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特許7250133メモリシステムをプログラミングするための方法。
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-23
(45)【発行日】2023-03-31
(54)【発明の名称】メモリシステムをプログラミングするための方法。
(51)【国際特許分類】
   G11C 16/34 20060101AFI20230324BHJP
   G11C 11/56 20060101ALI20230324BHJP
【FI】
G11C16/34 140
G11C11/56 210
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2021530966
(86)(22)【出願日】2019-01-23
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-19
(86)【国際出願番号】 CN2019072859
(87)【国際公開番号】W WO2020150935
(87)【国際公開日】2020-07-30
【審査請求日】2021-05-28
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】519237948
【氏名又は名称】長江存儲科技有限責任公司
【氏名又は名称原語表記】Yangtze Memory Technologies Co.,Ltd.
【住所又は居所原語表記】No.88 Weilai 3rd Road,East Lake High-tech Development Zone,Wuhan,Hubei,China
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ケ・リャン
(72)【発明者】
【氏名】チュン・ユアン・ホウ
(72)【発明者】
【氏名】チャン・タン
【審査官】堀田 和義
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-77362(JP,A)
【文献】特開2008-130182(JP,A)
【文献】特表2013-532881(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0044768(US,A1)
【文献】特開2007-4861(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G11C 16/34
G11C 11/56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
メモリシステムをプログラミングするための方法であって、前記メモリシステムが、それぞれが第1の端子及び制御端子を有する記憶素子を含む複数のメモリセルを含み、前記方法が、
前記複数のメモリセルの第1のプログラム動作において、
前記複数のメモリセルの記憶素子の制御端子に第1のプログラム電圧を印加する段階と、
前記複数のメモリセルの前記記憶素子の第1の端子にベーシック参照電圧を印加する段階と、
前記記憶素子の閾値電圧を中間電圧と比較することによってグループ検証を実行する段階と、
前記記憶素子の前記閾値電圧が第1のプログラミング閾値電圧よりも高いか否かをチェックするための第1のプログラム試験を実行する段階と、
前記グループ検証の結果及び前記第1のプログラム試験の結果に従って第2のプログラム動作を実行する段階と、を含み、
前記中間電圧が前記第1のプログラミング閾値電圧よりも低く、
前記中間電圧が、前記第1のプログラム動作後に、前記記憶素子の前記閾値電圧の最大値と最小値の中心値であり、
第1のメモリセルの閾値電圧が、前記グループ検証において前記中間電圧よりも高いと決定されるが、前記第1のプログラム試験において前記第1のプログラミング閾値電圧よりも低いと決定され、第2のメモリセルの閾値電圧が前記グループ検証において前記中間電圧よりも低いと決定される場合、前記グループ検証の結果及び前記第1のプログラム試験の結果に従って前記第2のプログラム動作を実行する段階が、
前記第1のメモリセルの記憶素子の制御端子と第1の端子との間に第1の交差電圧を印加する段階と、
前記第2のメモリセルの記憶素子の制御端子と第1の端子との間に第2の交差電圧を印加する段階と、を含み、
前記第2の交差電圧が前記第1の交差電圧よりも高く、
前記第1のメモリセルの前記記憶素子の前記制御端子と前記第1の端子との間に前記第1の交差電圧を印加する段階が、
前記第1のメモリセルの前記記憶素子の前記制御端子に第2のプログラム電圧を印加する段階と、
前記第1のメモリセルの前記記憶素子の前記第1の端子にエンハンスド参照電圧を印加する段階と、を含み、
前記第2のプログラム電圧が前記第1のプログラム電圧よりも高く、
前記エンハンスド参照電圧が前記ベーシック参照電圧よりも高く、
第4のメモリセルの閾値電圧が、前記グループ検証において前記中間電圧よりも高いと決定され、前記第1のプログラム試験において前記第1のプログラミング閾値電圧よりもわずかに低いと決定される場合、前記グループ検証の結果及び前記第1のプログラム試験の結果に従って前記第2のプログラム動作を実行する段階が、
前記第4のメモリセルの記憶素子の制御端子に前記第2のプログラム電圧を印加する段階と、
前記第4のメモリセルの前記記憶素子の第1の端子に第1の中間参照電圧を印加する段階と、を含み、
前記第1の中間参照電圧が前記エンハンスド参照電圧よりも高く、抑制参照電圧よりも低く、
第5のメモリセルの閾値電圧が、前記グループ検証において前記中間電圧よりも低いと決定され、前記第1のプログラム試験において前記第1のプログラミング閾値電圧よりもわずかに低いと決定される場合、前記グループ検証の結果及び前記第1のプログラム試験の結果に従って前記第2のプログラム動作を実行する段階がさらに、
