラス試験片(縦300mm、横300mm)を、沸騰水中で、鉛直の状態に浸漬し、2時間保持した後、外観変化の目視評価を行った。
試験片に、ひび割れ、泡、その他欠点が認められない場合を「◎(良好)」、試験片にひび割れが無く、泡、その他欠点が有っても試験片端部から10mm以内に限られる場合を「○(許容)」、試験片にひび割れが有り、試験片端部から10mm以上内側に泡、その他欠点のいずれかの変化がある場合を「×(不良)」と評価した。
【0082】
[参考例1]
中間膜[F1]の作製
(ブロック共重合体[C1]の製造)
内部が十分に窒素置換された、攪拌装置を備えた反応器に、脱水シクロヘキサン550部、脱水スチレン25.0部、及びジ-n-ブチルエーテル0.475部を入れた。次いで、全容を60℃で攪拌しながら、n-ブチルリチウムの15%シクロヘキサン溶液を0.88部加えて重合を開始させ、さらに、60℃で60分間全容を攪拌した。この時点で、反応液をガスクロマトグラフィーにより測定した結果、重合転化率は99.5%であった。
その後、反応液に脱水イソプレン50.0部を加え、そのまま60℃で30分間攪拌を続けた。この時点で重合転化率は99.5%であった。
その後更に、反応液に脱水スチレンを25.0部加え、60℃で60分間攪拌した。この時点での重合転化率はほぼ100%であった。
ここで、反応液にイソプロピルアルコール0.5部を加えて反応を停止させて、重合体溶液を得た。得られたブロック共重合体[C1]の重量平均分子量(Mw)は47,200、分子量分布(Mw/Mn)は1.04、wA:wB=50:50であった。
【0083】
(ブロック共重合体水素化物[D1]の製造)
上記重合体溶液を、攪拌装置を備えた耐圧反応器に移送し、水素化触媒として珪藻土担持型ニッケル触媒(製品名「E22U」、ニッケル担持量60%、日揮触媒化成社製)8.0部、及び脱水シクロヘキサン100部を添加して混合した。反応器内部を水素ガスで置換し、さらに溶液を攪拌しながら水素を供給し、温度190℃、圧力4.5MPaにて6時間水素化反応を行った。水素化反応後のブロック共重合体水素化物[D1]の重量平均分子量(Mw)は49,900、分子量分布(Mw/Mn)は1.06であった。
【0084】
水素化反応終了後、反応溶液をろ過して水素化触媒を除去した後、ろ液にフェノール系酸化防止剤であるペンタエリスリチル・テトラキス[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート](製品名「Songnox1010」、コーヨ化学研究所社製)0.1部を溶解したキシレン溶液1.0部を添加して溶解させた。
次いで、上記溶液を、金属ファイバー製フィルター(孔径0.4μm、ニチダイ社製)にてろ過して微小な固形分を除去した。次いで、円筒型濃縮乾燥器(製品名「コントロ」、日立製作所社製)を用いて、温度260℃、圧力0.001MPa以下で、溶液から、溶媒であるシクロヘキサン、キシレン及びその他の揮発成分を除去した。連続して溶融ポリマーを、濃縮乾燥器に連結した孔径5μmのステンレス製焼結フィルターを備えたポリマーフィルター(富士フィルター社製)により、温度260℃でろ過した後、ダイから溶融ポリマーをストランド状に押出し、冷却後、ペレタイザーによりブロック共重合体水素化物[D1]のペレット95部を得た。得られたペレット状のブロック共重合体水素化物[D1]の重量平均分子量(Mw)は49,500、分子量分布(Mw/Mn)は1.10、水素化率はほぼ100%であった。
【0085】
(変性ブロック共重合体水素化物[E1]の製造)
上記で得たブロック共重合体水素化物[D1]のペレット100部に対して、ビニルトリメトキシシラン2.0部、及び2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルパーオキシ)ヘキサン(製品名「パーヘキサ(登録商標)25B」、日油社製)0.2部を添加して混合物を得た。この混合物を、二軸押出し機を用いて、樹脂温度200℃、滞留時間60~70秒で混練し、ストランド状に押出し、空冷した後、ペレタイザーによりカッティングし、アルコキシシリル基を有する変性ブロック共重合体水素化物[E1]のペレット94部を得た。
【0086】
