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特許7249938吸水性樹脂組成物、吸収体、及び吸収性物品
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-23
(45)【発行日】2023-03-31
(54)【発明の名称】吸水性樹脂組成物、吸収体、及び吸収性物品
(51)【国際特許分類】
   C08L 33/08 20060101AFI20230324BHJP
   C08K 5/32 20060101ALI20230324BHJP
   A61F 13/15 20060101ALI20230324BHJP
   A61F 13/53 20060101ALI20230324BHJP
   A61L 15/20 20060101ALI20230324BHJP
   A61L 15/46 20060101ALI20230324BHJP
   A61L 15/50 20060101ALI20230324BHJP
【FI】
C08L33/08
C08K5/32
A61F13/15 141
A61F13/53 300
A61L15/20 200
A61L15/46 200
A61L15/50 200
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019506043
(86)(22)【出願日】2018-03-13
(86)【国際出願番号】 JP2018009729
(87)【国際公開番号】W WO2018168850
(87)【国際公開日】2018-09-20
【審査請求日】2021-02-18
(31)【優先権主張番号】P 2017053599
(32)【優先日】2017-03-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000195661
【氏名又は名称】住友精化株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124431
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 順也
(74)【代理人】
【識別番号】100174160
【弁理士】
【氏名又は名称】水谷 馨也
(72)【発明者】
【氏名】村上 真啓
(72)【発明者】
【氏名】谷本 大樹
【審査官】松元 洋
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-104119(JP,A)
【文献】特開2012-153823(JP,A)
【文献】特表2002-505917(JP,A)
【文献】特開2001-258934(JP,A)
【文献】特開昭64-015045(JP,A)
【文献】特表2000-505692(JP,A)
【文献】特開昭51-047847(JP,A)
【文献】特開2017-177065(JP,A)
【文献】米国特許第3920015(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00 - 101/16
C08K 3/00 - 13/08
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸水性樹脂と、
下記一般式(1)で表されるヒドロキサム酸類:
【化1】
[一般式(1)中、基Rは、直鎖もしくは分岐鎖のC1~C7アルキル基、フェニル基、ヒドロキシフェニル基、アミノ基、ナフチル基、ピリジル基、ブトキシ基を有する芳香族アルキル基、ベンズアミド構造を有するアルキル基、又はフェニルカルバモイル基を有するアルキル基を示す。]
とを含む、吸水性樹脂組成物であって、
前記吸水性樹脂組成物は、粒子状の前記吸水性樹脂と固体の前記ヒドロキサム酸類又はその塩との混合物であり、
前記吸水性樹脂は、75~100モル%中和されたアクリル酸塩の重合体であり、
前記ヒドロキサム酸類又はその塩の含有量が、前記吸水性樹脂100質量部に対して、0.01~1.0質量部の範囲である、吸水性樹脂組成物。
【請求項2】
前記一般式(1)で表されるヒドロキサム酸類が、アルカリ金属塩またはアンモニウム塩の形態で含まれている、請求項1に記載の吸水性樹脂組成物。
【請求項3】
前記ヒドロキサム酸類又はその塩が、アセトヒドロキサム酸、サリチルヒドロキサム酸、オクタノヒドロキサム酸、ベンゾヒドロキサム酸、ヒドロキシ尿素、2-(4-ブトキシフェニル)アセトヒドロキサム酸、1-ナフトヒドロキサム酸、3-ピリジンカルボヒドロキサム酸、スベロイルアニリドヒドロキサム酸、4-(ジメチルアミノ)-N-[7-(ヒドロキシアミノ)-7-オキソヘプチル]ベンズアミド、アセトヒドロキサム酸ナトリウム、オクタノヒドロキサム酸ナトリウム、及びベンゾヒドロキサム酸ナトリウムからなる群より選択される少なくとも1種である、請求項1または2に記載の吸水性樹脂組成物。
【請求項4】
前記ヒドロキサム酸類又はその塩の含有量が、前記吸水性樹脂100質量部に対して、0.5~1.0質量部の範囲である、請求項1~3のいずれかに記載の吸水性樹脂組成物。
【請求項5】
請求項1~4のいずれかに記載の吸水性樹脂組成物と、親水性繊維とを含む、吸収体。
【請求項6】
液体透過性シートと液体不透過性シートの間に、請求項5に記載の吸収体が保持されている、吸収性物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸水性樹脂組成物、吸収体、及び吸収性物品に関し、より詳しくは、紙オムツ、生理用ナプキン、失禁用パッド等の衛生材料に好適に用いられる吸収体を構成する吸水性樹脂組成物、及び吸収体を用いた吸収性物品に関する。
【背景技術】
【0002】
吸水性樹脂は、近年、紙オムツ、生理用ナプキン、失禁用パッド等の衛生材料の分野に広く使用されている。
【0003】
このような吸水性樹脂としては、アクリル酸部分中和塩重合体架橋物が、好ましい吸水性樹脂であるとされている。即ち、アクリル酸部分中和塩重合体架橋物は、腐敗や劣化がおこりにくく、さらに、その原料であるアクリル酸の工業的な入手が容易であるため、一定の品質を保持しつつ安価に製造できる。
【0004】
一方、紙オムツ、生理用ナプキン、失禁用パッド等の吸収性物品は、主として中心部に配された、身体から排泄される尿、経血等の体液を吸収、保持する吸収体と、身体に接する側に配された液体透過性の表面シート(トップシート)と、身体と接する反対側に配された液体不透過性の裏面シート(バックシート)から構成されている。また、吸収体は、パルプ等の親水性繊維と吸水性樹脂とから構成されている。