前記第5のメモリセルの記憶素子の制御端子に前記第2のプログラム電圧を印加する段階と、
前記第5のメモリセルの前記記憶素子の第1の端子に第2の中間参照電圧を印加する段階と、を含み、
前記第2の中間参照電圧が前記ベーシック参照電圧よりも高く、前記エンハンスド参照電圧よりも低い、方法。
【請求項2】
前記複数のメモリセルの第1のメモリセル及び第2のメモリセルが、前記グループ検証において異なるグループにあると決定される場合、前記グループ検証の結果及び前記第1のプログラム試験の結果に従って前記第2のプログラム動作を実行する段階が、
前記第1のメモリセルの記憶素子の制御端子及び前記第2のメモリセルの記憶素子の制御端子に同じプログラム電圧を印加する段階と、
前記第1のメモリセルの前記記憶素子の第1の端子及び前記第2のメモリセルの前記記憶素子の第1の端子に異なる参照電圧を印加する段階と、を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第2のメモリセルの前記記憶素子の前記制御端子と前記第1の端子との間に前記第2の交差電圧を印加する段階が、
前記第2のメモリセルの前記記憶素子の前記制御端子に前記第2のプログラム電圧を印加する段階と、
前記第2のメモリセルの前記記憶素子の前記第1の端子に前記ベーシック参照電圧を印加する段階と、を含む、請求項に記載の方法。
【請求項4】
第3のメモリセルの閾値電圧が、前記第1のプログラム試験において前記第1のプログラミング閾値電圧よりも高いと決定される場合、前記グループ検証の結果及び前記第1のプログラム試験の結果に従って前記第2のプログラム動作を実行する段階がさらに、
前記第3のメモリセルの記憶素子の記憶素子の制御端子に前記第2のプログラム電圧を印加する段階と、
前記第3のメモリセルの前記記憶素子の第1の端子に抑制参照電圧を印加する段階と、を含み、
前記抑制参照電圧が、前記エンハンスド参照電圧よりも高い、請求項に記載の方法。
【請求項5】
前記第2のプログラム動作が実行された後に、前記記憶素子の前記閾値電圧が前記第1のプログラミング閾値電圧よりも高いか否かをチェックするための第2のプログラム試験を実行する段階と、
前記グループ検証の結果及び前記第2のプログラム試験の結果に従って第3のプログラム動作を実行する段階と、をさらに含む、請求項に記載の方法。
【請求項6】
第6のメモリセルの閾値電圧が前記グループ検証において前記中間電圧よりも高いと決定され、前記第2のプログラム試験において前記第1のプログラミング閾値電圧よりも低いと決定され、第7のメモリセルの閾値電圧が前記グループ検証において前記中間電圧よりも低いと決定され、前記第2のプログラム試験において前記第1のプログラミング閾値電圧よりも低いと決定される場合、前記グループ検証の結果及び前記第2のプログラム試験の結果に従って前記第3のプログラム動作を実行する段階が、
前記第6のメモリセルの記憶素子の制御端子と第1の端子との間に第3の交差電圧を印加する段階と、
前記第7のメモリセルの記憶素子の制御端子と第1の端子との間に第4の交差電圧を印加する段階とを、含み、
前記第4の交差電圧が前記第3の交差電圧よりも高い、請求項に記載の方法。
【請求項7】
前記第6のメモリセルの前記記憶素子の前記制御端子と前記第1の端子との間に前記第3の交差電圧を印加する段階が、
前記第6のメモリセルの前記記憶素子の前記制御端子に第3のプログラム電圧を印加する段階と、
前記第6のメモリセルの前記記憶素子の前記第1の端子に前記エンハンスド参照電圧を印加する段階と、を含み、
前記第3のプログラム電圧が前記第2のプログラム電圧よりも高い、請求項に記載の方法。
【請求項8】
前記第7のメモリセルの前記記憶素子の前記制御端子と前記第1の端子との間に前記第4の交差電圧を印加する段階が、
前記第7のメモリセルの前記記憶素子の前記制御端子に前記第3のプログラム電圧を印加する段階と、
前記第7のメモリセルの前記記憶素子の前記第1の端子に前記ベーシック参照電圧を印加する段階と、を含む、請求項に記載の方法。
【請求項9】
前記第3のプログラム動作が実行された後に、前記記憶素子の前記閾値電圧が第2のプログラミング閾値電圧よりも高いか否かをチェックするための第3のプログラム試験を実行する段階と、
前記グループ検証の結果及び前記第3のプログラム試験の結果に従って、第4のプログラム動作を実行する段階と、をさらに含む、請求項に記載の方法。
【請求項10】
第8のメモリセルの閾値電圧が前記グループ検証において前記中間電圧よりも高いと決定され、前記第3のプログラム試験において前記第2のプログラミング閾値電圧よりも低いと決定され、第9のメモリセルの閾値電圧が前記グループ検証において前記中間電圧よりも低いと決定され、前記第3のプログラム試験において前記第2のプログラミング閾値電圧よりも低いと決定される場合、前記グループ検証の結果及び前記第3のプログラム試験の結果に従って前記第4のプログラム動作を実行する段階が、
前記第8のメモリセルの記憶素子の制御端子と第1の端子との間に第5の交差電圧を印加する段階と、
前記第9のメモリセルの記憶素子の制御端子と第1の端子との間に第6の交差電圧を印加する段階と、を含み、
前記第6の交差電圧が前記第5の交差電圧よりも高い、請求項に記載の方法。
【請求項11】
前記第8のメモリセルの前記記憶素子の前記制御端子と前記第1の端子との間に前記第5の交差電圧を印加する段階が、
前記第8のメモリセルの前記記憶素子の前記制御端子に第4のプログラム電圧を印加する段階と、
前記第8のメモリセルの前記記憶素子の前記第1の端子に前記エンハンスド参照電圧を印加する段階と、を含み、
前記第4のプログラム電圧が前記第3のプログラム電圧よりも高い、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記第9のメモリセルの前記記憶素子の前記制御端子と前記第1の端子との間に前記第6の交差電圧を印加する段階が、