得られた変性ブロック共重合体水素化物[E1]のペレット10部をシクロヘキサン100部に溶解した後、脱水したメタノール400部中に注いで変性ブロック共重合体水素化物[E1]を凝固させ、ろ取した。ろ過物を25℃で真空乾燥して、変性ブロック共重合体水素化物[E1]のクラム9.0部を単離した。
このもののFT-IRスペクトルを測定した結果、1090cm-1にSi-OCH3基、825cm-1と739cm-1にSi-CH2基に由来する新たな吸収帯が観測された。これらの新たな吸収帯は、ビニルトリメトキシシランの、Si-OCH3基、Si-CH2基に由来する吸収帯である、1075cm-1、808cm-1及び766cm-1と異なる位置に観測された。さらに、1H-NMRスペクトル(重クロロホルム中)を測定した結果、3.6ppmに、メトキシ基のプロトンに基づくピークが観測された。ピーク面積比からブロック共重合体水素化物[D1]の100部に対して、ビニルトリメトキシシラン1.8部が結合したことが確認された。
【0087】
(変性ブロック共重合体水素化物[E1]からなる中間膜[F1]の作製)
変性ブロック共重合体水素化物[E1]のペレットを、40mmφのスクリューを備えた押出し機を有するTダイ式フィルム溶融押出し成形機(Tダイ幅600mm)、キャストロール(エンボスパターン付き)、及びシート引き取り装置を備えた押出しシート成形機を使用して、溶融樹脂温度200℃、Tダイ温度200℃、キャストロール温度60℃の成形条件にて押出し成形し、変性ブロック共重合体水素化物[E1]からなる中間膜[F1](厚さ380μm、幅500mm)を成形した。得られた中間膜[F1]はロールに巻き取り回収した。
【0088】
[参考例2]
中間膜[F2]の作製
(ブロック共重合体[C2]の製造)
スチレン20.0部、イソプレン60.0部、スチレン20.0部をそれぞれ3回に分けてこの順に加え、n-ブチルリチウム(15%シクロヘキサン溶液)を0.80部に変える以外は、参考例1と同様に重合反応を行い、重合反応を停止させて、重合体溶液を得た。得られたブロック共重合体[C2]の重量平均分子量(Mw)は51,200、分子量分布(Mw/Mn)は1.04、wA:wB=40:60であった。
【0089】
(ブロック共重合体水素化物[D2]の製造)
次に、上記重合体溶液を用いて参考例1と同様にして水素化反応を行った。水素化反応後のブロック共重合体水素化物[D2]の重量平均分子量(Mw)は54,200、分子量分布(Mw/Mn)は1.06であった。
【0090】
水素化反応終了後、参考例1と同様に酸化防止剤を添加した後、濃縮乾燥してブロック共重合体水素化物[D2]のペレット94部を得た。得られたペレット状のブロック共重合体水素化物[D2]の重量平均分子量(Mw)は53,600、分子量分布(Mw/Mn)は1.11、水素化率はほぼ100%であった。
【0091】
(変性ブロック共重合体水素化物[E2]の製造)
得られたブロック共重合体水素化物[D2]のペレットを使用し、参考例1と同様にしてアルコキシシリル基を有する変性ブロック共重合体水素化物[E2]のペレット96部を得た。
得られた変性ブロック共重合体水素化物[E2]は、参考例1と同様にして分析することにより、ブロック共重合体水素化物[D2]の100部に対して、ビニルトリメトキシシラン1.8部が結合したことが確認された。
【0092】
(変性ブロック共重合体水素化物[E2]からなる中間膜[F2]の作製)
変性ブロック共重合体水素化物[E2]のペレットを、参考例1と同様にしてシート成形し、変性ブロック共重合体水素化物[E2]からなる中間膜[F2](厚さ380μm、幅500mm)を作製した。
【0093】
[参考例3]
中間膜[F3]の作製
(ブロック共重合体[C3]の製造)
スチレン15.0部、イソプレン75.0部、スチレン10.0部をそれぞれ3回に分けてこの順に加え、n-ブチルリチウム(15%シクロヘキサン溶液)を0.61部に変える以外は参考例1と同様に重合反応を行い、重合反応を停止させて重合体溶液を得た。
得られたブロック共重合体[C3]の重量平均分子量(Mw)は65,700、分子量分布(Mw/Mn)は1.04、wA:wB=25:75であった。
【0094】
(ブロック共重合体水素化物[D3]の製造)
次に、上記重合体溶液を用いて参考例1と同様にして水素化反応を行った。水素化反応後のブロック共重合体水素化物[D3]の重量平均分子量(Mw)は69,500、分子量分布(Mw/Mn)は1.05であった。