【0005】
このような吸収体が例えば衛生材料などに使用される場合には、体液、特に尿、血液、汗等を吸収した吸収体から、アンモニアなどの不快臭が発生する場合がある。
【0006】
このような不快臭を抑制する手法として、例えば、活性炭やゼオライト等の臭気成分吸着剤を吸収体に混合する方法(例えば、特許文献1,2参照)、不快臭成分よりも強い香りを吸収体から発生させるマスキングという方法(例えば、特許文献3参照)、不快臭の原因となる成分を、不快臭を発生しない成分に化学変化させる方法、重金属を吸収体に混合して、不快臭を発生させる菌を死滅させる方法などが知られている(例えば、特許文献4参照)。
【0007】
一方、吸水性樹脂を用いて吸収体を製造する際に、吸水性樹脂の流動性の低さに起因して、生産性が低下する場合があり、例えば、不快臭を抑制する手法を採用する際に添加される成分によっては、吸水性樹脂の流動性がさらに低下する懸念もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2001-37805号公報
【文献】特開平11-512946号公報
【文献】特公平6-51843号公報
【文献】特表2001-505237号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、不快臭を抑制することができ、かつ、優れた流動性を備えた吸水性樹脂組成物を提供することを主な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した。その結果、吸水性樹脂と所定のヒドロキサム酸類又はその塩とを含む吸水性樹脂組成物は、不快臭を抑制することができ、さらに、意外にも、優れた流動性を発揮することを見出した。
本発明は、このような知見に基づき、さらに鋭意検討を重ねて完成した発明である。
【0011】
すなわち、本発明は、下記の構成を備える発明を提供する。
項1. 吸水性樹脂と、
下記一般式(1)で表されるヒドロキサム酸類:
【化1】

[一般式(1)中、基Rは、直鎖もしくは分岐鎖のC1~C7アルキル基、フェニル基、ヒドロキシフェニル基、アミノ基、ナフチル基、ピリジル基、ブトキシ基を有する芳香族アルキル基、ベンズアミド構造を有するアルキル基、又はフェニルカルバモイル基を有するアルキル基を示す。]
とを含む、吸水性樹脂組成物。
項2. 前記一般式(1)で表されるヒドロキサム酸類が、アルカリ金属塩またはアンモニウム塩の形態で含まれている、項1に記載の吸水性樹脂組成物。
項3. 前記ヒドロキサム酸類又はその塩が、アセトヒドロキサム酸、サリチルヒドロキサム酸、オクタノヒドロキサム酸、ベンゾヒドロキサム酸、ヒドロキシ尿素、2-(4-ブトキシフェニル)アセトヒドロキサム酸、1-ナフトヒドロキサム酸、3-ピリジンカルボヒドロキサム酸、スベロイルアニリドヒドロキサム酸、4-(ジメチルアミノ)-N-[7-(ヒドロキシアミノ)-7-オキソヘプチル]ベンズアミド、アセトヒドロキサム酸ナトリウム、オクタノヒドロキサム酸ナトリウム、及びベンゾヒドロキサム酸ナトリウムからなる群より選択される少なくとも1種である、項1または2に記載の吸水性樹脂組成物。
項4. 前記ヒドロキサム酸類又はその塩の含有量が、前記吸水性樹脂100質量部に対して、0.01~5質量部の範囲である、項1~3のいずれかに記載の吸水性樹脂組成物。
項5. 項1~4のいずれかに記載の吸水性樹脂組成物と、親水性繊維とを含む、吸収体。
項6. 液体透過性シートと液体不透過性シートの間に、項5に記載の吸収体が保持されている、吸収性物品。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、不快臭を抑制することができ、かつ、優れた流動性を備えた吸水性樹脂組成物を提供することができる。さらに、本発明によれば、当該吸水性樹脂を用いた吸収性物品を提供することもできる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
1.吸水性樹脂組成物
本発明の吸水性樹脂組成物は、吸水性樹脂と、後述の一般式(1)で表されるヒドロキサム酸類又はその塩とを含んでいることを特徴としている。当該ヒドロキサム酸類又はその塩が含まれていることにより、吸水性樹脂組成物が不快臭の原因となる成分を吸収した場合にも、不快臭(特に、不快臭の代表的な成分であるアンモニア)の発生を効果的に抑制することができる。さらに、当該ヒドロキサム酸類又はその塩が含まれていることにより、意外にも、吸水性樹脂組成物の流動性が向上し、吸水性樹脂組成物を用いた吸収体などの生産性を高めることができる。以下、本発明の吸水性樹脂組成物について詳述する。
【0014】
(ヒドロキサム酸類)
本発明の吸水性樹脂組成物に含まれるヒドロキサム酸類は、下記一般式(1)で示される。
【0015】
【化2】
【0016】
一般式(1)において、基Rは、直鎖もしくは分岐鎖のC1~C7アルキル基、フェニル基、ヒドロキシフェニル基、アミノ基、ナフチル基、ピリジル基、ブトキシ基を有する芳香族アルキル基、ベンズアミド構造を有するアルキル基、又はフェニルカルバモイル基を有するアルキル基を示す。なお、本明細書において、「直鎖もしくは分岐鎖のC1~C7アルキル基」とは、「直鎖もしくは分岐鎖の炭素数が1~7のアルキル基」を意味する。
【0017】
一般式(1)のヒドロキサム酸類は、アルカリ金属塩、アンモニウム塩などの塩の形態で本発明の吸水性樹脂組成物に含まれていてもよい。
【0018】
ヒドロキサム酸類又はその塩の好ましい具体例としては、アセトヒドロキサム酸、サリチルヒドロキサム酸、オクタノヒドロキサム酸、ベンゾヒドロキサム酸、ヒドロキシ尿素、2-(4-ブトキシフェニル)アセトヒドロキサム酸、1-ナフトヒドロキサム酸、3-ピリジンカルボヒドロキサム酸、スベロイルアニリドヒドロキサム酸、並びに4-(ジメチルアミノ)-N-[7-(ヒドロキシアミノ)-7-オキソヘプチル]ベンズアミド、アセトヒドロキサム酸ナトリウム、オクタノヒドロキサム酸ナトリウム及びベンゾヒドロキサム酸ナトリウムが挙げられる。特に、入手が容易という観点から、好ましくは、アセトヒドロキサム酸及びサリチルヒドロキサム酸が挙げられる。本発明の吸水性樹脂組成物に含まれるヒドロキサム酸類及びその塩は、1種類であってもよいし、2種類以上であってもよい。
【0019】