前記第9のメモリセルの前記記憶素子の前記制御端子に前記第4のプログラム電圧を印加する段階と、
前記第9のメモリセルの前記記憶素子の前記第1の端子に前記ベーシック参照電圧を印加する段階と、を含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
第1の端子及びワード線に結合された制御端子を有する記憶素子をそれぞれ含む複数のメモリセルと、
前記ワード線に結合されたワード線ドライバーと、
前記複数のメモリセルのうち対応するメモリセルの記憶素子の第1の端子にそれぞれ結合された複数の電圧コントローラーと、を含む、メモリシステムであって、
前記メモリシステムが、前記複数のメモリセルの第1のプログラム動作を実行するように構成され、前記第1のプログラム動作において、
前記複数の電圧コントローラーが、前記複数のメモリセルの記憶素子の制御端子に第1のプログラム電圧を印加するように構成され、
前記ワード線ドライバーが、前記複数のメモリセルの前記記憶素子の第1の端子にベーシック参照電圧を伝送するように構成され、
前記メモリシステムがさらに、前記第1のプログラム動作の後、前記記憶素子の閾値電圧を中間電圧と比較することによってグループ検証を実行するように構成され、
前記メモリシステムがさらに、前記第1のプログラム動作の後、前記記憶素子の前記閾値電圧が第1のプログラミング閾値電圧よりも高いか否かをチェックするための第1のプログラム試験を実行するように構成され、
前記メモリシステムがさらに、前記グループ検証の結果及び前記第1のプログラム試験の結果に従って第2のプログラム動作を実行するように構成され、
前記中間電圧が前記第1のプログラミング閾値電圧よりも低く、
前記第1のプログラム動作の後、前記中間電圧が前記記憶素子の前記閾値電圧の最大値と最小値の中心値である、メモリシステムであって、
第1のメモリセルの閾値電圧が前記グループ検証において前記中間電圧よりも高いと決定されるが、前記第1のプログラム試験において前記第1のプログラミング閾値電圧よりも低いと決定され、前記グループ検証において第2のメモリセルの閾値電圧が前記中間電圧よりも低いと決定される場合、前記メモリシステムが、
前記ワード線ドライバーに、前記第1のメモリセルの前記記憶素子の前記制御端子及び前記第2のメモリセルの前記記憶素子の前記制御端子に第2のプログラム電圧を印加させ、
第1の電圧コントローラーに、前記第1のメモリセルの前記記憶素子の前記第1の端子にエンハンスド参照電圧を印加させ、
第2の電圧コントローラーに、前記第2のメモリセルの前記記憶素子の前記第1の端子に前記ベーシック参照電圧を印加させることによって、前記第2のプログラム動作を実行し、
前記第2のプログラム電圧が前記第1のプログラム電圧よりも高く、
前記エンハンスド参照電圧が前記ベーシック参照電圧よりも高く、
第4のメモリセルの閾値電圧が前記グループ検証において前記中間電圧よりも高いと決定され、前記第1のプログラム試験において前記第1のプログラミング閾値電圧よりもわずかに低いと決定される場合、前記メモリシステムが、
前記ワード線ドライバーに、前記第4のメモリセルの記憶素子の制御端子に前記第2のプログラム電圧を印加させ、
第4の電圧コントローラーに、前記第4のメモリセルの前記記憶素子の第1の端子に第1の中間参照電圧を印加させることによって、前記第2のプログラム動作を実行し、
前記第1の中間参照電圧が、前記エンハンスド参照電圧よりも高く、抑制参照電圧よりも低く、
第5のメモリセルの閾値電圧が、前記グループ検証において前記中間電圧よりも低いと決定され、前記第1のプログラム試験において前記第1のプログラミング閾値電圧よりもわずかに低いと決定される場合、前記メモリシステムが、
前記ワード線ドライバーに、前記第5のメモリセルの記憶素子の制御端子に前記第2のプログラム電圧を印加させ、
第5の電圧コントローラーに、前記第5のメモリセルの前記記憶素子の第1の端子に第2の中間参照電圧を印加させることによって、前記第2のプログラム動作を実行し、
前記第2の中間参照電圧が、前記ベーシック参照電圧より高く、前記エンハンスド参照電圧よりも低い、メモリシステム。
【請求項14】
前記複数のメモリセルのうち第1のメモリセル及び第2のメモリセルが、前記グループ検証において異なるグループにあると決定される場合、前記メモリシステムが、
前記ワード線ドライバーに、前記第1のメモリセルの記憶素子の制御端子及び前記第2のメモリセルの記憶素子の制御端子に同じプログラム電圧を印加させ、
第1の電圧コントローラー及び第2の電圧コントローラーに、前記第1のメモリセルの前記記憶素子の第1の端子及び前記第2のメモリセルの前記記憶素子の第1の端子に2つの異なる参照電圧をそれぞれ印加させることによって、前記第2のプログラム動作を実行する、請求項13に記載のメモリシステム。
【請求項15】
第3のメモリセルの閾値電圧が、前記第1のプログラム試験において前記第1のプログラミング閾値電圧よりも高いと決定される場合、前記メモリシステムが、
前記ワード線ドライバーに前記第3のメモリセルの記憶素子の制御端子に前記第2のプログラム電圧を印加させ、
第3の電圧コントローラーに前記第3のメモリセルの前記記憶素子の第1の端子に抑制参照電圧を印加させることによって、前記第2のプログラム動作を抑制し、
前記抑制参照電圧が前記エンハンスド参照電圧よりも高い、請求項13に記載のメモリシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、メモリシステムをプログラミングするための方法に関し、より具体的には、複数レベルのセルでメモリシステムをプログラミングするための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ソリッドステートドライブ(SSD)メモリセル、特にNANDフラッシュの複数レベルのセルをプログラミングする際には、段階的ステップパルスプログラミングが通常採用されている。段階的ステップパルスプログラミングは、電子捕獲層または記憶素子などの電荷蓄積素子に、段階的な電圧パルスで電子を注入することができる。メモリセルのプログラムが成功すれば、メモリセルの閾値電圧は所定の値よりも高くなるように昇圧される。しかし、メモリが完全にプログラムされなかった場合、メモリセルの閾値電圧は依然として閾値よりも低く、メモリセルは段階的電圧パルスで再びプログラムされることとなる。