【0095】
水素化反応終了後、参考例1と同様に酸化防止剤を添加した後、濃縮乾燥してブロック共重合体水素化物[D3]のペレット87部を得た。得られたペレット状のブロック共重合体水素化物[D3]の重量平均分子量(Mw)は68,800、分子量分布(Mw/Mn)は1.09、水素化率はほぼ100%であった。
【0096】
(変性ブロック共重合体水素化物[E3]の製造)
得られたブロック共重合体水素化物[D3]のペレットを使用し、参考例1と同様にしてアルコキシシリル基を有する変性ブロック共重合体水素化物[E3]のペレット74部を得た。
得られた変性ブロック共重合体水素化物[E3]は、参考例1と同様にして分析することにより、ブロック共重合体水素化物[D3]の100部に対して、ビニルトリメトキシシラン1.9部が結合したことが確認された。
【0097】
(変性ブロック共重合体水素化物[E3]からなる中間膜[F3]の作製)
変性ブロック共重合体水素化物[E3]のペレットを使用し、溶融樹脂温度150℃、Tダイ温度150℃、キャストロール温度30℃とし、キャストロールに離形用のポリエチレンテレフタレートフィルム(厚さ25μm)(以降、「PETフィルム」と略記する。)を供しながら、PETフィルムの上に変性ブロック共重合体水素化物[3]を押し出すこと以外は、参考例1と同様にして変性ブロック共重合体水素化物[E3]からなる中間膜[F3](厚さ380μm、幅500mm)を成形した。得られた中間膜[F3]はPETフィルムと共にロールに巻き取り回収した。
【0098】
[参考例4]
中間膜[F4]の作製
(ブロック共重合体[C4]の製造)
スチレン35.0部、イソプレン30.0部、スチレン35.0部を、それぞれ3回に分けてこの順に加え、n-ブチルリチウム(15%シクロヘキサン溶液)を0.61部に変える以外は参考例1と同様に重合反応を行い、重合反応を停止させて重合体溶液を得た。得られたブロック共重合体[C4]の重量平均分子量(Mw)は70,000、分子量分布(Mw/Mn)は1.04、wA:wB=70:30であった。
【0099】
(ブロック共重合体水素化物[D4]の製造)
次に、上記重合体溶液を用いて参考例1と同様にして水素化反応を行った。水素化反応後のブロック共重合体水素化物[D4]の重量平均分子量(Mw)は74,100、分子量分布(Mw/Mn)は1.05であった。
【0100】
水素化反応終了後、参考例1と同様に酸化防止剤を添加した後、濃縮乾燥してブロック共重合体水素化物[D4]のペレット97部を得た。得られたペレット状のブロック共重合体水素化物[D4]の重量平均分子量(Mw)は73,400、分子量分布(Mw/Mn)は1.11、水素化率はほぼ100%であった。
【0101】
(変性ブロック共重合体水素化物[E4]の製造)
得られたブロック共重合体水素化物[D4]のペレットを使用し、参考例1と同様にしてアルコキシシリル基を有する変性ブロック共重合体水素化物[E4]のペレット91部を得た。
得られた変性ブロック共重合体水素化物[E4]は、参考例1と同様にして分析することにより、ブロック共重合体水素化物[D4]の100部に対して、ビニルトリメトキシシラン1.4部が結合したことが確認された。
【0102】
(変性ブロック共重合体水素化物[E4]からなる中間膜[F4]の作製)
変性ブロック共重合体水素化物[E4]のペレットを使用し、溶融樹脂温度220℃、Tダイ温度220℃、キャストロール温度70℃とすること以外は、参考例1と同様にして変性ブロック共重合体水素化物[E4]からなる中間膜[F4](厚さ380μm、幅500mm)を成形した。
【0103】
[参考例5]
中間膜[F5]の作製
(変性ブロック共重合体水素化物[E1]を主成分とする組成物[E5]の製造)
参考例1で得られた変性ブロック共重合体水素化物[E1]のペレットを、液状物を添加できるサイドフィーダーを備えた二軸押出し機(製品名「TEM37BS」、東芝機械社製)を用いて、樹脂温度190℃で押出した。一方、サイドフィーダーからイソブテン重合体水素化物(製品名「パールリーム(登録商標)24」、日油社製)を、変性ブロック共重合体水素化物[E1]の100部に対して10部の割合となるように連続的に添加して、ストランド状に押出し、空冷した後、ペレタイザーによりカッティングして、変性ブロック共重合体水素化物[E1]にイソブテン重合体水素化物を配合してなる変性ブロック共重合体水素化物樹脂組成物[E5]のペレット105部を得た。