本発明の吸水性樹脂組成物において、ヒドロキサム酸類又はその塩と吸水性樹脂の配合割合(ヒドロキサム酸類又はその塩を複数種類含む場合には合計割合)は特に制限されないが、十分な吸水性能を確保しつつ、吸水性樹脂組成物の不快臭抑制効果と流動性をより一層高める観点からは、吸水性樹脂100質量部に対するヒドロキサム酸類又はその塩の含有量の下限は好ましくは0.01質量部以上、より好ましくは0.05質量部以上が挙げられる。また工業的な生産のし易さおよびコストの観点からは、吸水性樹脂100質量部に対するヒドロキサム酸類又はその塩の含有量の上限は好ましくは5質量部以下、より好ましくは2.5質量部以下、さらに好ましくは1.0質量部以下が挙げられる。これらの下限値と上限値はそれぞれ任意に組み合わせることができ、吸水性樹脂100質量部に対するヒドロキサム酸類又はその塩の含有量は、好ましくは、0.01~5質量部(0.01質量部以上5質量部以下)、0.05~2.5質量部、0.05~1.0質量部が挙げられる。
【0020】
本発明の吸水性樹脂組成物は、ヒドロキサム酸類又はその塩と吸水性樹脂とを混合することによって、簡便に製造することができる。
【0021】
(吸水性樹脂)
本発明の吸水性樹脂組成物に含まれる吸水性樹脂は、例えば、水溶性エチレン性不飽和単量体の重合体により構成されている。
【0022】
吸水性樹脂は、通常、粒子状である。吸水性樹脂は、中位粒子径が200~600μmであることが好ましく、250~500μmであることがより好ましく、300~450μmであることがさらに好ましい。
【0023】
なお、吸水性樹脂の粒子は、各々が単一の粒子からなる形態のほかに、微細な粒子(一次粒子)が凝集した形態(二次粒子)であってもよい。一次粒子の形状としては、略球状、不定形破砕状、板状等が挙げられる。吸水性樹脂の粒子が逆相懸濁重合によって製造される一次粒子である場合には、真球状、楕円球状等のような円滑な表面形状を有する略球状の単粒子形状の吸水性樹脂を作製し得る。このような形状の一次粒子は、表面形状が円滑であることにより、粉体としての流動性が高くなるうえ、凝集した粒子が密に充填されやすいために衝撃を受けても破壊されにくい。従って、粒子強度が高い吸水性樹脂が得られやすい。
【0024】
吸水性樹脂の中位粒子径は、JIS標準篩を用いて測定することができ、具体的には、実施例に記載の方法により測定した値である。
【0025】
吸水性樹脂は、目的に応じた添加剤を含んでいてもよい。このような添加剤としては、無機粉末、界面活性剤、酸化剤、還元剤、金属キレート剤、ラジカル連鎖禁止剤、酸化防止剤、抗菌剤、消臭剤等が挙げられる。例えば、吸水性樹脂100質量部に対し、無機粉末として0.05~5質量部の非晶質シリカを添加することで、吸水性樹脂の流動性をより一層向上させることができる。
【0026】
水溶性エチレン性不飽和単量体の重合方法は、代表的な重合法である水溶液重合法、乳化重合法、逆相懸濁重合法等が用いられる。水溶液重合法では、水溶性エチレン性不飽和単量体水溶液を、必要に応じて攪拌しながら、加熱することにより重合が行われる。また、逆相懸濁重合法では、水溶性エチレン性不飽和単量体を、炭化水素分散媒中、攪拌下で加熱することにより重合が行われる。本発明においては、精密な重合反応制御と広範な粒子径の制御が可能な観点から逆相懸濁重合法が好ましい。
【0027】
吸水性樹脂に関して、その製造方法の一例を、以下に説明する。
【0028】
吸水性樹脂の製造方法の具体例としては、水溶性エチレン性不飽和単量体を炭化水素分散媒中で逆相懸濁重合させて吸水性樹脂を製造する方法において、ラジカル重合開始剤の存在下において重合を行う工程と、重合で得られた含水ゲル状物に後架橋剤の存在下に後架橋する工程とを有する製造方法が挙げられる。なお、本発明の吸水性樹脂の製造方法においては、必要に応じて水溶性エチレン性不飽和単量体に内部架橋剤を添加して内部架橋構造を有する含水ゲル状物としてもよい。
【0029】
<重合工程>
[水溶性エチレン性不飽和単量体]
水溶性エチレン性不飽和単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸(本明細書においては、「アクリル」及び「メタクリル」を合わせて「(メタ)アクリル」と表記する。以下同様)及びその塩;2-(メタ)アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸及びその塩;(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、N-メチロール(メタ)アクリルアミド、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート等の非イオン性単量体;N,N-ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド等のアミノ基含有不飽和単量体及びその4級化物等が挙げられる。これらの水溶性エチレン性不飽和単量体の中でも、工業的に入手が容易であること等の観点から、(メタ)アクリル酸又はその塩、(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチルアクリルアミドが好ましく、(メタ)アクリル酸及びその塩がより好ましい。なお、これらの水溶性エチレン性不飽和単量体は、単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0030】
これらの中でも、アクリル酸及びその塩が吸水性樹脂の原材料として広く用いられており、これらアクリル酸及び/又はその塩に、前述の他の水溶性エチレン性不飽和単量体を共重合させて用いる場合もある。この場合、アクリル酸及び/又はその塩は、主となる水溶性エチレン性不飽和単量体として、総水溶性エチレン性不飽和単量体に対して70~100モル%用いられることが好ましい。
【0031】
水溶性エチレン性不飽和単量体は、水溶液の状態で炭化水素分散媒中に分散されて、逆相懸濁重合に供されるのが好ましい。水溶性エチレン性不飽和単量体は、水溶液とすることにより、炭化水素分散媒中での分散効率を上昇させることができる。この水溶液における水溶性エチレン性不飽和単量体の濃度としては、20質量%~飽和濃度の範囲であることが好ましい。また、水溶性エチレン性不飽和単量体の濃度としては、55質量%以下であることがより好ましく、50質量%以下であることがさらに好ましく、45質量%以下であることがよりさらに好ましい。一方、水溶性エチレン性不飽和単量体の濃度としては25質量%以上であることがより好ましく、28質量%以上であることがさらに好ましく、30質量%以上であることがよりさらに好ましい。