【0003】
製造プロセス中に生じる制御できない変動により、メモリセルのいくつかはプログラムされやすく、メモリセルのいくつかはプログラムがより困難であり、より回数の多いプログラム動作を必要とする。したがって、プログラムがより難しいメモリセルは、プログラムプロセス全体のボトルネックとなり、プログラムプロセス全体の速度を低下させることとなる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の1つの実施形態は、メモリシステムをプログラムするための方法を開示する。メモリシステムは、複数のメモリセルを含み、メモリセルのそれぞれが第1の端子及び制御端子を有する記憶素子を含む。
【0005】
本方法は、複数のメモリセルの記憶素子の制御端子に第1のプログラム電圧を印加する段階と、複数のメモリセルの第1のプログラム動作において複数のメモリセルの記憶素子の第1の端子にベーシック参照電圧を印加する段階と、記憶素子の閾値電圧を中間電圧と比較することによってグループ検証を実行する段階と、記憶素子の閾値電圧が第1のプログラミング閾値電圧よりも高いか否かをチェックするための第1のプログラム試験を実行する段階と、グループ検証の結果及び第1のプログラム試験の結果に従って第2のプログラム動作を実行する段階と、を含む。中間電圧は、第1のプログラミング閾値電圧よりも低い。
【0006】
本発明のこれらの、及び他の対象は、様々な図に示された好適な実施形態の以下の詳細な説明を読めば、疑いもなく当業者には明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明の1つの実施形態に従うメモリシステムを示す。
図2】本発明の1つの実施形態に従うプログラム動作の後のメモリセルの閾値電圧分布を示す。
図3】本発明の1つの実施形態に従う図1におけるメモリシステムをプログラムするための方法のフローチャートを示す。
図4図3の方法のプログラム動作で使用される電圧を示す。
図5】本発明の1つの実施形態に従う異なるプログラム動作の後で試験されるプログラミング閾値電圧の表を示す。
図6】先行技術に従う異なるプログラミング動作の後で試験されるプログラミング閾値電圧の表を示す。
【発明を実施するための形態】
【0008】
図1は、本発明の1つの実施形態に従うメモリシステム100を示す。メモリシステム100は、複数のメモリセルMC1からMCNを含む。いくつかの実施形態において、メモリシステム100は、NAND型フラッシュメモリであってもよく、メモリセルMC1からMCNは、4レベルセル(QLC)及び3レベルセル(TLC)を含む複数レベルセル(MLC)であってもよい。すなわち、メモリセルMC1からMCNのそれぞれは、複数のビット状態のデータを保存可能である。
【0009】
図1において、メモリセルMC1からMCNは、同じワード線WLに結合されてもよく、ページとして同時に動作してもよい。図1は説明を短くするために1つのページのメモリセルのみを示しているが、メモリセル100はさらに、いくつかの他の実施形態において、より多くのページのメモリセルを含みうる。メモリセルMC1からMCNは、同じ構造を有してもよく、同じ原理で動作してもよい。例えば、メモリセルMC1は記憶素子FTを含んでもよい。記憶素子FTは、フラッシュメモリに採用されるフローティングゲートトランジスタまたは電子捕獲ユニットであってもよい。図1において、記憶素子FTは、第1の端子及び制御端子を有してもよい。
【0010】
記憶素子FTの第1の端子は、記憶素子FTのソース端子またはドレイン端子であってもよく、記憶素子FTの制御端子は、記憶素子FTのフローティングゲートまたは電子捕獲構造であってもよい。いくつかの実施形態において、記憶素子FTの第2の端子は、フローティングであるか、記憶素子FTの第1の端子に結合されてもよい。
【0011】
メモリセルMC1のプログラム動作の間、メモリセルMC1の記憶素子FTの制御端子はプログラム電圧を受信することができ、メモリセルMC1の記憶素子FTの第1の端子はベーシック参照電圧を受信することができる。この場合、記憶素子FTの制御端子の下のチャネルは、記憶素子FTの第1の端子を介してベーシック参照電圧と結合されることとなり、メモリセルMC1の記憶素子FTの制御端子とチャネルとの間の高い交差電圧は、記憶素子FTのゲート構造に電子注入を生じさせ、記憶素子FTの閾値電圧を上昇させる。
【0012】
記憶素子FTのゲート構造に十分な電子を注入することによって、記憶素子FTの閾値電圧は所望のレベルまで上昇する。したがって、メモリセルMC1に記憶されたデータの状態は、メモリセルMC1の記憶素子FTの閾値電圧のレベルに従って識別可能である。
【0013】
しかし、製造プロセスにおいて生じた制御不可能な変動に起因して、メモリセルのいくつかは、他のメモリセルよりもプログラムが容易であり、プログラム動作に必要な回数が少なくなりうる。図2は、本発明の1つの実施形態に従うプログラム動作の後のメモリセルMC1からMCNの閾値電圧の分布を示す。図2において、プログラム動作が実行された後、メモリセルMC1からMCNの閾値電圧はVT1からVT2に変動しうる。
【0014】