【0104】
(変性ブロック共重合体水素化物樹脂組成物[E5]からなる中間膜[F5]の作製)
変性ブロック共重合体水素化物樹脂組成物[E5]のペレットを使用する以外は、参考例1と同様にして、変性ブロック共重合体水素化物樹脂組成物[E5]からなる中間膜[F5](厚さ760μm、幅500mm)を成形した。
【0105】
[参考例6]
熱線反射膜を積層した透明フィルム[G1]の作製
縦40cm、横40cmのポリエチレンテレフタレートフィルム(商品名:ルミラー、厚さ50μm、東レ社製)の片面に、DCマグネトロンスパッタリング法により、In23(30nm)/Ag(10nm))/In23(60nm)/Ag(10nm)/In23(30nm)からなる熱線反射膜を積層し、熱線反射用のフィルム[G1]を作製した。フィルム[G1]の、波長550nmの光線透過率は78%、波長2500nmの光線透過率は4%であった。
【0106】
[実施例1]
参考例1で作製した中間膜[F1]のシートから、縦300mm、横300mmの試験片、及び、参考例6で作製した熱線反射膜を積層した透明フィルム[G1]から、縦300mm、横300mmの試験片をそれぞれ切り出した。
次いで、厚さ3.0mm、縦300mm、横300mmの2枚の青板ガラスの間に、中間膜[F1]の試験片、及び透明フィルム[G1]の試験片を、第1のガラス板/第1の中間膜[F1]/フィルム[G1]/第2の中間膜[F1]/第2のガラス板の層構成となるように重ねた。この積層物を、ゴム製バッグに入れて、脱気、密封した後、オートクレーブに入れて温度140℃、圧力0.8MPaで30分間処理して、合わせガラス試験片[H1]-1を作製した。試験片[H1]-1では、フィルム[G1]の端部は中間膜[F1]で包埋されていない。
同様にして、光線透過率測定用に、縦70mm、横50mmの合わせガラス試験片[H1]-2も作製した。
【0107】
合わせガラス試験片[H1]-2の、波長550nmの光線透過率は75%、波長2500nmの光線透過率は4%であった。
合わせガラス試験片[H1]-1は、50℃、95%RHの環境下に保持した後、合わせガラス端部から5mm以内の部分に白化が見られるのみであり、耐湿性の評価は「○(許容)」であった。
また、合わせガラス試験片[H1]-1は、沸騰水中に保持した後、外観上の変化は認められず、耐熱性の評価は「◎(良好)」であった。
【0108】
[実施例2]
参考例6で作製した熱線反射膜を積層した透明フィルム[G1]から、縦294mm、横294mmの試験片を切り出し、中間膜[F1]のシートの端から、縦方向及び横方向共に3mmの距離を離して中間膜[F1]のシートの中央に配置すること以外は、実施例1と同様にして、第1のガラス板/第1の中間膜[F1]/フィルム[G1]/第2の中間膜[F1]/第2のガラス板の層構成からなる合わせガラス試験片[H2]を作製した。試験片[H2]では、合わせガラスの周囲の幅3mmには、フィルム[G1]の無い領域が形成され、フィルム[G1]の端部は第1及び第2の中間膜[F1]で包埋されている。
【0109】
合わせガラス試験片[H2]は、合わせガラス全面に渡って白化及びその他の変化は認められず、耐湿性の評価は「◎(良好)」であった。
また、合わせガラス試験片[H2]では外観上の変化は認められず、耐熱性の評価は「◎(良好)」であった。
【0110】
[実施例3]
参考例2で作製した中間膜[F2]を使用する以外は、実施例1と同様にして、第1のガラス板/第1の中間膜[F2]/フィルム[G1]/第2の中間膜[F2]/第2のガラス板の層構成からなる合わせガラス試験片[H3]-1を作製した。試験片[H3]-1では、フィルム[G1]の端部は第1及び第2の中間膜[F2]で包埋されていない。同様にして、光線透過率測定用に、縦70mm、横50mmの合わせガラス試験片[H3]-2も作製した。
【0111】
合わせガラス試験片[H3]-2の、波長550nmの光線透過率は75%、波長2500nmの光線透過率は4%であった。
合わせガラス試験片[H3]-1は、合わせガラス端部から2mm以内の部分に白化が見られるのみであり、耐湿性の評価は「○(許容)」であった。