【0032】
水溶性エチレン性不飽和単量体が、(メタ)アクリル酸、2-(メタ)アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸等のように酸基を有する場合、必要に応じてその酸基が予めアルカリ性中和剤により中和されたものを用いてもよい。このようなアルカリ性中和剤としては、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸カリウム等のアルカリ金属塩;アンモニア等が挙げられる。また、これらのアルカリ性中和剤は、中和操作を簡便にするために水溶液の状態にして用いてもよい。なお、上述したアルカリ性中和剤は、単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0033】
アルカリ性中和剤による水溶性エチレン性不飽和単量体の中和度としては、水溶性エチレン性不飽和単量体が有する全ての酸基に対する中和度として、10~100モル%であることが好ましく、30~90モル%であることがより好ましく、40~85モル%であることがさらに好ましく、50~80モル%であることがよりさらに好ましい。
【0034】
[ラジカル重合開始剤]
当該重合工程に添加されるラジカル重合開始剤としては、例えば、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム等の過硫酸塩類、メチルエチルケトンパーオキシド、メチルイソブチルケトンパーオキシド、ジ-t-ブチルパーオキシド、t-ブチルクミルパーオキシド、t-ブチルパーオキシアセテート、t-ブチルパーオキシイソブチレート、t-ブチルパーオキシピバレート、過酸化水素等の過酸化物類、並びに、2,2'-アゾビス(2-アミジノプロパン)2塩酸塩、2,2’-アゾビス〔2-(N-フェニルアミジノ)プロパン〕2塩酸塩、2,2’-アゾビス〔2-(N-アリルアミジノ)プロパン〕2塩酸塩、2,2’-アゾビス{2-〔1-(2-ヒドロキシエチル)-2-イミダゾリン-2-イル〕プロパン}2塩酸塩、2,2’-アゾビス{2-メチル-N-〔1,1-ビス(ヒドロキシメチル)-2-ヒドロキシエチル〕プロピオンアミド}、2,2’-アゾビス〔2-メチル-N-(2-ヒドロキシエチル)-プロピオンアミド〕、4,4’-アゾビス(4-シアノ吉草酸)等のアゾ化合物等を挙げることができる。これらのラジカル重合開始剤の中でも、入手が容易で取り扱いやすいという観点から、好ましくは、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム及び2,2'-アゾビス(2-アミジノプロパン)2塩酸塩が挙げられる。これらラジカル重合開始剤は、単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、前記ラジカル重合開始剤は、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム、硫酸第一鉄、及びL-アスコルビン酸等の還元剤と併用して、レドックス重合開始剤として用いることもできる。
【0035】
ラジカル重合開始剤の使用量としては、特に制限されないが、例えば、水溶性エチレン性不飽和単量体1モルに対して0.00005~0.01モルが挙げられる。このような使用量を充足することにより、急激な重合反応が起こるのを回避し、且つ重合反応を適切な時間で完了させることができる。
【0036】
[内部架橋剤]
内部架橋剤としては、使用する水溶性エチレン性不飽和単量体の重合体を架橋できるものが挙げられ、例えば、(ポリ)エチレングリコール〔「(ポリ)」とは「ポリ」の接頭語がある場合とない場合を意味する。以下同様〕、(ポリ)プロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、トリメチロールプロパン、(ポリ)グリセリン等のジオール、トリオール等のポリオール類と(メタ)アクリル酸、マレイン酸、フマル酸等の不飽和酸とを反応させて得られる不飽和ポリエステル類;N,N-メチレンビスアクリルアミド等のビスアクリルアミド類;ポリエポキシドと(メタ)アクリル酸とを反応させて得られるジ(メタ)アクリル酸エステル類又はトリ(メタ)アクリル酸エステル類;トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等のポリイソシアネートと(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチルとを反応させて得られるジ(メタ)アクリル酸カルバミルエステル類;アリル化澱粉、アリル化セルロース、ジアリルフタレート、N,N’,N’’-トリアリルイソシアネート、ジビニルベンゼン等の重合性不飽和基を2個以上有する化合物;(ポリ)エチレングリコールジグリシジルエーテル、(ポリ)プロピレングリコールジグリシジルエーテル、(ポリ)グリセリンジグリシジルエーテル等のジグリシジル化合物、トリグリシジル化合物等のポリグリシジル化合物;エピクロルヒドリン、エピブロムヒドリン、α-メチルエピクロルヒドリン等のエピハロヒドリン化合物;2,4-トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等のイソシアネート化合物等の反応性官能基を2個以上有する化合物;3-メチル-3-オキセタンメタノール、3-エチル-3-オキセタンメタノール、3-ブチル-3-オキセタンメタノール、3-メチル-3-オキセタンエタノール、3-エチル-3-オキセタンエタノール、3-ブチル-3-オキセタンエタノール等のオキセタン化合物等が挙げられる。これらの内部架橋剤の中でも、ポリグリシジル化合物を用いることが好ましく、ジグリシジルエーテル化合物を用いることがより好ましく、(ポリ)エチレングリコールジグリシジルエーテル、(ポリ)プロピレングリコールジグリシジルエーテル、(ポリ)グリセリンジグリシジルエーテルを用いることがよりさらに好ましい。これらの内部架橋剤は、単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0037】
内部架橋剤の使用量としては、水溶性エチレン性不飽和単量体1モルに対して、0.000001~0.02モルであることが好ましく、0.00001~0.01モルであることがより好ましく、0.00001~0.005モルであることがさらに好ましく、0.00005~0.002モルであることがよりさらに好ましい。
【0038】
[炭化水素分散媒]