例えば、プログラム動作の後、図2に示されるようにグループ1のメモリセルは、閾値電圧を中間電圧VTMよりも大きくしうる。また、図2に示されるようにグループ2のメモリセルは、その閾値電圧を中間電圧VTMよりも低い状態に保ちうる。すなわち、グループ1のメモリセルは、その閾値電圧がプログラム動作によってより顕著に上昇されうるため、プログラムがより容易なメモリセルとして識別されうる。さらに、グループ1において、その閾値電圧が、メモリセルがプログラムされたか否かを示すための目標閾値電圧である第1のプログラミング閾値電圧VTP1よりも高いいくつかのメモリセルが存在する。すなわち、これらのメモリセルは、1回のプログラム動作のみでプログラムを成功させることができる。対照的に、グループ2のメモリセルは、その閾値電圧の変化が相対的に小さいため、プログラムがより困難なメモリセルとして識別可能である。
【0015】
プログラムがより困難なこれらのメモリセルをより高い効率でプログラムするために、メモリシステム100は、記憶素子FTの制御端子と第1の端子との間により高い交差電圧を印加しうる。
【0016】
図3は、本発明の1つの実施形態に従うメモリシステム100をプログラムするための方法300のフローチャートを示す。図4は、本発明の方法300のプログラム動作で使用される電圧を示す。方法300はステップS310からS390を含むが、図3に示された順序に限定されない。
S310:複数のメモリセルMC1からMCNの記憶素子FTの制御端子に、第1のプログラム電圧VP1を印加する。
S312:複数のメモリセルMC1からMCNの記憶素子FTの第1の端子に、ベーシック参照電圧VB0を印加する。
S320:記憶素子FTの閾値電圧を中間電圧VTMと比較することによって、グループ検証を実行する。
S330:記憶素子FTの閾値電圧が第1のプログラミング閾値電圧VTP1よりも高いか否かをチェックするための第1のプログラム試験を実行する。
S340:グループ検証の結果及び第1のプログラム試験の結果に従って、第2のプログラム動作を実行する。
S350:第2のプログラム動作が実行された後に、記憶素子FTの閾値電圧が、第1のプログラミング閾値電圧VTP1よりも高いか否かをチェックするための第2のプログラム試験を実行する。
S360:グループ検証の結果及び第2のプログラム試験の結果に従って、第3のプログラム動作を実行する。
S370:第3のプログラム動作が実行された後に、記憶素子FTの閾値電圧が、第2のプログラミング閾値電圧よりも高いか否かをチェックするための第3のプログラム試験を実行する。
S380:グループ検証の結果及び第3のプログラム試験の結果に従って、第4のプログラム動作を実行する。
【0017】
いくつかの実施形態において、ステップS310及びS312は、メモリセルMC1からMCNの記憶素子FTのゲート構造に電子を注入し、プログラムされることとなるメモリセルMC1からMCNの記憶素子FTの閾値電圧を上昇させるために、複数のメモリセルMC1からMCNの第1のプログラム動作の間に実行可能である。
【0018】
例えば、図4において、メモリセルMC1からMCNの記憶素子FTの制御端子に第1のプログラム電圧VP1を印加し、メモリセルMC1からMCNの記憶素子FTの第1の端子にベーシック参照電圧VB0を印加することによって、メモリセルMC1からMCNは、ステップS310及びS312でプログラム可能である。
【0019】
第1のプログラム動作の後、メモリシステム100は、どのメモリセルがよりプログラムされやすいか、及びどのメモリセルがよりプログラムが困難であるかを決定するためにグループ検証を実行可能である。ステップS320において、グループ検証は、記憶素子FTの閾値電圧を中間電圧VTMと比較することによって実行可能である。
【0020】
また、メモリセルのプログラミングが成功したか否かをチェックするために、記憶素子FTの閾値電圧が第1のプログラミング閾値電圧VTP1よりも高いか否かをチェックするための第1のプログラム試験が、ステップS330において実行可能である。第1のプログラミング閾値電圧VTP1は、メモリセルがデータの第1の状態を有するようにプログラムされたことを示すための目標閾値電圧であってもよい。
【0021】
例えば、しかし限定されず、メモリセルMC1からMCNは、「11」、「10」、「01」及び「00」で表されるデータの4つの異なる状態を記憶可能でありうる。この場合において、メモリセルMC1の閾値電圧が第1のプログラミング閾値電圧VTP1よりも低い場合、メモリセルMC1はプログラムされないものと考えられ、メモリセルMC1に記憶されたデータの状態は「11」として表されうる。しかし、メモリセルMC1の閾値電圧が第1のプログラミング閾値電圧VTP1よりも高い場合、メモリセルMC1は、プログラムされるものと考えられ、メモリセルMC1に記憶されたデータの状態は「10」として表されうる。また、メモリセルMC1がその閾値電圧が、第1のプログラミング閾値電圧VTP1よりも高い第2のプログラミング閾値電圧よりも高いようにプログラムされた状態に維持される場合、メモリセルMC1は、「01」を表すデータの状態でプログラムされると考えられる。同様に、メモリセルMC1が、第2のプログラミング閾値電圧よりも高い第3のプログラミング閾値電圧よりも高い閾値電圧を有するようにプログラムされた状態に維持される場合、メモリセルMC1は、「00」を表すデータの状態でプログラムされると考えられる。しかし、いくつかの他の実施形態において、メモリセルMC1からMCNは、さらにより多くのデータの状態を記憶可能であり、データの状態は、用途の必要性に従って、異なる順序を有する閾値電圧によって表されうる。
【0022】
さらに、いくつかの実施形態において、中間電圧VTMがメモリセルMC1からMCNのプログラミング傾向を検証するのに使用されるため、中間電圧VTMは、第1のプログラミング閾値電圧VTP1より低くてもよい。例えば、メモリセルMC1からMCNの閾値電圧が図2に示されるようにやや対称的な分布を有する場合において、中間電圧VTMは、VT1とVT2との間の閾値電圧の中心値とすることができる。
【0023】
グループ検証及び第1のプログラム試験の後、第2のプログラム動作が、グループ検証の結果及び第1のプログラム試験の結果に従って実行可能である。すなわち、メモリシステム100は、ステップS340において、メモリセルMC1からMCNをそれらのプログラム傾向に従って異なる交差電圧でプログラム可能である。