また、合わせガラス試験片[H3]-1は、外観上の変化は認められず、耐熱性の評価は「◎(良好)」であった。
【0112】
[実施例4]
参考例2で作製した中間膜[F2]を使用する以外は、実施例2と同様にして、第1のガラス板/第1の中間膜[F2]/フィルム[G1]/第2の中間膜[F2]/第2のガラス板の層構成からなる合わせガラス試験片[H4]を作製した。試験片[H4]では、合わせガラスの周囲の幅3mmには、フィルム[G1]の無い領域が形成され、フィルム[G1]の端部は第1及び第2の中間膜[F2]で包埋されている。
【0113】
合わせガラス試験片[H4]は、合わせガラス全面に渡って白化及びその他の変化は認められず、耐湿性の評価は「◎(良好)」であった。
また、合わせガラス試験片[H4]は、外観上の変化は認められず、耐熱性の評価は「◎(良好)」であった。
【0114】
[実施例5]
参考例5で作製した中間膜[F5]を使用し、青板ガラス(第1及び第2のガラス)に代えて、厚さ3.0mm、縦300mm、横300mmの白板ガラスを使用する以外は、実施例1と同様にして、第1のガラス板/第1の中間膜[F5]/フィルム[G1]/第2の中間膜[F5]/第2のガラス板の層構成からなる合わせガラス試験片[H5]-1を作製した。試験片[H5]-1では、フィルム[G1]の端部は、第1及び第2の中間膜[F5]で包埋されていない。
同様にして、厚さ3.0mmの白板ガラスを使用して光線透過率測定用に、縦70mm、横50mmの合わせガラス試験片[H5]-2も作製した。
【0115】
合わせガラス試験片[H5]-2の、波長550nmの光線透過率は75%、波長25
00nmの光線透過率は4%であった。
合わせガラス試験片[H5]-1は、合わせガラス端部から1mm以内の部分にのみ僅かに白化が見られるのみであり、耐湿性の評価は「○(許容)」であった。
また、合わせガラス試験片[H5]-1は、外観上の変化は認められず、耐熱性の評価は「◎(良好)」であった。
【0116】
[比較例1]
参考例3で作製した中間膜[F3]からPETフィルムを剥がして使用し、オートクレーブの温度を110℃とする以外は、実施例1と同様にして、第1のガラス板/第1の中間膜[F3]/フィルム[G1]/第2の中間膜[F3]/第2のガラス板の層構成からなる合わせガラス試験片[H6]-1を作製した。試験片[H6]-1では、フィルム[G1]の端部は、第1及び第2の中間膜[F3]で包埋されていない。
同様にして、厚さ3.0mmの白板ガラスを使用して、光線透過率測定用の合わせガラス試験片[H6]-2も作製した。
【0117】
合わせガラス試験片[H6]-2の、波長550nmの光線透過率は75%、波長2500nmの光線透過率は4%であった。
合わせガラス試験片[H6]-1は、合わせガラス全面に渡って白化及びその他の変化は認められず、耐湿性の評価は「◎(良好)」であった。
また、合わせガラス試験片[H6]-1は、貼り合わせた2枚のガラス板が約1mmずれを生じ、耐熱性の評価は「×(不良)」であった。
【0118】
[比較例2]
参考例4で作製した中間膜[F4]を使用し、オートクレーブの温度を150℃とする以外は、実施例2と同様にして、第1のガラス板/第1の中間膜[F4]/フィルム[G1]/第2の中間膜[F4]/第2のガラス板の層構成からなる合わせガラス試験片[H7]-1を作製した。試験片[H7]-1では、フィルム[G1]の端部は、第1及び第2の中間膜[F4]で包埋されている。
同様にして、厚さ3.0mmの白板ガラスを使用して、光線透過率測定用の合わせガラス試験片[H7]-2も作製した。
【0119】
合わせガラス試験片[H7]-2の、波長550nmの光線透過率は75%、波長2500nmの光線透過率は4%であった。
合わせガラス試験片[H7]-1は、合わせガラス試験片[H7]-1の端部から10mm以上内側に白化が拡大しており、耐湿性の評価は「×(不良)」であった。
また、合わせガラス試験片[H7]-1でも、合わせガラス試験片[H7]-1の端部から10mm以上内側に白化が拡大しており、耐熱性の評価は「×(不良)」であった。
【0120】
[参考例7]中間膜[F7]の作製
(エチレン・酢酸ビニル共重合体を主成分としてなる中間膜[F7])