炭化水素分散媒としては、例えば、n-ヘキサン、n-ヘプタン、2-メチルヘキサン、3-メチルヘキサン、2,3-ジメチルペンタン、3-エチルペンタン、n-オクタン等の炭素数6~8の脂肪族炭化水素;シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、シクロペンタン、メチルシクロペンタン、trans-1,2-ジメチルシクロペンタン、cis-1,3-ジメチルシクロペンタン、trans-1,3-ジメチルシクロペンタン等の脂環族炭化水素;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素等が挙げられる。これらの炭化水素分散媒の中でも、特に、工業的に入手が容易であり、品質が安定しており且つ安価である点で、n-ヘキサン、n-ヘプタン、シクロヘキサンが好適に用いられる。これらの炭化水素分散媒は、単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。なお、炭化水素分散媒の混合物の例としては、エクソールヘプタン(エクソンモービル社製:ヘプタン及びその異性体の炭化水素75~85質量%含有)等の市販品が挙げられる。このような混合物を用いても好適な結果を得ることができる。
【0039】
炭化水素分散媒の使用量としては、水溶性エチレン性不飽和単量体を均一に分散し、重合温度の制御を容易にする観点から、第1段目の水溶性エチレン性不飽和単量体100質量部に対して、100~1500質量部であることが好ましく、200~1400質量部であることがより好ましい。なお、後述するが、逆相懸濁重合は、1段(単段)もしくは2段以上の多段で行われ、上述した第1段目の重合とは、単段重合もしくは多段重合における1段目の重合反応を意味する(以下も同様)。
【0040】
[分散安定剤]
(界面活性剤)
逆相懸濁重合では、水溶性エチレン性不飽和単量体の炭化水素分散媒中での分散安定性を向上させるために、分散安定剤を用いることもできる。その分散安定剤としては、界面活性剤を用いることができる。
【0041】
界面活性剤としては、例えば、ショ糖脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ソルビトール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンヒマシ油、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、アルキルアリルホルムアルデヒド縮合ポリオキシエチレンエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックコポリマー、ポリオキシエチレンポリオキシプロピルアルキルエーテル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、アルキルグルコシド、N-アルキルグルコンアミド、ポリオキシエチレン脂肪酸アミド、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシエチレンアルキルエーテルのリン酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルアリルエーテルのリン酸エステル等を用いることができる。これらの界面活性剤の中でも、特に、単量体の分散安定性の面から、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステルを用いることが好ましい。これらの界面活性剤は、単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0042】
界面活性剤の使用量としては、第1段目の水溶性エチレン性不飽和単量体100質量部に対して、好ましくは0.1~30質量部であることが好ましく、0.3~20質量部であることがより好ましい。
【0043】
(高分子系分散剤)
また、逆相懸濁重合で用いられる分散安定剤としては、上述した界面活性剤と共に、高分子系分散剤を併せて用いてもよい。
【0044】
高分子系分散剤としては、例えば、無水マレイン酸変性ポリエチレン、無水マレイン酸変性ポリプロピレン、無水マレイン酸変性エチレン・プロピレン共重合体、無水マレイン酸変性EPDM(エチレン・プロピレン・ジエン・ターポリマー)、無水マレイン酸変性ポリブタジエン、無水マレイン酸・エチレン共重合体、無水マレイン酸・プロピレン共重合体、無水マレイン酸・エチレン・プロピレン共重合体、無水マレイン酸・ブタジエン共重合体、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン・プロピレン共重合体、酸化型ポリエチレン、酸化型ポリプロピレン、酸化型エチレン・プロピレン共重合体、エチレン・アクリル酸共重合体、エチルセルロース、エチルヒドロキシエチルセルロース等が挙げられる。これらの高分子系分散剤の中でも、特に、単量体の分散安定性の面から、無水マレイン酸変性ポリエチレン、無水マレイン酸変性ポリプロピレン、無水マレイン酸変性エチレン・プロピレン共重合体、無水マレイン酸・エチレン共重合体、無水マレイン酸・プロピレン共重合体、無水マレイン酸・エチレン・プロピレン共重合体、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン・プロピレン共重合体、酸化型ポリエチレン、酸化型ポリプロピレン、酸化型エチレン・プロピレン共重合体を用いることが好ましい。これらの高分子系分散剤は、単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0045】
高分子系分散剤の使用量としては、第1段目の水溶性エチレン性不飽和単量体100質量部に対して、0.1~30質量部であることが好ましく、0.3~20質量部であることがより好ましい。
【0046】
[その他の成分]
吸水性樹脂の製造方法において、所望によりその他の成分を、水溶性エチレン性不飽和単量体を含む水溶液に添加して逆相懸濁重合を行うようにしてもよい。その他の成分としては、増粘剤、連鎖移動剤等の各種の添加剤が挙げられる。
【0047】
[逆相懸濁重合]
逆相懸濁重合を行うにあたっては、例えば、分散安定剤の存在下に、水溶性エチレン性不飽和単量体を含む単量体水溶液を、炭化水素分散媒に分散させる。このとき、重合反応を開始する前であれば、分散安定剤(界面活性剤や高分子系分散剤)の添加時期は、単量体水溶液添加の前後どちらであってもよい。
【0048】