【0024】
例えば、メモリセルMC1の閾値電圧がグループ検証において中間電圧VTMよりも高いと決定されるが、第1のプログラム試験において第1のプログラミング閾値電圧VTP1よりも低いと決定される場合、これは、メモリセルMC1がグループ1に属し、メモリセルMC1がより容易にプログラムされることを意味し、メモリセルMC1のプログラミングがまだ成功していないことを意味しうる。メモリセルMC2の閾値電圧がグループ検証において中間電圧VTMよりも低いと決定される場合、これは、メモリセルMC2がグループ2に属し、メモリセルMC2がよりプログラムが困難であることを意味し、メモリセルMC2のプログラミングがまだ成功していないことを意味しうる。
【0025】
この場合、メモリシステム100は、メモリセルMC1の記憶素子の制御端子と第1の端子との間に第1の交差電圧を印加し、メモリセルMC2の記憶素子の制御端子と第1の端子との間に第2の交差電圧を印加しうる。メモリセルMC2はプログラムがより困難であるため、第2の交差電圧は、第1の交差電圧よりも高くすることができる。すなわち、第2のプログラム動作において、メモリセルMC2は、より高い交差電圧でプログラム可能であり、それによってメモリセルMC2の閾値電圧がより高速かつより顕著に変化されうる。
【0026】
図4において、メモリセルMC1の記憶素子FTの制御端子と第1の端子との間の第1の交差電圧VC1は、ワード線ドライバー120で、第2のプログラム電圧VP2をメモリセルMC1の記憶素子FTの制御端子に印加し、電圧コントローラー1101で、エンハンスド参照電圧VE0をメモリセルMC1の記憶素子FTの第1の端子に印加することによって、提供可能である。本実施形態において、第2のプログラム電圧VP2は、段階的ステップパルスプログラミングの原理に従い、プログラム効率を改善するために、第1のプログラム電圧VP1よりも高くすることができる。
【0027】
また、メモリセルMC1の記憶素子FTの制御端子と第1の端子との間の第2の交差電圧VC2は、ワード線ドライバー120で、第2のプログラム電圧VP2をメモリセルMC2の記憶素子FTの制御端子に印加し、電圧コントローラー1102で、ベーシック参照電圧VB0をメモリセルMC2の記憶素子FTの第1の端子に印加することによって提供可能である。メモリセルMC1及びMC2の記憶素子FTの制御端子は同じ第2のプログラム電圧VP2を受信することとなる一方、エンハンスド参照電圧VE0はベーシック参照電圧VB0よりも高くすることができ、第2の交差電圧VC2は第1の交差電圧VC1よりも高くなる。
【0028】
いくつかの実施形態において、ステップS310及びS312を有する第1のプログラム動作においてメモリセルのプログラムが成功した場合、プログラムされたメモリセルは、ステップS40の第2のプログラム動作において抑制されうる。例えば、メモリセルMC3の閾値電圧が第1のプログラム試験において第1のプログラミング閾値電圧VTP1よりも高いと決定される場合、これは、メモリセルMC3が現在のレベルでプログラムが成功したことを意味しうる。この場合、第2のプログラム動作において、メモリシステム100は、ワード線ドライバー120で、第2のプログラム電圧VP2をメモリセルMC3の記憶素子FTの制御端子に印加し、電圧コントローラー1103で、抑制参照電圧VI0をメモリセルMC3の記憶素子FTの第1の端子に印加することができる。この場合、抑制参照電圧VI0はエンハンスド参照電圧VE0よりも高くすることができ、そのためメモリセルMC3の記憶素子FTの制御端子と第1の端子との間の第3の交差電圧VC3は、むしろ低くなる。したがって、電子は第2のプログラム動作においてメモリセルMC3の記憶素子FTに注入されず、メモリセルMC3はステップS340において抑制可能である。いくつかの実施形態において、第1のプログラム動作および後続のプログラム動作においてプログラムされることを意図されないこれらのメモリセルを抑制するために類似の手法が使用可能である。
【0029】
また、本発明のいくつかの実施形態において、第1のプログラム試験がさらに、メモリセルのプログラムがほとんど成功したか否かを決定することができ、ほとんどプログラムが成功したと決定されたメモリセルは、第2のプログラム動作において、比較的小さい交差電圧でプログラム可能であり、メモリセルが過度にプログラムされることを抑制し、メモリセルの閾値電圧分布を集中させるのに役立つ。
【0030】
例えば、メモリセルMC4の閾値電圧がグループ検証において中間電圧VTMよりも高いと決定され、第1のプログラム試験において第1のプログラミング閾値電圧VTP1よりもわずかに低いと決定される場合、メモリセルMC4はプログラムがほとんど成功したと決定されうる。この場合、メモリシステム100は、第2のプログラム動作において、ワード線ドライバー120で第2のプログラム電圧VP2をメモリセルMC4の記憶素子FTの制御端子に印加し、電圧コントローラー1104で、第1の中間参照電圧VB1をメモリセルMC4の記憶素子FTの第1の端子に印加することができる。第1の中間参照電圧VB1は図4に示されるようにエンハンスド参照電圧VE0よりも高くできるため、メモリセルMC4は、ステップS340の第2のプログラム動作において、より低い交差電圧でプログラム可能である。しかし、第1の中間参照電圧VB1は抑制参照電圧VI0よりも低くできるため、電子は抑制されることなく依然としてメモリセルMC4の記憶素子FTに注入されうる。
【0031】