エチレン・酢酸ビニル共重合体(以降、「EVA」と略記する。)(製品名「エバフレックス(登録商標)EV150」、酢酸ビニル含有量33重量%、三井・デュポンポリケミカル社製)のペレット95重量部に、トリアリルイソシアヌレート7重量部、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(商品名「KBM-503」、信越化学工業社製)0.5重量部、ジクミルパーオキサイド(商品名「パークミルD」、日油社製)1.0重量部及び2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)フェノール0.4部を添加し、混合した。
【0121】
この混合物を、参考例1で使用したのと同じTダイ式フィルム成形機、及びフィルム引取り機を使用し、溶融樹脂温度90℃、Tダイ温度90℃、エンボスロール温度50℃の成形条件にて、押出しシートの片面はタッチロールでエンボスロールに押し当て、エンボス形状を付与しながら、厚さ380μm、幅500mmのEVAからなる中間膜[F7](厚さ380μm、幅500mm)を成形した。得られた中間膜[F7]はロールに巻き取り回収した。
【0122】
[比較例3]
参考例[7]で作製したEVAを主成分としてなる中間膜「F7]のシートから、縦300mm、横300mmの試験片、及び、参考例6で作製した熱線反射膜を積層した透明フィルム[G1]から縦294mm、横294mmの試験片を切り出した。厚さ3.0mm、縦300mm、横300mmの2枚の青板ガラス(第1及び第2のガラス)の間に、中間膜[F7]の試験片及び透明フィルム[G1]の試験片を、第1のガラス板/第1の中間膜[F7]/フィルム[G1]/第2の中間膜[F7]/第2のガラス板の層構成で重ねた。
この積層物を、真空ラミネータ(PVL0505S、日清紡メカトロニクス社製)を使用して、減圧下で、温度150℃で10分間予熱した後、温度150℃、圧力0.03MPaで30分間圧着し、合わせガラスとした。この合わせガラスを、さらにオートクレーブに入れて、温度140℃、圧力0.8MPaで30分間処理して、合わせガラス試験片[H8]を作製した。合わせガラス試験片[H8]では、合わせガラスの周囲の幅3mmにはフィルム[G1]の無い領域が形成され、フィルム[G1]の端部は、第1及び第2の中間膜[F7]で包埋されている。
【0123】
合わせガラス試験片[H8]は、合わせガラス試験片[H8]の端部から10mm以上内側に白化が拡大しており、耐湿性の評価は「×(不良)」であった。
また、合わせガラス試験片[H8]は、合わせガラス試験片[H8]の端部から10mm以上内側に白化が拡大しており、耐湿性の評価は「×(不良)」であった。
【0124】
本実施例及び比較例の結果から以下のことがわかる。
本発明の範囲の特定の変性ブロック共重合体水素化物[E]からなる中間膜[F]を使用した、第1のガラス板/第1の中間膜/熱線反射膜を積層した透明フィルム/第2の中間膜/第2のガラス板の順に積層してなる合わせガラスは、赤外線領域の光の良好な反射機能を有し、耐湿性、耐熱性に優れたものである(実施例1~5)。
熱線反射膜を積層した透明フィルムの端部が特定の変性ブロック共重合体水素化物[E]からなる中間膜[F]に包埋された合わせガラスは、耐湿試験でも熱線反射膜を積層したフィルムの端部が白化することなく、より優れた耐湿性を示す(実施例2、4)。
変性ブロック共重合体水素化物[E]の場合も、芳香族ビニル化合物由来の繰り返し単位を主成分とする重合体ブロック[A]の含有率が少な過ぎると、耐湿性は良好であるが、耐熱性が不十分である(比較例1)。
変性ブロック共重合体水素化物[E]の場合も、芳香族ビニル化合物由来の繰り返し単位を主成分とする重合体ブロック[A]の含有率が多過ぎると、耐熱性は高いが、熱線反射膜を積層した透明フィルムの端部を包埋した場合でも耐湿性、耐煮沸性は不十分である(比較例2)。
極性基を有するEVAからなる中間膜では、熱線反射膜を積層した透明フィルムの端部を包埋しても耐湿性、耐煮沸性は不十分である(比較例3)。
【産業上の利用可能性】
【0125】
本発明により提供される熱線反射機能を有する合わせガラスは、優れた耐湿性、耐熱性を有しており、実用面において有用性の高いものである。

本発明によれば、特定の変性ブロック共重合体水素化物[E]からなる中間膜を使用することにより、量産性に優位な熱線反射膜を積層した透明フィルムをガラス板間に挟み込んだ構造の合わせガラスが製造可能である。