その中でも、得られる吸水性樹脂に残存する炭化水素分散媒量を低減しやすいという観点から、高分子系分散剤を分散させた炭化水素分散媒に、単量体水溶液を分散させた後に、さらに界面活性剤を分散させてから重合を行うことが好ましい。
【0049】
このような逆相懸濁重合を、1段もしくは2段以上の多段で行うことが可能である。また、生産性を高める観点から2~3段で行うことが好ましい。
【0050】
2段以上の多段で逆相懸濁重合を行う場合には、1段目の逆相懸濁重合を行った後、1段目の重合反応で得られた反応混合物に水溶性エチレン性不飽和単量体を添加して混合し、1段目と同様の方法で2段目以降の逆相懸濁重合を行えばよい。2段目以降の各段における逆相懸濁重合では、水溶性エチレン性不飽和単量体の他に、ラジカル重合開始剤を、2段目以降の各段における逆相懸濁重合の際に添加する水溶性エチレン性不飽和単量体の量を基準として、上述した水溶性エチレン性不飽和単量体に対する各成分のモル比の範囲内で添加して逆相懸濁重合を行うことが好ましい。なお、2段目以降の重合においても、必要に応じて、水溶性エチレン性不飽和単量体に内部架橋剤を添加してもよい。
【0051】
重合反応の反応温度としては、重合を迅速に進行させ、重合時間を短くすることにより、経済性を高めるとともに、容易に重合熱を除去して円滑に反応を行わせる観点から、20~110℃であることが好ましく、40~90℃であることがより好ましい。
【0052】
<後架橋工程>
上記<重合工程>を経ることで水溶性エチレン性不飽和単量体が重合し、内部架橋構造を有する含水ゲル状物が得られる。この含水ゲル状物は、後述する<乾燥工程>にそのまま供されてもよいし、本欄で説明するように後架橋剤で後架橋させて(即ち、後架橋反応を経て)もよい。この後架橋反応は、水溶性エチレン性不飽和単量体の重合後以降に後架橋剤の存在下に行うことが好ましい。このように、重合後以降に、内部架橋構造を有する含水ゲル状物に対して後架橋反応を施すことによって、吸水性樹脂の表面近傍の架橋密度を高めて、荷重下吸水能等の諸性能を高めた吸水性樹脂を得ることができる。
【0053】
後架橋剤としては、反応性官能基を2個以上有する化合物を挙げることができる。例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、トリメチロールプロパン、グリセリン、ポリオキシエチレングリコール、ポリオキシプロピレングリコール、ポリグリセリン等のポリオール類;(ポリ)エチレングリコールジグリシジルエーテル、(ポリ)グリセリンジグリシジルエーテル、(ポリ)グリセリントリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、(ポリ)プロピレングリコールポリグリシジルエーテル、(ポリ)グリセロールポリグリシジルエーテル等のポリグリシジル化合物;エピクロルヒドリン、エピブロムヒドリン、α-メチルエピクロルヒドリン等のハロエポキシ化合物;2,4-トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等のイソシアネート化合物;3-メチル-3-オキセタンメタノール、3-エチル-3-オキセタンメタノール、3-ブチル-3-オキセタンメタノール、3-メチル-3-オキセタンエタノール、3-エチル-3-オキセタンエタノール、3-ブチル-3-オキセタンエタノール等のオキセタン化合物;1,2-エチレンビスオキサゾリン等のオキサゾリン化合物;エチレンカーボネート等のカーボネート化合物;ビス[N,N-ジ(β-ヒドロキシエチル)]アジプアミド等のヒドロキシアルキルアミド化合物が挙げられる。これらの後架橋剤の中でも、(ポリ)エチレングリコールジグリシジルエーテル、(ポリ)グリセリンジグリシジルエーテル、(ポリ)グリセリントリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、(ポリ)プロピレングリコールポリグリシジルエーテル、(ポリ)グリセロールポリグリシジルエーテル等のポリグリシジル化合物が好ましい。これらの後架橋剤は、単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0054】
後架橋剤の使用量としては、重合に使用した水溶性エチレン性不飽和単量体1モルに対して、0.00001~0.01モルであることが好ましく、0.00005~0.005モルであることがより好ましく、0.0001~0.002モルであることがさらに好ましい。なお、2段以上の多段で逆相懸濁重合を行う場合、後架橋剤の使用量の基準となる水溶性エチレン性不飽和単量体の量は、各段で使用した水溶性エチレン性不飽和単量体の総量である。
【0055】
後架橋剤の添加方法としては、後架橋剤をそのまま添加しても、水溶液として添加してもよいが、必要に応じて、溶媒として親水性有機溶媒を用いた溶液として添加してもよい。親水性有機溶媒としては、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、n-プロピルアルコール、イソプロピルアルコール等の低級アルコール類;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;ジエチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン等のエーテル類;N,N-ジメチルホルムアミド等のアミド類;ジメチルスルホキシド等のスルホキシド類等が挙げられる。これら親水性有機溶媒は、単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて、又は水との混合溶媒として用いてもよい。
【0056】
後架橋剤の添加時期としては、水溶性エチレン性不飽和単量体の重合反応がほぼすべて終了した後であればよい。後架橋剤は、水溶性エチレン性不飽和単量体100質量部に対して、1~400質量部の範囲の水分存在下に添加することが好ましく、5~200質量部の範囲の水分存在下に添加することがより好ましく、10~100質量部の範囲の水分存在下に添加することがさらに好ましく、20~60質量部の範囲の水分存在下に添加することがよりさらに好ましい。なお、水分の量は、反応系に含まれる水分と後架橋剤を添加する際に必要に応じて用いられる水分との合計量を意味する。
【0057】
後架橋反応における反応温度としては、50~250℃であることが好ましく、60~180℃であることがより好ましく、60~140℃であることがさらに好ましく、70~120℃であることがよりさらに好ましい。また、後架橋反応の反応時間としては、1~300分間であることが好ましく、5~200分間であることがより好ましい。