同様に、メモリセルMC5の閾値電圧がグループ検証において中間電圧VTMよりも低いと決定され、第1のプログラム試験において第1のプログラミング閾値電圧VTP1よりもわずかに低いと決定される場合、メモリシステム100は、第2のプログラム動作において、ワード線ドライバー120で、第2のプログラム電圧VP2をメモリセルMC5の記憶素子FTの制御端子に印加し、電圧コントローラー1105で、第2の中間参照電圧VB2をメモリセルMC5の記憶素子FTの第1の端子に印加することができる。この場合、第2の中間参照電圧VB2がベーシック参照電圧VB0よりも高くすることができ、エンハンスド参照電圧VE0よりも低くすることができるため、メモリセルMC5は、ステップS340の第2のプログラム動作において、より低い交差電圧でプログラム可能である。さらに、メモリセルMC5はグループ2に属し、グループ検証に従ってメモリセルMC4よりもプログラムが困難であると決定されるため、第2の中間参照電圧VB2は、第1の中間参照電圧VB1よりも低くすることができ、そのためメモリセルMC5は、メモリセルMC4よりも高い交差電圧でプログラム可能である。
【0032】
前述の実施形態において、第2のプログラム動作において、異なる条件でメモリセルをプログラムするために異なる交差電圧を印加するために、メモリセルMC1からMC5は、記憶素子FTのそれらの制御端子から同じプログラム電圧を受信し、記憶素子FTのそれらの第1の端子から異なる参照電圧を受信しうる。この場合、メモリセルMC1からMCNは、同じワード線WLに結合可能であり、ページとして同時に動作可能である。図1に示されるようにいくつかの実施形態において、メモリシステム100はさらに、プログラム電圧をワード線WLを介して記憶素子FTの制御端子に印加するために、ワード線WLに結合されたワード線ドライバー120を含むことができる。
【0033】
ワード線を介して記憶素子FTの制御端子に提供するのではなく、ビット線を介して記憶素子FTの第1の端子に異なる電圧を提供する別の理由は、プログラム電圧VP1及びVP2が通常電荷ポンプによって生成された高い電圧であり、異なるレベルのプログラム電圧を提供するためにより多くの電荷ポンプ回路を必要としうることである。図1において、メモリシステム100はさらに、参照電圧をそれぞれメモリセルMC1からMCNの記憶素子FTの第1の端子に提供するためにN個の電圧コントローラー1101から110Nを含むことができる。電圧コントローラー1101から110Nは、メモリセルMC1からMCNの状態にしたがって、ベーシック参照電圧VB0、エンハンスド参照電圧VE0、抑制参照電圧VI0、第1の中間参照電圧VB1及び第2の中間参照電圧VB2を含む、異なる参照電圧を提供することができる。しかし、本発明のいくつかの他の実施形態において、交差電圧は、システムの必要性に従って他の異なる構造によって提供されうる。
【0034】
さらに、ステップS340の第2のプログラム動作の後、記憶素子FTの閾値電圧がステップS350の第1のプログラミング閾値電圧VTP1よりも高いか否かをチェックするために、第2のプログラム試験が実行可能である。そのため、グループ検証の結果及び第2のプログラム試験の結果に従って、第3のプログラム動作が、ステップS360において実行される。
【0035】
第3のプログラム動作において、ステップS320で生成されたグループ検証の結果は、依然としてプログラム動作のための交差電圧を決定するために使用されることとなる。例えば、メモリセルMC6の閾値電圧が、グループ検証において中間電圧VTMよりも高いと決定され、第2のプログラム試験において第1のプログラミング閾値電圧VTP1よりも低いと決定され、メモリセルMC7の閾値電圧が、グループ検証において中間電圧VTMよりも低いと決定され、第2のプログラム試験において第1のプログラミング閾値電圧VTP1よりも低いと決定される場合、メモリシステム100は、メモリセルMC6の記憶素子FTの制御端子と第1の端子との間に、メモリセルMC7の記憶素子FTの制御端子と第1の端子との間に印加される第4の交差電圧よりも低い第3の交差電圧を印加可能である。すなわち、メモリセルMC7は、メモリセルMC6よりも高い交差電圧でプログラムされ、そのため、メモリセルMC7はその閾値電圧をより高速に上昇させ、メモリセルMC6の進行に追いつきうる。
【0036】
いくつかの実施形態において、第3の交差電圧は、第3のプログラム電圧VP3をメモリセルMC6の記憶素子FTの制御端子に印加し、エンハンスド参照電圧VE0をメモリセルMC6の記憶素子FTの第1の端子に印加することによって印加可能である。また、第3のプログラム電圧VP3は、段階的ステップパルスプログラミングを達成するために、第2のプログラム電圧VP2よりも高くすることができる。
【0037】
同様に、第4の交差電圧は、第3のプログラム電圧VP3をメモリセルMC7の記憶素子FTの制御端子に印加し、ベーシック参照電圧VB0をメモリセルMC7の記憶素子FTの第1の端子に印加することによって印加可能である。
【0038】
さらに、ステップS350の第2のプログラム試験においてプログラムが成功したと決定されるメモリセルは、抑制参照電圧VI0を記憶素子FTの第1の端子に印加することによって抑制可能である。
【0039】
いくつかの実施形態において、プログラムするのがより困難であるメモリセルをより高い交差電圧でプログラムし、プログラムがより容易であるメモリセルをより低い電圧でプログラムすることによって、メモリセルMC1からMCNの閾値電圧の分布がより集中され、プログラム効率が改善されうる。そのため、ステップS360の第3のプログラム動作の後、「01」のデータを有するようにプログラムされること(すなわち、第2のプログラミング閾値電圧よりも高いが第3のプログラミング閾値電圧よりも低い閾値電圧を有するようにプログラムされること)を意図されるメモリセルのいくつかは、既に第2のプログラミング閾値電圧よりも高い閾値電圧、すなわち、次の目標プログラミング閾値電圧を有するようにプログラムされうる。この場合、第3のプログラム動作が実行された後に、記憶素子FTの閾値電圧がステップS370の「01」のデータでプログラムされることを意図されるこれらのメモリセルのための第2のプログラミング閾値電圧よりも高いか否かをチェックするために、第3のプログラム試験が実行可能である。また、第4のプログラム動作が、グループ検証の結果及びステップS380の第3のプログラム試験の結果に従って実行されることとなる。
【0040】
例えば、メモリセルMC8及びMC9は、「01」のデータでプログラムされることを意図される。メモリセルMC8の閾値電圧がグループ検証において中間電圧VTMよりも高いと決定され、第3のプログラム試験において第2のプログラミング閾値電圧よりも低いと決定され、メモリセルMC9の閾値電圧がグループ検証において中間電圧VTMよりも低いと決定され、第3のプログラム試験において第2のプログラミング閾値電圧よりも低いと決定される場合、メモリシステム100は、メモリセルMC8の記憶素子FTの制御端子と第1の端子との間に、メモリセルMC9の記憶素子の制御端子と第1の端子との間に印加される第6の交差電圧よりも低い第5の交差電圧を印加可能である。
【0041】
すなわち、メモリセルMC9は、メモリセルMC8よりも高い交差電圧でプログラムされ、そのためメモリセルMC9はその閾値電圧をより高速に上昇させ、メモリセルMC8の進行に追いつきうる。
【0042】
いくつかの実施形態において、第5の交差電圧は、第4のプログラム電圧VP4をメモリセルMC8の記憶素子FTの制御端子に印加し、エンハンスド参照電圧VE0をメモリセルMC8の記憶素子FTの第1の端子に印加することによって印加可能である。また、第4のプログラム電圧VP4は、段階的ステップパルスプログラミングを達成するために、第3のプログラム電圧VP3よりも高くすることができる。
【0043】
同様に、第6の交差電圧は、第4のプログラム電圧VP4をメモリセルMC9の記憶素子FTの制御端子に印加し、ベーシック参照電圧VB0をメモリセルMC9の記憶素子FTの第1の端子に印加することによって印加可能である。
【0044】
従来技術において、プログラムがより困難なメモリセルのためにより高い交差電圧を印加することなく、メモリセルMC1からMCNは、データの所望の状態を記憶するためのプログラムプロセスを完了するためにより多い回数のプログラム動作を必要としうる。
【0045】
図5は、本発明の1つの実施形態に従う異なるプログラム動作の後に試験されることとなるプログラミング閾値電圧VTP1からVTP4の表を示し、図6は、従来技術に従う異なるプログラム動作の後に試験されることとなるプログラミング閾値電圧VTP1からVTP4の表を示す。
【0046】
図5において、第3のプログラム動作の後、ほとんどすべてのメモリセルMC1からMCNが、第1のプログラミング閾値電圧VTP1よりも高い閾値電圧を有するようにプログラム可能であり、そのため第2のプログラミング閾値電圧VTP2が、第3のプログラム動作の後に試験可能である。しかし、グループ検証の結果に従って異なる交差電圧を印加しない従来技術では、全てのメモリセルの閾値電圧が第1のプログラミング閾値電圧VTP1よりも高くなるまでに5回を超えるプログラム動作を必要としうる。したがって、データの4つの異なる状態を記憶するためのプログラムプロセスを完了するために、本方法300で動作するメモリシステム100は9回のプログラム動作を必要としうる一方、従来技術は11回のプログラム動作を必要とする。
【0047】
さらに、プログラム動作はプログラム試験およびグループ検証の両方の結果に従って実行可能であるため、メモリセルMC1からMCNの閾値電圧は、従来技術よりも集中されうる。すなわち、プログラムがより困難なメモリセルはより高い交差電圧でプログラムされるため、これらのメモリセルはより高速にプログラム可能である。したがって、メモリシステム100で必要なプログラム試験の数は、従来技術のそれよりも少なくなる。例えば、図5において、各プログラム動作の後、プログラム試験は2回を超えない。
【0048】
しかし、メモリセルが分類されることなく同じ交差電圧でプログラムされる場合、メモリセルの閾値電圧は、より幅広い分布を有することとなり、各プログラム動作についてより多くのプログラム試験を必要とする。例えば、第5のプログラム動作の後、3回の異なるプログラム試験が、図6で実行されなければならない。結果として、プログラム試験の合計回数は図5では12回なのに対し、プログラム試験の合計回数は図6では21回である。より多くのプログラム動作およびより多くのプログラム試験は、より多くの電力を消費することとなるため、本方法300では、メモリシステム100はプログラムプロセスの効率を向上するとともに電力消費も低減可能である。
【0049】
まとめると、本発明の実施形態によって提供されるメモリシステム及びメモリシステムをプログラミングするための方法は、プログラム試験およびグループ検証の両方の結果に従ってプログラム動作を実行することが可能である。そのため、プログラムがより困難なメモリセルはプログラムプロセスを増大させるためにより高い交差電圧でプログラム可能であり、メモリセルMC1からMCNの閾値電圧は集中化されうる。結果として、プログラムプロセスの効率は改善され、プログラムプロセスを完了するために必要な電力は顕著に低減されうる。
【0050】
当業者は容易に、デバイス及び方法の多数の改変および変更が、本発明の教示を維持しつつなされうることを理解するであろう。したがって、上記開示は、添付された特許請求の範囲によってのみ限定されると解釈されるべきである。
【符号の説明】
【0051】
100 メモリシステム
120 ワード線ドライバー
1101から110N 電圧コントローラー
MC1からMCN メモリセル
WL ワード線
FT 記憶素子
VT1、VT2 閾値電圧
VTM 中間電圧
VTP1からVTP4 プログラミング閾値電圧
VP1からVP4 プログラム電圧
VB0 ベーシック参照電圧
VB1、VB2 中間参照電圧
VE0 エンハンスド参照電圧
VI0 抑制参照電圧
VC1からVC3 交差電圧
図1
図2
図3
図4
図5
図6