【0058】
<乾燥工程>
上述した逆相懸濁重合を行った後、熱等のエネルギーを外部から加えることで、水、炭化水素分散媒等を蒸留により系外へ除去する乾燥工程を行ってもよい。逆相懸濁重合後の含水ゲルから脱水を行う場合、炭化水素分散媒中に含水ゲルが分散している系を加熱することで、水と炭化水素分散媒を共沸蒸留により系外に一旦留去する。このとき、留去した炭化水素分散媒のみを系内へ返送すると、連続的な共沸蒸留が可能となる。その場合、乾燥中の系内の温度が、炭化水素分散媒との共沸温度以下に維持されるため、樹脂が劣化しにくい。引き続き、水及び炭化水素分散媒を留去することにより、吸水性樹脂の粒子が得られる。この重合後における乾燥工程の処理条件を制御して脱水量を調整することにより、得られる吸水性樹脂の諸性能を制御することが可能である。
【0059】
乾燥工程では、蒸留による乾燥処理を常圧下で行ってもよく、減圧下で行ってもよい。また、乾燥効率を高める観点から、窒素等の気流下で行ってもよい。乾燥処理を常圧下で行う場合においては、乾燥温度としては、70~250℃であることが好ましく、80~180℃であることがより好ましく、80~140℃であることがさらに好ましく、90~130℃であることがよりさらに好ましい。また、乾燥処理を減圧下で行う場合においては、乾燥温度としては、40~160℃であることが好ましく、50~110℃であることがより好ましい。
【0060】
なお、逆相懸濁重合により単量体の重合を行った後に後架橋剤による後架橋工程を行った場合には、その後架橋工程の終了後に、上述した蒸留による乾燥工程を行うことが好ましい。
【0061】
また、必要に応じて、吸水性樹脂に対し、重合後、乾燥中又は乾燥後に、キレート剤、還元剤、酸化剤、抗菌剤、消臭剤のような種々の添加剤を添加してもよい。
【0062】
2.吸収体、吸収性物品
本発明の吸水性樹脂組成物は、例えば、生理用品、紙オムツ等の衛生材料に用いられる吸収体を構成するものであり、前記吸収体を含む吸収性物品に好適に用いられる。
【0063】
ここで、本発明の吸水性樹脂組成物を用いた吸収体は、本発明の吸水性樹脂組成物と親水性繊維とを含む。吸収体の構成としては、吸水性樹脂組成物と親水性繊維とを均一な組成となるように混合することによって得られた混合分散体、層状の親水性繊維の間に吸水性樹脂が挟まれたサンドイッチ構造体、吸水性樹脂組成物と親水性繊維とをティッシュで包んだ構造体等が挙げられる。なお、吸収体には、他の成分、例えば、吸収体の形態保持性を高めるための熱融着性合成繊維、ホットメルト接着剤、接着性エマルジョン等の接着性バインダーが配合されていてもよい。
【0064】
吸収体における吸水性樹脂組成物の含有量としては、5~95質量%であることが好ましく、20~90質量%であることがより好ましく、30~80質量%であることがさらに好ましい。
【0065】
親水性繊維としては、木材から得られる綿状パルプ、メカニカルパルプ、ケミカルパルプ、セミケミカルパルプ等のセルロース繊維、レーヨン、アセテート等の人工セルロース繊維、親水化処理されたポリアミド、ポリエステル、ポリオレフィン等の合成樹脂からなる繊維等が挙げられる。
【0066】
本発明の吸水性樹脂組成物を用いた吸収体を、液体が通過し得る液体透過性シート(トップシート)と、液体が通過し得ない液体不透過性シート(バックシート)との間に保持することによって、本発明の吸収性物品とすることができる。液体透過性シートは、身体と接触する側に配され、液体不透過性シートは、身体と接する反対側に配される。
【0067】
液体透過性シートとしては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル等の繊維からなる、エアスルー型、スパンボンド型、ケミカルボンド型、ニードルパンチ型等の不織布及び多孔質の合成樹脂シート等が挙げられる。また、液体不透過性シートとしては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル等の樹脂からなる合成樹脂フィルム等が挙げられる。
【実施例
【0068】
以下に実施例及び比較例を示して本発明を詳細に説明する。但し本発明は実施例に限定されるものではない。
【0069】
なお、下記の実施例及び比較例で得られた吸水性樹脂は、以下の各種試験で評価した。以下、各評価試験方法について説明する。
【0070】
<中位粒子径>
JIS標準篩を上から、目開き850μmの篩、目開き600μmの篩、目開き500μmの篩、目開き425μmの篩、目開き300μmの篩、目開き250μmの篩、目開き150μmの篩、及び受け皿の順に組み合わせた。
【0071】
組み合わせた最上の篩に、吸水性樹脂50gを入れ、ロータップ式振とう器を用いて20間振とうさせて分級した。分級後、各篩上に残った吸水性樹脂の質量を全量に対する質量百分率として算出し、粒度分布を求めた。この粒度分布に関して粒子径の大きい方から順に篩上に残った吸水性樹脂の質量百分率を積算することにより、篩の目開きと篩上に残った吸水性樹脂の質量百分率の積算値との関係を対数確率紙にプロットした。確率紙上のプロットを直線で結ぶことにより、積算質量百分率50質量%に相当する粒子径を中位粒子径とした。
【0072】
<水分率>
吸水性樹脂約2gを、あらかじめ秤量したアルミホイールケース(8号)に精秤した(乾燥前の吸水性樹脂の質量 Wa(g))。上述サンプルを、内温を105℃に設定した熱風乾燥機(ADVANTEC社製)で2時間乾燥させた後、デシケーター中で放冷して、乾燥後の吸水性樹脂の質量 Wb(g)を測定した。以下の式から、吸水性樹脂の水分率を算出した。
水分率(%)=[[Wa―Wb]/Wa]×100
【0073】
<アンモニア発生抑制試験>
蒸留水1.0kgに尿素25.0g、塩化ナトリウム9.0g、硫酸マグネシウム(7水和物)0.6g、乳酸カルシウム0.7g、硫酸カリウム4.0g、硫酸アンモニウム2.5gを溶解して人工尿を調製した。また、ウレアーゼ(MERCK社製、タチナタ豆由来50%グリセリン溶液1000U/mL)1.0mLを、蒸留水にて500倍に希釈してウレアーゼ溶液を調製した。試料(実施例1-8の吸水性樹脂組成物及び比較例1の吸水性樹脂)それぞれ1.0gを滅菌シャーレに入れ、試験液(上記人工尿30.0gと上記ウレアーゼ溶液1.0mLを混合して作製)を添加して、試料を膨潤させた。試験液を添加後、試料を2Lテドラーバッグに封入し、バッグ内の空気を抜いて代わりに乾燥空気900mLをバッグ内に加えた。次いで30℃で保存し、24時間後にガス検知管(ガステック社製、アンモニア3L,3La,3M)を用いてアンモニア発生量を計測した。この計測値(200ppm)を100.0%(比較例1の発生量)として、結果を表1に示す。
【0074】
<流動性試験>
パウダーテスター PT-N型(ホソカワミクロン社製)を用い、スパチュラ角を測定し、実施例を代表して実施例3,7の吸水性樹脂組成物、及び比較例1の吸水性樹脂の流動性を評価した。スパチュラ角とは、スパチュラ上に堆積させた樹脂粉末の側面の傾斜角度であり、静止状態の粉体を運動させるために必要な角度のことで、流動性の指標を示すものの一つである。スパチュラ角の値が小さいほど、流動性は良好であることを意味する。測定手順はパウダーテスターの説明書に従い行った。スパチュラ角の測定値を表2に示す。
【0075】
<吸水性樹脂の製造>
(製造例1)
攪拌機、2段パドル翼、還流冷却器、滴下ロート及び窒素ガス導入管を備えた2L容の丸底円筒型セパラブルフラスコを準備した。このフラスコにn-ヘプタン340.0gをとり、ショ糖ステアリン酸エステル(三菱化学フーズ株式会社製、リョートーシュガーエステルS-370)0.92g、無水マレイン酸変性エチレン・プロピレン共重合体(三井化学株式会社製、ハイワックス1105A)0.92gを添加し、撹拌しつつ80℃まで昇温して界面活性剤を溶解した後、50℃まで冷却した。
【0076】
一方、500mL容の三角フラスコに80質量%のアクリル酸水溶液92.0g(1.02モル)をとり、外部より冷却しつつ、21質量%の水酸化ナトリウム水溶液146.0gを滴下して75モル%の中和を行った後、ラジカル重合開始剤として過硫酸カリウム0.11g(0.41ミリモル)、内部架橋剤としてエチレングリコールジグリシジルエーテル8.10mg(0.046ミリモル)を加えて溶解し、第1段目の単量体水溶液を調製した。
【0077】
前記の第1段目の単量体水溶液の全量を、前記セパブルフラスコに添加して、系内を窒素で十分に置換した後、フラスコを70℃の水浴に浸漬して昇温し、第1段目の重合を30分間行い、第1段目の反応混合物を得た。
【0078】
一方、別の500mL容の三角フラスコに80質量%のアクリル酸水溶液128.8g(1.43モル)をとり、外部より冷却しつつ、27質量%の水酸化ナトリウム水溶液159.0gを滴下して75モル%の中和を行った後、ラジカル重合開始剤として過硫酸カリウム0.16g(0.59ミリモル)、内部架橋剤としてエチレングリコールジグリシジルエーテル6.62mg(0.038ミリモル)を加えて溶解して、第2段目の単量体水溶液を調製した。
【0079】
前記第1段目の反応混合物を28℃に冷却し、同温度の前記第2段目の単量体水溶液を系内に添加し、系内を窒素で置換しながら25℃で30分間保持した。その後、再度、フラスコを70℃の水浴に浸漬して昇温し、第2段目の重合を30分間行った。
【0080】
第2段目の重合後、125℃の油浴で反応混合物を昇温し、n-ヘプタンと水との共沸蒸留によりn-ヘプタンを還流しながら248.0gの水を系外へ抜き出した後、2質量%のエチレングリコールジグリシジルエーテル水溶液4.42g(0.51ミリモル)を添加し、80℃で2時間、後架橋反応を行った。その後、125℃の油浴で反応混合物を昇温し、n-ヘプタンを蒸発させて乾燥することによって、吸水性樹脂230.5gを得た。吸水性樹脂の中位粒子径は400μm、水分率は8%であった。
【0081】
(実施例1)
製造例1で得られた吸水性樹脂に対し、ヒドロキサム酸類として、アセトヒドロキサム酸を吸水性樹脂100質量部に対して0.05質量部になるように添加混合して、吸水性樹脂組成物を製造した。
【0082】
(実施例2)
アセトヒドロキサム酸の添加量を、吸水性樹脂100質量部に対して0.1質量部としたこと以外は、実施例1と同様にして、吸水性樹脂組成物を製造した。
【0083】
(実施例3)
アセトヒドロキサム酸の添加量を、吸水性樹脂100質量部に対して0.5質量部としたこと以外は、実施例1と同様にして、吸水性樹脂組成物を製造した。
【0084】
(実施例4)
アセトヒドロキサム酸の添加量を、吸水性樹脂100質量部に対して1.0質量部としたこと以外は、実施例1と同様にして、吸水性樹脂組成物を製造した。
【0085】
(実施例5)
製造例1で得られた吸水性樹脂に対し、ヒドロキサム酸類として、サリチルヒドロキサム酸を吸水性樹脂100質量部に対して0.05質量部になるように添加混合して、吸水性樹脂組成物を製造した。
【0086】
(実施例6)
サリチルヒドロキサム酸の添加量を、吸水性樹脂100質量部に対して0.1質量部としたこと以外は、実施例5と同様にして、吸水性樹脂組成物を製造した。
【0087】
(実施例7)
サリチルヒドロキサム酸の添加量を、吸水性樹脂100質量部に対して0.5質量部としたこと以外は、実施例5と同様にして、吸水性樹脂組成物を製造した。
【0088】
(実施例8)
サリチルヒドロキサム酸の添加量を、吸水性樹脂100質量部に対して1.0質量部としたこと以外は、実施例5と同様にして、吸水性樹脂組成物を製造した。
【0089】
(実施例9)
製造例1で得られた吸水性樹脂に対し、ヒドロキサム酸類として、オクタノヒドロキサム酸を吸水性樹脂100質量部に対して0.5質量部になるように添加混合して、吸水性樹脂組成物を製造した。
【0090】
(実施例10)
製造例1で得られた吸水性樹脂に対し、ヒドロキサム酸類として、ベンゾヒドロキサム酸を吸水性樹脂100質量部に対して0.5質量部になるように添加混合して、吸水性樹脂組成物を製造した。
【0091】
(実施例11)
製造例1で得られた吸水性樹脂に対し、ヒドロキサム酸類として、アセトヒドロキサム酸ナトリウムを吸水性樹脂100質量部に対して0.5質量部になるように添加混合して、吸水性樹脂組成物を製造した。
【0092】
(実施例12)
製造例1で得られた吸水性樹脂に対し、ヒドロキサム酸類として、オクタノヒドロキサム酸ナトリウムを吸水性樹脂100質量部に対して0.5質量部になるように添加混合して、吸水性樹脂組成物を製造した。
【0093】
(実施例13)
製造例1で得られた吸水性樹脂に対し、ヒドロキサム酸類として、ベンゾヒドロキサム酸ナトリウムを吸水性樹脂100質量部に対して0.5質量部になるように添加混合して、吸水性樹脂組成物を製造した。
【0094】
(比較例1)
製造例1で製造した吸水性樹脂をそのまま比較例1の吸水性樹脂とした。
【0095】
【表1】
【0096】
【表2】